20章 ユニット工事 3節 プレキャストコンクリート工事

20章 ユニット及びその他の工事
03節 プレキャストコンクリート工事
20.3.1 適用範囲
(a) 「標仕」20.3.1で定められているものは、簡易な製品だけであり、プレキャスト鉄筋コンクリート造等の製品については別に仕様を定める必要がある。
(b) 作業の流れを図20.3.1に示す。
図20.3.1_プレキャストコンクリート工事の作業の流れ.jpeg
図20.3.1 プレキャストコンクリート工事の作業の流れ
(c) 製作工場の決定
この種の製品の製作工場は、通常小規模なところが多いが、製品の量、難易度等に応じて、製作工場の規模等を考慮する必要がある。
(d) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
① 工程表(製作図の作成、製作、取付け、完了等の時期)
② コンクリートの所要強度、材料及び調合
③ 鉄筋、鉄線、溶接金網の規格等
④ 型枠の材料及び組み方
⑤ 養生方法(コンクリート、製品)
⑥ 工場現場での取付け工法
⑦ 構造計算書・その他
⑧ 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等
(e) 製作図には鉄筋、取付け金物等も記入し、コンクリートの充填、取付け等に無理のないようにする。
(f) 数多く製作する場合で、特に良い仕上り面を必要とするときは、コンクリートの試し練りを行い、試作をして仕上り面を検討する。
20.3.2 材 料
(a) 「標仕」20.3.2では、コンクリートは、「標仕」表6.2.1のI類又はⅡ類としている。また、コンクリートの材料は、「標仕」6章3節によることとしている。
(b) 「標仕」20.3.2では、鉄筋は、「標仕」5章2節によることとしている。また、補強鉄線は、該当するJISによることとしている。
20.3.3 製 作
(a) コンクリートの調合
コンクリートの調合は、「標仕」20.3.3(a)を満足するコンクリートの調合計画書を作成する。スランプは「標仕」20.3.3(a)(2)では12cm以下としている。
(b) 型枠の組立
型枠は、「標仕」20.3.3(b)及び(c)によるほか、形状寸法が正しく保持されて脱型が容易にでき、強度が十分なものとする。
(c) 鉄筋の組立
組立に当たっては、製作図を作成し正しく加工し組み立てる。
(d) コンクリートの打込み
(1) コンクリートの打込みに先立ち、型枠や取付け金物類についても位置、固定方法について確認を行う。
(2) コンクリートの打込みに先立ち、型枠の内部を清掃する。
(3) コンクリートは材料が分離しないよう運搬する。
(4) コンクリート打込みには振動機を適切に使う必要があるが、細部については手作業により確実に充填及び締固めを行う。
(e) 取付け金物
取付け金物は、鉄筋に結束するだけでは、コンクリート打込み中に位置がずれてしまうことがあるので、型枠に補助材等を取り付けて確実に固定する。
20.3.4 養生その他
(a) 打込み後の養生は、必要に応じて蒸気養生等とする。
(b) 製品の保管には支持台を用いるが、十分な強度の発現を確認するまでは、積み上げないようにする。
(c) 製品は、運搬中に損傷する例が多いので、適切な養生等により衝撃を避け、無理な積込み、積降ろしをしないようにする。

20章 ユニット工事 4節 間知石及びコンクリート間知ブロック積み

20章 ユニット及びその他の工事
04節 間知石及びコンクリート間知ブロック積み
20.4.1 適用範囲
(a) 「標仕」では、適用範囲を「比較的土圧等の小さい場合」の練積みとしており、次のような点に留意する必要がある。
(1) この節は、一般的な建築工事に伴う比較的小規模で土圧等が小さく、かつ、建築基準法や宅地造成等規制法(以下「宅造法」)の適用を受けない高さ2m以下の擁壁を対象としている。
なお、配置、断面寸法等については特記されていることが前提である。
(2) 高さ2mを超える擁壁(鉄筋コンクリート造、練積み造等)については、平成 12年建設省告示第1449号で宅地造成等規制法施行令と関連させ、構造計算等に関する技術基準が定められているので、設計者は、構造安全性について検討し、設計図書を作成(特記)しなければならない。
(3) 宅造法における擁壁の設置義務は、高さが2mを超える切土、1mを超える盛土及び2mを超える切・盛土の場合としている。ただし、切土で勾配が緩い場合等は除外されている。
