1級建築施工管理技士 地下躯体工事 地下ピット水槽の防水と点検

建築品質 地下躯体


024) 地下ピット水槽の防水と点検

地下ピット(基礎梁で囲われた床下の空間)は湧水槽だけでなく、雨水貯留槽、消火水槽、汚水槽、雑排水槽、中水処理槽などに利用される。火災発生時に消火水槽に水が無かったら一大事である。汚水が漏れても困る。汚水槽や雑排水槽では、槽の中で発生する硫化水素ガスなどによって、ピットの天井面のコンクリート躯体が侵される。これらを防ぐために適切な防水が必要である。

1.各水槽にとって最適な防水仕様を採用する

消火水槽、雨水貯留槽はポリマーセメント系塗膜防水(水反応閉鎖型)とする。汚水槽はエポキシ系塗膜防水を床、壁、天井の6面に施す。雑排水槽は排水する水質を確認し、防水仕様を決定する必要がある。蓄熱槽は断熱性を確保するため、アスファルト防水 + 断熱材 + 押えコンが必要である。

2.地下ピットの点検口は多めに設ける

地下階がある建物では全面がピットになっていることが多い。このピットの点検に入れるように床点検口を設ける。床点検口はメンテナンスのしやすさとピット内で迷わないために最低3スパンに1ヶ所は設けたい。床点検口から降りるタラップと基礎梁には人が通る人通孔(通常は径 600mm:構造設計者と協議)を設ける。タラップは後付けのはしごではなく、SUS製のものを躯体に打ち込まなければならない。人通孔も基礎梁の幅が広くて通りにくい時はつかみ金物を打ち込んでおくなどの配慮も必要である。
床点検口は化粧床タイプ、防臭タイプ、耐荷重タイプ、防犯施錠タイプなどがあり、用途に適したものを採用する。

3.地下ピットがなくても配管のメンテナンスを可能にしておく

地下のない建物でも便所や厨房などの配管のための地下ピットまたはトレンチが必要であり、メンテナンスのため床点検口を設ける。よく配管後に土を埋め戻して、床を施工する設計を見かけるが、配管の改修などの場合に土間を壊すことになる。少なくとも建物内の土間下は、配管の取替えができるように配管ピットを設けたい。

1級建築施工管理技士 地下躯体 EVピットの湧水対策

建築品質 地下躯体


025)エレベーターピットの湧水対策

エレベーターピットに湧水(地下水)が溜まって、頻繁に点検しなければならなくなる事例がある。地下水位を確認し、ピットの方が深い場合は湧水対策を考慮しなければならない。地下水位が年間で上下する場合は、上位でみる必要がある。

1.エレベーターピットの湧水対策

エレベーターピット(EVピット)内部には排水口を設けることができないため、EVピットの湧水はエレベーターの定期点検時に手で汲み出すことになっている。湧水が多いところでは定期点検では間に合わず、頻繁に点検しなければならない場合もあり、EV管理に支障をきたしている。一般にはEVピット内部は塗膜防水をしているが、外側からの水圧に対して防水効果は少なく、湧水対策は計画段階で考慮しておく必要がある。
対策は次のことが考えられる。

①地下水位が高いEVピットの地下外壁側は二重壁とする。
②EVピットの底盤は湧水処理層を挟んだ二重床とすると安心である。地下外壁の水もここへ導く。
③EVピットの周囲の底盤をEVピットより深くして、湧水ピットを設ける。

2.エレベーターピットと他の水槽は空ピットを介して

湧水対策だけでなく、隣接した水槽からの湧水がないようにしなければならない。消火水槽や汚水槽などの水槽類をEVピットと隣接させないように配置を検討する。どうしても近接して配置する必要がある場合はEVピットと水槽の間に空ピットを設ける。
これに関連して、汚水槽の周囲も空ピットにして、点検できるようにするのが衛生上望ましい。

1級建築施工管理技士 RC造 打継ぎ部の防水

建築品質 鉄筋コンクリート造


026)コンクリート打継ぎの防水対策

コンクリート造は基本的に1層(階)ごとにコンクリートを打設して構築される。そこで1層ごとに打継ぎ部が存在する。また、規模の大きな建物では平面で工区を分けて施工することもあり、垂直の打継ぎも発生する。地下躯体や外壁の打継ぎ部は水が侵入する原因となる。雨水を侵入させないように打継ぎ部の処理を確実にしたい。

1.地下躯体の打継ぎ部は止水材を打込む

地下外壁の打継ぎ部で外防水やシールすることができない場合、打継ぎ部に生コンクリートと反応して止水する反応接着型ブチルゴム止水板(スパンシールなど)を設置する。( B部詳細 )

