1級建築施工管理技士 建具工事 トップライトの注意点

建築品質 外部建具


062)トップライトの注意点

トップライトは採光に有効であるが、結露や漏水、踏み抜き事故などもある。また、トップライトの網入りガラスはひび割れしやすい。耐風圧やガラスの仕様の検討と同時に、それらの対策が重要である。

1.トップライトには落下防止対策

ポリカーボネート製や網入りガラスのトップライトは、トップライトを柵で囲んでいても、子どもが乗り越えて入ってしまうケースがある。対策は、子どもが上がれるような屋上ではトップライトに絶対近づけないような柵を設けること。その他の場合も「危険性を知らせる表示」をして、トップライトの内側に落下防止の溶接金網を固定設置する。30分耐火の屋根ではトップライトは防火設備であり、網入りガラスが必要である。網入りガラスとの合わせガラスなども検討する。

トップライトの落下防止

2.トップライトの水切りはシンプルに

屋上のトップライトの枠の周囲に大きな水切りを設けているおさまりを見かけるケースがある。金物が大きくなり、ジョイントが増え、漏水のリスクが増える。躯体立がりに被せるように、ひとまわり大きなトップライトにすれば、水切りをつけるだけで、シンプルに納めることができる。


トップライトの水切り

3.トップライトの下枠ガラスシールは盛り上げる

下枠に水が溜まらないようにシールを盛り上げる。ゆるい勾配のトップライトでは下枠押縁の両端を切り欠いて排水する。網入りガラスや複層ガラスではガラス小口を保護する必要があるので、下枠押縁を切り欠かなくても良い勾配(1/6以上)が必要である。

トップライトのガラスシール

4.トップライトの結露水は排水する

トップライトからの漏水ではないかと調べてみると、結露水が原因のこともある。トップライトの結露はガラス面とサッシ枠の両方があり、どちらも集めて排水しなければならない。トップライト専用枠では考慮されているものもあるが、そうでない場合は個別に対策が必要である。ガラスを複層ガラスにすると結露も少なくなる。

1級建築施工管理技士 建具工事 シャッターの強風・安全対策

建築品質 外部建具


063)シャッターの強風・安全対策

外部のシャッターは強い風圧を受ける。特に幅が広いシャッターは台風時の風圧で撓んで外れたり、レールごと風に飛ばされることがある。強風でシャッターが破損すると内部に強風が吹き込んで、天井や内壁が被害を受けるだけでなく、屋根が飛ばされることもある。庇がない外部シャッターでは漏水する事例もある。

1.外部大型シャッターは耐風型にする

シャッターの耐風圧強度はシャッターの開口幅とスラットの仕様(鉄板厚、スラット形状)で決まる。耐風フックが付いた耐風型シャターは強度が増す。シャッター幅が7mを超すシャッターは耐風型を検討する。シャッターレールは単なるガイドレールではなく、スラットの風圧を受けるため、柱や間柱などにしっかり固定しなければならない。耐風型の耐風フックに対応するレールは特に取付け強度が必要である。一般にスラットの強度は正圧には強いが負圧には弱い。用途上シャッター幅を大きくする場合や、負圧に対して強度不足の場合は、シャッターの中間に脱着式の補強支柱(耐風ロック)を検討する。補強支柱はシャッターを挟むように内外に設け、台風時など強風対策をする。


耐風型シャッターの例

2.防火シャッターは防火区画形成を確実に行う

防火シャッターを設けるときは、防火の垂れ壁とシャッターまぐさ、及び間仕切りとレールの取合い部の耐火性能を確保し、防火区画を確実に形成する必要がある。防火シャッターや遮煙シャッターは認定時のレールの深さや溝幅などの形状は重要である。レールに仕上げ見切りを設ける場合などは納まりに十分注意する。

防火シャッターの例

3.防火シャッターには安全装置が必要

防火シャッターが自動閉鎖しているときにシャッターに挟まれで死亡する事故があった。それ以降自動閉鎖するシャッターには挟まれ防止の安全装置の設置が義務付けられている。
(建築基準法施工令第112条14項)

