1級建築施工管理技士 設備工事 設備インフラを引き込むとき

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90)設備インフラを引き込むとき

建築が実際に機能するには、都市インフラと建築設備を敷地内で接続しなければならない。ここでの都市インフラは、電気、通信、上水道、下水道、ガスなどを示す。その接続部は検針や点検が必要で、設置には制限もある。大事なアプローチ部分に無造作に設置されたりすることもある。引込みの方法や位置、仕上げに関しては、建築と設備の担当者が協議して、納める。

1.敷地周辺のインフラ調査

敷地に接する道路にある既設のインフラ(電気、通信、上水道、下水道、ガスなど)について、地中埋設管や架空配線の位置や径などを調査・確認することは重要である。例えば、公共下水管の位置と敷地最終会所の位置は正確に調査・測量する必要がある。この測量により、敷地内排水管から下水本管へ自然勾配で接続できるようように計画することができる。

2.電気・通信の引込みは引込み専用柱とする

架空配線の市街地では、電力ケーブルを通信線を電柱から敷地内に引き込むことになる。建物に取り付けたブラケットに直接引き込むのは建築を傷つけることになり、体裁もあまりよくはない。電柱から敷地内に立てた引込み専用柱を経て、地中配管配線で建物内に引き込む計画とする。また、住宅では電力メーターの検針が道路側からできるように、メーター取付け位置やその意匠にも配慮したい。


電力の引込み


外壁に直接引き込んだ例

3.上下水道、都市ガスの敷地内の納まり

上下(市水)を引き込んだところに量水器を設け、道路側から検針ができなければならない。下水は敷地の最終会所(マンホール)を道路際に設けることになる。敷地が狭い場合、玄関へのアプローチ上に下水のマンホールや量水器があり、毎日その上を歩くことになりかねない。都市ガスの引込みも同様である。ガスメーターやガスの遮断弁を道路際に設けることになる。電力メーターや量水器、ガスメーターなどは1ヶ所にまとめて、意匠的に処理したいものである。また、上下水道やガスの配管類は、外部から建屋内の土間下にトレンチを設けて納めるとメンテナンスや維持管理がし易くなる。


上下水道ガスの引込み


アプローチはすっきりと

1級建築施工管理技士 設備工事 電気室を水から守る

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91)電気室を水から守る

電気室は建物の中で最も重要な室である。万が一漏水などで電気室がダウンすると、建物のほとんどの機能が停止する。電気シャフト(EPS)も含めて、万全な漏水対策が必要である。このように、建物にとって重要な室を重要機能室と呼ぶ。重要機能室は建物の用途によっても異なり、サーバー室や金庫室、重要書類の保管室なども重要機能室となる。あらかじめ建築主と確認しておくことが必要である。重要機能室を水から守るための対策が必要である。


電気室の漏水対策

1.水配管を通さないこと

電気室内の空調(冷房)する場合、空調機を別室に置くか、そうでなければ、ドレン配管などから水が漏れた時にも大事に至らないような対策が必要である。医療施設や研究施設の重要機能室は機能上、天井裏や室内に給排水の配管が必要となる。その時には、漏水センサーを設置するなど、漏水事故があった場合でも早期に発見して被害を最小限に抑える対策が必要となる。

2.上階からの漏水対策

電気室の上階で水を使用する部屋がある場合、①床を防水するか、②電気室内に水受け天井や防水パンを設置する。上階が事務室でも、エアコンのドレン配管だけでなく、加湿型では給水管もあるので、同様の対策が必要である。①や②の対策が取れないときは③屋外型キューピクルとし、配管は底部から引き出す納まりとする。

3.隣室からの漏水対策

電気室の隣室に水を使用する部屋がある場合、隣室の間仕切り足元の切付け部を塗膜防水するなど、電気室への水の浸入防止を図る。電気室の入口は100mmほど立ち上げておく。重要機能室となるサーバー室も同様である。

