3章 土工事 2節 根切り及び埋戻し

第3章 土工事 


02節 根切り及び埋戻し

3.2.1 根切り

(a) 根切りの留意点
根切りに先立ち処置する必要のある事項は、おおむね次のとおりである。

(i) 地盤調査の結果による地層及び地下水の状況把握
(ii) 近接した建物等への影響の有無(2.2.1 (a)(iii)参照)
(iii) 地中埋設物(2.2.1(a)(ii)参照)で根切りに掛かるもの及び周辺にあるものの移設養生等の処置
(iv) 山留めの安全性の確認(建設工事公衆災害防止対策要綱(建築工事編)(平成5年1月12日建設省経建発第1号)では、根切り深さ1.5 mを超える場合には、原則として山留めを設けるとしている(同要綱第45参照)。)
(v) 機械掘削を行う場合の転倒、転落の防止
(vi) 構台を架設した場合の荷重、振動に対する安全性の確認

(b) 根切りの概要
(1) 根切りの種類
(i) 総掘り :地下室等がある場合に建物全面を掘る。
(ii) 布掘り :連続基礎等の場合に帯状に掘る。
(iii) つぼ掘り:独立基礎等の場合、角形又は丸形に掘る。

(2) 根切り深さ
根切り深さは、砂利地業等の突固めによるくい込み量〈突代、突べり〉(土質等により0 ~ 30mm位まで)を見込んだ深さとする。

(3) 根切り範囲の計画
根切り範囲を定めるには、山留め、コンクリート型枠の組立、取外し等の作業がある場合においても作業が十分できるよう、山留めと型枠組立材料との間に作業者が入れる間隔を見込んでおく。その間隔は、通常の場合は図3.2.1のように、布掘りでは基礎幅から300~600mm、総掘りの場合は 1m 程度とする。ただし、除去の必要のないラス型枠材料等による場合や、連続地中壁やソイルセメント壁による山留め壁を直接外型枠として使用する場合等ではこの限りではない。


(イ)布掘りの場合


(ロ)総掘りの場合(外型枠が必要な場合)


(ハ)総掘りの場合(外型枠がない場合)
図 3.2.1 根切り範囲

(4) 根切り工事の計画
根切り工事では、掘削と山留め支保エの架設がバランスよく、かつ、 タイミングよく行われることが非常に大切である(図3.2.2参照)。また、掘削の実施においては、山留めの設計条件を十分に確認し、設計条件に合致した方法により施工を行うとともに安全を確認して工事を実施する必要がある。


(イ) バランスのとれた掘削方法


(ロ) バランスがくずれやすい掘削方法
図3.2.2 掘削方法

(5) 根切り底の施工
根切り底は、水平にしなければならないのは当然のことであるが、機械掘削をする場合には所定の深さより深く掘り過ぎないこと及び地盤面を乱さない(荒らさない)ことに注意する必要がある。深く掘り過ぎたり、乱したりした場合は、砂地盤の場合には、ローラー等による転圧や締固めによって自然地盤と同程度の強度にする。シルトや粘性土等の場合には、自然地盤以上の強度をもつ状態に戻すということは非常に困難なので、砂質土と置換して締め固め、自然地盤と同程度の強度にする処置が必要となる。また、砂質土による置換では強度の回復が困難と判断される場合は、セメント、石灰等の改良材を用いて地盤の改良を行う方法もあるので、地盤強度の確保の方法等について設計担当者と打ち合わせる。

一般的なバケットを用いた機械掘削では、通常床付け面より300~500mmの位置より手掘りとするか、バケットに平板状の特殊なアタッチメント(鋼板等)を取り付けたもので、根切り底が乱されるおそれのないものとして、機械を後退させながら施工する(図 3.2.3参照)。杭間ざらいでは、杭体に損慟を与えることや地盤の乱れを生じることのないよう、小型の機械に変更するなどし、十分に注意して施工を行う。

また、地下水処理が十分でない場合、根切り底が乱されるため、地下水の処理は十分に行う。


図 3.2.3 機械掘削の例

(6) 根切り底の検査
根切り底は、レベルチェック及び地盤状態の検査をしたのちに、捨コンクリートや基礎スラプの施工にかからなければならない。レベルチェックは、レベルを用いたり、遣方に水糸を張りスケールを用いるなどして行う。測定部分の大きさにもよるが、つぼ掘りは周囲4点と中央1点、布掘りは2 ~ 3 mごとに1点、総掘りは 4mごとに1点程度を目安として実施することが望ましい。地盤の状態(根切り底の乱れ及び地層の種類・強さ等)に関する検査は、通常、床付け地盤が設計図書、地盤調査報告書に示された地層、地盤に合致していることを土質試料等を参考に目視によって確認するが、その確認が難しい場合には「標仕」1.1.8の規定に基づき土質試験や原位置試験等の適切な試験によって確認する。

参考として地盤の状態の簡易判別法を示す(表 3.2.1 参照)。

表 3.2.1 地盤の状態の簡易判別法( JASS 3(一部修正)より)

(c) 掘削深さと法面の勾配

(1) 法面の勾配
法付けオープンカット工法により掘削を実施する場合、法面の勾配は、土の安息角や粘着力により決まるが、特に粘着力は土の含水量によっても変化する。切土における法面勾配の目安として表 3.2.2 が示されている。法面の勾配は、規模が大きくなれば安定計算によって安全を確かめて決定する。また、法面及び法尻は安定勾配以下であっても、降雨・乾燥のくり返しにより崩れやすくなるので、存置期間中に異常を生じないように、排水・養生を行う。地下水位が浅い場合は、排水溝、集水桝等による地下水処理を行う(図 3.2.4参照)。


(イ)ウェルポイントによる地下水位の低下


(ロ)法面の崩壊防止


(ハ)砂粒子の流出防止


(ニ)法面の養生
図 3.2.4 法面の排水、養生の例( JASS 3より)

表3.2.2 切土に対する標準法面勾配(山留め設計施工指針より)

(2) 手掘り掘削時の規定
手掘りとする場合は、労慟安全衛生規則に勾配と高さが定められているので、これらを基に安全性を確保しながら掘削する(表 3.2.3参照)。

表3.2.3 手掘りによる掘削作業での掘削面の勾配の基準(労例安全衛生規則)

(d) 寒冷期における施工時の注意

(1) 施工上の留意点
寒冷地の冬期施工に当たって、特に注意をしなければならないものに凍結現象がある。凍結した土は強度的にみて良質な地盤と間違えやすいが、氷が溶けると体積が減少し、沈下現象に結びつく。したがって、凍結させないような施工管理が必要である。

(2) 凍結時の対策
床付け地盤が凍結した場合、この土は乱された土と同様に扱い、良質土と置換するなどの処置を行う。

(e) 土工事用機械
土工事に用いられる主な使用機械を、表 3.2.4に示す。また、根切り用の掘削機械の種類を図 3.2.5に示す。

施工に用いる機械については、近接住民の生活環境の保全の必要性のある場合について、昭和51年に「建設工事に伴う騒音振動対策技術指針」(昭和62年全面改正)が定められているので、これによって施工する。

表 3.2.4 土工事作業と主な使用機械

図 3.2.5 根切り用掘削機械の種類

3.2.2 排 水

(a) 地下水処理工法の概要

地下水処理工法には、大別して排水工法、止水工法、リチャージ工法があり、図 3.2.6 に示すようにそれぞれ多くの種類がある。工法の選定に当たっては、必要とする揚水量・排水を行う地下水の深度等の目的に対する適合性・施工性・工期・コストのほか、揚水による地下水位低下に伴う井戸枯れや地盤沈下等の周辺への影響を考慮しなくてはならない。多くの場合、止水工法は山留め工法に直接かかわるため地下水処理工法と山留め工法は同時に検討すべきである。

また、最近では周辺の井戸枯れや地盤沈下防止等を目的にリチャージ工法を採用することもある。


図 3.2.6 地下水処理上法の種類(山留め設計施工指針より)

(b) 排水工法
排水工法は、地下水の揚水によって水位を掘削工事に必要な位置まで低下させる工法で、地下水位の低下量は揚水量や地盤の透水性等によって決まり、通常、透水係数が 10-4cm/s程度より大きい地盤(帯水層)に適用される。

土粒子の径と排水工法の適用範囲を図 3.2.7に示す。

図 3.2.7 土粒子の径と排水工法の適用範囲(根切り工事と地下水より)

この排水工法を集水原理で分ければ、ウェル等の排水設備に流入する水を揚水する重力排水工法と、負圧等を利用して強制的に水を流入させ排水する強制排水工法とがある。現在よく用いられる工法は、釜場工法、ディープウェル工法、ウェルポイント工法及びバキュームディープウェル工法であり、工法は排水の実施位置及び必要とする揚水量等を考慮し決定する。

(c) 各種排水工法の特徴と注意点は次のとおりである。
(1) 釜場工法
根切り部へ浸透・流水してきた水を、釜場と称する根切り底面よりやや深い集水場所に集め、ポンプで排水する最も単純で容易な工法である(図 3.2.8参照)。釜場は、根切りの進行に合わせて下げるとよい。

また、この工法の注意点は次のとおりである。

① 湧水に対して安定性の低い地盤への適用は、ボイリングを発生させ地盤を緩めることにつながるので好ましくない。

② 主として、雨水を処理する場合は、根切り底に排水溝(明きょ)を設けるなどして雨水を集水桝に集めてポンプで排出する。この場合、集水桝は 図 3.2.9 のように基礎に影響を与えない場所に設ける。

③ べた基礎のように上部構造の応力を地盤に伝えるために設けた基礎スラプ下の地盤は、その影評範囲を地下水で乱してはならない。床付け地盤面に地下水が流入する場合には適当な排水処置をとり、地下水により基礎スラプ下の床付け地盤の支持力が低下しないようにしなければならない。

④ 釜場にはフィルターを設け、地盤中の砂分を揚げないようにしなければならない。


図 3.2.8 釜場工法


図 3.2.9 集水枡の位置

(2) ディープウェル工法
根切り部内あるいは外部に径500~1,000mmで帯水層中に削孔し、径300~600 mmのスクリーン付き井戸管を設置してウェルとし、水中ポンプあるいは水中モーターポンプで帯水層の地下水を排水する工法である(図 3.2.10 参照)。砂層や砂礫層等、透水性のよい地盤の水位を低下させるのに用いられる。この工法は、ウェル1本当たりの揚水量が多く、また、深い帯水層の地下水位を大きく低下させることが可能であるなどの特徴があるが、(4)のウェルポイント工法等に比べて設置費用が多額である。したがって、必要排水量が非常に多い場合、対象帯水層が深い場合、帯水層が砂礫層であるなどによりウェルポイント工法では処理できない場合、ウェルポイントの設置によってだめ工事(手直し工事)が多くなる場合等に採用すると有効である。

また、ディープウェル工法による揚水は、周辺地下水位も大きく低下させることが多く.周辺の井戸枯れや地盤沈下等を生じるおそれがあるので、採用に当たってはこの点を考慮しなくてはならない。


図 3.2.10 ディープウェル工法

(3) 明きょ・暗きょ工法
明きょ工法は排水溝により集水し、暗きょ工法は地中に設置した暗きょにより集水し、排水する方法をいう。

(4) ウェルポイント工法
根切り部に沿ってウェルポイントという小さなウェルを多数設置し、真空吸引して揚排水する工法であり( 図 3.2.11参照)、透水性の高い粗砂層から低いシル卜質細砂層程度の地盤に適用される。可能水位低下深さはヘッダーパイプより4~6m程度である。1本当たりの揚水量は土質によって異なるが、通常10~20ℓ/min程度、場合によっては50ℓ/minになることもある。

また、この工法の注意点は次のとおりである。

① 地下水位低下により、周囲地盤が多少とも沈下するため、計画時にその影響を調査・検討する。

② 地下水をくみ上げるため、周囲の井戸水等の水位低下や井戸枯れを生じることもあるので事前に調査する必要がある。

③ ポンプが故障した場合、水位の上昇により山留め崩壊等の大事故になるおそれがあるので、予備ポンプの設置が必要である。

④ 排水により、根切り底・法面・掘削面に異常が起こらないように排水処理を確実に行う。

⑤ ウェルポイントの排水を停止する場合は、地下水位の上昇により、建物、地中埋設物等の浮上がりによる破壊、損傷等を起こさないように、排水停止時期について十分に検討する。

⑥ 気密保持が重要であり、パイプの接続箇所で漏気が発生しないようにする。


図 3.2.11 ウェルポイント工法

(5) バキュームディープウェル工法
ディープウェルに真空ポンプを組み合わせた排水工法で、帯水層の透水性が低い場合やディープウェルの設置方法が悪いため、水位低下しにくい場合に採用することが多い。ウェル内を負圧にして地下水を吸引するため、ウェルの気密性を保つ必要がある。

(d) 止水工法
止水工法は、図 3.2.12 に示すように、根切り部周囲に止水性の高い壁体等を構築し根切り部への地下水の流入を遮断する工法で、大別すると地盤固結工法・止水壁工法及び圧気工法がある。

盤ぶくれ防止のために被圧帯水層を遮断したり、山留め背面地盤に砂質土層があってこれを止水する必要のある場合や、地下水の低下によって周辺の井戸枯れや地盤沈下、あるいは地下水塩水化等が問題になり排水工法が適用できない場合等に、止水工法が採用される。更に、下水道・水路等の放流場所がない場合や、放流場所の可能放流(排水)量が小さく排水工法が採用できない場合、下水道料金や排水工法の設備設置費のために止水工法を採用した方が低コストで済む場合等にも採用される。また、現場条件やコスト等から止水工法と排水工法を併用する場合もある。

止水工法としてよく用いられるのは、止水壁工法と地盤固結工法であり、工法選定の際の主な注意点は次のとおりである。

① 止水壁は山留め堅としても用いることが大部分であり、設計の際はこの点を考慮しなくてはならない。

② 工法によって施工深度や適用地盤等が異なり、また、敷地条件によって採用できない場合がある。

③ 一般には仮設であるが、止水矢板工法を除き撤去できない。


図 3.2.12 止水工法による地下水処理

(e)リチャージ工法
リチャージ工法は復水工法ともいい、ディープウェル等と同様の構造のリチャージウェル(復水井)を設置して、そこに排水(揚水)した水を入れ、同一のあるいは別の帯水層にリチャージする工法である(図 3.2.13参照)。この工法は、周辺の井戸枯れや地盤沈下等を生じるおそれがある場合の対策として有効な工法である。

本工法の注意点を次に示す。

① 同一帯水層にリチャージする場合、排水工法だけを採用する場合に比べて必要排水(揚水)量が増加するので、ディープウェル等の排水設備も増える。その程度はリチャージウェルが揚水井に近いほど多くなる。したがって、リチャージウェルは揚水井とできるだけ離す方が効果的である。

② 山留め壁の根入れ以浅の帯水層けリチャージする場合、山留め壁への側圧(水圧)が増加するので検討が必要となる。

③ リチャージ量は、水中の鉄分、細粒分のほか、バクテリア等によって目詰りし、次第に減少する。したがって、必要に応じてリチャージウェルの洗浄が必要である。


図 3.2.13 リチャージ工法の例(根切り工事と地下水より)

3.2.3 埋戻し及び盛土

(a) 埋戻しに当たっては、埋戻しが不十分な場合沈下が生じ、建物周辺の外構や埋設管等に影響を及ぼす可能性がある。

施工に当たっては、埋戻し材料の選定と締固め管理が重要となる。

(b) 埋戻し部の型枠材等の撤去
埋戻しに先立ち、埋戻し部の型枠材等を撤去したのち、埋戻し作業を実施する。これは、型枠材を存置すると腐食により地盤の沈下を生ずる場合があるためである。なお、腐食に伴う沈下の発生のおそれのない型枠材としてはラス型枠材料等があり、これを使用した場合には撤去の必要はない。

(c) 材料及び工法等
(1) 埋戻し及び盛土の種別等
「標仕」では、埋戻し及び盛土の種別を、土の種類とそれに適した工法の組合せとして「標仕」表 3.2.1のように区分し、その種別を特記することとしている。
このうちA種は、山砂で一般的には水締めのきく砂質土を想定している((3)参照)。

また、B種は、当該現場で発生した根切り土の中で、有機物、コンクリート塊等を含まない良質土を想定しているが、このような良質の発生土が埋戻し等に必要な量として不足する場合は、設計担当者と打ち合わせ、必要に応じて「標仕」 1.1.8による協議を行う。

C及びD種については、建設発生材の有効活用が社会的命題であり、積極的に使用することが望ましい。

国土交通省では、建設工事に伴い副次的に発生する建設汚泥の処理に当たって、基本方針、具体的実施手順等を示すことにより、建設汚泥の再生利川を促進し、最終処分場への搬出量の削減、不適正処理の防止を図る目的から、「建設汚泥の再生利用に関するガイドライン」(平成18年6月12日)を作成した。

このガイドラインは、国土交通省所管の直轄事業に適用するとともに、その他の事業においてもガイドラインに準拠して建設汚泥を取り扱うことを期待しているものであるが、環境基本法に基づく土壌汚染対策法に定める特定有害物質の含有量基準に適合しない建設汚泥は対象外としている。

なお、上記以外として「標仕」には規定されていないが、最近では、建設発生土に水や泥水を加えて泥状化したものに固化材を加えて混練した流動化処理土が用いられる場合がある( JASS 4参照)。

(2) 埋戻し土の性状
埋戻し土には腐食土や粘性土の含有量が少なく、透水性の良い砂質土を用いるのがよい。また、均等係数が大きいものを選ぶ。均等係数の算定は土の粒度試験結果の片対数用紙の対数目盛に粒径を、算術目盛に通過質量百分率をとって、図 3.2.14のような粒径加積曲線として描く。そしてその性質を定量的に示す係数として、均等係数 Ucと曲率係数 U’c を次式から求める。


図 3.2.14 粒径加積曲線

(3) 埋戻し及び盛土材料の粒度組成
山砂、川砂及び海砂の粒度組成の一般的な比較は表 3.2.5のようになり、埋戻し土には山砂が最も適している。これは埋戻し土としては、分離作用を強く受けて均一粒子となっている砂(海砂等)よりも砂に適度の礫やシルトが混入された方が大きい締固め密度が得られるからである。
また、使用する埋戻し土については、必要に応じて粒度試験等を実施するのが望ましい。表 3.2.6 に埋戻しに適した材料の粒度と性質を示す。

表 3.2.5 山砂、川砂及び海砂の一般的な粒度特性

表 3.2.6 埋戻しに適する材料の粒度と性質( 山留め設計施工指針より)

(4) 土質と締固め方法
締固めは、川砂及び透水性のよい山砂の類の場合は水締めとし、透水性の悪い山砂の類及び粘土質の場合はまき出し厚さ約300mm程度ごとにローラー、ランマー等で締め固めながら埋め戻すのが原則である。埋戻し時には、建物躯体のコンクリートが締固めを行うのに必要な強度を発現していることを確認する。建築物周囲の深い根切りの部分は、機械で締め固めるのは困難なことが多いので、整地後の地盤沈下を防止するには、川砂又は透水性のよい山砂の類を使用し、水締めをする必要がある。設計屈瞥の指定が適当でないと思われる場合は、設計担当者と打合せを行い決定する。

(5) 土の含水と締固め
土は、ある適当な含水比のとき最もよく締め固まり、締固め密度を最大にすることができる。このような含水比を最適含水比という。

(6) 寒冷期の施工時の注意
凍結土を埋戻し、盛土や地均しの材料として使用すると、凍結土が浴けた際に、地表面に凹凸・舗装面や犬走りにひび割れ等が発生しやすくなるので、使用してはならない。

(d) 余盛り
埋戻し及び盛土には、土質による沈み代を見込んで余盛りを行う。余盛りの適切 な標準値はなく、表 3.2.7 は一つの参考値であるが、これにより推定することは容易でない。通常の埋戻し( 地下2階で幅 1m程度 )において、砂を用い十分な水締めを行う場合 50~100mm、粘性土を用い十分な締固めを行う場合、100~150mm程度が余盛りの目安と考えられるが、重要な盛土では、試験により余盛りを決めるのがよい。

表 3.2.7 余盛りの参考値

3.2.4 地 均 し

地均しは、均しを行う地表面の不陸を修正し、草木の除去及び清掃をして、一様にかき均したのち、仕上げ面を一様になじみ起こしをして、良質土をまきかけ、歩行に耐えうる程度に締め固める。ここで、地表面は施工時に工事車両の走行や作業通路として締め固められており、地均し面の不陸の発生要因となるため、なじみ起こしは確実に実施する。また、寒冷期の施工に当たっては、凍結土を使用しないようにする。

3.2.5 建設発生土の処理

(a) 建設発生土処理についての注意事項
建設発生土を搬出する際、工事用車両の作業所出入口には、標識・点滅灯等を設置し、第三者に工事用車両の出入りを明示するほか、車両誘導員を配置して人身事故の防止及び作業所周辺道路に交通渋滞を生じさせないよう努力する必要がある。

また、建設発生土の運搬に当たっては過積載防止に努めるとともに、運搬中に土砂がこぼれ落ちないようにシート等を掛けて養生する。タイヤに付着した泥土は作業所内で洗浄し、通行する逍路を汚損しないようにする。

なお、平成14年に制定された土穣汚染対策法により、「その土地が特定有害物質によって汚染されており、当該土地の形質の変更をしようとするときの届出をしなければばらない区域」として都道府県知事が指定した区域内で土工事等を行う場合は、施行方法等の計画を事前に知事に届け出ることとされているので注意する (1.3.11 (a)参照)。

(b) 建設発生土処理に関する法規
建設発生土の運搬は、「土砂等を運搬する大型自動車による交通事故の防止等に関する特別措置法」に基づき、地方運輸局長から表示番号の指定を受けたトラックとする必要がある。また、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」並びに各地方公共団体による規制・指導に基づき建設発生土処理計画を作成し、これに従って適切に処理する。

なお、これらのほかに、(一財)土木研究センターの「建設発生土利用技術マニュアル」等が参考となる。

(c) 建設発生土の再利用
国土交通省が推進している「建設発生土情報交換システム」により、近隣地域での建設発生土や購入希望土等の情報がデータベース化されている。これを活用することにより、建設発生土の再利用を図ることが望ましい。
また、建設発生土の再利用については、平成3年建設省令第19号に技術基準が示されている。その抜粋を次に示す。

建設業に属する事業を行う者の再生資源の利用に関する判断の基準となるべき事項を定める省令
(平成3年10月25日 建設省令第19号 最終改正 平成13年3月29日)
(建設発生土の利用)
第4条
建設工事事業者は、建設発生土を利用する場合において、別表第1の上欄に掲げる区分に応じ、主として下欄に掲げる用途に利用するものとする。
2 前項の場合において、建設工事事業者は、建設発生土の品質等に関する技術的知見に基づき、建設工事の施工又は完成後の工作物(建築物を含む。以下同じ。)の機能に支障が生じないよう、適切な施工を行うものとする。
3 建設工事事業者は、建設発生土の利用に当たって、あらかじめ建設発生土の発生又は利用に係る必要な情報の収集又は提供に努めるものとする。

1級建築施工管理技士 平成27年 学科 問題3解説

平成27年 1級建築施工管理技士 学科 問題3 解答解説

※   問題番号[ No.21 ]~[ No.33 ]までの 13 問題のうちから、5 問題を選択し、解答してください。

[ No. 21 ]
乗入れ構台の計画に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.構台の高さは、大引下端を1階スラブ上端より 30cm 上になるようにした。

2.地震力を震度法により静的水平力として構造計算する場合、水平震度を 0.1 とした。

3.構台に曲がりがある場合、車両の回転半径を検討し、コーナー部の所要寸法を考慮して構台の幅員を決定した。

4.地下立上り部の躯体にブレースが当たるので、支柱が貫通する部分の床開口部にくさびを設けて支柱を拘束し、ブレースを撤去した。

答え

  2
構造計算において、地震力は震度法により静的水平力として計算する場合は、水平震度を0.2とする。(JASS2)

1 ◯
乗入れ構台の大引下端は、躯体コンクリート打設時に床の均し作業ができるように、1階スラブ上端より 20〜30 cm 程度上に設置する。(建築施工監理指針)

3 ◯
乗入れ構台に曲がりがある場合、各車両の回転半径を十分検討し、コーナー部分の所要寸法を考慮して幅員を決定する。(建築施工監理指針)

4 ◯
床開口部を貫通する支柱を床スラブへ剛強に拘束し、水平荷重及び鉛直荷重に対して十分安全な剛性を保つことにより、固定度を高めたうえであれば、ブレースを撤去することはできる。その場合、水平変形に対して十分留意する必要がある。

[ No. 22 ]
地盤調査に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.孔内水平載荷試験は、地盤の強度及び変形特性を求めることができる。

2.ハンドオーガーボーリングは、礫層で深度 10m 位まで調査することができる。

3.電気検層(比抵抗検層)は、ボーリング孔近傍の地層の変化を調査することができる。

4.常時微動測定は、地盤の卓越周期と増幅特性を推定することができる。

答え

  2
ハンドオーガーボーリングは人力によって地中にもみ込み、試料を採取するので、孔壁崩壊のない粘性土、砂質土など比較的柔らかい土で適用され浅い深さの地盤構成調査に適している。

