特殊なコンクリート<br>海洋コンクリート

6.20 特殊なコンクリート/海洋コンクリート

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基本事項
 海水の作用を受けるコンクリート
 海水、海水滴又は飛来塩分の影響を受けるおそれのある
 部分のコンクリートに適用される。
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JASS5の区分によると塩害環境の区分は以下のようになる
有害環境の区分 
①重塩害環境
 ・飛来塩分量 25mD・D
 ・地域と立地条件の例
   日本海側、沖縄県全域等の地域で
   汀線から 20m 程度の範囲
②塩害環境
 ・飛来塩分量 13を超え25mD・D以下
 ・地域と立地条件の例
   日本海側、沖縄県全域等の地域で
   汀線から 20〜70m 程度の範囲
③準塩害環境
 ・飛来塩分量 4を超え13 mD・D以下
 ・地域と立地条件の例
   日本海側、沖縄県全域等の地域で
   汀線から 20〜150m 程度の範囲
※ mD・D:飛来塩分の単位
  mg/dm2/day、 1dm=0.1m
重塩害環境、又は塩害環境に位置する場合の塩害対策は、
次の①から③のいづれか、又はその組み合わせによる。
①コンクリートの表面に
 塩化物イオンの透過性が小さい表面皮膜材を施し、
 コンクリート中への塩化物イオンの浸透を抑制する。
②鉄筋を防錆処理する、又は耐食鉄筋を使用する。
③その他、特殊な鉄筋防食抑制方法を採用する。
なお、許容最大ひびわれ幅は 0.2mm
水セメント比の最大値は
塩害環境、準塩害環境で
普通ポルトランドセメントの場合、 45%及び 55%以下
高炉セメントB種の場合で、 50%及び 60%以下
かぶり厚さは
塩害環境では計画供用期間 短期の場合
 50 (普通 Fc=36、BB Fc=33)
 60 (普通 Fc=33、BB Fc=30)
準塩害環境では計画供用期間 短期の場合
 40 (普通 Fc=36、BB Fc=24)
 50 (普通 Fc=33、BB Fc=21)
供用期間 標準の場合
 40 (普通 Fc=36、BB Fc=33)
 50 (普通 Fc=33、BB Fc=30)
 60 (普通 Fc=30、BB Fc=24)
供用期間 長期の場合
 50 (普通 Fc=36、BB Fc=33)
 60 (普通 Fc=33、BB Fc=30)
その他、海洋の作用を直接うける場合の注意点
◆打継目は塩化物イオン等の侵入において弱点となるため、
 干満部に打継目を設けるのはできるだけ避け、
 最高潮位から上 60 ㎝最低潮位から下 60㎝ との間の
 干満部には打継目を設けないように
 連続作業でコンクリートを打ち込む。
◆海水が凍結融解作用に及ぼす影響(メカニズム)
 については多くの諸説があり、現在もなされているが、
 海水がコンクリートに浸透して凍結融解作用が生じると、
 淡水の場合よりも凍害の劣化が激しくなること
 が知られている。
◆海水中の硫酸マグネシウム ( MgSO4 )は、
 セメントの水和生成物である
 水酸化カルシウム ( Ca(OH)2 )と反応して、
 膨張性の二水石こうと水酸化マグネシウム ( Mg(OH)2 )を生成する。
 さらに、二水石こうの一部は
 セメント中のアルミン酸三カルシウム ( C3A )と反応して
 エトリンガイドを生成し、
 そのエトリンガイドが吸水膨張することで、
 コンクリートが破壊する。
JASS5では
 セメント種類・塩害区分に応じて、
 土木学会示方書では
 現場施工か工場製品か等の施工条件・環境区分に応じて、
 水セメント比の最大値を定めている。
 この規定によれば、塩害環境下である飛沫帯では
 45%以下とする必要がある。
 ただし、土木学会示方書では、
 実績、研究成果により確かめられたものは
 最大の水セメント比を 5~10%大きくしてもよいとあり、
 55%とすることを認めている。
◆コンクリート中の鋼材腐食は、
 海水に含まれる塩化物イオン( CL- )が
 コンクリート中に侵入し、
 鋼材位置の塩化物イオン濃度が
 ある濃度以上に達したときに、
 鋼材周囲の不動態皮膜が破壊されることで開始する。
 つぎに、コンクリートの体積膨張によるひび割れは、
 海水に含まれる硫酸マグネシウム ( MgSO4)が、
 セメントの水和生成物である水酸化カルシウム ( Ca(OH)2 )と反応して、
  膨張性の石こうの結晶水酸化マグネシウム ( Mg(OH)2 )を生成し、
 さらに石こうの一部がセメント中のアルミン酸三カルシウム ( C3A )
 と反応して膨張性のエトリンガイドを生成することで生じる。
 つまり、鋼材防食の原因物質は、
 硫酸マグネシウム ( MgSO4)という化学物質である。
 コンクリートの多孔質化は、海水に含まれる ( MgCl2 )が
 セメントの水和生成物である水酸化カルシウム( Ca(OH)2 )
 と反応して、水溶性の塩化カルシウムを形成することで生じる。
 つまり、( MgCl2 )が該当する化学物質である。