4.電気シャフト(EPS)への漏水対策

EPSとパイプシャフト(PS)をまとめて設ける場合は、PSとEPSは壁で区画し、PS側の漏水がEPSに流入しないようにEPSの床を上げるか、周囲に立上りを設ける。EPSを独立して設ける場合も同様に床を上げる。

5.人目につきにくいPSは漏水センサーで監視

人目につきにくいPSは床や給水配管等に漏水センサーを設置して機械監視をするとよい。サーバー室の床下も同様である。

1級建築施工管理技士 設備工事 美しい空間は天井から

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92)美しい空間は天井から

天井には照明器具、非常用照明、感知器、カセット型エアコン、給気口、排気口、排煙口、スプリンクラー、スピーカー、アンテナそして点検口など多くの器具が取り付くことになる。天井は器具を付けるためにあるようにすら感じられる。その点、システム天井は整理されているが、それでも電気や空調などの設備器具の色相が合ってないこともある。

1.天井は照明を基本とする

天井の中で最も人間の感覚に影響があるのは、照明器具である。照明を空間を演出するといってもよい。照明器具は部屋芯や窓芯などを基準に配置する。その他の器具は照明の位置が決まった後に配置を決める。非常用照明は非常時の明るさを確保すれば、ある程度は融通はきく。感知器の位置も、壁際から600mm以上離すなどの規定を守り、その後に決定する。

2.間接照明の採用

照明器具を見せずに壁や天井へ反射させる効果により、照明するのが間接照明である。間接照明は光源が見えないことが重要である。近くの人の目線で照明器具が見えなくても、離れたところから見えている場合がよくある。間接照明は水平から見ても照明器具が見えないようにしたい。また、蛍光管端部の影で光のムラができないように、器具はラップさせる。間接照明の球替えなどのメンテナンス時に照明棚にはしごを掛けるときはその作業荷重も考慮したい。壁面照らしの間接照明は光る壁面やガラス面に照明器具が映り込んで見える場合があるので注意する。


天井の間接照明


壁の間接照明

3.主要な室のエアコンは天井内隠ぺい型

天井付けカセット型エアコンがよく採用されている。吹き出し口をデザインできる天井隠ぺい型もあるのですっきりした天井を計画することができる。

4.天井点検口を整理する

天井に取り付けられた電気や空調などの各種機器の取付け・点検のために多くの点検口がついているケースがある。配置を工夫して、各種設備工事間での共用を図り、点検口の数を少なくすることが必要である。点検口は天井と同材の化粧仕上げとし、アルミ製の枠見付けが小さいものや、樹脂製で枠が白色の目立たないものを使いたい。

1級建築施工管理技士 設備工事 照明の選択は色温度と演色性

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93)照明の選択は色温度と演色性

快適な居住空間の雰囲気は、照度レベルや明るさの分布だけではなく、使用するランプの光色「色温度(K)」や、そのランプによって照らされた物体の色の見え方「演色性(Ra:平均演色評価数)」に大きく影響を受ける。色温度や演色性の特性を理解して器具を選定する。

1.光源の明るさ

照明器具には、器具本体とランプが脱着交換できる従来型器具と器具本体とランプが一体のLED器具の2種類がある。光源の明るさは、従来型は「器具光束(ランプ光束 × 器具効率)」でLED器具は「定格光束」で明るさを表現するため、LED器具は同等の明るさを確保できる従来型と対比させて「◯◯ランプ△△形相当」と表記されている。


光源の明るさの目安

2.ランプの光色「色温度(K;ケルビン)」

照明器具の光源の色は色温度(K)を用いて表現する。色温度が高い青白い光は、明るくさわやかで活動的な空間に適し、高い照度でも快適な雰囲気が得られる。逆に、色温度が低い赤味がかった光は、落ち着きのあるくつろいだ雰囲気になり、低い照度の空間に適する。温かいとか、涼しいといった光色の温涼感は、個人差や季節によって異なるが、JIS(日本工業規格)では、3300K以下のランプのもとでは温かく感じ、5300K以上のランプのもとでは涼しく感じると定義している。
朝日や夕陽の光は概ね2000K、澄み切った高原の空の正午の太陽の光はおおよそ6500K「昼光色」と言われている。


