実践10 仕上工事3 外装3

1級建築施工管理技士 実践10 仕上工事 外装3 PCaカーテンウォール

1970〜2000年頃までは、花崗岩を打込んだPCaカーテンウォールが高層ビルの外装の主流だったが1992年バブル経済の崩壊とともに、本石打込みPCa板の外装がめっきり減ってしまった。
とは言え、外装材としては、花崗岩は高級感があり、耐久性優れた材料であり、日本でも再び復活するものと思われる。
日本の激しい自然環境である風・地震・温度変化に加えて、安全第一、生産性の向上など現場からの要求に対応するために、当時の技術者は血を絞り、実験を繰り返し、厳しい設計条件に対しても”自然な材料と近代建築の融合”技術開発に対し果敢に挑戦して、自分のものにしていった歴史がある。

石材の選別と管理は最初の仕事

石材を外装材に使用するには風雨や温度変化などの自然現象に対してより耐久性のある材料で選ばなければならない。
石材は自然の材料なので、色合い、班目にばらつきがある。
石材の成分には外装ざる敵しない鉄分が含まれる場合もある。
また、大理石や砂岩などの吸水性の高い材料は外装には適さない。
また、高級感のある外装材だけに、色合いと石の模様を管理し、白華(エフロレッセンス)や湿気による漏れ色を防止したい。
そのためには、製造過程で湿気が石材の中に回り込むことがあるため、石材の裏をコーティングして吸水を抑えるが、もともと吸水率の高い石材は選ばないことが大切である。
また、建物外装の各面ごとに”色あい合せ”をしてから、石の配置を決め、番号付け、そして梱包する必要がある。
できれば、石材の加工場で仮の敷並べ(ドライレイ)を行い、色合せ、模様合わせを行う。
また、PCa工場に石材が到着してからも、再度確認する必要がある。
PCa工場で材料が混在することもあるので、細心の管理を行うべきである。
さらに、経済性を追求するあまりに、石の厚さを薄くしすぎると反りや割れにつながるので、石材の種類やサイズにもよるが、25mm以上は確保したい。

裏麺処置の正しい施工と効果

花崗岩をPCa板に打ち込む場合、石の裏面にエポキシ材などで裏面処理をし、付着性を高め、剥離を防ぎ、エフロや湿気からくる”濡れ色”を防止する。
また、石材とコンクリートの接着をより確かにするため、物理的にステンレス金物で結合させることで、万が一の剥離にも備えることができる。
雨上がりの後、せっかく高級な石材を外装に使ったにもかかわらず、石の中に湿気が入ると、雨が上がっても部分的に濡れ色が残り、みすぼらしく見えてしまう。
この場合、湿気は石の後から石の中に毛細管現象で回る場合と、表面から回る場合があるが、石に裏面処理を施すことで裏から入る水分や湿気は止めることができる。
吸水率の高い花崗岩(中国産の花崗岩の吸水率は0.2〜0.35)などは、顕微鏡で見ても、表面にたくさんの穴が空いてることがわかる。
最近では石の表面に塗布することで、濡れ色を防止できると塗布剤(スカイパームなど)が普及している。

PCa板の上吊り型ファスナとその効果

外装PCa板の設計には下置き型と上吊り型の二通りがある。
通常、PCa(コンクリートプレキャスト)版では、下で支える下置き型が一般的に多く使用されている。
それは、コンクリートは圧縮材であるとする先入観念が優先しているのではないだろうか。
しかし、金属のカーテンウォールの場合は上吊り型の方が圧倒的に多い。
それは、建物のためには上吊りの方が設計要求品質に対応しやすく、安全施工に適しているからである。
PCa板であっても自重によるコンクリートへの引張り応力はきわめて小さいため、心配される部材の引張り亀裂が発生しない。
またPCa板における上吊り型ファスナの実績も増えてきている。
上吊り型ファスナ方式は、地震時のパネル同士のスライド性能に優れ、PCa板の自重による変形防止、大梁の長期クリープ変形が少なく、取付け精度管理が目視しやすい。
また現場では作用性に優れるため、通常の下置き型と比べて、2倍以上の取付け効果がある。
また、この工法はオープンジョイントの組合わせで面倒な外からのシール工事もなく、安全性も優れており、シリコンシールなどの汚れがないので、いつまでも本磨きの石の美観を保ち、究極の外装PCa板工法と言える。