コンクリート躯体の打継ぎ


打継ぎ部詳細

2.1階足元の打継ぎ位置は幅木天端に合わせる

1階外壁足元の打継ぎ位置は外部幅木の高さに合わせて設けると良い。

3.1階床が土間の時は打継ぎ

1階床が土間の時は打継ぎを地中にして、塗膜防水をする。基礎梁や壁、土間のコンクリート強度が異なる場合もあるので、基礎梁天端で壁と打継ぎ、塗膜防水をする。建物周囲に砂利などを敷いて排水を良くすると防湿効果もある。

4.地上階の打継ぎ部は止水を確実にする
地上階外壁の打継ぎ部は、シールで止水することになるが、さらに打継ぎ面に外勾配を設けて水が入りにくくしておく。( A部詳細 )

1級建築施工管理技士 RC造工事 ひび割れ誘発目地

建築品質 鉄筋コンクリート造


027)壁のひび割れは漏水につながる

コンクリートはセメントと水との水和反応で硬化してできる水硬性の物質である。硬化する段階で乾燥収縮し、ひび割れ(クラック)が発生する。ひび割れしやすさはコンクリートの水セメント比や鉄筋量などで変わってくるが、ひび割れは必ず発生する。外壁ではそのひび割れが漏水の原因になり、鉄筋が錆びて、躯体の劣化につながる。
そこでひび割れをあらかじめ想定した目地に集中して発生させ、他の部分にひび割れが発生しないように「ひびわれ誘発目地」を設ける。
ひび割れ誘発目地の使用は構造設計図に特記されているが、そうでない場合は工事監理者に構造設計者と協議してその仕様を決めてもらう。
尚、壁式構造では一般的に誘発目地を設けない。

1.ひび割れ誘発目地の位置はデザインする

設計者は、ひび割れ誘発目地の位置を、柱際から900mm以内に、壁は3~4mごとに設けることが望ましい。また、開口部の四隅はひび割れが入りやすいので鉄筋で開口補強を確実にしたいが、補強では無理があると考えられる場合は、開口際にひび割れ誘発目地を設けるようにしたい。


ひび割れ誘発目地

2.ひび割れ誘発目地の深さは壁厚の1/5~1/4程度とする

ひび割れ誘発目地に確実にひびが入るようにするには、外部と内部の目地深さの合計を、壁厚の1/5~1/4程度とする。壁が厚い場合は目地だけでは厚さの確保が難しいので、壁内に縁切りのための型鋼など入れる。
目地部分で鉄筋のかぶり厚さを確保することは言うまでもない。

3.ひび割れは外壁だけではない

ひび割れは外壁だけに起こるのではない。バルコニーのようなはね出しスラブ、パラペット、擁壁、腰壁などにも同様にひび割れ誘発目地を設ける必要がある。

1級建築施工管理技士 RC造工事 構造スリット

建築品質 鉄筋コンクリート造


028)構造スリットは漏水に注意する

阪神淡路大震災において、RCラーメン構造の建物が多く損傷した。腰壁によって柱が短柱となり崩壊したものが多い。このため、RCラーメン構造として耐震設計するとき、柱が腰壁等により拘束されないように、柱や梁の際に隙間を設けることが多い。これを構造スリット(または耐震スリット)という。柱際の構造スリットは鉛直スリット、梁際の構造スリットは水平スリットという。この構造スリットが外壁にある場合は漏水の原因にもなるケースがある。

1.構造スリットの幅を確保する

構造スリットの幅は躯体の大地震時の変位量と同じだけ必要である。通常大地震時の変位角は1/100であるから、階高3.5mの時、鉛直スリット幅は3,500mm/100 = 35mmとなる。水平スリットは躯体の面内変形と面外変形に対して、梁と壁の縁が切れていれば良いので、実際には施工できる幅として25mm程度としている。この構造スリットの幅は構造設計図に明記されてるので、必ず確認する。

2.外壁の構造スリットから漏水させない

外壁の構造スリットには止水性と耐火性が求められる。止水は外部側を二重シールとし、内部側も必ずシールをする。特に水平スリットは水返しの段差を設ける納まりにする。耐火性に関してはロックウール(岩綿)を密実に充填する。中地震でも変位が発生するため、シールは切れやすく、定期的なシールのメンテナンスも必要である。

3.水平スリットは防水立上りの上に設ける

屋上防水と取り合う外壁の場合、防水が変位によって切れないように立上りまでを一体としたい。できればあごの上部に水平スリットを設ける。この場合あらかじめ構造設計との調整が必要である。内部の厨房や浴室の壁に水平スリットが設けられている場合も同じで、防水の立上りの上に水平スリットを設ける。

