12章 木工事 2節 材料

第12章 木工事
02節 材 料
12.2.1 木 材
(a) 一般事項
(1) 木材の狂い、割れ、耐久性等は含有水分の多少に大きく影響されるので使用木材の含水率について注意する。
例えば、設計時に許容応力度計算等を要する木造建築物を建設する際に用いる木材は、昭和62年建設省告示第1898号により、原則として,含水率は15%以下、乾燥割れ等により接合部の耐力低下が生じない接合部による構法を採る場合は、20%以下とすることが要求されている。「標仕」では、主として構造計算等を必要としない程度の内部工事を想定しているが、前述の値を木工事に用いる材料の含水率の目安としてもよい。
(2) 乾燥方法には、天然乾燥法〈天乾〉と人工乾燥法〈人乾〉とがあるが、短期間のうちに含水率の低い木材を得るには人工乾燥によらなければならない。特に、狂いと割れは、一度十分に乾燥しておけば、以後は生じにくいので効果的である。
(3) 木材は工事現場では長時間の乾燥が期待できないので、一般的には、含水率を工事現場搬入時に確認している。
なお、含水率は全断面の平均の推定値としているが、その測定は次によって推定してよい。
( i ) 測定は、電気抵抗式水分計又は高周波水分計による。
(ii) 測定箇所は、異なる二面について、両小口から300mm以上離れた箇所及び中央の計6箇所とする。
(iii) 材の含水率は、6箇所の平均値とする。
(4) 木材の腐朽と含水率の関係は、含水率が20%以下ならば腐朽の可能性は低いが、30%以上が維持されるようになると腐朽する可能性が高くなる。
(5) 含水率
( i ) 含水率は、全乾材の質量に対する含有水分の質量の比で表す。

含有水分の木材内部における状態は、図 12.2.1に示すとおりである。


図 12.2.1 木材の乾燥過程

(ii) 含水率の測定方法には次のようなものがある。
① 全乾法

乾燥によって水分を含まない木材の質量(m0)を求めるもので、JISでは 100〜105℃の換気良好な炉中で恒量に達した状態を全乾と定めている。水分を含んでいる木材の質量を(m)とすると、含水率(u)は12.2.1式で表される。

7%以下又は繊維飽和点以上の含水率を測定する場合は、この方法による。
② 電気抵抗式水分計(図12.2.2参照)

直流や低周波電流に対する木材の比抵抗の対数が含水率と線形関係にあることを利用して含水率を推定する方法である。比抵抗は、温度の影響を受けるので補正が必要であり、また、繊維飽和点以上の含水率の測定はできない。木材に打ち込まれた針の深さまで測定できるが、通常は7 mm程度である。


図12.2.2 電気抵抗式水分計(打込み式)の例

③ 高周波水分計(図 12.2.3参照)

高周波からマイクロ波域における木材の誘電率あるいは誘電損率が含水率と線形関係にあることを利用して含水率を推定する方法である。誘電率は温度の影響は小さいが、比重の影響が大きく、木材の比重に応じて補正が必要である。木材の表面に当てるだけで、30mm程度の深さの平均含水率が測定できる。


図12.2.3 高周波水分計の例

(iii) 全乾状態〈絶乾状態〉(図12.2.1参照)
含有水分 0 の状態であるが、実験的には100〜105℃に保ち、質量変化のなくなった状態をいう。このような木材を全乾材あるいは絶乾材という。
(iv) 繊維飽和点(図 12.2.1参照)
含有水分が結合水100%飽和、自由水 0 の状態である。このときの含水率は約30%になる。
(v) 平衡含水率〈気乾含水率〉(図12.2.1参照)

大気中の水分と木材の含有水分が平衡になった状態の含水率で、気温20℃、相対湿度65%において、約15%である。このような木材を気乾材という。しかし、図12.2.4に示すように、気乾材の含水率には変動があるので.「標仕」12.2.1 (a)(2)(ⅰ)ではやや平均値を上回る値を上限としている。


図12.2.4 気乾材の含水率の変動

(vi) 木材の比重
木材は細胞からなっているために内部に空隙が多いが、空隙部分を除いた実質部分の比重である真比重は、樹種に関係なく約1.5〜1.6といわれている。実用上は、重量を体積で除した見掛け比重で表し、通常、含水率15%のときの見掛け比重による。これを気乾比重という。
気乾比重別による樹種を表12.2.1に示す。

表12.2.1 各樹種の比重

(b) 製 材
(1) 品質
(i) 製材の品質の規定には「製材の日本農林規格」(平成19年農林水産省告示第 1083号、最終改正、平成25年同第1920号)がある。また、外国製品のうち、 JASと同等以上であるとの相互認証を得ている製材もある。

製材のJASマークを図12.2.5に示す。


図12.2.5 製材のJASマーク

① 製材のJASにおける「目視等級区分構造用製材」は、構造用製材のうち、節、丸身等材の欠点を目視により測定し、等級区分したものをいい、主として高い曲げ性能を必要とする部分に使用される甲種構造材と、主として圧縮性能を必要とする部分に使用される乙種構造材とに区分されている。また、製材の寸法は、木口の短辺、木口の長辺及び材長により区分されている。「構造用製材」の標準寸法(仕上げ材にあっては、規定寸法)を表12.2.2に示す。

表12.2.2 構造用製材の標準寸法(JAS)

② 製材のJASにおける「造作用製材」は、建築物の内部の敷居、かもい等に使用される造作類と、内外装用板に使用される壁板類とに区分されている。
③ 製材のJASにおける「下地用製材」は、建築物の屋根、床、壁等の下地の外部から見えない部分に使用される製材品である。
④ 製材のJASにおける「仕上げ材」と「未仕上げ材」の含水率による区分を表12.2.3に示す。
表12.2.3 仕上げ材と未仕上げ材の含水率による区分
(構造用製材の場合)
なお、「仕上げ材」とは、乾燥処理を施したのち、材面調整(又は修正挽き)を行い,寸法仕上げをしたものをいい、「未仕上げ材」とは,乾燥処理を施したのち、寸法仕上げをしないものをいう。
⑤ 実際の商取引では、ひき割り類、ひき角類という材種名や慣習的な材種名が一般的に用いられており、JAS以外の品質表示で流通している製品も多い。
⑥ 木材の用途、使用部位によって求められる性能、寸法安定性等が異なるので、それらに応じた等級、性能区分、使用薬剤であることを確認する必要がある。
(ii) 平成25年版「標仕」では,「製材の日本農林規格」以外の製材が採用されたが、その品質基準は「製材の日本農林規格」に準じたものとなっている。JASマークが付されていない材料については、その品質基準に適合することを十分に説明する資料を提出させることが重要である。
(iii) 用語
一般に用いられている用語の説明を表12.2.4に表す。
表12.2.4 用語の説明

