7章鉄骨工事 13節鉄骨工事の精度

第7章 鉄骨工事
13節 鉄骨工事の精度
7.13.1 一般事項
(a) 「鉄骨造の継手又は仕口の構造方法を定める件」(平成12年5月31日建設省告示第1464号)により,表7.13.1に示す項目について限界値が規定された。①の限界値は、JASS 6付則6[鉄骨精度検査基準]における限界許容差と同じであるが、②の通しダイアフラムと梁フランジの関係は、JASS 6付則6では規定されていない。また、③は、JASS 6付則6よりも厳しい規定となっているので、注意が必要である。表7.13.1に示す項目についての検査方法補強方法等については、鉄骨製作管理技術者登録機構「突合せ継手の食い違い仕口のずれの検査・補強マニュアル」を参考にするとよい。
表7.13.1 溶接部の形状・寸法
表7.13.1_溶接部の形状・寸法.jpg
(b) 「標仕」7.3.3及び「標仕」7.10.2で、鉄骨の製作精度及び建方等の工事現場施工の精度は、JASS 6付則6によることとしている。次にその抜粋を示す。
鉄骨精度検査基準
この基準は、一般の構造物の主要な鉄骨の製作ならびに施工に際しての寸法精度の許容差を定めたものである。許容差は、限界許容差と管理許容差に区別して定めた。限界許容差は、これを超える誤差は原則として許されない最終的な個々の製品の合否判定のための基準値である。一方、管理許容差は、95%以上の製品が満足するような製作または施工上の目安として定めた目標値であり、寸法精度の受入検査では、検査ロットの合否判定のための個々の製品の合否判定値として用いられる。
寸法精度の受入検査において、個々の製品が限界許容差を超えた場合には不良品として、再製作することを原則とする。ただし、再製作できない場合にはそれに相当する補修を行い再検査に合格しなければならない。また、個々の製品が管理許容差を超えても限界許容差内であれば補修・廃棄の対象とはならない。管理許容差を合否判定値として抜取検査を行う場合、検査ロットが不合格となった場合は、当該ロットの残りを全数検査する。ただし、検査ロットの合否にかかわらず限界許容差を超えたものについては、工事監理者と協議して補修または再製作等の必要な処置を定める。
なお、本基準は以下に示すものには適用しない。
(1) 特記による場合または工事監理者の認めた場合
(2) 特に精度を必要とする構造物あるいは構造物の部分
(3) 軽微な構造物あるいは構造物の部分
(4) 日本産業規格で定められた鋼材の寸法許容差
(5) その他、別に定められた寸法許容差
付表1 工作および組立て
付表1_工作および組立て1.jpeg
付表1_工作および組立て2.jpeg
付表1_工作および組立て3.jpeg
付表2 高力ボルト
付表2_高力ボルト1.jpeg
付表3 溶 接
付表3_溶接1.jpeg
付表3_溶接2.jpeg
付表3_溶接3.jpeg
付表4 製 品
付表4_製品1.jpeg
付表4_製品2.jpeg
付表4_製品3.jpeg
付表4_製品4.jpeg
付表5 工事現場
付表5_工事現場1.jpeg
付表5_工事現場2.jpeg
付表5_工事現場3.jpeg
付表5_工事現場4.jpeg

7章鉄骨工事 14節資料

第7章 鉄骨工事
14節 資 料
7.14.1  溶接用語
JIS Z 3001-1(溶接用語一第1部:一般)
JIS Z 3001-2(溶接用語一第2部:溶接方法)
JIS Z 3001-4(溶接用語一第4部:溶接不完全部)
の抜枠を次に示す。
なお、JIS Z 3001-3(溶接用語一第3部:ろう接)は省略する。
JIS Z 3001-1:2013
4.1 共通
 
4.1.1 基本
JIS_Z3001-1_4.1.1_基本.jpeg
 
4.1.2 溶接部の性質
JIS_Z3001-1_4.1.2_溶接部の性質.jpeg
JIS_Z3001-1_4.1.2_溶接部の性質(溶着金属,溶融部,ボンド部).jpeg
 
4.2 試験
 
4.2.1 試験一般
JIS_Z3001-1_4.2.1_試験一般.jpeg
 
4.4 アーク溶接
 
4.4.3 溶接継手
JIS_Z3001-1_4.4.3_溶接継手.jpeg
JIS_Z3001-1_4.4.3_溶接継手(すみ肉のサイズ等).jpeg
4.4.4 溶接姿勢
JIS_Z3001-1_4.4.4_溶接姿勢.jpeg
  
4.6 特殊の溶接
 
4.6.5  ロボット溶接
JIS_Z3001-1_4.6.5_ロボット溶接.jpeg
 
4.7 ガス溶接及び熱切断
 
4.7.1 溶接・切断方法
JIS_Z3001-1_4.7.1_溶接・切断方法.jpeg 
 
JIS Z 3001-1 : 2013
JISZ3001-2:2013
 
4. 用語及び定義
4.3 融接
 
4.3.3  アーク溶接
JIS_Z3001-2_4.3.3_アーク溶接1(アーク溶接等).jpg
JIS_Z3001-2_4.3.3_アーク溶接2(サブマージアーク溶接等).jpg
JIS_Z3001-2_4.3.3_アーク溶接3(アークスタッド溶接).jpg
 
4.3.6 エレクトロスラグ溶接
JIS_Z3001-2_4.3.6_エレクトロスラグ溶接.jpeg
 
4.4 アーク溶接の施工
 
4.4.1 溶接施工
JIS_Z3001-2_4.4.1_溶接施工1(パス、ビード等).jpeg
JIS_Z3001-2_4.4.1_溶接施工2(溶込み等).jpeg
JIS_Z3001-2_4.4.1_溶接施工3(クレータ,止端,ウィービング等).jpeg
4.4.2 溶接施工管理
JIS_Z3001-2_4.4.2_溶接施工管理.jpeg
4.4.3 溶接補助材
JIS_Z3001-2_4.4.3_溶接補助材1(始端タブ、終端タブ).jpeg
JIS_Z3001-2_4.4.3_溶接補助材2(裏当て).jpeg
 
JIS Z 3001-2:2013
JIS Z 3001-4:2013
 
4. 用語及び定義
 
4.2 溶接不完全部一般
JIS_Z3001-4_4.2_溶接不完全部一般.jpeg
 
4.4 空洞
JIS_Z3001-4_4.4_空洞.jpg
 
4.5 介在物
JIS_Z3001-4_4.5_介在物.jpeg
4.6 融合不良・溶込不良
JIS_Z3001-4_4.6_融合不良・溶込不良.jpeg
 4.7 形状不良
JIS_Z3001-4_4.7_形状不良、4.8_その他の不完全部.jpeg
 
 
JIS Z 3001-4:2013
7.14.2 建築構造用鋼材の品質証明ガイドライン
(a) 「建築構造用鋼材の品質証明ガイドライン」が.これまでの「建築構造用鋼材の新しい品質証明方式」に代わり,2009年12月に(-社)日本鋼構造協会 建築鉄骨品質管理機構から発行された。本ガイドラインの骨子を次に示す。
(1) 鋼材等の品質確認は、書類による品質確認と現物の品質確認で行われる。
(2) 規格品証明書の原本を保有する工程(会社)が使用した鋼材の規格品証明料の内容をリスト化し,原品証明書(用紙C)を作成発行する。
(3) 用紙Cに基づき鉄骨製作業者は鉄骨工事使用鋼材等報告書(用紙B)を作成する。
(4) 用紙B、Cの表紙として用紙A1、A2を作成する。
(5) ミルシート及びその写しの提出を不要とする。
(6) ミルシートを提出する従来方式の場合によるか本方式によるかは事前に合意しておく。
(b) 「建築構造用鋼材の品質証明ガイドライン」(2009年12月25日1版)の抜粋を次に示す。
なお、実際の工事に適用する場合は、ガイドライン本文を参照する必要がある。
建築構造用捐材の品質証明ガイドライン
 
1.2 本ガイドラインの活用の前提
 
1.2.1 自工程管理に基づく品質管理
 
施工者は鉄骨製作に必要な設計図書を設計者から受理して後、鉄骨製作業者へ支給する。その仕様に基づき鉄骨製作業者が材料を発注する。鉄骨製作業者が製作した鉄骨製品は施工者の受入検査を経て工事現場へ搬入され,工事現場で組立て、接合され鉄骨が完成する。そして施工者は建物完成後、施主へ引き渡す。このように鉄骨工事においては、施主と施工者、施工者と鉄骨製作業者という2段階の契約関係があり、施工者は建築工事の元請けとして鉄骨製品の品質についても責任を有する。
 
建築基準法で鋼材類(鋼板、形鋼)はJIS規格適合であることが規定されている。また、鋼材類は初期(製造出荷)段階でJIS規格適合も含む製品の個別識別がなされている。その鋼材類は、製造メーカーから鉄骨製作工場へ直接、あるいは切断などの中間加工をされて納入される。いずれの場合も初期段階で特定された鋼材類が、工程の各段階で間違いなく流通しなければならない。
 
鋼材類の流通過程の各段階で使用されている鋼材類の品質を確認し、その結果を書類に残し次の工程へ渡すことで結果として流通段階で間違い無く使用されたことが証明できる。
 
鋼材等の品質確認は「書類確認」と「現物確認」によって行われる。そして「書類確認」については、「規格品証明書の確認」がポイントとなる。(注1)
 
鉄骨の品質は関連する全ての工程で作りこむという自工程責任による自主管理を尊重することで過度の費用が発生しないようにする事ができる。本ガイドラインは特に鋼材類の流通や各工程段階での自主管理を明確に打ち出したものと考えることができる。
 
施工者は鉄骨製作業者を通して提出される書類の内容を確認することで材料管理の証しとすることになる。そのため、書類の内容について施主や行政機関に説明ができるように鉄骨製作業者の材料管理体制・方法や鉄骨製作業者から材料の切断などの発注を受ける中間加工業者の管理体制を把握しておくことも重要である。
 
 
なお、規格品証明書の記載内容(機械的性質、化学成分)のレベル(例えば、化学成分値の多少など)や実際に使用された鋼材類から試験片を採取して、機械試験や化学成分分析を行って記載内容と照合を行うなどは考えていない。但し、当事者間の協議などで化学成分値を試験する場合、携帯型分析器で分析したり鋼材から試験片を採取して分析する方法がある。なお携帯型分析器には機械によって分析可能な成分に違いがあったり、シールドガスが必要となるなど特徴があるので使用にあたっては注意が必要である。
 
本ガイドラインでは、流通過程で切断などの工程がある「鋼材類」を主に対象とする。但し、証明書には溶接材料、高力ボルトなどを含むため呼称は「鋼材等」としている。
 
(注1)
規格品証明書の定義はJASS6による。JASS6では、規格証明書について「JIS、その他の団体などの公的に認知された規格があり、その報告規定に基づいて製造業者が発行する証明書。もしくは、国土交通大臣認定品に適合することを証明する書類で、社名・捺印のあるものを言う。」と規定されている。
 
 
1.2.2 裏書ミルシートに代わる原品証明書の採用
 
本ガイドラインで提案されている鋼材品質証明の方法は、いわゆるミルシート提出方式に代わるものである。結果としてミルシートの提示・提出が不要となるものである。一見、管理レベルが下がったかのように思われるが実際に切断を行う業者にとっては材料の出所を明確にし、記録に残すことが求められ、本ガイドラインによって原品証明書を作成・管理するのは、むしろ厳しい管理方法である。また、作成した書類が最終的に使用材料のJIS適合証明の証拠となるものであり責任も重くなる。
 
したがって、原品証明書の採用にあたっては、提出方法、保管方法、保管期間、業務対価等について事前に工事関係者で文書合意しておくこととする。
 
また、ミルシートについては提出を義務としないこととしているが、本ガイドラインによる証明方法へ移行するまでの間、鋼材の品質確認を”原品証明書による”のか”規格品証明原本、裏書きミルシートの提出による”のかについても、事前に工事関係者の合意により決定しておく。(注2)
 
