















建設業の限定解除の国家資格、1級建築施工管理技士にサクッと合格するためのブログ。
13.4.1 一般事項
(1) この節は、粘土瓦を使用した屋根を対象としている。
なお、平成22年版「標仕」から、12章[木工事]の「小屋組」及び「屋根野地、軒回りその他」が削除されたため、13章においても適用される下地から木造下地 が削除されている。しかし、本書の12章では、「標仕」以外の工法として、平成 19年版「標仕」の「小屋組」及び「屋根野地、軒回りその他」の仕様及びその解説を残してあること、瓦葺は木造下地に施工される場合が多いことなどから、この節では木造下地関係の記述も参考に残した。
(2) 作業の流れを図13.4.1に示す。
図13.4.1 粘土瓦葺の作業の流れ
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
⑥ 風圧力及び地震力に対応した瓦等の留付け工法、管理の項目、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書及びその管理方法等
(4) 粘土瓦葺の施工水準の確保と施工の信頼性向上を図るため、(-社)全日本瓦工事業連盟では、「瓦屋根工事技士」資格制度を設けており、瓦屋根工事に関する知識及び技術の維持・向上、施工管理、安全管理等の能力を有する資格者を育成し、技術者の認定登録を行っている。
13.4.2 材 料
(1) 粘土瓦は、JIS A 5208(粘土がわら)により製造されたものとする。
(ア) 粘土瓦の種類、大きさ、産地等は設計図書に特記される。
(a) 粘土瓦の基本形となる桟瓦の形状及び寸法を、図13.4.2 及び 表13.4.1に示す。
図13.4.2 桟瓦の形状(JIS A 5208 : 1996)
表13.4.1 桟瓦の寸法(JIS A 5208 : 1996)
(b) 粘土瓦は、日本の三大産地として、愛知県三河地方の三州瓦、島根県の石州瓦、兵庫県淡路島の淡路瓦があるが、日本各地(原料の粘土の産する所)で土質・焼成等の特質を生かした瓦が生産されている。
J形の役物瓦の種類及びその使用箇所を、図13.4.3に示す。
図13.4.3 屋根の各部及び桟瓦と主な役物の名称
(ウ) 「標仕」では、瓦の、JIS A 5208に基づく凍害試験等を行う場合は、特記によるとしている。JISによる凍害試験は、凍結融解及び観察の操作を1回とし、その繰返し回数は「当事者間の協定による」とされているが、一般的には、繰返し回数は 5〜10回程度であり、寒冷の程度に応じて定めた繰返し試験成績書により確認する。
(2) 瓦桟木は、瓦の掛止め用等に使用するもので、その材質・寸法は設計図書に特記される。しかし、湿気による腐朽防止のため、「標仕」12.3.1による防腐処理を施した杉を標準としている。また、それらと同等の性能を有すると認められる人工木材、金属製品等も市販されている。
(3) 棟補強用心材は、冠瓦の取付け等に用いられるもので、その材質・寸法は設計図書に特記される。しかし、湿気による廊朽防止のため「標仕」12.3.1による防腐処理を施した杉が一般的に使われている。また、それらと同等の性能を有すると認められる人工木材、金属製品等も市販されている。
(4) 瓦緊結用釘又はねじ、緊結線、棟補強用金物等
また、「標仕」13.4.3 (1)では、瓦緊結用釘又はねじの有効長さの最小値は、先端が野地板厚さの2分の1以上に達する長さ又は野地板の裏面(下地)まで貫通する長さとし、特記によるとされている。
図13.4.4 瓦緊結用釘又はねじの例
なお、パッキン付きステンレスねじのパッキンは、耐亀裂性及び耐候性を有し、かつ、ねじを締めても頭部から飛び出さない材質及び形状のものとする。
図13.4.5 瓦補強用ねじの例
(ウ) 緊結線は、合成樹脂等で被覆された径1.0mm以上の銅線又は径0.9mm以上のステンレス製とする。
(エ) 棟補強等に使用する金物等は、ステンレス製又は溶融亜鉛めっき処理を行った鋼製とし、材質、形状及び寸法、留付け方法は、特記による。
図13.4.6 棟補強材取付け金物の例
図13.4.7 棟瓦の例
(5) 下葺材は、一般的に二次防水として使用されるものであり、「標仕」では、標準としてJIS A 6005(アスファルトルーフィングフェルト)に基づくアスファルトルーフィング940又は改質アスファルトルーフィング下葺材とし、種類は設計図書に特記される。
なお、緩勾配で漏水のおそれがある(J形瓦では、屋根勾配が4寸未満で流れ長さが10mを超える)場合は、防水性能の優れた「標仕」9.3.2 (1)に規定する改質アスファルトシートの使用について検討する必要がある。
(6) 葺土は、棟や壁際で冠瓦やのし瓦を安定させるために用いるもので、次による。
(ア) 「標仕」では、モルタル、山砂又は真砂土と消石灰をふのりの煮汁と適量の水で、丁寧に練り上げたものを使用するとしている。
(イ) 既調合のものを使用する場合は、信頼できる機関の試験成績書又は使用実績等により品質を確認する。
13.4.3 工 法
(1) 屋根葺材、外装材等は、建築基準法施行令第39条において「風圧並びに地震その他の震動及び衝撃によって脱落しないようにしなければならない。」と規定されている。
なお、風圧力の計算方法や風圧等に応じた取付け工法等については、(-社)全日本瓦工事業連盟等で2021年改訂版「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」等を作成しているので参考にするとよい。
(2) 下葺の工法
ステープルを使用しない工法には、接着工法、釘にシール用パッキンを組み合わせた工法等がある。
(イ) 棟、谷部分は、平部分に比べ変形による動きが大きく、損傷しやすいため防水性の高い下葺材(13.4.2 (5)参照)の使用についても検討することが望ましい。
(ア) 瓦の取付け工法によって桟木の取付け位置が異なるため施工計画書に記載する。桟木の取付け位置は、軒瓦の出寸法及び登り寸法並びに桟瓦の働き寸法を割り付け、これに基づいて墨打ちを行う。
切妻の瓦割付けの例を図13.4.8に示す。
図13.4.8 切妻瓦割付けの例
(イ) 木材以外の下地として一般的によく行われているのは、コンクリートにパーライトモルタルを塗った下地で、下地面の仕上り精度が高く、桟木の留付けはモルタルが固まらないうちであれば、木下地用の釘が使用可能である。その施工例を図13.4.9に示す。
図13.4.9 パーライトモルタル下地の施工例
(4) 平部の工法は、「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」では、次のような方法が示されている。
(ア) 全ての桟瓦は、1本以上の釘で瓦桟木に留め付ける。
(イ) 全ての軒瓦は、上端重ね部(尻部)の2か所を釘又は緊結線で留め付け、さらに、桟山をパッキン付きステンレス鋼製ねじ若しくは緊結線で補強するか又は重ね部の端をステンレス鋼製7形釘で補強する。
(ウ) 袖瓦は、瓦の形状に応じて以下の方法で緊結する。
(a) J形瓦は、尻部の2か所を釘又は緊結線で留め付け、さらに、桟山や袖部の垂れ際をパッキン付きステンレス銅製ねじ又は緊結線で補弛する。
(b) S形瓦は、垂れ部の2か所をパッキン付きステンレス鋼製ねじで緊結し、さらに、山部(尻部)にステンレス鋼製釘等で緊結する。
(c) F形瓦で、桟瓦に垂れが付いた一体型袖については、尻部に釘1本以上と露出部の軒際をパッキン付きステンレス鋼製ねじ1本で補強する。後付け袖については、平部1か所と側面2か所をパッキン付きステンレス鋼製ねじ1本で緊結する。
「標仕」では、標準的な棟の工法として、7寸丸伏せ棟、F形瓦用冠瓦伏せ棟(三角冠伏棟)及びのし積み棟の三つの工法の仕様が規定されている。平成31年版「標仕」から、のし一体棟工法は、近年の生産量の減少から、削除された。
その三つの工法の例を図13.4.10に示す。
図13.4.10 標準的な棟の工法の例
13.5.1 一般事項
(1) この節は、雨水排水用の各種雨どい(とい)を対象としている。
(2) 施工計画書の記載事項は、概ね次のとおりである。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
⑩ 施工の確認方法
13.5.2 材 料
JIS G 3452(配管用炭素鋼鋼管)は、圧力の比較的低い蒸気、水(上水道を除く。)、油、ガス、空気等の配管に用いるもので、黒管と白管(亜鉛めっき)があり、「標仕」では白管を用いることとしている。試験水圧は2.5MPaである。種類の記号 はSGPである。
JPF DF 001(排水用ねじ込み式鋳鉄製鋼管継手)は、SGPを用いた排水配管に使用するねじ込み継手19種類、呼び11/4~6について規定したもので、鋳鉄製又は可鍛鋳鉄製である。90゜エルボ、Y等には流れ勾配が付いている。鋳放し品、溶融亜鉛めっき品及び内面樹脂コーティング品があるが、「標仕」では溶融亜鉛めっき品を用いることとしている。
JIS K 6741(硬質ポリ塩化ビニル管)は、一般流体輸送用の管で、呼び径と厚さの組合せによって、VP、VM及びVUの3種類がある。水圧試験値はVPが 2.5MPa、VMが2.0MPa、VUが1.5MPaである。呼び径はVPが13~300、VMが350~500、VUが40~600であり、同じ径でも肉厚が異なり、VPは、VUの 2倍程度の肉厚となっている。管の色は灰色で、定尺は4m、種類の記号はVP、 VM、VUである。
「標仕」表13.5.1では、使用圧力の大きいVPを使用することになっている。また、屋内に硬質塩化ビニル管を使用しない理由は、建築基準法施行令第129条の2の4第1項第七号に該当する防火区画等を貫通する排水管は、その貫通する部分及び前後 1mを不燃材料でつくらなければならないためである。
JIS K 6739(排水用硬質ポリ塩化ビニル管継手)は、硬質ポリ塩化ピニル管の VP管を使用する排水配管の冷間差込み接合に用いる継手で、エルボ、Y、両Y、ソケット等14種類がある。
(オ) ルーフドレン
なお、張掛け幅以外の内容も、JCW 301-2018に準拠している。
図13.5.1 ルーフィング類の張掛け幅(つばの幅)100mm
たて形ルーフドレンの例
図13.5.2 ルーフィング類の張掛け輻(つばの幅)100mm
横形ルーフドレンの例
(b) ルーフドレンについては、「標仕」で要求する品質を満たすものとして、(-社)公共建築協会の「建築材料 設備機材等品質評価事業」(1.4.4 (5)参照)で評価した製品があるので参考にするとよい。
(c) ルーフドレンは防水種別に応じたものとする。「アスファルト防水 シート防水用」と「モルタル防水・塗膜防水用」を用意している製造所が多い。
(d) 近年のゲリラ豪雨対策として、排水量を増やせるサイホン式の排水システムの採用が見うけられる。サイホン式の排水システムは、従来の空気と水が混在した重力方式の雨水排水システムに対し、とい管内を満流状態にすることにより、細い管で高速に排水するシステムである。特殊なルーフドレンとシステム設計が必要であるが、JIS等で規格化されていないため、詳細については製造所に確認するとよい。採用に当たり主な留意事項は以下のとおりである。
① ドレン径、配管径、合流などのシステム設計については、製造所の仕様による。
② サイホン作用を利用するため、中継ドレンを設けない。
③ 取り付け高さの異なるドレン、通常の重力方式のドレンを同一系統に接続しない。
④ 満流、非満流の繰り返し脈動となるため配管の支持方法、ピッチ等を個別に検討する。
⑤ ルーフドレン近くでは、満流、非満流の切り替わり時の音が懸念されるため、静粛性が求められる室の近傍では、ドレン直下の竪樋・ドレン下部に遮音シート巻きを検討する。
⑥ 流速が早く、流量も多いので、外構の桝接続部分では雨水が溢れないよう、桝のサイズ等を調整する。
硬質塩化ビニル樹脂を成型して作られた雨どいで、JIS A 5706(硬質塩化ビニル雨どい)に適合するものとする。ただし、JISによるものは、主に住宅に用いられる丸型のものである。非住宅用の形式の例を図13.5.3に示す。
図13.5.3 非住宅向け硬質塩化ビニル雨どいの例
といに使用する塗装鋼板及び被覆金属板は、鋼板の両面に塗装又は樹脂被覆が施されたもので、「標仕」では、JIS G 3312、JIS G 3318、JIS G 3322及びJIS K 6744の4種類のものが規定されている。
「標仕」では、といに使用するステンレス鋼板は、JIS G 3320(塗装ステンレス鋼板)又はJIS G 4305(冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯)としている。