1 ◯
孔内水平載荷試験は、ボーリング孔内に試験器を下ろし、孔壁に載荷するもので、地盤の変形係数降伏圧力極限圧力が求められ、杭の水平抵抗力の計算に用いられる。

3 ◯
電気検層(比抵抗検層)は、ボーリング孔内で地層の電気抵抗比を測定することにより、地層の厚さ連続性帯水層を把握し、地層構成を測定することができる。

4 ◯
常時微動を測定することにより、地震時の地盤の振動特性を調べることができ、その地盤の卓越周期を把握することができる。

[ No. 23 ]
ソイルセメント柱列山留め壁に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.山留め壁の構築部に残っている既存建物の基礎を先行解体するためのロックオーガーの径は、ソイルセメント施工径より大きい径のものとする。

2.多軸のオーガーで施工する場合で、N 値 50 以上の地盤又は大径の玉石や礫が混在する地盤では、先行削孔併用方式を採用する。

3.ソイルセメントの硬化不良部分は、モルタル充填や背面地盤への薬液注入などの処置をする。

4.掘削土が粘性土の場合は、砂質土と比較して掘削かくはん速度を速くする。

答え

  4
掘削土が粘性土の場合にあっては、砂質土と比較し掘削かくはんの速度を遅くして掘削する。(JASS3)

1 ◯
山留め壁の構築部に残っている既存建物の基礎を先行解体するためのロックオーガーの径は、ソイルセメント施工径より大きい径のものとする。小さい径のものを使用するとソイルセメント柱列山留め壁断面が不足する。

2 ◯
N値 50以上の地盤大径の玉石が混在する砂礫地盤では、先行削孔併用方式を採用してエレメント間の連続性を確保するようにする。(山留め設計施工指針)

3 ◯
ソイルセメントの硬化不良部分には、セメントペーストまたはセメントモルタルの充填や薬液注入などの処置を速やかに行う。(山留め設計施工指針)

[ No. 24 ]
既製コンクリート杭の施工に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.セメントミルク工法において杭の自重だけでは埋設が困難な場合、杭の中空部に水を入れて重量を増し、安定させる。

2.中掘り工法では、砂質地盤の場合、先掘り長さを大きくする。

3.下杭が傾斜している場合、継手部分で修正して上杭を鉛直に建て込まない。

4.杭の施工精度として、傾斜は  1/100以内、杭心ずれ量は杭径の 1/4 かつ 100 mm 以下を目標とする。

答え

  2
掘削中、必要以上に先掘りすると、周囲の地盤を緩めることになるため、施工中の先掘りの長さの調整監理が必要である。特に砂質地盤の場合には、緩みがはげしいので、先掘り長さを少なくして、杭径以内に調整する。

1 ◯
セメントミルク工法において、建込み中に浮力が作用し杭の自重のみでは埋設が困難となる場合がある。このような場合には、杭の中空部に水を入れて重量を増して安定させる。( JASS4 )

3 ◯
下杭が傾斜している場合は、上杭を建込む際、継手部分で修正してはならない

4 ◯
杭の施工精度として、一般的に「施工完了後の杭頭の水平方向の位置ずれは D/4 かつ 100 mm以下 」また「杭の傾斜は 1/100 以内」が望ましい。(JASS 4)

[ No. 25 ]
異形鉄筋の継手及び定着に関する記述として、最も不適当なものはどれか。 ただし、径は、呼び名の数値とする。

1.径の異なる鉄筋を重ね継手とする場合、重ね継手長さは、細い方の径により算定する。

2.大梁主筋に SD295B を用いる場合の直線定着の長さは、同径の SD390 を用いる場合より短い。

3.種類と径が同じ大梁主筋の直線定着の長さは、コンクリートの設計基準強度が 21 N/mm 2 の場合の方が、30 N/mm2 の場合より短い。

4.大梁主筋を柱内へ 90 °折曲げ定着する場合の柱への投影定着長さは、柱せいの 3/4 倍以上とする。

答え

  3
種類と径が同じ場合の大梁主筋の直線定着の長さは、コンクリート設計基準強度が21 N/mm2の方が、30 N/mm2より長くなる。(JASS5)

1 ◯
主筋等の継手ん重ね長さは、径の異なる主筋等を継ぐ場合にあっては細い主筋等の径を用いることが規定されている。(建築基準法施行令 第73条第2項)

2 ◯
大筋主筋にSD295を用いる場合の直線定着の長さはSD390を用いる場合より短くなる。(JASS5)

4 ◯
梁の主筋の定着は柱中心線を越えた位置(柱せいの 3/4以上のみこませた位置)に鉄筋の折り曲げ起点を設け、柱面より、L2を確保する。最上階の上端筋もしくは最下階の下端筋は折り曲げ起点よりL2を確保する。2段筋とも。

[ No. 26 ]
異形鉄筋のガス圧接に関する記述として、最も不適当なものはどれか。 ただし、径は、呼び名の数値とする。

1.同一製造所の同径の鉄筋で、種類が異なる SD390とSD345 を圧接した。

2.鉄筋に圧接器を取り付けて突き合せたときの圧接端面間のすき間は、2mm 以下とした。

3.同径の鉄筋をガス圧接する場合の鉄筋中心軸の偏心量は、その径の 1/5 以下とした。

4.径の異なる鉄筋のガス圧接部のふくらみの直径は、細い方の径の 1.2 倍以上とした。

答え

  4
径の異なる鉄筋のガス圧接部のふくらみの直径は、細い方の鉄筋径の1.4倍以上とする。

1 ◯
SD390とSD345とは圧接可能な鉄筋の種類の組合せである。(鉄筋のガス圧接工事標準仕様書)

2 ◯
鉄筋に圧接器を取り付けたときの鉄筋突合わせ面のすき間は、2mm以下とし、偏心及び曲がりがないものとする。

3 ◯
鉄筋中心軸の偏心量はその径の 1/5以下である。偏心量の大小は、施工の良否を示す指標の一つである。(JASS5)

[ No. 27 ]
型枠の支保工に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.スラブ型枠の支保工に軽量型支保梁を用いる場合、支保梁の中間部を支柱で支持してはならない。

2.支柱として鋼管枠を使用する場合、水平つなぎを最上層及び5層以内ごとに設けなければならない。

3.支柱としてパイプサポートを2本継いで使用する場合、継手部は4本以上のボルト又は専用の金具を用いて固定しなければならない。

4.支柱として用いる組立て鋼柱の高さが 5 m を超える場合、高さ 5 m 以内ごとに水平つなぎを2方向に設けなければならない。

答え

  4
型枠支保工の支柱として用いるパイプサポートの高さが4mを超える場合、高さ4m以内ごとに水平つなぎを2方向に設け、かつ変位を防止しなければならない。(労働安全衛生規則第242条第九号)

1 ◯
軽量型支保梁を用いる場合は、支保梁の両端を支持することとし、中間部を支柱で支持してはならない。(型枠の設計・施工指針)

2 ◯
支柱として鋼管枠を使用する場合、水平つなぎを設ける位置は、最上層及び5層以内ごととしなければならない。(労働安全衛生規則 第242条 第8号)

3 ◯
支柱としてパイプサポートを3本以上継いで用いてはならず、パイプサポートを継いで用いるときは、4本以上のボルトまたは専用の金具を用いて継がなければならない。(労働安全衛生規則 第242条 第七号)

[ No. 28 ]
コンクリートポンプ工法によるコンクリートの打込みに関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.粗骨材の最大寸法が 25mm の普通コンクリートを圧送する場合の輸送管の呼び寸法は、100A以上とする。

2.コンクリートの圧送負荷の算定におけるベント管の水平換算長さは、ベント管の実長の2倍とする。

3.コンクリートの圧送に先立ち圧送される先送りモルタルは、品質を低下させるおそれがあるので、型枠内には打ち込まない。

4.輸送管の水平配管は、型枠、配筋及び打ち込んだコンクリートに振動による有害な影響を与えないように、支持台や緩衝材を用いて支持する。

答え

  2
コンクリートポンプによる圧送は圧送負荷を算定し、ポンプの能力と対比し判定する。ベント管は実長の3倍の長さがあるものとして計算する。

1 ◯
コンクリート輸送菅の径は、コンクリートポンプの圧送性に直接影響し、径が大きいほど圧力損失が少なくなり、圧送性も良くなる。粗骨材の最大寸法が 25mmの場合の輸送菅の呼び寸法は 100A 以上とする。

3 ◯
コンクリートの圧送に先立ち圧送される先送りモルタルは、型枠内に打ち込まず破棄する。(公共建築工事標準仕様書)

4 ◯
輸送菅は圧送中に前後左右に動くので、鉄筋や型枠に輸送菅が直に接していると配筋の乱れ、型枠の変形等の原因になる。輸送菅の保持は、支持台に道板を置いたもの、支持台、脚立、つり金具、緩衝材等で行う。(JASS5)

[ No. 29 ]
コンクリートの養生に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.コンクリートの圧縮強度による場合、柱のせき板の最小存置期間は、圧縮強度が3 N/mm2 に達するまでとした。

2.連続的に散水を行って水分を供給する方法による湿潤養生は、コンクリートの凝結が終了した後に行った。

3.普通ポルトランドセメントを用いたコンクリートの打込み後5日間は、振動等によって凝結及び硬化が妨げられないように養生した。

4.膜養生剤の塗布による湿潤養生は、ブリーディングが終了した後に行った。

答え

  1
コンクリートの圧縮強度による場合、柱のせき板の最小存置期間は、短期及び標準の場合、5 N/mm2以上に達するまでとする。長期及び超長期の場合は、10 N/mm2以上に達すれば解体できる。

2 ◯
コンクリート養生は連続的または断続的に散水、噴霧等を行う。湿潤養生は、セメントの凝結が終了した後に開始する。(JASS5)

3 ◯
コンクリート打込み中及び打込み後5日間は、乾燥、振動等によってコンクリートの凝結及び硬化が妨げられないように養生しなければならない。(建築基準法施行令 第75条)

4 ◯
コンクリートの打込み後、膜養生剤や浸透性の養生剤により潤滑養生を行う場合、養生剤の散布はブリーディングの終了後に行う。(JASS5)

[ No. 30 ]
鉄骨の工作に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.高力ボルト用の孔あけ加工は、板厚が 13 mmの場合、せん断孔あけとすることができる。

2.490 N/mm2 級以上の高張力鋼にけがきをする場合、孔あけにより除去される箇所であれば、ポンチによりけがきを行ってもよい。

3.工事現場で使用する鋼製巻尺は、JIS の1級品とし、巻尺に表記された張力で鉄骨製作工場の基準巻尺とテープ合わせを行う。

4.厚さ6 mm の鋼板に外側曲げ半径が厚さの 10 倍以上となる曲げ加工を行う場合、加工後の機械的性質等が加工前の機械的性質等と同等以上であることを確かめなくてもよい。

答え

  1
鉄骨工事における高力ボルト用孔あけ加工の方法は、板厚に関係なくドリルあけとする。(JASS6)

2 ◯
鉄骨工事の工作にけがきは、490 N/mm2 級以上の高張力鋼または曲げ加工される 400 N/mm2級の軟鋼の外面には、ポンチ、たがねによる打こんを残してはならない。(JASS 6)

3 ◯
工事現場で行われる鋼製巻尺の照合は現寸作業開始前に工事現場用鋼製巻尺と工場製作用鋼製巻尺の誤差の確認を行うものである。湿度測定と一定の張力(一般には 50N)により照合する。

4 ◯
厚さ 6mm以上の鋼材などの曲げ加工にあっては外側曲げ半径が厚さの 10倍以上となるものに限り、加工後の機械的性質、化学成分などの品質が加工前の品質と同等以上であるかどうかの品質確認をしなくてもよい。(建築工事監理指針)

[ No. 31 ]
鉄骨の溶接に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.完全溶込み溶接で両面から溶接する場合、裏側の初層を溶接する前に、裏はつりを行う。

2.溶接割れを防止するため、溶接部及びその周辺を予熱することにより、溶接部の冷却速度を遅くする。

3.溶接を自動溶接とする場合、エンドタブの長さは、手溶接より短くできる。

4.柱梁接合部に取り付けるエンドタブは、本溶接によって再溶融される場合、開先内の母材に組立て溶接してもよい。

答え

  3
溶接を手溶接とする場合、エンドタブの長さは35mm以上、一般に自動溶接の場合は70mm以上とする。したがって、自動溶接の方が長い
(建築工事監理指針)

1 ◯
部材の両面から溶接する場合、裏面側の初層溶接をする前に表面側の溶接の健全な溶接金属部分が現れるまで裏はつりを行う。( JASS6 )

2 ◯
熱影響部の冷却速度が速いと溶接部の割れが発生しやすいので、溶接開始に先立ち、溶接部及びその周辺の予熱を行い、溶接部の冷却速度を遅くする。

4 ◯
柱梁接合部でのエンドタブの組立溶接は、直接、柱梁フランジに行わない。エンドタブを取り付ける場合は裏当て金に組立溶接を行う。(鉄骨工事技術指針)

[ No. 32 ]
ロングスパン工事用エレベーターに関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.搭乗席には、高さ 1.8m 以上の囲い及び落下物による危害を防止するための堅固なヘッドガードを設ける。

2.搬器の傾きが、 1/8 の勾配を超えた場合に動力を自動的に遮断する装置を設ける。

3.安全上支障がない場合には、搬器の昇降を知らせるための警報装置を備えないことができる。

4.昇降路の出入口の床先と搬器の出入口の床先との間隔は、4cm以下とする。

答え

  2
ロングスパン工事用エレベーターでは、搬器の傾きが1/10の勾配を超えないうちに、動力を自動的に遮断する安全装置を設ける。

1 ◯
ロングスパン工事用エレベーターは、積載荷重が 500 〜 1,200 kg、架台床面 3.9 〜 19.4 m2 のものが多い。また、運転者等の搭乗部分には、ヘッドガードを設ける。

3 ◯
搬器の昇降を知らせるための警報装置を備える。ただし、安全上支障がない場合には、搬器の昇降を知らせる警報装置を備えないことができる。

4 ◯
昇降路の出入口の床先と搬器の出入口の床先との水平距離は、4cm以下とする。

[ No. 33 ]
鉄筋コンクリート造の耐震改修工事における現場打ち鉄筋コンクリート耐震壁の増設工事に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.壁上部と既存梁下との間に注入するグラウト材の練上り時の温度は、練り混ぜる水の温度を管理し、10~35 ℃ の範囲とする。

2.打継ぎ面となる範囲の既存構造体コンクリート面は、すべて目荒しを行う。

3.既存壁に増打ち壁を設ける工事において、シヤーコネクターを型枠固定用のセパレーターとして兼用してもよい。

4.コンクリートポンプ等の圧送力を利用するコンクリート圧入工法は、既存の梁下との間にすき間が生じやすいので採用できない。

答え

  4
コンクリート圧入工法は、既存の梁面との間にすき間が生じないように、ポンプ等で圧力で加えながら打込む工法なので、打継ぎ面の施工には適している。圧入工法は、既存梁と増築壁との接合をより確実を行うことができる。

1 ◯
耐震改修工事における現場打ち鉄筋コンクリート耐震壁の施工においては、現場施工時に水温の管理を十分に行い、水温 10℃ 以上の水を用いてグラウト材を練り上げ、練上り時の温度が 10 〜 35℃の範囲のものを注入する。

2 ◯
打継ぎ面となる既存構造体コンクリート面は必ず目荒しを行う。また、はつりくずや粉末を完全に除去する。

3 ◯
既存壁に新たに増打ち壁を設ける工事において、増打ち壁と既存壁との一体性を増すために、既存壁からシヤーコネクターを設けることが一般的であるが、特記によりセパレーターと兼用することができる。

3章 土工事 3節 山留め

第3章 土工事 


3節 山留め

3.3.1 山留めの設置

(a) 山留めの計画及び施工
(1) 山留めの概要
山留めは、地下構造物、埋設物等の施工中、掘削の側面を保護して周囲地盤の崩壊や土砂の流出を防止するためのもので、敷地に余裕のある場合、あるいは掘削が簡易な場合は、掘削部周辺に安定した斜面を残し、山留め壁等を設けない工法(図3.3.1 法付けオープンカット工法)とするのが一般的である。建築現場の周囲の状況、掘削の規模、地盤の状態等により、前記工法ができない場合は、山留め壁又は支保工による山留めを設置する。

山留めにかかる荷重としては、土圧、水圧、載荷荷重等があるが、それらを仮定するには、土質、地下水位、周辺の建築物や地盤上の荷重、周辺の状況等により異なり、種々の計算方法がある。


図3.3.1 法付けオープンカット工法〈索掘り、空掘り〉

(2) 山留めの種類
(i) 山留め工法の分類
山留めの種類には自立式,切張り式地盤アンカー式等種々のものがある。山留め工法の種類と特徴を表3.3.1に示す。

表3.3.1 山留め工法の種類と特徴(その1)(山留め設計施工指針 JASS 3(一部修正)より)

表3.3.1 山留め工法の種類と特徴(その2)(山留め設計施工指針・JASS 3(一部修正)より)

(ii) 山留め壁の種類
建築工事で用いられる山留め壁は、図3.3.2に示すように多くの種類がある。適切な工法を選択するためには地盤条件、掘削の規模、山留め壁に要求される剛性・止水性、振動・騒音等の公害、工期・工費等を総合的に検討する必要がある。これらの条件と山留め壁の選定基準の目安を表3.3.2に示す。山留め壁の種類と特徴をまとめたものを表3.3.3に示す。


図3.3.2 建築工事で多用される山留め壁の種類(山留め設計施工指針より)

表3.3.2 与条件に対する山留め壁選定基準の目安(山留め設計施工指針より)

表3.3.3 山留め壁の種類と特徴(山留め設計施工指針より)

従来、山留め壁としては、親杭横矢板壁、鋼矢板壁くシートパイル>等の打込み式によるものが一般的であった。しかし、近年では、振動・騒音、周辺地盤の沈下等の山留め壁の施工に伴う公害の防止や、掘削工事に伴う周辺地盤・構造物等への影響を防止するため、公害が少なく、また、比較的山留め壁の剛性・止水性に優れたソイルセメント柱列壁等が多く用いられるようになった。

ソイルセメント柱列壁工法は、注入液として用いるセメント系注入液を原位置土と混合・かくはんし、オーバーラップ施工した掘削孔にH形鋼等の心材を適切な間隔で挿入することにより柱列状に設置した山留め壁である。

なお、心材は、山留め壁の設計条件に応じ挿入間隔を決定する。

オーガーの形状や軸数は種々あるが、軸数が多ければ遮水性能の確保が有利であり、施工効率も上げられるなどの特徴もある。

心材としては、H形鋼・I 形鋼・鋼管等が用いられる。ソイルセメント柱列壁では通常450~550mm径のものが多く用いられる。また、大深度の掘削工事においては、1m程度の径を有するものが用いられることもある。ソイルセメント柱列壁の特徴を次に示す。

1) 騒音・振動が少ない。
2) かくはん翼のラップ施工により構築されるので、止水性が高い。
3) 泥水処理が不要で、排出泥土も他のRC山留め壁に比べて少ない。
4) 注入液の調合については、固化強度のばらつきが大きく、混合試験による事前検討が必要である。圧縮強度は、一般的に粗粒土になるほど大きいが、粒度分布・コンシステンシー・有機物含有量等により影響されるので十分注意する必要がある。
5) 掘削に伴う周辺地盤の緩みが少ないため、近接構造物に与える影響が少ない。

(iii) 山留め支保工の種類
山留め支保工は、掘削時に山留め壁に作用する土圧・水圧を安全に支えるとともに、山留め壁の変形をできるだけ小さくして周辺地盤並びに構造物に有害な影響を及ぼさないことを目的として架設する。したがって、山留め支保工の選定に当たっては、土圧・水圧の大きさのみならず、山留め壁との適切な組合せや、施工条件等を十分考慮しなくてはならない。通常の掘削工事において用いられる山留め支保工の種類を図 3.3.3に示す。また、これらの特徴を表 3.3.4に示す。


図 3.3.3 山留め支保工の種類と分類

表 3.3.4 山留め支保工の種類と特徴(山留め設計施工指針(一部修正)より)

① 鋼製支保工
鋼製支保工は、山留め壁に作用する土圧・水圧を鋼製腹起し、切張りの水平材で支える工法であり、市街地の掘削工事では最も実施例が多く信頼性が高いオーソドックスな方法である。現在ではほとんどリース材で施工されており、また、どの種類の山留め壁とも組合せが可能で、適用範囲が広い(図 3.3.4参照)。


図 3.3.4 鋼製支保工による山留め架構(山留め設計施工指針(一部修正)より)

② 地盤アンカー
地盤アンカー工法は、切張り工法では安全性に問題があるような不整形な掘削平面の場合、敷地の高低差が大きくて偏土圧が作用する場合、掘削面積が大きい場合、山留め変形を極力少なく抑えたい場合等には有効である。

地盤アンカー工法は、一般に切張りで支えている土圧や水圧を、山留め壁背面の地盤中に設けた地盤アンカーで支える工法である(図 3.3.5参照)。アンカーとなるPC鋼材を背面土にどのように定着させるかによって、工法が異なってくる。図 3.3.6に親杭横矢板工法の場合の地盤アンカー用腹起しの例を示す。


図 3.3.5 地盤アンカー工法の使用例(建築地盤アンカー設計施工指針・同解説より)


図 3.3.6 地盤アンカー用腹起し例(建築地盤アンカー設計施工指針・同解説より)

地盤アンカー工法の特徴と注意点等を次に示す。

1) 切張りがないため大型機械を使用することができ、施工効率が上がる。

2) 傾斜地等で片側土圧(偏土圧)となる場合の処理が容易である。

3) アンカーの設置に使用する機械は、地質調査に使用される程度の小型機であり、作業スペースが狭い所でも施工できる。

4) 山留め壁の背面地盤が軟らかい粘性土地盤の場合は、耐力があまり期待できず、定着長さが長くなり施工上の問題が発生しやすくなるので注意する。

5) 地中埋設物に十分注意して施工する必要がある。

6) 山留め壁は敷地境界近くに設置される場合が多いため、敷地から外にアンカ一部分がでる場合もある。この場合は、事前に隣地管理者等関係者の了解が必要となるので注意する。

7) 地盤アンカーの引抜き耐力は、全数について設計アンカーカの1.1倍以上であることを確認する(一般に山留め様にはプレストレスを導入する場合が多いので、この時点で耐力の確認が行われている)。

8) 山留め壁には鉛直力が作用するので、山留め壁は十分な鉛直支持性能を有する地盤に支持させる必要がある。

(iv) 薬液注入工法
薬液注入工法は、地盤の止水性又は強度増大を目的として、建築の山留め工事では主に補助工法として用いられる。小型のボーリングマシンで施工可能なため、施工場所の制約や地中障害物との干渉等の理由により止水壁の施工が困難な部分や、止水壁欠捐部の補修等に適用されている。薬液注入工法を用いる場合は、薬液による水質汚染のおそれがあるので注意しなくてはならない。また、山留め壁には注入圧が作用し、山留め壁が変位することもあるので注意する。

なお、薬液注入工法については、「薬液注入工法による建設工事の施工に関する暫定指針について」(昭和49年7月10日 建設省官技発第160号)、「薬液注入工法の管理について」(昭和52年4月21日 建設省官技発第157号)、「薬液注入工事に係る施工管理について」(平成2年4月24日 建設省技調発第110号の1)及び「薬液注入工事に係る施工管理等について」(平成2年9月18日 建設省技調発第188号の1)が定められているので、これに基づき施工及び管理を行うようにする。

(3) 山留め支保工(切張り式)の架設
山留め支保工の架設に当たっては、次の点に留意し施工を行うようにする。

① 支保工の架設は、施工図に基づき確実に行う。架設材の安全率は低くとってあるので、施工に当たっては組立順序、工法等に十分注意する。

② 支保工の架設、法面養生作業と掘削速度は,均衡を図りながら作業を進める。

③ 1段目の支保工架設前は、山留め壁の倒れに注意する。

④ 2段目の支保工を架けたら、1段目の腹起しと山留め壁の間に隙間ができていないか点検し、隙間があれば、くさび〈キャンバー〉をかうなどして外力が切張りに均等に加わるようにする。

⑤ 根切り面積の広いところでは、切張りが座屈しないよう水平精度に留意し、中間を適当な間隔の支柱で安全に支持する。

⑥ 支保工にできるだけ衝撃を与えないように工事を進める。特に、横からの衝撃は、座屈の原因となるので注意する。

⑦切張り、腹起しの曲がり、ねじれ、接合部及び交差部のUボルト、当て板溶接等による緊結状態に十分注意する。

⑧ 地下水の湧水量の増減に常時注意し、工事に支障のある場合は、関係者と協議し、工事の安全及び進捗を図る。

⑨ 山留め及び支保工は、常時巡回点検し、異状の発見に努める(3.3.2 (b)参照)。また、異常が発見された場合は、速やかに対策をとるとともに、関係者と協議する。

⑩ 切張りにプレロード(事前に側圧に対抗する力を切張りに導入しておくこと。図 3.3.7 ~9 参照)を導入する場合は、地盤条件、荷重条件、山留め設計図書及び山留め壁の応カ・変形、切張り軸力の計測結果等を総合的に検討し適切なプレロード量を設定する。また、プレロードの導入に際しては、切張り材の日射等による温度変化から生じる温度応力についても事前に検討し、切張り耐力の安全性を確認しておくことが望ましい。

次に、プレロードの加圧時には、軸力が平面的に均等に加わるように注意し、山留め壁の応カ・変形、切張り軸力等を計測するとともに、異状がないか点検する。特に、多段切張りによる支保工を用いる場合は、上段に架設されたり切張りの軸力が著しく低下しないよう留意する。


