1級建築施工管理技士 品質問題 トラブル予防

1級建築施工管理技士 品質問題トラブル予防


【 敷地 】

001 ハザードマップで危機予知 
002 敷地にはリスクが潜んでいる

【 屋根・防水工事 】
003 雨水のスムーズな排水は建物の基本
004 ルーフドレインは縦型か横型か
005 保護アスファルト防水
006 露出アスファルト防水の注意点
007 シート防水は機械的固定工法
008 パラペットは外壁扱い
009 屋上断熱防水は油断大敵
010 屋上機械基礎は最小限に
011 ハト小屋は雨水が入りやすい
012 目地シールは2面接着が基本
013 屋上目隠し壁は耐風型にする
014 屋上緑化には灌漑設備と排水を

【 バルコニー 】
015 バルコニーの防水と排水
016 バルコニーの手すりは丈夫に
017 二重床で段差をなくして広々と

【 屋根 】
018 屋根仕上げに合った屋根勾配を
019 瓦は風で飛ばないように
020 銅板の一文字葺きは熱伸縮する
021 金属板葺きは水切りと水返しを
022 屋根のメンテナンス動線を確保する

【 地下躯体 】
023 地下躯体は地下水対策を
024 地下ピット水槽の防水と点検
025 エレベーターピットの湧水対策

【 鉄筋コンクリート造 】
026 コンクリート打継ぎの防水対策
027 壁のひび割れは漏水につながる
028 構造スリットは漏水に注意する
029 鉄筋のかぶり不足は建築基準法違反
030 コンクリートは密実に打つ
031 化粧打ち放しコンクリート

【 鉄骨造 】
032 鉄骨位置は何から決めるか
033 開口補強は耐風型にする
034 鉄骨あらわし部分はデザインする
035 外壁貫通部の止水方法
036 屋外の鉄骨階段は建物から離す
037 鉄骨造の耐火被覆は認定による

【 パネル外壁 】
038 PCa板のカーテンウォールは等圧に
039 ALCパネルの注意点
040 成形セメント板(ECP)の注意点
041 金属板の注意点

【 石工事 】
042 石の選び方
043 外壁石張りは乾式工法とする

【 タイル工事 】
044 タイルの選び方
045 タイルの大きさで張り方が決まる
046 タイルとモルタルではどっちが剥がれやすいか
047 タイル張り外壁には伸縮調整目地を設置する
048 打継ぎ目地部のタイルは剥離しやすい

【 外部建具 】
049 建具に必要な性能
050 アルミ製建具は表面仕上げで長持ち
051 建具の止水はシールに頼らない
052 建具と開口補強は一体
053 雨の入りやすい窓がある
054 窓の結露した水の処理
055 建具金物は現物を確認する
056 構造スリットにつく建具
057 窓の方立の座屈防止
058 ガラリから入る雨水の処理
059 鋼製建具は錆びやすい
060 ステンレス製建具は雨が入りやすい
061 玄関ガラススクリーン足元の防水
062 トップライトの注意点
063 シャッターの強風・安全対策

【 ガラス工事 】
064 カーテンウォールの性能
065 網入りガラスのひび割れ防止策
066 ガラスで怪我をしないために
067 自然破損する強化ガラス
068 ガラスブロックの弱点
069 高窓の清掃方法

【 外壁その他の工事 】
070 エキスパンションジョイント
071 免震の可動範囲
072 軒天井は台風に弱い
073 外壁の汚れを少なくする方法

【 内装仕上工事 】
074 浴室の防水と浴槽の防水
075 厨房の床をなぜ嵩上するのか?
076 モルタルが付着する防水がある
077 ALC内壁はスライド工法
078 仕上げのひび割れの原因
079 システム天井の落下防止策
080 天井の耐震性を確保する
081 結露箇所の盲点
082 熱橋の盲点
083 内断熱と外断熱
084 断熱材は適材適所に
085 環境にやさしい材料とは?
086 集合住宅の騒音・振動対策

【 外構工事 】
87 外構床のトラブル予防策
88 階段・スロープの防水

【 設備工事 】
89 近隣の環境に配慮する
90 設備インフラを引き込むとき
91 電気室を水から守る
92 美しい空間は天井から
93 照明の選択は色温度と演色性
94 照明は球替えを考慮する
95 太陽光発電パネル設置時の注意点
96 空調設備性能発揮のポイント
97 エレベーターの注意点
98 エスカレーターの安全確保策
99 雷から人・建物・設備を守る
100 爆発から建物を守る

