16章 建具工事 11節 重量シャッター

16章 建具工事

11節 重量シャッター

16.11.1 適用範囲

(a) この節では、主として建築物の屋内・外に使用する重量シャッターを対象としている。

(b) 重量シャッターのうち、防火シャッター及び防煙シャッターでは、「標仕」に定められている以外の事項は、JIS A 4705(重量シャッター構成部材)による。

(c) 外部に取り付けるシャッターは、耐風圧性に対する安全性を計算書等により確認する。

(d) 用語は、JIS A 4705の参考付図による(16.11.5(c)参照)。

16.11.2 形式及び機構

(a) 防火シャッターの大きさの制限は、一般的にはJIS A 4705による。また、防煙シャッターの内法幅は、昭和48年建設省告示第2564号で5m以下となっている。

ただし、平成10年の建築基準法改正に伴う性能規定化により、内法幅 5mを超える防煙シャッターも大臣認定によって認められることとなった。

(b) 新しい防火設備として、耐火クロス製防火/防煙スクリーンが、屋内用防火シャッターに代わって使用されることが多くなっている。これは、カーテン部を耐火クロスで構成した大臣認定品の防火設備又は特定防火設備である。鋼製シャッターに比べて軽量ではあるが、カーテン部の強度が劣るため、設置場所、用途等には注意が必要である。(-社)日本シャッター・ドア協会が作成した同製品の技術標準があるので、使用する場合には参考にするとよい。

(c) シャッター類は、平成12年建設省告示第1458号において適用除外となっている部位に設置される場合が多いため、(-社)日本シャッター・ドア協会では、実績に基づき旧建築基準法施行令第87条に規定されていた計算式を採用した「シャッター・オーバーヘッドドア耐風圧強度計算基準」を使用している。

(d) 防煙シャッターのまぐさには、一般にシャッターが閉じた時、漏煙を抑制する遮煙装置を付ける。その例を図16.11.1に示す。


図16.11.1 まぐさ部の遮煙装置の例

(e) 開閉操作方法を大別すれば、表16.11.1及び図16.11.2のようになる。

上部電動式の手動時の操作は、鎖による巻上げ(クラッチ付き)又はハンドルによる巻上げがある。クラッチ付きとは、鎖をプーリーからはずさずに、電動作動させても鎖が巻き込まない装置である。

表16.11.1 重量シャッターの開閉操作方法の種類

図16.11.2 開閉操作方式

(f) リミットスイッチ、保護スイッチ

(1) リミットスイッチとは、シャッターが全開した場合又は全閉した場合に作動し、シャッターを停止させるスイッチである。

(2) 保護スイッチとは、リミットスイッチが故障した場合に作動し、シャッターを停止させるスイッチである。

なお、まぐさに取り付ける場合や二重リミットスイッチにする場合がある。まぐさに取り付けた例を図16.11.3に示す。


図16.11.3 まぐさに取り付けた保護スイッチの例

(g) スラットの不測の事故による急激な落下を防止する装置には、二重チェーン、急降下制動装置、急降下停止装置等がある。

なお、二重チェーンとは複列チェーン方式のことをいう。

(h) 障害物感知装置

(1) 人がシャッターに挟まれた場合、重大な障害を受けないようにする装置である。シャッターの降下時に、シャッターのほぼ開閉ライン内に障害となるものがあると、これを感知してシャッターを停止又は一旦停止後直ちに反転上昇させる装置で、大別して次の2種類がある。

(i) 接触型

座板等に感知部を設け、障害物に直接接触して停止又は停止後直ちに反転上昇するもの。

(ii) 非接触型

蹄害物にシャッターが接触しないで障害物を感知して停止するもの(光電センサー等)。

(2) 「標仕」では、電動式で日常使用される管理用シャッター及び一斉操作や遠隔操作等見えない場所から操作するシャッターには障害物感知装置を設けることとしている。

(i) 危害防止装置

(1) 煙感知器の非火災報により降下した防火シャッターに人が挟まれる事故が発生したために追加された機構で、建築基準法施行令第112条第14項第一号の改正により、平成17年12月1日から防火設備に設置が義務付けられた。「防火区画に用いる防火設備等の構造方法を定める件」(昭和48年12月28日 建設省告示第2563号、最終改正 平成17年12月1日 同土交通省告示第1392号)に基準が定められている(16.1.3 (d)参照)。これらにより、従米の二段降下方式は不適合となった。また、手動閉鎖装置により降下させた場合にも、危害防止装置が作動する構造とされた。

「標仕」16.11.2(d)(4)では、危害防止機構の条件として、(i)、かつ、(ii)とされているが、(ii)は法的根拠を明記したもので、現在は法に適合した装置は、(i) の障害物感知装置のみとなっている。

(2) 障害物感知装置(自動閉鎖形)

接触形の障害物感知装置で危害防止を図る方式。障害物が取り除かれたのちにシャッターが再降下して完全に閉鎖し、防火又は防煙シャッターの機能が果たされる。

(j) スラットの形状

(1) インターロッキング形のスラットを図16.11.4に示す。


図16.11.4 インターロッキング形スラット

(2) オーバーラッピング形(防煙シャッター)のスラットを図16.11.5に示す。

図16.11.5 オーバーラッピング形スラット

(k) 耐風圧性を高めるスラットのはずれ止め機構の例を図16.11.6に示す。製造所は、要求される耐風圧性能によりはずれ止め機構の例を設けている。一般に、耐風フックの数や強度により耐風圧性能を高めている。


図16.11.6 はずれ止め機構の例

(l) 重量シャッターについては、「標仕」で要求する品質を満たすものとして、(-社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4(e)参照)で評価した製品があるので参考にするとよい。

16.11.3 材 料

(a) 重量シャッターに使用する鋼板は、JIS G 3302(溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯)又はJIS G 3312(塗装溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯)に基づき、鋼板の種類及びめっきの付着量は特記によるとされている。ただし、めっきの付着量は、特記がない場合、Z12又はF12を満足するものとされている。

一般的には、鋼板はJIS G 3302が使用されている。

(b) 主にまぐさ部の遮煙装置に使用する「遮煙材」は、JIS A 4705に示されており、スチール、クロロプレンゴム、ガラスクロス等がある。

16.11.4 形状及び仕上げ

(a) 「標仕」表16.11.2における「実厚表示」は特定防火設備(旧甲種防火戸)を想定しており、設計図書により防火シャッターを指定された場合、スラット等の鋼板の厚さは、平成12年建設省告示第1369号第1第四号により1.5mm以上としなければならない。

一般に製作所では、表示厚さ1.6mmで厚さの許容差の範囲を含めた実厚内で1.5 mm以上となる鋼板を使用している。

なお、防火性能を要しないステンレスのカバー等は、「標仕」表16.11.2の厚さを表示厚さとしてよい。

(b) 外部に取り付ける場合は、耐風圧性の強度計算によりスラットの厚さが1.6mmを超えるものを使用しなければならない場合もある。

16.11.5 工 法

(a) スラット相互のずれ止めは、スラット端部を折曲げ加工するか又は端金物を付ける。その例を図16.11.7に示す。


図16.11.7 スラット相互のずれ止めの例(JIS A 4705 : 2003)

(b) シャッターの室内側に近接して開き戸を設ける場合は、図16.11.8のような取合いに注意が必要である。


図16.11.8 シャッターと室内側の開き戸との関係

(c) JIS A 4705(重量シャッター構成部材)の抜粋を次に示す。

JIS A 4705 : 2003

1.適用範囲

この規格は、建築物及び工作物に使用するスラットの板厚が1.2mm以上でスラットに貫通部のない、内のり幅8.0m以下、内のり高さ4.0m以下の重量シャッター構成部材(1)(以下、(構成部材という。)について規定する。ただし、横引き又は水平引きのものには適用しない。

注(1) まだ組み立てていない状態のもの。なお、組み立てた重量シャッターを以下、シャッターという。

3. 構成部材の名称

構成部材の名称は、次による(付図4参照)。

付図4 構成部材の名称(一例)

4. 種 類

4.1 シャッターの種類
シャッターの種類は、表1による。
表1 シャッターの種類

4.2 構造による区分

構造による区分は、表2による。

表2 構造による区分

5. 品質及び機能

5.1 外 観

外観は、次による。

a) シャッターの外観は、使用上有害な曲がり又はさびなどの欠点があってはならない。

b) 防火シャッター及び防煙シャッターは、防火上有害な穴及びすき間があってはならない。

c) 防火シャッター及び防煙シャッターで座板にアルミニウムを使用する場合には、鋼板で覆う。

5.2 スラット曲げ強さ

外壁開口部に設置する重量シャッターのスラットは、次の規定に適合しなければならない。

なお、外壁開口部に設置する重量シャッターの耐風圧強度は、受渡当事者間の協議による。

a) 11.3に規定する試験を行い、レールからの脱落があってはならない。また、残留わたみ量は、スラット長さの1/200以下で、かつ使用上有害な変形が残ってはならない。 (11.3省略)

b) 載荷荷重は500N/m2以上とする。

5.3 巻取りシャフト

巻取りシャフトは、シャッターカーテンの荷重に耐える強度をもち、スラットを円滑に巻き取るものでなければならない。

5.4 軸受部

軸受部は、巻取りシャフト、シャッターカーテンの荷重に十分耐え、かつ、円滑な回転を保持するものでなければならない。

5.5 手動閉鎖装置

防火シャッター及び防煙シャッターに使用する手動閉鎖装置は、11.4h)によって試験を行い、シャッターが任意の位置で停止し、更に、確実に全閉できなければならない。(11.4h)省略)

