9章 防水工事 1節 一般事項

第09章 防水工事
1節 一般事項
9.1.1 適用範囲
(a) 建築物で防水を必要とする部位は屋根、ひさし、バルコニー、外壁及び室内の水回り等である。これらの部位への防水層が必要となる。この防水層を形成するために行う工事が防水工事である。
防水工事の仕様は一般に経験と実績データによるといわれている。このことから「防水工事の仕様」は信頼性のあるものが用いられる。「標仕」に採用している仕様は材料・工法とも常に技術の進歩と実績による検証を含めて検討されたものである。このため新しい防水工法はあまり採用されていないが、これらの工法の防水性能が劣るものではない。新しい防水工法を採用する場合には、施工例等を十分検討したうえで用いるとよい。
(b)「標仕」では、メンブレン防水として、アスファルト防水、改質アスファルトシート防水、合成高分子系ルーフィングシート防水及び塗膜防水を規定している。また、地下構造物を対象とした防水としてケイ酸質系塗布防水を規定している。更に、目地防水として、不定形弾性シーリング材を用いたシーリングの規定がある。
(c) メンブレン防水工事は、不透水性被膜を形成することにより防水するものである。選定に当たっては建物の用途、規模、構造、気候及び施工条件を考慮する必要がある。更に、保全のしやすさ、耐久性等も併せて検討することが大切である。メンブレン防水層の種別選定の目安を表9.1.1に示す。
(d) ケイ酸質系塗布防水工事は、コンクリート表面にケイ酸質系塗布防水材を塗布し、その生成物でコンクリートの毛細管間隙を充填し、防水性能を付与するものである。選定に当たっては部位、用途等を考慮し、更に下地の状態に十分な配慮を行い適用する必要がある。ケイ酸質系塗布防水の適用部位は「標仕」表9.6.1を参照されたい。
(e) シーリング工事は不定形弾性シーリング材を用いて部材の接合部等を充填するものである。シーリング材の種類は被着体に適応するものを選定する。シーリング防水の種別選定の目安は7節を参照されたい。
9.1.2 基本要求品質
(a) 防水工事及びシーリング工事に使用する材料の品質は主としてJISによるものとしており、このJISに適合することの証明方法は1章4節に示すとおりである。 JISのない材料にあっては、主要な材料製造所の指定する製品としており、この指定された製品であることの確認ができる資料を提出させることによって証明ができるようにする。
(b) 防水工事及びシーリング工事は、使用する材料の品質規定だけでなく、指定材料により防水層等を構成する工程についても、官庁営繕工事の実績により「標仕」に詳細に定めている。「所定の形状及び寸法」とは出来上がった状態に対する要求であるが出来形の確認として完成した防水層を切り取ることを要求しているわけではない。品質はプロセスによってつくり込まれるという考え方に立って.定められた材料を定められた手順で施工することで結果として所定の形状及び寸法を確保するようにする。具体的には、このための管理項目、「標仕」で定める以外の詳細な手順を明確にし、プロセスの途中における施工の良否の判定基準及びこれらの限度を超えた場合の処置方法を「品質計画」において提案させるとよい。
完成した防水層やシーリングは、防水上重要あるだけでなく、出来形として見え掛り面に表れてくることから、意匠上も重要になる。このことを踏まえて「所要の仕上り状態」とは、防水機能を果たす部位としての寸法及び形状を満足するだけでなく、見え掛りとなる部分については、取り合う仕上材料とのバランスを考慮して出来形の許容範囲を具体的に定め、これを確実に実施するための管理を行うと考えればよい。
(c) 「標仕」9.1.2(a)(3)、(b)(3)でいう「漏水がない。」とは、例えば、屋上の防水の場合等に水張り試験を行って確認することを要求しているわけではなく、漏水のない品質をプロセスでつくり込むという考えが重要である。つまり、(a)及び(b)と関連して、防水工事及びシーリング工事の施工プロセスをいかに管理するかを具体的に「品質計画」で提案させ、これを実施した結果として、防水工事の基本である漏水のない建物ができると考えればよい。
9.1.3 施工一般
(a) 施工時の気象条件
(1) 防水層の施工の良否は、施工時の気象条件に大きく左右されるので十分注意する必要がある。次の場合は施工を中止する。
(i) 気温が著しく低い場合
(ⅱ) 降雨・降雪等のおそれがある場合
(ⅲ) 降雨・降雪等のあとで、下地が十分乾燥していない場合
(ⅳ) 強風及び高湿の場合
(2) 施工時の降雨、降雪に対する処置
防水施工中、降雨・降雪のおそれが生じた場合には一時中止し、既に施工した防水層について必要な養生を行う。
(b) 施工の各段階における監督職員の検査
本来期待する防水機能は、材料と工法の選択により決まるものであるが、更には、施工段階の合理的な品質管理によってつくり込まれるものである。
したがって、使用する材料の確認だけでなく、実際の施工の各段階における適切な時期に、適切な作業が行われていることを確認することが重要である。
このため「標仕」9.1.3(b)では、防水層の施工は随時検査を行うことを規定している。
(c) 防水層施工後は、機材等によって防水層を損傷しないように注意するとともに、他の工種の作業員等が防水層に上がらないようにする。やむを得ない場合は必要な養生を行う。
表9.1.1 メンブレン防水層種別選定の目安
表9.1.1_メンブレン防水層種別選定の目安.jpeg

9章 防水工事 2節 アスファルト防水

第09章 防水工事
2節 アスファルト防水
9.2.1 適用範囲
(a) 「標仕」で取り扱うアスファルト防水は、いわゆる積層式熱工法によるものである。わが国においても、20世紀初めには陸屋根に導入されたといわれる極めて歴史の古い防水工法であるが、防水の主体をなすアスファルトやアスファルトルーフィング類は、建築構法の変化に対応して改質・改良が加えられ、現在においても最も信頼性の高い工法とされている。
アスファルト防水熱工法は、アスファルトとルーフィング類を交互に数層重ねて密着し防水層を構成するもので、通常、6 ~ 10mm程度の厚さに仕上げられる。一般にシート防水層、塗膜防水層とともにメンブレン(膜)防水層と称されている。
この工法の特徴は、溶融アスファルトによってルーフィングを何枚か積層するという点にあり、このことが水密性に対する信頼を得る最大の理由となっている。
更に、ルーフィングの組合せと層数を変えることによって、要求レベルに応じた防水性能をもたせることが可能であり、建物の種類と部位、耐用年数に対応して、適切な防水層を選択することができる。
平成25年版「標仕」では、改質アスファルトルーフィングシート類を併用する工法及び屋根露出防水絶縁断熱工法が採用された。これらは、従来のアスファルト防水の信頼性を維持して少層化が可能で、施工時のCO2削減、省資源及び煙・臭気対策や建築物使用時の省エネルギー等の環境対応の促進並びに工期短縮及び耐久性確保の両立を目的とした工法として、近年、多く採用されているものである。
従来の溶融アスファルトを用いた熱工法以外のアスファルト防水の実績が増加しているが、これらについては 9.8.1を参照されたい。
(b) 作業の流れを図9.2.1に示す。
図9.2.1_アスファルト防水工事の作業の流れ.jpeg
図9.2.1 アスファルト防水工事の作業の流れ
(c) 準備
(1) 設計図書の確認は、防水の種類、範囲(面積)、箇所等について行うとともに、関係図書(設計図、特記仕様、標準仕様書、建築工事標準詳細図、公共建築設備工事標準図等)との照合を行い、特に端部の納まり、立上り寸法、複雑な箇所の納まり、防水層貫通配管等について検討し、施工計画書、施工図の作成について備える。
(2) 施工業者の決定に当たっては、工事実績等を検討し、工事の内容、規模等に応じ、適正かどうかを判断する。
なお、設計図書に指定されている場合は、その適否を確認する。
また、(-社)全国防水工事業協会は、防水工事の基本要求品質を確保する目的で、平成15年度から防水工事の施工管理に関して、次のような防水施工管理技術者の認定制度を実施しているので参考にするとよい。
(i) 防水施工管理技術者I種(屋根・屋上、屋内、水槽類、地下等の防水工事)
(ⅱ) 防水施工管理技術者Ⅱ種(外壁の防水工事)
(3) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
① 工程表(箇所別,防水の種類別の着工、完成等の時期)
② 施工業者名、作業の管理組織
施工範囲及び防水層の種類
工法(下地を含む)
材料置場
⑥ アスファルト溶融がまの設置場所及び構造
⑦ 消防法による消防署への届出
排水勾配
コンクリート打継ぎ箇所における処置
立上りの構造,納まり
ルーフドレン回り、出入口回り、排水管(防水層貫通管)及び衛生設備(便器・浴槽その他)の納まり
保護コンクリートの目地割り及び目地の構造並びに仕上げ材料エキスパンションの構造と防水の納まり
異種防水層接続部の処置
品質管理、基本要求品質の確認方法等
(d) 用語の説明
・プライマー
防水層と下地をなじみよく密着させる目的で、下地に塗布する液状の材料
・ルーフィング
防水層を形成するために用いるシート状の材料
・流し張り
溶融アスファルトをひしゃく等で流しながら、ルーフィングを張り付けること。
・増張り
隅、角、ドレン回り、下地コンクリートの打継ぎ部等に、補強のためにルーフィングを張り増すこと。
・目つぶし塗り
網状アスファルトルーフィングの目をつぶすように、溶融アスファルトをはけで塗り付けること。
・絶縁用シート
防水層と保護コンクリート又は断熱材と保護コンクリートの間に設ける絶縁・養生のためのシート
・脱気装置
下地面の湿気を排出させる装置
・防水層の「立上り」と「立下り」
「標仕」及び本書の9章[防水工事]では、屋根防水の防水層の立上り・立下りは「立上り」で統一する。「立下り」は地下の外壁の防水等に使用する。
・出隅
2つの面が出会ってできる凸状の連続線
・入隅
2つの面が出会ってできる凹状の連続線
・出入隅角
出隅・入隅どうし又は相互が出会う箇所
・「出隅・入隅」と「立上りの出隅・入隅」
「標仕」及び本9章[防水工事]では、パラペット等の立上りの水平方向の隅を単に「出隅・入関」といい、それと区別するために垂直方向の隅(コーナー部等)を「立上りの出隅・入隅」という。

9.2.2 材 料 
(a) アスファルトプライマー
(1) アスファルトプライマーはブローンアスファルト等を揮発性溶剤に溶解したもの、あるいはエマルションタイプのアスファルトプライマー(水性アスファルトプライマー)で常温で毛ばけ塗り又はゴムばけ塗りが容易にできる液体である。
アスファルトプライマーを防水下地に塗布すると,下地表面に付着したアスファルト皮膜を形成し、次の工程における溶融アスファルトとの接着を良くする。水性アスファルトプライマーは、脱有機溶剤に対する社会的要請や、火災、人体等に対する配慮から、従来の溶剤タイプに代えて使用される場合が多い。
通常の製品の場合、8時間以内に乾燥するが、気象条件や下地乾燥条件等により遅れる場合があるので、アスファルトプライマーを塗布し、翌日に次の工程の施工を行うのが一般的である。
揮発性溶剤には一般にミネラルスピリット等が使用されており、灯油等の揮発の遅い溶剤を加えたり、水性アスファルトプライマーに水を必要以上に加えて使用すると、乾燥を遅らせ、防水層のふくれを起こすことがあるので注意する。
(2) アスファルトプライマーはアスファルトルーフィング類製造所の指定する製品とされている。
(b) アスファルト
(1) アスファルトはJIS K 2207(石油アスファルト)の防水工事用アスファルトに適合するものを用いる。
種類は表9.2.1のとおり1種~ 4種に区分されているが、「標仕」では平成22年版から3種を使用することと規定されている。これは、防水工事用アスファルト4種が、設備の老朽化等の理由により平成21年度で製造が停止され、国内での調逹が不可能になったためである。
表9.2.1 防水工事用アスファルトの品質(JIS K 2207:2006)
表9.2.1_防水工事用アスファルトの品質(JIS K 2207_2006).jpeg
従来、アスファルトの材料的特性として、3種は一般的に温暖地域に適し、4種は一般的に寒冷地域に適するとされていた。しかし、防水工事用アスファルトの実態調査によると「標仕」を適用している工事以外では、寒冷地域においても、3種アスファルトや性能的に3種に近い環境対応低煙低臭型工事用アスファルトが多用されており、その後の経過観察においても、耐久性能に支障がないことが確認されている。また、フラースぜい化点はその値が低いものほど低温特性の良いアスファルトといえるが、3種アスファルトのフラースぜい化点は4種アスファルトの規格値に近いものが一般的に製造されている。
