19章 内装工事

建築工事監理指針 仕上工事
19章 内装工事
内装仕上工事 品質問題に対する策

19章 内装工事 1節 一般事項

19章内装工事
1節 一般事項
19.1.1 適用範囲
この章は、建物内部のビニル床シート張り、カーペット敷き、合成樹脂塗床、フローリング張り、畳敷き、せっこうボード張り、壁紙張り等の工事並びに断熱・防露工事等を対象としている。
19.1.2 基本要求品質
(a) 内装工事で使用する材料については、工業製品にあってはJIS、農林物資にあってはJASが指定されている。また、意匠上重要な部位にあっては、設計者から.そのほかの仕様が設計図書等に細かく指定される。JISやJASに適合することの確認方法については、他の材料と同様であるが、設計者からの特別な指定に適合することの証明としては、例えば、色・柄・材料等を見本品等により決定し、これにより確認するようにするとよい。
(b) 内装工事は、多様な材料により構成されるため、一律の仕上り状態を定めることは困難である。一般に内装工事に分類される工事種目としては、何らかの下地材料の上に施工がなされるものであり、また、何らかの仕上げの下地となることもある。
したがって、「所要の仕上り状態」としては、内装工事だけについて考えるのではなく、下地となるコンクリート工事、左官工事、金属工事、木工事等との仕上り精度とのバランス、最終的な仕上りとなる塗装工事やほかの内装材料等の仕上り状態とのバランスを考慮して定めるようにするとよい。
(c) 内装工事の完成後の性能として「標仕」19.1.2(c)では、床と断熱・防露工事について定めている。
床の出来上りとしては、「著しい不陸がないこと」としているが、その許容範囲は、部屋の用途によって一律には定められない。対象とする部屋の用途ごとにどこまでの不陸が許容できるかを定めるようにする。一般的な事務室にあっては、床のレベル計測により定めるのではなく、実際に出来上がった床を人間が歩いた時の感性による評価を考慮するとよい。この場合、(b) に示したように、単に内装工事による仕上げだけを考えるのではなく、下地の完成状態も含めて総合的に考える必要がある。床衝撃音は、床下地の構成方法によって発生する場合が多く、内装工事によるものばかりではない。床嗚りは、完成後の不具合として現れるものもあるが、少なくとも完成時においてこれが認められないことを要求事項としている。
断熱・防露工事にあっては、「断熱性に影響を与える厚さの不ぞろい、欠け等の欠陥がないこと」としているが、一般的な成形断熱材を打込み工法とする場合、コンクリート打込み時等に生じた欠け等の許容する程度、許容範囲を超えた場合の補修方法等について具体的に定めるようにするとよい。断熱材現場発泡工法を採用する場合にあっては、断熱材の吹付け厚さの管理方法として吹付け厚さの許容範囲を具体的に定め、合わせて許容範囲を超えた楊合の補修方法を定めるようにする。
(d) ホルムアルデヒド放散量について、「標仕」では、基本要求品質の事項として概括的規定を設けていない。しかし、個別に、JIS又はJAS等で放散量等の品質基準が規定されている材料については、特品がなければF☆☆☆☆のものを使用するとしている。したがって、市場性、部位、使用環境等を考慮してその他の放散量のものを使用する場合は、設計図書に特記されている内容を十分確認し、要求品買を確保する必要がある。
なお、ホルムアルデヒド放散量に関する工事監理上の注意事項等は、10節を参照されたい。

19章 内装工事 2節 ビニル床シート,ビニル床タイル及びゴム床タイル張り

19章内装工事
2節 ビニル床シート、ビニル床タイル及びゴム床タイル張り
19.2.1 適用範囲
(a) この節は、ビニル床シート、ビニル床タイル及びゴム床タイル張り工事を対象としている。
(b) ビニル床シート張り工事作業の流れを図19.2.1に示す。
図19.2.1_ビニル床シート張り工事の作業の流れ.jpg
図19.2.1 ビニル床シート張り工事の作業の流れ
(c) 施工計画書等
(1) 施工計画内の記載事項は、おおむね次のとおりである。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
① 工程表(必要に応じて室別・場所別の工程表の作成)
② 製造所名及び施工業者名
③ 材質、色調別に応じた施工箇所
④ 接着剤の種類(施工箇所別)
⑤ 工法(割付け、継目、見切り部分の納まり等)
⑥ 施工時及び施工後の換気方法
⑦ 養生方法
⑧ 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文内の書式とその管理方法等
(2) 見本品を提出させ、色調等を設計担当者と打ち合わせて決定する。
(3) 施工図の検討は、次の事項について行う。
(i) タイルの割付け図、模様合せ(シートの場合は、はぎ目、継目の位置)
(ii) 隅部、柱回り、設備関係器具回りの切込み、取合い
(iii) 他の仕上材との取合い(見切り・目地)
(iv) 床改め口回りの納まり
(4) 床仕上げの施工に関する品質確保の一例として、 日本建設インテリア事業共同組合連合会では「床仕上管理士」及び「組合派遣指導員」・「企業内工事指導員」制度を設けており、この「床仕上管理士」の現場への常駐及び「組合派遣指導員」・「企業内工事指導員」の施工現場への派遣による自主的施工管理体制を確立し自主施工検査証を交付している。
19.2.2 材 料
(a) 張付け床材の分類
張付け床材の分類を図19.2.2に示す。
図19.2.2_張付け床材の分類 2.jpg
図19.2.2 張付け床材の分類
(b) ビニル床シート
(1) JIS A 5705(ビニル系床材)に規定されている床シートの種類を表19.2.1に示す。
表19.2.1 床シートの種類(JIS A 5705 : 2010)
表19.2.1_床シートの種類(JIS A5705) 2.jpg
(2) 特 性
(i) 弾性、耐摩耗性、耐水性、耐薬品性に優れている。
(ii) 熱に弱い。
(iii) 広幅、長尺シートで目地部分の溶接が可能な製品が多く、これらは、止水性及び防塵性が高い。
(iv) 床衝撃音吸収性、保温性及び抗菌性を付与したものがある。
(c) ビニル床タイル
(1) JIS A 5705に規定されている床タイルの種類を表19.2.2に示す。
表19.2.2 床タイルの種類(JIS A 5705 : 2010)
表19.2.2_床タイルの種類(JIS A5705) 2.jpg
(2) 接着形床タイルの特性
                                      
(i) 単層ビニル床タイル
①耐摩耗性、耐薬品性、耐アルカリ性に優れている。また、単層であるため、摩耗が生じても意匠の変化が起きにくい。
② バインダー含有量が比較的多く、柔軟性に優れている。
(ii) 複層ビニル床タイル
① 耐水性、耐油性、耐摩耗性、耐薬品性、耐アルカリ性に優れているが、反面、熱による伸縮性が大きいため、強力な接着剤(ビニル共重合樹脂系溶剤形等)で確実に接着しておく必要がある。
② 印刷層を積層したものは、透明感があり、意匠性に優れている。
(iii) コンポジションビニル床タイル
① 無機充填剤の含有量が多いため、耐シガレット性に優れているが、反面、耐薬品性、耐アルカリ性、耐酸性、耐油性に劣る。
② 温度変化や多少の湿気にも伸縮が少ない。また、なじみ、納まり等の施工性がよい。
③ 維持管理の容易さに優れている。
(3) 置敷形床タイルの特性
(i) 置敷きビニル床タイル及び薄形置敷きビニル床タイルは、粘着はく離形接着剤を用いて施工を行う。使用時にはずれが生じにくいが、簡単にはがすことが可能で、張替えや再施工が容易な床タイルである。
① 耐水性、耐油性、耐薬品性、耐庶耗性に優れる。
② ガラス不織布等を積層し、温度変化による伸縮性を小さくしてあるため、寸法安定性に優れる。
③ フリーアクセスフロア等のOA床に施工されるものとして、帯電防止性能を付与したものがある。
(ii) 置敷きビニル床タイルと薄形置敷きビニル床タイルは、厚さによって種類分けされている。JISの規定値として、残留へこみ量が異なっている。
(d) 特殊機能床材
(1) 帯電防止床材は、電子計算機室、OA室、工場等の静電気を嫌う部位に使われる床材である。
(i) ビニル床タイルやビニル床シートに帯電防止剤や導電性充填材を練り込み、電気抵抗値を小さくしたもの。
(ii) 帯電防止剤練込み形のビニル床タイルは、吸水による伸びが大きいので、エポキシ樹脂系又はウレタン樹脂系の反応硬化形接着剤を使用する。
(iii) 実用上の注意
① 帯電防止剤練込み形のビニル系床材の抵抗値は、湿度の影響を大きく受ける。
② 歩行による人体帯電は履物の影響もあるので、静電気帯電防止靴(JIS T8103)を着用する必要がある。
(2) 視覚障害者用床タイルは、バリアフリー新法により公共建築等に使用される表面に凹凸のあるタイルである。警告型と誘導型の2種があり、これを組み合わせて使用される。
(3) 耐動荷重性床シートは、移動荷重による耐久性を高めたもので、医療施設、生産施設等に使われる床材である。
(4) 防滑性床材は、床材の表面にエンボス形状を付与することや硬質粒子を配合することにより、防滑性を高めたもので、床面の水ぬれ等によるすべり転倒を軽減させる部位に使われる床材である。
(e) ゴム床タイル
天然ゴム、合成ゴム等を主原料とした弾性質の床材料で、厚さは通常 3.0、4.0、5.0、6.0、9.0mmである。
特性は次のとおりである。
(i) ゴム特有の弾性がある。
(ii) 耐摩耗性が大きい。
(iii) 耐油性が劣る。
(iv) 熱による伸縮が大きい。
(f) リノリウム
「標仕」には規定されていないが、あまに油、松脂、コルク、木粉、石灰石等の天然素材を練り込んで、ジュート(麻布)を裏打ちとして成形されたもので、燃焼時にも有毒ガスの発生が少なく医療福祉施設等で使われている。
(g) 接着剤
(1) 床用接着剤の概要
(i) 接着剤の区分
① JIS A 5536(床仕上げ材用接着剤)では、1)ホルムアルデヒド放散、2)床材の形状、3)用途及び 4)主成分により、次のように区分されている。
1) ホルムアルデヒド放散による区分
ホルムアルデヒド放散による区分を表19.2.3に示す。
表19.2.3 ホルムアルデヒド放散による区分(JIS A 5536 : 2007)
表19.2.3_ホルムアルデヒド放散による区分(JIS A5536).jpg
2) 適用床材の形状による区分
床タイル用、床シート用及び床タイル・床シート用に区分されている。
3) 用途による区分
用途による区分は、「平場用」と「垂直面用」に区分され、平場用は更に「一般形」と「耐水形」に区分される。
なお、「標仕」ではJISほど細かく区分していないが、JISの「平場用 – 一般形の接着剤」は「標仕」の「一般の床」に用いる接着剤、また、「平場用 – 耐水形の接着剤」は「いわゆる耐水、耐動荷重、化学実験室等」に用いる接着剤と同様である。
4) 主成分による区分
主成分による区分を図19.2.3に示す。
図19.2.3_主成分による区分 2.jpg
図19.2.3 主成分による区分
② JISによる区分の表示例を図19.2.4に示す。
図19.2.4_JIsによる区分の表示例(JIS A5536) 2.jpg
図19.2.4 JISによる区分の表示例(JIS A 5536 : 2007)
(ii) エマルション・ラテックス形接着剤と溶剤形接着剤
接着剤は一般に液状である。主成分である合成樹脂やゴムは本来固体であるが、溶媒に溶かすことによって液状となっている。
溶媒として溶剤(アルコールやアセトン等)を使用したものが「溶剤形」であり、水を使用したものが「水溶液形」又は「エマルション形」である。
主成分が「ゴム」である場合の「エマルション」を特に「ラテックス」と呼ぶ。ゴムや合成樹脂は、そのままでは水に溶けないが、細かな粒子とすることで水中に「分散」させて、「水溶液」と同様に扱えるようにしたものが「エマルション」である。ゴムや合成樹脂をエマルションにすることを「乳化」という。
① エマルション・ラテックス形接着剤の特性
水系の接着剤であるから引火の危険がなく、安全性、作業性に優れる。しかし、水の蒸発によって接着力が発現するため、低温での使用に適さない。
1) エマルション形接着剤:合成樹脂を水に分散させた接着剤
2) ラテックス形接着剤:天然ゴム又は合成ゴムを水に分散させた接着剤
② 溶剤形接着剤の特性
溶剤形接着剤は一般的に水系のものに比較して、低温での使用が可能である。ゴム系については適切な待ち時間をとって使用する。使用時は換気を良くし、火気に注意する。
(iii) 反応硬化形接着剤
接着剤塗布後の硬化に至るプロセスが、溶媒(溶剤や水)の揮発による乾燥硬化であるのに対し、接着剤自体が化学反応を起こし硬化するのが、反応硬化形接着剤である。
これにはエポキシ樹脂系接着剤やウレタン樹脂系接着剤がある。
反応硬化形接着剤の化学反応を起こすタイプには、主剤と硬化剤を混合する 2液混合形と下地や空気中の水分と反応する1液形がある。
(iv) 接着剤の種類別特性
① 酢酸ビニル樹脂系溶剤形接着剤
乾燥固化すると硬い接着層により強い接着力が得られる。
塗布作業性が良く、特に初期粘着性に優れている。本来は張付け可能時間が短い接着剤であるが、品質改良により、現在はほとんどの製品において張付け可能時間の延長が図られ、施工作業に見合った張付け可能時間が得られるようになった。
溶剤(アルコール)系の接着剤なので引火、毒性に注意し、施工時には、火気・換気等に配慮しなければならない。消防法上の危険物に相当し、集積制限を受ける。貯蔵・保管は、直射日光を避け、換気の良い室内で行なう。
また、水系接着剤と異なり、凍結することがないので、寒冷地での冬期使用が可能である。
酢酸ビニル樹脂は、本来、水によって軟化するものではなく、耐水性のある合成樹脂といえるが、アルカリ性水分との接触で接着力の小さい水溶性物質に変質(化学変化)する。
セメントが介在した下地からの水分は強いアルカリ性水分であることから、下地水分を含んだモルタル下地に対して酢酸ビニル樹脂系接着剤を使用すれば、接着力が低下し、はがれ、浮き、反り等の障害を起こすことになる。