図3.3.7 切張りジャッキ施工例


図3.3.8 ジャッキ補強ピース施工例


図3.3.9 プレロード導入のための加圧装置の例

(b) 山留めの構造
山留めの構造は、掘削工事に伴う崩壊あるいは過大な変形が発生することがないよう、掘削工事時に作用する側圧に対し安全な構造とし、十分な強度と剛性を有するものとする。

山留め構造の計画は、(一社)日本建築学会「山留め設計施工指針」に設計及び評価方法が示されているので参考にするとよい。

(i) 山留めに作用する側圧
① 山留めに作用する側圧は、土質及び地下水位に応じ設定する。

②切張り及び腹起しの断面算定に当たっては、支保工の状態に応じて分布形を設定し、断面の算定を行う。

③ 構造物やその他の積載物に近接した山留めを計両する際には、①②のほかに、これらの近接物の影響を考慮した側圧評価を行い、山留めの検討を実施する。

④ 山留め壁、切張り、腹起し等は、強度及び変形量に対して、構造条件に適合した方法で検討するとともに、継手及び仕口部は、部材応力を無理なく伝達できる構造とする。

(ii) 山留め壁の許容応力度
山留め壁の材料の許容応力度は、各材料に対して設定された許容応力度を用いる。山留め壁に用いる材料の許容応力度は、「山留め設計施工指針」及び(一社)日本建築学会「建築地盤アンカー設計施工指針・同解説」に示されているので参考にするとよい。

3.3.2 山留めの管理

(a) 点検・計測管理
(1) 点検・計測管理の目的と要点
点検・計測管理の目的は、周辺地盤、隣接構造物、地中埋設物の沈下・移動及び土圧・水圧、山留め架構の応力、変形等を測定し、計画上の諸条件と比較検討して、周辺地盤の防害、隣接構造物の領斜・転倒、地中埋設物の損傷、ヒービング、ボイリング、山留めの傾斜・崩壊等の危険を事前に把握して、速やかに対処することである。

点検とは、目視及びスケール等による確認行為、計測とは、機械式,光学式測定機器を使用する簡易計測及び電気式測定機器を使用する計器計測による確認行為である。

点検・計測管理の計画で最も重要なことは、点検・計測結果に対して、適切な判断をすることであり、あらかじめ限界となる値を定めておき、その値に近づいてきたとき、対策又は具体的な措置がとれるよう準備しておくことである。

(2) 点検・計測について
(i) 点検・計測の対象項目.方法期間及び頻度
点検・計測の対象、項目及び方法の例を表 3.3.5に、また、点検・計測の期間及び頻度の例を表 3.3.6に示す。点検・計測には労力と経費を要することは当然であるが、工事の規模や地盤条件、周辺の状況等を考慮して、どの程度の点検・計測を行う必要があるかを検討し、山留め計画の一部として点検・計測管理の計画を立てておくことが望ましい。

表3.3 5 点検・計測の対象項目及び方法の例( JASS 3(一部修正)より)

表3.3.6 点検・計測の期間及び頻度の例( JASS 3(一部修正)より)

(ii) 計測の方法
山留めの計測方法には、電気的なセンサーとデータ収録・処理装骰等を用いた電気的計測と、ダイヤルゲージ、レベル、トランシット、盤圧計等を用いた機械的・光学的計測とがある。

1) 電気的計測は比較的大規模な工事や重要度・難易度の高い工事で採用されることが多く、手動計測から自動計測まで種々のシステムがある。計測システムは測定の目的、測点数、経費等に応じて選定される。

2) 機械的・光学的計測は、前記以外の工事において採用されるほか、電気的計測を行う工事での補助的な計測としても用いられる。一般的な現場で実施されている計測の概要は次のとおりである。

まず、掘削周辺の地盤の動きを測るために地上の適切な場所に測点を設置し、この点の垂直、水平の動きをトランシット、レベル、スケール等を用いて測る。山留め壁の変形は、壁の頂点に各通りごとに、何箇所か測点を設け、事前に設置した不動点を通してトランシットとスケール、又はピアノ線とスケールを使い山留め壁の面外への変位を計測する(図 3.3.11参照)。

土圧の計測には、これを直接測る方法も取られているが、一般的には山留め切張りにかかる軸力を図3.3.10に示すような盤圧計(ブルドン管形式)で測り安全性を確認している。設置箇所は掘削平面形状が単純な矩形で、周辺も特殊な条件がない場合、切張り各段ごとにX方向、Y方向に各1箇所ずつが一般的である。


図 3.3.10 切張り軸力計測の盤圧計取付け部例


図3.3.11 トランシットによる山留め変形測定の例

(iii) 盤圧計の設置方法

① 腹起しと切張りの接合部に設置する場合
火打材を用いない山留め支保工の場合に適し、盤圧計を取り付けても山留め支保工の安全にはほとんど影響を与えない。この場合は、火打材を入れると火打材に作用する力は測定できない(図3.3.12(イ)参照)。

② 火打材の基部に設置する場合
この場合は、切張りにかかる全荷重を測定することができるが、山留め支保工の安全性を阻害するおそれがあるので図 3.3.12(ロ)のような位置に必ず支柱を配置するなど、十分に注意する必要がある。盤圧計の取付け実施例を図 3.3.13に示す。

③ 切張りの中央に設置する場合
この場合は、腹起しから盤圧計位置までの距離が長いので、その間で荷重がつなぎ材や直角方向の切張り等に吸収されてしまい、全荷重を示さない。また、山留め支保工の安全から望ましくない(図 3.3.12(ハ)参照)。


図 3.3.12 盤圧計の設置方法

図 3.3.13 盤圧計の取付け実施例

(iv) 温度による影響
切張り材に鋼材を用いた場合は、温度変化の影響を考慮しなければならない。したがって、土圧を測定するときは気温も同時に測定するとともに、鋼材の膨張による応力変化を考慮する必要がある。

(3) 管理方法
計測結果を効果的に工事にフィードバックするには、迅速なデータ整理と計測結果の的確な評価、並びに安全性を損なう事態が発生した場合の対処方法について、計画時点で明確にしておく必要がある。管理計画においては、計測結果の検討方法や評価基準を明確にするとともに、異状時の対処についても管理体制を明確にしておくことが必要である。

計測結果の検討法の一例を図 3.3.14に示す。測定値はこの図のフローに従って検討する。

図中に示した管理基準値は測定値の評価基準となるものであり、設計条件や周辺環境条件から定められる。管理基準値は、計測項目によって異なるが、基本的な考え方として「一次管理値」、「二次管理値」、「限界値」というように細分化しておくと使用しやすい。例えば、「一次管理値」は設計計算値の80%、「二次管理値」は設計計算値、「限界値」はこれを超えると山留め架構の崩壊や周辺に障害が発生する値といった要領である。この場合、「一次管理値」は工事の努力目標、あるいはこれを超えると要注意といった注意信号であり、「二次管理値」は赤信号でこれを超えると抜本的な対策が必要という考え方である。

計測結果を評価することにより、計測時点の安全性を確認できるとともに、その後の推測もある程度可能であり、計測管理を工事ヘフィードバックしていることになる。最近では、更に一歩進めて計測時点の安全性はもちろんその後の挙動予測を行い安全性の確認,過大設計の修正に役立てようという試みがなされている。これは「情報化施工」あるいは「観測施工法」等と呼ばれている方法である。

なお、「限界値」の目安を表 3.3.7に示す。


図 3.3.14 測定値の検討フロー例(山留め設計施工指針より)

表 3.3.7 限界値の例(山留め設計施工指針(一部修正)より)

(b) 山留め設置期間中の異状

(1) 異状の発見及び観測
(i) 周辺地盤の沈下及びひび割れ

(ii) 山留め壁の変形:山留め壁頭部の移動量をトランシット、下げ振り等により測定する(図 3.3.11参照)。

(iii) 山留め支保工の変形

(iv) 切張りに作用する側圧測定

(v) 山留め壁からの漏水

(vi) 山留め壁背面土の状態(親杭横矢板工法の場合)
①横矢板をたたいて背面土の状態を点検
②横矢板の配列の乱れ

(2) 特殊な異状現象
(i) ヒービング
軟弱粘性土地盤を掘削するとき、山留め壁背面の土の重量によって掘削底面内部に滑り破壊が生じ、底面が押し上げられてふくれ上がる現象(図 3.3.15参照)。

(ii) ボイリング、クイックサンド、パイピング
上向きの水流のため砂地盤の支持力がなくなる現象、つまり砂地盤が水と砂の混合した液状になり、砂全体が沸騰状に根切り内に吹き上げる現象をボイリングといい(図 3.3.16参照)、このような砂の状態をクイックサンドという。
また、山留め壁の下部内側にクイックサンドが起きると山留め壁の上部外側からも土砂が運ばれてパイプ状の水みちができる。このような現象をパイピングという。

図 3.3.15 ヒービングの説明図


図 3.3.16 ボイリングの説明図

(iii) 盤ぶくれ
掘削底面下方に、被圧地下水を有する帯水層がある場合、被圧帯水層からの揚圧力によって、掘削底面の不透水性土層が持ち上げられる現象(図 3.3.17参照)。


図 3.3.17 被圧地下水による盤ぶくれの説明図

(c) 建築基準法施行令及び労働安全衛生規則に定められている災害防止関係の規定の概要を次に示す。

(1) 建築基準法施行令第136条の3(根切り工事、山留め工事等を行う場合の危害の防止)
(i) 地下埋設物(ガス管、ケーブル、水道管及び下水道管)の損壊による危害の発生を防止する措置を講じなければならない。

(ii) 建築工事等における地階の根切り工事その他の深い根切り工事(これに伴う山留め工事を含む。)は、地盤調査による地層及び地下水の状況に応じて作成した施工図に基づいて行わなければならない。

(iii) 建築物その他工作物に近接して根切り工事や掘削工事を行う場合は、当該エ作物の傾斜、倒壊による危害の発生を防止するための措置を講じなければならない。

(iv) 深さ1.5m以上の根切り工事を行う場合で、地盤が崩壊するおそれ及び周辺の状況により危害防止上支障があるときは、山留めを設けなければならない。

(v) 山留めの切ばり、矢板、腹起しその他の主要な部分は、構造計算により安全である構造としなければならない。

(vi) 工事施工中必要に応じて点検を行い、山留めを補強し、排水を適当に行うなど、安全な状態に維持するための措置を講ずるとともに,矢板等の抜取りに際しては、周辺の地盤の沈下による危害を防止するための措置を講じなければならない。

(2) 労慟安全衛生規則第368条~第375条(掘削作業等における危険の防止(土止め支保工))
(i) 土止め支保工の材料については、著しい損傷、変形又は腐食があるものを使用してはならない。

(ii) 土止め支保工の構造については、土止め支保工を設ける箇所の地山に係る形状、地質、地層.き裂,含水,湧水,凍結及び埋設物等の状態に応じた壁固なものとしなければならない。

(iii) 土止め支保工を組み立てるときは、矢板、くい、背板、腹おこし、切りばり等の部材の配置、寸法及び材質並びに取付けの時期及び順序を示した組立図を作成しなければならない。

(iv) 部材の取付け等の注意事項
① 切りばり及び腹おこしは、脱落を防止するため、矢板、くい等に確実に取り付ける。

② 圧縮材(火打ちを除く。)の継手は、突合せ継手とする。

③ 切りばり又は火打ちの接続部及び切りばりと切りばりとの交さ部は、当て板をあててボルトにより緊結し,溶接により接合する等の方法により堅固なものとする。

④ 中間支持柱を備えた土止め支保工にあっては、切りばりを中間支持柱に確実に取り付ける。

⑤切りばりを建築物の柱等部材以外の物により支持する場合にあっては、当該支持物は、これにかかる荷重に耐えうるものとする。

(v) 土止め支保工を設けたときは、その後7日をこえない期間ごと、中震以上の地震の後及び大雨等により地山が急激に軟弱化するおそれのある事態が生じた後に、次の事項を点検し、異常を認めたときは、直ちに補強又は補修しなければならない。

① 部材の損傷、変形、腐食、変位及び脱落の有無及び状態
② 切りばりの緊圧の度合
③部材の接続部、取付け部及び交さ部の状態

(vi) 土止め支保工の切りばり又は腹おこしの取付け及び取りはずしの作業については、土止め支保工作業主任者技能講習を修了した者のうちから、土止め支保工作業主任者を選任しなければならない。

3.3.3 山留めの撤去

(a) 山留め架構の撤去方法

山留め架構の撤去は、一般に地下躯体の構築に伴い所定の強度が発現したのち、側圧を躯体で受け直し、支保工を順次解体する(図 3.3.18参照)。

この際、上記支保工の設置深さを、地下躯体の構築過程を考慮して決める必要がある。また、支保工解体によって、上部の支保工に、解体以前に比較して大きな荷重が加わることになるので注意する。地下躯体にも荷重が加わるので、躯体強度についても確認して工事を進める。

施工条件によっては、切張り地盤アンカー、腹起しといった支保工を残したまま、地下躯体を1階床まで構築し、躯体強度が十分に発現したのち、山留め壁に作用する側圧を、地下外壁で受け直して支保工を撤去することもあるが、切張り工法の場合、だめ穴が発生し,漏水の可能性が高くなるため注意する。

なお、側圧の地下外堅への受直しで、各階床間の地下外壁に盛替え切張りを用いる場合(図 3.3.19参照)で、地下外壁に補強が必要な場合の補強例を表 3.3.8に示す。


図 3.3.18 山留め架構の撤去方法(JASS 3(一部修正)より)


図 3.3.19 盛枠え切張りの例(JASS 3(一部修正)より)

表 3.3.8 躯体の補強例(JASS 3(一部修正)より)

(b} 山留め壁の撤去
鋼矢板や親杭等を引き抜くと、周囲の土もともに抜き取ってしまい、大きな地盤沈下を引き起こすこともあるので、沈下量をなるべく少なくするよう直ちに抜き跡を砂等で充填する。また、鋼矢板や親杭等の引抜きにより、近隣に支障を与えるおそれがある場合は、山留め壁の存置等について設計担当者と打ち合わせ、適切に処理する。

(c) 切張り、地盤アンカー、腹起し等の撤去
切張り、地盤アンカーには大きな荷重が作用している。このため、軸力の解放時に金物類等が飛び出す危険がある。

また、地盤アンカーの鋼線が跳ね上がることもある。したがって、軸力の解放は適切な方法で行う。軸力の急激な解放を避け、解放時に、山留めや構造体に支障が起きていないか注意する。

支柱の引抜きは、構造体に支障を及ぼさないよう適切に行う。構造体に支障があったり、引抜きが困難な場合は、支柱の切断について設計担当者と打ち合わせ、適切に処理する。

参考文献

1級建築施工管理技士 平成27年 学科 問題4解説

平成27年 1級建築施工管理技士 学科 問題4 解答解説

※   問題番号[ No.34 ]~[ No.45 ]までの 12 問題のうちから、5 問題を選択し、解答してください。

[ No. 34 ]
アスファルト防水工事に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.保護防水密着工法において、貫通配管回りに増張りした網状アスファルトルーフィングは、アスファルトで十分に目つぶし塗りを行った。

2.露出防水絶縁工法において、平場部と立上り部で構成する入隅部に用いる成形キャント材は、角度 45度、見付幅 70 mm 程度のものとした。

3.出隅及び入隅は、平場のルーフィング類の張付けに先立ち、幅 150 mm 程度のストレッチルー フィングを増張りした。

4.保護コンクリート内に線径 6.0 mm、網目寸法 100 mm の溶接金網を敷設した。

答え

  3
アスファルト防水において、出隅及び入隅ならびに立上りの出隅及び入隅には、平場のルーフィング類の張付けに先立ち、幅300mm以上のストレッチルーフィングを最下層に増張りする。なお、屋根露出防水の絶縁工法における出隅及び入隅では、幅700mm以上のストレッチルーフィングを用いて、平場へ500mm以上張り掛けて増張りする。(建築工事監理指針)

1 ◯
アスファルト防水において、貫通配管及び和風便器回りに用いる網状アスファルトルーフィングは、アスファルトで十分に目つぶし塗りを行う。(建築工事監理指針)

2 ◯
露出防水絶縁工法において、成形キャント材は、パラペットの立上がり入隅部に用いる成形緩衝材で、角度 45度、見付幅 70mm 程度のものとする。(建築工事監理指針)

4 ◯
すべての保護コンクリートに、ひび割れを防止するため、溶接金網を伸縮調整目地内ごとに敷き込み、鉄線径 6 mmの溶接金網では 1節半以上かつ 150mm以上重ね、コンクリート打ち込み時に動かないように鉄線で結束する。(建築工事監理指針)

[ No. 35 ]
合成高分子系ルーフィングシート防水に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.塩化ビニル樹脂系シート防水接着工法において、下地が ALC パネルの場合、パネル短辺の接合部の目地部に、幅 50 mm の絶縁用テープを張り付けた。

2.塩化ビニル樹脂系シート防水接着工法において、シート相互の接合は、クロロプレンゴム系の接着剤を用いた。

3.加硫ゴム系シート防水接着工法において、防水層立上り端部の処理は、テープ状シール材を張り付けた後ルーフィングシートを張付け、末端部は押さえ金物で固定し、不定形シール材を充填した。

4.加硫ゴム系シート防水接着工法において、平場のシート相互の接合幅は 100 mm とし、原則として水上側のシートが水下側のシートの上になるように張り重ねた。

答え

  2
塩化ビニル樹脂系シート防水において、シート相互の接合は、テトラヒドロフラン系溶剤を用いて溶剤接着するか熱融着により接合する。

1 ◯
ALCパネル下地の場合は、一般部のルーフィングシートの張付けに先立ち、パネル短辺の接合部の目地部に幅 50mm程度の絶縁用テープを張り付ける。(建築工事監理指針)

3 ◯
加硫ゴム系シート防水の末端部は端部にテープ状シール材を張り付け、押さえ金物を用いて留め付けて、不定形シール材で処置する。

4 ◯
シート相互の接合部は、原則として水上側のシートが水下側のシートの上になるように張り重ね、その平場の接合幅は、長手、幅方向とも 100mm以上とする。( JASS 8 )

[ No. 36 ]
乾式工法による外壁の張り石工事に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.厚さ 30mm、大きさ 500mm 角の石材のだぼ孔の端あき寸法は、60mmとした。

2.スライド方式のファスナーに設ける上だぼ用の孔は、外壁の面内方向のルーズホールとした。

3.下地のコンクリート面の寸法精度は、± 10 mm以内となるようにした。

4.石材間の目地は、幅を10 mmとしてシーリング材を充填した。

答え

  1
石材のだぼ孔の端あき寸法は、石材の厚みの3倍以上の90mm以上とし、石材幅の辺長の1/4程度である125mm程度の位置にバランスよく設ける。(JASS9)

2 ◯
スライド方式で変形に追従させる場合の二次ファスナーのだぼ穴は外壁の面内方向のルーズホールとする。

3 ◯
公共建築工事標準仕様書表 10.1.1により、乾式工法の下地面の寸法精度標準値は、± 10mm とする。

4 ◯
石材間の目地には、シーリング材を充填する。なお、シーリング材の寸法は、幅、深さとも 10mm以上とする。(公共建築工事標準仕様書)

[ No. 37 ]
金属製折板葺き屋根工事に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.タイトフレームの割付けは、両端部の納まりが同一となるように建物の桁行き方向の中心から行い、墨出しは通りよく行った。

2.タイトフレームの受梁への接合は、下底の両側を隅肉溶接とし、隅肉溶接のサイズを受梁の板厚と同じとした。

3.水上部分の折板と壁との取合い部に設ける雨押えは、壁際立上りを 150 mm とした。

4.軒先の落とし口は、折板の底幅より小さく穿孔し、テーパー付きポンチで押し広げ、5 mmの尾垂れを付けた。

答え

  2
タイトフレームの下地(受梁)への取付けは、受梁にアーク溶接接合とする。溶接は、タイトフレームの立上り部分の縁から10mm残し、底部両側を隅肉溶接とする。溶接サイズはタイトフレームの板厚と同寸法とする。(JASS12)
1 ◯
タイトフレームを取り付けるための墨出しは、山ピッチを基準に行い、割付けは建物の桁行き方向の中心から行う。(JASS 12)
3 ◯
水上部分と壁との取合い部に設ける雨押えは、壁際で150mm以上立ち上げる。(JASS12)
4 ◯
軒先き落とし口は、底幅より尾垂れ寸法を控えた円孔をあける。軒先の折板の先端部には、下底を 15度程度曲げて長さ 5mm以上の尾垂れを付ける。( JASS12)

[ No. 38 ]
軽量鉄骨壁下地に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.スタッドの高さが 4.5mの場合、区分記号 90形のスタッドを用いた。

2.ボード2枚張りとする間仕切壁のスタッドの間隔は、450mm とした。

3.振れ止めは、フランジ側を上向きにしてスタッドに引き通し、振れ止めに浮きが生じないようにスペーサーで固定した。

4.上部ランナーが軽量鉄骨天井下地に取り付けられる間仕切壁の出入口開口部の縦の補強材は、上端部をランナーに固定した。

答え

  4
出入口等の開口部の垂直方向の補強材は、上部ランナーが鋼製天井下地材に取り付けられる場合でも、上部は梁下、スラブ下に固定する。(建築工事監理指針)

1 ◯
スタッドには、50形、65形、90形、100形の種類があり、それぞれスタッドの断面によって長さが次の通り制限される。( JASS 26 )
①50形:2,700mm以下
②65形:4,000mm以下
90形:4,000mm超 4,500mm以下
④100形:4,500mm超 5,000mm以下

2 ◯
スタッドの間隔は、下地張りのある場合は450mm程度、仕上げ材料を直張りするか、壁紙または塗装下地の類を直接張り付ける場合は 300mm程度とする。( JASS 26 )

3 ◯
振れ止めは、フランジ側を上向きにしてスタッドに引き通し、振れ止めに浮きが生じないようスペーサーで固定する。設備配管や埋込みボックスなどで振れ止めを切断する場合は、振れ止めを同材またはボルトで補強する。(建築工事監理指針)

[ No. 39 ]
建築用仕上塗材の主材の一般的な塗付け工法に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.内装厚塗材 C のスタッコ状仕上げは、吹付け工法又はこて塗り工法により行う。

2.内装薄塗材 Wの京壁状じゅらく仕上げは、ローラー塗り工法により行う。

3.可とう形外装薄塗材Eのさざ波状仕上げは、ローラー塗り工法により行う。

4.防水形複層塗材Eのゆず肌状仕上げは、ローラー塗り工法により行う。

答え

  2
内装薄塗材Wの京壁状じゅらく仕上げは、吹付け工法により凹凸のある模様に仕上げる。(公共建築工事標準仕様書)

1 ◯
内装厚塗材Cのスタッコ状仕上げは、吹付け工法またはこて塗り工法により凹凸のある模様に仕上げる。
(公共建築工事標準仕様書)

3 ◯
可とう形外装薄塗材Eのさざ波状仕上げは、ローラー塗り工法で行う。
(公共建築工事標準仕様書)

4 ◯
防水形複層塗材Eの凹凸状仕上げは吹付け工法で行い、ゆず肌状仕上げは、ローラー塗り工法により行う。

[ No. 40 ]
鋼製建具に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.フラッシュ戸の組立てにおいて中骨の間隔は、300 mmとした。

2.ステンレス鋼板製のくつずりは、厚さ 1.5 mm のものを用い、表面仕上げをヘアラインとした。

3.排煙窓の手動開放装置の操作部分を壁に取り付ける高さは、床面から 70 cmとした。

4.通常の鋼製建具枠の取付けは、心墨、陸墨などを基準とし、倒れの取付け精度の許容差を面内、面外とも± 2 mm とした。

答え

  3
排煙窓の手動開放装置を壁に設ける場合、床面から80㎝以上、1.5m以下の高さとする。(建築基準法施行令第126条の3第五号)

1 ◯
フラッシュ戸の組立てにおいて、中骨は間隔300mm以下に配置する。(建築工事監理指針)

2 ◯
ステンレス鋼板製の下枠(くつずり)は、厚さ1.5mm以上とし、表面仕上げはヘアラインとする。

4 ◯
枠及び戸の取り付け精度の許容量は、ねじれ、反り、はらみともそれぞれ 2mm以内とする。
(建築工事監理指針)

[ No. 41 ]
コンクリート素地面の塗装工事に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.多彩模様塗料塗りにおいて、上塗り塗料は希釈せず、かくはん棒で軽く混ぜてから使用した。

2.常温乾燥形ふっ素樹脂エナメル塗りにおいて、気温が 20 ℃ のため、工程間隔時間を 24 時間とした。

3.アクリル樹脂系非水分散形塗料塗りにおいて、下塗り、中塗り、上塗りは同一材料を使用し、塗付け量はそれぞれ 0.10 kg/m2 とした。

4.合成樹脂エマルションペイント塗りにおいて、水がかり部分に用いるため、塗料の種類を2種とした。

答え

  4
合成樹脂エマルションペイント塗りにおいて、1種は主として建築物の外部や水掛かり部分に用い、2種内部に用いる。(JASS18)

1 ◯
多彩模様塗料の上塗り塗料は、貯蔵中に塗料の粒が集まって層状に分かれることがあるため、開缶後さらにかくはん棒かひしゃくなどで上下層を入れ替えるようにかるく混ぜる。( JASS 18 )

2 ◯
気温 20℃のときの常温乾燥形ふっ素樹脂エナメル塗りのコンクリート面における標準工程間隔時間は、16時間以上 7日以内とする。( JASS 18 )

3 ◯
アクリル樹脂系非水分散形塗料塗りの工程は、下塗り、中塗り、上塗りの順に同じ塗料を用い、塗り付け量はともに 0.10 kg/m2 とする。( JASS 18 )

