10章 石工事 6節 床及び階段の石張り

第10章 石工事

6.床及び階段の石張り

10.6.1 適用範囲

建物内部及び建物周辺の外部床又は階段に、石材を仕上材としてセメントモルタル並びに張付け用ペーストで施工する工事に適用する。下地コンクリートとして土間スラブ、構造スラブ、防水層保護コンクリート等がある。

人が直接接触する部位であること、様々な外力が作用すること、外部にも使用されることから次のようなことに留意する。

 (1)吸水率が少ないこと。
 (2)耐酸性があること。
 (3)耐摩耗性があること。
 (4)汚れにくいこと。
 (5)ぬれた状態でも滑りにくい表面加工とすること。

 (6)部分的な凹凸がなく、平たんであること。

10.6.2    床の石張り

(a)材料
(1)石材の厚みと加工
床用の石材は歩行等の外力が常に作用するので、外壁よりは厚めのものが用いられる。有効厚さ30mm以上が一般的で車両通行部位では40~50mm以上が用いられる。
薄い場合には割れ等の欠陥が出やすい。

滑りに配慮し、本磨きや水磨きは避ける。 また、使用状況から、水掛りとなる部位や、水が持ち込まれやすい部位では粗面仕上げとする。

(2)石材裏面の処理
裏面処理はぬれ色・白華防止を目的としてなされるが、

裏面処理材にはモルタルとの付着性が悪いものもあるので、目的に合った材料を使用して、小口部分も忘れずに処理を行う。また、ぬれ色は下地の適切な排水によっても防ぐことができるので、裏面処理材のみに頼るのではなく、排水計画の十分な検討が必要である。

また、エントランス、風除室等は外部からの雨水が持ち込まれやすく、また、外構から連続して防水がなされていることが多く、屋外側の水が、敷モルタル層を通じて屋内側に浸入し、ぬれ色や白華が発生している例がある。室内側にも防水を施す場合には防水立上りで内外を遮断し、排水経路を確保するなど、対応が望まれる。

また、外部から持ち込まれる雨水に対しては入口に排水溝を設けグレー チングを設置するなどの対策も有効である。 天候に応じてマットを設置したり、こまめなふき取りで対処するなど、維持管理面での対応も有効であり、維持管理 ・ 保全に関する情報として使用者に伝えておく必要がある。

(b)取付け代

下地コンクリー トの凹凸・不陸及び石厚の誤差を吸収するために、石厚に応じた取付け代が必要となる。 特に石厚 50mmを超える割石の場合には、石厚のばらつきが避けられないため、取付け代は 60mm程度とされている。

(c)下地ごしらえ
下地コンクリートにワイヤブラシをかけ水洗いするなど、十分な清掃を行ったのち、水湿しを行い、コンクリートとの付着阻害やドライアウトを防止する。 敷モルタルは所定の厚さで均等に定規で均しながらむらなく敷く。
敷モルタルはセメント1に対し、砂4程度に少量の水を加え、手で握って形が崩れない程度の硬純りモルタルとする。

敷モルタルの厚さの不均ーが仕上げ面にも影響し、割れ、はがれ等の原因となるので、下地コンクリートの大きな不陸は、あらかじめモルタルで調節しておく。

(d)石材の据付け
(1)仮据え

柱脚部や周辺壁に記されたろく(陸)墨より張った水糸に合わせて石材を仮据えし、十分なたたき締めを行う。 あと工程の本据えで隙間が生ずると、割れ、はがれの原因となるので、特に入念に行う。

(2)張付け用ペーストの散布
普通ポルトランドセメントに水を加えた張付け用ペーストを敷モルタルの上に、石材の裏面全面に行きわたるように十分に散布する。
張付け用ペーストは、石材と敷モルタルを付着させるだけでなく、荷重を分散させる目的もある。

また、張付け用ペーストの量が少ないと、石裏に空隙ができ、水に接する外構や出入口回りではぬれ色が抜けにくいことがあるので十分な量を散布する。

(3)本据え

張付け用ペースト散布後、再度石材を置き、木づちやゴムハンマー等で十分たたき締め、不陸や目違いがないように本据えを行う。

(e)目 地
目地は意匠や調整代の目的だけでなく、目地を設けることにより、石材を面として一体化させたり(目地モルタルによる一般目地)、取合い部等での挙動吸収を目的としてシーリング材を施す目地もある。目地部分から雨水や清掃水が流れ込み、ぬれ色・白華の発生等様々な障害を起こしやすい。

床石では、施工時の角欠けや、砂利等が挟まった時の角欠けも多いので、十分な幅の目地を取ることとしている。

(ⅰ)一般目地
①   目地幅

目地幅は目地モルタルやシーリング材が確実に施工できるだけの幅を取る。外部は日射等による挙動の影響があるので、内部より広くする必要がある。

②目地材の充填
石材の上に乗って作業しても差し支えない程度に敷モルタルが硬化したのちに目地材の充填を行う。
目地モルタルはゴム付きへら(ワイパーモップ)を用いて全体に行きわたるよう目地モルタルを詰め込む。

目地からはみ出した余分なモルタルは、乾いた布で速やかにふき取り、仕上げる。

③ シーリング材の充填

シーリング材は2成分形ポリサルファイド系シーリング材が一般的である。まれに室内床で1成分形シリコーン系シーリング材が使用されるが、シリコーンシーリング材特有の汚染が発生したり、再施工時に新規シーリング材との接着性が阻害されるので好ましくない。

(i)伸縮調整目地
① 設置位箇
石材そのものあるいは躯体側コンクリート・下地コンクリートの膨張や収縮によって、部材の割れ、せり上り、目地割れ等の障害が予想される場合には、伸縮調整目地を設ける。
床面積が広い場合や、細長い通路で一方向の変動が大きい場合は床面積 30m2程度ごと、細長い通路の場合 6 m 程度ごとに伸縮目地を設ける。

隅の立上り部分にも部材の挙動が集中する場合があるので 伸縮調整目地の設置を考慮する。

② 設置工法
伸縮調整目地は図10.6.1に示すように発泡プラスチック材等の弾性目地材で敷モルタルを仕切り、目地とする。
防水層保護コンクリートを下地とする場合も、防水層保護コンクリートの伸縮目地と同じ位置に伸縮目地を設け
る。 位置がずれていると、下地の挙動で石材等にひび割れが発生する場合が多い。
伸縮調整目地にはシーリング材を充填し、仕上げる。
2成分形ポリサルファイド系シーリング材が一般的である。

壁際等雨水のたまりやすい部位ではシーリング材も故障を起こしやすく、雨水の浸入が白華を招くことも多い。


図10.6.1 伸縮調整目地の例

10.6.3    階段の石張り

階段の踏石は床の石張りに準じ、け上げ石は外壁湿式石張りに準じて施工する(図10.6.2 参照)。

屋外階段では、躯体や下地で十分な水勾配及び排水経路を確保し、水が滞留しないことを確認する。水勾配が不十分な場合や滞留水がある場合には、モルタルで下地を補修しておく。踏面に使用する石材は防滑性を高めた粗面仕上げとする。また、床面の張り石との納まりや、排水溝との関係に留意する。 階段石がむく石の場合はアングル材等で下地コンクリートと敷モルタルのずれ防止を講ずる場合もある。


イ.板石を用いた例


ロ.むく石を用いた例

   図10.6.2 階段石の例

10章 石工事 7節 特殊部位の石張り

第10章 石工事

7.特殊部位の石張り

10.7.1 適用範囲

アーチ、上げ裏笠木、甲板等に石材を用いる場合はその条件の特殊性を十分考慮して、計画施工する必要がある。 施工面においても標準工法のほか、特殊な材料や工法等の併用が必要となる。

組積造に見られるアーチでは、石材には圧縮力しか作用しないようになっているが、現在、わが国で施工されるアーチ、上げ裏の石材は板材を吊る形式のため、石材に自重が長期荷重として作用するので、長期の曲げ及び引張り耐力が必要である。 石材の耐力も含め、いかに安全策を講ずるかが重要である。

屋外の笠木等では真夏には石材表面が 60℃以上にもなる。 石材の熱伸縮を吸収するため、伸縮調整目地を適当な間隔に設ける。花こう岩の場合、線膨張率は 6~9 x 10-6/℃程度である。外壁等の部位が乾式工法であっても笠木、窓台等平場部分は湿式工法とすることが多い。白華の発生防止のため、笠木類を乾式工法で取り付ける時は金物が勾配なりに取り付けられるので、金物形状に注意する。

10.7.2    アーチ、上げ裏等の石張り

(a)    材料
(1)石材の厚み
石材の厚さは長期の耐力を見込み、十分な寸法を確保する。 溝加工や切欠きは避ける。

乾式工法同様石材の耐力が重要であるので、密度や吸水率等の一般物性のほか、曲げ、仕口部強度を十分に把握しておく。

(2)石材の加工
(ⅰ)見上げ面

見上げ面は原則として、目地合端にだぼ・引金物用の穴を設ける。石材の幅又は長さが、350mmを超える場合は、吊りボルト用の穴を石材 1 枚当たり2 箇所設ける。

(ii) 下がり壁 ・カ石
下がり壁部分等は原則 として、縦目地合端にだぽ ・引金物用の穴を設け、引金物で保持する。
受金物用の力石は、斜めだぼ 2 本と接着剤併用で石材裏面に1枚当たり2箇所設ける。

なお、力石に代えて、アングル材をストーンアンカーで固定する方式も用いられる。

(3)石材裏面の処理
アーチ、上げ裏の石材が万が一にも破損すると、すぐさま落下の危険が生じるため、ガラス繊維メッシュ等による裏打ち処理は有効である。
また、躯体コンクリートを伝わる雨水によるぬれ色や白華を防ぐために石裏面処理が有効である。

いずれの適用も特記されなければならない。

(b)取付け代
(1)湿式工法・空積工法

湿式工法及び空積工法の場合の取付け代(下地と石裏面の間隔)は,40mmを標準とする。

(2)乾式工法

乾式工法及び吊りボルトを用いる場合の取付け代は,70mmを標準とされている。

(c)下地ごしらえ
(1)見上げ面
湿式工法の場合は、流し筋工法を採用するが、上向きの溶接作業となるので防錆処理も含めて施工管理が重要となる。
乾式工法の場合は、壁面の場合とは異なり、先付けアンカーの適用を原則としている。

やむを得ずあと施工アンカーを採用する場合には、上向きに削孔して取り付けなければならいため、品質のばらつきや常時の下向き荷重に対して十分な安全率を見込んで計画する。 吊りボルトの取付けも同様に考える。

(2)下がり壁部分
荷重受金物を石材 1 枚当たり 2 箇所設骰する。

役物で L型にする場合は工場で一体化してくる。 当て石を接着し、合端にはかすがいを取り付ける。

(d)石材の取付け
(1)見上げ面
見上げ部分の石材の固定は、湿式工法では堅固な仮支持枠等で仮支えし、あいだぼ入れとし、引金物、受金物、吊金物を用いて,堅固に取り付ける。

吊りボルトは化粧ボルトを用いるが、意匠上吊りボルトを見せたくない場合は、厚めの石材とし、象眼する方法もある(図10.7.1 参照)。

乾式工法では石材自重による長期荷重が曲げや引張りとして作用するので、十分な安全率を見込む必要がある。
石材寸法を必要以上に大きくしないとか、金物個数を増やすなどである。

金物、治具の工夫により、仮支持枠類を省略できる。


図 10.7.1 上げ裏の施工

( 2) 下がり壁部分
湿式工法では荷重受けとなる力石又は金物を下地に取り付けた受金物に乗せ掛け、引金物、あいだぼにより下地に緊結する。
乾式工法では石材側面のだぼを介しファスナーで面外と鉛直方向の支持を兼用する例もあるが、施工性を考慮して自重受けとなる力石や金物を用いる場合が多い。
湿式工法、乾式工法とも上げ裏部の石材を工場で一体化したL型部材を用いる場合、上げ裏部の石材合端にもだぼを設け、引金物、ファスナーを設置する。

壁目地にシーリング材が施工されても裏面への雨水の浸入は長期的には防ぎようがなく、その雨水が下がり壁下部より滴下したり、上げ裏石内部に水がたまる故障例があるので、雨水排出機構を確保する必要がある(図 10.7. 2 参照)。


図10.7.2 上げ裏部 フラッシングの例

(e)裏込めモルタルの充填

湿式工法を採用した場合には裏込めモルタルを充填するが、その方法は外壁湿式工法に準じる。

( f )目 地

特殊部位では形状納まりが複雑となり、また、施工性も決して良くはない。加工や施工の誤差を吸収するためにも十分な目地幅を確保する。 したがって、他部位との取合い部は誤差の吸収に加え、石張り面の挙動を考慮した十分な幅の伸縮調整目地とする。

10.7.3    笠木、甲板等の石張り

(a)    材料
(1)石材の厚み

笠木、甲板の石材は使用状況に応じた厚さとし、特に屋外に使用する場合は十分な厚さのものを使用する。笠木では石厚 40mm以上を採用することが 望ましい。

(2)石材の加工
(i)湿式工法
湿式工法では、石材の幅が、300mmを超える場合は、目地合端の片側、両端部より50mrn程度の位置に引金物用の穴あけ、目地合端両側、両端部より85mm程度の位置にだぼ用穴あけを行う。 石材の幅が、300mm以下の場合は、目地合端の片側、中央1箇所に引金物用の穴あけ、目地合端両側の両端部2箇所にだぼ用穴あけを行う。

幅の小さい石材ではだぼに引金物を取り付け、引金物用の穴あけをなくし、加工に伴う欠陥を少なくする工夫もある。

(ii) 乾式工法

乾式工法では目地合端両側に,2箇所だぼ用穴あけを行う(図 10.7.3 参照)。


図10.7.3 乾式工法による笠木の取付け例(JASS 9(一部修正)より)

(3)石材裏面の処理
モルタルが比較的多く使用される部位であること、また、笠木は雨水を直接受けるので、白華防止のための石裏面処理は積極的に行うべきである。
外壁にゴンドラを降ろすときの養生不備による損傷や、無理な加力もあり、笠木には不具合が発生しやすいが、

人目に付かず軽微なうちの故障が発見されにくいので、破損時に備えた裏打ち処理も検討する。

(b)取付け代

「標仕」では、湿式工法の場合は 40mmを標準とし、乾式工法の場合は特記によるとしている。笠木下地となるパラペット天端は躯体に屋上側への水勾配を設け、雨水の滞留、流出による白華の発生等の不具合防止を固る。

(c)下地ごしらえ
(1)湿式工法
石材の幅が、300mmを超える場合は、径 9mmのアンカーを下地天端で2 列に、間隔 400mm程度に設けておき、これに引金物緊結用鉄筋を添え溶接する。

石材の幅が 300mm以下の場合は、下地天端中央に引金物を設けて石材を取り付ける。

(2) 乾式工法

所定の位置にアンカーを設け、笠木、窓台の天端で水勾配を設ける。

(d)石材の取付け

(1)湿式工法

笠木の長さは、900mm程度とし、下地清掃と十分な水湿しののち、目地合端の片側にだぼを取り付けておき、他端は、引金物を下地鉄筋に留め付け、通りよく目違い等のないように, 裏込めモルタルを隙間なく充填して固定する。

(2)乾式工法

(ⅰ)石材の輻が 300mm以下の場合は、両端部及び目地合端中央に1箇所ずつファスナーを設ける。

(ⅱ)石材の幅が 300mmを超える場合は、両端部及び目地合端に2箇所ずつファスナーを設ける。

いずれもファスナーは外れ止めで、鉛直荷重の支持は裏込めモルタルによる。全充填を基本とするが団子状に設置する場合もある。

(e)目 地

外部の目地は 8~10mmを標準とし、シーリング材を充填する。これは、止水及び変位吸収を目的としたもので、2成分形ポリサルファイド系シーリング材の使用が多い。   内部目地ではモルタル目地としてもよい。ただし、他部材との取合い部や、変位の予想される部分では伸縮調整目地とし、シーリング材を充填する。

(f ) 面台、棚板の据付け

笠木と同じく水平部材である屋内の面台や棚板の取付けは、床の石張りと同様に行う 。

10.7.4 隔て板

(a)材料
(1)石材の厚み
隔て板は一般的に自立壁となるので.薄い石材では思わぬ衝撃が加わった際に破損につながるため、厚さが特記される。 特記のない場合には40mmを標準とされている。
便所、浴室等に用いられるり隔て板の石質はテラゾが一般的であったが、近年は意匠上花こう岩や大理石の使用例が多い。
ただし、水回りでの大理石の使用には光沢の低下等の不具合が生じやすいので、その特質を踏まえて使用すべきである。

特に床にのみ込ませた石材の下部は、清掃時に汚れた水を吸い上げ、内部に染み込んだ汚れとなるので注意する。

(2) 石材の加工

石材の加工は、目地の合端にだぼ用の穴あけ、上端の端部にはかすがい用の穴あけを行う。

(b)工 法
隔て板と前板の固定方法は、一般的には石板上端を径 6mmのステンレス製かすがいを用い、併せて、縦方向に 2~3 箇所程度径5mmのだぼを用いて固定する。
自立する隔て板は、床仕上げ内に 20mm以上のみ込ませ、モルタルにより固定する。適宜補強金物を用いる。

隔て板と前板の固定は縦方向に 2 箇所以上のだぼを用いて固定する(図 10.7.4参照)。


図 10.7.4 隔て板の例

10.8.1 石先付けプレキャストコンクリート工法

「標仕」に示された湿式工法、空積工法、乾式工法以外に、よく用いられるエ法として「石先付けプレキャストコンクリート工法」がある。  石先付けプレキャストコンクリート工法は、石材をあらかじめ工場でプレキャストコンクリートに先付けすることによって仕上げとし、カーテンウォールのような部材として取り扱う工法である。

したがって、仕上げ工程の高所での危険な作業が減り、資材運搬の効率化や労働カ・輸送の削減、工期短縮、地震力や風荷重に対する安全性向上等の長所があり、湿式工法や乾式工法では対応できない高層の建物や柔構造の建物等に多く採用されている。また、特殊な部位や特別な性能(電波吸収等)をもたせる外壁で張り石仕上げとする場合は、ほとんどがこの工法である。

石先付けプレキャストコンクリート工法では,石材裏面の処理が十分に行えるので、ぬれ色や白華の発生を防ぐことができる。また、プレキャストコンクリートに先付けされている石材は、建物の動きによる変形が直接影響しないため、割れ等を生じることがほとんどない。

詳しくは 17章 3節 日本建築学会 「JASS 9 張り石工事」、同「JASS14 カーテンウォール工事」等を参照

11章 タイル工事 1節一般事項

11章 タイル工事

01節一般事項

11.1.1 適用範囲

この章は、通常の建築の内壁、外壁及び床の表面に、仕上材として陶磁器質タイルをセメントモルタル又は接着剤を用いて手張りで施工する陶磁器質タイル張り工事、コンクリートの型枠にタイルを仮付けし、建築現場でコンクリートを打ち込む陶磁器質タイル型枠先付け工事に適用する。

11.1. 2 基本要求品質

(a) タイル工事に使用する材料としては、仕上げ材としてのタイルと張付け用材料が主なものである。このうちタイルについては、一般的な品質はJISによることにしている。また、タイルの寸法については、JISによって標準的なものが定められているが、実際の工事に当たっては、タイル割りによって若干タイルの寸法を調整することがある。この場合にあっては、指定寸法に対する許容寸法を定めるときに該当するJISの規定を適用する。タイル製品については、(-社) 公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」により評価がなされており、この結果を活用するとよい。

タイル以外の材料にあっては、指定されたJISに適合することの証明を材料製造所から提出させる。JISの指定されていない材料にあっては、設計図書の指定材料であることの確認のほか、材料製造所から実績を証明する資料を提出させることによって確認するとよい。

(b) タイル工事の仕上り面は、タイルと目地によって構成され、タイルの寸法や施工方法等により異なるものとなっている。

「標仕」11.1.2 (b)でいう「所定の形状及び寸法を有する」とは、材料としてのタイルの形状や寸法でなく、タイル面の仕上り状態として、タイル寸法のばらつきによる目地の通りの精度をどのように計測し、判断するかを提案させ、実施させることと考えればよい。

(c) タイル工事の完成した状態としては、下地であるコンクリート躯体とモルタル層及びタイルが一体となっていることが最も望ましいものであるが、適切な施工方法で施工した場合であっても、「標仕」11.1.5(b)に定める打診による確認を行うと、タイル面に浮きを発見することがある。「標仕」11.1.2(c)でいう「有害な浮き」とは、下地モルタルがタイル数枚分浮いているものと考えればよい。この場合の対応としては、浮きの認められるタイル部分の目地にカッターを入れタイルを撤去し張直しを行うか、浮き部分にエボキシ樹脂等を注入する方法等により、補修を行う必要がある。

これに対して、例えば、タイル1枚の一部分のような部分的な浮きの場合、タイル張付け後どの程度の時間が経過したかによるが、これが直接はく落につながることは少なく、無理に補修しようとすれば、タイル張り撤去に伴う振動や注入時の圧力により、周囲の健全部分に対してはく離を誘発するおそれがある。このような場合は、施工後相当時間経過したのちに状況を再度確認し、必要な処置を施すなど適切な保全を行うことが重要となる。