アルミニウム製雨どいは、「標仕」では規定されていないが、美観性の良さや優れた耐久性等を理由に、実績が増えている。アルミニウム製雨どいは、JIS H 4100(アルミニウム及びアルミニウム合金の押出形材)による押出形材でできており、外表面は陽極酸化塗装複合皮膜処理がされている。内面は表面処理を行わなくても20年以上の大気暴録で孔食深さが 0.3mm以下であり、十分な耐食性がある。また、エポキシ樹脂塗装等でさらに防食性を高めているものもある。高強度支持金物を用いることで、とい受金物の支持間隔を通常より大きくすることが可能な製品もある。
(2) とい受金物
とい受金物は、軒どいやたてどいの形状に合わせて数多くの種類が作られている。
「標仕」表13.5.2は、といの材種、といの種類及びとい径によるとい受金物寸法、取付け間隔を示している。
軒どい、たてどいの受金物は、といに加わる荷重や衝撃に十分耐えうる形状、寸法のものとし、とい材料の耐候性、耐食性に見合った材質又は防錆処理としたものとする。具体的には、JIS H 8641(溶融亜鉛めっき)のHDZT49以上が望ましく、近年ではステンレス製やJIS G 3323(溶磁亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金めっき鋼板及び鋼帯)等を用いる場合もある。
なお、「標仕」では、とい受金物及び足金物の材種、形状及び取付間隔は、特記によるとされており、特記がなければ、表13.5.2により、溶融亜鉛めっきしたものとされている。ステンレス製のものも製造されている。
(ア) 「標仕」では、一般部分の保温筒はJIS A 9511(発泡プラスチック保温材)のEPS-C-3(ビーズ法ポリスチレンフォーム保温筒の3号)を使用し、とい径に応じて厚さ20mm又は40mmのものを粘着テープで巻くこととしている。 EPS-C-3は、ホルムアルデヒドを放散しない材料である。
また、防火区画等の貫通部分では、JIS A 9504(人造鉱物繊維保温材)のロックウール保温筒を使用し、とい径に応じて厚さ20mm、25mm又は40mmのものを亜鉛めっき鉄線で巻くこととしている。ロックウール保温筒のJISにおけるホルムアルデヒド放散による区分には、F☆☆☆☆、F☆☆☆及びF☆☆がある。「標仕」では、特記がなければ、F☆☆☆☆と定めているので注意する。
なお、一般部分においても、保温筒の使用箇所が 70℃以上となる場合は、ロックウール保温筒を使用する。
(イ) 粘着テープは、JIS Z 1525(包装用ポリ塩化ビニル粘着テープ)による1種で、厚さ0.2mmのものを使用するとよい。
粘着テープは、支持体によって分類される。種類、記号及び厚さを表13.5.1に示す。
表13.5.1 粘着テープの種類、記号及び厚さ
(ウ) 合成樹脂製カバーは、合成樹脂を使用した難燃性の樹脂製カバーとし、JIS A 1322(建築用薄物材料の難燃性試験方法)に規定する防炎2級に合格したものとし、板厚 は0.3mm以上とする。
(エ) アスファルトルーフィングは、製品の単位面積質量の呼びが 940以上のものがよい。
(オ) ビニルテープは、JIS Z 1901(防食用ポリ塩化ビニル粘着テープ)に準ずる金属の防食性があるもので、厚さ0.2mmの不粘着性で半つやのものがよい。
13.5.3 工 法
(1) 鋼管製といの工法
(ア) 継手は、原則として、排水管継手とする。径が大きいものでも、なるべく溶接継手は避けるようにする。径が80mm以下のものは細いため、溶接により溶着金属が管内にはみ出し、ごみ等が付着し、管が詰まる可能性があるため、溶接継手は不適当である。
排水管継手を使用すると、継手部分が膨らんで意匠上好ましくない場合は、「標仕」13.5.3(1)(ア)で、径が80mmを超える管についてだけ溶接継手を認めることとしている。この場合、溶接工法が適切であるかどうかを確認する。
(イ) 管の接続後のねじ切り部、溶接部には、亜鉛めっき面の錆止め塗料として、「標仕」表18.3.2の変性工ポキシ樹脂プライマーを塗り付ける。
(ウ) 建築基準法施行令第129条の2の4第1項第七号に該当する防火区画等を貫通する排水管は、その貫通する部分及び前後 1mを不燃材料でつくらなければならない。また、同施行令第112条第20項で、貫通する部分の隙間をモルタル等の不燃材料で埋めなければならないと規定している。
(エ) 「標仕」では、といの下がり止めは、厚さ6mm程度の金物2個を、上下端のとい受金物及び中間1本おきのとい受金物ごとに、また、屋内で各階にスラブがある場合はスラブごとに取り付けるよう規定しているので注意する。
(オ) とい受金物をコンクリートに取り付ける場合は、図13.5.4のように行う。
図13.5.4 とい受金物をコンクリートに取り付ける場合
(2) 鋼管製といの防露巻工法
「標仕」表13.5.4の防露巻きについて図解すると、図13.5.5のようになる。
図13.5.5 鋼管製といの防露巻き
(3) とい受金物の工法
(ア) とい受金物の形式を、図13.5.6及び図13.5.7に示す。
図13.5.6 たてどい受金物の例
図13.5.7 軒どい受金物の例
(4) 硬質ポリ塩化ビニル管製といの工法
(ア) 継手は、原則として、JIS K 6739(排水用硬質ポリ塩化ピニル管継手)とする。管と継手は、ビニル系接着剤等を用いて行う冷間接合とする。接合部には、接着剤をつけ過ぎないようにする。
(イ) 継いだといの長さが10m以上になる場合は、製造所の指定するエキスパンション継手等で伸縮を吸収する。
(ウ) 配管用鋼管との接続は、鋼管用アダプターやTSバルブ用ソケット等を利用して行う。
(エ) といの下がり止めは、「標仕」では、といの製造所の仕様により固定するとしている。製造所の仕様には、といと同じ材質の部材(例えば、たてどいを輪切りにしたものや、それを細かなピースに切断したものなど)をたてどい受金物の上部のたてどい本体に接着剤を用いて固定する方法等がある。
(5) 硬質塩化ビニル雨どいの工法
硬質塩化ピニル雨どいの取付け方法は製造所の仕様によるが、次の事項に留意する。
(a) 軒どい
④ とい1本の長さは10m以内とし、伸縮は集水器部分で吸収するようにするか、製造所の指定する長さ、方法で吸収する。
② 継いだといの長さが10m以上になる場合は、製造所の指定するエキスパンション継手等で伸縮を吸収する。
鋼板製雨どいの取付け工法は、次の事項に留意する。
① といの両端部分は、丸型は耳巻き、角型は折曲げ又は耳巻きとする。
なお、継手は漏水の原因となるので止水の処理を確実に行う。
③ 塗装及び被覆鋼板をはんだ付けする場合は、塗膜等のはく離と、そのあと処理に注意する。
④ といは、所定の流れ勾配をとり、伸縮は集水器、あんこう部分で吸収する。
(b) たてどい
② 長さ方向の継手は、上にくるたてどいを下のといに直径寸法程度又は60mm程度差し込んで継ぐ。
① 谷どいは、大量の雨水を処理すると同時に、じんあい、土砂等もここに流れ込んでくる。したがって、雨水やじんあい等の的確な処理のために必要な大きさ、勾配及び形状が大切な点となる。さらに谷どいは、ややもすると雨水とじんあい、土砂が一緒にたまりやすく、そのため屋根以上に腐食が早い。また、谷どいと屋根の接合部分からの漏水は、即室内への雨漏りとなるので、この部分の納め方が非常に難しくなる。納め方は屋根工法によって変わる。さらに、寒冷地域や積雪地域で一般地域と同じ方法で谷どいを納めると、氷や雪のため息わぬ漏水事故を引き起こす結果になるため注意する。
② 谷どいは、落ち口と落ち口の間又は落ち口とエキスパンションの間を1枚の板で所定の形状寸法に加工する。
なお、継手は漏水の原因となるので止水の処理を確実に行う(図13.5.8参照)。
④ 継手部分は、重ね合せ部にシーリング材を入れて留め付ける。
⑤ 受金物は、谷どいの底幅に合わせて、表13.5.2により間隔500mm以下で取り付け、勾配は1/200以上とする。
図13.5.8 谷どいの継手
⑥ 谷どいの長さが15m以上になる場合は、エスキパンション継手を設ける。谷どいの水上端部に水止め板をリベット、簿板用小ねじ等で取り付け、両端部間は20mm程度開け、エキスパンション継手のキャップは水止め板につかみ込み取り付ける。水止め板は谷どいと同材とする。
なお、やむを得ず異種金属の組合せとなる場合は、両者間に硬質プラスチックフィルム(厚さ0.5mm以上)を挟み込み、電気的に絶緑させる。
⑦ 概して、寒冷地域や積雪地域で谷どいを設けることは少なく、とりわけ北悔道では皆無に近い。その理由として、各部が氷結したり、雪のため、谷どいが埋もれて、とい本来の機能が発揮されないことが多いためである。したがって、上記の地域で谷どいを施工する場合は、融雪ヒーターを取り付けるなどの対策が必須である。
(7) ルーフドレンの工法
(ア) 「標仕」13.5.3(5)では、ルーフドレンの取付けは、原則としてコンクリート打込みとしているので注意する。ルーフドレンが傾いてしまうと排水管の接続が困難となるため、ルーフドレンが水平となるよう確実に固定する。取付けに際しては、ドレンのつばの天端レベルを周辺コンクリート天端より30~50mm程度下げ、コンクリート打込み時の天端均しでは、半径600mm前後をドレンに向かって斜めにすりつける。
なお、「標仕」では、構造スラブ厚が確保できない場合等、必要に応じて図13.5.9のようにコンクリートで増打ちを行うこととしている。
図13.5.9 たて形ルーフドレンのコンクリート増打ち
(イ) 防水施工及び押えコンクリート打込みに際しては、ルーフドレン内にアスファルトやセメントペーストが流入、付着しないよう養生等を行う。
(ウ) 横形ルーフドレンを設置する場合、その直下には梁がある場合が多いので、適切な勾配を取るために、 ドレンをスラブ天端から 30~50mm程度下げて固定するためには、梁天端を下げる必要がある。また、鉄骨鉄筋コンクリート梁では、鉄骨梁も下げることになり、十分な調整が必要となる場合が多い。さらに、場合によっては、階高を上げなければならないこともあるため、注意が必要である(図13.5.10参照)。
図13.5.10 横形ルーフドレンによる梁天端下がり
(エ) 縦形ルーフドレンを、パラペットの立上り部分に接近して取り付けると、ストレッチルーフィングやシート類の切張り補強、シート類の重ね張り作業が不確実となり、不具合を起こす原因になる。したがって、これらの施工が確実にできるように、立上り部からある程度離す必要がある(表13.5.3参照)。
(8) 清掃、その他
なお、取付け完了後の通水の確認は、通常の建物では降雨時又はドレンからの水の流し込みにより、管の接続部、横引き部等を目視で漏水のないこととする。
16.2.1 適用範囲
(a) 「標仕」に定められているアルミニウム製建具は、建具製作所が、既製のアルミニウム押出形材及び金具その他の材料を用いて、通常製作している建具で、幅及び高さはその建具製作所が定めた製作範囲とし、カタログ等で枠の形状、断面寸法、金具仕様が指定されているものを対象としている。
いわゆる特別注文建具(オーダー製品)は、発注の際、断面寸法や金物等、また、仕様及び性能が要求され、新形の形材を使用するものは、「標仕」では対象としていない。
(b) 建具の品質保証、建具製作所の責任の明確化という意味から、なるべく建具に建具製作所名等を表示させるのがよい。
16.2.2 性能及び構造
(a) 建具の性能及び構造は、JIS A 4702 (ドアセット)又はJIS A 4706(サッシ)に規定されており、設計担当者がJISに基づく性能等を特記することが原則である。しかし、一般的には「標仕」表16.2.1の耐風圧性や水密性等の組合せによる種別が特記される。
「標仕」表16.2.1は、事務庁舎等に通常使用する外部に面する建具の性能等級を組み合わせて表したもので、強さのグレードで表すと、A種は耐風圧性能 2,000Pa、B種は同2,400Pa. C種は同2,800Paとなる。また、これらの性能等級の組合せは、(-社)公共建築協会が行っている「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」のアルミニウム製建具の性能値と整合している。
なお、平成12年建設省告示第1458号において適用除外となっている部位に対する風圧力に関する資料として、(-社)日本サッシ協会では、実績に基づき旧建築基準法施行令第87条及び旧昭和46年建設省告示第109号に規定されていた計算式を示している。
(b)「標仕」では、複層ガラスを用いる引違い、片引き及び上げ下げ形式の建具は、ガラス質量の中心が障子中心に近く安定性の高い枠見込み100mmの建具とされている。
また、「標仕」では規定されていないが、複層ガラスを用いた枠見込み70mmの引違い及び片引きの建具も市販されている。
16.2.3 材 料
(a) アルミニウム押出形材
「標仕」16.2.3 (a)(1)で定めているJIS H 4100(アルミニウム及びアルミニウム合金の押出形材)の中で最も一般的な形材は、A6063Sである。
(b) アルミニウム板
「標仕」16.2.3(a)(2)で定めているJIS H 4000(アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条)の中で最も一般的な板材は、A1100P-H14・H16・H24、A1200P-H24、A5005P- H14・H34であり建築用として使われている。