[ No. 42 ]
壁のせっこうボード張りに関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.せっこう系接着材による直張り工法で、ボード中央部の接着材を塗り付ける間隔は、床上 1,200 mm 以下の部分より床上 1,200 mm を超える部分を小さくする。

2.ボードの下端部は、床面からの水分の吸上げを防ぐため、床面から 10 mm 程度浮かして張り付ける。

3.軽量鉄骨壁下地にボードを直接張り付ける場合、ドリリングタッピンねじの留付け間隔は、 中間部 300 mm 程度、周辺部 200 mm 程度とする。

4.テーパーエッジボードの突付けジョイント部の目地処理における上塗りは、ジョイントコンパウンドを 200~250mm幅程度に塗り広げて平滑にする。

答え

  1
せっこう系接着材直張り工法における張付け用接着材の塗付け間隔は、ボード周辺部150〜200mm床上1.2m以下の部分200〜250mm床上1.2mを超える部分250〜300mmとする。したがって、ボード周辺部の方が塗付け間隔は小さくなる

2 ◯
ボードの圧着の際、床面からの水分の吸上げを防ぐためくさび等を使い、床面から 10mm程度浮かして張り付ける。(建築工事監理指針)

3 ◯
軽量鉄骨壁下地にボードを直接張り付ける場合の留付け用小ねじの間隔は、周辺部で200mm程度、中間部で300mm程度であり、中間部の方が間隔が大きい。( JASS 26 )

4 ◯
テーパーエッジの継目処理工法の目地処理における上塗りはジョイントコンパウンドを 200〜250mm程度に塗り広げて平滑にする。

[ No. 43 ]
鉄筋コンクリート造建物内部の断熱工事に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.押出法ポリスチレンフォーム打込み工法において、コンクリート打込みの際には、同一箇所で長時間バイブレーターをかけないようにした。

2.押出法ポリスチレンフォーム打込み工法において、セパレーターが断熱材を貫通する部分は、熱橋となり結露が発生しやすいため断熱材を補修した。

3.硬質ウレタンフォーム吹付け工法において、随時吹付け厚さを測定しながら作業し、厚さの許容誤差を–5mm から +10mm として管理した。

4. 硬質ウレタンフォーム吹付け工法において、断熱材には自己接着性があるため、吹き付ける前のコンクリート面の接着剤塗布を不要とした。

答え

  3
作業者は吹付け作業中ワイヤーゲージ等を用いて随時厚みを測定する。吹付け厚さの許容誤差は 0 から +10mmとする。(建築工事監理指針)

1 ◯
押出法ポリスチレンフォーム打込み工法において、コンクリート打込みの際にバイブレーター等は断熱材に触れないように垂直に上下させ、同一箇所に長時間かけてはならない。(建築工事監理指針)

2 ◯
押出法ポリスチレンフォーム打込み工法において、セパレーター、ボルト、インサート、パイプ等の金物類が断熱材を貫通する部分は、熱橋となるので、極力そのかき取りを少なくして補修を容易にする。(建築工事監理指針)

4 ◯
現場発泡の断熱材の場合は、接着性があるので、接着剤が不要である。(建築工事監理指針)

[ No. 44 ]
外壁の押出成形セメント板張りに関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.2次的な漏水対策として、室内側にガスケットを、パネル張り最下部に水抜きパイプを設置した。

2.縦張り工法のパネルは、層間変形に対してロッキングにより追従するため、縦目地は 15 mm、 横目地は 8 mm とした。

3.パネル取付け金物(Z クリップ)は、下地鋼材に 30 mm のかかりしろを確保して取り付けた。

4.横張り工法のパネル取付け金物(Z クリップ)は、パネルがスライドできるようにし、パネル左右の下地鋼材に堅固に取り付けた。

答え

  2
パネル相互の目地幅は、地震時の変形に対応する縦張り工法及び横張り工法の場合も短辺の方が大きな目地幅が必要となる。縦張りの工法の場合は、ロッキングできるように取り付け、縦目地(長辺)で8mm以上横目地(短辺)で15mm以上の目地幅を設ける。(建築工事監理指針)

1 ◯
漏水に対する対策が特に必要な場合は、シーリングによる止水のみではなく、二次的な漏水対策として、室内側にガスケット、パネル張り最下部に水抜きパイプを設ける。(建築工事監理指針)

3 ◯
パネルの取付け金具(Zクリップ)は、下地鋼材 30mm以上のかかり代を確保して取り付ける。

4 ◯
層間変形に対して、縦張り工法の場合はロッキング横張り工法の場合はパネルのスライドにより変位を吸収する。また、横張り工法のパネル取り付け金具( Zクリップ )は、パネル左右の下地鋼材に取り付ける。( JASS 27 )

[ No. 45 ]
内装改修工事に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.アスベスト含有成形板の除去は、アスベストを含まない内装材及び外部建具の撤去にさきがけて行った。

2.合成樹脂塗床の塗り替えにおいて、既存下地面に油が付着していたので、油潤面用のプライマーを用いた。

3.天井改修において、既存の埋込みインサートを再使用するため、吊りボルトの引抜き試験による強度確認を行った。

4.防火認定の壁紙の張り替えは、既存壁紙の裏打紙の薄層の上に防火認定の壁紙を張り付けた。

答え

  4
壁紙の張替えは、既存の壁紙を残さず撤去し、下地基材面を露出させてから新規の壁紙を張り付けなければ防火材料に認定されない。(建築改修工事監理指針)

1 ◯
アスベスト含有成形板の除去は、原則として、アスベストを含まない内装材料及び外部建具等の撤去に先駆けて行う。(建築改修工事監理指針)

2 ◯
プライマーは、下地コンクリートの湿潤状態、油潤状態により使い分ける必要がある。下地面に油が付着している場合は油潤面用のプライマーを用いる。(建築改修工事監理指針)

3 ◯
既存の埋込みインサートを使用する場合は、吊りボルトの引抜き試験を行い、強度確認のうえ再使用することができる。(建築改修工事監理指針)

1級建築施工管理技士 平成27年 学科 問題5解説

平成27年 1級建築施工管理技士 学科 問題5 解答解説

※   問題番号[ No.46 ]~[ No.70 ]までの 25 問題は、全問題を解答してください。

[ No. 46 ]
建築工事における事前調査及び準備工事に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.根切り計画にあたり、地中障害物の調査のみならず、過去の土地利用の履歴も調査した。

2.洪積地盤であったので、山留め壁からの水平距離が掘削深さ相当の範囲内にある既設構造物を調査した。

3.山留め壁の施工により動くおそれのある道路境界石は、境界ポイントの控えをとる代わりに、境界石をコンクリートで固定した。

4.鉄骨工事計画にあたり、周辺の交通規制や埋設物、架空電線、電波障害について調査した。

答え

  3
山留め壁の施工により動くおそれのある道路境界石は、必ず境界ポイントの控えをとる。境界石をコンクリートで固定しても、動くことは防げない。

1 ◯
根切り計画に先立ち、敷地内及び敷地周辺埋設調査及び過去の土地利用の履歴も調査する。(建築工事監理指針)

2 ◯
洪積地盤では掘削による地盤沈下の影響範囲は、掘削深さの1倍程度とされており、山留め壁からの水平距離が掘削深さの範囲内にある既設構造物及び埋設物の調査を行われなければならない。(山留め設計指針)

4 ◯
鉄骨工事計画にあたり、敷地周辺の交通量や交通規制(特に通学路に注意)及び架設配線等を考慮し、建設機械や資材等の搬出入口の位置が適当かどうか等確認する。

[ No. 47 ]
仮設設備の計画に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.工事用電気設備のケーブルを直接埋設するので、その深さを、重量物が通過する道路下は1.2 m以上とし、埋設表示をすることとした。

2.仮設照明用のビニル外装ケーブル(F ケーブル)は、コンクリートスラブに直接打ち込む計画とした。

3.工事用の動力負荷は、工程表に基づいた電力量山積みの 60 % を実負荷とする計画とした。

4.仮設の照明設備において、常時就業させる普通作業の作業面照度は、100 lx 以上とする計画とした。

答え

  4
労働者を常時就業させる場所の作業面の照度は作業区分に応じて維持する。なお、普通の作業では 150 lx以上とする。

1 ◯
現場内で工事用電気設備のケーブルを直接埋設する場合は、重量物が通過する道路下では 1.2m 以上、その他は 0.6 m以上として埋設表示をする。(JASS 2)

2 ◯
仮設照明設備計画として、仕上げ工事用の照明設備配線を行うため、コンクリート打設時に下ケーブルを埋設しておくと便利である。

3 ◯
工事用の動力負荷は、工程表に基づいた電力量山積みの 60%を実負荷として計画する。

[ No. 48 ]
施工計画に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.地下躯体工事において、地下平面が不整形で掘削深度が深く軟弱地盤のため、山留め壁の変形が少ない逆打ち工法とする計画とした。

2.鉄骨工事において、部材の剛性が小さい鉄骨のため、大ブロックにまとめて建入れ直しを行う計画とした。

3.鉄筋工事において、作業の効率を高めるため、先組工法とする計画とした。

4.型枠工事において、工期短縮のため基礎型枠は、せき板の解体が不要なラス型枠工法とする計画とした。

答え

  2
部材の剛性が小さい鉄骨では、ワイヤーを緊張しても部材が弾性変形するだけで修正されていない場合があるので注意する。このような場合には、できるだけ小ブロックごとに決めていくのがよい。(鉄骨工事技術指針)

1 ◯
逆打ち工法は、1階の床及び梁を先行施工し、それを切梁として順次下部の躯体を施工していく。地下躯体を支保工とするため、不整形な平面形状でも適用できる。

3 ◯
鉄筋先組み工法は、柱、梁等の鉄筋をあらかじめかご状に組み、クレーンを使用して建て込む工法である。なお、この工法は工期短縮と省力化が可能である。

4 ◯
ラス型枠工法は、合板の代わりに特殊リブラスをせき板に使用するもので、せき板の解体作業がないことにより、施工の省力化・工期短縮が可能となる。使用部位としては地中梁、基礎に適している。

[ No. 49 ]
躯体工事の施工計画に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.透水性の悪い山砂を用いた埋戻しは、埋戻し厚さ 30 cm ごとにランマーで締固めながら行うこととした。

2.リバース工法による場所打ちコンクリート杭における1次スライム処理は、底ざらいバケットにより行うこととした。

3.SD295A の鉄筋末端部の折曲げ内法直径の最小値は、折曲げ角度が 180 °の場合と90 °の場合では、 同じ値にすることとした。

4.鉄骨工事において、高力ボルト接合部の板厚の差により生じる肌すきが 1 mm 以下の場合は、フィラープレートを用いないこととした。

答え

  2
リバース工法の1次スライム処理は、掘削完了後ピットを孔底より若干引き上げて緩やかに空回しするとともに、孔内水を循環させ比重を下げ、鉄筋かごやトレミー管建込み中のスライム沈積量を少なくする。バケットは用いない。

1 ◯
締固めは、川砂及び透水性のよい山砂の類の場合は水締めとし、透水性の悪い山砂の類及び粘土質の場合はまき出し厚さ 300mm程度ごとにローラー、ランマー等で締めながら埋め戻す。(建築工事監理指針)

3 ◯
SD295Aの鉄筋末端部の折曲げ内法直径の最小値は、折曲げ角度 180° と 90° の場合では同じ値である。
径に太さによる。

4 ◯
高力ボルトの接合部の板厚の差により生じる肌すきが 1mm以下である場合は、フィラープレートを用いない。1mmを超える場合は、フィラープレートを挿入する。

[ No. 50 ]
仕上工事の施工計画に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.改質アスファルトシート防水トーチ工法において、露出防水用改質アスファルトシートの重ね部は、砂面をあぶり、砂を沈めて重ね合わせることとした。

2.現場錆止め塗装工事において、塗膜厚は、塗料の使用量と塗装面積から推定することとした。

3.タイル工事において、外壁タイル張り面の伸縮調整目地の位置は、下地コンクリートのひび割れ誘発目地と一致させることとした。

4.内装工事において、せっこうボードをせっこう系接着材による直張り工法で張り付ける場合の一度に練る接着材は、2時間以内に使い切れる量とすることとした。

答え

  4
接着材は水で練りあわせて使用するが、練り具合はやや硬めにして、塗り付けた際、だれの限度とする。一度に練る分量は、1時間以内に使い切れる量とする。(建築工事監理指針)

1 ◯
露出防水用改質アスファルトシートの砂面に改質アスファルトシートを重ねる場合、重ね部の砂面をあぶり、砂を沈めるか、または砂をかき取って改質アスファルトを表面に出したうえに張り重ねる。(建築工事監理指針)

2 ◯
現場における錆止め塗装の塗付け量の確認は、塗り厚測定が困難なため、通常、使用量から塗膜厚さを推定する。(公共建築工事標準仕様書)

3 ◯
躯体コンクリート及び下地モルタルにおける亀裂誘発目地をまたいで張ったタイルにはひび割れが発生するので、タイル面の伸縮調整目地は、躯体コンクリート及び下地モルタルの亀裂誘発目地と一致させる

[ No. 51 ]
工事現場における材料等の保管・取扱いに関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.長尺のビニル床シートは、屋内の乾燥した場所に直射日光を避けて縦置きにして保管する。

2.ALC パネルは、平積みとし、所定の位置に正確に角材を用い、積上げ高さは、1段を1.5 m以下とし2段までとする。

3.既製コンクリート杭は、角材を支持点として1段に並べ、やむを得ず2段以上に積む場合には、同径のものを並べるなど有害な応力が生じないよう仮置きする。

4.建築用コンクリートブロックは、形状・品質を区分し、覆いを掛けて雨掛りを避けるように保管する。

答え

  2
ALC板は、パネルに反り、ねじれ、ひび割れ等の損傷が生じやすいので、保管場所は原則として室内とし、水平で乾燥した場所を選び、角材を2本置いて、その上に整理して積み重ねる。積上げ高さは1単位を1.0m以下とし、総高は 2.0m以下とする。

1 ◯
長尺のビニール床シートは、屋内の乾燥した場所に、直射日光を避けて、縦置きにする。(JASS26)

3 ◯
既成コンクリート杭を仮置きする場合、地盤を水平にして、杭の支持点にまくら材を置き、1段に並べ移動止めのくさびを施す。やむを得ず2段以上に積む場合は、有害な応力が生じないようにする。また、杭の荷積み荷下ろしは、必ず杭を2点で支持しながら行う。(JASS4)

4 ◯
建築用コンクリートブロックについては、平坦な場所に、形状・品質により区分し、野積み中は、土などで汚れないように、また、雨水を吸収しないようにする。

[ No. 52 ]
「労働安全衛生法」上、労働基準監督署長へ計画の届出を行う必要があるものはどれか。

1.組立てから解体までの期間が 90 日の張出し足場の設置

2.高さが7m の移動式足場(ローリングタワー)の設置

3.延べ面積が 10,000 m2 で高さが 13 m の工場の解体の仕事

4.高さが 9 m の手すり先行工法による枠組足場の設置

答え

  1
組立てから解体までの期間が60日未満の張出し足場の設置は届出の必要がないが、期間が 90日の場合は届出が必要である。(労働安全衛生法第88条 第2項)

2.×
高さが10m以上かつ存続期間60日以上の移動式足場を設置する場合、開始日の30日前までに足場設置届を提出しなければならない。(労働安全衛生法第88条第1項)

3.×
届出が必要な建築物の解体の作業は、高さが31mを超える場合であり、延べ面積が10,000m2でも、高さが13mの工場の解体の作業は、該当しない。(労働安全衛生法第88条第3項、同規則第90条)

4.×
枠組足場の手すり先行工法による高さが 9mの足場は、届出の必要はない。なお、10m以上の場合は必要である。(労働安全衛生法第88条、同規則第90条)

[ No. 53 ]
突貫工事になると工事原価が急増する原因の記述として、最も不適当なものはどれか。

1. 材料の手配が施工量の急増に間に合わず、労務の手待ちを生じること。

2.1日の施工量の増加に対応するため、仮設及び機械器具の増設が生じること。

3.一交代から二交代へと1日の作業交代数の増加に伴う現場経費が増加すること。

4.型枠支保工材など消耗役務材料の使用量が、施工量に比例して増加すること。

答え

  4
型枠等の消耗役務材料の使用量は、型枠材や支保工材の転用回数等の減少により、施工量に比例して増加するのではなく施工量が増えなくても増加する。

1 ◯
作業を急激に進めることから、材料をタイミングよく入れないと、早く入れすぎて施工のじゃまになったり、遅く入れて労務の手待ちが生じたりする。

2 ◯
施工量の増加による仮設及び機械機器の増設、監督職員の増員等、施工規模が拡大するため、工事原価が急増する原因となる。

3 ◯
一交代から二交代へと 1日の作業交代数の増加により現場経費等の固定費が増加するため、工事原価が急増する原因となる。

[ No. 54 ]
工程計画に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.工期が指定され、工事内容が比較的容易でまた施工実績や経験が多い工事の場合は、積上方式(順行型)を用いて工程表を作成する。

2.工程短縮を図るために行う工区の分割は、各工区の作業数量が同等になるようにする。

3.算出した工期が指定工期を超える場合は、作業日数を短縮するため、クリティカルパス上の作業について、作業方法の変更や作業員増員等を検討する。

4.工程表は、休日及び天候などを考慮した実質的な作業可能日数を算出して、暦日換算を行い作成する。

答え

  1
工期が指定され、工事内容が比較的容易でまた施工実績や経験が多い工事の場合は、各工程に所要日数を割り当てる割付方式(逆行型)が多く用いられる。積上方式(順行型)は、工事内容が複雑であったり、施工実績や経験が少ない工事の場合に多く用いられる。

2 ◯
工程短縮を図る各工区の分割は、各工区の作業数量が同等になるようにふりわける。

3 ◯
算出した工期が指定工期を超える場合は、クリティカルパス上に位置する作業を中心に、作業方法の変更作業員の増員工事用機械の台数機種の変更などによるう作業日数の短縮を検討する。

4 ◯
工程表は、休日及び天候等を考慮した実質的な作業可能日数を算出して、延べ日数から暦日換算を行い作成する。

[ No. 55 ]
高層建築の鉄骨工事の所要工期算出にあたっての各作業の一般的な能率に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.トラッククレーンによる建方の取り付けピース数は、1台1日あたり 70 ~80ピースとした。

2.トルシア形高力ボルトの締付け本数は、3人1組で1日あたり 450 ~700本とした。

3.現場溶接は、溶接工1人1日あたりボックス柱で2本、梁で5箇所とした。

4.タワークレーンのクライミングに要する日数は、1回あたり 1.5日とした。

答え

  1
建方で特に制約のない場合、トラッククレーンの1日当たりの鉄骨取付ピース数は、30〜35ピース程度とする。(鉄骨工事技術指針)

2 ◯
トルシア形高力ボルトの 1日における締付け作業効率は、ビルで 450 〜 700本、工場建屋等で 400 〜 600本である。(鉄骨工事技術指針)

3 ◯
一般に現場溶接の 1 日の平均能率は、溶接技術者一人当たり箱形柱で 2本、梁で 5箇所となっている。(鉄骨工事技術指針)

4 ◯
タワークレーンのクライミングの 1 回に要する日数は、準備を含めて 1.5日である。

[ No. 56 ]
ネットワーク工程表におけるフロートに関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.ディペンデントフロートは、後続作業のトータルフロートに影響を与えるフロートである。

2.トータルフロートは、フリーフロートからディペンデントフロートを引いたものである。

3.フリーフロートは、その作業の中で使い切っても後続作業のフロートに全く影響を与えない。

4.クリティカルパス上の作業以外でも、フロートを使い切ってしまうとクリティカルパスになる。

答え

  2
トータルフロートは、フリーフロートとディペンデントフロートの和である。トータルフロートが 0 ならば、ディペンデントフロートも 0 である。

1 ◯
ディペンデントフロートは、後続作業のトータルフロートに影響を及ぼすようなフロートである。いいかえるとディペンデントフロートは使わずにとっておけば、後続する他の工程でその分を使用できるフロートであり、フリーフロートはその作業についてだけしか使えないフロートで、ため込みのきかないものである。

3 ◯
フリーフロート(自由余裕時間)は、作業の中で自由に使っても、後続する作業に全く影響を及ぼさないで消費できる余裕時間のことである。

4 ◯
クリティカルパス以外の作業でも、フロートを使いきってしまえば、その作業を含む経路がクリティカルパスになる。

[ No. 57 ]
施工品質管理表(QC工程表)の作成に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.工種別又は部位別とし、管理項目は作業の重要度の高い順に並べる。

2.工事監理者、施工管理者、専門工事業者の役割分担を明確にする。

3.検査の時期、頻度、方法を明確にする。

4.管理値を外れた場合の処置をあらかじめ定めておく。

答え

  1
施工品質管理表(QC工程表)は工程のどこで、何を、いつ、だれがどのように管理するかを決め、工程の流れに沿って整理したもので、品質管理の要点を明確にした管理のための標準である。

2 ◯
QC工程表では、管理項目ごとに、工事監理者、施工管理者及び専門工事業者のそれぞれの管理の役割分担を明確にしておく。

3 ◯
QC工程表における管理要領には、管理項目、管理値、検査の時期、頻度、方法を明確にしておく。

4 ◯
異常時の処置として、管理値を外れた場合の処置をあらかじめ定めておく。

[ No. 58 ]
品質管理の用語に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.不適合とは、規定要求事項を満たしていないことである。

2.かたよりとは、観測値・測定結果から真の値を引いた値のことである。

3.不確かさとは、測定結果に付与される、真の値が含まれる範囲の推定値のことである。

4.工程(プロセス)管理とは、工程(プロセス)の出力である製品又はサービスの特性のばらつきを低減し、維持する活動のことである。

答え

  2
かたよりとは、観測値・測定結果の期待値から真の値を引いたである。観測値・測定結果から真の値を引いた値は、誤差である。

1 ◯
不適合とは、規定要求事項を満たしていないことをいう。

3 ◯
不確かさとは、それらの測定結果に付与される、そのまま真の値が含まれる範囲の推定値のこと。

4 ◯
工程管理は、プロセス(各工程)の1つ1つを重視し、作業標準を順守して所要の品質が確保できるようにすることである。

[ No. 59 ]
建築施工における品質管理に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.材料・部材・部品の受入れ検査は、種別ごとに行い、必要に応じて監理者の立会いを受ける。

2.目標品質を得るための管理項目に対し、次工程に渡してもよい基準としての管理値を設定する。

3.設計図書に定められた品質が証明されていない材料は、現場内への搬入後、試験を行い記録を整備する。

4.品質計画には、施工の目標とする品質、品質管理及び管理の体制等を具体的に記載する。

答え

  3
設計図書に定められた品質が証明されていない材料は、工事現場に搬入してはならない受入れ検査種別ごとに行い、必要に応じて工事監理者の立会いを受ける。(JASS1)

1 ◯
材料・部材・部品を受け入れる場合、原則として、受入れ検査種別ごとに行い、必要に応じて工事監理者の立会いを受ける。( JASS 1 )

2 ◯
品質管理を行うために、
①品質管理組織
②管理項目及び管理値
③品質管理実施方法
④品質管理評価方法
⑤管理値を外れた場合の措置
などを含む品質管理計画を工事開始前に立案する。
目標・品質を得る管理のための重点項目を拾い出して管理項目とし、次工程に渡しても良い基準を管理値として明示する。( JASS 1 )

4 ◯
品質計画には、設計図書で要求された品質を満たすために、請負業者が施工の目標とする品質管理及び体制などを具体的に記載する。( JASS 1 )

[ No. 60 ]
次の管理図のうち、工程が最も統計的管理状態にあると判断されるものはどれか。 なお、図において UCL は上方管理限界、LCL は下方管理限界、CL は中心線を示す。

答え

  1
管理状態にある。

2.×
CLより一方の側に連続して7点以上あるときは、原因を調査する。

3.×
点が連続して上昇または下降する傾向のあるときは、原因を調査する。

4.×
2点以上が管理限界線の外に出ているので、安定状態ではない。

[ No. 61 ]
JIS Q 9000(品質マネジメントシステム─基本及び用語)に定める「プロジェクト」についての次の文章中、    [   ]に当てはまる語句の組合せとして、適当なものはどれか。
「開始日及び終了日をもち、調整され、管理された一連の  [ イ ] からなり、時間、 コスト及び  [ ロ ] を含む特定の要求事項に適合する目標を達成するために実施される特有の [ ハ ] 。」
  イ   ロ    ハ
1.活動 資源の制約 プロセス
2.組織 資源の制約 マネジメント
3.活動 設計仕様  マネジメント
4.組織 設計仕様  プロセス

答え

  1
JIS Q9000(品質マネジメントシステム 基本及び用語)に、「プロジェクト」について次のように定義されている。
「開始日及び終了日をもち、調整され、管理された一連の(イ)活動からなり、時間、コスト及び(ロ)資源の制約を含む特定の要求事項に適合する目標を達成するために実施される特有の(ハ)プロセス。」
したがって、1が適当である。

[ No. 62 ]
鉄骨工事の溶接の検査方法に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.磁粉探傷試験は、磁場を与えて磁粉を散布し、表面あるいは表面に近い部分の欠陥を検出する方法である。

