20章 ユニット及びその他の工事 1節 共通事項

20章 ユニット及びその他の工事
01節 共通事項
20.1.1 一般事項
この章は、一般的な建築工事において現場で取付けを行うユニット、プレキャストコンクリート、間知石及びコンクリート間知ブロック積み並びに敷地境界石標を対象としている。
20.1.2 基本要求品質
(1) ユニット及びその他の工事に用いる材料は、「所定のもの」としているが、ここで使用する材料にはJIS等の公的品質規格の定められていないものが多い。この場合には、施工計画書(「標仕」1.2.2)で品質計画を定めて使用する材料の品質を明確にし、これを監督職員が検討し承諾することにより材料の品質が確定される。これらの材料が正しく使われていることが分かるような資料を整理しておくことを求めている。
(2) この章では、建物の仕上げ面に、製造工場等で製作された製品等をそのまま取り付ける場合が多く、設計図書又は施工図等で指定された位置に正確に取り付けることを要求している。
また、「所要の仕上り状態」とは、出来ばえとして認められないような傷や汚れ等のない状態に仕上げられていることを求めたものであるが、これらについては、客観的・定量的な品質基準を設定するのが困難な場合も多いため、できるだけ品質計画で明確にしておき、これによって品質管理を行う。
(3) (2)で述べたように、この章では特記された製造所で製作された既製品等を現場で取り付ける場合が多い。しかし、特記された製品といえども、設置場所や利用者の使い勝手等を考慮し、使用性、耐久性等に対して有害な欠陥のないものを選定するよう要求している。
なお、特記された製造所等の製品の中に適切なものがない場合は、「標仕」1.1.8による協議を行い処置する。
(4) ホルムアルデヒド放散量について、「標仕」では基本要求性能の事項として概括的規定を設けていない。しかし、「可動間仕切」「トイレブース」のパネル材料など、JIS等の材料規格において放散量が規定されているものは、「標仕」においてF☆☆☆☆と定められている。したがって、市場性、部位、使用環境等を考慮して、その他の放散量のものを使用する場合は、設計図書に特記されている内容を十分に確認し、要求品質を確保する必要がある。
なお、ホルムアルデヒド放散量に関する工事監理上の注意事項は、19章10節を参照されたい。