(c) 通常使用するアルミニウム合金の種類、強さ等を表16.2.1に示す。
(d) 補強材、力骨、アンカー等
鋼材は小さい断面で強度が得られるので、補強材として見え隠れ部分に使用する。接触腐食を起こすおそれがあるので防食処理をする必要がある(「標仕」14.1.3(c) 参照)。
アルミニウム合金に接触しても安全な金属は、亜鉛、クロム、ステンレス(ただし、アルミニウム合金に比べてステンレスの体積が小さい場合)等である。銅、銅合金等は、直接接触していなくても、銅の上を伝った水が接触するだけで強い腐食が起こることもある。
(e) 気密材及び擦れ合う部分、振れ止め、戸当りの類
合成ゴム(クロロプレンゴム等)、合成樹脂(塩化ビニル、ポリアミド等)の有機質のものが使われている。
擦れ合う部分(戸車)、振れ止め(面外方向への振れを防止してスムーズに作動させるために障子に取り付ける小部品)、戸当り(アルミ形材どうしが直接ぶつかるのを防止するため障子又は枠に取り付ける小部品)を、「標仕」では、従来、「原則として、ポリアミド製」としていたが、引張強さ、耐衝撃性、耐摩耗性等の性能をもった合成樹脂が開発され、適材適所で使用されてきているため、平成25年版「標仕」では、「耐久性を有し使用箇所に適したもの」とされた。
また、接触や衝突により損傷を受けやすい部品については、建具製作所では交換部品を用意している。
(f) 網戸等
(1) 防虫網の材料には、合成樹脂、ガラス繊維入り合成樹脂、ステンレス(SUS316)等があるが、一般には合成樹脂である。平成25年版「標仕」では、合成樹脂の線径が0.25mm以上であることが明確にされた。
(2) ガラス繊維入り合成樹脂製は、ガラス繊維に塩化ビニルを被覆して織ってあり、熱による伸縮は少ないが、運搬中にたるみが生じやすい。
(3) ステンレス製は、排気ガス、塩害等により発錆することがある。また、ステンレス網の張付けの際、アルミニウム形材に傷をつけやすく、傷部分がステンレス網と接触すると、環境によってはアルミニウム形材が腐食する場合がある。
(4) 網戸の主な部分に使用する材料及び付属部品は、表16.2.2に示す規格又はこれと同等以上の品質をもつものとし、それぞれの機能を果たすのに十分な強さがあり、かつ、接触腐食を起こさないもの、又は腐食防止処理を施したものとする。
(5) 網戸の加工及び工作は、次による。
(iv) かまち及び桟の材料の表面には、JIS H 8602(アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化塗装複合皮膜)に規定する陽極酸化塗装複合皮膜の種類B又は同等以上の性能をもつ表面処理を施したものを使用する。
外部に面するがらりには、小鳥の巣作り等を防止するために防鳥網を張ることもある。
(g) 小ねじは、ステンレスが多く使われており、高力アルミニウム合金は、現在ほとんど使われていない。
(h) 外部建具の周囲に充填するモルタルに使用する防水剤は、塩化カルシウム系等金属の腐食を促進するものでないこと。市販の防水剤には、この種のものが比較的多いので注烈する。
なお、充填モルタルの砂の塩分含有量を「標仕」でNaCl換算0.04%(質量比)以下と規定しており、海砂等は、除塩する。塩化物による腐食は、保護塗装でも防げない場合が多い。
16.2.4 形状及び仕上げ
(a) アルミニウム板を加工して、枠、かまち、水切、ぜん板及び額縁等に使用する場合の厚さは1.5mm以上とするが、形状、寸法補強板の有無.モルタル充填の施工条件等を考慮して板厚を決める必要がある。
アルミニウム押出形材の水切の既製品としては、働き幅 100、110、120mm程度がある(図16.2.6参照)。
(b) 枠見込み70mmの製品は、鉄筋コンクリート用が主であるが、ALC用、鉄骨用が用意されているものもある。枠見込み100mmの製品は、一般に鉄筋コンクリート用のものが多い。
「標仕」で、枠見込み70mmのサッシの引違い及び片引きの障子において、グレイジングチャンネルが使用できる構造とされているのは、単板ガラスを想定したものである。複層ガラスには適用しない。
なお、ガスケットは、JIS A 5756(建築用ガスケット)に規定されるガスケットがよい。
(d) 表面処理
(1) 「標仕」表14.2.1に建具に使用するアルミニウム材の表面処理の種別が示されているが、そのなかでJIS H 8602(アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化塗装複合皮膜)が2010年に改正され、仕様規定から性能規定になったことにより、平成25年版「標仕」では、陽極酸化塗装複合皮膜の種類がB(一般的な環境の屋外)とされた。種類BはJISにおける複合耐食性及び耐候性の性能のグレードを示している。
また、「標仕」16.2.4(d)において、種別及び標準色・特注色の別等は特記によるとされている。
(2) 表面処理の工程は、ほとんど素材の段階で行われる。見え掛り加工小口等は必要に応じて塗装で補修することもある。
(3) 沿岸地域で、アルミニウム製建具の腐食を防ぐには、清掃が最も有効である。清掃を怠ると、防食の効果が期待できないので、設計面でも清掃のしやすさの配慮が必要であり、更に、施設管理者への十分な説明も重要である。
(c) 絶縁処埋
(1) ここでいう絶縁処理とは、アルミニウム材と周囲に充填するモルタルとの絶縁及びアルミニウム材と鋼材等との接触腐食を避けるための絶縁をいう(14.1.3(b) 参照)。
(2) 絶縁用の塗料は、一般の建具では、建具表面に塗装されるものと同一材とする。 JIS H 8602(アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化塗装複合皮膜)に規定される「種類B」の塗膜は、建具表面及び裏面が同時に塗装されるため絶縁処理も兼ねている。
表面処理が「標仕」表14.2.1のA種及びC種では、アルカリ性に接する箇所は絶縁処埋を行う必要がある。
(f) 出入口のくつずりにステンレスを使用する場合は、「標仕」16.4.3(b)及び「標仕」表16.4.2による。
なお、くつずりに折曲げステンレス板を取り付け、レールとする場合の例を図16.2.1 に示す。
図16.2.1 くつずりとレール
(g) 製品の寸法許容差は、JIS A 4702 (ドアセット)又はJIS A 4706(サッシ)により、工場組立完成品に対するものとする。
(h) 結露水の処理は、建具から外へ排水する方法と結露水をためる方法があるが、障子や枠及びガラスの種類等、地域条件によって一律に規定できないため、特記となっている。また、寒冷地等で外部に排水すると結露水が凍結し問題となる場合もあるため、地域条件を踏まえ結露受け等の対応を検討する。結露水の処理の一例を図16.2.2 に示す。
図 6.2.2 結露水の処理の一例
16.2.5 工 法
(a) 加工及び組立
(1) 一般に建具は、製品の形で現場へ搬入する。特殊な寸法等のものは、現楊で組立を行う場合もある。
小ねじの位置は、できるだけ雨掛りを避けるが、やむを得ない場合でも、水がたまりやすい部分は、避けることが重要である。仕口の一例を図16.2.3に示す。
図16.2.3 仕口の組立例
(b) 取付け
(1) 取付けの際には、養生材をできるだけ残して、やむを得ず取り除いた養生材は、取付けが終わったのちに、できるだけ早く復旧する。
周囲の仕上げに支障のある養生材は、仕上げに先立ち取り除く。
(2) 取付け基準
(i) 取付けには、基準墨(心墨、陸墨、逃げ墨)を出し、図16.2.4のように建具にも基準墨に合う位置にマークして位置を調整する。マークのない場合は、一般に枠面で測定する。連窓等陸墨が出せない場合は、 レベルを用いたり、ピアノ線を張り基準とする。
(ii) 取付け精度は、許容差を ±2mm程度とする。
図16.2.4 建具取付け用墨とマーク
(3) 鉄筋コンクリート造への取付け
(i) 一般に市販されている躯体付けアンカーには、長さの短いものがあるので、なるべく長いものを使用する。躯体付けアンカーを型枠に取り付け、コンクリート中に埋め込む(打ち込む)。
(ii) 建具の取付けは、くさび等で仮留めし位置及び形状を正確に決め、躯体付けアンカーに溶接して本取付けを行う。仮留めのままでは動きやすいので、できるだけ早い時期に固定する。
建具アンカー以外の部分(枠材等)に溶接してはならない。また、溶接スパッタ等が枠材に付着すると、アルミニウムの表面仕上げに悪影響を及ぼすため養生を行う。
(iii) 外部回りの建具では、枠回りにモルタルを充填する際、仮留め用のくさびは、必ず取り除かなければならない。
(iv) 出入口、点検口等のくつずり、下枠等で取付け前にあらかじめモルタルを充填しておく必要のある箇所は、図16.2.5のように行う。
図16.2.5 くつずりのモルタル充填
(v) シーリング材の施工は、プライマー及びバックアップ材を使用するが、挙動の少ない鉄筋コンクリート造のサッシ回りでは、バックアップ材を省略し、三面接着としてもよい(「標仕」9.7.4(b)参照)。「標仕」9.7.3の目地の深さの確保は、高い施工精度が必要なので注意する。
また、プライマーは、施工箇所の下地材料(被着体)に適したものとする。
(i) 鉄骨下地と建具枠の四周の間にくさび、平板等をはさみ込んで建具の動きを固定し、溶接又は小ねじ留め等を行う。
溶接箇所は、スパッタ等を収り除き、「標仕」表18.3.2のA種の錆止め塗料を塗り付ける。
建具アンカー以外の部分(枠材等)に溶接してはならない。また、溶接スパッタ等が枠材に付着すると、アルミニウムの表面仕上げに悪影響を及ぼすため養生する。
(ii) シーリング材の施工は、プライマー及びバックアップ材を用い、二面接着とする。プライマーは、施工箇所の下地材料に適したものとする。
(c) 漏水防止
(1) 鉄筋コンクリート造の場合
(i) 漏水防止のためには、抱き納まりがよい。抱き納まりは、壁面を流れ落ちる水膜が途切れ、サッシヘの雨掛りが少ないなど漏水防止に有効である。
面付け納まりは、壁面を流れ落ちる水膜が切れずに直接サッシに掛かるため、不利な形態であり、建具周囲、特に上枠には設計上の配慮が必要である。
(ii) 抱き納まり
抱き納まりのサッシの例を図16.2.6に示す。
抱き寸法は、配筋やコンクリートの施工性とサッシ取付け用欠き込み部のひび割れや欠け防止を考慮した寸法とする。また、開口下面は、1/10程度の外勾配か、12mm程度の立上りを設け、金属製水切を設けるのがよい。勾配や立上りをより大きくすると、躯体コンクリートと充填モルタルとの界面がサッシ下枠の水切よりはみ出すので望ましくない。サッシ回りのモルタルの確実な充填のためには、開口上部と左右には45mm程度、下部は75mm程度の隙間を設け、水切り板とサッシ下枠部を二度に分けてモルタル詰めするとよい。そのため、開口部の型枠を正確に組むことが重要である。モルタル充填後に、外部サッシ枠と躯体コンクリートとの間に直接シーリング材を施すが、シーリング材の接着面にモルタルが付着していないこと、更にはモルタルがはみ出していないことを確認する。
また、建具取付け後、壁面がぬれるような雨の時には、建具周辺から漏水がないか調査し、漏水があれば補修する。不完全なままタイル張り等を仕上げるとその後の補修は難しくなる。
図16.2.6 抱き納まりのサッシの例(建築工事標準詳細図より)
開口下面の形状やモルタル充填のための隙間は、抱き納まりと同様である。
タイル張り仕上げでは、外部のシーリング材(一次シーリング)をサッシ枠 とタイル間に施すこととなり、タイル裏面を伝った雨水には無防備である。そのため、サッシと躯体コンクリートとの間を直接つなぐシーリング材(二次シーリング)が必要となり、二重シーリング工法が特記されていなければならない。枠周囲の躯体コンクリートをはつると、この二次シーリングが不可能になるので、はつりは避けなければならない。
16.3.1 適用範囲
(a) 平成25年版「標仕」では、3節に「樹脂製建具」が新しく規定された。樹脂製建具は、寒冷地において断熱性の高い建具として普及してきている。
樹脂製建具の主要構成材料である無可塑ポリ塩化ビニルの主な特徴は、優れた断熱性(熱伝導率がアルミニウムの約1/1,000)と耐塩害性であり、樹脂形材については、2010年に JIS A 5558(無可塑ポリ塩化ビニル製建具用形材)が制定されている。
「標仕」で規定している樹脂製建具は、建具製作所が、既製の無可塑ポリ塩化ビニル製建具用形材及び金具その他の材料を用いて、通常製作している建具で、寸法はその建具製作所が定めた製作範囲とし、カタログ等で枠の形状、断面寸法、金具仕様が指定されている標準建具(既製品)を対象としており発注の際、断面寸法や金物等並びに仕様及び性能が要求され、新形の形材を使用する特別注文建具(オーダー製品)は対象としていない。