2.放射線透過試験は、放射線が物質内部を透過していく性質を利用し、内部欠陥を検出する方法である。

3.マクロ試験は、液体の毛細管現象を利用し、浸透液を欠陥内に浸透させて欠陥を検出する方法である。

4.超音波探傷試験は、探触子から発信する超音波の反射波を利用して、溶接の内部欠陥を検出する方法である。

答え

  3
マクロ試験(肉眼組織検査)は、溶接部を切断し、鋼材の組織、溶け込み状態、熱影響範囲、欠陥等を目視または数倍の拡大鏡で検査する方法である。なお、設問の記述は、浸透深傷試験のことである。(建築工事監理指針)

1 ◯
磁粉探傷試験は磁粉が欠陥まわりにある程度幅広く付着して、微細な表面欠陥を容易に検出することができる。

2 ◯
放射線透過試験は X線または γ線を用いて溶接部の透視写真に現れた欠陥像に対して判定を行う試験である。(建築工事監理指針)

4 ◯
超音波探傷試験は高い周波数の音波を溶接部内に送信し、反射音の強さと伝搬時間とから内部欠陥の大きさと位置を評価するもの。主に内部欠陥の検出方法であるが、微小な球状欠陥(ブローホール)の検出は難しい。

[ No. 63 ]
屋外又は屋内の吹抜け部分等の壁のセメントモルタルによるタイル後張り工法の試験及び検査に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.外観検査は、タイル張り面の色調、仕上がり状態、欠点の有無等について、限度見本の範囲内であることを確認した。

2.打音検査は、施工後2週間以上経過してから、タイル用テストハンマーを用いてタイル張り全面にわたり行った。

3.小口平タイルの引張接着力試験は、タイルの 1 / 2の大きさの鋼製アタッチメントを用いて行った。

4.引張接着力試験は、強度の測定結果がすべて所定の強度以上、かつ、コンクリート下地の接着界面における破壊率が 50 % 以下の場合を合格とした。

答え

  3
小口平タイルの接着力試験は、測定するタイルの大きさが小口平の大きさより大きい場合は、タイルを小口平の大きさに切断し小口平の大きさとする。(JASS19)
小口平以下のタイルの場合は、タイルの大きさをする。試験に用いる鋼製アタッチメントの大きさ・形状は、測定するタイルと同一の大きさ・形状とする。

1 ◯
タイルの外観検査は、タイルの色調の上ぞろい、不陸、汚れ、割れ、浮上がり及び縁欠けの有無、目地幅の上ぞろい、目地深さの均一性などが見本の範囲内であるか検査する。(公共建築工事標準仕様書)

2 ◯
タイルの施工面については、不陸、目違い、ひび割れ等の目視確認を行うとともに屋外、屋内の吹抜け等のタイル張りの全面にわたって、たたきによる打音検査を行う。検査方法としては、打診用テストハンマーを用いて行う。(JASS19)

4 ◯
引張り接着力試験は、施工後2週間以上経過してから行い、引張り強度が 0.4 N/mm2 以上、かつ、コンクリート下地接着界面における破壊率が 50%以下の場合を合格とする。(JASS19)

[ No. 64 ]
労働災害に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1. 労働災害の頻度を示す指標として、年千人率や度数率が用いられる。

2. 労働災害の重篤度を示す指標として、強度率が用いられる。

3. 労働損失日数は、一時全労働不能の場合、暦日による休業日数に 300/365 を乗じて算出する。

4. 労働災害における重大災害とは、一時に2名以上の労働者が死傷又は罹病した災害をいう。

答え

  4
労働災害における重大災害とは、一時に3名以上の労働者が業務上死傷または罹病した災害をいう。
1 ◯
年千人率は、1年の労働者 1,000人当たりに発生した死傷者数の割合を示す。
年千人率= 1年間の死傷者数 / 1年間の平均労働者数 X 1,000
2 ◯
強度率は、1,000 延労働時間当たりの労働損失日数で災害の重さの程度を表すもので、1年間の死傷者 1,000人当たりの死傷者を示すものではない。
強度率 = 労働損失日数 / 延べ労働時間数 × 1,000
3 ◯
労働者が災害事故のため死亡したり負傷したりすると、その結果、永久に労働ができなくなったり、ある期間休業を余儀なくされる。この損失を労働損失という。
労働損失日数 = 休日日数 × 300 /365

[ No. 65 ]
建築工事に伴い施工者が行うべき公衆災害の防止対策に関する記述として、「建築工事公衆災害防止対策要綱(建築工事編)」上、不適当なものはどれか。 ただし、関係機関から特に指示はないものとする。

1.工事現場内に公衆を通行させるために設ける歩行者用仮設通路は、幅 1.5 m、有効高さ 2.1 mとした。

2.道路の通行を制限する必要があり、制限後の車線が2車線となるので、その車道幅員を 4.5 mとした。

3.地盤アンカーの施工において、アンカーの先端が敷地境界の外に出るので、隣地所有者の承諾を得た。

4.地下水の排水に当たっては、排水方法及び排水経路を確認し、当該下水道及び河川の管理者に届け出た。

答え

  2
施工者は車両交通対策として、制限後の道路の車線が1車線となる場合にあっては、その車道幅員は3m以上とし、2車線となる場合にあっては、その車道幅員は5.5m以上とする。

1 ◯
工事現場内の歩行者対策として、特に歩行者の多い箇所においては幅 1.5m以上、有効高さを 2.1m以上の歩行者用通路を確保し、必要に応じて交通誘導員を配置する等措置を講じ、適切に歩行者を誘導する。

3 ◯
発注者及び施工者は、地盤アンカーの先端が敷地境界の外に出る場合には、敷地所有者または管理者の許可を得なければならない。

4 ◯
施工者は地下水対策として、排水にあたっては、排水方法及び排水経路の確認を行い、当該下水道及び河川の管理者等に届出を行い、かつ、土粒子を含む水は沈砂、ろ過施設等を経て放流しなければならない。

[ No. 66 ]
作業主任者の選任に関する記述として、「労働安全衛生法」上、誤っているものはどれか。

1.高さが 5 m 以上である鉄骨造の建築物の骨組みの組立作業においては、建築物等の鉄骨の組立て等作業主任者を選任しなければならない。

2.軒の高さが 5 m 以上の木造の建築物の解体作業においては、木造建築物の組立て等作業主任者を選任しなければならない。

3.鉄筋コンクリート造の建築物の型枠支保工の解体作業においては、型枠支保工の組立て等作業主任者を選任しなければならない。

4.張出し足場の組立作業においては、足場の組立て等作業主任者を選任しなければならない。

答え

  2
軒の高さが 5m以上木造の建築物の構造部材の組立てまたはこれに伴う屋根下地もしくは外壁下地の取付けの作業においては選任しなければならないが、解体作業においてはその定めはない。(労働安全衛生法施行令第 6条第十五号の四)

1 ◯
作業主任者の選任において、鉄骨造の建築物の骨組または塔であって、金属製の部材により構成される(その高さが 5m以上であるものに限る。)ものの組立て、解体または変更の作業は、作業主任者を選任しなければならない。

3 ◯
型枠支保工(支柱、はり、つなぎ、筋かい等の部材により構成され、建設物におけるスラブ、けた等のコンクリートの打設に用いる型枠を支持する仮設の設備をいう)の組立てまたは解体の作業は作業主任を選任しなければならない。

4 ◯
張出し足場の種類には、アングル等によるトラス式とH形鋼による単材式がある。この足場は足場の組立て等作業主任者を選任しなければならない。(労働安全衛生法施行令第 6条)

[ No. 67 ]
足場に関する記述として、最も不適当なものはどれか。

1.脚立を使用したうま足場における足場板は、長手方向の重ねを踏さん上で行い、その重ね長さを20 cm 以上とした。

2.脚立を使用した棚足場における角材を用いたけた材は、脚立の踏さんに固定し、踏さんからの突出し長さを10 ~20 cmとした。

3.単管足場における建地の間隔は、けた行方向を 2.0 m以下、はり間方向を 1.5 m以下とした。

4.単管を使用した本足場における作業床は、幅を 40 cm 以上、床材間のすき間を 3 cm 以下とした。

答え

  3
単管足場の建地の間隔は、けた行方向 1.85m以下、はり間方向 1.5m以下をしなければならない。(労働安全衛生規則第571条第1項第一号)

1 ◯
脚立は、脚と水平面との角度を75度以下とし、うま足場で足場を長手方向に重ねる時は、踏さん上で重ね、その重ね長さは、20cm 以上とする。(労働安全衛生規則第528条、第536条第4項)

2 ◯
脚立を使用して棚足場として使用する場合、桁材とし、角材は脚立の踏さん等に固定し、角材等の突出し長さは、10cm 以上 20cm 以下とする。

4 ◯
単菅を使用した本足場では、2m 以上の場所に設ける作業床は幅 40cm以上すき間は 3cm以下とする。(労働安全衛生規則第536条第1項第二号)

[ No. 68 ]
事業者が講ずべき措置について、「労働安全衛生法」上、誤っているものはどれか。

1.岩石の落下等により労働者に危険が生ずるおそれのある場所で、車両系建設機械を使用するときは、機械に堅固なヘッドガードを備えなければならない。

2.車両系建設機械の定期自主検査を行ったときは、検査年月日等の事項を記録し、これを2年間保存しなければならない。

3.車両系建設機械のブームを上げ、その下で修理、点検を行うときは、ブームが不意に降下することによる労働者の危険を防止するため、安全支柱、安全ブロック等を使用させなければならない。

4.車両系建設機械の運転者が運転位置から離れるときは、バケット、ジッパー等の作業装置を地上におろさせなければならない。

答え

  2
車両系建設機械の定期自主検査を行ったときは、検査年月日等の事項を記録し、これを3年間保存しなければならない。(労働安全衛生規則第169条)

1 ◯
岩石の落下等により労働者に危険が生ずるおそれのある場所で、車両系建設機械を使用する場合は、岩石の落下に対応するため、機械に堅固なヘッドガードを備えなければならない。

3 ◯
車両系建設機械のブーム、アーム等を上げ、その下で修理、点検を行うときは、ブーム、アーム等が不意に降下することによる労働者の危険を防止するため、当該作業に従事する労働者に安全支柱、安全ブロック等を使用させなければならない。(労働安全衛生規則第166条)

4 ◯
車両系建設機械の運転者が運転位置から離れるときは、バケット、ジッパー等の作業装置を地上におろさせなければならない。 (労働安全衛生規則第160条)

[ No.69 ]
移動式クレーン、エレベーター及び建設用リフトに関する記述として、「クレーン等安全 規則」上、誤っているものはどれか。

1.つり上げ荷重が 3.0 t 以上の移動式クレーンを設置しようとする事業者は、認定を受けた事業者を除き、移動式クレーン設置報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

2.積載荷重 1.0 t 以上のエレベーターの設置における落成検査の荷重試験は、エレベーターの積載荷重の 1.2 倍に相当する荷重の荷をのせて、行わなければならない。

3.積載荷重が 0.25 t 以上 1.0 t 未満のエレベーターを 60 日以上設置しようとする事業者は、認定を受けた事業者を除き、エレベーター設置報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

4.積載荷重が 0.25 t 以上でガイドレールの高さが 10 m の建設用リフトを設置しようとする事業者は、建設用リフト設置届を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

答え

  4
積載荷重が 0.25 t 以上、ガイドレールの高さが18m以上の建設用リフトは建設用リフト設置届を、30日前までに所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。(労働安全衛生法第88条第1項、クレーン等安全規則第174条)

1 ◯
つり上げ荷重が 3.0 t 以上の移動式クレーンを用いて作業を行うときは、その移動式クレーン検査証を、当該クレーンに備え付けておかなければならない。(クレーン等安全規則第63条)

2 ◯
エレベーターを設置した者が受けなければならない落成検査における荷重試験は、エレベーターに積載荷重の 1.2倍に相当する荷重の荷をのせて行わなければならない。(クレーン等安全規則第141条3項)
3 ◯
エレベーターの設置について、積載荷重が0.25t 以上( 0.25t 未満は適用除外)で 1t 未満のエレベーターを 60日以上設置する場合は、あらかじめ、エレベーター設置報告書を所轄の労働基準監督署長に提出しなければならない。(クレーン等安全規則第145条)

[ No.70 ]
屋内作業場等において、有機溶剤業務に労働者を従事させる場合における事業者の講ず べき措置として、「有機溶剤中毒予防規則」上、誤っているものはどれか。

1.作業に従事する労働者が有機溶剤により汚染され、又はこれを吸入しないように、有機溶剤作業主任者に作業の方法を決定させ、労働者を指揮させなければならない。

2.有機溶剤業務に係る有機溶剤等の区分を、作業中の労働者が容易に知ることができるよう、色分け等の方法により、見やすい場所に表示しなければならない。

3.有機溶剤業務に係る局所排気装置は、3月を超えない期間ごとに、有機溶剤作業主任者に点検させなければならない。

4.有機溶剤業務に係る局所排気装置は、原則として、1年以内ごとに1回、定期に、所定の事項について自主検査を行わなければならない。

答え

  3
屋内作業場等で有機溶剤業務に労働者を従事させるときは、作業場所に、有機溶剤の蒸気の発生源を密閉する設備、局所排気装置を設けなければならない。有機溶剤作業主任者の職務として、局所排気装置、プッシュプル型換気装置または全体換気装置を1ヶ月を超えない期間ごとに点検しなければならない。(有機溶剤中毒予防規則第19条の2第二号)

1 ◯
有機溶剤作業主任者は作業に従事する労働者が有機溶剤に汚染され、またはこれを吸入しないように、作業の方法を決定し、労働者を指揮しなければならない。(有機溶剤中毒予防規則第19条の2第一号)

2 ◯
有機溶剤等の業務に労働者を従事させる時は、当該有機溶剤業務に係る有機溶剤等の区分を作業中の労働者が容易に知ることができるよう、色分け及び色分け以外の方法により、見やすい場所に表示しなければならない。(有機溶剤中毒予防規則第25条第1項)

4 ◯
局所排気装置の定期自主検査は、1年以内ごとに1回、定期に、自主検査を行わなければならない。(有機溶剤中毒予防規則第20条第2項)

令和7年度 1級建築施工管理試験の申込み

令和7年度 建築施工管理技術検定の試験の申込み
1級建築施工管理技術検定
建設業振興基金のホームページより
令和7年度の 1級 建築施工管理技術検定のご案内
が発表されております。
申込み日:2/14(金)〜2/28(金)
 ※一次検定のみ新規受験に限り 4/7(月)まで
試験日
 第一次検定 令和7年 7 月20日(日)
 第二次検定 令和7年10月19日(日)
合格発表
 第一次検定 令和7年 8 月22日(金)
 第二次検定 令和8年 1 月 9 日(金)
※(-財)建設業振興基金のホームページへ行きます。
受験資格と願書購入方法
※(-財)建設業振興基金のホームページへ行きます。

1級建築施工管理技士 平成27年 学科 問題6解説

平成27年 1級建築施工管理技士 学科 問題6 解答解説

※   問題番号[ No.71 ]~[ No.82 ]までの 12 問題のうちから、8 問題を選択し、解答してください。

[ No. 71 ]
用語の定義に関する記述として、「建築基準法」上、誤っているものはどれか。

1.百貨店の売場は、居室である。

2.請負契約によらないで自ら建築物の工事をする者は、工事施工者である。

3.建築物の基礎は、主要構造部である。

4.道路中心線から1階にあっては 3 m 以下、2階以上にあっては 5 m以下の距離にある建築物の部分は、延焼のおそれのある部分である。

答え

  3
主要構造部とは、壁(構造上重要でない間仕切壁を除く)、柱、床(最下階の床を除く)、はり、屋根、階段(屋外階段を除く)をいう。したがって、基礎は構造耐力上重要な部分であるが、主要構造部には含まれない。(建築基準法第2条第五号)

1 ◯
居室とは、居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室をいう。したがって、百貨店売場は居室である。(建築基準法第2条1項四号)

2 ◯
工事施工者とは、建築物、その敷地もしくは工作物に関する工事の請負人または請負契約によらないで自らこれらの工事をする者をいう。(建築基準法第2条第十八号)

4 ◯
延焼のおそれのある部分とは、隣地境界線、道路中心線または同一敷地内の2以上の建築物(延べ面積の合計が500 m2以内の建築物は一つの建築物とみなす。)相互の外壁間の中心線から1階にあっては 3m以下2階以上にあっては 5m以下の距離にある建築物の部分をいう。(建築基準法第2条第六号)

[ No. 72 ]
建築確認手続き等に関する記述として、「建築基準法」上、誤っているものはどれか。

1.防火地域及び準防火地域外において建築物を増築しようとする場合で、その増築に係る部分の床面積の合計が 10 m2 以内のときは、建築確認申請書の提出は必要ない。

2.建築物の構造上重要でない間仕切壁の過半の修繕をする場合は、建築確認申請書の提出は必要ない。

3.都市計画区域外において建築する場合は、建築物の用途、規模にかかわらずすべての建築物について、建築確認申請書の提出は必要ない。

4.鉄筋コンクリート造3階建の共同住宅の2階の床及びこれを支持する梁に鉄筋を配置する工事の工程は、中間検査の申請が必要な特定工程である。

答え

  3
都市計画区域外に建築する場合でも、建築物の用途、規模によっては建築確認申請書を提出する必要がある。(建築基準法第6条)

1 ◯
防火地域及び準防火地域以外では、建築物の増築、改築、移転の場合にはその部分の床面積の合計が 10m2 以内のときには適用しない。(建築基準法第6条第2項)

2 ◯
建築物の構造上重要でない間仕切壁、間柱、付け柱、揚げ床、最下階の床などは主要構造部から除くものとされており、構造上重要でない間仕切壁の過半の修繕は、大規模の修繕に該当しない。(建築基準法第2条第五号、第十四号)

4 ◯
鉄筋コンクリート造3階建共同住宅の2階の床及びこれを支持する梁に鉄筋を配置する工事の工程は、建築主が中間検査を申請しなければならない特定工程に該当する。(建築基準法第7条の3第1項)

[ No. 73 ]
防火区画等に関する記述として、「建築基準法」上、誤っているものはどれか。

1.給水管が準耐火構造の防火区画を貫通する場合は、そのすき間を準不燃材料で埋めなければならない。

2.換気設備のダクトが準耐火構造の防火区画を貫通する場合には、火災により煙が発生した場合又は火災により温度が急激に上昇した場合に自動的に閉鎖する構造の防火ダンパーを 設けなければならない。

3.主要構造部を準耐火構造とし、かつ、3階以上の階に居室を有する建築物の昇降機の昇降路の部分とその他の部分とを、準耐火構造の床若しくは壁又は防火設備で区画しなければならない。

4.建築物の 11 階以上の部分で、各階の床面積の合計が 100 m2 を超えるものは、原則として、床面積の合計 100 m2 以内ごとに耐火構造の床若しくは壁又は防火設備で区画しなければならない。

答え

  1
建築物に設ける給水、排水その他の管が準耐火構造の防火区画を貫通する場合において、そのすき間を不燃材料で埋めなければならないと定められている。なお、貫通する部分と両側1m以内の距離にある部分も不燃材料で作ると定められている。(建築基準法施行令第112条第15項、129条の2の5第七号イ)

2 ◯
換気設備の換気、空調設備等のために設けられた風道(ダクト)が準耐火構造の防火区画等を貫通する場合、当該風道が火災により煙が発生した場合または火災により温度が急激に上昇した場合のいずれかの場合に、自動的に閉鎖または作動するものを設けなければならない。(建築基準法第26条、同施行令第112条第16項)

3 ◯
主要構造部が準耐火構造で3階以上の階に居室を有する建築物の昇降機の昇降路の部分は、準耐火構造の床、壁または遮炎性能のある防火戸等の防火設備で区画しなければならない。(建築基準法第26条、同施行令第112条第9項)

4 ◯
建築物の 11階以上の部分で各階の床面積の合計が 100 m2 を超えるものは、原則として床面積の合計 100 m2 以内ごとに耐火構造の床もしくは壁または防火設備で区画しなければならない。(建築基準法施行令第112条第5項)

[ No. 74 ]
建設業の許可に関する記述として、「建設業法」上、誤っているものはどれか。

1.特定建設業の許可を受けようとする者は、発注者との間の請負契約で、その請負代金の額が 8,000 万円以上であるものを履行するに足りる財産的基礎を有していなければならない。

2.建設業の許可を受けた建設業者は、許可を受けてから1年以内に営業を開始せず、又は引き続いて1年以上営業を休止した場合は、当該許可を取り消される。

3.工事1件の請負代金の額が建築一式工事にあっては 1,500 万円に満たない工事又は延べ面積が150 m2 に満たない木造住宅工事のみを請け負う場合は、建設業の許可を必要としない。

4.国又は地方公共団体が発注者である建設工事を請け負う者は、特定建設業の許可を受けなければならない。

答え

  4
建設業において、発注者から直接請け負う1件の工事の下請代金の額の総額が、建設工事業では 6,000万円以上、建築工事以外では 4,000万円以上の場合、「特定建設業」の許可を受けなければならない。発注者が国や地方公共団体であることと特定建設業の許可とは関係がない。(建設業法第3条第1項第二号、同法施行令第2条)

1 ◯
特定建設業の許可を受けようとする者は、発注者との間の請負契約で、その請負代金の額が 8,000万円以上であるものを履行するのに足りる財産的基盤を有していなければならない。(建設業法第15条第三号)

2 ◯
建設業の許可を受けた建設業者は、許可を受けてから1年以内に営業を開始せず、又は引き続いて1年以上営業を休止した場合は、当該許可を取り消される。(建設業法第29条第1項第三号)

3 ◯
軽微な建設工事のみを請け負うことを営業する者は、建設業の許可は必要ない。軽微な建設工事の定義は建築一式工事では、1,500 万円に満たない工事又は延べ面積が150 m2 に満たない木造住宅工事、建築一式工事以外の建設工事では 500万円に満たない工事となっている。(建設業法第3条第1項、同法施行令第1条の2第1項)

[ No.75 ]
元請負人の義務に関する記述として、「建設業法」上、誤っているものはどれか。

1.元請負人が請負代金の出来形部分に対する支払を受けたときは、下請負人に対しこれに相応する下請代金を、当該支払を受けた日から1月以内で、かつ、できる限り短い期間内に支払 わなければならない。

2.発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者は、当該建設工事の下請負人が、その下請負に係る建設工事の施工に関し、建設業法その他法令の規定に違反しないよう、当該下請負人の指導に努めるものとする。

3.元請負人は、その請け負った建設工事を施工するために必要な工程の細目、作業方法その他元請負人において定めるべき事項を定めようとするときは、あらかじめ、下請負人の意見をきかなければならない。

4.元請負人は、下請負人からその請け負った建設工事が完成した旨の通知を受けたときは、当該通知を受けた日から1月以内で、かつ、できる限り短い期間内に、その完成を確認するための検査を完了しなければならない。

答え

  4
元請負人は、下請負人からその請け負った建設工事が完成した旨の通知を受けたときは、当該通知を受けた日から20日以内で、かつ、できる限り短い期間内に、その完成を確認するための検査を完了しなければならない。(建設業法第24条の4第1項)

1 ◯
元請負人は、請負代金の出来形部分に対する支払いまたは工事完成後における支払いを受けたときは、下請負人に対し、1ケ月以内で、かつ、できる限り短い期間内に下請負人の施工した出来形部分に相応する下請代金を支払 わなければならない。 (建設業法第24条の3第1項)

2 ◯
発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者は、当該建設工事の下請負人が、その下請負に係る建設工事の施工に関し、建設業法その他法令の規定に違反しないよう、下請負人の指導に努めるものとする。(建設業法第24条の6第1項)

3 ◯
元請負人は、工程の細目、作業方法その他元請負人において定めるべき事項を定めようとするときは、あらかじめ、下請負人の意見をきかなければならない。 (建設業法第24条の2)

[ No.76 ]
工事現場に置く技術者に関する記述として、「建設業法」上、誤っているものはどれか。

1.工事1件の請負代金の額が 4,500 万円である事務所の建築一式工事に置く監理技術者は、工事現場に専任の者でなければならない。

2.下請負人として建設工事を請け負った建設業者は、下請代金の額にかかわらず、主任技術者を置かなければならない。

3.発注者から直接建築一式工事を請け負った特定建設業者が、下請契約の総額が 4,500 万円以上となる工事を施工する場合、工事現場に置く技術者は、監理技術者でなければならない。

4.専任の者でなければならない監理技術者は、当該選任の期間中のいずれの日においても、その日の前5年以内に行われた国土交通大臣の登録を受けた講習を受講していなければならない。

答え

  1
専任の者を監理技術者として置かなければならないのは、建築一式工事が 7,000万円以上のものである
(建設業法第26条第2項、第3項、同法施行令第27条第1項)

平成28年6月1日施行の建設業法施行令改正により、監理技術者の配置が必要となる下請契約の額が、建築一式工事の場合は 6,000万円以上となたので、6,000万円未満の場合は主任技術者を置かなければならないので、設問3 は現在では「 × 」となる。(建設業法第26条第1項、第2項、同法施行令第2条)

2 ◯
下請負人として建設工事を請け負った建設業者は、下請代金の額にかかわらず、主任技術者を置かなければならない。(建設業法第26条第1項)

3 ◯
発注者から直接建築一式工事を請け負った特定建設業者が、下請契約の総額が 4,500 万円以上となる工事を施工する場合においては、施工の技術上の管理をつかさどる者として「監理技術者」を置かなければならない。

4 ◯
専任の者でなければならない監理技術者は、当該選任の期間中のいずれの日においてもその日の前5年以内に行われた国土交通大臣の登録を受けた講習を受講していなければならない。(建設業法第26条第4項)

