第6章 コンクリート工事 7節 養生(R4版)

建築工事監理指針 第6章 コンクリート工事


7節 養 生

6.7.1 養生温度

(1) 十分に湿気を与えて養生した場合のコンクリート強度は、材齢とともに増進するが、乾燥あるいは低温の状態においたものは増進が非常に少ない。特に硬化初期の養生は、その影響が大きい。コンクリート養生の基本は、常に水分を与え適温に保つことである。

建築基準法施行令第75条には、コンクリートの養生についての規定があり、「コンクリート打込み後5日間はコンクリート温度が 2℃を下らないように(中略)養生しなければならない。ただし、コンクリートの凝結及び硬化を促進するための特別の措置を講ずる場合においては、この限りでない。」と規定されている。「標仕」では、打込み後5日間以上、早強ポルトランドセメントの場合は強度発現が速いため3日間以上、コンクリート温度を2℃以上に保つよう規定されている。

(2) 冬期等で著しく気温が低い場合は、打込み後のコンクリートが凍結しないように保温、採暖が必要になる。

(3) 部材断面の中心部の温度が外気温より 25℃以上高くなるおそれのあるときの養生は「標仕」6.13.4による。

6.7.2 湿潤養生

打込み後のコンクリートが、透水性の小さいせき板で保護されている場合は、湿潤養生と考えてもよい。しかし、コンクリートの打込み上面等でコンクリート面が露出している場合、あるいは透水性の大きいせき板を用いる場合には、日光の直射、風等により乾燥しやすいので、初期の湿潤養生が不可欠となる。湿潤養生には、養生マッ卜又は水密シート等で覆う方法、連続又は断続的に散水又は噴霧を行う方法、膜養生剤や浸透性養生剤の塗布による方法等がある。

夏期や風の強い日に施工した床スラブ・ひさし等薄い部材では、コンクリートが急速に乾燥するため、特に初期の湿潤養生が大切である。また、混合セメントを使用するときには特に早期における乾燥を防ぐようにする。

また、「JASS 5 鉄筋コンクリート工事」8.2[湿潤養生]においては、湿潤養生の期間について、コンクリート部分の厚さが18cm以上の部材において、早強・普通・中庸熱ポルトランドセメントを用いる場合、計画供用期間の級が短期及び標準の場合 は、コンクリートの圧縮強度が10N/mm2以上、長期及び超長期の場合は15N/mm2以上に達したことが確認されれば、以降の湿潤養生を打ち切ることができるとしている。

なお、平成28年版「標仕」からは、特記された場合に普通エコセメントが使用でき、その場合の湿潤養生期間は特記によるとしている。「JASS 5」では普通エコセメントを使用する場合の湿潤養生期間を明確には示していないが、国立研究開発法人建築研究所の「建築研究報告 No.144」では、「普通エコセメントの初期の水和反応は、高炉セメントB種、C種と同様に普通ポルトランドセメントに比べていくぶん遅いので、十分に注意して養生を行う必要がある。・・・中略・・・その期間は、養生方法が適切であれば、高炉セメントB種を使用するコンクリートの場合と同様に、 7日間以上とすればよいであろう。」としており、これらを参考にするとよい。

6.7.3 振動及び外力からの保護

(1) 凝結硬化中のコンクリートに振動・外力を与えると、ひび割れが発生するなど、損傷を生じることがあり、また、早期材齢で荷重を加えるとたわみの増大につながることがある。このため、コンクリートが硬化するまでは十分な養生が必要である。

(2) コンクリート打込み後1日以内にやむを得ずスラブの上に乗るような場合には、コンクリートに振動・衝撃を与えないように静かに作業しなければならない。

第6章 コンクリート工事 6節 工事現場内運搬、打込み及び締固め(R4版)

建築工事監理指針 第6章 コンクリート工事


6節 コンクリートの工事現場内運搬、打込み及び締固め

6.6.1 工事現場内運搬

(1) 運搬用機器は、次による。
(ア) 工事現場内の運搬には、コンクリートポンプを用いる方法が一般的であるが、運搬距離が短い場合や時間当たりの運搬量が少ない場合にはバケット、シュート、手押し車等が用いられる。運搬機器は、運搬中におけるコンクリートの品質変化が少なく、打込み時点で所要の品質のコンクリートが得られることを基準に選定することが必要である。各種運搬機器の概要を表6.6.1に示す。

表6.6.1 コンクリートの運搬機器の概要(JASS 5より)

バケット、手押し車等及びシュートを用いる場合には、次のような点についての配慮が必要である。

(a) バケットを用いる場合
① 下部からコンクリートを排出する形式のバケットを用いる場合は、なるべく排出口が底の中央部のあるものとする。

② コンクリートをあけ移しする形式のバケットを用い、コンクリートを均質、かつ、容易に排出できるものとする。

(b) 手押し車等を用いる場合
① 運搬中にコンクリートの材料が分離することや受け桝から漏出することなどのないようにする。

② 運搬中に分離を認めた場合は、練り直し、コンクリートが均質になるようにする。

(c) シュートを用いる場合
① シュートは、コンクリートの分離や漏れを生じることなく、滑らかに流れる構造のものとする。

② シュートは、原則として、縦形フレキシブルシュートとする。ただし、やむを得ない場合は、①を満たすことを確認して、傾斜形シュートを用いることができる。

③ 高所からコンクリートを流下させる場合は、縦形フレキシブルシュートを用いることとし、その投入口と排出口との水平方向の距離は、垂直方向の章さの1/2以下とする。

④ 傾斜形シュートを使用する場合は、次による。
1) 傾斜は、4/10 ~ 7/10とする。
2) シュートの排出口には、長さ600mm以上の漏斗管を付ける。

(イ) 運搬用機器は、事前に清掃しておき、付着しているコンクリート塊や油等がコンクリートに混入しないようにする。また、動力利用の機械は、途中で故障すると計画どおりの施工ができなくなるので、十分に整備、点検をしておく必要がある。

(2) コンクリートは、所要のスランプ、強度、耐久性が得られるように材料の調合割合を定めている。スランプが少し小さいからといって工事現場内の運搬時に水を加えると、水セメント比が大きくなって所要の強度や耐久性が得られなくなる。したがって、運搬及び圧送の際には絶対に水を加えてはならない。

(3) コンクリートポンプによる圧送を採用する場合には、工事現場の立地条件、コンクリートの種類、1日の打込み量等を考慮し、適切なポンプの機種及び台数を選定する。また、ブーム付きポンプ車以外の場合のフレキシブルホースの長さ(100A管以下では6m以下、100A管を超えるものは5m以下)のほか、次に示す点に対する配慮が必要である。

(ア) 輸送管は、圧送中に前後左右に動くので、鉄筋や型枠に輸送管がじかに接していると配筋の乱れ、型枠の変形等の原因となる。したがって、輸送管の保持については、「標仕」6.6.1(3)(ア) を厳守させることが大切である。

(イ) 輸送管の径が大きいほど圧力損失が小さくなり、圧送性が向上する。したがって、輸送管の径が大きいほど圧送可能な距離や闊さが大きくなるとともに時間当たりの圧送量も増える。輸送管の径の選定に当たって考慮すべき事項については「標仕」6.6.1(3)(イ) に示されている。

(ウ) 「標仕」では、コンクリートの圧送開始前にモルタルを圧送することにしている。これを行わずに圧送すると、輸送管内にモルタル分が付着し、排出されたコンクリートがモルタル分の少ないコンクリートになり強度が低下する。

なお、この時使用するモルタルは、後から打ち込むコンクリートの品質に悪影響を与えないように富調合のものとすることが必要である。

圧送後のモルタルは、平成22年版「標仕」から「型枠内に打ち込まないことを原則とする。」としてきた。しかし、平成31年版の改定で「圧送後のモルタルは、型枠内に打ち込んではならない。ただし、これにより難い場合は監督職員と協議する。」と改められた。圧送後のモルタルは、型枠内に打ち込まないことが原則であるが、打ち込まざるを得ないような場合は、監督職員と協議して対応を決めるのがよい。やむを得ず打ち込む場合は、少量ずつ分散させる、よく混ぜるなど影響が少なくなるようにする必要がある。

なお、その場合でも、最初に排出される変質した部分は廃棄し、良質な部分のみを打ち込む必要がある。

また、環境配慮の観点からは、廃棄処分とするモルタル量は少ないことが望ましく、先送りモルタルを最小限とするような計画を立てることが大切である。
(エ) 圧送されたコンクリートで圧送途中に著しく変質した部分及び圧送中に閉塞したコンクリートは、施工上又は品質上の問題があるので廃棄する。

6.6.2 コンクリートの練混ぜから打込み終了までの時間

(1) コンクリートは、練混ぜ終了後、時間の経過に伴ってスランプや空気量等のフレッ シュ性状が変化する。レディーミクストコンクリート工場では、工事現場到着時に所定の品質を保証しているが、経過時間が長くなるとスランプの低下が大きくなり、コールドジョイント発生のおそれが高くなる。したがって、「標仕」では練混ぜ開始から打込み終了までの時間を外気温が25℃以下の場合120分以内、外気温が 25℃を超える場合90分以内と定めている。JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)では、レディーミクストコンクリートの工事現場までの運搬時間の限度を1.5時間としているので、到着したコンクリートをできるだけ早く打込みができるように準備をしておくとともに打込み速度に合わせてコンクリートが搬入されるように配車計画を立て、現場での待ち時間をできるだけ少なくする。

また、コンクリートポンプで圧送する場合には、コールドジョイント防止の観点から長時間中断しないで圧送することが大切である。

(2) 練混ぜから打込み終了までの時間は、コールドジョイントや豆板等の施工欠陥を防止する目的で定めたものである。したがって、コンクリートの練上がり温度を下げたり、凝結を遅らせるなどの対策を取れば時間の限度を超えても欠陥を生じないで施工することは可能である。工場から工事現場までの運搬時間が長い場合等で、このような措置を講じて練混ぜから打込み終了までの時間の限度を変更する場合には、上述のような品質確保の方法が行われることを確認した後に承諾する。

6.6.3 打込み

(1) 多量の雨が降っている時にコンクリートを打ち込むと、雨水がコンクリート中に入って水セメント比が大きくなり、所要の強度が得られなくなる。また、コンクリー卜温度が 2℃未満となる低温時にはセメントの水和反応が遅れ、初期凍害を受けるおそれがある。このような場合には、コンクリート中に雨水が入らないようにしたり、コンクリート温度を高めるとともにその後の養生方法を適切に定めるなどの対策を講じたうえで打ち込むことが必要である。このような対策を取らないで打ち込むと所要の品質を確保することが困難になる。

(2) 打込み開始前に行う型枠内部の掃除では、電気掃除機等により雑物を取り除く。水洗いだけでは、柱下部等に雑物が集中することになるので、柱下部等に掃除口を設けて内部に落ち込んだ雑物を取り除く。

せき板が乾燥している場合には、打込みに先立って散水するが、寒冷時等で水が凍結するおそれのある場合には散水を行ってはならない。

(3) コンクリートの打込みは、打ち込む場所へ、コンクリートが分離しないように直接静かに入れて、十分に締め固め、そのコンクリートが落ち着いてから次のコンクリートを打ち込むことが大切である。また、壁に打ち込んだコンクリートをバイブレーターを使用して柱を通過させて横流しをすると、柱の鉄筋によって粗骨材の移動が阻害され、モルタルの多いコンクリートとなるのでこのようなことは避けなければならない。

打込みの基本的事項を次に示す。
(ア) 低い位置から落とす。
(イ) 型枠内部で横流しすることを避ける。
(ウ) 全体が均ーな高さを保つように水平に打ち込み、十分締め固めてから次の層を打ち込む。
(エ) 打ち込む位置の近くに落とし込む。1箇所に多量に打ち込み、横に流してはならない。

(4) コンクリートの打込み区画は、工程上無理のない区画とするとともに、施工欠陥を生じやすい部位については特に注意して施工することが必要である。

(ア) パラペットの立上り部分は、漏水上の欠陥を生じやすく、また、ひさし・バルコニー等は片持梁となりこれを支持する構造体部分との接合部に応力が集中する。このような部分は、構造体と同一の打込み区画とすることが必要である。

(イ) 1回に打ち込むように計画した区画内では、コールドジョイント等の施工欠陥を防止するために、連続して打ち込み一体となるようにすることが大切である。

(ウ) 同一打込み区画には、2つ以上のレディーミクストコンクリート工場のコンクリートを打ち込まないようにする必要がある。これは、それぞれの工場の品質責任の所在が不明確になるためである。そのため、同一打込み区画への複数工場からの混合使用を行わなくてもよいように、コンクリートの供給能力を考慮して工場を選定しなければならない。

(5) コンクリートの打込み速度は、打込み場所の施工条件によって大きく異なるが、十分締固めができる範囲とすることが大切である。スランプ18cm程度のコンクリートをコンクリートポンプ工法で打ち込む場合の目安は、20 ~ 30m3/h程度である。

(6) シュートやホース等の運搬用具から打ち込む位置までの自由落下高さが大きすぎたり、水平流動距離が大きいとコンクリートに材料分離を生じる。したがって、縦形シュートを用いたり、横流しをしないようにしてコンクリートの分離を防止する。

コンクリートを1箇所にまとめて打ち込み、その後バイプレーター等で横流しをすると材料分離を生じるおそれがあるので避けなければならない。コンクリートは、打ち込む場所にできるだけ近い位置に打ち込むことが原則である。

(7) 部材ごとの打込みの進め方及び打上りの欠陥を次に示す。
(ア) 基礎の打込み
(a) 捨コンクリート等の面に、水、土、木片その他支1旅となる雑物のないように掃除する。特に水の排除に注意する。

(b) 連続基礎のとき、翌日打ち込む部分との打継ぎ箇所は確実に打ち止める。流し放しにしてはならない。

(c) 長い距離を斜めシュートで打ち込むことはなるべく避けるべきであり、やむを得ない場合は、U字形断面のものを使用し、中間で一度ホッパーに受けて次のシュートに流す。また、末端部には縦形シュートを使用し、コンクリートを鉛直に落とす(図6.6.1参照)。


図6.6.1 基礎の打込み

(イ) 柱の打込み
(a) 柱の打込みは、コンクリートを一度スラブ又は梁で受けた後、柱各面から打ち込む。

梁筋と柱筋の交差している箇所から打ち込むと、特に分離しやすい(図6.6.2参照)。


図6.6.2 柱の打込み(各面から打ち込む)

(b) 吐出する向こう側のせき板にコンクリートが直接当たらないように、小形受け桝等で受けてから鉛直に落とす。

(c) 高い柱(4.5 ~ 5m以上)に打ち込む場合は、次のようにするのがよい。

① 最上部から縦形シュートが使用できるときはこれを利用して、常に打上げ面近くでコンクリートを放出する。

② 縦形シュートが使用できない時は、柱中段のせき板に打込み口を設け、外部にポケット状のたまり場をつくり、コンクリートがゆったり落ちていくようにする(図6.6.3参照)。


図6.6.3 柱の打込み(高い柱を打つ場合)

(ウ) 壁の打込み
(a) 打込み口は、原則として1 ~2m 間隔で各位置から平均に落し込むようにする。

(b) 間隔の広すぎる打込み口から落として、型枠内に大山や大傾斜をつくり、横流しで平らにすることや斜めのままで打ち込むと、分離や豆板ができやすい。

(c) 柱脇の開口部下部等にコンクリートを充填させるために、柱に打ち込まれているコンクリートを引き出してはならない(図6.6.4参照)。


図6.6.4 壁の打込み(柱脇に開口)

(エ) 梁の打込み
(a) 梁の全せいを同時に、両端から中央に向かって打ち込む。

(b) せいが高い梁は、スラブと一緒に打ち込まず、梁だけ先に打ち込む。

(c) 柱、壁等を、梁下で一度止めずに上部まで連続して打ち込むと、柱、壁等のコンクリートの沈降により、梁との境目にひび割れが発生するおそれがあるので、壁及び柱のコンクリートの沈みが落ち着いた後に梁を打ち込む。

(オ) スラブの打込み
(a) スラブは、梁のコンクリートが沈降してから打ち込まないと (エ) (c)と同様に、梁との境目にひび割れが発生するおそれがあるので、梁のコンクリートが落ち着いた後にスラブを打ち込む。

(b) 打込みは、遠方から手前に打ち続けるように行う(図6.6.5及び図6.6.6参照)。

(c) コンクリートの浮き水が多い場合は、排除する。

(d) 柱、壁の打込みでこぽれて硬化したコンクリートは、掃除してからコンクリートを打ち込む。


図6.6.5 スラブの打込み(ポンプによる打込み)


図6.6.6 スラブの打込み(バケットによる打込み)

(カ) 階段の打込み
(a) 階段のある打込み区画は、階段回りから打ち込む。

(b) コンクリートを壁又は柱からかき出さずに直接打込み、壁際取合いはふたをする。

(キ) 鉄骨鉄筋コンクリート打込み
鉄骨鉄筋コンクリートの鉄骨梁のフランジ下端や、梁と柱の接合部下端は、コンクリートの充填が最も難しいところであるので、梁せい、梁幅、フランジ幅、型枠との間隔によりコンクリートのワーカビリティー、打込み方法等を考えなければならない。軟練りのコンクリートを打ち込むと、充填後の沈降により、フランジ下端に空洞を生じやすい。特に梁せいの大きい場合は、フランジ下端が空洞になっている例が多いので、片側からコンクリートを流し込み、反対側にコンクリートが上昇するのを待って、全体に打ち込む方法をとるのがよい(図6.6.7参照)。

 
図6.6.7 各部位に起こりやすい打上りの欠陥

(8) 同一区画のコンクリート打込み時における打重ね時間間隔の限度は、打重ね部にコールドジョイントを発生させないで施工できる範囲で定める必要がある。コールドジョイントを発生させないためには、先に打ち込まれているコンクリートに再振動を加えられることが必要なことから「標仕」6.6.3 (8)では再振動可能な範囲と定めている。この時間の限度は、通常の場合外気温25℃以下の場合120分、外気温が25℃を超える場合90分を目安とする。

なお、凝結時間を遅らせる対策を取った場合には打重ね時間間隔の限度を長くすることが可能である。

(9) コンクリート中に埋め込まれた鉄筋、スペーサー及びバーサポート等は、打込み時のコンクリートの圧力や振動機の振動及びポンプの配管移動の影響により移動を生じやすく、このため鉄筋等のかぶり厚さが不足する場合が多く認められている。かぶり厚さが不足すると、鉄筋が腐食し建物の耐久性上間題となる。したがって、コンクリートの打込みに際しては鉄筋等が移動しないようにすることが重要である。

6.6.4 打継ぎ

(1) 打継ぎはできるだけ少なくし、応力の小さいところで打ち継ぐことが基本である。梁及びスラブに鉛直打継ぎ部を設けなければならない場合には、せん断応力の小さいスパン中央付近又は曲げ応力の小さいスパンの1/3 ~1/4のところがよい(図 6.6.8参照)。梁の付け根で打継ぎをするのは避けなければならない。

また、柱及び壁の場合の水平打継ぎ部は、スラブ、壁梁又は基礎の上端に設ける。


図6.6.8 鉛直打継ぎ位置

(2) 打継ぎ部の仕切り面の施工に当たっては、次の事項に留意する。

(ア) せき板を密に隙間なく組み立て、モルタルの流出を防ぐとともに、コンクリート打込み後せき板を取り外しやすいように仕切る。

なお、仕切り面は必要に応じて目荒らしを行った後、清掃し、コンクリート打込み前に水湿しを行う。

(イ) 梁や壁には、鉄筋を骨としてメタルラスや板を張って仕切るのがよい。打継ぎ位置付近に出入口等の開口部がある場合には、そこで仕切るとよい。

(ウ) 梁・壁で、割竹・しの竹類を差し込んで仕切る方法は、密に隙間なく差し込んでも下部からモルタルが流出することが多く、適切な方法とはいえない。また、コンクリート打込み後、時期を見て割竹等を動かしてコンクリートとの付着をなくしておかないと抜けなくなる。

(エ) スラブの仕切り面は、上端筋が下がりがちなので十分注意する。

(オ) 打継ぎ面が外部に接する箇所には、打継ぎ部の防水処理を行うため目地を設ける。

(3) 打継ぎ面に水がたまっていると、その部分に打ち込んだコンクリートの水セメント比が大きくなり、所要の品質が得られないことがあるので、水がたまらないようにする。また、水がたまってしまった場合には、コンクリート打込み前に取り除くことが必要である。

(4) 打継ぎ面は、レイタンスがたまったり、ぜい弱なコンクリートになりやすい。レイタンスやぜい弱なコンクリートの上に新しいコンクリートを打ち込んでも付着が十分得られないので、高圧水洗等によりこのような部分を取り除き、健全なコンクリートを露出させてから打ち継ぐことが必要である。

6.6.5 締 固 め

(1) コンクリートに生じる欠陥としては、気泡、豆板、不充填部等がある。これらの欠陥を生じさせないためには、棒形振動機あるいは型枠振動機を用いて十分締め固め、密実なコンクリートとすることが大切である。

コンクリートの締固めを十分行うためには、適切な締固め要員を準備することが必要である。コンクリートの配管1系統で1日の打込み量が150m3程度を想定した場合には、棒形振動機を2台準備し、振動機要員2名、打込み・締固め要員等7名以上を配置する。また、施工中に生じる型枠・鉄筋の保守・点検をするために型枠工と鉄筋工を配置しておくようにする。また、施工中に生じる埋込み配管等の不具合を修正するために設備要員を配置することも必要である。