(2) 針入度指数とフラースぜい化点は、防水工事用アスファルトの性状を表す値である。
針入度指数とは、アスファルトの軟化点と25℃における針入度から計算によって求められる値であって、数値が大きいほど、広い温度範囲において軟化あるいは硬化が起こりにくいアスファルトである。
フラースぜい化点とは、フラースぜい化点試験器によって得られる測定値で、低温時におけるアスファルトのぜい化温度を示す。その値の低いものほど、低温特性の良いアスファルトといえる。
(3) 市街地では、周辺環境への配慮や作業環境の改善等のため、JIS 3種アスファルトにおいても、低煙・低臭タイプが使われている。最近では、更に、低煙・低臭に対する要求が高まってきており、そのために、JIS規格品外ではあるが、環境対応低煙低臭型防水工事用アスファルトが開発され、使われるようになってきた。このアスファルトは、溶融施工温度を更に低温にすることで臭い、煙を大幅に低減したものである(図9.2.2参照)。
図9.2.2_発煙量(発煙係数).jpeg
図9.2.2 発煙量(発煙係数)
(光量測定法による測定例)
図9.2.3_温度・粘度曲線.jpeg
図9.2.3 温度・粘度曲線
(回転粘度計による測定例)
図9.2.3の温度・粘度曲線からも分かるように、環境対応低煙低臭型防水工事用アスファルトでは約20℃も低い温度でJIS 3種アスファルトと同程度の溶融粘度になるので、従来のように温度を上げる必要がなく結果的に煙や臭いの発生が少なくなっている。
表9.2.2に環境対応低煙低臭型防水工事用アスファルトの品質の例を示す。しかしながら、低煙・低臭タイプのアスファルトでも、JIS 3種アスファルトと同様に、施工時の煙や臭いの発生をより少なくするためには、アスファルト溶融時の温度管理が重要であり、また、図9.2.9に示した「改良型無煙がま」や「アスファルト溶融保温タンク」の使用が有効である。
表9.2.2 環境対応低煙低臭型防水工事用アスファルトの品質の例
表9.2.2_環境対応低煙低臭型防水工事用アスファルトの品質の例.jpeg
(c) アスファルトルーフィング類
(0) アスファルトルーフィング類の製法及び種類を図9.2.4に示す。
図9.2.4_アスファルトルーフィング類の製法及び種類.jpeg
図9.2.4 アスファルトルーフィング類の製法及び種類
(1) アスファルトルーフィングの種類及び品質は、JIS A 6005(アスファルトルーフィングフェルト)に表9.2.3及び表9.2.4のように定めらている。
通常、アスファルトルーフィング1500が用いられる。
アスファルトルーフィングは、古紙、パルプ、毛くず等の有機質繊維のフェルト状シートにアスファルトを浸透させ被覆して、表裏面に鉱物質粉未を散布し冷却後、規定の長さに切断して1巻としている。
表9.2.3 アスファルトルーフィングの種類(JlSA6005:2005)
表9.2.3_アスファルトルーフィングの品質(JIS A 6005_2005).jpeg
表9.2.4 アスファルトルーフィングの品質(JIS A 6005:2005)
表9.2.4_アスファルトスーフィングの品質(JISA6005_2005).jpeg
(2) 砂付ストレッチルーフィング
(i) 砂付ストレッチルーフィングは、「標仕」9.2.2 (c)(2)では,JIS A 6022によると定められている。
(ⅱ) 一般に、保護コンクリートのない屋根防水の最上層に仕上げ張りとして用いられる。隣接ルーフィングとの重ね部となる表面の片側100mmを除いて砂粒を密着させ、残りの表裏面に鉱物質粉末を付着させたものである。
JIS A 6022に定められている種類並びに品質を表9.2.5及び表9.2.6に示す。
表9.2.5 ストレッチアスファルトルーフィングフェルトの種類及び製品の抗張積の呼び(JlS A 6022:2011)
表9.2.5_ストレッチアスファルトルーフィングフェルトの種類及び品質の抗張積の呼び(JISA6022_2011).jpeg
表9.2.6 ストレッチアスファルトルーフィングフェルトの品質(JIS A 6022:2011)
表9.2.6_ストレッチアスファルトルーフィングフェルトの品質(JISA6022_2011).jpeg
(3) 網状アスファルトルーフィング
網状アスファルトルーフィングの品質は、JIS A 6012(網状アスファルトルーフィング)で原反の種類により表9.2.7のように3種類に区分されているが、「標仕」9.2.2(c)(3)では、合成繊維ルーフィングを使用するように定められている。
網状ルーフィングは、引張り、引裂き等の強度が大きく、一般に原紙を基材としたルーフィングと比べてなじみがよいので、立上り防水層の張りじまい、貫通配管回り等の増張りに用いられる。
表9.2.7 網状アスファルトルーフィングの品質(JIS A 6012 : 2005)
表9.2.7_網状アスファルトルーフィングの品質(JISA6012_2005).jpeg
(4) 砂付あなあきルーフィング
(i) 砂付あなあきルーフィングは、防水層と下地を絶縁するために用いるルーフィングで、全面に規定の大きさのあなを一定間隔にあけたものである。
(ⅱ)「標仕」9.2.2(c)(4)では,JIS A 6023(あなあきアスファルトルーフィングフェルト)に規定されている「砂付あなあきルーフィング」を用いることとしている。
JIS A 6023に定められている種類並びに品質を表9.2.8及び表9.2.9に示す。
表9.2.8 あなあきアスファルトルーフィングフェルトの種類及び製品の単位面積質量の呼び(JIS A 6023: 2005)
表9.2.8_あなあきアスファルトルーフィングフェルトの種類及び製品の単位面積質量の呼び.jpeg
表9.2.9 あなあきアスファルトルーフィングフェルトの品質(JIS A 6023 :2005)
表9.2.9_あなあきアスファルトルーフィングフェルトの品質(JISA6023_2005).jpeg
(5) 改質アスファルトルーフィングシート
(i) 「標仕」9.2.2(c)(5)では改質アスファルトルーフィングシートは、JIS A 6013(改質アスファルトルーフィングシート)により、種類及び厚さは特記によることとしている(「標仕」表9.2.3.表9.2.4及び表9.2.8参照)。特記がなければ、改質アスファルトルーフィングシートは、非露出複層防水用R種又は露出防水断熱工法の最上層に使用する場合は露出複層防水用R種を使用することとし、厚さは「標仕」表9.2.3、表9.2.4及び表9.2.8によるものとされている。ただし、「標仕」で規定された厚さは、JIS A 6013での表示値を示しており、JIS A 6013では厚さの許容差はプラス側は規定せず、マイナス側は5%まで認められている。
(ⅱ) 改質アスファルトルーフィングシートR種は、合成繊維を主とした多孔質なフェルト状の不織布原反に、アスファルト又は改質アスファルトを浸透させ、改質アスファルトを被覆したものである。
(ⅲ) 改質アスファルトルーフィングシートは、腐朽、変質しにくく、ストレッチルーフィングと比較しても低温で硬化、ぜい化しにくく、伸び率も大きいので破断しにくいなど、種々の優れた特性をもっている。
JIS A 6013に定められている種類及び品質を表9.2.10から表9.2.12までに示す。
(6) 部分粘着層付改質け付改質アスファルトルーフィングシート
(i) 「標仕」9.2.2(c)(6)では、部分粘着層付改質アスファルトルーフィングシー トは、JIS A 6013により、種類及び厚さは特記によることとしている(「標仕」表9.2.5、表9.2.6、表9.2.7及び表9.2.8参照)。特記がなければ、改質アスファ ルトルーフィングシートは、非露出複層防水用R種を使用することとし、厚さは「標仕」表9.2.5、表9.2.6、表9.2.7及び表9.2.8によるものとされている。ただし、「標仕」で規定された厚さは、JIS A 6013での表示値を示しており、 JIS A 6013では厚さの許容差はプラス側は規定せず、マイナス側は5%まで認められている。
(ⅱ) 部分粘着層付改質アスファルトルーフィングシートは、合成繊維を主とした多孔質なフェルト状の不織布原反に、アスファルト又は改質アスファルトを浸透させ、改質アスファルトを被覆したものである。粘着(常温)工法で使用する部分粘着層付改質アスファルトルーフィングは、最下層に粘着力を有する粘着層をスポット状又はストライプ状に配して、粘着層のない部分を通気層として利用する。また、使用前のブロッキングを防止するはく離紙又ははく離フィルムを配したもので、使用時にははく離紙又ははく離フィルムをはがしながら、下地対象面に転圧等を併用して張り付けるものである。粘着層の品質はアスファルトルーフィング類製造所ごとに異なるが、その接着強度は強風による飛散、浮き等が生じないようにその粘着層の面積比が決められている。そのため、「標仕」では.粘着層はアスファルトルーフィング類製造所の指定する製品とされている。風圧力に関しては、建築基準法施行令第82条の4の規定に基づき「屋根ふき材及び屋外に面する帳壁の風圧に対する構造耐力上の安全性を確かめるための構造計算の基準を定める件」(平成12年5月31日建設省告示第 1458号)により算定する。
なお、同告示に基づく、屋根葺材に加わる風圧力の計算例は9.4.4 (b)(11)を参照されたい。
(ⅲ) 改質アスファルトルーフィングシートは、腐朽、変質しにくく、ストレッチルーフィングと比較しても低温で硬化、ぜい化しにくく、伸び率も大きいので破断しにくいなど、種々の優れた特性をもっている。
JIS A 6013に定められている種類及び品質を表9.2.10から表9.2.12までに示す。
表9.2.10 改質アスファルトルーフィングシートの用途による区分及び厚さ(JIS A 6013 : 2005)
表9.2.10_改質アスファルトルーフィングの用途による区分及び厚さ(JISA6013_2005).jpeg
表9.2.11 改質アスファルトルーフィングシートの材料構成による区分(JIS A 6013 : 2005)
表9.2.11_改質アスファルトルーフィングの材料構成による区分(JISA6013_2005).jpeg
表9.2.12 改質アスファルトルーフィングシートの品質(JIS A 6013 : 2005)
表9.2.12_改質アスファルトルーフィングシートの品質(JIS A 6013_2005).jpeg
(7) ストレッチルーフィング
(i) ストレッチルーフィングは、「標仕」9.2.2 (c)(7)では、JIS A 6022(ストレッチアスファルトルーフィングフェルト)によるストレッチルーフィング1000を使用するように定められている。
(ⅱ) ストレッチルーフィングは合成繊維を主とした多孔質なフェルト状の不織布原反に、防水工事用アスファルトの3種又は4種を浸透させ被覆して、その表裏面に鉱物質粉末を付着させたものである。したがって、腐朽・変質しにくく、低温でも硬化・ぜい化せず、伸び率が大きいので破断しにくいなど、種々の優れた特性をもっている。また、下地とのなじみがよく施工性の良いルーフィングである。
JIS A 6022に定められている種類並びに品質を表9.2.5及び表9.2.6に示す。
(d) ゴムアスファルト系シール材
(1) ゴムアスファルト系シール材は、防水層張りじまいのシーリングに用いたり、防水層貫通配管回り等に塗り付けるものである。
(2) ゴムアスファルト系シール材は、ゴムアスファルトを原料としたもので、従来のアスファルトルーフコーチングに代わる材料である。耐候性、接・粘着性、低温可とう性、垂れにくさ等、シール材としての優れた特性をもっている。
(3) ゴムアスファルト系シール材はアスファルトルーフィング類製造所の指定する製品とされている。
(e) 絶縁用テープ
絶縁用テープは、紙、合成樹脂等のテープ状のものに、接着剤等を付着させたもので、50mm幅のものが用いられる。
ALCパネルの支持部の目地、PCコンクリート部材の継手目地、コンクリート打継ぎ部等の動きが予想される部分に張り付け、防水層に直接応力が及ばないようにする。
(f) 押え金物
押え金物は防水層の末端部に使用し、防水層のずれ落ち・ロあき・はく離等の防止に用いられるもので、材料は防水層の末端部を機械的に固定するのに十分な剛性と耐久性をもち、更には腐食等の外観上の問題点を考慮して、ステンレス鋼やアルミニウム製のものが一般に使用されている。形状は防水層末端部の形状に応じたものを選ぶ必要があるが、一般的にはアングル状のものあるいは、リブ付きのフラットバー等が用いられる。
(g) 成形キャント材
成形キャント材は、立上り隅を、45度に面取りするために用いる既製の材料で、耐熱型のプラスチックフォームを主材として傾斜面70mm程度、長さ1m前後としたもので、ルーフィング類製造所の指定するものとする。