打診による確認により浮きが認められた場合、その浮きが有害な浮きであるかどうかは、タイルの形状、寸法、施工方法、建物の部位等を勘案し総合的に判断することになるが、「品質計画」においてその限度を定めておくようにする。

11.1.3 伸縮調整目地及びひび割れ誘発目地

(a) タイル仕上げ面には、乾燥及び湿潤、日射等による温度変化.地震等の外力により、ひずみが生じる。このひずみによる力が各材料の層間の接着強度を上回るとはく離が生じるので、タイル張り面の適切な位置に伸縮調整目地を設けることで、タイル面のはく離の拡大を低減する必要がある。

また、躯体及び下地モルタルにひび割れが生じると、タイル面にもひび割れが生じ、タイルの接着性能にも悪影響を及ぼすことがあるため、これを防止するためにも躯体にひび割れ誘発目地を設ける必要がある。

このため、「標仕」6.8.2及び「標仕」11.1.3では、下地のひび割れ誘発目地、タイル型枠先付けのひび割れ誘発目地及びタイル面の伸縮調整目地の規定を設けている。「標仕」11.1.3(a)の「なお書き」は、ひび割れ謗発目地、打継ぎ目地及び構造スリットの位置に伸縮調整目地が設けられていなかったことが原因で、タイルにはく離が生じ落下事故が起こったことにより追加されたものである。したがって、「標仕」より上位の設計図書で伸縮調整目地設置の指示がない場合(「特記がない場合」)においても、ひび割れ誘発目地の位置には、必ず伸縮調整目地を設けなくてはならないということを述べている。

一方、ひび割れ誘発目地がない場合の伸縮調整目地については、効果があるという考え方と意味がないという考え方の両論があるが、一般的には前者の考え方で設計される場合が多い。したがって、伸縮調整目地の位置には、ひび割れ誘発目地がない場合もある。

なお、ひび割れ誘発目地及び伸縮調整目地の位置は,タイルの割付けを考慮して設計される。

(b) 「標仕」では、ひび割れ誘発目地及び伸縮調整目地の位置は、特記によることとしている。特記のない場合の標準的なひび割れ誘発目地(伸縮調整目地とも)の位置を図11.1.1及び2に示す。


図11.1.1 標準的なひび割れ誘発目地(伸縮調整目地とも)の位置
(外部側に柱形がある場合)

図11.1.2 標準的なひび割れ誘発目地(伸縮濶整目地とも)の位置

    (外部側に柱形がない場合)(その1)


図11.1.2 標準的なひび割れ誘発目地(伸縮調整目地とも)の位置
    (外部側に柱形がない場合)(その2)

外部側に柱形のない場合には、特記により図11.1.3に示すような位置にひび割れ誘発目地(伸縮調整目地とも)が設けられることがある。これは柱心からある程度離れてひび割れ誘発目地を設けると、斜めひび割れの防止に有効であるという考え方があるためである。


図11.1.3 特記によるひび割れ誘発目地(伸縮調整目地とも)の位置の例

(c) 屋内のタイル張りにおいては、入隅部では躯体及び下地モルタルの動きにより、また、建具等の他部材との取合い部では、タイルと他部材との挙動が異なるため.タイルに大きな力が作用する。このため、これらの部分には伸縮調整目地を設ける。

(d) ひび割れ誘発目地及び伸縮調整目地の詳細例を図11.1.4〜6に示す。


図11.1.4 陶磁器質タイル張りのひび割れ誘発目地及び伸縮調整目地の例

 

図11.1.5 陶磁器質タイル型枠先付けのひび割れ誘発目地及び伸縮調整目地の例


       図11.1.6 垂直伸縮調整目地の例

(e)下地材料が異なる場合には、挙動が異なるため伸縮調整目地を設け、ひび割れの発生を防ぐ。意匠上、不適当な位置ならば設計担当者と打ち合わせる。

11.1.4 あと張り工法施工前の確認

(a) モルタル塗り面の下地コンクリートからの浮きの原因には、次のようなものがあり、(1)〜(3)の例が多い。

(1) 下地表層の強度不足による表層破壊(硬化不良、レイタンス等)
(2) 下地面の清掃の不足による接着不良
(3) 下地面の水湿しの不良によるモルタルの硬化不良
(4) 施工時の養生不足による硬化不良(直射日光等による急述な乾燥、寒冷期の保温加熱等の不良)
(5) モルタルの塗厚の過大による収縮

(6) 長期にわたる下地の変形(躯体膨張、収縮、ひび割れ)

(b) モルタルの浮きの検査は、テストハンマー、木づちの類で塗り面をたたき、打撃音によって判断する。一般に正常音(高く、硬い音)であれば浮きがなく、異常音(響くような大きな音)であれば浮きがある。

(c) モルタルの浮きの補修方法には次のようなものがある。

(1) 一般には、浮いている部分をはつり取ってモルタルを塗り直す。はつり方によってはかえって浮きが進むおそれがあるので、カッターで浮いている箇所の周囲を切断し、絶縁してからはつる。

はつったのちは、ワイヤブラシ等で十分に清掃し、水湿しを行ってセメントペーストを塗り、次の工程にかかる。

(2) 補修方法には、(1)のほかアンカーピンニングエポキシ樹脂注入工法、アンカーピンニングポリマーセメントスラリー注入工法等があるが、これらは主として改修工事に採用される場合が多い。特にエポキシ樹脂は、湿潤状態の箇所では接着不良を起こすので、湿潤用のものを使用する。

11.1.5 施工後の確認及び試験

 

(a) 外観の確認
タイル張り面は、目を近づけて見るだけではなく、離れたところから施工面全体を眺めて、色調・仕上り状態・欠点の有無等を判断することが重要である。限度見本がある場合は、ばらつきがこの限度見本の範囲内であることを確認する。

タイル張り面は、目地の通りが基準となって不陸等がよく目立つ。外観を見て見苦しい段差・目違いがあってはならない。また、目地の深さと目地幅の不ぞろい及び目地切れは好ましいことではない。目地深さが深い場合、将来の故障につながりやすい。また、目地材の水密性を確保するためにも、目地切れがないことを確認する。

(b) 打診による確認

(1) タイルの施工面については、不陸・目違い、ひび割れ等の目視確認を行うとともに、「標仕」11.1.5 (b)により、屋外、屋内の吹抜け部分等のタイル張りは、全面にわたり、打診による確認を行う。打診は張付けモルタル硬化後で、かつ、足場の残っている期間に行うのがよい。

(2) 打診は、図11.1.7に示すような打診用ハンマーを用いて行う。


    鋼球型テストハンマー
   図11.1.7 打診用ハンマー

 

(3) 打診の結果、浮きやひび割れが発見され、それが有害と判定される場合は、国土交通省大臣官房官庁営繕部「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)」により適正な方法で処理する。有害か否かの判定が困難な場合は、定期的に状態を観察して経時変化を確認し、危険度を勘案して判断するのがよい。

(4) 有機系接着剤を用いたタイル張りは、くし目ごてで施工することからタイルと接着剤とが隙間なく密着しているわけでなく、施工不良でなくてもタイルについて1枚の中で部分的に浮き音がすることがある。その場合は、浮き音がするタイルについて打診による確認を行い、 タイル1枚の中での浮き音が発生する割合を考慮して合否を判定する。判定が困難な場合は、タイルをはがして、接着状態を確認するとよい。

(c) 接着力試験

(1) 外装タイル張とり及び屋内の吹抜け部分等の環境条件の厳しい部位やはく落による危険度が高い部位についての接着力試験は、原則として、監督職員が立ち会う。ただし、通常の腰高と天井高の内壁や床のタイル張りのように、はく落による危険が少ない部位や、建物周囲こ植込等が設けられ、人が壁面等に近づけないような場合等安全上の配慮がなされている場合は、接着力試験を省略することができる。

(2) 試験体
(i) 試験の時期は、施工後2週間以上経過してから実施するのが一般的であるが、セメントモルタル張りの場合、夏期では1週間程度で強度が出るので「標仕」では強度が出たと思われるときとしている。ただし、試験を行うまでは足場を外せないので、他工事との工程の調整に注意する必要がある。
試験体は、タイルの周辺をカッターでコンクリート面まで切断したものとする。これはタイルのはく落がタイルだけではなく下地のモルタルからはく落することが多いので、この部分まで試験するためである。
なお、アタッチメントの大きさは、図11.1.8のようにタイルの大きさを標準とする。アタッチメントに合わせてタイルを切断すると誤差が大きくなるおそれがあるため注意が必要である。

ただし、二丁掛けタイル等小ロタイルより大きなタイルの場合は力のかかり方が局部に集中し、正しい結果が得られないことがあるので、小ロタイル程度の大きさに切断する。

(ii) 試験体の個数は「標仕」11.1.5(c)(ii)により3個以上、かつ、100 m2ごと及びその端数につき1個以上として、壁面全体の代表となるよう無作為に選ぶ。

(3) 試験機は、建研式引張試験機(図11.1.9)のほか、日本建築仕上学会認定の油圧式簡易引張試験器(図11.1.10)が開発されており、後者の方が軽量であるためアタッチメントや試験機の質量によって破断することが少なく、低強度まで測定が可能であり、普及している。


    図11.1.8 接着力試験の状況

 


    図11.1.9 建研式引張試験機

 


    図11.1.10 油圧式簡易り張試験器
    (日本建築仕上学会認定)

 

(4) セメントモルタル張りの場合の試験結果の判定については、引張接着強度のすべての測定結果が 0.4N/mm2以上の場合を合格とする。この引張接着試験は、施工品質を確認して、施工不良を排除することが主たる目的の試験である。昨今のタイル張りのはく離故障は、コンクリート下地と下地モルタルの接着界面が支配的になっている。このことを踏まえて、コンクリート下地の接着界面における破壊率の上限値が50%に設定された。

不合格が生じた場合には、該当するタイル施工部分の全面に対して、再び(2)(ii)に進じて試験を行う。不良部分については目地部を切断して、再施工しなければならない。

(5) 接着剤張りの場合には、接着剤層の破壊状態に基づいて合否を判定し、引張接着強度は参考値とする。一方、下地モルタル及びコンクリートに起因する破壊状態が主である場合には、セメントモルタル張りと同様に引張接着強度と破断状態で合否を判定する。

破壊モードの分類を図11.1.11に示す。タイルと接着剤の間の未接着は、くし目の谷部やタイル裏あし部に接着剤が充填されていない場合に生じる状態であり、接着剤とタイルの界面破壊と同一と判断する。

なお、接着剤の塗残し部分等の接着剤が塗付されていない部分も界面破壊と判断する。

   
図11.1.11 引張接着試験における破壊モード(JASS 19より)

合否判定のフロー図を図11.1.12に示す。凝媒破壊モードが T + A ≧ 50%(タイルの凝集破壊率と接着剤の凝集破壊率の合計が50%以上の場合)を合格とする。破壊モードがAT + MA> 50%(接着剤とタイルの界面破壊率及び下地モルタルと接着剤の界面破壊率の合対が50%を超える)ならば接着剤の界面破壊が主であり不合格とする。この条件に当てはまらない場合としては、下地の破壊が混在する場合がある。破壊モードがT + A< 50%、かつ、AT + MA<50%、かつ、M + CM + C ≦ 25%(下地モルタルの凝集破壊率、下地モルタルとコンクリートの界面破壊率及びコンクリートの凝集破壊率の合計が25%以下であれば、接着剤及びタイルの凝集破壊( T + A )が主と考えられるため、合格とする。破壊モードが T + A < 50%、かつ、AT+ MA < 50%、かつ、M + CM + C > 25%(下地モルタルの凝集破壊率、下地モルタルとコンクリートの界面破壊率及びコンクリートの凝集破壊率の合計が25%を超える)であるなら、下地の破壊比率が高いためセメントモルタル張りと同様に、下地モルタルとコンクリートの界面破壊が50%以下、かつ、引張接着強度が 0.4N/mm2以上の場合を合格とする。


図11.1.12 合否判定フロー(JASS 19より)

(d) 検査及び接着力試験の記録は保存して、維持保全時の判断資料として役立てるとよい。

11章 タイル工事 2節 セメントモルタルによる陶磁器質タイル張り

11章 タイル工事
02節 セメントモルタルによる陶磁器質タイル張り

11.2.1 適用範囲

(a) セメントモルタルによるあと張り工法の場合の作業の流れを図11.2.1に示す。


図11.2.1 セメントモルタルによる陶磁器質タイル張り(あと張り上法の場合)の作業の流れ

(b) 施工計画書

施工計画瞥の記載事項は、おおむね次のとおりであるが、その作成に当たってはタイル施工業者の協力を得て、十分検討されたものとする必要がある。

タイルの製造工場は、磁器質タイルの場合、通常設計図書に指定されるが、指定されない場合は、工場の規模、受注能力等を検討して承諾することになる。

なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。

① 工程表(見本決定、施工図完了、材料搬入、着工・ 完了、試験等の時期)
② タイルの製造工場名、施工業者名及び作業の管理組織
③ タイルの種類、形状、寸法(裏あしの形状、高さ、乾式・湿式の別)
④ 張付け用モルタル(調合、塗厚)、保水剤の使用
⑤ タイルの施工箇所、張付け工法、目地工法
⑥ まぐさ、窓台等のタイルの施工法
⑦ タイル割りの基準(基準線目地寸法)
⑧ 伸縮調整目地(位置、構成、施工法)
⑨ 関連工事との取合い(電気、機械、仮設)
⑩ タイル施工箇所の張付け順序
⑪ 下地モルタルの浮きの試験方法及び補修方法
⑫ 1回の張付けモルタルの塗付け量、練混ぜ方法及びその量の確認方法、練置き時間
⑬ タイル張り施工中及び施工後の養生方法(特に外壁の場合)
⑭ 排水勾配(雨掛り、水掛りの場合)
⑮ 水洗い
⑯ タイルの打診試験及び接着力試験方法(箇所、使用機器、試験体の作成方法)
⑰ 接着力試験不合格の場合の処置方法

⑱ 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等

 

(c) その他

外装タイルの施工に関して、(-社)全国タイル業協会では、タイル工事現場指導員制度を設けており、施工品質の確保に努めている。

11.2.2 材 料

(a) タイルの種類及び品質

(1) JIS A 5209(陶磁器質タイル)の抜粋を次に示す。

タイルのJISは国際規格との整合を図ることを目的の一つにして、平成20年に大幅に改正されている。従来のきじの質による区分(磁器質タイル、せっ器質タイル、陶器質タイル)がなくなり、吸水率の区分が設けられて吸水率によって I類、II類、Ⅲ類に分類されたが、 I類が従来の磁器質、 II類がせっ器質、Ⅲ類が陶器質にほぼ該当する。

JIS A 5209 : 2010
4. 種 類

タイルの種類は、次による。

a) うわぐすりの有無による区分
1) 施ゆうタイル
2) 無ゆうタイル

b) 主な用途による区分
1) 内装壁タイル
2) 内装壁モザイクタイル
3) 内装床タイル
4) 内装床モザイクタイル
5) 外装壁タイル
6) 外装壁モザイクタイル
7) 外装床タイル
8) 外装床モザイクタイル

備 考
1. ユニットタイルとした場合の区分は、次による。
a) 内装壁ユニットタイル
b) 内装壁モザイクユニットタイル
c) 内装床ユニットタイル
d) 内装床モザイクユニットタイル
e) 外装壁ユニットタイル
f ) 外装壁モザイクユニットタイル
g) 外装床ユニットタイル
h) 外装床モザイクユニットタイル

2. モザイクタイルより大きいタイルを混用するモザイクユニットタイルは、ユニットタイル全面積の50%以上がモザイクタイルで構成されなければならない。

c) 成形方法による区分
1) 湿式成形タイル
2) 乾式成形タイル

d) 吸水率による区分
1) I類(3.0%以下)
2) II類(10.0%以下)
3)Ⅲ類(50.0%以下)

参 考
吸水率による区分は、測定方法の変更に伴い、 I類は旧規格の磁器質、 II類はせっ器質、Ⅲ類は掏器質にほぼ該当する。

5. 品質特性

タイル及びユニットタイルの品質特性は、次による。
なお、製造条件が平物と同一の役物は、 5.9~ 5.17の品質特性の試験を省略してもよい。また、ユニットタイルの場合、5.1 ~ 5.17の品質特性を満足したタイルによって構成しなければならない。5.1 表面品質a) タイルの表面品質
タイルの表面品質は、JIS A 1509-2の4.(表面品質の検査方法)に規定する検査を行ったとき、次の基準を満足しなければならない。

1) 平 物
平物の表面品質は、表1による。

表1 平物の表面品質の基準

2) 役 物
役物の表面品質は、表2による。表2 役物の表面品質の基準

b) ユニットタイルの表面品質
ユニットタイルの表面品質は、JIS A 1509-13に規定する検査を行ったとき、表3の基準を満足しなければならない。ただし、役物ユニットタイルには適用しない。

表3 ユニットタイルの表面品質の基準

5.2 形 状
タイルの形状は、製造業者が定める。通常よく使用する標準的な平物及び役物、定形タイル及び不定形タイルの例を付図1に示す。また、 タイルの表面形状は、平面以外の形状とすること又は装飾のために模様を付けることができる。なお、使用部位表示で屋外壁及び屋外床を使用可能とするタイルは、裏あしを付ける。ただし、屋外壁用の外装接着剤張り専用のタイル及び屋外床用のタイルで、適切な施工方法を、カタログ、説明書などによって明示する場合は、裏あしがなくてもよい。また.屋外壁の場合、タイルの裏あしの形状及び高さは、5.7の規定による。

備 考
使用部位で屋外壁に使用するタイルには裏あしを規定しないが、9.3に示すように、ロビー、ホールなどで階高が1階を超えるモルタル施工するタイルには、裏あしを付ける。

5.3 寸 法
タイル及びユニットタイルの製作寸法は、製造業者が定める。通前よく使用するタイルの標準的な長さ及び幅の例を付図3~付図6に、ユニットタイルの標準的な長さ及び幅の例を付図2に示す。

a) 長さ及び幅の許容差
1) タイルの長さ及び幅の許容差
タイルの長さ及び幅の製作寸法に対する許容産は、JIS A 1509-2の5.(寸法及びばちの測定方法)に規定する測定を行ったとき、表4に示す数値とする。

表4 タイルの長さ及び幅の許容差

2) ユニットタイルの長さ及び幅の許容差ユニットタイルの長さ及び幅の製作寸法に対する許容差は、JIS A 1509-13に規定する測定を行ったとき、±1.6mmとする。

b) 厚さの許容差
タイルの厚さの製作寸法に対する許容差は、JIS A 1509-2の5.(寸法及びばちの測定方法)に規定する測定を行ったとき、表5に示す数値とする。

表5 厚さの許容差

5.4 ば ちタイルのばちの基準は、JIS A 1509-2の5.(寸法及びばちの測定方法)に規定する測定を行ったとき、表6に示す数値以下とする。ただし、各辺が50mm以下のタイルについては、JIS A 1509-2の4.(表面品質の検査方法)に規定を行ったとき、目立たなければよい。なお、不定形タイルには適用しない。

表6 ばちの基準

5.5 反 り

タイルの面反り、ねじれ、辺反り及び側反りの基準は、JIS A 1509-2の6(反り及び直角性の測定方法)に規定する測定を行ったとき、表7に示す数値以内とする。ただし、役物及び各辺が50mm以下の平物については、JIS A 1509-2の4.(表面品質の検査方法)に規定する検査を行ったとき、目立たなければよい。なお、不定形タイルには適用しない。

表7 反りの基準

5.6 直角性タイルの直角性の基準は、JIS A 1509-2の6.(反り及び直角性の測定方法)に規定する測定を行ったとき、表8に示す数値以下とする。ただし、役物、各辺が50mm以下の正方形状の役物及び短辺が50mm以下の長方形状の平物については、JIS A 1509-2の4.(表面品質の検査方法)に規定する検査を行ったとき、目立たなければよい。なお、不定形タイルには適用しない。

表8 直角性の基準

5.7 裏あしの形状及び高さ使用部位表示で屋外壁を使用可能とするタイルの裏あしの形状及び高さは、JIS A 1509-2の7.(裏あしの形状及び高さの測定方法)に規定する測定を行ったとき、次による。

a) 裏あしの形状形状は、あり状とし、製造業者が定める。

あり状とは、図1の例1に示すように、裏あしのほぼ先端部の幅(Lo)とほぼ付根部の幅(L1)とが、Lo> L1の関係にある形状をいう。また、例2に示すような裏あしの場合、高さ( h )の中央部付近の幅( L2 )が、Lo> L2を満足しなければならない。なお、例3に示すように、例1及び例2以外の形状であっても、ほぼ付根部の幅( L3 )が、Lo> L3 の条件を滴たしているものについては、あり状とみなす。


