1級建築施工管理技士 内装仕上 厨房の床をなぜ嵩上げするのか?

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75)厨房の床をなぜ嵩上げするのか?

厨房は浴室と同様に水を使用する場所であるので、衛生上も毎日清掃し清潔にする必要がある。また、防水や仕上げなどに故障が発生すると、補修のために使用できなくなり、その影響は大きい。

1.運営が決まらなければ厨房設計はできない

厨房は、食堂の利用人員、回転数、料理メニュー、使用食器の数、料理の手順、サービス方法などにより広さや機器のサイズ、レイアウトが決定される。
すなわち、食堂の運営方法が決まらなければ厨房設計はできない。その厨房機器のレイアウトによって電気容量やその位置、給排水などの設備が決まり、排水溝やグリーストラップ(GS:油溜め)の位置も決まる。遅くとも躯体工事が決まるまでには決定すべきものである。

2.防水を確実に行う

厨房の床はアスファルト防水が望ましい。防水の立上り寸法はタイルの割付けや幅木高さに合わせて150~200mmあれば十分である。嵩上げコンクリートは、厨房内の床排水のための勾配を確保し、厨房機器の排水管を埋設し、排水溝を設けるために、通常の防水保護以上の厚さが必要である。


厨房の床

3.出入口には排水溝を設ける

出入口枠とくつずりの下に防水立上りを受けるステンレス(SUS)プレートを付け、それに防水を立ち上げて壁側の立上りと連続させる。隣室や廊下と同じレベルで出入口がある場合は清掃時の水が隣室に出ないように、厨房側に排水溝を設ける。グレーチングの目は水が走らないように横目にする。

4.排水溝とグリーストラップは毎日清掃する

排水溝は床の排水と厨房機器からの排水管からの水が流入する。排水溝は従来モルタルで仕上げていたが、SUSプレートを加工したもの(勾配付き、角アール付き)の方が衛生的で耐久性があり、SUS製のグレーチングや穴開きチェッカードプレートなどの滑りにくい蓋も含めて一体にする手法もある。排水溝の深さは、水上で排水管径 + 溝枠 + 20mm を確保し、1/100 ~ 1/200の勾配でグリーストラップ(GS)につなぐ。GSは床スラブを貫通し据えることになる。この場合、耐火仕様とし、防露も考慮する。排水溝とグリーストラップは毎日清掃が必要なので、使いやすさと耐久性が重要である。

5.厨房の床仕上げ材は耐久性とメンテナンスが重要

床仕上げ材は、磁器タイルや塗床になるが、耐水性、耐久性、防滑性及び耐熱性も必要である。釜の熱湯を大量に流す場合は、その部分はSUS製チェッカープレートも検討したい。清掃のしやすさ、補修のしやすさを考慮して決定する。

1級建築施工管理技士 内装仕上 モルタルが付着する防水がある

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76)モルタルが付着する防水がある

部屋の外壁際の床ビニルシートが湿気で剥がれる。
厨房の隣室の床と壁に染みができる。
これらは外部や隣室の水がコンクリート躯体に浸み込んで発生する。ひどいケースではコンクリート壁の足元から水が浸み出すケースもある。水がある側を防水しておく必要があるが、実際には下階に部屋がないため防水しないケースが多い。こういったケースでは、ポリマーセメント系の塗膜防水が有効である。ポリマーセメント系塗膜防水の特徴は、コンクリートに直接塗ることができ、モルタルが付着することである。また、微小クラックであれば追従するという利点もある。

1.コンクリート水槽の防水

防水の保護の必要がなく、水槽の壁が高くても施工できる。ポリマーセメント系塗膜防水は水槽の水質にほとんど影響がなく、クラックが発生して防水が切れても自閉する作用がある。

但し、雑排水槽の場合は、雨水や中水のみとし、その他の排水の場合は、流入水質を確認し、耐有機酸エポキシ樹脂系(D種)又はビニルエステル樹脂系(D種)のライニング工法とする。
雨水貯留槽の場合、ひび割れ追従性を重視しないのであれば、防水は不要である。
ビニルエステル樹脂系ライニング(D種)は厨房排水等、厳しい条件下の水槽に施すものである。