 

1級建築施工管理技士 敷地 自然災害等

建築品質 敷地


001 ) ハザードマップで危険予知

近頃では、地球温暖化の影響か気候変動の影響が、地球の活動が活発化してきており、集中豪雨による土石流や河川の氾濫による家屋の流出・水没などの災害が多発している。

ハザードマップとは、大気汚染、土砂災害、津波、地震等のあらゆる自然災害から人命や財産を守るために、地域ごとに自然災害による被害の度合いを予測した災害予測地図である。

ハザードマップはインターネットで公開されているので、設計、施工にあたっては、計画敷地に関する情報を事前に確認する必要がある。

1.大気汚染、土砂災害、津波等の自然災害

国土交通省のハザードマップポータルサイトでは、都道府県市町村がインターネットで公開しているハザードマップが閲覧できる。

>> 国土交通省ハザードマップポータルサイト

「あなたの街のハザードマップ」では、次のマップが地図上で検索、閲覧できる。
・洪水 ・内水   ・高潮
・津波 ・土砂災害 ・火山

2.活断層

全国断層ハザードマップ(Japan Active Fault Map)では、計画地から活断層までの距離を地図、航空写真、地形図等で確認できる。

>> 全国断層ハザードマップ

その他に、次のマップも閲覧できる。

・リアルタイム世界の地震マップ
(IRIS)Seismic Monitor

・津波シミュレーション
(Flood Maps)

3.軟弱地盤

全国の軟弱地盤マップ・ジオダス(GEODAS)では、地盤調査を行った結果を、良好地盤、軟弱地盤、地盤補強工事をした場所、腐植土が確認された場所、ボーリング調査データのある場所等を地盤データ、土地条件、地形図等で閲覧できる。(会員制、一部フリーサービス)

>> 軟弱地盤マップ・ジオダス(GEODAS

4.地域別の気象データ・理科年表

理科年表は国立天文台が編纂し、丸善が発行する自然科学に関するデータ集。
内容は広範囲にわたっており、建築設計等に必要な地域別の気温や降雨量と降雨強度、風速と風向、降雪量、日射量等のデータが掲載されている。(会員制)
特に、全国の地点別の日降水量、1時間降水量、10分間降水量の最大記録は、建築の雨水排水計画に必須の設計データである。
最近の異常気象で最大降雨量も漸増しているので、常に最新データを確認して計画する必要がある。

>> 地域別の気象データ・理科年表

5.自然由来の重金属による土壌汚染

国土交通省から、
「建設工事における自然由来重金属等含有岩石、
土壌の対応マニュアル」
が発行されている。各自治体のホームページから自然由来の重金属分布図が閲覧できる。
自然由来の重金属による土壌汚染とは、
縄文海進時(約6000年前)に海だった範囲では、海成堆積物が地表付近に分布し、そこから溶出する重金属による土壌汚染のことで、日本全国、意外と身近なところに重金属が分布している。
注)土壌汚染対策法:土壌汚染による人への健康被害の防止を目的として法で、2010年4月1日に大幅に改正された。

6.市街地レベルの気象情報、地形、航空写真}

Googleマップ地図検索では、世界地図と衛生画像で市街地図レベルの気象情報、地形、航空写真が検索、閲覧できる。

>> グーグルマップ

1級建築施工管理技士 敷地 簡易診断

建築品質 敷地


002 ) 敷地にはリスクが潜んでいる

計画敷地には多くのリスクが潜んでいる。計画敷地の地盤の状況、敷地内の雨水排水の状況、地中埋設物、土壌汚染物、敷地境界等これらの問題は設計者が設計条件として設計図書に盛り込むべき内容であるが、工事監理者や施工者は工事着手前に計画敷地を事前調査し、確認することが必須である。
しかし、敷地の現状を見ただけでは敷地に潜んでいる全てのリスクを見つけることは困難である。
不動産取引時の重要事項説明書や不動産売買契約書の特記、道路台帳の確認をすることが必要である。

1.計画敷地のリスクを目視で簡易診断

①敷地は必ず傾斜している
雨の日に計画敷地周辺を歩くと、隣接地や道路等、敷地外からの越流水や、逆に敷地内から道路や隣接地への越流水等、計画敷地の雨水排水の状況がよくわかる。
水は高いところから低いところへ流れて、敷地の一番低いところへ集まる。

②計画敷地並びに敷地周辺の地盤状況
前面道路の道路面のひび割れ状況やマンホール枠や側溝周辺での不同沈下、電柱の傾き加減や隣地境界上の境界塀の傾き等を見れば計画敷地の地盤状況は判断できる。