繊維補強コンクリート<br> (Fiber Reinforced Concrete)FRC

繊維補強コンクリート

(Fiber Reinforced Concrete)FRC
合成繊維や鋼繊維などを
コンクリートに複合したコンクリート材。
連続繊維を織物として巻き付けたり貼り付けたりして補強されたものを「連続繊維補強コンクリート」、
数ミリから数センチに短く切った短繊維を混入して補強されたものを「短繊維補強コンクリート」という。
特徴
コンクリートには圧縮力に強く引張力に弱く、また延性に極めて乏しいという特性がある。
また硬化の進行や乾燥などにより体積が収縮する。
これらコンクリートの持つ本来の性質や、外力によって与えられた引張力によってコンクリートに変形が生じてひび割れを発生、その後ひび割れ幅が拡大し、水分、塩分などの浸入によって内部の鉄筋の腐食を生じるなどの問題が発生する。
繊維補強コンクリートは、コンクリートにひび割れが発生した後、補強繊維がひび割れ面間をつなぎとめることによって引張力を制御するものである。
プレストレスト・コンクリートはあらかじめ与えられた圧縮力によって引張力によるひび割れの発生を抑制するものであるが、想定以上のひずみ(変形)によってひび割れが発生してしまった場合には効果が発揮されないのに対し、繊維補強コンクリートはひび割れ発生後にその効果を発揮する点が特徴である。
鉄筋コンクリートも引張力によるひび割れを抑制するが、繊維補強コンクリートは、連続繊維による補強ではコンクリートの表面、短繊維による補強では繊維がコンクリート中に均一に存在するために鉄筋の外側を覆うかぶりコンクリートの剥落を抑制することができる。ただし他の特殊コンクリートと同様、コストもそれなりにかかる。
繊維補強コンクリートはひび割れが発生した後にその効果を発揮するため、トンネルや橋脚、橋梁など土木建造物の剥落防止対策や、ひび割れの抑制などを目的に用いられることが多い。
さらに、補強繊維の使用量を多くすると鉄筋、鉄骨などで補強されたコンクリートに匹敵する、場合によっては凌駕する最大応力や変形性能を示すようになり、繊維補強コンクリートが鉄筋コンクリートの代替として用いられることもある。
鉄筋コンクリートは鉄筋をかご状に組み立てて製造されるため、鉄筋の加工(切断、曲げ、結束、溶接)等に多くの工数を要する。
鉄筋コンクリートと同等、またはそれ以上の性能を示す短繊維補強コンクリートを用いると、鉄筋そのもの、および鉄筋の加工工程が省略できることによってコストや工期の大幅短縮が図れる点は大きな特徴である。
内装、外装に用いられる左官モルタルには、だれ防止の目的でごく少量の短繊維が混入されているものがある。昔の土壁などにはしばしば短く切った藁を混ぜた粘土が用いられていたが、材料は違えども、短繊維補強コンクリートと同様の考え方に基づくものであるといえよう。
繊維補強コンクリートは一般的に引張力に抗することを目的として使用されることが多いが、コンクリートの打設後に生じるブリージングや磨耗を抑制する効果も期待できる。
補強繊維
補強繊維としては、鋼(鉄)を削ったり引き伸ばしたりして製造される鋼繊維や、炭素繊維、アラミド繊維、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン繊維、ビニロン繊維などの、比較的強度、弾性率の高い合成繊維がよく使用される。
補強繊維の使用量は目的によって様々である。連続繊維補強コンクリートにおいては、織物状やシート状に成形した連続繊維をコンクリート部材表面に貼り付ける方法が一般的である。
そのため、目的とする補強の方向と繊維方向が揃うように貼り付けなければ設計どおりの補強効果を得ることができない。また貼り付ける織物やシートの密度の変更や、枚数の増減などによって、補強の度合いを変えることができる。連続繊維の貼り付けには、一般的にエポキシ系接着剤などが用いられる。 一方短繊維補強コンクリートにおいては、製造するコンクリート製品や部材の成形方法に影響を受けるが、原理的に繊維方向が均一になりにくく、全方向の補強が可能である。そのため、特定方向のみの補強では十分でない用途において有効な補強方法である。
反面、連続繊維による補強に比べて特定方向への応力に対して補強効率が低いともいえる。短繊維補強コンクリートにおける補強繊維の添加量も、目的によって様々である。一般的には最大3体積%程度が上限とされるが、これは、短繊維を混入量が増加することによってフレッシュコンクリートの流動性が低下していくためである。ただし、ガラス繊維補強セメントやスレートなどのように特殊な製造方法によって3体積%を超える短繊維が添加されている製品も存在する。
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超高強度繊維補強コンクリート
土木学会より「超高強度繊維補強コンクリートの設計・施工指針 (案) 」が発刊されている。
超高強度繊維補強コンクリートは, 圧縮強度150N/mm2以上, 引張強度が5N/mm2以上と超高強度であり, さらに耐久性も通常のコンクリートに比べ格段に優れた材料である。指針案には超高強度繊維補強コンクリートを用いた構造物の構造性能, 耐久性の照査方法および施工に関する諸規定が示されている。
構造性能の照査においては, 超高強度繊維補強コンクリートの引張特性を考慮する点が, また耐久性照査においては, 設計耐用期間として100年を採ることが可能であり, 通常はコンクリート自体が高耐久であるため, 耐久性の照査を簡略化できる点が特徴である。
流通製品
・ダクタル
・サクセム
・スリムクリート
超高強度繊維補強コンクリートの設計施工指針(案)