汚水槽は、エポキシ樹脂系ライニング工法(C種)とする。

2.地中の打継ぎ部

地中の打継ぎ部は目地を設けてシールする必要はない。シールしてもシールを打ち替えすることは不可能である。ポリマーセメント系塗膜防水で十分である。

但し、地下外壁(内部側)に施す塗膜防水はケイ酸質系を推奨する
(EVピットなど)

3.めったに雨がかからない半外部の廊下の防水

通常、防水の上に磁器質タイルを張る場合、アスファルト防水の上に保護コンクリートを打設してタイルを張ることになる。ほとんど雨がかからないようなところはアスファルト防水までの必要はない。こういうケースではポリマーセメント系塗膜防水を施した上にモルタルでタイルを張ることができる。



4.最下階の水洗いする床(厨房や浴室など)

最下階の場合、万一漏水したとしてもそれほど不都合が生じることはないが、躯体保護と隣室の防湿のためには防水しておく方が望ましい。

5.水拭きする便所等

水拭きであるので防水の必要はないが、万が一水が漏っては困るケースの防水等に適用できる。

6.水気のある部分と取合う切付け部

外部土間と外壁、外部スクリーン足元と内部、外部RC階段と外壁、水洗いする部屋と隣室RC壁などの取り合う切り付け部。

1級建築施工管理技士 内装仕上 ALC内壁はスライド工法

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77)ALC内壁はスライド工法

ALCパネルの内壁・間仕切り壁は内装仕上げに施すことから、ALCは動かない方がよい。ALCが動くと仕上げひひびが入ったり剥離する。よって、層間変位に対して下部を固定し上部をスライドさせるスライド工法とする。施工図ではまずALCの固定方法を確認する。

1.ALCの内壁はスライド工法で床と一体にする

ALCはフットプレートなどで床に固定する。躯体が変位するとき、ALCは床と一体で、上部がスライドする。躯体との隙間(伸縮目地)が変位量より小さいとALCが損傷する。特にALCが直行する取合い部は、ALCどうしが衝突しないように、変位量に見合う伸縮目地が必要である。伸縮目地部は耐火性能、遮音性能を確保するためにロックウールを充填し、できれば両面シールとする。鉄骨造では特に変位が大きいため、躯体取合い部や直行壁部分の伸縮目地寸法は最低でもパネル高さの1/100は確保したい。


躯体が変位したとき

2.開口補強は壁と一体にする

ALCの壁に出入口などの開口部を設けるときは、山形鋼(アングル材)などの開口補強を設ける。この開口補強の縦部材を上部で工程すると変位を吸収できないので、開口まわりでALCが損傷するだけでなく、ドア枠も変形し開閉できなくなる恐れがある。スライド工法では、開口補強は壁(床)と一体にし、補強縦部材の上部は上部支持金物とスライドするように納める。

3.仕上げボードはALCの伸縮目地と位置を合わせる

ALCをスライド工法にすると、仕上げボードをボンドで直接壁に張る工法(GL工法)を採用することができる。この場合、ALC10枚ごとの伸縮目地部と同位置に目地を設ける必要がある。ボードの目地を目地を設けたくないときは、GL工法とはせず、ALCと別に軽量鉄骨(軽鉄)下地を立ててボードを仕上げる。階段室のALC壁にボードを張る場合は、軽鉄下地とする。GL工法は地震時に剥落し、階段を塞ぐ可能性があるので採用しない。よって、有効幅等の問題もあるので、計画時に下地及び仕上げ方法も十分に検討しておく。


ALCスライド工法

1級建築施工管理技士 内装仕上 仕上げのひび割れの原因

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78)仕上げのひび割れの原因

内装は仕上げも下地も重要である。ボードのひび割れ、タイルの剥落や塗装の剥離など仕上げの不具合の多くは下地に原因がある。仕上げの品質は下地によって決まる。

1.下地が変わる部分には化粧目地を設ける
壁ボード張りがコンクリート下地と軽鉄下地にまたがると、コンクリート下地と軽鉄下地の境でボードにひび割れが入る。コンクリート下地と軽鉄下地の動きが違うためで、ボードのひび割れは下地の違いを正直に表す。したがって、異種下地の境界には伸縮目地を設ける。目地を設けたくない場合は、コンクリート面にも軽鉄下地を通してボードで仕上げる。


