1級建築施工管理技士 く体工事 場所打ちコンクリート杭地業

場所打ちコンクリート杭地業


【 施工管理技術者 】

場所打ちコンクリート杭工法は、建設工事の大型化、高層化に伴って、大口径で長尺の杭を、低騒音・低振動で築造できるという特徴がある。しかし、その反面、次の問題点が指摘されている。

 (1) 杭先端及び周辺地盤の緩み
 (2) 孔壁崩壊の懸念(安定液及び水頭圧の管理)
 (3) コンクリート打ち込み管理ミスによる品質の低下
 (4) スライム沈積による支持力の低下

これらの問題点を解決し、信頼のおける場所打ちコンクリート杭を築造するために、施工に際し施工管理技術者を置かなければならない。

以前は、「場所打ちコンクリートくい工事に関する知識及び技術審査・証明事業認定規定」に基づく「基礎施工士」や、建設業法施行規則第17条の2による「基礎施工士検定資金」が規定されていたが、いづれも廃止されている。

現在は、(社)日本基礎建設協会が実施する「基礎施工検定試験」に合格したものを「施工管理技術者」として扱うことができる。


【 材料・その他 】

(a)鉄筋
 (1) 鉄筋の品質
  (2) 鉄筋の加工及び組立て

(b)コンクリート
(1)コンクリートの種類、水セメント比の最大値、所要スランプ、粗骨材の最大寸法、単位セメント量の最小値を定めているので、これらに適合する調合強度のものを選ぶ。単位水量は、一般には 185kg/m3であるが、施工性を考慮して、「水中コンクリート」で規定している200kg/m3までは、品質計画を明確にすることにより認めることも可能である。

(2)「標仕」では、水や泥土等によるコンクリートの品質の劣化等を考慮して単位セメント量の最小値を定めている。したがって、掘削孔中にたまる水の量が少ないA種の場合には、品質の劣化も小さいためB種より単位セメント量の最小値が小さくなっている。

(3)コンクリートは、土中に打ち込まれるため外気温による影響が少ないので、温度補正を考慮する必要はない。したがって、杭のコンクリート強度の推定試験も標準養生となる。

(4)「標仕」における構造体コンクリートの強度と供試体の強度の差を考慮した割増(㊖F)の考え方は、設計者の判断により特記に示されるものとなっている。

工法の特性.jpg

【 場所打ちコンクリート杭 】

 ・アースドリル工法
 ・リバース工法
 ・オールケーシング工法

一般事項
(1)工法の概要
 各工法の特徴
①アースドリル工法

アースドリル掘削機.jpg
この工法は、上記のような機械を用い、下記のような工程により杭を築造する。

アースドリル工法1.jpg
アースドリル工法2.jpg

②リバース工法

リバース掘削機.jpg
この工法は、上記のような機械を用い、下記のような工程により杭を築造する。

リバース工法1.jpg
リバース工法2.jpg

③オールケーシング工法

オールケーシング掘削機(揺動式).jpg
オールケーシング掘削機(回転式).jpg
この工法は、上記のような機械を用い、下記のような工程により杭を築造する。
オールケーシング工法1.jpg
オールケーシング工法2.jpg

(2)各工法の施工機械と近接建物等との標準的な距離があるので注意する。

アースドリル必要距離.jpg
リバース工法必要距離.jpg
オールケーシング必要距離.jpg
試験杭の施工時における検査項目.jpg

試験杭
(1)本杭を施工するに当たり、施工機械や各種安定液の適否、土質状態、地下水位及び被圧水等の有無、施工時間、支持地盤の確認等の種々の調査を行い、以後の本杭の参考とするために試験杭の施工を行う。

(2)試験杭の調査項目(参考)

試験杭の施工時における検査項目.jpg


アースドリル工法

(1)掘削機の据付け
(イ) 掘削機の据付けは、その作業地盤の耐力に応じて、道板、鋼板、砂利等を敷き、作業中に機械が傾斜することを防ぐ(機種によっては90tを超えるものがある。)。

(ロ) ケリーバーの中心を杭心に正確に合わせ、機体を水平に据え付ける。

(2)掘削
(イ) 最初のうち掘削孔が鉛直になるまでは慎重に掘削を行い、表層ケーシングを鉛直に建て込む。

(ロ) 土質に応じバケットの回転速度を調節しながら掘削を進める。掘削された土砂を常に観察し、崩壊しやすい地盤になったら安定液を用いる。尚、バケットにリーマーを用いる拡幅掘削は、表層ケーシング建込み深度までとし、それ以深の掘削にはリーマーを用いてはならない。