(h) 屋根保護防水断熱工法の断熱材
(1) 屋根保護防水断熱工法に使用される断熱材には、JIS A 9511(発砲プラスチック保温材)に規定されているA種押出法ポリスチレンフォーム保温板3種b(表9.2.13参照)、A種ビーズ法ポリスチレンフォーム保温板1号等があり、これらの材料の特徴は(i)及び(ii)のとおりである。
(i) A種押出法ポリスチレンフォーム保温板
A種押出法ポリスチレンフォーム保温板(スキンあり)は、圧縮強度が大きく、耐圧縮クリープ性に優れ、また、透湿性・吸収性が小さいため安定した断熱性能を維持する。
(ii) A種ビーズ法ポリスチレンフォーム保温板
A種押出法ポリスチレンフォーム保温板に比べて、一般に圧縮強度が小さく、熱伝導率が大きいが、割れ、欠けに強く圧縮復元性が大きい。
(2) 「標仕」9.2.2(h)では、断熱材の材質及び厚さは特記により、特記がなければ材質は、A種押出法ポリスチレンフォーム保温板3種b(スキンあり)を使用することとしている。
(3) ポリスチレンフォームは、防水層と保護コンクリートの間に設けるいわゆる USD工法に使用される。A種押出法ポリスチレンフォーム保温板3種b(スキンあり)は、熱伝導率、透湿抵抗、耐圧縮性等の点で、「標仕」における防水層種別(AI-1、AI-2及びAI-3)(BI -1、BI-2及びBI-3)の工法に適した断熱材である。
(4) 断熱材の必要厚さは、熱伝導率等から計算により求められる。
表9.2.13 押出法ポリスチレンフォーム保温板の特性(JIS A 9511 : 2009)
表9.2.13_押出法ポリスチレンフォーム保温板の特性(JISA9511_2009).jpg
(i) 屋根露出防水断熱工法の断熱材
(1) 「標仕」9.2.2 (i)では,断熱材の材質及び厚さは特記により、特記がなければ材質は、JIS A 9511によるA種硬質ウレタンフォーム保温板2種1号又は2号(表 9.2.14参照)の透湿係数を除く規格に適合するものを使用することとしている。
(2) この材料は、寸法安定性がよく、かつ、アスファルトとなじみのよい2枚の面材の間に、サンドイッチ状に発泡させた耐熱型のポリウレタン系断熱材である。
特に、熱伝導率が小さく耐熱性に優れている。しかし、透湿係数がJIS規格に適合するものは市販されておらず、また、断熱材の突付け部からの水蒸気の移動もあることから、屋根露出防水断熱工法で内部結露の発生を抑える必要がある場合は防湿層を配置することとされている。
(3) 断熱材の必要厚さは、熱伝導率等から計算により求められる。
断熱材の厚さが50mmを超える場合は、防火地域又は準防火地域においては建築基準法第63条の規定に、また、特定行政庁が防火地域及び準防火地域以外の市街地について指定する区域内においては建築基準法第22条の規定に、それぞれ適合する展根構造としなければならない。
表9.2.14 A種硬質ウレタンフォーム保温板の特性(JIS A 9511 : 2009)
表9.2.14_A種硬質ウレタンフォーム保温板の特性(JIS A 9511_2009).jpeg
(j) 絶縁用シート
絶縁用シートは、防水層と保護コンクリートの間又は断熱材と保護コンクリートの間に設ける絶縁及び養生のためのシートで、「標仕」9.2.2 ( j )では特記がなければ、屋根保護防水工法の場合はポリエチレンフィルム(0.15mm以上)、屋根保護防水断熱工法の場合はフラットヤーンクロスを用いることになっている。フラットヤーンクロスは、ポリブロピレン、ポリエチレン等の平織りのシート(70g/m2程度)としている。
(k) 成形伸縮目地材
成形伸縮目地材は、ポリエチレン等の高密度発泡体よりなり、キャップ側面に付着層又はアンカ一部を設けたもので、「標仕」表9.2.1に規定する品質のものとしている。従来の注入目地材は、外観、耐久性とも施工に左右される面が大きく、現在ではほとんど使用されていないため、「標仕」では成形伸縮目地材のみ規定している。
なお、(-社)公共建築協会では「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4 (e)参照)において「標仕」の品質基準に基づき、成形伸縮目地材の評価を行っているので、その結果を参考にするとよい。
(l) 成形緩衝材
成形緩衝材は、保護コンクリートの動きによる立上り防水層の損傷を防止するために立上り隅に取り付けるもので、アスファルトルーフィング類製造所の指定するものを用いる。
(m) 保護コンクリート
「標仕」ではコンクリートの調合は、6章14節[無筋コンクリート]によるものとされている。また、保護コンクリート内にひび割れ防止のために敷設する溶接金網(鉄線径6mm、網目寸法100mm)は、すべての保護コンクリートに敷設することとされている。
(n) 乾式保護材
立上り部乾式保護工法に用いる乾式保護材(ボード)は、セメント系成形板、アルミニウム板等で構成された、既製ボード状立上り部保護材で、防水層立上り部を日射等から有効に遮る保護機能を有するものとする。
また、その取付け工法は防水層立上り部の点検維持管理が容易な機構のものとする。
「標仕」9.2.2(n)では、その適用は特記としている。
なお、乾式保護材については、(-社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4 (e)参照)において、評価基準を定めて評価を行っているので参考にするとよい。
(o) れんが
立上り部の保護をれんが押えとする場合に使用するれんがには、主として粘土を原料として焼成した普通れんがと、セメントモルタルでれんが状に成形したモルタルれんががあるが、「標仕」では、特記がなければ、普通れんがを用いるものとされている。
(p) メタルラス
主に室内のモルタル保護の左官工事の塗り下地に使用するメタルラスには、平ラス、こぶラス、波形ラス及びリブラスの4種類があるが、「標仕」では、特記がなければ、JIS A 5505(メタルラス)の平ラス2号を用いるものとされている。
(q) モルタル
モルタルは細粒の骨材である砂と結合材としてのセメントを、適用部位により「標仕」表9.2.2に示された調合のセメントモルタルを使用するものとされている。
(r) ルーフドレン
(1) ルーフドレンは「標仕」13章5節により、本体、防水層押え及びストレーナの材質をJIS G 5501(ねずみ鋳鉄品)のFC150又はFC200とし、「標仕」表 13.5.2によるものとされている。
(2) 平成25年版「標仕」では.ルーフドレンのつばは、水密性の確保のため、防水層の張掛け幅が100mm以上確保できる形状のものとされた。
(s) 防水材料の保管と取扱い
(1) 揮発性溶剤を使用したアスファルトプライマーやゴムアスファルト系シール材は、可燃性で低沸点の溶剤を使用しているので、引火しやすく爆発の危険性がある。したがって、密封状態で保管し、火気に十分注意することが必要である。
大量の保管又は取扱いは、消防法第3章(危険物)により処置する。
(2) アスファルトプライマーやゴムアスファルト系シール材は、使用している溶剤による皮膚のかぶれ、密閉された場所における中毒等、健康を害する場合があるので、換気をするなど作業環境には十分注意する。
(3) アスファルトを屋外に保管する場合は、雨露に当たらないように、また、土砂で汚染されないように、シートを掛けるなどの処置をする。
雨露等に当たったアスファルトを溶融すると気泡が発生し、塗った皮膜は多孔質になり、防水性能を損なうおそれがある。
なお、袋入りアスファルトを積み重ねるときは、10段を超えて積まないようにして荷崩れに注意する。
(4) ルーフィング類は、吸湿すると施工時に泡立ち、耳浮き等接着不良になりやすいので、屋外で雨露にさらしたり直接地面に置いたりしないで、屋内の乾燥した場所にたて積みにしておく。砂付ストレッチルーフィング等は、ラップ部(張付け時の重ね部分)を上に向けてたて積みにする。また、ラップ部保護のため2段積みにしてはならない。

9.2.3 防水層の種類、種別及び工程
(a) 防水層の種別
(1) 「標仕」9.2.3では、アスファルト防水層の種別を次のように定めている。
平成25年版「標仕」では改質アスファルトルーフィングシートの流し張り及び部分粘着層付改質アスファルトルーフィングシートを併用する工法が追加規定された。これらの改質アスファルトルーフィングシートを併用する工法は、従米の防水性能とその耐久性を維持してルーフィング類の層数を少層化したもので、使用する防水工事用アスファルトの使用量を削減することが可能な工法である。
(i) 屋根保護防水密着工法  (A-1、A-2、A-3)
(ⅱ) 屋根保護防水密着断熱工法(AI-1、AI-2、AI-3)
(ⅲ) 屋根保護防水絶縁工法  (B-1、B-2、B-3)
(ⅳ) 屋根保護防水絶縁断熱工法(BI-1、BI-2、BI-3)
(v) 屋根露出防水絶縁工法  (D-1、D-2、D-3、D-4)
(ⅵ) 屋根露出防水絶縁断熱工法(DI-1、DI-2)
(ⅶ) 屋内防水密着工法    (E-1、E-2)
(2) 密着工法と絶縁工法
(i) 密着工法((1)の(i)、(ⅱ)及び(ⅶ))
下地面に防水層を全面にわたって密着張りとする工法で、従来から屋上防水や室内防水に多く用いられており、最も信頻性の高い工法の一つである。
平成25年版「標仕」では、屋根保護防水密着工法((1)の(i)及び(ii))で従来のアスファルトルーフィング1500及びストレッチルーフィング1000のアスファルト流し張り2層を改質アスファルトルーフィングシートの流し張り1層で代替する少層化工法が A-3として規定された。
(ii) 絶縁工法((1)の(iii)、(iv)、 (v)及び(vi))
① 通常、屋上防水に用いられる工法で、一般部分は防水層を下地面に全面密着でなく部分接着とし、周辺部及び立上り部を密着張りとする。この工法で施工することにより、下地のき裂等によって生ずる防水層の破断を防ぐことができる。
また、屋根露出防水絶縁工法では、日射によって気化・膨張した水分が絶縁層の間を自由に拡散・移行することができる。しかし、脱気装置を設けることにより、ふくれを低減できるため脱気装置を併用して外気に拡散させる方法を取ることが標準とされている。「標仕」9.2.3(5)及び(6)では、その種類及び設置数量は、特記がなければルーフィング類製造所の指定するものとしている。
② 絶縁工法には次のような種類があるが、「標仕」9.2.3 (3)~(6)では節易な方法で確実に部分接着ができる従来の砂付あなあきルーフィングと、平成 25年版からは、部分粘着層付き改質アスファルトルーフィングシートによる工法を指定している。砂付あなあきルーフィングを用いる場合は、砂付あなあきルーフィングを敷き並べたのち、次工程の流し張りの際に使用する防水工事用アスファルトが砂付あなあきルーフィングのあなから流れ出ることにより、下地と部分的に接着する。その分、次工程で使用するアスファルトの量は、通常の流し張りで使用する量よりも多く、1.2kg/m2としている。
1) 防水層の最下層にあなあきルーフィングを用いる方法(図9.2.5(イ)参照)
2) 溝付き、突起付き又は部分粘着層付きルーフィングシートを用いる方法(図9.2.5(ロ)参照)
3) ルーフィングやアスファルトパネルを点張り、線張り、袋張り等によって下地に部分密着させる方法
図9.2.5_絶縁工法(砂付あなあきルーフィング).jpeg
(イ) 砂付あなあきルーフィングの場合
  図9.2.5_絶縁工法(部分粘着層付改質アスファルトルーフィングシート).jpeg
(ロ) 部分粘着層付改質アスファルトルーフィングシートの場合
図9.2.5 絶縁工法
③「標仕」では、絶縁工法の工程2に砂付あなあきルーフィングを用いる場合は、「立上り部は、砂付あなあきルーフィングを省略する。」とされている。これは、砂付あなあきルーフィングは、一般平場部で防水層と下地を絶縁するためのもので防水性能を付与するものではないとの考えから、それまで 立上り部には砂付あなあきルーフィングに代えてストレッチルーフィングを密着張りしていたが、それは省略してもよいということである(図9.2.21 参照)。
(3) 保護防水と露出防水
(i) 保護防水
保護防水とは、防水層の上にコンクリート、コンクリートブロック等の保護層を設ける防水のことをいう。これらの保護層を設ける目的は、一つには、直射日光の遮断や外力による損傷の防止等によってアスファルト防水層の耐久性向上を図ることであり、もう一つの目的は、屋上を歩行可能な仕上りにして何らかの用途に供するためである。
「標仕」では、主として前者を目的として、コンクリートによる保護層を設けることとしている。
(ⅱ) 保護断熱防水