異種下地の壁ボードのひび割れ

2.床の異種下地の境界には床見切り(目地棒)を設ける

床の場合も同様で、床暖房をする部分をしない部分、防水をする部分としない部分、木下地とコンクリート下地など下地の違いを無視して、タイルや石で仕上げると、必ず異種下地取合い部でひびわれが入る。したがって、その取合い部分はあらかじめ伸縮調整目地または見切りを設けなければならない。その目地位置は躯体施工前に、タイルや石の割付け寸法に合わせて決めることが重要である。


異種下地の床のひび割れ

3.軽鉄間仕切り壁のひび割れを少なくする

ボード壁のドア枠上部にひび割れが入るケースがある。軽鉄下地のボード壁はボードで軽鉄下地が固められていると言ってよい。開口部まわりは、下地補強をして、ボードをL形にカットして張るか、あらかじめ化粧目地を設ける。ひび割れさせたくなければ、まず二重張することが基本となる。
軽鉄下地材はJIS規格品とする。50型の時、
・スタッド(縦骨)50 × 45 ×0.8mm
・ランナー(上下の支持材)52 × 40 × 0.8mm
・振れ止め(スタッド繋ぎのC型材)19 × 10 × 2.3mm
・開口補強材、スタッドと同じ幅 50 × 30 × 10 × 2.3mm
とする。

ボード壁のひび割れ

1級建築施工管理技士 内装仕上 システム天井の落下防止策

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79)システム天井の落下防止策

事務所ビルなどに採用される岩綿吸音板のシステム天井は、設備も含めてすっきりと納まる。点検口も天井パネルと同じで目立たないものが多い。しかし、そのバネルが地震時の落下するケースがある。特に壁際のパネルや防火シャッター取合い部などのパネルに落下するケースが見られる。

1.システム天井の基本

システム天井は次の事項を守れば標準部分の落下はおおよそふせぐことができる。

①天井が地震時に大きくゆれないようにブレースを適正に配置する
②天井ボードが偏っても、掛り寸法に5mm以上の余裕を持たせる
③野縁受けと壁との隙間が天井ふところ高さの1/100 × 2以上あること
④ボードどおしのジョイントのHバーはHバー受けに2ヶ所以上固定すること
⑤Tバーに載せ掛ける設備機器は落下防止のワイヤーを掛ける


システム天井

2.システム天井は壁際の天井パネルが落下しやすい

壁際の天井パネルは壁に固定された廻縁に載っている。システム天井の標準では廻縁と天井パネル、廻縁とTバーの掛かりやクリアランスが少なく、地震時に天井が動くと壁に当たったり、外れたり、必ずどこかが破損し落下することもある。同様のことは、窓際のブライドボックス、防火シャッターや防煙垂れ壁などの取合い部でも生じる。したがって、地震時の天井の動きに十分対応できる廻縁を設けたり、落下防止のワイヤーを取り付けたりすることが必要である。


壁際の納まり

3.壁際ルーバー天井、天井吊りの機器は落下防止策を施す

一般の天井でも、天井が動いて壁際のルーバーが落下することがある。ルーバーの枠が壁側と天井側で別々になっているのが原因である。


壁際のルーバー

また、天井に吊る機器は必ず2ヶ所以上の吊りボルトで固定し、2方向のブレースを設けて地震時に振れないようにすることが重要である。


天井吊りの機器

1級建築施工管理技士 内装仕上 天井の耐震性を確保する

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80)天井の耐震性を確保する

東日本大震災では、ショッピングやシアターなど2000件以上の天井が落下し、多くの人命も失われた。これを受けて、天井落下対策(エレベーター、エスカレーター等の脱落防止対策を含む)に関して建築基準法施工令の一部が改正され(2013年7月)、天井脱落対策関連の告示が同年8月に公布された。告示では日常立ち入る場所で、天井高さが6m以上、天井面積が200m2以上、質量が2kg/m2以上のすべてを満たす天井を特定天井として、その構造方法の基準を定めている。