③擁壁の水抜き穴の配置は適切か
擁壁は原則として、3m2に径75mmの水抜き穴を1カ所設ける必要がある。
基準に基づいて水抜きパイプが設けられていないと、擁壁の伸縮目地の劣化や擁壁ひび割れ部分からの白華現象(エフロレッセンス)や、水はけ不良による擁壁際の敷地内の不同沈下等が発生する。

2.計画敷地の履歴調査でわかること

①旧建物の基礎や設備配管等の地中埋設物
地中埋設物は計画敷地を試掘しないとわからない場合がほとんどである。

②土壌汚染
土壌汚染には人為的汚染と自然由来汚染がある。自然由来汚染については自治体が発行する自然由来の重金属分布図を閲覧すればわかる。
人為的汚染の責任は汚染源の起因者が、自然由来の重金属汚染については敷地所有者が責任を持って処理することを法律は規定している。(001 を参照

③接道条件
建物の計画敷地は道路に2m以上接道していなければならない。(建築基準法第43錠)
敷地内に位置指定道路がある場合は、道路中心からの後退距離や隅切り、道路斜線の規制を受ける。
また、敷地内に公図上の水路や里道がないかも確認する。

1級建築施工管理技士 屋根・防水工事 雨水排水

建築品質 屋根・防水


003)雨水のスムーズな排水は建物の基本

建築の目的は雨をしのぐことであるといっても過言ではない。降った雨を集めて、上階から下階へ、そして下水道に接続する最終会所へスムーズに排水するように計画すること、すなわち雨水の集排水計画は建築の基本である。

1.谷樋は漏水のリスクが大きい

(谷樋:屋根の谷と呼ばれる部分の雨樋)
谷樋は漏水のリスクが大きくて、できるだけ谷樋を設けないような建築計画が望まれる。
しかし、どうしても谷樋をもうける場合は、絶対漏水させないように

①谷樋は十分な雨水負担容積があること
②もし樋がつまっても外部へオーバーフローをできるようにすること
③清掃などのメンテナンスがいつでもできること

が大切である。

2.雨水を受ける屋根面積の算定

屋根面積は水平投影面積とする。
上階の壁にあたった雨水が集まることが懸念される屋上は、上階の壁面積の1/2を屋上(屋根)面積に加える。

3.屋根勾配とルーフドレン(RD)位置の決定

屋根勾配とRD位置を決めることは、雨水をどこに集め、縦菅をどこに設けるかを決めることである。
屋根勾配は、保護アスファルト防水の場合は1/100以上とし、露出防水では1/50以上とする。側溝を設けるときRD間隔は12m以下とする。
RDは1カ所が詰まってももう1ヶ所で排水できるように、必ず2ヶ所以上設ける。屋根面積が小さくRDを1ヶ所しか設けないときは必ずオーバーフロー菅を設けなければならない。

4.縦管径と最大許容屋根面積の確認

雨水縦管は雨水専用とし、縦管径によって負担屋根面積が決まる。その管径による排水能力はSHASE-S206給排水設備基準による。

上の表は100mm/hの場合と180mm/hの場合を示す。
当該敷地での10分間の最大降雨量を理科年表で確認し、時間最大降雨量を設定する。100mm/hを超えるときは、100m/hの面積に(当該敷地の最大降雨量/100)を掛けて許容面積を算出する。
近年局地的な集中豪雨などで過去の実績を上回ることも頻発しているので、直近の気象データを考慮することが必要である。

5.横走り管は配管勾配によって許容最大屋根面積が変わる

横走り管を設ける場合、排水能力がその配管勾配によって変わるため、注意が必要である。(下表)
横走り管は詰まりやすいので、管径100mm以上の管を使う。
なお、横型RDを用いる場合は横走り管がなくても、下記表の配管勾配 1/50を採用する。

6.雨水配管の仕様

雨水配管の仕様は、外部はVP管でもよいが、内部は破損しにくい鋼管を用いて防露巻きとする。耐火2層管もある。

*100mm/hの時の雨水横走り管の管径(( )は180mm/hの時)

1級建築施工管理技士 屋根・防水工事 ルーフドレンの形状

建築品質 屋根・防水


004)ルーフドレインは縦型か横型か

飛んできた落葉やビニール袋などでルーフドレイン(RD)が詰まることがある。
RDのストレーナー(ごみ除け)が低いと詰まりやすく、径が小さくても詰まりやすい。
径が100mm以上のルーフドレンを使いたい。
横型は漏水のリスクが低く、縦型は排水性が良い。

