実践20 解体工事3 改修工事

1級建築施工管理技士 実践 解体工事3 改修工事

環境問題に対する社会的関心が高まる中、廃棄物処理法や建設リサイクル法などの法の整備に伴い、建設業界では建設副産物の適正処理活動に20年以上前から積極的に取り組んできいる。

また、最終埋立処分場の残余年数も少なくなってきたこともあり、1990年代より廃棄物の再資源化を図るためのリサイクル中間処理施設などが建設され始めた。

このような背景から、2000年代に入ってからは各建設事業所も混合廃棄物を削減し、リサイクル率の向上活動に本格的に取り組む動きが活発化してきている。

2010年頃には、活発に取り組んでいる事業所ではリサイクル率も80%以上になり、資源循環型社会の構築に貢献し、成果を上げてきているようである。

建設現場の建設副産物減量化のポイント

建築施工管理者の役割の中に、建設副産物の減量化とリサイクルの推進、そして産業廃棄物の適正な処理をする役割がある。

処理計画は廃棄物処理計画書として文書化し、再生資源利用計画・促進計画については、計画書の作成をするとともに、工事完成後1年間の保存が義務付けられている。
建設副産物の減量化とは重量または容積を減らすことで、最初の計画が重要である。

目標とその達成のための手段を検討する必要がある。
脱水・乾燥・焼却などの中間処理はもちろんであるが、工事そのものにおいてごみを出さない計画的工事方法も考える必要がある。

そのためには徹底した計画により、プレファブ化、プレカット化の推進、梱包の削除、分別収集の徹底などが必要である。
1990年代はBCSの目標は延べ床面積当たり30kgであったが、2000年に入ると最先端の工事では延べ面積当たり10g程度まで低減してきている。

分別収集のルールづくり

1990年代から工事現場では建設副産物の分別が進んでいる。
それらは大きく分けて、

①コンクリートガラ
②プラスチック
③金属・ダンボール
④梱包材
⑤可燃物(木くず・紙くず)
⑥産業廃棄物
の6種類に分類される。

これらはリサイクル可能なものがほとんどであるが、分別できない混合廃棄物や産業廃棄物も更なる中間処理施設で最終的に再資源化や埋立ての分別ができるようになっている。

しかし、基本は施工計画を作成する際に廃棄物を出さない建築資材、工事方法を考えることが大切である。

リサイクルを進めるには、作業員も一体になった行動が欠かせない。

1°.3R活動の推進
最終的な建築副産物を削減するためには、廃棄物の発生抑制(Reduce)、再使用(Reuse)、再生利用(Recycle)、すなわち3R活動を積極的に進めることが必要である。

2°.発生抑制(Reduce)
発生抑制とは、事前の減量化計画により廃棄物として発生するものを極力減らすことである。
養生材の再利用、材料のプレカット化、建築材料、設備機器などの梱包材の削減、PCF型枠の採用による南洋材の削減、山留めソイルの発生汚泥削減などが挙げられる。
これらは早い段階から計画し、準備をする必要がある。

3°.再使用(Reuse)
再使用とは材料を繰返し転用して使ったり、ほかの材料として使用したりすることである。
例えば、タイルカーペットの余材を仮設事務所の床材として再利用したり、使用済の溶接用ワイヤリールを回収、メーカーに返却して再利用するなどが挙げられる。

4°.再生利用(Recycle)
建築副産物を破砕し加工して、製品の材料の一部として再び資源として使用すること。
廃材となった木くずや廃石膏ボードをリサイクル施設にて破砕し、パーティクルボードや石膏ボードに製品化して再び建築材料として使用する取組みなどがある。

なお、リサイクルを推進するためには作業所内で廃棄物を品目別に正しく分別することが重要である。
このためには、分別品目をわかりやすく掲示したコンテナを配置した廃棄物分別ヤードを作業所敷地内に設置し、分別のルールを関係者に周知して混合廃棄物を極力なくすように取り組む必要がある。
わかりやすい分別のルールや方法を決めて徹底させ、活動を活発化させることで、成果をさらに上げることができる。
掲示や表彰制度を活用している作業所もある。

建設現場のリサイクルの現状

1°.コンクリートのリサイクル
改修・解体工事から発生する大量のコンクリートガラは現場から専門業者に直送し、再生砕石として販売(有価売却)される。
公共工事の減少、東日本大震災の影響などにより、再生砕石の利用が低迷し、専門業者の在庫過多状態が続いている。
また、そのことによる専門業者の受入単価高騰および受入量調整により、改修解体コンクリートガラが行き場を失ってきている。

2°.骨材、ボード、木材、プラスチックリサイクル
骨材、木材に関してはマテリアルリサイクルが進み、特に木材に関しては建設リサイクル法の施行以前よりリサイクルの流れが確立されている。

3°.石膏ボード
新品の端材(新築系)は、現場分別による石膏ボードメーカーへの直送、または専門業者・総合中間処理業者を通した搬入によるリサイクルが確立されている。
(石膏ボードメーカー直送は新品端材のみ)
改修・解体石膏ボードに関しては、専門業者、総合中間処理業者において付着物・他品目混入および複合の状況により、リサイクルもしくは埋立ての処分が行われている。
改修・解体石膏ボードは他品目との混合排出のケースも多く、その状態からの選別 → リサイクルは困難で、埋立てに回る割合が高くなっている。

4°.廃プラスチック類の現状
建設工事発生の廃プラスチック類は、工事現場特有の土砂・油分の付着などリサイクルに適さない状態のものが多く、焼却処分や埋立処分とされる割合も高い。
また、現場分別においても、塩ビ系・非塩ビ系・PPなど種類も多岐に渡り混合状態となっているため、リサイクルが困難な状態にある。
その結果として、事業系に比べ建設系のリサイクル率は低くなっている。

5°.リサイクルの問題点
建設系廃棄物の特徴は、他品目との混合および複合品の排出があり、徹底した分別排出がなされないのが現状であり、リサイクル率を押し下げている原因となっている。
また、土砂・油分の付着混入もリサイクルを困難なものにしている。

6°.リサイクルの今後
建設廃棄物に関する排出事業者からの処分委託コストが、処理業者の適正処理コストを圧迫している。
こういう状況が続くことで不適正処理業者の台頭を招くのではないかと処理業界全体が危惧されている。