(b) 樹脂製建具工事の作業の流れを図16.3.1に示す。
図16.3.1 樹脂製建具工事の作業の流れ
(c) 樹脂製建具は、原則として、建具の加工及び組立からガラスの組込みまで一貫して建具製作所にて行うことで、性能・品質を確保している。
建具の品質保証、建具製作所の責任の明確化及び改修や維持管理という意味から、建具に建具製作所名等を表示させるのがよい。
(d) 「標仕」では外部に面する建具を対象としている。
16.3.2 性能及び構造
(a) 建具の性能及び構造は、JIS A 4702 (ドアセット)又はJIS A 4706(サッシ)に規定されている。「標仕」表16.3.1は、事務庁舎等に通常使用する外部に面する建具の性能等級を組み合わせて表したもので、強さのグレードで表すと、A種は耐風圧性能 2,000Pa、B種は同 2,400Pa、C種は同 2,800Paとなる。
なお、平成12年建設省告示策1458号において適用除外となっている部位に対する風圧力に関する資料として、(-社)日本サッシ協会では実績に基づき旧建築基準法施行令第87条及び旧昭和46年建設省告示第109号に規定されていた計算式を示している。
(b) 枠の見込み寸法は、要求される性能や建具寸法により決まることから、「標仕」では、特記によるとされている。
樹脂製建具は複層ガラスの使用を前提としているため、枠の見込み寸法は、一般的には、アルミニウム製建具より大きいものとなり、国内で流通している製品では、スイング系で 60~80mm程度、スライディング系で100~125mm程度である。
(c) 「標仕」で樹脂製建具に要求される断熱性能は、H-4 等級及び H-5等級であるが、JIS A 4702 又は JIS A 4706に規定されている断熱性能等級の最高グレードである H-5等級(0.430m2・K/W以上)を超える熱貫流抵抗値を保持する製品もある。 H-5 等級を超える性能が要求される場合は、特記にて熱貫流抵抗値が指定される。
(d) 樹脂製建具の防火設備は、国土交通大臣の認定を受けた製品を使用する。
16.3.3 材 料
(a) 樹脂形材
「標仕」16.3.3(a)で規定している JIS A 5558(無可塑ポリ塩化ビニル製建具用形材)の材料の性能に適合したものとされている。樹脂形材の材料の性能を表 16.3.1に示す。
(b) 補強材、力骨、アンカー等
鋼材は、小さい断面で強度が得られるので、補強材として主に樹脂形材の内部に使用される。排水経路上に補強材として使用する場合には、防錆処置を施す必要がある。また、補強材とそれを固定するねじに接触腐食を起こすおそれがある箇所には、防食処理をする必要がある(「標仕」14.1.3(c)参照)。
(c) 気密材及び擦れ合う部分、振れ止め、戸当りの類
「標仕」では、耐久性を有し使用箇所に適したものとされており、一般的には、合成ゴム(クロロプレンゴム等)、合成樹脂(塩化ビニル、ポリアミド等)の有機質のものが使われている。また、接触や衝突により損傷を受けやすい部品については、建具製作所では交換部品を用意している。
(d) 網戸等
樹脂製建具に用いる網戸のかまち及び桟に用いる材料は、アルミニウム製建具と同様、アルミニウム合金である。
なお、かまち及び桟の色は樹脂製建具の色に合わせることが多い。
(e) ガラス
(1) ガラスのはめ込みは、原則として、建具製作所にて行い、性能・品質を担保する。
(2) ガラスは、複層ガラスを用いることを原則としているが、遮音性能及び断熱性能を要求されない場合で、単板ガラス又はパネルを用いる場合は特記によるとされている。
(3) 複層ガラスのガラス厚は、最小のガラス板厚( 3mm以上)及び中間層( 12mm以上)を想定し、18mm以上としている。また、複層ガラスは、中間層の厚さのほか、中間層の気体の種類、ガラスの種類によっても断熱性能が異なる。
(4) 遮音性を期待する場合(T-2等級)の複層ガラスは、低音域の遮音低下防止のため、2枚のガラス厚を異なる厚さにすることが望ましい。
(f) グレイジングガスケット
ガラスのはめ込みには、一般的に、JIS A 5756(建築用ガスケット)に準ずるグレイジングガスケットやグレイジングビードを用いる。グレイジングチャンネルやシーリング材は、通常用いない。
16.3.4 形状及び仕上げ
(a) ガラス溝は、一般的には押縁構造とする。
(b) 主要構成材料である無可塑ポリ塩化ビニルは、その組成の40%が石油、60%が工業塩であることから、金属とは異なり、腐食の要因となる金属水酸化物が発生しないため、表面処理をする必要はない。
(c) 「標仕」では、枠・かまちの接合部は、溶接接合としている。
(d) 形材は、通常、押出前に樹脂に顔料を練り込んで色を出している。標準色は一般的には白色である。特注色は、無可塑ポリ塩化ビニル材料とそれ以外の材料を共押出成形(2層押出し)することによって積層させる方法で製作する。特注色の中でも、黒・ブラウン・シルバ一色は市場での汎用性が高いことから、建具製作所では在庫をもっている場合が多い。ほかの色も製作は可能であるが、調色(マスターバッチの製作)が必要となるため、樹脂製建具の製作に当たっては、調色にかかる期間及びコストを考慮する必要がある。
16.3.5 工 法
(a) 加工及び組立
一般に、ガラス及び押縁を建具製作所にてはめ込んだのち、建築現場へ搬送する。建具製作所が定めた搬送における製品重量を超えるものについては、現場でガラス及び押縁をはめ込む場合もある。
(b) 取付け
(1) 取付けの際は、養生材をできるだけ残して、やむを得ず取り除いた養生材は、取付けが終わったのちにできるだけ早く復旧する。周囲の仕上げに支障のある養生材は、仕上げに先立ち取り除く。
(2) 枠等のアンカーのピッチは、防火認定の条件及び枠の変形防止を考慮し400mm以下としている。
(3) 取付け基準
(i) 取付けには、基準墨(心墨、陸墨、逃げ墨)を出し、図16.2.4のように建具にも基準墨に合う位置にマークをして位置を調整する。マークのない場合は、一般に枠面で測定する。連窓等陸墨が出せない場合は、レベルを用いたりピアノ線を張ったりして基準とする。取付け精度は、許容差を± 2mm程度とする。
(ii) 建具寸法が大きい場合や、枠と躯体の間隔寸法が大きい場合には、枠の湾曲、垂下がり、はらみ、つづみ等を防止するため、図16.3.2のように枠に切張りを行う。
図16.3.2 枠の切張り
(4) 鉄筋コンクリート造及び鉄骨造への取付け
鉄筋コンクリート造及び鉄骨造へ取る付ける場合は、建具アンカー溶接時に溶断を行ってはならない。また、溶接スパッタが枠材に付着しないよう、十分な養生を行う。溶接スパッタが枠材に付着すると枠材表面に悪影響(焦げ等)を及ぼし、復旧が困難となる。
(c) 樹脂製建具の清掃方法
(1) 樹脂製建具の清掃方法を表16.3.2に、注意事項を次に示す。
(2) 磨き粉、たわし等の硬いものは、樹脂を傷つけるため使用しない。
(3) 次の有機溶剤等は、枠材に悪影響を及ぼす場合があるため使用しない。
(vi) その他(シンナー等)
(4) 外装材の酸洗い等の清掃時には、清掃液が建具に付着しないよう十分な養生を施す。
表16.3.2 樹脂製建具の清掃方法
16.6.1 適用範囲
この節では、事務庁舎等の主な出入口等に使用する建具を対象としている。
16.6.2 性能及び構造
なお、ステンレス製建具には、「標仕」で要求する品質を満たすものとして、(-社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4 (e)参照)で評価した製品があるので参考にするとよい。
16.6.3 材 料
「標仕」では、ステンレス鋼板はニッケルを含むオーステナイト系のSUS304を標準としていたが、これは、SUS304が加工性、耐食性及び経済性の均衡の取れた材料であったからである。しかし、最近では、世界的にニッケルを始め希少金属(レアメタル)が激減し入手に支障も出てきたため、平成22年版「標仕」に、JIS G 4305(冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯)に規定されているフェライト系(ニッケルを含まない。)のSUS430J1L及びSUS430の2種類が標準として追加された。
更に、平成22年5月には、SUS304と同等の耐食性を有するフェライト系のSUS443J1がJIS G 4035に追加されたことにより、平成25年版「標仕」にSUS443J1が規定された。
SUS430J1L及びSUS443J1は、SUS304に近い耐食性を有するため、外部や水回りに使用し、SUS430は高い耐食性を必要としない屋内の建具等に使用するというように使い分けをするとよい。
なお、更に耐食性を要求される塩害地向けには、SUS316が使われる場合がある。
16.6.4 形状及び仕上げ
(a) 裏板の板原は1.6mm以上、補強板の類の板厚は2.3mm以上である。
ステンレスに接触する鋼材は、ステンレスの腐食の原因となることがあるので、裏板、補強板等の重要な補強材は、錆止め塗装を行う必要がある。
なお、両面フラッシュ戸の中骨、力骨の類は、「標仕」18.3.3(f)(4)より塗装されない。また、超強力両面粘着テープが張り付けられる部分も、接着強度が低下するため塗装されない。
(b) 表面仕上げをHL以外とする場合は、表14.2.1[ステンレス板の表面仕上げ]を参照されたい。
(c) ガラス溝の寸法及び形状は.16.4.4(c)による。
16.6.5 工 法
(a) 普通曲げとは、特に処置しない普通の曲げ方である。角出し曲げとは、図16.6.1に示す方法で曲げるので、角が鋭くなり意匠的にはよいが、強度を著しく弱めるので、裏板を用いて補強するため高価である。その他、一部にはロール成形により曲げる方法も行われている。
なお、角出し曲げ加工ができる板厚は、1.5mm以上であり、一般に表16.6.1による3種類の加工方法が行われている。
ただし、a角については割れが生じやすいので注意を要する。一般的にはb角・c角を用いる方がよい。
また、板厚の異なる組合せの場合は、出来ばえをそろえるため、切込み後の残り寸法を1.5mmの板に合わせる場合が多い。
図16.6.1 角出し曲げの方法
表16.6.1 角出し曲げ加工の種類
16.7.1 適用範囲
(a) この節では、事務庁舎等での屋内の出入口に使用する木製建具を対象としている。
また、物入、書棚等の戸に木製フラッシュ戸を使用する場合は、これを準用できる。
(b) 近年の事務庁舎等では、防火性能を必要としない部位で、木製建具の使用が増加している。木製建具にはフラッシュ戸、かまち戸、ふすま、障子等があり、種類が多いため、「標仕」では一般的に重要な項目のみを規定し、その他は建具製作所の仕様によることとしている。
製作所の決定は、工事経歴、受注能力(作業人員、機械設備、管理体制)等により、その能力を調査することが必要である。
(c) 木製建具は、フラッシュ戸・ふすま・戸ぶすまのように内部材が外から見えない 建具と、かまち戸・ 障子のようにすべて化粧材からなる建具とに大別される。外周部材は、垂直方向の「かまち(縦かまち)」と水平方向の「かまち(上かまち、下かまち)」又は「桟(上桟、下桟)」とからなり、補強のために中間に入れる部材は、内部材が見えない建具では「中骨」といい、すべて化粧材からなる建具では「中桟」という(図16.7.1参照)。
図16.7.1 木製建具の部品名称
16.7.2 材 料
(a) 含水率
(1) 建具材は反り、ねじれ、狂い等寸法に変化が生じると、その機能が著しく損なわれるおそれがあることから、一般の木工事材料より厳しくしている。
(2) 人工乾燥と天然乾燥を区分しているのは、使用樹種と使用部位によって使い分けるためである。
(3) 天然乾燥による木材の乾燥期間は、平衡含水率は12~19%程度で、初期の含水率、気象条件、板厚、樹種等によって異なるが厚さ25~ 30mmのもので2~6箇月以上が必要である。
(4) 人工乾燥による木材は、平衡含水率より2~3%低めに乾燥した方が狂いは少ない。屋内における木材の平衡含水率は、10~15%程度と考えられる。
(5) 集成材、単板積層材、合板、パーティクルボードは、製造工程上十分乾燥しているのでA種と見なすことができる。
(b) フラッシュ戸
(1) かまち及び桟は、近年木材の集成技術やフラッシュ戸の表面材の接着技術が向上していること及びむく材のコストが高騰していることから、集成材を使用することが一般的である。ただし、使用している集成材は同一樹種を集成したものとは限らない。近年、杉の間伐材も加工・集成技術の向上に伴い使用されている。
また、単板積層材(LVLともいい、厚さ3mm程度の薄板を繊維方向を合わせて積層した材料)も使用されている。
造作用集成材及び造作用単板積層材の品質は、建具製作所の仕様によることとなっているが、ホルムアルデヒドの放散量等は、JASで品質基準が定められており、表面材の合板に準じてF☆☆☆☆のもの、非ホルムアルデヒド系接着剤使用のもの、非ホルムアルデヒド系接着剤及びホルムアルデヒドを放散しない塗料使用のものとすることが望ましい。
