5章 鉄筋工事 1節 一般事項

第5章 鉄筋工事 


1節 一般事項

5.1.1 適用範囲

(a) この章は,鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造等の鉄筋工事に適用されるほか、補強コンクリートブロック造やプレキャストコンクリート工事等でも引用されている。

(b) 作業の流れを図5.1.1に示す。

図5.1.1 鉄筋工事の作業の流れ

(c) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。ただし、継手の工法については「標仕」5.3.4(a)で標準としているガス圧接継手を対象として示す。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。

(1) 鉄筋工事の施工計画書

工程表
(材料、柱、壁、梁、階段スラブ等の検査時期及び関連設備工事の期間)
② 施工業者名、作業の管理体制
鉄筋の種別、種類、製造所名及びその使用区分
④ 規格品証書(7.2.10 (a)(1)参照)の提出時期
荷札の照合と提出時期(ラベル、鉄筋のマーク等の確認方法)
鉄筋の試験(試験所、回数、試験成績書)
⑦ 材料の保管場所及び貯蔵方法
⑧ 材料の加工場所(現楊又は工場の別、規格及び機械設備)
⑨ 鉄筋加工機具(切断、曲げ)
鉄筋の継手位置、継手長さ、定着長さ及び余長
異形鉄筋にフックを付ける箇所
鉄筋のかぶり厚さ及びスペーサーの種類
梁、壁、スラブ等の開口部補強、
屋根スラブ、片持スラブ、壁付きスラブ、パラペット等の特殊補強の要領

鉄筋位置の修正方法(台直し等)
⑮ 鉄筋組立後の乱れを防止する方法(歩み板の使用等)
⑯ 関連工事との取合い(柱付きコンセント、スラブ配管、壁配管、貫通孔等)
作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者.品質記録文書の書式とその管理方法等

(2)ガス圧接の施工計画書

① 工程表(圧接の時期)
② 施工業者名及び作業の管理体制
ガス圧接技技量資格者の資格種別等(資格証明書等)
④ ガス圧接技量資格者の人数
⑤ ガス圧接器具
圧接部の外観試験(全圧接部)
圧接部の超音波探傷試験(本数、試験方法、試験位置、探傷器、試験従事者、成績書)
圧接部の引張試験(本数、採取方法、作業班ごとの施工範囲、試験所、成績書、鉄筋切断後の補強方法)
不良圧接の修正方法


5.1.2 基本要求品質

(a) 鉄筋工事では,使用するコンクリートの強度との組合せにおいて必要な品質性能の鉄筋コンクリート構造物となるようにその種類が設計図書に指定される。基本要求品質としては、指定された種類の材料が工事に正しく使用され、その本数や配筋状態に誤りがなく、定着や継手が正しく施工されていることであり、このことを証明できるようにしておく必要がある。

具体的な例としては、使用する鉄筋材がJISマーク表示品であれば、ミルシート及びチャージ番号の表示された鋼板(メタルタック)並びに製造所、加工場から現場までの経歴を証明する資料を整備することが考えられる。

(b)「組み立てられた鉄筋は、所定の形状及び寸法を有し、所定の位置に保持されていること。」とは鉄筋コンクリート構造物の一部として出来上がった状態をいっており、これをコンクリート打込み後に確認することは現実的には不可能となる。完成時にこれらの要求事項を満足していることを証明するためには、施工途中の適切な時点で施工が正しく行われていることを何らかの方法で確認し記録することが重要である。

具体的には、鉄筋の加工段階での形状・寸法の確認・記録、組み上げた鉄筋のかぶり厚さの確認・記録等が考えられる。また、この寸法及び位置には施工上必要な許容誤差を含んだものとして考える必要があり、部材の大きさ立地条件、取り合う部材の状況等を勘案して適切に定める。ただし、「標仕」表5.3.6で規定する鉄筋の最小かぶり厚さは、法律に定められたものであり、これを下回ることのないようにしなければならない。

「鉄筋の表面は、所要の状態であること。」とは施工途中の、特にコンクリート打込み直前における鉄筋に、コンクリートとの付着性能を阻害するような油脂類、錆、泥、セメントペースト等が付着していない表面状態とすることであり、その程度を定める必要がある。具体的には、油脂類、浮き錆、セメントペースト類は、コンクリート打込み前に除去しておく必要があり、この付着物の程度、除去のための方法と処理後の確認方法をあらかじめ施工者に提案させ、また、確認したことを記録に残す。