(注2)
ミルシート提出方式においては、いわゆる紐付き材について、材料と工事名を紐付け管理するために、規格品証明書に需要家名として材料を購入した会社名でなく、部材を使用する需要家・工事名称を記載する場合がある。
切板会社やファブリケーターの在庫材についてはミルシートの需要家名や工事名が異なっていても、トレーサビリティが確保されていれば使用に問題はない。
今後、原品証明書方式を基本とすることから、原則として需要家名は材料購入会社名を記載することとし、材料の取り扱い(他工事への使用など)は購入会社の自由裁量とする。
 
 
1.2.3 証明コストの負担と発注仕様への明示
 
本ガイドラインに沿って.鋼材の加工業者等が使用した鋼材について証明書の作成を行うために必要な作業や記録の保全については、一定のコストが生じることは事実である。このため、建築の施工者は鉄骨製作業者等に対して、証明書の作成.提出を発注仕様書に明示する等により契約業務として明確化しその費用を支払う必要があり、鉄骨製作業者は.その前段の鋼材の流通、加工、生産業者に対して同様の対応をとる必要がある。
 
こうしたコストは、最終的に建築費の一部となり建築主が負担することになるが、建築用鋼材の品質は建物利用者の生命等の安全に直結するものでありかつ、万一鋼材が誤用されたときの被害の大きさに鑑みれば、建築主においては、使用鋼材等が明らかにされていない建築物の受け渡しを受けるべきでなく、コスト削減を名目に省略されてはならない不可欠な負担であることを理解する必要がある。さらに建築主は、建築主事等による検査受検の申請者として、使用鋼材等が法令に適合していることに関する書類等を提出する立場にもある。
 
このため、建築主に対する意識啓発について行政も含め建築界全体として取り組む必要があるとともに、施工者においては、建築主との個別の契約において、本ガイドラインに沿った報告書等の提出を業務内容とする必要がある。
 
なお、鋼材を使用したそれぞれの工程で使用鋼材を明らかにする本ガイドラインの方法は、施工者が施工現楊における成分検査により使用鋼材を事後的に特定するなどの他の方法よりも合理的で、全体としての証明コストが低いことは明らかである。
 
 
2. 鋼材等の品質確保のフロー
 
2.1 書類による品質確認
 
書類による品質確認の流れの概略を以下に示す。
 
(1) 各工程(会社)が行った品質確認の結果は原品証明書(用紙C)にとりまとめ次の工程(会社)へ提出する。
 
この原品証明書は鋼材等の規格品証明書原本(ミルシート)を保有し加工を行った工程が作成する。この会社には一般流通業者(問屋)で自社保有材を少量販売する会社も含まれる。
 
原品証明書を取りまとめた工程は、その鋼材等の品質を確認した結果について保証する責任を負う。但し、規格品証明書の記載内容に関して保証責任は無い。
 
(2) 原品証明書を作成する工程は、原品証明書から規格品証明書原本へ遡れることが可能な仕組みを構築しなければならない。
 
(3) 鉄骨製作業者は.使用した鋼材等の品質を確認した結果を「鉄骨工事使用鋼材等報告書」(用紙B)にまとめ、用紙Cとともに施工者に提出する。(注3)
 
なお、鉄骨製作業者の確認は前工程(会社)の発行した原品証明書を確認する方法と自社工程を確認する方法の二つがある。
 
また,鉄骨製作業者の会社様態によっては、製作を担当する製作工場が行う場合もある。
 
 
(4) 施工者は.書類および現物の確認後その結果を「鉄骨工事使用鋼材等報告書」(用紙A2を表紙として、用紙B、Cとともに)として工事監理者に提出する。
 
(5) 工事監理者は、内容を確認し発注者である施主に報告する。その後、施主の代理として中間検査・完了検査時に特定行政庁、建築主事ないしは、確認検査機関に提出または提示する。(用紙A1を表紙として、用紙A2,用紙B,   Cとともに)鉄骨工事における鋼材、確認書類の流れ、関連関係者の行為については、付録aも参照。
 
(注3)  JASS6では、鉄骨工事の元請けとして施工者(ゼネコン)、鉄骨製作の受注者を鉄骨製作業者(ファブリケータ)としている。本書でも、定義はこれに倣う。
 
 
2.2 現物の品質確認
 
(1) 本ガイドラインでは鋼材類の現物での確認方法を原則、塗色識別によることとしている。従ってSS・SM材のようなプリントマークの無いSN鋼材以外にも適用できる。
 
現物確認の方法としてSN材でのプリントマーク、形鋼類でのラベル確認も有効であるが、保管期間、取扱い不備で消える、読み難い、剥がれるなどが懸念される。このような不具合が無く明瞭に識別可能な場合にはSN材でのプリントマーク、形鋼類でのラベル確認も適用できる。なお、鋼材の識別表示は原則、付録bに示す日本鋼構造協会規格(JSS I 02 2004)による。また、鋼材のマーキング、ラベル表示例を付録c、高力ボルトヘッドマーク一覧表を付録d、溶接材料の原品表示例を付録 e、およびアンカーボルトの表示例を付録 f に示す。(注4)
 
(注4)
原品の識別方法として、切断部材に部材番号を記入する場合がある。規格識別の番号記入や多桁数の番号記入など要求仕様は様々であり、また番号記入ができない小物部材等もあり、部材番号記入については、事前に記入方法、作業費用等につき文書合意しておくこととする。
 
 
3. 本ガイドラインで使用される書類について
 
3.1 原品証明書〈用紙C〉
 
(1) 規格品証明原本を保有し最初に作業する工程(会社)は保有する規格品証明書原本内容をリスト化し、原品証明書を作成・発行する。(注5)
 
原品証明書の発行タイミングは、工事の節・工区などの単位に纏めて発行することを基本とし、事前に関係者にて取り決めておくこととする。
 
これ以降の工程は直前工程の発行した原品証明書から必要項目を転記し、原品証明書を作成する。
 
 
(2) 規格品証明書原本、規格品証明書原品のコピー、原品証明書は適切な期間保有する。保管期間が過ぎた場合は破棄できる。
保行期間が法令で定められた場合、あるいは設計図書の特記のような別規定がある場合はそれに従う。改正建設業法において、「営業に関する図書の保存が引渡し後、10年」と定められた。これに準拠して保存期間を定める施主、施工者などもあると考えられるので工事開始前に関係者で保存の方法・期間・管理費用等について文書合意しておくことが重要である。なお、鉄鋼メーカーにおいては規格品証明書の現物やデータの保存期間は、各社の判断となっている(今後JIS認証制度等において保存期間を定めることも提案されている)。
なお、通常の商行為で使用する納品書などの扱いについてはここでは関与しない。
一般流通業者(問屋)が自社保有材料を少量販売する場合、規格品証明書原本、原本相当規格品証明書、原品証明書に対応する鋼材類が全て使用された場合は、保管期間の間はファイルする必要がある。
また、鉄骨製作業者は、一般流通業者や切板会社への発注の際には、発注先の会社がトレーサビリティーをとれているところかどうかを留意して選定する必要がある。
 
 
(3) 原品証明書を受け取る工程(会社)は、原品証明書を発行する工程(会社)の発行に関わる管理が適切に行われているかの確認を適時行う義務がある。
特に、残材(端材)の管理方法(ラベル、ステンシルが残されているか、あるいは転記されているか。切断報告書にこれらの記載があるか等)に留意する必要がある。
なお、その確認の頻度は特に定めないが、ISO認証の有無などを考慮して当事者間で協議する。
 
 
(4) 使用鋼材が発注仕様に適合していることの説明責任(立証責任)は鉄骨製作業者他、鋼材を調達した者が負う。従って、鉄骨製作業者の材料管理責任者は、原品証明書から規格品証明書原本へ遡ることが可能かどうかなどを確認しなければならない。
 
 
(5) 原品証明書の記載事項は以下の通りとする。
・日付、当該業者名、責任者名、署名あるいは捺印
・整理番号
・部材・部品あるいは記号:柱・梁(フランジ・ウェブ)、ブレース、アンカーボルト、ダイアフラム
・規格、種類:JIS規格、国土交通大臣認定
・寸法、数量(重量)
・メーカー名:鉄鋼メーカー、中間加工業者
・証明書番号、製品番号
製品番号:規格品証明書原本において個々の製品を特定できる項目名とする。
スプライスプレート、リブプレート、ガセットプレートについては.記載項目は、部位・部材、規格、メーカー名のみとする。
なお、納品書、送り状など既に使用している帳票を利用する場合で、上記項目で鋼板番号等の不足な項目がある場合は別途、同帳票に追記し、原品証明書とすることもできる。
(記載スペースが無い、価格が表示されているなどで当事者外への提出が難しい場合は規格品証明書原本をリスト化した原品証明書を作成する)。
(6) 原品証明書以外の添付書類は原則不要とする。
添付書類の提出を求める場合は、必ず事前に書類内容、提出方法、対価等につき関係者の合意により決定しておくこととする。
(注5)
JASS 6では、「原品証明書とは、規格品証明書(原本相当規格品証明書を含む)のついている鋼材の切断・切削・孔あけなど中間加工を施す業者、あるいは一般流通業者(問屋)が少量販売する鋼材に付して発行する証明書」と定義しているが、本ガイドラインでは規格品証明再原本を保有する鉄骨製作業者が作成する証明書も加える。
 
 
3.2 鉄骨工事使用鋼材等報告書〈用紙B〉
 
(1) 鉄骨製作業者は、製作の元請けとして原品証明書に基づき「鉄骨工事使用鋼材等報告書」を作成する。
 
記載項目は以下の通りとする。
 
・日付、鉄骨製作業者名、材料管理責任者名・捺印、鉄骨製作管理技術者登録番号
・部位・部材:柱・梁(フランジ、ウェブ)、ブレース、アンカーボルト、ダイアフラム、溶接材料、高カボルト、スプライスプレート、リブなど
・規格、種類:JIS規格、国土交通大臣認定
・品種、形状:鋼板、鋼管、切板、H形鋼・・
・納入者  :鉄鋼メーカー、中間加工業者
・規格確認方法:現物・書類確認の方法
・証明書ページ:原品証明書の検索用
 
 
(2) 書類構成
 
表紙、鉄骨工事使用鋼材等証明書、原品証明書
・添付科類について
原則として添付書類は不要とする。
 
(3) 作成対象とする部位・部材を以下に示す。
 
下記の部位・部材を対象とする。但し、別途指示がある場合はそれによる。
柱:柱体、仕口内スチフナー、ダイアフラム、フランジ ・ウェブ
大梁、小梁:フランジ ・ウェブ
ブレース、アンカーボルト、スプライスプレート、リブプレートなど
 
 
3.2. 補  鉄骨工事使用鋼材等証明書作成時の対象部位・部材について
ガイドライン_3.2.補_鉄骨工事使用鋼材等証明書作成時の対象部位・部材について.jpeg
ガイドライン_3.2.補_鉄骨工事使用鋼材等証明書作成時の対象部位・部材について2.jpeg
 
 
3.3 鉄骨工事使用鋼材等報告書〈用紙A2〉
 
施工者が工事監理者に提出する際に作成するもの。前記の原品証明書、鉄骨工事使用鋼材等証明書を確認した上、これらの表紙として用紙A2を作成する。
 
 
3.4 鉄骨工事使用鋼材等報告書〈用紙A1〉
 
工事監理者が建築主事等に提出する際に作成するもの。前記の原品証明書、鉄骨工事使用鋼材等証明書、施工者が発行した鉄骨使用鋼材等報告書を確認した上、これらの表紙としてA1を作成する。
 
 
4. 鋼材類と報告書の流れ例
 
鋼材類と報告書の流れをいくつかのケースに分けて示す。これらは代表的な流通過程のモデル化である。この他にも流通形態があると思われるが、本ガイドラインの主旨を理解して適用することが必要である。
 
また、流通過程で関与する商社など一部の機能は省略している。
 
このフローで示している「納品書、送り状」は、加工された製品に関するものを指している。
 
【 ケース1 】
 規格品証明書原本は鉄骨製作業者が保有する場合。
ケース 1-1
鉄骨製作業者がロール発注し、鋼材、規格品証明書原本がメーカーから鉄骨製作業者へ送られる場合。
ガイドライン_4.鋼材類と報告書の流れ(ケース1-1).jpeg
ケース 1-2
鉄骨製作業者がロール発注する。鋼材は中間加工業者で切断などの加工をされ鉄骨製作業者へ送られる。規格品証明書原本は中間加工業者を経由しないで、メーカーから鉄骨製作業者へ送られる場合。
ガイドライン_4.鋼材類と報告書の流れ(ケース1-2).jpeg