1級建築施工管理技士 ガラス工事 カーテンウォールの性能

建築品質 ガラス工事


064)カーテンウォールの性能

ガラスカーテンウォール(以降CWとする)の施工図では、設計で要求された耐風圧性能などの諸性能値を満足していることを確認する。メーカーの既製型材は性能試験値があるが、実際には階高や、マリオンの無目の割付けや位置、そしてガラス仕様、取付け方法などがそれぞれが異なるため、納まりや性能について確認する。特にCWの端部、及び他部材との接合部での性能確認が重要である。

性能上の確認事項

①CWの耐震強度
設計用震度は、特記がなければ水平方向は1.0、鉛直方向は0.5とするが、直下型地震を想定して、鉛直方向も1.0にしたい。

②CWの耐風圧
建築基準法または学会指針による耐風圧を確認する。その風圧に耐えるガラスの厚さを確認する。(強化ガラスは使用不可)

③ガラス荷重の受け方
ガラス荷重を受けるセッティングブロックの位置、ガラス溝の排水孔位置を確認する。ガラス面の位置決めを確実にし、面クリアランスを確保する。合わせガラスや複層ガラスは重く、その荷重位置によっては無目材(CWの横材)が回転や変更することもある。

④部材の強度と断面設計
固定荷重、風圧力、地震力などを受けた時の部材や取付け金物(ファスナー)の強度と変形量、変位追随機構及び施工性を確認する。部材の強度だけでなく、無目材とマリオン(方立)などの接合部強度も確認する。

⑤CWの水密性能
水密性能は可動窓部で風圧の1/5、FIX部は風圧の1/2以上の値を確保する。目地部のシール断裂による浸入水は排水する。

⑥CWの層間変形追随性能
大地震時の層間変形書く(一般的に1/100、構造設計による構造体の変形角)に対して主要部材の破壊や脱落がないことが最も重要である。また、強風時の変形や熱伸びによる異音が発生しないようにし、ガラスの層間変形追従性能ではエッジクリアランスを確保する。

⑦CWの防火区画
スパンドレル部分(層間区画部)の耐火ボードの支持、仕上げ、マリオンの耐火被覆、防火区画がCWに取り合う部分の仕様を確認する。

⑧その他
結露処理、遮音性、定型・不定型シール材、メンテナンス(ゴンドラ荷重など)、施工性、非常進入口、防火設備、避雷設備なども確認する。
また、ガラスの色あいを決定する場合、スパンドレル部分はバックボードの色あいの影響を受けるので注意する。

1級建築施工管理技士 ガラス工事 網入りガラスのひび割れ防止策

建築品質 ガラス工事


065)網入りガラスのひび割れ防止策

網入りガラスは透明フロートガラスよりひび割れしやすい。一般の窓よりトップライトに多く発生する。特にプールのトップライトでは、外部の雨水の浸入とプール内部の塩素を含んだ結露水の浸入の両方が考えられる。ガラス溝に水が入ると、網入りガラスや複層ガラスに悪い影響が出る。

1.網入りガラスの鋼線の防錆対策

網入りガラスの小口(切り口)は鋼線が引っ込んでいたり、飛び出していたりしている。

網入りガラスのひび割れ

この小口の鋼線が錆びてガラス小口を傷め、ひび割れる。また、ガラス小口強度が低下した部分から熱割れすることもある。鋼線が錆びる原因の一つにガラスシールが切れてガラス溝に水が浸入することがある。この浸入水を速やかに排水するように、サッシのガラス溝には、直径8mmの水抜き孔を3ヶ所設ける。

網入りガラスの小口処理

もう一つの防錆対策として、浴室やプールの窓、トップライトではガラスの小口の鋼線を折り曲げ、ブチルゴムテープ(厚さ1mm)を全周に張り、その上を防錆テープで保護する。その他一般のサッシの網入りガラスでは専用の小口防錆塗料を塗るか、または防錆テープを張る。

2.複層ガラスには水を近づけない

窓の結露防止だけでなく、省エネルギー意識の高まりから、複層ガラスの採用が多くなっている。複層ガラスは2枚のガラスの間に乾燥材入りスペーサーを挟んで高性能シールで密閉されている。この状態を保つために、

①ガラス溝に水が溜まらないようにすること
②高性能シールを紫外線から守ること
が重要である。

このためみ公共建築工事標準仕様書では、面クリアランス5mm以上や、ガラスの下部エッジクリアランス7mm以上、ガラスの掛り代15mm以上、ガラス溝の水抜き孔は直径6mmを3ヶ所以上設けるなど詳細に規定している。水抜き孔は直径8mm以上が望ましい。