なお、錆のうち、浮いていない赤錆程度のものについては、コンクリートとの付着を阻害することがないので、無理にこれを落とす必要はない。

(c) 鉄筋は、鉄筋コンクリートの構成部材として、主として引張力を負担しているが、部材に作用するこれらの力をスムーズに伝達させる必要がある。このために必要となる継手及び定着の方法が設計図書に指定されている。「標仕」においては、一般的な場合における継手及び定着の方法が示されており、通常は、定着の方法及び長さ、継手の位置及び長さを確保すればよい。特別な形状の部材にあっては、設計図書に特記されるため、これによる。

なお配筋の状況により、規定された定着や継手を設けることができない場合にあっては、「作用する力を伝達」できるような定着や継手の方法を施工者に提案させ、これを元に設計担当者と打合せを行うなどの方策をとらなければならない。

5.1.3 配筋検査

(a) 一般事項
(1) 材料の種類、鉄筋の加工・組立及びかぶり厚さの精度は、鉄筋コンクリートの構造性能及び耐久性に著しく影響する。このため、「標仕」5.1.3では主要な構造部の配筋はコンクリート打ちに先立ち監督職員が検査を行うこととしている。

(2) 鉄筋が完全に組み立てられたあとでは、修正が困難な場合があるので、工程の進捗に対応した適切な時期に検査を行う必要がある。

(3) 配筋検査終了後に埋込み配管が設けられる場合があるので、コンクリート打ちに先立ち、必要に応じて、再度検査を行う。

(b) 検査内容
(1) 組立時の確認
① 種別、径、本数
② 折曲げ寸法、余長、フック
③ 鉄筋のあき、かぶり厚さ
④ 定着・継手の位置、長さ
⑤ 補強筋、差し筋
⑥ スペーサーの配置、数量
⑦ ガス圧接継手の抜取試験(超音波探傷試験又は引張試験)
⑧ 機械式継手等の試験(全数又は抜取り)
⑨ 配管等の取合い

(2) 検査後の手直し修正確認

5章 鉄筋工事 2節 材料

第5章 鉄筋工事 


2節 材 料

5.2.1 鉄 筋

(a) 鉄筋は、形状から異形鉄筋と丸鋼に分けられる。また、製造原料の違いから鉄筋コンクリート用棒鋼と鉄筋コンクリート用再生棒鋼に分けられる。鉄筋コンクリート用棒鋼(JIS G 3112)は転炉、電炉又は平炉により鋼塊から熱間圧延によって製造され、鉄筋コンクリート用再生棒鋼(JIS G 3117)は鋼材製造途上に発生する再生用鋼材を材料としてこれらを再圧延して製造される。

(b) 鉄筋には、1こん包ごとに荷札が付けてあり、種別の記号、径又は呼び名、溶鋼番号(7.2.10(a)(1)(ⅱ)参照)、製造業者名等が表示される。

(c) 規格品証明書については,7.2.10(a)(1)(ⅱ)を参照する。

(d) 異形鉄筋の直径及び断面積は、その異形鉄筋と同じ質量の丸鋼に換算したときの直径及び断面積であり、これを公称直径及び公称断面積と呼んでいる。

(e) 主要構造部等に使用する鉄筋は、「建築物の基礎、主要構造部等に使用する建築材料並びにこれらの建築材料が適合すぺき日本工業規格又は日本農林規格及び品質に関する技術的基準を定める件」(平成12年5月31日 建設省告示第1446号)で、JIS G 3112及び JIS G 3117並びに国土交通大臣の認定品とされたが、「標仕」では、このうちから標準的に使用するものの種類の記号を、「標仕」表5.2.1に掲げている。

なお、鉄筋コンクリート用棒鋼に丸鋼も掲げられているが、現在ではほとんど使用されていない。

(f)「標仕」表5.2.1には、SD490が含まれていない。SD490が使用される場合には、折曲げ形状及び寸法並びに継手・定着長さ及び継手方法を含め、特記されることになる。

(g) 近年では、せん断補強として、高強度せん断補強筋が用いられることがある。これは、降伏点が685 N/mm2、785 N/mm2等の材料であり、せん断補強筋量を低減させることができる。また、梁貫通の補強筋としても、鉄筋径を低減させることができることから、使用されている。最近では、許容応力度 1,275N/mm2 の材料も用いられることがある。ただし、これらは大臣認定品であり、強度式とリンクしていることや折曲げ寸法についても注意が必要である。