そのため、結果的には水系接着剤と同様に、この酢酸ビニル樹脂系溶剤形接着剤であっても、湿気のおそれのある下地には使用できない。
② ビニル共重合樹脂系エマルション形接着剤
塗布作業性と初期粘着性に優れ、張付け可能時間が長く、コストも比較的安いという長所をもつが、接着力は比較的小さい。
品質的には、後述の合成ゴム系ラテックス形接着剤とほぼ同等で、酢酸ビニル樹脂系エマルション形接着剤に比べ、共重合とすることで作業性の大幅な改善がなされているが、接着強さは逆に低下している。
水系の接着剤なので、引火・毒性がなく、容易にふき取れ、床材料を汚すことが少ないが、凍結することがあり、寒冷地での冬期使用は難しい。
湿気のおそれのある下地には、再乳化によって接着力が低下し、はがれ、浮き、反り等の事故を起こすことがあるので使用できない。また、鋼板下地には錆を発生させるので直接使用はできない。
③ ビニル共重合樹脂系溶剤形接着剤
ここでいうビニル共重合樹脂とは、酢酸ビニル樹脂にアクリル樹脂やエチレン樹脂等の他の成分を共重合させた合成樹脂を意味する(共重合体:2種類又はそれ以上の化学的に異なった分子がつながったもの)。
特性として、主成分をアクリル樹脂と共重合させたものは、接着性が大幅に高まり、従来の酢酸ビニル樹脂系溶剤形接着剤では困難とされていた軟質のビニル床系材料にも優れた接着力を発揮することから、適用範囲が広まり、様々な床材料の直張り施工に使用される。
その他の諸特性は、前述の酢酸ビニル樹脂系溶剤形接着剤とほぼ同等であり、塗布作業性や初期粘着性に優れている。
引火・毒性、消防法上の集積制限、湿気のおそれのある下地に使用できないことなども前述の酢酸ビニル樹脂系溶剤形接着剤と同じである。
JIS A 5536により、酢酸ビニル樹脂系溶剤形とビニル共重合樹脂系溶剤形とに分類区分されている。現状は、まだ上記分類が完全には認識されておらず、両者が混同されていることがあるので十分注意する必要がある。
④ アクリル樹脂系エマルション形接着剤
塗布作業性、初期粘着性に優れ、接着力は他のエマルション形やラテックス形に比較して大きい。塩化ビニル樹脂分の高い床材に最適で適用範囲が広く、特に、ビニル床シートの直張り施工に多く使用されている。
近年、ビニル幅木の垂直面施工において、溶剤形接着剤による室内空気質汚染対策及び危険物の使用回避等から、同施工にアクリル樹脂系エマルション形接着剤の使用が増えている。
また、タイルカーペットや二重床のビニル床タイルの張替えを安易にして、使用時にはずれを防止する粘着性を付与したアクリル樹脂系エマルション形(ピールアップ形)接着剤もある。
凍結、寒冷地での冬期使用、保管、湿気のおそれのある下地、鋼板等への使用は、他のエマルション形接着剤と同様である。
⑤ エポキシ樹脂系接着剤
様々な床材料に対して強い接着力が得られることから適用範囲が広い。また、塗布作業性が良く、初期粘着性にも優れている。
この接着剤はコストが比較的高く、2液混合の手間がいるといった欠点はあるが、エポキシ樹脂のもつ高接着力、耐水、耐酸、耐アルカリ、耐薬品等.他の接着剤にない優れた特性が高く評価され、特に湿気のおそれのある下地に対しての耐湿用接着剤としての採用が多い。
このほか、工場、実験室、屋外等の特殊条件の場所に使用されることも多い。
使用に当たっては混合比を正確にし、よく練り混ぜてから塗布しなければならず、混合した残りは保存できない。また、反応によって硬化するのであるから、特に低温時での硬化に時間がかかることに注意する。
引火・毒性等の注意すべきことは他の溶剤系の接着剤と同じであるが、反応性のため、特に、皮膚等への接触を避けるようにする。
⑥ ウレタン樹脂系接着剤
様々な床材料に対して強い接着力が得られ、適用範囲が広い。
床材料の施工に使用されるウレタン樹脂系接着剤のほとんどが、水分との化学反応による湿気硬化形の1液性で.反応硬化形接着剤の中では作業性が良く、初期粘着性にも優れている。特に湿気のおそれのある下地の耐湿用接着剤として、土間コンクリート、開放廊下、工場等の場所に多く採用されている。また、2液混合形のものは、ほとんど使用されていない。
含有する溶剤は、塩化ビニル樹脂に対して強い溶解性があるので、接着剤塗布後の待ち時間を適切にとらないと、床材のふくれや軟化を起こしやすくなる。
湿気硬化形であるため、一度缶から出した接着剤は戻すことができない。また、開缶後の余った接着剤は保管期間が短くなるので、短時間の内に使い切ることが望ましい。
引火・毒性等の取扱いに関する注意事項は他の溶剤系接着剤と同様である。エポキシ樹脂系接着剤と同様、反応性なので皮膚等への接触を避ける。
⑦ 合成ゴム系ラテックス形接着剤
床用接着剤に用いられる合成ゴム系ラテックス形接着剤はほとんどがスチレン・ブタジエンゴム(SBR)であると考えてよい。
塗布作業性と初期粘着性に優れ、張付け可能時間が長く、コストも比較的安いという長所をもつが、接着力は比較的小さい。
アクリル樹脂系エマルション形接着剤同様に、ビニル幅木の垂直面施工用途にも使用されている。
水系の接着剤なので、引火・毒性はないが、凍結することがあり、寒冷地での冬期使用は、接着強さの発現が遅れるため避けることが望ましい。
湿気のおそれのある下地には、再乳化によって接着力が低下しはがれ、浮き,反り等の事故を起こすことがあるので使用できない。錆板下地には錆を発生させるので直接使用できない。
⑧ 合成ゴム系溶剤形接着剤
ここでいう合成ゴムとは、主としてクロロプレンゴム(CR)又はアクリルニトリル・ブタジエンゴム(NBR)を指すことが多い。
合成ゴム系溶剤形接着剤は、様々な床材料に対して高い接着性を示し、初期接着力に優れるため、硬い材料やくせのある材料を使用する場合、又は垂直面の施工を行う場合には下地への納まりが良い。
しかし、合成ゴム系溶剤形接着剤が床材料の施工に使用されるのは、垂直面やその補助的な場所であって広い平場での直張り施工にはほとんど使用されない。これは、その使用方法が下地と材料への両面塗布が必要であることや塗布性の悪さによるものといえる。
配合添加する樹脂の影響で、ビニル系床材を沿色汚染させることがある。
また、一般に耐水性は良くないので.湿気のある下地には使用できない。
1) クロロプレン系
ビニル系床材又は軟質塩化ビニル幅木の可塑剤の移行を受けやすく、軟化して接着力の低下と、床材料の縮みやはがれを引き起こすことがある。
2) ニトリル系
ゴム系ではあるが、硬い皮膜が得られ、可塑剤の移行を受けにくいので、軟質のビニル系床材(特にビニル床シートや軟質塩化ビニル幅木、単層及び複層ビニル床タイル)に使用する場合は、このニトリル系を採用する。
溶剤系の接着剤なので引火・毒性に注意し、施工時には、火気・換気等に配慮しなければならず、保管時にも、消防法上の集積制限や夏期の高温に注意する。
水系接着剤と異なり、凍結することがないので、寒冷地での冬期使用が可能である。しかし,塗布量が過多であったり、溶剤が多く含まれた状態で施工すると、基材が変色することがある。
(2) 接着剤のホルムアルデヒド
「標仕」では、接着剤のホルムアルデヒド放散量は、特記がなければF☆☆☆☆としているので、放散量が指定されたものであることを確認して、接着剤の選定を行う必要がある。
なお、JISの規格品を使用する場合、規格品としての扱いができないものなどを使用する場合の確認方法等については、19.10.5を参照されたい。
(3) その他の床材用接着剤
海外資材等で「標仕」に規定されていない材料を、特記により使用する場合は、床材とともに接着剤もJIS適合品以外のものを使用する場合もある。この場合の接着剤は、床材製造所の指定するものを使用するが、品質については JIS A 5536に準じたものであることを確認する必要がある。
なお、ホルムアルデヒド放散量の確認については、(2)と同様である。
(h) 下地処理材
モルタル下地の袖修に使う材料で 0.5 ~ 1mm程度の薄塗りで使用するポリマーセメントモルタルである。
酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル樹脂等の合成樹脂エマルションを主体とするもので、現場でポルトランドセメント、砂、水等を混ぜて、地べらや金ごてで仕上げる。
19.2.3 施 工
(a) 下地
(1) 木質下地の場合
(i) 下地合板は、たわみ・振動のない構造とする。
(ii) 下地合板は、不陸、目違いのないように張り付ける。
(iii) 釘頭は、合板面より沈め気味に打ち込む。
(2) コンクリート及びモルタル旅りの下地の場合
(i) 一般階でも施工後、窓の開閉、開口部等の養生に注意し、水や湿気が浸入しないようにする。
(ii) 下地は平滑で表面強度が十分ある状態とする。
(b) 下地の乾燥
施工に先立ち、下地の乾燥を確認する(9.2.4 (a)参照)。
下地乾燥の判断法の一例として、高周波水分計を用いて確認する方法がある。また、その他の簡易判断法としては次のフィルム法がある。
(i) 約1m2の下地に普通ポルトランドセメントを薄くまき、ポリエチレンフィルムをかぶせ周囲を密封し、2時間後にセメントをかき集め軽く吹いて飛散すればよい。
(ii) 約1m2の下地にポリエチレンフィルムを敷き、翌朝、フィルム下面に結露がなければよい。
また、春から雨期にかけては、地下階の床や土間コンクリートでは表面結露を生じることが多いので季節的にはこの時期の施工は避けたほうがよい。しかし、やむを得ず施工する場合には、ジェットヒーター等で床面の温度上昇を図ると同時に換気を良くする必要がある。
(c) 張付け
(1) 張付けに先立ち、下地面の清掃を十分に行う。
(2) シート類は、長手方向に縮み、幅の方向に伸びる性質があるので長目に切断して仮敷きし、24時間以上放置して巻きぐせをとり、なじむようにする。
(3) 接着剤は、製造所の指定するくし目ごてを用いて塗布する。異なるくし目ごてを用いると張付け後シート類の表面にくし目が目立つ場合がある。
(4) 接着剤塗布後、状況に応じた待ち時間を適切にとり、シート類を張り付ける。
(5) シート類の張付け後は、表面に出た余分の接着剤をふき取り、ローラー等で接着面に気泡が残らないように圧着する。
(6) ビニルを表層とした床シートは、防湿・防塵等の目的で、はぎ目及び継手を熱溶接する場合が多い。この場合の工法を次に示す(図19.2.5参照)。
(i) 床シート張付け後、接着剤が完全に硬化してから、はぎ目及び継手を電動溝切り機又は溝切りカッターで溝切りを行う。
(ii) 溝は、深さを床シート厚の2/3程度とし、V字型又はU字型の均ーな幅とする。
(iii) 熱溶接機を用いて、溶接部を材料温度160〜200℃の温度で、床シートと溶接棒を同時に溶融し、溶接棒を余盛りが断面両端にできる程度に加圧しながら溶接する。
図19.2.5_ビニル床シートの熱溶接.jpg
図19.2.5 ビニル床シートの熱溶接
(iv) 溶接完了後、溶接部が完全に冷却したのち、余盛りを削り取り平滑にする。
(7) 床タイル類の張付け
(i) 冬期の施工では、張付け時の圧着を特に十分に行う必要がある。
(ii) ラテックス形接着剤やエマルション形接着剤は、床材の伸縮を完全に防止できないので、目地部のせり上がりや目地部に隙間が発生する場合がある。したがって、施工環境によっては、接着剤の種類を変える必要がある。
(iii) タイル類の張付け後の圧着は (5) のシート類と同じにする。
(iv) ゴム床タイルの張付けにゴム系溶剤形接着剤を用いるときは、接着剤を下地及びタイル裏面に塗布し指触乾燥後、張り付ける。次いで、木づち又はゴムづちでたたいて圧着する。
(8) 立上げ幅木
床面にこぼれた水や薬品が壁際から床下地へまわるのを防ぐ目的で、ビニル床シートを床面から壁に向かって、立ち上げて張り付け、幅木と床を一体に立ち上げる工法がある。シートを立ち上げると、小端処理をする必要がでてくる(図 19.2.6参照)。
処理方法としては、次のようなものがある。
① 小端をシリコーンシーリング材等でシールする方法
② キャップをかぶせる方法(金属見切りやビニル製ウォールキャップ等)
③ 入り幅木にする方法
図19.2.6_立上げ幅木の木端処理方法 2.jpg
図19.2.6 立上げ幅木の小端処理方法
(9) 表面仕上げ及び養生
(i) 張上げ後、特に通行の頻度の高いところ、材料の搬出入口、便所、洗面所の出人口等の水掛りとなるおそれのあるところでは、布やシートを掛けるなどして十分養生する。
(ii) 完全に接着強度が出るまで(1 ~ 2週間)は、水ぶき等を避ける。また、局部的な荷重を加えないように注意する。
(iii) 表面仕上げは、床材をクリーナーで洗浄後、製造所の指定するワックス類を塗布し、乾燥つや出しして仕上げる。
床材の表面処理として特殊な防汚加工(UV加工:紫外線硬化樹脂の塗工等)を施しているものがあるので、これらの床材ヘワックス類の塗布を行う場合は、製造所に確認し、必要に応じて行う。
(d) 施工時等の換気
接着剤塗布から施工時や表面仕上げ時は、室内空気汚染物質の濃度が高くなるので、作業中や養生時は、換気を十分に行い濃度の低減に努める。
(e) リサイクル
床施工時の余材・端材の発生量は、施工面積の約5%にのぼる。これらの余材・端材のうち、再資源化できる材料については、再資源化に積極的に取り組むことが望ましい。
再資源化の方法として、インテリアフロア工業会では、余材・端材のリサイクルシステムを開発している。
ビニル系床材は、「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)」における「特定調達品日」として追加された。判断の基準は、再生ビニル樹脂系材料の合計韮品が製品の総重量比で15%以上使用されていることであり、配慮事項は、工事施工時に発生する端材の回収、再生利用システムについて配慮されていることである。備考として、JIS A 5705(ビニル系床材)に規定されるビニル系床材の種類で記号KSに該当するものについては、判断の基準の対象とする「ビニル系床材」に含まれないものとする. となっている。
19.2.4 寒冷期の施工
張付け時の室温が5℃以下又は接着剤の硬化前に5℃以下になるおそれがある場合は、接着剤が硬化せず、所要の接着強度が得られないので施工を中止する。
やむを得ず施工する場合は、ジェットヒーター等による採暖等を行う。
なお、全国月別平均気温は、参考資料の資料3を参照されたい。