1. 縦型ルーフドレン

縦型RDは集水を確実にするために、水下コンクリート天端より40mm程度下げて設置する。
この時RDまわりの床スラブが薄くなるので、十分鉄筋で補強するか、RDまわりの床スラブを厚くするなどが必要である。
縦型RDのストレーナー(ごみ除け)はごみが詰まりにくい背の高いものを採用する。
縦管は室内になるため、清掃時の破損や、配管ジョイントからの漏水がないように鋼管(白ガス管)を用い、溶接接合する。
また、鋼管は屋内で結露する恐れがあるため、防露巻とする。
縦管に耐火2層管を採用した場合は防露巻きを省略することができる。

2.横型ルーフドレイン

横型RDは床スラブを貫通せずに横引きで外部縦管と接続するため、室内への漏水リスクは少ない。
横型RDも水下コンクリート天端より40mm下げて床コンクリートに打ち込む。
RD下の梁は、RDと干渉しないように水下コンクリート天端より100mm下げておくことが必要である。
横型RDは縦型よりごみが詰まりやすい。
ストレーナーが高く上がったタイプを用いること。
横型RDの縦管はVP管を用いる。VU管は肉厚が薄く、耐久性に劣る。
VP管の熱伸びによって横型RD接続部に力が加わり破損する事例がある。RD接続の横引き管は鋳鉄製が望ましい。
縦管は12mピッチに伸縮継ぎ手を設ける。また、地上部で縦管を保護する必要のあるときは養生管を設ける。

3.オーバーフロー管

小面積の屋上でRDを1ヶ所しか設けない場合はオーバーフロー(OF)管を設ける。
OF管は、オーバーフローしたものがすぐにわかる位置に設ける。
OF管は、普段の雨で外壁を汚さないように内勾配(1/10)にセットする。また、鳥が巣をつくることもあるので、OF管の両端に防鳥格子を設ける。

1級建築施工管理技士 屋根・防水工事 保護アスファルト防水

建築品質 屋根・防水


005) 保護アスファルト防水

アスファルト防水は釜で溶かしたアスファルトでアスファルトルーフィングを何層にも重ねて張り付けるため、耐久性もあり、最も信頼性が高い防水である。
アスファルト防水層の上に断熱材や保護コンクリートを施工することにより、さらに耐久性が増す。

アスファルトを釜で焚くとき特有の臭気が発生するため、市街地では臭気公害になることもある。アスファルトを焚かない特殊冷工法などを検討する。

1.防水立上りは水上仕上げ面から200mm以上を確保する

屋上の保護アスファルト防水は、1/100以上の躯体勾配を確保する。
屋上のアスファルト防水で最も重要なポイントは立上り部分のおさまりである。風雨や直射日光にさらされ、防水の弱点となりやすい。
アスファルト防水の立上りは水上仕上げ面から200mm以上を確保し、上端部を防水押さえ金物で押さえ、ゴムアスファルトでシールする。パラペットはあごを設けて水を切り、押出成形セメント板等で保護しなければならない。保護アスファルト防水の立上り部を露出仕様にするのは立上り部の劣化を早めるので良くない。

2.保護コンクリートの厚さと排水溝の深さ

保護コンクリートの厚さは、直押え仕上げの時80mmとし、溶接金網(鉄線径6mm、網目寸法100mm)を入れる。排水溝は1/200以上の勾配を確保して、仕上げを行う。
排水溝の水下では40mmのモルタル厚さを確保し、その中に溶接金網(鉄線径2.6mm、網目寸法50mm)を敷き込む。排水溝の勾配代は30mm程度となるので、ルーフドレイン(RD)の間隔は12m以下で設けることになる。

( 勾配 1/200 より 200×30 = 6000mm
排水溝の水上からの振分けで12m )

3.保護コンクリートには伸縮調整目地を設ける

保護コンクリートの熱膨張によって防水層を傷めたり、パラペットを押して躯体をも傷める。保護コンクリート自体のひび割れもあり、必ず伸縮調整目地を設ける。伸縮調整目地の割付けは周辺立上り面から600mm程度の位置と、中間部は縦横間隔3m程度の位置をとする。排水溝部も含め、立上り面まで達するように設ける。

