3章 土工事 2節 根切り及び埋戻し

第3章 土工事 


02節 根切り及び埋戻し

3.2.1 根切り

(a) 根切りの留意点
根切りに先立ち処置する必要のある事項は、おおむね次のとおりである。

(i) 地盤調査の結果による地層及び地下水の状況把握
(ii) 近接した建物等への影響の有無(2.2.1 (a)(iii)参照)
(iii) 地中埋設物(2.2.1(a)(ii)参照)で根切りに掛かるもの及び周辺にあるものの移設養生等の処置
(iv) 山留めの安全性の確認(建設工事公衆災害防止対策要綱(建築工事編)(平成5年1月12日建設省経建発第1号)では、根切り深さ1.5 mを超える場合には、原則として山留めを設けるとしている(同要綱第45参照)。)
(v) 機械掘削を行う場合の転倒、転落の防止
(vi) 構台を架設した場合の荷重、振動に対する安全性の確認

(b) 根切りの概要
(1) 根切りの種類
(i) 総掘り :地下室等がある場合に建物全面を掘る。
(ii) 布掘り :連続基礎等の場合に帯状に掘る。
(iii) つぼ掘り:独立基礎等の場合、角形又は丸形に掘る。

(2) 根切り深さ
根切り深さは、砂利地業等の突固めによるくい込み量〈突代、突べり〉(土質等により0 ~ 30mm位まで)を見込んだ深さとする。

(3) 根切り範囲の計画
根切り範囲を定めるには、山留め、コンクリート型枠の組立、取外し等の作業がある場合においても作業が十分できるよう、山留めと型枠組立材料との間に作業者が入れる間隔を見込んでおく。その間隔は、通常の場合は図3.2.1のように、布掘りでは基礎幅から300~600mm、総掘りの場合は 1m 程度とする。ただし、除去の必要のないラス型枠材料等による場合や、連続地中壁やソイルセメント壁による山留め壁を直接外型枠として使用する場合等ではこの限りではない。


(イ)布掘りの場合


(ロ)総掘りの場合(外型枠が必要な場合)


(ハ)総掘りの場合(外型枠がない場合)
図 3.2.1 根切り範囲

(4) 根切り工事の計画
根切り工事では、掘削と山留め支保エの架設がバランスよく、かつ、 タイミングよく行われることが非常に大切である(図3.2.2参照)。また、掘削の実施においては、山留めの設計条件を十分に確認し、設計条件に合致した方法により施工を行うとともに安全を確認して工事を実施する必要がある。


(イ) バランスのとれた掘削方法


(ロ) バランスがくずれやすい掘削方法
図3.2.2 掘削方法

(5) 根切り底の施工
根切り底は、水平にしなければならないのは当然のことであるが、機械掘削をする場合には所定の深さより深く掘り過ぎないこと及び地盤面を乱さない(荒らさない)ことに注意する必要がある。深く掘り過ぎたり、乱したりした場合は、砂地盤の場合には、ローラー等による転圧や締固めによって自然地盤と同程度の強度にする。シルトや粘性土等の場合には、自然地盤以上の強度をもつ状態に戻すということは非常に困難なので、砂質土と置換して締め固め、自然地盤と同程度の強度にする処置が必要となる。また、砂質土による置換では強度の回復が困難と判断される場合は、セメント、石灰等の改良材を用いて地盤の改良を行う方法もあるので、地盤強度の確保の方法等について設計担当者と打ち合わせる。

一般的なバケットを用いた機械掘削では、通常床付け面より300~500mmの位置より手掘りとするか、バケットに平板状の特殊なアタッチメント(鋼板等)を取り付けたもので、根切り底が乱されるおそれのないものとして、機械を後退させながら施工する(図 3.2.3参照)。杭間ざらいでは、杭体に損慟を与えることや地盤の乱れを生じることのないよう、小型の機械に変更するなどし、十分に注意して施工を行う。