[ No.77 ]
労働契約に関する記述として、「労働基準法」上、誤っているものはどれか

1.法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効であり、法律に定められた基準が適用される。

2.使用者は、試の使用期間中の者で 14 日を超えて引き続き使用されるに至った者を解雇しようとする場合には、原則として、少なくとも 30 日前にその予告をしなければならない。

3.使用者は、労働者が業務上負傷し、休業する期間とその後 30 日間は、やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合でも解雇してはならない。

4.労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位等について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。

答え

  3
労働基準法の解雇制限により、労働者が業務上負傷した場合は、休業する期間及びその後30日間は解雇してはならない。なお、やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合は解雇できる。(労働基準法第19条)

1 ◯
労働基準法に定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分はこの法律で定める基準による。(労働基準法第13条)

2 ◯
労働契約において試の使用期間中の者で14日を超えて引き続き使用されるに至った者を解雇しようとする場合は少なくとも30日前に予告しなければならない。(労働基準法第20条第1項)

4 ◯
労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金または退職の事由については証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。(労働基準法第22条)

[ No.78 ]
建設業の事業場における安全衛生管理体制に関する記述として、「労働安全衛生法」上、誤っているものはどれか。

1.特定元方事業者は、統括安全衛生責任者に元方安全衛生管理者の指揮をさせなければならない。

2.安全衛生責任者は、安全管理者又は衛生管理者の資格を有する者でなければならない。

3.統括安全衛生責任者は、事業を行う場所において、その事業の実施を統括管理する者でなければ ならない。

4.一の場所において鉄骨造の建築物の建設の仕事を行う元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の総数が常時 20 人以上 50 人未満の場合、店社安全衛生管理者を選任しなければならない。

答え

  2
統括安全衛生責任者を選任すべき事業者以外の請負人は、安全衛生責任者を選任しなければならない。また、安全衛生責任者の選任に、資格の制限はない。(労働安全衛生法第16条)

1 ◯
労働安全衛生法により、特定元方事業者は、労働者の作業が同一の場所において行われることによって生じる労働災害を防止するため、統括安全衛生責任者を選任し、その者に元方安全衛生管理者の指揮をさせなければならない。(労働安全衛生法第15条第1項)

3 ◯
統括安全衛生責任者は、事業を行う場所において、その事業の実施を統括管理する者でなければ ならない。(労働安全衛生法第15条第2項)

4 ◯
店社安全衛生管理者の選任を必要とする現場は、建築工事において鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造の建築物の建設の仕事を行う現場等で統括安全衛生責任者の選任を要する現場を除き、規模 20 人以上 50 人未満のものとなっている。 (労働安全衛生法第15条の3)

[ No.79 ]
労働者の就業にあたっての措置に関する記述として、「労働安全衛生法」上、正しいものはどれか。

1.事業者は労働者を雇い入れたとき、法令で定められた安全衛生教育を行うべき事項の全部 又は一部に関し十分な知識と技能を有していると認められる労働者については、当該事項に ついての教育を省略することができる。

2.元方安全衛生管理者は、作業場において下請負業者が雇入れた労働者に対して、雇入れ時の安全衛生教育を行わなければならない。

3.事業者は、作業主任者の選任を要する作業において、新たに職長として職務に就くことになった作業主任者について、法令で定められた職長教育を実施しなければならない。

4.事業者は、最大積載荷重が 1 t 以上のフォークリフトの運転(道路上を走行させる運転を 除く。)の業務については、フォークリフト運転免許を受けた者でなければ当該業務に就か せてはならない。

答え

  1
事業者は、労働安全衛生規則第35条第1項の各号に掲げる事項の全部またはは一部に関し十分な知識と技能を有していると認められる労働者については、当該事項についての教育を省略することができると同法同条第2項に規定がある。

2.×
労働者を雇い入れたときに、当該労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全または衛生のための教育は、事業者が行わなければならない。(労働安全衛生法第59条)

3.×
事業者は、その事業場の業種が政令で定めるものに該当するときは、新たに職務につくこととなった職長その他の作業中の労働者を直接指導または監督する者(作業主任者を除く。)に対し、安全または衛生のための教育を行わなければならない。(労働安全衛生法第60条)

4.×
最大積載量が 1t以上のフォークリフトの運転の業務は、技能講習を修了した者でなければならない。なお、1t未満の場合は安全または衛生のための特別の教育を受けた者であればよい。
(労働安全衛生法第61条第1項、同法施行令第20条第十一号)

[ No.80 ]
次の記述のうち、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」上、誤っているものはどれか。

1.現場事務所から排出される図面、書類は、一般廃棄物である。

2.建具の取替工事に伴って生じたガラスくずは、産業廃棄物である。

3.建築物の地下掘削工事に伴って生じた建設発生土は、産業廃棄物である。

4.軽量鉄骨壁下地工事に伴って生じた金属くずは、産業廃棄物である。

答え

  3
建設工事により発生した土砂は、産業廃棄物に含まれない

1 ◯
現場事務所から排出される図面、書類は、工作物の新築、改築または除去に伴って生じる建設業に係る紙くずに該当しない(産業廃棄物以外の廃棄物)ので一般廃棄物である。(廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令第2条第一号)

2 ◯
産業廃棄物とは、事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油その他政令で定める廃棄物等でガラスくずも該当する。(廃棄物の処理及び清掃に関する法律第2条第4項)

4 ◯
軽量鉄骨壁下地工事で生じた金属くずは産業廃棄物である。(廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令第2条第六号)

[ No.81 ]
宅地造成工事規制区域内において行われる宅地造成工事に関する記述として、「宅地造成等規制法」上、誤っているものはどれか。 ただし、都道府県知事とは、指定都市、中核都市又は特例市の区域内の土地については、それぞれ指定都市、中核都市又は特例市の長をいう。

1.擁壁を設置しなければならない崖面に設ける擁壁には、壁面の面積3m2 以内ごとに少なくとも1個の水抜穴を設けなければならない。

2.高さが 4m の擁壁を設置する場合は、擁壁の設置に関する技術的基準に従うとともに、一定の資格を有する者の設計によらなければならない。

3.宅地において、土地の 600 m2 の面積の部分について盛土に関する工事を行い、引き続き宅地として利用する場合は、都道府県知事の許可を受けなければならない。

4.地表水等を排除するための排水施設の全部を除却する工事を行おうとする者は、宅地造成に関する工事の許可を受けた場合を除き、工事に着手する日の 14 日前までに、その旨を都道府 県知事に届け出なければならない。

答え

  2
高さが 5mを超える擁壁の設置、切土または盛土による面積が1,500m2を超える土地における排水施設の設置は、一定の資格を有する者の設計によらなければならない。(宅地造成等規制法施行令第16条)

1 ◯
擁壁の裏面のj排水を良くするためには、壁面の面積 3m2 以内ごとに少なくとも1個、内径が 7.5cm以上の耐水材料を用いた水抜穴を設けなければならない。(宅地造成等規制法施行令第10条)

3 ◯
宅地造成工事規制区域の宅地の 500 m2を超える面積の部分の盛土に関する工事については、造成主は当該工事に着手する前に、都道府県知事の許可を受けなければならない。(宅地造成等規制法第8条第1項、同施行令第3条)

4 ◯
地表水等を排除するための排水施設の全部を除去する工事を行う場合は、宅地造成に関する工事の許可を受けた場合を除き、工事に着手する日の14日前までに、都道府県知事に届け出なければならない。(宅地造成等規制法第15条第2項)

[ No.82 ]
指定地域内における特定建設作業の規制に関する基準として、「振動規制法」上、誤っているものはどれか。 ただし、災害その他非常時等を除く。

1.特定建設作業の振動が、特定建設作業の全部又は一部に係る作業の期間が、当該特定建設作業の場所において連続して6日を超えて行われる特定建設作業に伴って発生するものでないこと。

2.特定建設作業の振動が、日曜日その他の休日に行われる特定建設作業に伴って発生するものでないこと。

3.特定建設作業の振動が、特定建設作業の場所の敷地の境界線において、85 dB を超える大きさのものでないこと。

4.特定建設作業の振動が、当該特定建設作業の場所において、図書館、特別養護老人ホーム等の敷地の周囲おおむね 80 m の区域内として指定された区域にあっては、1日 10 時間を超えて行わ れる特定建設作業に伴って発生するものでないこと。

答え

  3
特定建設作業に伴って発生する振動の大きさの規制基準は、振動規制法施工規則により、75dB以下とされている。(振動規制法施行規則第11条、別表第1第一号)

1 ◯
特定建設作業の振動が、特定建設作業の全部又は一部に係る作業の期間が、当該特定建設作業の場所において連続して6日を超えて行われる特定建設作業に伴って発生するものであってはならない。 (振動規制法施行規則第11条別表第1第四号)

2 ◯
特定建設作業の振動が、日曜日その他の休日に行われる特定建設作業に伴って発生するものであってはならない。 (振動規制法施行規則第11条別表第1第五号)

4 ◯
特定建設作業の振動が、当該特定建設作業の場所において、図書館、特別養護老人ホーム等の敷地の周囲おおむね 80 m の区域内として指定された区域にあっては、1日 10 時間を超えて行わ れる特定建設作業に伴って発生するものでああてはならない。(振動規制法施行規則第11条別表第1第三号)

4章 地業工事 1節 一般事項

第4章 地業工事 


1節一般事項

4.1.1 適用範囲

地業工事では、基礎や基礎スラブを支えるために、それより下の地盤に設けた各種の杭、砂利、砂及び捨コンクリート地業、並びにこれらに関する試験を対象としている。

4.1.2 基本要求品質

(a) 杭地業工事で使用する材料については、工場等で製造される既製コンクリート杭や鋼杭、並びに工事ごとに異なる調合や品質・施工管理等が必要な場所打ちコンクリート杭等に大別される。前者については、材料の品質等が、杭の種類に応じて建築基準法に基づき指定又は認定されており、設計図書の指定に従って、それぞれの規定に適合する材料を使用したことが分かればよい。

また、場所打ちコンクリート杭に使用するコンクリートについては、施工条件に応じて設計図書で要求される品質(水セメント比、スランプ、単位セメント量等)を有するコンクリートを品質計画で明確にし、その材料(コンクリート)を使用したことが、6章のコンクリート工事に準じて分かるようにしておく。

なお、水セメント比及び単位セメント量は、現場で直接確認する適切な方法が確立されていないので、一般的にコンクリートの圧縮強度をその代用特性として用い、品質計画で定めた水セメント比及び単位セメント地を満たすコンクリートの強度で、間接的に確認している。

(b) 地業の平面位置、形状及び寸法は、地業の性能(上部構造物の支持能力)に直接影響を与える。例えば、独立基礎等では寸法の不足が即支持力の不足となる。また、個々の杭は必要な支持力を有する場合でも.平面位置や形状等が許容される誤差の限度を超えると.基礎に加わる上部構造物の荷重と地業の支持力に偏心が生じ、構造物に有害な応力が発生したり、不同沈下が生じたりする。

「標仕」では、地業工事における施工誤差は避けられないものとして、その限度を「有害な影響を与えないもの」と規定している。施工誤差の許容値は、基礎の形式や杭の種類・耐力、地下階の有無や構造形式、平面形状等により異なるため、管理基準や管理の方法を品質計画で明確にし、これに基づいて管理したことが分かるようにしておく。

(c) 一般に、打込杭(支持杭)の場合には、設計図内で杭の支持力が指定され、4.3.1 (e) 及び4.3.3(b)で述べているように直接支持力の確認ができる。しかし、埋込杭や場所打ちコンクリート杭では、支持力を直接確認しながら管理をすることはできない。

このため「標仕」では、適切な施工方法でかつ、適切な品質管理を行ったことが分かれば「所要の支持力を有するもの」と見なすこととし、すべての地業について載荷試験等により支持力の確認を要求しているのではない。

具体的には、適切な施工方法を定め、施工上の管理内容や管理基準及び管理記録の方法並びに管理基準を外れた場合の処置方法等を品質計画に記載させ、これに基づき管理させる。

なお、地盤調査結果と現地の状況等から判断して、設計図書の指定に疑問が生じた場合は、直ちに設計担当者と打ち合わせ、必要な場合には「標仕」1.1.8による協議を行う。

4.1.3 施工一般

(a) 材 料
材料の入手に当たってはその後の工期に影響しないよう、納期の確認が必要である。特に遠心力高強度プレストレストコンクリート杭のB種・C種並びにSC、PRC、ST杭のような特殊な場合は注意が必要である。

(b) 施工業者
打込み工法においては、平成9年版「建築工事共通仕様書」で引用されていた昭和46年建設省告示第111号は廃止されたが、打止め時に貫入量と打撃エネルギーから支持力の推定が行えるため、これを打止め管理に利用している。一方、既製杭の埋込み工法や場所打ちコンクリート杭ではこのような管理手段がなく、施工中に所定の耐力が確保されているかを数値で確認することは困難である。したがって、杭基礎としての信頼性は施工業者の技術力に依存せざるを得ない。施工業者の技術力については、工事実績、保有する施工機械の種類や能力、施工の管理体制等によって、十分検討することが必要である。

技術の進歩に対する施工水準の確保と施工の信頼性向上を図るため、既製コンクリート杭については(-社)コンクリートパイル建設技術協会、場所打ちコンクリート杭については(-社)日本基礎建設協会で、技術講習会を実施している。

(c) 工 法
(1) 地業工事は、一般に振動、騒音等が著しく、また、機械の転倒等の事故を起こす可能性があるので、1.3.7 に記述されているような配慮、参考資料の資料 1 に記述されている騒音規制法、振動規制法に対する処置、2.2.1(a)(iii)に記述されている事前の現状調査等が必要である。特に、作業地盤は施工機械が傾斜、転倒しないよう養生する。

また、酸欠、杭孔への転落等についても、防止対策をとる。

(2) 杭の上部には、地震時に水平せん断力や大きな曲げ応力が発生するので、十分注意して施工管理を行う必要がある。特に、セメントミルク工法では杭周固定液の逸液により、杭の周囲が軟弱な泥土となっている場合があるので注意する。

(3) 排土、廃液等は、産業廃菓物として規制を受ける場合があるので、産業廃棄物処理法等に従い適切に処理する。

(d) 杭の品質管理
杭の品質管理は、要求品質に応じて適切に行う必要がある。「国土交通省総合技術開発プロジェクト「建設事業の品質管理体系に関する技術開発」報告害 建築分野編」(平成13年3月 国土交通省建築研究所)に各工法ごとの「要求品質と品質管理方法」が報告されているので、その例(打込み工法、プレボーリング根固め工法アースドリル工法)を表4.1.1~3に示す。これ以外の既製コンクリート杭(プレボーリング拡大根固め工法、中掘り拡大根固め工法)、鋼管杭(打撃工法、中掘り工法、鋼管ソイルセメント杭工法、回転貫入杭工法)及び場所打ちコンクリート杭(リバース工法、オールケーシング工法)については、この報告古を参照されたい。

なお、工法の特徴や施工方法、具体的な管理値等は、本章3節以降の関連する部分を参照されたい。

(e) その他
(1) 地中障害物、埋設物及び文化財や学術上の資料となる出土品がある場合は、関係者と協議し適切に処置する。

(2) 施工中の領斜、変形、ひび割れ、異常沈下、掘削孔壁の崩壊等予想外の異状が生じるなど、「標仕」4.1.3(f)に定める場合は、直ちに関係者と協議し、適切な処置を受注者等に指示する。

表4.1.1 打込み工法の要求品質と品質管理方法
(「建設事業の品質管理体系に関する技術開発」報告書 建築分野編より)

表4.1.2 プレポーリング根固め工法の要求品質と品質管理方法
(「建設事業の品質管理体系に関する技術開発」報告書 建築分野編より)

表4.1.3 アースドリル工法の要求品質と品質管理方法
(「建設事業の品質管理体系に関する技術開発」報告書 建築分野編より)

4章 地業工事 2節 試験及び報告書

第4章 地業工事 


2節 試験及び報告書

4.2.1 一般事項

(a) 「標仕」4章2節では、試験杭、杭の載荷試験、地盤の載荷試験及び報告書について規定している。

(b) 試験は.原則として.監督職員の立会いを受けて行うこととしている。
なお、載荷試験には、(c)のような理由で設計担当者の立会いを求めるのがよい。

(c) 「標仕」4.2.1(c)では施工試験の結果によって「その後の施工の指示を受ける。」こととしている。「施工の指示」には、増し杭等設計変更の必要な場合もあるが、この場合は、工程管理上速やかに行う必要がある。

(d) 杭の施工に併せて行う管理試験については、3節から5節に示す。

4.2.2 試験杭

試験杭とは、本杭を施工する場合の各種管理基準値等を定めるための杭を想定している。打込み工法(「標仕」4.3.3(e))の試験杭は、杭の長さの決定や支持層の確認等のため本杭と別に計画する。試験杭の位置、本数及び寸法は、設計図書に特記される。試験後の杭体の強度に十分余裕があると予想される場合には、試験杭を本杭とすることができる。

セメントミルク工法(「標仕」4.3.4(e))、特定埋込杭工法(同4.3.5 (b))、鋼杭工法(同4.4.3及び4.4.4)及び場所打ち杭(同4.5.4(b))については、一般的には最初の1本目の本杭が試験杭とされる。試験杭の位置は、地盤や土質試験の結果から、全基礎杭を代表すると判断される位置に指定される。

試験杭の施工結果を基に、試験杭以外の本杭の施工における各種管理基準値等を定める。このため、試験杭の施工設備は、原則として、本杭に用いるものを使用する。

なお、杭の支持力の確認試験や水平載荷試験を行うための試験杭や反力杭等の特別な仕様が必要な「試験杭」は「標仕」4.2.2(a)の「特記」の想定外である。その場合は、設計担当者により別途仕様が定められ設計図書に特記される。

4.2.3 杭の載荷試験

杭の載荷試験は、「標仕」では、鉛直又は水平載荷試験としている。また、試験の方法は特記によるとしている。

地盤工学会基準「杭の鉛直載荷試験方法・同解説」には、単杭に対して鉛直方向に載荷するすべての載荷試験を対象にし、
「杭の押込み試験方法(JGS 1811)」
「杭の先端載荷試験方法(JGS 1812)」
「杭の引抜き試験方法(JGS 1813)」
「杭の鉛直交番載荷試験方法(JGS 1814)」
「杭の急速載荷試験方法(JGS 1815)」
「杭の衝撃載荷試験方法(JGS 1816)」
の6種類の基準が併記されている。

また、水平載荷試験に関しては地盤工学会基準「杭の水平載荷試験方法(JGS1831)」に基準化されている。

ここでは、地盤工学会基準の概要を紹介する。

(1) 鉛直載荷試験
6種類の基準を、載荷方法から、荷重の性質、加力方法、反力装置、載荷位置及び載荷方向で分類すると表4.2.1のとおりである。

表4.2.1 載荷方法による分類(杭の鉛直載荷試験方法・同解説より)

荷重の性質からは、静的載荷試験と動的載荷試験に大別される。静的載荷と動的載荷は、杭体並びに地盤の速度及び加速度に依存する抵抗が無視できる載荷か否かで区別できる。また、動的載荷において急速載荷と衝撃載荷は、杭体の波動を無視できるか否かで区別される。

この基準では、図4.2.1に示すように、載荷時間の長さ、具体的には載荷時間 t1の、縦波が杭体を一往復するのに要する時間 2L/cに対する比である相対載荷時間 Trの大きさで区分される。


図4.2.1 載荷時間の比較(杭の鉛直載荷試験方法・同解説より)

① 押込み試験方法
押込み試験方法は、杭頭部に軸方向押込み荷重を加える試験である。この試験方法は、実際の杭と同じ荷重条件で行うため鉛直支持力特性の評価の信頼性が高いが、反力装置に載荷梁等を使用した反力抵抗体が必要なため、ある程度の費用と工期を要する。

載荷に用いる試験装置は、加力装置、反力装置及び計測装置で構成される。図 4.2.2に一般的な載荷試験装置例として反力杭方式の試験装置を示す。


図4.2.2 反力杭を使用した場合の押込み試験装置例
(杭の鉛直載荷試験方法・同解説より)

② 先端載荷試験方法
先端載荷試験方法は、図4.2.3のように、杭体の先端付近に取り付けたジャッキによって静的な荷重を加える試験である。この試験方法では、押込み試験方法のような杭頭部の反力装置は用いずに. ジャッキの上下に生ずる抵抗力を互いに反力として載荷する。ジャッキの上方に生ずる抵抗力は.杭を押し上げるのに必要な抵抗(押上げ抵抗)であり、杭の周面抵抗力に杭の自重が加わったものとなる。ジャッキの下方に生じる抵抗力は、杭の先端抵抗力が主であり、これにジャッキより下方の部分の周面抵抗力が加わることになる。


図4.2.3 先端載荷試験の装置(杭の鉛直載荷試験方法・同解説より)

③ 引抜き試験方法
引抜き試験方法は、杭頭に静的な引抜き荷重を加える試験である。

試験装置は、押込み試験と同様に、加力装置、反力装置、計測装置で構成される。引抜き試験の反力抵抗体は、反力杭が一般的であるが反力板も用いられている。コンクリート系の試験杭では、試験杭の杭体に引張り応力が作用するため、杭体の引張り強度について注意を要する。

また、各層の周面抵抗力特性を得るために杭体の軸方向力を測定する際には、杭体のひび割れの影響についても留意しなければならない。

④ 鉛直交番載荷試験方法
鉛直交番載荷試験方法は、杭に押込み及び引抜きの軸方向鉛直交番荷重を加える試験である。地震時における構造物のロッキング動等によって杭基礎に作用する変動軸力は、鉛直交番荷重として杭頭に作用するが、従来の設計では押込み荷重及び引抜き荷重に対する抵抗力を押込み試験及び引抜き試験によってそれぞれ別々に評価してきた。しかし、近年行われるようになってきた上部構造と杭基礎との一体解析では、鉛直交番荷重に対する杭の挙動を一連の挙動として評価する必要が生じてきた。鉛直交番載荷試験は、これまで研究的に行われてきた事例はあるものの、多くの試験が実施されてきたとはいえない。しかし、兵庫県南部地震以降、常時から大地震時に至るまでの杭基礎の挙動を正確に設計に反映させる必要性が高まっており、鉛直交番載荷試験によって杭挙動を評価する機会が今後増加するものと考えられる。したがって、鉛直載荷試験方法の一つとして「杭の鉛直交番載荷試験方法(JGS 1814)」が制定され、試験の基準化を図ることとされている(図4.2.4参照)。


図4.2.4 鉛直交番載荷試験の載荷サイクル(杭の鉛直載荷試験方法・同解説より)

⑤ 急速載荷試験方法
急速載荷試験方法は、杭頭に動的な荷重を加える載荷試験の一つである。荷重の性質として油圧ジャッキ等により静的な荷重を加える押込み試験とハンマー等で衝撃荷重を加える衝撃載荷試験の中間的な位置付けにあり、基準の中では急速載荷を「杭体の波動現象は無視できるが、速度および加速度に依存する杭体と地盤の抵抗は無視することができない載荷時間を持つ載荷」と定義している。具体的には、相対載荷時間 Tr が 5 ≦ Tr < 500の範囲の載荷試験である(図4.2.5参照)。


図4.2.5 反力装置を使用しない加力装置(杭の鉛直載荷試験方法・同解説より)

⑥ 衝撃載荷試験方法
杭の衝撃載荷試験方法は、杭頭に動的な荷重を加える載荷試験の一つである。一般に、杭頭部にひずみ計及び加速度計を取り付け、ハンマー等による杭打撃時に発生するひずみ波形及び加速度波形を測定し、波動理論に基づいて解析を行い、杭の鉛直支持力特性を評価する試験方法である(図4.2.6参照)。

載荷試験においては、載荷時間が、波動が杭長分を伝播する時間に対して短くなるほど、波動の影響が大きくなる。衝撃載荷試験は、載荷時間が 0.01〜0.02秒程度であるため、波動現象を伴う試験であり、試験結果の解析は一次元波動理論に基づく必要がある。


図4.2.6 衝撃載荷試験方法の例(杭の鉛直載荷試験方法・同解説より)

(2) 水平載荷試験
杭の水平載荷試験方法は、静的載荷による杭の水平抵抗特性に関する資料を得ること、また、既に定められた杭の水平地盤反力係数等の設計値の妥当性を確認することを目的とする(図4.2.7参照)。

載荷方法は、載荷パターン及び載荷方式により分類され、対象とする構造物の種類及び試験の目的を考慮して決定する。

載荷パターンには、一方向載荷と正負交番載荷があり、いずれかを選択する。また、単サイクルと多サイクルがあり、いずれかを選択する。後者の場合は、試験の目的に応じてサイクル数を決定する。

載荷方式には、段階載荷方式と連続載荷方式があり、いずれかの方式を選択する。前者の場合は荷重(変位)段階数、各荷一重(変位)段階における荷重(変位)保持時間を、後者の場合は載荷速度を試験の目的に応じて決定する。


図4.2.7 水平載荷試験の装置例(杭の水平載荷試験方法・同解説より)

4.2.4 地盤の載荷試験
(a) 一般事項
地盤の載荷試験は、「標仕」では平板載荷試験としている。地盤の平板載荷試験は、地盤工学会基準JGS1521-2003(地盤の平板載荷試験方法)による。

(b) 平板載荷試験
(1) 試験地盤
(i) 試験地盤は、根切りのときスコップ等で荒らしたり踏み付けたり、あるいは水で埋まらないよう試験地盤の少し上で止めておき、載荷板を設置するときに、試験が自然状態で行えるようにする。

(ii) 試験孔は、一般に載荷板の5倍程度あればよいといわれているが、地盤工学会基準JGS 1521-2003によると、試験地盤面は、載荷板の中心から1.0m以上の範囲を水平に整地すると定められている(図4.2.8参照)。


