98)エスカレーターの安全確保策
エスカレータに挟まれたり、エスカレーターから落下したり、乗り降りの時につまづいたりする事故がある。東日本大震災後の余震でショッピングセンターのエスカレーター本体が落下する事故も発生した。
1.乗り込みやすいエスカレーター
エスカレーターの昇降スピードも駅や病院等の不特定多数の人が利用する施設に設置する場合は、規格型の標準スピード 30m/分の機種を採用するのではなく、転倒防止や安全対策を施した15〜20m/分のスピードの機種を採用する。また、乗込みステップの長いものの方がお年寄りや子供にやさしい。
屋外に設置するエスカレーターは屋根が設けてあっても雨の吹き降りにより床が濡れ、滑って転倒する恐れがある。乗降場の防滑に配慮した床仕上げ材の選択と床排水を確実に行う必要がある。
2.挟まれ防止
エスカレーターの移動手すりと建物の壁や天井との間に生じる三角部に人が挟まれる事故を防ぐため、固定式保護板の取付けが義務付けられた(2000年6月 建築基準法改正)。改正以前は可動式保護板のみで良かったが、安全のため、固定式保護板と可動式警告板の両方を取り付けなければならない。
3.エスカレーターの落下防止
エスカレーターまわりの吹抜けには落下防止柵(手すり)を設ける。2台並ぶエスカレーターの間にも仕切り板とせきが必要である。
天井が高い吹抜けに面したエスカレーターでは移動手すり(高さ約800mm)だけでは下を見ると恐怖感があり、下から見ても何か落ちてきそうで不安である。みんなが安心して乗れるように、吹抜けのエスカレーターには落下防止スクリーン(透明ポリカーボネード製、高さ1500mm程度)を設けたい。
4.地震時のエスカレーター脱落防止
建物の梁にかけられたエスカレーターは地震時の躯体の層間変位に追従して落ちないように十分なかかり代が重要である。万が一にも落下することがあってはならない。2013年7月に建築基準法施工令が改正され、10月に地震などでエスカレーターが脱落するおそれがない構造方法を定める告示(第1046号)が出された。一端固定他端スライドの時、スライドする部分の構造方法は次の式による十分な隙間とかかり代長さの確保が必要である。
隙間:C > Σγ・Hの場合
かかり代長さ:B ≧ Σ γ・H + 20(単位 mm)
γ:各階の設計用層間変形角
H:エスカレーターの各階の揚程
また、両端非固定状態の場合などの構造方法についても規定されている。できれば、さらに脱落防止のワイヤーロープを掛けておきたい。
エスカレーターの安全確保