図1 裏あしの形状の例

b) 裏あしの高さ
制作寸法で定めた部分の裏あしの高さは、表9の基準を満足しなければならない。ただし、タイルの端部に傾斜を設けたときは、その部分を除く。

表9 裏あしの高さの基準

5.8 役物の角度タイルの役物の角度の許容差は、JIS A 1509-2の8.(役物の角度の測定方法)に規定する測定を行ったとき、±1.5° とする。

役物の角度の許容差は、複数の面で構成され、かつ、隣接する面との角度が直角の関係にあるものに適用する。ただし、不定形タイル、人為的に表面を凹凸にしたタイル、及び各面又は小さい方の面の長さが 45mm未満のタイルには適用しない。5.9 吸水率タイルの吸水率は、JIS A 1509-3に規定する測定を行ったとき、表10に示す基準を渦足しなければならない。
なお、試験は、煮沸法又は真空法のいずれを採用してもよい。

表10 吸水率の基準

5.10 曲げ破壊荷重及び曲げ強度

タイルの曲げ破壊荷重及び曲げ強度は、JIS A 1509-4に規定する測定を行ったとき次による。ただし、各辺が 50mm以下のタイルには適用しない。

a) 曲げ破壊荷重
タイルの曲げ破壊荷重は、表11に示す基準を満足しなければならない。

表11 曲げ破壊荷重の基準

b) 曲げ強度

タイルの曲げ強度は、測定i結果を記録する。

5.11 耐摩耗性

使用部位表示で屋外床及び屋内床を使用可能とするタイルの耐摩耗性は、次による。

a) 無ゆうタイルの耐摩耗性

無ゆうタイルの耐摩耗性は、JIS A 1509-5に規定する試験を行ったとき、表12に示す基準を満足しなければならない。

表12 無ゆうタイルの摩耗体積の基準

b) 施ゆうタイルの耐摩耗性

施ゆうタイルの耐摩耗性は、JIS A 1509-6に規定する試験を行い、その結果を表13に示すクラスに分類して記録する。

表13 施ゆうタイルの耐摩耗性評価のためのクラス分類

5.12 耐熱衝撃性

局部的な熱衝撃を受ける箇所に使用するタイルの耐熱衝撃性は、JIS A 1509-7に規定する試験を行ったとき、切れ、貫入などの欠点が生じてはならない。

5.13 耐貫入性

施ゆうタイルの耐貫入性は、JIS A 1509-8に規定する試験を行ったとき、貫入が生じてはならない。ただし、装飾のために貫入を施したタイルには適用しない。

5.14 耐凍害性

凍害を受けるおそれのある場所に使用するタイルの耐棟害性は、JIS A1509-9に規定する試験を行ったとき、タイルの表面、裏面又は端部に、ひび割れ、素地又はうわぐすりのはがれがあってはならない。

5.15 耐薬品性

タイルの耐薬品性は、JIS A 1509-10に規定する試験を行い、その結果を表14に示すクラスに分類して記録する。

表14 タイルの耐薬品性評価のためのクラス分類

5.16 鉛及びカドミウムの溶出性

食物が直に接する箇所に使用する施ゆうタイルの鉛及びカドミウムの溶出性は、JIS A 1509-11に規定する試験を行い、その結果を記録する。

5.17 耐滑り性

水ぬれする場所の床に使用するタイルの耐滑り性は、JIS A 1509-12に規定する試験を行い.その結果を記録する。

JIS A 5209: 2010

(2) 屋外の壁に使用するタイルの裏あしについては、(1)に示すようにJIS A 5209で規定されており、形状をあり状とし、その高さは、タイル表面の面積に応じて定められている。

タイルの裏面の例を図11.2.2に示す。


図11.2.2 タイル裏面の例

(3) タイルの材料は、(-社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4 (e)参照)において「標仕」に基づき品質を確認し、評価しているので、この結果等を参考にするとよい。ただし、外壁の接着剤による陶磁器質タイル張りに用いるタイルは、平成26年4月以降の適用となる。

(b) タイルの呼称

一般市販タイルの呼称及び寸法を表11.2.1に示す。

表11.2.1 一般市販のタイルの呼称及び寸法

(c) ユニットタイル

モザイクタイルはユニットタイルとして用いられる。また、小口未満の外装壁夕イル並びに100角、150角程度の小型の外装床、内装床及び内装壁タイルもユニットタイルとして用いられる場合が多い。ユニットタイルの寸法及び連結方法を表11.2.2並びに連結方法の例を図11.2.3に示す。ユニットタイルは作業性が良く、接着に支障がないものでなければならない。

なお、外装壁モザイクタイルの樹脂連結ユニットは、表紙がないため、現場での産業廃棄物を減量できるという特徴がある。

表11.2.2 ユニットタイルの寸法及び連結方法

  

  

  
図11.2.3 ユニットタイル連結方法の例

(d)役物タイル

(1) 役物タイルには一体成形のものと接着加工したものとがある。一体成形とは成形品をそのまま焼成したものであり、接着加工品は平物タイルを切断し、エポキシ樹脂等で接着したものである。二面の90°曲がりの役物は標準品として一体成形で製作される場合が多いが、三面以上の曲がりや90°以外の角度のもの、標準寸法以外のものは接着加工で製作される。ただし、接着に使用するエポキシ樹脂は耐久性に優れた品質のものでなければならない。

役物タイルの例を図11.2.4に示す。

(2) 窓まぐさ及び窓台部分に使用するタイルは、窓、出入口戸等との取合部ともなるので、その機能並びに納り等を考慮し、水切りの良いものとする。


図11.2.4 役物タイルの例

(e) 見本品等

(1) タイルは見本を提出させ、色調等を設計担当者と打ち合わせて決定する。

なお、形状、寸法裏あし等について、指定の製品ができることを確認する。

(2) 見本焼き

(i) 特殊な色調のもの、あるいは屋外のタイルで大量に使用する場合等で特記された場合は、見本焼きを行う。

(ii) 見本焼きによってタイルの色調、色むら、配色(2色以上のタイルを混合する場合)等を確認する。

(iii) 見本焼きの所要期間

① 当該製造工場の見本タイルと同じもの及び類似の見本タイルより作る場合は3週間程度必要である。

② タイルの型から作製する場合(同形状、同寸法でも表面のテクスチュアを変える場合等を含む。)、乾式成形法のタイルは7週間程度、湿式成形法のタイルは6週間程度必要である。

(3) 試験張り

(i) 試験張りは、相当量のタイル張りを行う場合でタイルの色調、配色及び目地の幅、色等を決定するために行う場合と、タイルの色調、配色を決定後、目地割り、目地幅等の決定のために行う場合があり、試験張りを行う場合には特記される。

(ii) 試験張りには、1週間程度必要である。見本焼きのあと、試験張りを行ってタイルを決定する場合は、双方に要する期間を考慮に入れておく必要がある。

(f) グリーン購入法適合タイル

陶磁器質タイルは、「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)」(平成12年5月31日 法律第100号)に基づく「環境物品等」の対象とされている。また、環境物品の判断基準等は、「環境物品等の調達の推進等に関する基本方針」(平成13年3月9日 環境省告示第11号)に示されているので、特記により環境物品として指定された場合は、これに適合することを製造業者等のカタログ等の資料により確認する必要がある(参考資料の資料1 1.3 (g)参照)。

11.2.3 張付け用材料

(a) セメントは、凝結時間、強度発現の速度、乾燥収縮の程度、作業性等を考慮して選択する。一般的にはJIS R 5210(ポルトランドセメント)に適合する普通ポルトランドセメントが使用されている。

(b) 細骨材は、15.2.2(b)によるが、「標仕」表11.2.1では細骨材の最大粒径が定められている。

細骨材の最大粒径が 2.5mmの場合は、川砂をふるいに通したもので得られるが、最大粒径が1.2mn及び 0.6mmの場合は、川砂をふるいに通しても量が得られないので、けい砂あるいは寒水砂が用いられる場合が多い。

(1) けい砂は、鋳型用のものが JIS G 5901(鋳型用けい砂)に粒度及び粒度分布が定められているので、これを用いるのがよい。種別は、最大粒径1.2mmの場合は20号、最大粒径 0.6mmの場合は35号である。

(2) 寒水砂は、大理石を砕いて製造される細骨材で、モルタル用骨材として用いられる粒度のものが市販されており、粒度の異なる2種類程度を現場で混合して用いるのがよい。

(c) 混和剤は、保水剤及びセメント混和用ポリマーディスパージョンが使用される。

(1) 保水剤

(i) 張付けモルタルには、夏期に限らず、四季を通じて保水剤を使用するのがよい。

(ii) 保水剤は、モルタルの乾燥を防ぎ、作業性を向上させる利点をもっている。しかし、混入量を誤ると、モルタルの流動性が増し、だれを起こして作業が困難になるおそれがあるので、規定された量を守ることが重要である。混人量については,15.2.2(d)(4)を参照されたい。

(2) セメント混和用ポリマーデイスパージョン(15.2.2 (d)(5)参照)は、接着性能の向上、張付けモルタルの耐久性の向上、ドライアウトの防止等の目的で使用される。接着性を改善するためには、混入量はセメントに対するポリマーデイスパージョン中の全固形分の質量比で、5%程度混入する必要がある。5%程度とするには、セメント1、砂1~2の混合割合の場合、固形分比45%のポリマーデイスパージョンでは約4倍の希釈液で混練する。ただし、温度又は風の影響で可使時間が短くなることがあるため、試験施工等によって作業性を確認するとよい。

(d) 既製調合モルタル

既製調合の張付けモルタルは、セメント、細骨材、混和剤等を工場において所定の割合に配合したものであり、現場調合モルタルに比較して品質のばらつきが少ない。

市販されている既製調合モルタルは数多くあり、その使用に当たっては、実績等の資料によりタイルの種類や工法に適合するものであることを確認するとともに、その性能(作業性や接着性等)も十分に検討しておく必要がある。

品質基準としてJIS規格はないが、 (-社)公共建築協会の「建染材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4(e)参照)において、表11.2.3のように既製調合モルタル(タイル工事用)の品質・性能基準を定め、評価を行っているので、その結果を参考にするとよい。

表11.2.3 既製調合モルタル(タイル工事用)の品質・性能基準

(e) 吸水調整材は.15.2.2(e)による。

(f) 既製調合の目地材は、セメント、細骨材、顔料、混和剤等を工場において所定の割合に配合した材料である。タイルの種類、日地幅、目地色を確認して材料を選択する。

なお、(-社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4 (e)参照)において、表11.2.4のように既製調合目地材の品質・性能基準を定め、評価を行っているので、その結果を参考にするとよい。

表11.2.4 既製調合目地材の品質・性能基準

11.2.4 その他の材料

(a) 引金物は、径0.6mm以上のなましステンレス鋼線(SUS304)を使用する。銅線は、腐食しやすいので使用しない。引金物の取付けは、図11.2.5に示すように湿式成形法のタイルはタイルに設けられた穴に通し、乾式成形法のタイルはエポキシ樹脂により接着する。


図11.2.5 引金物を取り付けたタイルの例

(b) シーリング材は、9章7節による。耐久性、伸縮追随性、水密性、作業性を考慮するとともに、タイル表面を汚さないものを選択する。

11.2.5 張付けモルタルの調合

(a) モルタルの調合

(1) モルタルの調合は「標仕」表11.2.2による。また、砂については11.2.3 (b)による。

(2) 化粧目地用モルタルは、目地幅により砂の容積比は異なる。通常、次のようにするのがよい。

(i) 目地幅が3mm以下で屋内の場合は、0.5 程度とする。
(ii) 目地幅が3mm以下で屋外の場合は、0.5~1.0 程度とする。
(iii) 目地幅が3mmを超えるものの場合は、0.5 ~ 1.5 程度とする。

(3) 既製調合モルタル及び既製調合目地材の使用に当たっては、タイルの種類、工法、目地幅等に適合することを確認する。

(b) モルタルの練混ぜ方法
(1) 1回の練混ぜ量はモルタルの硬化が始まる前に完了するように、60分以内に張り終わる量としている。モルタルの練混ぜを均ーに行うために、機械練りとする。

ただし、室内で少量の場合等は、手練りでもよい。

(2) 粉末状保水剤を使用する場合は、セメントと保水剤を空練り後、砂を加えて空練りし、次に水を加えて十分に錬り混ぜる。

(3) 液状保水剤を使用する場合は、あらかじめ所定の濃度に希釈した溶液を、空練りしたモルタルに混入し、次に水を加えて十分に練り混ぜる。

11.2.6 施工時の環境条件

(a) 外壁タイル張りにおいて、外壁面がぬれるような降雨及び降雪の場合、クレーン等が運行できない強風時等、タイル工事に支障がある時並びにこれらが予想される場合は、施工を行わない。

(b) 冬期のセメントモルタルによるタイル張りにおいて、塗付け場所の気温が 3℃以下及び施工後 3℃以下になると予想される場合には、下地モルタル、張付けモルタル及び目地モルタルが初期凍害を受ける危険性があるため、仮設暖房・保温等による施工面の養生を行う。このような養生を施しがたい場合は、作業を中止する。

11.2.7 施 工

(a) タイルの割付け

(1) 一般的な割付け方法には次の2つの方法があるが、タイルの割付けの場合には、(i) によることが大部分であり、(2)以下の事項を考慮して割付けを行っている。

(i) 規定された寸法の材科を用い、基準線(面の中心あるいは端部柱形、梁形、建具回りの伸縮調整目地等)を定め、その間に割り付ける方法:タイル,ボード類、ブロック等

(ii) 概略の材料寸法を定めておき、基準線の間に割付け目地を規定の寸法として正確な材料の製作寸法を定める方法:石材、プレキャストコンクリート製品等

(2) 屋外の壁の場合

(i) 建具寸法、位置等のわずかな変更により、タイルの割付けが整然と行える場合は建具の方を調整するとよい。

(ii) 躯体寸法等下地のわずかな変更により、タイルの割付けが整然と行える場合は、躯体等の下地を調整するとよい。

しかし、この場合でも構造体の断面不足を生じないようにする。

(iii) 規格化された寸法より多少異なった寸法のタイルも大量にまとまれば、規格品に比べて割高になるが製造できる。ただし、製造に日数を要する。形状についても、寸法が大きくなると、焼成時にひずみが増し、不良品が多くなるなどがあるので、製造に無理のないものにしなければならない。

(iv) 役物タイルは、なるべく規格化された寸法のものを用い、その種類を少なくする。

(v) 床面に勾配のある場合は、壁タイルを勾配に合わせるか、モルタル等の他の材料によって勾配を調整するかを検討する。

(vi) 目地寸法は、小口、二丁掛けで 6~11mm程度である。6mm以下では、目地押えが困難になりやすい。大形床タイルのような大きなものでは、6 ~ 10mm程度にしている。

(ⅶ) タイル面に取り付ける金物、設備機器等の位置をタイル割りに合わせる。

(ⅷ) 躯体寸法、建具寸法等を定めるときは、タイル割り図を作成しておき、これに合わせる。やむを得ない場合でも、タイル割りに無理のないことを確かめておく。

(3) 屋内の壁で内装タイル(陶器質施ゆうタイル)の場合

(i) 建具や躯体との関係等は、外装の場合と同様である。

(ii) タイルはすべて規格化されたものを用いるため、端部には切り物が入りやすいが、半分以下の寸法のものは用いないようにする。また、切り物はなるべく目立たない部分に用いるようにする。

(iii) 壁が天井面までタイル張りで、天井目地の場合は、目地底を基準線として割り付け、床はのみ込みにすることが多い。
内幅木〈サニタリー〉(図11.2.4 (ロ)参照)タイルを用いる場合は、当然床面が下の基準線になる。

なお、隅部では、切り物が隣接するのを避ける。

(iv) 棚の高さ、隔て板の大きさ等は、タイルの目地に合わせる。

(v) 電気、機械の機器の取付け位置、配管の取出し口等は、タイルの目地位置に合わせる。そのため、タイルの割付け図には、機器及び配管の取出し口の位置を記入させ、正確な位置を定めておく。

(vi) 目地寸法は 2~2.5mmが多いが、1.5mmでもできる。


図11.2.6 外部タイル割付けの例(二丁掛けの場合)


図11.2.7 外部タイル割付けの例(小口の場合)

(ii) 内装タイルを使用する場合の例


図11.2.8 隔て板の割付け


図11.2.9 棚板の納まり


図11.2.10 建具枠の納まり


     図11.2.11 隔て板の納まり


図11.2.12 便所タイルの割付け

(b) 下地及びタイルごしらえ

(1) コンクリート素地面をMCR工法とする場合は、「標仕」6章8節に、目荒し工法(高圧水洗)とする場合は、「標仕」15.2.4 (c)による。

(2) 張付けモルタルのドライアウトによる硬化不良や接着不良を防ぐため、下地モルタルが乾燥している場合には、タイル張り前に十分水湿しを行うか又は吸水調整材を塗布する。ただし、改良積上げ張りの場合、吸水調整材の塗布は行わない。

(i) 水湿しは、夏期等で乾燥が著しい場合には、前日に散水しておくようにする。
(ii) 吸水調整材の途布は、15.2.5(a)(1)による。

(iii) 吸水性のタイルは、必要に応じて、適度の水湿しを行う。

(c) 床タイル張り
(1) 張付け面積の小さい場合(トイレ、浴室等)(図11.2.13参照)
(i) 敷モルタルを敷き込み、敷モルタルが硬化したのちに、張付けモルタルを用いてタイル張りを行う。敷モルタルの調合はセメント1に対して砂 3~ 4程度の貧調合とし、少量の水を加えてモルタルを手で握って固まる程度のぱさばさ状にする。

この工法は、張付け面積の小さい場合以外にも水勾配を付ける場合等、精度の高いタイル床仕上げを要求される場所に適している。しかし、下地の強度が (2)の工法より弱いため、車や重量物が乗り人れる場所への使用は避ける。

(ii) 張付けモルタルはセメントペーストではなく、「標仕」表11.2.2の調合によるモルタルを使用する。

一般床タイル又はユニットタイルは、下地に張付けモルタルを塗り付けて、木づち、たたき板等で目地部分に張付けモルタルが盛り上がるまでたたき押さえて、張り付ける。壁タイル張りと同様、モルタルの塗置き時間が長くならないように注意する。大形床タイル張りでは、タイル裏面への付着状況に注意を払う。事前に試験施工を行って、タイル裏面への充填性を確認したうえで、工法選定を行うとよい。


図11.2.13 小面積の場合の床タイル張り

(2) (1)以外の場合:張付け面積の大きい場合(エントランスホール、ポーチ、ピロティ等)(図11.2.14参照)

(i) 「標仕」15.2.5(c)(1)により下地モルタルを作製し、硬化後にタイル張りを行う。タイル張りの前に下地のレイタンスを除去しておく。

この工法は、車や重量物が乗り人れる場所に使用される。

(ii) 張付けモルタルの調合及びタイル張りの方法は、(1)(ⅱ)と同じである。

図11.2.14 大面積の場合の床タイル張り

(3) 水を使用する箇所の床には、必ず水勾配を付けて水たまりができないようにする。勾配は1/100~1/150にするのがよく、1/200が限度である。

(d) 壁タイル張りの工法
(1) 壁タイル張り工法の種類、工法とタイルの組合せ等を表11.2.5に示す。また、「標仕」の工法を図11.2.15に示す。

なお、張付け材料の塗厚は「標仕」表11.2.3による。

表11.2.5 壁タイル張り工法

図11.2.15 「標仕」の工法

(2) 密着張り(ヴィブラート工法)(図11.2.15及び図11.2.16参照)

(i) 在来の圧着張りは、下地モルタル(中塗りまで仕上げる。)面にモルタルを塗り、これにタイルを押し付けて張り、木づちの類でたたき締めてタイルとモルタルをなじませていたが、本工法は、木づちの代わりにタイル張り用振動機(ヴィブラート)を用いてタイル面に特殊衝撃を加えて、タイルをモルタル中に埋め込むようにして張り、目地部に張付けモルタルを盛り上がらせ、そのモルタルを目地ごてで押さえて、目地も同時に仕上げる工法である。この時、張付けモルタルの塗厚が薄い場合や、タイルの押さえ込み不足により深目地となりやすいが、目地深さがタイル厚さの1/2より深い場合には、張付けモルタル硬化後に目地深さがタイル1厚さの1/2以下となるように目地詰めを行う。

なお、タイル面に衝撃を加えることにより、下地モルタルと張付けモルタルの接着性が著しく向上する利点もある。


図11.2.16 密着張り(ヴィブラート工法)

(ii) 張付けモルタルを一度に厚く塗り付けると、下地に十分なこて圧で塗り付け ることが難しく、また、張付けモルタルのだれが生ずるので、必ず二度塗りとする。一度目のモルタル塗りは、下地面への付着が良くなるように、こて圧をかけてしごくように塗り付ける。張付けモルタルの塗厚は裏あしの高さ等を考慮して決める。その目安は5〜8mmとする。一度に塗付け可能な面積の限度は、一人が施工可能な面積として2m2以下、かつ、20分以内に張り終える面積とする。張付けモルタルに触ると手に付く状態のままタイル張りが完了できる作業を目安とするとよい。

