1級建築施工管理技士 設備工事 太陽光発電パネル設置時の注意点

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95)太陽光発電パネル設置時の注意点

太陽光発電は再生可能エネルギーとして注目され、また余剰電気の買取り制度もあって、太陽光発電パネルが屋根や屋上に多く設置されるようになったが、強風による飛散や雨漏りがあってはならない。既存建物への太陽光発電パネルの設置は建築確認は不要であるが、建築基準法上の建築設備に該当するため、建物の高さに算入され、斜線制限や日影などの規制を受ける。

1.太陽光発電パネルは強風で飛散させない

太陽光発電パネルの架台は、構造耐力上主要な部分(機械基礎)に緊結する。(国土交通省告示第1447号)太陽光発電パネルにかかる風圧力は、建築の屋根として建築基準法告示によって算定し(018 風圧力の算定 参照)、支持構造部(以下架台)や基礎の設計は構造設計者の確認が必要である。

2.将来の防水メンテナンスを考慮する

太陽光発電パネルの寿命は約30年と言われている。防水は、一般的に10年保証されているが、10年経たなくても部分的にメンテナンスをすることもあれば、10年以上経ってから全面防水改修をすることもある。太陽光発電パネルを外さなくてもメンテナンスできるように独立型機械基礎とする。

3.既存建物屋上に太陽光発電パネルを設置する場合

既存建物の屋上に設置するときも、風圧力算定や構造耐力上主要な部分に緊結することや防水上の配慮は新築と同じである。既存建物の荷重条件や、防水仕様などによって条件がつくことになる。既存躯体から新たにコンクリートの機械基礎を立ちげて太陽光発電パネルの架台をアンカーボルトで固定するのが原則である。

独立型機械基礎に設置

防水層の保護コンクリートにあと施工アンカーで直接架台を取り付けるのは、既存防水層を貫通し漏水の原因となるだけでなく、保護コンクリートの強度やアンカーボルトの引抜き強度と耐久性に不安があるので採用しない。どうしても保護コンクリートの上で支持する場合は、風圧力に対して十分な強度と耐久性を満足する置き基礎とする。置き基礎は構造耐力上主要な部分と同等以上とみなすだけの荷重およびアンカーボルトの耐力が必要で、かつ既存躯体の荷重条件を満足するものとする。

防水保護層と一体置き基礎

太陽光発電パネル設置に対応した、メーカー既成の基礎や防水と一体になった基礎もある。採用に当たっては構造設計者も含めて十分に検討することが必要である。

4.太陽光発電パネルの反射光被害

2012年4月、横浜地裁で、屋根に載せた太陽光発電パネルからの反射光が隣家の受忍限度を超えるまぶしさであると認定され、太陽光発電パネルの撤去を命じた判例がある。太陽光発電パネル設置による反射光が、近隣に対する恐れがある時は、あらかじめ検討し、設置後の角度調整等もできるようにしておく。


置き基礎のパネル設置例


折板屋根のパネル設置例

1級建築施工管理技士 設備工事 空調設備性能発揮のポイント

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96)空調設備性能発揮のポイント

空調設備機器が所定の性能を発揮しないとクレーム対象となる。建築をデザイン重視で納めても、性能を発揮できなければ建築を使っている人にストレスを与えてしまう。また、計画建物が隣接ビルの臭気の影響を受けたり、あるいは悪影響を与えたりすることもクレーム対象である。

1.空調屋外機は熱交換できる空間を確保する

空調屋外機は配置で熱交換効率が変わる。意匠的に空調屋外機を外部から見えないように目隠し壁で囲ったり、狭いスペースに押し込んで配置したりすると空気がショートサーキットを起こし、熱交換効率が悪くなる。設計段階で検討しておくべきことであるが、竣工後に設備機器が性能を発揮できなかった場合は、屋外機にフードを付けたり、目隠し壁に開口を設けたりする対策が必要である。工事着手段階で設備機器の配置について十分に検討し、機器の性能が十分に発揮できる配置とする。


空調屋外機の配置

2.空調設備の給排気エアバランスが重要

事務所ビルで扉が閉まりにくい、または扉が重くなって開けにくいという事例や共同住宅で共用廊下側の玄関扉が重たくて開けられないといった事例がよく発生している。これはすべて空調設備のエアバランスが調整されていないためである。この現象は扉に必要な開口面積のドアガラリやアンダーカットを設けることで解消できる。遮音性能や防火性能を求められる扉の場合は空調設備として建築基準法に適合させた天井バスダクト(吸音ダクト)等を設けるとよい。