19章 内装工事 3節 カーペット敷き

19章内装工事
3節 カーペット敷き
19.3.1 適用範囲
(a) この節は、織じゅうたん、タフテッドカーペット、ニードルパンチカーペット及びタイルカーペットの敷込みを対象としている。
(b) 作業の流れを図19.3.1に示す。
図19.3.1_カーペット敷込み工事の作業の流れ 2.jpg
図19.3.1 カーペット敷込み工事の作業の流れ
(c) 施工計画書等
(1) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
① 工程表(製作期限、搬入、敷込みの時期、必要に応じて室別敷込み工程)
② 施工業者名及び防炎表示者登録番号
③ 構成材料の品質、密度
④ 取付け用付属品
⑤ 割付け要領:継目の位置
⑥ 各部取合い納まり(他の仕上材、床改め口、設備機器との取合い)
⑦ 工 法
⑧ 施工時及び施工後の換気方法
⑨ 養生方法
⑩ 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等
(2) 見本品を提出させ、風合(肌触り、踏み感触)、色合等について、設計担当者と打ち合わせて決定する。
(3) 床仕上げの施工に関しての「床仕上管理士」及び「組合派遣指導員」・「企業内工事指導員」制度等については、19.2.1(c)(4)と同様である。
19.3.2 一般事項
(a) パイル糸
(1)羊毛
そ(梳)毛糸及び紡毛糸は、毛(混紡を含む。)とし新毛80%以上のものとする。
ただし、再生羊毛及びくず羊毛を含まない。
①そ(梳)
そ(梳)毛糸は、細くて長い繊維が用いられている(通常7 〜12番手)。
② 紡毛糸(ぼうもうし)
紡毛糸は.太く短い繊維が用いられている(通常3 ~7番手)。
(2) 化学繊維
化学繊維には木材パルプから造るレーヨン及び石油から造られるアクリル、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル等がある。これらの繊維を用いる場合は、長所、短所をよく把握し、使用目的に応じた最適なものを選ぶのがよい。
例えば、羊毛にナイロン糸を混ぜ耐久性の向上を図る。また、通行量の多い廊下等は、洗浄性が良く、耐久性に富んだナイロンフィラメント糸を用いるなど、使用場所に応じたものがよい。
フィラメント(Filament) :JIS用語「連続したきわめて長い繊維」。無ねん(撚)又はわずかなより糸として用いられ、紡績糸より滑らかである。
紡糸の際、不規則に凝固させる又は熱可塑性を利用し断面形状を変えることなどにより、かさ高加工したものがある。
(b) 染色方法
パイル糸の染色方法は大別して先染と後染があり、羊毛は先染とするが、更にそ毛糸は糸染、紡毛糸は原毛染(綿染)とする。ナイロンは、原着又は後染とする。
(i) 先染
① 原着
繊維にする前に顔料を入れて着色する。
② 綿染
糸になる前に染色する方法。
③ 糸染
糸を紡いだのち、染色する方法で、1色に染める浸染と部分ごと異色染をするものがある。
(ii) 後染
① 反染(ピース染)
製織後、裏加工する前に染色する方法で、1色に染める浸染と繊維により着色性が異なることを利用して1液で2〜4色に染める異染があり、それぞれバッチ染色法と連続染色法がある。
②捺染(プリント)
パイル面に直接柄を表現する方法。
(c) 防虫加工
「標仕」19.3.3(a)(3)で、羊毛については、パイル糸は防虫加工をするように定められている。また、ウールマーク、ファーンマークのあるものは、防虫加工がなされている。化学繊維は、虫害に対しては極めて強い。
(d) 帯電防止
(1) カーペットの上を人が歩くと、摩擦により人体に静電気がたまる場合がある。静電気(人体帯電圧)が3kV程度以上になったときに,導電体と接触すると、放電され. ショックを感じるといわれている。
静電気の発生は、繊維の種類、カーペットに接するもの(靴底等)、湿度等によって異なるため、帯電しにくい素材の選択又は湿度を上げるなどの対策が必要である。
(2) 帯電防止には色々な加工方法があるが、その帯電防止性能については、「標仕」 19.3.3(a)(4)では、JIS L 1021-16(繊維製床敷物試験方法ー第16部:帯電性一歩行試験方法)による人体帯電圧の値の3kV以下とし、その適用は特記によるとしている。
(e) 防炎性能
(1) 消防法令により、高層建築物(高さ31mを超える。)、地下街、劇場、公会堂等は防炎規制の対象となっている(法第8条の3第1項、令第4条の3第1項)。
(2) 防炎規制の対象物品は、法で定める基準以上の防炎性能を有するものとし、防炎性能を有するものである旨の表示(防炎表示)をしなければならない。
(3) 防炎表示は、ピース物(置敷き)の場合は裏面張付け、施工もの(室内等に固定されたもの等)は、各部屋ごとに主要な出入口(1箇所以上)等に防炎ラベル(図19.3.2参照)を張り付ける。
なお、防炎表示を層するものは消防庁長官の登録を受けたものでなければならない。
(4) 「標仕」では、公共建物を対象としているため、高さ31m以下の場合でも3節「カーペット敷き」を適用する工事では防炎性能を有し、防炎表示のあるものと定めている。
防炎性をもたせる方法としては、繊維製造の段階で防炎成分を加えるなどがある。
図19.3.2_防炎ラベル.jpg
図19.3.2 防炎ラベル
(f) ウールマーク、ファーンマーク、ステッキマーク
パイル糸の種類が毛(混紡を含む。)のカーペットを用いる場合は、ザ・ウールマー クカンパニー(AWI)で登録し、管理されているウールマーク及びウールマークブレンド(図19.3.3(イ)及び(ロ)参照)、ウールズ・オブ・ニ‘ュージーランドで登録し、管理されているファーンマーク(図19.3.3(ハ)参照)、又は英国羊毛公社で登録し、管理されているステッキマーク(図19.3.3(ニ)参照)の張り付けられたものを用いるのがよい。
図19.3.3_ウールマーク・ファーンマーク・ステッキマーク.jpg
図19.3.3 ウールマーク・ファーンマーク・ステッキマーク
19.3.3 材 料
(a) カーペットの分類を図19.3.4に示す。
図19.3.4_カーペットの分類.jpg
図19.3.4 カーペットの分類
(b) 織じゅうたん(機械織りカーペット)
ウィルトンカーペットは、18世紀の中ごろ、イギリスのウィルトン市で初めて機械織りとして作られたカーペットである。
色は1〜5色を使い美しい模様を織り出すことができる。また、パイルの長さも自由に変えられるので、無地物でも表面のテクスチャーに変化をつけた柄が出せる。
織り方は、基礎となる布地部とパイル糸を同時に織り込み、地よこ糸3本ごとにパイル糸をすくい上げてループ状としたもの(三越織り)で、2本のよこ糸でパイル糸を完全に押さえるので抜毛がない。また、よこ糸2本ごとにパイル糸をすくい上げてループ状にしたもの(二越織り)が、ブラッセルカーペットであり、これをカットしたものをベルベット織りという。このようにたて糸、よこ糸とパイル糸を同時に織り込んでいるので、組織がしっかりしており施工後伸びてしわができず、物理的にも、外観的にも品質が安定して優れている。
なお、ウィルトンカーペット及びブラッセルカーペットの製織構成と各部の名称を図19.3.5及び6に示す。
JIS L 4404(織じゅうたん)では、他にアキスミンスターカーペット等があるが、「標仕」ではこれらを織じゅうたんとし、種別、織り方等は特記によることとしている。
図19.3.5_ウィルトンカーペットの製織構成.jpg
図19.3.5 ウィルトンカーペットの製織構成
図19.3.6_ブラッセルカーペットの製織構成.jpg
図19.3.6 ブラッセルカーペットの製織構成
(c) タフテッドカーペット
普及用として考案された機械刺しゅう敷物で、生産速度が早く価格が安い。製造方法は一列に並んだ千数百本のミシン針によって基布(ジュート、合成繊維等)にパイルを植え付け、パイルの変形、抜けを防ぐため基布の裏から固着剤(ラテックス等)で加工する。通常は、基布(第一基布)の裏にもう1枚裏布(第二基布)を張り付けて、カーペットの変形を防ぎ、踏み心地を良くしている。ループパイルやカットパイルのものがある。パイルの材質は化学繊維、羊毛等の天然繊維及びこれらの混紡が用いられる。
なお、タフテッドカーペットの製織構成と各部の名称を図19.3.7に示す。
図19.3.7_タフテッドカーペットの製織構成 2.jpg
図19.3.7 タフテッドカーペットの製織構成
(d) ニードルパンチカーペット
シート状の繊維を基布に積み重ね又は基布を挟み込み、かえりのあるニードル(針)で突き刺してフェルト状にしたものである。ゴム等のバックコーティング剤等で補強したり、目の荒い織物を心材としてその両面にフェルト状とした繊維層を置き、織物を通して繊維相互を刺し絡めて作ることが多い。一種の不織布であるので、裁断面から糸のほつれがなく自由にカッティングでき、施工は容易である。繊維荊の材質は、ポリエステルが最も多く用いられている。
(e) タイルカーペット
タフテッドカーペット等を基材として裏面に強固なバッキング材(図19.3.8参照)を裏打ちしたタイル状カーペットであって、500 × 500(mm)の正方形が大半を占める。官庁、オフィス、学校、病院、銀行、工場、研究所等ではOA機器の普及及び発展に伴い、多く使用されるようになってきた。二重床と組み合わせても使用されている。
タイルカーペットの特性としては、施工が迅速であり、部分補修が容易であるが施工に際しては下地の平たん性が要求される。タイルカーペットの構造は、図 19.3.9のとおりである。
図19.3.8_バッキング材の種類.jpg
図19.3.8 バッキング材の種類
図19.3.9_タイルカーペットの構造.jpg
図19.3.9 タイルカーペットの構造
(f) 下敷き材(アンダーレイ)
グリッパー工法で使用する下敷き材は、「標仕」19.3.3(e)ではJIS L 3204(反毛フェルト)の第2種2号.呼び厚さ8mmを用いるように定められている。
なお、一般的な下敷き材の材質.製法等を表19.3.1に示す。
表19.3.1 下敷き材の材質、製法等
表19.3.1_下敷き材の材質,製法等 2.jpg
(g) 取付け用付属品
(1) グリッパー
グリッパーは、米国で製作され普及したものであるが、現在市販されているグリッパーは、厚さ6〜7mm、幅23~25mm、長さ1.2mの米松合板に、とび出し 4~5.6mmの針が60度の角度で15mm程度の間隔に2列に逆さに打ち込んであるもので種類には、木床用、コンクリート床用がある(図19.3.10参照)。
図19.3.10_グリッパー.jpg
図19.3.10 グリッパー
(2) 釘・木ねじ
黄銅製、ステンレス製又は防錆処理を施したコンクリート用釘を用いるのがよい。
(h) 接着剤
「標仕」では、接着剤はJIS A 5536(床仕上げ材用接着剤)により、カーペット製造所の指定するものとしホルムアルデヒド放散量は、特記がなければF☆☆☆☆としている。
なお、タイルカーペット用接着剤はJIS A 5536に規定する粘着はく離形(ピールアップ形)のアクリル樹脂系エマルション形接着剤が一般的に使用されているが、過度なせん断荷重が加わる場所では、ずれやはがれが生ずる場合があるため、粘着はく離形ではなく、接着強度の高い接着剤を選択する必要がある。
19.3.4 工 法
(a) 共通事項
(1) 工法には次の種類がある。
(i) グリッパー工法
床の周囲に釘又は接着剤で固定したグリッパー(スムースエッジ)にカーペットの端部を引っ掛け、緩みのないよう一定の張力を加えて敷き詰める工法である。耐衝撃性を高めるために下敷き材が使用される。
(ii) 全面接着工法
接着剤を使ってカーペットを床に固定する工法で温・湿度の変化による伸縮を防ぎ、維持・補修も容易である。
(iii) タイルカーペット全面接着工法
カーペット製造所の指定する粘着はく離形接着剤を使用し、市松張りを原則とする。
タイルカーペットの特徴は、部分的に簡単にはがせて、かつ、簡単に張り替えることができる点にある。
(2) 基準床高(下地床高)
下地床高の基準は、一般に下敷き厚さ+毛足長さ=カーペット敷き厚さとして定めてよい。
なお、国土交通省大臣官房官庁営繕部整備課「建築工事標準詳細図」には、下敷き厚さ+カーペット厚さ=総厚さよりグリッパー工法では 3mm、全面接着工法では2mm差し引いた厚さと定められている(図19.3.11参照)。
図19.3.11_建築工事標準詳細図による基準床高 2.jpg
図19.3.11 「建築工事標準詳細図」による基準床高
(3) 敷き方の種類
(i) 敷詰め:床面いっぱいにカーペットを敷き詰める方法
(ii) センター敷き:廊下や階段等の床の中央部に長手方向に連続して敷く方法
(iii) 置敷き:カーペットを床に置いて敷くだけで、ピース敷き、中敷き等がある。
(iv) 重ね置き:敷き詰めたカーペットの上にアクセントを付けるために部分的に敷く方法
(4) 下地
下地の不陸は、カーペットを敷き込んだ場合に表面に現れ、見苦しくなるので注意する。
(b) グリッパー工法
(1)下敷き
下敷き材のはぎ合せは、通常突付けとし、下地がモルタル塗りの場合等は、ジョイント及び四方を接着剤で接着する。木造の場合は.釘等で留め付ける。
(2) グリッパー取付け
グリッパー取付けは.カーペットの厚さに応じて、周辺に沿って連続して図19.3.12のように均等な溝(隙間)をつくり、釘又は接着剤で取り付ける。
図19.3.12_カーペットの厚さに応じたグリッパーの取付け位置.jpg
図19.3.12 カーペットの厚さに応じたグリッパーの取付け位置
(3) 上敷き
仕上げをする前には継目は真直ぐになっているか、模様があっているか、毛並みは同一方向にそろっているか、十分によく伸び切っているかを検査する必要がある。施工直後に表面に多少の凹凸が残る程度でも、その後の歩行によってたるみやしわを生じトラプルの原因となる。
(4) 留付け及び敷込みの工法
(i) 張りじまいは、ニーキッカー(図19.3.14(イ))で伸展しながらグリッパーに引っ掛け、カーペットの端を図19.3.13のようにステアツール(図19.3.14(ロ))を用いて溝に巻き込むように入れる。30m2( 6 × 5 [ m ] )程度を超える施工にはパワーストレッチャー(図19.3.14(ハ))を使用して施工する。
図19.3.13_カーペット張りじまい.jpg
図19.3.13 カーペット張りじまい
図19.3.14_カーペット敷込み用工具(ニーキッカー).jpg
図19.3.14_カーペット敷込み用工具(ステアツール).jpg
図19.3.14_カーペット敷込み用工具(.パワーストレッチャー)jpg.jpg
図19.3.14 カーペット敷込み用工具
(ii) センター敷きの張りじまいの各部納まりを図19.3.15に示す。
図19.3.15_センター敷きカーペット張りじまい.jpg
図19.3.15 センター敷きカーペット張りじまい
(iii) センター敷き、置敷きのカーペットの切り口の端部は、30mmまでパイル糸をはさみで刈り取り、裏面に折り返して千烏縫い(図19.3.16参照)とするか、接着剤で張り付ける。
図19.3.16_千鳥縫い.jpg
図19.3.16 千鳥縫い
(5) 階段の納まりを図19.3.17に示す。
図19.3.17_階段敷きの納まり.jpg
図19.3.17 階段敷きの納まり
(6) 硬質の床材及び他のカーペットと取り合う場合の納まりを図19.3.18に示す。
図19.3.18_取合う場合の納まり(硬質床材との取合い).jpg
図19.3.18_取合う場合の納まり(他のカーペットとの取合い).jpg
図19.3.18 取り合う場合の納まり
(7) 接 合
(i) 「標仕」19.3.4 (c)(6)では、はぎ合せ、幅継ぎは次のいずれかによると定めている。
① つづり縫いは、従来から一般に行われている工法で、丈夫な綿糸、亜麻糸又は合成繊維糸で間ぜまに手縫いで行う(図19.3.19参照)。
図19.3.19_つづりぬい.jpg
図19.3.19 つづり縫い
② ヒートボンド工法
ヒートボンド工法は、図19.3.20のように接着テープ(シーミングテープ)をアイロン(160℃程度)で加熱しながら、接着はぎ合せをする工法である。
図19.3.20_ヒートボンド工法.jpg
図19.3.20 ヒートポンド工法
(ii) ウイルトンカーペットの接合部のカット
接合部を織目にそってはさみで切りそろえたのち、両端を突き合わせて接合部に不自然な線がないことを確認して接合する。
なお、切口に合成ゴム系の接着剤を塗りほつれ止めを行う。
(iii) タフテッドカーペット接合部のカット
クッションバックカッター(図19.3.21(イ))を用い目通しカットを行う。
なお、ループパイルの場合は、ループパイルカッター(図19.3.21(ロ))を使用するのがよい。
図19.3.21_クッションバックカッター.jpg
図19.3.21_ループパイルカッター.jpg
図19.3.21 カッター
(iv) 丈継ぎ及び斜め継ぎ
割付け計画の段階でできるだけ避ける。やむを得ず行なう場合は、図 19.3.22のように重ね合わせ、カーペットを裁断する。両方のカーペットをまくり上げ、接着テープを継目の部分に置き、のりを付け、押さえて接着する(図 19.3.23参照)。
図19.3.22_ダブルカット.jpg
図19.3.22 ダブルカット
図19.3.23_幅継ぎ.jpg
図19.3.23 幅継ぎ
(c) 全面接着工法
(1) 接着剤
接着剤は、カーペット自体の収縮を押さえるため、はく離強度よりもせん断強度を重視したタイプを使用する(図19.3.24参照)。
なお、せん断強度は.0.15N/mm2程度以上のものが望ましい。
図19.3.24_はく離強度とせん断強度.jpg
図19.3.24 はく離強度とせん断強度
(2) 接合部のカット
(i) 幅接合〈幅継ぎ、幅ジョイント〉は、ループパイルカッターを使用して目通しカットを行う。
(ii) 丈接合〈丈継ぎ、丈ジョイント〉は、割付け計画の段階でできるだけ避ける。やむを得ず行う場合は、ダブルカット(図19.3.22参照)とし、カット面の基布部に瞬間接着剤を使用して、接合線を押え板(木づくり)で押さえて24時間程度養生を行う。
(d) タイルカーペット全面接着工法
(1) 接着剤
タイルカーペット接着剤は、カーペット製造所の指定する粘着はく離形(ピールアップ形)を使用する。
(2) 割付け
割付け寸法は、基本的にビニル床タイルと同様であり、材料のサイズと部屋のサイズ(実測値)とから計算される。この時、パイル目の方向を確認するとともに端部に細幅のタイルカーペットがこないようにする。
(3) 下地
コンクリート下地に張り付ける場合、下地の乾燥が十分でないと異臭の原因となることがあるため、下地が十分乾燥していることを確認する。
(4) 張付け
基準線に沿ってタイルカーペットを押し付けながら部屋の中央部から端部へ敷込んで行く。
特に指定がない限り市松張りを原則とする。
タイルカーペットのバッキングの種類によって、目地詰めの要領が異なることに注意する。
出入口部分には、「3分の2以上の大きさのもの」がくるように割り付ける。これは出入口部分に切断された小さなタイルカーペットがくると、歩行によってはがされるからである。
ビチューメンバッキングの場合は、軟らかで、かつ、弾力性をもたないために、圧縮の力を吸収し変形したままになってしまうが、塩ビバッキングの場合は、ガラス繊維等の心材が入っていることもあって、硬いため圧縮の力に反発し、無理に押し込むと反りやふくれとなってしまうことがある。
(5) フラットケーブルを敷設する床(アンダーカーペット配線)への施工
基本的には、フラットケーブルの敷設の前にタイルカーペットを施工することを前提とするが、事前に発注者・設計者・建築業者・電気工事業者等の関係者がお互いに確認をしておくことが重要である。
(6) フリーアクセスフロ了(二重床)への施工
床パネルの段違いや隙間を1mm以下に調整したのち、タイルカーペットを施工する。タイルカーペットの割付けは、床パネルの目地とタイルカーペットの目地を100mm程度ずらして行う。
19.3.5 品質確認
(a) 検査項目
カーペットの品質を確認するための検査を行う場合は、カーペットの種類に応じてJIS L 4404(織じゅうたん)、JIS L 4405(タフテッドカーペット)又は JIS L 4406(タイルカーペット)による。
(b) 染色堅ろう度
パイル糸の染色堅ろう度は、(a)のJISによって試験した耐光堅ろう度及び摩擦堅ろう度(乾燥)の等級が、4級以上のものであればよい。ただし、特に濃色のもの又は淡色のものは、いずれか一方の堅ろう度が3級であってもよい。
(c) 外観の品質
外観の品質は、JIS L 4404、JIS L 4405及びJIS L 4406に定められている。なお、JISが制定されていないニードルパンチカーペットはこれに準ずる。
検査を行う場合は、敷物の検査を専門に行っている(-財)ケケン試験認証センター又は公認の検査機関がよい。
(d) ホルムアルデヒド放散拡
カーペットは指定建築材料(19.10.3(b)参照)ではなく又JISでもホルムアルデヒド放散量に関する品質基準が定められていないため、「標仕」においても放散量を規定していない。
なお,関係業界団体等では、平成14年の国土交通省告示(19.10.3(b)参照)に準じて自主基準を作成し、これに基づきホルムアルデヒド発散等級を表示しているものもある。