また、地下水処理が十分でない場合、根切り底が乱されるため、地下水の処理は十分に行う。


図 3.2.3 機械掘削の例

(6) 根切り底の検査
根切り底は、レベルチェック及び地盤状態の検査をしたのちに、捨コンクリートや基礎スラプの施工にかからなければならない。レベルチェックは、レベルを用いたり、遣方に水糸を張りスケールを用いるなどして行う。測定部分の大きさにもよるが、つぼ掘りは周囲4点と中央1点、布掘りは2 ~ 3 mごとに1点、総掘りは 4mごとに1点程度を目安として実施することが望ましい。地盤の状態(根切り底の乱れ及び地層の種類・強さ等)に関する検査は、通常、床付け地盤が設計図書、地盤調査報告書に示された地層、地盤に合致していることを土質試料等を参考に目視によって確認するが、その確認が難しい場合には「標仕」1.1.8の規定に基づき土質試験や原位置試験等の適切な試験によって確認する。

参考として地盤の状態の簡易判別法を示す(表 3.2.1 参照)。

表 3.2.1 地盤の状態の簡易判別法( JASS 3(一部修正)より)

(c) 掘削深さと法面の勾配

(1) 法面の勾配
法付けオープンカット工法により掘削を実施する場合、法面の勾配は、土の安息角や粘着力により決まるが、特に粘着力は土の含水量によっても変化する。切土における法面勾配の目安として表 3.2.2 が示されている。法面の勾配は、規模が大きくなれば安定計算によって安全を確かめて決定する。また、法面及び法尻は安定勾配以下であっても、降雨・乾燥のくり返しにより崩れやすくなるので、存置期間中に異常を生じないように、排水・養生を行う。地下水位が浅い場合は、排水溝、集水桝等による地下水処理を行う(図 3.2.4参照)。


(イ)ウェルポイントによる地下水位の低下


(ロ)法面の崩壊防止


(ハ)砂粒子の流出防止


(ニ)法面の養生
図 3.2.4 法面の排水、養生の例( JASS 3より)

表3.2.2 切土に対する標準法面勾配(山留め設計施工指針より)

(2) 手掘り掘削時の規定
手掘りとする場合は、労慟安全衛生規則に勾配と高さが定められているので、これらを基に安全性を確保しながら掘削する(表 3.2.3参照)。

表3.2.3 手掘りによる掘削作業での掘削面の勾配の基準(労例安全衛生規則)

(d) 寒冷期における施工時の注意

(1) 施工上の留意点
寒冷地の冬期施工に当たって、特に注意をしなければならないものに凍結現象がある。凍結した土は強度的にみて良質な地盤と間違えやすいが、氷が溶けると体積が減少し、沈下現象に結びつく。したがって、凍結させないような施工管理が必要である。

(2) 凍結時の対策
床付け地盤が凍結した場合、この土は乱された土と同様に扱い、良質土と置換するなどの処置を行う。

(e) 土工事用機械
土工事に用いられる主な使用機械を、表 3.2.4に示す。また、根切り用の掘削機械の種類を図 3.2.5に示す。

施工に用いる機械については、近接住民の生活環境の保全の必要性のある場合について、昭和51年に「建設工事に伴う騒音振動対策技術指針」(昭和62年全面改正)が定められているので、これによって施工する。

表 3.2.4 土工事作業と主な使用機械

図 3.2.5 根切り用掘削機械の種類

3.2.2 排 水

(a) 地下水処理工法の概要

地下水処理工法には、大別して排水工法、止水工法、リチャージ工法があり、図 3.2.6 に示すようにそれぞれ多くの種類がある。工法の選定に当たっては、必要とする揚水量・排水を行う地下水の深度等の目的に対する適合性・施工性・工期・コストのほか、揚水による地下水位低下に伴う井戸枯れや地盤沈下等の周辺への影響を考慮しなくてはならない。多くの場合、止水工法は山留め工法に直接かかわるため地下水処理工法と山留め工法は同時に検討すべきである。