なお、くし目ごてを用いるとタイル裏面への充填性が十分に確保できないため用いてはならない。

(iii) 振動工具による加振は、一枚のタイル全体に張付けモルタルが均等に充填されるように加振位置を複数筒所とし、張付けモルタルがタイルの周囲から目地部分に盛り上がる状態になるまで行う。張付けモルタルを塗ってからタイルを張り始めるタイミングが早過ぎると水分が浮き出て水膜を生じる。タイミングが遅過ぎると薄皮状の膜が生じてタイルと張付けモルタルの接着が悪くなる。

張付けモルタルの締まり具合の確認が重要である。

(iv) モルタルに混入する砂の最大粒径は、「標仕」表11.2.1では2.5mmと定められているが塗厚が5mm程度、目地幅が 8mm以下の場合は、塗付け作業及び目地部のモルタルの盛上がり及び仕上りを考え、粒径 1.2mmのものを用いるのがよい。

(v) タイル張付けは、上部より下部へと張り進めるが、まず1段置きに水糸に合わせて張り、そのあと間を埋めるようにして張る。上部より続けて張ると、タイルのずれが起きやすく目地通りが悪くなる。

(vi) 本工法のタイルの接着力は、衝撃を与える時間に影響されるので適正な衝撃時間を与えなければならない。タイルの大きさと適正な衝撃時間、衝撃位置の関係は表11.2.6のとおりである。

なお、張付けモルタルの塗置き時間は20分程度までが望ましい。

表11.2.6 タイルの大きさと衝撃時間、衝撃位置

(vii) 密着張りのプロセス管理法としては、タイル裏面への充填性の検査が望ましい。密着張りの場合、タイルの裏あしに張付けモルタルがかん合して、一体性が確保されていることが、最も重要な管理ポイントの一つである。検査は、図11.2.17に示すように、タイルを張り付けた直後に、タイルをはがしてタイル面への充填性を確認する。判定基準は、タイル裏面の充填面積の割合(充填面積率)で管理することが一般的で、そのときの管理下限値を90%程度にしていることが多い。


図11.2.17 タイル裏面への充填性検査(密着張り)(JASS 19より)

(3) 改良積上げ張り

(i) タイル張りの作業においては、出隅部・入隅部・開口部等を基準として、その間にタイルを張り込む形でタイル張りを行う。タイル張りの基準となる箇所には、あらかじめ決定したタイル割りに基づいて、これらを目地通りよく張り上げるため、上下引き通しの基準線を設ける。

階段が多い高層の建築物の場合は、張力をかけることができ、風等による揺れの少ないピアノ線を、また低層の建築物の場合はナイロン製の糸を水糸として用いること多い。

(ii) コーナ一部や開口部回りの役物タイルは、その他の平部分のタイル張りに先立ち、基準を設けるために施工する。また垂直の目地通りを確保するため.建物最上部のコーナータイル又は平タイルを基準タイル張りとして先に施工する。

これらのタイル張りは、仕上り面精度を確保する基準となるので慎重に行う必要がある。

(iii) 改良積上げ張りでのタイル張りは、タイル裏面に小形の金ごてを用い、張付けモルタルを仕上り代よりも3〜4mm程度厚めに塗り、仕上り墨を見ながら隅角部の両辺にわたって位置を正確に、また均等によくたたき込む。

(iv) タイルヘのモルタルの塗付けは、外装タイルの場合はタイル裏面の裏あし先端から4〜7mm程度、内装タイルの場合はタイル裏面から13〜18mm程度隙間のないように行う。通常、タイルを手に持ち、れんがごて等を用いて塗り付けるが、タイルの隅角部にはモルタルがまわらないことがある。塗厚を一定にし、隅々までモルタルを塗り付けるため、合板等で型を作り、ここにタイルを敷き並べて塗り付けるとよい。ただし、モルタルを塗り付けたタイルは、長くとも 5分以内に張り付けることが肝要である。

(v) 一般に改良積上げ張りは、下部から張り上がる。小口・二丁掛けの形状では、ずれが生じることは少ないが、タイルの形状が大きかったり、厚さが厚かったりするとずれが生じることがある。ずれを止めるためにセメントの粉を掛けることがあるが、白華発生防止のため絶対行ってはならない。ずれが生じる場合は目地に棒等をかって上へ張り進める。

また、タイルを上へ積み上げていくとき、下部のタイルに荷重が掛かるような場合が少なくない。タイルのはく離を防ぐため、1日の施工高さを1.5m程度と「標仕」では規定している。

(vi) 内装の場合で、張付けモルタルの量が適切でなく隙間ができた場合はモルタルを補充する。

(ⅶ) 化粧目地は「標仕」11.2.7(c)(3)(iv)による。

(4) 改良圧着張り
(i) 改良圧着張りは、張付けモルタルを下地側とタイル災面の両方に途って、タイルを張り付ける工法である。

下地側には、軟らかめに練ったモルタルを金ごてを用いて薄くこすり付けるように塗り付けて、下地面との密着を確保したのち、直ちに張付けモルタルを塗り重ねて4〜6mm程度に塗り付ける。

定規を用いて平たんな面を出したのち、木ごて・発泡スチロール板(約200 × 200 × 30mm程度)で表面を平たんにするとともに粗面i状態とする。この面の上にタイル張りを行うが、タイル張りまでの時間は、モルタル練りからタイル張り終了まで60分以内とする。

(ii) タイル裏面に張付けモルタルを塗り付ける際は、タイルを固定するための専用の治具等を用いて、3~4mm程度の厚さで、こて圧をかけて、タイル裏あし全体にモルタルが充填するように塗り付ける。この張り方の重要な管理ポイントは、張付けモルタルの塗置き時間である。作り置きをしないで、タイル裏面に張付けモルタルを塗り付けたタイルは、直ちに張り付ける作業手順とする。

(iii) タイル張りを終了したのち、目地の通りを確認し、更に、目地部の盛り上がったモルタルを目地ごて・木の棒等を用いて取り除き、ささら(細い割り竹をたばねたもの)等を用いて掃除しておく。

(5) マスク張り
(i) マスク張りは、25mm角を超え、小口未満のタイルの張付けに用いられる。
(ii) 張付けモルタルには、メチルセルロース等の混和剤を用いる。

(iii) タイル裏面にモルタルを塗り付けるのに使用するマスク板(図11.2.18及び表11.2.7参照)は、この工法に専用のもの((-社)全国タイル業協会で入手できる)を用いる。

現在用いられているマスク板は、肉厚が 6〜7mmのモザイクタイルの場合、マスクの厚さが 3mmではタイル裏面へのモルタルの充填が不足し、また、マスクの厚さが5mmでは、張付けたタイルがずれやすく、目地部へのはみ出しが多く汚れが生じやすい 。 そのため、マスクの厚さは 4mmが適切である。


図11.2.18 マスク板の形状の一例

表11.2.7 マスク板の大きさ及び開口率

(iv) マスクを介しての張付けモルタルの塗付けは、金ごてを用いて行う。ゴムごて等を用いると塗厚が薄くなり、所定の塗厚が得られないため注意が必要である。

(v) タイル張付けは、目地通りを定めた墨に合わせて、目地部に張付けモルタルがはみ出すまで、たたき板でたたき押えをしながら張り付ける。

張り手と塗り手とが、2人1組で作業を行うと効率が上がる。

マスク張りの重要な品質管理ポイントは、張付けモルタルの塗置き時間の管理である。作り置きをしないで、タイル裏面に張付けモルタルを塗り付けたタイルは、直ちに張り付ける作業手順とする。マスク張りにおけるタイル浮きの最大原因は、タイルのたたき込み不足によるものである。張付けモルタルの塗布量が少なく、十分なたたき込みができないと、タイルの四隅に隙間が生じて、目地部から雨水が浸入しタイルの浮きにつながるため、目地部分の表紙張りの一部が、はみ出したモルタルにより湿るまで、表紙張りユニットタイルのたたき押えを十分に行う。

(vi) 表紙張りのユニットタイルは、張り付けたのち、紙に水湿しを行い、これをはがす。紙をはがす時期は、タイル張り後速やかに行うのがよい。

この水湿しは、水を含ませたスポンジ、霧吹きあるいは左官用水はけによるが、園芸用薬剤散布のための霧吹きが短時間で均ーに水湿しができる。紙はがし後著しい配列の乱れがある場合は、速やかにタイルの配列の乱れを、金ごてと小形ハンマーを用いて修正する。モルタルの硬化が進行してからは、タイルの接着を損ねることになりかねないため、張付けモルタルが軟らかいうちに行う。この時間の判断には十分な注意を払う必要がある。また、修正後は再度たたき板でたたき押えをする。

(6) モザイクタイル張り

(i) 張付けモルタルの派付け面積を3m2以下と「標仕」では規定している。これはモルタル下地面に張付けモルタルを塗り、タイルをたたき押さえながら張り進める工法では、張付けモルタルを塗り付けたのち、タイル張りまでの時間(オープンタイム)の長短により、タイルの接着性が大きく影響を受けるので、これを規定する必要があるためである。

張付け可能なオープンタイムは、季節・風向き・湿度・日射の有無等様々な因子が作用するため、張付けモルタルの締まりや皮ばりがりしいときには、塗付け面積を小さく管理する必要がある。

(ii) 張付けモルタルの塗付けは、いかに薄くとも2度塗りとし、1度目は薄く下地面にこすりつけるように塗る。これは、下地モルタル面の微妙な凹凸にまで張付けモルタルが食い込むようにするためである。

次いで、張付けモルタルを塗り重ね 3mm程度の厚さとし、定規を用いてむらのないよう塗厚を均ーにする。

張付けモルタルの塗付けは、金ごて押えとすることが原則である。

(iii) たたき押えは、全面にわたって十分に行う必要があるが、その目安は、タイル目地に盛り上がった張付けモルタルの水分で、紙張りの目地部分がぬれてくることによって判断する。

(iv) モザイクタイル張りのプロセス管理法としては、タイル裏面への充填性の検査が望ましい。モザイクタイル張りの場合、タイルの裏あしに張付けモルタルがかん合して、一体性が確保されていることが、最も重要な管理ポイントの一つである。検査は、 タイルを張付けた直後に、タイルをはがしてタイル面への充填性を確認する。判定基準は、タイル裏面の充填面積の割合(充填面積率)で管理することが一般的で、その時の管理下限値を90%程度にしていることが多い。

(v) 表紙張りのユニットタイルは、タイル張り終了後、張付けモルタルがやや締まったと思われるころ(夏期は 20分程度まで、冬期は40分程度まで)、ユニットタイルの紙にスポンジ又は霧吹きにより水を与えて、でんぶんのりを軟化させて紙はがしを行う。その後、目地の配列を見て、修正を要するような箇所については手厚しを行う。

(vi) タイル張りが終了したのち.張付けモルタルの締まりを見計らって、目地の掃除を行う。用いる道具は千枚通し等先端が細く鋭利なものであり、モルタルをさらっていく。特に、伸縮調整目地を設ける位置(他種の部材との取合い箇所、入隅部等)のモルタルは、入念に取り除いておくことが必要である。

(e) まぐさ、窓台等へのタイル張り
まぐさ、ひさし先端下部等は、特にはく落のおそれが大きいので、原則として、タイル張りを避けるのがよい。設計図書で役物のタイル張りを指定された場合は、図11.2.19及び図11.2.20のような工法で行う。この時、はく落防止用引金物(なましステンレス鋼線0.6mm以上のもの)をタイルに取り付けることが必要である。

なましステンレス鋼線を張付けモルタル中に埋め込む場合は0.6mm程度とし、下地側のアンカービス等に緊結する場合は0.8mm程度を使用する。


図11.2.19 まぐさタイルの取付け


図11.2.20 窓台タイルの取付け

(f) 斜め整へのタイル張り

斜め壁は、雨掛りが多いことから防水層が設けられる場合が多い。防水層の上にモルタル下地を作製してタイル張りを行うと、長年の間に防水層が劣化して、防水層からモルタル及びタイルがはく離する危険性がある。そのため、斜め整で防水附がある場合には、下地モルタル層をステンレスアンカーとステンレスメッシュによりコンクリート躯体に固定して、タイル張りを行うのがよい(図11.2.21参照)。


図11.2.21 斜め壁のタイルの取付け例

11.2.8 養生及び清掃

(a) 養生

(1) 陶磁器質タイル張りにおいては、施工時の強い直射日光、強風等がタイルの接着に影響を及ぼすため、シートを張るなどして養生を行う。

(2) 冬期のタイル張りにおいて、気温が3℃以下に降下するおそれのある場合は、仮設暖房及び保温を行うか、日中暖かいうちに作業を止め、シート張り等の保温を行い気温が降下しても凍害を受けないようにする。

(3) 施工中及びモルタルが十分に硬化しないうちに、タイル張り面に振動、衝撃等を与えると、接着強度を低下させる原因となるので、避けなければならない。また、床タイルの場合には、同様の理由により3日間はタイル面を直接歩行しないようにする。やむを得ず道板等を使用する場合も、1 日間 は歩行しないようにするのがよい。

(b) 消 掃
タイル面の水洗いを十分に行っても清浄にならない場合は、やむを得ず酸類を用いて汚れを落とすことがある。この場合は、その周辺及び酸が流れる途中の材料を汚染あるいは腐食させることのないように、十分注意する必要がある。酸は30倍程度に希釈した工業用塩酸を用いることが多いが、酸洗い後の水洗いが特に大切であり、酸が目地に残らないように手早く入念に行う必要がある。また、濃度の高い酸で洗うと、タイル面の汚れは落ちやすくなるが、目地材が侵されるので使用してはならない。酸性フッ化アンモニウム等のフッ酸系の溶液は、溶液の濃度、使用時の条件(温度、洗浄時間)及びタイルの種類により、タイル表面を傷めることがあるため注意を要する。ラスタータイルは、タイル表面の損傷が目立ちやすいため、特に注意する必要がある。使用を検討する場合は、必ずサンプルを用いて、実際の清掃時と同じ条件で試験を行い、タイル表面の損傷の有無を確認して判断する。

11章 タイル工事 3節 接着剤による陶磁器質タイル張り

11章 タイル工事

03節 接着剤による陶磁器質タイル張り

11.3.1 適用範囲

(a) 屋内壁への接着剤張りは従来から「標仕」に採用されていたが、屋外壁への接着剤張りは平成25年版「標仕」から新規に採用された。

有機系接着剤による外壁タイル張り工法は、建設省建築研究所(当時)が実施した官民連帯共同研究「有機系接着剤を利用した外装タイル・石張りシステムの開発」(平成5~7年度)において産学官が協力して研究開発され、その成果を参考として、JIS A 5557(外装タイル張り用l有機系接着剤)が制定された。その後、工事仕様の標準化が活発となり、平成22年4月に日本建築仕上学会から「ALCパネル現場タイル接着剤張り工法指針(案)・同解説」が刊行され、平成24年7月に(-社)日本建築学会の「JASS 19 陶磁器質タイル張り工事」の中で「有機系接着剤によるタイル後張り工法」として規定された。

(b) 接着剤による陶磁器質タイル張りの場合の作業の流れを図11.3.1に示す。


図11.3.1 接着剤による陶磁器質タイル張りの作業の流れ

(c) 施工計画書

施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりであるが、その作成に当たってはタイル施工業者の協力を得て、十分検討されたものとする必要がある。

タイルの製造工場は、通常設計図書に指定されるが、指定されない場合は、工場の規模・受注能力等を検討して承諾することになる。

なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。

① 工程表(見本決定、施工図完了、材料搬入、着工・完了、試験等の時期)
② タイルの製造工場名、施工業者名及び作業の管理組織
③ タイルの種類、形状、寸法
④ 接着剤の種類、製造業者
⑤ タイルの施工箇所、張付け工法、目地工法
⑥ まぐさ,窓台等のタイル施工法
⑦ タイル割りの基準(基準線、目地寸法)
⑧ 伸縮調整目地(位置、構成、施工法)
⑨ 関連工事との取合い(電機、機械、仮設)
⑩ タイル施工箇所の張付け順序
⑪ 下地モルタルの検査方法及び補修方法(面精度、乾燥状態、浮き、ひび割れ)
⑫ 接着剤の塗付方法(こて、単位面積当たりの使用量、1回の塗布量)
⑬ タイルと接着剤との接着割合
⑭ タイル張り施工中及び施工後の養生方法(特に外壁の場合)
⑮ 水洗い
⑯ タイルの打診試験及び接着力試験方法(箇所、使用機器)

⑰ 接着力試験不合格の場合の処置方法

11.3.2 材 料

(a) タイルの種類及び品質は、11.2.2(a)による。ただし、JIS A 5209(陶磁器質タイル)が2010年の追補により、「5.7 裏あしの形状及び高さ」は、外装壁タイル接着剤張り専用タイルの場合には裏あしがなくてもよいと改正されている。

「標仕」では外壁に接着剤張りを行なうときのタイルは、原則として、接着剤張り専用タイルを使用することとしている。接着剤張り用の外装タイルは、裏あしが低い又は裏面が平滑な専用タイルであるため、原則として、これを用いる。接着剤張り専用以外のタイルを使用する場合には、タイルと接着剤との接着が確保できるように接着剤の塗布方法があらかじめ確認されたものを用いる。全国タイル工業組合では「外装タイルと有機系接着剤の組合せ品質認定制度」(Q-CAT)を平成21年12月より施行しており、この中で裏あしが高いタイルについても使用する接着剤及び接着剤の塗布方法との組合せを評価して認定しているため、参考にするとよい。

接着剤張り用タイルの裏面形状は、次の理由によりセメントモルタルによる外壁のタイル張りに用いるタイルと異なる。

セメントモルタルによるタイル張りの場合には、セメントモルタルとタイルの接着性、施工品質のばらつき、長期の接着耐久性等を考慮すると、機械的なかみ合わせによる保持が必要である。一方、接着剤張りの場合には、JIS A 5557(外装タイル張り用有機系接着剤)の解説によると、タイルと接着剤の界面や下地と接着剤の界面には何らかの化学的な結合による接着がなされていることからあり状の裏あしは必要不可欠な条件ではない。また、接着剤張りにおいては、接着剤の塗厚がモルタルより薄くなることから、タイルの裏あしが高過ぎると接着面積が減少し、接着性能が低下する。

接着剤張り専用タイルを用いない場合は、事前にタイルと接着剤との接着性を確認し、適切な接着剤の塗付方法を決定する必要がある。

(b) 役物タイルは、11.2.2 (d)による。

(c) タイルの試験張り、見本焼き等は、11.2.2 (e)による。

(d) まぐさ又はひさし先端下部に用いるタイルは、図11.2.4に示すびょうぶ曲がりを使用するか、又は標準曲がりを縦張りする。

11.3.3 張付け用材料

(a) 屋内に使用する有機系接着剤は JIS A 5548(陶磁器質タイル用接着剤)に適合するものを使用する。

(1) JISでは陶磁器質タイル用接着剤はタイプ Ⅰ ~Ⅲ に区分されるが、その用途による区分は表11.3.1 のとおりであり、下地の湿潤状態及び接着後の使用環境により分類される(表11.3.2参照)

表11.3.1 接着剤の用途による区分(JIS A 5548 : 2003)
表11.3.2 下地状況と使用環境(JIS A 5548 : 2003解説)

 

「標仕」表11.3.1ではタイプI 又はタイプ Ⅱ を上記区分に基づいて使用することとしている。

なお、使用環境の予測が困難な場合は、タイプ I を使用する必要がある。

(2) ホルムアルデヒド放散量に関しては、この接着剤が指定建築材料(表19.10.2 参照)でないため、建築基準法では規制の対象にならない。しかし、「標仕」では、JISでホルムアルデヒド放散量に関する品質基準が規定されているため、特記がなければF☆☆☆☆のものを使用することとしている(19章10節参照)。

(b) 屋外に使用する有機系接着剤は、JIS A 5557(外装タイル張り用有機系接着剤)に適合するものを使用する。JIS A 5557 による接着強さと皮膜物性の品質規格を表11.3.3に示す。

また、JIS A 5557の主成分による区分では表11.3.4に示すように一液反応硬化形と二液反応硬化形があるが、「標仕」では一液反応硬化形に限定している。一液反応硬化形は、練混ぜの必要がなく、練混ぜ不良に起因する事故を防止することができる。

表11.3.3 接着強さ及び皮膜物性の品質(JIS A 5557 : 2010)

 

表11.3.4 主成分による区分(JIS A 5557 : 2010)

JIS A 5557の品質規格は目地詰めを行うことを前提にしている。目地詰めを行わない場合には接着剤が日射や雨水の影響を受けるため、JISの規定に加えて耐候性及び耐汚染性の確認が必要となる。「標仕」ではこれらの品質を規定している。耐汚染性は接着剤の成分が雨水等により溶出してタイル表面に付着してタイル表面を汚すことがないかを調べる試験であり、暴露試験は白又は淡色のタイルを使用して確認する。

全国タイル工業組合の「外装タイルと有機系接着剤の組合せ品質認定制度」(Q-CAT)では、耐候性、耐汚染性についても規格を作成して認定しているため、参考にするとよい。