19章 内装工事 4節 合成樹脂塗床

19章内装工事
4節 合成樹脂塗床
19.4.1 適用範囲
(a) この節は、主にコンクリート床面に塗床材を塗り付けて、シームレスな床を形成し、機械的強度(耐荷重性、耐摩耗性、耐衝撃性等)、化学的特性(耐水性、耐薬品性、耐熱性、耐候性等)及び居住性(歩行感、美観、防音性等)等を付与する塗床工事のうち、厚膜型塗床材(弾性ウレタン樹脂系塗床材及びエポキシ樹脂系塗床
材)、薄膜型塗床材(エポキシ樹脂系塗床材)を用いて、床仕上げを行う工事を対象としている。平成25年版「標仕」より薄膜型塗床材が追加された。
なお、「標仕」では規定されていないが硬化の速いメタクリル樹脂系塗床材と耐熱性に優れる水性硬質ウレタン系塗床材についても参考に示す。
(b) 作業の流れを図19.4.1に示す。
図19.4.1_合成樹脂塗床工事の作業の流れ.jpg
図19.4.1 合成樹脂塗床工事の作業の流れ
(c) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
① 工程表(必要に応じて室別・場所別工程表の作成:下地ごしらえ、塗床材施工、養生等)
② 製造所名、銘柄、色番及び施工業者名
③ 材料保管方法、取扱い注意事項(消防法、労働安全衛生法等により管理)
④ 室別・場所別の工法(表面仕上り状態:平滑、防滑、つや消し、工法:流し展べ樹脂モルタル仕上げ)
⑤ 下地コンクリートの水分管理、表層強度の確認、下地ごしらえ(下地状況別)
⑥ 施工時期・エ期(他の仕上げ工事との関係)
⑦ 施工環境(気温、湿度、結露、塵あい、臭気、騒音等)
⑧ 施工時及び施工後の換気方法
⑨ 養生方法( 塵あい、傷、汚れ、雨水、硬化前の歩行等からの保護)
⑩ 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の様式とその管理方法等
⑪ 廃材の分別処理(不燃物、可燃物、激毒物等)
(d) 施工図の検討は、次の事項について行う。
(1) 隅部、柱回り(幅木)との取合い
(2) 設備関係器具回り、グレーチング回りの納まり
(3) 他の仕上材との取合い(見切り、目地)
(4) 床改め口回りの納まり
(e) 塗床の詳細に関しては、日本塗り床工業会「塗り床のソリューション塗り床の不具合抑止対策集」や「塗り床ハンドブック」に不具合対策だけでなく材料選定から保守管理に至るまでの注意点等がまとめられているので、参考にするとよい。
19.4.2 材 料
(a) 塗床材の種類と特徴
(1) 塗床材の種類を図19.4.2に示す。
図19.4.2_塗床材の種類.jpg
図19.4.2 塗床材の種類
(2) 各種合成樹脂塗床材の特徴と主な用途を、表19.4.1から表19.4.3までに示す。
表19.4.1 無溶剤形塗床材の特徴と主な用途
表19.4.1_無溶剤形塗床材の特徴と主な用途.jpg
表19.4.2 溶剤形塗床材の特徴と主な用途
表19.4.2_溶剤形塗床材の特徴と主な用途.jpg
表19.4.3 水性形塗床材の特徴と主な用途
表19.4.3_水成形塗床材の特徴と主な用途.jpg
(3) 主な合成樹脂塗床材の性能と使い分け
(i) 厚膜型塗床材は、材料の比重によって異なるが約1mm以上の厚塗りが可能で、機械的、化学的性能を要求される床に用いられる。厚みがつくことからコンクリート素地の細かい凹凸を軽減する効果があるため、掃き掃除の時の防塵効果はもとよりモップ量きやゴムレーキ掃除に適する平滑性を与えることも可能である。コンクリートに水が浸み込むことなくすぐに乾くことから、より衛生的な環境を提供することができる。
(ii) 厚膜型のウレタン樹脂系塗床は、弾力性、耐摩耗性に優れた材料で歩行感に優れ.靴音を低減できることから、一般事務所、廊下、病院等人が歩行する場所に適する。
(iii) 厚膜型のエポキシ樹脂塗床は、機械的強度、耐薬品性、美装性のバランスが良く、最も汎用的な無溶剤形塗床材である。ただし、低温硬化性と耐候性に欠点があるため、冬季の施工では施工管理に注意を要する。また、耐候性付与のためにアクリル系・ウレタン系のトップコートを塗装する場合がある。
(iv) 平成25年版「標仕」で規定された薄膜型塗床材は、下地の凹凸がそのまま 仕上りに現れる塗床材で、ローラー刷毛で簡単に施工することができる。原膜型塗床材より簡易な塗床材で防塵性があり台車の通行や人の歩行程度の用途に用いる。庁舎の場合、電気室、機械室、倉庫、搬入口、軽作業の床に使用され、コンクリートからの発塵を抑え、容易に掃き掃除ができる珠税が得られる。また、簡易的に雨水・水の浸透を防ぎ、コンクリートを保護する。
(v) 「標仕」では規定されていない塗床材として、メタクリル樹脂系塗床材は低温環境下での施工、短時間施工が可能で、耐薬品性、耐候性に優れるため、主に食品関連床、屋外の床等に使用されている。また、水性硬質ウレタン系塗床材は、特に耐熱水性や耐衝撃性の要求が高い食品工場、厨房、学校の給食室、給食センター等の施設に適する。
(b) 下地調整材
(1) 樹脂パテ
塗床材と同質の樹脂に無機質系充填材あるいはセメント等の水硬性物質又はよう変性付与材等を加えパテ状とし、φ2mm以下のピンホール、巣穴及びひび割れ等の目つぶしあるいは不陸の修正に用いる。
(2) 樹脂モルタル
床面の不陸が大きな場合あるいは欠損部分が大きな場合は、無溶剤形の樹脂に質量比で 3〜10倍の骨材(けい砂等)を混合した樹脂モルタルで充填する。
(3) ポリマーセメントモルタル
水硬性のセメント系粉体に合成樹脂エマルションを混入したポリマーセメントモルタルやセルフレベリング材で、下地の不陸や巣穴を修正する場合がある。しかし、ポリマーセメントモルタルは、塗床材に含まれる溶剤や可塑剤の影響により強度の低下を来し、はく離やふくれの原因となることがあるので、塗床材の下地に適用する場合は注意する。
(c) 塗床材
(1) 塗床材は、一般にプライマー、ベースコート及びトップコートで構成される。ベースコートとは、「標仕」でいう、弾性ウレタン樹脂系塗床材塗り、エポキシ樹脂系塗床の流し展べ工法における下塗り及び上塗り、厚膜流し展べ工法の骨材混合ペースト塗り、樹脂モルタル工法の樹脂モルタル塗り等の金ごてで塗り付けるものがある。これに加えて薄膜型塗床の工法の下塗り及び上塗りのローラーばけを用いて塗布するものも含む。
(2) 主材/硬化材又はA/B等と表示される2成分形の材料は、混合することにより化学反応で硬化するため、混合不十分な材料を用いると硬化不良となるので注意する。
(3) 使用季節の表示がある材料は、表示の期間に使用する。
(4) 塗床材には皮膚に接触すると湿疹・かぶれを生じるものがあるので取扱いに注意する。
(5) プライマーは塗床材を塗布する場合に下地コンクリートとの接着性を高めるために用いられるもので、下地コンクリートの湿潤状態、油潤状態等により特殊なプライマーを使い分ける場合がある。
(6) 無溶剤形の塗床材に骨材締の充填材を混合すると厚膜流し展べ材や樹脂モルタル材等ができる。
(7) 表面仕上げを滑りにくくする場合には、材料にけい砂やウレタンチップ等の骨材を混合して塗布するか又は材料が硬化する前に骨材を散布して防滑仕上げとするのが一般的であるが、材料によう変剤を加えローラー塗りでスチップル模様として防滑を行うこともある。
(d) 合成樹脂塗床材の品質
(1) 「標仕」表19.4.1から表19.4.3までに、各塗床材の品質と試験方法が規定されている。しかし、これらに規定された試験方法は塗床材を対象として規定されたものではないため、具体的な塗床の試験方法の一例としては、JISに準拠して定められた日本塗り床工業会の「塗り床試験方法」による試験結果が「標仕」に規定する品質を満たしていることを確認すればよい。
(2) 薄膜型塗床材は諸性能のバランスに優れたエポキシ樹脂系とされている。エポキシ樹脂は物理的性能・耐汚染性に優れるが、直射日光により、経時で黄変やチョーキング(白亜化)が生じる場合がある。
(3) ホルムアルデヒド放散量については特記がなければ F☆☆☆☆としているので、指定された品質のものであることを確認して使用する。
なお、ホルムアルデヒドの放散量とその確認方法等については、19.10.5を参照されたい。
(4) 薄膜型塗床材は、溶剤形と水性形がある。一般には溶剤形が使用されるが、キシレン・エチルベンゼン等の有機溶剤を含むので、一般の人が立ち入る居室の床に施工する場合には水性形とし、ホルムアルデヒドの放散量や学校環境衛生基準(平成21年3月31日文部科学省告示第60号)に指定される化学物質を放散しない材料であるかを安全データシート(SDS)等で確認して使用する。
19.4.3 工 法
(a) 下地の処理
(1) コンクリート床下地の表層部分はレイタンスやぜい弱層があるため、あらかじめ研磨機、研削機等でコンクリート表層のぜい弱な層を除去し強固な面とする。
また、油分等が付着している場合は脱脂処理をする。
(2) 幅木との取合い、グレーチングの納まり等異種材との取合い部分の納まりは、あらかじめ同材のパテ材や樹脂モルタルで平滑に処理しておく。
(3) 合成樹脂を配合したパテ材や樹脂モルタルで下地調整を行う場合は、プライマーを塗布したのちに行うのが一般的である。
(4) 下地のひび割れ、ピンホール、巣穴等の樹脂パテ処理が不十分な場合には、塗床材がその中に流れ落ち、塗床にピンホールや欠損が生じるので、同材のベースコートでしごくとよい。
(b) プライマーの塗布
(1) プライマーを塗布する場合には、施工場所の換気を十分に行い、プライマーの所定量をローラーばけ、はけ、金ごて等を用いてたまりを生じないように塗り付るる。プライマーの吸込みが激しく塗膜を形成しない場合は、全体が硬化したのち.吸込みが止まるまで数回にわたり塗る。
(2) 下地調整はプライマーが乾燥後、下地のくぼみや隙間等の大きさにより適宜 19.4.2(b)の材料を使い分け平滑に仕上げる。
(c) 塗床材の塗付け
(1) 塗床の仕上げの形態には薄膜型樅床工法、流し展べ工法、樹脂モルタル工法等があり、ベースコートの種類、塗付け方法で区分される。塗床の形態と特徴を表 19.4.4に示す。
表19.4.4 塗床の形態と特徴
表19.4.4_塗床の形態と特徴.jpg
(2) トップコートはベースコートの保護を主目的として用いられ、耐候性、意匠性、機能性(防滑性、帯電防止性、防汚性)等の性能が付与される。表19.4.5にトッ プコートの種類と用途例を示す。
表19.4.5 トップコートの種類と用途例
表19.4.5_トップコートの種類と用途例.jpg
(3) 各工程における塗り間隔は、塗床材の種類により上限と下限がある場合があるので注意する。この間、前工程の塗り面には塵あいや水が付着しないようにあらかじめ十分に養生しておく。
(4) ベースコートの塗布は、気泡が混入しないようにして練り混ぜた塗床材を床面 に流し、ローラーばけ又は金ごてを用い塗りむらにならないよう平滑に仕上げる。
(5) 立上り面の施工はだれを生じないよう、よう変剤を混入した材料を用いる。
(6) 弾性ウレタン樹脂系塗床は、硬化する時に少量のガスを発生することがあり、1回の塗付け量があまり多いと内部にガスを封じ込めて仕上り不良となるので 、1回の塗付け量は2kg /m2以下とし、これを超える場合は塗り回数を増す。塗付け量2kg/m2以下は、硬化物比重1.0の場合で、塗付け厚さ2mm以下となる。
(7) エポキシ樹脂系塗床
(i) 樹脂モルタル工法は、流し展べ工法に比べて塗布厚みがあり、かつ、圧縮強度が高いので耐荷重性のある床をつくることができる。
(ii) 樹脂モルタル工法では、プライマーと樹脂モルタルの間にタックコートを塗布する。タックコートの役割は、下地と樹脂モルタルとの密着性を良くし金ごてによる樹脂モルタル塗りの作業性を良くする。タックコートを施工した塗面がゲル化する前に樹脂モルタルを塗り付ける。
(iii) 樹脂モルタルの塗付けは、こてむらとなりやすいので、定規を用いてあらかじめ平たんに塗り広げるなどして平滑に仕上げる。硬化後に目止めを行う。
(8) 防滑のための骨材の散布は、下塗りが硬化する前に製造所が指定する骨材をむらのないように均ーに散布する。散布は手まきが一般的であるが、より均ーに散布するためにガン吹きとする場合もある。
(9) メタクリル樹脂系塗床
(i) 施工前に下地の表面温度を測定し、製造所の指定するプライマー、ベースコート及びトップコート樹脂液に対する硬化剤又は硬化促進剤の添加量を決定する。
(ii) メタクリル樹脂系塗床材は、一般に可使時間が 10〜20分と短いので広い面積の施工を行う場合は、テープ見切りを行うなどして塗継ぎにならないように注意する。
(iii) 塗膜厚が薄過ぎるとワックスの造膜を阻害し、硬化不良の原因となることがあるのでいずれの工程でも薄過ぎないよう注意する。
19.4.4 施工管理
(a) 下地コンクリート
(1) 塗床材を施工するコンクリート又はモルタル下地の養生期間は、夏期で3週間以上、冬期で4週間以上を目安とするが、天候に大きく左右されるためこれで下地が十分にり乾燥したと判断することは早計である。下地の乾燥状況を節易的に判定する方法については、日本床施工技術研究協議会の「コンクリート床下地表層部の諸品質の測定方法、グレード」(2006年4月)中の「水分量」の測定方法を参考にするとよい。この試験は、床面に乾燥度試験紙を不透湿性透明ビニル粘着テープで張り付け、試験紙が水分により変色した程度を色で判定する方法と、コンクリート・モルタル用高周波静電容量式水分計により測定する方法の二とおりがある。
(2) 春から雨期にかけては、地階の床や土間コンクリートでは表面結露を生じることが多いので、この時期の施工は避けた方がよい。しかし、やむを得ず施工する場合には天候の安定した日を選ぶとともに換気を十分に行う必要がある。
(3) コンクリート床の表面はブリーディング水に伴うレイタンスやドライアウトによるぜい弱層があったり、油分や塵あい等が付着して十分な接着力が得られなくなることがあるので事前に表面強度を確認しておく必要がある。また、原則として軽量コンクリートは、塗床下地に不適当であるが、下地の状態や条件により施工できる場合もある。
下地の表面強度を簡易に測定する方法として「コンクリート床下地表層部の諸品質の測定方法、グレード」中の「表面強度」の測定方法を参考にするとよい。この試験は、超硬質のピンに一定の荷重を加えながら下地表層を引っかき、その傷跡の形状と幅で下地の表面強度を判定するものである(図19.4.3参照)。
図19.4.3_引っかき試験.jpg
図19.4.3 引っかき試験
(4) コンクリート床の表面凹凸(表面の細かい凹凸)や不陸(表面全体的なたわみやうねり)が大きい場合には、塗床材が流れたり、材料使用量が予想以上に多くなる場合が多いので、あらかじめ確認しておくとよい。
表面の凹凸や不陸を測定する方法として「コンクリート床下地表層部の諸品質の測定方法、グレード」中の「表面凹凸、不陸」の測定方法を参考にするとよい。この試験は、長さ2mの直定規と長さ1.8mの水準器を使って容易にできる方法である。
(b) 塗床材の塗付け
(1) 施工場所の気温が低い(5℃以下)場合や湿度が高い(80%以上)場合等は、低温による塗床材の硬化不良や結露による仕上り不良を防止するため施工を中止する。
(2) 使用季節の表示(夏タイプ、冬タイプ)あるいは促進剤の添加量による硬化時間の表示がある場合、硬化時期に対応した材料及び添加量の確認をする。
低温下(5℃以下)の施工あるいは2時間以内で塗床を使用したい時は、メタクリル樹脂系塗床材を用いるとよい。
(3) 塗床材は種類により、また、防滑仕上げやつや消し仕上げは骨材の散布量により仕上り状態や色調等の風合に差があるので、採用に際しては塗り見本等を確認する必要がある。
(4) 引火性の塗床材を塗り付ける場合は、通風、換気、火気に注意する。
(5) 仕上げ後、適度な表面強度を得るためには、エポキシ樹脂系やウレタン樹脂系 の場合、冬期で3日間、春秋期で2日間、夏期で1日間程度の養生が必要である。

