1級建築施工管理技士 建具工事 窓の方立の座屈防止

建築品質 外部建具


057)窓の方立の座屈防止

コンクリートの躯体に取り付けられる横連窓などの建具は、コンクリート躯体のクリープ現象(荷重が長期間継続的に作用した時に生じる撓み変形)によって方立(建具の縦中骨)が座屈変形し、ガラスが割れたり、障子が動かなくなることがある。また、アルミ製建具の方立が熱伸びし、その伸びを吸収できない場合に、躯体のクリープ現象を受けた時と同様に方立が座屈変形することがある。

1.方立頂部に緩衝材を設ける

横連窓などの建具は、方立のクリープと熱伸びの対策として、方立頂部に緩衝材を取り付けるのが有効である。緩衝材がクリープと熱伸びを吸収してくれる。緩衝材の幅は方立と連結された上枠の変形も考慮して、約400mm程度が適当と考える。
方立頂部に緩衝材を入れる場合、方立上部を固定できないので、方立にかかる風圧力を連結した上枠で受けることになる。方立と上枠のジョイントをしっかり補強固定することも必要である。

2.片引き建具の方立ては座屈しやすい

片引き建具の方立は障子が閉じたとき障子枠と方立が一体になって耐風強度を確保するようになっている場合が多い。方立単位は断面が小さく、強度も弱いのでクリープや熱伸びに対して変形しやすい。必ず対策が必要である。

3.木造の梁もクリープ変形する

木造の梁も自重や荷重によってじわじわとクリープ変形する。木造の構造材は含水率が20%以下のものを使用するが、建築後乾燥していきながら比較的早い段階で変形する。梁の直下に建具を取り付ける場合は、クリープを考慮して取り付けなければ、建具が動かなくなったりする。建具の取付けをビスで固定せず、ルーズホールにしてボルトで留めるなどの工夫が必要である。

1級建築施工管理技士 建具工事 ガラリから入る雨水の処理

建築品質 外部建具


058)ガラリから入る雨水の処理

ガラリは空気の出入口だが、空気と一緒に雨水も入る、ダクト接続されている場合、ダクトの中まで雨水のしぶきが入ることもあり、それらが漏水の原因になることがある。また、ガラリから虫や鳥が入り、巣をつくることもある。

1.ガラリの内側に水受けを設けて排水する

ガラリから入った雨水を受けてスムーズに外部へ排出するために水受けを設ける。水受けはガラリの有効開口面積を確保し、ガラリ下端より勾配を付けて100mm程度立ち上げ、スムーズに排水されるようにする。水受けの材質はサッシと同材とし、水密溶接で組み立てる。水受けはサッシに後から取り付けるため、取合い部はシール納まりとなる。

2.ガラリの羽根は外付けにする

ガラリの水受けと枠の取付け部のシールは内部から施工できない。また、そのシールが劣化した時のシールの打替えも内部からはできない。そこでガラリの羽根を外付けとし、取外し可能にしておく必要がある。羽根は1mピッチに縦材の支えが必要であるから、あらかじめ分割しておくことも検討する。

3.ガラリから虫や鳥を侵入させない

ガラリからの虫や鳥の侵入対策として、防虫網、防鳥網が必要である。防虫網はメンテナンスの頻度が高いので取外しを容易にする。防虫網はSUS316線材、線径0.25、ピッチ2mm以下にする。防鳥網はSUS304線材、線径1.5mm、ピッチ15mmとする。

4.ガラリのダクト接続はボルト止めにする

ダクト接続の水受けは建具と同材のアルミ製とする。延焼の恐れのある部分はステンレス製とする。水密溶接で組み立てた水受けはパッキンを挟んでM8ボルトで100mmピッチにダクトに留める。水受けはダクトと同様に保温や断熱のための吹付けも考慮する。ガラリには防鳥網(取外し可)を設け、防虫網は設備のダクト側フィルターで兼ねるよう設備と調整する。