4.構造スリットの施工精度確保が重要

鉛直スリットは柱・壁のコンクリート打設時の側圧が均等にかからないと片寄りやすい。補修や手直しができない箇所なので施工管理が重要である。

1級建築施工管理技士 RC造工事 鉄筋のかぶり

建築品質 鉄筋コンクリート造


029)鉄筋のかぶり不足は建築基準法違反

鉄筋コンクリート造の鉄筋はコンクリートのアルカリで保護されている。コンクリートは空気中の炭酸ガスなどで次第に中性化されていく。中性化が進行すると微細なクラックなどから雨水が侵入し、鉄筋が錆びはじめ、やがてはコンクリートを押し出し破壊する。鉄筋のかぶり厚さはコンクリート造の寿命を左右する重要なポイントである。

1.鉄筋のかぶり厚さ確保の基準は建築基準法

かぶり厚さとは最も外側にある鉄筋の表面から、コンクリート端部までの最短距離を言い、建築基準法施行令第79条によって定められている。

2.目地底のかぶり厚さを確保する

打継ぎ目地やひび割れ誘発目地の目地底から最小かぶり厚さを確保する。目地部のシールは耐久性がないため、仕上げなしと考える。また、防水のための切欠き部などでも必要かぶり厚さは確保しなければならない。

3.施工誤差を見込んだかぶり厚さを設計かぶりとする

鉄筋のかぶり厚さを確実に確保するためには、施工誤差10mmをあらかじめ見込んだ設計かぶり厚さを確保することが必要である。

4.仕上げありとは中性化に対して有効な仕上げであること

かぶり厚さにおける仕上げありとはコンクリートに石やタイルを張る、モルタルを塗るなどでコンクリートを保護し中性化を防ぐために有効な仕上げがあることをいう。
公共建築工事標準仕様書(建築工事編)によると、仕上塗材や塗装は仕上げがないのと同じ扱いになる。仕上げなしの場合は、10mm以上の増打ちが必要である。

5.柱及び梁の主筋にD29以上を使用し仕上げなしのケース

主筋のかぶり厚さは鉄筋径の1.5倍以上を確保する。

1級建築施工管理技士 RC造工事 コンクリートの打設

建築品質 鉄筋コンクリート造


030)コンクリートは密実に打つ

鉄筋コンクリート造は鉄筋とコンクリートの線膨張率が同じなので一体化することができる。鉄筋コンクリートは鉄筋の曲げ強さとコンクリートの圧縮強さを活かしたハイブリッド構造である。したがって、鉄筋のまわりに隙間なくコンクリートを充填すること、すなわち、コンクリートを密実に打つことが最も重要である。

1.コンクリートが入りやすい大きな断面にする

設計者は、コンクリートがスムーズに流れて入りやすい断面や型枠形状を設計するのが望ましい。薄い断面や小さな断面では、骨材が途中で止まって空隙ができる。
塞ぎ型枠は空気が逃げずに溜まることがあり、空気抜きなども必要である。

2.無筋のコンクリート部分をつくらない

どうしても部分的に小さな断面にする時、かぶり厚がとれないからと無筋にすると引張強度がなく、ひび割れしやすい。かぶり厚が確保できないときは、防錆鉄筋やメッシュ筋を入れる。SUS筋は膨張率が大きいので望ましくはない。

3.型枠の脱型しやすい断面にする

型枠脱型時にコンクリート躯体に力がかかって、ひび割れを発生させてはならない。脱型時はコンクリート強度も十分出ていないケースがある。脱型時に躯体に力がかからないような型枠断面にしなければならない。

4.鉄筋の間隔を確保する

鉄筋の間隔が狭いと骨材が詰まり、コンクリートが均一に打設できないばかりでなく、鉄筋とコンクリートの一体化が図れない。特に柱と梁が交わる部分などは鉄筋施工図で検討し、鉄筋の間隔をしっかり管理することが重要である。

5.コンクリートの施工管理が重要

コンクリートが鉄筋の間を流れるように隙間なく充填されるには、骨材の大きさやスランプ値などの設定が適切でなければならない。もちろんコンクリート打設時の入念な施工と管理が重要であるのは言うまでもない。バイブレーターのかかすぎや高所からの落下打ちは、骨材の分離やジャンカの原因になるので禁物である。

1級建築施工管理技士 RC造工事 化粧打ち放しコンクリート

建築品質 鉄筋コンクリート造


031)化粧打ち放しコンクリート

化粧打ち放しコンクリートでは型枠の状態がそのまま仕上げになるため、型枠工事の施工管理が重要になる。施工者は工事着手前に施工計画書を作成、施工図に反映し、型枠やコンクリート工事の関係者と綿密に打合せする必要がある。

1.設計意図・意匠をモックアップで確認

合板型枠や杉板型枠など型枠材料を確認する。杉板の時は木目出しの程度など設計意図を詳細に確認し、そのうえでモックアップを作成する。この場合実際に納入するプラントでつくったコンクリートを使い、コンクリートの色相も含めて確認することが大事である。
浸透型撥水材の塗布などの打ち放しコンクリートの仕上げ材は、最初のモックアップ段階で確認する。実際の施工段階では、躯体の感想が大事であり、吸い込みの違いによる色ムラの発生などにも注意が必要である。