19章 内装工事 5節 フローリング張り

19章内装工事
5節 フローリング張り
19.5.1 適用範囲
(a) この節は、一般的用途のフローリングを用いて行う床張り工事を対象としている。なお、縁甲板張りについては、「標仕」12.6.1による。
(b) 作業の流れを図19.5.1に示す。
図19.5.1_フローリング張り工事の作業の流れ.jpeg
図19.5.1 フローリング張り工事の作業の流れ
(c) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
 ① 工程表
 ② 製造所名等及び施工業者名
 ③ 使用材料の材質(JAS等)、板厚
 ④ 取付け釘類及び接着剤の種類、品質等
 ⑤ 工法、管理の方法等
 ⑥ 施工時及び施工後の換気方法
 ⑦ 養生方法
19.5.2 材 料
(a) JASによるフローリングの適用範囲
主として板その他の木質系材科からなる床板であって、表面加工その他所要の加工を施したものに適用する。
(b) JASによるフローリングの品名及び用途による分類、並びに主な樹種を図19.5.2 に示す。
図19.5.2_フローリングの分類(JAS)等.jpeg
図19.5.2 フローリングの分類(JAS)等
(c) JASによる用語の定義を表19.5.1に示す。
表19.5.1 用語の定義(JAS)
表19.5.1_用語の定義(JAS).jpeg
(d) JASによるフローリングの標準寸法を、表19.5.2及び3に示す。
表19.5.2 単層フローリングの標準寸法(JAS)
表19.5.2_単層フローリングの標準寸法(JAS).jpeg
表19.5.3 複合フローリングの標準寸法(JAS)
表19.5.3_複合フローリングの標準寸法(JAS).jpeg
表19.5.4 表示事項(JAS)
表19.5.4_表示事項.jpeg
(f) JASによるフローリングの品質は、材料の仕上りや節等の適合基準により判定するもののほか、一定のルールに基づき、試料を抽出して試験片を作成し、性能試験等を行って性能を保証している。次に試験の項目等を示す。
(1) 含水率試験
(i) 適用範囲
すべてのフローリングに適用される。
(ii) 試験方法
全乾質量を測定して含水率を求める(含水率計で測定することもできる。)。
(iii) 試験片の適合基準(平均値)
① 単層フローリング
1) 人工乾燥材:針葉樹 15%以下 広葉樹13%以下
2) 天然乾煤材:針葉樹 20%以下 広葉樹17%以下
② 複合フローリング:14%以下
(2) 浸せきはく離試験
(3) 曲げ強度試験
(4) 曲げ試験
(5) 摩耗試験
(6) 防虫処理A試験
(7) 防虫処理B試験
(8) 吸水厚さ膨張率試験
(9) ホルムアルデヒド放散量試験
木質フローリング並びにフローリングに使用される接着剤及び塗料等のホルムアルデヒドに関する表示や確認方法等については、19.10.5を参照されたい。
(g) フローリングのホルムアルデヒドの放散量等は、JASで品質基準が定められており、「標仕」では特記がなければ、単層及び複合フローリングは、F☆☆☆☆のもの、非ホルムアルデヒド系接着剤使用のもの、非ホルムアルデヒド系接着剤及びホルムアルデヒドを放散しない塗料等使用のものとしており、単層フローリングに限っては、更に、接着剤等不使用のもの、ホルムアルデヒドを放散しない塗料等使用のものも含まれている。
19.5.3 工法一般
(a) 「標仕」ではフローリング張りの工法を、大きくは乾式工法と湿式工法(モルタル埋込み工法)の二つに区分し、乾式工法は、更に釘留め工法(根太張り工法・直張り工法)と接着工法の二つに区分している。
どの工法を適用するかは特記によることとしている。
(b) 工法ごとに対応するフローリング及び下地の種類の例を図19.5.3に示す。
なお、工法の分類等については、「標仕」と整合しない部分があることに注意する。
図19.5.3_工法ごとに対応するフローリング及び下地の種類の例.jpeg
図19.5.3 工法ごとに対応するフローリング及び下地の種類の例
((-社)日本フローリング工業会「フローリング張り標準仕様書」より)
19.5.4 釘留め工法
(a) 根太張り工法
(1) 下地の工法等
(i) 根太の上にフローリングボード(根太張用)又は複合フローリング(根太張用)を接着剤と釘打ち併用にて張り込む工法。また、この場合は、根太間隔を 300mm程度とする。
(ii) 下地は、次のことに留意する。
① ゆるみ・がたつきがなく、きしみ音がないこと。また,壁際かまち,見切り等に接する部分にあっても適切に処理されていること。
② 張込むフローリングの張り代が適正に確保されていること。また、出入口、壁際の納まりが適切に処理されていること。
③ 強度,剛性平滑性等が確保され.また.十分乾燥していること。
(2) 材 料
(i) フローリングは、フローリングボード(根太張用)及び複合フローリング(根太張用)とし、樹種はならを標準としている。
(ii) フローリングの厚さは、フローリングボードの場合は15mm(「標仕」表19.5.1)、複合フローリングの場合は、板厚15又は12mm以上(「標仕」表19.5.2)としている。
(iii) 釘は、原則として、スクリュー釘、フロア釘及びフロアー用ステープルとする。
(iv) 接着剤は、「標仕」ではJIS A 5536(床仕上げ材用接着剤)によるウレタン樹脂系としている。
なお、ホルムアルデヒド放散量は特記がなければF☆☆☆☆としているので注意する。
(3) 工 法
(i) フローリングボード張り
張込みに先立ち、板の割付けを行い、継手を乱にし(隣接する板の継手は 150mm程度離して)、板そば、木口等のさね肩、しゃくり溝等を損傷しないように通りよ<敷き並べて、根太当たりに雄ざねの付け根から隠し釘留めとする。また、その際、接着剤を根太の全面又はビート状(300mm程度の間隔で、150g/rn2程度)に塗布し、釘と接着剤との併用で留め付ける(図19.5.4参照)。
なお、幅木下及び敷居下の板そばには、必要に応じて適切な隙間を設ける(図19.5.5参照)。
(ii) 複合フローリング張り
張込みに先立ち、木理、光沢等配置よく割り付け、接着剤を根太の全面又はビート状(150g/m2程度)に塗布し、通りよく並べ、板そばと木口のさね肩を損傷しないように、平滑に根太へ向け、雄ざねの付け根から隠し釘留めとする
(図19.5.4参照)。
  図19.5.4_根太張り工法.jpeg
  図19.5.4 根太張り工法
図19.5.5_敷居際の納まりの例.jpeg
    図19.5.5 敷居際の納まりの例
(b) 直張り工法
(1) 下地の工法等
(i) 根太の上に下張り用床板を張り、その上にフローリングボード(直張用)又は複合フローリング(直張用)を釘打ちにて張り込む工法。必要に応じて接着剤を併用する。
なお、下張り用床板は、「標仕」表12.6.1[床板張りの工法]で、厚さ12mmの合板又は厚さ15mmのパーティクルボードとしている。また、この場合は根太間隔を300mm程度とし、下張りと上張りとの継手が合わないようにする。
(ii) 下地は、次のことに留意する。
① ゆるみ・がたつきがなく、きしみ音がないこと。また、壁際、かまち、見切り等に接する部分にあっても適切に処理されていること。
② 張込むフローリングの張り代が適正に確保されていること。また、出入口、壁際の納まりが適切に処理されていること。
③強度、剛性、平滑性等が確保され、また十分乾燥していること。
(2) 材 料
(i) フローリングは、フローリングボード(直張用)及び複合フローリング(直張用)とし、樹種はならを標準としている。
(ii) フローリングの厚さは、フローリングボードの場合は12mm以上(「標仕」表19.5.3)、複合フローリングの場合は、板厚15又は12mm以上(「標仕」表19.5.4)としている。
(iii) 釘は、スクリュー釘、フロア釘及びフロアー用ステープルとしているが、接着剤を併用する場合はその他のものを用いる場合もある。
(iv) 接着剤は、「標仕」ではJIS A 5536(床仕上げ材用接着剤)によるウレタン樹脂系としている。
なお、ホルムアルデヒド放散量は、特記がなければF☆☆☆☆としているので注意する。
(3) 工 法
(i) フローリングボード張り
張込みに先立ち、板の割付けを行い、通りよく敷き並べ、板そばと木口のさね肩を損傷しないように、雄ざねの付け根から隠し釘留めとする。また、必要に応じて、接着剤を下地の全面又はビート状(300mm程度の間隔で、150g/m2程度)に塗布し、釘と接着剤との併用で留め付ける(図19.5.6参照)。
なお、幅木下及び敷居下の板そばには、必要に応じて適切な隙間を設ける(図19.5.5参照)。
(ii) 複合フローリング張り
張込みに先立ち、木目・色調等を配置よく割り付け、接着剤を下張り材全面又はビート状(300mm程度の間隔で、150g/m2面程度)に塗布し、通りよく並べ、板そばと木口のさね肩を損傷しないように、雄ざねの付け根から隠し釘留めとする(図19.5.6参照)。
図19.5.6_直張り工法(接着剤・釘留め併用)2.jpeg
  図19.5.6_直張り工法(釘留め)2.jpeg
図19.5.6 直張り工法
19.5.5 接着工法
(a) 下地の工法等
(1) 接着工法は、モルタル下地の類に接着剤を用いて直張用のフローリングを張り込む工法である(図19.5.7参照)。
図19.5.7_接着工法の例2.jpeg
図19.5.7 接着工法の例
(2) 下地は次のことに留意する。
(i) 張り込むフローリングに応じた張り代が確保されていること。また、出入口、かまち、見切り、幅木回り等の精度が確保されていること。
(ii) フローリング張りの平滑性及び接着性を確保するために必要な下地面の強度及び精度が確保され、また、十分乾燥していること。
なお、日本床施工技術研究協議会では、コンクリート及びモルタル金ごて押え、セルフレベリング材塗り等の表面強度.水分量(乾燥度)、不陸等の測定方法及びその等級区分等について「コンクリート床下地表層部の諸品質の測定方法、グレード」(2006年4月)を定めているので参考にするとよい。
(b) 材 料
(1) フローリングは、直張用の単層フローリング及び複合フローリングとし、樹種は,モザイクパーケットを除きならを標準としている。
(2) フローリングの寸法は、モザイクパーケットを除き「標仕」表19.5.3,及び5で規定されている。
(3) モザイクパーケットは、ピースの組合せにより市松模様とプレパークと呼ばれる並列模様とがある(図19.5.8参照)。
なお、表面塗装したものが多く用いられ、裏面材のあるもの(厚さ10mm)とないもの(厚さ8mm)とがある。
図19.5.8_ピースの組合せ(市松模様).jpeg 図19.5.8_ピースの組合せ(同一方向模様).jpeg
図19.5.8 ピースの組合せ
(4) フローリング裏面の緩衝材は、下地コンクリート面の不陸の吸収及び防湿効果を目的としたものであり、特記がなければ、合成樹脂発泡シートとされている。したがって、発泡体シートはクリープ特性を有し、透湿率の低い独立気泡体のものがよい。このような性質をもったものには、ポリオレフィン樹脂系(無機質 60%、ポリオレフィン樹脂40%)のものがある。
(5) 接着剤は、「標仕」では JIS A 5536によるエボキシ樹脂系、ウレタン樹脂系又は変成シリコーン樹脂系としている。
なお、ホルムアルデヒド放散量は、特記がなければF☆☆☆☆としているので注意する。
(c) 工 法
(1) 張込みに先立ち、木目・色調等を配置よく割り付け、所定の接着剤を下地に塗布し、通りよく並べ表面を損傷しないように十分に押さえ込んで平滑に張り込む。
(2) 接着剤は専用のくしべらを用いて均等に伸ばし、全面に塗残しのないよう入念に塗布する。
(3) 2液形接着剤は、所定の配合比で専用容器を用いてよくかくはんして使用する。
なお、一回のかくはん量は、接着剤の可使時間を考慮し、作業量に合わせて決める。
(4) 寒冷期に室温5℃以下で接着剤を使用する場合は、採暖等を行う。
(5) 張込み作業中に接着剤が製品の表面に付着した場合は、専用の溶剤で速やかにふき取る。
(6) 「標仕」では規定していないが、直張用としての裏面及び寸法加工を施していない単層フローリングをコンクリート系の下地に用いる場合には、合板等を介して張り込む工法がよく行われている。その場合には、接着剤が固まるまでの反り防止のため隠し釘留めを行い、その釘類はフローリンダの厚さに応じた、かつ、下地の合板を貫通しない長さとする(図19.5.9参照)。
図19.5.9_単層フローリングを合板を介してモルタル下地に張り込む場合の例.jpeg
図19.5.9 単層フローリング(裏面緩衝材なし)を合板を介してモルタル下地に張り込む場合の例
19.5.6 モルタル埋込み工法
(a) フローリングブロック(複数の板を並べて接着剤又は波釘等でブロック状に形成し、裏面に防水処理を施し、木口面にモルタルにフローリングを定着させるための足金物を取り付けた製品)をコンクリートスラブの上にモルタルを敷き均して埋め込む工法である(図19.5.10参照)。
図19.5.10_モルタル埋込み工法の例.jpeg
図19.5.10 モルタル埋込み工法の例
(b) 下地は、次のことに留意する。
(1) 張り代は、床仕上り面より50mmを標準とすること。特に、壁際や出入口部は高い精度の下地レベルであること。
(2) コンクリートスラブは、打込み後3週間以上経過し、下地としての強度が十分確保されていること。
(3) 土間スラブ等、土に接する部分には、「標仕」4.6.5[床下防湿層]による防湿処理が施されていること。
(c) 張込みに先立ち、割付け図を作成させ、小片は用いないようにする。
(d) 張込み
(1) 調合は、容積比でセメント1:砂 3 程度のよく混ぜた硬練りモルタルを平らに敷き均し、セメントペーストを2mm 程度むらなく表面に流して張り込む。
(2) フローリングブロックは、割付け図に基づき水糸を引き通し、水糸に合わせて水平に、市松模様に張り、不陸、目違いのないよう、目通りよく十分たたき締めて張り込む。
(e) 張込み後、雨等の掛からないようにし、夏期で4から 7日間、冬期で10日間程度の養生をする。
19.5.7 現場塗装仕上げ
目違い払い後のフロアサンディングと塗装との関係は次のようになる。
(1) 特記がなければ、ウレタン樹脂ワニス塗りを行う。詳細は、18章11節による。
(2) 樹脂系塗装を行う場合のサンドペーパーは、P80〜100程度とする。
(3) オイルステインワックス、ワックス、フロアオイル塗りの場合のサンドペーパーは、P60~80程度とする。
(4) サンデイング後直ちに塗装しない場合は、厚手の紙等を用いて床面の汚れを防ぎ、かつ、雨等の掛からないように窓を閉めるなどして保護する。
(5) オイルステイン塗付け後、乾燥時間として8時間以上とる。
(6) ワックス・フロアオイル仕上げ後、乾燥時間として8時間以上必要である。
19.5.8 養 生
(a) 張込み後の養生
(1) 湿式の工法(フローリングブロック)
張込み後、表面に軽油等を塗布して汚れ、しみ、狂いを防ぎ、雨等の掛からないようにし、夏期で7日間、冬期で10日間程度の養生期間を置いたのち、仕上げ塗装を行う。
(2) 乾式の工法
張込み後、接着剤使用の場合は、その硬化を待ち、すぐに仕上げ塗装工事を行わない場合は養生紙等を敷き、傷、汚れ、しみ、狂いを防ぎ、雨等の掛からないようにする。
なお、コンクリート下地等の場合は水分の放散を妨げないよう配慮する。
(b) 塗装仕上げの養生
樹脂塗装仕上げ後は、塗料の硬化まで湿気、汚れ、ほこり、雨等の掛からないようにし、使用するまで傷等がつかないよう1週間程度の養生期間を設ける。
19.5.9 「標仕」以外の工法
体育館用フローリングの工法(のり釘併用工法)
(1) この工法は体育館、武道場等の床の強度、弾力性、平滑性等を特に必要とされる広い床に適用されるものである。
(2) 特殊加工されたフローリングボード、複合フローリング、複合フローリング(大型積層型式)を、接着剤を全面塗布した下張り板の上に、隠し釘留めとする工法である。
(3) 工法の概要を次に示す。
(i) 下張りは、19.5.4(b)(1)により、板そば、継手(受材心で)とも突き付けて、根太上に小ねじ留めとする。
(ii) フローリングの割付けは乱張りとし室の中心から両側に張り付ける。
(iii) 下張り板の表面にくし目ごてを用いて接着剤(JIS A 5536によるウレタン樹脂系又はエポキシ樹脂系)を塗布(300g/m2程度)し、フローリングの継手を乱にし、通りよく並べ、板そば、木口のさね盾を損傷しないように、スクリュー釘、フロア釘、フロア用ステープルその他引抜き強度が高い釘で隠し釘留めとする(図19.5.6(イ)参照)。
(iv) 壁際の幅木との取合いを図19.5.11に、コンクリートその他の材料との取合いを図19.5.12に示す。
図19.5.11_幅木との取合い.jpeg
図19.5.11 幅木との取合い
図19.5.12_異種材料との取合い.jpeg
図19.5.12 異種材料との取合い
(4) この工法については (-社)日本フローリング工業会「フローリング張り標準仕様書(平成22年版)」第9章[体育館用フローリングの工法]を参考にされたい。

19章 内装工事 6節 畳敷き

19章内装工事
6節 畳敷き
19.6.1 適用範囲
(a) この節は、一般事務庁舎内の和室等の畳敷きを対象としている。
なお、柔道場床等の特殊な用途は対象としていない。
(b) 作業の流れを図19.6.1に示す。
図19.6.1_畳敷きの作業の流れ.jpg
図19.6.1 畳敷きの作業の流れ
(c) 施工計画書等
(1) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
① 工程表(必要に応じて室別、場所別の工程表の作成)
② 製造所名、施工業者及び管理組織
③ 使用材料の材質(畳表、畳床へり、糸も含む)、寸法
④ 工法
⑤ 養生方法
(2) 施工図の検討内容は、おおむね次のとおりである。
(i) 各室別及び場所別畳割付け図(均等割り)
(ii) 各部取合いの納まり(出入口、柱回りの段差及び隙間)
(3) 見本品を提出させ,設計担当者と打ち合わせて決定する。
19.6.2 材 料
(a) 畳
(1) 畳の分類
畳の規格には、畳表と畳床とを組み合わせた畳のJISと、畳床のみのJISとがあり、畳表についてはJASがある(図19.6.2参照)。
なお、「標仕」19.6.1に規定する畳は、標準的なものに限定しており、畳表、畳床、へり等の畳を構成する材料については、表19.6.1及び(b)~(f)に記載するとおりである。
図19.6.2_畳の分類.jpg
図19.6.2 畳の分類
(2) 畳の表示
(i) 畳は、図19.6.3 の表示事項を表示させる。
図19.6.3_畳の表示事項.jpg
図19.6.3 畳の表示事項
表19.6.1 畳の種別
表19.6.1_畳の種別.jpg
(ii) JIS A 5902(畳)による製品の呼び方(種類又は記号)の例を次に示す。
(b) 畳床
(1) 種類及び等級
稲わら畳床は等級により4種類に区分されているが、その他の畳床は等級による区分はない。
畳床は、心材の厚さ,畳床1枚の質量、縦糸の間隔、横糸の間隔、縫目の間隔等が決められている(表19.6.1参照)。
(2) 品質
JISでは、外観、含水率及び曲げ試験によるたわみ量によって、品質を規定している。
(3) 構造
JIS A 5901(稲わら畳床及び稲わらサンドイッチ畳床)に規定する稲わら畳床 1級品及び2級品の構造を図19.6.4に、ポリスチレンフォームサンドイッチ稲わら畳床の構造を図19.6.5に、JIS A 5914(建材畳床)に規定するI形、II形、Ⅲ形、K形及び N形の構造を図19.6.6に示す。
図19.6.4_稲わら畳床6層形畳床の構造(JIS_A_5901).jpg
図19.6.4 稲わら畳床6層形畳床の構造(JIS A 5901:2004)
図19.6.5_ポリスチレンフォームサンドイッチ稲わら畳床の構造(JIS_A_5901).jpg
図19.6.5 ポリスチレンフォームサンドイッチ稲わら畳床の構造(JIS A 5901:2004)
図19.6.6_建材畳床の構造(JIS_A_5941)_D種1.jpg
図19.6.6_建材畳床の構造(JIS_A_5941)_D種2.jpg
図19.6.6_建材畳床の構造(JIS_A_5941)_D種3.jpg
図19.6.6_建材畳床の構造(JIS_A_5941)_D種K.jpg
図19.6.6_建材畳床の構造(JIS_A_5941)_D種N.jpg
図19.6.6 建材畳床の構造(JIS A 5914 : 2013)
(4) 防虫処理
A種・B種及びC種は、JIS A 5901により、人体に無害で、ダニ、その他の害虫が発生しないように、加熱による方法又は防虫紙(布)による方法若しくはこれらを組み合わせた方法で防虫処理を施したものとされている。ただし、フェンチオン、フェニトロチオン等の有機りん系の薬剤を含有する防虫紙(布)を使用する場合は、当該製品の製造について薬事法による承認を受けたものを用いることとされている。
(c) 畳 表
畳表は、JIS A 5902では縦糸の種類により大きく2つに区分され、更にそれぞれ 3つの等級に区分されている。このうち「標仕」表19.6.1に規定する畳表は、 A種は縦糸が麻糸の1等、B種は縦糸が綿糸の1等、C種及びD種は縦糸が綿糸の 2等である(表19.6.1参照)。
(d) 畳べり
畳べりは、JIS L 3108(畳へり地)に規定する畳へり地とし、種類は、柄へり地、綿・ Pへり地、P・Pへり、地金糸へり地、及び綿糸へり地である(表19.6.1参照)。
なお、あらかじめ畳へり地の見本により、設計担当者と打ち合わせておく。
(e) へり下紙
へり下紙は、JIS A 5902に規定するように、ハトロン紙と厚手の紙を張り合わせたものなどとし、寸法が正しく色むらがないものとする。
(f) 縫 糸
畳の仕上げに使用する縫糸は、JIS A 5902では、付属書に規定する糸又はそれらと同等以上の性能をもつ糸とされている。ただし、これらの糸に害虫予防等のための薬剤を含浸又は浸透させたものは使用しないこととされている。
なお、針足間隔は、表19.6.1に示すJIS A 5902に規定するものとする。
19.6.3 工 法
(a) 下 地
畳は本来、床下を換気できる下地に敷き込むことを前提とするが、床工法の多様化によって、かさ上げ用の軽量モルタルやコンクリートスラブ等、床下換気が不可能な下地も対象となる。
これらの下地の場合、平たんで、不陸、目違い、凹凸がないことを確認する。また、湿潤しているおそれのある下地の場合は、十分乾媒させたのち防湿シート(発泡ポリエチレンフォーム厚さ2mm程度)等の防湿層を全面的に敷設する。
(b) 畳割り
畳割りは、室の縦横・対角線の寸法及び床面から畳寄せ天端までの寸法を実測して決定する。
部屋の用途、大きさ.出入口の位置等によって、畳割りは異なるが、出人口、押入等の敷居部分には畳へりの付く側を当てること及び、4枚畳の角が1箇所に集中しないように考慮する。
(C) 加工・製作
畳割りに従って畳床を切り合わせ、畳を製作するが、その際へり幅は、表2目を標準として、表の筋目通りよく、たるまないようにして縫い付ける。また、畳へりの角止めは、縫い止め又はタッカー止めとする。
なお、畳床には取っ手を付ける。
(d) 敷込み
敷込みは、敷居、畳寄せ等と、不陸、目違い、隙間等のないように行う。

