2章 仮設工事 1節 共通事項

2章 仮設工事


1節 共通事項

2.1.1 一般事項

(1) 仮設については、公共工事標準請負契約約款に基づく工事請負契約書第1条第3項において、「仮設、施工方法その他工事目的物を完成するために必要な一切の手段については、この契約書及び設計図書に特別の定めがある場合を除き、受注者がその責任において定める。」と規定しており、受注者がその責任において履行することができる。

したがって、「標仕」2章では、工事の施工に当たり発注者として示すべき最低限の事項について規定している。

(2) 仮設工事計画に当たっては、仮設物によって建物の品質を損なうことなく、安全で効率的な作業を行えるよう検討する必要がある。また、現場近隣の環境保全に配慮するとともに、仮設資材の有効活用も省資源対策上必要である。

(3) (1)で述べたとおり仮設計画は監督職員の承諾事項ではないが、参考までに工事の総合仮設をまとめた施工計画書の記載事項を示すと、概ね次のようになる。

① 工事目的物の位置と敷地との関係(配置と高低)
② 仮囲いの位置、構造及び主要部材の種類
③ 材料運搬経路と主な作業動線
④ 仮設物等の配置(監督職員事務所、受注者事務所、休憩所、危険物貯蔵所、材料置場、下小屋、廃棄物分別置場等)
⑤ 排水経路、工事用電力並びに水道の引込み位置及び供給能力
⑥ 足場並びに仮設通路の位置、構造及び主要部材の種類
⑦ 揚重機(リフト、クレーン、エレベーター、ゴンドラ等)の種類及び配置
⑧ 作業構台の位置、構造及び主要部材の種類
⑨ 墜落防止及び落下物防止並びに感電防止の施設
⑩ 近隣の安全に対する処置(近隣使用道路の配置計画図等)

2.1.2 仮設材料

(1) 一般事項

仮設に使用する材料は、それぞれの用途に応じ、品質、性能等が適正でなければならない。一般に仮設材料は、工事現場において長期間にわたり、かつ、繰り返し使用されることから、品質の確認が容易で性能の低下が生じにくいものでなければならない。

また、仮設材料には、その品質又は使用方法等について労働安全衛生法、消防法、 JIS (日本産業規格)、その他団体等の定める基準による規制等を受けるものがあるので、これらについてあらかじめ検討・確認しておくことが必要である。

特に、足場を構成する仮設機材については、長期間繰り返して使用されるうちにその強度が低下し倒壊事故等重大な災害につながるところから、労働安全衛生法令及び厚生労慟大臣が定める規格に規定される要件を具備するものを使用することが必要である。また、生産、流通段階での安全性の確保を図るために、(-社)仮設工業会では仮設機材に対し、材科、構造及び強度等を規定した認定基準を定めている。

さらに、経年仮設機材(現場で一度でも使用されたことのある仮設機材)が、繰り返し使用されている間の品質、性能等確保のために、原生労働省から経年仮設機材の適正な管理のための通達「経年仮設機材の管理指針」(平成8年4月4日労働省基発第223号の2)(以下、この章では「管理指針」という。)が示されている。

(2) 仮設機材の強度等の確認及び適正な管理
作業現場の安全確保には、仮設機材の製造時における強度等の確認・保証及び経年仮設機材の適正な管理が重要である。仮設機材の強度等の確認・保証について、(-社)仮設工業会では、製造時における足場用機材は、厚生労働大臣が定める規格及び認定基準に適合する旨を、刻印等により機材の全数に表示することを行っている。その表示等は、機材の種類により表2.1.1のとおりである。

なお、足場用機材の規格等に定めるもの以外のものの使用に当たっては、当該機材の製造者あるいは使用者により強度等について確認されたものであることが必要である。

現在製造されている主要な仮設機材は、防錆処理としてめっき、特に、浴融亜鉛めっきが施されているため、錆による肉厚の減少の懸念が少なくなった一方で、より長期にわたって使用される傾向となっており、経年による性能低下がないように適正に管理された仮設機材の使用が必要となる。仮設機材は、変形(曲がり、へこみ、反り等)及び損傷(亀裂、摩耗等)が直接性能低下の要因となるので、経年仮設機材の適正な管理は欠かすことができない。

このことから、厚生労働省の管理指針で規定している経年仮設機材に対して行う管理は、各機材ごとに定められた部位及び項目ごとに変形、損傷、錆等の程度による「選別」、経年仮設機材をいつでも使用できる状態に保持するための「整備」、機材を再使用可能な状態に復元する「修理」(部品交換を含む。)、さらに、性能試験、廃棄及び表示にわたるまで一連の管理基準等が明らかにされている。管理指針に基づき、(-社)仮設工業会では、仮設機材の整備、修理等を行っている機材センター等に対し、「適用工場制度」により、管理が適正である工場を認定し、経年仮設機材が適正な管理のもとに作業現場に提供されるようにしている。