1級建築施工管理技士 建具工事 鋼製建具は錆びやすい

建築品質 外部建具


059)鋼製建具は錆びやすい

雨がかりにある外部鋼製建具は雨が入りやすい。特に上枠や丁番部分から入りやすい。また、縦枠の足元や扉の下端や錆びやすい。

1.外部鋼製建具には必ず庇を計画する

外部鋼製建具は雨がかりにしないことが重要である。大きめの庇を設ける必要がある。庇が設けられない場合は、大きめの水切りを設ける。


外部鋼製建具のポイント

①セミ・エアタイト(JIS A4702 A-3仕様)とし、枠に気密材の合成ゴムを入れる。

②縦枠足元は h=300mm程度までステンレス(SUS304)とする。

③くつずりはSUS304 t=1.5mmを縦枠下に通して両端部は蓋をする。縦枠とくつずりは裏側で水密溶接し、止水を確実にする。

④扉下端も錆びやすいので、表面材の鉄板を曲げ込む納まりとする。

⑤ヒンジはSUS丁番を用い、枠に取り付けた補強板に固定する。枠内部の丁番と補強板まわりはシールする。ピポットヒンジは腐食するので外部扉には採用しない。

⑥外部側の枠見付け寸法は25mmを確保し、丁番と壁の間に隙間を設け、枠のシールが確実に施工できるようにする。

⑦外壁同面おさまりの鋼製建具は上枠部にSUS水切りを設け、二重シールおさまりとする。

2.外部鋼製建具の内開きには排水溝を設ける

やむをえず内開きのドアにするときは、雨がかりにしないことはもちろんであるが、次の対策が必要である。

①完全エアタイト(JIS A 4702 A-4仕様)とする。締まり金物はグレモンハンドルとする。

②雨がドアに吹きつけた時を想定して、扉両サイドと扉下部に水返しを設ける。

③下枠部やコーナー部からの雨水侵入に対して、くつずりに排水溝を設け、排水する。逆流防止弁付きの排水口を設ける。

1級建築施工管理技士 建具工事 ステンレス製建具は雨が入りやすい

建築品質 外部建具


060)ステンレス製建具は雨が入りやすい

ステンレス製建具は錆びにくく、丈夫で高級感がある。しかし、ステンレス製建具はステンレス(SUS)鋼板を曲げ加工して組み立てるため、アルミ建具ほど精密な加工ができず、止水性の確保が難しい。建具枠組立部のメタルタッチの部分、押縁のビス止めのビス穴部などが漏水の原因になっている。

1.ステンレス材も錆びる

ステンレス鋼板はJIS G 4305により、原則SUS304とする。SUS304は通常は錆びないが、使用する環境や仕上げによって、鉄粉などが付着して「もらい錆」を発生することがある。大気汚染がある地域や海浜地域では、さらに錆びにくいSUS316とする。ステンレスはスチールに比べ線膨張率が大きく熱伸縮が大きいので、長い部材のジョイント部は熱伸縮に対応できるように、目地を設けるなどが必要である。

2.ステンレス製建具の止水性確保

外部のステンレス建具枠は板材を曲げ加工し、組立部は溶接を原則とする。縦枠と上枠は同面の留め溶接し、HL(ヘアライン)仕上げなどとする。縦枠と下枠(くつずり)は下枠通しで水密溶接にする。大型のステンレス製建具や連窓など現場組立(ノックダウン)する場合は、ジョイントをビスやブルと接合し、シールジョイントで止水する。


ステンレス製建具の加工

ガラスの押さえ(押縁)は外部側とする。押縁を内部側にすると、雨水や結露水が浸入する。あらかじめ枠にビス受けを設けて、ビスが枠を貫通しないようにする。

押縁断面

また、ガラス溝に入った水は押縁の下部や両端部から排水されるようにする。ガラス溝底も外部側へ勾配を設ける。

ガラスの押縁

3.ステンレス鋼板の曲げ加工

ステンレス鋼板の曲げ加工には普通曲げと角出し曲げがある。普通曲げは一般のスチール建具と同じで角度が曲面となる。角出し曲げは鋼板をあらかじめV溝に加工してから曲げるので角がシャープになる。切込み後の板厚(残り厚)が0.75mm以下の時は裏板を入れる。裏板は同厚のSUS鋼板または亜鉛めっき鋼板(板厚1.6mm以上)に錆止め塗装2回塗りとする。残り厚が設計図に指定されていない場合は確認する。

 

1級建築施工管理技士 建具工事 玄関ガラススクリーン足元の防水

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061)玄関ガラススクリーン足元の防水

玄関には雨が吹き込むこともある。傘の水なども持って入る。そんな玄関の下に地下階があるときは、玄関の内側まで防水する。持ち込む水が少ないからといって防水しなければ、下階に漏水する。

1.玄関の防水範囲を決める

玄関の内と外を区切るスクリーンなどで防水範囲はしきられる。玄関マット部など水を持ち込む部分は、内部でも防水することになる。玄関マットの枠や仕上げの見切りが防水の端部になる。建具下枠下部とマット枠や見切りの下部に防水立上げプレートを設け、防水を立上げる。


玄関スクリーンと防水範囲


スクリーン足元防水納まり

2.スクリーンの内外を防水する

スクリーン(建具)の下枠は必ず躯体に固定しなけばならない。したがってスクリーンの内外を防水するとき、防水は内外それぞれスクリーン足元に立ち上げなければならない。方法としては、建具を取り付けるベース金物を通しで床に固定し、それに内外両側から防水材を立上げる。保護コンクリートは動くので、防水をスクリーンの下に通して、スクリーン下枠を保護コンクリートに固定してはならない。