(4) これらのことから、高さが2m以下の擁壁であっても、背面地盤が盛土の場合や地表面に大きな積載荷重が加わる場合等は、土圧が大きくなるので、必要に応じて安全性の検討を行い設計図書を作成する必要がある。
なお、安全性等の検討に関する参考文献としては,(-社)日本建築学会「建築基礎構造設計指針」等がある。
(b) 作業の流れを図20.4.1に示す。
図20.4.1_間知石及びコンクリート間知ブロック積み工事の作業の流れ.jpeg
図20.4.1 間知石及びコンクリート間知ブロック積み工事の作業の流れ
(c) 一般事項
(1) がけ崩れ又は土砂の流出を生じるおそれのある敷地は、災害防止のため法面の保護、擁壁、排水施設等が必要になる。敷地の造成に際しては、宅造法等の規制を受ける場合があり、擁壁についても同法に構造等が定められている((a)参照)。
(2) 擁壁各部の名称を図20.4.2に示す。
図20.4.2_擁壁各部名称.jpeg
図20.4.2 擁壁各部名称
(3) 宅地造成等規制法施行令の抜粋を次に示す。
宅地造成等規制法施行令
(昭和37年1月30日 政令第16号 最終改正平成23年12月26日 )
第6条 (擁壁の設置に関する技術的基準)
法第9条第1項の政令で定める技術的基準のうち擁壁の設置に関するものは、次のとおりとする。
一 切土又は盛土(第3条第四号の切土又は盛土を除く。)をした土地の部分の生ずる崖面で次に掲げる崖面以外のものには擁壁を設置し、これらの崖面を覆うこと。
イ.切土をした土地の部分に生ずる崖又は崖の部分であって、その土質が別表第1左欄に掲げるものに該当し、かつ、次のいずれかに該当するものの崖面
(1) その土質に応じ勾配が別表第1中欄の角度以下のもの
(2) その土質に応じ勾配が別表第1中欄の角度を超え、同表右欄の角度以下のもの
(その上端から下方に垂直距離5m以内の部分に限る。)
ロ.土質試験その他の調査又は試験に基づき地盤の安定計算をした結果崖の安定を保っために擁壁の設置が必要でないことが確かめられた崖面
二 前号の擁壁は、鉄筋コンクリート造、無筋コンクリート造又は間知石練積み造その他の練積み造のものとすること。
2 前項第一号イ(1)に該当する崖の部分により上下に分離された崖の部分がある場合における同号イ(2)の規定の適用については、同号イ(1)に該当する粒の部分は存在せず、その上下の崖の部分は連続しているものとみなす。
第8条 (練積み造の擁壁の構造)
第6条の規定による間知石練積み造その他の練積み造の擁整の構造は、次に定めるところによらなければならない。
一 擁壁の勾配、高さ及び下端部分の厚さ(第1条第5項に規定する擁壁の前面の下端以下の擁壁の部分の厚さをいう。別表第4において同じ。)が、崖の土質に応じ別表第4に定める基準に適合し、かつ、擁壁の上端の厚さが、擁壁の設置される地盤の土質が、同表左欄の第一種又は第二種に該当するものであるときは40cm以上、その他のものであるときは70cm以上であること。
二 石材その他の組積材は、控え長さを30cm以上とし、コンクリートを用いて一体の擁壁とし、かつ、その背面に栗石、砂利又は砂利混じり砂で有効に裏込めすること。
三 前2号に定めるところによっても、崖の状況等によりはらみ出しその他の破壊のおそれがあるときは、適当な間隔に鉄筋コンクリート造の控え堅を設ける等必要な措置を講ずること。
四 擁整を岩盤に接着して設置する場合を除き、擁壁の前面の根入れ深さは、擁壁の設置される地盤の土質が別表第4左欄の第一種又は第二種に該当するものであるときは擁壁の高さの15/100(その値が35cmに満たないときは、35cm)以上、その他のものであるときは擁壁の高さの20/100(その値が45cmに満たないときは、45cm)以上としかつ、擁壁には、一体の鉄筋コンクリート造又は無筋コンクリート造で、擁壁の滑り及び沈下に対して安全である基礎を設けること。(別表第4省略)
第10条(擁壁の水抜穴)
第6条の規定による擁壁には、その裏面の排水を良くするため、壁面の面積 3m2以内ごとに少なくとも1個の内径が7.5cm以上の陶管その他これに類する耐水性の材料を用いた水抜穴を設け、かつ、擁壁の裏面の水抜穴の周辺その他必要な場所には、砂利その他の資材を用いて透水層を設けなければならない。
別表第1 (第6条関係)
別表第1(第6条関係).jpeg
宅地造成等規制法施行令
20.4.2 材 料
(a) 間知石