(2) 通常締固めに用いている振動機は、JIS A 8610(建設用機械及び装置 – コンクリート内部振動機)に定めるものであり、スランプ18cm以下のコンクリートを施工する場合には、この棒形振動機を用いなければ密実な締固めを行うことはできない。棒形振動機を挿入できないところや届かないところは、型枠振動機や突き棒・たたき等を併用して締め固める必要がある。公称棒径45mmの棒形振動機1台当たりの締固め能力は、スランプ10 ~ 15cm程度の普通コンクリートの場合で10 ~ 15m3/h程度であるので、打込み速度に応じて振動機の使用台数を定める必要がある。

(3) 公称棒径45mmの棒形振動機の長さは60 ~ 80cmであるので、1層の打込み厚さはこれ以下にし、打ち込んだコンクリートの下層まで振動機の先端が入るようにすることがコールドジョイントをはじめとする施工欠陥を防ぐために大切である。挿入間隔は、振動機の振動が伝わる有効範囲内で定める必要があり、前述した公称棒径45mmの振動機の有効範囲を参考にして60cm以下と定めている。公称棒径が45 mmより小さい振動機を用いる場合は、挿入間隔を狭くする必要がある。

なお、振動を加える時間を長くし過ぎると材料分離を生じるので、加振時間はコンクリートの表面にペーストが浮くまでと定めている。振動機を用いて締め固める場合の注意事項は次のとおりである。

(ア) 鉛直に挿入して加振し、挿入間隔は60cm以下とする。

(イ) 振動機の先端が鉄骨、鉄筋、埋込み配管、金物、型枠等になるべく接触しないようにする。

(ウ) 振動時間は、コンクリート表面にセメントペーストが浮くまでを標準とし、コンクリートに穴を残さないように加振しながら徐々に引き抜く。加振時間は、1箇所5~15秒の範囲とするのが一般的である。

(4) 型枠振動機は、新たにコンクリートが打ち込まれる部分に取り付けて、振動を加える必要がある。したがって、打込み高さと打込み速度をよく考慮して取り付けることが重要であり、既に締め固めた部分に振動を加えると材料分離を生じ、まだコンクリートが打ち込まれていない部分に振動を加えると型枠が損傷したり、変形する原因となる。

6.6.6 上面の仕上げ

(1) ここでいうコンクリート上面の仕上げとは、打込み、締固めのあと工程及び左官仕上げの前工程としての天端均しのことであり、せき板に接しないで仕上げられる床スラブ・屋根スラブの上面とパラペットの天端等が対象となる。この面の精度は、特記されるべきであるが、特記がない場合は「標仕」表6.2.5を標準として、この平たんさが得られるように沈下代を見込んで天端均しを行う。

(2) コンクリート打込み後、所定の位置と勾配に荒均しを行い、その後、凝結が終了する前にタンパー等で粗骨材が表面より沈むまでタンピングし、コンクリートのひび割れを防止する。

(3) コンクリートを打ち込む前に、床仕上げに必要な造り方定規を設ける。仕上げ精度が要求される場合にはガイドレール(鉄骨鉄筋コンクリートの場合はピアノ線等を張ることもある。)等を 3.5~4.0m間隔に設置し、基準となる造り方定規は鉄骨その他狂いの生じない箇所に設け、常に点検して正確に水平又は所要の勾配を保持するようにする。

ガイドレール等の造り方定規は、定規均し後取り外し、その跡はコンクリートを充填し、木ごてで平らに均す。

壁や柱際等で均し定規等を使用できない部分は、特に不陸の生じないよう、十分に木ごて等でタンピングして平たんに均す。

定規均しをむらなく行った後、中むら取りを木ごてを用いて行う。

木ごてずりは、コンクリート面を指で押しても少ししか入らない程度になった時期に行う。

(4) 床スラブのコンクリートを直均しで仕上げる場合には、「標仕」15章3節に従って実施する。

6.6.7 打込み後の確認等

(1) 打込み後の仕上り状況の確認時期が「標仕」6.6.7(1)に示されている。豆板、空洞、コールドジョイント等の有無の確認は、せき板取外し後に行えるが、構造体に発生しているひび割れ及びたわみについては、支保工で支えている状態では正しい確認ができないので、支保工を取り外した後に行う。補修が必要なひび割れかどうかの判断は、通常表面のひび割れ幅で行っているが、鉄筋に錆を発生させやすい条件かどうかによる耐久性上の判断と防水性が要求されるかどうかによって異なってくる。補修を必要としないひび割れ幅の値は、(公社)日本コンクリート工学会「コンクリートのひびわれ調査、補修・補強指針」では、防水性が要求される場合には0.05mm以下、防水性は要求されないが、かぶり厚さや表面被覆の有無等から見て鉄筋の錆を発生させやすいなど耐久性から見た条件が厳しい場合(塩害・腐食環境下)には 0.2mm以下、耐久性から見た条件が普通の場合(一般屋外環境下)0.3mm以下、耐久性から見た条件が緩やかな場合(土中・屋内環境下)0.4mm以下等としている。

(2) 施工欠陥が認められた場合の処置は、6.9.6による。

第6章 コンクリート工事 5節 品質管理(R4版)

建築工事監理指針 第6章 コンクリート工事


5節 コンクリートの品質管理

6.5.1 品質管理一般

(1) 「標仕」6.5.1では、打ち込まれるコンクリートが所定の品質を有していることを確認するために受入れ時に受注者等が実施する品質管理について規定している。したがって、この節においては、受注者等を主体として記述している。

(ア) 間違ったコンクリートの納入や誤配車を排除するために、レディーミクストコンクリートの受入れ時には、荷卸しされるコンクリートの種類、呼び強度、指定スランプ、粗骨材の最大寸法、セメントの種類及び容積が、発注した条件に適合していることを各運搬車の納入書によって確認することが必要である。

(イ) レディーミクストコンクリートでは、荷卸し地点までの品質についてはレディーミクストコンクリート工場が責任をもち、それ以後の品質については購入者(受注者等)が確認し、監督職員に報告する。そのため、購入者(受注者等)は、工事現場に荷卸しされるコンクリートの品質が所定の品質を有していることを常に確認し、購入者(受注者等)は、異状が認められたコンクリートは受取りを拒否し、持ち帰らせる必要がある。

レディーミクストコンクリートの受入れ時に判定できる品質は、スランプ、空気量、単位容積質量、温度及び塩化物イオン量等である。

(ウ) 所要のコンクリート性能を確保するためには、単位水量の管理が極めて重要で ある。打込み中に、粗骨材とモルタルの分離やスランプ、空気量の大幅な変動等、コンクリートの品質に変化が見られた場合は、直ちにコンクリートの打込みを停止し、コンクリート工場の製造管理記録に記載されている単位水量の他が「標仕」6.4.3 (6)に規定される配合計画書の数値に計量誤差の数値を加味した値に対して、所定の範囲内であることを確認する必要がある。

なお、ここでいう配合計画書とは、JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)の表8に規定されるレディーミクストコンクリート配合計画書をいう。

平成22年4月1日からは、JIS A 5308のレディーミクストコンクリート納入書の標準様式が変更され、配合表も併記されている。この配合表には、標準配合、修正標準配合、計量読取記録から算出した単位量、計量印字記録から算出した単位量若しくは計量印字記録から自動算出した単位量のいずれかが記載されている。また、購入者から要求があった場合に、生産者はレディーミクストコンクリートの納入後にバッチごとの計量記録及びこれから算出した単位量を提出しなければならないことになっている。

なお、単位水量について、配合計画書の値とコンクリート工場の製造管理記録の値とがほぼ同じ( ±1%程度)であるにもかかわらずコンクリートの品質に変化が認められる場合は、レディーミクストコンクリート工場と原因を調査し、改善を行うことが必要である。

(エ) コンクリートのワーカビリティーが安定していて状態が良いことを目視等で確認することとし、その確認時期を打込み当初と打込み中随時行うことを定めている。ワーカビリティーについては、スランプ試験後のコンクリートを目視等で観察し、粗骨材が分離していないことを確認するとともに必要に応じてスランプフローを測定するのがよい。また、試験結果は写真等で記録することが重要である。

(オ) I類コンクリートを使用する場合には、受注者等は、自らが実施する品質管理の試験結果及びレディーミクストコンクリート工場が行うJIS A 5308の品質管理の試験がJIS Q 1011(適合性評価 – 日本産業規格への適合性の認証 – 分野別認証指針(レディーミクストコンクリート))に基づいて行われているかを確認し、試験結果を監督職員に報告することとしている。

なお、受注者等はレディーミクストコンクリート工場が行う試験結果の報告があっても、受注者等が実施する検査は、省略することはできない。

(カ) JISマーク表示認証製品のI類コンクリートにおいては、使用する材料から製品の品質に至るまでの品質管理をJIS Q 1001(適合性評価 – 日本産業規格への 適合性の認証 – 一般認証指針)及びJIS Q 1011に基づいて実施している。しかし、 II類コンクリートについては必ずしもI類コンクリートと同様に管理されているとは限らない。そこで、Ⅱ類コンクリートを使用する場合には、次の方法で品質管理を行う必要がある。

(a) Ⅱ類コンクリートに使用する材料が、 I類コンクリートの製造に用いている ものと同ーである場合には、 I類コンクリートのための材料検査結果を用いることができるが、 I類コンクリートに用いているものと異なる材料を使用している場合には、 I類コンクリートに用いる材料と同様の品質管理検査を行い、その結果がJIS Q 1011の評価基準及びJIS A 5308の品質基準若しくは「標仕」 6.4.2のレディーミクストコンクリートの発注時に指定した評価基準及び品質基準等に適合していることを確認することが必要である。また、納入前に必ず試し練りを行い、所要の品質が得られることを確認してから使用するとともに、使用する材料及びコンクリートについての検査は、 I類コンクリートと同様 JIS Q 1011に規定されている方法(試験を行う時期を含む。)に準じて行い、その結果により所定の品質が得られていることを確認して、その検査結果の報告を監督職員に提出することが必要である。さらに、納入されたコンクリートの受入れ検査についてもJIS A 5308に規定されている方法に従って実施し、その品質管理の結果の報告を監督職員に提出することが必要である。

(b) 型枠中に打ち込まれたコンクリートが構造体として所要の品質を確保するためには、適度な温度と水分の確保が必要であり、その具体的養生方法を「標仕」 6章7節で規定している。養生方法が適切でない場合には、コンクリートが本来有している強度の60%程度しか得られなかった、という報告もあるので、「標仕」に基づき適切な養生を行わなければならない。

(c) スランプ及び空気量が「標仕」6.5.2及び「標仕」6.5.3に示される所定の許容差を超えた場合又は調合管理強度が「標仕」6.3.2に示される所定の値を下回った場合には、調合の調整を行うことが必要になる。調合の調整が必要になる場合の条件並びに調整の方法については、「標仕」6.5.2、「標仕」6.5.3及び「標仕」6.5.5に従って実施する。

(d) フレッシュコンクリートの試験を行う場合には、「標仕」6.9.2に示されている方法で行わなければならない。

6.5.2 スランプ

打ち込まれるコンクリートのスランプが「標仕」表6.5.1に示す許容差(18cmを超える場合の許容差が ±2cmとなる条件は、平成22年版「標仕」から、高性能AE減水剤を使用し、かつ、調合管理強度が27N/mm2以上である場合に変更されている。)を超えた場合に、そのままコンクリートを打ち込むと充填不良や不均ーなコンクリートとなる場合がある。このような場合には、調合の調整や運搬(レディーミスクトコンクリート工場から荷卸し地点までの運搬及び荷卸し地点から打込み地点までの場内運搬)方法の改善を行うことが必要である。調合の調整を行う場合には、その原因を明らかにするとともに、所定の強度を確保するため水セメント比を変更しない方法で行わなければならない。

(ア) スランプの変動要固としては、次のような項目が挙げられ、要因によっては調合の調整でなく、(a)から(e)までの項目の変動を小さくすることが必要な場合もある。

(a) 骨材の粒度(特に細骨材の粒度分布)及び粒形
(b) 表面水の変動
(c) 材料の計量誤差
(d) 運搬(レディーミスクトコンクリート工場から荷卸し地点までの運搬)時間
(e) 空気量

(イ) スランプを調整する場合のおおよその目安は、次のとおりである。

(a) 水セメント比を変えないで、スランプを1cm増加させるためには、単位水量を1.2%(質量比)増加させる。

(b) 水セメント比及び単位水量を変えないで、スランプを1cm増加させるためには、細骨材率を0.5%減少させる。

6.5.3 空気量

(1) 荷卸し地点の空気量の許容差は、JIS A 5308(レディーミスクトコンクリート)の品質基準と同様に±1.5%である。

(2) 荷卸し地点の空気量の測定結果が「標仕」6.4.3で発注したときの空気量 ±1.5%の範囲を超えた場合には、補助AE剤の使用量と連行される空気量がほぼ比例関係にあるので、この関係を利用して、水セメント比を変えずに補助AE剤の使用量を増減して所定の空気量の範囲に入るように調整するとよい。空気量が許容範囲を超える原因としては、骨材の品質変動による場合が多いと考えられるが、その原因を明らかにし、以後このような原因が生じないような処置を取ることが大切である。

なお、JIS A 1128(フレッシュコンクリートの空気量の圧力による試験方法 – 空気室圧力方法)による空気室圧力法で測定する場合には、骨材中の空気量(骨材修正係数)をあらかじめ測定しておき、適切に補正しなければならない。従来、普通の骨材を用いた場合の骨材修正係数は 0.1%程度以下となることが多く、この補正を省略することが多かったが、近年では骨材資源の枯渇化とともに、普通の骨材でも骨材修正係数が 0.2%を超えるものもあるため、試し練り時等、事前にこれらの数値を確認しておくことが必要である。

6.5.4 塩化物豆及びアルカリ総量

(1) 塩化物量
(ア) 塩化物量試験は、「標仕」表6.9.1によって実施する。塩化物量(塩化物イオン(Cl-)量換算)の測定結果が0.30kg/m3を超えるとコンクリート中の鉄筋の腐食が促進される可能性があるため、この値以下とすることが定められている。コンクリート中の塩化物イオン量は、使用する材料から供給される塩化物イオン量の合計として表され、レディーミクストコンクリート工場では調合ごとにその値を計算して求めている。測定結果が0.30kg/m3を超える場合には、使用する材料中の塩化物イオン量が変化していることになり、その原因を明らかにすることが必要である。しかし、コンクリートの打込みを中断するとコールドジョイントの発生等別の問題が生じやすくなる。そこで、0.30kg/m3以上の塩化物イオン量が測定された後は、連続して塩化物イオン量の測定を行い、0.30kg/m3以下であることを確認した後は、使用してよいことにしている。

なお、連続した10台の運搬車の測定結果が0.30kg/m3以下であることが確認された場合には「標仕」表6.9.1に示す通常の方法で管理してよいことにしている(「標仕」6.5.4(1)参照)。また、塩化物量の確認は、あくまでも規定値(0.30kg/m3)を下回ることが確認されればよく、例えば、適用する塩分測定方法の測定限界の下限値を下回るような塩化物量の場合において、その測定値(数値)を示すことを要求しているわけではない。

また、塩化物量の確認は、あくまでも規定値(0.30kg/m3)を下回ることが確認されればよく、例えば、適用する塩分測定方法の測定限界の下限値を下回るような塩化物量の場合において、その測定値(数値)を示すことを要求しているわけではない。

(イ) 細骨材中の塩化物
JIS A 5308附属書A(規定)[レディーミクストコンクリート用骨材]では、砂に含まれる塩化物量をNaCl換算で0.04%以下と規定している。2003年にJIS R 5210(ボルトランドセメント)に規定される普通ボルトランドセメントの塩化物イオン量が0.02 ~ 0.035%に改正されるまで、この程度であればコンクリート1m3中の塩化物量は、通幣、0.30kg/m3以下を満足していたと考えられる。しかし、JIS R 5210の改正によって、普通ボルトランドセメントの塩化物イオン量が順次増加しており、各コンクリート用材料の塩化物イオン量の上限値を守るだけでは、0.30kg/m3を超えることが懸念されるようになった。

具体的な計算例を示すと次のようになる。

①砂の塩化物量をNaCl換算で0.04%(塩化物イオン量は0.024%)、単位細骨材量を800kg/m3と仮定すると、砂から加わる塩化物イオン量は0.194 kg/m3となる。

② (-社)セメント協会によると、JISの規定値が0.02%であった当時の普通ボルトランドセメントの塩化物イオン量は最大でも0.015%で、余裕分は 0.005%であった。この余裕分を現在の規格上限値0.035%から減じ、今後予想される普通ボルトランドセメントの塩化物イオン量の最大値を0.03%と仮定すると、単位セメント量が350kg/m3の調合においてセメントから加わる塩化物イオン量は0.105kg/m3となる。

③ 水については、塩化物イオン濃度を200ppm(JIS A 5308附属書C(規定)[レディーミクストコンクリートの練混ぜに用いる水]に規定される品質基準値)、単位水量を185kg/m3とすれば、水からくる塩化物イオン量は0.037 kg/m3となる。

④ 化学混和剤については、海砂使用の場合は無塩化タイプを用いることとする。

以上、①から④までを加えると0.336kg/m3となる。

このような状況が予想される場合及び発生した場合には、砂・砕砂等塩化物量の少ない骨材との併用等により細骨材の塩化物量を低減させなければならないが、コンクリート中の塩化物イオン量については普段から「標仕」表6.9.1に示す方法で適切に管理し、0.30kg/m3以下であることを確認しておくことが必要である。

(2) アルカリ総量
使用している骨材について、アルカリシリカ反応性試験の結果が無害と判定されない場合で、その抑制対策としてコンクリート中のアルカリ総量を採用している場合には、JIS A 5308附属書B(規定)[アルカリシリカ反応抑制対策の方法]に規定する式(B. 1)によって、アルカリ総量が 3.0kg/m3以下であることを確認することが必要である。レディーミクストコンクリート工場では調合ごとに総アルカリ量を計算し技術資料としてもっているので、その計算の根拠となっている使用材料のアルカリ量に関する資料とともに提出を求めて確認することが必要である。

6.5.5 調合管理強度

(1) レディーミクストコンクリートの調合管理強度の管理試験の確認は、「標仕」6.9.3及び「標仕」6.9.4に従いJIS A 1132(コンクリート強度試験用供試体の作り方)による20±2℃の水中養生を行った供試体を用いて材齢28日で実施する。

(2) 管理試験の結果、不合格の場合には、原因を調査し、必要な措置を定め、監督職員の承諾を受ける。不合格となる原因としては、次のようなものがある。

(ア) 水セメント比の変動(コンクリートの強度は、主として水セメント比によって決定されるので、水セメント比の変動の影響が大きい。この原因としては細骨材の表面水の変動が挙げられる。)

(イ) 骨材の品質変動

(ウ) 空気量の変動
不合格の原因が調合にある場合には、「標仕」6.3.2により新たに調合を定めるなどの処置を定めて、改めて「標仕」6.3.2により計画調合を行うとともに、必要な処置の報告を監督職員に提出して承諾を受けることが必要である。

第6章 コンクリート工事 4節 工場の選定、製造及び運搬(R4版)

建築工事監理指針 第6章 コンクリート工事


4節 レディーミクストコンクリート工場の選定、
コンクリートの製造及び運搬

6.4.1 レディーミクストコンクリート工場の選定

(1) 工事開始前に、「標仕」で規定されている所定の品質が得られるように工事現場周辺のレディーミクストコンクリート工場を調査して、(2)から(6)の事項に適合するものであることを確認する。

(2) レディーミクストコンクリートの製造者の業界では、一般的に地域ごとの協同組合による共同販売方式又は直接販売方式が取られ、協同組合から割り当てられた一工場又は複数の工場から工事現場にコンクリートが供給されるようになっている。このような供給方式の場合、同一打込み工区に同時に複数の工場よりコンクリートが供給されると、それぞれの工場の品質責任の所在を明確化することが困難となるので、同一打込み工区への複数工場からの供給が行われないようにする。複数工場による協同納入を避けることができない場合は、打込み区画を区分し、それぞれの納入工場に振り分けて、責任の所在を明確にすることが重要である。

(3) レディーミクストコンクリートは、運搬時間によって品質が変化することもあるので、運搬時間はなるべく短い方がよい。したがって、JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)の9.4[運搬]及び「標仕」6.6.2で定められた時間の限度内にコンクリートが打ち込めるよう、工事現場内の運搬方法及び運搬時間並びに工場の製造能力、運搬能力等を考慮した工場であることを確認することが重要である。

(4) レディーミクストコンクリートの品質は、工場の技術者の技術水準に左右される。

「標仕」6.4.1(ア) でいう施工管理技術者とは、(公社)日本コンクリート工学会が、コンクリートに関して豊富な知識と優れた技術水準を有する者と認定したコンクリート主任技士、コンクリート技士若しくはコンクリート診断士又は一級建築施工管理技士、一級建築士等が該当する。また、レディーミクストコンクリート工場の選定は監督職員の承諾事項(「標仕」6.4.1)とされているので、承諾に当たっては 品質確保及び資格運用等を適切に行っている工場であることを確認する必要がある。

レディーミクストコンクリート工場の品質管理状況に関しては、産・学・官で構成される「全国生コンクリート品質管理監査会議」がJIS Q 1011(適合性評価 −日本産業規格への適合性の認証 – 分野別認証指針(レディーミクストコンクリー ト))の規定に、ISO 9001(品質マネジメントシステム – 要求事項)の一部規定及び管理技術者の有無等の要求事項を加えた「全国統一品質管理監査基準」を策定し、毎年各工場の立入監査を行い、この基準に適合した工場に(適)マークを交付しているので、工場の選定に必要な品質確保の確認には、これらの結果を参考にするとよい(6.5.1(1)参照)。

