1節 一般事項
5.1.1 適用範囲
(a) この章は,鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造等の鉄筋工事に適用されるほか、補強コンクリートブロック造やプレキャストコンクリート工事等でも引用されている。
(b) 作業の流れを図5.1.1に示す。
図5.1.1 鉄筋工事の作業の流れ
(c) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。ただし、継手の工法については「標仕」5.3.4(a)で標準としているガス圧接継手を対象として示す。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
(1) 鉄筋工事の施工計画書
① 工程表
(材料、柱、壁、梁、階段スラブ等の検査時期及び関連設備工事の期間)
② 施工業者名、作業の管理体制
③ 鉄筋の種別、種類、製造所名及びその使用区分
④ 規格品証書(7.2.10 (a)(1)参照)の提出時期
⑤ 荷札の照合と提出時期(ラベル、鉄筋のマーク等の確認方法)
⑥ 鉄筋の試験(試験所、回数、試験成績書)
⑦ 材料の保管場所及び貯蔵方法
⑧ 材料の加工場所(現楊又は工場の別、規格及び機械設備)
⑨ 鉄筋加工機具(切断、曲げ)
⑩ 鉄筋の継手位置、継手長さ、定着長さ及び余長
⑪ 異形鉄筋にフックを付ける箇所
⑫ 鉄筋のかぶり厚さ及びスペーサーの種類
⑬ 梁、壁、スラブ等の開口部補強、
屋根スラブ、片持スラブ、壁付きスラブ、パラペット等の特殊補強の要領
⑭ 鉄筋位置の修正方法(台直し等)
⑮ 鉄筋組立後の乱れを防止する方法(歩み板の使用等)
⑯ 関連工事との取合い(柱付きコンセント、スラブ配管、壁配管、貫通孔等)
⑰ 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者.品質記録文書の書式とその管理方法等
(2)ガス圧接の施工計画書
① 工程表(圧接の時期)
② 施工業者名及び作業の管理体制
③ ガス圧接技技量資格者の資格種別等(資格証明書等)
④ ガス圧接技量資格者の人数
⑤ ガス圧接器具
⑥ 圧接部の外観試験(全圧接部)
⑦ 圧接部の超音波探傷試験(本数、試験方法、試験位置、探傷器、試験従事者、成績書)
⑧ 圧接部の引張試験(本数、採取方法、作業班ごとの施工範囲、試験所、成績書、鉄筋切断後の補強方法)
⑨不良圧接の修正方法
5.1.2 基本要求品質
(a) 鉄筋工事では,使用するコンクリートの強度との組合せにおいて必要な品質性能の鉄筋コンクリート構造物となるようにその種類が設計図書に指定される。基本要求品質としては、指定された種類の材料が工事に正しく使用され、その本数や配筋状態に誤りがなく、定着や継手が正しく施工されていることであり、このことを証明できるようにしておく必要がある。
具体的な例としては、使用する鉄筋材がJISマーク表示品であれば、ミルシート及びチャージ番号の表示された鋼板(メタルタック)並びに製造所、加工場から現場までの経歴を証明する資料を整備することが考えられる。
(b)「組み立てられた鉄筋は、所定の形状及び寸法を有し、所定の位置に保持されていること。」とは鉄筋コンクリート構造物の一部として出来上がった状態をいっており、これをコンクリート打込み後に確認することは現実的には不可能となる。完成時にこれらの要求事項を満足していることを証明するためには、施工途中の適切な時点で施工が正しく行われていることを何らかの方法で確認し記録することが重要である。
具体的には、鉄筋の加工段階での形状・寸法の確認・記録、組み上げた鉄筋のかぶり厚さの確認・記録等が考えられる。また、この寸法及び位置には施工上必要な許容誤差を含んだものとして考える必要があり、部材の大きさ立地条件、取り合う部材の状況等を勘案して適切に定める。ただし、「標仕」表5.3.6で規定する鉄筋の最小かぶり厚さは、法律に定められたものであり、これを下回ることのないようにしなければならない。
「鉄筋の表面は、所要の状態であること。」とは施工途中の、特にコンクリート打込み直前における鉄筋に、コンクリートとの付着性能を阻害するような油脂類、錆、泥、セメントペースト等が付着していない表面状態とすることであり、その程度を定める必要がある。具体的には、油脂類、浮き錆、セメントペースト類は、コンクリート打込み前に除去しておく必要があり、この付着物の程度、除去のための方法と処理後の確認方法をあらかじめ施工者に提案させ、また、確認したことを記録に残す。
なお、錆のうち、浮いていない赤錆程度のものについては、コンクリートとの付着を阻害することがないので、無理にこれを落とす必要はない。
(c) 鉄筋は、鉄筋コンクリートの構成部材として、主として引張力を負担しているが、部材に作用するこれらの力をスムーズに伝達させる必要がある。このために必要となる継手及び定着の方法が設計図書に指定されている。「標仕」においては、一般的な場合における継手及び定着の方法が示されており、通常は、定着の方法及び長さ、継手の位置及び長さを確保すればよい。特別な形状の部材にあっては、設計図書に特記されるため、これによる。
なお配筋の状況により、規定された定着や継手を設けることができない場合にあっては、「作用する力を伝達」できるような定着や継手の方法を施工者に提案させ、これを元に設計担当者と打合せを行うなどの方策をとらなければならない。
5.1.3 配筋検査
(a) 一般事項
(1) 材料の種類、鉄筋の加工・組立及びかぶり厚さの精度は、鉄筋コンクリートの構造性能及び耐久性に著しく影響する。このため、「標仕」5.1.3では主要な構造部の配筋はコンクリート打ちに先立ち監督職員が検査を行うこととしている。
(2) 鉄筋が完全に組み立てられたあとでは、修正が困難な場合があるので、工程の進捗に対応した適切な時期に検査を行う必要がある。
(3) 配筋検査終了後に埋込み配管が設けられる場合があるので、コンクリート打ちに先立ち、必要に応じて、再度検査を行う。
(b) 検査内容
(1) 組立時の確認
① 種別、径、本数
② 折曲げ寸法、余長、フック
③ 鉄筋のあき、かぶり厚さ
④ 定着・継手の位置、長さ
⑤ 補強筋、差し筋
⑥ スペーサーの配置、数量
⑦ ガス圧接継手の抜取試験(超音波探傷試験又は引張試験)
⑧ 機械式継手等の試験(全数又は抜取り)
⑨ 配管等の取合い
(2) 検査後の手直し修正確認