1級建築施工管理技士 屋根・防水工事 露出アスファルト防水

建築品質 屋根・防水


006) 露出アスファルト防水の注意点

露出アスファルト防水は日常歩行しない屋上にも用いられる。防水の最終表層は砂付きアスファルトルーフィングなどにする。防水の信頼性は高い。耐久性においては保護アスファルト防水に劣るが、改修などメンテナンスが容易であるという利点がある。

1.露出アスファルト防水の躯体勾配は 1/50以上

露出アスファルト防水ではアスファルトルーフィングの施工時の重なり部に水が溜まらないように、また躯体コンクリート床の直押え精度を考慮して躯体勾配を1/50以上確保する。

2.露出アスファルト防水では躯体勾配で集水する

露出アスファルト防水では排水溝部分の防水施工ができないので、躯体勾配でルーフドレン(RD)に集水する。したがって、躯体勾配においては勾配をシンプルにし、打増しを少なくするようにする。躯体勾配は1/50を基本勾配とし、集水のための寄せ勾配(補助勾配)は1/100とする。

3.露出アスファルト防水の立上り寸法は300mm確保する。

露出アスファルト防水の防水立上りは水上コンクリート天端から300mmを確保する。これは立上り部に雨水をかかりにくくし、かるアスファルト防水の施工を確実にするため。

①コンクリートのパラペットに溶融アスファルトで確実に張り付ける。
②先端を金物で押さえる。
③ゴムアスファルト系シールをする。

露出防水の立上り部で、あごを設けないときは防水押さえの金物の上に大きめの水切りを付けて納める。または笠木を被せる。

4.防水立上り高さが確保できないとき

建物の高さ制限などで立上り高さが確保できないろきは、全体でオーバーフローしてもいように納める。パラペット天端外壁際まで防水を張りあげ、金物で押さえるなどの工法を検討する。

1級建築施工管理技士 屋根・防水工事 シート防水

建築品質 屋根・防水


007) シート防水は機械的固定工法にする

シート防水は躯体床の上に防水シートを張りつける。施工は容易であるが、風圧で剥がれないこと、及びシートの接合(溶着・接着)した部分が長期にわたって水密性を保つことが重要となる。RC床では乾燥が不十分のままシートを張ると、膨れや剥離につながる。50~100m2に1ヶ所SUS製脱気装置を設ける。

1.合成高分子系ルーフィングシート防水はメンテナンスが容易

塩化ビニル系ルーフィングシートなどの高分子系ルーフィングシートを用いたシート防水は、耐候性も良くなり、施工性も良く、メンテナンスも容易であることから、多く採用されるようになった。
このシート防水は、シートの厚さが1.2~2mmと薄く、シートの接合は重ねて溶剤溶着や熱融着するため、
①シートを傷めないこと
②重ね接合部の水密性確保
③風でめくれないこと
が重要である。

2.合成高分子系ルーフィングシート防水は機械的固定工程が確実

シート防水は台風などの強風時に負圧でめくれ上がることがある。シートの接着工法は、下地の状態や施工法により接着強度にばらつきが生じるため、固定金具(ディスク)を用いた機械t的固定工法が確実である。

建築基準法告示による負の風圧力の大きさに対して固定金具の数や配置で対応でき、安全・確実である。機械的固定には固定金具にシートをかぶせた上から熱融着させる工法とシートを固定金具で固定し、その金具部分に補強シートを熱融着するなどの工法がある。
ALC板下地の場合は金具の固定アンカーが効きにくいので、試験施工で確認する。


合成高分子系ルーフィングシートの断熱防水(RC下地)


合成高分子系ルーフィングシートの断熱防水(デッキ下地)

3.臭いが少ない改質アスファルトシート防水

アスファルト防水では釜で焚いたアスファルト特有の臭気ガスが発生するため、街中ではクレームになることが多い。改質アスファルトシート防水は、アスファルトを釜で焚かないので、街中や住宅街でも安心して施工できる利点がある。
改質アスファルトシート防水はシートをバーナーで炙って表面のアスファルトを溶かしながら接着していくトーチ工法とゴムアスファルトの粘着性をもつシートを張る自着工法(冷工法)がある。

重ね幅10㎝程度で1-2層しか張らないので、重ね部のアスファルトが完全に溶けて一体になることが重要である。また、立ち上がり部や入り隅部などもアスファルトを溶かしながら張りつけるので、熟練した技術を必要とする。