11.3.4 シーリング材

(a) シーリング材は、9章7節による。耐久性、伸縮追従性、水密性、作業性を考慮するとともに、タイル表面を汚さないものとする。

(b) コンクリート躯体のひび割れ誘発目地、水平打継ぎ目地がある場合には、タイル 面にも伸縮調整目地を設置し、いずれもシーリング材を使用し、その位置を一致させる。タイル目地詰めを行わなく、かつ、タイルの目地幅が広い場合には図11.3.2に示すようにタイル面ではなく、下地モルタル面にシーリング材を施工する。その他の場合には図11.3.3に示すようにタイル面にシーリング材を施工する。「標仕」では、これらのシーリング材の種類は特記としている。特記がなければ、躯体については、基本的に紫外線の影響を直接受けないことから、ポリウレタン系シーリング材とする。伸縮調整目地その他の目地は、表面に露出することから、変成シリコーン系シーリング材とする。


図11.3.2 「目地詰めを行わなく、かつ、
目地幅が広い場合の伸縮調整目地の納まり例

 


図11.3.3 目地詰めを行う場合の伸縮調整目地の納まり例

 

(c) 有機系接着剤は原則としてシーリング材の表面に接触することはないが、シーリング材と接着剤が各々の小口面で接触する場合が考えられる。互いの成分の影響により組合せによっては、シーリング材及び接着剤の汚れ、はがれ、未硬化等の原因となることがあるため、事前に試験によって確認しておく必要がある。試験方法は、日本接着剤工業会規格 JAI 17(シーリング材と接着剤の相互汚染性試験)が提案されている。次に試験内容を示す。

JAI 17-2013

1. 適用範囲

本規格は外装タイル有機系接着剤と建築用外装シーリング材の互いの影響による汚染性を確認するための試験方法について規定する。

2. 引用規格
JIS H 4000 アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条
JIS H 4100 アルミニウム及びアルミニウム合金の押出形材
JIS A 5557 外装タイル張り用有機系接着剤
JIS A 5758 建築用シーリング材
JIS K 7100 プラスチックー状態調節及び試験のための標準雰囲気

3. 試 験
3.1 試験の一般条件
a) 試験体の作製は、特に指定のない限り、JIS K 7100に規定する標準状態(温度 23± 2℃、湿度50±10RH%)で行う。

b) 接着剤、シーリング材及び試験に用いる材料は、標準状態の室内に作製前24時間養生しておかなければならない。

3.2 試験材料

a) 接着剤 JIS A 5557 外装タイル張り用接着剤
b) シーリング材 JIS A 5758 建築用シーリング材
c) 基材JIS H4000に規定するアルミニウム合金又はこれらにJIS H 8601に規定する陽極酸化被膜を施したアルミニウム板で、寸法75 × 75 × 2mm。
d) セバレータ JIS H 4100に規定するアルミニウム合金又はこれらにJIS H 8601に規定する陽極酸化被膜を施したアルミニウム角材で、寸法12 × 75 × 6 mm。
e) スペーサ 高さ6mm長さ75mmの角材で表面及び側面に離型処置を施したもの
たとえば、

①セパレータと同様のアルミニウム角材で、寸法約6 × 75 × 6mm。表面及び側面3面に離型材を塗布したものあるいはマスキングテープを張ったもの

②シーリング材に用いる発泡ポリエチレン製 6mm角型バックアップ材
などが良い。

3.3 試験方法
3.3.1 汚染性試験体の作製
a) スペーサの取り付け
基材に図1のような配置でスベーサを両面テーフ等で取り付ける


図1 汚染試験体スペーサ取り付け

b) 先打ち材の充填
二成分シーリング材もしくは二液反応硬化型接着剤の場合は、あらかじめ製造業者の指示に従って計量、混合したのち、試料をスペーサで挟まれた図1の左側①で示した部分全体に、スペーサに沿って充填する。プライマーを使用する場合は製造業者の指示に従う。

c) 先打ち材の養生及び後打ち材の充填
先打ち材を23℃ 50%にて3日間養生後、中央のスベーサを取り除き、硬化した先打ち材表面端部をマスキング等で養生する。後打ち材が二成分シーリング材もしくは二液反応硬化型接着剤の場合は、あらかじめ製造業者の指示に従って計量、混合したのち、試料を先打ち材と図1の右端のスベーサに沿って、充填塗布(図2)する。プライマーを使用する場合は製造業者の指示に従う。 充填後、ただちに先打ち材表面の養生を取り除く。

d) 後打ち材の養生
作製した試験体を23℃ 50%RH1日養生し、スペーサを取り除いて試験体とする。


図2 汚染試験体(後打ち材充填後)

3.3.2 比較用試験1本の作製

a) スペーサ及びセパレータの取り付け
基材に図3のような配置でスペーサ及びスペーサを両面テープ等で取り付ける。


図3 比較用試験体スペーサ取り付け

b) 先打ち材の充填
二成分シーリング材もしくは二液反応硬化型接着剤の場合は、あらかじめ製造業者の指示に従って計量、混合したのち、試料をスペーサで挟まれた図3の左側①で示した位置に充填する。プライマーを使用する場合は製造業者の指示に従う。

c) 先打ち材の養生及び後打ち材の充填
先打ち材を23℃50%にて3日間養生後、セパレータ表面をマスキング等で養生する。

後打ち材が二成分シーリング材もしくは二液反応硬化型接着剤の場合は、あらかじめ製造業者の指示に従って計量、混合したのち、試料をスベーサに沿って図3の右側の位置に充填する(図4)。プライマーを使用する場合は製造業者の指示に従う。

d) 後打ち材の養生
作製した試験体を 23℃ 50% RH 1日養生し、スペーサを取り除いて試験体とする。


図4 比較用試験体(後打ち材充填後)

3.3.3 促進試験

2.3.1で作製した汚染性試験体及び 2.3.2で作製した比較用試験体を恒温室内にて 50 ± 2℃で 7 日間養生する。

3.3.4 汚染性確認試験

a) 目視による確認
促進試験後、目視にて汚染試験体及び比較検討用試験体のシーリング材及び接着剤を観察し、汚れ、色相、界面での剥離の有無について目視にて確認し、変化のあったものを記録する。

b) 指触による確認
促進試験後、指触にて汚染試験体及び比較検討試験体のシーリング材及び接着剤を観察し、硬さ、タックの変化、表面ブリードの有無について確認し.変化のあったものを記録する。

c) 界面の状態確認試験
汚染確認試験体を、図5のように短手方向約10mmのところで切り出し試験体とする。シーリング材と接着剤の接触部から各々15mmのところに標線を引き、標線間が40 mmまで開くように、図6の矢印の方向にゆっくり引張り、相互の界面の状態を観察し記録する。


図5 引張り試験体の採取


図6 界面の状態確認試験

JAI 17-2013

 

11.3.5 施工時の環境条件

(a) 降雨時や降雪時には、施工に支障があるばかりでなく、接着面が湿潤状態になり、引張接着強度の低下を生じさせる可能性があるため、作業を行わない。

(b) 塗付け場所の気温が 5℃以下又は施工後 5℃以下になると予想される場合には、接着剤の塗付け作業性が悪化したり、接着剤が硬化する時間が遅くなる危険性があるため、作業を中止する。やむを得ず作業を行う場合には、仮設暖房、保温等により施工面の養生を行って、5℃以上になるようにする。

11.3.6 施工前の確認

タイル張りを行ううえで必要な下地の乾燥の程度は、使用する接着剤の種類によっても異なるため、接着剤によって管理基準を決める。11.3.3(a)に示すように屋内に使用する接着剤においては、タイプ Ⅱ では乾燥していることが必要であり、タイプ Ⅰ は湿っている下地に使用できる。

屋内のボード下地の場合は、ボード下地が乾燥していることを確認する。モルタル下地でタイプ Ⅱ の接着剤を使用する場合は、水分計で測定して含水率が 8%以下であることを確認する。乾燥期間が十分でなく含水率が 8%を超える場合には、施工後の使用環境に水や温水の影響がなくてもタイプ I の接着剤を使用する必要がある。

屋外のモルタル下地の場合は、目視で下地表面が乾燥した色をしていることを確認する。降雨のあとなどで、モルタル下地表面がぬれ色になっている状態では接着性能が非常に悪くなるため、タイル張りを行ってはならない。

11.3.7 施 工

(a) 下地及びタイルごしらえ

(1) コンクリート素地面をMCR工法とする場合は、「標仕」6章8節、目荒し工法(高圧水洗)とする場合は「標仕」15.2.4 (c)による。

(2) 外装壁タイル接着剤張りは、下地の動きや温度変化によるディファレンシャルムーブメントを緩和してタイルのはく離を防止する工法であり、接着剤張りの特徴を生かすためには型枠精度を上げてモルタル下地の厚みを低減した方がよい。このため、「標仕」ではコンクリートの打放し仕上げの種別をA種とし、コンクリートの仕上りの平坦さは3mにつき7mm以下にするように求めている。また、モルタル塗りの材料は、JIS A 6916(建築用下地調整塗材)によるセメント系下地調整厚塗材2種(下地調整塗材CM-2)を使用し,2回塗りを行うこととしている。モルタル下地の塗厚としては、10〜 15mm程度となり、従来からのモルタル塗りの約20mmに比較して簿くなる。ただし、モルタルの塗厚が薄すぎるとA種を採用したとしてもタイル下地として必要な精度を確保できないことから、10mm以上の塗厚が必要である。

接着剤張りの場合は、下地表面に凹凸があると下地と接着剤との接着性が悪くなるため、モルタルの仕上げは金ごて1回押えとする。また、接着剤張りは接着剤の塗厚がセメントモルタルによるタイル張りに比べて薄いため、仕上りが下地精度の影響を受けやすいため、精度の良い下地が必要である。

モルタルの浮きの原因と補修方法については、11.1.4を参照されたい。

(3) 内装壁タイル接着剤張りのモルタル下地は、15.2.5による。ボード下地は、せっこうボード、けい酸カルシウム板のタイプ2、合板が使用される タイル張りに先立ち、ボード間にタイル張りに支障となる段差がないかを確認する。

(4) 接着剤張りは、下地が乾燥していた方がよいため、水湿しを行ってはならない。また、吸水調整材を塗布すると、吸水調整材と接着剤との接着が悪くなる場合があるため、塗布してはならない。

(b) 壁タイル張り

(1) 外装壁タイル接着剤張りは、「標仕」では、原則として、接着剤張り専用タイルを使用することとするとともに、タイルの種別、大きさ、裏あし高さと裏面反りにより接着剤の使用量を規定している。接着剤の塗布に使用するくし目ごては、一般的に表11.3.5に示すこてが使用される。

接着剤張り専用タイル以外のタイルは、裏あしが高いため、表11.3.5に示す接着剤の使用量とくし目ごてでは、タイルと接着剤の接着割合が少なくなる場合がある。したがって、事前に試験施工等を行い、タイルと接着剤の接着割合が 60%以上を確保できるように、使用するくし目ごてと接着剤の塗布量を決定する。 Q-CATでは、タイルによって使用する接着剤と使用するくし目ごてが決められているため、それに従う。

表11.3.5 接着剤塗布に使用するくし目ごての種別

内装壁タイル接着剤張りは、くし目高さが 3〜5mmのくし目ごてを使用して接着剤を塗布する。

(2) 内装壁タイル接着剤張り

(i) 1回の塗布面積は、「標仕」では、3m2以内、かつ、30分以内に張り終える面積としている。

なお、接着剤が2液混合形の場合は、季節や施工時の温度によって張付け可能時間が異なるので注意する。

(ii) 接着剤を金ごて等でモルタル下地又はボード下地に塗布し(通常、3mm厚程度)、 くし目ごてでくし目を立て、タイルを張り付ける。

(iii) 目地間隔を正確に保つようにする。

(iv) 1枚張りの場合は、手でもみ込むようにして押さえ付け、目地部に接着剤がはみ出すようにする。
ユニットタイルの場合は、まず全面を軽くたたきながら合わせ、目地の通りを手直しし、ついで目地部に接着剤がはみ出すまでたたき板でたたいて密着させる。また、タイル張り中にタイル表面に付着した接着剤は、その都度直ちに布でふき取っておく。

目地直しは、張り付けたタイルが自由に動く間(通常、タイル張付け後 30分程度)に行う。

(v) タイルの吸水が大きく、目地詰めの際の水湿しを行う場合は、接着剤が硬化してから行う。ボード下地のけい酸カルシウム板は、比重1.0のものを使用する。繊維強化セメント板等の乾湿による挙動が大きいものは、反りが発生し、タイルのひび割れやはく離が生じることがあるため使用しない。

(vi) タイル面の清掃は他のタイル張りと同様に行う。

(ⅶ) 業務用厨房のレンジ周りの壁等高温になるおそれのある箇所への使用は、接着剤が劣化してタイルがはく離する危険性があるため避ける。

(3) 外装壁タイル接着剤張り

(i) 1回の塗布面積の限度は、「標仕」では30分以内に張り終える面積としている。これは、接着剤の張付け可能時間内に張り終えるようにするためである。

(ii) 接着剤の塗付けは、くし目ごてを用いて下地面に平たんに塗り付け、次に接着剤の塗厚を均ーにし、かつ、厚みを確保するために図11.3.4に示すように壁面に対してくし目ごてを60°の角度を保ってくし目を付ける。くし目の角度が小さく、こてを寝かした状態でくし目を立てると、くし目の高さが低くなり、接着剤の塗布量が少なくなる。また、くし目の角度が大きすぎても施工性が悪く、くし目がきちんと立たなくなることがあるため、塗布量が少なくなる傾向がある。また、図11.3.5に示すように、タイルの裏あしとくし目の方向が平行となると、タイルと接着剤との接着率が少なくなることがあるため、裏あしに対して直交又は斜め方向にくし目を立てる。


図11.3.4 こての角度(JASS 19より)


図11.3.5 くし目と裏あしが平行になった場合の接着状態(JASS 19より)

接着剤の塗布方法としては、図11.3.6に示すようにくし目を立てたままにする方法と、図11.3.7に示すようにくし目を立てたのちに平たんにならす方法とがある。平たんに塗り付ける場合にも、塗厚を均ーにするために一旦くし目を立てる。


図11.3.6 くし目を立てて接着剤を塗布する場合の手順(JASS 19より)

 


図11.3.7 接着剤を平たんに塗布する場合の手順(JASS 19より)

 

(iii) 二丁掛け等のタイル1枚張りの場合は、手でもみ込んだのちに、タイル張りに用いるハンマーでたたき押さえるか、又は密着張りで使用する振動工具で加振して張り付ける。ユニットタイルの場合は、モザイクタイル張りやマスク張りに用いるたたき板でたたき押さえて張り付ける。意匠上、表面に段差があるユニットタイルは、たたき板だけではユニットタイル全体が十分に押さえきれない場合があるので、手で均等にもみ込んだのちにたたき板でたたき押さえる必要がある。

(iv) タイル張りのプロセス管理として、タイルと接着剤との接着状態の検査を行

うとよい。検査方法としては、タイルを張り付けた直後に図11.3.8のようにタイルをはがし、タイルと接着剤の接着状態を確認する。合否の判定は接着割合で行い、タイル裏面への接着剤の接着率が60%以上、かつ、タイル全面に均等に接着していることを基準にするのが一般的である。図11.3.9(ニ)に示すように接着割合が大きくても接着している箇所が一方に偏っているとタイル裏面に大きな空隙ができるため不合格とする。

11.3.8 養生及び清掃

(a) 養 生

寒冷期に施工する場合には、11.3.5(b)による。

(b) 清 掃

接着剤がタイルに付いた場合には、硬化前に溶剤でふき取るか、又は接着剤が硬化したのちに汚れ除去用の発泡樹脂製品、砂消しゴム等で削り取る。表面が粗いタイルは、溶剤等でふき取ると、接着剤がタイル表面に残り、あとに汚れとなる場合があるので接着剤が硬化したのちに除去した方がよい。溶剤を使用する場合には、接着面に溶剤が掛からないように注意する。

目地材による汚れ、他の工事による汚れ等の清掃は、11.2.8(b)による。


図11.3.8 接着状態の検査(JASS 19より)

 


図11.3.9 接着状態(JASS 19より)

11章 タイル工事 4節 陶磁器質タイル型枠先付け

11章 タイル工事
04節 陶磁器質タイル型枠先付け

11.4.1 適用範囲

(a) 作業の流れを図11.4.1に示す。

図11.4.1 陶磁器質タイル型枠先付け工法の作業の流れ

(b) 施工計画書

型枠先付け工法は.コンクリート躯体工事開始時にタイルを必要とするので、見本、見本焼き及び見本張りは躯体工事の2箇月程度前には決定されていなければならない。施工計画で検討すべき項目は次のような事柄である。

なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。

① 工程表(見本決定、施工図完了、タイル及びタイルユニットの製造、材料搬入体工事工程、着工・完了、試験等の時期)
② タイルの製造工場名、施工業者名及び作業の管理組織
③ タイル型枠先付けの種別
④ タイルの種類、形状、寸法(裏あしの形状、高さ、緊張材取付け部のタイルの形状、乾式・湿式の別)
⑤ タイル及びタイルユニットの試験、検査要領、合否の判定基準(タイルの寸法精度、品質及びタイルユニットの寸法精度)
⑥ タイル及びタイルユニットの取付け順序及び方法
⑦ まぐさ、窓台等の取付け方法
⑧ 割付けの基準(基準線、目地寸法)
⑨ 伸縮(調整、ひび割れ誘発)目地(位置、構成,施工法)
⑩ タイル型枠先付け面のせき板、精度、検査基準
⑪ 関連工事との取合い(建具、電気、機械等)
⑫ タイルユニット取付け中及び取付け後の養生方法(コンクリート打込みまでの雨掛り)
⑬ 目地モルタルの調合(桟木法の目地, タイル補修の張付けモルタル)
⑭ コンクリート打込み方法(コンクリートの打込み、棒形振動機による締固め、型枠振動機による締固め)
⑮ 外壁型枠の取外し時期及び方法(留付け材の取外しを含む)
⑯ 外壁型枠取外し後の養生(上階コンクリート打込みによる汚れ防止)
⑰ 先付けされたタイルの検査及び合否の判断基準(検査方法、タイル張替え基準)
⑱ タイル裏面のコンクリートの品質
⑲ タイルの打診検査及び接着力試験方法(箇所、使用機器、試験体の作成方法)
⑳ タイルの補修方法(時期、コンクリートの補修、張替え)
㉑ 水洗い
㉒ 発生材処理(裏打ち材等)

㉓ 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等

(c) タイル型枠先付け工法用部材の用語

(1) タイルシート

タイル表面に合成樹脂フィルム又はクラフト紙を台紙として接着剤等で張り付けて、ユニット化したシート(台紙が軟らかいものは合板の裏打ちを行う。) (11.4.3(a)(1)参照)

(2) 目地桝

硬質ゴム等を用いて、目地部分を桝目状に成形したタイル保持用の目地枠材(11.4.3(a)(2)参照)。

(3) タイルユニット

タイルシート又は目地枠材によって所定の形状及び寸法にユニット化された部材で、平ユニット、柱形ユニット等がある。

(4) 仮付けタイル

型枠緊張材が型枠を貫通する箇所に用いる発泡プラスチック製等の埋め板。脱型後にタイルを張り付けるモルタル厚さを含めた厚さとする。

(5) 仮目地材

タイルの目地部分に打ち込んだコンクリートが、所定の深さ以上にはみ出したり、セメントペーストがタイル表面を汚染しないように、タイルシートにあらかじめ取り付ける目地部充填材。

(d) 一般事項
タイル型枠先付け工法では、タイル面からコンクリートの充填状況を脱型後に確認するのが難しいという弱点がある。したがって、壁等の部材のタイル先付け面の反対側の面に断熱材、仕上材等を打ち込む工法は避けなければならない。

また、本工法は、建物の外壁タイル張り部分に全面的に採用されるほか、はく離した場合事故につながるような箇所に採用される場合もある。例えば、梁底、軒裏等の上げ裏となる部分、ひさしの出の小さい開口の上部の壁等である。この場合、先付け部分とあと張り部分の納まりに注意する必要がある。納まりの例を図11.4.2に示す。


図11.4.2 型枠先付けとあと張り部の納まり

 

(e) 仮設・養生

(1) 足場は、作業能率と仕上りに影響するので安全を確保したうえで、取付け位置や揚重設備等については十分検討する必要がある。

(2) 鉄骨等の溶接がある箇所では、タイルシートや目地桝等に直接溶接火花が当たらないように養生する。

(3) SRC造の柱・梁形等は、外型枠建込み後のタイル配列ができないので、足場上であらかじめタイルユニットを外型枠に配列固定できるように足場を組むことが必要である。

(4) 著しい降雨の場合やコンクリート打込み間隔が長い場合には、シート養生を行い、雨水によるタイルの脱落及び日射による粘着剤やフィルム材の変質・劣化を防止することが必要である。

11.4.2 材 料

(a) タイルの種類及び品質は11.2.2(a)によるほか、主に外壁に用いられるので、耐凍害性を有するタイルを使用しなければならない。

(b) タイル型枠先付け工法では、型枠に固定されることで、あと張り工法のように不陸や通りの調整ができないため、偶角部に用いる役物タイルの角度にばらつきがあると、見ばえが悪くなるので「標仕」では、角度の許容差をJIS A 5209の規定より小さくして ± 1° 以内としている。