(2) 樹 種

(i) 樹種は、「標仕」12.2.1 (b)(2)(ⅳ)では、特記によることとされるが、図面等で代用樹種の使用が禁止されていなければ、両者は同等として取り扱ってよい。しかし、造作材の代用樹種を選定する場合は、室の仕上りを考慮し部位ごとにバランスのよい樹種を選定する必要がある。
(ii) 造作材で、つがが使用されないのは、組立後、反り、ねじれ、曲がり等の狂いが比較的生じやすいからである。
なお、乾燥を十分に行った場合等で、組立後の反り、ねじれ、曲がり等の狂いが生じないことが経験的、技術的に明らかな場合は、それらの樹種も代用樹種として扱ってよい。
(iii) 代用樹種を禁止された松は、赤松又は黒松のいずれかとする。ただし、強度性能上、外見上、寸法安定性、耐久性その他当該部位に要求される性能すべてを満たす樹種が存在する場合は、代用樹種としてよい。
(iv) 木れんが及びくさびには、釘の保持力、耐腐朽性等の優れたひのきのほか広業樹も適している。ただし、広業樹がすべて耐腐朽性に優れているとは限らない。
(v) 込み栓はかし、けやきの類の広葉樹又はこれと同等以上の強度性能をもつ樹種又は加工材料とする。込み栓は構造材のずれ止め、抜け止めに用いられるが、現在では金物で代用されることも多い。
「標仕」表12.5.1の吊束及び敷居に、込み栓並びに横栓として使用している。
(vi) 輸入木材は、同一種に別な名称があったり、種類が異なるものを同一名称で呼んだりしているので、樹種を見分けるのは難しいが、一般には次の左の樹種名に右のものが該当する。
米ひ  :ポートオーフォードシダー
米ひば :イエローシダー、アラス力シダー
米とうひ:ホワイトスプルース、エンゲルマンスプルース
     ブラックスプルース、レッドスプルース、
     コーストシト力スプルース
米つが :ウェスターンヘムロック
米もみ :ノーブルファー、ホワイトファー、
     バルサムファー、アマビリスファー
米杉  :ウェスターンレッドシダー
米赤杉 :レッドウッド
米松  :ダグラスファー
台ひ  :台湾ひのき
北洋えぞ松:(ロシア)えぞ松
輸入木材のそれぞれの特徴等を表12.2.5に示す。

表12.2.5 樹種の特徴等

(c) 造作用集成材
(1) 集成材は、ひき板又は小角材等をその繊維方向を互いにほぽ平行にして、厚さ、幅及び長さの方向に集成接着したもので、「集成材の日本農林規格」が制定され ている(平成19年農林水産省告示第1152号、最終改正 平成24年農林水産省告示第1587号)。集成材の分類、区分とその定義を表12.2.6に示す。

表12.2.6 JASによる集成材

(i) 造作用集成材
手すり、力ウンターの甲板等に用いられることが多いが、用いられるひき板がそのまま仕上材になる。ひき板は、薄いものの方が高級とされるが、10〜15mm位が標準となっている。
(ii) 化粧ばり造作用集成材
① 化粧薄板(一般には化粧単板あるいは化粧突き板という。)の厚さを、敷居、かまち及び階段板の上面にあっては 1.5mm以上、柱にあっては1.2mm以上、その他のものにあっては0.6mm以上であることと規定している。
② 通常用いられる化粧薄板は突き板といい、通常厚さは、0.2、0.3、0.6mm程度であるが、0.8mm以上のものもある。化粧として単板を張る場合に3mm程度のものを用いることもある。
③ 化粧薄板は、製作工場の手持ちの材料のうちから選ぶことになるが、素材のままでは仕上がった状態を想像するのは難しい。また、小さな見本板では大きな製品と全く違うものもあるので注意しなければならない。
(iii) 化粧ばり構造用集成柱
所要の耐力を目的としてひき板(ラミナ)をその繊維方向に対しほぽ並行にして集成接着し、その表面に美観を目的として化粧薄板を張り付けた集成材で、主として在来軸組工法住宅の柱材として用いられる。心材には積層数が5以上で、化粧薄板の厚さは1.2mm以上のものが用いられ、強く、狂いが少ないのが特徴である。
(2) 平成25年版「標仕」では、「集成材の日本農林規格」以外の造作用集成材が採用されたが、JASマークが付されていない材料については、特記された品質に適合することを十分に説明する資料を提出させることが重要である。
(d) 造作用単板積層材
(1) 単板積層材(LVL)は、ロータリーレース又はスライサー等により切削した単板を、主としてその繊維方向を互いにほぼ平行にして積層接着したものである。単板の厚さは 2〜4mm程度が普通で、積層数は数層から数十層に及ぶものがある。幅反りを防止するために若干の直交層を挿入する場合がある。LVLは平行層の割合が圧倒的に多いことと、一般に製品の厚さが厚く、主な用途が骨組材(棒状製品、軸材)であることなどが合板と異なっている。
LVLには「単板積層材の日本農林規格」が制定されており、住宅のドア枠、窓枠、胴縁等の内装部材としての使用を対象とした「造作用単板積層材の規格」と建築構造部材としての使用を対象とした「構造用単板積層材の規格」が規定されている(平成20年農林水産省告示第701号)。
(2) 平成25年版「標仕」では、「単板積層材の日本農林規格」以外の単板積層材が採用されたが、JASマークが付されていない材料については、特記された品質に適合することを十分に説明する資料を提出させることが重要である。
(e) 床張り用合板等
(1) 「標仕」表12.6.1の厚さ5.5mmの普通合板は、ビニル床シート等の下地の二重張り等に使用することを想定して、合板製造に使用する接着剤の耐水性を1類とし、板面の品質は塗装下地とならないため、広葉樹では2等、針業樹では C – Dとしている(16.7.2(b)(3)参照)。
また、厚さ12mmの合板は、カーペットや畳床の下地材等に使用することを想定して耐水性、曲げ性能等を考慮して、構造用合板の1類2級の C – D ( C – Dは板面の品質)としている。
(2) 合板の接着の程度による分類
JASによる接着性能の分類は、次のとおりである。
① 特類(フェノール樹脂接着剤等)
屋外又は常時湿潤状態の場所(環境)において使用される構造用合板。
② 1類(メラミン樹脂接着剤等)
断続的に湿潤状態となる場所(環境)において使用可能な合板。コンクリート型枠用合板・住宅下地用・建築物外装用合板等。
③ 2類(ユリア樹脂接着剤等)
時々湿潤状態となる場所(環境)において使用可能な合板。住宅・船舶・車両等の内装用合板・家具用合板等。
(3) 合板の用途による区別
(i) 普通合板(1類・2類)
建築物の内装、家具、建具等一般的な用途に広く使われる合板。寸法は、厚さは 2.3〜24.0mm、幅は 910~1,220mm、長さは910~3,030mmが標準である。
(ii) コンクリート型枠用合板(1類)
コンクリート打込み時にそのせき板として使用される合板で、ラワンのほか針葉樹のものもある。寸法は、厚さは12.0~24.0mm、幅は500~1,200mm、長さは1,800~2,400mmが標準である。
(iii) 表面加工コンクリート型枠用合板(1類)
通常のコンクリート型枠用合板の表面に塗装・オーバーレイ等の加工をしたもの。打放し仕上げに良好な結果が得られるとされているので、土木用型枠として多用される。
(iv) 構追用合板1級(特類・1類)
軸組構法、枠組壁工法住宅等の建築物の構造耐力上主要な部位に使用される合板で〈Kプライ〉と呼ばれる。単板の厚さの範囲、合板の厚さごとの積層数、単板の構成比率が規定され、曲げ試験によって強度保証している。寸法は、厚さは 5.0 〜35.0mm、幅は900 ~1,220mm、長さは1.800 ~ 3.030mmが標準である。
(v) 構造用合板2級(特類・1類)
1級と同様に使用されるが針葉樹合板が主である。寸法は、厚さは、5.0〜35.0mm、幅は900〜1.220mm、長さは1,800〜3,030mmが標準である。
(4) パーティクルボード
近年、床張り用面材としてパーティクルボードを使用することが多くなっている。
パーティクルボードの品質及びその分類は、JIS A 5908(パーティクルボード)による。
① パーティクルボードの裏表面の状態による区分
1) 素地パーティクルボード
両面が素地の状態で研磨品と無研磨品があるが通常は研磨品が中心である。
2) 単板張りパーティクルボード
素地パーティクルボードの両面に単板を張った板で研磨品と無研磨品がある。
② パーティクルボードの曲げ強さによる区分
1) 素地パーティクルボードは18タイプ(曲げ強さが18.0N/mm2以上、以下同様)、13タイプ、8タイプがあるが,床下地には18, 13タイプが用いられる。
2) 単板張りパーティクルボードは30−15タイプがあり、単板の繊維方向により縦、横の強さが違う。
③ パーティクルボードの接着剤による区分
1) Uタイプ
ユリア樹脂系又はこれと性能が同等以上のもので、耐水性が劣るので主に家具、キャビネット等に適する。
2) Mタイプ
ユリア・メラミン樹脂系又はこれと性能が同等以上のもので、建築下地等に適する。
3) Pタイプ
フェノール樹脂系又はこれと性能が同等以上のもので、Mタイプと同様建築下地等に適する。
④ パーティクルボードのホルムアルデヒド放散量による区分
F☆☆☆☆、 F☆☆☆、 F☆☆に分類される。F☆☆の製品はほとんど生産されていない。
(5) 構造用パネル
木材の小片を接着し板状に成形したパネル又はこれにロータリーレース、スライサー等により切削した単板を積層接着したパネルのうち、主として構造物の耐力部材として用いられるむのをいう。その品質は「構造用パネルの日本農林規格」に規定されている(昭和62年農林水産省告示第360号、最終改正平成20年農林水産省告示第938号)。
(6) 繊維板(ファイバーボード)
繊維板の品質及びその分類は、JIS A 5905(繊維板)による。
繊維板の密度による区分
1) インシュレーションファイバーボード(インシュレーションボードともいう。密度0.35g/cm3未満)
畳床用、断熱用、外壁下地用等があり、難燃性を付与したものもある。
2) ミディアムデンシティファイバーボード(MDF、密度0.35g/cm3以上)
主に構造耐力を要求される部分に使用する。曲げ強さによって30タイプ(曲げ強さが 30.0N/mm2以上、以下同様)、25タイプ、15タイプ、5タイプに区分され、接着剤によってUタイプ、Mタイプ、Pタイプに区分される。接着剤の区分、適した用途はパーティクルボードと同様である。
3) ハードファイバーボード(ハードボードともいう。密度0.80g/cm3以上)
油、樹脂等の特殊処理、表面の状態、曲げ強さ等によって分類される。最近は床等の養生板として用いられている。
(f) その他の木材
(1) 木質接着成形軸材料
木材の単板を積層接着又は木材の小片を集成接着した軸材をいう。PSL(Parallel Strand Lumber)、LSL (Laminated Strand Lumber)等がこれに相当し、その品買は、平成12年建設省告示第1446号に規定されている。
(2) 木質複合軸材料
製材、集成材、木質接着成形軸材料その他の木材を接着剤により I 形、角形そ の他所要の断面形状に複合構成した軸材をいう。I 形複合梁、ボックス・ビーム等がこれに相当し、その品質は平成12年建設省告示第1446号に規定されている。
(3) 木質断熱複合パネル
平板状の有機発泡剤の両面に構造用合板その他これに類するものを接着剤により複合構成したパネルのうち、枠組がないものをいう。サンドイッチパネル等がこれに相当し、その品質は平成12年建設省告示第1446号に規定されている。
(4) 木質接着複合パネル
製材、集成材、木質接着成形軸材料その他の木材を使用した枠組に構造用合板その他これに類するものを接着剤により複合構成したパネルをいう。プレハプ建築用接着バネル等がこれに相当し、その品質は平成12年建設省告示第1446号に規定されている。
(g) ホルムアルデヒド放散量
「標仕」では、集成材、単板積層材、合板等のホルムアルデヒド放散量等については、特記がなければ、F☆☆☆☆、非ホルムアルデヒド系接着剤使用、非ホルムアルデヒド系接着剤及びホルムアルデヒドを放散しない塗料使用等としている。
しかし、構造用集成材においては、接着耐久性の確保からF☆☆☆☆の基準を満たす材料の人手が困難であること、また、使用される量が相対的に少ないなどの理由でその他の放散量のものを使用する場合もある。その場合は、特記されていることが必要であるが、市場に該当する品質の材料がない場合は「標仕」1.1.8による協議事項とすればよい。
なお、ホルムアルデヒド放散量に関する建築基準法上の扱いや現場における確認方法等については、19章10節を参照されたい。
12.2.2 接合具等
(a) 釘等
(1) 下地材及び造作材に用いる釘は、JIS A 5508(くぎ)による。「標仕」では、材質は表面処理された鉄又はステンレス鋼としている。
なお、鉄丸くぎ(Nくぎ)は、JISで規定される寸法より細いものが流通している場合が多い。特に、従来市場に出回っている梱包用のFNくぎを使用してはならない。釘の太さはそのせん断耐力に大きく影響する場合が多いので、釘の太さに十分注意するか、同等以上の材質、太さを有するほかの種類の釘を使用することも検討すべきである。
また、釘打ち機により施工する場合は、木材の硬さを十分考慮して、その打込み強さを設定する必要がある。打込み強さが必要以上に大きいと釘頭が材面にめり込み、あとから施工するものに対して影響を及ぼす場合がある。また、釘頭のめり込みは釘の側面抵抗力を減じる場合があるので、構造耐力を要する部分は、更に注意が必要である。
JIS A 5508の抜粋を次に示す。