5.6 連動閉鎖機構

防火シャッター及び防煙シャッターに使用する連動閉鎖機構は、11.4のi)、 j)によって試験を行い、シャッターが確実に全閉しなければならない。その自重降下における平均速度は、表3による。(11.4i及びj)省略)

表3 平均速度

5.7 温度ヒューズ装置

防火シャッターに使用する温度ヒューズ装置は、表4による。

表4 温度ヒューズ

5.8 障害物感知装置の種類

障害物感知装置の種類は、表5による。

表5 障害物感知装置の種類

5.9 シャッターの性能

5.9.1 遮炎性能
防火シャッター及び防煙シャッターは、1時間又は20分の遮炎性能をもつものとする。

5.9.2 遮煙性能
防煙シャッターは、11.1によって試験を行い、圧力差19.6Paのときの通気量が0.2m3/min・m2以下でなければならない。(11.1省略)

5.9.3 電動式シャッターの開閉機能
電動式シャッターの開閉機能は、11.4a)によって試験を行い、次の規定に適合しなければならない。(11.4a)省略)

a) シャッターの開閉は、円滑に作動する。

b) シャッターの開閉時の平均速度は、表3による。

c) シャッターの開閉の際、上限及び下限において自動的に停止する。

d) シャッターは、降下中に任意の位置で確実に停止できる。

e) 障害物感知装置付きのシャッターは、押しボタンスイッチなどの信号による降下中には、障害物感知装置が作動した際に、自動的に停止するか、又はいったん停止した後に反転上昇して停止する。

f) 障害物感知装置が障害物を感知するために要する力は、11.4e)によって試験を行い200N以下である。(11.4e)省略)

g) 障害物感知装置付きシャッターは11.4f)によって試験を行い、荷重計に伝わる荷重が 1.4kN以下である。ただし、衝撃荷重は除く。(11. 4f)省略)

h) 障害物感知装置(一般型)が作動した状態のままで停止した場合には、押しボタンスイッチなどによる再降下の信号を受けてもシャッターは降下してはならない。

i) 障害物感知装置(一般型)が作動したままの状態で停止した場合には、押しボタンスイッチなどによる開信号を受けたとき、シャッターは開動作する。

j) 障害物感知装置(一般型)が作動し、シャッターがいったん停止した後に反転上昇して停止した場合には、押しボタンスイッチなどによる再降下の信号を受けて閉動作したとき、障害物感知装置(一般型)は作動する。

k) 煙又は熱感知器連動機構による降下中には、障害物感知装置(一般型)が作動しても、シャッターは停止しない。

l) 煙又は熱感知器連動機構による降下中には、障害物感知装置(自動閉鎖型)が作動した際に、シャッターは自動的に停止する。

m) 煙又は熱感知器連動機構による降下中に障害物感知装置(自動閉鎖型)が作動し、自動的に停止した後、障害物除去後再降下する。

5.9.4 手動式シャッターの開閉機能

手動式シャッターの開閉機能は、11.4g)によって試験を行い、次の規定に適合しなければならない。(11.4g)省略)

a) シャッターの開閉は、円滑に作動する。

b) 開閉機のハンドル回転に要する力は80N以下、鎖などによる引き下げに要する力は 150N以下である。

c) シャッター自重降下時の平均速度は、表3による。

d) シャッターは、降下中に任意の位置で確実に停止できる。

e) 煙又は熱感知器連動機構による降下中には、障害物感知装置(自動閉鎖型)が作動した際に、シャッターは自動的に停止する。

f) 煙又は熱感知器連動機構による降下中に障害物感知装置(自動閉鎖型)が作動し、自動的に停止した後、障害物除去後再降下する。

6. 構 造

6.1 スラット

スラットのつづり方はインターロッキング形又はオーバーラッピング形とする(付図5参照)。(図16.11.4及び5参照)

スラット相互のずれ止めは、スラット端部を折り曲げ加工するか、又は端金物を付ける(付図6参照)。(図16.11.7参照)

6.2 軸受部
軸受部のアンカーボルトの断面積は、表6による。

表6 断面積

6.3 ガイドレール及びまぐさ

ガイドレール及びまぐさは、次による。

a) ガイドレールとスラットのかみ合わせ長さは、表7による。

表7 かみ合わせ長さ

b) 防煙シャッターのまぐさの遮煙機構は、シャッターが閉鎖したとき、漏煙を抑制する構造で、その材料は不燃材料、準不燃材料、又は難燃材料とする。

c) ガイドレール及びまぐさのアンカーボルト、又は棒銅の収付けは現場施工とし、その固定ピッチは600mm以下とする。

d) ガイドレールのアンカーボルト又は棒鋼の断面積は、0.63cm2以上とする。ただし、一般重量シャッター又は構造区分におけるB種では、0.5cm2以上とする。

6.4 ケース

防火シャッター及ぴ防煙シャッターに使用するケースは、スラットの巻き込み口及び建物の耐火構造のはり、壁、又は床などに防火上有効に覆われる部分を除いてその全周を鋼板で囲むものとする。

JIS A 4705 : 2003

16章 建具工事 12節 軽量シャッター

16章 建具工事

12節 軽量シャッター

16.12.1 適用範囲

(a) この節では主として建築物の屋内・外に使用するスラットの板厚が1.0mm以下で、スプリング式及び電動式の鋼製の軽量シャッターを対象としている。

(b) 軽量シャッターは、一般にスラットの厚さが 0.5、0.6、0.8、1.0mmのものがある。「標仕」表16.12.2では、0.5mmとしているが、強度上必要な場合には板厚を増すこと、防火設備の場合には実厚で 0.8mm以上とすることとされている。

(c) (b)以外については、11節を参照する。

16.12.2 形式及び機構

(a) 手動式の場合、スプリングによるバランス式であるため、電動式よりも開口寸法が制約されるので注意が必要である。

(b) シャッター類は、平成12年建設省告示第1458号において適用除外となっている部位に設置される場合が多いが、この場合の風圧力については、16.11.2(c)を参照されたい。

(c) 手動式で開口幅が大きく、中柱を設けなければならない場合、中柱の風圧力に対する安全性に注意する。

(d) 電動式の場合の保護スイッチ及び障害物感知装置については、16.11.2(f)及び(h)を参照する。

(e) 軽量シャッターについては、「標仕」で要求する品質を満たすものとして、 (-社)公共建築協会の「建築材医療・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4 (e)参照)で評価した製品があるので参考にするとよい。

16.12.3 材 料

軽量シャッターに使用するスラットの材質は、JIS G 3312(塗装溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯)又はJIS G 3322(塗装溶融55%アルミニウムー亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯)により、めっきの付着量は特記によるとされている。ただし、めっきの付着量は、特記がない場合、JIS G 3312はZ06又はF06、JIS G 3322はAZ90を満足するものとされている。

一般的には、スラットの材質はJIS G 3312が使用されている。

16.12.4 形状及び仕上げ

軽量シャッターを防火設備(旧乙種防火戸)とする場合は、平成12年建設省告示第1360号第1第二号イに実厚0.8mm以上と規定されている。

16.12.5 工 法

(a) 電動シャッターを他に出入口のない建物(車庫等)に取り付ける場合、シャッター本体を建物屋内に納めるとシャッターが全閉したまま故障した際、屋外から手動で開放できなくなるので、本体を屋外側に納めるか又はくぐり戸を設けるなどの注意が必要である。

(b) JIS A 4704 (軽量シャッター構成部材)の抜粋を次に示す。

JIS A 4704 : 2003

1. 適用範囲

この規格は、建築物及び工作物に使用するスラットの板厚 が1.0mm以下で、スプリング式及び電動式の鋼製の軽量シャッター構成部材(1)(以下、構成部材という。)について規定する。

注(1) まだ組み立てていない状態のもの。
なお、組み立てた軽量シャッターを、以下、シャッターという。

4. 種 類

シャッターの種類は.表1による。

表1 シャッターの種類


5. 品質及び機能

5.1 外 観

シャッターの外観は、使用上有害なねじれ、曲がり、さびなどの欠点があってはならない。

5.2 曲げ強さ

スラット、中柱及ぴ上げ落としの曲げ強さは、次による。
なお、外壁開口部に設置するシャッターの耐風圧強度は、受渡当事者間の協議による。
a) スラットは、11.1に規定する方法で曲げ試験を行い、レールからの脱落があってはならない。また、残留たわみ量は、スラット長さの1/200以下で、かつ、使用上有害な変形が残ってはならない。(11.1省略)

b) 中柱は、11.2に規定する方法で曲げ試験を行い、支持台からの脱洛があってはならない。また、残留たわみ量は、中柱長さの1/200以下で、かつ、使用上有忠な変形があってはならない。(11.2省略)

c)上げ落としは、11.3に規定する方法で曲げ試験を行い、使用上有忠な変形が残ってはならない。(11.3省略)

d) 載荷荷重は、500N/m2以上とする。

5.3 開閉機能

5.3.1 スプリング式

スプリング式は、11.4.1に規定する方法によって開閉試験を行い、表2の規定に適合しなければならない。(11.4.1省略)