(ハ) 掘削深さが所定の深度に達し、排出される土により予定の支持地盤に達したことが確認されたらスライム処理をして、検測を行う。なお、検測とは、検測テープにより掘削深度を測定することであり、孔底の2箇所以上で行う。

(ニ) 支持層の確認は、バケット内の土砂を、土質柱状図及び土質資料を対比して行う。また、その際にケリーバーの振れや回転抵抗等も参考にする。

(ホ) 掘削孔の側壁の確認を、超音波などに行う装置がある。なお、この装置を使用して確認を行う場合は、特記で指定される。

(3)安定液
(イ) アースドリル工法における孔壁保護は、通常安定液によって行う。

(ロ) 安定液には、ベントナイト系安定液とCMC系安定液があり、どちらも使用する材料は同じであるが、その違いはベントナイトとCMCの配合率の違いである。

(ハ) (ロ) の安定液の選択と配合は、土質や地下水条件を考慮して決める。また、適時試験を行って安定液を調整し、安定液の劣化を防ぐことが大切である。次の表は、砂質土の場合の安定液の配合例である。
砂室土の場合の安定液の配合例

砂室土の場合の安定液の配合例.jpg
 表4.5.3

(ニ) 安定液の性質
①安定液の主な材料
 ・清水:水道水程度
 ・ベントナイト:粘土鉱物の一種で、水に混合して孔壁保護及びスライム沈降防止に効果がある。
 ・分散剤:液の劣化を防ぎ、繰返し使用を可能にする。
 ・CMC:ベントナイト液に作用して、造壁性・沈殿防止効果を良好にする。( Carboxy Methyl Cellulose)

②繰返し使用する場合の安定液の管理基準は、実状に応じたものとするが、その例を以下に示す。
 表4.5.4

③標準比重は、清水とベントナイトのみの新液の比重とし以下に示す。
ベントナイト混合率(%) 比重
    4        1.025
    6        1.035
    8        1.045
    10        1.055
④必要粘性とは、対象地盤に必要とする粘性をいう。

⑤作液粘性とは、新しく作った安定液の粘性をいう。アースドリル工法では、安定液を繰返し使用すると粘性が小さくなる例が多いので、一般的には作液粘性は必要粘性より大きくする。

⑥安定液には、適当な量と質の分散剤が添加されていることを原則とする。


リバース工法

(1)掘削機の据付け
(イ)サクションポンプユニットとロータリーテーブを切り離して作業できる。(本体と10m程度切り離した)ため、杭施工場所に特別な養生を必要としない。

(ロ)スタンドパイプの建込みを行う。スタンドパイプは、表層地盤の崩壊防止及び自然地下水に対し2.0m以上の水頭差を保持し、静水圧により孔壁の崩壊を防止するために用いるもので、建込みは油圧ジャッキ又はバイブロハンマーにより行う。
スタンドパイプの径は、孔径より150~200mm大きいものとする。また、根入れは地下水位、表層の土質の軟弱度により異なり、スタンドバイプ内の水圧で周囲の軟弱土が外側に移動あるいはパイピングを起こさないだけの深さとする。

(2)掘削
(イ)この工法は、静水圧 0.02 N/mm2以上に保つことにより孔壁の崩壊を防ぐ工法であるので、掘削に際しては地下水を確認し水頭差を2.0m以上保つように十分注意する。

オールケーシング工法

(1)掘削機の据付け
(イ)掘削機の据付け地盤の補強については、(c)(1)による。

(ロ)揺動式の場合の掘削土砂の排出は、機械の前方に限られるので、隣地より杭までの距離がない場合は作業動線に注意しなければならない。

(ハ)ケーシングチューブは、杭心に合わせて直角2方向からトランシット又は下げ振りでチェックして鉛直に建込む。

(ニ)ファーストチューブの建て込みは、水平精度と鉛直精度に直接影響を及ぼすので、次のような方法で行う。

①杭心を正しくセットさせるため下記のような治具を用い、ファーストチューブをセットする。

1)イとロを組み合わせてハのような定規をつくる
2)ハのa部を杭心の仮杭に合わせ、bを地盤に差し込み固定する。
3)イを取り外し、ファーストチューブを据え付ける。


②使用するファーストチューブは、鉛直性の監視が容易に行えるよう6m程度の長さにする。

③ファーストチューブは、杭心に合わせ直角ニ方向からトランシット又は下げ振りで


(2)掘削
(イ)掘削は、ケーシングチューブを先に揺動又は回転圧入し、土砂の崩壊を防ぎながらハンマーグラブのより掘削する。掘削が鉛直にできるかどうかは、最初のケーシングチューブ1〜2本の建て込み状況によって決まる。