2.型枠の割り付けやセパレーター等の割り付けを確認

セパレーター等は鉄筋との関係やセパレーターが交差する部分の段差などが調整できていることを確認する。

3.型枠のジョイント部、出隅・入隅部は止水型枠にする

型枠の出隅からコンクリートの水分が出ると、砂だけが出隅に残り、シャープな出隅ができない。桟木を控えてパッキンを挟むなどの工夫をする。

4.サッシや金物、および設備機器の納まりを確認

コンクリート図の承認は、建具や打込み金物の施工図やコンクリートに関連する設備機器の承諾とほぼ同時になされなければならない。設備器具の取り付け部もあらかじめ欠き込みを設けるなど、納まりをデザインするほうがよい。

5.打設後の養生と補修も重要

上階のコンクリート打設時に下階のきれいに打ち上がったコンクリートが汚されることもある。打設後の下階の躯体の養生も大事である。補修が必要ない美しいコンクリートを打つことが基本であるが、万が一に備えて補修の要領も検討しておく。

1級建築施工管理技士 鉄骨工事 鉄骨の位置決め

建築品質 鉄骨造


032)鉄骨位置は何から決めるか

鉄骨柱の基礎や根巻きが地上に見えている、鉄骨柱が中途半端に内側によっているために外壁下地取付け金物が多く必要になっている、屋根勾配が鉄骨でとれていないため余分な下地が必要になる、といった事例が見られるケースがある。
これらは、構造設計と意匠設計との調整不足である。
鉄骨造では、設計段階で(確認申請前に)意匠と設備や構造との施工図レベルの検討・調整が必要である。

1.鉄骨柱位置は外壁の取付け寸法に合わせて決定する

鉄骨造の鉄骨柱の位置は外壁パネルとの関係を考慮して、できるだけ外壁側に寄せた位置で決定する。外壁位置は面積に関係する。鉄骨位置は構造に影響する。したがって鉄骨造では設計段階で仕上げなどの施工図レベルの検討・調整が必要である。


ALC横張り

2.基礎、柱脚を外部に突出させない

鉄骨造の柱脚は基礎の上にセットされるが、地中の基礎の高さ、1回床仕上げレベルとの関係、柱位置及び外壁位置の関係を調整しておく必要がある。基礎の天端レベルを下げてベースプレートを設置すれば、外壁の腰をパネルと同面にきれいに納めることができる。
また、柱部の腰壁厚が一般の腰壁厚より薄くなり、クラックが入りやすいので、あらかじめ、ひび割れ誘発目地を設けるほうが望ましい。


ALC横張り

3.屋根スラブの水勾配は鉄骨レベルで確保する

設計者は、雨水の集排水計画による水勾配に合わせて、屋根の鉄骨レベルを決定する。鉄骨の勾配はできるだけシンプルにしたいので、構造設計者との調整が必要である。コンクリートスラブを設ける場合は増し打ちを少なくし、排水溝のための床下がりなどに対応した梁レベルなども考慮する。


鉄骨造の屋根勾配

1級建築施工管理技士 鉄骨工事 開口補強は耐風型にする

建築品質 鉄骨造


033)開口補強は耐風型にする

鉄骨造におけるコンクリート系パネルや金属パネルなどの外壁は、パネル取付けのための間柱や胴縁が設けられる。その外壁に開口部(窓や出入り口など)を設けるときは、必ず開口補強が必要である。その開口補強を外壁業者にまかせてしまっては、十分な強度が確保されない。

1.単窓の開口補強

単窓の場合、開口補強材は二次部材であるため、構造軸組ずに表されないケースがある。窓の位置による風圧とその負担面積、窓の幅と高さ、外壁材の重量及び撓みを考慮して、計算により開口補強部材を決める。構造設計者に確認する。


単窓の開口補強

2.横連窓の開口補強と耐風梁

(1) 横連窓で、間柱を設けて室内に見せてよい場合
工場などのように内部に間柱があっても良いと割り切れる場合は、間柱の間に開口補強を設けるだけでよい。

横連窓の開口補強(室内側に間柱を見せてよい場合)

(2) 横連窓で、間柱を室内に見せない場合

間柱を設けないで横連窓にする場合は、腰壁、連窓、垂壁のそれぞれにかかる風圧に耐えなければならないので、柱間に耐風梁が必要である。耐風梁は支点間距離が長いため、面外方向の撓みを1/200以下、かつ20mm以下にする。耐風梁は構造軸組図に表記されなければならないが、記載されていなケースもあるので、確認する。


横連窓の開口補強(間柱を見せない場合)