19章 内装工事 7節 せっこうボード,その他ボード及び合板張り

19章内装工事
7節 せっこうボード,その他ボード及び合板張り
19.7.1 適用範囲
(a) この節は、内装の壁・天井の下地又は仕上げに用いるボード及び合板張りを対象としている。
(b) 作業の流れを図19.7.1に示す。
図19.7.1_ボード及び合板張り工事の作業の流れ.jpeg
図19.7.1 ボード及び合板張り工事の作業の流れ
(c) 施工計画書等
(1) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
① 工程表(必要に応じて室別、場所別の工程表の作成)
② 製造所名.施工業者及び管理組織
③ 使用材料の材質(防火性能.ホルムアルデヒド放散量)、寸法
④ 取付け釘類(材質.長さ等)
⑤ 接着剤の種類・用途(ホルムアルデヒド放散量)
⑥ 工 法
⑦ 施工時及び施工後の換気方法
⑧ 養生方法
⑨ 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等
(2) 施工図の検討は、次の事項について行う。
(i) 各室別及び場所別ボード割付け図(目地割り)
(ii) 各部取合いの納まり(出入口、窓、設備用ボックス類、改め口等)
(iii) 目地の納まり
(iv) 出隅及び入隅の納まり
(v) 他の仕上材との見切り等の納まり
(3) 見本品を提出させ、色調等を設計担当者と打ち合わせて決定する。特に、防火材料については、指定又は認定を受けた材料であることを確認する。
19.7.2 材 料
(a) せっこうボード・その他のボード類
(1) せっこうボード類の種類と特徴を表19.7.1、その他のボード類の種類と特徴を表19.7.2に示す。ボード類の規格及び種類、記号は「標仕」表19.7.1に示されているが、表19.7.1及び2には対応する記号を示してある。
(2) 「標仕」19.7.2(a)では、パーティクルボード及びMDFのホルムアルデヒド放散量は、特記がなければF☆☆☆☆のものを使用することとしている。
なお、ホルムアルデヒド発散建築材料等については、10節を参照されたい。
表19.7.1 せっこうボード類の種類と特徴
表19.7.1_せっこうボード類の種類と特徴.jpeg
表19.7.2 その他のボード類の種類と特徴(その1)
表19.7.2_その他のボード類の種類と特徴(その1).jpeg
表19.7.2 その他のボード類の種類と特徴(その2)
表19.7.2_その他のボード類の種類と特徴(その2).jpeg
(b) 合板類
(1) 合板の日本農林規格における標準寸法を表19.7.3に示す。
(2) 合板の日本農林規格における種類別の特徴、品等・区分等を表19.7.4に示す。
(3) ホルムアルデヒド発散建築材料等については、10節を参照されたい。
(4) JASマークは合板の種類ごとに図19.7.2の例のように定められている。
表19.7.3 合板の標準寸法(JAS)
表19.7.3_合板の標準寸法(JAS).jpeg
図19.7.2_JASマークの例(普通合板).jpg図19.7.2_JASマークの例(構造用合板).jpg図19.7.2_JASマークの例(天然木化粧合板等).jpg
図19.7.2 JASマークの例
表19.7.4 合板類の種類と特徴
表19.7.4_合板類の種類と特徴.jpeg
(c) 小ねじ等
小ねじ等のJIS規格には、JIS B 1112(十字穴付き木ねじ)、JIS B 1122(十字穴付きタッピンねじ)、JIS B 1124(タッピンねじのねじ山をもつドリルねじ)、JIS B 1125 (ドリリングタッピンねじ)等がある。
19.7.3 工 法
(a) 一般事項
(1) 目地通りよく、不陸、目違い等が生じないように、ボード又は合板張付けに先立ち、割付け図に従って墨出しを行い、下地の不陸や通りの調整を行う。
(2) 5℃以下の低温時に接着剤を用いると、硬化速度が低下し、更に低温になると凍結等により硬化不良を生じることがある。
(b) ボード類の張付け
(1) ボード類を下地材に直接張り付ける場合の留付け用小ねじ類の間隔は,「標仕」表19.7.2のとおりであるがせっこうボード張りの壁では軸組とボードを堅固に一体化させることで剛性及び耐火性能が確保される。軸組とボードの緊結強さは取付け金物とボードの接合部におけるボードの強さに負うところが大きいので、図19.7.3のように釘及びドリリングタッピンねじはボード表面紙を破損することなく、正しい角度でボードを下地に密着させるように施工しなければならない。
図19.7.3_釘打ち(適合).jpg図19.7.3_釘打ち(不適切).jpg
図19.7.3 釘打ち
(2) ボード類を下地張りの上に張る場合、接着剤を主とし、小ねじ類やタッカーによるステープル等の間隔は縦・横200~300mm程度で留め付ける。このとき上張りと下張りのジョイントが同位置にならないようにする。
(c) 合板類の張付け(「標仕」表19.7.3の工法)
(1) A種の場合
(i) 特殊加工化粧合板、特殊表面仕上げボード類等の張付けに用いられる工法である。
(ii) 接着剤を胴縁又は合板、ボード類の接着面に塗付し、ねじ留めして張り付ける。
(iii) 下地張りがある場合も上記に準じて張り付ける。
(iv) A種に準ずる工法として、比較的程度の良い化粧板の張付けに用いられる図19.7.4のような工法がある。
目地当たりに300mm間隔程度にとんぼ押さえを行うか、添え木を900mm間隔程度に流し、目地当たりにばりで仮押さえを用い、所定の養生期間(接着剤が硬化するまで)を経たのち取り外す。
図19.7.4_A種に準ずる工法.jpg
図19.7.4 A種に準ずる工法
(2) B種の場合
最も簡単な工法で、化粧合板及び化粧ボード等を同色のカラーネイル、カラーねじ等で取り付ける工法である。
(3) (1), (2)の工法のほかに、天然木化粧合板、ボード等を引掛け金物(とっこ、どっこ)を用いて張り付ける高級な工法もある。
(d) 各部の納まりの例を図19.7.5~9に挙げる。
図19.7.5_幅木の納まりの例(軽量鉄骨下地).jpg図19.7.5_幅木の納まりの例(RC,CB造下地).jpg
    図19.7.5 幅木の納まりの例
図19.7.6_壁目地の納まりの例.jpg
図19.7.6 壁目地の納まりの例
図19.7.7_出隅の納まりの例.jpg
図19.7.7 出隅の納まりの例
図19.7.8_壁-天井の納まりの例.jpg
図19.7.8 壁-天井の納まりの例
図19.7.9_天井の納まりの例.jpg
図19.7.9 天井の納まりの例
(e) せっこうボードのせっこう系直張り用接着材による直張り工法
(1) 下地の処理
注意事項を下地種類別に示す。
① コンクリート下地面は、型枠締付け金物の頭等を取り除き、指定のプライマー処理を行う。
② ALCパネル下地面は、吸水調整を行う(指定のプライマー処理が吸水調整を兼ねる場合がある)。
③ 断熱材下地の場合は、打込み等により躯体に確実に固定されたものに限る。
④ 断熱材下地の場合は、打込み工法と現場発泡工法があるが、せっこう系直張り用接着材の製造所が指定するプライマー処理を行う。
なお、吹付け硬質ウレタンフォーム下地に直張り用接着材を施工する場合、は従来のプライマーでは接着性が劣る懸念があることから、施工に先立ち、プライマーの接着性を確認する。その試験方法及び接着強さは、JIS A 9526(建築物断熱用吹付け硬質ウレタンフォーム)に準拠し、各断熱材の最小接着強さ以上とする。A種1の最小接着強さは 80kPa (0.080N/mm2)となる。ただし、同じ材料の組合せで実施した試験成績書がある場合は、試験を省略してもよい。試験方法の詳細等については、日本ウレタン工業協会に照会するとよい。
(2) 墨出し
(i) 下地の凸凹を計算に入れて、床・壁等の仕上げの墨出しを行う。
                                                                                             
(ii) 仕上り面での寸法(a)は、ボード厚さ ( t ) + 3mm以上であればよいといわれるが、標準寸法としては、9.5mmボードで20mm、12.5mmボードで25mmとするとよい(図19.7.10参照)。
なお、壁面との隙間を大きくとる場合は、接着材の塗付け厚さ及び塗付け幅を大きくとるようにする。
図19.7.10_仕上りまでの寸法.jpeg
図19.7.10 仕上りまでの寸法
(3) 直張り用接着材の塗付けと間隔
(i) 接着材は、水で練り合わせて使用するが、練り具合はやや硬めにして、塗り付けたときに、たれない程度とする。
(ii) 一度に練る分量は、1時間以内に使い切れる量とする。接着材は,練り混ぜてから2時間程度で硬化する。
(iii) 接着材は下地に下こすりをして、こて圧をかけたのち、直ちに所定の高さに塗り付ける。
なお、接着材の盛上げ高さは図19.7.11による(「標仕」19.7.3(f)(3))。
(iv) 「標仕」表19.7.4による接着材の間隔を図19.7.12に示す。
(v) 1回の接着材の塗付けは、張り付けるボード1枚分とする。
図19.7.11_せっこう系直張り用接着剤の盛上げ高さ.jpeg
図19.7.11 せっこう系面張り用接着材の盛上げ高さ
図19.7.12_せっこう系直張り用接着材の間隔.jpeg
図19.7.12 せっこう系直張り用接着材の間隔
(4) 張付け
(i) ボードを壁に押し付けるようにし、軽く定規でたたいて徐々に接着しながら仕上り墨に合わせていく。
(ii) 定規でボード表面をたたきながら、上下左右の不陸調整を正確に行う。
特にジョイント部分の目違いと壁面全体の不陸を確かめながら張付け作業を進める。
(iii) ボードの圧着の際、床面からの水分の吸上げを防ぐためくさび等をかい、床面から10mm程浮かして張り付ける(図19.7.13参照)。
(iv) 張り付けたボードは、接着材が硬化するまで動かさないように十分注意する。
(v) 出隅、入隅及び梁形のボード張りは図19.7.14による。
図19.7.13_床取合いの例.jpeg
図19.7.13 床取合いの例
図19.7.14_出隅,入隅及び梁形ボード張りの例(出隅).jpeg図19.7.14_出隅,入隅及び梁形ボード張りの例(入隅).jpeg図19.7.14_出隅,入隅及び梁形ボード張りの例(梁形).jpeg
図19.7.14 出隅、入隅及び梁形ボード脹りの例
(5) 接着材は乾燥が遅いので、表面仕上げを通気性のないビニルシート、塗料等とする場合には、接着材が十分に乾燥してからでないと、ボードの表面が湿り、シートの接着材が腐敗、変色してシートにまだらの汚れ等が生じるので注意する。
(f) せっこうボードの目地工法等
(1) 目地工法の種類
せっこうボードの目地工法(継目部分のエッジとエッジの納まり)には、目地処理を行う継目処理工法並びに目地処理を行わない突付け工法及び目透し工法がある(図19.7.15参照)。
継目処理工法は、下地ボード面の調整が仕上げの精度に直接影響する塗装や薄手の壁紙張り等の仕上げの場合に適用される。
突付け工法は、一般的には、倉庫のようなボードの上に仕上げをしない場合に適用される。
目透し工法は、一般的には、意匠的に目地を見せてボードの上に仕上げをする場合に適用される。
図19.7.15_目地工法の種類(継目処理工法).jpg図19.7.15_目地工法の種類(突付け工法).jpg図19.7.15_目地工法の種類(目透かし工法).jpg
図19.7.15 目地工法の種類
目地工法の3つの種類と一般的に使用されているボードのエッジ等の関係を、図19.7.16に示す。
なお、現在市販されているせっこうボードのJIS規格品は、 表面と裏面及び長さ方向の側面がボード原紙で被覆されている、一般に「へり折り品」と呼ばれるものである。へり折り品の主なエッジの種類を図19.7.17に示す。
図19.7.16_目地工法の種類とエッジとの関係.jpeg
図19.7.16 目地工法の種類とエッジとの関係
図19.7.17_主なエッジの種類(JIS A 6901).jpg
図19.7.17 主なエッジの種類(JIS A 6901 : 2009)
(2) 継目処理工法
継目処理工法とは、せっこうボードのテーパーエッジ、ベベルエッジ又はスクエアエッジボードを使用して継目処理を行い、目地のない平滑な面を作る工法である。
継目処理は、水分を吸収しても伸縮が 0.1%以下であるというせっこうボードの特性を利用したものでせっこうボードの施工の中で最も重要な工程である。
「標仕」では、継目処理用として製造され、平滑な目地のない面を作るのに適しているテーパーエッジボードのみが継目処理工法の使用材料とされている。
なお、ベベルエッジ及びスクエアエッジボードの継目処理は、テーパーエッジよりも節易であるので、施工場所等によっては行われている。
① へり折り面どうし(テーパーエッジボード)の場合
テーパーエッジボードは、長手方向にテーパーがついたもので、平滑な下地面を作るのに適している。
「標仕」で規定されている工法(「標仕」19.7.3(g)(2)(i))を図解すると図19.7.18のようになる。
図19.7.18_テーパーエッジボードの継目処理(イ).jpg
図19.7.18_テーパーエッジボードの継目処理(ロ).jpg
図19.7.18 テーパーエッジボードの継目処理工程図
② へり折り面どうし(ベベルエッジボード)の場合(「標仕」以外の工法)
「標仕」では規定されていないが、一般的な工法を次に示す。また、それを図解すると図19.7.19のようになる。
1) 下塗り及びテープ張り
継目部分のV溝にジョイントコンパウンドを埋め込みながら、その周辺を平らに仕上げる。次のジョイントテープ張りはテーパーエッジのテープ張りに準ずる。
なお、グラスメッシュテープを使用する場合は、先にグラスメッシュテープを張り、その上からジョイントコンパウンドをV溝に埋め込み、平らに仕上げる。
2) 中塗り
中途りは、テーパーエッジの中途りに準ずる。ただし、ジョイントコンパウンドはできるだけ薄く、幅400〜500mm程度に塗り広げる。
3) 上途り
上塗りは、テーパーエッジの上途りに準ずる。ただし、ジョイントコンパウンドはできるだけ薄く、幅500〜600mm程度に塗り広げる。
図19.7.19_ベベルエッジボードの継目処理(イ).jpg
図19.7.19_ベベルエッジボードの継目処理(ロ).jpg
図19.7.19 ベベルエッジボードの継目処理工程図
③ へり折り面どうし(スクエアエッジボード)の場合(「標仕」以外の工法)
「標仕」では規定されていないが、一般的な工法を次に示す。また、それを図解すると図19.7.20のようになる。
1) 下塗り及びテープ張り
継目部分の隙間にジョイントコンパウンドを埋め込みながら、その周辺を平らに仕上げる。次のジョイントテープ張りはテーパーエッジのテープ張りに準ずる。
なお、グラスメッシュテープを使用する場合は、先にグラスメッシュテープを張り、その上からジョイントコンパウンドを継目部分の隙間に埋め込み平らに仕上げる。
2) 中塗り
中塗りは、ベベルエッジの中塗りに準ずる。
3) 上塗り
上塗りは、ベベルエッジの上塗りに準ずる。
④ 切断面どうしの場合
「標仕」に規定されている工法(「標仕」19.7.3(g)(z)(ii))を図解すると図 19.7.20のようになる。ただし、突付け前に切断面のボード用原紙表面の面取りを行う。
図19.7.20_スクェアエッジボードどうし及び切断面どうしの継目処理(イ).jpeg
図19.7.20_スクェアエッジボードどうし及び切断面どうしの継目処理(ロ).jpeg
図19.7.20 スクエアエッジボードどうし及び切断面どうしの継目処理工程図
⑤ 出隈・入隅部の処理
「標仕」に規定されている工法(「標仕」19.7.3 (g)(z)(ii))を図解すると図19.7.21のようになる。
図19.7.21_出隅,入隅部の処理(出隅部).jpg
図19.7.21_出隅,入隅部の処理(入隅部).jpg
図19.7.21 出隅、入隅部の処理
(3) 突付け工法
ボードの上に仕上げを行わない場合に、ベベルエッジ若しくはスクエアエッジ ボードのへり折り面どうし又は切断面どうしを突き付け密着させて張る工法である。
切断面どうしの場合は、切断面の凹凸をカッターナイフ、やすり等で平滑にして突き付け接合する。
(4) 目透し工法
目地を美しく見せるために意匠的な意味でベベルエッジ又はスクエアエッジボード接合部を突付けとせず、多少隙間(一般に6〜9mm)を開けて底目地をとり、ボードを張る工法である。
(5) 釘や小ねじ等の頭のくぼみの処理
塗装や簿手の壁紙張り等の仕上げを行う場合、下地ボードの調整が仕上げ精度に直接影響することから、留付け材の頭のくぼんだ箇所は、ジョイントコンパウンドで平滑に仕上げることが必要である。
「標仕」で規定されている工法(「標仕」19.7.3(g)(5)(i))を図解すると図19.7.22のようになる。
図19.7.22_釘及び小ねじ頭の処理.jpg
図19.7.22 釘及び小ねじ頭の処理
(g) ドライウォール工法
本来は、工場生涯によるボード類を使用して壁・天井等をつくる乾式工法のことであるが,近年は北米を中心に発達した、ボード取付け用下地材、せっこうボード類、ボード留付け材、ジョイントコンパウンド、ジョイントテープ及びコーナービード等の材料を用いてボードの取付け下地から継目処理まで一式で壁・天井を構築する工法をいう。
この工法には目地処理なしの場合も含まれるが、一番の特徴は、乾式工法の弱点となるボード目地、出隅・入隅等の部位を専用の材料と工具を用いて補強処理し、不燃性・気密性をもつ、塗り仕上げと同様な一体の壁・天井面を得られるところにある。
ドライウォール工法に使用する専用工具を図19.7.23に示す。
図19.7.23_ドライウォール工法用工具.jpg
図19.7.23 ドライウォール工法用工具