 ● 中間加工業者は、厚板シャーリング業者(外注・委託シャーリング業者を含む)、ガセットなど専門の中間加工業者、BH業者、B-BOX業者、コラム業者が該当する。中間加工業者は、鉄骨製作業者からの発注者に基づいた加工を行い、納品書、送り状を添え、製品を納入する。
なお、コラムについてはケース4、BH業者、B-BOX業者についてはケース5に示している。

 
 

鉄骨製作業者が、孔明け、切断、溶接等の作業を単に外注した場合は、その元請けたる鉄骨製作業者の責任の範囲とし書類の作成を行う。

 
 
【 ケース2】
規格品証明書原本は問屋または中間加工業者が保有する場合。
 
 
ケース2-1
1次問屋または中間加工業者は自社保有の材料を使用して鉄骨製作業者からの発注書に基づいた加工を行い、用紙Cを作成し、提出する。納品書、送り状を添え、加工済鋼材類を納入する。
ガイドライン_4.鋼材類と報告書の流れ(ケース2-1).jpeg
 
ケース2-2
 
鉄骨製作業者には、1次の中間加工業者から納入される。1次の中間加工業者へは2次問屋または中間加工業者から鋼材等が納入される。
 
鉄骨製作業者と売買を行う1次中間加工業者は鉄骨製作業者からの発注書に基づいた加工を行い、2次問屋または中間加工業者の発行した原品証明書、納品書、送り状を基に用紙Cを作成し、納品書、送り状を添え、加工済鋼材類を納入する。
ガイドライン_4.鋼材類と報告書の流れ(ケース2-2).jpeg
 
 

● 中間加工業者の定義、作業を単に外注した場合の考え方は、ケース1-2と同様である。中間加工業者間で材料(在庫材)手配を含め切断を委託する場合は、ケース2-2に相当する。

 
 
【 ケース3】
鉄骨製作業者が手持ちの余材を使用した場合。
 
 ガイドライン_4.鋼材類と報告書の流れ(ケース3).jpeg

ケース3-1 ケース1の場合の余材:ケース1の方法による。
ケース3-2 ケース2の場合の余材:ケース2の方法による。

 
 
 
5.2 書 式
 
5.2.1 用紙A1表紙
ガイドライン_5.2.1_用紙A1表紙.jpeg
 
5.2.2 用紙A2表紙
 ガイドライン_5.2.2_用紙A2表紙.jpeg
 
5.2.3 用紙B:鉄骨工事使用鋼材等報告書
ガイドライン_5.2.3_用紙B_鉄骨工事使用鋼材報告書.jpeg
ガイドライン_5.2.3_用紙B_鉄骨工事使用鋼材報告書、節毎の2ページ以降.jpeg
 
5.2.4 用紙C:ケース1-1, 1-2 鉄骨製作業者が証明書を作成する場合

●ケース1-1 鋼材、規格品証明書原本は鉄件製作業者へ

ガイドライン_5.2.4_用紙C:ケース1-1_鉄骨製作業者が証明書を作成する場合1.jpeg
ガイドライン_5.2.4_用紙C:ケース1-1_鉄骨製作業者が証明書を作成する場合1.jpeg
 

● ケース1-2 規格品証明再原本は鉄骨製作業者へ,中間加工業者が加工する。

 ガイドライン_5.2.4_用紙C:ケース1-2_鉄骨製作業者が証明書を作成する場合2.jpeg
 
 

●ケース3:鉄骨製作業者が手持ちの余材を使用した場合
ケース1の場合の余材の時はケース1に、ケース2の場合の余材の時はケース2に倣う。

 
 
5.2.5 用紙C:ケース2  中間加工業者が証明書を作成する場合      
【用紙C】
 
 

● ケース2 :規格品証明書原本は中間加工業者:原本を持つところが証明書を作成する。

ガイドライン_5.2.5_用紙C(ケース2)中間加工業者が証明書を作成する場合.jpeg
建築構造用鋼材の品質証明ガイドライン

7.14.3 SN鋼材材質識別表示記号・位置及び鋼材の識別表示標準
(a)「SN鋼材材質識別表示記号・位置」(新しい建築構造用鋼材より)を次に示す。
SN鋼材材質識別表示記号・位置
7.14.3_SN鋼材材質識別表示記号・位置及び鋼材の識別表示標準.jpeg
(b) 日本鋼構造協会規格JSS I 02(鋼材の識別表示標準)の抜粋を次に示す。
JSS  I 02-2004
  表 – 1 識別色および塗色方法
JSS_Ⅰ_02-2004_表-1_識別色および塗色方法.jpeg
参考文献
参考文献.jpeg

8章 コンクリートブロック工事等 1節 共通事項

8章 コンクリートブロック、ALCパネル及び押出成形セメント板工事

01節 共通事項
8.1.1 一般事項

この章で取り扱う主要な材料ごとの適用範囲は次のとおりである。

(ア) コンクリートブロック:
小規模補強コンクリートブロック造、帳壁(内・外壁)及び塀(高さ2.2m以下)

(イ) ALCパネル:屋根(非歩行用)、床、外壁及び間仕切壁

(ウ) 押出成形セメント板(ECP):外壁及び間仕切壁

8.1.2 基本要求品質

(1) この章で対象とするコンクリートブロック、ALCパネル及び押出成形セメント板は、いずれもセメント系の工場生産品であり、材料の寸法や品質等の規格がJISで定められているので、これに適合するものを用い、そのことが分かるようにしておく。

(2) コンクリートブロック、ALCパネル及び押出成形セメント板は、一般的に、仕上材の下地として用いられる。したがって、適切な位置に正しい方法で精度よく取り付けられていないと、次工程の仕上げに悪影響を及ぼすだけでなく、耐震性や構造耐力上の欠陥となる場合もある。このため、施工方法や取付けの詳細、施工精度や管理の方法等を品質計画として 施工計画書や施工図等で明確にし、これによって施工を進め、管理した結果が分かるようにしておく。

(3) コンクリートブロック、ALCパネル及び押出成形セメント板では、構造耐力上必要な強度や耐久性をもつものが特記されることが原則となっている。また、「標仕」で、取付け工法や耐火性能を確保するために必要な事項等が規定されている。「構造耐力、耐久性、耐火性等に対して有害な欠陥がないこと。」とは、例えば、ブロック工事では、設計図書で鉄筋の種類や径、継手や定着の位置、長さ、かぶり)厚さ等が定められているので、これらの仕様をまもり、施工の手順、精度、管理の方法等について、品質計画で具体的に記載し、これによって施工及び管理したことが分かれば、要求された性能を満たしていることになる。

8章 コンクリートブロック工事等 2節 補強コンクリートブロック造

8章 コンクリートブロック、ALCパネル及び押出成形セメント板工事

2節 補強コンクリートブロック造

8.2.1 一般事項

(1) 「標仕」8.2.1で規定している適用範囲は、空洞ブロックを組積し、鉄筋で補強された耐力壁による小規模な構造物としており、補強コンクリートブロック造の3階建以下を想定している。部分的に型枠状ブロックを用いる場合も基本的には本節を参考にして工事を行う。

(2) 作業の流れを図8.2.1に示す。

図8.2.1 補強コンクリートブロック造工事の作業の流れ

(3) 施工計画曹の記載事項は、概ね次のとおりである。

なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。

① 工程表(施工図の作成、各工区別の着工・完了等の時期)
② 施工業者名、作業の管理組織
使用材料及び品質(コンクリートブロック、コンクリート、鉄筋、モルタル)
コンクリート及びモルタルの調合並びに充填方法
⑤ ブロック割りの基準
⑥ 一般部分の工法(鉄筋間隔、定着方法、継手の工法及び位置、ブロックの積み方)
⑦ 一日の枚上げ高さの限度(1.6m)
ブロック壁の取合い部の工法
開口部まぐさの工法及びその周辺の補強方法
がりょうの工法
⑪ 建具枠の取付け方法
⑫ アンカーボルト、木れんが、諸金物等の埋込みの必要な箇所及び処置の方法
⑬ 他の材料による柱、壁等との取合い部の処置の方法
⑭ 設備配管、ボックス類の取付け方法
⑮ 寒冷期の施工に関する対策(シート養生、採暖養生等)

作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等

(4) コンクリートブロックの施工に関して、「ブロック建築技能士」の資格制度が設けられている。

8.2.2 材 料

(1) ブロックの種類は、「標仕」8.2.2ではJIS A 5406(建築用コンクリートブロック)に適合するものとし、種類、モデュール呼び寸法及び正味厚さは全て特記により指定されることになっている。特記のない場合、空洞ブロック、圧縮強さC(16)とするとよい。正味厚さは、構造物の規模や使用場所等で決まる。モデュール呼び寸法は、長さ400mm、高さ200mmであり、市販されているブロックのほとんどのものがこのモデュール呼び寸法であるが、これ以外のモデュール呼び寸法のものが用いられる場合には、必ず特記される。

JIS A 5406では、2017年の改正で、環境保全の立場から、セメントとしてJIS R 5214(エコセメント)に規定する普通エコセメントが認められることになった。これは、強度及び耐久性に関する試験データの蓄積が認められ、また、関係官庁において用途拡大について検討されてきた結果、国土交通省における建築材料への利用制限が解除されたことによる。同様に骨材も、スラグ骨材(JIS A 5011-1、JIS A 5011-2、JIS A 5011-3、JIS A 5011-4)、コンクリート用再生骨材(JIS A 5021、JIS A 5022)やこの規格に規定するブロックを破砕した再生骨材も認められており、ブロックヘの表示も不要となった。これらの使用に当たっては法規上の制限もあるので、注意と確認が必要である。

(ア) JIS A 5406では種類として次の6つに区分している。

(a) 断面形状による区分としては、図8.2.2に代表的な形状を示すように空洞ブロック及び型枠状ブロックの2種類に分けられ、空洞ブロックの配筋されている部分には必ずモルタル又はコンクリートを充填することを想定したものであり、型枠状ブロックは空洞部全てにコンクリートが充填される打込み型枠としての機能をもつものである。

(b) 外部形状による区分として、空洞ブロックは基本形ブロック、基本形横筋ブロック及び異形ブロックの3種類に、型枠状ブロックは基本形横筋ブロック及び異形ブロックの2種類に区分された。用語の定義が変更され、基本形ブロックとは空洞ブロックのうち、建築物の組積体に使用する基本的な形状のもので、一方向だけ鉄筋の配置が可能な空洞部をもつ形状のブロックである。基本形横筋ブロックとは、縦横二方向の鉄筋の配置が可能な空洞部をもつ形状のブロックであり、空洞ブロックではこの形状のみで構築されることの多い「ブロック塀」用が想定されたと考えられる。型枠状ブロックの基本形は、基本形横筋ブロックとなる。異形ブロックは隅(コーナー)用、まぐさ用、半切などの用途 によって外部形状の異なるブロックで、基本形ブロック及び/又は基本形横筋ブロックと組み合わせて使用するブロックと定義されている。

(c) 圧縮強度による区分では、空洞ブロックの正味断面圧縮強さの20N/mm2を追加し、D(20)とした。これは高強度ブロックや肉厚を薄くして軽量化したブロックなどが開発されていることも考慮したものである。また、角柱切出し試験体で求める正味断面圧縮強さにより区分し、整理した。

(d) 化粧の有無による種類として素地ブロックと化粧ブロックの2種類に区分される。

化粧ブロックとは、フェイスシェル表面に、割れ肌仕上げ、こたたき仕上げ、研磨仕上げ、塗装仕上げ、ブラスト仕上げ、リブなど、意匠上有効な仕上げをほどこしたブロックと定義され、素材そのものへの着色等は除外されている。

(e) 防水性による種類として普通ブロック及び防水性ブロックの2種類に区分され、防水性ブロックの記号はWが表示される。型枠状ブロックの透水性規格値が変更されたので使用する場合には注意が必要である。