(2) 定規縁、化粧縁、額縁及びがらり等には、狂いの少ない十分乾燥したむく材を使用する。樹種は、かまち等の集成材等と同じものとしている。
(3) 表面材の合板で、水掛りの箇所(便所、洗面所、浴室、厨房等)は、耐水性のある1類とする。
また、普通合板の板面の品質は、「合板の日本農林規格」の「普通合板の規格」に表16.7.1の3種が規定されている。「標仕」のC-Dとは、表面材の品質がC、裏面材の品質がDであることを示している。これらは、針築樹を表面材としている普通合板の中で、市場性があるもののうちでより品質が良いものである。
普通合板のホルムアルデヒドの放散量等は、JASで品質基準が定められており、「標仕」では、特記がなければF☆☆☆☆のもの及び非ホルムアルデヒド系接着剤使用のものとすることとしている。
なお、放散量の表示や確認方法等については、19章10節を参照されたい。
(4) 「標仕」では、心材に使用するペーパーコアは樹脂浸透のものとしているが、市販品には、ペーパーコアに樹脂を浸透していないものもあるので注意する。
(5) ガラス押縁に使用するねじ、釘の材質は、黄銅製では強度不足のため、ステンレス製としている。
近年は、木目を見せるクリヤラッカー(CL)仕上げ、又はオイルステイン塗りクリャラッカー(OSCL)仕上げのかまち戸が一般的である。樹種は、チーク材とかオーク材のほか、種類が多いため、「標仕」では特記としている。鏡板も、かまちと同種の板を用いた合板(厚さ9mm程度)を使用することが多いため特記となる。
(1) ふすまの種別は、 I型とII型の2種類がある。
(2) 周囲骨、中骨にスプルースが使われることがあるが、やにに注意する。
(3) 近年、 I型では、下張り工程の合理化のため、骨しばり用の茶ちり紙と、べた張り用の黒紙又は紫紙とを製紙工程ですき合わせた紙も多く使用されている。
(4) 上張りの種類は、価格に大きく影響するので特記することとしている。
なお、新鳥の子は、茶うらとか上新鳥と呼ぶこともある。また、雲花(うんか)紙とは、ダークグリーン地に真綿を散らしたような模様のある洋紙である。
(5) 防虫処理は、減圧容器に木材を入れ、ほう砂・ほう酸を木材に含浸(含浸量 木材1m3当たり1.2kg)する方法であるが、現在、南洋材の防虫処理は産出国で行い、国内での処理は行っていないのが実状である。
(e) 戸ぶすま
(1) 戸ぶすまは、フラッシュ戸の表面と周囲とをふすまと同様に仕上げたものであり、フラッシュ戸及びふすまに使用する材料と同じとしている。
(2) 表面の合板は、普通合板が一般的であり、厚さ2.5mm以上としている。
(f) 紙張り障子
(1) 障子紙の代名詞として美濃紙と特記されることがあるが、手すき和紙に限定して解釈しなくてよい。
(2) レーヨンパルプ紙とは、一般にビニル紙と呼ばれるものである。
(3) 引手の材質には、桑等の木製と真鍮(黄銅)等の金属製、合成樹脂製のものがある。
(4) 腰板付き障子は、腰板が高価なため近年は少ない。
「標仕」では、接着剤はJIS A 5549(造作用接着剤)又はJIS A 6922(壁紙施工用及び建具用でん粉系接着剤)で接着する材料に適したものとされており、ホルムアルデヒドの放散量は、特記がなければF☆☆☆☆のものを使用することとしている。
なお、放散量の表示や確認方法等については、19章10節 を参照されたい。
16.7.3 形状及び仕上げ
(a) フラッシュ戸
(1) 「標仕」表16.7.5の見込み寸法30mmのフラッシュ戸は、物入、書棚等の戸を想定している。
(2) 表面材の厚さは、圧着技術が進歩しているため「標仕」表16.7.6が一般的である。ただし、大きな荷重がかかることが予想される場合は、特記で合板を厚くする必要がある。
(3) 表裏で表面材の種類を変えると温湿度の差で反りや狂いが生じやすいので注意する。
(4) 特殊加工化粧合板は、ポリエステル化粧合板等が製造されている。メラミン系は化粧板と称する厚さ1.2mmのメラミン板のみが製造されており、メラミン化粧合板は近年製造されていない。
(b) その他の建具
「標仕」に示すその他の建具の見込み寸法は、一般的な値である。
なお、ふすまの見込み寸法は、どぶ縁(引手側の縦かまち)の寸法による。
16.7.4 工 法
(a) フラッシュ戸
(1) 標誰的なものとしては、主に幅950mm × 高さ2,100mm程度のものを想定している。
(2) 工法は、心材別に中骨式とペーパーコア式に分類される。現在製造されているフラッシュ戸は、中骨式の方がペーパーコア式より多い。それぞれの工法の特長は次のとおりである。
従来工法を機械化製作しやすく改良し、中骨を横方向のみとして、かつ、中間2箇所の中骨を分増し(見付け幅を太くすること)しない方法である。
中骨の数を減じ、その代わりにペーパーコアを挟み込む工法である。
図16.7.2 フラッシュ戸の工法
(3) 圧着技術が進歩しているため、いずれの工法でも、上下かまちと縦かまち及びかまちと中骨の取合い部のステープル留めは組立時の仮固定の意味合いが強く、戸としての剛性は接着剤により確保している。したがって、中骨とかまちとの取合い部の欠き込みは行わない。
また、ドアクローザーの取付けねじが,上かまちを外れるおそれがある場合は、上かまちに増し骨する。
上・下かまちには、化粧縁を取り付けないのが一般的である。化粧縁の隅の納まりを図16.7.3に示す。
図16.7.3 化粧縁の隅の納まり
(6) 開き戸の定規縁は、通称「とんぼ」と呼んでいるT形部材あるいは合じゃくり形部材を図16.7.4のように接着剤で取り付ける。
図16.7.4 定規縁の例
(7) 空気穴は、近年コールドプレス機の採用によって不要となり設けないフラッシュ戸も多い。しかし、ホットプレス機を使用する場合は、フラッシュ戸内の空気の膨張による膨らみを防止するため、すべての水平部材(上・下かまち及び横骨)に図16.7.5のように3mm角程度の穴をあける。
図16.7.5 空気穴の詳細
(8) 引戸の召合せかまちの定規縁で、いんろう付きとする場合は特記による。その例を図16.7.6に示す。
図16.7.6 召合せかまちのいんろう付きの例
(b) かまち戸
(1) ほぞの形式の例を、図16.7.7に示す。
図16.7.7 ほぞの形式の例
(2) かまち及び桟の取合いの例を図16.7.8に示す。
図16.7.8 かまち及び桟の取合いの例
(3) レールは、V形、U形又は甲丸レールを使用するのが一般的である。
(c) ふすま
なお、「標仕」表16.7.9中の周囲骨と中骨の寸法は、見付け幅 × 見込み幅で表示している。
(2) 工法は、 Ⅰ 型とⅡ型とに分類される。それぞれの工法の特長は次のとおりである。
Ⅰ型工法での下張り紙の概略は、次のとおりである。
③ 袋紙(袋張り用):薄手のやや良質な茶ちり紙
機械化製作のために開発された工法であり、一般にはチップボード型と呼ばれている。周囲骨の隅は火打ちを入れ接着剤とステープルで固定し、中骨と周囲骨の取合いはステープルで固定する。その他、図16.7.9(ロ) のように縦骨と横骨の組み方は、 I型工法と同じである。
II型工法での下張り紙の概略は、次のとおりである。
②袋紙(袋張り用): I 型工法に同じ。
図16.7.9 ふすまの工法
(3) 上張り紙は、四周の周囲骨より10mm程度はみ出す大きさとし、周辺10mm部分にのり付けし、周囲骨の側面に折り込んで張り付ける。
縁の仕上げとしては、うるし塗りは高価なため、近年極めてまれである。現在は、カシュ一樹脂塗料の2回途りが一般的である。このほか、近年白木仕上げも多く見られる。
(5) 召合せ部の重ね縁と出会い縁の例を図16.7.10に示す。
図16.7.10 召合せ部の例
両面で異なる材質の上張り(片面が洋室用のビニルクロスで、他面が和室用の紙張りの場合等)とした場合は、上張り施工時の吸水による伸びとその後の乾燥による収縮及び室内温湿度の影響等で反りが生じやすい。一般的には、ビニルクロスを張った側が凸になる傾向がある。
最近の建物は、高気密、高断熱が進み木製品の含水率が大きく変化し、反りやすい環境となっている。反り対策として「標仕」表16.7.10のかまちの寸法(見込み寸法30mm、見付け寸法27mm)が主流である。高さが2,000mmを超える場合は、見付け寸法も30mmとすることが多い。
16.10.1 適用範囲
主に高齢者、障害者等の利用を配慮した出入口に使用する標準的な自閉式上吊り引戸(手動で開放し、自動で閉鎖する戸、有効開口幅 900mm、高さ2,000mm程度)の開閉装置を対象としている。
開閉方式には、片引きと引分けがあり、引分けの場合、左右の戸が連動せずに個別に動くのが一般的である。
16.10.2 材 料
屋外に使用する上吊り引戸装置の材料は「標仕」によるが、引戸本体の材料についても雨水の浸入や防錆性能を考慮する必要がある。
16.10.3 性能等
(a) 開閉繰返し性能については、標準的な使用状態を想定して20万回を設定している。(-社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4(e)参照)では、「標仕」表16.10.1の規定に基づいた評価を行っている。「標仕」表16.10.1で規定されている手動閉じ力とは、ストップ装置を働かせた状態を手動で解除するのに要する力を指している。
(b) 自閉式上吊り引戸装置は、上吊り機構、自閉装置、制御装置により構成される。
図16.10.1に一例を示す。
図16.10.1 自閉式上吊り引戸装置の一例
16.10.4 工 法
上吊り引戸装置の上吊り機構は、建具枠の取付け誤差や床の不陸等を調整できるものとする。
16.10.5 高齢者、障害者等の利用に対する配慮
16.14.1 適用範囲
板ガラスは、近年外装材としても活用され、その用途が広がっている。例えば、メタルカーテンウォールでは開口部以外にも使用され、アトリウムやトップライトを形成している。また、建具枠に納めるのではなく、壁面がガラスのみで形成される点支持工法(DPG工法とも呼ばれる。)等も出現している。
(a) 建築用板ガラスの種類と厚さ及び特性を、表16.14.1に示す。
なお、ガラスの厚さを「ミリ」と表示する場合は、製品記号であって、寸法単位の「mm」ではないことに注意する。
外部に面する帳壁に使用するガラスの厚さは、平成12年建設省告示第1458号に定められている(16.1.7 (d)参照)。
また、平成12年建設省告示第1458号において適用除外となっている部位(高さ13m以下)に対する風圧力について、板硝子協会では、平成12年建設省告示第1458号に提示される計算式をそのまま適用することを提案している。
なお、「標仕」の適用範囲外ではあるが、2~3辺支持状態のガラス及び点支持工法(DPG工法とも呼ばれる。)等の場合での、ガラス厚さの算定もガラスメーカーの提案式が、カタログや技術資料に掲載されているので、該当する場合には参考にするとよい。
溶解したガラス(約1,600℃)を溶融した金属(錫)の上に浮かべて製板するフロートシステムにより生産される透明、かつ、極めて平滑なガラス。
現在、流通する板ガラスの主流である。厚さは、2ミリから25ミリまで14種類ある。すり板ガラスは JIS R 3202の附属書 Aに規定されている。
型は、旧来のものが数種類に整理されており、選択には注意が必要である。
(2)のロールアウト法の2本のローラーの間に、同時に網(線)を挿入して生産されるガラス(火造りともいう。)。網入板ガラスは、防火設備(旧乙種防火戸)用として認定されているが、線入板ガラスは防火設備(旧乙種防火戸)用として使用できない。
フロートシステムにより生産される板ガラスで、ガラス原材料に日射吸収特性に優れた金属を加え、着色し生並されるガラス。
熱線吸収効果で、日射を 30~40%程度吸収し、冷房負荷の軽減効果がある。
ガラスの片面に金属の反射薄膜を付け、生産されるガラス。ミラー効果、可視光線を遮り、窓際のまぶしさや局部的な昇温の防止、冷房負荷の軽減効果等がある。
現在、次の2種類の製法がある。
フロートシステムにより生涯されるガラスに、その徐冷の前工程で、金属をスプレーする製法。反射色調は、シルバー系がある。反射膜は、室外側でも室内部でも使用できるとされているが、反射膜の耐久性上、室内側が望ましい。
フロート板ガラスを製品化したのち、所定の寸法に切断し、真空容器内に入れ、電圧をかけて金属薄膜を付ける製法。
オンライン熱反に比べて反射膜の反射率が高く、熱線吸収率も高い。一般には、高性能熱線反射ガラスと呼ばれている。
反射色調は、使用する金属により多彩で、10数種のものが市販されている。反射膜は,室内部に限定される。
2枚以上のガラスの間に接着力の強い特殊樹脂フィルム(中間膜)を挟み、高温高圧で接着し、生産されるガラス。同類には、合成樹脂を注入し、接着するものもある。
破損しても中間膜によって破片の大部分が飛散しない性質がある。