エアバランス


3.隣接建物の給排気口、煙突、冷却塔等の配置を確認する

計画建物の給排気口は煙突の配置計画によっては、騒音・振動・臭気や熱風等の影響を隣接建物から受けたり、与えたりする。計画建物の給気口と排気口を離隔しショートサーキットを避けるのは当然であるが、隣接建物との影響を確認し計画することも重要である。また、建物が敷地いっぱいに計画される場合、隣地への騒音・振動に対する配慮も必要である。( 089)近隣の環境に配慮する 参照


隣接建物の給気口との調整

1級建築施工管理技士 設備工事 エレベーターの注意点

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97)エレベーターの注意点

エレベーター、エスカレーターの設置は建築基準法及び国土交通省告示の他「昇降機技術基準の解説」(日本エレベーター協会)による基準を守り、建築確認申請が必要である。機械室が不要のエレベーターではエレベーターシャフトの上部に煙感知器を設けなければならない。設置場所によっては点検しにくい場合がある。

1.人にやさしいエレベーター

エレベーターはほとんど規格品が採用されて、内装など個性がなくなってきている。かごの内装は快適でビルの個性を活かしたものにしたい。石張りであればかご荷重に見込んでおく必要がある。かご内に手すりを設けると安心感がある。車椅子利用者にもやさしいように鏡を設けたい。鏡は設置のしかたでかご内を広く見せることもできる。かご内の停止階ボタンは入口の両側に設置したい。トップクリアランスとの関係もあるが、天井はできるだけ高くし、照明は間接照明で色温度3500K(温白色)がやさしくてよい。
エレベーターの扉はビルの中の玄関でもある。乗り場の枠とともにデザインしたい。枠は扉幅より広くして乗降しやすいのが良い。エレベーターホールの呼びボタンのプレートは周囲の壁を汚さないように大きめにしたい。

2.エレベーターシャフトの煙感知器

集合住宅や規模の小さいビルではエレベーター機械室のないエレベーターが多く使われている。この機械室レスエレベーターはトップクリアランスの上部に煙感知器を設け、エレベーターシャフトの外側から点検ができなければならない。エレベーターシャフトの頂部が梁で囲われている場合、点検が困難な場合もある。あらかじめエレベーターの確認申請を提出する前に点検が可能であることを確認しておく。
天井ふところの中に煙感知器の点検口を設けることができれば、エレベーターメーカーの既製品(点検口を開ければ煙感知器が一緒に出てきて点検が容易なタイプ)を採用することができる。


EVシャフトの煙感知器

3.外部エレベーターはシャフト内に雨を入れない

外部にエレベーターを設置する場合、雨がシャフトに入らないようにすることが重要である。台風などの強風時の雨を想定して、広い庇と防風スクリーンを併用し、入口前には排水溝を設けなければならない。かごの床も滑らない仕様にするなどの配慮が必要である。


外部EVの乗り場

1級建築施工管理技士 設備工事 エスカレーターの安全確保策

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98)エスカレーターの安全確保策

エスカレータに挟まれたり、エスカレーターから落下したり、乗り降りの時につまづいたりする事故がある。東日本大震災後の余震でショッピングセンターのエスカレーター本体が落下する事故も発生した。

1.乗り込みやすいエスカレーター

エスカレーターの昇降スピードも駅や病院等の不特定多数の人が利用する施設に設置する場合は、規格型の標準スピード 30m/分の機種を採用するのではなく、転倒防止や安全対策を施した15〜20m/分のスピードの機種を採用する。また、乗込みステップの長いものの方がお年寄りや子供にやさしい。
屋外に設置するエスカレーターは屋根が設けてあっても雨の吹き降りにより床が濡れ、滑って転倒する恐れがある。乗降場の防滑に配慮した床仕上げ材の選択と床排水を確実に行う必要がある。

2.挟まれ防止

エスカレーターの移動手すりと建物の壁や天井との間に生じる三角部に人が挟まれる事故を防ぐため、固定式保護板の取付けが義務付けられた(2000年6月 建築基準法改正)。改正以前は可動式保護板のみで良かったが、安全のため、固定式保護板と可動式警告板の両方を取り付けなければならない。