20章 ユニット工事 2節ユニット工事 2.フリーアクセスフロア

20章 ユニット及びその他の工事
02節ユニット工事等
20.2.1 一般事項
この節は、現場において取付けを行うユニット製品類を対象としている。
20.2.2 フリーアクセスフロア
(1) この項は、事務室、電子計算機室等に用いるフリーアクセスフロアを対象としている。
(2) 材料等
(ア) フリーアクセスフロアに関する JIS A 1450(フリーアクセスフロア試験方法)には、試験方法のみで製品規格は規定されていない。フリーアクセスフロアのパネルの材料を表20.2.1に、また、JIS A 1450で定義されている用語を次に示す。
(a) フリーアクセスフロア
建築における二重床システムのうち、床天端のパネル等を簡易に取り外して床下空間の設備等のメンテナンスができる構造のフロア。
(b) パネル
フロアの部材のうち、上面を形成する部材(表面仕上げ材が製造工程で張られたものも含む。)。
(c) 支柱
フロア部材のうち、パネルを支持するもので緩衝材を含む。
(d) シート
下地床上に敷き、フロアのずれなどを防止する部材。
(e) ユニット
繰返し配列されるパネルと支柱とを組み合わせたもので、緩衝材及びシートを含む。
表20.2.1 フリーアクセスフロアのパネルの材料
表20.2.1_フリーアクセスフロアのパネルの材料.jpeg
(イ) 表面材
(a) 表面仕上材は、タイルカーペット又はビニル床タイルが一般的である。
パネルに張り付けられたものと置敷きのものがある。
(b) 表面材は、OA機器、コンビューター等の誤動作の原因にならないように、帯電防止性能のあるものを使用するのが望ましい。
(ウ) 品質・性能
品質、性能を確認する試験方法(  )内は、基本的に JIS A 1450による。
(a) 耐震性能(振動試験)
地震による変形及び損傷に関する性能。
床高さ300mm以下の場合、振動台試験を定めている。
載荷荷重 3,000N、5,000Nそれぞれの場合について、国土交通省大臣官房官庁営繕部監修「(平成25年制定)官庁施設の総合耐震・対津波計画基準及び同解説(令和3年版)」に示される建築非構造部材の設計用標準水平震度(Ks)0.6及び1.0をそれぞれ適用して性能区分しており、合計で4区分としている。
(b) 帯電防止性能(帯電性試験)
人体やOA機器に影響を与える帯電に関する性能。
評価方法は、JIS A 1455(床材及び床の帯電防止性能 - 測定・評価方法)に制定されており、フリーアクセスフロア工業会では、帯電防止性能評価値(U値)を、事務室は 0.6以上、電子計算機室は 1.2以上で評価している。
(c) 漏えい抵抗(漏えい抵抗試験)
感電に関する性能。
「フリーアクセスフロアの仕上げ面とアース端子との間の電気抵抗」を規定したもので、漏えい抵抗(R)が1× 106 Ωより大きいこととしている。
(d) 耐荷重性能(静電荷重試験)
静的荷重による荷重及び変形に関する性能。
一般事務室を想定した 3.000N、重量機器設置を想定した5,000Nの二つの性能区分としている。荷諏試験は、パネル及び支柱要素を含めた実際の施工状態に近い試験であり、3.000N又は5,000N 載荷時の変形量を5.0mm以下、残留変形量を3.0mm以下としている。
(e) 耐衝撃性能(衝撃試験)
衝撃による変形及び損傷に関する性能。
砂袋20kgを400mmの高さから落下加撃後の残留変形量を、3.0mm以下で損傷がないこととしている。
(f) ローリングロード性能(ローリングロード試験)
台車走行による変形及び損傷に関する性能。
1車輪に所定荷重を加え、5,000往復走行後の残留変形量を3.0mm以下で損傷がないこととしている。
(g) 耐燃焼性能(燃焼試験)
ケーブル火災等の残炎時間に関する性能。
建築基準法に基づく不燃材料の指定又は認定を受けたもの、若しくは残炎時間が0秒であることとしている。
(h) 寸法精度(寸法測定)
パネルの長さ、高さ、厚さ、平面形状及び平たん度の寸法精度。
JIS A 1450では、製品の構成上必要ない寸法(水平方向に可とう性や調整代をもつ場合のパネル要素の長さの寸法精度等)には寸法測定を適用しないことが規定されているが、施工性及び部分的な配置換えを考慮した寸法精度としている。
「標仕」20.2.2(2)(オ) では、寸法精度は、特記による。特記がなければ、次によると規定されている。
1) パネルの長さの精度は、各辺の長さが500mmを超える場合は、± 0.1%以内、500mm以下の場合は、± 0.5mm以内とする。
2) パネルの平面角度は、各辺の長さが500mmを超える場合は、± 0.1%以内、500mm以下の場合は、± 0.5mm以内とする。
3) フリーアクセスフロア高さは、± 0.5mm以内とする。ただし、高さ調節機能のあるものは、この限りでない。
(i) フリーアクセスフロアについては、「標仕」で要求する品質を満たすものとして、(-社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4 (5)参照)で評価した製品があるので参考にするとよい。
(3) 工 法
フリーアクセスフロアの工法は、種類により敷設方法が異なる。支柱等をスラブに固定するタイプと固定しないタイプの2種類がある。また、仕上げレベルの調整が可能な支柱調整式と調整の必要のない置敷式に分類される。
フリーアクセスフロアの種類について、表20.2.2に示す。
施工手順としては、墨出し後、支柱分離型はパネル下部の支柱等を敷設し、その上にパネルを配置し、表面材で仕上げる。支柱一体型は、パネルを直接配置し表面材で仕上げる。ただし、製品により取付け工法が異なるため、「標仕」では、工法は、フリーアクセスフロアの製造所の仕様によると規定している。
表20.2.2_フリーアクセスフロアの種類.jpeg
表20.2.2 フリーアクセスフロアの種類