表2.1.1 主な仮設機材とその表示

18章 塗装工事 1節 共通事項

18章 塗装工事
01節 共通事項

18.1.1 一般事項
(1) この章は、美装及び防食を目的とした建築物の内外部の塗装工事を対象としている。
対象とする素地は、木部、鉄鋼面・亜鉛めっき鋼面及びモルタル面・プラスター面等の左官塗り面、コンクリート面・ALCパネル面・押出成形セメント板面、せっこうボード・その他のボード面等である。
「標仕」での塗装工事は、一般的な工事現場(一部工場等)で行う常温での塗装を想定しており、工場等で行う焼付け塗装については対象外である。
なお、「標仕」各節名称(    )内の略号は、原則的には「JASS 18 塗装工事」に準拠したものである。
(2) 作業の流れを図18.1.1に示す。
図18.1.1_塗装工事の作業と流れ.jpeg
図18.1.1 塗装工事の作業の流れ
(3) 施工計画書の記載事項は、概ね次のとおりである。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
① 工程表(色見本の決定、施工(全体、部屋別、階別等)等の時期)
② 製造所名、施工業者名及び作業の管理組織
③ 塗装箇所及び素地若しくは下地の材料の種類による塗料の種別(防火材料の指定がある場合には認定品)並びに工程
④ 色調別による塗装範囲
⑤ 工場及び現場塗装の区分
⑥ 工法(はけ、吹付け、ローラー等)
⑦ 養生方法(施工中及び完了後)
⑧ 塗料の保管方法、安全管理の方法等
⑨ 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等
18.1.2 基本要求品質
(1) 塗装は建築物の内外部に施され、仕上げとしての美装の目的のみでなく、各種劣化外力(雨水、結露水、飛散・浮遊物質、二酸化炭素ガス、紫外線等)から塗装された材料を保護することによって、建築物の耐久性を向上させることを目的としている。
塗膜の性能に影響を及ぼす要因の一つとして、使用する塗料の耐久性があげられる。これは上塗り塗料だけでなく、中塗り、下塗り及び素地ごしらえに用いる材料についても同様である。これらの材料によって総合的な塗膜が構成され、硬化塗膜としての性能を発揮する。
したがって、塗装に使用する塗料その他の材料は、定められた品質及び性能を有するものとし、そのことが分かるように整理しておかなければならない。
(2) 塗装仕上り面の出来ばえとしての要求は、各塗り工程の種別であるA種、B種等としてグレードを指定される。実際の工事に際しては、要求に合わせて塗装部位ごとに、どの程度の出来ばえとするかをあらかじめ品質計画で定めておくことが必要である。
この仕上り面は、最終の上塗りだけではなく、各塗り工程ごとで考えるようにする。例えば、下塗りであれば次に塗る中塗りとの付着性を確保できるような面の状態となるように仕上げるとともに、所定の表面状態とする。
塗料の種類と塗装工程の組合せによっても、塗装の仕上りが異なることに注意することが重要である。
「標仕」では、一般的な塗装工程を考慮して、指定する標準的な工法、塗付け量、工程間隔時間及び最終養生時間等を守れば、所要の表面状態を確保できるようになっている。
(3) 硬化塗膜に対する要求性能としては、使用する塗料だけではなく適正な塗装工程との組合せで示されている。
塗膜は、所定の材料を所定の塗付け量、塗り工程で施工することによって要求される耐久性を有し、素地の耐火性等の性能を損なうものであってはならない。そのためには、これらの性能を阻害するような欠陥がない塗膜にすることは当然である。
塗膜の構成は耐久性に及ぼす影響が大きく、例えば、素地や塗膜の表面を調整するために使用するパテ材料の介在が著しい場合には耐久性が劣ってくる。このようなことを避けるためには、塗り工程の前に施す素地ごしらえの段階で、適切な処理を十分に行うことが重要である。
塗料に対する防火材料の認定は、所定の塗膜厚さで基材と同等の防火性能をもっものとして認められているものである。出来ばえを重視して、いたずらに厚く塗り過ぎることは防火性能に悪影響を及ぽすため、避けなければならない。
18.1.3 材料
(1)「標仕」では、屋内で使用する材料の選定に当たっては、揮発性有機化合物の放散による健康への影響に配慮することにしている。
本章では、シックハウス症候群の原因物質の一つであると考えられているホルムアルデヒドに関して、屋内で使用する塗料からの放散量は、JIS等の材料規格において放散等級の規定がある場合には特記によることとし、特記がなければ、F☆☆☆☆の塗料を用いることにしている。
建築基準法に関連するシックハウス症候群対策及びホルムアルデヒド放散量等の詳細、また、告示対象及び告示対象外でJIS等に放散等級等が規定されている塗料の表示とその確認方法等は、19章10節を参照されたい。
(2)「標仕」では、防火材料の指定がある場合は、建築基準法に基づき、指定又は認定を受けたものとしている。防火材科の確認は、(-社)日本塗料工業会の防火材料等証明書又は製品容器の表示マークによればよい。図18.1.2に表示マークの例を示す。
図18.1.2_製品容器の表示マークの例.jpeg
図18.1.2 製品容器の表示マークの例
(3) 塗料の色は、繊細なものであり、大量の塗料を現場において混合して同じ色調とすることは不可能に近い。このため、上塗塗料は指定した色の色彩や品質にばらつきが生じないよう、製造所において調合を行う。
製造所での調合には、所定の期間が必要であるため、工程に適合する時期に設計担当者と色彩計画を打ち合わせて決定する。
なお、一度に調色することが可能な少量の場合に限って、標仕では、同一の上塗登料の製造所の塗料を用いて現場調色することを認めている。
(4) 「標仕」では、塗装に用いる副資材は上塗塗料の製造所が指定する製品とすることを規定している。
(5) 「標仕」で規定された塗付け量は被塗物に塗り付けた量を示し、ロスを含まない。塗付け量を測定する場合は平らな面で行う。また、施工時に調整用として加えたシンナー等は含まないものとする。
(6) 塗料の種類と適用素地
(ア)「標仕」で規定している塗料の種類と適用素地との組合せを、表18.1.1に示す。
(イ)「標仕」では規定していないその他の主な塗料の種類と特徴を、表18.1.2に示す。
表18.1.1 塗料の種類と適用素地
表18.1.1_塗料の種類と適用素地.jpg
表18.1.2 「標仕」に規定されていない主な塗料の種類と特徴
表18.1.2_[標仕」に規定されていない主な塗料の種類と特徴.jpg
18.1.4 施工一般
(1) 塗装準備
(ア) 塗料の状態
(a) 搬入された塗料及び溶剤(シンナー)は、消防法等による危険物に指定されているものが多く、保管、貯蔵に当たっては、これら法令等を厳守しなければならない。
(b) 消防法関連法令とその略称を表18.1.3に示す。
表18.1.3 消防法関連法令とその略称
表18.1.3_消防法関連法令とその略称.jpeg
(c) 危険物と指定された塗料容器には、危険物の類別、危険物の等級について図18.1.3の例に示すような表示をすることが義務付けられており、この内容に応じた対応をしなければならない。
図18.1.3_危険物の種類、等級の表示の例.jpeg
図18.1.3 危険物の種別、等級の表示の例
なお、消防法で定められる第四類(引火性液体)となる危険物の等級区分は、次のとおりである。
① 危険等級 Ⅰ :特殊引火物(発火点が100℃以下のもの又は引火点が−20℃以下で沸点が40℃以下のもの)
② 危険等級Ⅱ:第一石油類(引火点21℃未満のもの)とアルコール類(炭素の原子数が1~3個までの飽和一価アルコール)
③ 危険等級Ⅲ:第二石油類(引火点が21℃以上70℃未満のもの)、第三石油類(引火点が70℃以上200℃未満のもの)、第四石油類(引火点が200℃以上250℃未満のもの)、動植物油類(引火点が 250℃未満のもの)
(d) 現場で使用する塗料関係の危険物の指定、貯蔵等についての消防法及び関連法令の関連部分の抜粋を次に示す。
危険物の指定及び貯蔵に関する法令
消防法(昭和23年法律第186号、最終改正令和3年5月19日法律第36号)
(用語の定義)
第2条
この法律の用語は左の例による。
⑦ 危険物とは、別表第1の品名欄に掲げる物品で、同表に定める区分に応じ同表の性質欄に掲げる性状を有するものをいう。
(危険物等の貯蔵等の基準設定の市町村条例への委任)
第9条の4
危険物についてその危険性を勘案して政令で定める数量(以下「指定数量」という。)未満の危険物及びわら製品、木毛その他の物品で火災が発生した場合にその拡大が速やかであり、又は消火の活動が著しく困難となるものとして政令で定めるもの(以下「指定可燃物」という。)その他指定可燃物に類する物品の貯蔵及び取扱いの技術上の基準は、市町村条例でこれを定める。
② 指定数量未満の危険物及び指定可燃物その他指定可燃物に類する物品を貯蔵し、又は取り扱う場所の位置、構造及び設備の技術上の基準(第十七条第一項の消防用設備等の技術上の基準を除く。)は、市町村条例で定める。
(危険物の貯蔵及び取扱いの制限等)
第10条
指定数量以上の危険物は、貯蔵所(車両に固定されたタンクにおいて危険物を貯蔵し、又は取り扱う貯蔵所(以下「移動タンク貯蔵所」という。)を含む。以下同じ。)以外の場所でこれを貯蔵し、又は製造所、貯蔵所及び取扱所以外の場所でこれを取り扱ってはならない。ただし、所轄消防長又は消防署長の承認を受けて指定数量以上の危険物を、10日以内の期間、仮に貯蔵し、又は取り扱う場合は、この限りでない。
② 別表第1に掲げる品名(第11条の4第1項において単に「品名」という。)又は指定数量を異にする2以上の危険物を同一の場所で貯蔵し、又は取り扱う場合において、当該貯蔵又は取扱いに係るそれぞれの危険物の数量を当該危険物の指定数量で除し、その商の和が1以上となるときは、当該場所は、指定数量以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱つているものとみなす。
③ 製造所、貯蔵所又は取扱所においてする危険物の貯蔵又は取扱いは、政令で定める技術上の基準に従つてこれをしなければならない。
④ 製造所、貯蔵所及び取扱所の位置、構造及び設備の技術上の基準は、政令でこれを定める。
(危険物取扱者)
第13条
政令で定める製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者は、甲種危険物取扱者(甲種危険物取扱者免状の交付を受けている者をいう。以下同じ。)又は乙種危険物取扱者(乙種危険物取扱者免状の交付を受けている者をいう。以下同じ。)で、 6月以上危険物取扱いの実務経験を有するもののうちから危険物保安監督者を定め、総務省令で定めるところにより、その者が取り扱うことができる危険物の取扱作業に関して保安の監督をさせなければならない。
② 製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者は、前項の規定により危険物保安監督者を定めたときは、遅滞なくその旨を市町村長等に届け出なければならない。これを解任したときも、同様とする。
③ 製造所、貯蔵所及び取扱所においては、危険物取扱者(危険物取扱者免状の交付を受けている者をいう。以下同じ。)以外の者は、甲種危険物取扱者又は乙種危険物取扱者が立ち会わなければ、危険物を取り扱ってはならない。
別表第1 (第2条、第10条、第11条の4関係)第四類抜粋
危険物の指定及び貯蔵に関する法令_別表第1第四類抜粋.jpeg
備 考