> 『固定式保護板』の取付け義務

3.エスカレーターの落下防止

エスカレーターまわりの吹抜けには落下防止柵(手すり)を設ける。2台並ぶエスカレーターの間にも仕切り板とせきが必要である。
天井が高い吹抜けに面したエスカレーターでは移動手すり(高さ約800mm)だけでは下を見ると恐怖感があり、下から見ても何か落ちてきそうで不安である。みんなが安心して乗れるように、吹抜けのエスカレーターには落下防止スクリーン(透明ポリカーボネード製、高さ1500mm程度)を設けたい。

4.地震時のエスカレーター脱落防止

建物の梁にかけられたエスカレーターは地震時の躯体の層間変位に追従して落ちないように十分なかかり代が重要である。万が一にも落下することがあってはならない。2013年7月に建築基準法施工令が改正され、10月に地震などでエスカレーターが脱落するおそれがない構造方法を定める告示(第1046号)が出された。一端固定他端スライドの時、スライドする部分の構造方法は次の式による十分な隙間とかかり代長さの確保が必要である。

隙間:C > Σγ・Hの場合
かかり代長さ:B ≧ Σ γ・H + 20(単位 mm)
γ:各階の設計用層間変形角
H:エスカレーターの各階の揚程

また、両端非固定状態の場合などの構造方法についても規定されている。できれば、さらに脱落防止のワイヤーロープを掛けておきたい。


エスカレーターの安全確保

1級建築施工管理技士 設備工事 雷から人・建物・設備を守る

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99)雷から人・建物・設備を守る

大気中で発生した雷は建物を直撃して破壊し、建物内部に侵入した誘導雷は絶縁破壊を引き起こし、建築設備に障害を引き起こす。
建築基準法では、建物の高さが20mを超える部分を旧JIS或いは新JISで規定する避雷設備の設置を義務付けている。ただし、市区町村によっては火災予防条例等により、新JISによる避雷設備を指導する場合があるので確認が必要である。

1.外壁面への側撃雷からの保護

建物が高さ60mを超えると、外壁への側撃雷を受けやすくなる。特に建物のコーナー部分や集合住宅の最上部バルコニー屋根庇等の突起部は避雷設備の保護角内であっても側撃雷を受けて、建物が損傷する事故がある。避雷設備は雷撃による損傷を最小限に抑えることができても、落雷は防げない。側撃雷からの保護対策が必要となる。


建物高さが60mを超えた場合の側撃雷からの保護

2.避雷設備設置の留意点

①旧JISでは、避雷針の保護角は一般建物では60° 以下、危険物を扱う貯蔵所等では45° 以下と規定している。建物高さが60m以上になると、旧JISの避雷針では側撃雷による落雷は防げない。

②新JISによる保護レベルに応じた受雷部の配置をすることが望ましい。


新JISによる保護レベルと受雷部の配置
③金属笠木や屋上外周部に設けられた金属手すりは、相互に電気的に接続すれば棟上げ導体として使用できる。メンテナンス用のタラップや鉄骨階段が棟上げ導体より突出する場合は、棟上げ導体に電気的に接続し保護する必要がある。

階段は棟上げ導体に接続して保護
ただし、棟上げ導体の保護範囲は導体から水平距離で10m以内である。

④自立型避雷突針が全長6mを超えると、強風時の揺れで躯体に共振して、下階の居住者に不快な音や振動を与える。集合住宅は棟上げ導体方式の採用がよい。

⑤近くに落雷した雷が配電線や通信線を通じて建物内に侵入し、電子機器の誤動作や建築設備の障害を引き起こす。電子機器の保護のためサージ保護デバイス(SPD)の設置が必要となる。

⑥屋上の設備機器と避雷導体との離隔距離は1.5m以上確保する。屋上が狭くて離隔距離を確保するのが困難な場合は設置極(アースボンド)を設ける。

屋上設備機器と避雷導体の離隔

1級建築施工管理技士 設備工事 爆発から建物を守る

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100)爆発から建物を守る

燃焼の伝搬速度が急速な燃焼を爆発といい、衝撃波を伴い超音速で伝搬するもの爆轟、秒速数メートル以上の音速に近い速度で火炎が伝播するものを爆燃という。
爆発は次の三つの要素が揃うことで発生する。