色温度の目安

3.物体の色の見え方「演色性(Ra:平均演色評価数)」

物体の色を比較する時には、太陽光の下で並べて比較する。太陽光の下で見る色に近い見え方をする照明ランプを演色性の良い(高い)ランプという。同じ設計照度であっても演色性が良く色彩を鮮やかに美しく見せるランプを使用すれば、明るさ感の効果が高いため快適な照明環境が得られる。Ra値が高いほど色の見え方が自然光に近いものになる。執務空間や長時間滞在する作業場ではより演色性の高いランプを使用し、安全色彩が明確に識別できるような照明環境が必要であり、Ra値が80未満のランプは使用しなほうがよい。


演色性の目安

1級建築施工管理技士 設備工事 照明は球替えを考慮する

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94)照明は球替えを考慮する

照明器具の球替えができないというクレームがある。高所に照明器具を取り付けるときには、球替えが容易にできることを確認する。

1.球替えのメンテナンスは誰がする?

共同住宅や事業所のエントランスホール等の吹抜け部や工場や倉庫の天井の高い位置に照明器具を取り付けるときは、実際に維持メンテナンス体制を含め、球替えをする人は誰かを想定して建築主と協議しておく必要がある。工場や倉庫の場合は照明器具は球替え以外に、高所での維持メンテナンス作業があり、高所作業車が用意されている場合がある。このような場合は高所作業を熟知した資格をもった人が球替えをするので問題はないが、集合住宅や事業所のエントランスホールの吹抜け部分の照明器具の球替えを管理人や住人がする場合は、安全に、しかも容易に球替えができるように考えておく必要がある。

2.球替えを容易にする

高所に設けた照明器具の球替えでは、寿命の長い照明器具を選定し球替えの頻度を少なくすることが基本である。また、高所に照明器具を設けないで空間の明るさを確保する方法の検討も必要である。例えば、低い位置に照明器具を設置し天井と空間を照らす。壁面に集約してメンテ可能にするなどの方法もある。


球の取付け位置

3.球替えの方法

高所に設けた照明の球替えの方法を示す。
メンテナンス用器具に関しては収納するスペースも同時に検討する必要がある。


球替えの方法

①伸縮はしごによる球替え
②高所ランプ交換器具による球替え
③ローリングタワーによる球替え
(可動式組立足場)
④高所作業台車による球替え
⑤昇降式照明器具の採用
(オートリフター付き器具)
⑥タラップとキャットウォークの設置による球替え

4.LED照明の球替え

LED照明の寿命は長いが、将来球替えは必要である。電球タイプや蛍光灯タイプのものは従来と同じ方法での球替えでよいが、器具と一体型のものは器具ごと取替えとなり、工事が必要になる場合がある。

1級建築施工管理技士 設備工事 太陽光発電パネル設置時の注意点

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95)太陽光発電パネル設置時の注意点

太陽光発電は再生可能エネルギーとして注目され、また余剰電気の買取り制度もあって、太陽光発電パネルが屋根や屋上に多く設置されるようになったが、強風による飛散や雨漏りがあってはならない。既存建物への太陽光発電パネルの設置は建築確認は不要であるが、建築基準法上の建築設備に該当するため、建物の高さに算入され、斜線制限や日影などの規制を受ける。

1.太陽光発電パネルは強風で飛散させない

太陽光発電パネルの架台は、構造耐力上主要な部分(機械基礎)に緊結する。(国土交通省告示第1447号)太陽光発電パネルにかかる風圧力は、建築の屋根として建築基準法告示によって算定し(018 風圧力の算定 参照)、支持構造部(以下架台)や基礎の設計は構造設計者の確認が必要である。