(h) 異形鉄筋の圧延マークの例を図5.2.1に示す。


図5.2.1 異形鉄筋の圧延マークの例

(g) JIS G 3112(鉄筋コンクリート用棒鋼)の抜粋を次に示す。

JIS G 3112:2010

1.適用範囲

この規格は、コンクリート補強に使用する熱間圧延によって製造された丸鋼1)及び異形棒鋼1)について規定する。ただし、JIS G 3117に規定する鉄筋コンクリート用再生棒鋼には適用しない。
1) コイル状のものを含む。

3.種類及び記号
丸鋼の種類は2種類、異形棒鋼の種類は5種類とし、その記号は表1による。

表1- 種類の記号

5.化学成分
丸鋼及び異形棒鋼は、9.1によって試験を行い、その溶鋼分析値は、表2による。

表2-化学成分 a)

注a) 必要に応じて、この表以外の合金元素を添加してもよい。

6.機械的性質
丸鋼及び異形棒鋼は、9.2によって試験を行い、その降伏点又は耐力、引張強さ、伸び及び曲げ性は、表3による。

なお、曲げ性の場合は、その外側にき裂を生じてはならない。

表3 – 機械的性質

a) 異形棒鋼で、寸法が呼び名D32を超えるものについては、呼び名3を増すごとにこの表の伸びの値からそれぞれ2を減じる。ただし、減じる限度は4とする。

7.2.2 形状・寸法、質置及び許容差

異形棒鋼の形状、寸法、質品及び許容差は、次による。
a) 異形棒鋼の寸法は、呼び名で表しその寸法、単位質量及び節の許容限度は、表4による。

表4 – 異形棒鋼の寸法、単位質量及び節の許容限度

a) 公称断面積、公称周長、及び単位質量の算出方法は、次による。

なお、公称断面積(S)は有効数字4けたに丸め、公称周長( ℓ )は少数点以下1けたに丸め、単位質量は有効数字3けたに丸める。


b) 節の平均間隔の最大値は、その公称直径(d)の70%以下とし、算出した値を小数点以下1けたに丸める。
c) 節の高さは、表5によるものとし、算出値を少数点以下1けたに丸める。(表5省略)
d) 節のすき間の合計の最大値は、ミリメートルで表した公称周長( ℓ )の25%とし、算出した値を小数点以下1けたに丸める。ここでリブと節とが離れている場合、及びリブがない場合には節の欠損部の幅を、また、節とリブとが接続している場合にはリブの幅を、それぞれ節のすき間とする。

b) 異形棒鋼の標準長さは、表6による。ただし、コイルの場合には、適用しない。

表6 – 標準長さ

11.表 示

11.1 1本ごとの表示

丸鋼及び異形棒鋸の1本ごとの表示は,次による。ただし、丸鋼のコイル及び寸法が呼び名D4、D5、D6、D8の異形棒鋼のコイルの表示は、1結束ごとの表示とし、11.2による。

a) 丸鋼及び異形棒鋼は、表10によって種類を区別する表示を行う。ただし、異形棒鋼の種類を区別する表示は、SD 295Aを除き圧延マークによることとし、寸法が呼ぴ名D4、D5、D6、D8の異形棒鋼及びねじ状の節をもった異形棒鋼に限り、色別塗色としてもよい。

b) 異形棒鋼は、圧延マークによって製造業者名又はその略号による表示を行う。ただし、寸法が呼び名 D4、D5、D6、D8(コイルを除く。)の異形棒鋼及び異形表面の形状によって製造業者名が明確な異形棒鋼に限り、この表示を省略してもよい。

表10 – 種類を区別する表示方法

11.2 1結束ごとの表示
丸鋼及び異形棒鋼の1結束ごとの表示は、次の項目を適切な方法で行う。

a) 種類の記号
b) 溶鋼番号又は検査番号
c) 径、公称直径又は呼び名
d) 製造業者名又はその略号

JIS G 3112:2010

5.2.2 溶接金網

JIS G 3551(溶接金網及び鉄筋格子)抜粋を次に示す。

JIS G 3551 : 2005

1.適用範囲
この規格は、鉄線又は棒鋼を材料として、主にコンクリート構造物及びコンクリート製品の補強に使用する溶接金網及び鉄筋格子について規定する。

3.定 義
この規格で用いる主な用語の定義は次による。
a) 溶接金網
鉄線を直交して配列し、それらの交点を電気抵抗溶接して、格子状にした金網。次のレギュラー溶接金網及びデザイン溶接金網がある。