また、隅角部に用いる役物タイルの形状は、角度の不ぞろいを目立たなくするため、等辺(図11.4.3(イ))でなく不等辺(図11.4.3(ロ))にするのがよい。


図11.4.3 隅角部に用いる役物タイルの形状

(c) タイルの試験張り、見本焼きは 11.2.2(e)によるほか、スケジュールについて次の点に注意が必要である。

陶磁器質タイル先付け工法の場合には、躯体工事開始時にタイルを必要とするので、目地桝法及び桟木法では躯体工事開始の2箇月程度前、シート加工の期間を要するタイルシート法では3箇月程度前にタイルが決定されていなければならない。見本焼き及び試験張りのスケジュールは、これを考慮して決定する必要がある。

(d) 陶磁器質タイル型枠先付けのタイルユニット等
(1) タイルユニット
(i) タイルユニットの寸法や品質等の性能に問題があると、取付け作業の困難、コンクリート打込みによるタイルの割れや埋没の発生、型枠取外し後の裏打ち材の除去作業等に影響し、ひいては仕上りの出来ばえが悪くなるので十分な性能が必要である。

なお、タイルユニットには次のような性能が要求される。

① 型枠への配列固定が容易にできる。
② セメントペーストが漏れない。
③ 裏打ち材、台紙、目地桝がはがしやすい。
④ 型枠取付け後、雨水に対する養生を必要としない。
⑤ 現場で加工できる。
⑥ 目地及びジョイント部の仕上りが良い。
⑦ 寸法精度が良い。
⑧ 型枠の締付け、コンクリートの締固め及び側圧でタイルがはく落しない。また、割れない。

⑨ 廃材(裏打ちシート等)が少ない。

(ii) タイルシートによるタイルユニットのタイルの割付け寸法、ユニットの寸法及び許容差、対角線長の差、目地深さの標準を表11.4.1に示す。

表11.4.1 タイルシートによるユニットの寸法、許容差等

 

(iii) 目地桝によるタイルユニット(アルミ専用型枠の場合を除く。)の目地枠の形状、タイルの割付け寸法、ユニットの寸法及び寸法許容差、対角線長の差、桝目の内法寸法の許容差、ベース厚さ並びに目地深さの標準を表11.4.2に示す。

表11.4.2 目地桝によるユニットの寸法.許容差等

 

(iv) タイルユニットの寸法の測定位置を図11.4.4に、目地枠材の桝目及びベース

厚さの測定位置を図11.4.5に示す。


図11.4.4 タイルのユニット寸法の測定位置


図11.4.5 目地枠材の桝目及びベース厚さの測定位置

(v) タイルシートのはく離性については、製造所の実績表により確認する。

(2) 型枠に用いるせき板には、コンクリート型枠用合板や金属製タイル先付け用パネル(図11.4.8(ロ)参照)がある。

(3) 型枠緊張材を目地部分に通す場合には、コンクリート中に残る金物のかぶり厚さが確保できるように専用のものを用いる。型枠緊張材及びその取付け方法の例を図11.4.6に示す。


図11.4.6 型枠緊張材を目地部分に通す場合の例

(4) その他の材料

(i) 伸縮調整目地の目地材は、取り外す際にタイルをはがすことがないように、材質は発泡プラスチック等を用いる。

(ii) タイルユニットの取付けは、ステープル又は専用のゴム付きの頭なし釘を用いる。

11.4.3 タイル型枠先付けの種類

(a) タイル型枠先付けには、型枠にタイル又はタイルユニットを取り付ける工法によって次の3種類に大別される。

(1) タイルシート法

タイルシートを型枠内面に仮付けしてコンクリートを打ち込む方法である(図11.4.7参照)。


図11.4.7 タイルシート法

(2) 目地桝法

目地桝を型枠に取り付け、タイルをはめ込みコンクリートを打ち込む方法である。釘打ちによりゴム等の目地桝を型枠に固定したのち、タイルを目地桝に取り付ける方法(図11.4.8参照)。


図11.4.8 目地桝法

(3) 桟木法

大形特殊タイルの取付け方法には、桟木法がある。これは、自重の大きい大形タイルを桟木に引っ掛け、特殊釘で仮止めしてコンクリートを打ち込む方法である(図11.4.9参照)。


    図11.4.9 桟木法

(b) タイル型枠先付け各工法の材料、型枠の条件等を表11.4.3に示す。

表11.4.3 タイル型枠先付け各工法の材料、型枠の条件等

 

(c) タイル型枠先付け工法の種類は、「標仕」11.4.3では、特記するよう定められているが、種類は先付けするタイルの大きさ等により表11.4.3のようになる。

11.4.4 施 工

(a) 割付け

(1) 割付けは、原則として、陶磁器質タイル張り工法と同様である。ただし、躯体工事開始時にタイルを必要とするので、早期に割付けを決定する必要がある。

(2) タイルシート法及び目地桝法の場合は、標準ユニットを基本にし、標準ユニットが使用できないときは、役物ユニットを使用する。この場合、材料管理や作業管理が困難になるので、なるべくユニットの種類を少なくするように割り付ける。

このため設計の当初から、役物タイル及び役物ユニットを少なくするよう階高やスパン幅をできるだけ統一する必要がある。

(3) タイルユニットの割付けの一例を図11.4.10に示す。


図11.4.10 タイルユニットの割付け図(小ロタイルの例)

(b) 伸縮調整目地及びひび割れ誘発目地

(1) タイル型枠先付けの場合、目地の役割は特に重要である。

コンクリートの乾燥収縮によって起こるひび割れに対処するために設けるひび割れ誘発目地、建物の隅角部等の作業が困難なとき、又はタイルやタイルユニットの寸法精度、取付け精度等、施工の誤差を考慮して設ける目地を「標仕」では伸縮調整目地といっている。

(2) 伸縮調整目地は目地幅も大きく、また、細かく入れる必要があるので意匠上への影響が大きい。したがって、設計担当者と十分打ち合わせて決定する。

(3) 伸縮調整目地の大きさは、図11.1.5に示してあるが、作業性を考慮すれば幅25mm以上が望ましい。

(c} 小口以上の大きさのタイルをまぐさ又はひさし先端下部に用いる場合、何らかの不具合が生じてもタイルがはく落することのないよう、図11.2.5に示す引金物を取り付ける。しかし、型枠先付け工法の場合、コンクリート打込みにより、引金物が型枠面あるいはタイル裏面に密着しては目的を果たさないばかりか、かえってコンクリートの未充填部を作ることとなってしまう。したがって、コンクリート打込み前に引金物がコンクリート躯体の斜め上方向に、確実に定着できる手段を講ずることが必要である。

(d) 型 枠

(1) タイル先付け用の型枠には打放し仕上げと同程度の精度が要求される。

(2) 型枠は、仕上げ及び経済性を考え大型パネルとするのがよい。大型パネルを用いる場合転用ができないと不経済になるので、階高及びスパン幅等設計上の配慮が必要である。

(3) 型枠の精度を高めるには、特に次の点に注意する。

(i) 建込み精度の確保(コンクリート打込み中にも注意)
(ii) 型枠の剛性
(iii) 型枠接合部の精度(特にコンクリート打継ぎ部)
(ivl 隅角部の型枠の精度及び剛性
(v) 桟木の寸法の精度(両面かんな掛けを行い、せい寸法を一定にする)

(vi) セパレータの締付け程度(締付け過度に注意)

(4) 型枠の精度は、タイルの仕上りを考えれば、建入れ、通りの精度については 1/750、階高については ±5mm、壁厚については ±3mm以下が望ましい。

また、コンクリート打込み後も目標とする精度が保てるよう、支保工を十分に用い、コンクリートの打込み方法及びコンクリートの側圧による誤差をなくすようにしなければならない。

(5) この工法に用いる大型パネル及びその頂部と脚部の納まりの一例を図11.4.11に示す。


図11.4.11 大型パネルの詳細及びその頂部と脚部の納まり

 

(e) コンクリートの打込み及び養生

(1) コンクリートは、通常のRC造に用いられている設計甚準強度 21N/mm2、スランプ18cm程度のものであればよいが、(3) に示す締固め作業に困難を伴うような断面形状のSRC造等の場合、流動性のよいコンクリート等を検討するとよい。

(2) タイルを打ち込む壁の増打ちは、構造上必要な壁厚に20〜40mm程度増やしたものとされている。「標仕」11.4.4 (e)(3)(i)では、棒形振動機による締固めは、加振部がタイルに直接触れないように操作することが定められており、壁厚や配筋に対する設計上の配慮が必要である。

(3) 先付け工法の場合、コンクリートの締固めは、タイルの接着力を確保するため特に重要である。このため、「標仕」11.4.4(e)(3)ではコンクリートの輸送管1系統につき、型枠振動機2台以上を、「標仕」6.6.5(e)に定めている配置に追加することにしている。

なお、締固めは、6.6.5の注意事項を十分守らなければならない。また、先付け工法を意識しすぎて振動機による振動及びたたき締めを過度に行うとかえって悪い影響がある。

(4) 型枠取付け型振動機を用いる場合、内壁側の型枠に取り付けて、上部の梁、スラブは棒形振動機を使う併用方式がとられている。型枠取付け振動機による締固めの留意事項として次のような事項が挙げられ、事前に十分な施工計画の検討が必要である。

(i) コンクリートの打込み順序に合わせた振動機の配置計画の検討
 ① 振動機の取付け間隔及び台数
 ② 振動機の盛替え順序
 ③ 人貝の配置

 ④ 電源の確保

(ii) 型枠からのセメントペースト漏れ防止

 型枠の精度及び事前のチェック

(iii) 振動機の加振時間の検討

 かけ過ぎの防止

(iv) 型枠緊張材(フォームタイ)の緩みに対する検討
 ① 型枠の監視

 ② 改良形緊張材の使用

(v) タイル型枠先付け工法の種別の検討

 型枠の振動によるタイルのはく離落下の防止

(vi) その他

(5) コンクリート打込み時に、下階のタイル壁面にセメントペーストが流出して、すでに施工された壁面を汚したときは、速やかに水洗いによりタイル壁面の清掃を行う。

また、必要に応じ、前もってポリエチレンシート等でタイル面を養生する。

(f) タイル取付け面の型枠の取外し

(1) タイル取付け面の型枠を取り外す場合、タイル表面に傷をつけないように注意して作業する必要がある。

(2) タイル面に粘着テープ、接着剤等が残った場合は汚れが残らないよう速やかに清掃する。また、セメントペーストがタイル表面に付着した場合も速やかに清掃する。

(3) タイル及びタイルユニット取付けに用いた釘、ステープル等の金属類が壁面に残った場合、錆により汚れが生じるので速やかに取り除かなければならない。

(4) 仮付けタイル部分は、仮付けタイルを取り外したのち、(h)(3) により張替えを行う。

この場合、仮付けタイルの厚さは張付けモルタルの厚さを含めたものを用いる。

(g) 材料保管等

(1) タイルユニット及び副骰材は、直射日光や雨水による材料の変質・劣化がおきる場合があるので、シート養生を行い保管する。

(2) タイルシートや目地桝はプラスチック製が多いので、火気には十分注意して保管する。

(h) タイル壁面の補修

(1) 先付け工法では、先付けされたタイルに不良箇所のないように施工すべきであるが、不良箇所が生じた場合は、将来はく離を起こさないよう、工法を十分検討し補修しなければならない。

(2) 施工不良の発生要因及び対策、判定方法、補修方法を表11.4.4に示す。

(3) タイルの張替えは、不良部分のタイルを取り、躯体部分をタイル裏面より10mm程度はつって行う。タイルの張付けは、躯体部分に5mm程度張付けモルタルを塗り付けタイル裏面にも張付けモルタルを5mm程度塗り付け、図11.4.12に示すようにタイル裏面に空隙を生じないよう張り付ける。

なお、はつり範囲が構造体部分にまで及ぶ補修の場合は、タイル張付けモルタルは、平成13年国土交通省告示第1372号に規定されているポリマーセメントモルタルを用いる。


図11.4.12 タイル張替え工法

(i) 試 験

打診試験及び引張接着試験の方法及び試験結果の判定は11.1.5 (b)及び(c)による。ただし、型枠先付け工法においては次の点が異なる。

(i) 接着力試験の試験体は、タイルの周辺をタイル裏面まで切断する。

(ii) 接着力試験結果の判定は、タイルの引張強度が1個でも0.6N/mm2未満のものがある場合は不合格とする。

打診検査によってはタイル裏面の軽微なじゃんかが検知されない場合がある。目視でタイル目地を詳細に調べることがじゃんかの発見に有効なので、打診検査の際、目視によるじゃんか検出を行うのが望ましい。

11.4.5 漬 掃

清掃については、11.2.8(b)を参照する。

表11.4.4 不良の発生要因等

11章 タイル工事 5節「標仕」以外の工法

11章 タイル工事
05節「標仕」以外の工法
11.5.1 陶磁器質タイル先付けPC部材
(a) 作業の流れ
作業の流れを図11.5.1に示す。
図11.5.1_陶磁器質タイル先付けPC部材製作の作業の流れ.jpg
図11.5.1 陶磁器質タイル先付けPC部材製作の作業の流れ
(b) タイル先付けPC部材の種類
タイル先付けPC部材は、型枠ベッドにタイル又はタイルユニットを取り付ける方法によって、図11.5.2 〜4の3種類に大別される。
図11.5.2_タイルシート法_イ.jpg
図11.5.2_タイルシート法_ロ.jpg
図11.5.2_タイルシート法_ハ.jpg
図11.5.2 タイルシート法
図11.5.3_目地桝法.jpg
図11.5.3 目地桝法
図11.5.4_タイル単体法.jpg
図11.5.4 タイル単体法
(c) 材 料
(1) タイルは「標仕」11.4.2による。
(2) タイルユニットは「標仕」11.4.2(e)によるほかに、60℃程度の蒸気養生で著しい変形・変質のない材料としなければならない。
(3) タイルユニットには次のような性能が要求される。
(i) 型枠への配列固定が容易にできる。
(ii) セメントペーストが漏れない。
(iii) 裏打ちシート・目地桝がはがしやすい。
(iv) シート、目地桝の加工が容易にできる。
(v) 目地及びジョイント部の仕上りが良い。
(vi) 寸法精度が良い。
(ⅶ) 廃材が少ない。
(4) タイルシートによるタイルユニットの割付け寸法、ユニットの寸法及び許容差、対角線長の差、目地深さの標準は、表11.5.1による。
表11.5.1 ユニットの寸法、許容差等の標準(タイルシート)
表11.5.1_ユニットの寸法,許容差等の標準(タイルシート).jpg
(5) 目地桝によるタイルユニットの目地枠の形状、タイルの割付け寸法、ユニットの寸法及び寸法許容差、対角線長の差、桝目の内法寸法の許容差、ベースの厚さ、目地深さの標準を表11.5.2に示す。
表11.5.2 ユニットの寸法、許容差等の標準(目地桝)
表11.5.2_ユニットの寸法,許容差等の標準(目地桝).jpg
(d) タイル先付けPC部材の製作
タイル先付けPC部材の製作は「標仕」17章3節及び20章3節によるが、タイル先付けPC部材の場合には次の点に注意する必要がある。
(i) 型枠の組立
① タイルを敷き並べる面は、コンクリート等の付着物が残っていると、タイルの配列固定上の障害となるので丁寧に取り除く。
② タイルを敷き並べる面にははく離剤を塗り付けない。また、タイルを先付けしない型枠面は、タイルを敷き並べる前にはく離剤を塗り付ける。タイル裏面にはく離剤が付着すると接着強度の低下につながるので注意する必要がある。
(ii) タイル及びタイルユニットの敷並べ
① タイルシート法
タイルユニットは、コンクリートの打込みの際に移動しないように、両面粘着テープ、所定の接着剤等を用いて型枠に固定する。
② 目地桝法
1) 目地桝の固定は、平部では必要ないが、立上り部分は両面粘着テープ等で固定する。
2) タイルの固定は,所定の接着剤等で行う。
③ タイル単体法
1) タイル単体法では、タイル割付け図に従って型枠面に基準線を引き、600 mm間隔程度にタイルの位置決めの定規となる目地(決め目地)を固定したうえでタイルを敷き並べるとよい。
2) 目地材は幅の異なる数種類を用意し、タイルの寸法のばらつきを目地幅で調整しながら敷き並べるとよい。
(iii) 鉄筋溶接金網の取付け
タイル裏面に接してスペーサーを置くと、タイルとコンクリートの接着面積が減少するので、鉄筋・溶接金網は、水平に吊り下げて、所定のかぶり厚さを確保するのがよい。鉄筋のかぶり厚さが不足していると、コンクリートの中性化及び塩害により鉄筋が錆びやすくなり、錆によって表面のコンクリートとタイルが押し出されてはく落に至ることがあるため、注意が必要である。
溶接金網で垂れやすいものについてはスペーサーを使用することとなるが、タイルと面で接するものは避ける。
(iv) コンクリートの打込み
コンクリートの締固めに際して、棒形振動機を使用する場合は、その先端でタイルに衝撃を与えないように注意する。また、テープルバイプレーターを併用する場合は、前もって試験打ちを行い、タイルの移動やセメントペーストの漏れ出しがないか確認しておくことが望ましい。
(v) コンクリートの養生
加熱養生を行う場合は、温度の上昇・下降の勾配及び最高温度についてタイルの接着強度の低下の原因とならないように注意しなければならない。また、タイルを敷き並べた型枠ベッド面に蒸気が直接当たり、型枠ベッド面の温度がコンクリート温度より極端に上がると、タイルの接着強度に悪影響を及ぼすこととなるため、蒸気の配管及び噴出口の設定にも注意する必要がある。
(vi) 脱 型
脱型・移動・反転等では、コーナ一部のタイルに大きな力が加わり、タイルの欠け、はく落等が生じないように注意する必要がある。
(ⅶ) タイル面の清掃
タイル面の清掃は、11.2.8(b)による。
(ⅷ) タイルの補修
タイルの欠落、浮き、埋没、著しい破損及び割れがあるものは、タイルの張替えを行う。張替えの方法ば11.4.4 (h)(3)による。
(ix) 養 生
PC部材の保管中に雨水による汚れがタイル表面に強固に付着する場合があるので、汚れが付着しないように養生方法を工夫する必要がある。
(e) タイルの接着性の検査
(1) 打診による確認
タイル面は全面にわたり、打診用ハンマーを用いて打診を行う。打診の方法は、「標仕」11.1.5(b)による。
(2) 接着力試験
タイルは、必要に応じて試験体を作製して接着力試験を行うとよい。接着力試験を実際に建物に取り付けられるPC部材で行うと、その補修箇所が欠陥につながることが考えられるため、試験体で行うことが望ましい。接着強度は陶磁器質タイル先付け工法に準じ、0.6N/mm2以上とするのが適切である。接着力試験の方法は、「標仕」11.1.5(c)による。
11.5.2 タイル張り外壁のはく落防止の工法
タイル張り外壁のはく落事故を防止するための技術開発が活発に行われている。既往の報告によればタイル張り外壁のはく落事故の多くは、コンクリート躯体と下地モルタルの界面はく離によるもの、あるいは下地モルタルと張付けモルタルの界面はく離によるものである。これらの界面はく離を防止する目的で(1)から(6)までに示すような工法が開発され、普及しはじめている。
これらの工法は営繕工事では今までの実績が少なく、現段階で「標仕」に採り上げられていない。しかし、タイル張り外壁のはく落防止に対する要求が高まっており、特記による採用も考えられることから、次に工法の概要を述べる。
(1) 下地吹付け工法
吹付け用に調合したモルタルをモルタルポンプを用いて圧送し、高圧空気と一緒に吹き付けて、モルタル下地を作る工法である。こて塗りによらず機械で吹き付けることにより、コンクリートとモルタルとの接着強度のばらつきが少なくなる。また、施工性が向上し、省力化を図ることができる。
この工法で使用する吹付け機械の例を図11.5.5に示す。吹き厚に応じてノズルの径(φ 4,6,9mm)を選択する。
吹付け工法のモルタルは、軽量骨材が混入された既製調合モルタルが使用される場合が多い。軽量骨材が混入されている理由は、こて押えを容易にするためとモルタルのだれと飛散を少なくするためである。このようなモルタルを使用する場合は、必ず翌日に散水を行う。現場調合モルタルの場合は、けい砂等を骨材に使用し、セメント混和用ポリマーデイスパージョンを混和する。吹付け工法の場合には、モルタル軟度の管理が重要であるが、適切なモルタルの軟度は調合、施工時の環境条件、下地の吸水の程度等によっても異なるため、実施工前に試験施工を行って吹付け状態を確認する必要がある。
吹付けの手順は、15 mmを超える厚さに吹き付ける場合は、下吹き・中吹き・上吹きの3回吹きとし、15mm以下の場合は中吹きを省略した2回吹き、7mm程度の場合は上吹きのみを上付け・下付けに分け、追いかけ吹きとするのが一般的である。
図11.5.5_吹付け機械の例.jpg
図11.5.5 吹付け機械の例
(2) 立体繊維材料張り工法
(i) 立体繊維材料の種類
立体繊維材料は、タイル張り仕上げのはく落防止を目的として開発されたもので、表11.5.3に示すものが代表的である。素材繊維としてポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、炭素繊維が使用されている。利用形態は、立体網目不織布及び立体織布の2種類がある。
表11.5.3 立体繊維材料の種類
表11.5.3_立体繊維材料の種類.jpg
(ii) 施工法
下地調整されたコンクリート面にポリマーセメントモルタルで立体繊維材料を張り付ける。モルタルと躯体との一体化をより高めるうえでアンカーピンの併用が望ましい。施工手順の一例を図11.5.6に示す。
図11.5.6_施工手順の一例.jpg
図11.5.6 施工手顧の一例
(3) 躯体コンクリートに直接タイル張りする工法
モルタルにより下地を作製しないで、コンクリートに直接タイル張りを行う工法で、「直張り」と呼ばれている。下地モルタルがないために接着界面の数が減少する。この工法を採用するためには、コンクリートの精度を高める必要があり、要求される仕上り精度コンクリート型枠の精度等を考慮して判断する必要がある。
コンクリート表面は下地モルタル表面に比べて平滑である。特にせき板に表面処理合板や鋼板を使用した場合には顕著である。この平滑なコンクリート面は、張付けモルタルの付着が悪く、コンクリート界面からのはく離原因の一つに挙げられている。このため、平滑なコンクリート面には必ず目荒しを行う。
タイル張りは、コンクリート下地との付着を良くするために、ポリマーセメントを用いて、こて圧をかけてこすりを行ったのち、同じ調合のポリマーセメントを塗り付けて、タイル張りを行う。
また、タイル張り前にコンクリートの不陸補修を行う場合のモルタルも.ポリマーセメントモルタルを使用する。
(4) 押出成形セメント板へのタイル張り
押出成形セメント板に対してタイル仕上げを行う方法として。は次の3種類がある。
① 現場におけるタイル張り
図11.5.7に示すようなタイル張り専用のあり状の溝を設けた押出成形セメント板に、モルタルを用いてタイル張りを行う。押出成形セメント板は、温度変化や乾燥・湿潤によるディファレンシャルムーブメント、外力等による壁面の動きはRC壁に比較して大きい領向があるため専用のものを用いる必要がある。また、張付けモルタルにはポリマーセメントモルタルを用いるのが望ましい。マスク張りの場合は溝にモルタルが充填されるように押出成形セメント板にも張付けモルタルを塗り付け、硬化の状態を見計らってタイルを張り付ける。
図11.5.7_タイル張り用押出成形セメント板表面の断面例.jpg
図11.5.7 タイル張り用押出成形セメント板表面の断面例
② タイル工場張りパネル
図11.5.7と同じ専用の押出成形セメント板に、工場でモルタルを用いてタイルを張り付けたパネルであり、工場張りであるためにタイルの接着強度のばらつきが少ない。
③ 乾式工法
図11.5.8に示すように、リブを設けた押出成形セメント板に専用のタイルを引っ掛けていく工法であり、タイルのはく落の危険性が少ない。タイルは一部を接着剤、金具等で固定する。
図11.5.8_押出成形セメント板を下地とした乾式工法の例.jpg
図11.5.8 押出成形セメント板を下地とした乾式工法の例(最新タイル工事施工マニュアルより)
(5) 先付け特殊繊維シートによるタイル張りモルタル層のはく落防止工法
特殊繊維シートとは、図11.5.9に示すように、スパンボンド基布にビニロン繊維をニードルパンチ加工した繊維シートの片面に、アクリル系ポリマーセメントを含浸コーティングしたシートである。この特殊繊維シートを、タッカー等により合板型枠に取り付けて、建て込み、コンクリートを打ち込む。脱型後は、ビニロン繊維面が繊維シート状のタイル下地層となる。この下地面に対して、張付けモルタルでタイルを直張りする工法である。躯体コンクリートとタイル張付けモルタルの間に、特殊繊維シートによる機械的な連結が付与され、万が一タイル張りモルタル層に浮きが生じても、はく落を防止する。
図11.5.9_特殊繊維シート.jpg
図11.5.9 特殊繊維シート
(6) コーン状係止部材及び短繊維混入モルタルを併用したタイル張り工法
ループ状突起物を有するコーン状の係止部材と、短繊維を混入したモルタルとを用いることで、躯体コンクリート表面とモルタル層の界面でのはく落を防止するタイル張り工法がある。施工手順の一例を図11.5.10に示す。
図11.5.10_施工手順の一例.jpg
図11.5.10 施工手順の一例
参考文献
表11.5_参考文献.jpg

