竣工直前は、現場内は最も忙しい時期に入るが、それと同時に各種検査、およびその処置をしなければならないので、その段取りは早いめにする必要がある。
社内検査、監理者検査、建築主検査、(場合によっては第三者検査)および官庁の完了検査などである。
大規模建築物になると官庁関係の検査が多くなるが、これらはもともとは設計者が申請している場合が多いので、作業所側ではその全貌を把握しにくいことがある。
また、設計側においても、各種官庁との協議申請までアウトソーシングをしている場合は要注意である。設計担当者自身もあやふやである。
①開発工事の完了検査
大規模建築物の場合、開発工事が関係する場合がほとんどであるが、基本的には開発工事が完了してからでないと(都計法29条)、工事の着手はできない。
開発工事の検査済証は着工段階で既に発行済みであるはずであるが、建築行為に関わる開発で都計法37条を適用している場合は、建築工事の完了検査前に、開発工事の完了検査を受ける必要がある。
官庁との協議により、前後できたとしても、開発工事の検済がないと、建築工事の検査済証は決済されることはない。
また、着工時に開発非該当の申請を行って、開発行為にあたらないとなっている場合も、その書類の添付が必要な場合がある。
②消防検査
消防にかかわる、防火対象物としての検査は、主として、着工時に協議を行っている消防局が行うものであるが、大規模建築物の場合、消防本庁が行う部分があるので、注意を要する。
その判断は、設計者が着工時に作成している「防災計画書」の審査をしているところによる。
防災計画書作成の要否は高さや用途、規模によって決められており、提出する先も規模によって決まっている。
防災計画書の審査自体は消防とは違う場所で、「建築防災計画評定委員会」の専門員によって行われるが、その計画書の作成は消防局または消防庁と協議しながら作成する。
総務省令の規定等を採用している場合は、その部分を中心に検査される場合があるので注意を要する。
③その他、各種検査
書類確認のみのものと、現場検査もあるものがある。
都計法、建築関係
大規模申請
傾斜地等
バリアフリー
省エネルギー
駐車場法
広告景観
宅地造成関係
自転車の附置義務
景観法関係
風致地区関連
など
環境政策関連
ゴミ協議
浄化槽
など
上下水道関係
など多岐にわたるので、早い段階で設計者と打ち合わせの上、役割を明確にしておく必要がある。
④住宅性能評価
「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)によって行われる共同住宅の性能評価は官庁関係の検査とはまったく別のものである。
「品確法」という法律に基づくものではあるが、民間の検査機関によるものである。建築確認を行政の代わりに民間が行ってるのとは意味が違う。住宅性能評価の検査がどうであっても、建築確認の済証が下りれば、建築物の利用は可能である。
住宅性能評価とは、設計性能評価と建設性能評価とがあり、着工時では、既に設計性能評価証が各住戸について発行されている。
合わせて、着工前に建設性能評価申請を行い、工事中のそれぞれの各特定工程で適合判定を受け、完了時の最終の検査で適合であれば、建設性能評価証が発行されることにいなる。
施工者としては、「設計性能評価証」で表記されている等級と同じ等級を「建設性能評価証」で取得する必要がある。
検査に適合しない場合、設計と建設とで等級の異なる等級になってしまい、建築主は、住宅ローンの利子の優遇や地震保険の割引が受けれない場合が発生するので注意が必要である。
その完了検査は書類審査も時間がかかるので、性能評価の指定機関と早い目に打ち合わせを行って、性能評価の完了検査にのぞみたい。
また、官庁の完了検査はその他の行政のすべての検査及び確認が済んでからでないと、確認済証は発行されないが、住宅性能評価の建設性能評価証は、逆に確認済証が発行されないと発行されない。建築基準法に適合していることが前提という意味である。