用途は、住宅や学校用の安全ガラスのほか、高層階のバルコニーの手すりや中間膜を種々変えた装飾用等がある。使用する板ガラスは、原則としてJISに規定されるものの組合せであり、製品の種類は多岐にわたる。また、耐貫通性に優れた厚い中間膜を使用した合わせガラスは防犯合わせガラスとして製品化されているが、地震時や台風時の飛来物に対しても防災上の効果がある。
ガラスを強化炉で 650~700℃程度まで加熱したのち、両表面に空気を吹き付け急冷してガラス表面付近に強い圧縮応力層を形成し、耐風圧強度を約 3倍に高めたガラス。破損時の破片は、細粒状になるので鋭利な破片は生じにくい性質がある。強化型板ガラスは、型の凹凸度合いが少ないものに限られる。
熱処理後のガラスは、切断加工はできない。
用途は、枠のない強化ガラスドアや手すり等のほか、住宅や学校用の安全ガラス、点支持工法(DPG工法とも呼ばれる。)等がある。
強化ガラス内部では、表面の圧縮力と内部側の引張力がバランスを保っており、製造過程で混入した微細な異物に起因する傷や表面の傷が成長して、圧縮応力層内(ガラス厚の1/6)を超えて内部の引張応力層に達すると、応カバランスが崩れ外力が加わっていない状態でも不意に破損することがある。これを自然破綻と呼んでいる。
強化ガラスが破損するときには、一瞬にしてガラスの全面が細かい粒状の破片になるが、粒が離れずに塊となって脱落することがある。このように強化ガラスが破損し脱落して人にけがを負わせるおそれがある場合や、破損時に人が転落する危険性がある場合には、強化合わせガラス仕様にするとよい。
使用に際しては、板硝子協会「強化ガラス・倍強度ガラス使用手引書」等を参考にするとよい。
自然破損を防ぐための手段としこ、製造時にヒートソーク処理を実施することが有効であるが、破損をゼロにする技術は現在のところない。ヒートソーク処理とは、強化加工後に再加熱処理を実施し、強化ガラスに微細な不純物が含まれていた場合、強制的に破損させる方法てある。
破損時の破片は、フロート板ガラスの割れ方に近い形態である。用途は、一般窓ガラス用であるが、フロート板ガラスでは厚さが不足するような風圧力が大きく、かつ、開口面積が大きい部位に使用する。
倍強度ガラスは熱処理をしてしいるため、理論上製造過程で混入した微細な異物に起因する自然破損は起こり得る。通常、倍強度ガラスにはヒートユニクー処理は行わない。
使用に際しては、「強化ガラス・倍強度ガラス使用手引書」等を参考にするとよい。
一般に2枚のガラスをスペーサーで一定の間隔(一般に6又は12mm)に保ち、その周囲を封着材(一般にブチルゴム等)で密閉し、内部に乾燥空気(内部の圧力は外気圧に近い。)を満たしたガラスである。
なお、現在では、中空層側のガラス面に特殊金属をコーティングして断熱性及び日射遮蔽性を高めた製品であるLow-E複層ガラス(日射取得型:適度に日射熱を採り入れる寒冷地に適したタイプ、日射遮蔽型:室内への日射熱の侵入を低減する温暖地に適したタイプ)が多く使用されるようになった。また、それに併せて内部を真空にした真空ガラスや内部にガスを封入した製品もある。
使用するガラスは、原則としてJISに規定されるものの組合せであり、製品の種類は多岐にわたる。また、断熱効果が高く、冷暖房負荷の軽減効果と結露防止効果がある。
網入板ガラス以外で防火性能を有するガラスであり、低膨張防火ガラス、耐熱強化ガラス、耐熱結品化ガラスがある。
当項については、「標仕」には記載されていないが近年使用例が増えている。防火設備において、主構成材料として位置付けられており、また、品種によっては特定防火設備の認定実績を有するものもある。
品質については、(-社)カーテンウォール・防火開口部協会、板硝子協会及びガラスブロック工業会が定めた「耐熱板ガラス品質規格」がある。
耐熱板ガラスで耐熱強化ガラスは、熱処理をしているため、製造過程で混入した微細な異物に起因する自然破損は強化ガラス同様に起こり得る。製造時のヒートソーク処理、破損脱落時の安全性、はめ替え等のメンテナンス等を十分に考慮することが望ましい。
建具枠に板ガラスを固定させ、かつ、板ガラスの耐風圧性、建具としての気密性、水密性及び耐震性等が確保できるものをいう。
材料(工法、コストとも連動する。)は、次のものがあるが、各種性能はそれぞれ特長があるので、指定は特記による。
ただし、防火設備に使用する板ガラスの留め材は、建築基準法に基づく防火性能の認定を受けた材料に限定され、また、昭和46年建設省告示第109号では、「帳壁として窓にガラス入りのはめごろし戸(網入ガラス入りのものを除く。)を設ける場合にあっては、硬化性のシーリング材を使用しないこと。(ただし書きあり。)」としている。
JIS A 5758(建築用シーリング材)に規定されるタイプGが用いられるが、その適用等は9章7節を参照する。また、各種性能を確保するためには、シーリング材の充填幅(目地幅)に一定の制限がある。
JIS A 5756(建築用ガスケット)付属書JA(参考)[ 建築用ガスケットの種類 ]JA.2に規定されるグレイジングガスケット(Gl)には、図16.14.1に示すグレイジングチャンネル、グレイジングビートの2種類がある。
ガスケットの材質は、JIS A 5756 4.4[主成分による区分]表4に規定される5種類がある(表16.14.2参照)。
(iii) 構造ガスケットは「標仕」17章を参照する。
表16.14.2 ガスケットの主成分による区分(JIS A 5756 : 2013)
図16.14.1 グレイジングガスケットの例(JIS A 5756 : 2013)
材料は、クロロプレンゴム系、EPDM(エチレンプロピレンゴム)系、塩化ビニル系があり、ポリプロピレン製があり、一般に、厚さ6ミリ以上の比較的大きいガラスには、クロロプレンゴム系が、それより軽いガラスには、塩化ビニル系を使用することが多い。ポリプロピレン製は樹脂製建具のセッティングブロックとして使用される。
なお、ガラス留め材をシリコーン系シーリング材とし、セッテングブロックにクロロプレンゴム系又はEPDM(エチレンプロビレンゴム)系を使用する場合は、セッテングブロック材料の可塑剤により、シーリング材が変色する原因となるため、耐シリコーンタイプの材料が特記されるか、又はシーリング材とセッティングブロックとを接触させない工夫がされていることを確認することが必要である。
セッティングブロックの形状寸法は、通常、次式により定める。
さらに、合わせガラスの中間膜や複層ガラスの封着材等に悪影響を与えないようにするため、セッティングブロックの材質と他の有機材との適合性を確認することも必要である。
b:セッティングブロックの厚さ(cm)
16.14.3 ガラス溝の寸法,形状等
(a) ガラス溝の寸法、形状とは、図16.14.2に示す面クリアランス(a)、エッジクリアランス (b) と掛り代 (c) の寸法、形状を指し、「標仕」表16.14.1に必要な値が定められている。
一般に枠見込み 70及び100mmのアルミニウム製建具では、「標仕」表16.14.1の値を標準としている。これらの値は、「標仕」16.2.2(b)の外部に面するアルミニウム製建具の種別A、B及びC種に合致し、また、耐震性は、16.1.7(a)(6)よりRC造又はSRC造を想定したもの(層間変形角が1/300程度)である。したがって、層間変位が大きい場合は、「標仕」表16.14.1は、そのまま適用することができない場合がある。また、ガラスに種々の機能が追加されている場合は別途検討が必要である。
これらの寸法の意味は、次のとおりであるが、要求性能によって必要寸法が変わり、サッシ枠の見込み寸法に影響するため、指定は特記による。
なお、引違い戸、片引戸や上げ下げ戸等の障子では、枠見込み70mmのサッシにおいて、面クリアランスを5mm以上確保することが難しいので、「標仕」表16.14.1の(注)にあるように排水機構を設けて面クリアランスを3.5mm程度とする場合もある。
図16.14.2 ガラス溝の寸法
建具の気密性、水密性を確保するため、ガラス留め材の機能が十分に発揮できる寸法である。したがって、ガラス留め材の種類によって、当然変わる値である。例えば、ガラス留め材がシーリング材の場合は、シーリング材の確実な充填ができる値が、最小値となる。また、グレイジングガスケットの場合は、ガスケットの形状に合った値が必要になる。
建具の耐震性(層間変位追従性)を確保し、かつ、ガラスのはめ込みが無理なく行える寸法である。また、建具の下辺では、セッティングブロックの厚さを確保する寸法も必要となる。
耐震性により定まる値は、建具が受ける変形量により決まり、その変形量は建具の開閉形態によって異なる(16.1.7(a)(6)参照)。
ガラスのはめ込みにより定まる値は、建具のガラスはめ込み形式によって異なる。
エッジクリアランスの値は、四方押縁形式では、耐震性により定まる値で決まる。また、やり返しでガラスをはめ込む形式では、ガラスのはめ込みにより定まる値(やり返しができる寸法)で決まる。
建具の気密性、水密性を確保するため、ガラス留め材の機能が十分に発揮できかつ、ガラスの耐風圧性を確保する寸法である。また、ガラスの小口が屈折により室内から光って見えないことを条件とすることも検討しなければならない。
建具の気密性、水密性は、面クリアランスと同様ガラス留め材の種類によって、変わる値である。シーリング材の場合には、バックアップ材の寸法、形状も影響する。
ガラスの小口が見えるかどうかは、掛り代にガラス留め材のガラス溝よりの突出寸法を加えた値によるため、当然ガラス留め材の種類によって変わり、一般にグレイジングガスケットの場合が、シーリング材の場合より突出寸法が大きい。
複層ガラス、合わせガラス及び網(線)入板ガラスの小口部分は、次の理由により、長期に水と接触することを避けなければならない。
(i) 複層ガラスでは、2枚のガラスの間に使用されている封着材の接着性能が水分の影響を受け、低下するおそれがある。
(ii) 合わせガラスでは、2枚のガラスの間に使用されている特殊樹脂フィルムが水分の影響を受け、白濁したり、はく離したりするおそれがある。
(iii) 網(線)入板ガラスでは、ガラスの小口に突出する線材が水分の影響で発錆するおそれがある。
したがって、この条件に適合する建具では、万ーガラス回りのガラス留め材に不具合が生じ、建具のガラス溝内に雨水が浸入した場合、速やかに雨水を排出するため、建具の下枠に水抜き孔を設けることとしている。
水抜き孔の直径を6mm以上とするのは、雨水が流れ出る最小値である。また、水抜き孔から雨水が浸入しないようにすることが重要である。
水抜き孔を2箇所とするのは、建具の下枠が完全な水平とは限らないことを想定したものであり、また、セッティングブロックや枠内の突起物が雨水の排出をせき止めることが想定される場合は、セッティングブロック又は突起物の中間に 1箇所追加する。
16.14.4 工 法
(a) 板ガラスの切断、小口処理
大きな傾斜は、エッジクリアランスの確保に支際があり、また、切断面の大きな欠け等も熱割れ等の要因となるので、修正しなければならない。修正は、粗ずり( F120~200程度の湿式研磨)で行うのが一般的である。
(2) 板ガラスの端部が建具枠にのみ込まない納まりは、一般的ではないが、例えば、建物の出隈部で隅部に縦枠を設けず、ガラスを直交させ、ガラス間をシーリング材で連続させる場合や1階エントランスに設けるガラススクリーン工法〈ガラス方立工法、リブガラス工法〉の場合が該当する。
いずれの場合も、ガラス切断面が、シーリング材の接着面であったり、人の手に触れる部分となる。したがって、施工性や安全性から、小口加工が必要になる。仕上げの程度は、特記が必要である。シーリング材の接着面となる部分の仕上げの程度は、粗ずり( F120 ~ 200程度の湿式研磨)又はつや消し(同#300程度)が、また、人の手に触れる部分の仕上げ程度は、磨き( 同#500程度)が一般的である。
なお、後者の場合で、小口の形状を平面とするかかまぽこ状(丸み角)とする かは設計担当者と打ち合わせて決める。
なお、これらの例は、本来「標仕」の適用範囲外であり、いずれか一方のガラスは、片側縦辺のエッジクリアランスがない状態となる。また、面外力に対するガラスの支持状態も四辺単純支持ではない。更に、ガラス突付け部の気密性、水密性もシーリング材のみに期待する納まりである。したがって、十分な検討や実験を伴わないと、建具に要求される各種性能が確認できないので注意する。
(3) 網(線)入板ガラスでは、その小口が長期に水と接触すると発錆するおそれがある。16.14.3(b)のように水抜き孔を設けても、長期を想定すると湿気による発錆も考えられる。したがって、使用する場所に応じて防錆用テープ又はガラス用防錆塗料を施すなどの適切な防錆処理をする。
シーリング材の硬化には、ガス(2成分シリコーン系では、R2NOH)の発生を伴い、また、高温高湿下では硬化不良を引き起こすおそれがある。したがって、シーリング材充填部が密閉となるような養生を行ってはならない。