また、最近では周辺の井戸枯れや地盤沈下防止等を目的にリチャージ工法を採用することもある。


図 3.2.6 地下水処理上法の種類(山留め設計施工指針より)

(b) 排水工法
排水工法は、地下水の揚水によって水位を掘削工事に必要な位置まで低下させる工法で、地下水位の低下量は揚水量や地盤の透水性等によって決まり、通常、透水係数が 10-4cm/s程度より大きい地盤(帯水層)に適用される。

土粒子の径と排水工法の適用範囲を図 3.2.7に示す。

図 3.2.7 土粒子の径と排水工法の適用範囲(根切り工事と地下水より)

この排水工法を集水原理で分ければ、ウェル等の排水設備に流入する水を揚水する重力排水工法と、負圧等を利用して強制的に水を流入させ排水する強制排水工法とがある。現在よく用いられる工法は、釜場工法、ディープウェル工法、ウェルポイント工法及びバキュームディープウェル工法であり、工法は排水の実施位置及び必要とする揚水量等を考慮し決定する。

(c) 各種排水工法の特徴と注意点は次のとおりである。
(1) 釜場工法
根切り部へ浸透・流水してきた水を、釜場と称する根切り底面よりやや深い集水場所に集め、ポンプで排水する最も単純で容易な工法である(図 3.2.8参照)。釜場は、根切りの進行に合わせて下げるとよい。

また、この工法の注意点は次のとおりである。

① 湧水に対して安定性の低い地盤への適用は、ボイリングを発生させ地盤を緩めることにつながるので好ましくない。

② 主として、雨水を処理する場合は、根切り底に排水溝(明きょ)を設けるなどして雨水を集水桝に集めてポンプで排出する。この場合、集水桝は 図 3.2.9 のように基礎に影響を与えない場所に設ける。

③ べた基礎のように上部構造の応力を地盤に伝えるために設けた基礎スラプ下の地盤は、その影評範囲を地下水で乱してはならない。床付け地盤面に地下水が流入する場合には適当な排水処置をとり、地下水により基礎スラプ下の床付け地盤の支持力が低下しないようにしなければならない。

④ 釜場にはフィルターを設け、地盤中の砂分を揚げないようにしなければならない。


図 3.2.8 釜場工法


図 3.2.9 集水枡の位置

(2) ディープウェル工法
根切り部内あるいは外部に径500~1,000mmで帯水層中に削孔し、径300~600 mmのスクリーン付き井戸管を設置してウェルとし、水中ポンプあるいは水中モーターポンプで帯水層の地下水を排水する工法である(図 3.2.10 参照)。砂層や砂礫層等、透水性のよい地盤の水位を低下させるのに用いられる。この工法は、ウェル1本当たりの揚水量が多く、また、深い帯水層の地下水位を大きく低下させることが可能であるなどの特徴があるが、(4)のウェルポイント工法等に比べて設置費用が多額である。したがって、必要排水量が非常に多い場合、対象帯水層が深い場合、帯水層が砂礫層であるなどによりウェルポイント工法では処理できない場合、ウェルポイントの設置によってだめ工事(手直し工事)が多くなる場合等に採用すると有効である。

また、ディープウェル工法による揚水は、周辺地下水位も大きく低下させることが多く.周辺の井戸枯れや地盤沈下等を生じるおそれがあるので、採用に当たってはこの点を考慮しなくてはならない。


図 3.2.10 ディープウェル工法

(3) 明きょ・暗きょ工法
明きょ工法は排水溝により集水し、暗きょ工法は地中に設置した暗きょにより集水し、排水する方法をいう。

(4) ウェルポイント工法
根切り部に沿ってウェルポイントという小さなウェルを多数設置し、真空吸引して揚排水する工法であり( 図 3.2.11参照)、透水性の高い粗砂層から低いシル卜質細砂層程度の地盤に適用される。可能水位低下深さはヘッダーパイプより4~6m程度である。1本当たりの揚水量は土質によって異なるが、通常10~20ℓ/min程度、場合によっては50ℓ/minになることもある。