①可燃性ガスや引火性液体の蒸気、粉体といった燃えるもととなる可燃物
②燃焼を起こす酸素などの支燃性ガス
③電気火花や高温部などの点火源

水素などの可燃性ガスが空気と混合すると燃発性のガスとなり、このガスが電気回路の接点部からの電気火花や静電気の放電、高温度の物体などの点火源に触れることにより爆発が起きる。
可燃物となるのは化学物質等ばかりではない。機械加工時に発生する金属粉や食用の小麦粉などでも条件が揃えば粉塵爆発を起こす。

1.さまざまな爆発

①粉塵爆発
小麦粉や砂糖等の通常は発火物とは言わない物質でも空気中に小さな粉塵となって浮遊していると非常に燃えやすい状態となり爆発を起こす場合がある。

②ガス爆発
可燃性物質であるガスが密封された状態で充満している時に、点火エネルギーがあると強い爆発が起こる。爆発の大半がこのガス爆発である。都市ガスのガス管はガスで充満しているが、ガス管内に酸素が存在しないため、発火点まで温度が上昇しても燃えることはない。

③混合爆発
二つの物質を混ぜ合わせ衝撃を与えることによって引き起こされる爆発をいう。亜鉛と硝酸塩、亜鉛と過マンガン酸カリ、マグネシウムと硝酸塩等は混合するだけで爆発する。硫黄と硝酸銀、炭素と硝酸銀等は衝撃を与えると爆発する。

④水蒸気爆発
高温の金属と水が接触した時に水が水素と酸素に分解し、その水素に点火し爆発を起こす場合と、高温によって爆発的な速度で水蒸気になり体積を急激に増やすことで爆発現象を起こす場合がある。高温の溶融炉の事故や火災現場で消火活動中に起きる事故等は前者のケースで、火山の水蒸気爆発は後者のケースを示す。

2.防爆対策について

可燃性ガスや粉体を取り扱う工場では、爆発事故を防止するために爆発性雰囲気が発生しないように換気することや、点火源をなくす、あるいはスパークして点火源となる可能性のある電気機械器具は隔離することが必要となる。労働安全衛生規則では事業者に対して、爆発・火災の危険性が生じる濃度に達する可能性がある危険場所では、防爆構造の電気機械器具の使用を義務付けている。
電気機械器具の防爆構造には、ガス蒸気に対する防爆仕様と粉塵に対する防爆仕様がある。防爆対策についえの規制内容の詳細は、労働安全衛生法(厚生労働省所管)や消防法(総務省所管、各自治体消防署)、電気事業法(経済産業省所管)の関連法規を参照する。


避難誘導灯の防爆仕様


非常照明の防爆仕様


設備操作スイッチの防爆仕様


自動火災報知赤色灯の防爆仕様

平成28年度 1級建築施工管理技士 実地試験 終了

1級建築施工管理技士試験
お疲れ様でした。
総合資格学院より
28年度の 1級建築施工管理技士 実地検定の総評
が出ていますのでリンクを貼り付けておきます。
参考まで。
実地試験の発表日は 平成29年 2月 3日(金)の予定になっています。
当日は、建設業振興基金 ホームページでも受験番号にて
確認できるようです。
しばらくはお休みですね
お疲れ様でした。

間違いやすい部分

経験記述の注意事項
文字の間違いは
一文字間違う毎に減点がかさなるので
注意が必要です。
注意するべき文字
抑制という文字
「抑」 → 手へんに迎える之の上に載っているものです
      「卯」ではないので注意
「制」 → 「製」ではないので注意
あなたの考えを求めらせる記述は
その文章の末尾は過去形ではなく、現在形でしめくくる。
例) ×「した」 → ◯「する」「するべきである」など