表2 開閉力

5.3.2 電動式

電動式は、11.4.2に規定する方法によって開閉試験を行い、次の規定に適合しなければならない。(11.4.2省略)

a) 定格電圧による開閉
1) 開閉は、円滑に作動する。
2) 開閉時の平均速度は、毎分 3〜7mとする。
3) 開閉中に、任意の位置で確実に停止できる。
4) 開閉の際、上限及び下限において、自動的に停止する。
5) 開閉中、押しボタンスイッチを逆方向に操作しても、逆方向に作動しない。
6) 温度過昇防止器の作動によって、自動的に電源が遮断する。
7) 障害物感知装置(一般型)付きのシャッターは、押しボタンスイッチなどの信号による降下中、障害物感知装置が(一般型)作動した際に自動的に停止するか、又は停止後反転上昇して停止する。
8) 障害物感知装置(一般型)が障害物を感知するために要する力は、11.4.2 a)10) に規定する方法で試験を行い、200N以下とする。(11.4.2 a) 10)省略)
9) 障害物感知装置(一般型)付きのシャッターは、11.4.2 a) 11)に規定する方法で試験を行い、荷重計に伝わる荷重が1.4kN以下である。ただし、衝撃荷重は除く。 (11.4.2 a) 11)省略)
10) 障害物感知装置(一般型)が作動したままの状態でシャッターが停止している場合には、押しボタンスイッチなどによる再降下の信号を受けても、シャッターは降下しない。
11) 障害物感知装置(一般型)が作動したままの状態でシャッターが停止している場合には、押しボタンスイッチなどによる上昇の信号を受けたときシャッターは上昇する。
12) 障害物感知装置(一般型)が作動し、シャッターが反転上昇して障害物感知装置(一般型)の作動が解除した状態で停止した場合には、押しボタンスイッチなどによる再降下の信号を受けてシャッターが降下したとき、再度障害物感知装置(一般型)が作動する。

b) 電圧変動による開閉
1) 支障なく、円滑に作動する。
2) シャッターの位置に関係なく始動する。

c) 電源遮断時の開閉
手動によって、開閉できる。

6. 構 造

6.1 スラットのつづり方

インターロッキング形又はオーバーラッピング形とする(付図4参照)。スラット相互のずれ止めは、スラット端部を折り曲げ加工するか又は端金物を付ける(付図5参照)。(付図4及び5省略)

6.2 ガイドレール
ガイドレールは次による。
a) スラットとガイドレール(中柱)とのかみ合わせはスラットをどちらかに寄せたときにも、他端の有効かみ合わせの長さが20mm以上(端金物がある場合には、端金物の寸法を含む。)になるようにする。
b) 中柱を取り付けたとき、中柱が回転又はねじれを生じない構造とする。
c) 上げ落としは、中柱に堅ろうに収り付ける。

6.3 電装品
電動式のシャッターにおける電装品(電動開閉l機を除く。)は、関係法規に適合する。
参考 関係法規には、電気用品安全法に基づく、電気用品の技術上の基準を定める省令がある。

6.4 障害物感知装置(一般型)
電動式のシャッターに使用する障害物感知装置(一般型)の構造は.次による。
a) シャッターの電動降下中に障害物を感知し、シャッターを自動的に停止できるものとする。

7. 寸 法
7.1 シャッターの内のり幅及び内のり高さ
シャッターの内のり幅及び内のり高さは、付図6による。


シャッターの内法幅


付図6 シャッターの内のり幅、内法高さ

16章 建具工事 13節 オーバーヘッドドア

16章 建具工事

13節 オーバーヘッドドア

16.13.1 適用範囲

この節では、主として建築物の屋外に面して設置する標準的なオーバーヘッドドアを対象としている。

16.13.2 形式及び機構

(a) セクション材料の種類を表16.13.1に示す。「標仕」では特記がなければ、スチールタイプとしている。

なお、その他アルミニウムタイプとファイバーグラスタイプのセクション材を組み合わせたコンビネーションタイプもある。


表16.13.1 セクション材料による区分(JIS A 4715 : 2008)

(b) オーバーヘッドドアは、平成12年建設省告示第1458号において適用除外となっている部位に設置される場合が多い。したがって、耐風圧性能は、一般にJIS A 4715(オーバーヘッドドア構成部材)による強さの区分により特記される。強さによる区分を超える風圧力の場合は16.1.7(a)(1)を参照されたい。

なお、平成12年建設省告示第1458号において適用除外となっている部位に対する風圧力について、(-社) 日本シャッター・ドア協会では、「シャッター・オーバーヘッドドア耐風圧強度計算基準」を使用している。

(c) 開閉方式による区分を表16.13.2に示す。「標仕」では、特記がなければ、バランス式としている。

なお、開口高さが 4mを超えると、バランス式では手動での操作が困難になるのでチェーン式が望ましい。

表16.13.2 開閉方式による区分(JIS A 4715 : 2008)

(d) 収納形式による区分を表16.13.3及び図16.13.1に示す。「標仕」では適用を特記としている。

表16.13.3 収納方式による区分(JIS A 4715 : 2008)


図16.13.1 収納方式による区分(JIS A 4715 : 2008)

(e) 「標仕」では、電動式の場合では16.11.2(h)と同様に、見えない場所から操作するオーバーヘッドドアには、障害物感知装置を設けることとしている。

なお、電動式オーバーヘッドドアは、シャッターより降下速度が速いので、障害物に直接接触する前に停止する光電センサー等を用いた非接触形障害物感知装置とするのが望ましい。

(f) 一般的な各部の名称を図16.13.2に示す。


図16.13.2 各部の名称(JIS A 4715 : 2008)

(g) 開口の幅と高さ

セクション材料及び収納形式により開口の最大幅と最大高さは異なる。「標仕」で想定している数値を表16.13.4及び5に示す。表16.13.4に示すセクション材料別の最大開口幅での耐風圧性は、750Paである。したがって、要求される耐風圧性が大きくなれば、最大開口幅が表16.13.4より小さくなる。

表16.13.4 セクション材料による最大開口幅

表16.13.5 収納形式による最大開口高さ

(h) オーバーヘッドドアについては、「標仕」で要求する品質を満たすものとして、(-社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4 (e)参照)で評価した製品があるので参考にするとよい。

16.13.3 材 料

(a) セクション材料による区分は、特記がなければスチールタイプとされている。この場合の鋼板は、JIS A 4715に規定されているJIS G 3302 (溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯)又はJIS G 3312(塗装溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯)とされており、めっき付着量は、一般的にZ06又はF06を満足するものが使用されている。

(b) セクションに使用するアルミ板は、JIS H 4001(アルミニウム及びアルミニウム合金の焼付け塗装板及び条)とされている。

(c) セクションに使用するアルミニウム形材は、JIS H 4100(アルミニウム及びアルミニウム合金の押出形材)とされている。

(d) セクションに使用するファイバーグラス板は、JIS A 5701(ガラス繊維強化ポリエステル波板)とされている。

ファイパーグラス(ガラス繊維強化プラスチック:FRP (Fiberglass Reinforced Plastics))は、強度のあるガラス繊維を強化材とし、不飽和ポリエステル樹脂を用いて成形加工した複合材料である。

(e) ガイドレールは、「標仕」では、特記がない場合、JIS G 3302による溶融亜鉛めっき鋼板で、めっきの付着量Z27を満足するものとされている。

なお、海岸部等の環境下で腐食のおそれがある場合は、ステンレスの使用を検討する。

(f) ワイヤロープは、JIS G 3525(ワイヤロープ)又はJIS G 3535(航空機用ワイヤロープ)とされている。

(g) アルミニウム形材の表面は、JIS H 8602(アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化塗装複合皮膜)に規定される複合皮膜の性能の種類B以上のものとされている。

16.13.4 形状及び仕上げ

ガイドレール及び支持金物は、溶接部分の補修を除いて塗装は行われていない。また、意匠を考慮した場合でも、ガイドレールの内側はローラーが走行するので、塗装は行われていない。

図16.13.3に一般的な断面を示す。


図16.13.3 ガイドレールの断面の例

16.13.5 工 法

(a) 加工、組立及び取付けは形状、寸法、取合い等を正確に行い、耐風圧性が低下しないように注意する。

(b) JIS A 4715(オーバーヘッドドア構成部材)の抜粋を次に示す。

JIS A 4715:2008

1.適用範囲

この規格は、建物及び工作物に使用するオーバーヘッドドア構成部材(1)(以下、構成部材という。)について規定する。

(1) まだ組み立てていない状態のもの。

なお、組み立てたオーバーヘッドドアを、以下、ドアという。

備考
オーバーヘッドドアとは開口部に対して上下に組み立てられた複数のセクションを天井又は壁に沿ってほぽ水平又は垂直に送り込んで収納するドアをいう。

3. 構成部材の名称(図16.13.2参照)

4. 種 類
4.1 セクション材料による区分(表16.13.1参照)
4.2 強さによる区分 強さによる区分は、次による。
50 風圧力 500Paに耐えるもの。
75 風圧力 750Paに耐えるもの。
100 風圧力 1,000Paに耐えるもの。
125 風圧力 1,250Paに耐えるもの。
4.3 開閉方式による区分(表16.13.2参照)
4.4 収納形式による区分(表16.13.3及び図16.13.1参照)