また、この工法の注意点は次のとおりである。

① 地下水位低下により、周囲地盤が多少とも沈下するため、計画時にその影響を調査・検討する。

② 地下水をくみ上げるため、周囲の井戸水等の水位低下や井戸枯れを生じることもあるので事前に調査する必要がある。

③ ポンプが故障した場合、水位の上昇により山留め崩壊等の大事故になるおそれがあるので、予備ポンプの設置が必要である。

④ 排水により、根切り底・法面・掘削面に異常が起こらないように排水処理を確実に行う。

⑤ ウェルポイントの排水を停止する場合は、地下水位の上昇により、建物、地中埋設物等の浮上がりによる破壊、損傷等を起こさないように、排水停止時期について十分に検討する。

⑥ 気密保持が重要であり、パイプの接続箇所で漏気が発生しないようにする。


図 3.2.11 ウェルポイント工法

(5) バキュームディープウェル工法
ディープウェルに真空ポンプを組み合わせた排水工法で、帯水層の透水性が低い場合やディープウェルの設置方法が悪いため、水位低下しにくい場合に採用することが多い。ウェル内を負圧にして地下水を吸引するため、ウェルの気密性を保つ必要がある。

(d) 止水工法
止水工法は、図 3.2.12 に示すように、根切り部周囲に止水性の高い壁体等を構築し根切り部への地下水の流入を遮断する工法で、大別すると地盤固結工法・止水壁工法及び圧気工法がある。

盤ぶくれ防止のために被圧帯水層を遮断したり、山留め背面地盤に砂質土層があってこれを止水する必要のある場合や、地下水の低下によって周辺の井戸枯れや地盤沈下、あるいは地下水塩水化等が問題になり排水工法が適用できない場合等に、止水工法が採用される。更に、下水道・水路等の放流場所がない場合や、放流場所の可能放流(排水)量が小さく排水工法が採用できない場合、下水道料金や排水工法の設備設置費のために止水工法を採用した方が低コストで済む場合等にも採用される。また、現場条件やコスト等から止水工法と排水工法を併用する場合もある。

止水工法としてよく用いられるのは、止水壁工法と地盤固結工法であり、工法選定の際の主な注意点は次のとおりである。

① 止水壁は山留め堅としても用いることが大部分であり、設計の際はこの点を考慮しなくてはならない。

② 工法によって施工深度や適用地盤等が異なり、また、敷地条件によって採用できない場合がある。

③ 一般には仮設であるが、止水矢板工法を除き撤去できない。


図 3.2.12 止水工法による地下水処理

(e)リチャージ工法
リチャージ工法は復水工法ともいい、ディープウェル等と同様の構造のリチャージウェル(復水井)を設置して、そこに排水(揚水)した水を入れ、同一のあるいは別の帯水層にリチャージする工法である(図 3.2.13参照)。この工法は、周辺の井戸枯れや地盤沈下等を生じるおそれがある場合の対策として有効な工法である。

本工法の注意点を次に示す。

① 同一帯水層にリチャージする場合、排水工法だけを採用する場合に比べて必要排水(揚水)量が増加するので、ディープウェル等の排水設備も増える。その程度はリチャージウェルが揚水井に近いほど多くなる。したがって、リチャージウェルは揚水井とできるだけ離す方が効果的である。

② 山留め壁の根入れ以浅の帯水層けリチャージする場合、山留め壁への側圧(水圧)が増加するので検討が必要となる。

③ リチャージ量は、水中の鉄分、細粒分のほか、バクテリア等によって目詰りし、次第に減少する。したがって、必要に応じてリチャージウェルの洗浄が必要である。


図 3.2.13 リチャージ工法の例(根切り工事と地下水より)