1.大面積の天井は壁に衝突させない

石膏ボードなどの重い天井は地震時の水平力(入力水平加速度1G)が大きい。しかも大面積の天井ほど大きな水平力を受ける。地震で天井が揺れて壁に当たった時には大きな水平力を衝撃的に受け、その力で天井面が座屈するように剥がれて落ちる。特定天井では質量を20kg/m2以下とし、壁や柱などとの隙間を6㎝以上確保して、壁や柱に衝突させないようにする。天井に取り付ける防煙垂壁の端部も壁や柱との隙間を6㎝以上確保し、かつ不燃干渉材などで遮煙できる納まりにする必要がある。

2.天井の吊り材(吊りボルト)は天井質量により決定する

天井を支える吊りボルトは天井の質量に対して適切な本数でなければならない。質量が 2~20kg/m2以下の特定天井では、吊りボルトの本数は 1m2当たりの平均本数を1本以上とし、釣合い良く配置する。質量が 20kg/m2を超える天井は耐震性を構造計算によって確認する必要がある。

3.天井はV字形状の振れ止めを設ける

天井の吊り長さが長いと短いとでは振れの大きさが違う。特定天井では吊り長さを 3m以下とし、おおむね均一とする。さらに、振止めとして2本の斜め部材の下端を近接してV字状に配置したものを一組として告示式により算定し、吊り合い良く配置する。吊り長さが 1.5m以上では吊りボルトと同材で水平補強も行う。吊り長さが 3mを超す場合は、構造耐力上主要な部分と同等の天井下地鉄骨を設ける必要がある。

4.斜め天井は下地の滑り止め対策をする

斜め天井の下地は、下地金物のC型材にクリップ金物で留めるだけでは、重力で滑って下へズレ落ちる方向に動く。斜め天井では下地や天井材が滑って落ちないようにビス固定することが必要である。

5.天井内設備は天井材と縁を切って吊り、振れ止めを設ける

天井内設備で荷重が大きいものは地震で振れると大きな水平力となるので、設備機器は振れ止めをしっかりと設けて、天井とは縁を切って、天井に影響を与えないようにすることが重要である。

1級建築施工管理技士 内装仕上 結露しやすい箇所

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81)結露しやすい箇所

居住環境が高断熱、高気密になると、室内で発生した水蒸気が外部に排出されにくくなるため結露が発生しやすくなる。また、建物完成後に建築主が設計条件とは異なった使い方をすると、結露が発生しトラブルにつながるケースがある。

1.表面結露

室内の換気をせずに、ガスや灯油を燃料とした暖房器具を長時間使用し、外壁の室内側の窓ガラスの表面温度が室内の露点温度より低くなった時に表面結露が発生する。表面結露は拭き取るか、換気をすれば大事には至らない。

.内部結露

室内の高温多湿の空気が天井や壁の内装仕上げ材を通り抜け、低温低湿側の小屋裏や壁体内に侵入した時に内部結露が発生する。通常目に付かないところなので、湿って内装材を汚し、カビが発生してトラブルにつながる。
外壁の断熱工法で、鉄筋コンクリートの外壁に直接、GL工法で複合パネルを施工すると、冬期に内部結露が発生し湿気でボードが剥がれ落ちる原因となるので厳禁である。また、断熱ボードを打込む場合はジャンカや空隙ができても発見できない。外壁内断熱は、発泡ウレタンを適正な厚さ管理の下で、吹き付けて断熱した後、GL工法または軽鉄下地ボード張りで仕上げる。


外壁の断熱仕様

3.夏型結露

結露が起きるのは冬期だけとは限らない。鉄骨造の工場や倉庫は、夏期には折板屋根から小屋裏に高温多湿な外気が入りこみ、小屋裏部材に結露が発生する場合がある。地域によっては夏場、特に梅雨時に小屋裏換気をすると、高温多湿な外気が流入してかえって天井裏に結露を発生させることがあるので要注意である。
冷房された作業場でシャッターを解放すると、室内よりも高温多湿な外気が一気に流入し、床表面や天井面に表面結露が発生する。外部の荷捌き場と室内の間に前室を設け、室内より外気の温湿度が高い場合は、換気運転を停止する。