JIS A 5508: 2009

1 適用範囲
この規格は、主として一般に使用するくぎについて規定する。ただし、自動くぎ打機用のくぎに用いる場合の連結材料及びその方法については規定しない。

3 種類及び記号
くぎの種類及び記号は、表1による。また、くぎは、頭部及び胴部の形状によって表2及び表3の区分による。(表2及び表3は省略)

表1 くぎの種類及び記号

7 材料

7.1 鉄線
鉄線は、JIS G 3532に規定するくぎ用鉄線又はこれと同等以上の品質をもつものとする。ただし、せっこうボード用くぎ及びシージングボード用くぎについては、JIS G 3532に規定する普通鉄線又はこれと同等以上の品質をもつものを用いてもよい。

7.2 ステンレス鋼線
ステンレス鋼線は、JIS G 4309に規定するSUS304又はこれと同等以上の品質をもつものを用いてもよい。

JIS A 5508 : 2009

(2) 釘の長さは、図12.2.6のように留め付ける材料に留め付けられる材料の厚さの1.5倍以上打ち込まないと、構造材では十分な強さを発揮できない。

釘径は、板厚の1/6以下とし、釘の長さは打ち付ける板厚の 2.5〜 3倍のものとする。ただし、板厚10mm以下の場合の釘の長さは4倍を標準とする。

(3) 造作材の釘打ちの標準的な配置を図12.2.7から図12.2.9までに示す。


  図12.2.6 釘の打込み長さ


  図12.2.7 下地材に平行する場合

 


  図12.2.8 下地材と交差する場合

 


  図12.2.9 幅の広い場合

(4) 隠し釘の工法には次のような方法があるが、釘の機能と材料の性質及び釘打ち箇所の意匠上の必要性によって定めることになる。

( i ) 釘頭を切断して打ち込む。
(ii) 釘頭をつぶして打ち込む。
(iii) あらかじめ穴をあけておき釘を打ち込んだのち埋木する。

(iv) ななめ釘打ちにより.見え隠れとなる部分に打ち込む。

(5) 釘配置は、特記のない限り、その最小間隔を表12.2.7とする。ただし、この場合は、釘は木材の繊維に対して乱に打つものとする。

表12.2.7 くぎ間隔の標準

(6) 木ねじは、JIS B 1112(十字穴付き木ねじ)、JIS B 1135(すりわり付き木ねじ)又はこれと同等以上の品質を有するものとする。JISでは、原則として、表12.2.8の材料が規定されているが、「標仕」ではステンレスとしている。