3.2.3 埋戻し及び盛土

(a) 埋戻しに当たっては、埋戻しが不十分な場合沈下が生じ、建物周辺の外構や埋設管等に影響を及ぼす可能性がある。

施工に当たっては、埋戻し材料の選定と締固め管理が重要となる。

(b) 埋戻し部の型枠材等の撤去
埋戻しに先立ち、埋戻し部の型枠材等を撤去したのち、埋戻し作業を実施する。これは、型枠材を存置すると腐食により地盤の沈下を生ずる場合があるためである。なお、腐食に伴う沈下の発生のおそれのない型枠材としてはラス型枠材料等があり、これを使用した場合には撤去の必要はない。

(c) 材料及び工法等
(1) 埋戻し及び盛土の種別等
「標仕」では、埋戻し及び盛土の種別を、土の種類とそれに適した工法の組合せとして「標仕」表 3.2.1のように区分し、その種別を特記することとしている。
このうちA種は、山砂で一般的には水締めのきく砂質土を想定している((3)参照)。

また、B種は、当該現場で発生した根切り土の中で、有機物、コンクリート塊等を含まない良質土を想定しているが、このような良質の発生土が埋戻し等に必要な量として不足する場合は、設計担当者と打ち合わせ、必要に応じて「標仕」 1.1.8による協議を行う。

C及びD種については、建設発生材の有効活用が社会的命題であり、積極的に使用することが望ましい。

国土交通省では、建設工事に伴い副次的に発生する建設汚泥の処理に当たって、基本方針、具体的実施手順等を示すことにより、建設汚泥の再生利川を促進し、最終処分場への搬出量の削減、不適正処理の防止を図る目的から、「建設汚泥の再生利用に関するガイドライン」(平成18年6月12日)を作成した。

このガイドラインは、国土交通省所管の直轄事業に適用するとともに、その他の事業においてもガイドラインに準拠して建設汚泥を取り扱うことを期待しているものであるが、環境基本法に基づく土壌汚染対策法に定める特定有害物質の含有量基準に適合しない建設汚泥は対象外としている。

なお、上記以外として「標仕」には規定されていないが、最近では、建設発生土に水や泥水を加えて泥状化したものに固化材を加えて混練した流動化処理土が用いられる場合がある( JASS 4参照)。

(2) 埋戻し土の性状
埋戻し土には腐食土や粘性土の含有量が少なく、透水性の良い砂質土を用いるのがよい。また、均等係数が大きいものを選ぶ。均等係数の算定は土の粒度試験結果の片対数用紙の対数目盛に粒径を、算術目盛に通過質量百分率をとって、図 3.2.14のような粒径加積曲線として描く。そしてその性質を定量的に示す係数として、均等係数 Ucと曲率係数 U’c を次式から求める。


図 3.2.14 粒径加積曲線

(3) 埋戻し及び盛土材料の粒度組成
山砂、川砂及び海砂の粒度組成の一般的な比較は表 3.2.5のようになり、埋戻し土には山砂が最も適している。これは埋戻し土としては、分離作用を強く受けて均一粒子となっている砂(海砂等)よりも砂に適度の礫やシルトが混入された方が大きい締固め密度が得られるからである。
また、使用する埋戻し土については、必要に応じて粒度試験等を実施するのが望ましい。表 3.2.6 に埋戻しに適した材料の粒度と性質を示す。

表 3.2.5 山砂、川砂及び海砂の一般的な粒度特性

表 3.2.6 埋戻しに適する材料の粒度と性質( 山留め設計施工指針より)

(4) 土質と締固め方法
締固めは、川砂及び透水性のよい山砂の類の場合は水締めとし、透水性の悪い山砂の類及び粘土質の場合はまき出し厚さ約300mm程度ごとにローラー、ランマー等で締め固めながら埋め戻すのが原則である。埋戻し時には、建物躯体のコンクリートが締固めを行うのに必要な強度を発現していることを確認する。建築物周囲の深い根切りの部分は、機械で締め固めるのは困難なことが多いので、整地後の地盤沈下を防止するには、川砂又は透水性のよい山砂の類を使用し、水締めをする必要がある。設計屈瞥の指定が適当でないと思われる場合は、設計担当者と打合せを行い決定する。