1級建築施工管理技士 く体工事 基礎工事

第4章 地業工事 杭工事 

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◆◆ 既成コンクリート杭 ◆◆
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1)杭の運搬及び取扱い
①杭の運搬及び取扱い 積込み・荷降し 2点、1/5の箇所
②杭の建込み 杭上端部から 2mの位置を吊り点位置とする
2)打ち込み工法
①打撃工法
 ディーゼルハンマ、ドロップハンマ(もんけん)
 バイブロハンマ、油圧ハンマ
②プレボーリング併用打撃工法
 オーガーによる掘削径
 通常、粘性土の場合、 杭径 – 50mm
③杭の打込み
 一群の場合 中心から外側へ
 一本の打込みは中断しない
④杭の打止め
 指定された深さで行う
 支持層まで到達すること
3)埋込み工法
①プレボーリング工法(セメントミルク工法)
 【 アースオーガーによる掘削の施工上の留意事項 】
・屈進速度が速すぎると、
 先端の掘削ビットに過大な負担がかかり、
 ビットが横に逃げたり、ロッドが曲がるなどして、
 掘削孔の曲がりが生じやすくなる。
 土質によって屈進速度を変える必要がある。 
 → 硬い地盤ほどゆっくり掘削する。
・掘削中に孔壁の崩壊が生じるおそれがある場合は、
 必要に応じて掘削液(安定液)を使用する。
・アースオーガーの引き上げに当たっては、
 負圧によって地盤を緩めないように
 ゆっくりと正回転で引き上げる。
・掘削土は、杭の高止まりが生じないように十分排出する。
 
【 杭の建て込みの施工上の留意事項 】
・掘削孔壁が崩壊することがないように、速やかに行う。
 孔壁の崩壊は高止まりの原因となる。
・孔壁や杭体を損傷することのないよう、
 鉛直に吊り下げた状態でゆっくり行う。
・建て込み後に杭が自沈するおそれのある場合は、
 固定ち具などにより杭を保持し、
 自沈しないように設置高さの位置で固定しておく。
②中掘り工法:
杭中空部にオーガー等を挿入し、杭先端地盤を掘削しながら、杭中空部から排土して杭を設置する工法。 
直径 500mm以上に適する
杭先端にはフリクションカッターを取り付ける
4)杭の継手
①溶接継手または接続金具による無溶接継手とする。
②【 溶接継手の留意事項 】
・溶接は原則としてアーク溶接とする。
・継手部の開先の目違い量(杭心のずれ)は 2mm以下
 許容できるルート間隔(杭間のすき間)は 4mm以下
・仮付け溶接は、点付け程度のものでなく、
 必ず 40mm以上の長さとし、本溶接と同等のものとする。
・溶接の盛上げの不足があってはならないが、
 余盛りは 3mm以下とし、不要な余盛りは行わない。
・杭の継手を手溶接とする場合、
 JISに定める A-2H 程度の有資格者に行わせる。
・継杭における下杭の打残しは、
 溶接作業に都合のよい高さ( 1m程度)とする。
・風速が 10m/s 以上ある場合、
 適切な防風措置を講じて溶接作業を行う。
5)杭の施工精度
・杭頭の設計位置と水平方法のずれ
 D/4( D は杭径)以内、かつ 100mm以内
・杭の傾斜
 1/100 以内
※許容範囲を超えた場合には設計者に確認及び検討が必要である。