20章 ユニット工事 2節ユニット工事 3.可動間仕切

20章 ユニット及びその他の工事
02節ユニット工事等
20.2.3 可動間仕切
(1) 材料等
「標仕」では、可動間仕切はJIS A 6512(可動間仕切)に基づき、構造形式による種類、構成基材の種類及び遮音性は、特記によると規定している。
可動間仕切の種類は、構造形式による種類と構成材の種類に大別される。
構造形式による種類には、構造と空間の仕切り方とがある。構造はスタッド式(内蔵・露出)、パネル式及びスタッドパネル式に区分され、空間の仕切り方として密閉形、開放形及び自立形に区分されている(表20.2.3及び表20.2.4参照)。
表20.2.3 構造形式による種類及び記号(JIS A 6512 : 2007)
表20.2.3_構造形式による種類及び記号(JIS A 6512).jpeg
表20.2.4 空間の仕切り方及びパネルの種類(JIS A 6512 : 2007)
表20.2.4_空間の仕切り方及びパネルの種類.jpeg
構成材の種類は、パネル、主な構成基材で区分されている。一般的に、アルミバーティションとかスチールパーティションと呼称する場合があるが、これはスタッドの材質を示していることが多い。パネル部には木質系、スチール系、ガラス系、アルミニウム合金系等がある(表20.2.5参照)。
表20.2.5 主な構成基材による種類及び記号(JIS A 6512 : 2007)
表20.2.5_主な構成基材による種類及び記号(JIS A 6512).jpg
(2) 性能等
(ア) JIS A 6512(可動間仕切)に規定されている品質の試験項目、記号及び性能を表20.2.6に、一般的な遮音性の目安を表20.2.7に示す。
表20.2.6 試験項目.記号及び性能(JIS A 6512 : 2007)
表20.2.6_試験項目,記号及び性能(JIS A 6512).jpg
表20.2.7 一般的な遮音性能の目安
表20.2.7_一般的な遮音性能の目安.jpg
(イ) パネルの裏打ち材、心材、充填材等の必要性や種類、程度は、遮音性、衝撃性、断熱性等の要求性能及び構造形式の種類や構成材の種類により異なる。「標仕」では、パネルの裏打ち材、心材、充填材等は、可動間仕切の製造所の仕様によると規定している。
(ウ) 一般的に、建具の寸法、形状は、可動間仕切のモジュール寸法に対応している。
(エ) 可動間仕切の製品については、(-社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4 (5)参照)において、「標仕」20.2.3の規定に基づき評価基準を定めて評価を行っているので参考にするとよい。
(3) 工 法
(ア) あと施エアンカーは、金属系アンカーと接着系アンカーとに大別される。可動間仕切に用いられるあと施エアンカーは、主に金属系アンカーである。あと施工アンカーの材料及び工法の詳細は、14.1.3 (1)(b)による。
(イ) 下地の不陸等により、可動間仕切と床、壁及び天井の取合い部分に隙間が生じると、空気の流入や光の漏れが生じたり、遮音性の低下や空調機器等による振動音の発生等の不具合が生じるため、「標仕」20.2.3(3)(イ) では必要に応じてパッキン材を設けるよう規定している。
(ウ) 天井に間仕切を固定する場合は、間仕切の位置に天井下地の野縁を設けて固定する方法が一般的であるが、天井下地の補強の要否、取付け方法、取付け間隔等については、不具合が生じないよう十分に配慮する。