表12.2.8 材 料
(b) 諸金物

(1) 諸金物には、JIS A 5531(木構造用金物)があるが、これに適合するものがないか、又は入手しにくいので、「標仕」12.2.2では,市販品としている。

(2) 金物は一般的には彫り込む必要がないが、部材が交差するような箇所では木部を彫り込み、金物を沈めておかなければならない場合もある。

(3) コンクリートに埋め込まれる部分以外の金物には、錆止め処置として、「標仕」ではJIS H 8610(電気亜鉛めっき)のCM2 C 3級程度の電気亜鉛めっきとしている。

(4) 土台等に使用するアン力ーボルトは先埋込みが望ましいが、位置、埋込み深さ等が不正確になりやすいので、「標仕」12.2.2ではあと施工アン力ーを使用することを認めている。あと施工アン力ーについては14.1.3 (a)(ii)を参照されたい。

(c) 接着剤

接着剤は、非常に多くのものが市場に出回っているが、接着剤の種類によって適用できる被着体や施工時及び使用時の環境条件が異なる。「標仕」では,接着する材料に適したものとしているので、材料や施工部位等を考慮して適切なものを選ぶ。ただし、ホルムアルデヒド放散量は、特記がなければF☆☆☆☆としているので注意する。

12.2.3 木れんが

(a) 木れんがは、枠類、下地材等を釘、木ねじ等で取り付ける場合に用いられるが、図 12.2.10のように四角のものをJIS A 5537(木れんが用接着剤)で張り付けるか又はあと施工アン力ーで取り付ける。

なお、取付け間隔は.仕上材や下地材を考慮して決める。


図12.2.10 木れんがの取付け

(b) 木れんがの材料は.「標仕」12.2.1 (b)(2)(iv) ③により、ひのき又はひのきの代用樹種(ひば、米ひ、米ひば)を用いなければならない。

(c) JISの木れんが用接着剤は、主成分により2種類に区分され、次のように使い分けられる。

(1) 酢酸ビニル樹脂系溶剤形:コンクリート面、ブロック面の類に用いる。

なお、水掛りのおそれのある箇所、構造耐力を要する箇所には適しない。

(2) エポキシ樹脂系:2液混合形(主剤+硬化剤)で使用直前に混合する必要がある。やや高価になるが、湿気のおそれのある箇所、コンクリート面、ブロック面に加えて鋼材面等にも適している。ただし、鋼材面等は脱脂処理やプライマー処理を要する場合があるので注意する必要がある。

(3) ホルムアルデヒド放散量は、いずれの場合も、特記がなければF☆☆☆☆のものである。

12章 木工事 3節 防腐・防蟻・防虫処理

第12章 木工事

03節 防腐・防蟻・防虫処理

12.3.1 防腐・防蟻処理

直接外気にさらされる部分や、常時湿気を受けやすい部分の木材は、腐朽防止の措置が必要になる。防腐処理とは、薬剤等で木材を処理することをいい、耐朽性の高い樹種を使用するなどして、腐朽防止の対策を講じることを含めて、防腐措置という。

(1) 防腐・防蟻処理が必要な樹種による製材及び集成材

「標仕」では、「製材の日本農林規格」及び「枠組壁工法構造用製材の日本農林規格」によるD1の樹種(表12.3.1参照)の心材のみを用いた製材又はこれらの樹種を使用した集成材は、薬剤による処理を省略してもよいとしている。

(2) 薬剤の加圧注入による防腐・防蟻処理

(i) JASでは、保存木材の性能区分を木材の使用環境を考慮して表12.3.2のようにK1からK5までの5段階に分け、心材の耐久性区分(表12.3.1)に基づき、使用薬剤の浸潤度については表12.3.3に示す基準、また、吸収量については 表12.3.4に示す基部が設定されている。

なお、「標仕」では、保存処理のK2からK4までの区分に適合するものとしている。

(ii) 使用薬剤は従来CCAが主に用いられてきたが、JASでは規定から除外されている。近年、環境への配慮からACQ等、他の薬剤が用いられるようになってきており、例えば、(公財)日本住宅・木材技術センターによるAQ認証等による新しい薬剤でも必要な条件を渦たしているものが追加された規定になっている(薬剤の記号は表12.3.4参照)。

(iii) 通常の加圧注入法では、通導性の低い樹種において規定の薬剤含浸状態を容易に得るために注入処理に先立つインサイジングを認めており、えぞ松、とど松等にも薬剤が十分浸透しうるよう配慮している。一方、JISの土台用加圧式防腐処理木材は、土台専用の製材品で、樹種は、米つが、アピトン、えぞ松及びとど松に限られ、断面寸法長さ等も決められている。使用薬剤はJAS製品とほぼ同じである。

表12.3.1 JASにおける耐久性区分

表12.3.2 JASにおける性能区分と木材の使用状態(わかりやすい新製材JASの解説より)

 

表12.3.3 浸潤度の適合基準(JAS)

 

表12.3.4 吸収量の適合基準(JAS)(その1)

表12.3.4 吸収量の適合基準(JAS)(その2)

(3) 薬剤の塗布等による防腐・防蟻処理
一般的には、次の部分に人体への安全性及び環境への影響に配慮した表面処理用木材保存剤を2回塗り付けることが行われている(図12.3.1参照)。環境に配慮した表面処理用木材保存剤としては、(公社)日本木材保存協会で認定している薬剤等がある。

なお、塗り付けた箇所は見え隠れとなるので、適切な時期に確認をする必要がある。

① 鉄筋コンクリート造、組積造等の最下階

  図12.3.1 防腐剤塗付面(その1)

② 上間スラプ等の場合

 1) 土間スラプ等の上に載る部分

  図12.3.1 防腐剤塗付面(その2)

 

 2) 土間以外のコンクリートに接する部材


  図12.3.1 防腐剤塗付面(その3)

(4) 防蟻処理

(i) しろありの代表的なものは、ヤマトシロアリとイエシロアリであり、地域によっては相当な被害があるが、防蟻剤が特殊なものであり、地域も指定しにくいので、設計図書で指定されることになる。

(ii) 防蟻剤は、クロルピリホスを含有しない有機りん化合物やピレスロイド系化合物等を主成分とし、(公社)日本木材保存協会や(公社)日本しろあり対策協会で認定している。これらの薬剤は、労働安全衛生法等に従った取扱いが必要である。

12.3.2 防虫処理

(a) ラワン等広業樹の辺材(白太)部分等は、ヒラタキクイムシの食害を受けやすい。食害を防ぐには、薬剤による防虫処理が効果的である。

(b) ラワン材等の食害に対応した防虫処理材の性能区分、浸潤度及び吸収量の適合基準については、表12.3.2. 3及び4を参照する。

(c) 造作材に.ラワン材等を用いる場合はJASによる保存処理K1を行ったものを使用するよう「標仕」12.3.2に定められている。

12章 木工事 4節 鉄筋コンクリート造等の内部間仕切軸組及び床組

第12章 木工事

4節 鉄筋コンクリート造等の内部間仕切軸組及び床組

12.4.1 木 材

(a) 「標仕」では、間仕切軸組に用いる木材の樹種は特記によるものとし、特記がなければ又はを標準としている。

(b) 「標仕」では、床組に用いる木材の樹種は特記によるものとし、特記がなければ又はを標準としている。ただし、土間スラブの類の場合の土台、転ばし大引及び転ばし根太は、ひのき又は保存処理木材を標準としている。