(5) JISマーク表示認証工場の中には、表6.2.1よりも狭い範囲の組合せでJISマーク表示の認証を受けている場合もあるので、JISマーク表示認証製品の範囲を確認する必要がある。

(6) JISマーク表示認証工場が工事現場近くにない場合は、JIS A 5308の規定とJIS Q 1011を参考にして、その工場の製品規格、使用材料、製造工程管理・設備、製品の品質管理状態等を調査し、「標仕」2節に規定される品質のコンクリートが製造できると認められる工場であることを確認する必要がある。

6.4.2 レディーミクストコンクリートの発注

(1) I類コンクリートの発注に当たっては、表6.2.1に示す「レディーミクストコン クリートの種類」からコンクリートの種類、粗骨材の最大寸法、スランプ及び呼び強度の組合せを指定させるほか、表6.4.1に示すa)からd)の事項とともに、必要 に応じてe)からq)の事項を生産者と協議のうえ、受注者等に指定させる。ただし、 a)からh)については、JIS A 5308で規定している範囲とする。

表6.4.1 指定及び協議事項(JIS A 5308 : 2019)

(2) II類コンクリートの発注に当たっても、 I類コンクリートと同様に必要項目を生産者と協談のうえ、受注者等に指定させる。
(3) 練混ぜ水としてスラッジ水を使用する場合は、スラッジ固形分率(レディーミクストコンクリートの配合における、単位セメント量に対するスラッジ固形分の質量の割合)が3%を超えないように目標スラッジ固形分率が設定され、バッチ濃度調整方法又は連続濃度測定方法でスラッジ固形分率が適切に管理されていることを受注者等に確認させ、その結果を報告させることが重要である。
なお、スラッジ固形分率を1%未満で使用する場合、生産者が、JIS A 5308の 表10[レディーミクストコンクリート配合計画書]の目標スラッジ固形分率の欄に、「1%未満」と記載する。また、この場合、生産者が練混ぜ水の全量にスラッジ水を使用し、かつ、濃度の管理期間ごとに1%未滴となるよう適切に管理されていることを受注者等に確認させ、その結果を報告させることが重要である。
(4) JIS A 5308の9.5[回収した骨材の取扱い]では、自工場が出荷した戻りコンクリート並びにレディーミクストコンクリート工場において、運搬車、プラントのミキサー、ホッパーなどに付着及び残留したフレッシュコンクリートを、清水又は回収水で洗浄し、粗骨材と細骨材とに分別して取り出した骨材を、5%以下の範囲で JIS規格品のコンクリートに使用できるとされている。

なお、指定建築材料(建築基準法第37条)の規格及び技術的基準を定める平成 12年建設省告示第1446号の第1第七号(コンクリート)に掲げる材料規格(JIS A 5308-2014)から回収骨材は除外されていたが、同告示が平成30年6月14日に一部改正され、JIS A 5308に適合したものであれば、国土交通大臣の認定を受けなくても回収骨材を使用したコンクリートが使用できることとなった。

(5) 呼び強度は、呼び強度の強度値が調合管理強度(設計基準強度(Fc)+構造体強度補正値(S))以上で、かつ、コンクリートの種類に応じた単位セメント量の最小又は最大値、水セメント比の上限値を満足するように、受注者等に指定させる。

(6) 施工に先立ち、レディーミクストコンクリート工場の配合計画書とともに、製造に用いる材料、調合設計の基礎となる資料及び計算書等を受注者等から提出させ、検討、確認する必要がある。

なお、レディーミクストコンクリート工場は、調合設計の基礎となる資料として、水セメント比と圧縮強度の関係式、呼び強度ごとの標準偏差、単位水量・水セメント比・スランプの関係、単位粗骨材かさ容積・水セメント比・スランプの関係、気温・運搬時間・スランプロス・空気量ロスとの関係、使用材料の変動による調合修正の方法、コンクリートの練混ぜ量・練混ぜ時間との関係等コンクリートの調合、製造の基本となるデータ類を保有しているので、必要に応じてこれらの内から当該現場で問題となりそうな項目に関する資料を提出させるとよい。

6.4.3 コンクリートの運搬

(1) JIS A 5308の 9.4[運搬]では、運搬時間は、生産者が練混ぜを開始してから運搬車が荷卸し地点に到約するまでの時間とし、その時間は1.5時間以内としている。ただし、購入者(受注者等)と生産者とが協議のうえ、運搬時間の限度を変更することができることになっている。一方、「標仕」6.6.2では、コンクリートの練混ぜから打込み終了までの時間の限度は、外気温が25℃以下の場合は120分、25℃ 超える場合は90分と規定されており、JIS A 5308より若千厳しくなる場合もある。

コンクリートの運搬に当たっては、これらの二つの規定を満足するように、受注者等に適切な施工計画を立てさせる。

(2) トラックアジテータからコンクリートの荷卸しを行うに際しては、その直前にトラックアジテータを高速回転させ、ミキサー内のコンクリートを均ーにした後にコンクリートを排出する。特に運搬距離が長い場合には、高速回転させる時間を少し長くするとよい。

なお、市街地でのトラックアジテータの高速回転は騒音の問題が発生するため、工事開始前に住民の理解を得ておく必要がある。

第6章 コンクリート工事 3節 材料及び調合(R4版)

建築工事監理指針 第6章 コンクリート工事


3節 コンクリートの材料及び調合

6.3.0 一般事項

建築物に使用するコンクリートが所要の性能を満足するようにするためには、使用前に、各材料が所定の品質を満足することを試験又は生産者から提出された資料等により確認するとともに、「標仕」2節[コンクリートの種類及び品質]に示される各種規定を満足するよう、試し練り等を行って適切に調合することが重要である。

6.3.1 コンクリートの材料

6.2.1(3)でも述べたように、平成28年6月13日に平成12年建設省告示第1446号の一部が改正され、エコセメントや再生骨材Hを使用したコンクリートについても JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)に適合したものであれば国土交通大臣の認定を受けなくても使用できるようになったため、平成31年版「標仕」からは、これらのコンクリートについても一部の材料の組合せや用途を除いて特記をせずに使用できることとなった。また、平成30年6月14日の同告示の一部改正(国土交通省告示第750号)により、回収骨材を使用したコンクリートが国土交通大臣の認定を受けなくても使用できるようになったため、平成31年版「標仕」からは、これを特記せずに使用できることとなった。

(1) セメント
(ア) セメントの分類
(a) セメントの分類を図6.3.1に示す。


図6.3.1 JISによるセメントの分類

わが国におけるポルトランドセメント(JIS R 5210)の全アルカリは、低アルカリ形を徐くとNa2O換算(Na2O + 0.658K2O)で0.75%以下であるが、使用する骨材によってはアルカリ骨材反応を起こすおそれがある。

なお、かつては「アルカリ骨材反応抑制対策に関する指針について」(平成元年7月建設省住指発第244号)の通達で、低アルカリ形ポルトランドセメントの使用がアルカリ骨材反応抑制対策の一つとして記されていた。しかし、低アルカリ形が1995年に11,000t生産された以降はほとんど製造されておらず、普通ポルトランドセメントのアルカリ量も低くなっていることなどから、平成12年にこの通達は廃止され、平成14年の国土交通省通達では「低アルカリ形の使用による抑制対策」の条文が削除されている。

(b) ポルトランドセメントは普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント及び耐硫酸塩ポルトランドセメントの6種類を基本とし、これに低アルカリ形の6種類を加え全部で12種類あり、その主な品質は表6.3.1に示すとおりである。

表6.3.1 ポルトランドセメントの品質(JIS R 5210:2019)

① 普通ポルトランドセメント(普通セメントと略称される場合もある。)は、建築のコンクリート工事用として現在最も多く使用されているセメントである。「標仕」では、特記のない場合は普通ポルトランドセメント又は高炉セメント、シリカセメント及びフライアッシュセメント(以下、この3種類を混合セメントという。)のA種を使用することになっているが、高炉セメント及びフライアッシュセメントともA種はほとんど生産されていないため、一般的には普通ポルトランドセメントを使用することが多い。

② 早強ポルトランドセメント(早強セメントと略称される場合もある。)の比表面積(ブレーン値)は、JISでは表6.3.1のように定められているが、市販品では4,700cm2/g程度である。比表面積はセメント粒子の細かさを示す値で、この値が大きいほど細かく、セメントと水との化学反応(水和反応)が活発になるため、図6.3.2に示すように他のポルトランドセメントよりも早期に強度が得られる。そのため、工期の短縮に有効であると共に、硬化初期の水和発熱量(凝結・硬化中に起こる発熱を水和熱という。)が大きいことから寒中コンクリートにも適している。ただし、発熱によるひび割れ等の弊害を伴うこともあるので、使用する季節や用途に注意が必要である。


図6.3.2 モルタルの圧縮強さ(JIS R 5201)
(「セメントの常識」より)

(c) 高炉セメント(JIS R 5211)は、普通ポルトランドセメントに適量の高炉スラグ微粉末を均ーに混合したもので、その分量によってA種、B種及びC種の3種類(表6.3.2参照)が規定されているが、A種及びC種の生産量は少なく、市販品としてはB種のものが一般的である。

(d) シリカセメント(JIS R 5212)は、普通ポルトランドセメントに適量のシリ力質の混合材を均ーに混合したもので、その分量によってA種、B種及びC種の3種類がある(表6.3.2参照)。耐薬品性に俵れているが、2010年度以降国内では生産されていない。

(e) フライアッシュセメント(JIS R 5213)は、普通ボルトランドセメントに適量のフライアッシュ(火力発電所等で石炭の燃焼時に発生する微粉状の石炭灰)を均ーに混合したもので、その分量によってA種、B種及びC種の3種類(表 6.3.2参照)が規定されているが、高炉セメントと同様、一般にはB種のものが多く流通している。

(f) 上記高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメントのB種及びC種は、ボルトランドセメントと比較すると、化学的な作用又は海水に対する抵抗力が大きいなどの長所がある。しかし、同一調合の場合、一般的に中性化の進行が早く、早期強度の発現が小さいので、かぶり厚さや型枠の存置期間の検討が必要である。

表6.3.2 混合セメントの種類(JIS R 5211:2019、R 5212:2019及びR 5213:2009)

(g) エコセメントは、都市ごみ焼却灰を主とし、必要に応じて下水汚泥等を加えたものを主原料として製造される資源リサイクル型のセメントであり、2002年に JIS R 5214(エコセメント)としてJIS化された。JIS R 5214では、構成鉱物や塩化物イオン含有量によって普通エコセメントと速硬エコセメントに分類されている。2003年には、これらのうち塩化物イオン量が 0.1%以下の普通エコセメントのみがJIS A 5308に取り入れられた。また、2004年4月からはグリーン購入法特定調達品目にも指定されている。このエコセメントは、東京都の西多摩地域で年間約12万トン(2020年度)生産されている。

(イ) 高炉セメント及びフライアッシュセメントの品質

(a) 高炉セメントは、高炉スラグ微粉末の混合比(分量)によって使用したコンクリートの硬化途中の強度発現性状や硬化後の化学特性等が異なるため、上記 (ア)(c)でも記したように、高炉スラグ微粉末の混合比(分量)によって3種類に分類されている。B種は規格上 30% を超え 60% 以下となっているが、市販されている高炉セメントの高炉スラグの混合比(分量)は43%前後のものが多い。

普通ボルトランドセメントと比較すると次のような特徴がある。

① 初期強度はやや小さいが、4週以降の長期強度は同等又は同等以上になる。
② 耐海水性や化学抵抗性が大きい。
③ 一定量以上使用した場合にアルカリ骨材反応の抑制に効果がある。

(b) フライアッシュセメント
良質なフライアッシュはコンクリート中でボールベアリングのような働きをし、練混ぜ水を減少させることができ、ワーカビリティーの良いコンクリートが得られる。また、水和発熱量が比較的小さく、マスコンクリートに適する。さらに、高炉セメントと同様にアルカリ骨材反応の抑制にも効果がある。

なお、上記(ア)(e)でも記したように、フライアッシュの混合比(分量)によって3種類に分類されており、B種は規格上10%を超え20%以下となっている。市販されているフライアッシュセメントのフライアッシュの混合比(分量)は 17%前後のものが多い。

(c) 混合セメントのA種は、普通ボルトランドセメントと同様に使用できる。

(ウ) 普通エコセメントの適用範囲
6.2.1(3)項等でも記したように、普通エコセメントを使用したコンクリートについては、平成28年までは国土交通大臣の認定が必要であったため建築物への施工実績はまだ少ない。そのため、普通エコセメントの使用にあたっては、次頁の文献等を参考に別途使用する材料の種類や調合、コンクリートの発注、製造、打込み、養生及び品質の管理方法等を作成し、監督職員の承諾を受けておくことが重要である。

普通エコセメントは、塩化物イオン量を含め化学成分及び鉱物組成が普通ボルトランドセメント等と異なる部分があり、使用する混和材料や調合、施工時期等によっては得られる効果・性能・品質が異なる場合も考えられる。例えば、図6.3.3に示すように、高性能AE減水剤にナフタレン系のSP1を使用した場合、普通ボルトランドセメントと比較して所要のスランプを得るための添加率は水セメント比にかかわらず2倍程度必要であるが、ポリカルボン酸を主成分とするSP2等を使用した場合は水セメント比にかかわらず普通ボルトランドセメントと同程度である。また、図6.3.4に示すように、スランプの経時変化は、ポリカルポン酸系のSP2を使用した場合にはスランプロスがほとんどないが、ナフタレン系のSP1を使用した場合にはスランプロスが大きい。また同様に、ブリーディング量や凝結時間、空気量の経時変化にも高性能AE減水剤の主成分による効果の差が認められている。これら高性能AE減水剤や流動化剤等の高性能減水剤系の化学混和剤による普通エコセメントを使用したコンクリートのフレッシュ性状の変化及び不具合発生時の適切な対処方法を施工現場で確認することは、参考となる施工実績も少ないことから、現状では困難と考えられる。


図6.3.3 セメント種類と高性能AE減水剤添加率の関係 注(1)


図6.3.4 高性能AE減水剤の種類別のスランプ経時変化 注(1)

普通エコセメントを使用したコンクリートは、普通ボルトランドセメントを使用したコンクリートに比べて凝結時間が遅く、特に気温が低い場合にはこの傾向が大きい。また、図6.3.5に示すように、材齢初期の強度発現速度も普通ボルトランドセメントを使用した場合より遅くなり、その圧縮強度差は気温の低下と共に大きくなるため、初期凍害の防止が極めて重要と考えられる。


図6.3.5 養生温度と圧縮強度の関係(封かん養生)注(1)

以上のように、①普通エコセメントを使用したコンクリートのフレッシュ性状や硬化性状は普通ボルトランドセメントを使用したコンクリートと異なる傾向にあること、②軽量コンクリートや寒中コンクリート、マスコンクリート、流動化コンクリートについて、「JASS 5」注(2)及びエコセメントを使用するコンクリートの調合設計・施工指針注(3)では、普通エコセメントの使用が規定されていない若しくは使用する場合の規定が明確に示されていないこと、③建築物への使用実績がいまだごく僅かであることなどを考慮して、「標仕」では、普通エコセメントを適用する場合は、普通コンクリート(1~ 9節まで)、暑中コンクリート(12節)、無筋コンクリート(14節)によるとされている。s

注(1)建築研究所:
建築研究報告 No.144「エコセメントを使用したコンクリートの物理・カ学特性ならびに調合設計・施工技術に関する研究」、2005.12

注(2) 日本建築学会:
建築工事標準仕様書・同解説 JASS 5 鉄筋コンクリート工事 2018 (27節)

注(3) 日本建築学会:
エコセメントを使用するコンクリートの調合設計・施工指針(案)・同解説、2007

(2) 骨 材
(ア) 骨材は、コンクリート1本和の約7割を占め、その品質がコンクリートの諸性質に大きな影響を及ぼすので、良い品質のコンクリートをつくるためには、原則として、堅硬で物理的・化学的に安定であり、適度な粒度・粒形を有し、有害量の不純物・塩化物等を含まない骨材を使用する。しかし、骨材の品質は、地域差もあり、あらかじめその地域の骨材の種類と品質の実態を把握しておくことが重要である。

なお、再生骨材Hを使用する場合には、6.3.1及び6.3.2の記載を参考に、コンクリートの要求性能と骨材の品質との関係を試し練りを行って十分に把握し、必要に応じて計画調合等を検討することが重要である。

再生骨材には、再生骨材Hのほか、JIS A 5022の附属書A(規定)コンクリート用再生骨材M及びJIS A 5023の附属書A(規定)コンクリート用再生骨材Lがある。再生骨材M及び再生骨材Lは付着するペースト量が多く、これを用いるコンクリートは、乾煤収縮が大きくなる場合もある。

また、再生骨材コンクリートMの通常品及び再生骨材コンクリートLは、通常高い凍結融解抵抗性を確保することが難しいため、乾煤収縮の影響に加えて凍結融解作用を受けない部材又は部位に使用する。
なお、再生骨材コンクリートMについては、標準品に対して凍結融解抵抗性を高めた耐凍害品がある。

(イ) 骨材の種類及び品質
(a) 「標仕」6.3.1(2)(ア)により、骨材の種類はJIS A 5308の附属書A(規定)[ レディーミクストコンクリート用骨材 ]に規定されている砕石及び砕砂、スラグ骨材、人工軽量骨材、再生骨材H並びに砂利及び砂である。

なお、再生骨材Hを使用するコンクリートについては、6.2.1(1)でも記したように、これまで必要であった国土交通大臣の認定が不要となり、建築物の基礎、主要構造部等へも適用できることとなった。ただし、6.3.1(1)注(1)から注 (3)に記した文献では、普通エコセメントを使用するコンクリートに再生骨材Hを使用する場合は特記事項等とされ、かつ、普通エコセメントと再生骨材Hを併用する場合に参考となる技術情報等も示されていないので、「標仕」においても、普通エコセメントを使用するコンクリートに再生骨材Hを使用する場合は特記によるとされている。

(b) フェロニッケルスラグ骨材、銅スラグ細骨材及び電気炉酸化スラグ骨材は、普通骨材に比べて密度が大きく、使用される地域も限定されている。よって、これらの骨材を使用する場合は、設計担当者が特記しなければならない。

(c) 骨材の品質、砕石及び砕砂は、JIS A 5005(コンクリート用砕石及び砕砂)に、高炉スラグ粗骨材及び高炉スラグ細骨材は、JIS A 5011-1(コンクリート用スラグ骨材ー第1部:高炉スラグ骨材)に、フェロニッケルスラグ骨材、銅スラグ骨材、電気炉酸化スラグ骨材及び再生骨材Hは、それぞれ JIS A 5011-2(コンクリート用スラグ骨材ー第2部:フェロニッケルスラグ骨材)、JIS A 5011-3(コンクリート用スラグ骨材ー第3部:銅スラグ骨材)、JIS A 5011-4(コンクリート用スラグ骨材ー第4部:電気炉酸化スラグ骨材)及びJIS A 5021(コンクリート用再生骨材H)に規定されている。

(d) スラグ骨材を他の骨材と併用する場合、表面がガラス質のため、使用するスラグ細骨材の種類によっては保水性が小さくなり、天然の骨材に比ベブリーディング量がやや多くなったりブリーディング速度が速くなったりする場合があるので注意しなければならない。このような場合には、微粉末の使用、実績率の大きい骨材の使用、高性能AE減水剤の使用等材料の選定に加え、水セメント比の低減等の検討が必要である。

(e) 骨材の密度及び吸水率
① 骨材の強さは、密度及び吸水率によりある程度の判定ができる。通常、絶乾密度は2.5g/cm3以上、吸水率は3.0%(細骨材は3.5%)以下ならよいとされている(表6.3.3参照)。

しかし、砂利や砂の場合、一部の地方では、これを満足するものが入手できない場合もある。この場合は、絶乾密度は2.4g/cm3以上、吸水率は4.0%以下なら、コンクリートとして所要の性能が得られることを試し練り又は信頼できる資料等により確かめられれば、使用してよい。

表6.3.3 JIS A 5005 : 2020による砕石・砕砂の物理的性質

② 普通の石材の吸水率は表6.3.4に示すとおりであるが、概ね吸水率の少ないものほど堅硬、密実で良質の骨材になると考えられる。

表6.3.4 石材の吸水率

(f) 骨材の品質が乾燥収縮に及ぼす影響は大きく、JISの品質規格に適合する骨材であっても、それを用いたコンクリートの乾燥収縮ひずみができるだけ小さくなるものを選定することが望ましい。乾燥収縮ひずみが小さくなる骨材としては、良質の川砂利又は石灰石骨材が挙げられる。

(ウ) アルカリ骨材反応抑制対策

(a) アルカリ骨材反応に関しては、昭和60年頃から問題が顕在化し、平成元年には建設省の技術審議官通達、建築指導課長通知等が出されたが、平成14年には新たに「アルカリ骨材反応抑制対策について」(平成14年国官技第112号:技術審議官等通達)と運用のための「「アルカリ骨材反応抑制対策について」について」(平成14年国営技第55号:建築課長通達)の(別紙)「アルカリ骨材反応抑制対策(建築物)実施要領」が、平成15年には「アルカリ骨材反応抑制対策(建築物)実施要領に関する運用について」の事務連絡が出され、その後のJIS A 5308の改正、JIS Q1011(適合性評価一日本産業規格への適合性の認証ー分野別認証指針(レディーミクストコンクリート))の制定、「標仕」の改定を経て、その対策が確立されてきた。