(f) 寸法の許容差による種類として普通精度ブロックと高精度ブロックの2種類に区分され、高精度ブロックの記号はHが表示される。記号が「E」から「H」に変更されたのは、圧縮強さの区分に「D」が追加されたことにより「D」に連続する「E」では誤解を招くおそれがあると懸念されたためである。ほとんどのブロックは、普通精度ブロックである。

図8.2.2 建築用ブロックの断面形状の例(JIS A 5406 : 2017)
(イ) ブロックの種類を表8.2.1に示す。
表8.2.1 ブロックの種類(JIS A 5406 : 2017)

(ウ) ブロックの性能を表8.2.2に示す。

表8.2.2 ブロックの性能(JIS A 5406 : 2017)
(エ) 基本形ブロックのモデュール呼び寸法及び標準目地幅を図8.2.3に、長さ、高さ、実厚さ、正味厚さの例を図8.2.4に示す。
なお、補強コンクリートブロック造では、空洞・基本形ブロックで10mm目地とし、長さ×高さのモデュール呼び寸法は400×200(mm)が一般的である。したがって、長さ×高さの実寸法は390×190(mm)となる。正味厚さは補強コンクリートブロック造の規模(階数)や部位(耐カ・非耐力壁等)によって最小厚さが定められているので規定の厚さ以上とする。100mm、120mm、150mm、190mmが一般的である。化粧ブロックを用いる場合の厚さとは、実厚さではなく、正味厚さを示すので注意が必要である。

図8.2.3 モデュール呼ぴ寸法及び標準目地幅(JIS A 5406 : 2017)

図8.2.4 長さ、高さ、実厚さ、正味厚さ及び正味肉厚の例(JIS A 5406 : 2017)

また、モデュール呼び寸法、正味厚さ及び標準目地幅を表8.2.3に示した。要求のある場合には、受渡し当事者間の協議によって表に示す範囲を超えてもよいこととなった。

表8.2.3 モデュール呼び寸法、正味厚さ及び標準目地幅(JIS A 5406 : 2017)

(2)充填用コンクリートの粗骨材の最大寸法は、鉄筋を挿入する空洞部最小径の1/5以下、かつ、砂利は20mm以下、砕石の場合は15mm以下としている。鉄筋を挿入する空洞部の寸法を表8.2.4及び図8.2.5に示す。例えば、空洞部の最小幅を70mmとした場合、70mm×1/5 =14mmとなり通常粗骨材最大寸法10mmの豆砂利を用いることになる。

表8.2.4 鉄筋を挿入する空洞部の寸法(JIS A 5406 : 2017)


 図8.2.5 鉄筋を挿人する空洞部(JIS A 5406 : 2017)

(3) 鉄筋は5.2.1を参照する。ただし、鉄筋はSD295、SD345とする。また、曲戻し等の有害な加工を行ったものを用いてはならない。

(4) モルタル用材料は、「標仕」15.3.2を参照する。ただし、セメントは「標仕」6.3.1によるものを用いる。

(5) ブロックは、種類によって区分し、雨水を吸水しないように、又汚れの付着や欠けなどが発生しないように、適切な養生を行って保管する。

8.2.3 モルタルの調合

モルタルの調合は、特記によるとしている。従来は、目地幅が10mmでの組積が一般的であり、「標仕」表8.2.1で対応可能であった。この調合で通常の場合は、「JASS 7 メーソンリー工事」に解説されているとおり、18N/mm2以上の強度は担保されている。しかし、近年は薄目地(5mm程度)用のブロックが用いられる場合もあり、D(20)の ブロックがJIS規格に追加されたことなどから、薄目地等の場合は、特記により調合計画を作成し監督職員の承諾を受けることとなった。また、既調合モルタルの使用も増加している。(-社)日本建築学会「補強コンクリートブロック造設計基準」では、壁体の目地及び空洞部の充填に使用するモルタルの4週圧縮強度を18N/mm2以上としている。

8.2.4 コンクリートの調合

「標仕」8.2.4による空洞部への充填用コンクリートの調合は、「標仕」表8.2.2の容積調合又は呼び強度 21、スランプ21cmのレディーミクストコンクリートとしている。通常、充填用コンクリートには、空洞部の大きさを考慮して豆砂利コンクリートが用いられる。
「標仕」表8.2.2に示すコンクリートのスランプは、「標仕」表6.2.2に示すスランプの値より大きいので、目視による分離の有無を必ず確認する。

充填部以外のまぐさ、がりょう、立上り基礎、スラプ等に使用するコンクリートは「標仕」6章[コンクリート工事]によるとしている。

8.2.5 鉄筋の加工及び組立

(1) 一般事項

(ア) 縦横筋のかぶり厚さは、鉄筋を覆うコンクリートやモルタルの厚さの最小値をいい、空洞ブロックのフェイスシェルの厚さは含まない。「標仕」の最小値20mmは、図8.2.6による。

縦筋は、基礎コンクリート打込み時に移動しないように、縦筋中間部への振れ止め用の足場等の設置や頂上部のフックの位置を正確な位置に固定する(図8.2.7参照)。

縦筋が、施工中に揺れを生じると、モルタルとの付着力低下や目地切れを誘発するおそれがあるので、必ず振れ止めで固定する。

図8.2.6 かぶり厚さ

図8.2.7 基礎梁配筋工事における補強ブロック造耐力壁縦筋固定方法の例

(イ) 横筋は、図8.2.6及び図8.2.8に示すように壁端部縦筋に180゜フックとし、かぎ掛けとする。直交壁がある場合は、直交壁に定着させるか、直交壁の横筋に重ね継手とする。

横筋の重ね継手長さは45d、定着長さは40dとし、かぶり厚さ確保のために、できるだけ縦に重ねる。

また、横筋と縦筋の交差部の要所を径0.8mm以上の鉄線で結束する。

図8.2.8 補強ブロック造耐力壁の配筋例(壁式構造配筋指針より)
(2) 各部の配筋

(ア) 壁の配筋(交差部、端部の補強筋を含む。)は特記によるとしている。最近では、交差部及び端部に型枠を用いることはほとんどなく、異形ブロックを加工して構成する場合や、型枠状ブロックを加工して構成する場合が多い。

(-社)日本建築学会「壁式構造配筋指針・同解説」、同「壁式構造関係設計規準集・同解説(メーソンリー編)」、「JASS7」等、を参考にするとよい。

(イ) まぐさは出入口又は窓等の開口部の上部に設ける水平部材で、まぐさの上部の荷重を受け持つため、鉄筋コンクリート造とし、配筋は特記による。プレキャストコンクリート製等の既製まぐさを用いる場合は配筋、曲げ強度、寸法等を考慮する。

8.2.6 縦遣方

縦遣方は、ブロックが所定の位置に正しく組積できるように図8.2.9のように他の作業中に移動しないように独立したものとする。縦遣方が正確に設置されないとコンクリートブロック造の性能に大きく悪影響を及ぼすだけでなく、他工事にも影響を及ぼすので、監督職員は位置や固定状況等について確認を行う。

図8.2.9 縦遣方の建方の例(比較的大工事の場合)

8.2.7 ブロック積み等

ブロック積みは、「標仕」8.2.7によるほか、次の点に注意する。

(ア) 根付け部分のコンクリートが過度に乾燥している場合や防水性ブロック以外で吸水率の高いブロックを使用する場合は、モルタルの水分が吸収されてドライアウトし、硬化に悪影響を及ぼすので、水湿しを行う。ただし、吸水率の低いブロックを水湿しすると、余剰水が界面部のモルタルの水セメント比を高くし、強度低下となる場合もあり、このような場合は水湿しを行わない。

(イ) 縦遣方を基準として水糸を張り、水糸にならって隅角部より各段ごとに順次水平に積み回る。

(ウ) テーパーにより上下でシェル厚が異なるブロックは、シェル厚の厚い方を上にして構む。

(エ) 目地モルタルは、構造耐力上・防水上支障が生じないように、ブロック接合面全面(フェイスシェル及びウェプ部分)に設ける。

(オ) 所定のかぶり厚さが確保でき、縦筋位置が固定できる箇所や開口部・端部等のフック部分等の縦筋と横筋の交差部の要所は、結束線で緊結する。ただし、縦筋が固定され、移動のおそれがない場合は、結束線による緊結を省略できる。

(カ) 積終わりには降雨時に水がたまらないよう養生する。

(キ) がりょうは、ブロック壁の頂部を固定する役目がある。がりょうに打ち込むコンクリートがブロック壁空洞部に落下しないようにがりょうのすぐ下のブロックには基本形横筋ブロックを使用する。また、がりょう部の型枠とブロックとの取合い部は目地棒等を用い、水漏れがないようにする。

(ク) まぐさは、開口幅が比較的大きい場合は図8.2.10及び図8.2.11に示すように配筋してコンクリートを打ち込んだRC造とする。型枠には合板のほか、溝型ブロック、型枠状ブロック等も用いることができる。

 

図8.2.10 現場打ちコンクリートによるまぐさ

図8.2.11 既製まぐさ用部材使用例

(ケ) 目地モルタルの硬化以前に目地ごてで目地ずりをするとともに、化粧積み面の汚れをブラス等で清掃する。目地ずりは目地モルタルの表面強度を高め、ブロックと目地モルタルとの接着性を良くするので、耐力上、防水上重要な作業である。

(コ) 化粧目地仕上げは、目地モルタルがある程度硬化後に行い、そのちり(ブロック表面の面と目地仕上げ面の差)が目視で違和感がない状態に仕上げる。

8.2.8 モルタル及びコンクリートの充填

(1) ブロックの吸水率が大きい場合や、夏期で高温乾燥状態の場合は、充填モルタルやコンクリートの水分がブロックに吸収されドライアウトとなりやすいので、充填する空洞部に適度の水湿しを行う。

(2) 逐次充填工法では、縦目地空洞部へのモルタル又はコンクリートの充填は、目地モルタルが安定した後、ブロック2段以下ごとに丸棒等を用いて、鉄筋の移動がないように注意しながら丁寧に突き固める。1日の作業終了時は、ブロックの上端から5cm程度下がり位置で止める。

(3) 充填材料としてのモルタル又はコンクリートの混練量、配合や骨材の最大寸法は、一度に充填する量、空洞部の寸法等を考慮して決める。

(4) 空洞部の寸法が小さいので打込み高さが高いと充填が不完全になりがちである。

打継ぎ位置はブロック上端から5cm程度下がった位置とする。これは防水上の目的と充填モルタル又はコンクリートの打継ぎ面が水平目地と一致してせん断強度を低下させないように配慮したことによる。

(5) 耐力壁のまぐさを受ける壁面部分ではブロックの幅20cm以上の部分の空洞部は、全て最下部からまぐさの下端までモルタル又はコンクリートを充填する。

8.2.9 ボルトその他の埋込み

ボルト、とい受金物、配管の支持金物等の挿入された空洞部にはモルタル又はコンクリートを密実に充填する。金物の埋込み深さ及び定郊方法は、取り付けられるものの質紐を考慮して決める。取付位置は原則として目地位置とするが、これにより難い場合は監督職員と協議して決める。

8.2.10 電気配管

構造躯体であるブロック壁内に上下水道・ガス等の配管を行うと、配管のメンテナンス時に壁を傷つけることになり、建物の耐久性や構造耐力上支障が生じることもあるため、これらの配管をブロック壁内に埋め込んではならない。ただし、電気配管はメンテナンスが不要であり径も細いため、ブロック壁内に埋め込んでもよい。

電気配管を埋め込む場合は、ブロック空洞部を利用し、横筋等の配筋のかぶり厚さに支障がないように空洞部の片側に寄せて配管するほか、管の出口にモルタル又はコンクリートを充填し固定する。

8.2.11 養 生

「標仕」によるほか、目地モルタル及び充填したモルタル又はコンクリートが十分硬化するまで、有害な振動、衝撃、荷重等を与えないようにする。また、直射日光、降雨、凍結等を防止するための上屋やシート掛け等の養生を行う。