セッティングブロックをガラス溝内の所定の位置に配置したのち、面クリアランス、エッジクリアランス及び掛り代が適切になるように、面内・面外・両方向ともガラスを建具の中央に置く。次いで、シーリング材の充填深さが適切になるようにバックアップ材を挿入したのち、シーリング材を充填する。
② ガラスの内外溝のうち、一方のみをシーリング材を使用し、他方の溝はグレージングビードとする場合
先付けグレイジングビードとセッティングブロックをガラス溝内の所定の位置に配置したのち、エッジクリアランス及び掛り代が適切になるようにガラスを建具の中央に置く。次いで、反対側溝部について、シーリング材の充填深さが適切になるようにバックアップ材を挿入したのち、シーリング材を充填する。
(2) グレイジングガスケットを使用する場合
グレイジングチャンネルを巻き付けたガラスを分割したかまちにはめ込み、最後にかまちを組み直して完了となる。セッティングブロックは使用しない。
セッティングブロックをガラス溝内の所定の位置に配置したのち、面クリアランス、エッジクリアランス及び掛り代が適切になるように、面内・面外両方向ともガラスを建具の中央に置く。次いで、グレイジングビードを両面から、ガラスと枠との間に押し込み完了となる。継目は上辺中央で隙間が生じないようにする。
先付けグレイジングビードとセッティングブロックをガラス溝内の所定の位置に配置したのち、エッジクリアランス及び掛り代が適切になるようにガラスを建具の中央に置く。次いで、あと付けグレイジングビードをガラスと枠との間に押し込み完了となる。継目は上辺中央で隙間が生じないようにする。
なお、日射熱吸収の大きいガラスでは、養生材の張付けによって、ガラスが熱割れしないことを確認することが必要である。
また、清掃に当たっては、カッター、金属へら(スクレーパー)等の金属類を用いない。
16.14.5 ガラスブロック積み
(a) 壁部分に、壁用金属枠を用いて現場にて1個ずつ積む工法を対象とし、工場生産されるガラスブロックパネルは対象としていない。
(b) 材 料
なお、ガラスブロック(中空)の海外製品は、JISと寸法許容差等が異なるため、(-社)公共建築協会では「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」において、品質性能基準を定め評価しているので参考にするとよい。
(2) 壁用金属枠
壁用金属枠はSUS304又はアルミニウム合金等腐食しにくい材質とし、下枠の外部側に水抜き孔(径6mm以上、間隔 1.0~1.5m)を設けたものとする。図16.14.3にアルミニウム合金製の形状例を示す。
図16.14.3 アルミニウム合金製壁用金属枠の例
(3) 力 骨
一般には、図16.14.4に示すはしご状複筋又は単筋を使用する。50mm幅のタイプは縦筋として、35mm幅のタイプは横筋として使用する。材質はSUS304で径 5.5mmである。
なお、伸縮目地の横筋等には、同質、同径の丸鋼も使用する。
図16.14.4 力骨の例
開口部周囲(下枠を除く。)と中間縦目地(伸縮目地)に使用する弾力性、復元性、耐久性のある材料で、一般には合成ゴム発泡体で幅75mm、厚さは5及び10mmの2種類がある。通常はガラスブロック製造所の指定するものを使用する。
壁用金属枠の面内方向部分に張付け、充填モルタルと同枠間を滑らす目的の材科である。一般には厚さ1.2mm程度の塩化ビニル又はブチルゴム製の粘着層付きのテープで幅は25及び50mmの2種類がある。
カ骨を所定の位置とするため壁用金属枠に組み込む部品で、一般的には SUS304である。鋼製サッシや鋼製枠を使用する場合には、電食防止のために絶縁する必要がある。通常はガラスブロック製造所の指定するものを使用する。
壁用金属枠の下枠溝内に組み込み、ガラスブロック壁内に浸入した雨水を排水孔に導く機能をもつもので、一般的には塩化ビニル製である。通常はガラスブロック製造所の指定するものを使用する。図16.14.5に形状例を示す。
図16.14.5 水抜きプレートの形状例
(c) 工 法
ガラスブロック壁面の耐風圧性能が建築基準法(平成12年建設省告示第1458号)に適合した工法は特記される。
(i) 目地幅の標準寸法は、10mmである。8mm以下にすると.内蔵される力骨(φ5.5 mm)との接触や、モルタルの充填性が悪くなり望ましくない。逆に、15mmを超える幅では、目地モルタルの仕上げが悪くなり、また、目地モルタルのひび割れも発生しやすくなるので、標準寸法に設定するのがよい。
曲面に積む場合は、最小半径をガラスブロックの幅寸法の10倍以上にしないと、上記の目地幅範囲を確保できない。なお、目地幅は、原則として外側 15mm以下、内側6mm以上を確保する。
(ii) ガラスブロック壁面が大きくなると、開口周辺の緩衝材や滑り材だけでは、ガラスブロックの熱変形や地震時の躯体の変形に追従できなくなる。したがって、開口部の幅が 6mを超える場合には、6m以内ごとに 10~ 25mm幅の縦方向の伸縮目地を設ける必要がある。図16.14.6に伸縮目地の納まりを例示する。
図16.14.6 伸縮目地の納まりの例
(iii) 風圧を受けた場合の壁用金属枠の変形を押さえるため450mm以下の間隔で、壁用金属枠を躯体に固着し、モルタルを密実に充填する。
(iv) 力骨の設置間隔は、要求されるガラスブロック壁面への風圧力に対応した間隔であることが必要である。実験結果による力骨の設置間隔は、図16.14.7のようになっている。最大間隔(標準目地幅10mmの場合)は、縦横とも620mmである。
図16.14.7 風圧力の大きさと力骨の設置間隔(実験結果)
(v) ガラスブロック壁面の標準施工例を図16.14.8に示す。
図16.14.8 ガラスブロック壁面の標準施工例
参考文献
その他のCWの分類方法としては、次のようなものもある。
(ウ) 躯体とCWとの位置関係による分類
取付け形態による分類は、図17.1.1のように4タイプになる。
図17.1.1 取付け形態によるCWの分類
材料と取付け形態による分類を組み合わせると表17.1.1のようになる。
(2) CW工事に関する用語を、次に示す。
(ア) カーテンウォール(CW)
CWの設計は、デザインだけでなく、各種性能を満足するようバランスのとれたものが求められる。
(イ) 材料別での用語
(a) メタルカーテンウォール(以下、この章では「メタルCW」という。)主要構成部材に金属系材料を用いたCWである。
アルミニウム合金押出形材による方立方式が一般的である。このほか、アルミニウム合金押出形材や鋼材等の枠組みに表面材を工場で一体に取り付けた組立ユニット、アルミニウム合金押出形材を工場で一体に組み立てたユニットサッシ、アルミニウム合金を鋳造した部材等がある。
後者が、当然割高となるため、前者を多少変更して使うイージーオーダータイプもある。
(b) プレキャストコンクリートカーテンウォール(以下、この章では「PCCW」という。)
特徴としては、形状の自由度が高いことと石やタイル等の仕上げ材を先付け〈打込み〉できることである。
なお、PC版をPCa版と呼ぶこともある。その理由は、「PC」が(Precast Concrete)の略号であると同時に「プレストレストコンクリート(Prestressed Concrete :ストランドを緊張して圧縮応力を加えたコンクリート)」の略号でもあるので、混同を避けるためである。プレストレストコンクリートのプレキャストコンクリート部材をPC-PCa部材と略号で示すこともある。しかし、本指針では「標仕」と整合させ「PC」とした。
(ウ) 取付け形態別での用語
層間に渡る大型部材を、上下階の梁又はスラブ間(層間)に架け渡す方式。
腰壁部分と下がり壁部分を一体化した部材(主に梁を覆う部材)を、同一階の梁又はスラブに取り付ける方式。中間の開口部が横連窓となることが多い。
外観は、柱を覆う部材が連続する柱通し形と、梁を覆う部材が連続する梁通し形がある。
方立間に無目(横架材)を渡し、方立と無目に囲まれた部分に、ガラスや金属板等をはめ込む方式〈ノックダウン方式〉が一般的であるが、方立間に組立ユニットを取り付ける方式もある。
CW部材の取付けに使用する金物で、躯体付け金物、部材付け金物、連結用金物等の総称。CW部材の取付けの際に、躯体や製品の寸法誤差を吸収するためのルーズホールと、CW部材が層間変位等に追従するためのスライドホールが組み込まれる。また、CW部材の取付けの際に、上下方向を調整するためのボルト等の機構が組み込まれる。
地震や強風によって各階に生じる水平方向の変位において、当該階と上階若しくは下階との相対変位。層間変位の単位は、図17.1.2のように、分子を1とする分数表示によるラジアン角(層間変形角)で示すのが一般的である。層間変位量とは、層間変形角に層間高さを乗じた値となる。このほか、各階の階高が変化する鉛直相対変位もある。
なお、相対変位とは、ある部材を基準として測定した他の部材の変位である。
図17.1.2 層間変位のラジアン角による表示
(3) CWの仕事の流れは、一般的に次のようになる。
完成検査
デザインと性能設定の決定は、基本的に設計担当者が行うが、各部の納まりまで全て設計図書に記載するのは難しく、詳細設計において変更が起こり得る。
なお、詳細設計とは、設計図を基に、CW部材の製作上の要因、CWに隣接する部位との施工上の要因等を考慮し、かつ、要求性能を満たすように実施される設計行為である。
性能設定は、建物のグレードを考慮しながら、設定値が特記される。当然、高いグレードとすればコストアップするだけでなく、性能の実現のためにデザインの変更が必要になる。デザイン及びコストとのバランスも必要である。
詳細設計では、製作上及び施工上の種々の要因も考慮しなければならず、施工者及びCWの製造所との構報交換が必要になる。
(4) CW工事の工程管理
詳細設計は、多大な時間を要するため、検討を早めに開始する必要がある。詳細設計の開始が遅れたり、時間を費やし過ぎると、その後の施工図の作成工程やCW部材の製作工程が圧縮され、施工図の修正や検討ミス、コスト増を引き起こす。また、最悪の場合には、CW部材の製作が取付け工程に間に合わないことも起こり得る。したがって、詳細設計の承諾は、全体工程と十分に調整することが重要であり、取付け時期から製作工程等を逆算して期日を設定する必要がある。
詳細設計に多大な時間がかかる要因としては、次のようなことが挙げられる。
(a) CWの設計においては、デザインと要求性能がともすれば整合しないことがある。このような対立は、総合的な判断で解決する必要がある。
表17.1.2は、メタルCWの方立方式での、部材と性能の代表的な関連を例示したものである。例えば、方立や無目の見付け幅及び見込み幅は、デザイン上はできるだけ小さくしたいという要求がある一方、主に耐震性、耐風圧性からは、ある程度の幅が必要であるという不整合が起きる。また、PCCWでも、 PC版間及びPC版と他部材の取合いの目地幅は、デザインと耐震性(パネル長さが長い場合は耐温度性も考慮する)で調整が必要である。
外壁のデザイン決定、特に、CW部材の割付けが遅れると、躯体付け金物が、躯体鉄骨の製作工程に反映できないばかりでなく、コンクリートに埋め込まれる場合には、コンクリートの打ち分けが必要となるなど、全体工程にも影響を与えるおそれがある。
例えば、アルミニウム合金押出形材では、表面処理から着色工程まで連続工程となっているため、表面処理が着手できず、押出工程まで影響することもある。また、石やタイル打込みPC版では、石やタイルのでき上りが遅れると、 PC版が製作できない。
(d) CWの実大性能試験を行う場合は、試験体の製作、試験期間及び試験結果のフィードバックに数カ月を要するため、詳細設計の検討開始をより一層早めなくてはならない。
(5) CWの製造所の仕様
CWを設計、製作、施工するに当たっては、決定すべき事項が非常に多く、また、それらが製造所の製造方式等によって異なるため、一律に決めることができない。
また、設計担当者、監督職員、施工者が、全ての詳細を判断するのは難しい。このため「標仕」17.1.1 (2)では、設計図書に定める事項以外の仕様は、監督職員の承諾を受けて、各CWの製造所の仕様とすることができるとされている。JIS等の規定のない材料を使用する場合などは品質確認の観点から、材料に関する情報、性能証明、施工方法、保証及び管理体制の確認が必要となる。監督職員は、CWの製造所から提出される材料証明、製作要領書、試験結果等の資料を確認し、承諾を行う。
さらに、新しい技術を導入する場合には、「標仕」では規定しきれないことが予想される。この場合も製造所の仕様を参考にするとよい。
17.1.2 基本要求品質
(1) 「標仕」には、CWの種類に応じた材料が規定されている。メタルCWの主要材料は、素材のJISが指定されており、一般的に、JISに適合することの証明を CWの製造所から提出させる。PCCWの主要材料のうち、コンクリート材料は、 PCCWの製造所の標準調合でよいが、強度を日常的な品質管理賓料から確認する。鉄筋類は、JISが指定されており、一般的に、JISに適合することの証明をPCCWの製造所から提出させる。