12.4.2 工 法

「標仕」に記載されている工法等の図解を、表12.4.1に示す。

表12.4.1 間仕切軸組及び床組の工法(その1)

 

表12.4.1 間仕切軸組及び床組の工法(その2)

 

表12.4.1 間仕切軸組及び床組の工法(その3)

 

表12.4.1 間仕切軸糾及び床組の工法(その4)

 

表12.4.1 間仕切軸組及び床組の工法(その5)

12章 木工事 5節 窓、出入口その他

第12章 木工事

5節 窓、出入口その他

12.5.1 木 材

「標仕」では、窓出入口その他に用いる木材の樹種は、特記によるものとし、特記がなければ、窓、出入口等の水掛り部で乾きにくい下枠や強度の必要な吊元枠及び敷居では、ひのきを標準とし、その他は、松又は杉を標準としている。

12.5.2 工 法

「標仕」に記載されている工法等の図解を、表12.5.1に示す。

表12.5.1 窓出入口その他の工法(その1)

表12.5.1 窓出人口その他の工法(その2)

表12.5.1 窓出人口その他の工法(その3)

 

表12.5.1 窓出人口その他の工法(その4)

12章 木工事 6節 床板張り

第12章 木工事

6節 床板張り

12.6.1 木 材

「標仕」では、縁甲板及び上がりがまちに用いる木材の樹種は特記によるものとし、特記がなければひのきを標準としている。

12.6.2 工 法

「標仕」に記載されている工法等の固解を表12.6.1に示す。

表12.6.1 床板張りの工法(その1)

表12.6.1 床板張りの工法(その2)
表12.6.1 床板張りの工法(その3)

12章 木工事 7節 壁及び天井下地

第12章 木工事

7節 壁及び天井下地

12.7.1 木材

「標仕」では、壁及び天井下地に用いる木材の樹種は特記によるものとし、特記がなければ、杉又は松を標準としている。

12.7.2 工法

「標仕」に記載されている工法等の図解を.表12.7.1に示す。

表12.7.1 壁及び天井下地の工法(その1)

 

表12.7.1 壁及び天井下地の工法(その2)

 

表12.7.1 壁及び天井下地の工法(その3)

12章 木工事 8節 小屋組(「標仕」以外の工法)

第12章 木工事

8節 小 屋 組(「標仕」以外の工法)

12.8.1 木 材

小屋組に用いる木材の樹種は特記によるものとし、特記がなければ杉又は松を標準とする。

12.8.2 工 法

工法等の仕様を表12.8.1.工法等の図解を表12.8.2に示す。
表12.8.1 小屋組の工法(仕様)

表12.8.2 小屋組の工法(図解 その1)

表12.8.2 小屋組の工法(図解 その2)

表12.8.2 小屋組の工法(図解 その3)

12章 木工事 9節 屋根野地、軒回りその他(「標仕」以外の工法)

第12章 木工事

9節 屋根野地、軒回りその他(「標仕」以外の工法)

12.9.1 木 材

屋根野地、軒回りその他の部位に用いる木材の樹種は特記によるものとし、特記がなければ、杉又はひのきを標準とする。

12.9.2 工 法

工法等の仕様を表12.9.1に、工法等の図解を表12.9.2に示す。

表12.9.1 屋根野地、軒回りその他の工法(仕様)
表12.9.2 屋根野地、軒回りその他の工法(図解 その1)

表12.9.2 屋根野地、軒回りその他の工法(図解 その2)

参考文献

13章 屋根及びとい工事 1節 一般事項

13章 屋根及びとい工事

1節 一般事項

13.1.1 適用範囲

この章は屋根の金属板葺、粘土瓦葺及びとい工事を対象としている。

なお、金属板葺は長尺金属板葺と折板葺とに分かれる。

13.1.2 基本要求品質

(a)「標仕」では、屋根及びとい工事に使用する材料のうち主要なものはそれぞれのJIS規格が指定されている。また、補助材料については、材質や表面処理等について必要とされる内容が具体的に規定されている。基本要求品質としては、これらの指定された種類の材料が工事に正しく使用されたことを容易に証明できるようにしておく必要がある。

(b) 屋根及びといは、「標仕」で示された以外にも使用する部材が多く、その形状・寸法も多種多様であり、工事現場において加工し取り付けられる部材もある。このため、「所定の形状及び寸法を有する」とは、設計図、施工図等で示された部材が、その仕様どおり取り付けられていることを求めたものである。したがって、部材の施工方法、精度、管理の方法について「品質計画」で提案させ、それにより施工し、管理したことを証明できるようにしておく。

「所要の仕上り状態」としては、使用する建物の重要度や使用箇所、所在地の環境等を考慮して、全体として有害な傷がないこと、特に見え掛り部分に使用上問題となる汚れ、ねじれ、反り、色むら、へこみ、欠け等がなく、また、耐久性上問題となる傷がないことである。具体的には、屋根の専門工事業者による施工管理記録を活用すればよいが、あらかじめ具体的に限度を定めておき、この限度内に納まっていることと考えればよい。これらの限度を定めるに当たっては、同時に限度を外れた場合の処理方法についても明確にしておく。

とい工事にあっては、使用材料が適正であり、加工寸法の管理が適切であればおおむね所定の形状及び寸法を確保できると考えられることから、(a)による使用材料の確認と適切な施工図、加工製品の確認のほか、取付け状態の確認記録を整備するようにする。

といの仕上り状態としては、ルーフドレンとといの取合いだけでなく、仕上げの防露巻きも含めて、出来上りの状態の限度と確認方法を定めておき、この記録を整備する。

(c) 「標仕」13.1.2(c)でいう「漏水がない」とは、9章の防水工事と同様に水張り試験による確認を要求しているわけではなく、漏水のない品質をつくり込むという考えが重要である。具体的には、施工のプロセスとして下地から屋根材、とい材料の取付けに当たって、何をどのように管理するのかを「品質計画」として提案させ、これを実施させた結果として「漏水がない」ものと考えればよい。屋根材にあっては、この取合い部の検討において、特に耐風圧性及び施工後のきしみ等の有害な震動をなくするように検討を行うことが重要である。

(d) 屋根に加わる外力の主なものは、風と雪である。風については「屋根ふき材及び屋外に面する帳壁の風圧に対する構造耐力上の安全性を確かめるための構造計算の基準を定める件」(平成12年5月31日 建設省告示第1458号)に基づき算出した風圧力に対して、雪については建築基準法施行令第86条に基づき算出した積雪荷重に対して、それぞれ構造耐力上安全であることを確かめなければならない。

施工に当たっては、設計で考えられた構造耐力性能を実現するために必要な監理を行う。また、「有害な振動がない」ようにするためには、屋根材と下地材の取合い、下地材と構造体の取合いを適切なものとする必要がある。いずれも監督職員の承諾を受けた施工計画書どおり施工が行われたことを管理記録等により証明できるようにするとよい。

なお、風圧力については「Eの数値を算出する方法並びにV0及び風力係数の数値を定める件」(平成12年5月31日 建設省告示第1454号)に「局地的な地形や地物の影響により平均風速が割り増されるおそれのある場合においては、その影響を考慮しなければならない」とされており、想定される要因としては、地表面の状況(無障害物平坦地)、傾斜地(崖地、傾斜地等)、風の通路(運河、水路、谷あい等)、局地風.ビル風等がある。