保護断熱防水は、屋根スラブの外側に防水層と組み合わせて断熱材を設ける 外断熱防水である。躯体に対する熱応力の影響、室内側の表面結露、断熱材の 内部結露、暖房停止時の室温変動等に対し、スラブの下(室内側)に断熱材を設ける方法に比べて有利な点が多く、コンクリート建築物屋根断熱の大部分で採用されている。外断熱防水には、防水層の上に断熱材を置く方法と、防水層の下に置く方法とがあるが、それぞれに適した材料と適用の選択が重要である。
「標仕」でいう断熱防水は、防水層の上に吸水性の特に小さい断熱材を設け、絶縁材シートを敷き、保護コンクリートを設けるものである。また、直射日光や外気温の高低による影響から防水層を保護する効果もある(図9.2.6参照)。
図9.2.6_屋根保護防水断熱工法.jpg
図9.2.6 屋根保護防水断熱工法
(ⅲ) 露出防水
露出防水は、最上層に比較的耐久性のある砂付ストレッチルーフィングを用いるものであるが、一般の歩行には適していない。防水層の保護や美観のためには、砂付ストレッチルーフィングの上にシルバー系やその他の着色塗料を塗り付ける。
露出防水は、補修が容易であるという利点があり、更に、コンクリート保護層等のない分、重さを軽減することができる。表9.1.1 に示すように、各種スラブ下地の屋根に、使用形態、施工性、経済性等を考慮して選定される。
平成25年版「標仕」では、防水層の保護と美観を目的として、砂付ストレッチルーフィングの上にはシルバー系やその他の着色塗料を塗布することとされた。仕上塗料の種類及び使用量は特記によるものとされている。
また、防水層押えのない露出防水では、日射によって気化・膨張した水分を、絶縁層を自由に拡散、移行させ脱気装置を併用して外気に拡散させる方法を取らなければならない。その脱気装置の種類及び設置数量は特記により、特記がなければアスファルトルーフィング類製造所の指定するものとされている。
(iv) 露出断熱防水
① 露出断熱防水は、屋根スラブの外側に防水層と組み合わせて断熱材を設ける外断熱防水である。
躯体に対する熱応力の影響、室内側の表面結露、暖房停止時の室温変動等に対し、スラブの下(室内側)に断熱材を設ける方法に比べて有利な点が多<、コンクリート建築物屋根断熱の大部分で採用されている。
② 露出断熱防水は、断熱材を防水層の下に置く方法で、特に寒冷地の場合は断熱材と防水層の間に下地の水分が透過してきて冬期に内部結面が発生する可能性がある。このため、「標仕」では、防湿層として断熱材の下にアスファルトルーフィングを流し張りした防湿層を配置している。
③ 屋根露出防水断熱工法において断熱材を併用する場合には、9.2.2 (i)の硬質ウレタンフォーム保温板を用いる。
④「標仕」においては、断熱材に防水工事用アスファルトが直接触れることで発生する気泡が経時でのふくれ発生につながらないよう、粘着層付改質アスファルトルーフィングシートを張り付けたのちに熱工法で砂付ストレッチルーフィングや露出防水用改質アスファルトルーフィングシートを流し張りして露出防水層を形成する工法が採用されている。
⑤ 平成25年版「標仕」では、防水層の保護と美観を目的として、砂付ストレッチルーフィング又は露出防水用改質アスファルトルーフィングシートの上に仕上塗料を塗布することとされた。仕上塗料の種類及び使用量は特記によるものとされている。
また、近年は高反射率塗料を仕上塗料として用いて、太陽光による防水層の温度上昇を小さくして防水層の耐用年数の向上を目指す手法も多くとられてきている。夏季における温度上昇を小さくして防水層の耐用年数を向上させることは、特に太陽光の影響を大きく受ける屋根露出防水絶縁断熱工法に有効とされている。
(b) 種別の選定
(I)通常、防水層の種別は、建物の用途、規膜、構造、気候、施工条件を考慮して「標仕」表9.2.3~表9.2.9から、更に、補修の難易耐久性等も併せて勘案して表9.1.1から選定される。
(2) 屋内防水密着工法のうちE-1については主として貯水槽、浴槽等に用いることを想定したものである。
その他の場所に用いる場合は工程3を省略することが「標仕」表9.2.9に注記されている。

9.2.4 施 工
(a) 防水層の下地
(1) 下地の状態
防水層施工前の状態について注意する事項を次に示す。
① 下地コンクリート面は、平たんで凹凸がないこと。また、鉄筋・番線等の突起物、粗骨材、モルタルのこぼれ等は防水層を損傷する原因となるので完全に除去する。特に、立上りあご下部分は、突起物や凹凸ができやすいので注意する。
仕上げの程度は、平場のコンクリート下地の場合はコンクリート直均し仕上げとし、工程を「標仕」15.3.3 (a)の(1)から(3)までとしている。また、立上りは「標仕」表6.2.4のB種のコンクリート打放し仕上げとしている。
便所、浴室等の防水層の下地は、施工精度や配管、便器の取合い等を考應してモルタル塗りとする場合は、「標仕」9.2.4 (a)(1)により図面に特記することとされている。
また、凹凸がある場合は、サンダー等で平たんにする。
② 下地は十分に乾燥していること。表面が乾燥しているように見えても、 コンクリート内部まで乾燥するには天候の状況によってかなり時間を要する。乾燥が不十分な下地に施工すると露出防水では、平場コンクリート内部の含有水分が気化・膨張してふくれが生じやすいので注意する。
③乾燥状態は、次のような方法によって判断する。
1) 高周波水分計による下地水分の測定
2) 下地をビニルシートやルーフィング等で覆い,ー昼夜後の結露の状態
3) コンクリート打込み後の経過日数
4) 目視による乾燥状態の確認
(2) 下地の形状
防水層の納まり、下地との接着、施工後の水はけ等、水密性・耐久性のうえから適切な形状の下地を確保しておかなければならない。平場・立上り部の下地施工時に十分注意するとともに、不適と思われる部分は防水層施工前に直しておく。
① 設計図による所定の勾配を確実に付ける。
② 防水層のなじみをよくするために行われる出隅・入隅の面取りは、平成25年版「標仕」では通りよく、45°の面取り(図9.2.7参照)とされ、入隅の半径50mm程度の丸面処理は、一般には行われなくなってきているため削除された。成形はモルタル又はコンクリートによる。
図9.2.7_下地の形状(入隅).jpg
     図9.2.7_下地の形状(出隅).jpg
図9.2.7 下地の形状
③ 露出防水における入隅は、モルタル又はコンクリートの面取りに代えて、成形キャント材を用いることができることとしている(図9.2.7参照)。
④ 入隅の面取りが斜面の場合には、一般に50mm x 50mm x 1/2でつくられることが多いが、保護コンクリートの厚さが50mm程度で断熱層のない場合には、立上り面に接する部分が鋭角になって、保護層の動きで防水層に損傷を与える危険性がある。特に、屋内防水の立上り部の入隅において、保護モルタルの厚さを十分に確保できずに鋭角になる場合には、面取りの長さを短くするなどの処置が必要である。
⑤ 屋内保護密着防水工法で、出隅・入隅の面取りにより保護層等の施工に支障が生じるおそれがある場合は、面取りを行わない場合もある。
(3) ドレン、貫通配管回り
(i) ルーフドレンをコンクリートと同時打込みとするのは、確実に固定して防水層に悪影響を与えないようにするためである。したがって、あとから位置の補正等をしないように正しい位置・高さに設ける。
ルーフドレンや排水落し口等は、スラブ面より低くし、周囲の水はけを良くする。なお、必要に応じてスラブコンクリート下面の打増しをする。
(ⅱ) 配管類の防水層の貫通は、可能な限り避ける。やむを得ない場合は、スリーブを使用しこれを完全に固定する。貫通部の周囲のスラブ面は、特に平たんにし、配管類を含め下地の汚れ除去等清掃を十分に行う。
(b) アスファルトプライマー塗り
アスファルトプライマーは、毛ばけ・ローラーばけ又はゴムばけを用いて塗り付ける。この時に防水下地以外の面を汚さないように注意する。
なお、吹付け方法は揮発性溶剤により薄め過ぎたり、吹出口が詰まって、一様に塗付けできないおそれがあるほか、飛散により周囲を汚しやすいので用いない。
(c) アスファルトの溶融
(1) アスファルト溶融がまの設置に際しては、次の事項に注意する。
(i) 溶融がまは、できるだけ施工場所の近くに設け、周辺には燃えやすいものを置かないよう整理に留意し.給油ホースは足で引っかけないように養生する。
アスファルトの引火に備え、消火器、消火砂、鉄板のふた等を溶融がまの風上側に準備しておく。
(ⅱ) コンクリートスラブの上に設置する場合は、床から250mm以上離すか、又は熱による悪影響のない構造形態の溶融がまを使用する。
(ⅲ) やむを得ず完成した防水層の上に設置する場合は、防水層に有害な影響を与えないよう保護コンクリートを打つか、コンクリート平板や繊維強化セメント板等を敷くなどして養生を行う。
(2) アスファルトの溶融は、大きな塊のまま溶融がまに投入すると、局部加熱が生じやすくなるため、小塊にして溶融がまに投入する。
(3) アスファルトの溶融温度の上限は、「標仕」ではアスファルト製造所の指定する温度としている。これは、過熱による引火及びアスファルトの物性低下を防止するためである。
低煙・低臭タイプアスファルトの溶融温度の上限は、溶融粘度が低いことと煙の発生を抑制するために 240~260℃程度とされている(9.2.2(b)(3)参照)。
自動温度制御装置を組み込んだ改良型溶融がまも使用されている(図9.2.9参照)。
「標仕」では同一アスファルトの溶融を3時間以上続けないこととされているが、これは局部加熱によるアスファルトの変質を避けるためである。工場でアスファルトを保温タンクに詰めて、現場に搬入するタイプは過熱がないため、この限りでない。
(4) 溶融アスファルトは、施工に適した温度(精度)を保つように管理する。溶融アスファルトの温度の下限は、一般の3種アスファルトで 230℃程度、低煙・低臭タイプのアスファルトでは 210℃程度とされている。
溶融アスファルトの温度低下について、図9.2.8に示す。
図9.2.8_アスファルトの温度低下推定値.jpg
図9.2.8 アスファルトの温度低下推定値
(ハイスラー線図による)
図9.2.9_アスファルト溶融がま(改良型溶融がま).jpg
(イ) 改良型溶融がま
図9.2.9_アスファルト溶融がま(一般の溶融がま).jpg
(ロ) 一般の溶融がま
図9.2.9_アスファルト溶融がま(アスファルト溶融保温タンク).jpg
(ハ) アスファルト溶融保温タンク
図9.2.9 アスファルト溶融がま
(5) 屋根保護防水断然工法の断熱材は熱により変形・溶融しやすいため、断然材に溶漁アスファルトを直接掛けずに、下地側に塗り広げたのちに断熱材を張り付けるなどする。
(6) 溶融がまは、温度管理、煙・臭いの低減、効率アップ等の面から年々改良が加えられており、近年は、大型の保温タンクに溶融アスファルトを充填して施工場所に持ち込んだり、あるいは施工場所において電気ヒーターで溶融したりすることにより、更に煙・臭いの低減を図ったものもある(図9.2.9参照)。
(d) アスファルトルーフィング類の張付け
(1) 一般平場のルーフィングの張付けに先立ち、ストレッチルーフィングを用いて次の増張りを行う。増張りのストレッチルーフィングどうしは突付けとし、突付け部分が開いた場合は、水みちとならないように、アスファルトを塗り付ける。
(i) コンクリート打継部及びひび割れ部は、幅50mm程度の絶縁用テープを張った上に、幅300mm以上のストレッチルーフィングで図9.2.10のように増張りする。ただし、絶縁工法の場合は、幅50mm程度の絶縁用テープを張り付けたのち、平場の1層目のルーフィング類を張り付ける。
図9.2.10_コンクリート打継ぎ部及びひび割れ部の処理例.jpg
図9.2.10 コンクリート打継ぎ部及びひび割れ部の処理例
(ii) 出隅・入隅、立上りの出隅・入隅及び出入隅角の増張りは次による。
① 出入隅角は、図9.2.11及び図9.2.12のように増張りする。屋根露出防水断熱工法で断熱材を立上り際まで張る場合の出入隅角の増張りは、平場の断熱材の上で行なう。
図9.2.11_出隅・入隅及び出入隅角の増張りの例.jpg
図9.2.11 出隅・入隅及び出入隅角の増張りの例(JASS 8より)
図9.2.12_出隅・入隅及び出入隅角の増張りの例(JASS8より).jpg
図9.2.12 出隅・入隅及び出入隅角の増張りの例:
立上りの出隅・入隅に増張りを行う場合(JASS 8より)
② 平成25年版「標仕」では、屋根保護防水工法で立上り部の保護が乾式工法の場合及び屋根露出防水工法の場合は、立上り部の出隅・入隅の増張りは行わず、図9.2.11のように増張りするものとされた。これは、立上りの出隅・入隅において、立上り部の保護が現場打ちコンクリート及びれんがの場合以外では、保護層の動きによる影響が防水層に及ばないためである。屋根露出防水断熱工法で断熱材を立上り部の際まで張る場合は、図9.2.13のように増張りは平場の断熱材の上で行う。