2.将来の防水メンテナンスを考慮する

太陽光発電パネルの寿命は約30年と言われている。防水は、一般的に10年保証されているが、10年経たなくても部分的にメンテナンスをすることもあれば、10年以上経ってから全面防水改修をすることもある。太陽光発電パネルを外さなくてもメンテナンスできるように独立型機械基礎とする。

3.既存建物屋上に太陽光発電パネルを設置する場合

既存建物の屋上に設置するときも、風圧力算定や構造耐力上主要な部分に緊結することや防水上の配慮は新築と同じである。既存建物の荷重条件や、防水仕様などによって条件がつくことになる。既存躯体から新たにコンクリートの機械基礎を立ちげて太陽光発電パネルの架台をアンカーボルトで固定するのが原則である。

独立型機械基礎に設置

防水層の保護コンクリートにあと施工アンカーで直接架台を取り付けるのは、既存防水層を貫通し漏水の原因となるだけでなく、保護コンクリートの強度やアンカーボルトの引抜き強度と耐久性に不安があるので採用しない。どうしても保護コンクリートの上で支持する場合は、風圧力に対して十分な強度と耐久性を満足する置き基礎とする。置き基礎は構造耐力上主要な部分と同等以上とみなすだけの荷重およびアンカーボルトの耐力が必要で、かつ既存躯体の荷重条件を満足するものとする。

防水保護層と一体置き基礎

太陽光発電パネル設置に対応した、メーカー既成の基礎や防水と一体になった基礎もある。採用に当たっては構造設計者も含めて十分に検討することが必要である。

4.太陽光発電パネルの反射光被害

2012年4月、横浜地裁で、屋根に載せた太陽光発電パネルからの反射光が隣家の受忍限度を超えるまぶしさであると認定され、太陽光発電パネルの撤去を命じた判例がある。太陽光発電パネル設置による反射光が、近隣に対する恐れがある時は、あらかじめ検討し、設置後の角度調整等もできるようにしておく。


置き基礎のパネル設置例


折板屋根のパネル設置例

1級建築施工管理技士 設備工事 空調設備性能発揮のポイント

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96)空調設備性能発揮のポイント

空調設備機器が所定の性能を発揮しないとクレーム対象となる。建築をデザイン重視で納めても、性能を発揮できなければ建築を使っている人にストレスを与えてしまう。また、計画建物が隣接ビルの臭気の影響を受けたり、あるいは悪影響を与えたりすることもクレーム対象である。

1.空調屋外機は熱交換できる空間を確保する

空調屋外機は配置で熱交換効率が変わる。意匠的に空調屋外機を外部から見えないように目隠し壁で囲ったり、狭いスペースに押し込んで配置したりすると空気がショートサーキットを起こし、熱交換効率が悪くなる。設計段階で検討しておくべきことであるが、竣工後に設備機器が性能を発揮できなかった場合は、屋外機にフードを付けたり、目隠し壁に開口を設けたりする対策が必要である。工事着手段階で設備機器の配置について十分に検討し、機器の性能が十分に発揮できる配置とする。


空調屋外機の配置

2.空調設備の給排気エアバランスが重要

事務所ビルで扉が閉まりにくい、または扉が重くなって開けにくいという事例や共同住宅で共用廊下側の玄関扉が重たくて開けられないといった事例がよく発生している。これはすべて空調設備のエアバランスが調整されていないためである。この現象は扉に必要な開口面積のドアガラリやアンダーカットを設けることで解消できる。遮音性能や防火性能を求められる扉の場合は空調設備として建築基準法に適合させた天井バスダクト(吸音ダクト)等を設けるとよい。