1) レギュラー溶接金網
網目形状が定められた正方形のもので、各縦線・各横線がそれぞれ定められた同一の線径又は公称線径をもち、輻1m × 長さ2m 及び 幅2m × 長さ4mの溶接金網。

2) デザイン溶接金網
レギュラー溶接金網以外のもの。

b) 鉄筋格子
棒鋼を直交して配列し、それらの交点を磁気抵抗溶接して、格子状にした鉄筋網。次のレギュラー鉄筋格子及びデザイン鉄筋格子がある。

g) 突出し長さ(overhang)
縦線又は横線の外側線の中心から、横線又は縦線の先端までの長さ。次の横線突出し長さ及び縦線突出し長さがある。

1) 横線突出し長さ
縦線の外側線の中心から横線の先端までの長さ(図1参照)。

2) 縦線突出し長さ
横線の外側線の中心から縦線の先船までの長さ(図1参照)。

h) 網目寸法(spacing)
隣接した縦線又は横線の中心から中心までの距離。次の横網目寸法及び縦網目寸法がある。

1) 横網目寸法 縦線の中心から隣の縦線の中心までの距離(図1参照)。
2) 縦網目寸法 横線の中心から隣の横線の中心までの距離(図1参照)。


図1 溶接金網又は鉄筋格子(例)

8.寸法,質量及びその許容差
8.1 標準線径,標準公称線径,標準径及び公称直径並びにそれらの許容差
a) 溶接金網
1) 丸鉄線
丸鉄線を用いた溶接金網(WFP、WFC、WFP-D及びWFC-D)の縦線及び横線の標準線径は,表5による。また、線径の許容差は、表6による。(表6は省略)
表5 溶接金網に用いる丸鉄線の標準線径

8.4 網目寸法及びその許容差
a) レギュラー溶接金網及びレギュラー鉄筋格子
レギュラー溶接金網及びレギュラー鉄筋格子の網目寸法は、表9による。また、標準線径、呼び名又は標準径に対する網目寸法は、それぞれ表10、表11、表12及び表13による。また、網目寸法の許容差は、網目寸法に対して±10mm又は7.5%のうち、いずれか大きい値とする。(表10~13は省略)

b) デザイン溶接金網及びデザイン鉄筋格子
デザイン溶接金網及びデザイン鉄筋格子の網目寸法の許容差は、それぞれ網目寸法に対して±10mm又は7.5%のうち、いずれか大きい値とする。

表9 レギュラー溶接金網及びレギュラー鉄筋格子の網目寸法

JIS G 3551 : 2005


5.2.3 材料試験

「標仕」5.2.3は、鉄筋の品質を試験により証明する場合について定めたものであるが、この規定によりJISに適合することを証明するためには、機械的性質だけでなく、化学成分等を含めてその適合性を確認しなければならない。このため、JIS規格品以外でこの品質を確認することは現実的でないことが多く、一般的には,JISに適合することを証明する資料のある製品を使用することになる。

5章 鉄筋工事 3節 加工及び組立

第5章 鉄筋工事 


3節 加工及び組立

5.3.1 一般事項
(a) コンクリートと鉄筋の組合せは、強度のバランス等を考慮して決められる。参考として、コンクリートと鉄筋の組合せの例を表5.3.1に示す。

なお、現在丸鋼は、ほとんど使用されていないので、異形鉄筋に限定して示されている。

表5.3.1 コンクリートと鉄筋鉄骨の組合せの例

鉄筋の加工及び組立に関する規定は、(-社)日本建築学会「鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説」2010年版(以下、この節では「RC規準(2010)」という。)、同「JASS 5 鉄筋コンクリート工事」2009年版(以下、この章では「JASS 5 (2009)」という。)並びに同「鉄筋コンクリート造配筋指針・同解説」2010年版(以下、この節では「配筋指針(2010)」という。)に基づいて平成22年版「標仕」の改定時に大幅に見直されており、平成25年版「標仕」の規定も平成22年版を基本的に踏製している。