引火性液体とは、液体(第三石油類、第四石油類及び動植物油類にあっては、1気圧において、温度20度で液状であるものに限る。)であって、引火の危険性を判断するための政令で定める試験において引火性を示すものであることをいう。
十一
特殊引火物とは、ジエチルエーテル、二硫化炭素その他1気圧において、発火点が100度以下のもの又は引火点が零下20度以下で沸点が40度以下のものをいう。
十二
第一石油類とは、アセトン、ガソリンその他1気圧において引火点が21度未満のものをいう。
十三
アルコール類とは、1分子を構成する炭素の原子の数が1個から3個までの飽和一価アルコール(変性アルコールを含む。)をいい、組成等を勘案して総務省令で定めるものを除く。
十四
第二石油類とは、灯油、軽油その他1気圧において引火点が21度以上70度未満のものをいい、塗料類その他の物品であって、組成等を勘案して総務省令で定めるものを除く。
十五
第三石油類とは、重油、クレオソート油その他1気圧において引火点が70度以上200度未満のものをいい、塗料類その他の物品であって、組成を勘案して総務省令で定めるものを除く。
十六
第四石油類とは、ギヤー油、シリンダー油その他1気圧において引火点が200度以上250度未満のものをいい、塗料類その他の物品であって、組成を勘案して総務省令で定めるものを除く。
十七
動植物油類とは、動物の脂肉等又は植物の種子若しくは果肉から抽出したものであつて、1気圧において引火点が250度未満のものをいい、総務省令で定めるところにより貯蔵保管されているものを除く。
危険物の規制に関する政令(昭利34年政令第306号、最終改正令和元年12月13日 政令第183号)
(危険物の指定数量)
第1条の11
法第9条の4の政令で定める数量(以下「指定数量」という。)は、別表第三の類別欄に掲げる類、同表の品名欄に掲げる品名及び同表の性質欄に掲げる性状に応じ、それぞれ同表の指定数量欄に定める数量とする。
(指定可燃物)
第1条の12
法第9条の4の物品で政令で定めるものは、別表第4の品名欄に掲げる物品で、同表の数量欄に定める数量以上のものとする。
(貯蔵所の区分)
第2条 法第10条の貯蔵所は、次のとおり区分する。
1 屋内の場所において危険物を貯蔵し、又は取り扱う貯蔵所(以下「屋内貯蔵所」という。)
(屋内貯蔵所の量準)
第10条 屋内貯蔵所(次項及び妨3項に定めるものを除く。)の位置、構造及び設備の技術上の基準は、次のとおりとする。(省略)
別表第3 (第1条の11 関係)第四類 抜粋
危険物の指定及び貯蔵に関する法令_別表第3第四類抜粋.jpeg
別表第4 (第1条の12関係)
危険物の指定及び貯蔵に関する法令_別表第4.jpg
備 考