5. 品質及び機能
5.1 外観
外観は、使用上有害なねじれ、曲がり、さびなどの欠点があってはならない。

5.2 構成部材の品質

5.2.1 セクション
セクションの強度は、9.2に規定する方法で試験を行い、残留たわみは、セクション長さの1/100以下でなければならない。(9.2省略)

5.2.2 ワイヤロープ
ワイヤロープの引張強度は、ワイヤロープ1本にかかるドア重量の1/2に対して、安全率を5以上とする。また、ワイヤロープには変形、ほつれがあってはならない。

5.2.3 シャフト
シャフトは次による。
a) シャフトは、円滑な回転を保持する伸直な形状のものとする。
b) シャフトは、ドア重量を支え、かつ、スプリングによるねじりモーメントに対し十分な強度をもつものとする。

5.2.4 スプリング
スプリングは. ドアの重量及び収納形式に対応した良好なバランスを与える適切なものとする。

5.3 開閉機能
5.3.1 バランス式・チェーン式
バランス式及びチェーン式の開閉機能は、9.3に規定する開閉操作力試験を行い、表1の規定に適合しなければならない。(9.3省略)

表1 開閉方式による操作力

5.3.2 電動式

電動式の開閉機能は、9.3に規定する方法によって開閉試験を行い、次の規定に適合しなければならない。(9.3省略)

a) 開閉は、円滑に作動するものとする。
b) 開閉時の平均速度は、毎分5~20mとする。
c) 開閉中に、任意の位置で停止できるものとする。
d) 開閉の際、上限及び下限において自動的に停止するものとする。
e) 開閉中、押しボタンスイッチを逆方向に操作しても、逆方向に作動しないものとする。
f) 閉動作中、障害物感知装置が作動した場合、ドアは自動的に停止し、又は停止後開動作に転じて自動停止すること。
g) 障害物感知装置が作動したままの状態で停止した場合、又は作動不良の状態になったとき、再度閉信号を受けてもドアは閉動作をしてはならない。ただし、停止後自動的に開動作に転じる機構のものを除く。
h) 障害物感知装置が作動したままの状態で停止し、開信号を受けた場合は、ドアは開動作をしなければならない。
i) 電源遮断時においては、手動による開閉が可能でなければならない。

6. 構 造

6.1 セクション
セクションは、ヒンジによって屈曲可能に結合でき、セクションの上下には相じゃくり部をもつ機構とする。

6.2 スプリング
ねじりコイルばねを使用する。

6.3 ワイヤドラム
ワイヤロープの径に応じた溝付ドラムとする。

6.4 ワイヤロープ
JIS G 3525又はJIS G 3535による。

6.5 ガイドレール
ガイドレールの断面はほぼ溝形で、その内側をローラの回転部が滑らかに移動し、かつ、容易に逸脱しない形状のものとする。

6.6 電動開閉機 電動機の容量及び電源は、表2による。

表2 電動機の容量及び電源

6.7 電装品

電動式ドアにおける電装品は、次による。

a) 制御盤は、押しボタンスイッチ又はリミットスイッチからの信号によってドアの開・閉・停の動作を制御できるものとし、開閉動作中に逆動の押しボタンが押されても、逆動作しない回路とする。

b) 押しボタンスイッチは、押しボタン操作によって制御盤に信号を送り、開・閉・停の動作を操作できるものとする。

c) リミットスイッチは、ドアの開放又は閉鎖の動作を、その上限又は下限の位置で自動的に停止できるものとする。

d) 障害物感知装置は、光電センサなどの非接触形のものが望ましい。

e) 開口部の用途、環境などによって光電センサ以外の障害物感知装置を使用する場合の機能・構造・試験方法については、受渡当事者間の協議による。
f) 押し切り形(2)の押しボタンを使用し、かつ、押しボタン操作をする人がドアの開閉状態の安全を確認できる場合は障害物感知装置の設置を省略してもよい。

(2) 押しボタンを押している間だけドアが作動し、ボタンから手を離すとドアが停止する機構のスイッチ。

16章 建具工事 14節 ガラス

16章 建具工事

14節 ガラス

16.14.1 適用範囲

この節では、主として建具に取り付けるガラス工事を対象としている。

板ガラスは、近年外装材としても活用され、その用途が広がっている。例えば、メタルカーテンウォールでは開口部以外にも使用され、アトリウムやトップライトを形成している。また、建具枠に納めるのではなく、壁面がガラスのみで形成される点支持工法(DPG工法とも呼ばれる。)等も出現している。

16.14.2 材 料

(a) 建築用板ガラスの種類と厚さ及び特性を、表16.14.1に示す。

なお、ガラスの厚さを「ミリ」と表示する場合は、製品記号であって、寸法単位の「mm」ではないことに注意する。

表16.14.1 板ガラスの種類と厚さ及び特性
(b) ガラス厚さの設定

外部に面する帳壁に使用するガラスの厚さは、平成12年建設省告示第1458号に定められている(16.1.7 (d)参照)。

また、平成12年建設省告示第1458号において適用除外となっている部位(高さ13m以下)に対する風圧力について、板硝子協会では、平成12年建設省告示第1458号に提示される計算式をそのまま適用することを提案している。

なお、「標仕」の適用範囲外ではあるが、2~3辺支持状態のガラス及び点支持工法(DPG工法とも呼ばれる。)等の場合での、ガラス厚さの算定もガラスメーカーの提案式が、カタログや技術資料に掲載されているので、該当する場合には参考にするとよい。

(c) 板ガラスの概要
(1) フロート板ガラス(JIS R 3202)

溶解したガラス(約1,600℃)を溶融した金属(錫)の上に浮かべて製板するフロートシステムにより生産される透明、かつ、極めて平滑なガラス。

現在、流通する板ガラスの主流である。厚さは、2ミリから25ミリまで14種類ある。すり板ガラスは JIS R 3202の附属書 Aに規定されている。

(2) 型板ガラス(JIS R 3203)
2本の水冷ローラーの間に、直接溶解したガラスを通して製板するロールアウト法により生産されるガラス。下部のローラーで型付けされる。

型は、旧来のものが数種類に整理されており、選択には注意が必要である。

(3) 網人板ガラス(JIS R 3204)

(2)のロールアウト法の2本のローラーの間に、同時に網(線)を挿入して生産されるガラス(火造りともいう。)。網入板ガラスは、防火設備(旧乙種防火戸)用として認定されているが、線入板ガラスは防火設備(旧乙種防火戸)用として使用できない。

(4) 熱線吸収板ガラス(JIS R 3208)

フロートシステムにより生産される板ガラスで、ガラス原材料に日射吸収特性に優れた金属を加え、着色し生並されるガラス。

ガラスの色は、国内生産品はグリーンのみである。

熱線吸収効果で、日射を 30~40%程度吸収し、冷房負荷の軽減効果がある。

(5) 熱線反射ガラス(JIS R 3221)

ガラスの片面に金属の反射薄膜を付け、生産されるガラス。ミラー効果、可視光線を遮り、窓際のまぶしさや局部的な昇温の防止、冷房負荷の軽減効果等がある。

現在、次の2種類の製法がある。

① オンライン熱反

フロートシステムにより生涯されるガラスに、その徐冷の前工程で、金属をスプレーする製法。反射色調は、シルバー系がある。反射膜は、室外側でも室内部でも使用できるとされているが、反射膜の耐久性上、室内側が望ましい。

② スパッタ熱反〈高遮へい性熱線反射ガラス〉

フロート板ガラスを製品化したのち、所定の寸法に切断し、真空容器内に入れ、電圧をかけて金属薄膜を付ける製法。

オンライン熱反に比べて反射膜の反射率が高く、熱線吸収率も高い。一般には、高性能熱線反射ガラスと呼ばれている。

反射色調は、使用する金属により多彩で、10数種のものが市販されている。反射膜は,室内部に限定される。

(6) 合わせガラス(JIS R 3205)

2枚以上のガラスの間に接着力の強い特殊樹脂フィルム(中間膜)を挟み、高温高圧で接着し、生産されるガラス。同類には、合成樹脂を注入し、接着するものもある。

破損しても中間膜によって破片の大部分が飛散しない性質がある。

用途は、住宅や学校用の安全ガラスのほか、高層階のバルコニーの手すりや中間膜を種々変えた装飾用等がある。使用する板ガラスは、原則としてJISに規定されるものの組合せであり、製品の種類は多岐にわたる。また、耐貫通性に優れた厚い中間膜を使用した合わせガラスは防犯合わせガラスとして製品化されているが、地震時や台風時の飛来物に対しても防災上の効果がある。

(7) 強化ガラス(JIS R 3206)

ガラスを強化炉で 650~700℃程度まで加熱したのち、両表面に空気を吹き付け急冷してガラス表面付近に強い圧縮応力層を形成し、耐風圧強度を約 3倍に高めたガラス。破損時の破片は、細粒状になるので鋭利な破片は生じにくい性質がある。強化型板ガラスは、型の凹凸度合いが少ないものに限られる。

熱処理後のガラスは、切断加工はできない。

用途は、枠のない強化ガラスドアや手すり等のほか、住宅や学校用の安全ガラス、点支持工法(DPG工法とも呼ばれる。)等がある。

強化ガラス内部では、表面の圧縮力と内部側の引張力がバランスを保っており、製造過程で混入した微細な異物に起因する傷や表面の傷が成長して、圧縮応力層内(ガラス厚の1/6)を超えて内部の引張応力層に達すると、応カバランスが崩れ外力が加わっていない状態でも不意に破損することがある。これを自然破綻と呼んでいる。