夏型結露と放射冷却の例

4.解放された外部空間でも結露は起きる(放射冷却)

冬期の夜間には外気と同じ環境であっても、放射冷却が発生して外気温度が0℃以下になると、工場や配送センターの荷捌場の金属折板庇の上下で水蒸気が凍結する。日の出とともに外気温が上昇し、直射日光が庇に当たると、溶けて水滴となって落下する。荷捌場に置いてある製品を濡らす原因となるので、庇下に無機質系断熱材の吹き付けが有効であるが、その要否は建築主と協議して防露対策について検討する必要がある。

1級建築施工管理技士 内装仕上 熱橋となるところ

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082)熱橋(ヒートブリッジ)となるところ

鉄骨の柱や梁が断熱材を貫通している部分や断熱工法における断熱材の欠損部位は熱橋(熱の通り道:ヒートブリッジ)となる。断熱材を隙間なく施工し断熱欠損の部位をなくすことができれば、結露のトラブルをなくすことができる。

1.外壁の入隅部や外壁と床の取合い部の熱橋

外壁と直交する住戸間界壁の折返し部分や床は熱橋となる。


外壁取合い部の熱橋

外壁側から室内側へ600mm程度までは発泡ウレタンを吹き付け、断熱する。断熱材の厚さ及び施工範囲は地域区分により異なる。例えば、北海道等寒冷地では900mm程度となる。
詳細は「省エネルギー基準」に準拠した「住宅に係るエネルギーの使用の合理化に関する設計・施工及び維持保全の指針」(国土交通相告示第378号)を参照

2.打込み断熱材の継ぎ目の断熱欠損部は熱橋

屋根スラブや外壁に打込まれた断熱材の継ぎ目にコンクリートが流れると熱橋となる。断熱材の継ぎ目にコンクリートが流れ込まないように施工する。


打込み断熱材の継ぎ目

3.屋根スラブ打込みルーフドレンや吊りボルト

①屋根スラブに打込むルーフドレンは、雨水を集水するために周囲よりスラブ天端を下げて施工する。外断熱防水の場合はその周囲に断熱材を敷き込むことができないので、その部分が熱橋となる。スラブ裏面に断熱補強が必要となる。


打込みルーフドレン部のスラブ下断熱

②屋根スラブに打込む吊りボルト用インサートも熱橋となる。断熱用プラスチックインサートを採用する。

4.外壁に打込まれた設備ボックスも熱橋

外壁に設備配管や電気ボックスを打ち込んだ場合、外壁に断面欠損が生じ、配管やボックスが熱橋となる。設備配管や電気ボックス等は外壁に打ち込んではならない。

5.断熱した外壁に面した押入れの壁が結露することがある

外壁に面した押入れは、床にすのこを敷き、中段の棚と奥の壁との間に30mm程度の隙間を設け、空気を流れを作り押入れ壁面の表面温度が下がらないようにする。
押入れの壁に布団が接して収納されると、壁面の表面温度が押入れ空気の露店温度以下になり、結露を起こしカビが発生する。


外壁に面した押入れ

1級建築施工管理技士 内装仕上 内断熱と外断熱

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83)内断熱と外断熱

従来の建築の考え方は内断熱であったが、近年外断熱が話題に上がることが多くなっている。内断熱でも外断熱でも、断熱が途切れたところ熱橋(ヒートブリッジ)が発生する。熱橋部分が断熱効果を下げ、そこが結露する。内断熱と外断熱の特徴を理解し、熱橋を少なくするのが、省エネルギー計画上、重要なポイントである。

1.外断熱の特徴

外断熱は躯体が外部の熱環境の影響を受けにくいので、内部熱環境を一定に保ちやすい。躯体は断熱材で保護され、温度変化が少なく、躯体が長持ちする。ただし、躯体の熱容量がある場合(鉄筋コンクリート造等)は冷暖房の立上りが遅くなる。外断熱は躯体の外側を断熱層で包むという考え方であるが、バルコニーや屋上パラペット、基礎まわりは断熱材を完全に連続させることは困難で、熱橋が発生し結露する可能性がある。これらの熱橋での結露防止策は内断熱とする。
外断熱の外装は、断熱材がそのまま外装仕上となる材料がほとんど無いため、断熱材の上に、雨風をしのぐ耐久性のある外壁としての仕上が必要となり、一般的には内断熱に比べて建設コストが多くなる。