19章 内装工事 8節 壁紙張り

19章内装工事
8節 壁紙張り
19.8.1 適用範囲
(a) この節はモルタル面、コンクリート面及びボード面に施す各種壁紙張りを対象としている。
(b) 作業の流れを図19.8.1に示す。
(c) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
① 工程表
② 製造所名及び施工業者名
③ 材質(ホルムアルデヒド放散量、防火性能)、色柄別に応じた施工箇所
④ 接着剤の材質(ホルムアルデヒド放散量)、配合割合
⑤ 工法(割付け、見切り部分の納まり等)
⑥ 施工時及び施工後の換気方法
⑦ 養生方法(材料の保管方法等)
⑧ 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等
図19.8.1_壁紙張り工事の作業の流れ.jpeg
図19.8.1 壁紙張り工事の作業の流れ
(d) 見本品を提出させ、色合、模様。性能等について設計担当者と打ち合わせて決定する。
なお、模様のある材料では、校様の大きさにもよるが一般的には 1m角程度の見本により確認するとよい。
(e) 養生等
(1)材料は整頓して保管するとともに、直射日光を受けないよう、また、塵あいその他による汚れを生じないようにポリエチレンフィルムを掛けるなど適切な養生を行う。
(2) 巻いた材料は、くせが付かないように立てて保管する。
(3) 施工済みの箇所で、その後の作業により汚染や損傷のおそれのある部分には適切な養生を行う必要がある。特に、柱や壁の出隅部や出入口回りは傷つけやすいため注意する。
(4) 施工中及び施工後の養生等については、19.10.7を参照されたい。
19.8.2 材 料
(a) JIS A 6921(壁紙)による壁紙の品質を表19.8.1に示す。
表19.8.1 壁紙の品質(JIS A 6921 : 2003)
表19.8.1_壁紙の品質(JIS A6921).jpeg
(b) 壁紙及び壁紙施工用でん粉系接着剤は、指定建築材料(19.10.3(b)参照)である。
なお、「標仕」ではホルムアルデヒド放散量を、特記がなければF☆☆☆☆としている。また、建築基準法による規制等については10節を参照されたい。
(c) 壁紙のホルムアルデヒド放散量に関する注意事項等には、次のようなものがある。
(1) 表19.8.1に示すように、JIS規格品は放散量がF☆☆☆☆のものである。
(2) JIS規格品以外で、大臣認定(19.10.5(a)参照)を受けている壁紙には、F☆☆☆☆(認定番号MFNー0000)のものとF☆☆☆(認定番号MF3-0000)のものとがあり、認定番号の頭の記号で区分されているので注意する。
(3) 複数の放散量の材料で構成する場合は、最も下位の放散量となるので、下地材、接着剤、壁紙等に、特記によりF☆☆☆☆以外の材料が指定されている場合には、特に注意が必要である。
なお、「標仕」では、下地材等を含めてすべてF☆☆☆☆のものを原則としている。
(d) 壁紙のホルムアルデヒド放散量だけでなく、TVOC放散量等にも配慮を求められる場合は、(-社)日本壁装協会がISM壁紙規格を定めているので、参考にするとよい。ISM壁紙規格の安全規定による基準を表19.8.2に示す。
(e) 内装制限を受けるときは、その場所に応じて品質及び必要な防火性能が定められている。
(f) 防火材料として必要な事項は、次のとおりである。
(1) 防火性能
(i) 防火材料は国土交通大臣の指定又は認定を受けたものとする。国土交通大臣の認定を受けた壁紙は認定番号によって防火性能の識別を行う。
なお、壁紙の防火材料の認定には、施工する下地材料の種類、防火性能及び施工上の条件等が当該認定番号ごとに定められているので、これを認定内の付属書類によって確かめる。
防火性能認定番号の付番方法は次のとおりである。
防火性能認定番号の付番方法.jpeg
表19.8.2 ISM壁紙の基準(ISM安全規定による)
表19.8.2_ISM壁紙の基準(ISM安全規定による).jpeg
(ii) 防火材料の壁紙を張る下地基材については、防火材料認定のための性能評価を行う指定性能評価機関が、「壁紙等の仕上げ材科で、施工現場で基材となる下地材に施工されるものの試験体作成方法について、施工現場での下地材が数種類ある場合は、以下の下地材を標準下地材とする。」として次の各種を定めている。
① 金量板を除く数種類の不燃材料を下地材に使用する場合
厚さ12.5mmのせっこうボード(不燃材料)
② 金属板(鋼板等を含む)及びせっこうボード(不燃材料)を除く数種類の不燃材料を下地材に使用する場合
厚さ10mm以下、比重約0.8の繊維混入けい酸カルシウム板(不燃材料)                                                
③ 金属板(銅板等を含む)を下地材に使用する場合
厚さ0.27mmの亜鉛めっき鋼板
④ 数種類の準不燃材料を基材に使用する場合
厚さ9.5mmのせっこうボード(準不燃材料)
⑤ 数種類の難燃材料を基材に使用する場合
厚さ5.5mmの難燃合板(難燃材料)
(iii) 防火材科に認定された壁紙の防火性能は、下地材と施工方法との組合せによって決められている。認定された各種壁紙の防火性能(認定番号の例)と下地材及び施工方法との組合せを表19.8.3に示す。
(iv) 張付け工法を「標仕」では、直張りとしている。
ただし、防火材料として認定された壁紙には、下張り工法として、繊維系壁紙で袋張りとべた張りが、塩化ビニル樹脂系整紙でべた張りが認められているものもある((k)参照)。
(v) 壁紙の防火認定は、大臣認定書と同付属書類の写しにより確認する。その際、張り合わせる下地材の防火性能も確認する必要がある。
なお、認定を受けた製品のこん包に、次のような防火製品表示ラベルが張り付けられている。防火製品表示ラベルの例を図19.8.2に示す。
図19.8.2_防火製品表示ラベルの例.jpeg
図19.8.2 防火製品表示ラベルの例
表19.8.3 認定された壁紙の防火性能(認定番号の例)と下地材及び施工方法との組合せ例
表19.8.3_認定された壁紙の防火性能と下地材及び施工方法との組み合わせ例.jpeg
(2) 施工後の表示
防火材料の認定を受けた壁紙には、施工後、施工責任を明確にし、当該壁紙による施工が認定された条件を遵守して行われた防火性能のある仕上げであることを表す施工管理ラベルを、1区分(1室)ごとに2枚以上張り付けて表示する(「標仕」19.8.3 (g))。
(g) JIS A 6922(壁紙施工用及び建具用でん粉系接着剤)による壁紙施工用でん粉系接着剤の品質を、表19.8.4に示す。
表中の1種はでん粉を主成分としたもの、2種1号は1種に合成樹脂エマルションを配合したもので、施工時に水で希釈して使用するもの、2種2号は2種1号と同じ配合のもので、施工時に希釈しないで使用するものをいう。
なお、かび抵抗性の性能欄の判定0とは、防かび性能があるということを示している。
表 19.8.4 壁紙施工用でん粉系接着剤の品質(JIS A 6922 : 2010)
表19.8.4_壁紙施工用でん粉系接着剤の品質(JIS A6922).jpeg
(h) 壁紙施工用でん粉系接着剤として通常市販されているものは、F☆☆☆☆のJIS規格品又はF☆☆☆☆として大臣認定を受けたものである。大臣認定品は、 F☆☆☆☆のものには MFN-0000の認定番号が付されている。
(i) 接着剤の用い方
(1) 接着剤の配合は、JIS A 6922で規定するでん粉系接着剤(ペースト状)を主体とし、これに酢酸ビニル樹脂エマルション、エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルション、アクリル樹脂エマルション等を添加混合したもの( 2種1号)を、水で希釈して使用する((g)参照)。
接着剤の混合率及び水による希釈は、下地の材質、壁紙の材質、接着剤の塗布方法(手付け・のり付け機)及び作業環境(室温・湿度・風速)により相違があるので、製造所の指定する使用方法による。
(2)「標仕」19.8.2(b)では、接着剤使用量を固型換算量(乾燥質量)30g/m2以下と定めているので注意する。
(j) 下地調整材
パテやシーラー等の下地調整材には、防火性能に支障を来すことのないものを使用する。
(k) 下張り紙
防火壁張りに使用する下張り紙は、35g/m2程度のもので、JIS A 1322(建築用薄物材料の難燃性試験方法)に規定された試験方法により30秒加熱した場合、防炎2級以上の性能を有するものを用いる。
ただし、「標仕」19.8.3(e)では、壁紙を下地に直接張り付けることになっているので、下張り紙の使用は指定のある場合のみである。
19.8.3 施 工
(a) 「標仕」19.8.2に定められている壁紙は、すべて認定防火材料だけであり、下地に直接張り付けることが定められている。したがって、下地の凹凸、目違い等がそのまま表面の仕上りに影響を与えるので、下地の施工精度を高めておく必要がある。
(b) 下地の乾燥及び処置
(1) モルタル及びプラスタ一面の下地は、「標仕」18.2.5による。
(2) コンクリート及びALCパネル面の下地は、「標仕」表18.2.5により、B種を標準としている。
(3) せっこうボード面の下地は、「標仕」表18.2.7により,B種を標禅としている。
なお、下地がせっこうボードでせっこう系接着材による直張り工法の場合は、接着材の乾燥が遅いので十分な養生時間をとる必要がある(19.7.3(e)(5)参照)。
(4) 「標仕」19.8.3(c)では、下地にシーラーを塗るように定めている。シーラー塗るは、はけ・ローラー等を用いて全面にむらなく塗布する。
なお、シーラー塗るには次の目的がある。
(i) 接着性を向上させる。
(ii) 下地の吸水性の調節と、あく等が表面に浮き出るのを防止する。
(iii) 張起し等、張り作業が容易な下地面をつくる。
(iv) 下地の色違いを修正する。
(v) 張替えの際にはがしやすい下地をつくる。
(c) 模様のある壁紙では継目部分の模様にずれがないようにすることが重要である。また、色むらにより多少の濃淡がある場合は、色合せをして確認し目立たないように配置する。
(d) 壁紙のジョイントは、できるだけ突付け張りとし、やむを得ず重ね裁ちする場合は、下敷きを当てて行い、刃物で下地表面を傷つけることがないように施工する。
(e) ビニル壁紙等で硬いものには、収縮や反りが大きいものがあるため、継目等壁紙の周囲で、はく離を生じやすい。このような場合、壁紙の周囲の接着剤には接着カの強いものが必要である。
(f) 張り終わった箇所ごとに、表面に付いた接着剤や手あか等を直ちにふき取る。特に建具、枠回り、かもい、ジョイント部等は,放置しておくとしみの原因となるので注意する。
19.8.4 施工管理
(a) 施工環境
(1) 寒冷期に室温や下地面が 5℃以下又は接着剤の硬化前に 5℃以下となるおそれのある場合は、採暖等の措置を施す。乾燥不足になると壁紙類ははがれやすくなり、一方乾燥し過ぎると収縮による隙間の発生、ジョイントのはがれ等を生じるので、採暖に当たってはこの点に留意する。
(2) 室内の温度が高い場合には,通風・換気等を施す。
(b) 張上げ後の養生
張上げ後は急激な乾燥を避けるため、直射日光や通風等に対して適当な養生を行い、自然状態で接着剤を十分に乾燥させる。
(c) 張上げ後の検究
張上げ後に検査を行い、問題があれば適切にあと処理を行い仕上げる。注意点としては、下地精度による問題、張り忘れ、切り忘れ、ふき忘れ及び汚れ、ジョイント部のはがれ、隙間等が挙げられる。