強化ガラスが破損するときには、一瞬にしてガラスの全面が細かい粒状の破片になるが、粒が離れずに塊となって脱落することがある。このように強化ガラスが破損し脱落して人にけがを負わせるおそれがある場合や、破損時に人が転落する危険性がある場合には、強化合わせガラス仕様にするとよい。

使用に際しては、板硝子協会「強化ガラス・倍強度ガラス使用手引書」等を参考にするとよい。

自然破損を防ぐための手段としこ、製造時にヒートソーク処理を実施することが有効であるが、破損をゼロにする技術は現在のところない。ヒートソーク処理とは、強化加工後に再加熱処理を実施し、強化ガラスに微細な不純物が含まれていた場合、強制的に破損させる方法てある。

(8) 倍強度ガラス(JIS R 3222)
強化ガラスと同様な加熱処理を行い、耐風圧強度を約 2倍に高めたガラス(HSガラスとも呼ばれる。)である。熱処理後のガラスは、切断加工はできない。

破損時の破片は、フロート板ガラスの割れ方に近い形態である。用途は、一般窓ガラス用であるが、フロート板ガラスでは厚さが不足するような風圧力が大きく、かつ、開口面積が大きい部位に使用する。

倍強度ガラスは熱処理をしてしいるため、理論上製造過程で混入した微細な異物に起因する自然破損は起こり得る。通常、倍強度ガラスにはヒートユニクー処理は行わない。

使用に際しては、「強化ガラス・倍強度ガラス使用手引書」等を参考にするとよい。

(9) 複層ガラス(JIS R 3209)

一般に2枚のガラスをスペーサーで一定の間隔(一般に6又は12mm)に保ち、その周囲を封着材(一般にブチルゴム等)で密閉し、内部に乾燥空気(内部の圧力は外気圧に近い。)を満たしたガラスである。

なお、現在では、中空層側のガラス面に特殊金属をコーティングして断熱性及び日射遮蔽性を高めた製品であるLow-E複層ガラス(日射取得型:適度に日射熱を採り入れる寒冷地に適したタイプ、日射遮蔽型:室内への日射熱の侵入を低減する温暖地に適したタイプ)が多く使用されるようになった。また、それに併せて内部を真空にした真空ガラスや内部にガスを封入した製品もある。

使用するガラスは、原則としてJISに規定されるものの組合せであり、製品の種類は多岐にわたる。また、断熱効果が高く、冷暖房負荷の軽減効果と結露防止効果がある。

(10) 耐熱板ガラス

網入板ガラス以外で防火性能を有するガラスであり、低膨張防火ガラス、耐熱強化ガラス、耐熱結品化ガラスがある。

当項については、「標仕」には記載されていないが近年使用例が増えている。防火設備において、主構成材料として位置付けられており、また、品種によっては特定防火設備の認定実績を有するものもある。

詳細については、製造所に確認するとよい。

品質については、(-社)カーテンウォール・防火開口部協会、板硝子協会及びガラスブロック工業会が定めた「耐熱板ガラス品質規格」がある。

耐熱板ガラスで耐熱強化ガラスは、熱処理をしているため、製造過程で混入した微細な異物に起因する自然破損は強化ガラス同様に起こり得る。製造時のヒートソーク処理、破損脱落時の安全性、はめ替え等のメンテナンス等を十分に考慮することが望ましい。

(d) ガラス留め材

建具枠に板ガラスを固定させ、かつ、板ガラスの耐風圧性、建具としての気密性、水密性及び耐震性等が確保できるものをいう。

材料(工法、コストとも連動する。)は、次のものがあるが、各種性能はそれぞれ特長があるので、指定は特記による。

ただし、防火設備に使用する板ガラスの留め材は、建築基準法に基づく防火性能の認定を受けた材料に限定され、また、昭和46年建設省告示第109号では、「帳壁として窓にガラス入りのはめごろし戸(網入ガラス入りのものを除く。)を設ける場合にあっては、硬化性のシーリング材を使用しないこと。(ただし書きあり。)」としている。

(i) シーリング材

JIS A 5758(建築用シーリング材)に規定されるタイプGが用いられるが、その適用等は9章7節を参照する。また、各種性能を確保するためには、シーリング材の充填幅(目地幅)に一定の制限がある。

(ii) グレイジングガスケット

JIS A 5756(建築用ガスケット)付属書JA(参考)[ 建築用ガスケットの種類 ]JA.2に規定されるグレイジングガスケット(Gl)には、図16.14.1に示すグレイジングチャンネル、グレイジングビートの2種類がある。

ガスケットの材質は、JIS A 5756 4.4[主成分による区分]表4に規定される5種類がある(表16.14.2参照)。

(iii) 構造ガスケットは「標仕」17章を参照する。

表16.14.2 ガスケットの主成分による区分(JIS A 5756 : 2013)


図16.14.1 グレイジングガスケットの例(JIS A 5756 : 2013)

(e) セッティングブロック
建具下辺のガラス溝内に置き、ガラスの自重を支え、建具とガラスの接触を妨げる小片であり、一般にガラスの横幅寸法のおおよそ1/4の所に2箇所設置する。
なお、開き窓、軸が偏心したたて軸回転窓及びたてすべり出し窓では、戸先にガラス重量をかけない工夫として、軸近傍の下かまちと戸先の縦かまちとにセッティングブロックを設置することもある。

材料は、クロロプレンゴム系、EPDM(エチレンプロピレンゴム)系、塩化ビニル系があり、ポリプロピレン製があり、一般に、厚さ6ミリ以上の比較的大きいガラスには、クロロプレンゴム系が、それより軽いガラスには、塩化ビニル系を使用することが多い。ポリプロピレン製は樹脂製建具のセッティングブロックとして使用される。

なお、ガラス留め材をシリコーン系シーリング材とし、セッテングブロックにクロロプレンゴム系又はEPDM(エチレンプロビレンゴム)系を使用する場合は、セッテングブロック材料の可塑剤により、シーリング材が変色する原因となるため、耐シリコーンタイプの材料が特記されるか、又はシーリング材とセッティングブロックとを接触させない工夫がされていることを確認することが必要である。

セッティングブロックの形状寸法は、通常、次式により定める。

さらに、合わせガラスの中間膜や複層ガラスの封着材等に悪影響を与えないようにするため、セッティングブロックの材質と他の有機材との適合性を確認することも必要である。

L = W / ( n × t × f) ただし、t < a、b / a ≦ 1、L ≧ b
L:セッティングブロック1個の長さ(cm)
W:ガラスのの質量 ( N )
n:セッティングブロックの個数(一般に2箇所)
t:ガラスの厚さ(cm)
f:セッティングブロックの許容荷重( N/cm2
 クロロプレン系、EPDM系、ポリプロピレン製で 50、
 塩化ビニル系で 30
a:セッティングブロックの幅(cm)

b:セッティングブロックの厚さ(cm)

計算例
5ミリガラスで1.5m2の窓ガラスに塩化ビニル系を使用する場合
t = 0.5
よって、W= 0.5 × 1.5 × 104 × 2.5 × 10-3 × 9.8 ≒ 190 (N)
n = 2、f =30(塩化ビニル系)
よってL= 190 / ( 2 x 0.5x 30 ) ≒ 7(cm)
aは、t + ( 0.6~1.0) ≒ 1.2 (cm)、
b ≦ aより
bは、0.6~0.8 (cm)
よって、L × a × bは、
7 × 1.2 × 0.8 (cm)となる。

16.14.3 ガラス溝の寸法,形状等

(a) ガラス溝の寸法、形状とは、図16.14.2に示す面クリアランス(a)、エッジクリアランス (b) と掛り代 (c) の寸法、形状を指し、「標仕」表16.14.1に必要な値が定められている。

一般に枠見込み 70及び100mmのアルミニウム製建具では、「標仕」表16.14.1の値を標準としている。これらの値は、「標仕」16.2.2(b)の外部に面するアルミニウム製建具の種別A、B及びC種に合致し、また、耐震性は、16.1.7(a)(6)よりRC造又はSRC造を想定したもの(層間変形角が1/300程度)である。したがって、層間変位が大きい楊合は、「標仕」表16.14.1は、そのまま適用することができない場合がある。また、ガラスに種々の機能が追加されている場合は別途検討が必要である。

これらの寸法の意味は、次のとおりであるが、要求性能によって必要寸法が変わり、サッシ枠の見込み寸法に影響するため、指定は特記による。

なお、引違い戸、片引戸や上げ下げ戸等の障子では、枠見込み70mmのサッシにおいて、面クリアランスを5mm以上確保することが難しいので、「標仕」表16.14.1の(注)にあるように排水機構を設けて面クリアランスを3.5mm程度とする場合もある。


図16.14.2 ガラス溝の寸法

(1) 面クリアランス(a)

建具の気密性、水密性を確保するため、ガラス留め材の機能が十分に発揮できる寸法である。したがって、ガラス留め材の種類によって、当然変わる値である。例えば、ガラス留め材がシーリング材の場合は、シーリング材の確実な充填ができる値が、最小値となる。また、グレイジングガスケットの場合は、ガスケットの形状に合った値が必要になる。