(b) 「アルカリ骨材反応抑制対策(建築物)実施要領」における検査・確認の方法を、次に示す。

① アルカリシリカ反応性試験方法(化学法)による骨材試験は、施工着手前、工事中1回/6箇月、かつ、産地が変わった場合に、受注者等が公的試験機関に依頼して行う。また、試験に用いる骨材の採取にも受注者等が立ち会うことが原則となる。

② アルカリシリカ反応性試験方法(モルタルバー法)による骨材試験は、コンクリート生産工程管理用試験に規定される骨材のアルカリシリカ反応性試験方法(迅速法)で骨材が無害であることを受注者等が確認する。この場合も、施工着手前、工事中1回/6箇月、かつ、産地が変わった場合に、公的試験機関で行い、試験に用いる骨材の採取にも受注者等が立ち会うことが原則となる。

(c) 「標仕」では、砕石、砕砂、フェロニッケルスラグ骨材、銅スラグ細骨材、電気炉酸化スラグ骨材、砂利、砂及び再生骨材Hは、原則として、「アルカリシリカ反応性試験の結果が無害と判定されるもの」(アルカリシリカ反応性による区分Aのもの)を使用するとしているので、アルカリシリカ反応性による区分を、受注者等にレディーミクストコンクリート配合計画書及びアルカリシリカ反応性試験成績表で確認させておく必要がある。

なお、銅スラグ細骨材は、JIS A 5011-3において、”無害”のものに限定して使用することが規定されている。

アルカリシリカ反応性試験方法は、JIS A 1145(骨材のアルカリシリカ反応性試験方法(化学法))又は JIS A 1146(骨材のアルカリシリカ反応性試験方法(モルタルバー法))による。ただし、フェロニッケルスラグ骨材のアルカリシリカ反応性試験は、JIS A 1146による。また、再生骨材Hのアルカリシリカ反応性による区分、判定及び試験は、JIS A 5021の4.3(アルカリシリカ反応性による区分)、5.3(アルカリシリカ反応性)、7.7(アルカリシリカ反応性試験)による。

(d) レディーミクストコンクリートを製造する地域等によっては、上記の試験の結果が「無害と判定されないもの」や「試験を行っていないもの」(アルカリシリカ反応性による区分Bのもの)を使用せざるを得ない場合もある。その場合は、事前調査により設計担当者が区分Bのものを使用することを特記しなければならない。特記により区分Bの骨材を使用する場合は、「標仕」6.3.1(2)(イ) に基づいた対策を受注者等に提案させ、その内容を確認する。高炉セメントやフライアッシュセメントを、アルカリ骨材反応の抑制対策として使用する場合、高炉スラグ微粉末の混合比(分量)が40%以上の高炉セメントB種又はフライアッシュの混合比(分量)が15%以上のフライアッシュセメントB種を使用する。また、コンクリート製造業者から使用した混合セメントのセメント試験成紺間を取り寄せて、高炉スラグ微粉末又はフライアッシュの混合比(分量)を確認することが必要である。

なお、フェロニッケルスラグ骨材のアルカリシリカ反応抑制対策は、JIS A 5011-2の附属書Dによる。また、再生骨材Hについては、アルカリシリカ反応性による区分がBの場合、JIS A 5308の8.2項及び同附属書BのB.2項により、アルカリシリカ反応抑制対策の区分はアルカリシリカ反応抑制効果のある混合セメントなどを使用する抑制対策しか規定されていないため、コンクリート中のアルカリ総量を規定する抑制対策を適用することはできない。

(エ) 高炉スラグ粗骨材を使用する場合は、JIS A 5011-1に基づいて、使用する骨材の絶乾密度、吸水率及び単位容積質量が、同JISの区分Nを満足することを受注者等に確認させ、その結果を報告させることが必要である(表6.3.5参照)。

なお、高炉スラグ粗骨材は、普通骨材より吸水率が大きく気乾状態で用いると練混ぜ、運搬及び打込み中にフレッシュコンクリートの品質が変動しやすいので、事前に散水により吸水させて用いることが望ましい。

(オ) 電気炉酸化スラグ骨材は、JISマーク表示認証製品で、生産工場からレディーミクストコンクリート工場に直接納入されていること及び電気炉酸化スラグ粗骨材の絶乾密度による区分がNであること(表6.3.5参照)並びに再生骨材Hは、 JISマーク表示認証製品であることを受注者等に確認させ、その結果を報告させることが必要である。

表6.3.5 JIS A 5011-1 : 2018による高炉スラグ粗骨材(区分N)及び
JIS A 5011-4 : 2018による電気炉酸化スラグ粗骨材(区分N)の材質

(カ) 粗骨材の最大寸法等

(a) 粗骨材の最大寸法
粗骨材は、鉄筋相互間及び鉄筋とせき板との間を容易に通る大きさでなければならない。粗骨材の最大寸法は「標仕」において次のように定めている。

① 砕石、高炉スラグ粗骨材、電気炉酸化スラグ粗骨材及び再生粗骨材Hは 20mmとする。また、砂利は25mmとする。

② 基礎等で断面が大きく鉄筋量の比較的少ない部材の場合は、「標仕」5.3.5[鉄筋のかぶり厚さ及び間隔]の範囲で、砕石、高炉スラグ粗骨材及び再生粗骨材Hは25mm、また、砂利は40mmとすることができる。

③ 鉄筋のあきは、粗骨材の最大寸法の1.25倍以上とする(「標仕」5.3.5 (4)(ア) 参照)。

④ 無筋コンクリートの粗骨材の最大寸法は、コンクリート断面の最小寸法の 1/4以下とする。ただし、捨コンクリート及び防水層の保護コンクリートの場合は25mm以下とする(「標仕」6.14.2(1)参照)。

(b) 骨材の粒度及び粒形
① 骨材は、適切な粒度分布のものでなければならない。粒度の良否によってコンクリートのワーカビリティーや単位セメント最に著しい差が生じ、ひいてはコンクリートの強度や耐久性にも影響を与える。

② 骨材の形は、球形に近いものが理想的で、偏平、細長のもの、かど立っているものなどは、コンクリートのワーカビリティーを悪くし、同一水セメント比で同一スランプを得るための細骨材率が大きくなり、単位水量、単位セメント量も多くなる。また、偏平、細長のものは、コンクリートが外力を受けたときに不均ーな応力分布が生じて、破壊しやすいためにコンクリートの強度も低下する。

③ 粒度分布を表すには次のような方法があり、通常1)及び2)が用いられる。
1) 各ふるいの通過率
2) 粗粒率(FM)
3) 各ふるいの累加残留率
4) 各ふるいの残留率

④ コンクリートの品質を確保して圧送性を良くするには、骨材の粒度分布が適切であるとともに 0.3mm以下の細骨材が15~30%混入していることが望ましい。

(キ) その他留意が必要な骨材の品質

(a) 骨材の単位容積質量・実績率
① 単位容積質量は、単位容積当たりの骨材質量(kg/ℓ)で、骨材の粒度が適切であれば、最大寸法が大きいほど単位容積質量は大きい。

② 実績率は、骨材を容器に詰めた場合、どの程度隙間なく詰まっているかを表す指標で、6.3.1式より求める。空隙率は 6.3.2式による。

③ 同一粒度、同一密度の骨材では、実績率が大になるほど骨材の粒形が良いことになる。また、骨材の密度、最大寸法及び粒度が同様な場合には、粒度分布が良いほど実績率は大となる。

④ 骨材に対応する標準的実績率を表6.3.6に示す。

表6.3.6 骨材の実績率の標準的な値

(b) 骨材中の泥分
泥分が骨材表面に付着していると、骨材とセメントペーストとの付着を妨げ、コンクリートの強度を低下させる。また、コンクリート中に混合している場合は、単位水量が増加し、体積変化も大きく、ひび割れも発生しやすい。

(c) 細骨材の有機不純物
有機不純物としては、腐植土、泥炭質等があり、これらに含まれるフミン酸やタンニン酸の量が多いと、セメントペースト中のCa(OH)2と反応して有機酸石灰塩を生じ、コンクリートの硬化を妨げ、強度や耐久性を低下させる場合がある。

(d) 細骨材中の塩化物
① コンクリート中の鋼材は、コンクリートのpHが10以上の場合は、鋼の表面が鉄の水酸化物Fe(OH)2の不働態皮膜で覆われているので錆は発生しないが、多量の塩化物が混合すると、塩化物イオンによって不働態皮膜が破壊されて錆が発生する。

② JIS A 5308附属書A(規定)では、砂に含まれる塩化物枯をNaCl換算で0.04%以下と規定しているが、2003年のJIS R 5210(ボルトランドセメント)の改正により普通ボルトランドセメントの塩化物イオンが 0.02%以下から0.035%以下となった。これにより、コンクリートの各材料の塩化物イオンの規格上限値でコンクリート中の塩化物イオン量を算出すると0.30 kg/m3を超える場合があるので、受注者等にレディーミクストコンクリート配合計画書でコンクリート中の塩化物イオン量が0.30kg/m3を超えないことを確認させ、その結果を報告させるようにするとよい。

なお、プレテンション方式のプレストレストコンクリート部材に用いる場合は0.02%以下とすることになっている。

(e) 骨材を混合して使用する場合

① 最近では1種類の骨材だけでは所要の品質や量を確保することが困難となり、複数の骨材を混合して使うことが多くなった。

② 骨材を混合して使用する場合は、JIS A 5308附属書A (規定)のA.9[骨材を混合して使用する場合]による。

1) 同一種類の骨材(例:川砂利と陸砂利(玉砕も含む。)、海砂と山砂)を混合して使用する場合は、混合したものの品質が所定の規定に適合しなければならない。ただし、混合前の各骨材の絶乾密度、吸水率、安定性及びすりへり減量については、それぞれの骨材の規定に適合しなければならない。

2) 異種類の骨材(例:川砂利と砕石、海砂と砕砂あるいは高炉スラグ細骨材等)を混合して使用する場合は、混合前の骨材の品質がそれぞれの規定に適合しなければならない。ただし、粒度調整や海砂の塩化物量の低減目的に混合する場合には、粒度と塩化物量については、混合したものが所定の規定に適合していればよい。

(3) 水

(ア) 水は、コンクリートの凝結時間、硬化後のコンクリートの強さ等の諸性質、鋼材の発錆等に影響があり、極めて重要な材料といえる。

(イ) 一般的に、セメントの水和に必要な水量は、セメント質量の約40%といわれ、施工時に必要な水量の内、残りの部分はコンクリートのワーカビリティーを良くするものであり、コンクリートの硬化に関与しない余剰水となる。また、単位水量が多いと乾燥収縮が大きくなる場合や透水性が高くなる場合があり、耐久性が低下しやすい。

(ウ) 水中の不純物が鉄筋コンクリートに与える影響
(a) 一般的に、アルカリ性の強い水はセメントの凝結を遅くし、弱酸性の水は凝結を早め、強酸性では硬化しにくくなる。

(b) 苦土や石灰は、セメントの安定性を低下させる。

(c) 塩化物や塩素は、鉄筋の腐食を助長する。

(d) 水の不純物の種類と量の限度は、使用するセメントの組成、使用量等によって異なり、規定しにくいとされているが、濃度が1,000ppm以下ならば、ほとんど影響がないといわれている。

(エ) 水の使用基準等については、JIS A 5308附属書C (規定)があり、この抜粋を次に示す。

JIS A 5308 : 2019

附属書C(規定) レディーミクストコンクリートの練混ぜに用いる水

C.1 適用範囲
この附量書は、レディーミクストコンクリートの練混ぜに用いる水(以下、水という。)について規定する。

C.2 区分
水は、上水道水、上水道水以外の水及び回収水に区分する。

C.3用語及び定義
この附属書で用いる主な用語及び定義は,箇条3によるほか次による。

C.3.1 上水道水以外の水
河用水.湖沼水,井戸水.地下水などとして採水され,特に上水道水としての処理がなされていないもの及び工業用水。ただし,回収水を除く。

C.4 上水道水
上水道水は、特に試験を行わなくても用いることができる。

C.5 上水道水以外の水
上水道水以外の水の品質は、C.8.1の試験方法によって試験を行ったとき、表C.1に示す規定に適合しなければならない。

表C.1-上水道水以外の水の品質

C.6 回収水
C.6.1 品質
回収水の晶質は.C.8.2の試験方法によって試験を行ったとき.表C.2に示す規定に適合しなければならない。ただし,その原水は.C.4又はC.5の規定に適合しなければならない。

なお、スラッジ水を上水道水、上水道水以外の水、又は上澄水と混合して用いる場合の品質の判定は、スラッジ固形分率が3%になるように.スラッジ水の濃度を 5.7%に調整した試料1)を用い、C.8.2.4及びC.8.2.5の試験を行う。

注1) スラッジ水を希釈し濃度調整する場合には.C.4及びC.5に適合する水を用いる。

表C.2 – 回収水の品質

C.6.2 スラッジ固形分率の限度
a) スラッジ水を用いる場合には、スラッジ固形分率が3%を超えてはならない。

なお、レディーミクストコンクリートの配合において、スラッジ水中に含まれるスラッジ固形分は、水の質量には含めない。

b) スラッジ固形分率を 1%未満で使用する場合には.表10の目標スラッジ固形分率の欄には、”1%未滴”と記入することとし、表11のスラッジ固形分率の欄にも”1 %未満”と記入する。この場合.スラッジ水は練混ぜ水の全量に使用し、かつ、濃度の管理期間ごとに1 %未満となるよう管理しなければならない。

なお、このスラッジ固形分率を1 %未満で使用する場合には、スラッジ固形分を水の質量に含めてもよい。

C.6.3 スラッジ水の管理
スラッジ水の管理は、次による。また、安定化スラッジ水の管理は、バッチ濃度調整方法だけとし、C.7の管理も追加する。

a) バッチ濃度調整方法2)、又は連続濃度測定方法2)を用いる。

注2) バッチ濃度調整方法は、スラッジ水の濃度を一定に保つ独立した濃度調整槽をもつ場合に用いることができる管理方法である。スラッジ固形分率を 1%未満で使用する場合は、この方法による。独立した濃度調整槽をもたない場合には、スラッジ水の濃度を連続して測定できる自動濃度計を設置して測定することによる連続濃度測定方法を用いればスラッジ水の管理ができる。

b) C.6.2に適合するように、スラッジ水の管理状況に対応して、コンクリートに使用するスラッジ水の濃度を定めて管理する。

c) バッチ濃度調整方法を用いる場合には、スラッジ水の濃度を測定・記録し、目標スラッジ固形分率となるようにスラッジ水の計量値を決定して、スラッジ水を使用する。

なお、スラッジ水の濃度の測定は、1日1回以上、かつ、濃度調整の都度行う。

d) 連続濃度測定方法を用いる場合には、スラッジ水を使用する度にその濃度を自動濃度計によって測定・記録し、自動演算装置を用いて目標スラッジ固形分率となるようにスラッジ水の計量値を決定して.スラッジ水を使用する。

e) スラッジ水の濃度の測定精度の確認は,少なくとも3か月に1回の頻度で.C.8.2.6によって行う。また、スラッジ水の濃度の測定方法として自動濃度計を用いる場合は、始業時にスラッジ水の密度から自動濃度計の表示値を確認しこれを記憶する。

f) スラッジ水の濃度及び測定器具の精度確認の記録は、購入者からの要求があれば、スラッジ固形分率の算出根拠として提出する。

C.7 水を混合して使用する場合
2種類以上の水を混合して用いる場合には、それぞれがC.4. C.5又はC.6の規定に適合していなければならない。

JIS A 5308: 2019

(4) 混和材料

(ア) 混和材料の使用目的は、概ね次のとおりである。
(a) ワーカビリティーの改良
(b) 長期材齢又は初期材齢における強度の増大
(c) 水密性の増大
(d) 乾燥収縮の低減
(e) 耐久性の向上

(イ) 混和材料の分類を、図6.3.6に示す。


図6.3.6 混和材料の分類

混和材料について「標仕」6.3.1(4)では、種類及び適用は特記によるとし、特記がなければ、種類は次によるとしている。

(a) 混和剤の種類は、JIS A 6204(コンクリート用化学混和剤)によるAE剤、AE減水剤又は高性能AE減水剤とし、化学混和材の塩化物イオン(Cl-)量による区分は、Ⅰ種とする。また、防錆剤を併用する場合は、JIS A 6205(鉄筋コンクリート用防せい剤)による防錆剤とする。

(b) 混和材の種類は、JIS A 6201(コンクリート用フライアッシュ)によるフライアッシュのI種、II種若しくはⅣ種、JIS A 6206(コンクリート用高炉スラグ微粉末)による高炉スラグ微粉末、JIS A 6207(コンクリート用シリカフューム)によるシリカフューム又はJIS A 6202(コンクリート用膨張材)による膨張材とする。

(ウ) JIS A 6204(コンクリート用化学混和材)の抜粋を次に示す。

なお、JIS A 6204は2011年の改正で、6.2のコンクリート試験における空気量は、基準コンクリートの空気量に3.0%を加えたものに対して、0.5%を超える差があってはならないこととなった。また、練混ぜのバッチ数は1バッチとすること、圧縮強度試験用供試体の養生温度は20±2℃とすること、コンクリートの試験回数は、1バッチについて1回とすること及び管理試験の名称を性能確認試験と改め、6箇月に1回の頻度で実施することとなった。

JIS A 6204:2011

1 適用範囲
この規格は、コンクリート用化学混和剤(以下、化学視和剤という。)として用いるAE剤、高性能減水剤、硬化促進剤、減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤及び流動化剤について規定する。

3 用語及び定義
この規格で用いる主な用語の定義は,JIS A 0203によるほか、次による。

3.1 化学混和剤
主として、その界面活性作用及び/又は水和調整作用によってコンクリートの諸性質を改善するために用いる混和材。

3.2 AE剤
コンクリートなどの中に、多数の微細な独立した空気泡を一様に分布させ、ワーカビリティー及び耐凍害性を向上させる化学混和剤。

3.3 高性能減水剤
所要のスランプを得るのに必要な単位水品を大船に減少させるか又は単位水量を変えることなくスランプを大幅に増加させる化学混和剤。

3.4 硬化促進剤
セメントの水和を早め.初期材齢の強度を大きくする化学混和剤。

3.5 減水剤
所要のスランプを得るのに必要な単位水量を減少させる化学混和材。

3.6 AE減水剤
空気連行性能をもち,所要のスランプを得るのに必要な単位水量を減少させる化学混和剤。

3.7 高性能AE減水剤
空気連行性能をもち,AE減水剤よりも高い減水性能及び良好なスランプ保持性能をもつ化学混和剤。

3.8 流動化剤
あらかじめ練り混ぜられたコンクリートに添加し、これをかくはんすることによってその流動性を増大させることを主たる目的とする化学混和剤。

3.9 標準形
化学混和剤の種類で.コンクリートの凝結時間をほとんど変化させないもの。

3.10 遅延形
化学混和剤の種類で.コンクリートの凝結を遅延させるもの。

3.11 促進形
化学混和剤の種類でコンクリートの凝結及び初期強度の発現を促進させるもの。

3.12 基準コンクリート
化学混和剤の性能を試験する場合に基準とする化学混和剤を用いないコンクリート。ただし.流動化剤の性能を試験する場合にはAE剤を使用する。

3.13 試験コンクリート
化学混和剤の性能を試験する場合に試験の対象とする化学混和剤を用いたコンクリート。

3.14 形式評価試験
製品を開発した当初に性能確認として行う全項目試験。

3.15 性能確認試験
形式評価試験で確認された性能と同等の性能をもつことを定期的に確認するために、その一部項目について行う試験。

4 種類
化学混和剤の種類は.性能によって表1、塩化物イオン(Cl-)量によって表2のとおり、それぞれ区分する。

表1- 化学混和剤の性能による区分

表2- 化学混和剤の塩化物イオン(Cl)量による区分

5 品質
5.1 性能
化学混和剤の性能は、6.2によって試験を行ったとき、表3に適合しなければならない。(6.2省略)

表3-化学混和剤の性能

5.2 塩化物イオン(Cl)量
塩化物イオン量は.6.3によってコンクリート中の量を求め.その値が表2に適合しなければならない。(6.3省略)

5.3 全アルカリ量
全アルカリ量は、6.4によってコンクリート中の量を求め、その値が0.30kg/m3以下でなければならない。(6.4省略)

(エ) AE剤
AE剤は、コンクリート中に無数の独立した微細な気泡を連行させることができる。この気泡は、コンクリートに次のような効果をもたらす。

① ワーカビリティーが良くなる(気泡のボールベアリング作用による。)。
② 単位水量を減少させることができる(一般的にプレーンコンクリートに比べて8%程度減少できる。)。
③ コンクリートの凍結融解に対する抵抗性を増し、耐久性を向上させる。
④ 中性化に対する抵抗性を増大させる。
⑤ 圧縮強度は、空気量にほぼ反比例して低下する。

(オ) AE減水剤

(a) AE減水剤は性能に応じて、標準形、遅延形及び促進形に分けられる。その用途等は次のとおりである。
① 標準形は、主として一般のコンクリートに用いられる。
② 遅延形は、コンクリートの凝結を遅らせ、暑中コンクリートやマスコンクリート等に用いる場合がある。
③ 促進形は、コンクリートの初期強度の発現を促進し、寒中コンクリート等に用いる場合がある。

(b) AE減水剤は、セメント粒子に対する分散作用と空気連行作用を併有する混和剤で、所要のコンシステンシーを得るための単位水量は、プレーンコンクリートに比べて 12~ 16%減少できる。

(カ) 研性能AE減水剤

高性能AE減水剤は、高い減水性とスランプ保持性能を有する混和剤で、凝結時間が通常のコンクリートとあまり変わらない標準形と、暑中コンクリートやマスコンクリート等に適した遅延形とがある。