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◆◆ 場所打ちコンクリート杭 ◆◆
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1)施工
①コンクリートの調合
・一般に養生温度による強度補正は行わない。
 mSn = 0
 特記のない場合は、
 構造体強度補正値の値は 3 N/mm2とする。
・調合は共仕によると
 A種 c/w 60%、、スランプ 18㎝、粗骨材Max25mm、
   単位セメント量 310 kg/m3(無水掘りの場合)
 B種 c/w 55%、、スランプ 18㎝、粗骨材Max25mm、
   単位セメント量 340 kg/m3(無水掘り以外)
②掘 削
・試験掘削に使用する安定液の品質試験は、
 粘性、比重、ろ過水量、pH、砂分、塩分の全項目について行い、
 以後は粘性及び比重について行う。
・杭の先端部は所定の支持地盤に確実に到達させ、
 原則として、杭先端は支持地盤に 1m以上根入れさせる。
・掘削深さの確認は、
 重錘(じゅうすい)と検測テープを用いて
 杭底の2箇所以上で測定する。
③スライム処理(杭底処理)
・スライムとは、孔内の崩落土、泥水中の土砂等が沈殿したもの。
 杭底部のスライムの介在は先端支持力を著しく低下させるので、
 スライムの除去は確実に行わなければならない。
・スライムの処理には、
 1次スライム処理(掘削完了直後に行う)と
 2次スライム処理(コンクリート打設直前に行う)がある。
④鉄筋かごの組立て・吊込み(建込み)
・鉄筋かごの組立て(主筋と帯筋等)は、
 原則として、0.8mm以上の鉄線で結束する。
 ただし、帯筋の継手は片面 10d 以上のフレアーグルーブ溶接とし、
 補強リングは、主筋に断面欠損を起こさないように堅固に溶接する。
・鉄筋のかぶり厚さは、
 アースドリル及びリバース工法では 10~15㎝程度、
 オールケーシング工法では 15㎝程度で設計されることが多い。
・鉄筋かごは、かぶり厚さを確保するために、
 スペーサーを深さ方向に 3~5m間隔を目安として、
 断面4箇所以上取り付ける。
 設計図によるが、かご主筋への取り付けはさける。
 がご主筋に設置する場合は、
 アンダーカットに注意する。
・通常、鉄筋かごは掘削前に組み立てておく。
 したがって、掘削後の検測で、
 鉄筋かごの長さと掘削孔の深さに差がある場合がある。
 掘削孔の深さが浅い場合には、最下段に鉄筋かごで長さを調整する。
 これは杭は一般に上部の方が配筋量が多いので、
 上部の配筋が不足しないように配慮したものである。
・鉄筋かごの建起こしと建込みは、
 かごに有害な変形が生じないように行う。
 また、建込みは、孔壁を崩壊しないように、
 鉄筋かごを杭中心に合わせ鉛直性を保ちながら行う。
⑤コンクリートの打設等
・コンクリートの打ち込みは、泥水を巻き込むことがなく
 良質なコンクリートに置換するために
 原則としてトレミー菅を用いる。
・コンクリート打ち込み開始時には、
 プランジャーをトレミー菅内の泥水(安定液)
 の上に乗った形で設置して、
 コンクリートと泥水等が混ざり合うのを防ぎ、
 下部か泥水等を押し上げるようにコンクリートを打設する。
・トレミー菅及びケーシングチューブ(オールケーシング工法の場合)は、
 これを引き抜きながらコンクリートの打ち込みを行う。
 このとき、トレミー菅及びケーシングチューブの先端は、
 コンクリートの中に常に 2m以上入ってるように保持する。
・杭底から押し上げられてきた不健全なコンクリートを、
 余盛り部分に集めてコンクリート硬化後削り取る。
【 場所打ちコンクリート杭の余盛りの高さ 】
孔中に水が少ない場合 オールケーシング       50㎝以上
孔中に水が多い場合  アースドリル、リバース 80~100㎝程度
※上記余盛り高さを確保するため、スタンドパイプ取り外し後に、杭頭レベルが若干下がることを考慮してコンクリート打設完了時は少し高いめのレベルに設定しておく。
・杭築造完了後、
 杭孔周囲の地盤の崩壊防止と転落防止のため
 空掘り部分の埋戻しを行う。
 埋戻しの時期は、コンクリート打込みの翌日以降、
 杭頭のコンクリートが初期硬化をしてから行う。
2)施工後の処理
①施工精度
杭の水平方向のずれ 100mm以下、傾斜 1/100以下
・断面寸法は、設計断面以下にならないことを基準とする。
 拡底径の場合は、拡底率が設計に関わる場合があるので注意する。
・鉛直精度や杭径は、通常、超音波孔壁測定結果から求める。
②杭頭の処理
 余盛り部分や不良コンクリート部分をはつり取り、
 健全なコンクリートを露出させる。
【 杭頭処理の施工上の留意事項 】
・コンクリート打込みから 14日程度経過した後、
 所定のコンクリートの強度が得られてから行う。
・はつり作業に際しては、
 杭本体へのひび割れや損傷防止に留意し、
 平らにはつり取り、所定の高さにそろえる。
・設計図書に示された高さまで余盛り部分を除去しても、
 杭頭コンクリートに不良部分が残る場合がある。
 その場合には、不良部分を除去し、
 コンクリートを打ち直さなければならない。