20章 ユニット工事 2節ユニット工事 4.移動間仕切

20章 ユニット及びその他の工事
02節ユニット工事等
20.2.4 移動間仕切
(1) 材料等
移動間仕切は、移動を容易にするため吊り下げられた構造が一般的であるが、床部分に回転体を有し上部がガイドとなって下部で荷重を受けるもの、あるいは振れを防ぐためにハンガーレールで吊ってはいるが床にガイドを有するものなどもある。
「標仕」の適用範囲は、移動・格納のできる標準的な上吊りパネル式間仕切に適用するとしている。
現状では、移動間仕切に関する標準化された規格類はなく、製造所ごとのシステムにより構成された製品になっている。
移動間仕切は、一般的に間仕切の走行方法と操作方法により区分できる。各区分の内容と各部の名称を次に示す。
(a) 走行方向による区分
① 平行方向移動式
カーブを含みレールの方向のみ移動するもの。
② 二方向移動式
交差する二方向のレールに乗り換えて移動が可能なもの。乗換え移動については、ランナーの機構によるものがある。
(b) 操作方法による区分
① 手動式
パネルの移動を人力で行うもの。
② 電動式
パネルの移動が電力で行われ、自走するもの。
③ 部分電動式
パネル移動の一部のみ電力で行うもの。
(c) 各部名称
① ハンガーレール
パネルを移動するためのレールで、カーブ・交差・分岐・格納を含む。
② ランナー
間仕切パネルを吊り下げ、レールを走行する部分。
③ 間仕切パネル
ランナーより吊り下げられ、走行のできる分割された間仕切のパネル。
④ ドア兼用パネル
間仕切パネル自体が走行できるだけでなく、丁番・軸吊りによって他のパネル又は躯体側の他部位により支持され、ドアとしての開閉が可能なもの。
⑤ ドア付きパネル
間仕切パネル内に出入口を有するもの。
⑥ 密閉機構
間仕切として固定する場合に、床、天井、隣接する間仕切パネル及び躯体側の壁.柱との間を密着させ、遮音性を確保するための機構。
⑦ レール切換え部
ハンガーレールの一部で、ランナーの走行方向を切り換える部分で、ポイント・ターンテーブル・ロータリー等と称され、パネルの移動方法で切り換える手動式と、遠隔操作により切り換える電動式のものとがある。
⑧ 間仕切パネル格納部
間仕切パネルを不使用時に格納する部分で、引込みレール、格納ドア等を含む。
⑨ 壁付きガイド材
耐力壁、非耐力壁等の他の部位に設ける見切り材で、間仕切との取合いとなる部分。
⑩ ハンガーレール取付け下地
ハンガーレールを躯体若しくは躯体側の部分に取り付けるための構造材。
(2) 性能等
(ア) パネル圧接装置
パネルの圧接装置は、製造所により異なり、その操作方法も種々である。一般的に、パネル圧接装置の耐久性は、固定・解除の繰返し耐久試験等により評価されている。
(イ) 遮音性
移動間仕切の遮音性能は、JIS A 6512(可動間仕切)の遮音性試験に準拠し、試験方法は、JIS A 1416(実験室における建築部材の空気音遮断性能の測定方法)により、中心周波数500Hzの音の透過損失で評価している。移動間仕切の遮音性の目安を表20.2.8に示す。
表20.2.8 遮音性能の目安
表20.2.8_遮音性能の目安.jpg
(ウ) 移動間仕切の製品については、(-社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4 (5)参照)において、「標仕」20.2.4の規定に基づき評価基準を定めて評価を行っているので参考にするとよい。
(3) 工 法
(ア) 下地補強材は、所要の性能を満足するよう堅固な取付けが求められる。下地補強材を取り付けるときの所要の性能は特記によるが、特記がなければ、取付け全重量の5倍以上の荷重に対して、耐力及び変形量が使用上支障のないように補強する。
(イ) ハンガーレールを躯体又は下地補強材へ固定するときにあと施エアンカー類を用いる場合は、「標仕」では、14.1.3(1)の工法により、施工後の確認は、機械的簡易引抜試験機による引張試験により、設計用引張強度に等しい荷重に対して、過大な変位を起こさず耐えることを確認することとされているので注意する。

20章 その他の工事 5.トイレブース

20章 ユニット及びその他の工事
02節ユニット工事等
20.2.5 トイレブース
(1) 材料
(ア) パネルの主要構成基材は、JIS A 6512(可動間仕切)に基づく材料とすることが定められている(20.2.3 (1)参照)。
(イ) 笠木、脚部、壁見切り金物、頭つなぎ等の構造金物は、耐食性のあるものとし、ステンレス材(SUS304程度)又はアルミニウム材が一般的であるが、脚部は耐衝撃性を考慮して、ステンレス材と規定している。
(ウ) ドアエッジの材質は、特記による。特記がなければ、トイレブースの製造所の仕様によると規定している。
(エ) ヒンジ等の付属金物は、 トイレブースの製造所の仕様による。丁番式や中心吊り式、自閉するものなどがある。
(2) 性能等
JIS A 4702 (ドアセット)による開閉繰返し試験の合格基準は、開閉回数10万回で開閉に異常がなく、緩みがない等使用上支障がないこととされている。
(3) 加工及び組立
小口ヘの防水処理は、 トイレ清掃時の水掛りに対してパネル小口からの吸水を防止するための防水塗装や防水テープ処理等が挙げられる。
(4) トイレブースの製品については、(-社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4 (5)参照)において、「標仕」20.2.5の規定に基づき評価基準を定めて評価を行っているので参考にするとよい。