(ア) 夏期は直射日光等による水分の蒸発を防ぎ、一定の湿潤状態を保つため、モルタル又はコンクリート充填後、組積終了後等はビニルシート等で壁体、打込み部分を覆う。

(イ) 寒冷期は強風による乾燥や低温による初期凍害を防ぐために、上屋・シート等で躯体を覆い保温の処置をして養生する。

(ウ) 出隅部や突出部の欠けやすい部分や、踏付け面等のブロックに破損や若しい汚染のおそれのある部分は板等で養生する。

(エ) 降雨による空洞部への雨水の浸透、目地モルタルの流出等を防止するために上屋、シート等で養生する。

8.2.12 「標仕」以外の構工法

「標仕」に示された補強コンクリートブロック造のほかに、図8.2.12に示す「鉄筋コンクリート組積造」がある。これは建築基準法施行令第80条の2に基づく平成 15年国土交通省告示第463号による工法の名称である。従前は、JIS A 5406に規定する「型枠状ブロック」を用い、空洞部分にグラウト材(コンクリート又はモルタル)を全充填する工法として「型枠コンクリートブロック造」の名称が普及し、設計・構造規準も(-社)日本建築学会「壁式構造関係設計基準集・同解説(メーソンリー編)」 2006年版に示されていた。しかし、材料としてJIS A 5406だけでなくJIS A 5210(建築用セラミックメーソンリーユニット)も使用可能であり、より自由度が高く合理的な工法として「鉄筋コンクリート組構造」に集約されてきており、(-社)日本建築学会より告示に準拠した「鉄筋コンクリート組積造(RM造)建物の構造設計・計算規準(案)・同解説」が2021年3月に出版された。また、施工方法としても「JASS 7」では2009年版から「鉄筋コンクリート組積造」のみとなっている。表8.2.5に補強コンクリートブロック造と鉄筋コンクリート組積造の比較を示す。

図8.2.12 鉄筋コンクリート組積造(RM造)の例

表8.2.5 補強コンクリートブロック造と鉄筋コンクリート組積造の比較

8章 コンクリートブロック工事等 3節帳壁及び塀

8章 コンクリートブロック、ALCパネル及び押出成形セメント板工事

3節 コンクリートブロック帳壁及び塀

8.3.1 一般事項

(1) この節の適用範囲は、鉄筋で補強された非構造部材の帳壁及び高さ2.2m以下の塀としているが、これらは、組積する行為は同じであっても目的や考え方が異なる部分が多いので注意する。特に、地震時や暴風時に転倒・倒壊や破損などが懸念される塀の基礎、控壁等については、5章[鉄筋工事]及び6章[コンクリート工事]によることが重要である。

また、コンクリートブロックの施工に関して、「ブロック建築技能士」の資格制度が設けられている。

(2) 帳壁工事の作業の流れを図8.3.1に示す。


図8.3.1 コンクリートブロック帳壁工事の作業の流れ

(3) 施工計画書の記載事項は概ね次のとおりである。

また、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。

① 帳壁の位置と主体構造の種別及び寸法
② 帳壁の主要支点間距離及び主要支持辺の位置
鉄筋の種類、径及び定着・継手の方法・位置
コンクリートブロックの種類、形状寸法
⑤ ブロック割りとその組積パターン(関口部、金物取付け位置を明示)
鉄筋のかぶり厚さ及び鉄筋の間隔・あき
帳壁の施工方法(先積み工法とあと積み工法で、鉄筋の組立順序が異なる)
主体構造との緊結方法(主体構造に対するクリアランスの大きさによる固定緊結又は可動緊結を明示)
鉄筋の継手又は定着方法(溶接の場合は溶接方法)
⑩ 壁端部又は開口部周囲の補強方法
⑪ 仕上げの有無と仕上げ材の種類
⑫ 孔あけ等の位置と寸法
⑬ 先付け金物の位置と取付け方法
⑭ 配管位置とその形状寸法

作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制,管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等

 

(4) コンクリートブロック帳聖(間仕切壁)

(ア) 帳壁とは、柱・梁で構成される主体構造物の中に構築され、建築物にかかる水平荷重及び鉛直荷重を負担させない壁であるが、壁体にかかる地震や風によって生じる面外方向の力に耐える必要がある。組積の時期は主体構造が完成した後であり、あと積み工法になるので主体構造体への鉄筋の緊結が重要になる。また、主体構造物の変形を阻害しないためのスリットを適宜設ける。

(イ) (ー社)日本建築学会「壁式構造関係設計規準集・同解説(メーソンリー編)」に規定されている「コンクリートブロック帳壁構造設計規準」には帳壁の規模について次のように記述されている。

なお、主要支持辺とは帳壁を主として支持する辺をいう。主要支点間とは一方の主要支持辺と他方の主要支持辺との間をいう。主要支点間の方向により、主筋と配力筋の方向が定まるので必ず確認する。

(a) ブロック帳壁は地盤面より20mを超える外壁部分に用いてはならない。これは、厳しい風圧や変形性能の規定に、ブロック帳壁で設計することは不可能ではないが、施工方法等も考慮して20m以内としている。10~20mの場合でも告示や本規準等を遵守し構造安全性を確保しなければならない。

(b) 一般帳壁の主要支点問距離(L1)は、3.5m以下とする。ただし、地下部分にある階で、当該階の周囲壁面の見付面積が平均して階高の2/3以上地中に埋没している場合は、4.2m以下とする(図8.3.2参照)。


図8.3.2 主要支点間距離

(c) 小壁帳壁の持出し長さ(L2)は、1.6m以下とする。また、スパンが持出し長さの2倍半を超える場合は、小壁帳壁となる(図8.3.3参照)。


図8.3.3 主となる方向の持出し長さ

(ウ) 壁厚は、仕上げの部分を除き表8.3.1に示す数値以上とする。

なお、外壁で地盤面からの高さが10mを超える部分に使用する場合は、告示や日本建築学会規準等を参考にして定める。

表8.3.1 壁 厚


(5) ブロック塀

ブロック塀は工法が比較的簡単であることから管理も安易に行われやすい。しかし、補強コンクリートブロック造やコンクリートブロック帳壁と比較して、直接風雨にさらされ、荷重の支持も主として地盤面の基礎によっていることから、かぶり厚不足による鉄筋の腐食、配筋不良、基礎構造不備等の原因による地震時の倒壊が多い。また、道路側に建てられることも多く、倒壊による人的被害の危険性は極めて高い。したがって、適切な設計と施工を心掛ける必要がある。建築基準法施行令62条の8 には、高さ、壁の厚さ、控壁の設置、配筋など7項目が定められており、確実に順守しなければならない。

なお、基礎の寸法や配筋については特記となっているため、(-社)日本建築学会の「ブロック塀設計規準・同解説」等を参考に、安全な塀とする必要がある。

「標仕」での適用範囲は、高さ2.2m以下としているが、地盤の特性、基礎の形状、控壁、根入れ深さ、ブロックの厚さ等を検討し、風圧力、地震力に対し安全なブロック塀を構築する必要がある。安全性を確かめるための構造計算の基準は「補強コンクリートブロック造の塀の構造耐力上の安全性を確かめるための構造計算の基準を定める件」(平成12年5月23日建設省告示第1355号)に定められている。塀の高さの測り方を図8.3.4に示す。作業の流れは帳壁の図8.3.1を参照する。施工計画書は基礎工事・フェンス工事等を塀全体として作成するとよい。


図8.3.4 塀の高さの測り方(コンクリートブロック塀設計規準・同解説より)


8.3.2 材 料
(1) ブロック

使用するブロックは、「標仕」8.3.2ではJIS A 5406(建築用コンクリートブロック)の規格に適合するもので、種類、圧縮強さ、モデュール呼び寸法及び正味厚さは、特記によるとしている。

なお、一般的には「標仕」表8.3.1に示した空洞ブロックC(16)を用いる。空洞・基本形・化粧無しブロックで10mm目地とし、長さ×高さのモデュール呼び寸法は 400×200(mm)、実寸法は390×190(mm)である。

(a) 帳 壁

ブロックの厚さは、表8.3.1に示すように帳壁の規定に適合していることを確認する。化粧ブロックを用いる場合の厚さとは、実厚さではなく、正味厚さを示すので注意が必要である。

(b) ブロック塀

ブロックの厚さは、「標仕」8.3.2に示すように、特記がなければ塀の高さが2m以下の場合は120mm、2mを超え2.2m以下の場合は150mmとする。建築基準法施行令第62条の8 第二号には「壁の厚さは、15cm(高さ2m以下の塀にあっては、10cm)以上とすること。」と定められているが、厚さ100mmのブロックでは鉄筋のかぶり厚さ等十分な耐久性が確保できない可能性があり、「標仕」や(-社)日本建築学会「コンクリートブロック塀設計規準・解説」では120mm以上としている。転倒等の安全性を考慮すると塀の高さがおおよそ1.2mを超える場合は、厚さ150mmとすることが望ましい。化粧ブロックを用いる場合の厚さとは、実厚さではなく、正味厚さを示すので注意が必要である。

ブロック塀に化粧ブロックを用いる場合は、基本形横筋ブロックのみで構築される場合がほとんどで、また、縦目地と横目地の幅が異なる寸法の化粧ブロックが多くなっている。例えば、長さ× 高さのモデュール呼び寸法が 400 × 200 (mm)の場合で、縦目地が1mm、横目地は10mmの製品では、製品の実寸法は399 x 190(mm)となる。モデュール呼び寸法体系も多種になっているので、長さ× 高さのモデュール呼び寸法、製品寸法や実厚さについてはメーカーのカタログ等を参考にされたい。

なお、控壁は、RC造とするか型枠状ブロック又は空洞ブロックを用いてコンクリートを全充填する。

8.3.3 モルタル及びコンクリートの調合

モルタル及びコンクリートの調合は、基本的に補強コンクリートブロック造に用いるものと同じと考えてよい。ただし、標誰目地幅が10mmと異なるブロックを用いる場合は、監督職員と協議し、既調合モルタルの使用も検討すると良い。

8.3.4 鉄筋の加工及び組立

(1) 加工及び組立一般

壁体に加わる外力で考慮しなければならないのは、主として面外方向の外力である。この外力に抵抗するのは鉄筋であり、鉄筋によって主体構造や基礎に伝達される。この伝達を受け持つのが主筋であり、それと直行方向に配筋されて面材として一体化する役目を持つのが配力筋である。したがって、主筋は、帳壁の場合には主要支点間方向に配置され、主要構造物に十分に緊結されなければならない。塀の場合には、基礎に緊結されなければならない。

(a) 外力は、面外方向の正負両方向に加わるために厚さ方向の中心部に配置する必要から、「標仕」ではブロック空洞部の中心部に配筋するとしている。また、中心部に配筋するためには、鉄筋の位置決め及び床や基礎のコンクリート打設時に移動がないように堅牢な振れ止めを設ける必要がある。

(b) 「標仕」では、壁鉄筋の継手、定着及び末端部の折り曲げ形状は、特記によるとしている。従来は、主筋には継手を設けないとしていたが、帳壁では上下階への定着が困難な場合が多いことや施工性なども考慮して、応力伝達が可能な溶接接合等による継手も認められている。ただし、塀の主筋の場合には、継手は認められていない。

配力筋は、壁端部鉄筋に180度フックによりかぎ掛けすることや、直交壁に定着させる方法などが (-社)日本建築学会の規準に定められている。

「標仕」では、これらについて、特記としており、参考としては (-社)日本建築学会の「壁式構造関係設計基準集・同解説」「壁式構造配筋指針」「JASS 7メーソンリー工事」等の該当部分を用いるとよい。

帳壁の各部配筋を表8.3.2及び表8.3.3に、配筋例を図8.3.5に示す。

表8.3.2 一般帳壁の壁筋(コンクリートブロック帳壁構造設計規準・同解説より)

表8.3.3 小壁帳壁の配筋(コンクリートブロック帳壁構造設計基準・同解説より)

図8.3.5 ブロック帳壁の種類・鉄筋の名称・主要支点間・主要支持辺等(壁式構造配筋指針より)

(c) 帳壁を土間コンクリート上に設置する場合は、帳壁の鉄筋を土間コンクリート内に定着させるとともに、帳壁下部には補強を行う。

(d) 帳壁工事では、現場作業工程上やむを得ずコンクリート躯体へあと施工アンカーを施工したり、鉄骨躯体へ溶接施工したりして帳壁を緊結させる必要が生じる場合がある。あと施工アンカーの使用は監督職貝の承諾事項である。特に、小壁帳壁のように、曲げ・せん断力が加わる場所に使用する場合は、専門業者による検討や施工も必要である。また、「(-社)日本建築あと施工アンカー協会」等に確認して、適切なものを使用する。