(2) エッジクリアランス (b)

建具の耐震性(層間変位追従性)を確保し、かつ、ガラスのはめ込みが無理なく行える寸法である。また、建具の下辺では、セッティングブロックの厚さを確保する寸法も必要となる。

耐震性により定まる値は、建具が受ける変形量により決まり、その変形量は建具の開閉形態によって異なる(16.1.7(a)(6)参照)。

ガラスのはめ込みにより定まる値は、建具のガラスはめ込み形式によって異なる。

エッジクリアランスの値は、四方押縁形式では、耐震性により定まる値で決まる。また、やり返しでガラスをはめ込む形式では、ガラスのはめ込みにより定まる値(やり返しができる寸法)で決まる。

(3) 掛り代(c)

建具の気密性、水密性を確保するため、ガラス留め材の機能が十分に発揮できかつ、ガラスの耐風圧性を確保する寸法である。また、ガラスの小口が屈折により室内から光って見えないことを条件とすることも検討しなければならない。

建具の気密性、水密性は、面クリアランスと同様ガラス留め材の種類によって、変わる値である。シーリング材の楊合には、バックアップ材の寸法、形状も影響する。

ガラスの耐風圧性は、強風時にガラスがたわんで、枠から外れないために必要となる寸法で、当然風圧力の大きさとガラス厚さによって変わる値である。

ガラスの小口が見えるかどうかは、掛り代にガラス留め材のガラス溝よりの突出寸法を加えた値によるため、当然ガラス留め材の種類によって変わり、一般にグレイジングガスケットの場合が、シーリング材の場合より突出寸法が大きい。

(b) 水抜き孔
外部に面する建具とは、雨掛りの部位を想定している。

複層ガラス、合わせガラス及び網(線)入板ガラスの小口部分は、次の理由により、長期に水と接触することを避けなければならない。

(i) 複層ガラスでは、2枚のガラスの間に使用されている封着材の接着性能が水分の影響を受け、低下するおそれがある。

(ii) 合わせガラスでは、2枚のガラスの間に使用されている特殊樹脂フィルムが水分の影響を受け、白濁したり、はく離したりするおそれがある。

(iii) 網(線)入板ガラスでは、ガラスの小口に突出する線材が水分の影響で発錆するおそれがある。

したがって、この条件に適合する建具では、万ーガラス回りのガラス留め材に不具合が生じ、建具のガラス溝内に雨水が浸入した場合、速やかに雨水を排出するため、建具の下枠に水抜き孔を設けることとしている。

水抜き孔の直径を6mm以上とするのは、雨水が流れ出る最小値である。また、水抜き孔から雨水が浸入しないようにすることが重要である。

水抜き孔を2箇所とするのは、建具の下枠が完全な水平とは限らないことを想定したものであり、また、セッティングブロックや枠内の突起物が雨水の排出をせき止めることが想定される場合は、セッティングブロック又は突起物の中間に 1箇所追加する。

16.14.4 工 法

(a) 板ガラスの切断、小口処理

(1) 板ガラスの切断は、ガラス切りと呼ばれる工具によってガラス表面に傷をつけ、その傷に沿って折り割る作業である。クリアカット〈クリーンカット〉とは、折り割った状態のきれいな切断面(小口)をいい、JISに記述される許容限度を超える切口欠点がない状態を指す。しかし、10mmを超える厚板ガラスで、幅の広さが異なる状態で折り割ると.切断面が斜めになることがある。

大きな傾斜は、エッジクリアランスの確保に支際があり、また、切断面の大きな欠け等も熱割れ等の要因となるので、修正しなければならない。修正は、粗ずり( F120~200程度の湿式研磨)で行うのが一般的である。

(2) 板ガラスの端部が建具枠にのみ込まない納まりは、一般的ではないが、例えば、建物の出隈部で隅部に縦枠を設けず、ガラスを直交させ、ガラス間をシーリング材で連続させる場合や1階エントランスに設けるガラススクリーン工法〈ガラス方立工法、リブガラス工法〉の場合が該当する。

いずれの場合も、ガラス切断面が、シーリング材の接着面であったり、人の手に触れる部分となる。したがって、施工性や安全性から、小口加工が必要になる。仕上げの程度は、特記が必要である。シーリング材の接着面となる部分の仕上げの程度は、粗ずり( F120 ~ 200程度の湿式研磨)又はつや消し(同#300程度)が、また、人の手に触れる部分の仕上げ程度は、磨き( 同#500程度)が一般的である。

なお、後者の場合で、小口の形状を平面とするかかまぽこ状(丸み角)とする かは設計担当者と打ち合わせて決める。

なお、これらの例は、本来「標仕」の適用範囲外であり、いずれか一方のガラスは、片側縦辺のエッジクリアランスがない状態となる。また、面外力に対するガラスの支持状態も四辺単純支持ではない。更に、ガラス突付け部の気密性、水密性もシーリング材のみに期待する納まりである。したがって、十分な検討や実験を伴わないと、建具に要求される各種性能が確認できないので注意する。

(3) 網(線)入板ガラスでは、その小口が長期に水と接触すると発錆するおそれがある。16.14.3(b)のように水抜き孔を設けても、長期を想定すると湿気による発錆も考えられる。したがって、使用する場所に応じて防錆用テープ又はガラス用防錆塗料を施すなどの適切な防錆処理をする。

(b) ガラスのはめ込み
(1) シーリング材を使用する場合(16.14.3及び「標仕」9章7節参照)

シーリング材の硬化には、ガス(2成分シリコーン系では、R2NOH)の発生を伴い、また、高温高湿下では硬化不良を引き起こすおそれがある。したがって、シーリング材充填部が密閉となるような養生を行ってはならない。

① ガラスの両側とも、シーリング材を使用する場合

セッティングブロックをガラス溝内の所定の位置に配置したのち、面クリアランス、エッジクリアランス及び掛り代が適切になるように、面内・面外・両方向ともガラスを建具の中央に置く。次いで、シーリング材の充填深さが適切になるようにバックアップ材を挿入したのち、シーリング材を充填する。

② ガラスの内外溝のうち、一方のみをシーリング材を使用し、他方の溝はグレージングビードとする場合

先付けグレイジングビードとセッティングブロックをガラス溝内の所定の位置に配置したのち、エッジクリアランス及び掛り代が適切になるようにガラスを建具の中央に置く。次いで、反対側溝部について、シーリング材の充填深さが適切になるようにバックアップ材を挿入したのち、シーリング材を充填する。

(2) グレイジングガスケットを使用する場合

(i) グレイジングチャンネルの場合
かまちが分割できる可動部分(障子)に限られる。
グレイジングチャンネルをガラスに巻き付ける際、継目が上辺中央で、隙間が生じないようにする。

グレイジングチャンネルを巻き付けたガラスを分割したかまちにはめ込み、最後にかまちを組み直して完了となる。セッティングブロックは使用しない。

(ii) グレイジングビードの場合

セッティングブロックをガラス溝内の所定の位置に配置したのち、面クリアランス、エッジクリアランス及び掛り代が適切になるように、面内・面外両方向ともガラスを建具の中央に置く。次いで、グレイジングビードを両面から、ガラスと枠との間に押し込み完了となる。継目は上辺中央で隙間が生じないようにする。

(iii) グレイジングビード(先・後付け)の場合

先付けグレイジングビードとセッティングブロックをガラス溝内の所定の位置に配置したのち、エッジクリアランス及び掛り代が適切になるようにガラスを建具の中央に置く。次いで、あと付けグレイジングビードをガラスと枠との間に押し込み完了となる。継目は上辺中央で隙間が生じないようにする。

(c) 養生及び清掃
(1) ガラスのはめ込み後は、ガラスに気付かずに人が衝突したり、物を当てることのないように「ガラスに注意」等のラベルを張る。また、傷防止等必要に応じてガラス全体を養生する。

なお、日射熱吸収の大きいガラスでは、養生材の張付けによって、ガラスが熱割れしないことを確認することが必要である。

(2) ガラスの清掃は、建物完成期日直前に行う。清掃は、一般に水で表面をふき取るが、工事中にガラス面に固着した異物を除去するために薬品類を使用する場合は、周囲部材に影響のないことを確認する。熱線反射ガラスの清掃は、反射膜面を低つけないように注意し、中性洗剤以外の薬品等は使用しない。

また、清掃に当たっては、カッター、金属へら(スクレーパー)等の金属類を用いない。

16.14.5 ガラスブロック積み

(a) 壁部分に、壁用金属枠を用いて現場にて1個ずつ積む工法を対象とし、工場生産されるガラスブロックパネルは対象としていない。

(b) 材 料

(1) ガラスブロック
JIS A 5212(ガラスブロック(中空))には、表16.14.3に示す製品がある。

なお、ガラスブロック(中空)の海外製品は、JISと寸法許容差等が異なるため、(-社)公共建築協会では「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」において、品質性能基準を定め評価しているので参考にするとよい。

表16.14.3 ガラスブロックの寸法等

(2) 壁用金属枠

壁用金属枠はSUS304又はアルミニウム合金等腐食しにくい材質とし、下枠の外部側に水抜き孔(径6mm以上、間隔 1.0~1.5m)を設けたものとする。図16.14.3にアルミニウム合金製の形状例を示す。