可燃性液体類とは、法別表第1備考第十四号の総務省令で定める物品で液体であるもの、同表備考第十五号及び第十六号の総務省令で定める物品で1気圧において温度20度で液状であるもの、同表備考第十七号の総務省令で定めるところにより貯蔵保
管されている動植物油で1気圧において温度20度で液状であるもの並びに引火性液体の性状を有する物品(1気圧において、温度20度で液状であるものに限る。)で1気圧において引火点が250度以上のものをいう。
危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号、最終改正令和3年7月21日総務省令第71号)
(品名から除外されるもの)
第1条の3
5 法別表第1 備考第十四号の組成等を勘案して総務省令で定めるものは、可燃性液体品が40パーセント以下であって、引火点が40度以上のもの(燃焼点が60度未満のものを除く。)とする。
6 法別表第1 備考第十五号及び十六号の組成を勘案して総務省令で定めるものは、可燃性液体量が40パーセント以下のものとする。
(e) 危険物貯蔵所の構造等に関して関係法令等には、主として次のような事項が定められている。
① 不燃材料で造った独立した平屋建てとし、周囲の建物から規定どおり離す。
② 屋根は軽量な不燃材料で葺き、天井は設けない。
③ 建物内の置場は、耐火構造の室を選ぶ。
④ 床には不浸透性の材料を敷く。
⑤ 消火に有効な消火器、消火砂等を備える。
⑥ 十分な換気を図る。
⑦ 窓及び出入口には防火設備を設ける。
⑧ 戸には戸締りを設け、「塗料置場」「火気厳禁」等の表示を行う。
(イ) 塗料の取扱い
(a) 塗料、シンナー等、化学物質を用いて施工する場合には、労慟安全衛生、環境対応への処置を行わなければならない。
(b) 有機溶剤中覇予防について
有機溶剤を使用して作業する場合の労働者の健康障害を防止するための措置については、労働安全衛生法、有機溶剤中誨予防規則等で、作業主任者の選任や取扱い上の注意事項等の掲示等が定められている。
① 有機溶剤作業主任者を選任しなければならない作業場所は、有機溶剤中毒予防規則第1条に次のように定められている。
1)船舶の内部
2)車両の内部
3)タンクの内部
4)ピットの内部
5)坑の内部
6)ずい道の内部
7)暗きょ又はマンホールの内部
8)箱桁の内部
9)ダクトの内部
10)水管の内部
11)屋内作業場及び前各号に掲げる場所のほか、通風が不十分な場所
「通風が不十分な場所」とは、天井、床及び周壁の総表面積に対する窓その他の直接外気に向かって解放しうる開口部の面積の比率が3%以下の屋内作業場をいう。
通風が不十分な船舶の内部及び車両の内部については上記同様に取り扱う。
② 有機溶剤作業主任者の職務は、有機溶剤中毒予防規則第19条の2に次のように定められている。
事業者は、有機溶剤作業主任者に次の事項を行わせなければならない。
1) 作業に従事する労働者が、有機溶剤により汚染され又はこれを吸入しないように、作業の方法を決定し、労働者を指揮すること。
2) 局所排気装置、プッシュプル型換気装置又は全体換気装置を1箇月を超えない期間ごとに点検すること。
3) 保護具の使用状況を監視すること。
4) タンクの内部において有機溶剤業務に労働者が従事するときは、第26条各号に定める措置が講じられていることを確認すること。
(c) 安全データシート(SDS)
塗料は、複数の化学物質から構成されており、その有害物による労働者の労働災害を防止したり環境への影響を考慮して、製造業者はSDS (Safety Data Sheet:安全データシート)の交付を労働安全衛生法等で義務付けられている。
その内容には、次のようなことが記載されており、施工に当たっては、これらを十分に確認し、安全・衛生対策を講じて作業を進めるとともに、廃棄物の取扱いにおいても、(g)に示すような廃棄上の注意事項に基づき処理しなければならない。
1) 安全データシートを作業場所の見やすい場所に常時掲示し、又は備え付けるなどの方法により、労働者の利用に供すること。
2) 安全データシートを活用して、安全衛生教育を行うこと。
3) 安全データシートを確認して、化学物質に関わる労働災害を防止するために必要な処置を講ずること。
4) 廃棄物処理に際して安全データシートの「廃棄上の注意」に基づいた処理を行うこと。
5) 安全データシート「環境影響情報」等に基づき、第三者等への現境管理を行うこと。
6) 安全衛生委貝会において、取り扱う化学物質の有害性、その他の性質について関係者の理解を深めるとともに、その適切な取扱い方法について調査を行うこと。
(d) 製造物責任法(PL法)への対応
製造業者は、取扱い説明書、技術資料、警告ラベル、安全データシート(SDS)等を完備し、「製造物責任法(PL法)」(平成6年法律第85号)に基づいて対応し、施工業者への情報提供を徹底し、施工業者はこれら情報に従った作業及び廃棄物処理等をしなければならない。
(e) 化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)
① 職場で化学物質を取り扱う際に、その危険性又は有害性、適切な取扱方法等を知らなかったことによる爆発、中毒等の労働災害が発生している。このような労働災害を未然に防止するには、その化学物質の危険性又は有害性の情報が確実に伝達され、伝達を得た事業場は、その情報を活用して適切な化学物質管理を推進することが重要である。
国際的には、平成15年に引火性や発がん性等の危険有害性の各項目にかかわる分類を行い、その分類に基づいて絵表示や注意喚起語等を含むラベル及び安全データシート(SDS)を作成・交付することなどを内容とする「化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)」が、国際連合から勧告として公表された。このGHS国連勧告を踏まえ、表示・文書交付制度を改普した改正労働安全衛生法が、平成18年12月1日に施行された。容器にはGHSに対応するラベル表示をして、文書としてはGHSに対応する情報を含む安全データシート(SDS)を提供しなければならない。
国内では平成23年まで、MSDS(化学物質等安全データシート)と呼ばれていたが、国際整合の観点からGHSで定義されているSDSに統一された。
(参考GHS : Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)
② GHSに対応するラベルの例を図18.1.4に示す。ラベルには、「製品の名称」、「注意喚起語」、「絵表示(標章)」、「危険有害性情報」、「注意書き」、「供給者の特定」の情報が盛り込まれる。これらの概要を次に示す。
1) 「製品の名称」は、該当品の名称が記載される。
「成分」は、表示義務対象物質に該当するものが記載される。
2) 「注意喚起語」は、GHS付属書3又はJIS Z 7253 (GHSに基づく化学品の危険有害性情報の伝達方法 – ラベル、作業場内の表示及び安全データシート(SDS))附属書Aに割り当てられた「注意喚起語」の欄に示されている文言(「危険」又は「警告」)が記載される。
なお、危険有害性クラス及び危険有害性区分等が決定されない場合は、注意喚起語の記載を要しない。
3) 「絵表示(標章)」は、GHS付属書3又はJIS Z 7253附属書Aに割り当てられた「絵表示」の欄に記載されている標章が記載される。