(e) ブロック塀

① ブロック塀の配筋は、塀を補強するのみならず、塀と基礎、控壁等と緊結する役目を担っている。地震時の塀の転倒は部材間の連結(継手、定着)不良によるところが多いので、十分施工の確認を行う必要がある。控壁は3.4m以下ごとに設け、鉄筋コンクリート造又は型枠コンクリートブロック造とする。

② 主筋をブロック中心部に配筋するためには、基礎コンクリート打込み前の主筋の位置決め及びコンクリートの打込み時に移動がないように図8.3.6に示すように堅牢な振れ止めを設ける必要がある。縦筋は継手を設けてはならない。


図8.3.6 縦筋頂部の高さそろえ、振れ止めの例

 

③ ブロック塀頂上部は、横揺れを生じやすい。横筋は壁頂を一体化し横揺れを防止する役目をもっている。したがって、縦筋は頂上部の横筋にかぎ掛けとするか又は90゜フックで余長10d以上とする。頂上部の横筋に縦筋を正確にかぎ掛けするためには図8.3.6に示すように振れ止めを設ける。さらに、頂部の横筋の端部は控壁に定着するか縦筋に180度フックでかぎ掛けすることが望ましい。しかし、現実には控壁との高さの違いなどによりかぎ掛けが困難な場合があり、この場合は横筋を鉛直に曲げ、縦筋と25d以上の定着を取るようにする(図8.3.7)。塀の重ね継手長さ及び定着長さを表8.3.4に示す。


図8.3.7 ブロック塀の配筋例

 

表8.3.4 定着及び重ね継手の長さ(コンクリートブロック塀設計規準・同解説より)
(2) 各部の配筋

各部の配筋は、特品によるとしている。各部の配筋は、(-社)日本建築学会「壁式構造配筋指針・同解説」、同「壁式構造関係設計規準集・同解説(メーソンリー編)」を参考にするとよい。帳壁の配筋例を図8.3.8に示す。


図8.3.8 帳壁の配筋例図

8.3.5 縦やり方

塀の縦やり方は、8.2.6による。特に、基礎部分の位置、形状や配筋位置などに合わせた指標として、やり方は小規模工事であっても設けられることが多い。ブロック塀でのやり方の例を図8.3.9に示す。

図8.3.9 コンクリートブロックの組積におけるやり方の例

なお、縦やり方については、電子式の自動式レベル器などが進歩しており、やり方を省略する工事現場が多くなっている。丈夫な基礎の上部に、水平で鉛直な塀の構築が重要である。

8.3.6 ブロック積み等

ブロックの積み方は8.2.7によるほか次による。

(ア) 帳壁

(a) 最上段のブロックと主体構造体との取合い部の一例を図8.3.10に示す。最上段を組積し、溝部分にモルタルを充填する。

(b) 開口部に設けるまぐさは、8.2.7 (ク) と同様に行う。


図8.3.10 最上段の納まり例

(イ) ブロック塀

笠木は、汚れ防止や耐久性向上等の観点から雨水が直接壁面に当たらないようなはね出しのあるものが望ましい。笠木ブロックを用いる場合は、モルタルが充填でき、鉄筋のかぶり厚を十分に確保できる空洞を有し、地震時の脱落防止の対策が考慮されている形状が望ましい。

8.3.7 モルタル及びコンクリートの充填

モルタル及びコンクリートの充填は、8.2.8による。

あと施工の帳壁でスラブ若しくは梁下まで充填する場合は、頂部に投入穴を設ける。部分的であっても、型枠状ブロックを使用する場合には、コンクリートを全充填することを原則とする。

8.3.8 ボルトその他の埋込み

ボルトその他の埋込みは、8.2.9による。

8.3.9 電気配管

電気配管は、8.2.10による。

8.3.10 養生

養生は、8.2.11による。特に、ブロック塀は、屋外工事がほとんどであるため、気象状況に応じた養生に注意する。

8章 4節ALCパネル

8章 コンクリートブロック、ALCパネル及び押出成形セメント板工事

4節 ALCパネル

8.4.1一般事項

(1)「標仕」8.4.1で規定している適用範囲は、ALCパネルを屋根(非歩行用)、床、外壁及び間仕切壁に用いる場合である。

なお、ALCパネルは、多孔質のため軽量であり、耐火性に優れている反面、吸水率が大きい(30~40%)等の性質があるので、外壁等に用いる場合は、仕上材の選定、結露・凍害対策等について注意する必要がある。

(2)ALCパネルの施工に関して、「エーエルシーパネル施工技能士」の資格制度が設けられている。

(3)この節における「構法」と「工法」の使い分けを次に示す。
・構法:材料や部品の構成方法

・工法:建築物の施工の方法

(4)作業の流れを図8.4.1に示す。

図8.4.1 ALCパネル工事の作業の流れ

(5)構造設計指針

(ア) ALC協会では、平成25年に、(独)建築研究所監修「ALCパネル構造設計指針・同解説」を改定し、ALCパネル及びALCパネルを用いた帳壁等の構造設計の技術指針としている。

(イ) 「標仕」における取付け構法の種別とパネル構法の名称を図8.4.2に示す。

図8.4.2「標仕」における取付け構法の種別と構法の名称

(6)施工計画書及び施工図

(ア) 施工計画書
施工計画書の記載事項は、概ね次のとおりである。

また、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。

① 工程表(施工図の作成、各ブロック別の着工・完了等の時期)
② パネルの製造所、製品名及び施工業者名
パネルの区分、単位荷重、厚さ、長さ、耐火性能
④ パネルの搬入・保管方法
⑤ パネルの取付け詳細及び工法
⑥ パネルと建具枠等の取合い及び納まりの詳細
⑦ 設備用配管ボックス類に対する処置
目地用モルタル、仕上材等の種類、調合、工法及び使用箇所
シーリング材の使用箇所及び種類
⑩ パネルの養生計画

⑪ 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等

(イ) 施工図
施工図は、次の内容について作成する。
① パネル割付け図
所要部分にどのような形状・寸法のパネルを使用するかを表す図面であるが、出入口、設備器具用等の開口部も記入し、無理のない構造となるように作成する。また、伸縮目地の配置もパネル割付け図に記入する。

なお、「標仕」8.4.3(5)に定められている限度より狭い幅のパネルが入らないようにする。

② 各部詳細図

パネルの取付け工法、建具枠等の取付け工法、パネルと他の材料との取合いや納まり等の詳細を表す(8.4.3~8.4.5参照)。

8.4.2 材 料

(1)ALCパネル

(ア) ALCとは、Autoclaved Lightweight Aerated Concreteの略である。

(イ) ALCパネルは、JIS A 5416(軽量気泡コンクリートパネル(ALCパネル))に適合するものを使用する(平成12年建設省告示第1446号)。

(ウ) JIS A 5416の抜粋を次に示す。

JIS A 5416:2016
5.品 質
5.1 ALCの品質

5.1.1 圧縮強度及び密度
ALCの圧縮強度及び密度は、9.2に規定する試験を行ったとき、表3の規定に適合しなければならない。

表3 – 圧縮強度及び密度
5.1.2 乾繰収縮率
ALCの乾燥収縮率は、9.3に規定する試験を行ったとき、表4の規定に適合しなければならない。

表4ー乾燥収縮率

6 寸法及び許容差
6.1 厚形パネルの寸法
厚形パネルの呼び寸法は、表10による。

表10-厚形パネルの呼び寸法(単位 mm)

6.2 薄形パネルの寸法
薄形パネルの呼び寸法は、表11による。
なお、附属書Aに、代表的な薄形パネルを示す。

表11-薄形パネルの呼び寸法(単位 mm)

6.3 ALCパネルの寸法許容差
ALCパネルの呼び寸法に対する寸法許容差は、9.8に規定する試験を行ったとき、表12の規定に適合しなければならない。

表12-ALCパネルの許容寸法差(単位 mm)

6.4 コーナーパネルの直角度
コーナーパネルの直角度は、9.8に規定する試験を行ったとき、表13の規定に適合しなければならない。
なお、直角からのずれの符号は、図6による。

表13ーコーナーパネルの直角度の許容値

図6-コーナーパネルの直角度
JIS A 5416:2016

(エ)「標仕」では、パネル材料はJIS A 5416の厚形パネルとし、特記事項を「区分、単位荷重、厚さ、幅、長さ、耐火性能等」と規定している。特記事項の記載例として、「JASS 21 ALCパネル工事」のパネルの特記仕様を下表に示す。

表8.4.1 JASS21 9節特記 9.2特記事項 a.(3)材料パネル
(*種類、寸法(*厚さ)、製造業者)(4.1)の記載例
ここで、単位荷重には、パネルの設計荷重(表8.4.2参照)の値が特記される。

なお、単位荷重とは、パネルに加わる外力を単位面積当たりの値で表したものである。

表8.4.2パネルの設計荷重

耐火性能については、国土交通大臣が定めた構造方法(平成12年建設省告示第1399号)において、外壁,間仕切壁については、厚さ75mm以上で1時間、屋根については30分、床については厚さ100mm以上で1時間の耐火性能を有する構造として例示仕様が定められている。床の2時間については、国土交通大臣の認定により、厚さ120mm以上とされている(表8.4.3参照)。

詳細については、パネル製造所に確認するか又は「ALCパネル防耐火構造(告示仕様)設計施工標準(ALC協会)」等を参照するとよい。

表8.4.3パネルの耐火性能

(オ) ALCの種類は、パネル短辺小口に表示されている。パネル製造所各社の表示例を表8.4.4に示す。屋根、床及び外壁については、表裏の方向があり、正しい方向に建て込む。

表8.4.4 パネル短辺小口の表示の例
(2) 金物及び表面処理

(ア)金物は、「標仕」8.4.2(2)による。

(イ)ALCの取付けには、各種の金物が用いられるが、鋼材の場合には、モルタル等で保護される場合を除き、防鋳処理が必要になる。
取付け金物の表面処理は「標仕」8.4.2(3)(ア)によるが、これと同等以上の性能を有する表面処理を行った金物を使用する場合は、監督職員との協議による。

下地鋼材及び開口補強鋼材の表面処理は「標仕」8.4.2(3)(イ)で表18.3.1[鉄鋼面の錆止め塗料の種別]のA種又はB種の錆止め塗料2度塗りとする。

(3) モルタル等

(ア) モルタルは、密実に充填する必要があるので、作業性の良好なものを用いる。ALCが乾燥していると、モルタルの水分がALCに吸収され、充填欠陥が生じゃすい。メチルセルロース等の保水剤を混和剤として用いると、この欠陥の防止に効果がある。施工条件にもよるが、混和剤を使用したほうがよい。

(イ) パネルの補修用モルタルは、溝掘り、孔あけ、切欠き等の部分補修用として用いられる。「標仕」8.4.2(4)(イ)では、パネル製造所の指定する製品としている。これらの製品は既調合のものであり、水を加えて練り混ぜて使用する。

なお、パネルを補修する際、補修用モルタルとALCとの付着性を確保するために補修下地を補修用シーラーで処理することが必要である。この場合、用いるシーラーもパネル製造所指定のものとする。

(4)シーリング材

シーリング材は、「標仕」9章7節により、特記がなければ、「標仕」表9.7.1による。

(5)耐火目地材
耐火又は防火上必要な場合、伸縮目地を構成するパネル相互の接合部に挿入する耐火目地材は、特記による。耐火目地材としては、アルカリアースシリケートウールがあり、大臣認定番号NM-2982やNM-1089が一般的に使用されている。

なお、平成28年版「標仕」に記載されていたJIS R 3311(セラミックファイバーブランケット)の1号は、発がん性物質を含有するために平成31年版で削除された。また、JIS A 9504(人造鉱物繊維保温材)のロックウール保温板1号についても施工しにくく、一般的に使用されていないことから削除されている。


8.4.3 外壁パネル構法

(1)ALC外壁パネル工事においては、正負の風圧力及び地震時の層間変形に対応できるパネル仕様(厚さ、長さ、配筋等)と取付け構法を採用する必要がある。各構法の風圧力に対する取扱いの概要を表8.4.5に示す。すなわち、風圧力の小さい場合には標準的な構法で対応できるが、風圧力の大きな場合には、検討が必要になる。