20章 その他の工事 6.手すり

20章 ユニット及びその他の工事
02節ユニット工事等
20.2.6 手すり
(1) 材料・仕上げ
(ア) 手すりに用いる金属材料は、多くの場合、鋼、ステンレスあるいはアルミニウム合金である。
(イ) アルミニウム合金の表面処理の種別は、「標仕」14.2.1 (1)により、設計図書に特記される。
(ウ) 鋼製品の塗装
鋼製品の錆止め塗装は、工場で行われることが多いが、塗料の種別及び適用箇所は、「標仕」表18.3.1による。
(エ) BL認定部品
(-財)ベターリビングでは、住宅の廊下・バルコニー・窓等に使用する手すりについて基準を設け、強度等各種の試験に合格したものをBL認定部品としている。
(2) 工法
(ア) 手すりと手すり支柱又は手すり子との取合いは、鋼製以外は通常小ねじ留めにする。安全のため、小ねじは、手すりの中に入れて留めるものが多い(図20.2.1参照)。ステンレスは溶接する場合もあるが、溶接部の取合いの仕上げには注意する必要がある。
図20.2.1_手すりと手すり支柱又は手すり子との取合い.jpg
図20.2.1 手すりと手すり支柱又は手すり子との取合い
(イ) 外部に設置する手すりで、風による微振動や熱伸縮などの影響を受ける部位にボルトや小ねじを使用する場合は、緩まない方法にて取り付けるよう注意する。
一般的な手すりの例を図20.2.2に示す。
 図20.2.2_一般的な手すりの例(手すり子タイプ).jpeg
 図20.2.2_一般的な手すりの例(パネルタイプ).jpeg
図20.2.2 一般的な手すりの例
(ウ) 溶接は14章3節による。
(エ) 手すりが長くなる場合には、金属の温度変化による部材の伸縮を考慮して、伸縮調整部を設けるのがよい(通常5~10m間隔程度)。伸縮調整部を設ける間隔及び伸縮調整幅は、使用する金属の膨張係数を考慮して決めるのが望ましい。
部材伸縮の目安(温度差40℃の場合)は、鋼は 1m当たり0.5mm程度、アルミニウム合金は 1m当たり1.0mm程度である。
伸縮調整部の例を図20.2.3に示す。
図20.2.3_伸縮調整部(壁付きの場合).jpeg
図20.2.3_伸縮調整部(一般の場合).jpeg
図20.2.3 伸縮調整部
(オ) 手すりの小口は、安全性、美観等を考慮して、同材でふたをしたりするが、共色(ともいろ)の樹脂製キャップが用いられることもある。その場合は、取換えが可能な納まり及び形状とする。
(カ) 手すり支柱は、コンクリートあるいはモルタルの中に入る部分であっても、錆止めの処置を行うことが望ましい。
なお、モルタル充填に際して、こて押え等が不十分になりがちなため、充填を確実に行う。
取付け例を図20.2.4に示す。
図20.2.4_手すりの取付け.jpg
図20.2.4 手すりの取付け