なお、危険有害性クラス及び危険有害性区分等が決定されない場合は、絵表示(標章)の記載を要しない。
4) 「危険有害性情報」は、GHS付属書3又はJIS Z 7253付属書Aに割り当てられた「危険有害性情報」の欄に示されている文言が記載される。なお、危険有害性クラス及び危険有害性区分等が決定されない場合は、記載を要しない。
5) 「注意書き」は、貯蔵又は取扱い上の注意等が記載される。
6) 「供給者の特定」は、表示する者の氏名(法人の場合は法人名)、住所及び地話番号等が記載される。
図18.1.4_GHSに基づくラベル表示の例.jpeg
図18.1.4 GHSに基づくラベル表示の例
(f)化学物質に関するリスクアセスメント実施義務化への対応
労働者の安全を確保するため、化学物質の管理が非営に重要な事項である。 2012年、胆管がんが発症した事例が相次いだことから、2014年6月、労働安全衛生法が改正され、SDSが交付義務の対象となっている化学物質についてリスクアセスメント実施が義務付けられることとなり、2016年6月1日に施行された。
1) リスクアセスメント実施が義務付けられるのは、塗料を扱う全ての事業者である。
2) 化学物質を取り扱う際に生じるおそれのある負傷・疾病の重駕度と発生の可能性を調査し、労働災害が発生するリスクの大きさを評価するものである。
(g) 廃棄物処理への対応
塗料をはじめ各種の産業廃棄物は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(昭和45年法律第137号)等によって規制されているが、特に留意すべき事項は次のとおりである。
1) 廃棄物の減量化とリサイクルの推進
2) 廃棄物処理に関する信頼性と安全性の確保
3) 不法投棄対策等
工事に当たっては、これら法律に従って産業廃棄物を適正に処理することになるが、特に不法投棄防止のため、産業廃棄物管理票(マニフェスト)(1.3.11参照)が全ての産業廃棄物に適用されている。
したがって、産業廃棄物の発生時には、施工者が産業廃棄物の運搬又は処分の資格を有する業者との委託基準に準じて委託契約した業者に「マニフェスト」を交付し、明確な指示を与えて、処理しなければならない。
(ウ) 塗装作業への塗料の調整
(a) 希釈(粘度調整)
原則として、調合された塗料をそのまま使用する。しかし、貯蔵中に均ーな品質を保持するため施工時の条件に適した粘度より若干高い粘度の製品になっている場合、施工時の素地の状態により粘度を下げる必要がある場合、気温が低い場合等には、所定のシンナーや水等により希釈し塗装に適した状態に粘度を調整することができる。
(b) こし分け
塗料は貯蔵中に分離、沈殿、皮ばり、凝集等の現象を生じている場合があり、使用直前によく混合し、均ーな状態とする。
この場合、かくはん等で再分散しない沈殿物、皮ばり、凝集等は、必要に応じてこし分けする。これらの操作が不十分な場合には、塗装後の膜厚に色の分離や光沢低下等の欠陥を生じる場合がある。
(2) 塗装工法
(ア) 研 磨
塗装面を研磨する目的は、次に示すとおりであり、目的に応じた施工をする。なお、研磨紙等は、JIS R 6251(研磨布)及びJIS R 6252 (研磨紙)による。
① 下地表面に付着している汚れ等を除去し、付着性向上のために行う場合で、鉄鋼面、亜鉛めっき鋼面の塗装によく用いられる。鋳止めを工場で塗装し、現場に搬入後、次の工程を塗装する場合等に行う研磨がこれに当たる。この場合、塗装された下塗りの塗膜厚を減少させないように行う必要がある。
② パテ処理面等を平滑にし、仕上げの平滑度を上げる場合に用いるもので、パテを厚付けした場合には、先に粗目の研磨紙で荒研ぎし、次に細かい目の研磨紙で目的の平滑度を得る。
(イ)パテの塗付け工法
被塗物の不陸、凹凸、穴等を処理して塗装仕上げの精度を高めるために用いる工法で、素地面に直接施工する場合と、各工程間に行う場合がある。
パテは、硬化後研磨を行うため、厚塗りを行う必要がある。このためひび割れが 生じないように、顔料や充槙材の配合が多くなっている。また、一般の塗料と比べて塗膜性能の向上を期待するものではないため、塗付け量は必要最小限とする。
パテ処理の工法には、パテかい、パテしごき、パテ付けの3種類がある。
① パテかい
局部的にパテ処理するもので、素地とパテ面との肌違いが仕上げに影響するため、注意しなければならない。
② パテしごき
素地とパテ面との肌がそろう程度に平滑になるようパテを残し、過剰なパテをしごき取る。
③ パテ付け
パテで全面を平滑にするもので、特に美装性を要求される仕上げの場合に行う。パテが厚塗りされるため、耐久性能を要求される仕上げの場合は不適当である。
(ウ)塗料の塗装工法
(a) はけ塗り
はけの毛間に塗料をよく含ませて、はけ目を均ーに塗り広げる伝統的な塗装手段である。
はけ塗りの特徴は、はけの材質、形状、寸法等を、塗料の種類、素地の種類、被塗物の形状等に応じて選択して用いることによって、いかなる素地や部位においても、均ーな塗膜厚さに仕上げることができる。
はけ塗りのチェックポイントは、次のとおりである。
1) 指定の塗料に適合した毛の種類、長さ、形状を用いているか。
2) はけは、よく洗浄され、ぬけ毛の生じないものを用いているか。
3) はけ塗りは、むらきり、はけ目通し等の操作をしながら、均ーに塗装しているか。
4) 仕上り面に、だれ、すけ、むら等が生じておらず、均ーに塗られているか。
(b) 吹付け塗り
吹付け塗りは、塗料を霧化状態にして被抱物に吹きむらのないように吹き付け、均ーな塗膜を形成する。
吹付け塗りは、エアスプレ一方式とエアレススプレ一方式がある。
① エアスプレ一方式
塗料を圧縮空気によって霧化させながら、その空気圧力でスプレーガンにより吹付け塗装する方法である。適用できる塗料の種類に限界があり、高い粘度では均ーに霧化せず、低粘度に希釈するため一般的に膜厚は薄い。また、塗装時の飛散が多く風の影響を受けやすいなどの欠点がある。
エアスプレ一方式の場合のチェックポイントは、次のとおりである。
1) 塗装開始前に周辺部分は十分に養生されており、また、適切な施工条件となっているか。
2) 塗料が所定の粘度に調整されているか。
3) スプレー塗装時の所定空気圧力に設定されているか。
4) 塗装作業の被塗物とスプレーガンとの距離が一定に保たれているか。
5) スプレーガンの運行速度は一定であるか。
6) スプレーバターンの形状は膜厚が均ーで、だれ、すけ、むら等の発生はないか。
② エアレススプレ一方式
塗料自体にポンプで10 ~ 20MPa程度の圧力を加え、スプレーガンのノズルチップから霧化して吹き付ける方法である。塗料自体に圧力を加えることができるため、高粘度や高濃度の塗料が塗装可能で、厚膜に仕上げられ、エアスプレ一方式に比べ飛散ロスも少なく効率的な施工ができる。
エアレススプレ一方式の場合のチェックポイントは、次のとおりである。
1) 塗料が所定の状態になっているか。
2) 塗料に適合したノズルチップが選定されているか。
3) 塗料が所定の圧力に加圧され、均ーに霧化し、スプレーパターンにテールが発生していないか。
4) 被塗物とスプレーガンとの距離及び運行速度は一定か。
5) 仕上り塗膜は厚さが均一で、だれ、すけ、むら等の発生はないか。