(5) 土の含水と締固め
土は、ある適当な含水比のとき最もよく締め固まり、締固め密度を最大にすることができる。このような含水比を最適含水比という。

(6) 寒冷期の施工時の注意
凍結土を埋戻し、盛土や地均しの材料として使用すると、凍結土が浴けた際に、地表面に凹凸・舗装面や犬走りにひび割れ等が発生しやすくなるので、使用してはならない。

(d) 余盛り
埋戻し及び盛土には、土質による沈み代を見込んで余盛りを行う。余盛りの適切 な標準値はなく、表 3.2.7 は一つの参考値であるが、これにより推定することは容易でない。通常の埋戻し( 地下2階で幅 1m程度 )において、砂を用い十分な水締めを行う場合 50~100mm、粘性土を用い十分な締固めを行う場合、100~150mm程度が余盛りの目安と考えられるが、重要な盛土では、試験により余盛りを決めるのがよい。

表 3.2.7 余盛りの参考値

3.2.4 地 均 し

地均しは、均しを行う地表面の不陸を修正し、草木の除去及び清掃をして、一様にかき均したのち、仕上げ面を一様になじみ起こしをして、良質土をまきかけ、歩行に耐えうる程度に締め固める。ここで、地表面は施工時に工事車両の走行や作業通路として締め固められており、地均し面の不陸の発生要因となるため、なじみ起こしは確実に実施する。また、寒冷期の施工に当たっては、凍結土を使用しないようにする。

3.2.5 建設発生土の処理

(a) 建設発生土処理についての注意事項
建設発生土を搬出する際、工事用車両の作業所出入口には、標識・点滅灯等を設置し、第三者に工事用車両の出入りを明示するほか、車両誘導員を配置して人身事故の防止及び作業所周辺道路に交通渋滞を生じさせないよう努力する必要がある。

また、建設発生土の運搬に当たっては過積載防止に努めるとともに、運搬中に土砂がこぼれ落ちないようにシート等を掛けて養生する。タイヤに付着した泥土は作業所内で洗浄し、通行する逍路を汚損しないようにする。

なお、平成14年に制定された土穣汚染対策法により、「その土地が特定有害物質によって汚染されており、当該土地の形質の変更をしようとするときの届出をしなければばらない区域」として都道府県知事が指定した区域内で土工事等を行う場合は、施行方法等の計画を事前に知事に届け出ることとされているので注意する (1.3.11 (a)参照)。

(b) 建設発生土処理に関する法規
建設発生土の運搬は、「土砂等を運搬する大型自動車による交通事故の防止等に関する特別措置法」に基づき、地方運輸局長から表示番号の指定を受けたトラックとする必要がある。また、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」並びに各地方公共団体による規制・指導に基づき建設発生土処理計画を作成し、これに従って適切に処理する。

なお、これらのほかに、(一財)土木研究センターの「建設発生土利用技術マニュアル」等が参考となる。

(c) 建設発生土の再利用
国土交通省が推進している「建設発生土情報交換システム」により、近隣地域での建設発生土や購入希望土等の情報がデータベース化されている。これを活用することにより、建設発生土の再利用を図ることが望ましい。
また、建設発生土の再利用については、平成3年建設省令第19号に技術基準が示されている。その抜粋を次に示す。

建設業に属する事業を行う者の再生資源の利用に関する判断の基準となるべき事項を定める省令
(平成3年10月25日 建設省令第19号 最終改正 平成13年3月29日)
(建設発生土の利用)
第4条
建設工事事業者は、建設発生土を利用する場合において、別表第1の上欄に掲げる区分に応じ、主として下欄に掲げる用途に利用するものとする。
2 前項の場合において、建設工事事業者は、建設発生土の品質等に関する技術的知見に基づき、建設工事の施工又は完成後の工作物(建築物を含む。以下同じ。)の機能に支障が生じないよう、適切な施工を行うものとする。
3 建設工事事業者は、建設発生土の利用に当たって、あらかじめ建設発生土の発生又は利用に係る必要な情報の収集又は提供に努めるものとする。