(b) 熱間圧延鉄筋でも白熱化して空気中で冷却すると鉄筋の性質が変わるので、曲げ加工の場合でも、原則として常温で加工することとしている。

(c) 冷えている鉄筋に点付け溶接を行うと、急熱、急冷されるので焼入れ(7.2.1(b) (5)参照)を行ったことになることから、熱影響部(7.6.7 (k)(2)参照)が著しく硬化し、鉄筋がもろくなり、この部分を少し曲げただけでひび割れが発生する場合があるので、「標仕」ではこれを禁止している。また鉄筋にアークストライクを起こすと 断面欠損が生じたり、局部的な急熱急冷による悪影響があるので、「標仕」ではこれを起こしてはならないとしている。

なお、溶接金網等で鉄筋の交点を電気抵抗溶接としたものは、点付け溶接とは見なさない。

5.3.2 加 工

(a) 鉄筋の切断は、一般にはシャーカッターや電動カッターにより行われているが、ガス圧接や特殊な継手では、切断面の平滑さや直角度が要求されるため、電動カッターや鉄筋冷間直角切断機等を使用することが望ましい。施工済みの鉄筋の手直しや不要な鉄筋の除去のために現場でやむを得ず鉄筋をガス切断する場合は、周囲の鉄筋やコンクリートを傷めないように慎重に施工を行う。ガス切断した鉄筋を溶接継手や機械式継手により再接合する場合は、鉄筋の切断面をグラインダー等で平滑に成形する。

なお、圧接端面となる場合はガス切断を行ってはならない(5.4.5 (b)参照)。

(b) フック及び定着の処置は次による。
(1) 異形鉄筋の柱主筋の継手部で、法規上では不要な図5.3.1の◉印の場合にも「標仕」においてフックを付けることとしているのは、組立のときの間違いや設計変更改修工事等で壁がなくなった場合の混乱を防ぐためである。
※●の出隅部分の継手は建築基準法施行令でフック付き必須

(2) 異形鉄筋の梁主筋の継手部で、図5.3.2の◉印の場合も、(1)と同じ理由から「標仕」ではフックを付けることにしている。
※●の出隅部分の継手は建築基準法施行令でフック付き必須


図5.3.1 柱主筋


図5.3.2 梁主筋

(3) 「標仕」5.3.2(b)(2)の梁主筋の末端部にフックを付ける規定は、図5.3.3のように梁内に継手部がある場合に適用される。


図5.3.3 梁主筋

(4) 柱及び梁の出隅は、火災時に二方向から加熱され、角がはく落しやすく、フックがないと鉄筋の付着効果が期待できなくなるので、建築基準法施行令第73条には上記(1)、(2)及び(3)の内容の規定がある。

(5) 「標仕」5.3.2(b)(1)では、鉄筋の組立の作業性を考慮して、最上階の柱頭の柱主筋のうち、フックを付けるのは四隅だけとしている。ただし、丸柱の場合は四隅に相当する部分がないので、フックなしで定着長さが確保できるならばフックを付ける必要はないが、配筋に無理がなければ、フックを付ける方が望ましい。

(6) 帯筋やあばら筋等のせん断補強筋は、末端部にフックを設ける。ただし、鉄筋の末端部を相互に突合せ電気抵抗溶接した閉鎖型のせん断補強筋を用いる場合はこの限りでない。

なお、溶接閉鎖型せん断補強筋の適用箇所や仕様等は設計図書の特記による。

(c) 鉄筋の折曲げ形状及び寸法は「標仕」表5.3.1による。以前は鉄筋の末端部と中間部を区分して折曲げ形状及び寸法を規定していたが、平成22年版「標仕」の改定時に,JASS 5 (2009)に基づいて末端部と中間部の区分をやめて「標仕」表5.3.1のように一本化しており、平成25年版「標仕」もこれを踏襲している。

なお、鉄筋中間部の90゜未満の折曲げ内法直径は、「標仕」表5.3.1の対象外となるために設計図書の特記によることとなっている。

(d) 高強度せん断補強筋の加工は次による。
(1) 鉄筋の折曲げ形状・寸法は、指定性能評価機関の審査を受けて評定等の技術評価を取得した設計施工指針に従う。

(2) 鉄筋の切断や折曲げ、閉鎖形筋の溶接等の加工は、上記の設計施工指針が対象とする製造工場又は加工工場で行う。その他の作業場や現場では、高強度せん断補強筋の加工を行ってはならない。

5.3.3 組 立

(a) スペーサーは、鉄筋のかぶり厚さを保つために極めて重要なものであり使用部位や所要かぶり厚さに応じて、スペーサーの材種や形状・サイズを使い分けることが大切である。