(c) ローラーブラシ塗り
ローラーブラシ塗りは、昭和30年代にアメリカから導入された塗装工法で、現在では、建築工事における塗装工法の主流となっている。ローラーブラシを構成しているアクリル又はポリエステル繊維等による塗料の含みがはけより多く、1回で広い面積に対して能率よく塗装できることが特徴である。隅角部、ちり回り等は、小ばけや専用ローラーを用いて均ーに塗る。
ローラーブラシ塗りのチェックポイントは、次のとおりである。
1) 塗料に適合した大きさ、毛の種類のローラーブラシを使用しているか。
2) 塗付け量に適合した毛の長さのローラーブラシを使用しているか。
3) 塗装時におけるローラーの回転は適切な速度で均ーに塗られているか。
4) 塗装作業はローラーマークをそろえて塗られているか。
5) 隅角部、ちり回り等は専用ローラー、小ばけ等で先行して塗られているか。
6) 仕上り面に、だれ、すけ、むら等が生じていないか。
(エ)各塗装工程の工程間隔時間及び最終養生時間
各塗装工程の工程間隔時間及び最終養生時間は、用いる塗料の乾燥硬化機構によって決まる。したがって、乾燥硬化の違いにより、次の工程に移る間隔時間を定める必要があり、また、最終工程には塗膜の使用可能までの時間を定める必要もある。
なお、工程間隔時間及び最終養生時間には、良好な塗膜形成と塗膜層間の付着性を得るために、塗料の種類によって次の工程に入るまでに一定時間以上必要な場合と、ある時間から定められた一定時間以内に次の工程に移らなければならない場合とがある。特に、水系塗料(水を主要な揮発成分とする塗料)では、気温が低く湿度が高いときに乾燥硬化が遅くなる。図18.1.5に示すように塗装・乾燥として最適な温度は20℃であるが、気温がそれよりも低くなるほど乾燥硬化が遅くなるため、良好な塗膜形成を確保するには、20℃施工時の標準工程間隔時問及び最終養生時間よりもそれぞれ長い時間が必要である。湿度についても高くなるほど乾燥硬化が遅くなることから、同様な注意を要する。
18.1.5 見 本
(1) 見本の作製
施工に先立ち、色彩計画によって決定された色、光沢、模様等の仕上げの状態について、見本塗板を作製する。
この場合、各工程が確認できるような工程塗りの見本とすることが望ましい。
(2) 見本の保管
設計担当者の確認を受けた標準見本は、最終検査時まで直射日光の当たらない場所で保管する必要がある。しかし、合成樹脂調合ペイント等の油変性塗膜は直接日光の当たらない場所に保管してあっても、徐々に反応が進行して色が変わるため、初期とは異なった色調になる場合もある。これらの見本については、事前に協議して合意を得て保管する。
18.1.6 施工管理
(1) 建築物の塗装は、内外装に施され、仕上げとしての美装のためだけでなく、各種劣化外力から被塗物を保陵することによって、建築物の耐久性を向上させることを目的としている。
このため、各種の素地に塗装された塗膜が所定の品質を確保できるように施工管理を行う必要がある。
塗装工事にかかわる具体的な施工管理の項目は、概ね次のとおりである。
(ア) 塗装工程
(a) 塗装前の素地の状態
(b) 使用材料
(c) 塗装方法
(d) 下塗り、中塗りの工程後の下地の状態(塗り工程の間隔時間、養生)
(イ) 塗付け量等
下塗り、中塗りの工程ごとに見本塗板との比較を行い、最終工程完了後「標仕」18.1.7により塗装面の確認を行う(18.1.7参照)。
(2) 施工時の条件
(ア) 乾燥硬化機構の種類
建設現場で用いられる塗料は、一般的に自然乾燥形塗料といわれ、その乾燥硬化機構には次の4種類がある。
① 揮発乾燥
塗料中の溶剤が蒸発するだけで塗膜を形成するもの。
(代表例:ラッカーエナメル)
② 揮発酸化乾燥
塗料中の溶剤が蒸発しながら樹脂が空気中の酸素と反応することで、塗膜を形成するもの。
(代表例:合成樹脂調合ペイント、油性系さび止めペイント)
③ 分散粒子融着乾燥
水又は溶剤中に分散している樹脂粒子が、水又は溶剤が蒸発することで融着し塗膜を形成するもの。
(代表例:合成樹脂エマルションペイント、非水分散形塗料)
④ 反応硬化乾燥(重合乾燥)
塗膜形成要素である樹脂と副要素である硬化剤を混合することによって反応が起こり、塗膜を形成するもの。
(代表例:2液形エポキシ樹脂エナメル、常温乾燥形ふっ素樹脂エナメル)
(イ) 乾燥硬化の条件
塗料は含有成分を蒸発させたり、化学反応を生じさせて、乾燥硬化するため、施工時の温湿度に関する条件が重要となる。
図18.1.5は、一般的な塗装と養生に適する温湿度条件を示す。
図18.1.5_塗装作業と養生に適する温湿度条件.jpeg
図18.1.5 塗装作業と養生に適する温湿度条件
(ウ) 養生
塗装工事における養生には、塗装しない部分に塗料が付着して汚れないようにする方法と、塗装した後の乾燥硬化過程で塗膜を正常に形成するため塗膜面に汚れが付着しないようにし、降雨、強風、直射日光等が当たるのを防いだり、温湿度を調節する方法がある。
18.1.7 塗装面の確認等
(1) 塗料及び塗膜の欠陥
塗装工事における欠陥の種類は、塗料状態における塗料の欠陥、塗装作業中における塗料の欠陥、塗装作業後における塗膜の欠陥及び塗装終了後の時間経過における塗膜の欠陥に分類でき、これらの欠陥の多くの場合は適切な予防処置を施すことにより避けることができる。これらの原因と対策を表18.1.4に示す。
(2) 塗装面の確認
塗装面の確認は、「標仕」表18.1.1による目視を標準としている。しかし、錆止め塗料塗りの場合は、塗付け量又は膜厚が防錆性能に大きく影響するため、次の方法により、これらの量又は厚さを確認することとしている。
(a) 現場における錆止め塗料塗りの場合は、膜厚測定が困難な場合が多いため、使用量から単位面積当たりの塗付け量を推定することを標準としている。
(b) 工場における鋳止め塗料塗りの場合は、電磁膜厚計等による膜厚測定の確認を標準とし、試験ロットの構成等は、施工者が品質計画で定めることとしている。
鋼製建具の工場錆止め塗装の膜厚に対する確認方法の例を以下に示す。
① 枠及び戸はそれぞれ別なロットとし、1組の作業班が1日に塗装した枠又は戸の全てについて、30個又はその端数を1ロットとする。
② 1ロットから1枠又は1枚を無作為に抽出し、膜厚を以下のように測定する。
1) 枠については、縦枠2箇所(左・右)及び上枠の中央部付近各1箇所、計3箇所を1回の試験とする。
2) 戸の両面について、上段、中段及び下段の中央部付近各1箇所、計6箇所を1回の試験とする。
3) 1箇所について3点測定し、その平均値をその箇所の膜厚とする。
③ 1回の試験の平均値が、規定された膜厚以上、かつ、全ての箇所の膜厚が規定された膜厚の85%以上の場合をロットの合格とし、これ以外を不合格とする。
④ 不合格となったロットは、全てについて再塗装し、上記に準じて再度確認を行う。
表18.1.4 塗料及び塗膜の欠陥に対する原因とその対策(その1)
表18.1.4_塗料及び塗膜の欠陥に対する原因とその対策(その1).jpeg
表18.1.4 塗料及び塗膜の欠陥に対する原因とその対策(その2)
表18.1.4_塗料及び塗膜の欠陥に対する原因とその対策(その2).jpeg
表18.1.4 塗料及び塗膜の欠陥に対する原因とその対策(その3)
表18.1.4_塗料及び塗膜の欠陥に対する原因とその対策(その3).jpeg