その主成分の化学的組成からナフタリン系、ポリカルボン酸系、メラミン系、アミノスルフォン酸系に分類される。ただし、この分類は、あくまで便宜的なもので、同系統に属していてもコンクリートに用いたときの性能は、主成分の化学構造が全く同じでないこと、配合されている副次成分の違いなどから必ずしも同ーではない。

高性能AE減水剤は、従来のAE剤やAE減水剤と同様にプラントでミキサーに投入し、他の材料と同時に練り混ぜる方式により、プレーンコンクリートに対し減水率を 16~ 25%程度にすることができる化学混和剤であり、特にスランプロス防止に重点をおいて開発されたものである。

高性能AE減水剤の主な機能は、①高いセメント分散作用、②スランプ保持作用であり、用途としては次のようなものが挙げられる。

なお、最近では、JIS A 6204の規格に適合し、従来の化学混和剤にはない新たな機能を付与したタイプが使用されている。例えば、収縮低減成分や増粘成分を各種減水剤などと一液化したものがあり、これらは一般に「高機能型(タイプ)」と呼ばれている。

① 単位水量上限規制への対応
② コンクリートの高耐久性化(単位水量の大幅低減)
③ 高流動コンクリートの製造
④ 高強度コンクリートの製造
⑤ 単位セメント量低減による水和熱の低減等

(キ) 流動化剤

流動化剤は、あらかじめ練り混ぜられたコンクリートに添加、かくはんし流動性を増して、コンクリートの品質と施工性の改善をする混和剤である。
コンクリートを流動化する場合は、流動化する前のレディーミクストコンクリートからのスランプの増大量と、流動化剤によって混入されるアルカリ量をあらかじめ生産者に通知する必要がある。

なお、 I類コンクリートであっても、レディーミクストコンクリートの受入れ後、荷卸し地点等で流動化剤を添加する場合は、JIS Q 1001(適合性評価-日本産業規格への適合性の認証-一般認証指針)及びJIS Q 1011(適合性評価-日本産業規格への適合性の認証-分野別認証指針(レディーミクストコンクリート))の認証範囲から外れる可能性がある。このような場合には、II類コンクリートとして扱わなくてはならないので、その使用には注意が必要である。

(ク) フライアッシュ

(a) フライアッシュは、燃料として微粉炭を使用している火力発電所のボイラーの煙道に設けられた集じん機で回収される鉱物質の微粉で、人工ポゾランの一種である。良質なフライアッシュは粒子表面が滑らかで球状を呈しているので、 AE剤による気泡と同様な作用をする。

(b) 良質なフライアッシュを混合すると同一スランプのコンクリートを得るのに、混合率(内割り)10%(質量比)当たり単位水量を3~4%程度減らすことができる。

(c) フライアッシュは、JIS A 6201(コンクリート用フライアッシュ)のI種、II種又はⅣ種に適合するものとし、ワーカビリテイーや圧送性の改善、ブリーディングの減少、水和熱の抑制等の目的で、セメントの一部として(内割り)あるいは骨材の一部として(外割り)用いられる(内割り、外割りについては (f)参照)。フライアッシュの品質を表6.3.7に示す。

表6.3.7 フライアッシュの品質(JIS A 6201 : 2015)

(d) フライアッシュを内割りに混合する場合の混合率の限度は、セメント量の10%以内とする。

(e) フライアッシュの混合によりコンクリートの中性化が促進されるといわれているので、鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さを確保するよう特に注意する。

(f) フライアッシュの混合の内割り、外割り

① フライアッシュを「内割りに混合する」とは、図6.3.7のような割合に混合することをいう。「標仕」6.3.2(イ)(f)③の場合に適用する。


図6.3.7 フライアッシュの混合の内割り

② フライアッシュを「外割りに混合する」とは、図6.3.8のような割合に混合することをいう。「標仕」6.3.2(イ)(f)②の場合に適用する。


図6.3.8 フライアッシュの混合の外割り

6.3.2 コンクリートの調合

コンクリートの計画調合は、所要のスランプ、空気量、強度及び耐久性が得られ、かつ、「標仕」2節に示される各規定の要求事項を満足するよう、次の項目に注意して定めなければならない。

(ア) 調合管理強度及び調合強度

(a) 調合管理強度
平成19年版「標仕」では、調合管理強度(Fm)に相当する値は、設計基準強度(Fc)、構造体コンクリートと供試体強度との差(ΔF=3N/mm2)、気温によるコンクリート強度の補正値(T)を考慮して(Fc + ΔF + T)としていたが、平成 22年版「標仕」からは、調合管理強度は、( ΔF+T)に代わって、セメントの種類及びコンクリートの打込みから材齢28日までの予想平均気温に応じて定められた構造体強度補正値(S)を取り入れ、(Fc+S)に改められている。

(b) 構造体強度補正値(S)は、セメントの種類、予想平均気混の範囲に応じて「標仕」表6.3.2に示すように、3N/mm2又は6N/mm2としている。また、平成28年版「標仕」からは、平成12年建設省告示第1446号(平成28年国交省告示第814号)の改正に伴い「標仕」表6.3.1に普通エコセメントが追加され、「標仕」表6.3.2に「JASS 5」の27.5 b項を基に普通エコセメントの構造体強度補正値(S)が追加された。

なお、平成28年3月に改正された告示「コンクリート強度に関する基準」では、コンクリート強度の確認方法として、標準養生(水中又は飽和水蒸気圧 中の養生に限る。)による方法とこれに使用する構造体強度補正値が第1第三 号として追加されたが、規定された平均気温の範囲とその構造体強度補正値は、「JASS 5」に示される構造体強度補正値28S91と若干異なる数値となっている。しかし、同告示と同時に国土交通省住宅局建築指導課長から発出された技術的助言 国住指第4893号「コンクリート強度並びに型わく及び支柱の取り外しに関する基辿の改正について」では、告示第1102号第1第三号に規定する構造体強度補正値以外の値であっても、「JASS 5」に基づく管理方式については、同告示のただし書きの適用があるものとして取り扱ってよい、とされている。

「標仕」では、平成22年版より「JASS 5」の2009年版を基にコンクリートの調合設計に構造体強度補正値(S)の考え方を祁入してコンクリートの品質管理を行っており、平成28年版「標仕」においても、構造体強度補正値(S)は、「JASS 5」に示される構造体強度補正値28S91を基に定めた値(「標仕」表6.3.2)としている。

参考に、昭和56年建設省告示第1102号(最終改正平成28年国土交通省告示第502号)(告示「コンクリート強度に関する基準」)及び技術的助言 国住指第4893号平成28年3月17日「コンクリート強度並びに型わく及び支柱の取り外しに関する基準の改正について」の抜粋を下記に示す。

設計基準強度との関係において安全上必要な
コンクリート強度の基準を定める等の件

(昭和56年建設省告示第1102号
最終改正 平成28年3月17日 国土交通省告示第502号)

建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第七十四条第一項第二りの規定に基づき、設計基準強度との関係において安全上必要なコンクリートの強度の基準を次の第一のように定め、同条第二項の規定に基づき、コンクリートの強度試験を次の第二のように指定する。

第一 コンクリートの強度は、設計基準強度との関係において次の各号のいずれかに適合するものでなければならない。ただし、特別な調査又は研究の結果に基づき構造耐力上支障がないと認められる場合は、この限りでない。

中略

三 コンクリートの圧縮強度試験に用いる供試体で標準養生(水中又は飽和蒸気中で行うものに限る。)を行ったものについて強度試験を行った場合に、材齢が二十八日の供試体の圧縮強度の平均値が、設計基準強度の数値にセメントの種類及び養生期間中の平均気温に応じて次の表に掲げる構造体強度補正値を加えて得た数値以上であること。

コンクリート強度並びに型わく及び支柱の取り外しに関する基準の改正について(技術的助言)

(国住指第4893号平成28年3月17日)

建築基準法施行令第74条第1項第2号及び同令第76条第2項の規定に払づく標記基準については、平成28年3月17日付国土交通省告示第502号及び同日付国土交通省告示第503号として別添のとおり公布されたので通知する。なお、「コンクリート強度に関する基準の制定について(通知)」(昭和56年6月15日付け建設省住指発第160号、建設省住宅局建築指導課長通知)は廃止する。

中略

1 コンクリート強度に関する基準(昭和56年建設省告示第1102号)の改正について

(1) 本告示は、設計基準強度との関係において安全上必要なコンクリート強度の基準及びコンクリートの強度試験方法に1対する基準を定めたものである。
本告示改正は、新たなコンクリート強度の管理方式のひとつとして、標準養生(水中又は飽和水蒸気圧中で行う場合に限る。以下同じ。)供試体による場合について、材齢が28日までの供試体の圧縮強度の平均値が、設計基準強度の数値に構造体強度補正値を加えた数値以上であることとするコンクリートの強度の基準を定めたものである。

これら以外の管理方式であっても、適切な研究的裏付けのあるものについては、ただし書の適用があるものとして取り扱って差し支えない。

(2) 第1第1号に規定する現場水中養生に類する養生は、現場における湿砂中養生等所要の水分を補給しうる状態での養生を、同第2号のコア供試体に類する強度に関する特性を有する供試体は、現場封かん養生供試体等構造体中のコンクリートと類似の温度履歴を有する養生を行った供試体をそれぞれさすものである。

(3) 第1第3号に規定する構造体強度補正値は、既往の研究成果等を踏まえ、コンクリート打設時の外気温並びに部材の種類及び寸法等を考慮した上で、標準養生供試体の材齢が28日における圧縮強度の平均値とコア供試体又はこれに類する強度に関する特性を有する供試体の材齢91日における圧縮強度の平均値の差について、0以上の数値として定めたものである。これ以外の強度補正値であっても「建築工事標準仕様書 JASS 5 鉄筋コンクリート工事」((-社)日本建築学会)に基づく管理方式によるものなど、適切な研究的裏付けのあるものについては、ただし書きの適用があるものとして取り扱って差し支えない。

(4) 第1第1号及び同第2号に規定する強度試験を行うコンクリートの材齢について、コンクリートの強度発現特性を踏まえ、強度試験により28日(又は91日)より前に必要な強度が発現していることを確認した場合にあっては、28 日(又は91日)時点で強度試験を行わない場合でも、28日(又は91日)時点で必要な強度が発現しているものと扱って差し支えない。

(5) 供試体強度の平均値を求める場合の供試体数及び養生方法といった管理方式等に関する具体的な運用については、「建築工事標準仕様書JASS 5鉄筋コンクリート工事」((-社)日本建築学会)又は「建築研究資料No.169高強度領域を含めたコンクリート強度の管理基準に関する検討」(国立研究開発法人 建築研究所)等を参考とされたい。

(c) 調合強度(F)は、一般的には標準養生した供試体の材齢m日における圧縮強度で表し、6.3.3式を満足するように定めることになる。

F ≧ Fm + α × σ (N/mm2)・・・(6.3.3式)

ここで、αは、コンクリートの許容不良率に応じた正規偏差で、σは、強度のばらつきを表す標準偏差である。「JASS 5」では、αを許容不良率4%に相当する1.73を用いている。また、σは発注するレディーミクストコンクリート工場の実績に基づいた値を用いればよい。もし発注するコンクリートの生産実績が少ないなどの場合には、2.5N/mm2又は0.1Fmの大きい方の値を用いるとよい。

(イ) 調合条件
コンクリートに要求される品質として、所要の強度を確保すること、打込み時 のワーカビリティーを確保することは当然であるが、近年、鉄筋コンクリート造の構造物が劣化している様々な事例が指摘されており、コンクリートの耐久性(コンクリート中の塩化物含有量、中性化、ひび割れ、海塩粒子、アルカリ骨材反応 による影響等に対して)を確保することが、コンクリート構造物の継続的利用に極めて重要となっている。これらの理由から「標仕」では次の規定を設けている。

なお、以下の水セメント比の最大値、単位水量の最大値及び単位セメント量の最小値とは、レディーミクストコンクリート工場において調合設計を計画した時のそれぞれの目標値のことである。

(a) 「標仕」では、荷卸し地点における空気量は、4.5%と規定されている。
AE剤、AE減水剤、高性能AE減水剤を用いて、コンクリート中に微細な空気泡を連行すると、連行空気量にほぼ比例して所定のスランプを得るのに必要な単位水量を低減でき、ワーカビリティーが改善されるとともに、凍結融解作用に対する抵抗性が増大する。しかし、空気量が6%以上になるとそれ以上空気量を増やしてもフレッシュコンクリートの品質は改善されなくなり、空気量が3%未満では凍結融解作用に対する抵抗性の改善に対する効果が少ない。このため空気量の確認時期・地点を荷卸し地点とし、その時のコンクリートの空気量を4.5%としている。

(b) 鉄筋コンクリートの一般的な劣化は、コンクリート表面からの水・炭酸ガス、塩化物その他の浸入性物質によりもたらされるが、これらの劣化要因からコン クリートを健全に守るためには、一般的に水セメント比を小さくすればよい。このため強度上必要な水セメント比とは別にコンクリートのワーカビリティー・均一性・耐久性を確保するために水セメント比(W/C)の最大値を 以下のように定めている。

① 平成22年版「標仕」では、普通ボルトランドセメント及び混合セメントのA種の水セメント比の最大値(上限値)は65%、混合セメントのB種は 60%とされていたが、平成25年版「標仕」から、新たに早強ボルトランドセメント及び中庸熱ボルトランドセメントを使用する場合は65%、低熱ボルトランドセメントを使用する場合は60%とする規定が追加されている。

また、平成28年版「標仕」6.3.1 (a)(1)で追加された普通エコセメントについては、「JASS 5」及び国立研究開発法人 建築研究所の「建築研究質料 No.144」等を参考に、以下の事由から水セメント比の最大値を55%とした。

a) 普通エコセメントを使用するコンクリートの中性化深さは、普通ボルトランドセメントを使用する同一水セメント比のコンクリートよりも大きくなる。

b) 普通ボルトランドセメントを使用するコンクリートと同程度の圧縮強度を得るためには、普通エコセメントを使用するコンクリートの水セメント比を3~5%程度小さくすることが必要である。

② 6.3.1(2)(イ)(a)でも記したように、平成12年建設省告示第1446号の一部改正に伴って平成28年版「標仕」からは、再生骨材Hを使用するコンクリートを建築物の基礎、主要構造部へ適用できることとなった。ただし、再生骨材H以外の他の骨材を使用するコンクリートと同程度の圧縮強度を得るためには、再生骨材Hを使用するコンクリートの水セメント比を若干小さくする必要があることから、水セメント比の最大値が60%とされた。

(c) 「標仕」では、単位水量の最大値を185kg/m3と規定するとともに、コンクリートの強度、気乾単位容積質量、ワーカビリティー、スランプ及び構造体コンクリートの仕上り状態が「標仕」2節に規定される品質を満足する範囲で可能な限り小さくするよう規定されている。

近年、良好な砂利、砂に代わり、砕石、砕砂が多用されるようになると、スランプを一定値以下に抑えても単位水量は大きくなる一方であり、コンクリートの乾燥収縮率の増大が懸念されている。その一方で、最近は高性能AE減水剤によりコンクリートのスランプを比較的容易に変えることができるようになり、単位水量が185kg /m2以下でもスランプ18cmにすることが容易となっている。このような理由から、コンクリートの品質を確保するためにスランプの規制以外に単位水量の制限が設けられている。

(d) 「標仕」では、単位セメント量の最小値を270kg/m3とし、かつ、(b)の水セメント比及び(c)の単位水量から算出した数値とすることが規定されている。
なお、単位セメント量は、6.3.4式によって求められる。

C = W / x × 100 ・・・(6.3.4式)
C:単位セメント量(kg/m3
W:単位水量(kg/m3
x :水セメント比(%)

単位セメント量は、水和熱及び乾燥収縮によるひび割れを防止する観点から可能な限り少なくすることが望ましい。しかし、単位セメント量が過小であるとコンクリートのワーカビリティーが悪くなり、型枠内へのコンクリートの充填性の低下、豆板や巣、打継ぎ部における不具合の発生、水密性、耐久性の低下等を招きやすい。このためコンクリートの強度を確保するための条件とは別に単位セメント量の最小値が規定されている。

(e) 細骨材率
「標仕」では、「コンクリートの品質が得られる範囲内で、適切に定める」と規定されている。一般的に、コンクリートの単位水量を可能な限り小さくし、強度や耐久性を最大にするには、所要のワーカビリティーが得られる範囲内で 細骨材率を最小にすることが重要となる。ただし、細骨材率を小さくし過ぎると一般的に所要のスランプを得るための単位水量は減るが、がさがさのコンクリートとなり、また、スランプの大きいコンクリートでは、粗骨材とモルタルとが分離しやすくなり、ワーカビリティーが低下する。

一方、細骨材率を大きくすると所要のスランプを得るための単位水量を多く必要とし、流動性の悪いコンクリートとなる。

なお、レディーミクストコンクリート工場では、所要のワーカビリティーが得られる範囲内で単位水量が最小になるように試験により最適な細骨材率を定めている。

(f) 混和材料
① 混和剤の使用量
AE剤については、所定の空気量が得られるようにその使用量を定める。
AE減水剤については、セメントに対する定められた質量比等の範囲内で使用量を定め、空気量については、空気量調整剤(AE剤)で所定の空気量が得られるように調整する。

高性能AE減水剤については、セメントに対する定められた質量比等の範囲内で単位水量及びスランプが得られるように使用量を定める。また、空気量については、空気量調整剤(AE剤)で所定の空気量が得られるように調整する。

なお、6.3.1(1)(ア)(g)でも記したように、普通エコセメントは塩化物イオン量を含め化学成分及び鉱物組成が普通ボルトランドセメント等と異なる部分があり、高性能AE減水剤の主成分によって添加量や得られる効果、性能が異なる場合があるので、事前の試し練りが必要がある。

② 良質なフライアッシュは、球形をしており、ボールベアリング効果により、ポンプの圧送性を改善する。普通ボルトランドセメントを用いたコンクリートで圧送が困難な場合、フライアッシュIl種又はⅣ種を外割りで混合することができる(6.3.1(4)(ク)(f)②参照)。

③ 普通ボルトランドセメントを用いたコンクリートで水セメント比の制限等により、強度上必要なセメント量を超える場合は、その部分をセメント全量の10%(質量比)の範囲でフライアッシュI種又はⅡ種に置き換えることにより、単位水量の低下、単位セメント量の低下等が図られ、乾燥収縮等を改善することができる(6.3.1(4)(ク)(f)①参照)。

また、「標仕」では記載されていないが、高炉スラグ微粉末を適量混合することにより、水和熱の抑制、アルカリ骨材反応の抑制、硫酸塩や海水に対する化学抵抗性の向上、水密性の向上等が期待できる。

④ 上記①から③以外で混和材料として多く用いられるものには、流動化剤、膨張材、防錆剤等があるが、その使用方法、使用量については、コンクリートの種類や使用目的によって異なるので、使用が特記された場合は、コンクリートの所定の性能が得られるよう試し練り及び信頼できる資料を受注者等に提出させて確認する。

(g) 塩化物量
コンクリートは、通常pH= 12.5~13 程度の強アルカリ性を呈し、その中に埋め込まれた鉄筋の表面は薄い酸化皮膜で覆われ、不働態化して腐食から保護されている。

しかし、大気中の炭酸ガスやその他の酸性物質の浸透によって徐々にアルカリ性が失われ、中性化が鉄筋の位置まで進行すると鉄筋の腐食に対する保護作用を失い、さらに、水分と酸素が供給されると鉄筋は腐食し始める。

コンクリート中に一定量以上の塩化物が存在すると、塩化物イオンの作用によってコンクリートの中性化が進行していなくても、不働態皮膜が破壊され、鉄筋は腐食し始める。

これらの理由から、「標仕」ではコンクリートに含まれる塩化物の値に制限が設けられ、塩化物イオン量で0.30kg/m3以下と規定されている。

なお、塩化物イオン品が 0.30kg/m3を超えることがやむを得ないと判断した場合は、設計担当者と打合せのうえ、受注者等に次の基準に従った処置の方法を提案させ、「標仕」1.1.8による協識に基づいて処置する必要がある。

① コンクリート中に含まれる塩化物含有量の基準
鉄筋コンクリート造等建築物の構造耐力上主要な部分に用いられるコンクリートに含まれる塩化物量(塩化物イオン(Cl)換算)は、原則として0.30 kg/m3以下とし、やむを得ず塩化物量が0.30kg/m3を超え0.60kg/m3以下のコンクリートを使用する場合は、次のa)からd)までの条件を満たすものとする。

a) 水セメント比は、55%以下とする。
b) AE減水剤又は高性能AE減水剤を使用し、スランプは18cm以下(流動化コンクリートではベースコンクリートのスランプは15cm以下、流動化後のコンクリートのスランプは21cm以下)とする。
c) 適切な防錆剤を使用する。
d) スラブの下端の鉄筋のかぶり原さを3cm以上とする。

② 離島等で海砂以外の骨材の入手及び除塩用水の確保が著しく困難であり、塩化物量が0.60kg/m3を超える場合においては、有効な防錆処理が施された鉄筋の使用等による防錆対策を講ずる。ここでいう「有効な防錆処理が施された鉄筋」とは、「2020年版建築物の構造関係技術基準解説書」の付録 1-7に示されるエポキシ樹脂塗装鉄筋などをいう。

なお、防錆処理を施した鉄筋の付着性能は、非処理のものと異なること、また処理方法や処理剤の種類によっても異なるため、設計担当者と防錆対策の内容について協議しておく必要がある。