とい工事にあっては、ルーフドレンとコンクリート躯体の取合いを含め、各部材の接続が確実に行われることが重要であり、施工記録により証明できるようにするとよい。

13.1.3 施工一般

(a) 「標仕」では、降雨・降雷、強風等屋根に悪影響を及ぼす自然条件の場合は、施工を行わないとされている。安全面から考えても施工は取りやめるべきである。また、下地(野地板)の乾燥が不十分な場合にも施工を行わない。下地が十分に乾燥していないと、施工後の結露の発生のほか、下地の種類によっては、留付け用部品の下地との保持力の低下が懸念されるからである。

(b) 下葺材施工の際に下葺材を折り曲げることがあり、気温が著しく低い気候条件下では下葺材が破断するおそれがある。また、改質アスファルトルーフィング下葺材(粘着層付タイプ)は粘着層の十分な接着性が得られない場合があるので、気温が著しく低下した場合には施工を行わない。

13章 屋根及びとい工事 2節 長尺金属板葺

13章 屋根及びとい工事

2節 長尺金属板葺

13.2.1 適用範囲

(a) この節は、折板葺を除く長尺金属板による横葺、瓦棒葺、立平葺、ー文字葺等の屋根葺形式を対象としている。

なお、瓦棒葺は心木なしの場合を対象としている。

(b) 作業の流れを図13.2.1に示す。


図13.2.1 長尺金属板葺の作業の流れ

(c) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。

なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。

屋根葺形式ごとの具体的な品質管理項目は、表13.2.5を参照されたい。

① 専門工事業者名及び施工管理組織
② 工程表(着工及び完了の時期)
下葺(材料及び工法)
鋼板類(種類、厚さ)
谷、棟、軒先、けらば等の納まり
⑥ 折曲げ及び小はぜ掛け
壁との取合い等の工法
⑧ 付属材料
⑨ その他専門業者の工法の仕様

風圧力及び積雪荷重に対応した工法、作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等

 

(d) 金属屋根工事の計画立案から施工管理まで担当する専門技術者の一例として、(-社)日本金属屋根協会では、昭和61年度より「金属屋根工事技士」の育成・教育を行っている。

13.2.2 材 料

 

(a) 平成25年版「標仕」では、屋根葺材に使用する長尺金属板の種類、塗膜の耐久性の種類、めっき付着量、厚さ等は、耐久性や耐風圧性を考慮して、設計者がすべて特記することとされた。

長尺金属板葺の場合は、一般的に、従来「標仕」で標準とされていた JIS G 3322(塗装溶融 55%アルミニウムー亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯)による CGLCCR-20-AZ150が使用されることが多い。

なお、長尺金属板の表示記号の意味を図13.2.2に示す。


図13.2.2 長尺金属板の表示記号

(b) 屋根葺材の厚さ

上記のように、屋根葺材の厚さは構造計算等の結果を踏まえて特記されるが、めっき鋼板及び塗装鋼板では、耐久性を考慮して、最低寸法を0.4mmとする。ただし、ポリ塩化ビニル被覆金属板及び耐酸被覆鋼板においては、金属板原板の厚さが示される。

(c) 表13.2.1に金属屋根材料の概要、表13.2.2に金属屋根材料と屋根葺形式の関係を示す。

表13.2.1 金属屋根材料の概要(その1)
表13.2.1 金属屋根材料の概要(その2)
表13.2.2 金属屋根材料と屋根葺形式の関係

(d) 金属屋根材料とその特徴等を次に示す。

(1) 長尺めっき鋼板

(i) 溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯(JIS G 3302)

① 材質、用途により16種類に分けられる。屋根用には種類の記号の末尾に Rが付けられている(例:SGCCR)。現在では無塗装のまま使用されることは少ない。

② めっきの種類は非合金化めっき(亜鉛めっき)と合金(亜鉛と鉄の合金層)に分けられ、めっきの最小付着量(g/m2)は両面の合計で 60~600g/m2である。屋根用には非合金化 Z25、Z27が使用されることが多い。耐食性は亜鉛の付着量に比例する。

③酸、アルカリ溶液及びガスに侵されやすいので、使用環境に注意する。

(ii) 塗装溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯(JIS G 3312)

① 溶融亜鉛めっき鋼板の表面をりん酸化成処理をし、熱硬化性合成樹脂塗料を両面又は片面(裏面はサービスコート)に焼付け塗装したもので一般にカラー亜鉛鉄板等と呼ばれている。

② 原板は溶融亜鉛めっき鋼板の冷延原板を使用しており、材質は8種類に分類される。屋根用は種類の記号の末尾にRが付けられている(例:CGCCR)。

③ 屋根用の裏面の色はベージュである。

④ 塗膜の耐久性は表13.2.3に示すように3種類に分類されているが、屋根には2類及び5類(2コート、2ベーク)以上を使用する。塗膜はアルカリに弱いため(特に1類及び4類)モルタルが付着した場合、水洗い等により取り除いておく必要がある。また、釘、鋼板の切り粉(切削屑)等の鋼が塗膜の酸化を促進させるおそれがあるので、屋根面に残さないようにする。

表13.2.3 塗膜の耐久性(JIS G 3312 : 2013)

(iii) 溶融アルミニウムめっき鋼板及び鋼帯(JIS G 3314)

① 鋼板に溶融したアルミニウムをめっきしたもので、耐高温性、熱反射性、耐酸性に優れている。

② 耐熱用と耐候用の2種類に大別され、屋根用には耐候用を使用することが多い。耐候用は純アルミニウム液を用いアルミニウム層、合金層はともに耐熱用に比べて厚い。

③ 表面が軟らかく傷つきやすいので、運搬時等での取扱いに注意する。加工時にめっき層に亀裂が入った場合は、犠牲防食作用が期待できないので早目に補修する。

犠牲防食(ぎせいぼうしょく):
亜鉛めっきが施された鉄であれば、万が一キズが発生し素地の鉄が露出してしまった場合でも、イオンになりやすい亜鉛が鉄よりも先に溶け出して電気化学的にキズ周辺を保護し、鉄の腐食は進行しなくなる。この作用を犠牲防食という。

(iv) 溶融亜鉛–5%アルミニウム合金めっき鋼板及び鋼帯(JIS G 3317)

① 機械的性質は溶融亜鉛めっき鋼板と同等であるが、めっき層に約5%のアルミニウムを含むため、亜鉛、アルミニウムの複合酸化物被膜を形成し、亜鉛の溶出速度を抑制するため、より高い耐食性を有する。

② めっき層の加工性は溶融亜鉛めっき鋼板に比べて優れている。無塗装のまま屋根に使用されることは少ない。屋根用は種類の記号の末尾にRが付けられている(例:SZACCR)。

(v) 塗装溶融亜鉛ー5%アルミニウム合金めっき鋼板及び鋼帯(JIS G 3318)

① 塗装溶融亜鉛めっき鋼板よりも原板の耐食性が優れ.加工性も優れている。

② 塗膜の耐久性は塗装溶融亜鉛めっき鋼板と同じである。屋根用は種類の記号の末尾にRが付けられている(例:CZACCR)。

③ 屋根用の裏面の色はベージュである。

(vi) 溶融55%アルミニウムー亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯(JIS G 3321)

① 鋼板の表面に質量比でアルミニウム55%、亜鉛43.4%、シリコン 1.6%の合金めっきを施している。通称ガルバリウム鋼板と呼ばれ無塗装のまま使用することが多い。

② アルミニウムの特性(耐食性、加工性、耐酸性、耐熱性、熱反射性)と亜鉛の特性(犠牲防食作用)を兼ね備えている。アルカリには弱いので、コンクリート、モルタル等との接触は避ける。

③ 異種金属との接触により接触腐食を起こすことがあるので、留付け金具にはステンレス製あるいは亜鉛めっき等により絶縁処理されたものを使用する。シーリング材は、シリコーン系、変成シリコーン系等を用いる。シリコーン系は汚染が生じることがあるので、使用部位に注意する。