21章 排水工事 1節 共通事項

21章 排水工事
01節 共通事項
21.1.1 一般事項

(1) この章は、構内の屋外雨水排水及び街きょ、縁石、側溝等を設置する工事を対象としており、原則として、汚水排水等をする工事は対象としていない。
なお、施工範囲は、車両の通行が少なく、切土等の通常の支持地盤に管路を敷設する場合を対象としている。軟弱地盤又は地下水位が高い場合で、排水施設の支持地盤に関して十分な支持力を得られない場合には、不同沈下や浮上がり等を生じる場合があるため、基礎形状等沈下を防止するために適切な設計がなされる必要があり、現場の状況により埋戻し部等に施工を行う場合は、設計者と打ち合わせ、支持力が得られる工法にする必要がある。
(2) 構内排水に関しては、国土交通省大臣官房官庁営繕部整備課監修「構内舗装・排水設計基準及び参考資料 平成31年版」(以下「構内舗装・排水設計基準」という。)がある。
(3) 作業の流れを図21.1.1に示す。
図21.1.1_排水工事の作業の流れ.jpg
図21.1.1 排水工事の作業の流れ
(4) 設計図書の確認は、主として次の事項について行う。
 ① 工事範囲の確認
 ② 工事範囲内の埋設物及び障害物の確認
 ③ 既設排水管、接続桝の管底高さの設計図書との対比
 ④ 関連工事との取合いの検討
(5) 施工計画書の記載事項は、概ね次のとおりである。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
 ① 工程表(着工、完成、通水試験等の時期)
 ② 使用材料の名称、規格、製造所名及び使用箇所
 ③ 排水管敷設の工法
 ④ コンクリートの調合及び打込み工法
 ⑤ 掘削の工法及び建設発生土の処分方法
 ⑥ 官公署への届出文書名及び提出予定日
 ⑦ 安全管理対策、公害対策
 ⑧ 作業のフロー、管理の項目、水準・方法、
  品質管理体制・管理責任者、
  品質記録文書の書式とその管理方法等
(6) 注意事項
(ア) 給水管と排水管が、平行して埋設される場合は、原則として両配管の間隔を、500mm以上とし、給水管は排水管の上方に埋設する。
(イ) 一般的に、上下水道工事では、土圧、荷重等の関係から埋設管の最小土かぶりを0.5〜1.0mとしているが、建築工事で行う外構工事程度のもので、大きな荷重を受けることのない箇所であれば、通常0.6mあればよい。
埋設管の最小土かぶりは、土圧、荷重による管の押しつぶし、その振動による継手の損傷の防止、温度変化による管の伸縮防止、凍結による劣化防止等のために必要である。
(ウ) 排水工事の施工に伴う関係官庁への申請及び届出書が遅滞すると、工程に影響がでるため注意する。
21.1.2 基本要求品質
(1) 排水工事に用いられる材料で、排水管や側塊等についてはJIS等が定められているので、これに適合する材料を使用することを要求している。
なお、その他の材料で、コンクリートについては、使用量も少なく強度等をあまり重視しない軽易な場合には、現場容積調合とすることができる。
(2) 配管、桝、街きょ、縁石、側溝等については、設計図書でその形状や寸法、排水勾配等が指示される。現場に敷設された配管や桝等が指定された形状や寸法のとおりに設置されていることを要求している。
(3) 「標仕」で要求している「排水に支障となる沈下や漏水」をなくすためには、次のような事項に留意して工事監理を行うことが必要である。
(ア) 埋戻し、盛土等を行った箇所に、排水桝、埋設管等を設けることは極力避けるべきである。
やむを得ず設ける場合は、建物本体等から支持材を出して受けるか又は最初の桝を建物の近くに設けるなどして管が不同沈下により破断しないように考慮する。
(イ) 本章は、雨水排水工事を対象としているが、排水計画によっては雨水と汚水の合流排水となる現場もある。このような場合には、特に、排水勾配が適切であることが重要である。
急勾配の場合は、水だけ先に流れ、汚物が停滞していて次第に管を閉塞してしまう。また、緩勾配にし過ぎると、汚水を流す能力が不足することになる。下水道法施行令第8条では、管きょ(管及び掘割り)の勾配、マンホールの設置について次のように定めている。
(a) 管きょの勾配は、やむを得ない場合を除き、1/100以上とすること。
(b) 暗きょである構造の部分の次に掲げる箇所には、桝又はマンホールを設けること。
① もっぱら雨水を排除すべき管きょの始まる箇所。
② 下水の流路の方向又は勾配が変化する箇所。ただし、管きょの清掃に支障がないときは、この限りでない。
③ 管きょの長さがその内径又は内法幅の120倍を超えない範囲内において管きょの清掃上適切な筒所。

22章 舗装工事 1節 共通事項

建築工事監理指針 22章 舗装工事

1節 共通事項
22.1.1 一般事項
(1) 「標仕」に定められている舗装は、建築物の周囲等に施工される、いわゆる構内舗装を対象としており、一般道路のような舗装は対象としていない。したがって、舗装厚、材質、締固めの程度等は、一般道路の仕様とは異なり構内舗装に適したものとなっている。
(2) 構内舗装に関しては、国土交通省大臣官房官庁営繕部整備課監修「構内舗装・排水設計基準及び参考質料 平成31年版」がある。
(3) 通常用いられる舗装の種類は次のとおりである。
(ア) アスファルト舗装
路盤及び加熱アスファルト舗装の表層又は表層と基層で構成されるたわみ性舗装で、交通荷重を路床土の有する許容応力以下に分散する。加熱式アスファルト混合物の代わりに、石油アスファルト乳剤やカットバックアスファルトをバインダとした常温式アスファルト混合物もあるが、耐久性の点で加熱式より劣るため、通常は加熱式アスファルト混合物を使用する。
(イ) コンクリート舗装
路盤及びコンクリート版により構成される剛性舗装で、交通荷重をコンクリート版の曲げ強度で支える構造となっている。
(ウ) その他の舗装
舗装の表面の材料が異なるものとして、ブロック系舗装がある。また、(ア) 及び(イ) に特別な機能を付加したものとしてカラー舗装、透水性アスファルト舗装及び排水性アスファルト舗装があり、材料と施工方法を変えたものとして転圧コンクリート舗装がある。
(4) 施工計画書の記載事項は、概ね次のとおりである。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
① 工程表(着工、他工事との関連、完成、試験の時期)
② 施工業者名及び作業の管理組織
舗装の構造
使用材料の品質、製造所名及び使用箇所
配合計画書
⑥ 目地割り及び目地の構造
⑦ 路床の不良土及び障害物の処置
⑧ 建設発生土の処分方法
締固めの方法、管理の方法
舗設の工法
⑪ 養生の方法
試験の要領
作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等
22.1.2 基本要求品質
(1) アスファルト舗装の場合は、通常路床上に路盤・表層の順で構成され、コンクリー卜舗装の場合は、路床上に路盤・コンクリート版の順で構成される。
なお、路床が軟弱な場合には、路床の改良を施すことがある。また、寒冷地では凍上による舗装の破損を防ぐため、水はけの良い材料で凍上抑制層を設ける場合もある(図22.1.1参照)。
これらに用いる材料については、「標仕」の各節で、JIS等による品質規格が定められているので、この規格に適合する材料を用いる。
基本要求品質としては、定められた材料が正しく使用されていることを求めているため、そのことを完成時にJIS等に基づく試験成績書等で証明できるようにしておく必要がある。
 図22.1.1_舗装構成と各層の名称(アスファルト舗装).jpeg
 図22.1.1_舗装構成と各層の名称(コンクリート舗装).jpeg
図22.1.1 舗装構成と各層の名称( () は必要に応じて採択する)
(2) 「標仕」では、仕上りの状態は、形状及び寸法を「所定」のものとし、仕上り面の状態を「所要」のものとしている。
形状及び寸法については、設計図書で指定され、その許容差は「標仕」の各節で規定している。また、仕上り面については、設計高さとの許容差を定めるとともに、平たん性を定性的に規定している。
舗装の平たん性については、目視により歩行に支障がなく、段差や著しい不陸がないことや、通行の支障となるような水たまりがないことを散水や降雨時を利用して、確認する。また、ブロック系舗装の場合については、22.8.5を参考に、品質計画で平たん性の管理方法等を明確にしておくとよい。
(3)「標仕」では、舗装各層の性能については、定められた材料を用いて「所定のとおり締め固められ、耐荷重性を有すること」と規定している。また、路床や路盤の締固めについては、土質や路盤材料並びに締固め機械の種類等に対応して、締固めに適した含水状態で施工するよう定めている。
アスファルト舗装については、アスファルト混合物等の配合設計を行い、原則として、使用するアスファルト混合物の製造所において試験練りや試験施工を行って現場配合を決定するとしており、石油アスファルト乳剤の使用量や、アスファルト混合物の敷均し時の温度等についても規定されている。さらに、路盤や舗装等について、施工後の締固め度の試験についても規定している。
これらに関して、当該現場での具体的な施工の方法並びに管理の方法等について施工計画書(品質計画)で定め、これに基づき品質管理を行わせるとともに、その記録等により、施工が適切に行われ、品質管理の結果が適正であることが分かれば、その工事は「耐荷重性」を有すると見なすことができる。
ただし、現場の地盤の状況等が設計時の想定と異なり、設計図書のとおりに施工すると「耐荷重性」の確保が困難であると予想される場合には、設計担当者と打ち合わせ、「標仕」1.1.8の規定による協議を行う必要がある。
22.1.3 再生材
(1) 再生材は、コンクリート構造物の解体工事や舗装の補修工事からの発生材をリサイクルして利用するものであり、大別して再生加熱アスファルト混合物と再生路盤材に分かれる。いずれの再生材も適切な品質管理のもとで製造されることにより、新規材料と同等の性能を有するので、資源の有効利用や環境保全の観点から積極的な利用が望まれる。
(2) 「標仕」22.1.3では、各節に規定されている材料中に再生材が含まれている場合には、再生材を使用すると規定している。ただし、再生材の供給状況等により、再生材の使用が困難な場合には、監督職員との協議により、再生材以外の材料を使用することができる。