③ 塩化物量の測定は、「標仕」表6.9.1による。

なお、普通エコセメントを使用するコンクリートに含まれる塩化物イオン量の測定は、従来の方法と相違する部分があるので、6.9.2(2)(オ) 項を良く理解して行う必要がある。

(h) アルカリ骨材反応
① アルカリ骨材反応とは、反応性シリカを含む骨材とセメント等に含まれる Na+、K+のアルカリ金量イオンが、水の存在下で反応してアルカリけい酸塩を生成し、これが膨張してコンクリートにひび割れ、ポップアウト等を生じさせる現象をいう。

② アルカリ骨材反応は、この反応にかかわる鉱物の種類によって、アルカリシリカ反応とアルカリ炭酸塩反応とがあり、わが国で問題となっているのは主としてアルカリシリカ反応である。

③ この反応性をもつ鉱物としてはオパール、クリストバライト、トリジマイト、火山ガラス、玉髄、石英等があり、反応性シリカ鉱物を含む岩石としては輝石安山岩、チャート等がある。

④ アルカリ骨材反応は、一般に反応性骨材、高いアルカリ量、十分な湿度の3条件がそろった場合にコンクリートに被害を生じさせるとされている。

⑤ アルカリ骨材反応の抑制対策として、次のような方法が考えられる。

a) 反応性の骨材を使用しない。
b) コンクリート中のアルカリ総量を低減する。
c) アルカリ骨材反応に対して抑制効果のある混合セメントを使用する。

⑥ 以上のことから、「標仕」ではコンクリートは、アルカリ骨材反応を生じるおそれのないものとしている。

(ウ) 計画調合の決定

(a) 「標仕」では計画調合は、試し練りによってそのコンクリートの性能及び品質を確認して定めるとしているが、 I類コンクリートを使用する場合は、試し練りは省略してもよいとしている。ただし、普通エコセメント及び再生骨材H を使用するコンクリートについては、建築物への使用実績がまだ少なく、かつ、他の普通セメントと比較してフレッシュ時及び硬化後の性能、品質が我なる部分がある。よって、これらのコンクリートについては、 I類のコンクリートであっても原則試し練りを行って計画調合を決定することが必要である。

(b) 試し練りにおいて、計画スランプ、計画空気量、調合強度、その他コンクリートの温度や塩化物量、単位容積質量等を確認する。

試し練りの計画スランプ、計画空気量については、レディーミクストコンクリートの練混ぜから荷卸し地点までのロスを考慮した目標値であることに注意する。
また、運搬によるスランプロスや空気量ロスは、練混ぜから荷卸し地点までの距離、コンクリートのスランプ、外気温、調合条件等によって相違があるので、レディーミクストコンクリート工場の社内規格を参考にするとよい。

調合強度の確認は標準養生した材齢28日の圧縮強度によるが、受注者等から他の方法が提案された場合は、その内容を確認し採否を決める。

調合強度は、「JASS 5」の解説において、コンクリートの調合を定める場合に目標とする平均の圧縮強度のことであり、調合管理強度に強度のばらつきを考慮して割り増した強度と示されている。したがって試し練りによる調合強度の確認は、調合管理強度を基準として行うものであることに注意する。

現在では、コンクリートの製造が主としてレディーミクストコンクリート工場で行われるため、調合強度はレディーミクストコンクリート工場が定めることになる。そのため、レディーミクストコンクリートを使用する場合には、調合強度がレディーミクストコンクリート工場の十分な製造実績に基づき、調合管理強度を満足するように定められたものであることを、配合計画書、配合計算書、使用するコンクリートの品質管理記録などで確認する。

(c) 計画調合の表し方
コンクリートの計画調合は、JIS A 5308の表10[レディーミクストコンクリート配合計画書]により表す。

(d) レディーミクストコンクリート工場ではI類コンクリートについては、使用する材料で調合設計を標準化している。レディーミクストコンクリート工場における計画調合の定め方の一例を図6.3.9に示す。


(注) 水セメント比最大値、単位水量最大値、単位セメント最小値で修正を受けた計画調合は、セメント水比と強度との関係より、再度、調合強度を求め、それを満足する強度値の呼び強度を発注する。
図6.3.9 レディーミクストコンクリート工場における計画調合の求め方の例

2節 コンクリートの種類及び品質(R4版)

第6章 コンクリート工事


2節 コンクリートの種類及び品質

6.2.1 コンクリートの種類

(1) 平成22年版「標仕」までは、使用骨材によってコンクリートの種類分けを行っていたが、近年、スラグ骨材等を含め密度の異なる各種の骨材が開発・使用され、特に細骨材は混合して使用される場合もあることから、平成25年版「標仕」から、気乾単位容積質量でコンクリートの種類を分類し、概ね気乾単位容積質量が 2.1~2.5t/m3の普通コンクリートと、より気乾単位容積質量の小さい軽量コンクリートの2種類とされた。

(2) 寒中コンクリート、暑中コンクリート、マスコンクリート、無筋コンクリート及び流動化コンクリートは、使用材料、施工時期・施工方法・施工場所等の施工条件、要求性能等によって10節までとは異なる品質管理が必要なため、「特別仕様のコンクリート」として11節から15節に別記されている。

(3) 平成16年6月に工業標準化法が改正され、平成17年10月1日からJISマーク表示制度は、国による認定制度から登録認証機関による製品認証制度となった。これによって、JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)もこれまでの「工場認定」から「製品認証」へと変更された。

「標仕」でも平成22年版の改定以降、 I類コンクリートは、JIS Q 1001(適合性評価-日本産業規格への適合性の認証-一般認証指針)及びJIS Q 1011(適合性評価-日本産業規格への適合性の認証-分野別認証指針(レディーミクストコンクリート))に基づき、JIS A 5308への適合を認証されたコンクリート、II類コンクリートは、 I類以外のJIS A 5308に適合したコンクリートとされている。

「標仕」では、従来建築工事には特別な場合を除き、JIS A 5308に適合するレディーミクストコンクリートで対応できると考えられている。そのうえで、適合を認証されたI類コンクリートを使用することを原則としているが、山間部、離島等で運搬可能時間の距離内にJISマーク表示認証を取得した製品(以下、この章では「JISマーク表示認証製品」という。)を製造する工場(以下、この章では「JISマーク表示認証工場」という。)がない場合でも、II類コンクリートであれば、基礎や主要構造部等の建築基準法第37条に規定される部分に適用できると考えてよい。

なお、建築基準法第37条の指定建築材料が適合すべき規格及び品質に関する技術的基準を定めた平成12年建設省告示第1446号の一部が平成28年6月13日に改正(国土交通省告示第750号)され、建築物の基礎や主要構造部等に使用するコンクリートが適合すべき日本工業規格は、JIS A 5308-2014に改められ、従来、国土交通大臣の認定が必要であった回収骨材を使用したコンクリートについても、平成31年版「標仕」からは、特記をせずに使用できることとなった。

その後、JIS A 5308-2014が、2019年3月に改正されたことにより、平成12年建設省告示第1446号の一部が令和元年5月16日に改正(国土交通省告示第18号)され、建築物の基礎や主要構造部等に使用するコンクリートが適合すべき日本工業規格は、JIS A 5308-2019に改められた。それに伴い、国土交通省住宅局建築指導課長より発出された、国住指第10号令和元年5月16日「建築物の基礎、主要構造部等に使用する建築材料並びにこれらの建築材料が適合すべき日本工業規格又は日本農林規格及び品質に関する技術的基準を定める件の改正について(技術的助言)」の抜粋を下記に示す。

建築物の基礎、主要構造部等に使用する建築材料並びにこれらの建築材料が適合すべき日本工業規格又は日本農林規格及び品質に関する技術的基準を定める件の改正について(技術的助言)

(国住指第10号 令和元年5月16日)

中略

建築基準法第37条において、建築物の基礎や主要構造部等に使用する建築材料として国土交通大臣が定めるもの(以下「指定建築材料」という。)については、その品質が日本工業規格若しくは日本農林規格に適合するもの又は国土交遥大臣の認定を受けたものにしなければならないこととされているところ、今般、告示第1446号において、指定建築材料であるコンクリートが適合すべき日本工業規格として、JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)- 2014に代わり、新たにJIS A 5308-2019を位置付けることとした。

JIS A 5308-2014の内容は、軽量コンクリート及び高強度コンクリートであってはスランプが10cmのもの以外は JIS A 5308-2019に包含されるため、JIS A 5308-2014の仕様に適合するコンクリート(軽量コンクリート及び高強度コンクリートであってスランプが 10cmのものを除く。)については、本改正後においても、引き続き法第37条第1号に適合するものとして取り扱って差し支えない。

2019年版のJIS A 5308のレディーミクストコンクリートの種類を表6.2.1に示す。
なお、2019年版のJIS A 5308においては、普通コンクリートの区分におけるスランプフローで管理するコンクリートの追加及び高強度コンクリートの区分におけるスランプフローの範囲の拡大がなされたが、「標仕」では、スランプで管理する普通コンクリートを標準としている。

表6.2.1 JISA5308:2Ql9(抜粋)によるレディーミクストコンクリートの種類及び区分

(4)「標仕」では、建築基準法第37条第二号による国土交通大臣認定のコンクリートは、設計担当者の特記としているので、特記された場合には、認定条件等を十分に確認して使用することになる。

なお、ここでいう「認定条件等」とは、建設省告示第1446号の第3に規定される法第37条第二号の品質に関する技術的基準のことをいう。

6.2.2 コンクリートの強度

(1)「標仕」では、コンクリートの設計基準強度は、36N/mm2以下(軽量コンクリートでは27N/mm2以下)としている。

なお、従来、軽量コンクリートの設計基準強度は27N/mm2未満であったが、「JASS 5 鉄筋コンクリート工事」の軽量コンクリート2種の規定に合わせ、平成25年版「標仕」から27N/mm2以下に変更された。

高強度化が流れではあるが、4~5階建て、数千m2程度のRC造建築物では高強度コンクリートを使用することはほとんどない。

(2) 構造体に打ち込まれるコンクリートの強度とは、構造体に打ち込まれるコンクリートが本来保有していると考えられるポテンシャルの圧縮強度のことであり、荷卸し地点でコンクリート試料を採取し、標準養生した供試体の材齢28日の圧縮強度で表される。ポテンシャルの圧縮強度は、設計基準強度に構造体コンクリートの強度と標準養生した供試体強度との差を考慮した値(構造体強度補正値(S):6.3.2(ア)(b)参照)を加えた調合管理強度以上でなければならない。

(3) 構造体コンクリートとは、構造体とするために型枠内に打ち込まれて養生され、硬化して構造体あるいは部材を形成しているコンクリートのことである。構造体コンクリートの強度は、初期に十分な湿潤養生が施されれば、材齢28日以降も長期にわたって強度が増進し、材齢91日においても強度増進は続き、停止することはない。しかし、コンクリート工事においては適切な材齢を定め、その材齢において設計基準強度を満足するように定める必要がある。建築基準法施行令第74条第1項第二号に基づき、昭和56年6月15日建設省告示第1102号(最終改正平成28 年3月17日「設計基準強度との関係において安全上必要なコンクリート強度の基準」)(以下、告示「コンクリート強度に関する基準」という)第1第二号ではコンクリートの強度を、コンクリートから切り取ったコア供試体について強度試験を行った場合に、材齢28日において設計基準強度の数値に7/10を乗じた数値以上、かつ、材齢91日において設計基準強度の数値以上であることを定めている。

一方、実際のコンクリート工事において構造体コンクリートの強度をコア供試体で試験することは、構造体に損傷を与え、かつ、修復が必要となるため困難である。このため、一般的には工事現場で構造体に打ち込まれるコンクリートから試料を採取し、構造体コンクリートと同じような強度発現をすると考えられる方法で養生した供試体の圧縮強度から構造体コンクリートの強度を推定し、品質管理を行っている。上記告示第1第一号では、現場水中養生を行った供試体について強度試験を行った場合に、材齢28日において設計基準強度の数値以上であることを定めている。

「標仕」では同告示の規定に基づき、原則として、現場水中養生による材齢28日における管理とし、これを滴足しないと想定される場合に、現場封かん養生による材齢28日を超え91日以内の管理を行うとしている。これは、施工現場における構造体コンクリート強度の判定材齢は一般的に28日とされていることに配駆したものである。

さらに、平成28年3月の同告示改正により第1第三号に標準養生(水中又は飽和水蒸気圧中で行う場合に限る。)が追加されたことから、平成28年版「標仕」においても標準養生による材齢28日における判定が追加された。

なお、構造体コンクリート強度を推定するための適切な材齢及び判定基準は養生方法ごとに異なるため、標準養生を含め「標仕」6.9.5で規定されている。

(4) 使用するコンクリートの強度及び構造体コンクリート強度の判定は、9節の6.9.4及び6.9.5によって行う。(2)でも記したように、構造体に打ち込まれるコンクリートとは、工事に用いるために工事現場に搬入したコンクリートのことであり、その強度は、コンクリートが本来保有していると考えられるボテンシャルの圧縮強度のことである。したがって、構造体に打ち込まれるコンクリートの強度は、荷卸し地点で採取して標準養生した供試体の材齢28日の圧縮強度で表し、その値は調合管理強度以上でなければならず、かつ、JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)の呼び強度の強度値を満足しなければならない。

6.2.3 気乾単位容積質量

(1) コンクリートの気乾単位容積質量は、使用する骨材の密度や調合によって異なり、構造計算で固定荷重を算定するときに、鉄筋コンクリートの質量を求めるために用いる値である。平成25年版「標仕」から、従来の使用骨材の種類による区分から、新たにコンクリートの気乾単位容積質量による区分に変更され、そのための標準的な判断基準として、「JASS 5」の規定値を参考に数値が示された。

(2) 軽量コンクリートの気乾単位容積質祇は、別途「標仕」10節で1種、2種の種類ごとに標準的な値の範囲が示されている。

6.2.4 ワーカビリティー及びスランプ

ワーカビリティーとスランプの関連等について次に示す。

(ア) ワーカビリティーは、打込み場所並びに打込み方法及び締固め方法に応じて、型枠内並びに鉄筋及び鉄骨周囲に密実に打ち込むことができ、かつ、机骨材の分離が少ないものとする。また、スランプの所要値は、特記がなければ、基礎、基礎梁、土間スラブでは15cm又は18cm、柱・梁・スラブ・壁では18cmとする。

(イ) ワーカビリティーは、運搬、打込み、締固め及び仕上げのフレッシュコンクリートの移動・変形を伴う作業の容易さと、それらの作業によってもコンクリートの均一性が失われないような総合的な性質であり、フレッシュコンクリートの流動性の程度を表すスランプとは別の概念である。

(ウ) 作業の容易さからいえば、スランプが大きく流動性が高いほうがワーカビリティーが良いといえるが、スランプが過大になると粗骨材が分離しやすくなるとともにブリーディング量が大きくなり、コンクリートの均一性が失われる。そこで、単位セメント量や細骨材率を大きくするとフレッシュコンクリートの粘性が大きくなり、粗骨材の分離は生じにくくなる。

(エ) スランプを大きくし、かつ、単位セメント量や細骨材率を大きくすれば、見かけ上はワーカビリティーの良いコンクリートが得られる。しかし、単位水量や単位セメント量が過大になると乾燥収縮率が大きくなってひび割れが生じやすくなるとともにセメントペーストやモルタル分の多いコンクリートとなって、打上りコンクリートの表面の品質が悪くなる。

(オ) このため、作業の容易さだけでワーカビリティーを評価するのではなく、ブリーディングや骨材の分離ができるだけ少なくなるようにするという条件も考慮しなければならない。

(カ) スランプは、打込み時のフレッシュコンクリートに要求される重要な品質項目の一つであるが、ここでいうスランプとは、荷卸し地点でのスランプである。スランプ18cmというのは、許容差を含めて考えればよく、その値は JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)の規定によれば±2.5cmである。

6.2.5 構造体コンクリートの仕上り

(1) コンクリート部材の位置及び断面寸法の許容差
(ア) コンクリート部材の位置及び断面寸法は、所定の許容差の範囲内になければならないが、これは次の理由による。

(a) 構造体としての耐力及び耐久性の確保
(b) 仕上げ二次部材又は設備等の納まり上の要求
(c) 美観上の要求

(イ) 部材の位置及び断面寸法の測定は、一般的には次のように行う。
特記された部材又はサンプリングした部材について、基準量からスケール等を用いて測定する。測定部分は両端及び中央の3箇所程度行う。

柱・梁等は直接測定できることが多く問題は少ないが、床・壁等の断面寸法は、両側から測定して計算で求めると測定誤差が大きくなることがある。そこで、開口部等を利用して直接測定する。

むやみに測定項目や測定数を増やすことは、測定費用や時間を要し、本来の目的から逸脱することになる。コンクリート部材の位置及び断面寸法は、型枠の変形等がなければ、型枠により決まるものであり、補修も困難であることから、コンクリート打込み前の型枠の設計・掛出し・組立等を確実に行うことが必要である。コンクリート打込み後は型枠の変形が生じたと見られる部分等について、確認のために測定する。

(ウ) (ア)及び(イ)に基づいて各部材の位置及び断面寸法を測定し、その結果、位置及び断面寸法の精度が「標仕」表6.2.3の許容値を満足しない場合は、「標仕」6.9.6に従って必要な措置を定め、監督職員の承諾を受けるとともに、適切な処置等を講じなければならない。

(2) コンクリート表面の仕上り状態
(ア) せき板に接するコンクリートの仕上り状態は特記によるが、コンクリートの打放し仕上げの場合は、「標仕」表6.2.4の種別に応じた「表面の仕上り程度」を目安とする。コンクリートの仕上り状態を良好にするには、不陸を少なくするために変形量の少ない型枠設計を行い、コンクリート打込みの際は、目違い等が生じないようにコンクリートの締固めを行うことが重要である。

(イ) コンクリートの仕上りの平たんさは、せき板に接する面は型枠の変形等により、せき板に接しない床上面等は左官の均し精度により決まる。

平たんさの測定方法には、「JASS 5」で定められたJASS 5 T-604(コンクリートの仕上がりの平たんさの試験方法)があるが、試験用器具が特殊で、取扱い方法も難しいため、一般的には下げ振り、トランシット、レベル、水糸、スケール等を使用して、コンクリート面の最大、最小を測定する方法等で行われている。
「標仕」表6.2.5の平たんさの種別は、仕上げの種類だけでなく、建物の規模や仕上り面に要求される見ばえ等によっても異なるので、適切な値を品質計画で提案させ、検討するとよい。

なお、平成31年版「標仕」では、平成28年版「標仕」の表6.2.5において示されていた「適用部位による仕上げの目安」、すなわち、具体的な「仕上げの種類」を削除し、「コンクリートの内外装仕上げ」と所定の「平たんさ」のみを示し、適用部位は特記することとした。

参考までに、平成28年版「標仕」の「表6.2.5 コンクリートの仕上りの平たんさの標準値」を下記に示す。

なお、セメントモルタルによる陶磁器質タイル張りについては、「標仕」15.3.5 (4)(イ)(a)?において、「外装タイルセメントモルタル張りの場合、コンクリートの表面の仕上がり状態は、表6.2.5[コンクリートの仕上りの平たんさの種別]のb種」と規定されている。

平成28年版「標仕」表6.2.5 コンクリートの平たんさの標準値(一部修正)

第6章 コンクリート工事 1節 共通事項(R4版)

第6章 コンクリート工事


1節 共通事項

6.1.1 一般事項
(1) この章は、工事現場施工のコンクリート工事に適用する。また、1章[各章共通事項]と併せて適用する。ただし、コンクリートを使用するものでも、PCカーテンウォールは17章、手すり、段板、ルーバー等の簡易なプレキャストコンクリート製品は20章による。

また、平成25年版「標仕」から、コンクリート工事の品質管理の向上等を目的に、主に次の変更が行われた。

(ア) 設計基準強度をコンクリートの要求品質の一つに位置付け、これを満足するための管理項目として、構造体に打ち込まれるコンクリートの強度と構造体コンクリートの強度を明示した。

(イ) 材料及び調合の条件を、コンクリートの品質項目や製造から外し、「コンクリートの材料及び調合」として独立させ、調合管理強度を満たすための条件として設計基準強度や構造体強度補正値との関係を含め、セメントや骨材等のコンクリート用材料ごとの事項を一つにまとめた。

(ウ) 普通コンクリートの一部として扱っていた「暑中におけるコンクリートの取扱い」は、新たに「暑中コンクリート」として節立てし、平成25年版から普通コンクリートの一般規定から独立させた。また、設計基準強度27N/mm2以上、かつ、 36N/mm2以下のコンクリートは、普通コンクリートの一般規定とは別に扱っていたが、普通コンクリートと同じ扱いとし、平成25年版から「高い強度のコンクリートの取扱い」を削除した。

(エ) 構造体コンクリートの仕上り状態及びかぶり厚さの確認並びにそれらの事項が所要の品質を満足しない場合の補修及びその後の検査を明記した。

(2) 作業の流れを図6.1.1に示す。

図6.1.1 コンクリート工事の作業の流れ(普通コンクリート)

(3) 施工計画書の記載事項は、概ね次のとおりである。なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。

(ア) コンクリート工事の施工計画書
工程表(配合計画書の提出、試し練り、型枠組立、コンクリート打込み、支柱取外し等の時期)
配合計画書、計画調合の計算書
(軽量コンクリートの気乾単位容積質量(「標仕」6.10.2(1))を含む)