(1) 間知石については、JIS A 5003(石材)でその品質が定められているが、市販品はこの規定に合わないものが多い。そのため「標仕」20.4.2 (a)では、JIS A 5003を適用しないで市販品を使用できるようにしている。両者の最も相違するのは控え長さで、JISでは面の最小辺の1.5倍としているのに対して「標仕」では1.2倍以上としている。
(2) 間知石の材質は、花こう岩が多く、凝灰岩、安山岩が使われることもある。また、面は割肌〈野面〉が一般的である。
(3) 合端の仕上げには、げんのう、こやすけ、グラインダー等を用いる。
(b) コンクリート間知ブロック
JIS A 5371(プレキャスト無筋コンクリート製品)推奨仕様D-1[積みブロック]の抜粋を次に示す。
なお、間知ブロックの寸法等については、製造所等によるばらつきが大きいため、JISでは推奨仕様としている。
JIS A 5371: 2010
推奨仕様D-1 積みブロック
D-1.2 種 類
積みブロックの種類は、質量区分及び面の形状によって、推奨仕様D-1表1のとおり区分する。
推奨仕様D-1 表1- 積みブロックの種類
推奨仕様D-1表1-積みブロックの種類.jpeg
D-1.3 性 能
積みブロックは、D-1.5に規定する圧縮強度試験を行い、性能の保証となる圧縮強度が所定の材齢において、18N/mm2以上でなければならない(D-1.5省略)。
D-1.4 形状、寸法及び寸法の許容差
積みブロックの形状、寸法及び寸法の許容差は、推奨仕様D-1 表2による。
積みブロックの形状、寸法及び許容差.jpeg
推奨仕様 D-1 表2-積みブロックの形状、寸法及び寸法の許容差
推奨仕様D-1表2-積みブロックの形状,寸法及び寸法の許容差.jpg
JISA 5371: 2010
20.4.3 工 法
(a) 間知石積み
(1) 遣方(ちょうはり)は、石積みの前面に法遣方を設け段割りをつける(図20.4.3参照)。
図20.4.3_ちょうはり(遣方)の概要.jpeg
図20.4.3 ちょうはり(遣方)の概要
(2) 間知石及びかい石は使用前に泥土等を洗い落としておく。
(3) 根石は石積みの基準になるので、遣方に正しく合わせ、すわりよく加工して隣接石に合端を密着させ、かい石を確実に施工する。
(4) 谷積み(練積みの場合)は図20.4.4及び5並びに次の事項により行う。
図20.4.4_谷罪み.jpeg
図20.4.4 谷積み
図20.4.5_練積み.jpeg
図20.4.5 錬積み
(i) 遣方の段割りによって、水平水糸で石の先端を合わせ、谷の寸法をできるだけそろえるように配置する。その際、浮き石、崩壊のおそれのある部位は、事前に取り除く。
谷の不ぞろいは石の大小で調整し、高さの調整は3段以内で行うようにする。
(ii) 間知石はすわりをみて選定し、合端はげんのう払いを行い、げんのうでから打ちして隣接石に密着させ、面を正しく遣方に合わせ、法面がはみ出さないようにする。
(iii) かい石を堅固にかい込み,法面に直角に据える。
(iv) コンクリートの充填前に適宜散水して、1段ごとに胴込め及び裏込めコンクリートを充填する。その際、間知石等の間から、モルタル分が出てくるまで、バイブレーターで十分締め固める。また、コンクリートは、法肩側からシュートを用いて打ち込むことも多いが、生コン車を法肩一杯まで近寄せないよう、更にシュートを保持している作業員が法肩を乱さないよう留意する。
(v) 1日の積上げ高さは 1.2m以内とし、工事半ばの積終わりは段形とするよう「標仕」20.4.3(c)(7)に定められている。
(vi) 充填したコンクリートは、シート等で覆い、適宜散水して養生を行う。
(ⅶ) 水抜きは、設計図書に示す位置に、適宜勾配を付けて石積みを貫通し、前面は石面より30mm程度突き出し、裏込め側はコンクリート面に合わせて設ける。
また、水抜き管の元部に土砂流出防止マット200 × 200 (mm)や、流出防止キャップを設け、0.1 m2程度の砂利又は砕石をおく。
なお、「標仕」20.4.3(c)(11) の水抜きは、径50mm以上の硬質ポリ塩化ビニル管としているが、宅造法では内径7.5cm以上の陶管等としているので、宅造法の適用を受ける場合は注意が必要である。
(ⅷ) 天端均しコンクリートは、裏込めコンクリートと同時に施工して、間知石等の仕上げ面を天端コンクリートにたまった土砂や雨水等により汚さないように、適宜勾配を付ける。
