80)天井の耐震性を確保する
東日本大震災では、ショッピングやシアターなど2000件以上の天井が落下し、多くの人命も失われた。これを受けて、天井落下対策(エレベーター、エスカレーター等の脱落防止対策を含む)に関して建築基準法施工令の一部が改正され(2013年7月)、天井脱落対策関連の告示が同年8月に公布された。告示では日常立ち入る場所で、天井高さが6m以上、天井面積が200m2以上、質量が2kg/m2以上のすべてを満たす天井を特定天井として、その構造方法の基準を定めている。
1.大面積の天井は壁に衝突させない
石膏ボードなどの重い天井は地震時の水平力(入力水平加速度1G)が大きい。しかも大面積の天井ほど大きな水平力を受ける。地震で天井が揺れて壁に当たった時には大きな水平力を衝撃的に受け、その力で天井面が座屈するように剥がれて落ちる。特定天井では質量を20kg/m2以下とし、壁や柱などとの隙間を6㎝以上確保して、壁や柱に衝突させないようにする。天井に取り付ける防煙垂壁の端部も壁や柱との隙間を6㎝以上確保し、かつ不燃干渉材などで遮煙できる納まりにする必要がある。
2.天井の吊り材(吊りボルト)は天井質量により決定する
天井を支える吊りボルトは天井の質量に対して適切な本数でなければならない。質量が 2~20kg/m2以下の特定天井では、吊りボルトの本数は 1m2当たりの平均本数を1本以上とし、釣合い良く配置する。質量が 20kg/m2を超える天井は耐震性を構造計算によって確認する必要がある。
3.天井はV字形状の振れ止めを設ける
天井の吊り長さが長いと短いとでは振れの大きさが違う。特定天井では吊り長さを 3m以下とし、おおむね均一とする。さらに、振止めとして2本の斜め部材の下端を近接してV字状に配置したものを一組として告示式により算定し、吊り合い良く配置する。吊り長さが 1.5m以上では吊りボルトと同材で水平補強も行う。吊り長さが 3mを超す場合は、構造耐力上主要な部分と同等の天井下地鉄骨を設ける必要がある。
4.斜め天井は下地の滑り止め対策をする
斜め天井の下地は、下地金物のC型材にクリップ金物で留めるだけでは、重力で滑って下へズレ落ちる方向に動く。斜め天井では下地や天井材が滑って落ちないようにビス固定することが必要である。
5.天井内設備は天井材と縁を切って吊り、振れ止めを設ける
天井内設備で荷重が大きいものは地震で振れると大きな水平力となるので、設備機器は振れ止めをしっかりと設けて、天井とは縁を切って、天井に影響を与えないようにすることが重要である。