詳細については、パネル製造所に確認するか又は「ALCパネル取付け構法標準・同解説(ALC協会)」等を参照するとよい。

表8.4.5 外壁パネル構法の風圧力に対する取扱いの概要
(2) パネル幅の最小限度は、300mmとする。納まり的に小幅のパネル(幅300mm未満)を使う場合は、特記による。

(3) パネルの短辺小口相互の接合部、出隅及び入隅のパネル接合部並びにパネルと他部材との取合い部に設ける目地については、「標仕」8.4.3(7)及び(8)により、伸縮目地とし、目地寸法は特記により、特記がなければ10~20mmとされている。また、それらの伸縮目地に耐火目地材を充填する場合は、「標仕」8.4.3(9)により、特記によるとされている。

(4)開口補強鋼材の取付け方法は、取付け構法の種別に応じた取付け方法とする必要がある。開口補強鋼材には等辺山形鋼が主に用いられるが、適応できる開口部の大きさには構造的に限界があるので注意する。

なお、開口補強鋼材の部材寸法選定の目安を表8.4.6に示す。

表8.4.6 開口補強鋼材の部材選定の目安(横横もこの表に準ずる)
算定条件
縦材支点間2.8mとし、次の方法で算定した。
なお、この場合、開口部に作用する風圧力を直接構造躯体へ負担させる構法とする必要がある。
(5)各構法の取付け例を次に示す。

(ア) A種(縦壁ロッキング構法)の取付け例を図8.4.3に示す。

図8.4.3 A種(縦壁ロッキング構法)取付け例(その1)

     B部(平パネルを用いた場合)平面詳細図

      B部(コーナー用役物を)用いた場合)平面詳細図
(注)伸縮目地の寸法及び耐火目地材の充填については、特記による。

 図8.4.3 A種(縦壁ロッキング構法)取付け例(その2)

    A部断面詳細図

    B部断面詳細図


    C部断面詳細図

(注)伸縮目地の寸法及び耐火目地材の充填については、特記による。

図8.4.3 A種(縦壁ロッキング構法)取付け例(その3)

(イ) B種(横壁アンカー構法)の取付け例を図8.4.4に示す。


 A部(一般部縦目地)平面詳細図

 


 A部(一般部横目地)断面詳細図


     B部 平面詳細図
(注)伸縮目地の寸法及び耐火目地材の充填については、特記による。

図8.4.4 B種(横壁アンカー構法)取付け例

8.4.4 間仕切壁パネル構法

(1)各構法の取付け例を次に示す。

(ア) E種(縦壁フットプレート構法)の取付け例を図8.4.5に示す。


    A部平面詳細図

 


    C部平面詳細図

 


        B部平面詳細図


        D部断面詳細図
(注)伸縮目地の寸法及び耐火目地材の充填については、特記による。
図8.4.5 E種(縦壁フットプレート構法)取付け例

 

(イ) 「標仕」表8.4.3のC種及びD種の構法については、外壁パネル構法のそれぞれA種及びB種の構法による。

(ウ) 間仕切壁共通取付け例を図8.4.6に示す。

E部、F部の立面図は図8.4.5による。


   E部立面詳細図(E種)

 


    F部姿図(E種)(JASS21より)
図8.4.6 間仕切壁共通取付け例

なお、「標仕」には規定されていないが、「ALCパネル取付け構法標準・同解説(ALC協会)」では、間仕切壁の専用構法として「間仕切壁ロッキング構法」がある。

(2)パネルの短辺小口相互の接合部、出隅及び入隅のパネル接合部並びにパネルと他部材との取合い部の伸縮目地の処置については、「標仕」8.4.3(7)から(9)が適用される。

(3) 100mを超える竪穴区画やハロゲン化物消火設備等を設置する防護区画において、煙等の漏えい防止対策が必要な場合には、「乾式工法を用いた防火区画等における煙等の漏えい防止対策に係る指導基準」(平成21年4月10日東京消防庁通達)を参考にするとよい。

8.4.5 屋根及び床パネル構法

(1) F種(敷設筋構法)の取付け例を図8.4.7に示す。


     A部(短辺目地部)断面詳細図

 


   A部(長辺目地部)断面詳細図

 


    B部(長辺方向)断面詳細図

 


     C部(短辺方向)断面詳細図
図8.4.7 F種(敷設筋構法)の取付け例

(2)屋根又は床パネルと外壁パネルとの取合い部分の隙間に関する処置については、「標仕」8.4.3(12)が適用される。「標仕」8.4.3(12)でいう「スラブ」には、屋根及び床パネル工法におけるパネルも含まれているからである。屋根又は床のパネルと外壁パネルとの取合い部分の隙間にもモルタル又は耐火目地材の充填が適用される。

8.4.6 溝掘り、孔あけ及び開口部の措置

(1) 外壁及び間仕切パネル並びに屋根及び床パネルの現場での加工は、原則として、行わないが、場合により必要となることがある。表8.4.7に溝掘り又は孔あけ等が必要な例と加工の限界の例を示す。

表8.4.7 溝掘り又は孔あけ等が必要な例と加工の限界の例

(2) 開口部に加わる荷重は、開口補強鋼材により、直接構造躯体に伝える必要がある(表8.4.6参照)。この場合、間仕切壁E種は、開口補強鋼材の縦材上部が面内方向に可動となるように取り付ける。

(3) 表8.4.7を超える場合は、パネル強度やパネル割付けの検討を行い、必要に応じて有効な開口補強鋼材を設ける。

8.4.7 養生その他

(1) パネル幅又は長さ全体にわたりひび割れのあるものやパネルの補強鉄筋が露出しているような欠けがあるものなど、構造耐力上支障があるものは、廃棄する。

ALCパネルは、取扱い時に割れや欠けが生じやすい材料であり、軽微な損傷のパネルを一律に廃棄することは、現実的でない。使用上支障のない範囲の欠けのあるパネルは、通常、補修して使用されるが、廃棄・補修の限度には仕上方法等の使用条件及び破損箇所・大きさ等が影響する。この補修して使用できる目安は、表8.4.8を参考にして決める。

なお、表8.4.8の目安を超える場合は、監督職員と協議のうえ、パネルが使用上支障がないことを確認し、補修して使用する。

表8.4.8 補修して使用できる破損部分の大きさの目安の例(JASS21より)

(2) 工事完了後のパネル養生

ALCパネル工事完了後、防水及び仕上げ工事を開始するまでの間、パネルの濡れ、汚れ、破損等を防止するための適切な養生を行う。

(3)「標仕」の関連事項を次に示す。

(ア) 仕上塗材仕上げの下地処理及び下地調整(「標仕」15.6.4(4)及び15.6.5(4)参照)

(イ) 塗装工事の素地ごしらえ(「標仕」18.2.6(1)参照)

(4) 壁仕上げの留意点

(ア) ALCパネルは、表面強度が小さいので、強い接着力は期待できない。したがって、高強度の仕上材やモルタルの厚塗り、石張り等の重い仕上げは適さない。

(イ) ALCパネルは、吸水性が比較的高いので、一般的な条件では外壁面に防水性の高い仕上げ材料を選ぶ必要がある。

(ウ) 透湿性のある外壁仕上げは、室内側からの湿気の蓄積による凍害防止に効果があるが、湿気の蓄積が透湿性を上回る条件では、効果がない。

(エ) 海岸沿いでは、一般地域に比べ、よりグレードの高い仕様を選ぶ。

(オ) 外壁面には、「標仕」表15.6.1にある複層塗材E又は複層塗材CEが一般的に用いられるが、外装薄塗材E又は外装薄塗材Sも使用できる。複層塗材REは、硬化時の凝集力が強く、ALCを破壊しはく離させるおそれがあるため、不適当である。パネルに適合する仕上塗材を参考として、表8.4.9に示す。

表8.4.9 仕上塗材の種類とALCパネルとの適合

(5) 床仕上げの留意点

(ア) ALC用に開発されたモルタルの使用が望ましい。

(イ) 普通モルタルを使用する場合は、保水剤混入貧配合のモルタルを用い、塗厚は15mm程度を上限とし、これ以上の厚塗りを避ける。

(ウ) ALCパネルや梁のたわみ及びモルタルの乾燥収縮によるひび割れを防止するため、溶接金網を固定しながら全面に敷き込む。また、大梁上部のモルタルには必ず伸縮目地を設ける。

(6) ALCパネル内に水分が浸透する主な原因には、次のようなものがある(特に、寒冷地では留意する)。

(ア) 雨漏りあるいは外壁仕上げを通して水がALCパネル内に浸透する。直接の雨掛りや土、雪等とパネルが接しない納まりとする必要がある。

(イ) 建物の室内側の冷橋部分等の結露水がALCパネル内に浸透する。この結露は、室内が高温多湿となるほど大きな問題となる。サッシ、排気口回りや浴室の壁等で問題が起こることが多く、場合により防湿層の設置や結露した水分を放出する工夫等が必要となる。

(7) 寒冷地域におけるALCパネル下地外壁への現場でのタイル張りは、タイルの裏面に雨水が浸入した場合、それが凍結しタイルがはく落するおそれがあるため、避ける。

8章 5節 押出成形セメント板 外壁パネル工法

8章 コンクリートブロック、ALCパネル及び押出成形セメント板工事

5節 押出成形セメント板(ECP)

8.5.3 外壁パネル工法

(1) 取付け方法

取付け方法は、パネルの縦張り工法と横張り工法の2方法がある。地震時の層間変位にパネルが追従できるように、縦張り工法の場合は、ロッキングできるように、また、横張り工法の場合は、スライドするように取り付ける。

外壁パネル工法の種別を表8.5.2に、その取付け例を図8.5.3及び図8.5.4に示す。

表8.5.2 外壁パネル工法


           姿図

 


               平面図
  図8.5.3 縦張り工法(ロッキング方式)の取付け例(その1)

 


 図8.5.3 縦張り工法(ロッキング方式)の取付け例(その2)

 


      開口部断面詳細図

 


         開口部平面詳細図

 


 図8.5.3 縦張り工法(ロッキング方式)の取付け例(その3)

 


           姿図

 


          平面図
図8.5.4 横張り工法(スライド方式)の取付け例(その1)

 


            断面部
図8.5.4 横張り工法(スライド方式)の取付け例(その2)

 


     開口部断面詳細図

 


           開口部平面詳細図

 


         コーナー部出隅平面詳細図
  図8.5.4 横張り工法(スライド方式)の取付け例(その3)

 

(2) 風圧力
風圧力により支持間隔が決められる。建物の形状や使用部位等によって風圧力が異なるため、パネルの取付け耐力の検討を行う必要がある。

詳細については、ECP(押出成形セメント板)協会「ECP施工標準仕様書」等を参照するとよい。

(3) 地震カ
躯体の層間変形角に対する追従性能と、躯体から仕上げ材までの耐力の検討を行う必要がある。

詳細については、「ECP施工標準仕様書」等を参照するとよい。

(4) 耐火構造

耐火構造は、建築基準法施行令第107条の規定に基づく技術基準に適合したものである。そのため所定の耐火性能を満足するパネル及び仕様により行う。

(5) パネル下地金物

パネルの下地金物は、構造体にパネルを確実に取り付けるためのものであり、必要な強度が十分確保できるものを用いる。パネル下地金物は、S造の場合は溶接、 RC造の場合は埋込みアンカー等により安全性を確認し取り付ける(14.1.3(1)参照)。

(6) パネル幅の最小限度

パネル幅が小さい場合は、衝撃による破損のおそれが大きくなるため、「標仕」8.5.3(6)ではパネルモジュールの1/2である300mmを最小限度としている。

(7) 欠け、傷等の補修
軽微な損傷があるパネルで、パネルの構造耐力の低下がないと判断されるもの、防水性能が確保できると判断されるもの及び外観が著しく損なわれないものは、補修して用いることができる。

補修手順については、「ECP施工標準仕様書」を参照するとよい。

(8) パネル相互の目地幅

パネル相互の目地帳は、地震時の変形に対応する縦張り工法及び横張り工法の場合も短辺の方が大きな目地幅が必要である。「標仕」8.5.3(9)では、目地幅は、特記によるとしているが、長辺は10mm以上、短辺は15mm以上としている。