エアバランス


3.隣接建物の給排気口、煙突、冷却塔等の配置を確認する

計画建物の給排気口は煙突の配置計画によっては、騒音・振動・臭気や熱風等の影響を隣接建物から受けたり、与えたりする。計画建物の給気口と排気口を離隔しショートサーキットを避けるのは当然であるが、隣接建物との影響を確認し計画することも重要である。また、建物が敷地いっぱいに計画される場合、隣地への騒音・振動に対する配慮も必要である。( 089)近隣の環境に配慮する 参照


隣接建物の給気口との調整

1級建築施工管理技士 設備工事 エレベーターの注意点

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97)エレベーターの注意点

エレベーター、エスカレーターの設置は建築基準法及び国土交通省告示の他「昇降機技術基準の解説」(日本エレベーター協会)による基準を守り、建築確認申請が必要である。機械室が不要のエレベーターではエレベーターシャフトの上部に煙感知器を設けなければならない。設置場所によっては点検しにくい場合がある。

1.人にやさしいエレベーター

エレベーターはほとんど規格品が採用されて、内装など個性がなくなってきている。かごの内装は快適でビルの個性を活かしたものにしたい。石張りであればかご荷重に見込んでおく必要がある。かご内に手すりを設けると安心感がある。車椅子利用者にもやさしいように鏡を設けたい。鏡は設置のしかたでかご内を広く見せることもできる。かご内の停止階ボタンは入口の両側に設置したい。トップクリアランスとの関係もあるが、天井はできるだけ高くし、照明は間接照明で色温度3500K(温白色)がやさしくてよい。
エレベーターの扉はビルの中の玄関でもある。乗り場の枠とともにデザインしたい。枠は扉幅より広くして乗降しやすいのが良い。エレベーターホールの呼びボタンのプレートは周囲の壁を汚さないように大きめにしたい。

2.エレベーターシャフトの煙感知器

集合住宅や規模の小さいビルではエレベーター機械室のないエレベーターが多く使われている。この機械室レスエレベーターはトップクリアランスの上部に煙感知器を設け、エレベーターシャフトの外側から点検ができなければならない。エレベーターシャフトの頂部が梁で囲われている場合、点検が困難な場合もある。あらかじめエレベーターの確認申請を提出する前に点検が可能であることを確認しておく。
天井ふところの中に煙感知器の点検口を設けることができれば、エレベーターメーカーの既製品(点検口を開ければ煙感知器が一緒に出てきて点検が容易なタイプ)を採用することができる。


EVシャフトの煙感知器

3.外部エレベーターはシャフト内に雨を入れない

外部にエレベーターを設置する場合、雨がシャフトに入らないようにすることが重要である。台風などの強風時の雨を想定して、広い庇と防風スクリーンを併用し、入口前には排水溝を設けなければならない。かごの床も滑らない仕様にするなどの配慮が必要である。


外部EVの乗り場

1級建築施工管理技士 設備工事 エスカレーターの安全確保策

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98)エスカレーターの安全確保策

エスカレータに挟まれたり、エスカレーターから落下したり、乗り降りの時につまづいたりする事故がある。東日本大震災後の余震でショッピングセンターのエスカレーター本体が落下する事故も発生した。

1.乗り込みやすいエスカレーター

エスカレーターの昇降スピードも駅や病院等の不特定多数の人が利用する施設に設置する場合は、規格型の標準スピード 30m/分の機種を採用するのではなく、転倒防止や安全対策を施した15〜20m/分のスピードの機種を採用する。また、乗込みステップの長いものの方がお年寄りや子供にやさしい。
屋外に設置するエスカレーターは屋根が設けてあっても雨の吹き降りにより床が濡れ、滑って転倒する恐れがある。乗降場の防滑に配慮した床仕上げ材の選択と床排水を確実に行う必要がある。

2.挟まれ防止

エスカレーターの移動手すりと建物の壁や天井との間に生じる三角部に人が挟まれる事故を防ぐため、固定式保護板の取付けが義務付けられた(2000年6月 建築基準法改正)。改正以前は可動式保護板のみで良かったが、安全のため、固定式保護板と可動式警告板の両方を取り付けなければならない。