図9.2.13_露出防水断熱工法における出隅・入隅部の施工例(入隅部).jpg
(イ)入隅部
図9.2.13_露出防水断熱工法における出隅・入隅部の施工例(出隅部).jpg
(ロ)出隅部
図9.2.13 露出防水断然工法における出隅・入隅部の施工例
③ 屋根保護防水工法で立上り部の保護が現場打ちコンクリート及びれんがの場合の出隅・入隅及び立上りの出隅・人隅には、幅300mm以上のストレッチルーフィングを図9.2.12のように増張りする。
④ 増張りどうしを重ねる必要はない。ただし、突付けとした増張りどうしの間隔が開いた場合は、その部分にアスファルトを塗り付け、水みちとならないようにする。また、はみ出したアスファルトは刷毛等で均しておく。
(2)平場の張付け
(i) 部分粘着層付改質アスファルトルーフィングシートと砂付あなあきルーフィング以外の平場のルーフィング類の張付けは、溶融した防水工事アスファルトの流し張りにより空隙、気泡、しわが入らないように張り付ける。積層方法は千島張り工法とする。
なお、重ね部からはみ出たアスファルトはその都度はけを用いて塗り均しておく。
(ii) 部分粘着層付改質アスファルトルーフィングシートの張付けは、裏面のはく離シートをはがしながら、しわが入らないように張り付ける。重なり部は、上層のルーフィング類を流し張りすることにより、水密性を確保することができるが、施工途中で施工を中断する場合の重なり部の処理はアスファルトルーフィング類製造所の仕様によるものとする。
(iii) アスファルトルーフィング類の重ね幅は、幅方向、長手方向とも原則として 100mm以上重ね合わせる。また、原則として、水下側のアスファルトルーフィング類が図9.2.14のように、重ね部の下側になるように張り重ねねる。
図9.2.14_ルーフィング類の千鳥張り工法.jpg
図9.2.14 ルーフィング類の千島張り工法
図9.2.15_絶縁用材料の継目の処理1.jpg
(イ) 砂付あなあきルーフィングの継目
図9.2.15_絶縁用材料の継目の処理2.jpg
(ロ)部分粘着層付改質アスファルトルーフィングシートの継目
図9.2.15 絶縁用材料の継目の処理
ただし、絶縁工法の場合、砂付あなあきルーフィングの継目は突付けとし、図9.2.15(イ)のように敷設する。施工時に、風のために砂付あなあきルーフィングの移動やまくれ等のおそれのある場合には、要所をアスファルトで点付けして固定しておく。
部分粘着層付改質アスファルトルーフィングシートの継目は図9.2.15(ロ)のように張り付ける。
(iv) アスファルトルーフィング類の重ね部が各層で同じ箇所にならないよう.図9.2.14のように張り重ねる。
(v) 露出防水絶縁工法及び露出防水絶縁断熱工法の立上り部際の500mm程度は防水工事用アスファルトを用いて、立上り部の1層目のルーフィングを図9.2.16のように密着張りをする。ただし、露出防水断熱工法で、断熱材の上に防水工事用アスファルトを用いる場合は、流し張りに支障のない程度の低い温度で密着張りを行う。
図9.2.16_露出防水絶縁工法における出隅・入隅部の納まり例1.jpg
(イ) 砂付あなあきルーフィングの場合
図9.2.16_露出防水絶縁工法における出隅・入隅部の納まり例2.jpg
(ロ)部分粘着層付改質アスファルトルーフィングシートの場合
図9.2.16 露出防水絶縁工法における出隅・入隅部の納まり例
(vi) 「標仕」では、立上りと平場のアスファルトルーフィング類は別々に張り付けることになっているが、立上りの高さが400mm未満の場合は、平場のアスファルトルーフィング類をそのまま張り上げることができるとされている。
(vii) 保護防水絶縁工法の立上り部際の500mm程度は防水工事用アスファルトを用いて、立上り部の1層目のルーフィングを図9.2.16のように密着張りをする。
(ⅷ)屋根露出防水断然工法の断熱材は、隙間のないように、アスファルト又はルーフィング類製造所の指定する接着剤等で図9.2.17のように張り付ける。
なお、隣り合う4枚の断熱材の角が一点に集中しないようにする。
図9.2.17_屋根露出防水断熱工法の断熱材の張付け方法の例.jpg
図9.2.17 屋根露出防水断然工法の断熱材の張付け方法の例(JASS 8より)
(3) 立上り部の張付け
(i) 「標仕」9.2.4(d)(3)(ⅰ)では、屋根保護防水工法における防水層の立上り部の納まりは、あごのないパラペットの天端部を含めて下層になるほど30mm程度ずつ短くして、末端部は幅100mm程度の網状ルーフィングを増張りし、溶融アスファルトで目つぶし塗りをしたのち、端部にゴムアスファルト系シール材を塗り付けるとされている。
ただし、平成25年版「標仕」では.監督職員の承諾を受けて端部を押え金物で押さえる場合とともに、立上りを乾式保護仕上げとする場合にも、所定の位置に各層の端部をそろえたうえで押え金物で固定する方法を採用することができるようになった。
れんが押えの場合で、前者の納まりの例を図9.2.18に、乾式工法の場合で、後者の納まりの例を図9.2.19に、前者の納まりの例を図9.2.20に示す。
図9.2.18_屋根保護防水密着断熱工法(れんが).jpg
図9.2.18 屋根保護防水密着断熱工法の例(「標仕」表9.2.4 種別 AI-2)
〔立上り:れんが押えの場合〕
図9.2.19_屋根保護防水密着断熱工法(乾式工法).jpg
図9.2.19 屋根保護防水密着断熱工法の例(「標仕」表9.2.4 種別 AI-3)
〔立上り:乾式工法の場合〕
図9.2.20_屋根保護防水絶縁断熱工法(乾式工法).jpg
図9.2.20 屋根保護防水絶縁断熱工法の例(「標仕」表9.2.6 種別 BI-3)
〔立上り:乾式工法の場合〕
(ii) 「標仕」9.2.4 (d)(3)(ii)では、屋根露出防水工法における防水層立上り部の納まりは、所定の位置に各層の端部をそろえ、押え金物で固定した上に、ゴムアスファルト系シール材で末端処理をするとされている(図9.2.21 ~23参照)。
図9.2.21_屋根露出防水絶縁工法の例.jpg
図9.2.21 屋根露出防水絶縁工法の例(「標仕」表9.2.7 種別 D-2)
図9.2.22_屋根露出防水絶縁工法の例.jpg
図9.2.22 屋根露出防水絶縁工法の例(「標仕」表9.2.7 種別 D-4)
図9.2.23_屋根露出防水絶縁断熱工法の例.jpg
図9.2.23 屋根露出防水絶縁断熱工法の例(「標仕」表9.2.8 種別 DI-2)
(iii) 押え金物は、特記がなければ既製のアルミニウム製 L-30×15×2.0 (mm)を用いるとしている。「標仕」9.2.4(d)(3)(iii)では、留付けはステンレスビスで 450mm程度以下のピッチとされている。
(4) ルーフドレン、便器及び貫通配管等の張付け
(i) ルーフドレン・貫通配管回りは、立上り部分以上に漏水を起こしやすい箇所であるから、入念な施工が必要である。ルーフドレンのつばへの増張り及び防水層の張掛け幅は、平成25年版「標仕」では、100mm程度とされた。配管類の防水層貫通は、配管経路を変えるか納まりを変えるなどして極力避ける。
(ii) ルーフドレン回りは300mm以上ストレッチルーフィングを増張りするとされている。また、ドレン回りの増張りとパラペットの入隅の増張りは兼用することができる。
絶縁工法における砂付あなあきルーフィング又は部分粘着層付改質アスファルトルーフィングシートとストレッチルーフィング増張りとの納まりを、図9.2.24に示す。
図9.2.24_ルーフドレン回りの納まり.jpg
図9.2.24 ルーフドレン回りの納まりの例
(iii) 貫通配管及び和風便器回りに用いる網状ルーフィングは、アスファルトで十分に目つぶし塗りを行う。
貫通配管回り及び洋風便器配管回りの防水層の納まりは図9.2.25による。
図9.2.25_貫通配管回りの防水層の納まり例(砂付あなあきルーフィングの場合).jpg
図9.2.25_貫通配管回りの防水層の納まり例(部分粘着層付改質ASシートの場合).jpg
図9.2.25_貫通配管回りの防水層の納まり例(屋内防水の場合).jpg
図9.2.25 貫通配管回りの防水層の納まり例
(iv) 和風便器回りの防水は、施工が困難である。床を水洗いする場合は、特に納まりに注意する。便器保護のために、周囲に張り付けてある材料が、防水層になじまない場合は、上部は30mm程度これを除去し、アスファルトを厚さ3mm程度塗り付けて、なじませる(図9.2.26参照)。
図9.2.26_和風便器回りの防水層の納まりの例.jpg
図9.2.26 和風便器回りの防水層の納まりの例
(5) ふくれその他の補修
空隙、気泡、しわ等が生じた場合は、各層ごとに補修する。ただし、ふくれの補修箇所は防水層の欠陥部分となりやすいので、保護層のある場合でふくれに進行性がなく小面積のものは、補修をしない方がよい場合がある。
補修方法は、図9.2.27のように、ふくれ箇所をカッター等の用具で十文字又はH型に切開して、空気を押し出すようにしてアスファルトを流して張り付け、更に切開した寸法より大きめのルーフィングを増張りする。
図9.2.27_膨れの補修例.jpg
図9.2.27 ふくれの補修例
(6) アスファルト塗り
(i) アスファルト塗りは、原則として、はけ塗りとし、均ーに所定量を塗り付ける。特殊な器具を用いる場合は、性能をよく確かめる。
(ii) アスファルトのはけ塗りは、塗付け量が十分に確保できる温度にして行う。
(7) 脱気装置
(i) 屋根露出防水絶縁工法において、下地水分の気化・膨張による防水層のふくれを低減するのに、砂付あなあきルーフィング及び部分粘着層付改質アスファルトルーフィングシートの非接着部分での拡散によるだけでは対処できない場合が多い。
このような場合には、水分を積極的に外気に拡散させる脱気装置を併用する手段が有幼である。
脱気装置には、平場に取り付けるものと、立上り部に取り付けるものとがあるが、種類及び設置数量は、特記がなければルーフィング類製造所の指定するものとしている。
なお、設置数量の目安としては、通常、防水層平場 25~100m2に1個程度であるが(表9.2.15参照)、装置によって排出能力が異なるので、正確な分担面積はルーフィング類の製造業者の資料を参考にするとよい。
(ii) 脱気装置は、通常、保護防水絶縁工法には設けない。その理由は、絶縁工法とする目的が下地のひび割れや継目の動きによる防水層の破断を防ぐことにあって、露出防水の場合のように、防水層のふくれの低減を目的とするものではないからである。
しかし、近年は、工期短縮、工費低減の要請から、デッキプレートを型枠にしてコンクリートを打ち込んだ屋根スラブが多くなっている。このコンクリートは非常に乾燥しにくいので、保護防水工法においても、絶縁工法をとるとともに脱気装置を設けて、積極的に水分の排出を図ることが必要な場合もある。
この保護防水絶縁工法に用いる脱気装置は、立上り部に設ける型式のものが適している。平場設置型のものでは、保護コンクリートの動きによって脱気装置を損壊したり、防水層に損傷を与えるおそれがある。
表9.2.15 脱気装置の種類(JASS 8より)
表9.2.15_脱気装置の種類(JASS8より).jpeg
(e) アスファルト防水層施工の途中における検査の留意点は、次のとおりである。
(1) 防水層の構成
(2) プライマーの塗付け範囲
(3) 溶融アスファルトの温度
(4) アスファルトルーフィングの張り方(立上りの張付け、増張りその他)
(5) 末端部の処則(立上り末端部、ルーフィングの張りじまい)
(6) ドレン、配管回り等の処理
(7) 断熱材.絶縁用シートの張付け
また、防水層完成時においては、仕上り面・納まり等の外観検査とともに各材料が規定量どおりに施工されていることを確認する。この場合、アスファルトの使用量は、防水層全体としての数量を把握することを重点において、全使用量から単位面積当たりの数量を算出して確認する。
防水層の検査としては、切取りによる方法もあるが、破壊検査となることから検査後の補修が必要なことと、補修部分が防水上の欠陥につながりやすいので「標仕」では規定していない。
(f) 施工時の降雨・降雪に対する処置は.次のとおりとする
(1) 張り付けたルーフィングの末端部及び張りじまいにはアスファルトを塗り付けておく。
(2) 絶縁工法の場合の防水層末端部は、ルーフィング類で養生張りを行う。

9.2.5 保護層等の施工
(a) 成形緩衝材の取付け
(1) 「標仕」では,保護コンクリートの動きによる防水層の損傷を防ぐため、断熱層の有無にかかわらず入隅には成形緩衝材を用いることとしている。
(2) 成形緩衝材は、絶縁用シートの敷込みに先だって溶融アスファルト等で入隅に固定する。
(b) 断熱材の張付け