19章 内装工事 9節 断熱・防露

19章内装工事
9節 断熱・防露
19.9.1 適用範囲
(a) 鉄筋コンクリート造等の建物に用いられる断熱工法には内断熱工法と外断熱工法がある。この節では「標仕」に基づき、主として断熱材打込み及び張付け工法並びに断熱材現場発泡工法について記述する。
(b) 建築物を断熱するのは次の3つの理由による。
(1) 表面結露を防ぐため(結露防止)。
(2) 燃料費・暖冷房費低減のため(省エネルギー)。
(3) 居住性を向上させるため(居住性向上)。
19.9.2 断熱材打込み工法
(a) 一般事項
ここでは、現場打ちコンクリート部位に型枠先付けで断熱材を打ち込む内断熱工法を対象としている。
なお、型枠に取り付けるうえで納まりが複雑な開口部回り等で断熱施工がしにくい部位や熱橋となりやすい部位には、19.9.3断熱材現場発泡工法又は断熱材張付け工法(「標仕」では.工法については規定していない。)により、適切な補修を施して所定の断熱性能を確保しなければならない。
(b) 作業の流れを図19.9.1に示す。
図19.9.1_断熱材打込み工法の作業の流れ.jpeg
図19.9.1 断熱材打込みt法の作業の流れ
(c) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
① 工程表
② 製造所名及び施工業者名
③ 材質及び厚さ(断熱材、現場発泡断熱材、ホルムアルデヒド放散量等)
④ 工法(割付け、見切り部分の納まり、留付け方法、接着方法、吹付け方法、補修方法等)
⑤ 養生方法等(材料保管方法、打込み前及び型枠脱型後の養生等)
⑥ 安全衛生(火気取扱い、換気方法等)
⑦ 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等
(d) 材 料
(1) 断熱材は大別すると、発泡プラスチック系、無機質繊維系(グラスウール等)及び木質繊維系(インシュレーションボード等)に分類されるが、「標仕」19.9.2(a)に示される断熱材は、JIS A 9511(発泡プラスチック保温材)に規定される製品のうち、ビーズ法ポリスチレンフォーム保温材、押出法ポリスチレンフォーム保温材(スキンなし)、A種硬質ウレタンフォーム保温材及びフェノールフォーム保温材(3種2号を除く。)であり、種類及び厚さは特記によるとしている。硬質ウレタンフォーム保温材の発泡剤による種類をA種と定めているのは、発泡剤にフロン類を用いないためである。A種は発泡剤として炭化水素、二酸化炭素(CO2)等を用い、フロン類を用いないものを示す。打込みt法の断熱材に必要な性能は次のとおりである。
(i) コンクリート打込みによって断熱性能が変化しないこと
(ii) 吸水・吸湿が極めて少ないこと。
(iii) 軽量で加工性が高<、割れたり欠けたりしにくいこと。
(iv) 耐圧強度が高いこと。
(v) コンクリートとの付着性が良いこと。
(vi) 寸法等の変化を生じないこと。
(ⅶ) 耐アルカリ性に優れ、裏打ち材との接着が良いこと。
(2) 断熱材の種類と特徴
(i) ビーズ法ポリスチレンフォーム保温板
ポリスチレンフォーム保温板は、製造法によりビーズ法と押出法の2種類がある。JIS A 9511によるビーズ法ポリスチレンフォーム保温板の特性並びに寸法を表19.9.1及び2に示す。
なお、特徴は次のとおりである。
1) 燃焼性:可燃性であるが、自己消火性を有する。
2) 耐候性:日射(紫外線)による劣化がある。
3) 吸水性・透湿性:独立気泡のため水の付着程度ではほとんど吸水しないが、長時間水中に浸しておくと若干吸水することがある。透湿性は極めて小さい。
4) 施工性:加工が容易であり、取付け方法は釘留め、接着付け、打込み等である。加工品としては片面又は両面にボード類等(せっこうボード ・GRC板・木毛セメント板・合板等)を複合した成形品もある。
表19.9.1 A種ビーズ法ポリスチレンフォーム保温板の特性(JIS A 9511 : 2009)
表19.9.1_A種ビーズ法ポリスチレンフォーム保温板の特性(JIS A9511).jpeg
表19.9.2 A種ビーズ法ポリスチレンフォーム保温板の寸法(JIS A 9511 : 2009)
表19.9.2 A種ビーズ法ポリスチレンフォーム保温板の寸法(JIS A9511).jpeg
(ii) 押出法ポリスチレンフォーム保温板
JIS A 9511による押出法ポリスチレンフォーム保温板の特性並びに寸法を表19.9.3及び4に示す。
なお、押出法ポリスチレンフォームの特徴は、(i)のビーズ法ポリスチレンフォーム保温板と同様である。
表19.9.3 A種押出法ポリスチレンフォーム保温板の特性(JIS A 9511 : 2009)
表19.9.3_A種押出法ポリスチレンフォーム保温板の特性(JIS A 9511).jpeg
表19.9.4 A種押出法ポリスチレンフォーム保温板の寸法(JIS A 9511 : 2009)
表19.9.4_A種押出法ポリスチレンフォーム保温板の寸法(JIS A9511).jpeg
(iii) 硬質ウレタンフォーム保温板
JIS A 9511による硬質ウレタンフォーム保温板の特性並びに寸法を表 19.9.5及び 6に示す。
なお、特徴は次のとおりである。
1) 燃焼性:可燃性であるが、自己消火性を有する。
2) 耐候性: 日射(紫外線)による劣化がある。
3) 吸水性・透湿性:独立気泡のため水や水蒸気の浸入に対して抵抗力は大きい。表面材に防水性、防湿性の大きいものをラミネー トした製品は、吸水性、透湿性をいっそう小さくできる。
4) 施工性:加工が容易であり、取付け方法は釘留め、接着付け、打込み等である。加工品としては、ボード類等を複合した成形品もある。
表19.9.5 A種硬質ウレタンフォーム保温板の特性(JIS A 9511 : 2009)
表19.9.5_A種硬質ウレタンフォーム保温板の特性(JIS A9511).jpeg
表19.9.6 A種及びB種硬質ウレタンフォーム保温板の寸法(JIS A 9511 : 2009)
表19.9.6_A種及びB種硬質ウレタンフォーム保温板の寸法.jpeg
(iv) フェノールフォーム保温板
JIS A 9511によるフェノールフォーム保温板の特性並びに寸法を表19.9.7及び8に示す。
「標仕」では、フェノールフォーム保温板のホルムアルデヒド放散量は、特記がなければF☆☆☆☆とするよう定められている(10節参照)。
なお、特徴は次のとおりである。
1) 燃焼性・耐熱性:炎を当てても炭化するだけで、煙や有害ガスはほとんど発生しない。
2) 耐候性:通常の使い方では経年による材質変化は少ないが、日射(紫外線)による劣化がある。
3) 吸水性・透湿性:独立気泡であるため、吸水性・透湿性は小さいが、発泡プラスチック保温材の中では吸水性が比較的高い。
4) 施工性・加工性:面材に金属板等を用いたもの以外は、カッター・ナイフ等で容易に切断できる。
なお、金属に対する腐食性があるので、直接接触する金物類には適切な防錆処理が施されたものを使用する。
5) 施工上の注意事項:型枠への固定は、専用の座付き釘を使用するなど脱型時の面材のはがれ等に配慮する。
表19.9.7 A種フェノールフォーム保温板の特性(JIS A 9511 : 2009)
表19.9.7_A種フェノールフォーム保温板の特性(JIS A9511).jpeg
表19.9.8 A種フェノールフォーム保温板の寸法(JIS A 9511 : 2009)
表19.9.8_A種フェノールフォーム保温板の寸法(JIS A9511).jpeg
(3) 材料の取扱い及び保管の留意事項
(i) 運搬に際し、欠け、割れ、つぶれ等がないよう取り扱う。
(ii) 長時間( 2〜3日以上)日射(紫外線)を受けると表面から徐々に劣化するので、原則として屋内に保管する。やむを得ず屋外に保管するときはシート等の覆いを掛ける。また、施工後も日射を受けるときは速やかに仕上げの施工(コンクリート打込み等)を行う。
なお、屋外に保管するときは、風で飛散しないようしつかり保持しておく。
(iii) 反りぐせ防止のため、平たんな敷台等の上に積み重ねる。
(iv) 独立気泡のため、吸水性・透湿性は小さいが、水や湿気にさらされると断熱性能が徐々に低下するので、(ii)に配慮する。
(v) 通行の多い場所は材料を破損するおそれがあるので保管場所としては避ける。
(vi) 溶接火花、バーナー等火気のある付近には保管しない。
(e) 工 法
(1)概要
打込み工法は、ボード状断熱材をあらかじめ型枠に取り付けるか、ボード状断熱材そのものか、又は複合成形板を型枠として用いてコンクリートを打ち込むことにより断熱材をコンクリート躯体の所定の位置に取り付ける工法である。
(2) 工法の特徴
(i) 断熱材と躯体が密着している場合は、内部結露やはがれが比較的少ない。
(ii) 工期の短縮、コストの節減が図れる。
(iii) 通常の型枠大工で施工できる。
(iv) 建込み時において精度が要求される。
(v) 打込み後のコンクリート面の確認が困難である。
(3) 施工上の注意事項
(i) 加工及び取付け
断熱層が連続しなかったり、断熱材を欠損しなければ納まらないような形状での使用は避け、事前に納まりを十分に検討する必要がある。
加工・取付け上の注意事項は次のとおりである。
1) 断熱材の切断が不整形であると、その部分からコンクリートが表面にはみ出して冷・熱橋となるので、切断は測定のうえ定規を当てて正確に行う。
2) 断熱材の継目は、目違い防止のため型枠の継目を避けるよう割り付ける。
3) 継目は、縦方向だけでも相継ぎ等とするのが理想的であるが、テープ張り等の処位を講じてコンクリートの流出を防止する(図19.9.2参照)。
図19.9.2_断熱材継目部のテープ処理例(JASS24より).jpeg
図19.9.2 断熱材継目部のテープ処理例(JASS 24より)
4) 入隅部・出隅部は、断熱材が連続するように納まりを考え、冷・熱橋とならないようにする。壁入隅部の処置例を図19.9.3に示す。
図19.9.3_壁入隅部の処置(JASS24より).jpeg
図19.9.3 壁入隅部の処置(JASS 24より)
5) 断熱材の取付けは、型枠の内面に釘で仮留めする。釘は、断熱材の端から30〜 50mm内側に打ち付ける。
釘は、座紙(ろうを含浸させたもの、アスファルトフェルト等)を取り付けたもの、又は断熱材専用の座付き釘とし、釘頭が断熱材内部にめり込まないように打ち込む。
6) セパレーター・アンカーボルト・インサート・ドレン回り・パイプ等の金物類が、断熱材を貫通する部分は冷・熱橋となるので、極力その欠き取りを少なくして補修を容易にする。
7) 冷・熱防止を考慮したセパレーター、インサート等の例を図19.9.4及び5に示す。ただし、「標仕」14.4.2(d)ではインサートは鋼製、「標仕」 19.9.2(b)(5)ではコーンの撤去跡は断熱材張付け又は断熱材現楊発泡工法による断熱材の充填となっているので注意する。
なお、冷・熱橋とは、建築物を構成する部位において、熱貫抵抗が局部的に小さい部分をいう。このような部分では熱損失が生じ、結露が発生しやすい。
図19.9.4_冷・暖熱橋を考慮したセパレーターの例.jpeg
図19.9.4 冷・熱橋防止を考慮したセパレーターの例
図19.9.5_冷・熱橋防止を考慮したインサートの例.jpeg
図19.9.5 冷・熱橋防止を考慮したインサートの例
(ii) 養生等
① 断熱材に火気が触れると火災事故の原因となるので、断熱材集積場所や施エされた箇所等を工事関係者に周知徹底する。
② ガス圧接・溶接時等の炎や火花が断熱材に触れるおそれがあるときは、鋼板等の不燃材による保護を撤底し、消火器等も配置する。
③ 断熱材に局部的に大きな荷重がかかり破損のおそれがあるときは、合板等で養生する。
④ 断熱材は軽いため、その切りくずは風により型枠内部や現場外にも飛散しやすいので、切りくず等は発生の都度片付ける。
(iii) コンクリートの打込み
① フレキシブルホース又はシュートからのコンクリートを、断熱材の張りじまいに直接当てると、コンクリートが裏面に回り込むおそれがあるので留意する。
② 急速打込みや集中打込みを避ける。
③ バイプレーター等は、断熱材に触れないように垂直に上下させる。また、同一箇所に長時間かけてはならない。
④ 打込み時及び打込み後のコンクリート表面の確認は困難なため、豆板やコールドジョイント等の欠陥の発生防止には十分に注意する。
(iv) 型枠取外し後の補修
① 断熱材が欠落している箇所は、その部分のコンクリートをはつり取り、断熱材を張り付けるか、「標仕」19.9.3の断熱材現場発泡工法で隙間なく補修する。ただし、結露のおそれのある寒冷地域では断熱材現場発泡工法が一般的である。
② 継目の中にコンクリートがはみ出しているときは、断熱材現場発泡工法によりそのまま補修する。ただし、継目の隙間が大きい場合にはVカットしたうえで補修する。
③ セパレーターの頭部は、確実に補修しておかないと後日内壁仕上げ面に汚染が生じてくる(セパレーター頭部が冷・熱橋となり、その部分の内壁仕上げ面が結露し汚染される)。
④ 開口部の枠回りは、形状が複雑で断熱材打込み工法による施工が困難な場合が多い。そのような箇所は断熱材現楊発泡工法により施工する。
(4) 断熱材張付け工法(「標仕」以外の工法)
(i) 概 要
断熱材張付け工法は、ボード状断熱材を接着剤等により下地面に取り付ける工法、又は複合成形板を接着剤等により、直張りする工法である。
なお、「標仕」19.9.2(b)(5)では断熱材打込み工法での開口部等のモルタル詰めの部分及び型枠緊張用ボルト、コーンの撤去跡は、断熱材張付け又は断熱材現場発泡工法での断熱材充填によるとしているが、壁面全体に断熱材を張り付ける工法については規定していない。
(ii) 特 徴
① 仕上りがきれいで、表面材を補修する必要がない。
② 施工技術が要求される(接着剤を使用する場合、作業環境の温湿度や、下地の乾燥状況を正確に把握する必要があるため)。
③ 下地(躯体)の平滑度が要求される。
④ 打込み後のコンクリート面が確認できる。
⑤ 断熱材と下地との接着が不十分な場合には、断熱材とコンクリートの境界面に結露が生じやすくなる。
(iii) 材 料
① 断熱材
 (d)に示す断熱材を使用する。
② 張付け用接着剤
「標仕」では、接着剤は断熱材製造所の指定する製品でよいが、ホルムアルデヒド放散量については特記がなければF☆☆☆☆としているので、接着剤の放散量が設計図書で指定されたものであることを確認する必要がある
(10節参照)。
(iv) 施工上の注意事項
① 下地面の処理
1) 下地面の不陸が、数mm程度であれば接着剤を厚くして調整する。調整可能な不陸は、長さ2m当たり3mm程度以下である。
2) 不陸が大きいときは、はつり又はセメント系下地調整塗材で補修する。
3) 下地面の汚れ、油分及びほこりの付着は、はく離の原因となるので除去する。
② 張付け
1) 接着剤は、下地面の温度及び乾燥程度により、接着性に影響が生じるので性能表等を確認し適切に管理する。
2) 断熱材と躯体との境界面に隙間が生じると、その部分に結露が生じやすくなるため、接着は全面接着とし、密着させて張り付ける。
3) 溶剤形の接着剤を使用するときは、火気及び強制換気等安全上の処置を講ずる。
19.9.3 断熱材現場発泡工法
(a) 一般事項
(1) 断熱材現場発泡工法は、断熱施工現楊でポリイソシアネート成分及びポリオール成分の2原液を混合し、吹付け又は注入して発泡・硬化させ、所定の厚さの継目のない断熱層を形成させる工法である。
(2) 断熱材現場発泡工法は、一般的な外壁内面や屋根裏への施工に加え、断熱材打込み工法には適さない複雑な納まりとなる部位、開口部回りや断熱材補修部等冷・熱橋となりやすい部位への施工に適した工法である。
(b) 作業の流れを図19.9.6に示す。
図19.9.6_断熱材現場発泡工法の作業の流れ.jpeg
図19.9.6 断熱材現楊発泡工法の作業の流れ
(c) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
① 工程表
② 製造所名及び施工業者名
③ 有資格作業者による施工(1級又は2級熱絶縁施工技能士)
④ 品質、厚さ等(難燃性,施工厚さ等)
⑤ 工法(下地の確認及び処置方法吹付け方法補修方法等)
⑥ 養生方法(保管方法、吹付け作業時の周辺への養生方法、施工後の養生方法等)
⑦ 安全衛生(保護具の着用、火気に対する留意事項、換気方法等)
⑧ 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等
(d) 材 料
(1) 吹付け硬質ウレタンフォーム
(i) 断熱材は、「標仕」19.9.3(a)により、JIS A 9526(建築物断熱用吹付け硬質ウレタンフォーム)の規格に適合する製品を使用することと定められている。種類は特記によるとしているが、特記がない場合、発泡剤の種類は、フロン類を用いず、二酸化炭素(CO2)等を用いたもので、壁、屋根裏等の用途に適するA種lとしている。
(ii) JIS A 9526に規定された吹付け硬質ウレタンフォームの種類を表19.9.9に、その品質を表19.9.10に示す。表19.9.10に規定されている熱伝淋率の値は、2006年のJISでは解説で設計値として推奨されていた数値が、2013年のJISでは規格値として採用された。
なお、(-社)公共建築協会では、「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4(e)参照)の一環として、「標仕」の規定に基づき「現場発泡断熱材」を評価しているので参考にするとよい。
表19.9.9 吹付け硬質ウレタンフォームの種類(JIS A 9526 : 2013)
表19.9.9_吹付け硬質ウレタンフォームの種類(JIS A9526).jpeg
表19.9.10 吹付け硬質ウレタンフォームの品質(JIS A 9526 : 2013)
表19.9.10_吹付け硬質ウレランフォームの品質(JIS A9526).jpeg
(iii) 吹付け硬質ウレタンフォーム断熱材の特徴は次のとおりである。
① 目地のない連続した断熱層が得られ、曲面や窓枠回り等複雑な形状にも施工が容易である。
② 現楊発泡断熱材の楊合は、接着性(自着性)があるので接着剤が不要である。
③ 吹付け層数を変えることにより、断熱層の厚さを調整できる。
④ 打込み後のコンクリート面の確認ができる。
⑤ 平滑な表面が得にくいため、断熱層厚さが不均ーになりやすい。
⑥ 施工技術が要求される(専門施工業者による施工管理が必要)。
(2) 原液の保管及び取扱い
「標仕」19.9.3(c)では、火気及び有害ガス等に対する安全衛生対策については、関係法令等に従い十分に行うよう定めている。原液は、危険物第四類第三又は四石袖類に該当するものがあるので、消防法等に従って保管し、取り扱う必要がある。保管等は.消防法労働安全衛生法その他の関係する法規に従って行う。
なお、原液の保管及び取扱いについての留意事項は、次のとおりである。
① 保管場所を決め、その周囲を鋼製パイプ等で区画し、火気厳禁、立入禁止等の表示を行い、消火器等を適切に配置する。
② 使用中の原液ドラム缶等は、水が混入すると発熱したり、ガスが発生することがあるので,雨水等が混入しないよう十分注意する。
③ ドラム缶等は、直射日光にさらされないようにシート等で覆うなどして、高温にならないように、また、冬期は材料が 0℃以下にならないように配慮する。
④ 原液が直接皮膚や目に触れないように、断熱材製造所の仕様に従って、保護具(保護メガネ、防毒マスク等)を着用する。
(e) 工 法
断熱材現場発泡工法の施工は、「標仕」19.9.3(c)により断熱材製造所の仕様によると定められている。ただし、作業者には一定レベル以上の技能と安全管理能力が求められるので熱絶縁施工技能検定合格者の活用が望ましい。ここでは一般的な工法の概要を示す。
(i) 下地処理
① 下地面の大きな不陸は、断熱層の厚さの確保及び仕上材の取付けに影響するので事前に補修する。
② 下地面の水分、油分、汚れ及びほこり等は、はく離の原因となるので除去する。
(ii) 吹付け作業前の養生・準備
① 建具枠等の化粧材回りの吹付けをするときは、ポリエチレンシート等により汚染がないよう養生する。
② 風があるときは、現場発泡断熱材が飛散するのでシート等で養生する。
③ 換気の少ない場所では、酸欠状態となりやすいので、強制換気等の対策を講ずる。
(iii) 吹付け
① 吹付け面の温度及び乾燥度は、発泡性及び付着性に大きな影響を及ぼすので性能表等により適切な条件で施工する(吹付け面の温度が5℃以上で施工すること)。
② 躯体からのボルト、パイプ等の金物類は、冷・熱橋となり結露しやすいので、金物回りは入念に施工する。
③ 施工面に、約5mm以下の厚さになるように下吹きする。総厚さが30mm以上の場合には多層吹きとし、各層の厚さは各々30mm以下とする。ただし、1日の総吹付け厚さは80mmを超えないものとする。
なお、吹付け厚さの許容誤差は、- 0から+10mmとすればよい。
④ 吹付け作業の困難な狭い場所では、ガンスプレーとしないで、簡易発泡ボンベ又は付塗りとする。
⑤ 作業者は吹付け作業中にワイヤゲージ等を用いて随時厚みを測定する。所定の厚さに達していない箇所は補修吹きを行い、逆に厚く付き過ぎて表面仕上げ上支障となる箇所は、カッターナイフ等により表層を除去する。
(iv) 安全管理
安全管理上のポイントは、吹付け作業中及び作業後において断熱材に火気が接触しないように、火気厳禁を遵守することにある。特に吹付け後、あと工程での鋼材の溶接・溶断作業は極力避けた工程管理を行う。どうしても避けられない場合でも断熱材に直接火気が接触しないように不燃材料で完全に養生する。また、間接的でも鉄骨等を伝わって断熱材に熱が伝わることがないよう万全の措置が必要である。