1級建築施工管理技士 く体工事 暑中コンクリート

第5章 コンクリート工事 暑中コンクリート


暑中コンクリート

暑中コンクリートとは、気温が高く、日射の影響を受ける期間に製造・施工するコンクリートをいう。暑中コンクリートでは、運搬中のスランプロス、打込み時の凝結の促進、コンクリート表面からの水分の急激な蒸発などによって、コールドジョイントやひび割れの発生、長期強度の不足、耐久性の低下などの問題が発生しやすい。
暑中コンクリートの適用期間は、日平均気温の平年値が25℃を超える期間にコンクリートを打込む期間である。JASS5によると、特記に記載がない場合、日平均気温の平年値が25℃を超える期間を基準として定め、工事監理者の承認を受けるとなっている。

暑中コンクリートの材料・調合・施工については、JASS5または日本建築学会「寒中コンクリート施工指針・同解説」、荷卸し時のコンクリート温度が35℃を超える場合の対策については、日本建築学会近畿支部材料・施工部会「暑中コンクリート工事における対策マニュアル」(以下 “対策マニュアル”という)などを参考にする。
「暑中コンクリート工事における対策マニュアル」の購入は
日本建築学会より

◆材料・調合
セメント・骨材・練混ぜ水は高温のものを使用しない。しかし、セメント温度の受入れ基準はなく、入荷後セメントの温度を下げるのは困難が場合が多いため、粗・細骨材は適度に湿潤したものを受入れ、粗骨材については適度に散水したものを使用し、練混ぜ水は低温のものを使用するといった対策をとるのが効果的・現実的である。
混和材は、JIS A6204(コンクリート用化学混和剤)に適合したAE減水剤遅延形Ⅰ種または高性能AE減水剤遅延形Ⅰ種を使用することが望ましい。
構造体高度補正値(S)は特記による。特記に記載がない場合は、6 N/mm2 とする。

◆製造・運搬・施工
打ち込まれたコンクリートから水分が乾燥したせき板および打継ぎ面へ吸収されないよう、打込み前の散水を入念に行い、たまった水は高圧空気などによって取り除く。打ち込まれたコンクリートが接する箇所の温度が高いと、一体性や、付着強度に悪影響を及ぼすことになるので、表面温度が上昇しないよう散水あるいは直射日光を防ぐなどの対策を講じる必要がある。
コンクリートポンプ車などの運搬機器はできるだけ直射日光を受けない場所に設置し、輸送管などをぬれたシート等で覆うなどして直射日光を避け、コンクリート温度の上昇を防ぐようにする。

コンクリートの練混ぜから打込み終了までの時間は90分以内とする。トラックアジテーター(生コン)車の待機時間を短くする配車手配を行い、待機場所は直射日光を受けない場所とすることや、アジテータードラムへの散水、ドラムへの遮熱塗装、ドラムカバーの設置などにより、コンクリートの温度上昇をできるだけ抑えるように配慮する。

打重ね時間間隔(120分以下を目安)の限度内にコンクリートが打ち込めるように、1回の打込み量、打込み区画および打込み順序を考慮した計画を立て、これに基づいて施工し、コールドジョイントの発生を防止する。
夜間の打込みについては、工事現場の近隣環境、生コン工場の納入体制、施工者のリスク、コストなど、多くの問題点に対応する必要があるものの、作業員の労働環境(熱中症対策)、コンクリートの高温履歴による不具合などを改善するためには有効な対策と考えられる。
なお、養生についても、「暑中コンクリート」としての特別な配慮が必要である。

◆ 品質管理および留意事項
暑中コンクリートの品質管理は、基本的には通常のコンクリートと同様に行えばよいが、以下の事項に留意する。

①コンクリート温度を低減するために粗骨材への散水をする場合は、温度管理だけでなく、粗骨材の表面水の管理も通常の場合よりもきめ細かく行って、コンクリートのスランプおよび圧縮強度のばらつきをできるだけ小さくするように生コン工場と打合せをしておく。

②コンクリート温度は、運搬時間が長くなるにしたがって次第に上昇するので、運搬に時間を要した場合には、温度測定の頻度を上げるなどしてとくに注意する必要がある。なお、対策マニュアルでは、荷卸し時の温度が 35℃を超えることが想定される場合の対策として、一定の適用条件を満たせば、荷卸し時の温度を38℃以下にすることが可能であることが示されているので、参考にする。

③荷卸し地点で採取した供試体を屋外に放置すると、強度はその放置期間中に温度と乾燥の影響を受けるため、成形後の供試体の扱いに注意を払う。標準養生を行う供試体は、現場事務所内など、できるだけ20℃に近い日陰の環境下に、現場水中養生もしくは現場封かん養生を行う供試体は、実際の構造体に近い温度履歴となる日陰の環境下に静置する。

④日本の夏は、温度が高いだけでなく湿度が高いのが特徴である。建設現場ではそのうえに直射日光をも受ける環境下にあるため、作業員の健康管理には常に注意を払い、快適な作業環境を整える。