23章 植栽及び屋上緑化工事 1節 共通事項

23章 植栽及び屋上緑化工事

1節 共通事項
23.1.1 一般事項
(1) 本章では、植栽工事の主要材料となる樹木を中心に、芝や地被等の植物材料の植付け及び移植と、それを養生管理していくために十分な植栽基盤の整備を対象としている。
(2) 作業の流れを図23.1.1に示す。
図23.1.1_植栽工事の作業の流れ.jpeg
図23.1.1 植栽工事の作業の流れ
(3) 施工計画書の記載事項は、概ね次のとおりである。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
① 工事概要
② 計画工程表
③ 現場組織表
④ 安全管理
主要資材(生産地等)
施工方法(主要機械、仮設、運搬、養生、工事用地等を含む)
作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等
⑧ 緊急時の体制及び対応
⑨ 交通管理
⑩ 環境対策
⑪ 現場作業環境の整備
⑫ 再生資源の利用の促進と建設副産物の適正処理方法
23.1.2 基本要求品質
(1) 植栽工事に用いる材料には、植込み用土、樹木、地被植物、切芝や種子、肥料等があるが、大部分が植物等の天然素材であり、また、地域的な条件もあり、一律に品質基準を設定することが困難な場合が多い。
「標仕」では、「植込み用土は、客土又は現場発生土の良質土」としているが、良質土の基準は、樹木の活着と正常な生育に適しているか否かを総合的に判断すればよく、特記されている場合を除き、土壌試験等により確認することを求めているものではない。
また、現場発生土が植物の生育等に適さない場合は、「標仕」1.1.8による協議を行い、設計変更等により適切に処置する必要がある。
なお、土壌が植物の生育等に適するか否かの判断に当たっては、(-社)日本造園建設業協会認定「植栽基盤診断士」に相談するとよい。
(2) 樹木、支柱等については、「標仕」23.3.2で品質基準が定められているため、これに適合するものを使用する。
「形姿が良い」とは、客観的な基準を設けることが困難であるが、建物との調和を考慮し、必要に応じて設計担当者と打合せを行い、形状等を定めるとよい。また、「有害な傷がないこと」とは、枯死又は枝損傷の原因となるような病害虫による被害や傷がないことを求めているものである。自然に治癒する程度の傷であれば、要求品質を満たしていると見なすことができる。
なお、樹木の品質寸法規格基準等については、(-財)日本緑化センター「公共用緑化樹木等品質寸法規格基準(案)の解説」を参考にするとよい。
(3) 「標仕」の規定にある「新植の樹木等は、活着するよう育成したものであること」とは、工事が完成した状態における樹木等の生育状態についての要求事項であり、生育良好で、病虫害のない樹木等を、適切な工法で植栽した場合には、この要求を満たしているものと判断してよい。
23.1.3 植栽地の確認等
(1) 植栽基盤の確認
「標仕」では、枯死又は生育不良の第一に挙げられる排水性(透水性)と土壌硬度については、必須確認事項としている。同一敷地内でも土壌条件が異なることがあるため、異なる条件毎に調査が必要である。特に、樹木の有効土層及びその下層地盤が、地山の切土であるか、盛土で重機による転圧をしているか、地耐力向上のための地盤改良を行っている場合には、透水性不良や土壌の高硬度がみられることがあるため、調査が必要である。加えて、コンクリート又は鋼製の植え桝や人工地盤上など、下層に不透水の構造物がある場合は、透水性不良がみられることがあるため、調査が必要である。
下層地盤の排水性が悪い場合は、暗きょ排水を行うものとし、流末処理の方法については、現地の状況を十分把握し、先行の排水工事と調整を行う。暗きょ排水の設置が困難な場合は、植栽地部分を盛り上げた地盤とする場合もある。
土壌が硬い場合は、深耕(粗起し)や普通耕等によって土層を改良する。
土性については、必須確認事項ではないが、指頭法(表23.2.4参照)により容易に判定ができ、透水性や保水性を判定するうえでの参考になることから、確認したほうがよい。
土壌の水素イオン濃度指数(pH)の試験については、「標仕」では、特記によると規定している。強アルカリ土壌の出現が懸念される建染物の解体跡地や強酸性土壌が懸念される土丹や酸性硫酸塩土壌が出現する地域では、確認を行ったほうがよい。
また、電気伝導度(EC)試験についても「標仕」では、特記によると規定している。塩類障害が懸念される海浜埋立地では、電気伝導度(EC)を指標とした塩分濃度の調査.確認を行ったほうがよい。
試験の結果が不良の場合は、監督職員と協議する。
(2) その他の確認事項
生き物である植物を取り扱う植栽工事は、植栽基盤の確認のほか、植栽の時期や植栽地の気象・日照条件と植物との適合性等について確認する必要がある。植物の生育に支障となるおそれがある場合は、「標仕」1.1.8による協議を行う。
なお、植栽工事は、全体工程の終盤に施工することが多く、協議は設計変更のタイミングを失しないよう、できる限り早い時期に行う。
協議又は検討事項としては、次のようなものがある。
(a) 植栽時期の配慮
植物は適期に植栽することが望ましいが、工程上、不適期となる場合や他工事の影響で適期に植栽できない場合は、受注者等と工程調整や養生対策の方法等について協議する。
なお、植栽(移植)の適期については、表23.1.1に示す。
(b) 環境圧に対する配慮
植栽地の環境圧としては、植栽基盤条件のほか、立地・気象・日照・生育空問条件等に由来するものがある。
1) 立地・気象条件が不適合の場合
計画樹種が立地条件(潮風害、強いビル風等)や気象条件(気温、降雨量等)に合わない場合は、工法の見直しや樹種の変更について受注者等と協議する。
2) 日照・生育空間等の局地的な不適合の場合
景観上の設計意図を考慮したうえで、植付け位置の変更等について設計担当者と打合せを行う。
(c) 地下埋設物等による制約
地下埋設物や、地下構造物が支障となる場合は、設計変更の必要性等について協艤を行う。
いずれも植付け位置の若干の変更で済む軽微な場合から、植栽そのものの可否を検討しなければならない場合まで様々である。特に地下埋設物の場合は、樹木の生長への障害だけではなく、樹木の生長に伴う構造物自体への影響も考慮しなければならない。
表23.1.1 造園樹木、芝等の移植適期概見表(東京地方)
表23.1.1_造園樹木,芝等の移植適期概見表(東京地方).jpeg
(d) 都市緑化で出現する主な土壌の不良要因と植栽上の間題点を、表23.1.2に示す。
表23.1.2 都市緑化で出現する主な土壌の不良要因と植栽上の問題点
(公布と対策 1986年12月臨時増刊 長谷川秀三「土壌改良材」より:一部改編)
表23.1.2_ 都市緑化で出現する主な土壌の不良要因と植栽土の問題点.jpg