(1) 断熱材の張付けは、防水層の最終工程で塗り付けされたアスファルトが、断熱材に支障のない温度になったときに隙間のないように張り付ける。断熱材は、ずれない程度に固定されればよいので、ポリスチレンフォームが溶融しないように十分注意して張り付ける。
(2) 張付け後の断熱材に隙間、へこみ、欠損等が生じた場合は、防水層に傷をつけないように注意しながら断熱材を挿入するなどして補修する。
(3) ルーフドレン回り、入隅部分の断熱材の納まりは図9.2.28による。
(4) 入隅部分の断熱材は、図9.2.28のように緩衝材に接して張り付ける。
  図9.2.28_断熱材の納まりの例(ルーフドレン回り).jpg
 図9.2.28_断熱材の納まりの例(入隅部).jpg
図9.2.28 断熱材の納まりの例
(c) 絶縁用シートの敷込み
絶縁用シートは、立上り面に30mm程度張り上げるようにする。
(i) ポリエチレンフィルムの敷込み
ポリエチレンフィルムは、防水層の完成検査後、100mm程度の重ね幅をとって平場に敷き込み、粘着テープ、ゴムアスファルト系シール材等で固定する。
また、強風時には、重ね部分の要所をモルタルで押さえ、フィルムの浮揚を防止する。
(ii) フラットヤーンクロスの敷込み
フラットヤーンクロスは、粘着テープ、ゴムアスファルト系シール材等で要所を固定する。重ね幅は100mm程度とする。
(d) 平場の保護コンクリート
(1) 平場の保護コンクリートは、一般には「標仕」6章14節による無筋コンクリートとしている。
なお、厚さは「標仕」9.2.5(d)で、特記がなければ、コンクリートこて仕上げの場合は80mm以上、タイル張り等の仕上げを行う場合は60mm以上とし、所要の勾配に仕上げることとしている。
(2) すべての保護コンクリートに、ひび割れを防止するため、溶接金網を伸縮調整目地内ごとに敷き込む。溶接金網の重ね幅は、金網部分を1節半以上、かつ、150mm以上とし、コンクリート打込み時に動かないように鉄線で結束し、コンクリート厚さの中間部にコンクリート製スペーサー等を用いて設置する。
なお、溶接金網の敷設に当たっては、防水層を損傷しないように注意する。
(3) 室内防水保護コンクリートは、屋根の場合に準拠して行う。一般に室内の場合は面積が小さく、コンクリートの動きも小さいことから、絶縁層及び伸縮調整目地は設けないのが普通である。ただし、面積が大きい場合(1辺の長さが10m程度以上)や、吸水による伸ぴ等が考えられる場合には、伸縮調整目地を適宜設ける。
また、保護コンクリートに配管を埋め込む場合等は、配管に先立ち防水層の上に厚さ 15mmの保護モルタルを施す。
(e) 立上り部の保護
立上り部の保護は次により、適用は特記としている。
(i) 乾式工法
れんがやコンクリート押えといった湿式工法に対して防水層立上り部前面にボード類を設置する乾式工法がある。
乾式工法の一例として、防水立上がり部乾式保護工法がある。この工法については、防水立上がり部乾式保護工法研究会により「防水立上がり部乾式保護工法(設計・施工)技術指針」が作成されている(図9.2.29参照)。
図9.2.29_防水立上がり部乾式保護工法の例(あご下タイプ).jpg
 図9.2.29_防水立上がり部乾式保護工法の例(水切りタイプ).jpg
  図9.2.29 防水立上がり部乾式保護工法の例
(ii) れんが押え
れんが積みは、図9.2.30のように立上り防水層から20mm程度離して半枚積みとし、各段ごとにその隙間にセメントモルタルを充填する。
目地幅は10mmとし、縦目地は芋目地にならないようにれんが割りする。れんが積みした表面は、セメントモルタルで仕上げる。
セメントモルタルの調合比は、セメント:砂=1 : 3 とする。
図9.2.30_立上りの保護の例(れんが押えの場合).jpg
図9.2.30 立上りの保護の例(れんが押えの場合)
(iii) コンクリート押え
コンクリート押えは、無筋コンクリートを上部天端まで打ち込む。
(iv) モルタル押え
屋内等でモルタル押えとする場合は、ひび割れ防止とモルタルの脱落防止のため、防水層表面に 200mm間隔程度に千鳥状にとんぼを付けて、これに平ラス 2号を取り付けたのち、モルタルを厚さ 30mm程度に塗り付ける。
(f) 伸縮調整目地
(1) 屋上の保護コンクリートには、「標仕」9.2.5 (f)により図9.2.31のように伸縮調整目地を設ける。
なお、目地は周辺の立上り部等まで達するように、また、保護コンクリートの下面まで達するように設ける。
図9.2.31_伸縮調整目地割りの例.jpg
図9.2.31 伸縮調整目地割りの例
図9.2.32_伸縮調整目地の施工例(JASS8より).jpg
図9.2.32 伸縮調整目地の施工例(JASS 8より)
伸縮調整目地は、絶縁層の上に施された保護コンクリートが、乾燥収縮及び温度、水分による伸縮でひび割れが発生したり、移動によってパラペットを押し出したりすることを防ぐために設けるものである。したがって、保護コンクリートの上から下まで通して、かつ、周辺の立上り部等まで達するように目地が切られていないと、この目的が十分達成できないことになってしまう。
伸縮調整目地は、図9.2.32のように成形伸縮目地材を用いて構成する。
(2) 成形伸縮目地材を絶縁用シート表面に目地の割付け及びレベル調整の水糸に従ってコンクリートレベルまでを調節しながら目地建てを行い、コンクリート流入圧や打設圧に対して安定するように成形伸縮目地材の両サイドに据付けモルタルを盛り付けて固定する。この場合、固定用据付けモルタルを成形伸縮目地材キャップの天端まで盛り上げて固定してはならない。キャップの天端まで盛り上げた場合は、保護コンクリートの目地周辺のコンクリートに小さなひび割れが多数発生して外観上の不具合となる。したがって、据付けモルタルは成形伸縮目地材のキャップの下端にフック状のアンカーがあるところまでモルタルを盛り上げて固定することが重要である。
なお、高さ可変型の成形伸縮目地材では、保護コンクリートの打込み圧力で押し流されたり移動することを防止する目的で、固定用の粘着テープの状況や留付け高さ可変用のピンの状況を十分に確認して、目地材が確実に留め付けられてから、据付けモルタル等で確実に固定することが重要である。
(g) 屋上排水溝
屋上排水溝にはひび割れ防止のために、溶接金網を挿入したうえで、モルタル金ごて仕上げとすることが一般的であったが、平成25年版「標仕」9.2.5(g)では.屋上排水溝の適用は特記によるものとされた。
(h) 仕上塗料
屋上露出防水絶縁工法及び屋根露出防水絶縁断熱工法の仕上塗料の塗布は、アスファルトルーフィング類製造所の仕様により、ローラーばけ等を用いて行う。

9章 防水工事 3節 改質アスファルトシート防水

第09章 防水工事
3節 改質アスファルトシート防水
9.3.1 適用範囲
(a) 改質アスファルトシート防水工法は、シート状に成形された改質アスファルトシートを種々の方法により施工する工法であるが、「標仕」で取り扱う改質アスファルトシート防水工法は,改質アスファルトシートをトーチバーナーを用いて施工するトーチ工法及び粘着層付改質アスファルトシートを用いる常温粘着工法である。
トーチ工法はトーチバーナーを用いることにより、改質アスファルトシート相互の接合部及び改質アスファルトシートどうしが溶融一体化することが特徴である。トーチ工法は海外では広く普及している防水工法であり、わが国でも 1992年に JIS A 6013(改質アスファルトルーフィングシート)が制定(2005年改正)されたのをきっかけに急速に普及した工法である。一方、常温粘着工法は、裏面に粘着層を施した粘着層付改質アスファルトシートを裏面のはく離紙等をはがしながら下地に接着させる工法で、戦後まもなく導入されたものであるが、1974年に当時の日本住宅公団に採用されたことから普及した工法である。いずれの工法も、においが出ない、溶剤の使用量が少ないなど近隣への影響が少ない工法である。常温粘着工法はトーチ工法と同様な性能・耐久性をもち、施工性も良好なことから、平成25年版「標仕」で採用された。また、従来の屋根露出防水密着工法に加え、動きの大きい下地への対応として屋根露出防水絶縁工法及び建物使用時の省エネ対策として露出防水絶縁断熱工法も同じく採用された。
(b) 作業の流れを図9.3.1に示す。
図9.3.1_改質アスファルトシート防水の作業の流れ.jpg
図9.3.1 改質アスファルトシート防水の作業の流れ
(c) 準 備
(1) 設計図書の確認、施工業者の決定については、9.2.1(c)に準ずる。
(2) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
① 工程表(箇所別、防水の種類別の着工、完成等の時期)
② 施工業者名、作業の管理組織
③ 施工範囲及び防水層の種類
④ 工法(下地を含む)
⑤ 材料置場
⑥ 排水勾配
⑦ コンクリート打継ぎ箇所、PCコンクリート部材、ALCパネルの継目箇所における処置
⑧ 立上り・立下りの構造,納まり
⑨ ルーフドレン回り、出入口回り及び排水管(防水層貫通管)の納まり
⑩ 異種防水層接続部の処置
⑪ 品質管理、基本要求品質の確認方法等
(d) 用語の説明
・改質アスファルトシート
防水層を形成するために用いるシート状の材料
・粘着層付改質アスファルトシート
裏面に粘着層を付けた改質アスファルトシートで、粘着層を全面に設けた密着用と部分的に設けた絶縁用がある。部分的に設けたものを部分粘着層付改質アスファルトシートという。
・増張り用シート
増張りに適した形状に裁断されたシート状の材料
・トーチ工法
改質アスファルトシートをトーチバーナーで溶融しながら張り付ける工法
・常温粘着工法
粘着層付改質アスファルトシート裏面のはく離紙等をはがしながら張り付ける工法

9.3.2 材 料
(a) 改質アスファルトシート
改質アスファルトシートは、改質アスファルト等をシート状に成形したもので、合成繊維不織布等を補強材として構成したものと補強材を用いないものがある。改質アスファルトは、アスファルトにスチレン・ブタジエン・スチレン(熱可塑性ゴムの一種で、通常SBS系と略す。)やアタクチックポリプロピレン(非結晶性ポリプロピレンで、通常APP系と略す。)等の改質剤を添加してアスファルトの温度特性や耐久性を改良したものである。APP系改質アスファルトによる改質アスファルトシートは、トーチ工法に使用されることが多く、SBS系改質アスファルトによる改質アスファルトシートは、トーチ工法及び常温粘着工法に使用され,また.アスファルト防水にも使用される。
(i) 改質アスファルトシート
①「標仕」9.3.2(a)では、改質アスファルトシートは JIS A 6013(改質アスファルトルーフィングシート)により、種類及び厚さは特記によることとしている。特記がなければ、改質アスファルトシートの種類及び厚さは「標仕」表9.3.1から表9.3.3により、種類は表9.3.2によるR種とされている。また、厚さは表9.3.1に従い、トーチバーナーを用いて施工する改質アスファルトシートは、それ以外の方法で施工する改質アスファルトシートよりもそれぞれの用途による区分で1.0mm厚いものを使用するよう規定されている。「標仕」表9.3.1から表9.3.3で規定された厚さは、JIS A 6013での表示値を示しており、JIS A 6013では厚さの許容差はプラス側は規定せず、マイナス側は5%まで認められている。
② 改質アスファルトシートのR種は、合成繊維を主とした多孔質なフェルト状の不織布原反に、アスファルト又は改質アスファルトを浸透させ、改質アスファルトを被覆したもので,低温で硬化・ぜい化しにくく、伸び率も大きいので破断しにくいなど、種々の優れた特性をもっている。
③ 露出防水用改質アスファルトシートは、表面に鉱物質粒子の圧着又は金属はくの積層等の処理を行ったものとする。
(ⅱ) 粘着層付改質アスファルトシート及び部分粘着層付改質アスファルトシート
①「標仕」9.3.2(a)では、粘着層付改質アスファルトシート及び部分粘着層付改質アスファルトシートはJIS A 6013により、種類及び厚さは特記によることとしている。特記がなければ、粘着層付改質アスファルトシート及び部分粘着層付改質アスファルトシートの種類及び厚さは、「標仕」表9.3.1から表9.3.3により、いずれの粘着層付改質アスファルトシート及び部分粘着層付改質アスファルトシートの種類もR種とされている。「標仕」表9.3.1から表9.3.3で規定された厚さは、JIS A 6013での表示値を示しており、JIS A 6013では厚さの許容差はプラス側は規定せず、マイナス側は5%まで認められている。