外断熱工法

2.内断熱の特徴

内断熱は躯体内側に断熱層を設ける一般的な工法である。躯体と断熱材の間に隙間を作らないことが重要である。内部環境はほぼ一定であるが、外断熱とケースとは逆に、躯体が外環境の影響を受けるので、躯体の寿命は設計時の計画年数の級になると考えられる。
外壁仕上は通常通り施工できるので、従来からのノウハウをそのまま適用でき、外断熱に比べると建築コストは抑えされる。外壁に交わる間仕切りや床の外壁際が熱橋となるので、そういう部分は熱橋対策として、断熱材を折り返して300〜900mm程度まで引き延ばす必要がある。
最上階も内断熱にすると、日射や寒暖により躯体への影響が大きくなるので、外壁内断熱工法を採用した場合でも、最上階スラブは外断熱とするケースが多い。その場合、防水層との順番に注意する。

露出防水の場合、
内側より、躯体 → 断熱材 → 防水層

歩行用の場合、
内側より、躯体 → 防水層 → 断熱材 → 保護層

よって、歩行用の場合は、外断熱にすると、躯体と共に防水層も断熱材に護られるので長持ちする。
外断熱と内断熱を利点を考慮しつつ、部位によって使い分け、その際に断熱層の切り替わり部分の熱橋対策をとることが重要である。


内断熱工法

1級建築施工管理技士 内装仕上 断熱材は適材適所に

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84)断熱材は適材適所に

建築用断熱材は布団状のグラスウールや板状の断熱ボード、現場発泡の吹付け断熱材などがある。それぞれの部位に最適な断熱材を使用する。

1.陸屋根の外断熱

屋上の露出断熱アスファルト防水では、断熱材の上に露出防水するため、断熱材はA種硬質ウレタンフォーム両面スキン付きを使用する。
保護断熱アスファルト防水では、防水の上に断熱材を敷いて保護コンクリートを打つため、断熱材は押出法ポリスチレンフォーム3種bのスキン層付きを使用する。

2.陸屋根、外壁の内断熱

躯体打込みの時は押出法ポリスチレンフォームとする。後施工では建築物断熱用吹付け硬質ウレタンフォームを利用する。

3.土に接する床、最下階の床

躯体打込みの時に押出法ポリスチレンフォームを使用する。

4.天井面の断熱

天井面での断熱は施工性の面からグラスウール(24kg/m3)敷込みとすることが多い。この場合、照明器具や空調用吹出口等により、完全な敷込みができない部分が生じやすい。入念な施工が求められる。

5.木造の断熱

木造壁の断熱はグラスウールが多いが、内部結露の可能性があり、通気層を設けなければならない。グラスウールに比べて現場発泡の建築物断熱用吹付けウレタンフォームは壁面に密着し、狭小隙間部分にも確実に施工でき、性能も良いので使われるケースが多くなってきている。

6.建築物断熱用吹付け硬質ウレタンフォーム(JIS A9526)

建築物断熱用吹付け硬質ウレタンフォームはA種、B種、難燃2級、難燃3級などがあり、特記仕様書に示される。特記がなければ、ノンフロンのA種1の難燃性を有するものとする。この発泡ウレタンフォームは現場での吹付け厚さで性能を確保するためその吹付け厚さ管理が重要である。この吹付け厚さの管理は4m2当たり1ヶ所吹付け厚さ管理用ピンを張り付け、均一に厚さを確保するように管理する。また、難燃であるが、火源によっては燃焼することもあるので、防火コートを吹き付けことを勧める。特にテナントビルなどではテナントの改修工事中の溶接の火などによる燃焼の危険性があるため防火コートは必要である。

※断熱材の種類によって熱伝導率λの値が異なり、熱貫流率の計算に関わるので、断熱材の変更を行う場合は注意する。