3)代表的な工法の概要
アースドリル工法(地盤ドリル工法)
 表層ケーシングを建て込み、回転バケットで掘削する。
   ↓
 掘削完了後、スライムを除去する。
   ↓
 鉄筋かごを挿入し、トレミー菅をセットして
 必要に応じて再度スライムを除去する。
   ↓
 コンクリートを打込む。
   ↓
 空掘り部分を埋め戻す。
・掘削孔壁の保護は、地盤表層部はケーシングにより、
 ケーシング下端以深は、
 ベントナイト、CMCを主体とする安定液により
 孔壁にできるマッドケーキ(不透水膜)と水頭圧により保護する。
・安定液の粘性
 安定液はベントナイト、CMC、分散剤等からなり、
 分散剤は液の劣化を防ぎ、くり返し使用を可能にするもの。
 安定液の配合は、必要な造壁性・比重のもので、
 短時間で砂分を沈降させるため、
 できるだけ低粘性・低比重のものとするのがよい。
・粘性はファンネル粘性で表されるが、
 その数字が大きいほど粘性は高い。
・必要粘性とは、対象地盤に必要とする粘性をいい、
 作液粘性とは、新しく作った安定液の粘性をいう。
 アースドリル工法では、
 安定液をくり返し使用すると粘性が小さくなることが多いので、
 一般的に、作液粘性は必要粘性より大きくする。
・くり返し使用する場合の安定液は、
 粘性、比重、砂分、ろ過水量、ケーキ、pHについて
 管理しながら施工する。
・支持層の確認は、全杭についてバケット内の土砂を、
 土質柱状図及び土質資料と対比し、併せて記録する。
・1次スライム処理:底ざらいバケットで処理する。
・1次処理に用いる底ざらいバケットは杭径より 10㎝小さいものを用いる
・1次処理に用いる底ざらいバケットの昇降は、
 孔壁が崩壊することがないよに緩やかに行う。
・2次スライム処理:
 水中ポンプ方式、エアーリフト方式等で処理する。
リバース工法(リバースサーキュレーション工法)
・スタンドパイプを建て込み、
 その部分をハンマーグラブで掘削する。
   ↓
 その後は回転ビットで掘削し、
 掘削完了後スライムを除去する。
   ↓
 鉄筋かごを挿入し、
 トレミー菅をセットして必要に応じて再度スライム除去する。
   ↓
 コンクリートを打込む。
   ↓
 空掘り部分を埋め戻す。
・特殊な回転ビットを地上に設置したロータリーテーブルを通じて
 緩やかに回転させて掘削し、
 排土は水に混じった掘削孔底部の土砂を水と一緒に逆循環方式で吸い上げて行う。
・孔壁保護は、原則として水(土質によってはベントナイト溶液を使用することもある)を用い、静水圧を 0.02 N/mm2以上に保つことにより孔壁の崩壊を防ぐ工法なので、掘削に際しては地下水位を確認し、水頭差を 2.0m以上に保つようにする。スタンドパイプは、地表面部分の孔壁の崩壊を防ぐ役割を果たすとともに、その水頭差を確保するために掘削孔頭部にのみ貫入させるものである。また、スタンドパイプの径は、杭の孔径より、150〜200mm大きくする。
・支持層の確認は、全杭について、デリバリーホースの末端から掘削土砂を採取し、土質柱状図及び土質資料と対比して行い記録する。
・1次スライムの処理
 回転ビットを孔底より若干引き上げて、空回しして吸い上げる。
・2次スライムの処理
 トレミー菅とサクションポンプ等により処理する。
・スタンドパイプは、地表面の崩壊防止にも役立つので、コンクリートを所定の高さまで打設しトレミー菅を引き抜いた後に引き抜く。
オールケーシング工法(ベノト工法)
 ケーシングチューブを圧入しながら、ハンマーグラブで掘削する。
   ↓
 掘削完了後、スライムを除去する。
   ↓
 鉄筋かごを挿入し、トレミー菅をセットして
 必要に応じて再度スライムを除去する。
   ↓
 コンクリートを打込む。
   ↓
 空掘り部分をうめ戻す。
・掘削にあたって、
 掘削孔全長にわたってケーシングチューブを使用するので、
 孔壁の崩壊が少ない。
・孔壁の保護は、基本的にケーシングチューブを用いるが、
 ボイリング、ヒービングが発生するおそれがある場合は、
 孔内に水をはり防止する。
・支持層の確認は、
 全杭についてハンマーグラブでつかみ上げた土砂を、
 土質柱状図及び土質資料と対比し、併せて記録する。
・1次スライム処理:
 孔内水がない場合やわずかな場合は、
 ハンマーグラブで杭底処理する。
 孔内水が多い場合は、
 その後、沈殿バケット(スライムバケット)で処理する。
・2次スライム処理:
 水中ポンプ方式、エアーリフト方式等で処理する。
・ケーシングチューブを急速に引き抜くと
 コンクリートに泥水等を巻き込むことになるので、
 十分に注意する。
・鉄筋かごがケーシングチューブに接触して浮き上がってしまう
 鉄筋の供上がりが発生した場合は、
 早期発見が大切で、
 鉄筋頂部から供上がりチェック用の鉄線を
 ケーシングチューブ天端まで伸ばしておき、
 引き抜き初期にチェックを行う。
・供上がり防止策
 ・ケーシングチューブの内面をよく清掃する
 ・ケーシングチューブは、
  変形・曲がりのないものを鉛直に建て込む
 ・スペーサーの形状、高さ及び位置に注意する。
 ・鉄筋かごを曲がりや変形のないように建て込む。
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1級建築施工管理技士 く体工事 地業工事 地盤改良