12章 木工事 1節 一般事項

第12章 木工事

01節 一般事項

12.1.1 適用範囲

(a) この章は、鉄筋コンクリート造鉄骨造、組積造等における内部仕上げの下地及び造作類を対象としており、構造主体をすべて木造とした工事は対象としていない。

近年、鉄筋コンクリート造等の事務庁舎には、ほとんど施工例がなくなったため、平成22年版「標仕」から「3節小屋組」及び「4節屋根野地、軒回りその他」が 削除されたが、増築工事等で置屋根等が採用される場合もあることから、8節及び9節に、19年版「標仕」の仕様及びその解説を掲載している。

なお、国土交通省大臣官房宜庁営繕部が制定している「公共建築木造工事標準仕様書」(平成25年版)は、構造主体を木造とした建物を対象としており、軸組構法工事等で小屋組等が規定されているので参考にされたい。

(b) 小屋組工事の作業の流れを図12.1.1に、内部工事の作業の流れを図 12.1.2に示す。

図 12.1.1 小屋組工事の作業の流れ

図 12.1.2 内部工事の作業の流れ

(c) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。

なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。

① 工程表(施工図完了、材料搬入、着工、完了等の時期)
② 施工業者名及び作業の管理組織
③ 加工機器等(主として仕上げ)
④ 使用する材料の種類、形状、寸法及びその使用箇所
⑤ 加工、組立又は取付けの工法
⑥ 防虫、防腐、防蟻処理
⑦ 養生方法

⑧ 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等

(d) 施工図(現寸図を含む。)を必要とする箇所は、おおむね次のとおりである。

① 小屋組(垂木を含む)、間仕切軸組(下地材を含む)、天井下地、床組等の構造及び継手、仕口等
② 窓、出入口等の建具回り、壁、天井、床の取合い、納まり等

③ 躯体との取合い(床、柱、壁、梁スラプ下端)

(e) 主要な材料は、あらかじめ見本を提出させ、次のような事項を検討する。
① 製材:規格、樹種、材質、等級、含水率
② 集成材:規格、樹種、形状、寸法、化粧薄板(樹種、厚さ)、仕上り等
③ 単板積層材、合板、構造用パネル、パーティクルボード:規格、材質、等級等
④ 建具枠、敷居、かもい等:加工の状態

⑤ 釘、諸金物:規格、材質、形状、寸法、防錆処置

(f) 平成22年版「標仕」から、製材等フローリング又は再生木質ボードを使用する場合(ただし、製材については、間伐材、林地残材又は小径木を使用する場合を除く。)は、受注者等が合法性を証明する資料を提出することとされている(1.4.2 (c) 参照)。

12.1.2 基本要求品質

(a) 木材については、一般にJASでその品質が定められている。また、含水率は、施工後の狂い、割れ等に大きな影響を与えるため、使用部位に応じて「標仕」表12.2.1のように規定しているので、これに適合する材料を使用することを求めている。含水率の測定方法については、12.2.1(a)(5)を参照されたい。

また、樹種については、原則として、代用樹種を使用することが認められている (12.2.1(b)(2)参照)。更に、当該部材の必要性能(強度.耐久性等)を満たすことが学術的又は技術的に確認されている場合にあっては、監督職員の承諾を受けて「標仕」表12.2.3に示す代用樹種以外の材を用いることができる。

(b) 造作材の形状及び寸法については、設計図書で指示され、施工図等が作成されるので、これに基づき正しく加工されていることを要求している。

また、造作材の仕上り面は、そのまま室内の表面に現れ出来ばえを左右するので、傷や汚れ等が許容される範囲内のものでなければならない。しかし、「仕上り面の状態」に関する品質基準については、多分に個人の主観的な判断となり、定量的・客観的に記載するのが困難な面もあるが、できるだけ具体的に施工計画書の品質計画に記載させ、監督職員と施工者の合意のもとに、公平な品質管理を行わせるようにする。

(c) 木工事における性能に関する要求では、下地材の加工、施工が適切であること、力の伝達が十分に行われるような継手及び仕口であること、並びに床嗚りが生じないこととしている。
これらについては、「標仕」で規定された材料を使用し、定められた継手及び仕口の工法で適切に施工すれば、ここで要求される性能を十分に満足していると考えてよい。このため、品質計画において、施工の具体的な方法や管理記録の残し方を提案させるようにする。

したがって、基本要求品質を満たしていることの確認は、耐力試験等により性能を確認することを求めているものではなく、「標仕」の規定に基づき適切に施工されていることが分かればよい。しかし、「標仕」12.1.2(d)において「床嗚りが生じないこと」が要求されているので、完成時に床鳴りが生じる状態であれば、手直しが必要である。

(d) ホルムアルデヒド放散量について、「標仕」では基本要求品質の事項として概括的規定を設けていない。しかし、個別に、JAS又はJIS等で放散量等の品質基準が規定されている材料については、特記がなければ、F☆☆☆☆「非ホルムアルデヒド系接着剤使用」並びに「非ホルムアルデヒド系接着剤及びホルムアルデヒドを放散しない塗料使用」のものとしている。したがって、市場性、部位、使用環境等を考慮してその他の放散量のものを使用する場合は、設計図書に特記されている内容を十分確認し、要求品質を確保する必要がある。

なお、ホルムアルデヒド放散量に関する工事監理上の注意事項等は、19章10節を参照されたい。

12.1.3 木材の断面寸法
(a) 木材の断面は、のこ減り、かんな削り等により寸法が変わるので、「ひき立て寸法」か「仕上り寸法」かを明らかにしておく必要がある。「標仕」12.1.3に定められている事項を図解すれば 図12.1.3のようになる。

なお、「ひき立て寸法」とは、所定の寸法に製材したままの寸法である。


図12.1.3 ひき立て寸法

(b) 通常、削り代(削り仕上げにより減少する部分)は、板材及び小割り類のような狂いを取る必要のないものは、片面仕上げの場合で1.5mm程度、両面仕上げの場合で3.0mm程度である。また、角材及び平割り類のような狂いを取って用いるものは片面仕上げの場合で 3.0mm程度、両面仕上げの場合で 5.0mm程度である。

12.1.4 表面仕上げ

(a) 「標仕」表12.1.1は、木材の仕上げの程度の結果のみについて定めており、加工途中の工程は問題にしていない。
例えば、A種は超自動機械かんなで最終仕上げを行った程度の面という意味であり、手かんなで、同様の仕上げとしても差し支えない。

仕上げ機械について一例を示す(図12.1.4参照)。


図 12.1.4 仕上げ機械の例

(b) 表面の仕上げの程度は文章では表しにくいが、「標仕」表12.1.1に定められている仕上げの程度を強いて表せば表12.1.1のようになる。

表12.1.1 表面の仕上げの程度


12.1.5 継手及び仕口

(a) 木構造では継手及び仕口が弱点になりやすいため、継手が平面的にも立面的にも同一箇所に集中することは、可能な限り避けるべきである。やむを得ず集中してしまう場合は必要な補強を行う。一方、仕口は集中することが多いが、他の工法、部材の取合い、配置等によって集中を避けることができる場合は、これを避けるべきである。

なお、継手の位置を分散することを「乱」に配置するといい、交互に配置することを「千鳥」に配置するという。

(b) 構造材では、原則として、あまり短い材料を使うことは避けるべきである。「標仕」12.1.5(b)では、継伸ばしの都合上、やむを得ず短材を使用する時は、土台で布基礎のある場合でも1m程度を限度とすると定められている。しかし、その他の部分でも同様であるが、応力伝達に支障がないように補強している場合を除き、なるべく2m程度を限度とすることが望ましい。

(c) 合板、ボード類の壁付き材は乾燥収縮によって反り、隙間等が発生しないように小穴じゃくりをつける。

(d) 継手及び仕口が、「標仕」等の設計図書に定められていない場合は、一般的に用いられている工法としてよい。しかし、継手及び仕口は重要なものであるから、「標仕」12.1.5(d)では、あまり簡略な工法になるのを避けるようにするため、適切な工法を定め、監督職員に報告するように定めている。

12.1.6 養 生

工事中は、あとから行われる作業により仕上り部分が汚されたり、傷つけられたりしやすい。特に左官、塗装を行う箇所、通路になりやすい箇所は養生の必要がある。
養生方法には、ハトロン紙やピニル加工紙の張付け、合板やハードボードの取付け等稲々な方法があるが、適宜選んで養生する。また、和室の木材削り面には、との粉塗り等の養生をすることはもちろん、木材仕上り面や天井板等には、素手で触れないように十分注意する。

12章 木工事 2節 材料

第12章 木工事
02節 材 料
12.2.1 木 材
(a) 一般事項
(1) 木材の狂い、割れ、耐久性等は含有水分の多少に大きく影響されるので使用木材の含水率について注意する。
例えば、設計時に許容応力度計算等を要する木造建築物を建設する際に用いる木材は、昭和62年建設省告示第1898号により、原則として,含水率は15%以下、乾燥割れ等により接合部の耐力低下が生じない接合部による構法を採る場合は、20%以下とすることが要求されている。「標仕」では、主として構造計算等を必要としない程度の内部工事を想定しているが、前述の値を木工事に用いる材料の含水率の目安としてもよい。
(2) 乾燥方法には、天然乾燥法〈天乾〉と人工乾燥法〈人乾〉とがあるが、短期間のうちに含水率の低い木材を得るには人工乾燥によらなければならない。特に、狂いと割れは、一度十分に乾燥しておけば、以後は生じにくいので効果的である。
(3) 木材は工事現場では長時間の乾燥が期待できないので、一般的には、含水率を工事現場搬入時に確認している。
なお、含水率は全断面の平均の推定値としているが、その測定は次によって推定してよい。
( i ) 測定は、電気抵抗式水分計又は高周波水分計による。
(ii) 測定箇所は、異なる二面について、両小口から300mm以上離れた箇所及び中央の計6箇所とする。
(iii) 材の含水率は、6箇所の平均値とする。
(4) 木材の腐朽と含水率の関係は、含水率が20%以下ならば腐朽の可能性は低いが、30%以上が維持されるようになると腐朽する可能性が高くなる。
(5) 含水率
( i ) 含水率は、全乾材の質量に対する含有水分の質量の比で表す。

含有水分の木材内部における状態は、図 12.2.1に示すとおりである。


図 12.2.1 木材の乾燥過程

(ii) 含水率の測定方法には次のようなものがある。
① 全乾法

乾燥によって水分を含まない木材の質量(m0)を求めるもので、JISでは 100〜105℃の換気良好な炉中で恒量に達した状態を全乾と定めている。水分を含んでいる木材の質量を(m)とすると、含水率(u)は12.2.1式で表される。

7%以下又は繊維飽和点以上の含水率を測定する場合は、この方法による。
② 電気抵抗式水分計(図12.2.2参照)

直流や低周波電流に対する木材の比抵抗の対数が含水率と線形関係にあることを利用して含水率を推定する方法である。比抵抗は、温度の影響を受けるので補正が必要であり、また、繊維飽和点以上の含水率の測定はできない。木材に打ち込まれた針の深さまで測定できるが、通常は7 mm程度である。


図12.2.2 電気抵抗式水分計(打込み式)の例

③ 高周波水分計(図 12.2.3参照)

高周波からマイクロ波域における木材の誘電率あるいは誘電損率が含水率と線形関係にあることを利用して含水率を推定する方法である。誘電率は温度の影響は小さいが、比重の影響が大きく、木材の比重に応じて補正が必要である。木材の表面に当てるだけで、30mm程度の深さの平均含水率が測定できる。


図12.2.3 高周波水分計の例

(iii) 全乾状態〈絶乾状態〉(図12.2.1参照)
含有水分 0 の状態であるが、実験的には100〜105℃に保ち、質量変化のなくなった状態をいう。このような木材を全乾材あるいは絶乾材という。
(iv) 繊維飽和点(図 12.2.1参照)
含有水分が結合水100%飽和、自由水 0 の状態である。このときの含水率は約30%になる。
(v) 平衡含水率〈気乾含水率〉(図12.2.1参照)

大気中の水分と木材の含有水分が平衡になった状態の含水率で、気温20℃、相対湿度65%において、約15%である。このような木材を気乾材という。しかし、図12.2.4に示すように、気乾材の含水率には変動があるので.「標仕」12.2.1 (a)(2)(ⅰ)ではやや平均値を上回る値を上限としている。


図12.2.4 気乾材の含水率の変動

(vi) 木材の比重
木材は細胞からなっているために内部に空隙が多いが、空隙部分を除いた実質部分の比重である真比重は、樹種に関係なく約1.5〜1.6といわれている。実用上は、重量を体積で除した見掛け比重で表し、通常、含水率15%のときの見掛け比重による。これを気乾比重という。
気乾比重別による樹種を表12.2.1に示す。

表12.2.1 各樹種の比重

(b) 製 材
(1) 品質
(i) 製材の品質の規定には「製材の日本農林規格」(平成19年農林水産省告示第 1083号、最終改正、平成25年同第1920号)がある。また、外国製品のうち、 JASと同等以上であるとの相互認証を得ている製材もある。

製材のJASマークを図12.2.5に示す。


図12.2.5 製材のJASマーク

① 製材のJASにおける「目視等級区分構造用製材」は、構造用製材のうち、節、丸身等材の欠点を目視により測定し、等級区分したものをいい、主として高い曲げ性能を必要とする部分に使用される甲種構造材と、主として圧縮性能を必要とする部分に使用される乙種構造材とに区分されている。また、製材の寸法は、木口の短辺、木口の長辺及び材長により区分されている。「構造用製材」の標準寸法(仕上げ材にあっては、規定寸法)を表12.2.2に示す。

表12.2.2 構造用製材の標準寸法(JAS)

② 製材のJASにおける「造作用製材」は、建築物の内部の敷居、かもい等に使用される造作類と、内外装用板に使用される壁板類とに区分されている。
③ 製材のJASにおける「下地用製材」は、建築物の屋根、床、壁等の下地の外部から見えない部分に使用される製材品である。
④ 製材のJASにおける「仕上げ材」と「未仕上げ材」の含水率による区分を表12.2.3に示す。
表12.2.3 仕上げ材と未仕上げ材の含水率による区分
(構造用製材の場合)
なお、「仕上げ材」とは、乾燥処理を施したのち、材面調整(又は修正挽き)を行い,寸法仕上げをしたものをいい、「未仕上げ材」とは,乾燥処理を施したのち、寸法仕上げをしないものをいう。
⑤ 実際の商取引では、ひき割り類、ひき角類という材種名や慣習的な材種名が一般的に用いられており、JAS以外の品質表示で流通している製品も多い。
⑥ 木材の用途、使用部位によって求められる性能、寸法安定性等が異なるので、それらに応じた等級、性能区分、使用薬剤であることを確認する必要がある。
(ii) 平成25年版「標仕」では,「製材の日本農林規格」以外の製材が採用されたが、その品質基準は「製材の日本農林規格」に準じたものとなっている。JASマークが付されていない材料については、その品質基準に適合することを十分に説明する資料を提出させることが重要である。
(iii) 用語
一般に用いられている用語の説明を表12.2.4に表す。
表12.2.4 用語の説明

(2) 樹 種

(i) 樹種は、「標仕」12.2.1 (b)(2)(ⅳ)では、特記によることとされるが、図面等で代用樹種の使用が禁止されていなければ、両者は同等として取り扱ってよい。しかし、造作材の代用樹種を選定する場合は、室の仕上りを考慮し部位ごとにバランスのよい樹種を選定する必要がある。
(ii) 造作材で、つがが使用されないのは、組立後、反り、ねじれ、曲がり等の狂いが比較的生じやすいからである。
なお、乾燥を十分に行った場合等で、組立後の反り、ねじれ、曲がり等の狂いが生じないことが経験的、技術的に明らかな場合は、それらの樹種も代用樹種として扱ってよい。
(iii) 代用樹種を禁止された松は、赤松又は黒松のいずれかとする。ただし、強度性能上、外見上、寸法安定性、耐久性その他当該部位に要求される性能すべてを満たす樹種が存在する場合は、代用樹種としてよい。
(iv) 木れんが及びくさびには、釘の保持力、耐腐朽性等の優れたひのきのほか広業樹も適している。ただし、広業樹がすべて耐腐朽性に優れているとは限らない。
(v) 込み栓はかし、けやきの類の広葉樹又はこれと同等以上の強度性能をもつ樹種又は加工材料とする。込み栓は構造材のずれ止め、抜け止めに用いられるが、現在では金物で代用されることも多い。
「標仕」表12.5.1の吊束及び敷居に、込み栓並びに横栓として使用している。
(vi) 輸入木材は、同一種に別な名称があったり、種類が異なるものを同一名称で呼んだりしているので、樹種を見分けるのは難しいが、一般には次の左の樹種名に右のものが該当する。
米ひ  :ポートオーフォードシダー
米ひば :イエローシダー、アラス力シダー
米とうひ:ホワイトスプルース、エンゲルマンスプルース
     ブラックスプルース、レッドスプルース、
     コーストシト力スプルース
米つが :ウェスターンヘムロック
米もみ :ノーブルファー、ホワイトファー、
     バルサムファー、アマビリスファー
米杉  :ウェスターンレッドシダー
米赤杉 :レッドウッド
米松  :ダグラスファー
台ひ  :台湾ひのき
北洋えぞ松:(ロシア)えぞ松
輸入木材のそれぞれの特徴等を表12.2.5に示す。