図16.14.3 アルミニウム合金製壁用金属枠の例

(3) 力 骨

一般には、図16.14.4に示すはしご状複筋又は単筋を使用する。50mm幅のタイプは縦筋として、35mm幅のタイプは横筋として使用する。材質はSUS304で径 5.5mmである。

なお、伸縮目地の横筋等には、同質、同径の丸鋼も使用する。


図16.14.4 力骨の例

(4) 緩衝材

開口部周囲(下枠を除く。)と中間縦目地(伸縮目地)に使用する弾力性、復元性、耐久性のある材料で、一般には合成ゴム発泡体で幅75mm、厚さは5及び10mmの2種類がある。通常はガラスブロック製造所の指定するものを使用する。

(5) 滑り材

壁用金属枠の面内方向部分に張付け、充填モルタルと同枠間を滑らす目的の材科である。一般には厚さ1.2mm程度の塩化ビニル又はブチルゴム製の粘着層付きのテープで幅は25及び50mmの2種類がある。

(6) アンカーピース

カ骨を所定の位置とするため壁用金属枠に組み込む部品で、一般的には SUS304である。鋼製サッシや鋼製枠を使用する場合には、電食防止のために絶縁する必要がある。通常はガラスブロック製造所の指定するものを使用する。

(7) 水抜きプレート

壁用金属枠の下枠溝内に組み込み、ガラスブロック壁内に浸入した雨水を排水孔に導く機能をもつもので、一般的には塩化ビニル製である。通常はガラスブロック製造所の指定するものを使用する。図16.14.5に形状例を示す。


図16.14.5 水抜きプレートの形状例

(c) 工 法

(1) 耐風圧性

ガラスブロック壁面の耐風圧性能が建築基準法(平成12年建設省告示第1458号)に適合した工法は特記される。

(2) 工法詳細

(i) 目地幅の標準寸法は、10mmである。8mm以下にすると.内蔵される力骨(φ5.5 mm)との接触や、モルタルの充填性が悪くなり望ましくない。逆に、15mmを超える幅では、目地モルタルの仕上げが悪くなり、また、目地モルタルのひび割れも発生しやすくなるので、標準寸法に設定するのがよい。

曲面に積む場合は、最小半径をガラスブロックの幅寸法の10倍以上にしないと、上記の目地幅範囲を確保できない。なお、目地幅は、原則として外側 15mm以下、内側6mm以上を確保する。

(ii) ガラスブロック壁面が大きくなると、開口周辺の緩衝材や滑り材だけでは、ガラスブロックの熱変形や地震時の躯体の変形に追従できなくなる。したがって、開口部の幅が 6mを超える場合には、6m以内ごとに 10~ 25mm幅の縦方向の伸縮目地を設ける必要がある。図16.14.6に伸縮目地の納まりを例示する。


図16.14.6 伸縮目地の納まりの例

(iii) 風圧を受けた場合の壁用金属枠の変形を押さえるため450mm以下の間隔で、壁用金属枠を躯体に固着し、モルタルを密実に充填する。

(iv) 力骨の設置間隔は、要求されるガラスブロック壁面への風圧力に対応した間隔であることが必要である。実験結果による力骨の設置間隔は、図16.14.7のようになっている。最大間隔(標準目地幅10mmの場合)は、縦横とも620mmである。


図16.14.7 風圧力の大きさと力骨の設置間隔(実験結果)

 

(v) ガラスブロック壁面の標準施工例を図16.14.8に示す。


図16.14.8 ガラスブロック壁面の標準施工例

参考文献

 

一次検定 施工(仕上工事)建具 6-1 金属製建具

1級建築施工管理技士
学科対策 過去問題【 重要ポイント 】

4 施工(仕上工事)
6° 建具工事

6-1 金属製建具
下記の正誤を判断せよ。
(アルミニウム製建具)
①アルミニウム合金がコンクリート、モルタルに接する箇所には、ウレタン樹脂系の塗料を施した。

答え

  ◯

②建具取付け用の躯体アンカーの打込み位置は、開口の隅より250mm内外を端とし、中間は600mmの間隔とした。

答え

  ×

[ 解説 ]
躯体アンカーの打込み位置は、開口部の隅より150mm内外を端とし、中間500mm内外の間隔に設ける
建具枠に組み込む補強材、アンカー等は、鋼製又はアルミニウム合金製とする。鋼製のものは、亜鉛めっき等の接触による腐食防止処理を行ったものを使用する。

③外部建具周囲のモルタルを充填する際は、仮止め用のくさびを取り除いた。

答え

  ◯

[ 解説 ]
仮止めに用いるくさびは、モルタル充填の際に取り除かないと作業ができないようにするために長いものを用いる。

④外部建具周囲の充填モルタルは、NaCl換算0.06%(質量比)以下まで除塩した海砂を使用した。

答え

  ×

[ 解説 ]
外部建具周囲の充填モルタルに海砂を用いる場合は、NaCl換算0.04%以下まで除塩したものを使用する水切り付きサッシは、水切り板及びサッシ下枠部と躯体間を、二度に分けてモルタル詰めを行う。

⑤モルタルが長時間アルミニウム材に付着すると、変色することがあるため、早期に除去、清掃した。

答え

  ◯

(鋼製建具)
⑥建具枠は、くつずりの裏面に鉄線を付け、あらかじめモルタル詰めを行った後、取り付けた。

答え

  ◯

[ 解説 ]
ステンレス鋼板製くつずりは、厚さ 1.5mm以上のものを用いる。表面仕上げは、一般に傷が目立ちにくいヘアライン仕上げが用いられる。

⑦枠及び戸の取付け精度は、ねじれ、反り、はらみともそれぞれ許容差を、±4mmとした。

答え

  ×

[ 解説 ]
枠及び戸の取付け精度は、ねじれ、反り、はらみともそれぞれ許容差が 2mm以内である。通常の鋼製建具枠は、心墨、陸隅等の基準墨を出し、建具にも基準墨に合う位置にマークして位置を調整する。精度の許容差は、面内、面外とも2mm以内とする。

⑧片開きドアに取り付けるドアクローザは、押して開ける側に取り付けるのでパラレル取付けとした。

答え

  ◯

⑨防火設備の防火戸が枠と接する部分は、戸当たりを設け、閉鎖したときにすき間がない構造とした。

答え

  ◯

【参考】板ガラスのはめ込み

・不定形シーリング材構法において、可動窓の場合、開閉時の衝撃によるガラスの損傷を避けるため、エッジスペーサーを設置する。
・不定形シーリング材構法におけるセッティングブロックは、一般にガラス横幅寸法の約1/4のところに2箇所設置する。
・グレイジングガスケット構法におけるガスケットは、伸ばさないようにし、各隅を留め付ける。
・構造ガスケット構法の場合、ジッパーを取り付ける際には、ジッパーとジッパー溝に滑り剤を塗布する。

一次検定 施工(仕上工事)建具 6-2 エンジンドア・シャッター・カーテンウォール

1級建築施工管理技士
学科対策 過去問題【 重要ポイント 】

4 施工(仕上工事)
6° 建具工事

6-2 エンジンドア・シャッター・カーテンウォール
下記の正誤を判断せよ。
①スライディングドアなので、開速度、閉速度とも500mm/sに設定した。

答え

  ×

[ 解説 ]
自動ドア開閉装置において、スライディングドアの開閉速度は、開速度500mm/s以下、閉速度350mm/s以下である。自動ドア開閉装置において、手動開き力は、ドアを手で100N以下の力で開閉できなければならない。

②押しボタンスイッチ式のスライディングドアには、安全性を考慮して、補助センサーを設置した。

答え

  ◯

[ 解説 ]
車いす使用者用の押しボタンスイッチ(点感知)は、ドアより70~100㎝後退した位置で、床より60~120㎝の高さに設置する。

(電動式の重量シャッター)
③外部に面するシャッターには、耐風圧性を高めるため、ガバナー装置を取り付けた。

答え

  ×

[ 解説 ]
ガバナー装置は、シャターの急激な落下を防止するための装置である。耐風圧性を高めるには、スラットのはずれ止め機構を取り付ける等で対処する。
スラットの形式では、インターロッキング形は防火シャッターに用いられ、オーバーラッピング形は防煙シャッターとして用いられる。

④シャッターには、全開又は全閉した際に所定の位置で自動的に停止させるためのリミットスイッチを取り付けた。

答え

  ◯

[ 解説 ]
シャッターの降下時の挟まれ事故防止のため、座板等が障害物に接すると下降が停止する接触式の障害物感知装置を用いる。

(メタルカーテンウォール工事)
⑤床面に取り付けるファスナーは、カーテンウォール部材を制度よく取り付けるがめに、各階ごとに出された地墨をもとに取り付けた。

答え

  ×

[ 解説 ]
カーテンウォール部材を精度よく取り付けるためには、建物の基準墨を基にピアノ線等を用いて水平・垂直方向に連続した基準を設定して取り付ける

⑥床面に取り付けるファスナーのボルト孔は、躯体の施工誤差を吸収するため、ルーズホール方式とした。

答え

  ◯

⑦部材の熱伸縮による発音を防止するため、滑動する金物間に摩擦低減材を挟んだ。

答え

  ◯

⑧パネル材は、脱落防止のために3箇所以上仮止めし、本止め後速やかに仮止めボルトを撤去した。

答え

  ◯

⑨組立て方式は、すべての構成部材を工場で組み立てるノックダウン方式とした。

答え

  ×

[ 解説 ]
すべての構成部材を工場で組み立てるのは、ユニット方式である。ノックダウン方式は一部の部材を現場で取り付けてユニットが完成するように加工した部材である
一般的には、本体鉄骨の製作に合わせてすべてを工場で製作するが、鉄骨工事に間に合わない場合、金物のみを別途搬入して、現場で取り付ける。