(ⅶ) 塗装溶融55%アルミニウムー亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯(JIS G 3322)

① 原板に前記鋼板を用いているため、JIS G 3312、JIS G 3318に比べ耐食性に優れる。

② 鋼板の塗膜の耐久性は、JIS G 3312と同じである。屋根用は種類の記号の末尾にRが付けられる(例:CGLCCR)。

③ 屋根用の裏面の色はベージュとグリーンの2種類がある。

(ⅷ) ポリ塩化ビニル被覆金属板(JIS K 6744)

溶融亜鉛めっき頒板や電気亜鉛めっき鋼板にポリ塩化ビニル(塩ビ樹脂)を積層又は塗り付けたもので、一般に塩ビ鋼板と呼ばれている。塗膜は、塗装溶融亜鉛めっき鋼板と比較すると厚く、より高い耐久性を有する。「標仕」では屋根用として、用途による種類がA種(高耐食耐候性外装用)で下地鋼板がSG(溶融亜鉛めっき鋼板)を使用することにしている。

(ix) 耐酸被覆鋼板

① 溶融亜鉛めっき鋼板等を原板として、その両面に無機繊維と合成樹脂とを数層厚膜に被覆するか、合成樹脂のみを膜厚に被覆したものである。

② 耐酸性、耐アルカリ性、耐塩水性に優れ、熱・電気等に対する絶縁性がある。

③ 被覆が厚いため、加工時の曲げ角度は鈍角にするほか、切断面は補修塗装する。保護フィルムが付いている場合はそのまま加工し、積置きする際にも、塗膜同士の接着を防ぐため、保護フィルムを挿入する。

(2) ステンレス鋼板

ステンレス鋼板はJIS G 4305(冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯)、JIS G 3320(塗装ステンレス鋼板)があるが、一般にコイルが使用されている。

① ステンレス鋼板は鉄にクロム、ニッケル等を配合した合金であり、多くの鋼種があるが、建材製品に使われる代表的な種類については、14.1.5(c)(1)を参照のこと。このうち屋根用には一般的にSUS 304、SUS 316が用いられる。

なお、最近は塩害等に対する耐食性を高めた製品(SUS445等)も屋根用として使われている。

② 特 性

1) 耐食性に優れ、錆びにくい。これは合金中のクロムが酸化保護被膜(不働態被膜)を形成するためである。

2) 衝撃に強い。鋼、銅、アルミニウム等に比べて強度が大きく衝撃に強い。

3) 耐熱性に優れ、溶融温度が高く、高温下での強度が大きく、高温耐火性に優れている。

4) 熱伝導率が比較的小さく、熱膨張率もアルミニウムより小さい。

③ 使用上の注意

1) 材料の貯蔵時等で鉄板やアルミ等の異種金属と直接接触させない。接触部分に水分が入ると接触腐食を起こすことがある。

2) 表面に鉄粉等を放置するともらい錆が発生するので、よく清掃する。

3) ステンレス構板にけがき線を入れる場合は、けがき釘等は錆を誘発するので赤鉛筆や筆や専用用具を用いる。

4) 普通鋼に比べてスプリングバックが強いので、折曲げ等加工時に注意する。

(3) 留付け用部材等

小ねじ、ドリルねじ及びボルト類は亜鉛めっき又はステンレス製品とする。留付け用部材等の長さ、太さ、形状等は屋根葺工法、野地板の種類等に合わせたものとする。

平成22年版の「標仕」より木下地に関する規定が削除されたことから、屋根葺材等を木下地に留め付けるために使用する釘に関する記述を削除した。しかし、役物の取付け等の特殊な部位で釘を使用することもあるので、表13.2.4に使用例を示してある。

表13.2.4に留付け用部材の例を示す。

表13.2.4 留付け用部材の例

(4) 下葺材料

(i) 「標仕」では、下葺材料は、JIS A 6005(アスファルトルーフィングフェルト)によるアスファルトルーフィング940、又は平成25年版から採用された改質アスファルトルーフィング下葺材を使用することとされている。改質アスファルトルーフィング下葺材の品質は、「標仕」表13.2.2に適合するものとされている。下葺材の種類は特記によるものとされているが、「標仕」では、コンクリート下地のように釘又はステープルが打てない下地に下葺材を直接施工する場合は、改質アスファルトルーフィング下葺材(粘着層付タイプ)を使用することとされている。

(ii) アスファルトルーフィング940の構成及び改質アスファルトルーフィング下葺材(一般タイプ、複層基材タイプ、粘着層付タイプ)の代表的な構成を図 13.2.3に示す。

① アスファルトルーフィング940の表面は、着色塗料を塗布したものと塗布しないものがある。

② 改質アスファルトルーフィング下葺材は、アスファルトに合成ゴムや合成樹脂を添加した改質アスファルトを使用したルーフィングで、アスファルトルーフィング940に比べて、ステープルや釘打ち部の水密性に優れており、また、低温性状や高温性状が改良されている。用途によって様々な材料構成があり、アスファルトルーフィング940と同様な基材に、改質アスファルトを被覆し、表裏面に鉱物質粉粒を付着させた一般タイプのほか、鉱物質粉粒の代わりに、表裏面に合成繊維、プラスチックフィルム、紙等を用いて、軽量化を図るとともに高温時の施工での表面のべたつきを改善した複層基材タイプ、裏面に粘着材層を配置し、下葺材施工時の仮止めにステープルや釘等が不要で、ステープルや釘打ち部の水密性が更に優れた粘着層付タイプがある。


(イ)アスファルトルーフィング940


(ロ)改質アスファルトルーフィング下葺材(一般タイプ)


(ハ)改質アスファルトルーフィング下葺材(複層基材タイプ)

 


(ニ)改質アスファルトルーフィング下葺材(粘着層付タイプ)
  図13.2.3 代表的な下葺き材料の構成

 

(5) その他の材料

(i) 付属材料:面戸、唐草、けらば包み、棟包み等

(ii) 留め金具:ステープル、アンカーボルト等

13.2.3 工 法

(a) 屋根葺形式は、建物の意匠等にかかわるため、「標仕」では特記とされている。心木なし瓦棒葺、立平葺及び横葺の例を図13.2.4~6に示す。

なお、横葺については建設省の「建設技術評価制度」による「中層建築物における耐風型勾配屋根の開発」に基づき、評価書を受けている製品がある。


図13.2.4 心木なし瓦棒葺

 


図13.2.5 立平葺

 


図13.2.6 横葺

(b) 屋根葺工法は、構造耐力上の性能にかかわるため「標仕」では特記とされている。具体的には、葺板の寸法・厚さ、下地(野地板の種類、形状、強度)、留付け方法(吊子の種類・取付け方法、留付け用釘等の種類・強度)等である。

(c) 長尺金属板葺の耐風性能確保、施工方法等については、(独)建築研究所監修「鋼板製屋根構法標準」、(-社)日本金属屋根協会「金属屋根の施工と管理」、同「風と金属屋根 – 改訂版」、同「金属屋根の性能確認」が参考になる。表13.2.5に主な屋根葺形式の設計・施工上の要点を示す。

表13.2.5 屋根葺形式の設計・施工上の要点(風と金属屋根 – 改訂版より)

(d) 長尺金属板葺の工法

(1) 下葺材

(i) 防水を主な目的とする下葺材の施工は、水下側の下葺材が水上側の下葺材の上に重ならないように行う。軒先からこれに平行に張付けを開始し、隣接する下葺材を上下(流れ方向)は100mm以上、左右(長手方向)は200mm以上重ね合わせる。