表12.2.5 樹種の特徴等

(c) 造作用集成材
(1) 集成材は、ひき板又は小角材等をその繊維方向を互いにほぽ平行にして、厚さ、幅及び長さの方向に集成接着したもので、「集成材の日本農林規格」が制定され ている(平成19年農林水産省告示第1152号、最終改正 平成24年農林水産省告示第1587号)。集成材の分類、区分とその定義を表12.2.6に示す。

表12.2.6 JASによる集成材

(i) 造作用集成材
手すり、力ウンターの甲板等に用いられることが多いが、用いられるひき板がそのまま仕上材になる。ひき板は、薄いものの方が高級とされるが、10〜15mm位が標準となっている。
(ii) 化粧ばり造作用集成材
① 化粧薄板(一般には化粧単板あるいは化粧突き板という。)の厚さを、敷居、かまち及び階段板の上面にあっては 1.5mm以上、柱にあっては1.2mm以上、その他のものにあっては0.6mm以上であることと規定している。
② 通常用いられる化粧薄板は突き板といい、通常厚さは、0.2、0.3、0.6mm程度であるが、0.8mm以上のものもある。化粧として単板を張る場合に3mm程度のものを用いることもある。
③ 化粧薄板は、製作工場の手持ちの材料のうちから選ぶことになるが、素材のままでは仕上がった状態を想像するのは難しい。また、小さな見本板では大きな製品と全く違うものもあるので注意しなければならない。
(iii) 化粧ばり構造用集成柱
所要の耐力を目的としてひき板(ラミナ)をその繊維方向に対しほぽ並行にして集成接着し、その表面に美観を目的として化粧薄板を張り付けた集成材で、主として在来軸組工法住宅の柱材として用いられる。心材には積層数が5以上で、化粧薄板の厚さは1.2mm以上のものが用いられ、強く、狂いが少ないのが特徴である。
(2) 平成25年版「標仕」では、「集成材の日本農林規格」以外の造作用集成材が採用されたが、JASマークが付されていない材料については、特記された品質に適合することを十分に説明する資料を提出させることが重要である。
(d) 造作用単板積層材
(1) 単板積層材(LVL)は、ロータリーレース又はスライサー等により切削した単板を、主としてその繊維方向を互いにほぼ平行にして積層接着したものである。単板の厚さは 2〜4mm程度が普通で、積層数は数層から数十層に及ぶものがある。幅反りを防止するために若干の直交層を挿入する場合がある。LVLは平行層の割合が圧倒的に多いことと、一般に製品の厚さが厚く、主な用途が骨組材(棒状製品、軸材)であることなどが合板と異なっている。
LVLには「単板積層材の日本農林規格」が制定されており、住宅のドア枠、窓枠、胴縁等の内装部材としての使用を対象とした「造作用単板積層材の規格」と建築構造部材としての使用を対象とした「構造用単板積層材の規格」が規定されている(平成20年農林水産省告示第701号)。
(2) 平成25年版「標仕」では、「単板積層材の日本農林規格」以外の単板積層材が採用されたが、JASマークが付されていない材料については、特記された品質に適合することを十分に説明する資料を提出させることが重要である。
(e) 床張り用合板等
(1) 「標仕」表12.6.1の厚さ5.5mmの普通合板は、ビニル床シート等の下地の二重張り等に使用することを想定して、合板製造に使用する接着剤の耐水性を1類とし、板面の品質は塗装下地とならないため、広葉樹では2等、針業樹では C – Dとしている(16.7.2(b)(3)参照)。
また、厚さ12mmの合板は、カーペットや畳床の下地材等に使用することを想定して耐水性、曲げ性能等を考慮して、構造用合板の1類2級の C – D ( C – Dは板面の品質)としている。
(2) 合板の接着の程度による分類
JASによる接着性能の分類は、次のとおりである。
① 特類(フェノール樹脂接着剤等)
屋外又は常時湿潤状態の場所(環境)において使用される構造用合板。
② 1類(メラミン樹脂接着剤等)
断続的に湿潤状態となる場所(環境)において使用可能な合板。コンクリート型枠用合板・住宅下地用・建築物外装用合板等。
③ 2類(ユリア樹脂接着剤等)
時々湿潤状態となる場所(環境)において使用可能な合板。住宅・船舶・車両等の内装用合板・家具用合板等。
(3) 合板の用途による区別
(i) 普通合板(1類・2類)
建築物の内装、家具、建具等一般的な用途に広く使われる合板。寸法は、厚さは 2.3〜24.0mm、幅は 910~1,220mm、長さは910~3,030mmが標準である。
(ii) コンクリート型枠用合板(1類)
コンクリート打込み時にそのせき板として使用される合板で、ラワンのほか針葉樹のものもある。寸法は、厚さは12.0~24.0mm、幅は500~1,200mm、長さは1,800~2,400mmが標準である。
(iii) 表面加工コンクリート型枠用合板(1類)
通常のコンクリート型枠用合板の表面に塗装・オーバーレイ等の加工をしたもの。打放し仕上げに良好な結果が得られるとされているので、土木用型枠として多用される。
(iv) 構追用合板1級(特類・1類)
軸組構法、枠組壁工法住宅等の建築物の構造耐力上主要な部位に使用される合板で〈Kプライ〉と呼ばれる。単板の厚さの範囲、合板の厚さごとの積層数、単板の構成比率が規定され、曲げ試験によって強度保証している。寸法は、厚さは 5.0 〜35.0mm、幅は900 ~1,220mm、長さは1.800 ~ 3.030mmが標準である。
(v) 構造用合板2級(特類・1類)
1級と同様に使用されるが針葉樹合板が主である。寸法は、厚さは、5.0〜35.0mm、幅は900〜1.220mm、長さは1,800〜3,030mmが標準である。
(4) パーティクルボード
近年、床張り用面材としてパーティクルボードを使用することが多くなっている。
パーティクルボードの品質及びその分類は、JIS A 5908(パーティクルボード)による。
① パーティクルボードの裏表面の状態による区分
1) 素地パーティクルボード
両面が素地の状態で研磨品と無研磨品があるが通常は研磨品が中心である。
2) 単板張りパーティクルボード
素地パーティクルボードの両面に単板を張った板で研磨品と無研磨品がある。
② パーティクルボードの曲げ強さによる区分
1) 素地パーティクルボードは18タイプ(曲げ強さが18.0N/mm2以上、以下同様)、13タイプ、8タイプがあるが,床下地には18, 13タイプが用いられる。
2) 単板張りパーティクルボードは30−15タイプがあり、単板の繊維方向により縦、横の強さが違う。
③ パーティクルボードの接着剤による区分
1) Uタイプ
ユリア樹脂系又はこれと性能が同等以上のもので、耐水性が劣るので主に家具、キャビネット等に適する。
2) Mタイプ
ユリア・メラミン樹脂系又はこれと性能が同等以上のもので、建築下地等に適する。
3) Pタイプ
フェノール樹脂系又はこれと性能が同等以上のもので、Mタイプと同様建築下地等に適する。
④ パーティクルボードのホルムアルデヒド放散量による区分
F☆☆☆☆、 F☆☆☆、 F☆☆に分類される。F☆☆の製品はほとんど生産されていない。
(5) 構造用パネル
木材の小片を接着し板状に成形したパネル又はこれにロータリーレース、スライサー等により切削した単板を積層接着したパネルのうち、主として構造物の耐力部材として用いられるむのをいう。その品質は「構造用パネルの日本農林規格」に規定されている(昭和62年農林水産省告示第360号、最終改正平成20年農林水産省告示第938号)。
(6) 繊維板(ファイバーボード)
繊維板の品質及びその分類は、JIS A 5905(繊維板)による。
繊維板の密度による区分
1) インシュレーションファイバーボード(インシュレーションボードともいう。密度0.35g/cm3未満)
畳床用、断熱用、外壁下地用等があり、難燃性を付与したものもある。
2) ミディアムデンシティファイバーボード(MDF、密度0.35g/cm3以上)
主に構造耐力を要求される部分に使用する。曲げ強さによって30タイプ(曲げ強さが 30.0N/mm2以上、以下同様)、25タイプ、15タイプ、5タイプに区分され、接着剤によってUタイプ、Mタイプ、Pタイプに区分される。接着剤の区分、適した用途はパーティクルボードと同様である。
3) ハードファイバーボード(ハードボードともいう。密度0.80g/cm3以上)
油、樹脂等の特殊処理、表面の状態、曲げ強さ等によって分類される。最近は床等の養生板として用いられている。
(f) その他の木材
(1) 木質接着成形軸材料
木材の単板を積層接着又は木材の小片を集成接着した軸材をいう。PSL(Parallel Strand Lumber)、LSL (Laminated Strand Lumber)等がこれに相当し、その品買は、平成12年建設省告示第1446号に規定されている。
(2) 木質複合軸材料
製材、集成材、木質接着成形軸材料その他の木材を接着剤により I 形、角形そ の他所要の断面形状に複合構成した軸材をいう。I 形複合梁、ボックス・ビーム等がこれに相当し、その品質は平成12年建設省告示第1446号に規定されている。
(3) 木質断熱複合パネル
平板状の有機発泡剤の両面に構造用合板その他これに類するものを接着剤により複合構成したパネルのうち、枠組がないものをいう。サンドイッチパネル等がこれに相当し、その品質は平成12年建設省告示第1446号に規定されている。
(4) 木質接着複合パネル
製材、集成材、木質接着成形軸材料その他の木材を使用した枠組に構造用合板その他これに類するものを接着剤により複合構成したパネルをいう。プレハプ建築用接着バネル等がこれに相当し、その品質は平成12年建設省告示第1446号に規定されている。
(g) ホルムアルデヒド放散量
「標仕」では、集成材、単板積層材、合板等のホルムアルデヒド放散量等については、特記がなければ、F☆☆☆☆、非ホルムアルデヒド系接着剤使用、非ホルムアルデヒド系接着剤及びホルムアルデヒドを放散しない塗料使用等としている。
しかし、構造用集成材においては、接着耐久性の確保からF☆☆☆☆の基準を満たす材料の人手が困難であること、また、使用される量が相対的に少ないなどの理由でその他の放散量のものを使用する場合もある。その場合は、特記されていることが必要であるが、市場に該当する品質の材料がない場合は「標仕」1.1.8による協議事項とすればよい。
なお、ホルムアルデヒド放散量に関する建築基準法上の扱いや現場における確認方法等については、19章10節を参照されたい。
12.2.2 接合具等
(a) 釘等
(1) 下地材及び造作材に用いる釘は、JIS A 5508(くぎ)による。「標仕」では、材質は表面処理された鉄又はステンレス鋼としている。
なお、鉄丸くぎ(Nくぎ)は、JISで規定される寸法より細いものが流通している場合が多い。特に、従来市場に出回っている梱包用のFNくぎを使用してはならない。釘の太さはそのせん断耐力に大きく影響する場合が多いので、釘の太さに十分注意するか、同等以上の材質、太さを有するほかの種類の釘を使用することも検討すべきである。
また、釘打ち機により施工する場合は、木材の硬さを十分考慮して、その打込み強さを設定する必要がある。打込み強さが必要以上に大きいと釘頭が材面にめり込み、あとから施工するものに対して影響を及ぼす場合がある。また、釘頭のめり込みは釘の側面抵抗力を減じる場合があるので、構造耐力を要する部分は、更に注意が必要である。
JIS A 5508の抜粋を次に示す。

JIS A 5508: 2009

1 適用範囲
この規格は、主として一般に使用するくぎについて規定する。ただし、自動くぎ打機用のくぎに用いる場合の連結材料及びその方法については規定しない。

3 種類及び記号
くぎの種類及び記号は、表1による。また、くぎは、頭部及び胴部の形状によって表2及び表3の区分による。(表2及び表3は省略)

表1 くぎの種類及び記号

7 材料

7.1 鉄線
鉄線は、JIS G 3532に規定するくぎ用鉄線又はこれと同等以上の品質をもつものとする。ただし、せっこうボード用くぎ及びシージングボード用くぎについては、JIS G 3532に規定する普通鉄線又はこれと同等以上の品質をもつものを用いてもよい。

7.2 ステンレス鋼線
ステンレス鋼線は、JIS G 4309に規定するSUS304又はこれと同等以上の品質をもつものを用いてもよい。

JIS A 5508 : 2009

(2) 釘の長さは、図12.2.6のように留め付ける材料に留め付けられる材料の厚さの1.5倍以上打ち込まないと、構造材では十分な強さを発揮できない。

釘径は、板厚の1/6以下とし、釘の長さは打ち付ける板厚の 2.5〜 3倍のものとする。ただし、板厚10mm以下の場合の釘の長さは4倍を標準とする。

(3) 造作材の釘打ちの標準的な配置を図12.2.7から図12.2.9までに示す。


  図12.2.6 釘の打込み長さ


  図12.2.7 下地材に平行する場合

 


  図12.2.8 下地材と交差する場合

 


  図12.2.9 幅の広い場合

(4) 隠し釘の工法には次のような方法があるが、釘の機能と材料の性質及び釘打ち箇所の意匠上の必要性によって定めることになる。

( i ) 釘頭を切断して打ち込む。
(ii) 釘頭をつぶして打ち込む。
(iii) あらかじめ穴をあけておき釘を打ち込んだのち埋木する。

(iv) ななめ釘打ちにより.見え隠れとなる部分に打ち込む。

(5) 釘配置は、特記のない限り、その最小間隔を表12.2.7とする。ただし、この場合は、釘は木材の繊維に対して乱に打つものとする。

表12.2.7 くぎ間隔の標準

(6) 木ねじは、JIS B 1112(十字穴付き木ねじ)、JIS B 1135(すりわり付き木ねじ)又はこれと同等以上の品質を有するものとする。JISでは、原則として、表12.2.8の材料が規定されているが、「標仕」ではステンレスとしている。

表12.2.8 材 料
(b) 諸金物

(1) 諸金物には、JIS A 5531(木構造用金物)があるが、これに適合するものがないか、又は入手しにくいので、「標仕」12.2.2では,市販品としている。

(2) 金物は一般的には彫り込む必要がないが、部材が交差するような箇所では木部を彫り込み、金物を沈めておかなければならない場合もある。

(3) コンクリートに埋め込まれる部分以外の金物には、錆止め処置として、「標仕」ではJIS H 8610(電気亜鉛めっき)のCM2 C 3級程度の電気亜鉛めっきとしている。

(4) 土台等に使用するアン力ーボルトは先埋込みが望ましいが、位置、埋込み深さ等が不正確になりやすいので、「標仕」12.2.2ではあと施工アン力ーを使用することを認めている。あと施工アン力ーについては14.1.3 (a)(ii)を参照されたい。

(c) 接着剤

接着剤は、非常に多くのものが市場に出回っているが、接着剤の種類によって適用できる被着体や施工時及び使用時の環境条件が異なる。「標仕」では,接着する材料に適したものとしているので、材料や施工部位等を考慮して適切なものを選ぶ。ただし、ホルムアルデヒド放散量は、特記がなければF☆☆☆☆としているので注意する。

12.2.3 木れんが

(a) 木れんがは、枠類、下地材等を釘、木ねじ等で取り付ける場合に用いられるが、図 12.2.10のように四角のものをJIS A 5537(木れんが用接着剤)で張り付けるか又はあと施工アン力ーで取り付ける。

なお、取付け間隔は.仕上材や下地材を考慮して決める。


図12.2.10 木れんがの取付け

(b) 木れんがの材料は.「標仕」12.2.1 (b)(2)(iv) ③により、ひのき又はひのきの代用樹種(ひば、米ひ、米ひば)を用いなければならない。

(c) JISの木れんが用接着剤は、主成分により2種類に区分され、次のように使い分けられる。

(1) 酢酸ビニル樹脂系溶剤形:コンクリート面、ブロック面の類に用いる。

なお、水掛りのおそれのある箇所、構造耐力を要する箇所には適しない。

(2) エポキシ樹脂系:2液混合形(主剤+硬化剤)で使用直前に混合する必要がある。やや高価になるが、湿気のおそれのある箇所、コンクリート面、ブロック面に加えて鋼材面等にも適している。ただし、鋼材面等は脱脂処理やプライマー処理を要する場合があるので注意する必要がある。

(3) ホルムアルデヒド放散量は、いずれの場合も、特記がなければF☆☆☆☆のものである。

12章 木工事 3節 防腐・防蟻・防虫処理

第12章 木工事

03節 防腐・防蟻・防虫処理

12.3.1 防腐・防蟻処理

直接外気にさらされる部分や、常時湿気を受けやすい部分の木材は、腐朽防止の措置が必要になる。防腐処理とは、薬剤等で木材を処理することをいい、耐朽性の高い樹種を使用するなどして、腐朽防止の対策を講じることを含めて、防腐措置という。

(1) 防腐・防蟻処理が必要な樹種による製材及び集成材

「標仕」では、「製材の日本農林規格」及び「枠組壁工法構造用製材の日本農林規格」によるD1の樹種(表12.3.1参照)の心材のみを用いた製材又はこれらの樹種を使用した集成材は、薬剤による処理を省略してもよいとしている。

(2) 薬剤の加圧注入による防腐・防蟻処理

(i) JASでは、保存木材の性能区分を木材の使用環境を考慮して表12.3.2のようにK1からK5までの5段階に分け、心材の耐久性区分(表12.3.1)に基づき、使用薬剤の浸潤度については表12.3.3に示す基準、また、吸収量については 表12.3.4に示す基部が設定されている。

なお、「標仕」では、保存処理のK2からK4までの区分に適合するものとしている。

(ii) 使用薬剤は従来CCAが主に用いられてきたが、JASでは規定から除外されている。近年、環境への配慮からACQ等、他の薬剤が用いられるようになってきており、例えば、(公財)日本住宅・木材技術センターによるAQ認証等による新しい薬剤でも必要な条件を渦たしているものが追加された規定になっている(薬剤の記号は表12.3.4参照)。

(iii) 通常の加圧注入法では、通導性の低い樹種において規定の薬剤含浸状態を容易に得るために注入処理に先立つインサイジングを認めており、えぞ松、とど松等にも薬剤が十分浸透しうるよう配慮している。一方、JISの土台用加圧式防腐処理木材は、土台専用の製材品で、樹種は、米つが、アピトン、えぞ松及びとど松に限られ、断面寸法長さ等も決められている。使用薬剤はJAS製品とほぼ同じである。

表12.3.1 JASにおける耐久性区分

表12.3.2 JASにおける性能区分と木材の使用状態(わかりやすい新製材JASの解説より)

 

表12.3.3 浸潤度の適合基準(JAS)

 

表12.3.4 吸収量の適合基準(JAS)(その1)

表12.3.4 吸収量の適合基準(JAS)(その2)

(3) 薬剤の塗布等による防腐・防蟻処理
一般的には、次の部分に人体への安全性及び環境への影響に配慮した表面処理用木材保存剤を2回塗り付けることが行われている(図12.3.1参照)。環境に配慮した表面処理用木材保存剤としては、(公社)日本木材保存協会で認定している薬剤等がある。

なお、塗り付けた箇所は見え隠れとなるので、適切な時期に確認をする必要がある。

① 鉄筋コンクリート造、組積造等の最下階

  図12.3.1 防腐剤塗付面(その1)

② 上間スラプ等の場合

 1) 土間スラプ等の上に載る部分

  図12.3.1 防腐剤塗付面(その2)

 

 2) 土間以外のコンクリートに接する部材


  図12.3.1 防腐剤塗付面(その3)

(4) 防蟻処理

(i) しろありの代表的なものは、ヤマトシロアリとイエシロアリであり、地域によっては相当な被害があるが、防蟻剤が特殊なものであり、地域も指定しにくいので、設計図書で指定されることになる。

(ii) 防蟻剤は、クロルピリホスを含有しない有機りん化合物やピレスロイド系化合物等を主成分とし、(公社)日本木材保存協会や(公社)日本しろあり対策協会で認定している。これらの薬剤は、労働安全衛生法等に従った取扱いが必要である。

12.3.2 防虫処理

(a) ラワン等広業樹の辺材(白太)部分等は、ヒラタキクイムシの食害を受けやすい。食害を防ぐには、薬剤による防虫処理が効果的である。

(b) ラワン材等の食害に対応した防虫処理材の性能区分、浸潤度及び吸収量の適合基準については、表12.3.2. 3及び4を参照する。

(c) 造作材に.ラワン材等を用いる場合はJASによる保存処理K1を行ったものを使用するよう「標仕」12.3.2に定められている。