材料のJISについては、2節以降の材料の項を参照されたい。
また、補助材料の中で具体的な品質を規定していないものがある。それらは、 CWの製造所が一般に使用しているものとしてよいが、材質等が確認できる資料又は実績を確認する。
CWは、多数の部材を取り付けるため、部材の精度は当然であるが、さらに、取付け精度が適切でないと、その性能を満足しない。「所定の形状及び寸法を有する」とは、取り付けた後の、CWとしてどの程度の精度を確保するかについて、あらかじめ「品質計画」において提案させ、これによってプロセスの管理を行うことと考えればよい。
CWの見え掛り部の「所要の仕上り状態」としては、取付け後の傷、汚れ、反り、へこみ、著しい色むら等の許容限度、これらの限度を超えた場合の処置方法も含めて「品質計画」で提案させるようにする。
(3) CWは、17.1.3に示す各種の性能が要求され、必要な性能値が設計図書に特記される。性能値には、次の項目がある。
風圧力の大きさ、耐火性能のレベル及び高さ31mを超える建物の層間変形角は、法令に定められた基準がある。高さ31m以下の層間変形角及びその他の性能は、建物のグレード等に応じて設計担当者により特記される。設計担当者が性能を決めるときの参考として、(-社)建築開口部協会「カーテンウォール性能基準」や (-社)日本建築学会「JASS 14 カーテンウォール工事」がある。
なお、性能確認のためにCWの実大性能試験を行う場合は、検討期間が長期に渡ること及び多領の経費を要するので、試験の実施の有無と試験内容等については、特記されなければならない。
試験内容についての参考としては、「カーテンウォール性能基準」がある。また、 CWの製造所のカタログに掲載されている標準品で性能が表示されているものについては、その性能が確認されている。
17.1.3 性 能
「標仕」17.1.3(3)では、CWの性能の確認方法等は特記によるとしている。しかし、製品としての性能を確認することは容易でないため、特記がなければ、一般的な建物の場合には、性能の確認及び判定方法が確認できる適切な資料を施工者に提供させ、これにより監督職員が承諾する。
なお、適切な費料としては、次のようなものがある。
(d) 使用する部材(サッシ等)の試験成績書等(ただし、この場合は、部分的な試験によって、CWとしての性能を判定することの妥当性についての検討が必要である。)
当該部分の風圧力(Pa N/m2)又は平成12年建設省告示第1454号に基づく基準風速及び地表面粗度区分が特記され、後者の場合は、平成12年建設省告示第1458号に定める算定式に基づき算定する。平成12年建設省告示第 1454号に規定されている地表面粗度区分については、令和2年12月に一部改正され、従前設けられていた都市計画区域内・外の区分が削除されている点に留意されたい(改正内容の施行は令和4年1月)。
なお、設計者は、特記で基準風速の割増しを行うこともある。
また、高さ60mを超える建物については、指定性能評価機関の性能評価を受けることになっている。このような建物では、(-社)日本建築学会「建築物荷重指針 同解説」6章[風荷重]を用いる場合もある。
平成12年建設省告示第1458号では、「高さ13m以下の建築物」、「高さ13mを超える建築物の高さ13m以下の部分で、高さ13mを超える部分の構造耐力上の影響を受けない部分及び1階の部分又はこれに類する屋外からの出入口(専ら避難に供するものを除く。)を有する階の部分」の屋外に面する帳壁は適用除外とされている。高さ13m以下のCW部材に作用する風圧力については、「建築物荷重指針・同解説」に定める計算式によるほか、(-社)日本サッシ協会又は板硝子協会の提案する計算方法(16.2.2 (1)及び16.14.2(2)参照)によって算定することができる。また、同告示に規定する計算式を、高さ13m以下にそのまま適用することも技術的には可能であり、「カーテンウォール性能基準」や「JASS 14 カーテンウォール工事」では、この高さの範囲でも同様に適用されている。
性能値に加え、CW部材の自重による長期荷重を考慮し、次のような設定を行う。
③ ガラスを除くCW部材の変形は、原則として、支点澗距離の1/150以下、絶対値20mm以下で、かつ、有害な変形及び残留変形がないこと。ただし、4.0mを超える材のたわみについては、たわみ量を20mmに限定せず支点間距離の 1/200程度を特記することが多い。アトリウム等で、支点間距離が長大になるものについては、別途検討が必要である。CW部材の変形を問題とするのは、CW部材に組み込まれるガラスの破損防止のためであり、ガラスの支持辺となる部材が、風圧によって面外に過度に変形することで、ガラスの発生応力が想定値より大きくなるのを防止するためである。したがって、変形量を必要以上に小さく設定することは、あまり意味をもたない。一般的に、メタルCWで問題となり、PCCWでは特殊なケースを除き問題にはならない。
CW実大性能試験又はJIS A 1515(建具の耐風圧性試験方法)による試験を行う場合を除き、CW部材の自重による長期荷重に風圧力を加え、主要部材の発生応力度及び変形量を構造計算によって求め、要求性能を確認する。性能確認の詳細については、(-社)日本建築学会「実務者のための建築物外装材耐風設計マニュアル」に掲げる構造計算書の内容も参考になる。
CW部材に作用する外力のうち、地震の作用による慣性力には、面外、面内、鉛直の3方向がある。
特記がない場合は、一般的に次の値を用いることが多い。
② 鉛直方向(鉛直力)に対する震度 :0.5
慣性力に対する要求性能について、「カーテンウォール性能基準」と「JASS14 カーテンウォール工事」ではいずれも、水平方向及び鉛直方向の慣性力に対し、各部材はほとんど補修の必要なしに継続使用に耐えうるものとし、初期性能を損なわない損傷限界に留まるものとしている。
性能値に加え、CW部材の自重による長期荷重を考慮して、次のような設定を行う。
③ ガラスを除くCW部材は、有害な変形及び残留変形がないこと。
CW部材の自重による長期荷重に慣性力を加え、主要部材の発生応力度及び変形量を構造計算によって求め、要求性能を確認する。一般的なCW実大性能試験等では、慣性力に対する性能確認は困難である。
建物の変形は、中高層建物では、通常地震による変形が卓越するが、超高層建物では、風圧力による変形が問題になることもある。
性能値は、建物剛性によって決まるため、次の2段階の要求性能に対する変形角(1/X)が特記されるのが一般的である。
② CW部材は、破損・脱落しない。特に、ガラス等が破損・脱落しないことが不可欠である。
中層建物での一般的な層間変位の値は、16.1.7(1)(カ) を参照するとよい。
また、高さ31mを超える建物の帳壁は、昭和46年建設省告示第109号(最終改正令和2年12月7日)により、1/150の層間変位に対して脱落しないことと規定されているので、条件に当てはまる場合はこれに従う。
ただし、中層建物でも、純鉄骨造で剛性の比較的小さい建物や、偏心している建物で、面により層間変形角が異なる場合等、建物構造の地震時の変形に対応して、鉄骨造に対しては1/150 〜 1/120、剛性の高いものに関しては1/200程度を目標とすることが多い。
なお、一般的な性能値の参考としては、「カーテンウォール性能基準」や「JASS 14 カーテンウォール工事」がある。
一般的に、CW部材の取付けは、次のようにすることが多い(図17.1.1参照)。
① 層間方式で、面内剛性の高いCW部材(PC版等)では、一般に回転方式〈ロッキング方式〉、水平移動方式〈スウェイ方式又はスライド方式〉及び半水平移動・半回転方式〈ハーフロッキング方式〉のいずれかの方式で構造躯体へ取り付け、層間変位に追従させる。
方式の選択は、CW部材の形状(縦長部材か横長部材か等)、割付け(開口部の割付け等)、層間変位の性能値等によって決まるため、一概には選択できないが、できるだけ回転方式とすることが望ましい。
② 層間方式で、面内剛性の低いサッシ(ユニットサッシを含む。)では、サッシ枠を平行四辺形に変形させて層間変位に追従させる。
③ スパンドレル方式では、腰部分のCW部材は、梁・スラブと一緒に挙動するため、層間変位とは直接かかわらないが、腰部分のCW部材間に取り付けられるサッシ等(開口部のCW部材(横連窓))には、層間変位が集中することに注意が必要である。
④ 方立方式は、一端一点支点と考え、実質的に回転方式と類似した取付けとなる。
CW実大性能試験を行う場合を除き、層間変位が生じた状態でのCW主要部材の動きを計算によって求め、要求性能を確認する。
(c)①の場合では、CW部材に過度の応力が生じず、目地に充填されるシーリング材が設計伸縮率・せん断変形率範囲内にあることを計算により求め、確認する。これらの計算方法は、(-社)日本建築学会「外壁接合部の水密設計および施工に関する技術指針・同解説」を参考にするとよい。
(c)②の場合では、サッシのガラス溝底とガラスの小口が接触して、ガラスが破損しないことなどを計算により求め、確認する(16.1.7 (1)(キ) 参照)。
また、CW主要部材の動きにより、部材どうしがぶつかったり、目地に充填されるシーリング材が過度に圧縮されることがないことを確認する。
従来、わが国ではあまり設定していない条件であり、一般的な性能値がないのが現状である。長スパン梁や片持梁にCW部材が取り付く場合では、地震時の梁のたわみや梁の長期クリープによって、局部的に層間距離(鉛直距離)が変化(鉛直相対変位)することも想定される。
米国では、積載荷重による梁のたわみや、柱の温度変化による鉛直相対変位に対する追従性が要求されているようである。参考としてその内容を(b)から(d)に示す。
性能値は、梁の剛性等によって決まるため、変形最(mm)が指定されるのが一般的である。
CW部材がほとんど補修なしに継続使用できること。
一般的に、鉛直相対変位が生じた状態でのCW主要部材の動きを計算によって求め、(3)(ア) と同様の事項を確認する。
CW部材は、外気温や日射熱の影響によって伸縮する。特に、熱伸縮量の大きいメタルCW部材が顕著である。CW部材の取付け部は、熱伸縮に対しスライドできるようにし、熱伸縮品をCW部材問の目地で吸収するのが一般的である。
目地にシーリング材を充填する場合は、熱伸縮によってシーリング材が、圧縮・引張・せん断変形するので、シーリング材の設計伸縮率・せん断変形率を考慮した目地幅が必要となる。
性能値は、「外壁接合部の水密設計および施工に関する技術指針・同解説」による、温度ムープメントの符定式より求めた熱伸縮量が特記されるのが一般的である。9章7節を参考にするとよい。
② CW部材間の目地に充填される水密性確保のためのシーリング材に、損傷が発生しないこと。
一般的に、CW主要部材の動きを計算によって求め、要求性能を確認する。シーリング材の設計伸縮率.せん断変形率に関しては、9章7節を参考にするとよい。
フィルドジョイント構法については、確実なシール施工ができる納まりとすること、(2) 耐力性及び(3) 変位追従性の変形によって、シーリング材に損傷が生じないような目地幅とすること、また、シーリング材に損傷が生じても、実害のある漏水とならないようにする工夫(例えば、二重シーリング工法や排水機構の採用)が重要である。
表17.1.3 水密性能(カーテンウォール性能基準)
性能圧力差(上限圧力差又は平均圧力差)においてCWから漏水しないこと。
CW実大性能試験や、JIS A 1517(建具の水密性試験方法)に類する試験(海外で実施されているプロペラで風を当てる試験も含める。)以外では、性能の確認は困難である。したがって、過去に実施された類似の断面を有するCW又はサッシの実大性能試験の結果を参考にして確認する。
不定形材料(主にシーリング材)が充填されている目地は、不定形材料が確実に接着していれば、通気しない。したがって、ここでいう「気密性」とは、定形材料で気密性を確保している部位(主に可動サッシや等圧工法等)に限定される。
気密性は、水密性と同様に、建物条件によっても異なるため、性能値は、圧力差10Paに対する単位壁面積、単位時間当たりの通気量(m3/m2h、JIS A 4706では等級)が、特記されるのが一般的である。
なお、一般的な性能値の参考としては、JIS A 4706や表17.1.4に示す「カーテンウォール性能基準」がある。一般的に、中高層建物では2グレード(JIS等級A-4)、超高層建物では3グレード(0.5等級)が目安である(図17.1.3参照)。
表17.1.4 可動サッシ部の気密性能(カーテンウォール性能基準)
図17.1.3 気密等級線
本試験方法では通常の床に求められる非損傷性能については対象外とし、層間ふさぎに床としての性能を付与させる場合には載荷加熱試験により非損傷性能についても確認する必要がある。