16章 建具工事 6節 ステンレス製建具

16章 建具工事
06節 ステンレス製建具
16.6.1 適用範囲
この節では、事務庁舎等の主な出入口等に使用する建具を対象としている。
16.6.2 性能及び構造
性能については、16章 1節及び 16.4.2を参照する。
なお、ステンレス製建具には、「標仕」で要求する品質を満たすものとして、(-社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4 (e)参照)で評価した製品があるので参考にするとよい。
16.6.3 材 料
「標仕」では、ステンレス鋼板はニッケルを含むオーステナイト系のSUS304を標準としていたが、これは、SUS304が加工性、耐食性及び経済性の均衡の取れた材料であったからである。しかし、最近では、世界的にニッケルを始め希少金属(レアメタル)が激減し入手に支障も出てきたため、平成22年版「標仕」に、JIS G 4305(冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯)に規定されているフェライト系(ニッケルを含まない。)のSUS430J1L及びSUS430の2種類が標準として追加された。
更に、平成22年5月には、SUS304と同等の耐食性を有するフェライト系のSUS443J1がJIS G 4035に追加されたことにより、平成25年版「標仕」にSUS443J1が規定された。
SUS430J1L及びSUS443J1は、SUS304に近い耐食性を有するため、外部や水回りに使用し、SUS430は高い耐食性を必要としない屋内の建具等に使用するというように使い分けをするとよい。
なお、更に耐食性を要求される塩害地向けには、SUS316が使われる場合がある。
16.6.4 形状及び仕上げ
(a) 裏板の板原は1.6mm以上、補強板の類の板厚は2.3mm以上である。
ステンレスに接触する鋼材は、ステンレスの腐食の原因となることがあるので、裏板、補強板等の重要な補強材は、錆止め塗装を行う必要がある。
なお、両面フラッシュ戸の中骨、力骨の類は、「標仕」18.3.3(f)(4)より塗装されない。また、超強力両面粘着テープが張り付けられる部分も、接着強度が低下するため塗装されない。
(b) 表面仕上げをHL以外とする場合は、表14.2.1[ステンレス板の表面仕上げ]を参照されたい。
(c) ガラス溝の寸法及び形状は.16.4.4(c)による。
16.6.5 工 法
(a) 普通曲げとは、特に処置しない普通の曲げ方である。角出し曲げとは、図16.6.1に示す方法で曲げるので、角が鋭くなり意匠的にはよいが、強度を著しく弱めるので、裏板を用いて補強するため高価である。その他、一部にはロール成形により曲げる方法も行われている。
なお、角出し曲げ加工ができる板厚は、1.5mm以上であり、一般に表16.6.1による3種類の加工方法が行われている。
ただし、a角については割れが生じやすいので注意を要する。一般的にはb角・c角を用いる方がよい。
また、板厚の異なる組合せの場合は、出来ばえをそろえるため、切込み後の残り寸法を1.5mmの板に合わせる場合が多い。
図16.6.1_角出し曲げの方法.jpeg
図16.6.1 角出し曲げの方法
表16.6.1 角出し曲げ加工の種類
表16.6.1_角出し曲げ加工の種類.jpeg
(b) 取付けは、16.2.5 (b)に準じる。

1級建築施工管理技士 建具工事 ステンレス製建具は雨が入りやすい

建築品質 外部建具


060)ステンレス製建具は雨が入りやすい

ステンレス製建具は錆びにくく、丈夫で高級感がある。しかし、ステンレス製建具はステンレス(SUS)鋼板を曲げ加工して組み立てるため、アルミ建具ほど精密な加工ができず、止水性の確保が難しい。建具枠組立部のメタルタッチの部分、押縁のビス止めのビス穴部などが漏水の原因になっている。

1.ステンレス材も錆びる

ステンレス鋼板はJIS G 4305により、原則SUS304とする。SUS304は通常は錆びないが、使用する環境や仕上げによって、鉄粉などが付着して「もらい錆」を発生することがある。大気汚染がある地域や海浜地域では、さらに錆びにくいSUS316とする。ステンレスはスチールに比べ線膨張率が大きく熱伸縮が大きいので、長い部材のジョイント部は熱伸縮に対応できるように、目地を設けるなどが必要である。

2.ステンレス製建具の止水性確保

外部のステンレス建具枠は板材を曲げ加工し、組立部は溶接を原則とする。縦枠と上枠は同面の留め溶接し、HL(ヘアライン)仕上げなどとする。縦枠と下枠(くつずり)は下枠通しで水密溶接にする。大型のステンレス製建具や連窓など現場組立(ノックダウン)する場合は、ジョイントをビスやブルと接合し、シールジョイントで止水する。


ステンレス製建具の加工

ガラスの押さえ(押縁)は外部側とする。押縁を内部側にすると、雨水や結露水が浸入する。あらかじめ枠にビス受けを設けて、ビスが枠を貫通しないようにする。

押縁断面

また、ガラス溝に入った水は押縁の下部や両端部から排水されるようにする。ガラス溝底も外部側へ勾配を設ける。

ガラスの押縁

3.ステンレス鋼板の曲げ加工

ステンレス鋼板の曲げ加工には普通曲げと角出し曲げがある。普通曲げは一般のスチール建具と同じで角度が曲面となる。角出し曲げは鋼板をあらかじめV溝に加工してから曲げるので角がシャープになる。切込み後の板厚(残り厚)が0.75mm以下の時は裏板を入れる。裏板は同厚のSUS鋼板または亜鉛めっき鋼板(板厚1.6mm以上)に錆止め塗装2回塗りとする。残り厚が設計図に指定されていない場合は確認する。