複層ガラスの下部納まり

1級建築施工管理技士 ガラス工事 ガラスで怪我をしないために

建築品質 ガラス工事


066)ガラスで怪我をしないために

ガラスは割れるものである。ついうっかりガラススクリーンに衝突したり、つまづいてガラススクリーンに当たったり、浴室で滑ってガラス戸で怪我をするなどの事故のケースがある。

1.ガラスを用いた開口部の安全設計指針

特に出入口まわりの事故が多く、これを防止するため、ガラスを用いた開口部の安全設計指針(建設省昭和61年5月31日付通達、平成3年4月4日付改定)が定められている。出入口とその近傍ではガラスが割れても怪我をしないように安全ガラスを使わなければならない。また、床面の近くにまでガラスが入った窓も安全ガラスにする。安全ガラスとは、割れても怪我をしにくいガラス、割れないガラスなどで、強化ガラス、飛散防止フィルム張りのガラス、合わせガラス、ポリカーボネート板などの樹脂ガラスをいう。


安全ガラスの範囲

2.人や物が当たる危険性がある場合は、衝突防止策

ガラスとわかり難いケースや、うっかり物を当てる可能性がある場合には、衝突防止のシールや安全柵の設置などが必要である。鉢植えの設置やディスプレイなどで、設置しないように運用上の配慮もできるが、これは次の対策である。

3.鏡は枠で固定する

壁や扉に鏡を張るとき、下地(合板や金属パネルなど)に接着材だけで取り付けるのはNGである。突然剥がれ落ち、怪我につながる。原因は接着材の経年劣化により接着力が無くなるため、或いは下地不良による接着力不足などのためであると考えられる。したがって、鏡の取付けは、接着力が無くなった時にも剥離、剥落しないように支持金物で機械的に固定することが重要である。また、鏡は湿気で裏面の銀引きが腐食する。湿気の多いところでは防湿性を有する鏡を使用する。鏡厚は5mm以上とする。


鏡の支持金物

1級建築施工管理技士 ガラス工事 自然破損する強化ガラス

建築品質 ガラス工事


067)自然破損する強化ガラス

ガラスは人や物が当たらなくても割れることがある。網入りガラスも割れるが、他に熱線吸収ガラスなどの熱割れや強化ガラスの自然破壊もある。高所や高層ビル外壁でのガラスの破損は非常に危険である。

1.強化ガラスは自然破損する

強化ガラスは普通ガラスを700℃近くまでに熱したあと急冷してガラスの表面に圧縮応力を発生させて強くしたガラスである。この強化ガラスは自然破損することがある。
一つは表面の微細な傷が圧縮応力層に徐々に進行して、あるとき突然破損する場合である。これは強化ガラスドアなどで生じやすい。もう一つは強化ガラスの製造段階で不純物などが混じっていると、その部分から自然破損する場合である。この自然破損を少しでも無くすために、ヒートソーク処理(再加熱処理)を行ってから受け入れることが重要である。しかしこれでも自然破損が全くなくなるとは言えない。そこで強化ガラスが万が一割れて落下しても、人を傷つけない高さで使用する。学校では学校用強化ガラス( t=4、5など)を用いるが、この場合は床面から12m以下で使用する。その他の建物の強化ガラスは3m以下で使用し、それ以上の場合は飛散防止フィルムを張るか、合わせガラスを使用する。飛散防止フィルムは劣化するので、定期的な点検やメンテナンスが必要である。

高層ビルで使用する倍強化ガラスや耐火ガラス、防火ガラスも強化ガラスであり、自然破損して落下する可能性があるので、ビル外壁に強化ガラスは使用しない。強化ガラスを使う場合は合わせガラスを使う。強化ガラスの日本のメーカー保証は、一般に10年である。しかし、施工費や仮設足場などの費用は別途発生するので、予め建築主への説明が必要である。

2.ガラスは熱割れすることがある

熱線吸収ガラスや熱線反射ガラスは熱割れすることがある。これは日射熱による熱応力によって破損を起こす現象である。透明ガラスでもまれに熱割れする。ガラスのエッジ強度が弱かったり、ガラス裏面の空間が少なく熱がこもったり、裏面の色が熱吸収しやすい濃色であったり、ガラス裏面にフィルムを張ったり、ガラス面の一部が影になったりする場合は熱割れする可能性がある。