図4.2.8 平板載荷試験における根切り幅と載荷板との関係を示した例

(2) 載荷板
(i) 載荷板は、直径30cm以上の円形とし、厚さ25mm以上の鋼板又は同等以上の剛性のある板を用いる。

(ii) 設置は、試験孔のほぼ中央とし、反力装置の中心の鉛直下を水平器等を用い平らに仕上げ設置する。また、地盤となじみの悪いときは薄く砂をまくか、せっこうをまいて行う。

なお、試験地盤が常水面以下の場合は、試験地盤以下に水位を下げないように注意し排水する。また、水が多く排水により地盤が緩むおそれのある場合は、設計担当者と打ち合わせる。

(3) 養 生
試験装置の上は、テント等で覆い直射日光及び降雨を避ける。また、雨水が試験孔に流入しないようにする。

(4) 最大荷重
最大荷重は設計図書の指定によるが、推定した地盤の極限支持力以上、又は設計荷重に安全率を乗じた値以上とする。

(5) 試験装置
(i) 載荷台の反力梁は、中心を載荷板の中心と一致させ、水平に設置して、変形、傾斜、転倒がないようにする。また、載荷物は偏心しないよう注意する(図4.2.9 参照)。

(ii) 加圧方法は、計画最大荷重以上の加圧能力と、変形に追随できる十分なストロークをもつジャッキによる。


図4.2.9 平板載荷試験の装置の例

(6) 計測装置
(i) 載荷荷重の計測は、荷重計(環状ばね型力計又はロードセル)を用いる。計器は試験荷重に見合ったもので、検定後の経過期間が短いものがよい。

(ii) 変位の計測は、読み精度 1/100mm、ストロークは30mm以上のダイヤルゲージ又はこれに準ずる性能の変位計を用い、セットは図4.2.10のようにする。


図4.2.10 平板載荷試験における沈下量の測定方法

(7) 試験方法
(i) 国土交通省大臣官房官庁営繕部「敷地調査共通仕様瞥」4.7.4(4)では、載荷方法は、荷重制御による段階式載荷又は段階式繰返し載荷とし、適用は特記により、特記がなければ、段階式載荷とするように定められている。

(ii) 地盤工学会基準JGS 1521-2003によると、載荷重は、計画最大荷重を 5〜 8 段階ずつ等分に載荷し、荷重の保持時間は30分程度の一定とするよう定められている。

(iii) 沈下量の測定時間は地盤工学会基準 JGS 1521-2003によると、各荷重段階において所定の荷重に達したのち、原則として表4.2.2のように定められている。

表4.2.2 沈下量測定時間

(8) 試験結果の表示
試験結果の表示の例を,図4.2.11に示す。


図4.2.11 載荷試験結果の例

(9) 報告書
地盤の載荷試験の報告書は、次の事項を記載する必要がある。

① 地盤工学会基準JGS 1521-2003と部分的に異なる方法を用いた場合には、その方法
② 試験方法
③ 試験結果の図及び表
④ 地盤反力係数
⑤ 極限支持力
⑥ 試験地盤の観察結果と地下水の状況
⑦ その他特記すべき事項

4.2.5 報告書等
地業工事の報告書の目的及び記載事項は次のとおりである。

(1) 目 的
(i) 施工記録を報告することにより施工状況を記録に残す。
(ii) 予期しない状況が生じた場合等の対策を立てる場合の参考資料とする。
(iii) 上部構造に不同沈下等の問題点が生じたときの原因究明資料とする。
(iv) 将来の近隣での建設の参考資料とする。

(2) 全般的な報告書の記載事項
(i) 工事概要
(ii) 杭材料(杭の種類、材質、形状、寸法、コンクリート強度等)
(iii) 施工機械の仕様概要
(iv) 工法の概要
(v) 実施工程表
(vi) 工事写真
(ⅶ) 試験杭の施工記録及び地業工事に伴う試験結果の記録
(ⅷ) 本杭の施工記録
(ix) 試験杭等において採取した土質資料

4章 地業工事 3節 既製コンクリート杭

第4章 地業工事 


3節 既製コンクリート杭地業

4.3.1 適用範囲

(a) この節は、打込み工法セメントミルク工法及び特定埋込杭工法による既製コンクリート杭地業に適用する。

なお、杭の施工法の分類については、JIS A 7201(遠心カコンクリートくいの施工標準)に準ずる(図4.3.3参照)。

(b) 打込み工法の作業の流れを図4.3.1に、セメントミルク工法の作業の流れを図4.3.2 に示す。

(c) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。

なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。

① 工程表(施工機械及び杭の搬入時期、各ブロックごとの試験杭と本杭打込みの開始及び完了の時期等)
② 杭の製造業者名
③ 施工業者名及び作業の管理組織
④ 杭の種類、規格、寸法及び使用箇所(鋼杭の場合は、防錆処置を含む)
⑤ 材料の受入れ検査の方法及び記録
⑥ 地中埋設物・障害物の調査、移設、防護、撤去等の計画
⑦ 施工機械の仕様の概要及び性能
⑧ 施工法
⑨ プレボーリングを併用する場合はその深さ
⑩ セメントミルク工法の場合は安定液、根固め液等の調合計画及び管理方法
⑪ 杭配置図(平面図及び断面図:土質柱状図)、試験杭の位置及び杭の施工順序
⑫ 継手の工法(溶接機の種類と溶接技能者の資格を含む)
⑬ 長尺物の搬入経路
⑭ 杭支持力の確認方法(算定式、所要最終貫入量等)
⑮ 支持地盤の確認方法(地盤資料と掘削深さ、電流値との対照等)
⑯ 杭頭の処理方法(切断方法鉄筋の処理方法等)
⑰ 安全対策(施工機械の転倒防止と杭孔への転落防止等)
⑱ 公害対策(騒音、振動、油滴飛散防止策並びに掘削液の廃液処理方法等)
⑲ 施工結果報告書内容
⑳ 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記緑文章の書式とその管理方法等

図4.3.1 打込み工法(打撃工法)の作業の流れ

図4.3.2 セメントミルク工法の作業の流れ

(d) 杭施工法の概要
(1) 施工の一般事項
既製コンクリート杭の施工に当たっては、地盤状況、現場状況、設計支持力等を考慮して、杭を予定深度まで正しく、かつ、安全に設置できる工法及び施工機械とする。

(2) 杭施工法の分類
杭の施工法の分類を図4.3.3に、杭の施工法の実績推移を図4.3.4に示す。
なお、(  )内は「標仕」の名称を示す。


図4.3.3 杭の施工法の分類(JIS A 7201 : 2009)


図4.3.4 杭の施工法の実績推移((-社)コンクリートパイル建設技術協会のデータによる)

① 打込み工法(図4.3.5及び6参照)
一般に杭径 600mm以下の施工に用いられる。地盤を緩めることがなく耐力は期待できるが、ハンマーを使用するため騒音、振動が大きく、市街地では問題が多い。このための対策として、油圧パイルハンマーやドロップハンマーによるプレボーリング併用打撃工法等が用いられている。

この工法は、アースオーガーで一定深度まで掘削したのち、杭を建込み打撃する工法である。中・小径で硬い中間層を抜く場合及び騒音振動を軽減し、杭の貫入を容易にする場合等に使用される。

通常、粘性土の場合のオーガーの掘削径は、杭径-50mm程度である。

なお、杭径が700mm以上の杭の施工に当たっては.施工実績が少ないため.特に注意が必要である。


図4.3.5 パイルハンマー打撃工法


図4.3.6 プレボーリング併用打撃工法

② プレボーリングによる埋込み工法(図4.3.7参照)
プレボーリングによる埋込み工法は、アースオーガーで掘削した孔に杭を設置する工法であり、セメントミルク工法と称する一般工法、最終的に打撃をする方法及び先端を拡大根固めした特定埋込杭工法がある。

杭の設置方法は、自重による設置を基本とし、圧入、軽打、回転等を併用する場合もある。掘削には地盤や工法によって水や安定液が使用されることがある。

セメントミルク工法は、アースオーガーによってあらかじめ掘削された縦孔に既製杭を建込むものである。掘削中は孔壁の崩壊を防止するために安定液をオーガー先端から噴出し、所定の深度に達したのち、根固め液に切り換え、所定量を注入完了後、杭周固定液を注入しながらアースオーガーを引き上げる。その後、杭を掘削孔内に建込む工法である。

この施工法は、国土交通省住宅局建築指導課監修「埋込み杭施工指針・同解説」に準じて施工するものである。

なお、このセメントミルク工法で、通常用いられている杭径は 300~600mm、施工深度は30m程度である。

また、特定埋込杭工法の中のプレボーリング工法については、種類が多いのでそれぞれの適用範囲を確認し、各工法に定められた条件に従って施工する。


図4.3.7 プレボーリングによる埋込み工法(セメントミルク工法の場合)

③中掘りによる埋込み工法(図4.3.8参照)
杭中空部にアースオーガー等を挿入し、杭先端地盤を掘削しながら、杭中空部から排土し、杭を設置する工法であり,比較的杭径の大きなもの(一般的にはφ 500mm以上の杭)の施工に適している。

杭の設置や排土を促進するため、圧縮空気又は水をオーガーヘッド先端から噴出させ、施工機械の自重を利用した圧入又はドロップハンマーによる軽打等を併用している場合が多い。

掘削機には、アースオーガー、オーガーバケット等が使用される。また、杭に作用する周面摩擦抵抗を低減させ、杭の沈設を容易にするために、先端にはフリクションカッターを取り付けるのが一般的である。

支持力発現方法としては、所定の深度に達したのち、杭に打撃を加える方法と杭先端部を根固めする方法がある。

杭に打撃を加える方法には、国土交通省住宅局建築指導課監修「中掘り打撃工法設計・施工指針」に準じて施工するものである。この工法の先端支持カ算定式は打込み工法と同じ取扱いである。

根固めする方法(図4.3.8(イ))には、杭先端部を根固めする方法と拡大根固めする方法とがある。拡大根固めする方法には、オーガーの先端に装備された拡大ヘッドによる方法(図4.3.8(ロ))、オーガーヘッド又はロッドから高圧又は低圧で根固め液を噴射する方法(図4.3.8(ハ))と、これらを併用し築造する方法があり、特定埋込杭工法となっている。これらの施工に当たっては、各工法に定められた条件に従って行うものとする。


図4.3.8 中掘りによる埋込み工法

④回転による埋込み工法(回転根固め工法)(図4.3.9 参照)
回転圧入による埋込み工法は、杭先端金物により掘削を行い、杭体に回転力を与えながら圧入し、杭を所定の位置に設置する工法である。回転圧入時は、水等を先端部から噴出して補助するものもある。

杭の支持力発現方法は、根固めによる方法が一般的である。


図4.3.9 回転による埋込み工法(回転根固め工法)

(e) 支持力の算定
杭の許容支持力は、地盤の許容支持力と杭体の許容耐力のうちいずれか小さいものとする。

基礎杭の許容支持力を定める方法は、その種類に応じて「地盤の許容応力度及び基礎ぐいの許容支持力を求めるための地盤調査の方法並びにその結果に基づき地盤の許容応力度及び基礎ぐいの許容支持力を定める方法等を定める件」(平成13年7月2日 国土交通省告示第1113号)(以下、この節では「告示第1113号」という。)に定められている( 24.1.9参照)。この内、一般的には次のものがある。

(i) 載荷試験による極限支持力(Ru)により、地盤の長期許容支持力(Ra)を定めるもの

(ii) 基礎杭先端付近の地盤の標準貫入試験の平均 N 値から基礎杭の先端の地盤の許容応力度( qp)を定めたもの

① 打込杭

② セメントミルク工法による埋込杭

(iii) 地盤の許容応力度及び基礎杭の許容支持力を求めるための方法として、杭打ち試験が挙げられている。ただし、告示第1113号では、具体的な算定式等については示されていない。

(iv) 特定埋込杭工法の場合は、各工法に定められた算定式とする。

4.3.2 材 料

(a) 杭の種類
一般的に用いられている既製コンクリート杭の種類を図4.3.10に示す。

図4.3.10 主な既製コンクリート杭の種類

PHC杭は、コンクリート設計基準強度が80 N/mm2以上で、形状的には全長にわたり同一断面の杭(ストレート杭という。)であるが、端部が拡大された杭(ST杭という。)や、全長にわたり等間隔で突起部が付いた杭(節杭という。)もある。これらの杭の本体部は本体部径が等しいPHC杭と同じ性能を有するので、分類上はPHC杭に含まれる。

また、最近では、コンクリート設計基準強度が100 N/mm2以上の杭や肉匝の厚い杭のほか、部分的に特殊な形状のものも開発されており、これらも分類上はPHC杭やSC杭となる。

PRC杭(ストレート杭)にも同様にPRC-ST杭やPRC-節杭がある。

これらの杭の大部分は、JIS I 類規格品又は性能評価機関により、告示第1113号に定める品質を満足する内容の(任意)評定を取得しているものである。

(b) 杭の製造工程
各既製コンクリート杭(略称でPHC杭、SC杭、PRC杭、ST杭及び節杭)の製造工程の例を、図4.3.11に示す。

なお、PRC杭、ST杭及び節杭の製造工程はPHC杭の場合と同じである。

図4.3.11 各既製コンクリート杭の製造工程の例

(c) 杭材料の品質
(1) 既製コンクリート杭については、告示第1113号第8で材料の許容応力度が定められているので、その抜粋を次に示す。

地盤の許容応力度及び基礎ぐいの許容支持力を求めるための地盤調査の方法並びにその結果に基づき地盤の許容応力度及び基礎ぐいの許容支持力を定める方法等を定める件

(平成13年7月2日 国土交通省告示第1113号 最終改正平成19年9月27日)建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第93条の規定に基づき、地盤の許容応力度及び基礎ぐいの許容支持力を求めるための地盤調査の方法を第1に、その結果に基づき地盤の許容応力度及び基礎ぐいの許容支持力を定める方法を第2から第6に定め、並びに同令第94条の規定に基づき、地盤アンカーの引抜き方向の許容応力度を第7に、くい体又は地盤アンカ一体に用いる材料の許容応力度を第8に定める。第8 くい体又は地盤アンカ一体に用いる材料の許容応力度は、次に掲げるところによる。

二 遠心力鉄筋コンクリートくい及び振動詰め鉄筋コンクリートくいに用いるコンクリートの許容応力度は、次の表(省略)の数値によらなければならない。この場合において、設計基準強度は40N/mm2以上としなければならない。

三 外殻鋼管付きコンクリートくいに用いるコンクリートの圧縮の許容応力度は、次の表(省略)の数値にらよらなければならない。この場合において、設計基準強度は 80N/m2以上としなければならない。

四 プレストレストコンクリートくいに用いるコンクリートの許容応力度は、次の表(省略)の数値によらなければならない。この場合において、設計基準強度は50N/mm2以上としなければならない。

五 遠心力高強度プレストレストコンクリートくい(JIS A5373(プレキャストプレストレストコンクリート製品)- 2004 附属書5 プレストレストコンクリートくいに適合するものをいう。)に用いるコンクリートの許容応力度は、次の表(省略)の数値によらなければならない。この場合において、設計基準強度は80N/mm2以上としなければならない。

六 前各号の規定にかかわらず、くい体の構造方法及び施工方法並びに当該くい体に用いるコンクリートの許容応力度の種類ごとに応じて行われたくい体を用いた試験により構造耐力上支障がないと認められる場合にあっては、当該くい体のコンクリートの許容応力度の数値を当該試験結果により求めた許容応力度の数値とすることができる。

(2) 代表的な杭材料の品質の例を表4.3.1に示す。これ以外の杭は、告示第1113号第8第六号の規定により認められた許容応力度の数値とすることができる。

表4.3.1 杭材料の品質の例

(3) 代表的な遠心力高強度プレストレストコンクリート杭〈PHC杭〉には、JIS A 5373(プレキャストプレストレストコンクリート製品)附属書 E による製品規格(推奨仕様 E-1 )がある。JIS A 5373による単体長さは、4~15m(ただし、φ300及びφ350のA種は 4~13m)である。

杭体の曲げ強度を表4.3.2に示す。

表4.3.2 遠心力高強度プレストレストコンクリート杭〈PHC杭〉の曲げ強度
(JIS A 5373 : 2010 推奨仕様E-1)

また、ストレート杭のほか、拡径断面を有する杭(ST杭)や節部付きの杭(節杭)等がある。

(i) 拡径断面を有する遠心力高強度プレストレストコンクリート杭〈ST杭〉は、杭の先端部を太径にした拡底PHC杭で、大きな地盤支持力が得られるもので ある。拡径部に溝が付いた杭等もある。また、拡径部を下端ではなく、上方側で用い、その上方に拡径部と同径の杭を接続する使用方法(拡頭タイプ)もある。

(ii) 節部付き遠心力高強度プレストレストコンクリート杭〈節杭〉は、杭本体部を約1m間隔で節部としたPHC杭で、大きな周面摩擦力が得られるものである。一部にのみ節部を有する杭もある。節杭にも拡頭タイプがある。

(4) 外殻鋼管付コンクリート杭〈SC杭〉は、大きな水平力が作用する場合に使用するために開発された杭で、鋼管(材質STK400、STK490、SKK400、SKK490、SS400、SM400ABC、SM490ABC、SN400ABC、SN490ABC、材厚 4.5~25mm)に膨張性コンクリートを遠心力で張り付かせて一体化させた複合構造であり、一般にPHC杭の上杭として使用される。最近では、不等厚鋼管を用いた製品もある。

(5) プレストレスト鉄筋コンクリート杭〈PRC杭〉は同様に水平力に抵抗するために開発されたPHC杭とRC杭の合成されたものであり、軸鉄筋としてPC鋼材のほかに鉄筋コンクリート用異形棒鋼 D10~D35を配置している。また、ストレート杭のほか、拡径断面を有する杭(ST杭)や節部付きの杭(節杭)等がある。(3)(i)及び(ii)参照。

(6) 杭先端部
杭先端部の形状は図4.3.12が標準で、土質及び工法に応じて適切なものを選定する。

一般に、打込み工法やセメントミルク工法では、平たん又は凹形の閉塞形が多く用いられ、中掘り工法や特定埋込杭工法では開放形が用いられている。最近では、大径杭や長尺杭のセメントミルク工法では、開放形が用いられている。特定埋込杭工法では、開放形の先端部に回転押込み補助用の金具を取り付けているものもある。

これらの先端部に、更に、地層や工法に適した先端金具等を取り付けて施工することが多い。

なお、杭先端部と地盤の成層状態との関係を表4.3.3に示す。


図4.3.12 杭先端部の形状

表4.3.3 杭先端部と地盤の成層状態との関係

(7) 既製コンクリート杭関係のJIS(JIS A 5372及びJIS A 5373)

(i) JIS A 5372(プレキャスト鉄筋コンクリート製品)及びJIS A 5373(プレキャ ストプレストレストコンクリート製品)は、性能規定化を目指した2004年の改正で「本体規格」-「附属書」-「推奨仕様」という形で構成され、以前の個別製品ごとの仕様規格は推奨仕様として規定された。また、これらJISでは、製品を I類、 II類に区分しており、その定義は次のとおりである。

I 類:製品の性能を満足することが、実績によって確認された仕様に基づいて製造される製品で、附属書に推奨仕様が示されているもの。

Ⅱ 類:受渡当事者間の協議によって、性能及び仕様を定めて製造される製品。なお、受渡当事者間とは、製造者と工事請負人である購入者ではなく、製造者と工事の発注者又は自ら工事を行うものをいう。

(ii) 従来は、JIS A 5373の I類のPHC杭が主流であったが、近年では、性能設計思想により多種多様の杭が用いられるようになってきている。

(iii) 現在、I 類規格品のあるものは、RC杭、PHC杭、PHC-ST杭及びPHC-節杭のみである。SC杭及びPRC杭はJISに名称はあるものの推奨仕様がないので、 JIS規格品(Ⅱ類)としての扱いとなっているため、告示第1113号による指定性能評価機関の評定品が使用されている。コンクリート設計基準強度が 100N/mm2以上のものも同様である。

4.3.3 打込み工法

(a) 打込み工法は、杭の支持力を得るために、最終工程に打撃を行うものと「標仕」では規定している。この工法は、施工の打込み時において杭の最終貫入量が測定され、推定支持力の管理基準値が定められている工法を示しており、打撃工法、プレボーリング打撃工法、中掘り打撃工法等がある。杭の取扱い及び工法はJIS A 7201(遠心カコンクリートくいの施工標準)による。

(b) 試験杭
(1) 打撃工法における試験杭の目的は、杭の推定支持力、土質状態、杭の長さ、施工時間、施工機械の適否等の確認である。本杭施工の前に行う杭打ち試験により適切な施工方法等の検討を行う。

また、杭の設計支持力は、特記により定められている。試験杭の杭打ち試験において、打込み深さ、最終貫入量等の管理基準値を確認し定めることが必要である。

(2) 試験に使用する杭は、原則として設計図書に示された諸元・材質のものを使用するが試験杭の長さは、支持層の位置が推定より深いこともあるので、本杭より2m程度長いものを用いるのが望ましい。

(3) 試験杭は、4.2.2で述べた理由で本杭の施工機械と同一機種で行うことが原則である。

(4) 調査項目及び調査方法は、打撃工法を例として次に示す。
(i) 打込み途中
杭に図4.3.13のように何m貫入したか分かるように印を付けておき、原則として、0.5~1.0mごとに次の項目について記録する。

1) 打撃回数   [ 回/m ]
2) 全打撃回数  [ 回 ]
3) 全打込み長さ [ m ]
4) 打込み所要時間[ 時分 ]

(ii) 打止まり
最終10回以上の打撃による平均値として
1) ハンマーの落下高さ[ m ]
2) 最終貫入量    [ mm ]
3) リバウンド量   [ mm ]

(iii) 支持層の確認
貫入量の減少と柱状図との比較により支持層の確認を行い、最終貫入量を測定する。

最終貫入量及びリバウンド量の測定は、図4.3.14に示すようにセクションペーパーを杭に張り付けておき、水平においたガイド材に沿って鉛筆を横に移動させていくと、図4.3.15のように杭の動きが記録される。


図4.3.13


図4.3.14 測定方法


図4.3.15 貫入量の記録

(5) 推定支持力の算定方法は特記によるとされているが、一般的には次の方法が用いられている(JIS A 7201より)。

( ⅰ )打込み杭の推定支持力

(ii) やっとこを使用した場合
やっとこを使用した場合には、算定値を0.8倍程度に低減しているが、地盤性状や杭打ち機(やっとこの構造)等によりその低減率は異なるので、やっとこを使用した場合と使用しない場合との値を実測して低減率を決めることが望ましい。

(c) 打込み工法に用いるハンマーの種類
(1) 各ハンマーの長所短所の比較を表4.3.4に示す。特に打撃工法による杭打ち施工は、大きな騒音・振動を発生するので、選定に当たっては、工事現場周辺の環境の保全に注意し、騒音・振動対策を十分に実施しなければならない。図4.3.16及び17に基礎工事用機械の騒音レベル、振動レベルの参考値を示す。

表4.3.4 各ハンマー長所短所


図4.3.16 基礎工事用機械の騒音レベル


図4.3.17 基礎工事用機械の振動レベル

(2) ディーゼルパイルハンマー
ディーゼルエンジンの原理によるハンマーである。ラム(上下動するピストン部分)の落下高さが2mを超えるような能力の小さいハンマーでは杭頭を破壊するおそれがあるので、落下高さが2m以下で杭を打ち込める能力のあるものとする。最近では、施工実績はほとんどない。

ラム質量と杭径の関係は、おおむね表4.3.5のとおりである。

表4.3.5 ラム質量と杭径の関係

(3) 油圧ハンマー
建設省技術評価制度(1983年)によって評価・普及し、油圧によってラムを作動落下させる杭打ち用ハンマーで、ディーゼルパイルハンマーに比べて大幅に騒音を低減する(15~20ホン)とともに油煙の飛散が全くない。ラムの落下高は 0.1 mごとに任意の高さに調節できる。従来のディーゼルパイルハンマーに比べて「重いラムを低い位置から落下させる」という特徴がある。

(4) ドロップハンマー〈モンケン〉
鋼製ハンマーの自然落下により打ち込むもので、自重が杭質量以上、かつ、杭長さ 1m当たり質量の10倍以上のものを使用する。落下高さは原則として、2m以下とし、杭頭の破損を防ぐ。

(d) アースオーガー
打込み工法に併用するアースオーガーは、プレボーリング工法と同様に地層に合わせた十分な性能をもち、適正な掘削速度で行わなければならない。

(e) 杭の心出し
杭の心出しは、堅固に設置した遣方から行い、小さい木杭等で、杭心を表示しておく。また、杭心合わせは円板を定規に、心を合わせて周囲に石灰で線を引くなどの方法により行い、杭ずれを防ぐ。

(f) 運搬及び取扱い
(1) 運搬及び取扱いに当たっては、杭に損傷を与えないように注意し、有害なひび割れや傷が生じた杭を使用してはならない。

(2) 運搬に際しては、適切な位置にまくら材を敷き運搬中に荷崩れしないようロープ、くさび等を使用して強固に留める。

(3) 杭の吊上げ点は、JIS A 7201(遠心カコンクリートくいの施工標準)による。また、吊上げ点の位置は、工場あるいは現場で印をつけておくことが望ましい。

(4) 杭の仮置きは地盤を水平に均し、杭の支持位置にまくら材を置き1段に並べることが望ましい。やむを得ず2段以上に積む場合には有害な応力が生じないよう、また、荷崩れしないよう適切な処置をとる。