下葺材の左右(長手方向)の継目は、図13.2.7に示すように、継目(◯印)相互が接近しないようにする。


図13.2.7 下鋼材の施工例

(ii) アスファルトルーフィングの仮留めは、作業効率と安全性の面から必要に応じて行うものでむやみにステープルを打ち込むことは、下葺材を貫通する孔が増えるだけで防水機能面では好ましくない。仮留めを行う場合は、図13.2.7に示すように、下葺材の重ね部分で300mm程度の間隔、その他の部分は必要に応じて900mm以内の間隔とするのが通例である。

一方、改質アスファルトルーフィング下葺材(粘着層付タイプ)の場合は、裏面のはく離紙等をはがしながら施工することで、粘着層による下地への仮止めができるため、ステープルを用いないで施工する(図13.2.8参照)。


図13.2.8 下葺材の施工例(粘着層による仮留め例)

(iii) 棟部はその形状から破断を起こしやすい部位であるため、図13.2.9に示すように棟の両側に250mm以上折掛けとしたのち.棟頂部から一枚もので左右 300mm以上の増張りを行う。増張りは下葺材と同材を用いる。

(iv) 谷部は水が集まる箇所であり、比較的漏水を起こしやすい部位であるため、図13.2.10に示すように左右300mm以上の下止材の一枚ものを先張りし.その上に下葺材を左右に重ね合わせ,谷底から250mm以上延ばす。

谷部に下葺を行うとき、下葺材が下地に密着するようにする。下葺材が下地から浮いた状態で張り付けられると破断しやすくなる。更に、谷底にはステープルによる仮止めは行わない。


図13.2.9 棟部の下葺材施工例

 


図13.2.10 谷部の下葺材施工例

(v) 壁面との取合いは、屋根面から下葺材を張り進め、壁に250mm以上、かつ、雨押え上端部より50mm以上立ち上げる。仮留めは屋根面と同様に下葺材の種類に応じてステープルや改質アスファルトルーフィング下葺材(粘着層付タイプ)の場合は粘着層にて行う。また、この部位は谷部同様下葺材が下地から浮いた状態で張り付けられると破断しやすくなるので下地に密着するよう張り付ける。

また、施工後躯体の動きによって当該部位の下葺材の破断も起きやすい。したがって建物の構造や気象条件によって柊113.2.11に示すように増張りを行う場合もある。


図13.2.11 壁面との取合い部の下葺材施工例

(vi) 棟板(あおり板)、瓦棒・桟木等及びけらば部の水切り金物を取り付ける前に下葺を行う。これらを取り付けてしまうと、下葺材を留め付ける下地の不陸が大きくなり破断するおそれがある。

(vii) 両面粘着防水テープを使用する場合又は改質アスファルトルーフィング下葺材(粘着層付タイプ)を使用する場合は、しわ又はたるみが生じないように張り上げる。

(ⅷ) 軒先は、図13.2.12に示すように、下葺材を軒先水切り金物の上に重ね、両面粘着防水テープで密着させる。

なお、改質アスファルトルーフィング下葺材(粘着層付きタイプ)を用いる場合は、両面粘着防水テープを使用しなくてもよい。


図13.2.12 軒先部防水テープ施工例

(ix) 鉄骨造の場合、屋根の軒及びけらばの槌当たり箇所は.図13.2.13に示すように下葺材をあらかじめ屋根下地材(垂木等)と壁の間に先張りする。先張りした下葺材に重ねる下葺材の重ね顛は,水下から水上へ張り上げる。

RC造等の場合で、当該部位に隙間がない場合は当該処置は必要ない。


図13.2.13 軒先壁当たり部施工例

(x) 下葺材が破損した場合は.図13.2.14に示すように、破損した部分の上側部の下葺材の下端から新しい下葺材を差し込み補修する。ただし、改質アスファルトルーフィング下葺材(粘着層付タイプ)の場合は、破損した部分の上に同材で増張り補修する。


図13.2.14 下葺材補修方法例

(2) 加 工

(i) 長尺金属板のロール成形機等による機械加工が多くなっているが、現場等での折曲げは十分曲げ半径を取り、切れ目を入れずに塗装、めっき、地肌に亀裂が生じないように行う。箱形の隅等は特に注意し、形に合わせて加工する。

ポリ塩化ビニル被覆金属板及び耐酸被覆鋼板を冬期に加工する時は、塗膜に亀裂が生じやすいので、材料を加温してから加工する。

(ii) 小はぜ掛け

① はぜ組みには、巻きはぜ(二重はぜ.ダブルはぜ)とこはぜ(一重はぜ、シングルはぜ)がある。巻きはぜはダクト等で用いられることが多く、屋根では銅板葺での屋根本体の板と板とのはぎ合せ、防水上特殊な部位に用いられる。図13.2.15に示す2種類がある。


図13.2.15 巻きはぜ

② 小はぜは主として屋根本体の板と板及び軒先、けらば部分のはぎ合せに使用される。小はぜは、図13.2.16のように加工し 3〜6mm程度の隙間をつくり、防水上の毛細管現象を防ぐ(図13.2.17参照)。ただし、隙間のない方が風による吹上げに強いので、隙間が大きくならないように注意する。


図13.2.16 小はぜ

 


図13.2.17 小はぜの折返し幅の例

(3) 取付け

葺板の取付け方法は、屋根葺形式ごとに異なるため、ここでは心木なし瓦棒葺(通し吊子)の例を示す。

① 溝板を下葺材上の所定の位置に並べ、各溝板の間に通し吊子を入れる。
② 通し吊子は、母屋に留め付ける。

③ キャップは、構板になじみよくはめ込ませ、均一、十分に締め付ける。

(4) 棟、軒先、けらば、壁との取合い部及び谷の納まり

屋根の各部の納まりについて、心木なし瓦棒葺(通り吊子)の例を示す。

①棟(図13.2.18参照)

1) 棟納めは、溝板の水上端部に水返しを付け納めたのち、キャップ掛けを行う。

2) 棟包み固定金具をキャップに取り付けたのち、棟包みを棟包み固定金具に留め付ける。両端は、瓦棒の形状寸法に切りそろえて溝板底部まで折り下げる。

3) 継手は、棟板両端を各々折り返し、重ね継ぎとする。継手内には定形シーリング材をはさみ込み、間隔30mm以内に留め付ける。継手の位置は、瓦棒に可能な限り近い位置とする。


図13.2.18 棟の納まりの例

② 斬先(図13.2.19参照)

唐草は、各通し吊子の底部にドリルねじ留めとし、唐草の継手は、通し吊子の位置で重ね継ぎとする。


図13.2.19 軒先の納まりの例

③ けらば(図13.2.20参照)

1) けらば納めは、溝板端部を唐草に十分つかみ込む。

2) けらば端部の長さは、働き幅の1/2以下とする。


図13.2.20 けらばの納まりの例

④水上壁との取合い部(図13.2.21参照)
1) 水上部分の雨押えの一方の端は棟納めに準じ、他方の端は 120mm程度立ち上げて胴縁に留め付ける。

2) 継手の施工は棟納めの継手に準ずる。


図13.2.21 水上壁取合い納まりの例

⑤ 壁との取合い部(13.2.22参照)

雨押えの一方の端は溝板の底まで折り下げ、他方の端は120mm以上立ち上げて胴緑に留め付ける。


図13.2.22 壁取合い納まりの例

⑥ 谷(図13.2.23参照)

谷板は稲妻谷とし、原則として、継手を設けない。葺板の溝板を谷板につかみ込んで納める。


図13.2.23 谷の納まりの例