(ロ)被圧地下水によるボイリングを起こしやすい砂又は砂礫層の場合及び軟弱粘土層でのヒービングを起こしやすい地盤がある場合は、孔内に水を張り防止する。

(ハ)常水面以下に細かい砂層が5m以上ある場合は、ケーシングチューブの外側を伝って下方に流れる水の浸透流うあ揺動による振動によって、周囲の砂が締固められケーシングチューブが動かなくなること(ケーシングチューブが食われる)があるので注意する。

(ニ)掘削終了時、ファーストチューブ刃先を杭底面より先行させないように注意する。

(ホ)掘削深さが所定の深さに達し、排出される土から予定の支持地盤に達したことが確認されたら、スライムを処理し検測を行う。

(へ)支持層の確認は、ハンマーグラブでつかみ上げた土砂を土質柱状図及び土質資料と対比して行う。

(3)孔内水
オールケーシング工法では、掘削孔全長にわたりケーシングチューブを用いて孔壁を保護するため、孔壁崩壊の懸念はほどんどない。しかし、(2)(ロ)の場合や孔内水位と地下水位に水頭差がある場合は、掘削底周辺部の緩みの発生が想定されるので、孔内へ注水し水圧のバランスを図る。

スライム処理

(1)スライムとは、孔内の崩落土、泥水中の土砂等が孔底に沈殿、沈積したものである。この上にコンクリートを打ち込むと、荷重がかかったとき杭が沈下するので、スライムの処理は重要である。
このほか、スライムは強度を含めたコンクリートの品質低下、杭の断面欠損及び支持力低下の原因となる。

(2)スライムの処理には、一次処理と二次処理がある。一次処理は掘削完了直後に行うスライム処理で、二次処理はコンクリート打込み直前に行うスライム処理である。各スライム処理方法の例を、下記に示す。

(3)アースドリル工法のスライム処理は、一次処理をして底ざらいバケットにより行う。バケットは杭径より10㎝小さいものを用い、バケットの昇降によって孔壁が崩壊することのないよう緩やかに行う。

 鉄筋かご建込みの際の孔壁の欠損によるスライムや建込み期間中に生じたスライムは、二次処理としてコンクリート打込み直前に水中ポンプ方式又はエアーリフト方式等により除去する。

(4)リバース工法のスライム処理は、一次処理として掘削完了後ビットを孔底より若干引き上げて緩やかに空回しするとともに、孔内水を循環させて比重を下げ、鉄筋かごやトレミー菅建て込み期間中のスライム沈積量を少なくする。
 二次処理は、コンクリート打込み直前にトレミー菅とサクションポンプ等により孔底に沈積したスライムを除去する。

(5)オールケーシング工法のスライム処理は、ドライ掘削や孔内水位の低い場合は、堀りくずや沈殿物の量が少ないので、掘削完了後にハンマーグラブで静かに孔底処理(孔底のさらい)を行う。
 また、孔内水位が高く沈殿物の多い場合には、ハンマーグラブで杭底処理をしたのち、更に、スライムバケットにより行う。
 なお、コンクリート打込み直前までに沈殿物が多い場合は、二次処理として、エアーリフト方式等によりスライムを除去する。

排液及び排土処理

(1)掘削時には相当の量の排液がでるが、排液は沈殿槽あるいは直接真空ポンプ車に集め場外へ搬出して指定場所へ投棄するか、排液槽に収集し凝集剤を添加して、上澄と回収泥土とに分け、回収泥土を更に脱水処理等をして含水比を小さくし投棄する。

(2)掘削された排土は、含水比が大きい(50〜200%)ので敷地内に集積して、天日乾燥させ、その含水比を小さくする。更にセメントを添加して固形化する場合と、石灰と混合しその化学反応の熱を利用して水分を除去し固形化する場合がある。

(3)これらの排液及び排土処理にあたっては、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の適用を受ける場合があるので、法律に従った処理が必要になる。
 この場合、元請業車は産業廃棄物の排出事業者に該当するので、処分の方法、形態、場所等を確認させたうえで、許可を取得している業車に委託して処理を行わせるようにする。

鉄筋の加工及び組立

(1)鉄筋はかご形に組み立てる。
主筋と帯線を溶接している例ば見られるが、点溶接は注意しても主筋が断面欠損をするおそれがあるので「標仕」4.5.3(a)では、主筋への点溶接は行わないこととしている。また、帯筋の重ねは、10d以上の片面溶接(両面の場合は5d)とする。補強リングは、主筋に断面欠損を起こさないように十分注意し堅固に溶接する。また、補強リングは、鉄筋かごの径により主筋の内、外周のいずれに取り付けてもよい。
なお、鉄筋の溶接に当たっては、原則として「標仕」5.2.3(c)による。

(2)溶接技能者は、7.6.3を参照する。

(3)溶接施工は、7勝6節による。