3.玄関のフロアーヒンジは躯体で支持する

前述の通り、防水する部分に取り付けるスクリーン(サッシ)は躯体で支持するのはもちろんであるが、玄関扉のフロアーヒンジも保護コンクリートに支持させてはならない。フロアーヒンジも必ず躯体に固定する。よって防水はフロアーヒンジを取り巻くように立上げることになる。

4.床マット下には排水計画を行う

床マットの下には排水口を設ける。床マットの下は水平に仕上げ、雨水を溝で排水口に導く。排水口かだ配管で外部最寄りの会所または側溝へ排水する。また、自動扉のレールの溝も排水を設け、掃除しやすくする。

1級建築施工管理技士 建具工事 トップライトの注意点

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062)トップライトの注意点

トップライトは採光に有効であるが、結露や漏水、踏み抜き事故などもある。また、トップライトの網入りガラスはひび割れしやすい。耐風圧やガラスの仕様の検討と同時に、それらの対策が重要である。

1.トップライトには落下防止対策

ポリカーボネート製や網入りガラスのトップライトは、トップライトを柵で囲んでいても、子どもが乗り越えて入ってしまうケースがある。対策は、子どもが上がれるような屋上ではトップライトに絶対近づけないような柵を設けること。その他の場合も「危険性を知らせる表示」をして、トップライトの内側に落下防止の溶接金網を固定設置する。30分耐火の屋根ではトップライトは防火設備であり、網入りガラスが必要である。網入りガラスとの合わせガラスなども検討する。

トップライトの落下防止

2.トップライトの水切りはシンプルに

屋上のトップライトの枠の周囲に大きな水切りを設けているおさまりを見かけるケースがある。金物が大きくなり、ジョイントが増え、漏水のリスクが増える。躯体立がりに被せるように、ひとまわり大きなトップライトにすれば、水切りをつけるだけで、シンプルに納めることができる。


トップライトの水切り

3.トップライトの下枠ガラスシールは盛り上げる

下枠に水が溜まらないようにシールを盛り上げる。ゆるい勾配のトップライトでは下枠押縁の両端を切り欠いて排水する。網入りガラスや複層ガラスではガラス小口を保護する必要があるので、下枠押縁を切り欠かなくても良い勾配(1/6以上)が必要である。

トップライトのガラスシール

4.トップライトの結露水は排水する

トップライトからの漏水ではないかと調べてみると、結露水が原因のこともある。トップライトの結露はガラス面とサッシ枠の両方があり、どちらも集めて排水しなければならない。トップライト専用枠では考慮されているものもあるが、そうでない場合は個別に対策が必要である。ガラスを複層ガラスにすると結露も少なくなる。

1級建築施工管理技士 建具工事 シャッターの強風・安全対策

建築品質 外部建具


063)シャッターの強風・安全対策

外部のシャッターは強い風圧を受ける。特に幅が広いシャッターは台風時の風圧で撓んで外れたり、レールごと風に飛ばされることがある。強風でシャッターが破損すると内部に強風が吹き込んで、天井や内壁が被害を受けるだけでなく、屋根が飛ばされることもある。庇がない外部シャッターでは漏水する事例もある。

1.外部大型シャッターは耐風型にする

シャッターの耐風圧強度はシャッターの開口幅とスラットの仕様(鉄板厚、スラット形状)で決まる。耐風フックが付いた耐風型シャターは強度が増す。シャッター幅が7mを超すシャッターは耐風型を検討する。シャッターレールは単なるガイドレールではなく、スラットの風圧を受けるため、柱や間柱などにしっかり固定しなければならない。耐風型の耐風フックに対応するレールは特に取付け強度が必要である。一般にスラットの強度は正圧には強いが負圧には弱い。用途上シャッター幅を大きくする場合や、負圧に対して強度不足の場合は、シャッターの中間に脱着式の補強支柱(耐風ロック)を検討する。補強支柱はシャッターを挟むように内外に設け、台風時など強風対策をする。


耐風型シャッターの例

2.防火シャッターは防火区画形成を確実に行う

防火シャッターを設けるときは、防火の垂れ壁とシャッターまぐさ、及び間仕切りとレールの取合い部の耐火性能を確保し、防火区画を確実に形成する必要がある。防火シャッターや遮煙シャッターは認定時のレールの深さや溝幅などの形状は重要である。レールに仕上げ見切りを設ける場合などは納まりに十分注意する。

防火シャッターの例

3.防火シャッターには安全装置が必要

防火シャッターが自動閉鎖しているときにシャッターに挟まれで死亡する事故があった。それ以降自動閉鎖するシャッターには挟まれ防止の安全装置の設置が義務付けられている。
(建築基準法施工令第112条14項)