長辺の目地は、パネル同士をかみ合わせるため製品ごとに一定の幅となる。短辺の目地幅は、地震時の層間変位を吸収できるように設定する。また、日常の温度変化によるパネルの長さ変化に対してシーリング材の伸縮が許容範囲内に入るように設定する。

(9) 出隅及び入隅のパネルの目地幅

目地の動きは、建物部位によって様々であることから、部位ごとの変形量を考慮して目地幅を設定する必要がある。特に、出隅及び入隅のパネル目地幅は、大きくする必要があり、「標仕」8.5.3 (10)では特記によるとしているが、特記がなければ 15mm程度としている。また、開口部周囲の目地についても同様な考慮が必要である。

(10) パネルの表裏確認
パネルの表裏の確認方法は、パネル短辺、又は長辺の小口面に表裏が記載されているので、それにより確認する。強度上、表裏による違いはないが、表面はパネル製造所で仕上げ面としての表面処理や検査が行われている。

8章 5節 押出成形セメント板 間仕切壁パネル工法

8章 コンクリートブロック、ALCパネル及び押出成形セメント板工事

5節 押出成形セメント板(ECP)

8.5.4 間仕切壁パネル工法

(1) パネルの取付け工法
外壁パネル工法と同様に、横張り工法と縦張り工法がある。横張り工法は外壁パネル工法の横張り工法と同様である。

縦張り工法は、風圧力等の外力が加わらない部位に用いる場合には、パネルの上下端2箇所で固定する。固定方法は、上下端のパネル取付け下地として溝形鋼あるいは山形鋼を用い、専用の取付け金物によりパネルを固定する(図8.5.5参照)。


            姿 図

 


    コーナー部           目地部

 
壁付き部
(注)耐火目地材の幅は30mm以上とし、厚さは隙間寸法の1.2倍程度とする。

図8.5.5 間仕切壁の取付け例

(2) 間仕切壁パネル構法における耐震性能は、躯体の層間変形角に対する追従性能と、下地金物の耐力の検討を行う必要がある。

詳細については、「ECP施工標準仕様書」等を参照するとよい。

(3) 溝形鋼材又は山形鋼の取付け

下地鋼材として用いる溝形鋼材又は山形鋼の取付けは、精度の確保が最も重要である。そのため、施工直前に位置を正確に決めることのできる、あと施エアンカー等による取付けを原則とする。しかし、エレベータシャフトのように下地が鉄骨の場合は溶接等による取付けも可能である。

(4) 工事現場でのパネルの切断

工事現場でのパネルの切断は、パネルの硬度が大きいので専用のダイヤモンドディスクカッターを用いて切断する。また、パネルヘの孔あけは、ドリルにより行う。振動ドリルを用いるとパネルが破損するおそれがあるので用いてはならない。

(5) 防火区画の形成

間仕切壁の耐火性能は、建築基準法施行令第107号の規定に基づく技術基準による。そのため、防火区画を形成する場合は、所定の耐火性能を満足するパネル及び仕様により施工する。縦張り工法の上部取付金物及び横張り工法の全ての取付金物は、建築物の階に応じて所定の耐火性能を有する耐火被覆を行う(図8.5.6参照)。

なお、100mを超える竪穴区画やハロゲン化物消火設備等を設附する防談区画において、煙等の漏えい防止対策が必要な場合には、「乾式工法を用いた防火区画等における煙等の漏えい防止対策に係る指導基準」(平成21年4月10日東京消防庁通達)を参考にするとよい。


    図8.5.6 間仕切壁の取付け例

8章 5節 押出成形セメント板 溝掘り及び開口部の処置、施工における留意点

8章 コンクリートブロック、ALCパネル及び押出成形セメント板工事

5節 押出成形セメント板(ECP)

8.5.5 溝掘り及び開口部の処置

(1) パネルの表裏面に溝掘りを行ってはならない。パネルに溝を設けると、溝部において破損のおそれが大きいため溝掘りは禁止されている。

(2) 出入ロ・窓等の開口を設ける場合は、バネルに孔あけ及び欠き込みを行わない。パネル割付けの際に開口がある場合は、開口位置を図8.5.7に示すように、パネル割付けに合わせる。開口の周囲には補強材を設け、開口部にかかる風荷重は、原則として補強材によって直接躯体に伝えなければならない。


図8.5.7 窓等の開口部の設置とパネル割り

(3) 設備開口を設ける場合は、パネルに孔あけ及び欠き込みを行わない。やむを得ず、孔あけ及び欠き込みを行う場合は、欠損部分を考慮した強度計算を行い、安全が確認された大きさを限度とする。ただし、計算結果にかかわらず、孔あけ及び欠き込みの限度は、表8.5.3の数値以下とする。


表8.5.3 パネルの孔あけ及び欠き込みの限度


8.5.6 施工における留意点

(1) 計画上の留意点

(ア) 面内せん断力を負担するような箇所・取付け工法での使用は避ける。

(イ) 支持間隔や厚さにより許容荷重が異なるため、必ず強度計算を行って確認する。

(ウ) 開口部には、風圧力に見合った開口補強鋼材を用いる。

(エ) 構造体との取合い部分は、クリアランスを設ける。

(オ) 漏水に対する対策が特に必要な場合は、シーリングによる止水のみではなく、二次的な漏水対策も検討する(図8.5.8及び図8.5.9参照)。

図8.5.8 縦張り工法の二次的な漏水対策の例

図8.5.9 横張り工法の二次的な漏水対策の例

(カ) タイルをモルタルにて張り付ける場合は、タイル仕上げ用パネル(タイルベースパネル等)を用い、張付けモルタルはポリマーセメントモルタルとする。

有機系接着剤にてタイルを張り付ける場合は、フラットパネルを用い、JIS A 5557(外装タイル張り用有機系接着剤)に規定する弾性接着剤を用いる。タイル張り乾式工法の場合は、リブを設けた専用パネルを用い、専用タイルを引っ掛ける。タイルの一部は接着剤で固定する。

(キ) タイルの割付けはパネル内割付けとし、タイル及び張付けモルタルがパネル目地をまたがないようにする。

(ク) パネルにより仕切られる空間の湿度差が大きい場合は、パネルに反りが発生するおそれがある。このような場合、パネルの使用される環境条件等を考慮した取付け方法等により、反り防止対策を必ず行うようにする。

(ケ) 寒冷地等厳しい条件下で用いる場合は結露の検討も必要である。

(2) 施工上の留意点

(ア) バネル間の目地にはシーリングを行う。そのためシーリング工事の良否が壁の防水性能を左右する。バックアップ材は四角形のものを選定し、適切なシーリング材深さ(10mm以上)となるように調整し、二面接着となるように施工する(図8.5.10参照)。


         図8.5.10 パネル間目地シーリング

(イ) 取付け金物(Zクリップ)は下地鋼材に30mm以上の掛り代を確保し、取付けボルトがZクリップのルーズホール中心に位置するように取り付ける(図8.5.11参照)。

図8.5.11 Zクリップ掛り代

参考文献

9章 防水工事 1節 一般事項

第09章 防水工事

1節 一般事項
 

9.1.1 適用範囲

(a) 建築物で防水を必要とする部位は屋根、ひさし、バルコニー、外壁及び室内の水回り等である。これらの部位への防水層が必要となる。この防水層を形成するために行う工事が防水工事である。

防水工事の仕様は一般に経験と実績データによるといわれている。このことから「防水工事の仕様」は信頼性のあるものが用いられる。「標仕」に採用している仕様は材料・工法とも常に技術の進歩と実績による検証を含めて検討されたものである。このため新しい防水工法はあまり採用されていないが、これらの工法の防水性能が劣るものではない。新しい防水工法を採用する場合には、施工例等を十分検討したうえで用いるとよい。

(b)「標仕」では、メンブレン防水として、アスファルト防水、改質アスファルトシート防水、合成高分子系ルーフィングシート防水及び塗膜防水を規定している。また、地下構造物を対象とした防水としてケイ酸質系塗布防水を規定している。更に、目地防水として、不定形弾性シーリング材を用いたシーリングの規定がある。

(c) メンブレン防水工事は、不透水性被膜を形成することにより防水するものである。選定に当たっては建物の用途、規模、構造、気候及び施工条件を考慮する必要がある。更に、保全のしやすさ、耐久性等も併せて検討することが大切である。メンブレン防水層の種別選定の目安を表9.1.1に示す。

(d) ケイ酸質系塗布防水工事は、コンクリート表面にケイ酸質系塗布防水材を塗布し、その生成物でコンクリートの毛細管間隙を充填し、防水性能を付与するものである。選定に当たっては部位、用途等を考慮し、更に下地の状態に十分な配慮を行い適用する必要がある。ケイ酸質系塗布防水の適用部位は「標仕」表9.6.1を参照されたい。

(e) シーリング工事は不定形弾性シーリング材を用いて部材の接合部等を充填するものである。シーリング材の種類は被着体に適応するものを選定する。シーリング防水の種別選定の目安は7節を参照されたい。

9.1.2 基本要求品質

(a) 防水工事及びシーリング工事に使用する材料の品質は主としてJISによるものとしており、このJISに適合することの証明方法は1章4節に示すとおりである。 JISのない材料にあっては、主要な材料製造所の指定する製品としており、この指定された製品であることの確認ができる資料を提出させることによって証明ができるようにする。

(b) 防水工事及びシーリング工事は、使用する材料の品質規定だけでなく、指定材料により防水層等を構成する工程についても、官庁営繕工事の実績により「標仕」に詳細に定めている。「所定の形状及び寸法」とは出来上がった状態に対する要求であるが出来形の確認として完成した防水層を切り取ることを要求しているわけではない。品質はプロセスによってつくり込まれるという考え方に立って.定められた材料を定められた手順で施工することで結果として所定の形状及び寸法を確保するようにする。具体的には、このための管理項目、「標仕」で定める以外の詳細な手順を明確にし、プロセスの途中における施工の良否の判定基準及びこれらの限度を超えた場合の処置方法を「品質計画」において提案させるとよい。

完成した防水層やシーリングは、防水上重要あるだけでなく、出来形として見え掛り面に表れてくることから、意匠上も重要になる。このことを踏まえて「所要の仕上り状態」とは、防水機能を果たす部位としての寸法及び形状を満足するだけでなく、見え掛りとなる部分については、取り合う仕上材料とのバランスを考慮して出来形の許容範囲を具体的に定め、これを確実に実施するための管理を行うと考えればよい。

(c) 「標仕」9.1.2(a)(3)、(b)(3)でいう「漏水がない。」とは、例えば、屋上の防水の場合等に水張り試験を行って確認することを要求しているわけではなく、漏水のない品質をプロセスでつくり込むという考えが重要である。つまり、(a)及び(b)と関連して、防水工事及びシーリング工事の施工プロセスをいかに管理するかを具体的に「品質計画」で提案させ、これを実施した結果として、防水工事の基本である漏水のない建物ができると考えればよい。

9.1.3 施工一般
(a) 施工時の気象条件

(1) 防水層の施工の良否は、施工時の気象条件に大きく左右されるので十分注意する必要がある。次の場合は施工を中止する。

(i) 気温が著しく低い場合
(ⅱ) 降雨・降雪等のおそれがある場合
(ⅲ) 降雨・降雪等のあとで、下地が十分乾燥していない場合

(ⅳ) 強風及び高湿の場合

(2) 施工時の降雨、降雪に対する処置

防水施工中、降雨・降雪のおそれが生じた場合には一時中止し、既に施工した防水層について必要な養生を行う。

(b) 施工の各段階における監督職員の検査
本来期待する防水機能は、材料と工法の選択により決まるものであるが、更には、施工段階の合理的な品質管理によってつくり込まれるものである。
したがって、使用する材料の確認だけでなく、実際の施工の各段階における適切な時期に、適切な作業が行われていることを確認することが重要である。

このため「標仕」9.1.3(b)では、防水層の施工は随時検査を行うことを規定している。

(c) 防水層施工後は、機材等によって防水層を損傷しないように注意するとともに、他の工種の作業員等が防水層に上がらないようにする。やむを得ない場合は必要な養生を行う。

表9.1.1 メンブレン防水層種別選定の目安