(g) 建込み
(1) 地中障害物等が予想される場合は、杭施工に先立ち試掘等を行い必要に応じて撤去する。

(2) 杭の建込みは、杭心に正しく設置し、杭打ち機の鉛直器又は、直角二方向からトランシット、下げ振り等を用いて観測し、杭が正しく鉛直を保つようにする。

なお、先端が閉塞している杭で中に水が入っている場合は、ウォーターハンマー現象により縦割れを生じるおそれがあるので水を抜いてから建込む。

(h) 打込み
(1) 杭、キャップ、ハンマーの各軸がずれると偏打の原因となるので、クッションの交換等、十分な調整を行い、各軸を合わせてから打撃を開始しなければならない。

(2) 1群の杭の打込みは、なるべく群の中心から外側へ向かって打ち進める。逆にすると地盤が締まってしまい、中心部分で打込みが困難になる。片押しも同じような理由で避けるのがよい。

(3) 1本の杭の打込みは、なるべく中断しないで連続して行う。一時中止すると打込みが困難になることがある。

(4) ディーゼルパイルハンマーで最初から連続打撃すると、杭の傾斜や曲がりが生じやすいため、打初めは数回空打ちして、杭の貫入方向を確認するのがよい。

(5) 油圧パイルハンマーはラムの質量が比較的大きいので、杭の鉛直性が不安定な初期段階にラム落下高が大きいと、1打撃当たりの貫入量が大きくなり、杭が傾斜することがあるので、落下高さを10~20cm程度にするのがよい。

なお、ラムの最大落下高さは、杭の種類等に応じて決定する必要がある。

(6) ドロップハンマーで打込む場合には、杭が振れやすいため、杭の傾斜や座屈等が起こるおそれがあるので、初期貫入時に特に慎重な施工をしなければならない。

(7) 打込み中は、随時杭軸の変位、傾斜及び貫入状況を観測し、傾斜、変位については打込み初期に修正する。杭頭が破壊した場合は設計担当者と打ち合わせ、増杭等の処置が必要になる。

(8) 杭に傾斜が生じると貫入量が少なくなる。特に、砂質土の場合は影響が大きく、鉛直を保っていないために打込み困難となる場合がある。また、大きく貫入するはずのない箇所で急激に貫入量が増すなどの異常貫入は、杭の途中破壊、座屈等による場合がある。

(9) 杭頭のクッション材が損耗すると、クッション効果がなくなり杭頭が破壊するので、杭頭キャップのクッション材の損耗には注意する。

(10) 杭を作業地盤面以下に打込む場合には、図4.3.18のようなやっとこが用いられる。やっとこをかける長さは4m程度を限度とし、長いものは避けるようにする。

(11) 杭先端が開放の場合は、中空部に土が入り空気が圧縮されたり、また、水が入りウォーターハンマー現象等で杭が破裂する場合があるので、杭内の土及び水の上昇に対応して十分な空気抜き孔を設けたキャップを使用する。

(12) 打込み中に杭が浮き上がったり、横移動する場合には、杭先端に穴をあけたり、オーガー併用等の対策をする必要がある。

(13) 軟弱地盤に打込む場合、中間の比較的硬い地層を打ち抜く場合や長尺杭を施工する場合には、打撃力を調整(ハンマー落下高さを小さくすることや特殊キャップの使用等)して打撃を行い、杭に生じる引張力によるひび割れを生じさせないようにするか、プレストレスの大きい杭を使うなどの検討をする必要がある。


図4.3.18 やっとこ

(i) 打止め
打込みは、原則として、指定された深さまで行う。指定された深さに達しても所定の貫入量以下にならない場合又は指定された深さに達する前に所定の貫入量以下になった場合は、設計担当者と打ち合わせて、杭の長さを変更する必要がないか検討する。

また、杭に過剰な打撃を与えないための目安は、杭の長さ・形状や地盤の状況等により一義的には決められないが、JIS A 7201には、杭1本に対する打撃制限回数の目安が示されている(表4.3.6参照)。

表4.3.6 総打撃回数の目安(JIS A 7201 : 2009)

(j) 施工精度
打込み完了後の杭頭の水平方向のずれの精度は特記によるとされている。ずれが所定の値を超えた場合の処理については設計担当者と打ち合わせる。

施工精度の目安値としては、(-社)日本建築学会「JASS4 杭・地業および基礎工事」では、水平方向のずれはD/4 (Dは杭径)、かつ、100mm以下、鉛直精度は 1/100以内とすることが望ましいとされている。

杭頭の水平方向のずれの発生は、施工時における杭位置合わせの不良による場合が主と考えられるが、その他に杭心位置を表示した杭の設置違い、軟弱な施工地盤において機械移動に伴う表示杭の移動、障害物(地上、地中)の存在及び不陸な施工地盤面での工事環境等の要因も含んでいるので、杭工事の事前整備が重要となる。

4.3.4 セメントミルク工法

(a) セメントミルク工法の概要は.4.3.1(d)に示すとおりである。
この工法は国土交通省住宅局建築指導課監修「埋込み杭施工指針・同解説」もあり確立された一般的な施工法であるが、杭の耐力や精度等は施工する者の経験と技術力によるところが大きいため、専門施工業者に保有機械や施工実績等を提出させ、工事に相応した技量を有していることを確認しなければならない。

また、信頼のおける杭を施工するために、施工管理技術者として、技術士、建築士、土木施工管理技士、建築施工管理技士等、又は(-社)コンクリートパイル建設技術協会の「既製杭施工管理技士」の資格を有する者等を置くことが望ましい。

(b) 試験杭
(1) 埋込み工法における試験杭の目的は、施工機械や各種の安定液等の適否、土質状態、地下水位及び被圧水等の有無、施工時間、支持地盤の位置及び種類の確認であるが、更に、掘削試験における掘削深さ、高止まり量やセメントミルク拡等の管理基準を定めることでもある。特に打止めの深さの確認は打込み工法のような動的支持力による確認を行うことができないため、杭先端位置が設計上の支持層地盤に到達しているかを立会い確認する必要がある。

(2) 一般的な試験方法は、原則として、設計図書等で特記された位置に行い、特記がされてない場合は、地盤構成が明らかなボーリング調査実施地点に近接した杭を数本施工し、掘削機の電流計の値や掘削能率等の施工データ及びオーガースクリューに付着している土砂と土質調査資料又は設計図書との照合で、地盤構成との関係を求める。次に、10~30mm間隔で先行杭を施工し、施工データを参考に支持層を確認し、敷地全体の支持層深さを明らかにする。電流計の自動計測の例を図4.3.19に示す。

なお、電流計による値とN値の関係は定量的な関係がない。例えば、電流値の 200 AmpがN =45に相当するとの関係はなく、またその調査方法の違いからも無理があるため、現時点では地層構成の硬さの変化の傾向を調べるだけの定性的な参考値であることに注意されたい。

(3) 調査項目は、次の事項を主とし、表4.3.7の管理項目について行う。

表4.3.7 管理項目 (埋込み杭施工指針より)

(i) 掘削液、根固め液、杭周固定液等

(ii) 杭建込み
① 杭の鉛直性
② 圧入の状況
③ 高止まり量
④ 杭周固定液の溢液の確認

(iii) 掘削
① 作業地盤
② 掘削土の確認
③ 掘削所要時間
④ 孔内液面の高さ

(iv) 注入
吐出量、吐出圧、吐出時間、注人量

(4) 支持層の確認に際しては、電流計指示値や掘進速度で把握するとともに、ときどきオーガーを静かに引き上げ、羽根に付いている土を観察する。

なお、あらかじめ支持地盤の深さを示す 0.5mごとの等深線図を作成しておくとよい。


図4.3.19 自動計測記録の例

(c) セメントミルク工法による施工
(1) 掘削機
(i) アースオーガーは連続スパイラル製の中空軸のものを用いるが、性能や寸法等が各メーカーにより異なるので、十分検討して適切なものを選ぶ。スクリュー長さは所定掘削深さ+3m程度とし、曲がりのあるものは使用しない。

(ii) オーガーヘッド(オーガービット)は施工精度、施工能率等に与える影響が大きいので掘削地盤に応じて適切な形状のもの使い分ける(図4.3.20参照)。ヘッド径(ビット径)は、「標仕」4.3.4 (f)で杭径+100mm程度とされている。


図4.3.20 オーガーヘッド

(iii) 支持地盤の確認には、アースオーガーの駆動用電動機の電流値の変化が目安となる。このため「標仕」4.3.4(f)では電流値を自動記録できるものとしている。
なお、油圧式オーガーを用いた場合の支持地盤の確認については、設計担当者と打ち合わせる必要がある。

(2) 掘削
(i) 掘削は、地盤に適した速度で掘り進めることが重要である(表4.3.8参照)。粘着力の大きな地盤や硬い地盤では無理な負荷をかけるとアースオーガーが曲がったり破損したりするため十分に時間をかけて掘削排土する。

表4.3.8 掘削速度

(ii) オーガーの引上げ速度は、根固め液等の注入量に合わせて行う。
注入量に比べて引上げ速度が速いと孔内に負圧が生じ、孔壁崩壊の原因となる。
また、逆の場合には孔内圧が上がり過ぎて、逸水を生じて孔壁崩壊の原因となる。

(iii) 掘削中、オーガーに逆回転を加えるとオーガーに付着した土砂が落下するので、「標仕」4.3.4(f)では、逆回転を行ってはならないと定めている。

なお、引上げ時にも正回転とする。

(iv) 掘削深度が支持地盤に近づいたら掘削速度を一定に保ち、アースオーガーの駆動用電動機の電流値の変化を読みとって支持地盤への到達を確認する。

(v) 支持層の掘削深さや杭の支持地盤への根入れ深さは、設計支持力とも関連するため特記によるが、一般的には支持層の掘削深さを1.5m程度とし、杭を支持層中に1.0m以上根入れする。また、高止まりは0.5m以下とする(図4.3.21参照)。

(vi) 掘削は、養生期間中の杭に悪影響を与えないよう十分に注意して行う。杭の間隔は杭径の2.0倍程度とすることが多いが、セメントミルク工法の場合には掘削径を杭径+100mmとしており、透水性の高い砂質地盤等で孔壁が崩れやすい場合には、掘削によって隣接杭周囲の地盤を緩めるなどのおそれがあるので十分注意する。


図4.3.21 掘削深さと支持層との関係

(3) 各種液の管理
(i) 掘削液
① 掘削液(安定液)の機能は、孔壁の崩落を防ぐよう安定を保ち、各種の液の逸水を防ぎ、湧水やボイリングを抑えることなどである。管理については、4.5.4 (c)(3)を参照する。

② ベントナイトは粉末度200メッシュ以上、膨潤度 3g/g以上のものを使用するとよい。調合及び粘性については表4.3.9及び4.5.4(c)(3)を参照する。

表4.3 9 掘削液の調合例

(ii) 根固め液
① 根固め液の水セメント比は、施工の実績等から「標仕」では70%(質量百分率)以下としている。また、「標仕」4.3.4(f)では圧縮強度は3個の供試体の平均値で 20N/mm2以上と定めているが、これは試験結果にばらつきが大きいこと、セメントペーストの指定強度の算出が困難であること、杭の設計耐力を確保するために必要な強度として20N/mm2程度で十分であると考えられることなどから決められたものである。

② 根固め液は必ず杭の先端位置から注入しはじめ、安定液を押し上げるようにする。オーガーヘッドは常に根固め液の上面以下に保つ。また、オーガーを上下させてはならない。

なお、ポンプからの圧送時点とオーガーヘッド先端からの注入時点とで時間的ずれがあるので、試験掘削のときに十分検討しておく。

(iii) 杭周固定液
① 杭周固定液は、杭長が長く、かつ、周辺地盤が軟弱で、強度の高い根固め液を杭頭まで充填する必要がない場合に使用するほか、杭の水平抵抗と摩擦力を確保するために使用するものであり、硬化後の圧縮強度のみでなく、既製杭との付着強度が周辺地盤より高いことが必要である。

② 調合は、現場の土質条件に応じた試験練りを行ってから決定するのが望ましい。杭周固定液のブリーディングの発生を抑制するためにベントナイトが使用されるが、その調合例を表4.3.10に示す。

表4.3.10 杭周固定液の調合例

(iv) 管理面から見れば使用液の種類は少ない方がよく、なるべく2種類の液で行うことが望ましい。

なお、崩壊しやすい地盤や逸水のおそれのある地盤では、安定液と杭周固定液とを兼用することは好ましくない。

(v) 根切り後、杭と地盤の間に空隙がある場合は、杭の水平抵抗を確保するために、増粘剤を添加した杭周固定液やモルタルを使用して空隙を埋める。

(vi) 供試体の製作には 、(公社)土木学会「コンクリート標準示方書(規準編)」のプレパックドコンクリートの注入モルタルのブリーデイング率及び膨張率試験方法によるポリエチレン袋を使用することになっているが、地方等で入手が困難な場合には、(-社)コンクリートパイル建設技術協会のポリエチレン袋を使用すればよい。

(4) 杭の建込み
(i) 掘削孔壁が時間経過とともに崩壊することがあるので、速やかに杭を建込む。
(ii) 杭の建込み直前に、必要に応じて下げ振り等により検尺を行い、高止まりしないかどうかを確認しておく。

(iii) 掘削孔に杭を挿入する際、杭の先端で孔壁を削ると高止まりの原因となるので鉛直性に注意して建込む。また、挿入速度が速すぎると水流によって孔壁が崩落するので、静かに挿入する。

(iv) 杭が所定の支持地盤に逹したのち、杭先端を根固め液中に投入させるため 2t 程度のドロップハンマーで軽打する(落下高さは0.5m程度とする。)。

軽打できない場合は、杭打ちゃぐらの重量を反力として圧入する。杭頭を設計高さにそろえるために、杭を中吊りにしたり圧入量を調整してはならない。

(v) 施工後、根固め液や杭周固定液が十分硬化する以前に杭が動くことのないよう適切な保持治具を用いて養生する。

(vi) 継杭を行う場合は、下杭の杭頭を地上約1m程度に保持しておき、上杭を建込み、継手の接続を行う。図4.3.22に保持装置の一例を示す。


図4.3.22 保持装置の一例

(5) 杭の運搬、取扱い、施工精度は4.3.3による。

(6) 廃液処理、排土処理は場所打ちコンクリート杭に準ずる。

4.3.5 特定埋込杭工法

(a) 一般事項
特定埋込杭工法は、平成13年国土交通省告示第1113号第6の規定に基づいて許容支持力が定められた埋込み工法のことをいい、下記の種類がある。

(i) 平成14年1月11日付けの国土交通省住宅局建築指導課の事務連絡に基づく旧38条認定工法

(ii) 建築基準法施行規則第1条の3第1項の規定に基づく認定工法

(iii) 指定性能評価機関による技術評定を取得している杭で、地盤の条件等が評定の適用範囲と見なせる場合

(iv) その他、上記以外で許容支持力が求められた工法

(b) 試験杭
(1) 特定埋込杭工法の試験杭は、本工事の初期あるいは本工事に先立ち、設計・施工計画の妥当性を確認するために実施するもので、使用機械や各種の使用液の適否、施工能率、特記で定められた支持層の位置及び種類の確認が主な目的である。

(2) 特定埋込杭工法の試験杭の施工については、各工法に定められた施工条件に従って行う。

(c) 施 工
特定埋込杭工法の杭は各施工法によって機械機種や施工方法も異なるので各工法に定められた施工条件に従って行うものとする。一般的な事項を次に示す。

(i) 掘削法
プレボーリング工法に用いるアースオーガーは、スパイラルオーガー、特殊ロッド、両者の併用等があり、中掘り工法では、連続スパイラルオーガーが用いられる。

駆動装置は、掘削径、長さ及び地盤条件により、一般に 40~250kWが使用される。

オーガーヘッドについては、地層に合わせた形状や工法仕様によりいろいろな構造が選定される。

支持層の確認には、駆動用電動機の電流値を自動記録し、目安とすることが行われてきたが、これは掘進速度や駆動機容量に左右され、明確にできないことも多い。したがって、消費電流値と時間を掛けた積分電流値で目安とする技術が進められ、従米より正確であるとして試験杭において用いられ普及しつつある。

(ii) プレボーリング工法による施工
① プレボーリング工法による掘削径は、工法により異なるが、杭径よりも +30~100mm程度が多く、できるだけ過大とならないことが望ましい。

② 掘削は周囲の地盤をできるだけ乱さないように行う。

③ 孔壁崩壊のおそれのある場合又はボイリングのおそれがある場合は、掘削液を使用し、適切な処置をして施工する。崩壊のおそれがない場合は、掘削液を使わず施工してもよい。

④ 継手接続作業中は、杭の孔内落下を防止する処置をしなければならない。

⑤ その他については、施工計画書、施工仕様書等に従って適切に施工する。

(iii) 中掘り工法による施工
① 中掘り工法に使用するスパイラルオーガー径は、杭の内径 -(30~60)mmが一般的である。

② 掘削中は過度に先掘り及び拡大掘りをしてはならない。

③ 中空部の排土を促進するため、オーガー先端からエアーを噴出させ、効果的に排土することが多い。一般に常用圧力 0.7 ~ 1.0MPaのものが使われている。

④ 最終打撃によって支持力を得ようとする工法の場合、過度の先掘りをしてはならない。中掘り設置後の打込み長さは地盤状態に影響されるため試験杭において定められるが一般には杭径の 3~5倍程度を目安としている。

(iv) 根固め
① 埋込み工法で先端部を根固めする場合は、施工計画書、施工要領書等による方法で先端部を処理して支持力の確保を図らねばならない。

② 根固め作業に使用するミキシングプラント、グラウトポンプは、十分な性能を有すること。材料の計量及び作液については、自動的に行うとともに、その計量記録をプリントアウトするプラントが製造され、一部使用されつつある。最近では、根固め部の品質確認のために、根固め部から試科を採取して固化強度等を調査する管理手法が、研究・開発されている。

(v) 杭の運搬及び取扱い、施工精度等については.4.3.3 による。

また、杭頭中空部に基礎コンクリートを打ち込む方式で、短い杭の場合、根固め液や杭周固定液が砂や礫で増量し、杭頭まで上昇して固化することがある。

この場合、溶液の使用量について試験打ちで検討する。

(vi) 廃液処理、排土処理は、場所打ちコンクリート杭に準ずる。

(vii) 施工管理者は、当該工法の施工管理講習会を受講した者や (-社)コンクリートパイル建設技術協会が定める既製杭施工管理技士の資格を有する者が望ましい。
また、専門工事業者の技術レベルを確認する場合は、当該工法の施工実績等を提出させる。

4.3.6 継 手

(a) 現場継手方法

(1) 杭の現場継手は、溶接による工法と接続金具による無溶接継手工法とが採用されており、「標仕」では杭の継手の工法の適用は特記とされている。

(2) 技能者
(i) 溶接継手は「標仕4.3.6(c)」に定めた資格を有する者

(ii) 無溶接継手は、接続方法の講習会を修了し、接続方法を理解したと認められる者

(3) 溶接棒は、JIS Z 3211(軟鋼、高張力鋼及び低温用鋼用被覆アーク溶接棒)の規格によるものとし、自動溶接又は半自動溶接を用いるときには、これに適した溶接ワイヤを用いる。

JIS A 7201(遠心力コンクリートくいの施工標準)では、表4.3.11のように定められている。

表4.3.11 溶接棒、ワイヤの種類及び径(JIS A 7201 : 2009)

(4) 継手部の開先の目違い量は2mm以下、許容できるルート間隔の最大値は 4mm以下とする(図4.3.23参照)。


図4.3.23 杭の継手部許容値(JIS A 7201 : 2009)

(b) 溶接施工
(1) 溶接の方式には端板式と円筒式とがあるが、現在はほとんどの杭が端板式(図4.3.24参照)である。なお、端板式の溶接部は部分浴込み溶接である。


図4.3.24 端板式溶接継手

(2) 上下の杭軸が一直線になるように上杭は頭部を支持して仮付け溶接を行う。

必要がある場合は仮締め治具を用いて支持する。仮付けは、点付け程度のものでなく、必ず 40mm以上の長さとし本溶接と同等の完全なものとする。

(3) 溶接部は接合前にワイヤブラシ等を用いて泥土、ごみ、錆、油脂、水分等、溶接に有害なものを除去する(7.6.6参照)。

(4) 降雨時、降雪時、強風時(10m/秒程度以上)には溶接を行ってはならない。
また、原則として気温が 0℃以下の場合は溶接を行ってはならない。ただし、気温が0℃から-15℃の場合は、溶接部から100mm以内の部分を36℃以上に予熱して行う場合はこの限りではない。

(5) 多層溶接を行う時は、下層のスラグ及び有害物の除去を十分に行ったのち、次層を溶接する(7.6.7 (i)参照)。

(6) 盛上げの不足があってはならないが、余盛りは3mm以下とし、不要な余盛りは行わない。

(7) 半自動アーク溶接による溶接条件の参考例を表4.3.12に示す。

(c) 溶接部の確認
溶接部は JIS A 7201(遠心力コンクリートくいの施工標準)の8.2[溶接継手による場合]のg)目視による確認で、全数検査を行う。

(d) 継手部に接続金具を用いた方式(無溶接維手)
継手部に接続金具を用いた方式は、数種類が建築基準法に基づく指定性能評価機関において性能を評価されている。施工は、各工法に定められた施工条件によるものとする。図4.3.25及び26にその代表例を示す。

表4.3.12 杭の半自動アーク溶接条件例(JIS A 7201 : 2009)


図4.3.25 無溶接継手例1


図4.3.26 無溶接継手例2

4.3.7 杭頭の処理

(a) 最近の既製コンクリート杭は、特定埋込杭工法による施工が多く、この工法は掘削深度を管理して杭の打設を行うために、杭頭の高さもそろえて施工されるので、切断することが少ない。したがって、その他の工法等で杭頭を切断する必要がある場合には、設計担当者が特記することとされている。

(b) 所定の高さより低い場合は、設計担当者と打ち合わせる。

(c) 杭頭を切断する方法には、次のように油圧ポンプによる外圧方式と回転モーターによるダイヤモンドカッタ一方式等がある。

(1) 外圧方式
所定の切断面より100mm上がり程度の位置に鋼製バンドを締付け、杭頭切断機用いて切断したのち、バンドを取り外し、所定の高さまで、はつりのみを用い、手はつりを行う。この場合、押圧方向は軸筋位置を避け、手はつりでは軸筋をたたかないようにし、縦ひび割れが生じないように注意して行う。プレストレス量の大きい杭は特に注意が必要である(図4.3.27及び28参照)。

この方法は広く使われており、切断面がはつり面のため基礎との付着が期待でき、軸筋を残す場合も有利な方法である。

(2) ダイヤモンドカッタ一方式
所定の切断面にブレードが位置するように切断機をセットし、杭の周りをガイドリングを介して一周し、切断又は軸筋サークルより内側までの切込みを入れてタガネ割りする方法である(図4.3.27参照)。

この方法は、切断面が平滑で作業の衝撃も小さく軸筋も同時に切断してしまう特徴がある。


図4.3.27 杭切断機の例


図4.3.28 手はつりの例

(d) プレストレストコンクリート杭の頭部を切断した場合は、切断面から350mm程度まではプレストレスが減少しているので、設計図書により補強を行う。

(e) 基礎コンクリート打込み時に、コンクリートが杭の中空部に落下しないように図4.3.29のように杭頭をふさぐ処置をしておく。


図4.3.29 コンクリート落下防止の例

4.3.8 施工記録

(a) 施工記録の目的及び全般的な報告書の記載事項については,4.2.5 (1)及び(2)を参照する。

(b) 打込み工法の施工記録
(1) 記録報告する事項等は、次のとおりであり、分かりやすく整理しておく。
(i) 一般事項
① 杭位置図(位置のずれを含む)
② 杭種類材質、形状寸法製造工場名
③ 打込み機の名称と性能諸元

(ii) 打込みに関する事項
① 打撃回数    [ 回/m ]
② 全打撃回数   [ 回 ]
③ 打込み深さ   [ m ]
④ 打込み所要時間 [ 時分 ]
⑤ ハンマー落下高さ[ m ]
⑥ 最終貫入量   [ mm ]
⑦ リバウンド量  [ mm ]
⑧ 推定支持力

(iii) その他
①溶接施工記録
②杭頭切断記緑

(2) 試験杭の施工記録試及び杭頭切断記録書式は、JIS A 7201(遠心力コンクリートくいの施工標準)に示す。

(c) 特定埋込杭工法の施工記緑
特定埋込杭工法の報告書については、各工法に定められた書式に従って作成する。

(d) セメントミルク工法の施工記録
(1) 報告する事項等は、次による。
(i) 一般事項
① 杭位置図(位置のずれを含む)
② 杭種類、材質、形状、寸j法、製造工場名
③ 打込み機の名称と性能諸元
④ 各掘削・固定液等の諸元

(ii) 掘削に関する事項
① 掘削液の記録(標準調合、比重、使用量)
② 根固め液(強度、使用量)
③ 杭周固定液(強度、使用量)
④ 掘削土の確認事項
⑤ 掘削所要時間
⑥ 等深線図と掘削深さの関係
⑦ アースオーガー駆動用電動機の電流値
⑧ 注入材の吐出量、吐出圧、注入量

(iii) その他
(b)に準ずる

(2) 「埋込み杭施工指針・同解説」に定められている杭の施工記録の例を図4.3.30に示す。

図4.3.30 杭の施工記録の形式及び記入例(埋込み杭施工指針より)