4.防水は必ず水張り試験で確認する

水張り試験はルーフドレンまわりや立ち上がりコーナー部などで行うこともあるが、全面水張りとし、24時間確認を行う。

1級建築施工管理技士 屋根・防水工事 パラペット

建築品質 屋根・防水


008 )パラペットは外壁扱いに

防水を立ち上げる下地と水切りとしてのあごを総称してパラペットという。パラペットは外壁と防水の接点にあたり、雨仕舞上重要な部位である。パラペットの外壁が汚れた、クラックが入って漏水した。水が切れずに防水端部に水が廻った、保護コンクリートの膨張でパラペットが外壁から押し出されたなどの事例がある。

1.パラペットはあご先端までを外壁扱いにする

外壁は、通常クラックが入りにくいようにダブル配筋で180mm程度の厚さを確保している。パラペットも同じように、クラックが入って雨水が侵入しないように、あごの先端までが外壁という扱いで、ダブル配筋し、3〜4m程度ごとにひび割れ誘発目地を設ける。


パラペット

2.パラペットの天端は防水する

パラペット天端は雨に叩かれ、強い日射にさらされ、屋根と同じく最も過酷な部位である。微細なクラックが入りやすく、劣化が早い。その天端を保護し、雨水を侵入させないように塗膜防水しなければならない。

3.パラペットの天端勾配は 1/10以上

パラペットの天端についた粉塵が、雨で外壁側に押し流されて外壁を汚さないように、屋上側に向けて 1/10以上の勾配を確保したい。

4.金属笠木はジョイント部の納まりを確認する

パラペットに金属笠木を取り付けることができれば、あごを省略することができる。金属笠木は笠木と笠木のジョイント部の納まりを確認する。金属笠木の熱膨張を考慮するとともに、天端のシールが切れた場合でも漏水に至らないような排水機構を設けるなど配慮が必要である。張り終い部を数ヶ所設けると、そこから外せるのでメンテナンスがしやすくなる。既製品の笠木は天端先端に水返しがあり、内外両側に水切りもある。


金属笠木(既製品)


金属笠木(製作品)


笠木ジョイント部 ディテール

5.パラペットは屋上床と一体打ちにする

パラペットを屋上床面で打ち継ぐと、その打ち継ぎ目地からの漏水だけでなく、防水の保護コンクリートが膨張して躯体パラペットを押し出すこともある。したがって、屋上パラペットは下階と一体打ちとし、打継ぎを設けないことが原則である。どうしても打継ぐ場合は、屋上水上コン天より100mm上がって位置で打ち継ぐ。

1級建築施工管理技士 屋根・防水工事 屋上断熱防水

建築品質 屋根・防水


009) 屋上断熱防水は油断大敵

屋上スラブは昼間の日射熱によって躯体が蓄熱し、直下階は熱負荷が大きくなる。躯体は熱膨張し、最上階妻壁にクラックを発生させる。アスファルト防水自体も熱による膨張収縮で劣化する。屋上断熱防水はそうしたマイナスを小さくする。すなわし最上階を快適な空間にし、防水の耐久性を高め、躯体に対する熱影響を小さくする効果がある。

1.屋上断熱防水には断熱欠損部が発生する

屋上には断熱できない部分が発生する。機械基礎、ハト小屋、ルーフドレンまわり、目隠し壁の支柱基礎などの部分などである。その断熱が欠損したままだと、スラブ下(天井裏)で結露する恐れがあるため、断熱欠損部のスラブ下には断熱を設けなければならない。
屋上に機械基礎が多い場合は、外断熱にこだわらず、内断熱の方が効率よく、効果的な場合もある。

屋上断熱防水の断熱欠損部の処置

2.ヒートブリッジ(熱橋)部は内部断熱を重ねる

ヒートブリッジとは外部の熱を内部に橋渡しする(伝える)部分で、熱橋という。外壁断熱と屋上断熱との取合い部や、屋上断熱が欠損した部分などが熱橋となる。熱橋部分は内断熱を屋上断熱に600mm程度※重なる位置まで断熱する。

※省エネルギー申請図書、住宅性能評価図書に記載した熱橋範囲の長さは確保する。
(熱橋用断熱材、部位、建築地域によって異なる。)

3.断熱防水でも鉄骨床梁が結露する

鉄骨造の屋上に鉄骨支柱を立てるとき、鉄骨支柱は鉄骨床梁から立つ。この場合支柱と床梁は外気温と同じように冷え込み、支柱位置で梁が結露する。支柱位置から両側約1mの範囲は断熱を考慮する必要がある。梁の耐火被覆が吹き付けであれば断熱性もあるが、巻き付け耐火被覆の場合は内部結露する可能性がある。

屋上鉄骨の断熱