第4章 地業工事 地盤改良工事

深層地盤改良の工法
エスミコラム工法やエポコラム工法など

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エポコラム工法(籠式複合相対回転攪拌工法)
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(一財) 先端建設技術センター建設技術審査証明取得
技審証第 1704号
(一社) 農業農村整備情報総合センター 登録 No.0223

【 概 要 】

エポコラム工法は,地盤中にセメントスラリーを注入し,
籠状攪拌翼の外翼と芯翼,中翼と掘削ヘッドが相対して回転する複合相対攪拌機構により,
三次元的な混合・練込みを行う工法である。
低速回転・高トルクによる大口径コラムの築造や
礫層・硬質地盤対応が可能な技術として技術審査証明を取得している。

【 特 徴 】

施工コストの軽減と工期短縮
大口径コラムの築造で、一工程当たりの施工量の増大が図れ、
施工コストの軽減と工期の短縮が可能。
(コラム径 標準Ø1.6m〜最大Ø2.5m)

1.攪拌性能が高い
エポコラム翼の『羽根切り作用』とそれに伴う『練込み作用』によって、
土壌とセメント系スラリーとの均一拡散や土塊の崩壊を促進させるため攪拌性能が高い。

2.コラム相互の接合隔着が完全
外翼が攪拌翼土中の土塊を抱え込み、翼外部へ「まきだし現象」がないことから、
コラム相互のラップ部の接合隔着が可能。

3.転石層でも混練攪拌性に優れる
エポコラム翼の主翼は両端部が回転軸に固定されているため、
転石等に遭遇しても損傷し難く、また礫層を押圧せずに掘進する機能を持ち、
転石層でも混練攪拌性に優れている。

4.杭芯の精度保持性が高い
回転軸の剛性が高く、翼の相対回転による求心性の効果で杭芯の精度保持性が高い。

【 適用目的 】

1.盛土・切土のすべり防止
2.圧密沈下の低減
3.支持力の増大
4.土圧の低減
5.変形・変位の防止
6.重要構造物の防護
7.建築物の基礎
8.耐震補強・液状化対策
9.土壌汚染対策(現位置浄化・不要化・封込め)
10.その他改良工事

【 エポコラム翼機構 】

エポコラム翼の回転機能は外翼と内翼が同一方向に回転し、
中翼と削孔ヘッドが、逆回転する機構を有する複合相対回転翼である。
各々の外翼3枚および内翼・中翼各2枚が『羽根切り作用』に伴って、
相対回転する翼間 の土壌が対流流動を強制され、
土壌と固化材との『練り込み作用』によって、
コラム体中に固化材の均一拡散や土塊の崩壊を連続的に繰り返し、
均質なコラムを造成する。
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【 エポコラム工法の施工手順 】

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【 エポコラム工法の特徴を生かした新工法 】

エポコラム工法の特徴である低速回転・高トルクを生かした新工法として
エポコラム-Loto工法,エポコラム-Taf工法がある

①エポコラム-Loto工法
エポコラム-Loto工法は,大口径改良体造成を目的として,
翼中吐出機構と水平・鉛直補助翼の開発し,
Ø1.6mから最大改良径2.5mの造成を可能としている。

②エポコラム-Taf工法
また,新たに開発したエポコラム-Taf工法は,
地盤中の残置既製杭や改良地盤等,従来工法では先行削孔等が必要な障害物が存在する場合に,一工程の改良施工を可能とした工法である。

残置既製杭の破砕・改良の同時施工では,
撤去工が不要となり経済的になる上、廃棄物の有効利用を図れ、
環境負荷を低減できる。