コンクリートの仕上りに関する管理基準値、管理方法等
④ 仮設計画(排水、コンクリートの搬入路等)
打込み量、打込み区画、打込み順序及び打止め方法
⑥ 打込み作業員の配置、作業動線
⑦ コンクリートポンプ車の圧送能力、運搬可能距離の検討
⑧ コンクリートポンプ車の設置場所、輸送管の配置及び支持方法
⑨ コンクリート運搬車の配車
圧送が中断したときの処置
圧送後、著しい異状を生じたコンクリートの処置
打継ぎ面の処置方法
⑬ 上面の仕上げの方法(タンピング)
打込み後の養生(暑中、寒中)
コンクリートの補修方法
供試体の採取(採取場所、養生方法)
⑰ 試験所

(イ) 型枠工事の施工計画書
① 型枠の準備量
型枠の材料
型枠緊張材の種別及び緊張材にコーンを使用する箇所
④ コンクリート寸法図
(スケルトン、コンクリート躯体図、コンクリートプラン)
⑤ 基準部分の型枠組立図
型枠材取外しの条件(材齢又は構造計算により安全を確認する場合)
⑦ はく離剤使用の有無

6.1.2 基本要求品質

(1) コンクリートの「材料」に関しては、JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)に適合した材料が使用されており、JIS Q 1011(適合性評価-日本産業規格への適合性の認証-分野別認証指針(レディーミクストコンクリート))では、製造工場から提出される材料試験の結果によりその品質を確認することにしている。

(2) コンクリート部材の断面形状、寸法及び位置は、設計図書に建築物として必要な性能を有するように設計された値が指定されており、「標仕」6.2.5(1)による許容差の範囲に収まるように施工する必要がある。「標仕」表6.2.3では一般的な許容差の標準値を示しているが、この数値は本来建築物の機能、部位、仕上げの程度等によって変動するものであり、共通的に定まるものではない。例えば、石工事(「標仕」10.1.3(3)参照)や左官工事(「標仕」15.3.3(3)参照)等のようなコンクリート工事のあと工程となる仕上材料に要求される精度により、「標仕」表6.2.3をそのまま使えない場合もある。このため、工事ごとにこの許容差を定めるに当たっては、寸法誤差が生じた場合の影響度等も考慮して、「品質計画」において、適切な値を定める必要がある。

コンクリートは、全断面において均質なものとして設計されており、打ち上がったコンクリートはこれを満足させる必要がある。しかし、打ち上がったコンクリートの内部を確認することは非常に困難であり、表面の状態を確認することによって、内部の状態を推定することになる。一般的にコンクリート部材の内部と比べて表面付近は鉄筋や型枠等の影響で欠陥が生じやすくなる。このため、「標仕」6.1.2(2)では、「密実な表面状態」を要求事項とし、コンクリート内部の品質を含めて表面状態で確認することにしている。コンクリート表面に豆板等の欠陥がある場合には、コンクリートの耐久性や強度に影響を及ぼすため、「標仕」では、せき板取外し後にコンクリート表面を確認することにしている。「品質計画」においては、第一に密実なコンクリートを打ち込むための具体的な方法の提案をさせるとともに、もし、豆板等が発生した場合、その程度に応じた補修方法等を定めるようにする。この場合の補修方法については 6.9.6(2)を参考にするとよい。

(3) 建築物の構成部材としてのコンクリートの強度は、実際に出来上がった構造体コンクリートからコアを採取して試験によってその確認ができる。しかし、この方法は建築物を傷つけることになるため、新築建築物にあっては適切ではない。このため「標仕」6.2.2では、工事現場において構造体に打ち込まれるコンクリートと同ーのコンクリートを採取して、工事現場内で建築物と同様な温度条件となるように養生した供試体又は標準養生した供試体により、構造体コンクリートの強度を推定している。実際のコンクリートの強度は、柱、梁、壁、スラブ等の各部位によって強度の発現にばらつきがあることが分かっており、構造物のどの部位においても設計基準強度を満足させるため、調合設計において所定の補正を行うことにしている。「所定の強度を有する」とは、こういったことを勘案して、実際の構造体コンクリートの強度が設計基準強度を満足するように適切な養生を行い、供試体の強度から構造体コンクリートの強度を確認すればよい。

「構造耐力、耐久性、耐火性」等は、コンクリートに要求される重要な性能である。これらについては、一般に本章で説明する事項を実現することで必要な性能を得ることができるようになっているが、(2)で説明したように寸法の誤差や、部分的な欠陥の発生を完全になくすことは現実的ではない。このため、所要の「構造耐力、耐久性、耐火性」を満足させるための、寸法許容差や、欠陥が生じた場合の程度の判断基準及び補修方法をあらかじめ定めておくようにする。

5章 鉄筋工事 1節 一般事項

第5章 鉄筋工事 


1節 一般事項

5.1.1 適用範囲

(a) この章は,鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造等の鉄筋工事に適用されるほか、補強コンクリートブロック造やプレキャストコンクリート工事等でも引用されている。

(b) 作業の流れを図5.1.1に示す。

図5.1.1 鉄筋工事の作業の流れ

(c) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。ただし、継手の工法については「標仕」5.3.4(a)で標準としているガス圧接継手を対象として示す。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。

(1) 鉄筋工事の施工計画書

工程表
(材料、柱、壁、梁、階段スラブ等の検査時期及び関連設備工事の期間)
② 施工業者名、作業の管理体制
鉄筋の種別、種類、製造所名及びその使用区分
④ 規格品証書(7.2.10 (a)(1)参照)の提出時期
荷札の照合と提出時期(ラベル、鉄筋のマーク等の確認方法)
鉄筋の試験(試験所、回数、試験成績書)
⑦ 材料の保管場所及び貯蔵方法
⑧ 材料の加工場所(現楊又は工場の別、規格及び機械設備)
⑨ 鉄筋加工機具(切断、曲げ)
鉄筋の継手位置、継手長さ、定着長さ及び余長
異形鉄筋にフックを付ける箇所
鉄筋のかぶり厚さ及びスペーサーの種類
梁、壁、スラブ等の開口部補強、
屋根スラブ、片持スラブ、壁付きスラブ、パラペット等の特殊補強の要領

鉄筋位置の修正方法(台直し等)
⑮ 鉄筋組立後の乱れを防止する方法(歩み板の使用等)
⑯ 関連工事との取合い(柱付きコンセント、スラブ配管、壁配管、貫通孔等)
作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者.品質記録文書の書式とその管理方法等

(2)ガス圧接の施工計画書

① 工程表(圧接の時期)
② 施工業者名及び作業の管理体制
ガス圧接技技量資格者の資格種別等(資格証明書等)
④ ガス圧接技量資格者の人数
⑤ ガス圧接器具
圧接部の外観試験(全圧接部)
圧接部の超音波探傷試験(本数、試験方法、試験位置、探傷器、試験従事者、成績書)
圧接部の引張試験(本数、採取方法、作業班ごとの施工範囲、試験所、成績書、鉄筋切断後の補強方法)
不良圧接の修正方法


5.1.2 基本要求品質

(a) 鉄筋工事では,使用するコンクリートの強度との組合せにおいて必要な品質性能の鉄筋コンクリート構造物となるようにその種類が設計図書に指定される。基本要求品質としては、指定された種類の材料が工事に正しく使用され、その本数や配筋状態に誤りがなく、定着や継手が正しく施工されていることであり、このことを証明できるようにしておく必要がある。

具体的な例としては、使用する鉄筋材がJISマーク表示品であれば、ミルシート及びチャージ番号の表示された鋼板(メタルタック)並びに製造所、加工場から現場までの経歴を証明する資料を整備することが考えられる。

(b)「組み立てられた鉄筋は、所定の形状及び寸法を有し、所定の位置に保持されていること。」とは鉄筋コンクリート構造物の一部として出来上がった状態をいっており、これをコンクリート打込み後に確認することは現実的には不可能となる。完成時にこれらの要求事項を満足していることを証明するためには、施工途中の適切な時点で施工が正しく行われていることを何らかの方法で確認し記録することが重要である。

具体的には、鉄筋の加工段階での形状・寸法の確認・記録、組み上げた鉄筋のかぶり厚さの確認・記録等が考えられる。また、この寸法及び位置には施工上必要な許容誤差を含んだものとして考える必要があり、部材の大きさ立地条件、取り合う部材の状況等を勘案して適切に定める。ただし、「標仕」表5.3.6で規定する鉄筋の最小かぶり厚さは、法律に定められたものであり、これを下回ることのないようにしなければならない。

「鉄筋の表面は、所要の状態であること。」とは施工途中の、特にコンクリート打込み直前における鉄筋に、コンクリートとの付着性能を阻害するような油脂類、錆、泥、セメントペースト等が付着していない表面状態とすることであり、その程度を定める必要がある。具体的には、油脂類、浮き錆、セメントペースト類は、コンクリート打込み前に除去しておく必要があり、この付着物の程度、除去のための方法と処理後の確認方法をあらかじめ施工者に提案させ、また、確認したことを記録に残す。

なお、錆のうち、浮いていない赤錆程度のものについては、コンクリートとの付着を阻害することがないので、無理にこれを落とす必要はない。

(c) 鉄筋は、鉄筋コンクリートの構成部材として、主として引張力を負担しているが、部材に作用するこれらの力をスムーズに伝達させる必要がある。このために必要となる継手及び定着の方法が設計図書に指定されている。「標仕」においては、一般的な場合における継手及び定着の方法が示されており、通常は、定着の方法及び長さ、継手の位置及び長さを確保すればよい。特別な形状の部材にあっては、設計図書に特記されるため、これによる。

なお配筋の状況により、規定された定着や継手を設けることができない場合にあっては、「作用する力を伝達」できるような定着や継手の方法を施工者に提案させ、これを元に設計担当者と打合せを行うなどの方策をとらなければならない。

5.1.3 配筋検査

(a) 一般事項
(1) 材料の種類、鉄筋の加工・組立及びかぶり厚さの精度は、鉄筋コンクリートの構造性能及び耐久性に著しく影響する。このため、「標仕」5.1.3では主要な構造部の配筋はコンクリート打ちに先立ち監督職員が検査を行うこととしている。

(2) 鉄筋が完全に組み立てられたあとでは、修正が困難な場合があるので、工程の進捗に対応した適切な時期に検査を行う必要がある。

(3) 配筋検査終了後に埋込み配管が設けられる場合があるので、コンクリート打ちに先立ち、必要に応じて、再度検査を行う。

(b) 検査内容
(1) 組立時の確認
① 種別、径、本数
② 折曲げ寸法、余長、フック
③ 鉄筋のあき、かぶり厚さ
④ 定着・継手の位置、長さ
⑤ 補強筋、差し筋
⑥ スペーサーの配置、数量
⑦ ガス圧接継手の抜取試験(超音波探傷試験又は引張試験)
⑧ 機械式継手等の試験(全数又は抜取り)
⑨ 配管等の取合い

(2) 検査後の手直し修正確認

5章 鉄筋工事 2節 材料

第5章 鉄筋工事 


2節 材 料

5.2.1 鉄 筋

(a) 鉄筋は、形状から異形鉄筋と丸鋼に分けられる。また、製造原料の違いから鉄筋コンクリート用棒鋼と鉄筋コンクリート用再生棒鋼に分けられる。鉄筋コンクリート用棒鋼(JIS G 3112)は転炉、電炉又は平炉により鋼塊から熱間圧延によって製造され、鉄筋コンクリート用再生棒鋼(JIS G 3117)は鋼材製造途上に発生する再生用鋼材を材料としてこれらを再圧延して製造される。

(b) 鉄筋には、1こん包ごとに荷札が付けてあり、種別の記号、径又は呼び名、溶鋼番号(7.2.10(a)(1)(ⅱ)参照)、製造業者名等が表示される。

(c) 規格品証明書については,7.2.10(a)(1)(ⅱ)を参照する。

(d) 異形鉄筋の直径及び断面積は、その異形鉄筋と同じ質量の丸鋼に換算したときの直径及び断面積であり、これを公称直径及び公称断面積と呼んでいる。

(e) 主要構造部等に使用する鉄筋は、「建築物の基礎、主要構造部等に使用する建築材料並びにこれらの建築材料が適合すぺき日本工業規格又は日本農林規格及び品質に関する技術的基準を定める件」(平成12年5月31日 建設省告示第1446号)で、JIS G 3112及び JIS G 3117並びに国土交通大臣の認定品とされたが、「標仕」では、このうちから標準的に使用するものの種類の記号を、「標仕」表5.2.1に掲げている。

なお、鉄筋コンクリート用棒鋼に丸鋼も掲げられているが、現在ではほとんど使用されていない。

(f)「標仕」表5.2.1には、SD490が含まれていない。SD490が使用される場合には、折曲げ形状及び寸法並びに継手・定着長さ及び継手方法を含め、特記されることになる。

(g) 近年では、せん断補強として、高強度せん断補強筋が用いられることがある。これは、降伏点が685 N/mm2、785 N/mm2等の材料であり、せん断補強筋量を低減させることができる。また、梁貫通の補強筋としても、鉄筋径を低減させることができることから、使用されている。最近では、許容応力度 1,275N/mm2 の材料も用いられることがある。ただし、これらは大臣認定品であり、強度式とリンクしていることや折曲げ寸法についても注意が必要である。

(h) 異形鉄筋の圧延マークの例を図5.2.1に示す。


図5.2.1 異形鉄筋の圧延マークの例

(g) JIS G 3112(鉄筋コンクリート用棒鋼)の抜粋を次に示す。

JIS G 3112:2010

1.適用範囲

この規格は、コンクリート補強に使用する熱間圧延によって製造された丸鋼1)及び異形棒鋼1)について規定する。ただし、JIS G 3117に規定する鉄筋コンクリート用再生棒鋼には適用しない。
1) コイル状のものを含む。

3.種類及び記号
丸鋼の種類は2種類、異形棒鋼の種類は5種類とし、その記号は表1による。

表1- 種類の記号

5.化学成分
丸鋼及び異形棒鋼は、9.1によって試験を行い、その溶鋼分析値は、表2による。

表2-化学成分 a)

注a) 必要に応じて、この表以外の合金元素を添加してもよい。

6.機械的性質
丸鋼及び異形棒鋼は、9.2によって試験を行い、その降伏点又は耐力、引張強さ、伸び及び曲げ性は、表3による。

なお、曲げ性の場合は、その外側にき裂を生じてはならない。

表3 – 機械的性質

a) 異形棒鋼で、寸法が呼び名D32を超えるものについては、呼び名3を増すごとにこの表の伸びの値からそれぞれ2を減じる。ただし、減じる限度は4とする。

7.2.2 形状・寸法、質置及び許容差

異形棒鋼の形状、寸法、質品及び許容差は、次による。
a) 異形棒鋼の寸法は、呼び名で表しその寸法、単位質量及び節の許容限度は、表4による。

表4 – 異形棒鋼の寸法、単位質量及び節の許容限度

a) 公称断面積、公称周長、及び単位質量の算出方法は、次による。

なお、公称断面積(S)は有効数字4けたに丸め、公称周長( ℓ )は少数点以下1けたに丸め、単位質量は有効数字3けたに丸める。


b) 節の平均間隔の最大値は、その公称直径(d)の70%以下とし、算出した値を小数点以下1けたに丸める。
c) 節の高さは、表5によるものとし、算出値を少数点以下1けたに丸める。(表5省略)
d) 節のすき間の合計の最大値は、ミリメートルで表した公称周長( ℓ )の25%とし、算出した値を小数点以下1けたに丸める。ここでリブと節とが離れている場合、及びリブがない場合には節の欠損部の幅を、また、節とリブとが接続している場合にはリブの幅を、それぞれ節のすき間とする。

b) 異形棒鋼の標準長さは、表6による。ただし、コイルの場合には、適用しない。

表6 – 標準長さ

11.表 示

11.1 1本ごとの表示

丸鋼及び異形棒鋸の1本ごとの表示は,次による。ただし、丸鋼のコイル及び寸法が呼び名D4、D5、D6、D8の異形棒鋼のコイルの表示は、1結束ごとの表示とし、11.2による。

a) 丸鋼及び異形棒鋼は、表10によって種類を区別する表示を行う。ただし、異形棒鋼の種類を区別する表示は、SD 295Aを除き圧延マークによることとし、寸法が呼ぴ名D4、D5、D6、D8の異形棒鋼及びねじ状の節をもった異形棒鋼に限り、色別塗色としてもよい。

b) 異形棒鋼は、圧延マークによって製造業者名又はその略号による表示を行う。ただし、寸法が呼び名 D4、D5、D6、D8(コイルを除く。)の異形棒鋼及び異形表面の形状によって製造業者名が明確な異形棒鋼に限り、この表示を省略してもよい。

表10 – 種類を区別する表示方法

11.2 1結束ごとの表示
丸鋼及び異形棒鋼の1結束ごとの表示は、次の項目を適切な方法で行う。

a) 種類の記号
b) 溶鋼番号又は検査番号
c) 径、公称直径又は呼び名
d) 製造業者名又はその略号

JIS G 3112:2010

5.2.2 溶接金網

JIS G 3551(溶接金網及び鉄筋格子)抜粋を次に示す。

JIS G 3551 : 2005

1.適用範囲
この規格は、鉄線又は棒鋼を材料として、主にコンクリート構造物及びコンクリート製品の補強に使用する溶接金網及び鉄筋格子について規定する。

3.定 義
この規格で用いる主な用語の定義は次による。
a) 溶接金網
鉄線を直交して配列し、それらの交点を電気抵抗溶接して、格子状にした金網。次のレギュラー溶接金網及びデザイン溶接金網がある。

1) レギュラー溶接金網
網目形状が定められた正方形のもので、各縦線・各横線がそれぞれ定められた同一の線径又は公称線径をもち、輻1m × 長さ2m 及び 幅2m × 長さ4mの溶接金網。

2) デザイン溶接金網
レギュラー溶接金網以外のもの。

b) 鉄筋格子
棒鋼を直交して配列し、それらの交点を磁気抵抗溶接して、格子状にした鉄筋網。次のレギュラー鉄筋格子及びデザイン鉄筋格子がある。

g) 突出し長さ(overhang)
縦線又は横線の外側線の中心から、横線又は縦線の先端までの長さ。次の横線突出し長さ及び縦線突出し長さがある。

1) 横線突出し長さ
縦線の外側線の中心から横線の先端までの長さ(図1参照)。

2) 縦線突出し長さ
横線の外側線の中心から縦線の先船までの長さ(図1参照)。

h) 網目寸法(spacing)
隣接した縦線又は横線の中心から中心までの距離。次の横網目寸法及び縦網目寸法がある。

1) 横網目寸法 縦線の中心から隣の縦線の中心までの距離(図1参照)。
2) 縦網目寸法 横線の中心から隣の横線の中心までの距離(図1参照)。


図1 溶接金網又は鉄筋格子(例)

8.寸法,質量及びその許容差
8.1 標準線径,標準公称線径,標準径及び公称直径並びにそれらの許容差
a) 溶接金網
1) 丸鉄線
丸鉄線を用いた溶接金網(WFP、WFC、WFP-D及びWFC-D)の縦線及び横線の標準線径は,表5による。また、線径の許容差は、表6による。(表6は省略)
表5 溶接金網に用いる丸鉄線の標準線径

8.4 網目寸法及びその許容差
a) レギュラー溶接金網及びレギュラー鉄筋格子
レギュラー溶接金網及びレギュラー鉄筋格子の網目寸法は、表9による。また、標準線径、呼び名又は標準径に対する網目寸法は、それぞれ表10、表11、表12及び表13による。また、網目寸法の許容差は、網目寸法に対して±10mm又は7.5%のうち、いずれか大きい値とする。(表10~13は省略)

b) デザイン溶接金網及びデザイン鉄筋格子
デザイン溶接金網及びデザイン鉄筋格子の網目寸法の許容差は、それぞれ網目寸法に対して±10mm又は7.5%のうち、いずれか大きい値とする。

表9 レギュラー溶接金網及びレギュラー鉄筋格子の網目寸法

JIS G 3551 : 2005


5.2.3 材料試験

「標仕」5.2.3は、鉄筋の品質を試験により証明する場合について定めたものであるが、この規定によりJISに適合することを証明するためには、機械的性質だけでなく、化学成分等を含めてその適合性を確認しなければならない。このため、JIS規格品以外でこの品質を確認することは現実的でないことが多く、一般的には,JISに適合することを証明する資料のある製品を使用することになる。

5章 鉄筋工事 3節 加工及び組立

第5章 鉄筋工事 


3節 加工及び組立

5.3.1 一般事項
(a) コンクリートと鉄筋の組合せは、強度のバランス等を考慮して決められる。参考として、コンクリートと鉄筋の組合せの例を表5.3.1に示す。

なお、現在丸鋼は、ほとんど使用されていないので、異形鉄筋に限定して示されている。

表5.3.1 コンクリートと鉄筋鉄骨の組合せの例

鉄筋の加工及び組立に関する規定は、(-社)日本建築学会「鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説」2010年版(以下、この節では「RC規準(2010)」という。)、同「JASS 5 鉄筋コンクリート工事」2009年版(以下、この章では「JASS 5 (2009)」という。)並びに同「鉄筋コンクリート造配筋指針・同解説」2010年版(以下、この節では「配筋指針(2010)」という。)に基づいて平成22年版「標仕」の改定時に大幅に見直されており、平成25年版「標仕」の規定も平成22年版を基本的に踏製している。

(b) 熱間圧延鉄筋でも白熱化して空気中で冷却すると鉄筋の性質が変わるので、曲げ加工の場合でも、原則として常温で加工することとしている。

(c) 冷えている鉄筋に点付け溶接を行うと、急熱、急冷されるので焼入れ(7.2.1(b) (5)参照)を行ったことになることから、熱影響部(7.6.7 (k)(2)参照)が著しく硬化し、鉄筋がもろくなり、この部分を少し曲げただけでひび割れが発生する場合があるので、「標仕」ではこれを禁止している。また鉄筋にアークストライクを起こすと 断面欠損が生じたり、局部的な急熱急冷による悪影響があるので、「標仕」ではこれを起こしてはならないとしている。