対策は熱割れしにくい状態にするか、強化合わせガラスにするなどが必要である。ガラスブロックも裏面を塞ぐと熱割れしやすいのは同じである。カーテンウォールのスパンドレル部分など熱割れが予想される場合は、ガラスメーカーに確認する。

1級建築施工管理技士 ガラス工事 ガラスブロックの弱点

建築品質 ガラス工事


068)ガラスブロックの弱点

ガラスブロック(JIS A5212)は遮音性が良く、光を通しながらプライバシーを守るなどの機能を持っている。しかし、ガラスブロックは目地から水が入りやすく、ガラスブロックの熱膨張や地震の変位によってガラスブロックが割れることがある。

1.ガラスブロック専用アルミ枠を用いる

ガラスブロックを採用するときは、まずガラスブロック専用アルミ枠を用いる。この専用枠は上枠・縦枠に緩衝材を入れることができ、ガラスブロックの地震時の変位や熱膨張を吸収してくれる。ガラスブロックの緩衝材は地震時の変位に対応できる厚さとする。また、下枠は目地に入った水を排水する水抜き孔(径8mm以上、ピッチ1m)を設ける。


ガラスブロックのおさまり

2.目地部はすべてシール材にする

ガラスブロックが雨がかりにあるときは全ての目地をシールし、目地部からの雨水の浸入を止める。シールはガラスブロックや外壁を汚しにくいポリイソブチレン系のシールが望ましい。

3.力骨などはステンレス材とする

ガラスブロックにかかる耐風圧や地震力(面内・面外)などの力に対して、縦横600mm間隔の目地部に力骨(補強材)を入れる。力骨の繋ぎ筋や補強筋はステンレスのSUS304を使用する。

4.大断面のガラスブロック壁には伸縮目地を設ける

ガラスブロックのユニットの高さは6m以内とし、荷重はユニットごとに受ける。大断面のガラスブロックは5m以内ごとに伸縮目地を設ける。高さ方法はユニットごとに伸縮目地を設ける。

1級建築施工管理技士 ガラス工事 高窓の清掃方法

建築品質 ガラス工事


069)高窓の清掃方法

窓は建物のデザイン要素として重要である。高い位置に設けるハイサイドライトや枠をシンプルにした外壁同面のFIX窓、景色を額縁に納めたような窓、連窓でパノラマのような窓、大きな片開き窓など、どれも意匠を考えた窓である。しかし、窓ガラスの清掃について考慮されていないケースも見受けられるので注意したい。

1.清掃しやすい窓にする

最も清掃しやすいのは引き違い窓で、網戸の清掃やガラスの取替えも容易である。軸回転窓、滑り出し窓も清掃しやすい。大型の窓ではドレーキャップ窓のような、換気時内倒し、清掃時内開きにできる機構が付いた窓もある。一方片引き窓は、障子が外動でも内動でも、室内側からガラスの外面を清掃することができない。片開きの窓も清掃しにくい。FIX窓はもちろん不可能である。特に住宅では清掃のしやすが重要である。


清掃しやすい窓、しにくい窓

2.清掃方法は設計時に確認する

室内から安全に清掃できるのが望ましい。もちろん1階であれば、外部から清掃できれば良い。3階までは高所清掃具を用いれば清掃は可能である。


高所清掃具による清掃

屋上からぶらさがって清掃する場合は、屋上に吊環(メンテナンス用金物)を計画することも必要である。高層ビルでは自走式清掃ゴンドラが必要になる。屋上に自走式ゴンドラを設置するときは走行振動音が下階に伝わらないように防振機構を設けたり、速度制限を設けるなども考慮する。低層部の高い吹抜けや軒天井の下のガラス面は、天井吊りのチェアーゴンドラなどを検討する。


高所の清掃

設計段階で建築主に窓ガラスのメンテナンスに対する考えや方法を説明し確認する。施工者も工事の早い段階で確認すれば対応が可能である。

1級建築施工管理技士 外壁工事 その他 EXP.J

建築品質 外壁その他の工事


070)エキスパンション・ジョイント

二つの構造体を接続する部分をエキスパンション・ジョイント(EXP.J)と呼ぶ。二つの構造体は、地震などで別々の変位をする。地震時にEXP.J部が壊れたり、雨水が浸入しないようにしなければならない。