(ix) 裏込め側の型枠を取り外し、埋戻しと併行して砂利等で透水層を設ける。
(x) 必要に応じて目塗りを見ばえよく行う。目塗りとは、間知石の合端に沿ってモルタルを太く塗り付けることをいう。
(5) 布積み
図20.4.6及び次により行う。
図20.4.6_布積み.jpeg
図20.4.6 布積み
(i) 間知石の加工及び組積の方法は、谷積みに準じて行う。
(ii) 横目地は、傾斜、湾曲等しないようにし、縦目地はいも目地にならないようにする。
(b) コンクリート間知ブロック積み
(1) 間知ブロック積みの組積方法は、間知石の練積みと同様に行う。
(2) ブロック位置を調整する場合、目地に合わせる場合等の目的で、げんのうでたたくとブロックが破損するので金てこ〈バール〉、鉄棒等を使用する。
20.4.4 養 生
(a) 夏期で直射日光がコンクリート面に当たるような場合等は、コンクリート面をシート等で覆い、適宜散水養生を行う。また、冬期で気温が 0℃以下になると予想される場合は、コンクリート露出面及び隙間を、 シート等で覆う。
(b) 硬化初期のコンクリートが、有害な振動や外力による悪影響を受けないようにする。特に、施工箇所付近での重機作業に伴う振動等に対しては、コンクリートに影響を与えないように十分配慮する。

20章 ユニット工事 5節 敷地境界石標

20章 ユニット及びその他の工事
5節 敷地境界石標
20.5.1 一般事項
(a) 「標仕」では規定されていないが、敷地境界の確認は重要事項であるため、敷地境界石標の設置について、次に示す。
(b) 石標を設置する場合には、境界がすべて確定しているかどうかを財産管理部局の管理責任者に確かめる必要がある。
境界が確定していない場合には、財産管理部局の管理責任者に、確定してもらわなければならない。
なお、土地の境界に対する主な法令には、次のようなものがある。
(1) 民法(第2編 物権 第3章 所有権)
(2) 国有財産法(第3章の2 立入り及び境界確定)
(3) 国有財産法施行令(第2章の2 立入り及び境界確定)
(4) 各省庁の所管国有財産取扱規則(例えば、国土交通省所管国有財産取扱規則第2章の2 境界の設定)
(c) 石標設置のための立会い
石標を設置する場合は、あらかじめ財産管理部局の管理責任者及び隣地所有者と十分打合せのうえ日時を定め、監督職員を含めて関係者の立会いを受けて、境界点の確認をしなければならない。
なお、立会いを受ける関係者とは、次の者をいう。
(i) 財産管理部局の管理責任者
(ii) 隣地所有者
(iii) 道路管理者
(iv) 監督職員
(v) 受注者等
隣地所有者は複数の場合もある。また、隣地が道路の場合は、道路管理者の立会いが必要であるので、連絡もれのないようにしなければならない。
立会いには、石標の位置、材質等を記載した図書を作成し、立会者の署名なつ印を受け、立会い状況の写真を写しておき、相互に保管して、将来のトラブルを防止する必要がある。
(d) 石標を設置するには、隣地に立ち入る必要があるので、あらかじめ了解を得ておかなければならない。隣地所有者の了解を得られない場合は、図20.5.1(ト) のように隣地に石標が食い込まないようにし、また、了解を得た場合は、図20.5.1(イ)のように設置する。
また、作業に当たっては、隣地所有者に障害を与え、賠償請求を受けることのないように十分に配慮する。
(e) 道路等で、石標が突出していて危険な場合には、路面等と平らにする。
20.5.2 材 料
(a) 境界石標には、花こう岩類の石材とコンクリートブロック製の既製品があるが、一般的には、コンクリートブロック製の既製品が用いられる。
(b) 花こう岩類の石材を用いる場合の形状・寸法の例を図20.5.1に示す。また、文字、記号等についても、図20.5.1を参考とする。石標の側面にある数字は、石標の番号であり、財産管理部局の責任者と打ち合わせ、必要がなければ省略してよい。
既製品を用いる場合は、なるべく図20.5.1に準じた記号のあるものを用いるようにする。
図20.5.1_石標配置及び詳細図の例.jpeg
図20.5.1 石標配置及び詳細図の例
20.5.3 工 法
石標の設置は、根切り底を十分に突き締めたうえ、厚さ60mmの砂利地業を行い、コンクリートで根巻きして建て込み、移動・沈下等のないよう確実に施工する。
なお、コンクリートの調合は、容積比でセメント1 :砂 2:砂利 4 程度とする。
参考文献
参考文献.jpg