> 『固定式保護板』の取付け義務

3.エスカレーターの落下防止

エスカレーターまわりの吹抜けには落下防止柵(手すり)を設ける。2台並ぶエスカレーターの間にも仕切り板とせきが必要である。
天井が高い吹抜けに面したエスカレーターでは移動手すり(高さ約800mm)だけでは下を見ると恐怖感があり、下から見ても何か落ちてきそうで不安である。みんなが安心して乗れるように、吹抜けのエスカレーターには落下防止スクリーン(透明ポリカーボネード製、高さ1500mm程度)を設けたい。

4.地震時のエスカレーター脱落防止

建物の梁にかけられたエスカレーターは地震時の躯体の層間変位に追従して落ちないように十分なかかり代が重要である。万が一にも落下することがあってはならない。2013年7月に建築基準法施工令が改正され、10月に地震などでエスカレーターが脱落するおそれがない構造方法を定める告示(第1046号)が出された。一端固定他端スライドの時、スライドする部分の構造方法は次の式による十分な隙間とかかり代長さの確保が必要である。

隙間:C > Σγ・Hの場合
かかり代長さ:B ≧ Σ γ・H + 20(単位 mm)
γ:各階の設計用層間変形角
H:エスカレーターの各階の揚程

また、両端非固定状態の場合などの構造方法についても規定されている。できれば、さらに脱落防止のワイヤーロープを掛けておきたい。


エスカレーターの安全確保

1級建築施工管理技士 設備工事 雷から人・建物・設備を守る

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99)雷から人・建物・設備を守る

大気中で発生した雷は建物を直撃して破壊し、建物内部に侵入した誘導雷は絶縁破壊を引き起こし、建築設備に障害を引き起こす。
建築基準法では、建物の高さが20mを超える部分を旧JIS或いは新JISで規定する避雷設備の設置を義務付けている。ただし、市区町村によっては火災予防条例等により、新JISによる避雷設備を指導する場合があるので確認が必要である。

1.外壁面への側撃雷からの保護

建物が高さ60mを超えると、外壁への側撃雷を受けやすくなる。特に建物のコーナー部分や集合住宅の最上部バルコニー屋根庇等の突起部は避雷設備の保護角内であっても側撃雷を受けて、建物が損傷する事故がある。避雷設備は雷撃による損傷を最小限に抑えることができても、落雷は防げない。側撃雷からの保護対策が必要となる。


建物高さが60mを超えた場合の側撃雷からの保護

2.避雷設備設置の留意点

①旧JISでは、避雷針の保護角は一般建物では60° 以下、危険物を扱う貯蔵所等では45° 以下と規定している。建物高さが60m以上になると、旧JISの避雷針では側撃雷による落雷は防げない。

②新JISによる保護レベルに応じた受雷部の配置をすることが望ましい。


新JISによる保護レベルと受雷部の配置
③金属笠木や屋上外周部に設けられた金属手すりは、相互に電気的に接続すれば棟上げ導体として使用できる。メンテナンス用のタラップや鉄骨階段が棟上げ導体より突出する場合は、棟上げ導体に電気的に接続し保護する必要がある。

階段は棟上げ導体に接続して保護
ただし、棟上げ導体の保護範囲は導体から水平距離で10m以内である。

④自立型避雷突針が全長6mを超えると、強風時の揺れで躯体に共振して、下階の居住者に不快な音や振動を与える。集合住宅は棟上げ導体方式の採用がよい。

⑤近くに落雷した雷が配電線や通信線を通じて建物内に侵入し、電子機器の誤動作や建築設備の障害を引き起こす。電子機器の保護のためサージ保護デバイス(SPD)の設置が必要となる。

⑥屋上の設備機器と避雷導体との離隔距離は1.5m以上確保する。屋上が狭くて離隔距離を確保するのが困難な場合は設置極(アースボンド)を設ける。

屋上設備機器と避雷導体の離隔