② 改質アスファルトシートのR種は、合成繊維を主とした多孔質なフェルト状の不織布原反に、アスファルト又は改質アスファルトを浸透させ、改質アスファルトを被覆したものである。粘着層付改質アスファルトシートは改質アスファルトシートの裏面全面に粘着層を配したものである。また、部分粘着粘着層付改質アスファルトシートは改質アスファルトシートの裏面に粘着層をスポット状又はストライプ状に配して粘着層のない部分を通気層として利用するものである。また、使用前のブロッキングを防止するはく離紙又ははく離フィルムを配したもので、使用時にははく離紙又ははく離フィルムをはがしながら、下地対象面に転圧等を併用して張り付けるものである。
③ 粘着層の品質はアスファルトルーフィング類製造所ごとに異なるが、その接着強度は強風による飛散、浮き等が生じないようにその粘着層の面積比が決められている。そのため、「標仕」では、粘着層はアスファルトルーフィング類製造所の指定する製品とされている。風圧力に関しては、建築基準法施行令第82条の4の規定に基づき「屋根ふき材及び屋外に面する帳壁の風圧に対する構造耐カ上の安全性を確かめるための構造計算の基準を定める件」(平成12年5月31日 建設省告示第1458号)により算定する。
なお、同告示に基づく、屋根葺材に加わる風圧力の計算例は9.4.4(b)(11)を参照されたい。
④ 露出防水用改質アスファルトシートは、表面に鉱物質粒子の圧着又は金属はくの積層等の処理を行ったものとする。
表9.3.1 用途による区分と厚さ(JIS A 6013:2005)
表9.3.1_用途による区分の厚さ.jpg
表9.3.2 材料構成による区分(JIS A 6013 : 2005)
表9.3.2_材料鋼製による区分.jpg
表9.3.3 品質(JIS A 6013 : 2005)
表9.3.3_品質(JIS A 6013_2005).jpg
(b) 増張り用シート
「標仕」9.3.2(b)では、増張り用シートは、JIS A 6013の非露出複層防水用R種に適合するものとし、厚さ2.5mm以上としている。ただし、粘着層付改質アスファルトシートは厚さ1.5mm以上とすることとしている。増張りに適するように裁断し、下地の動きの大きいALCパネル短辺接合部及びPCコンクリート部材の目地部に用いる。また、防水層が疲労、破断しやすい出隅・入隅又は防水層の納まり上の欠陥となりやすい出入隅角、ルーフドレン回り等の要所に防水性を高めるために用いる。
(c) その他の材料
(1) プライマー、あなあきシート,絶縁用テープ、シール材及び仕上塗料は,同じ種類・用途でも原料の調合や製造法が異なる場合がある。そのため、「標仕」9.3.2 (c)(1)では、改質アスファルトシート製造所の指定する製品としている。
(i) プライマー
プライマーは、改質アスファルトシートの施工に先立って下地に塗布する材料で、下地と改質アスファルトシートとの接着効果を向上させることを目的としたものである。一般的には、アスファルトや改質アスファルトを有機溶剤に溶解させた溶剤系と水に分散させたエマルション系がある。使用又は取扱いについては、消防法、労働安全衛生法等の規定を遵守しなければならない。
(ⅱ) あなあきシート
あなあきシートは、防水層と下地との間を絶縁するために用いられる材料で、シート全面に一定の間隔で穴が開いており、トーチ工法で改質アスファルトシートの張付けの際、溶融改質アスファルトが穴から流れ込み、下地へ規則的な部分接着となる。
(ⅲ) 絶縁用テープ
絶縁用テープは、紙、合成樹脂等のテープ状のものに、粘着剤等を付着させたもので、幅50mmのものが用いられる。ALCパネル短辺接合部及びPCコンクリート部材目地部等大きな動きが予想される部分に張り付け、防水層に直接力が及ばないようにする。
(ⅳ) シール材
シール材は防水層張りじまいや貫通配管回り等に使用されるもので、防水層上の弱点を補い、防水層の水密性を確保する材料である。材質は防水層に影響を与えないものとする。
(ⅴ) 仕上塗料
仕上塗料は、露出防水用改質アスファルトシートの上に塗布し、防水層の美観と耐久性の向上(砂落ち防止、温度上昇低減)を目的として使用されるもので、一般にはエマルション系の塗料が多く使用される。
なお、仕上塗料は、塗料の品質性能上、長期的な耐久性を望むことが困難であり一定期間で塗り替える必要がある。
(ⅵ) 押え金物
押え金物は、9.2.2(f)による。
(2) 屋根露出防水絶緑断熱工法に用いる断熱材は、屋根スラブと防水層の間に設置される。「標仕」9.3.2(c)(2)では、材質及び厚さは特記により、特記がなければ材質は、JIS A 9511(発泡プラスチック保温材)によるA種硬質ウレタンフォーム保温材の保温板2種1号又は2号で透湿係数を除く規格に適合するものとしている。
この断熱材は、寸法安定性がよく、2枚の面材の間にサンドイッチ状に発泡させた耐熱型のポリウレタン系断熱材である。特に、熱伝導率が小さく耐熱性に優れている。また、独立気泡のため、水や水蒸気の浸入に対する抵抗性が大きい。
断熱材の必要厚さは、熱伝導率から計算により求められる。断熱材の厚さが 50mmを超える場合は、防火地域又は準防火地域においては建築基準法第63条の規定に、また、特定行政庁が防火地域及び準防火地域以外の市街地について指定する区域においては同第22条の規定に、それぞれ適合する屋根構造としなければならない。
なお、断熱材の固定に使用する接着剤等は、断熱材及び防水層に影響を与えないものとする。

9.3.3 防水層の種別及び工程
「標仕」9.3.3では、改質アスファルトシート防水工法は、屋根根露出防水密着工法、屋根露出防水絶縁工法及び屋根露出防水絶縁断熱工法とされ、また、それぞれの防水層の種別及び工程は「標仕」表9.3.1から表9.3.3により、適用は特記によるとしている。平成25年度「標仕」では、従来の屋根露出防水密着工法の2工法が3工法になり、更に、屋根露出防水絶縁工法の3工法及び屋根露出防水絶縁断熱工法の2工法が規定された。
(1) 屋根露出防水密着工法
(i) AS – T1
1層目の非露出複層防水用の改質アスファルトシートをトーチバーナーにより下地に全面密着させ、更に、2層目の露出複層防水用の改質アスファルトシートをトーチバーナーにより張り合わせるトーチ工法による複層仕様の防水層である。
(ⅱ) AS – T2
露出単層防水用の改質アスファルトシートをトーチバーナーにより下地に全面密着させるトーチ工法による単層仕様の防水層である。
(ⅲ) AS – J1
1層目に非露出複層防水用の粘着層付改質アスファルトシートを全面密着させ、更に、2層目に露出複層防水用の粘着層付改質アスファルトシートを張り合わせる複層の常温粘着工法による複層仕様の防水層である。
(2) 屋根露出防水絶縁工法
(i) AS – T3
1層目に非露出複層防水用の部分粘着層付改質アスファルトシートで下地に部分的に接着させ、更に、2 層目の露出複層防水用の改質アスファルトシートをトーチバーナーにより張り合わせるトーチ工法による複層仕様の防水層である。下地に部分的に溶着させ絶縁工法とする場合は、1層目の部分粘着層付改質アスファルトシートに代え、非露出複層防水用の改質アスファルトシートとする。立上りは1層目の部分粘着層付改質アスファルトシートに代え、非露出複層防水用の改質アスファルトシートをトーチ工法で密着させる工法とする。
(ⅱ) AS – T4
あなあきシートを敷き並べた上に露出単層防水用の改質アスファルトシートの裏面をトーチバーナーにより全面溶融し、穴の部分だけを下地に溶着させるトーチ工法による単層仕様の防水層である。改質アスファルトシートを下地に部分的に溶着させて絶縁工法とする場合は、あなあきシートを省略する。立上りは、あなあきシートを省略し密着工法とする。
(ⅲ) AS – J2
1層目に非露出複層防水用の部分粘着層付改質アスファルトシートで下地に部分的に接層させ、更に、2層目に露出複層防水用の粘着層付改質アスファルトシートを張り合わせる常温粘層工法による複層仕様の防水層である。立上りは1層目の部分粘着層付改質アスファルトシートに代え、非露出複層防水用の粘着層付改質アスファルトシートを密着させる工法とする。
(3) 屋根露出防水絶縁断熱工法
(i) ASI – T1
最初に断熱材を接着剤等によりド地に接着し、その上に非露出複層防水用の部分粘着層付改質アスファルトシートを張り付け、更に、2層目の露出複層防水用の改質アスファルトシートをトーチバーナーにより張り合わせる複層仕様の防水層である。立上りには断熱材は施工せず、1層目は非露出複層防水用の改質アスファルトシートをトーチ工法で密着させる。「標仕」表9.3.3では防湿層の設置は特記としているが、「住宅に係るエネルギーの使用の合理化に関する設計、施工及び維持保全の指針」(平成18年国土交通省告示第378号)の地域 I、地域 Ⅱ 及び地域Ⅲにおいては、防湿層の設置が望ましい。防湿層としては、改質アスファルトシート系の常温粘着用シートを使用する場合が一般的である。
(ⅱ) ASI – J1
最初に断熱材を接着剤等により下地に接着し、その上に非露出複層防水用の部分粘着層付改質アスファルトシートを張り付け、更に、2層目の露出複層防水用の粘着層付改質アスファルトシートを張り合わせる常温粘着工法による複層仕様の防水層である。立上りには断熱材は施工せず、1層目は非露出複層防水用の粘着層付改質アスファルトシートを密着させる。ASI-T1と同様「標仕」表9.3.3では防湿層の設置は特記としている。
(4) ALCバネル及びPCコンクリート部材を下地とする場合のALCパネル短辺接合部及びPCコンクリート部材の目地部の処置は、改質アスファルトシート張付けに先立ち、(1)においては、増張り用シートにより増張りを行い、(2)及び(3)においては、絶縁用テープを張り付ける。また、ALCパネルを下地とした場合は、プライマーの使用量を0.4kg/m2とする。

9.3.4 施 工
(a) 防水層の下地
防水層の下地は、9.2.4(a)を参照されたい。ただし、出隅及び入隅は図9.3.2に示す形状とする。
図9.3.2_出隅及び入隅の形状(出隅).jpg図9.3.2_出隅及び入隅の形状(入隅).jpg
図9.3.2 出隅及び入隅の形状
(b) プライマー塗り
プライマー塗りは、下地の乾燥を確認したのちに、清掃を行い、塗布する。
(i) コンクリート下地の場合は、所定量をはけ又はローラーばけ等を下地の状況に応じて適宜使い分けて、改質アスファルトシート等の張りじまい部までむらなく均ーに塗布する。この際、防水施工範囲以外の面を汚さないように注意する。
(ⅱ) ALCパネル下地の場合は、所定量をはけ等により2回に分けて塗布する。 2回目の塗布は、1回目に塗布したプライマーが乾燥したことを確認したのちに行う。
(ⅲ) プライマーは改質アスファルトシートの張付けまでに十分乾燥させる。
(c) 増張り
改質アスファルトシートの張付けに先立ち、増張り用シートを用いて次の増張りを行う。
(i) ALCパネルの短辺接合部
① 屋根露出防水密着工法において、トーチ工法(種別 AS-T1及び AS-T2)の場合は幅300mm程度の増張り用シートを用いて接合部両側に 100mm程度ずつ張り掛け、絶縁増張りを行う。常温粘着工法(種別 AS- J1)の場合は、幅50mm程度の絶縁用テープを張り付けたのち、幅300mm程度の増張り用シートを用いて増張りを行う(図9.3.3参照)。
② 屋根露出防水絶縁工法及び屋根露出防水絶縁断熱工法においては、トーチ工法(種別 AS-T3、AS-T4及びASI-T1)及び常温粘着工法(種別 AS-J2 及びASI- J1)のいずれの場合も増張り用シートによる増張りは行わず、ALCパネル短辺接合部に幅50mm程度の絶縁用テープを張り付ける処理だけでよい。
図9.3.3_屋根露出防水密着工法におけるALCパネル短辺接合部の増張り例.jpg
図9.3.3 屋根露出防水密着工法におけるALCバネル短辺接合部の増張り例
(ⅱ) PCコンクリート部材の接合部の目地部
① 屋根露出防水密着工法において、トーチ工法(種別 AS-T1及び AS-T2)の場合は部材の両側に100mm程度ずつ張り掛けることのできる幅の増張り用シートを用いて絶縁増張りを行う。常温粘着工法(種別AS_J1)の場合は、幅50mm程度の絶緑用テープを張り付けたのち、同様に行う(図 9.3.4参照)。
図9.3.4_屋根露出防水密着工法におけるPCコンクリート部接合部目地部の増張り例.jpg
図9.3.4 屋根露出防水密着工法におけるPCコンクリート部材接合部目地部の増張り例
② 屋根露出防水絶縁工法及び屋根露出防水絶縁断熱工法においては、トーチ工法(種別 AS-T3、 AS-T4 及び ASI-T1)及び常温粘着工法(種別 AS-J2及びASⅠ- J1l)のいずれの場合も増張り用シートによる増張りは行わず、PCコンクリート部材接合部目地部に幅 50mm程度の絶縁用テープを張り付ける処理だけでよい。
(ⅲ) 出隅及び入隅は、幅200mm程度の増張り用シートを100mm程度ずつ張り掛けて増張りを行う(図9.3.5参照)。