なお、溶接金網等で鉄筋の交点を電気抵抗溶接としたものは、点付け溶接とは見なさない。

5.3.2 加 工

(a) 鉄筋の切断は、一般にはシャーカッターや電動カッターにより行われているが、ガス圧接や特殊な継手では、切断面の平滑さや直角度が要求されるため、電動カッターや鉄筋冷間直角切断機等を使用することが望ましい。施工済みの鉄筋の手直しや不要な鉄筋の除去のために現場でやむを得ず鉄筋をガス切断する場合は、周囲の鉄筋やコンクリートを傷めないように慎重に施工を行う。ガス切断した鉄筋を溶接継手や機械式継手により再接合する場合は、鉄筋の切断面をグラインダー等で平滑に成形する。

なお、圧接端面となる場合はガス切断を行ってはならない(5.4.5 (b)参照)。

(b) フック及び定着の処置は次による。
(1) 異形鉄筋の柱主筋の継手部で、法規上では不要な図5.3.1の◉印の場合にも「標仕」においてフックを付けることとしているのは、組立のときの間違いや設計変更改修工事等で壁がなくなった場合の混乱を防ぐためである。
※●の出隅部分の継手は建築基準法施行令でフック付き必須

(2) 異形鉄筋の梁主筋の継手部で、図5.3.2の◉印の場合も、(1)と同じ理由から「標仕」ではフックを付けることにしている。
※●の出隅部分の継手は建築基準法施行令でフック付き必須


図5.3.1 柱主筋


図5.3.2 梁主筋

(3) 「標仕」5.3.2(b)(2)の梁主筋の末端部にフックを付ける規定は、図5.3.3のように梁内に継手部がある場合に適用される。


図5.3.3 梁主筋

(4) 柱及び梁の出隅は、火災時に二方向から加熱され、角がはく落しやすく、フックがないと鉄筋の付着効果が期待できなくなるので、建築基準法施行令第73条には上記(1)、(2)及び(3)の内容の規定がある。

(5) 「標仕」5.3.2(b)(1)では、鉄筋の組立の作業性を考慮して、最上階の柱頭の柱主筋のうち、フックを付けるのは四隅だけとしている。ただし、丸柱の場合は四隅に相当する部分がないので、フックなしで定着長さが確保できるならばフックを付ける必要はないが、配筋に無理がなければ、フックを付ける方が望ましい。

(6) 帯筋やあばら筋等のせん断補強筋は、末端部にフックを設ける。ただし、鉄筋の末端部を相互に突合せ電気抵抗溶接した閉鎖型のせん断補強筋を用いる場合はこの限りでない。

なお、溶接閉鎖型せん断補強筋の適用箇所や仕様等は設計図書の特記による。

(c) 鉄筋の折曲げ形状及び寸法は「標仕」表5.3.1による。以前は鉄筋の末端部と中間部を区分して折曲げ形状及び寸法を規定していたが、平成22年版「標仕」の改定時に,JASS 5 (2009)に基づいて末端部と中間部の区分をやめて「標仕」表5.3.1のように一本化しており、平成25年版「標仕」もこれを踏襲している。

なお、鉄筋中間部の90゜未満の折曲げ内法直径は、「標仕」表5.3.1の対象外となるために設計図書の特記によることとなっている。

(d) 高強度せん断補強筋の加工は次による。
(1) 鉄筋の折曲げ形状・寸法は、指定性能評価機関の審査を受けて評定等の技術評価を取得した設計施工指針に従う。

(2) 鉄筋の切断や折曲げ、閉鎖形筋の溶接等の加工は、上記の設計施工指針が対象とする製造工場又は加工工場で行う。その他の作業場や現場では、高強度せん断補強筋の加工を行ってはならない。

5.3.3 組 立

(a) スペーサーは、鉄筋のかぶり厚さを保つために極めて重要なものであり使用部位や所要かぶり厚さに応じて、スペーサーの材種や形状・サイズを使い分けることが大切である。

(b) 市販のスペーサーは、鋼製、合成樹脂製等があるが、「標仕」で、スラブのスペーサーを原則として鋼製としているのは、コンクリート打込み時の鉄筋の脱落等を考慮したためである。

(c) 断熱材打込み部では、普通のスペーサーでは断熱材にくい込み、かぶり厚さの確保が難しいので、めり込み防止の付いた専用スペーサーを用いる。

(d) 下端が打放し仕上げとなる場合のスラブ用スペーサーは、露出面が大きくならないようなものを使用する。また、インサート類の見え掛りとなる部分には調合ペイント又は錆止め塗料を塗り付けるよう「標仕」6.8.6(c)で規定されている。

(e) 「標仕」5.3.3では、型枠に接する部分に防鋳処理を行ったスペーサーを使用することにしている。

なお、防錆処理されたスペーサーには、次のようなものがある。

(1) 「標仕」表14.2.2のC種(JIS H 8641(溶融亜鉛めっき)で2種HDZ35)以上の防錆処理したもの。ただし、海岸等腐食が激しいところで使用する場合には検討が必要である。

(2) 鋼製のものにプラスチックコーティング又はプラスチックパイプを挿入したもの。

(f) 一般に使用されているスペーサーを表5.3.2に示す。
このほかに、梁底、基礎底等に使用するコンクリート製のスペーサーがある。

なお、モルタル製のスペーサーは、強度及び耐久性が十分でないおそれがあるので使用しない。

表5.3.2 スペーサー

(g) 結束線の端部は、かぶり厚さを確保するために内側に折り曲げる。

(h) 柱筋、壁筋等の端部で、安全管理上必要な箇所には、プラスチック製のキャップ等で保護する。

(i) コンクリート打設後の鉄筋の位置が設計図書どおりであり所定のかぶり厚さが確保されるように施工を行う。コンクリート硬化後の鉄筋の位置ずれ修正(台直し)は、その反力によって鉄筋周囲の既設コンクリートを傷めやすいため、原則として行わない。そのため、平成25年版「標仕」では、平成22年版「標仕」5.3.3 (b)の「前に打ち込まれたコンクリートから出ている鉄筋の位置を修正する場合は、鉄筋を急に曲げることなく、できるだけ長い距離で修正する」の記述が削除されており、鉄筋の位置ずれを生じた場合は、極力、台直し以外の是正方法を検討する。やむを得ず現場で台直しを行う場合は、その折曲げ勾配を1/6以下としてできる限り緩やかに曲げて、既設コンクリートを傷めないように慎重に施工する。

5.3.4 継手及び定着

(a) 建築基準法施行令第73条では鉄筋の継手及び定着に関連して、第2項が「主筋又は耐力壁の鉄筋の継手の重ね長さは、……継手を引張り力の最も小さい部分以外の部分に設ける場合にあっては、主筋等の径の40倍以上」と規定しており、同第 3項が「柱に取り付けるはりの引張り鉄筋は、……柱に定着される部分の長さをその径の40倍以上」と規定している。平成19年の施行令改正により、これらに該当する部分の継手や定着の長さは,設計者が保有水平耐力計算等を行い、平成19年国土交通省告示第594号第4の四に基づく検討を行ったうえで特記する場合を除いて施行令第73条の仕様規定が適用されることとなった。

平成22年版「標仕」では、これらの仕様規定とJASS 5 (2009)に準拠して継手及び定着の長さが定められていた。一方、施行令第73条第3項の規定に対しては、「鉄筋コンクリート造の柱に取り付けるはりの構造耐力上の安全性を確かめるための構造計算の基準を定める件」(平成23年4月27日国土交通省告示第432号)によって、「柱に取り付けるはりの引張り鉄筋の付着力を考慮して当該鉄筋の抜け出し及びコンクリートの破壊が生じないことが確かめられた場合においては」適用しなくてよいこととされ、その構造計算の基準としてRC規準(2010)が挙げられている。そのため、平成25年版「標仕」5.3.4 (e)では、柱に取り付ける梁の引張り鉄筋の定着の長さに関する規定のうち、「40d(軽量コンクリートの場合は50d)」という仕様規定が削除されている。

(b) 鉄筋の継手工法としては、重ね継手、ガス圧接継手のほか、施行令第73条第2項のただし書き及び「鉄筋の継手の構造方法を定める件」(平成12年5月31日建設省告示第1463号)に規定される機械式継手と溶接継手があり、「標仕」では適用を特記することとしている。

ガス圧接継手については4節、機械式継手及び溶接継手については5節を参照されたい。

鉄筋工事に使用する材料は、一般にJIS G 3112(鉄筋コンクリート用棒鋼)に規定されているSD295AとSD345があるが、このうちSD295Aは、一般の壁筋、スラブ筋、帯筋、あばら筋等の細物に使用されており、一般の建築物の柱・梁の主筋については通常SD345が使用される。官庁営繕部においては従来よりこの考え方で鉄筋の使い分けがされている。また、最近ではSD390を主筋に用いる例も増えている。

鉄筋の継手工法については、工事の規模、施工場所の地理的条件等を勘案して特記によることとしている。

また、鉄筋の継手は、原則として部材応力の小さいところに設けるものとし、その位置は特記による。

(c) 鉄筋の重ね継手は次による。
(1) 柱及び梁の主筋並びに耐力壁の鉄筋の重ね継手の長さは、特記による。特記がない場合、耐力壁の鉄筋の重ね継手長さは、40d(軽量コンクリートの場合は 50d)と「標仕」表5.3.2の数値(軽量コンクリートの場合は 5d 加算した数値)のいずれか大きい方とする。

(2) (1)以外の鉄筋の重ね継手長さは、「標仕」表5.3.2による。同表は平成22年版「標仕」改定時にJASS 5 (2009)に準拠して改定されており、重ね継手の長さをフックの有無によってL1とL1hに区別して表記している。重ね継手の長さは、フックなしのL1が鉄筋の先端間距離、フックありのL1hが鉄筋の折曲げ開始点間の距離としており、いずれも異形鉄筋の呼び名 d の整数倍としている。L1とL1hの長さの規定は、鉄筋の種類とコンクリート設計基準強度の区分によって細分化されている。軽量コンクリート部材の場合は、従来どおりに普通コンクリートの数値に 5d 加算した継手長さとするが、JASS 5 (2009)では上端筋の重ね継手はフックありを原則としていることに注意する必要がある。

(d) 重ね継手や、ガス圧接継手等では、継手をある箇所に集中して設けるとその部分のコンクリートのまわりが悪くなり構造上の弱点となるおそれがある。そのため、「標仕」表5.3.3 では隣り合う継手は、細径の壁筋、スラブ筋を除き継手位置をずらすこととしている。しかし、最近施工例が増えている鉄筋先組み工法等の柱・梁主筋の場合は、特記により継手位置を同一箇所に設ける場合もある。先組み工法では、ガス圧接継手や機械式継手等が用いられるが、いずれの場合も施工上から、同一位置で全数継ぎとならざるを得ない場合がある。この場合は、鉄筋とコンクリートの断面積比の急変による応力集中やコンクリートの充填性等について、十分に検討されていることが重要である。

(e) 鉄筋の定着は次による。
(1) 柱に取り付ける梁の引張り鉄筋の定着の長さは、「標仕」表5.3.4によるが、定着長さL1とL1h又はL2とL2hの適用箇所は特記による。梁の引張り鉄筋は.常時に引張力が作用する上端筋だけでなく、地震時に引張力が作用する下端筋も適用対象となる。

(2) (1)以外の鉄筋の定着の長さは、「標仕」表5.3.4によるが、定着長さL1とL1h又はL2とL2hの適用箇所は特記による。同表では、定着長さをフックの有無によってL1とL1h、L2とL2h、L3とL3hに区別して表記しており、平成22年版の数値を踏襲している。また、軽量コンクリート部材の鉄筋の定着長さを普通コンクリートの数値 + 5dとしているのも平成22年版と同様である。このうち、割裂のおそれのない箇所への定着長さL2とL2h並びに小梁・スラブの下端筋の定着長さ L3とL3h(小梁の下端筋でフックありの定着長さ)は、JASS 5 (2009)の定着長さに基づいている。これら以外の定着長さL1とL1hは、それぞれ L2、L2hよりも長い定着が必要な箇所に用いることとし、適用箇所は特記による。

なお、適用箇所の例は、国土交通省大臣官房官庁営繕部監修「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)」の巻末資料の各部配筋参考図に示されているので、参照されたい。

定着長さの測り方は、「標仕」図5.3.2による。直線定着の長さL1、L2、L3 は、定着起点(通常は仕口面)から鉄筋先端までの距離、フックあり定着の長さL1h、L2h、L3hは、定着起点から鉄筋の折曲げ開始点までの距離とする。フックありの場合の折曲開始点から鉄筋先端までの距離は、フックとして取り扱い、定着長さには含めない。90゜折曲げ定着の場合も同様であり、定着起点から鉄筋の折曲げ開始点までの距離を定着長さとし、それ以降の部分は90°フックとして扱う。

(3) 仕口内に90゜折曲げ定着する場合で、定着起点(仕口面)から折曲げ開始点までの距離Lが、「標仕」表5.3.4のフックあり定着の長さ未満となる場合の鉄筋の定着方法は「標仕」図5.3.3による。すなわち、梁主筋の柱内への折曲げ定着の場合は、仕口面から鉄筋先端までの全長が「標仕」表5.3.4の直線定着長さL2以上、余長が8d以上、仕口面から鉄筋外面までの投影定着長さが「標仕」表5.3.5のLa以上とする。

なお、梁主筋の投影定着長さLaは、原則として柱せいの3/4倍以上とする。

小梁・スラブの上端筋の梁内への折曲げ定着の場合は、仕口面から鉄筋外面までの投影定着長さが「標仕」表5.3.5のLb以上であるほかは、梁主筋の定着の場合と同様に、全長がL2以上、余長が8d以上とする。

なお、小梁・スラブの上端筋を壁内や幅の狭い梁内に定着する際に投影定着長さが「標仕」表5.3.5のLb未満となる場合は、RC規準(2010)に従って算定された投影定着長さの特記によるか、特記がない場合は、配筋指針(2010)に従って鉄筋の余長を直線定着長さL2以上とする。この場合は、鉄筋の投影定着長さを8d以上、かつ、150mm以上とすることが望ましい。

(4) 「標仕」では規定されていないが、機械式定着具を用いる場合の仕様や定着長さは特記による。機械式定着具は、指定性能評価機関による審査を受けて評定等の技術評価を取得した設計施工指針に従って施工する。

(f) その他の鉄筋の継手及び定着は「標仕」5.3.4 (f)による。

5.3.5 鉄筋のかぶり厚さ及び間隔

(a) 鉄筋のかぶり厚さ
(1) 「標仕」表5.3.6に規定される鉄筋の最小かぶり厚さは、建築基準法施行令第 79条に規定されるかぶり厚さを基本とし、仕上げなし(柱・梁・耐力壁では屋外で仕上げなし)の場合は10mm加算した数値としている。かぶり厚さが小さいと、火災時に部材の構造耐力が低下したり、過大なたわみや変形を生じたりするほか、地震時に鉄筋のコンクリートに対する付着性能が低下し、付着割裂破壊等の脆性破壊を生じたりする。また、コンクリートの中性化がかぶり厚さ以上に進行すると、酸素と水分の作用によって鉄筋が腐食されやすくなる。このように鉄筋のかぶり厚さは、部材の耐火性、耐震性、耐久性に重大な影響を与えるので、建物の全体において守られていないと重大な欠陥を生じることになる。

(2) 「標仕」5.3.5(b)では、鉄筋の加工及び組立においては最小かぶり原さを確保するために、施工誤差を考慮し、施工に当たっては柱・梁等の鉄筋かぶり厚さの最小値に 10mmを加えて(主筋を10mm内側に入れて)「加工」することとしている。ここでは、加工に用いるかぶり厚さの「最小の基準寸法」は定めているが、「最大の寸法」は規定していない。これは、梁と梁、梁と柱等の主筋が交差することによって生じる必然的な位置のずれが避けられないためである。

ただし、かぶり厚さが必要以上に大きいと、構造上の重大な欠陥となる場合があるので、施工図等で十分検討された鉄筋の位置について精度を確保することが重要である。特に、スラブ筋(端部上端筋,中央下端筋)、片持スラブの上端筋、地下外壁、断面の小さい部材等でかぶり厚さを規定以上に大きく取ることは、重大な欠陥の原因や鉄筋相互のあきが確保できないなどのおそれがある。鉄筋の納まりにより配筋位置が下がる場合は、設計担当者と打ち合わせて、構造安全性が確保されるようにしなければならない。

なお、JASS 5(2009)では、計画供用期間の級に応じて構造部材・非構造部材の設計かぶり厚さが規定されており、鉄筋工事においては、設計かぶり厚さを目標に鉄筋の加工・組立を行い、鉄筋組立完了時に最小かぶり厚さ以上を確実に確保することとしている。

(3) 柱、梁筋のかぶりは、図5.3.4のように主筋の外周りを包んでいる帯筋、あばら筋の外側から測定する。

なお、図中の最小かぶり厚さに加える10mmは、施工誤差の標準値である。


図 5.3.4 かぶり厚さ

(4) 異形鉄筋で D29以上の太物を使用する場合は、付着割裂破壊を考慮し、「標仕」5.3.5(a)では、主筋のかぶり厚さを径の1.5倍以上としている。

なお、RC規準(2010)では、コンクリートのかぶり厚さが鉄筋の径の1.5倍未満の場合には、許容付着応力度を(かぶり厚さ)/(鉄筋径の1.5倍)の数値を乗じて低減することとしているので、主筋に限らず部材の最外縁の鉄筋径が、「標仕」表5.3.6の最小かぶり厚さの 2/3倍以上の場合には、設計担当者と打ち合わせて、当該箇所のかぶり厚さを指示する必要がある。

(5) 海に近い場合で海塩粒子の浸透を考慮する場合や、コンクリートの劣化を促進させる物質のある場合等は、特記により「標仕」表5.3.6の最小かぶり厚さを割り増しする場合もあるので注意する。

なお、コンクリート中に鉄筋に有害な塩化物が含まれる場合のかぶり厚さの割増しは、6.3.2(2)⑦を参照する。

(6) 鉄筋のかぶり厚さは、仕上げの有無、屋内と屋外、また、土に接しているかどうかにより異なる。このため、同一部材であっても部分的に必要かぶり厚さの異なる場合があるので、あらかじめ、施工図等によりかぶりの取り方を十分検討しておく。

図5.3.5及び6に柱脚及び外周に面する場合を示す。


図5.3.5 土に対する柱筋の鉄筋のかぶり


図5.3.6 外周に面する梁筋のかぶり

(7) 図5.3.7に示す打継ぎ目地部分は、シーリングが長時間たつと劣化することや温度変化や乾燥収縮が起こりやすいことから仕上げなしと見なして、目地底よりかぶりを確保する。


図5.3.7 打継ぎ目地部分のかぶり厚さ

(8) 近年は主筋のみでなく、あばら筋、帯筋にも機械式継手を用いる例が見られる。機械式継手等を用いた場合、継手部にて最小かぶり厚さが決まることがあるので注意が必要である。

(b) 鉄筋相互のあき及び間隔
(1) 鉄筋相互のあきは、粗骨材の最大寸法の1.25倍、25mm及び隣り合う鉄筋の平均径(呼び名の数値)の1.5倍のうち最大のもの以上とする。

(2) 鉄筋の間隔は、(1)によるあきに鉄筋の最大外径を加えたものとする。(「標仕」図5.3.6参照)

なお、異形鉄筋の最大外径(D)は、表5.3.3及び図5.3.8による。


図5.3.8 異形鉄筋の公称直径と最大外径

表5.3.3 異形鉄筋の径(mm)

5.3.6 鉄筋の保護

(a) スラブの上端筋の下がり及び乱れが多く見られるが、これは構造耐力上危険である。

特に、コンクリートポンプによる打込みの際の乱れが多いので注意する。コンクリート打込みに際しては、直しの鉄筋工を配置する。道板等を用いて直接鉄筋の上を歩かないようにするとともに、配筋の下がりを防止するために一般のスラブにおいても、四周の上端に受け筋(D13)を配置することが推奨される。ただし、受け筋の位置にDl3の主筋がある場合には,それを兼用してよい。

一般に、スラブ筋の乱れの原因については、次のような場合が考えられる。

(1) スペーサー等の数が不足している場合
(2) スペーサーが確実に取り付けられていない場合
(3) スラブ配筋後、材料を鉄筋上に直接置く場合
(4) 設備配管等を行うことにより乱される場合
(5) コンクリートの打込み中に乱される場合(コンクリート輸送管の揺れ、ホースの移動、コンクリートの運搬、歩行等)

なお、他の部材に比べてかぶり厚さが少なく厳しい精度が要求されるスラブ配筋では、連続バーサポートを利用する方法もある。また、スラブ筋はコンクリート打込み等の作業時に乱されるおそれがあることからも連続バーサポートは有効と考えられる。

(b) 硬化し始めたばかりのコンクリート中の鉄筋に振動を与えると、付着力が低下するので振動を与えないように注意する。

(c) スペーサーの個数は、表5.3.4を標準とする。また、スラブ下端筋の梁際は、かぶり厚さが足りなくなることが多いので注意する。

表5.3.4 スペーサーの個数の標準

5.3.7 各部配筋

平成19年版「標仕」では、特記がない場合の各部配筋は別図によることとされていたが、平成22年版以降は各部配筋は特記によることされ、別図が削除されている。代わりに、国土交通省大臣官房官庁営繕部監修「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)」の巻末資料に各部配筋の参考図が掲載されているので、必要に応じて参照されたい。