1.躯体クリアランスを確保する

二つの構造体が大地震時に変位しても衝突しないように、それぞれの最大変位の和をEXP.Jのクリアランス(あき寸法)として確保する。各階におけるEXP.Jも同様である。


EXP.Jのクリアランス

2.変位角に対しての部材設計の考え方

どんな大地震が来ても何も損傷しない設計は現実的ではない。そこで、次のように地震による層間変形角に対してどの程度の仕様にするか目安としたい。層間変形角は構造形式によって変わるので、あくまで目安である。この部材設計の考え方は部位や重要度によっても判断が異なるので、建築主に確認する。

①小地震時の層間変形角(1/800)に対してはシールの打替えも必要ないこと。

②中地震時の層間変形角(1/400)に対してはシールの部分補修程度で済むこと。

③大地震時の層間変形角(1/100)には金物など二次部材は壊れてもやむを得ないが、脱落しないこと。

3.外部のEXP.Jの留意点

①変位量と動きにスムーズに対応できる納まりとする。EXP.Jは主にスライド型、蛇腹型、同面扉型の3タイプがある。


EXP.Jのタイプ

②法的な防火構造や防火区画を確実に遵守する。EXP.J部に耐火区画が必要な場合は耐火帯を設ける。

③雨水を内部にいれない。万が一雨水が入ってもそれを受けて外部へ排水する仕組みにする。笠木を片側固定とし、笠木とパラペットの隙間は止水ゴムなどで二重に雨水が入らないようにする。万が一入った水はその下の止水・排水シートで集めて排水する。


EXP.Jの例

1級建築施工管理技士 外壁工事 その他 免震の可動範囲

建築品質 外壁その他の工事


071)免震の可動範囲

建物を支える免震支承と制震装置(ダンパー)により地震エネルギーを吸収する免震構造を有する建物が普及してきた。基礎の部分に免震装置を設置する基礎免震、建物中間部に設置する中間免震などがあるが、いずれも地震エネルギーを吸収し、免震層の上部建物にかかる地震力を小さくし、揺れ(加速度)を小さくするものである。その変位の量のクリアランス寸法は、設計図の特記仕様書によるが、一般的には大地震時の免震層でも変位は500mm程度と大きく、免震層の取り合い部はその変位を許容するディテールとなる。

1.躯体の免震クリアランスを確保

免震クリアランスは最大変位量に躯体の施工誤差も見込んで、確実にクリアランスを確保することが重要である。また、中地震によって動いた上部躯体がもとの位置に戻らない。すなわち残留変位が発生することもあるので、それらを想定して決定する。

免震クリアランス:W
W ≧ 最大変位量 + 施工誤差 + 予想残留変位量
とする。

2.設備配管は免震クリアランスから離して設置する

大地震時に、建物に被害がでなくても、設備機能に支障をきたすと、企業活動や生活に影響を及ぼす。設備機器の耐震(機器転倒や配管・配線に損傷のないこと)はもちろんであるが、免震構造の場合は、

①設備配管・配線が躯体の免震クリアランスの間に存在しないこと。すなわち躯体の変位による衝突で配管・配線が破損しないことが重要である。

②地震による変位に対応して配管・配線が追従できるように免震継手を採用しておくことが重要である。建築の雨水排水管はできるだけ地上で外部へ開放する。

3.免震装置のメンテナンス動線の確保

免震装置は建物を支えて風や小地震にも対応しており、24時間働いているといってもよい。定期的な点検・メンテナンスと大地震後損傷があった免震支承やダンパーの取替え、耐用年数が来たときの免震支承の取替えなどが必要である。そのための点検ルートや資材搬入動線をあらかじめ確保することが重要である。

4.仕上げ材の対応と残留変位

免震層の取合い部においては、変位量が大きなEXP.Jとなるので、それに対応する仕組みが必要になる。また、変位の量が大きいだけではない。中地震でも、揺れがおさまっても完全に元の位置におさまるとは限らず、数㎝程度、元の位置からずれてしまう残留変位が生じる。その残留変位を考慮した納まりが必要である。


免震の変位(平時)


免震の変位(地震時)