図9.3.5_出隅・入隅部の増張り例(出隅部).jpg図9.3.5_出隅・入隅部の増張り例(入隅部).jpg
図9.3.5 出隅・入隅部の増張り例
また、出入隅角は幅200mm程度の増張り用シートを用いて図9.3.6のように行う。
図9.3.6_出入隅角の増張りの例.jpg
図9.3.6 出入隅角の増張り例
(ⅳ) ルーフドレン回りは、増張り用シートをルーフドレンのつばと、つばから 100mm程度の範囲の下地に張り掛けるように張り付ける(図9.3.7参照)。トーチ工法の場合は、トーチバーナーでよく溶融させて張り付け、焼いた金ごて等で増張り用シートの段差を均す。常温粘着工法の場合は、ローラー転圧にトーチバーナーを併用するなどして張り付ける。増張り用シートの段差はトーチバーナー等を使用して均す。
図9.3.7_ルーフドレン廻りの増張り例(1枚もの).jpg図9.3.7_ルーフドレン廻りの増張り例(扇状裁断).jpg
図9.3.7 ルーフドレン回りの増張り例
(ⅴ)貫通配管回りは、150mm程度の増張り用シートを用いて貫通配管と根元を増 張りし、更に増張り用シートを貫通配管周囲の下地に150mm程度張り付ける(図 9.3.8参照)。トーチ工法の場合は、トーチバーナーでよく溶融させて張り付け.焼いた金ごて等で増張り用シートの段差を均す。常温粘着工法の場合は、ローラー転圧にトーチバーナーを併用するなどして張り付ける。増張り用シートの段差はトーチバーナー等を使用して均す。
図9.3.8_貫通配管回りの増し例.jpg
図9.3.8 貫通配管回り増張り例
(d) 改質アスファルトシートの張付け
(1) 平場の張付け(密着工法)
(i) トーチ工法の場合
① 改質アスファルトシートの張付けは、改質アスファルトシートの裏面及び下地をトーチバーナーであぶり、改質アスファルトを十分溶融させ、丁率に張り付ける。
② 改質アスファルトシート相互の接合は、原則として、水上側が水下側の上に重なるように張り重ね、重ね幅は長手・幅方向とも100mm以上とする。
③ 複層防水の場合は改質アスファルトシートの重ねが上下層で同一箇所にならないように張り付ける(図9.3.9参照)。その際、1層目の改質アスファ ルトシートの表面及び2層目の改質アスファルトシートの裏面をトーチバーナーであぶり、相互の改質アスファルトが十分溶融されていることを確認し、空気の内包、破れ、密着不良等ができないように張り付ける。
図9.3.9 改質アスファルトシートの張り方.jpg
図9.3.9 改質アスファルトシートの張り方
④ 改質アスファルトシート相互の接合に当たっては、溶融した改質アスファルトがシート端部からはみ出すように十分溶融させ施工する。
⑤ 改質アスファルトシートの3枚重ね部は、水みちになりやすいので、中間の改質アスファルトシート端部を斜めにカットする(図9.3.10参照)か、焼いた金ごてを用いて角部を滑らかにするなどの処理を行う。
図9.3.10_改質アスファルトシートの3枚重ね部の納まり例.jpg
図9.3.10 改質アスファルトシートの3枚重ね部の納まり例
⑥ 露出防水用の改質アスファルトシートの砂面に改質アスファルトシートを重ね合わせる場合、重ね部の砂面をあぶり、砂を沈めるか、砂をかき取って改質アスファルトを表面に出した上に張り重ねる(図9.3.11参照)。
図9.3.11_露出防水用改質アスファルトシートの重ね部の処理例.jpg
図9.3.11 露出防水用改質アスファルトシートの重ね部の処理例
(表面の砂をかき取る例)
⑦ 接合部からはみ出した改質アスファルトは、焼いた金ごて等を用いて処理する。この際、改質アスファルトシートの重ね部に口あき等のある箇所は、焼いた金ごてを差し込み再炭溶融して接着させる。
(ⅱ) 常温粘着工法の場合
① 改質アスファルトシートの張付けは、シートの裏面のはく離紙等をはがしながら空気を巻き込まないように、平均に押し広げ、転圧ローラー等を併用して張り付ける。
② 改質アスファルトシート相互の重ねは、(i) ②及び (i) ③による。
③「標仕」9.3.4 (d)(1)(ⅱ)では、改質アスファルトシート相互の張付けは、改質アスファルトシート製造所の仕様によるとしている。改質アスファルトシート相互の接合には、転圧ローラーによる転圧だけでなく、トーチバーナーやシール材等が併用されることが多い。
④ 改質アスファルトシートの3枚重ね部には、シール材を充填するか、トーチバーナーであぶり、焼いた金ごてを用いて滑らかにする。また、トーチ工法と同様に、中間の改質アスファルトシート端部を斜めにカットして行ってもよい。
⑤ 露出防水用の改質アスファルトシートの砂面に改質アスファルトシートを重ね合わせる場合は、砂面にゴムアスファルト系のテープ又はペースト等で処理したのちに張り付け、転圧する(図9.3.12参照)。また、トーチ工法と同様に砂をかき取って改質アスファルトを表面に出したのちに張り付け.転圧する方法もある。
図9.3.12_重ね部の処理例.jpg
図9.3.12 重ね部の処理例
(2)平場の張付け(絶縁工法)
「標仕」9.3.3 (2)及び「標仕」9.3.3 (3)では、トーチ工法の種別 AS-T3、AS-T4及びASI-T1並びに常温粘着工法の種別 AS-J2及びASI-J1を絶縁工法としている。「標仕」表9.3.2及び「標仕」表9.3.3の工程で示される各シートの張付けは、①~③による。ただし、「標仕」9.3.4 (d)(1)(i) 及び「標仕」9.3.4(d)(1)(ⅱ)では、立上り際の幅500mm程度は改質アスファルトシートを全面密着させることとしている。また、改質アスファルトシートの張付けが複数日になる場合は、作業を中断する部分の雨仕舞処理、風対策等を考慮する。
① 部分粘着層付改質アスファルトシートの張付け(種別AS-T3、 AS- J2、ASI-T1及びASI- J1)
1)部分粘着層付改質アスファルトシートの張付けは、(1)(ⅱ)①による(図9.3.13参照)。
2) 部分粘着層付改質アスファルトシート相互の重ね幅は、幅方向は100mm程度とし、長手方向は突付けとし、その部分に200mm程度の増張り用シートを張り付ける(図9.3.14参照)。
なお、部分粘着層付改質アスファルトシート相互の張付けは、改質アスファルトシート製造所の仕様による。
3) 立上り際は、風による負圧が平場の一般部より大きくなるため、立上り際の幅500mm程度は密着工法とする(図9.3.15及び図9.3.16参照)。
図9.3.13_部分粘着層付改質アスファルトシートの張付け例.jpg
図9.3.13 部分粘着層付改質アスファルトシートの張付けの例
図9.3.14_接合部の処理例.jpg
図9.3.14 接合部の処理例
図9.3.15_立上り際の部分粘着層付改質アスファルトシートの納まり例.jpg
図9.3.15 立上り際の部分粘着層付改質アスファルトシートの納まり例
図9.3.16_ASI-T1の場合の立上り際の部分粘着層付改質アスファルトシートの納まり例.jpg
図9.3.16 ASI-T1の場合の立上り際の
部分粘着層付改質アスファルトシートの納まり例
② あなあきシートの張付け(種別 AS-T4)
1) あなあきシート相互は、隙間ができないように突付けで敷き並べる。突付け部の下側に改質アスファルトシート片(200 × 100(mm)程度)を3〜4m程度の間隔で敷き込み、空気の通路を設ける(図9.3.17参照)。
2) あなあきシートの上に改質アスファルトシートを張り付ける場合、あなあきの部分に溶融した改質アスファルトが十分に流れ込んでいることを確認しながら張り付ける。
3) 立上り際は、風による負圧が平場の一般部より大きくなるため.立上り際の幅500mm程度は密着工法とする(図9.3.18参照)。
図9.3.17_あなあきシートの敷き並べ例.jpg
図9.3.17 あなあきシートの敷き並べ例
図9.3.18_立上り際のあなあきシートの納まり例.jpg
図9.3.18 立上り際のあなあきシートの納まり例
③ 改質アスファルトシートを部分溶着する場合の張付け(種別AS-T3及び種別AS-T4)
「標仕」表9.3.2では、種別 AS-T3 及び種別 AS-T4 の場合、改質アスファルトシートを部分的に溶着する方法も可能とされている。
1) 改質アスファルトシートを部分溶着する場合は、改質アスファルトシートの裏面に付けられている指定溶融箇所及び下地をトーチバーナーで十分に溶融させながら平均に押し広げ、部分的に溶着させる(図3.4.19参照)。
なお、立上り際の幅500mm程度は密着工法とする。
2) 改質アスファルトシート相互の接合部は、(1)(ⅰ)②による。
図9.3.19_部分的に溶着する張り方の例.jpg
図9.3.19 部分的に溶着する張り方の例
(3) 断熱材の張付け
「標仕」では、屋根露出防水絶縁断熱工法における断熱材の張付けは、改質アスファルトシート製造所の仕様によるとしているが、施工の際には次の点に留意する。
① 断熱材は、順次隙間なく張り付ける。
② ルーフドレン回りへの断熱材の張付けは、ルーフドレンのつばから300mm程度離れた位置に四角く逃げて、浮き及び隙間ができないように張り付ける
(図9.3.20参照)。
③ 貫通配管回りへの断熱材の張付けは、貫通配管の回りに隙間及び浮きができないように張り付ける(図9.3.21参照)。
図9.3.20_ルーフドレン廻りへの断熱材の張付け例.jpg
図9.3.20 ルーフドレン回りへの断熱材の張付け例
図9.3.21_貫通配管回りへの断熱材の張付け例.jpg
図9.3.21 貫通配管回りへの断熱材の張付け例
(4) 立上り部の張付け
(i) トーチ工法の場合
① 立上り部の張付けは(1)(i)による。
② 平場が部分粘着層付改質アスファルトシートを用いた絶縁工法の場合は、部分粘着層付改質アスファルトシートを非露出複層防水用の改質アスファルトシートに代えて張り付けて、平場へ張り重ねる。
③ 立上り部への改質アスファルトシートの末端部は、所定の位置にそろえて、押え金物を用いて留め付け、シール材を充填する(図9.3.22参照)。
(ⅱ) 常温粘着工法の場合
① 立上り部の張付けは、(1)(ⅱ)による。
② 平場が部分粘着層付改質アスファルトシートを用いた絶緑工法の場合は、部分粘着層付改質アスファルトシートを非露出複層防水用の粘着層付改質アスファルトシートに代えて張り付けて、平場へ張り重ねる。
③ 立上り部への粘着層付改質アスファルトシートの末端部は、所定の位置に
そろえて、口あきのないよう転圧し、押え金物を用いて留め付け、シール材を充填する。
図9.3.22_防水層端部の納まり例(水切りあごタイプ).jpg
図9.3.22_防水層端部の納まり例(笠木タイプ)2.jpg
図9.3.22 防水層端部の納まり例
(5) ルーフドレン、貫通配管等との取合い
(i)トーチ工法の場合
① ルーフドレン回りは、改質アスファルトシートをトーチバーナーを用いてルーフドレンのつばに100mm程度張り掛かるように、増張り用シートの上に張り重ねる。防水層端部にはシール材を塗り付ける。絶縁工法の場合は、ルーフドレンのつばから400mm程度は密着させる。
② 貫通配管回りは、改質アスファルトシートをトーチバーナーを用いて貫通配管及び周囲の増張り用シートに張り重ね、貫通配管立上りの所定の位置に防水層の端部をそろえ、ステンレス製既製バンド等で防水層端部を締め付け、防水層の末端部及び貫通配管の根元部はシール材を塗り付ける(図9.3.23 参照)。
(ⅱ) 常温粘着工法の場合
① ルーフドレン回りは、粘着層付改質アスファルトシートをルーフドレンのつばに100mm程度張り掛かるように、改質アスファルトシート製造所の仕様により増張り用シートの上に張り重ねる。防水層端部にはシール材を塗り付ける。絶縁工法の場合は、ルーフドレンのつばから 400mm程度は密着させる。
② 貫通配管回りは、粘着層付改質アスファルトシートを所定の位置に防水層の端部をそろえ、ステンレス製既製バンド等で防水層端部を締め付け、防水層の末端部及び貫通配管の根元部はシール材を検り付ける(図9.3.23参照)。
図9.3.23_貫通配管回りの取合い例.jpg
図9.3.23 貫通配管回りの取合い例
(e) 仕上塗料塗り
(1) 仕上塗料は、かくはん機等を用いて、顔料及び骨材等が分散するように注意しながら十分練り混ぜる。
(2) 仕上塗料塗りは、所定の塗布量をはけ又はローラーばけ等によりむらなく均一になるように塗布する。
(f) 検査
改質アスファルトシート防水層施工途中における検査の留意点は9.1.3(b)を参照されたい。
(g) 施工時の気象条件
施工時の気象条件については、9.1.3(a)を参照されたい。
なお、防水施工中に降雨・降雪が生じた場合は、張付けを中止し、張りじまい部を焼いた金ごてやシール材で処理する。絶縁工法の場合の防水層端部は、改質アスファルトシート類で養生張りを行う。