1級建築施工管理技士 建具工事 必要な性能

建築品質 外部建具


049)建具に必要な性能

外部建具の耐風圧や水密性能等に関する仕様は設計図に記載されている。施工者はその設計仕様を確認し、その仕様を実現させるために施工計画書や施工図を作成する。

1.まず第1に法規制を確認する

①防火設備や特定防火設備は認定番号や認定書にある取付け工法や使用条件などを確認する。

②非常進入口に代わる窓は破壊進入または非常開錠などの開放方法や開口寸法(直径1m円内接またはw750×h1200)を確認する。

③排煙窓は有効排煙面積が法的必要面積以上確保されているか、また、手動操作位置が床から1,500mm以下の高さであるかを確認する。

2.建具に求められる性能の確保

建具に求めらる性能は、建物の立地、風圧、取付け高さ、及び位置などによって変わる。建具の要求性能は特記仕様書及び設計図書による。
アルミ製建具の性能種別に関して、公共建築工事標準仕様書では次表のとおりである。

①耐風圧の等級は
S-4 = 2000Ps
S-5 = 2400Ps
S-6 = 2800Ps
であり、耐風圧の最小風圧は1200Ps以上とする。

②水密製の等級は
W-4 = 350Ps
W-5 = 500Ps
であり、直接雨がかりの可動窓の水密性は耐風圧の20%(1/5)以上が望ましい。FIX部では風圧の50%(1/2)を確保する。

③気密性の等級は、1時間・m2当たりの漏気量で示す。
A-3 = 8m3/h・m2(SAT:セミエアタイト)
A-4 = 2m3/h・m2(AT:エアタイト)

3.建具の遮音等級

建具の遮音性能基準は日本工業規格 JIS A4706により規格化しており、その等級値は T-1〜T-4 等級で表示される。数値が高いほど遮音性能が優れており、建具の遮音性能は音響透過損失(外部から進入する音に対して、周波数ごとの音の低減量)で表現される。

建具の遮音性の等級は
T-1 = 25等級
T-2 = 30等級
T-3 = 35等級
T-4 = 40等級
となる。
騒音が大きな道路に面した共同住宅などでは、T-3以上が望ましい。

4.窓の断熱性能

省エネルギー設計上、開口部は熱の出入りが多く弱点になりやすいので注意を要するが、外壁部分とのバランスもあるので総合的に検討をする必要がある。
断熱性能をもつ建具は基本的にメーカーの仕様によるが、改正省エネ法に基づき策定された住宅の「窓等の断熱性能に係る情報提供に関するガイドライン」(2010年5月24日)で次のように4段階で表示されるようになった。

1級建築施工管理技士 建具工事 アルミ製建具の表面仕上げ

建築品質 外部建具


050)アルミ製建具は表面仕上げで長持ち

アルミ製建具の表面処理は意匠的なデザインもあるが、建具の防錆処理として耐久性に関わるので重要である。既製アルミ製建具はJISに基づいているが、特注のカーテンウォールは簡単に取換えなどできないため、耐久性に余裕を持たせて、皮膜厚さや塗装のグレードを上げている。

1.アルミニウムの表面処理には A~D種ある

アルミ製建具の表面処理の種別は公共建築工事標準仕様書の金属工事おいてA~D種と記載されている。特記が無ければ、外部はB-1種、内部はC-1種とする。
A-2種、B-2種でいう着色陽極酸化皮膜は特記がなければ二次電解着色とする。酸化皮膜の種類のAA15、AA6はそれぞれ平均皮膜厚さ 15μm, 6μm以上をいう。

透明合成樹脂塗装は高耐候性アクリル樹脂塗装が望ましい。また、酸化皮膜厚や塗装膜厚は、耐久性に影響するため、膜厚検査で確認する。

2.過酷な環境の場合は複合皮膜の仕様を上げる。

複合皮膜(陽極酸化皮膜 + 塗装 )の種類はB種(陽極酸化皮膜 9μ以上 + 塗装 7μ)が標準であるが、沿岸部や工場地域など過酷な環境の場合はA種(陽極酸化皮膜 9μ以上 + 塗装 12μ)とする。
カーテンウォールはA種の仕様とし、耐久性を持たせたい。また、より耐久性を持たせたいからと塗装膜厚を厚くすると、塗膜のひび割れを起こすケースもあるため、酸化皮膜の方を厚くすることを検討する。

3.焼付塗装は必ず膜厚管理を行う

焼付塗装の耐用年数はアクリル樹脂塗装で 5~7年、ウレタン樹脂塗装で 10~12年、フッ素樹脂塗装で 25~30年である。焼付塗装では、膜厚や焼付温度管理が重要である。特に塗装がのりにくい角部はアールにする。角部の最低限の塗装膜厚を確保して、縦横材の同面仕口ができるアールは0.2mm程度が限界である。

4.アルミはアルカリに弱く、異種金属との接触にも弱い

アルミ製建具の表面処理がA種及びC種の場合は、コンクリート・モルタル・プラスターなどのアルカリ性材料と接する箇所は、耐アルカリ性の塗料を塗り付ける。また、アルミ材は補強部材や取付け金物などの異種金属(鋼材など)と接すると接触腐食を起こすため、塗装被膜などで接触腐食を防止する。

1級建築施工管理技士 建具工事 止水はシールに頼らない

建築品質 外部建具


051)建具の止水はシールに頼らない

外部建具まわりからの雨水の進入がないように、壁と建具枠の取合い部にシールをするが、シールには寿命がある。容易にメンテナンスや打替えができれば良いが、必ずしも簡単ではない。したがって外部建具まわりのシールは切れることを前提に、雨水が浸入しにくいディテールにすることが重要である。

1.外部建具の上枠まわりのディテール

外部建具の上枠部は上部の外壁に当たった雨水が滝のように流れてくるため最も雨水が入り込みやすい。雨水が入り込みにくディテールは次の順に検討する。


建具上枠のディテール

①最も効果的なおさまりは庇を設けることである。庇は躯体と一体が望ましく、さらに庇の出は大きいほど安心である。付け庇でもよい。

②抱きを設ける。建具を壁の内側に寄せてコンクリートの抱きを設け、外壁を伝った水が建具に伝わないように水切り形状とする。

③水切りを設ける。ただし、水切りの上部から浸入しないように、二次シールが切れても入らないようにする必要がある。

④外壁と同面おさまりにして水切りを設けないときは二重シールにする。二次シールが切れても紫外線などから保護された一次シールが頑張ってくれる。二重シールが確実にできる既製型材はあまりないので、上枠に加工が必要である。同面納まりでは、建具枠のシール材やガラスのシール材が外壁を汚すことも考慮する必要がある。

2.外部建具の下枠まわりのディテール

外部建具の下枠部もコンクリートとの取合いから水が入りやすい。縦枠取合い部を伝った雨も下枠両側から入りやすい。雨水浸入をぐせぐおさまりは、次の順に検討する。

①下枠部躯体は外部へ向けた勾配を設ける。

②建具を固定したらモルタルを密実に充填する。

③建具下枠には水切りを付ける。さらに水切りの両端部を立ち上げると、外壁の汚れも少なくなる。


建具下枠のディテール

1級建築施工管理技士 建具工事 開口補強は一体

建築品質 外部建具


052)建具と開口補強は一体

鉄骨造のALC板や押出成形セメント板(ECP)のパネル外壁に取り付けるサッシはパネルに直接固定しないので、スチールの開口補強材に取り付ける。パネルを開口補強材は変位によって動くので、シールは切れやすく、雨水浸入の要因となる。

1.開口補強の強度を確保する

開口補強材は開口部の風圧ろ開口まわりのパネルの風圧を負担している。構造的には二次部材のため、金属工事として軽く扱われることが多いが、溶接などは資格が必要である。構造設計図に記載がない場合は構造設計者に確認する。特に、階高が高い時や開口が大きい時は注意が必要である。

2.サッシは開口補強と一体化する

ALC板の場合は、開口補強材に建具枠のアンカーを溶接し、モルタルを充填して建具枠と開口補強を一体化する。ALC板でモルタルを充填しない場合は、アンカーだけで風圧力に耐えうるようにアンカーを取り付けた後、ロックウールを密実に充填し、気密性を確保する。

ECPの場合は、モルタルを詰めないで、乾式取付けとし、アンカーだけで風圧力に耐えうるようにする。建具を一体になった専用のアンカー金物を用い、取付けボルトの個所数や強度などは確認が必要である。ボルトの場合は緩み止めを考慮する。

3.パネル外壁と建具の納まり

ALC板やECPのパネル外壁は鉄骨造の動きに合わせてロッキングやスライドで対応するため、建具とのシールは切れやすくなる。したがって、シールが切れても浸入しにくいおさまり、または入っても排水できるおさまりが必要となる。
ALCでは水切りを設け、二重シールとする。ECPでは縦目地を伝って落ちてきた水が内部に伝わないにして、排水する納まりにする。ECP専用型のサッシ枠を用いるほうが望ましい。