20章 その他の工事 7.階段滑り止め

20章 ユニット及びその他の工事
02節ユニット工事等
20.2.7 階段滑り止め
(1) 材料
(ア) 階段滑り止めには、金属と合成樹脂又は合成ゴムを組み合わせたもの、タイルあるいは金属を主体としたものがある。
(イ) 金属の種類は、通常ステンレス、黄錆、アルミニウム、鉄である。その踏面には溝があり、溝にはめ込む滑り止め材の形状はタイヤ形等があり、材質はゴム、合成樹脂、カーボランダム等がある。
金属部分は、押出し成形材と板材を曲げ加工したものがある。また、足付き形のものと接着形のものとがあり、それぞれ取付け工法が異なる。
(ウ) タイヤ形の滑り止め材は、取付け後収縮しやすいため、図20.2.5のような収縮を防止する突起等があるものを使用するのがよい。
図20.2.5_収縮防止の例.jpg
図20.2.5 収縮防止の例
(エ) 階段滑り止めの例を、表20.2.9に示す。
表20.2.9 階段滑り止めの例
表20.2.9_階段滑り止めの例.jpg
(オ) 取付け長さは、階段と手すりの取合い等によるが、通常は階段の全幅とする。
(2) 取付け
(ア) 接着工法
(a) 接着剤のみで取り付ける場合には、はく離する例が多いため、「標仕」20.2.7(2)(ア) では、接着剤及び小ねじを用いて取り付けることとされている。
(b) 取付け方法の例を、図20.2.6に示す。
図20.2.6_階段滑り止め取付けの例(接着工法)(モルタルに直付け).jpg
図20.2.6_階段滑り止め取付けの例(接着工法)(鋼板に直付け).jpg
図20.2.6_階段滑り止め取付けの例(接着工法)(埋込み式).jpg
図20.2.6_階段滑り止め取付けの例(接着工法)(.jpg
図20.2.6 階段滑り止め取付けの例(接着工法)
(c) 取付けに際しては次の事項に注意する。
① 接着面は、十分平滑にし、下地乾燥後、油、レイタンス、ほこり等接着の妨げとなるものを除去する。
② 接着剤は、原則としてエポキシ樹脂系のものを用いる。
③ 接着の際は、すり合わせるようにしながら押し付け、小ねじを用いて取り付け、取付け後は、接着剤が硬化するまで押さえておく。
④ 施工場所が、施工中及び施工後、気温が 5℃以下になると予想される場合は、施工を行わない。ただし、採暖等の養生を行う場合は、この限りでない。
(イ) 埋込み工法
アンカーを用い、両端を押さえて間隔 300mm程度に堅固に取り付ける。
取付け方法の例を、図20.2.7に示す。
図20.2.7_階段滑り止め取付けの例(埋込み工法)(イ).jpg
    図20.2.7_階段滑り止め取付けの例(埋込み工法)(イ)アンカー取付け方法.jpg
図20.2.7_階段滑り止め取付けの例(埋込み工法)(ロ).jpg
    図20.2.7_階段滑り止め取付けの例(埋込み工法)アンカー取付け方法.jpg
図20.2.7 階段滑り止め取付けの例(埋込み工法)
(3) 取付け中は、他の作業のための通路を確保するとともに、取付け後の養生を確実に行うため、接着工法では一時通行を禁止する場合もある。

20章 その他の工事 8.床目地棒

20章 ユニット及びその他の工事
02節ユニット工事等
20.2.8 床目地棒
(1) 「標仕」では、材質はステンレス製、厚さ5 ~ 6mm、高さ12mmを標準と規定している。床目地棒の形状には、種々のものがあるが、図20.2.8にその例を示す。3 × 9(mm)、3 ×12(mm)、4 ×12(mm)等、断面の小さいものも市販されている。また、床目地棒の長さは、通常1.820mmである。
図20.2.8_床目地棒の断面の例.jpg
図20.2.8 床目地棒の断面の例
(2) 床目地棒は、異種の床仕上げの見切りとして取り付けるものである。
(3) 取付けは、図20.2.9のようにアンカーをモルタルで固定する。
図20.2.9_床目地棒の取付け例.jpg
図20.2.9 床目地棒の取付け例

20章 その他の工事 9.黒板及びホワイトボード

20章 ユニット及びその他の工事
02節ユニット工事等
20.2.9 黒板及びホワイトボード
(1) 「標仕」20.2.9(1)では、黒板は、全国的な市場性を踏まえ、JIS以外の製品も「特記」で対応できるように規定している。特記がなければ、JIS S 6007(黒板)に基づき、区分は焼付け、種類は鋼製黒板又はほうろう黒板とし、適用は特記によると規定している。
なお、「標仕」では、黒板の枠はアルミニウム製とし、付属物としてチョーク溝、チョーク入れ及びチョーク粉入付きと規定している。
(2) 「標仕」20.2.9(2)では、ホワイトボードは、特記によると規定している。
これは、ほうろう白板のJIS認証取得者が存在しないためである。
なお、全国黒板工業連盟では国際対応規格ISO 28762を基に、黒板とほうろう白板の規格を統合した「黒板・白板連盟基準」を作成し、これに適合した製品には「品質管理マーク」を表示している。

20章 その他の工事 10.鏡

20章 ユニット及びその他の工事
02節ユニット工事等
20.2.10 鏡
(1) 「標仕」20.2.10(1)に規定している鏡は、周囲に面取りの加工がしてあり、縁のない防湿形である。鏡のガラスは、JIS R 3220(鏡材)に基づくものと規定されており、厚さは特記がなければ、5 mmである。
しかし、程度のよいものでは、ステンレス製の縁付きとする設計例が多い。
(2) 取り付ける下地は、タイル張り、モルタル塗り等の堅固な下地が多く、鏡を強く 留め付けると後になって破損しやすいため、ゴム座等の緩衝材を用いる必要がある。