(b) 市販のスペーサーは、鋼製、合成樹脂製等があるが、「標仕」で、スラブのスペーサーを原則として鋼製としているのは、コンクリート打込み時の鉄筋の脱落等を考慮したためである。

(c) 断熱材打込み部では、普通のスペーサーでは断熱材にくい込み、かぶり厚さの確保が難しいので、めり込み防止の付いた専用スペーサーを用いる。

(d) 下端が打放し仕上げとなる場合のスラブ用スペーサーは、露出面が大きくならないようなものを使用する。また、インサート類の見え掛りとなる部分には調合ペイント又は錆止め塗料を塗り付けるよう「標仕」6.8.6(c)で規定されている。

(e) 「標仕」5.3.3では、型枠に接する部分に防鋳処理を行ったスペーサーを使用することにしている。

なお、防錆処理されたスペーサーには、次のようなものがある。

(1) 「標仕」表14.2.2のC種(JIS H 8641(溶融亜鉛めっき)で2種HDZ35)以上の防錆処理したもの。ただし、海岸等腐食が激しいところで使用する場合には検討が必要である。

(2) 鋼製のものにプラスチックコーティング又はプラスチックパイプを挿入したもの。

(f) 一般に使用されているスペーサーを表5.3.2に示す。
このほかに、梁底、基礎底等に使用するコンクリート製のスペーサーがある。

なお、モルタル製のスペーサーは、強度及び耐久性が十分でないおそれがあるので使用しない。

表5.3.2 スペーサー

(g) 結束線の端部は、かぶり厚さを確保するために内側に折り曲げる。

(h) 柱筋、壁筋等の端部で、安全管理上必要な箇所には、プラスチック製のキャップ等で保護する。

(i) コンクリート打設後の鉄筋の位置が設計図書どおりであり所定のかぶり厚さが確保されるように施工を行う。コンクリート硬化後の鉄筋の位置ずれ修正(台直し)は、その反力によって鉄筋周囲の既設コンクリートを傷めやすいため、原則として行わない。そのため、平成25年版「標仕」では、平成22年版「標仕」5.3.3 (b)の「前に打ち込まれたコンクリートから出ている鉄筋の位置を修正する場合は、鉄筋を急に曲げることなく、できるだけ長い距離で修正する」の記述が削除されており、鉄筋の位置ずれを生じた場合は、極力、台直し以外の是正方法を検討する。やむを得ず現場で台直しを行う場合は、その折曲げ勾配を1/6以下としてできる限り緩やかに曲げて、既設コンクリートを傷めないように慎重に施工する。

5.3.4 継手及び定着

(a) 建築基準法施行令第73条では鉄筋の継手及び定着に関連して、第2項が「主筋又は耐力壁の鉄筋の継手の重ね長さは、……継手を引張り力の最も小さい部分以外の部分に設ける場合にあっては、主筋等の径の40倍以上」と規定しており、同第 3項が「柱に取り付けるはりの引張り鉄筋は、……柱に定着される部分の長さをその径の40倍以上」と規定している。平成19年の施行令改正により、これらに該当する部分の継手や定着の長さは,設計者が保有水平耐力計算等を行い、平成19年国土交通省告示第594号第4の四に基づく検討を行ったうえで特記する場合を除いて施行令第73条の仕様規定が適用されることとなった。

平成22年版「標仕」では、これらの仕様規定とJASS 5 (2009)に準拠して継手及び定着の長さが定められていた。一方、施行令第73条第3項の規定に対しては、「鉄筋コンクリート造の柱に取り付けるはりの構造耐力上の安全性を確かめるための構造計算の基準を定める件」(平成23年4月27日国土交通省告示第432号)によって、「柱に取り付けるはりの引張り鉄筋の付着力を考慮して当該鉄筋の抜け出し及びコンクリートの破壊が生じないことが確かめられた場合においては」適用しなくてよいこととされ、その構造計算の基準としてRC規準(2010)が挙げられている。そのため、平成25年版「標仕」5.3.4 (e)では、柱に取り付ける梁の引張り鉄筋の定着の長さに関する規定のうち、「40d(軽量コンクリートの場合は50d)」という仕様規定が削除されている。

(b) 鉄筋の継手工法としては、重ね継手、ガス圧接継手のほか、施行令第73条第2項のただし書き及び「鉄筋の継手の構造方法を定める件」(平成12年5月31日建設省告示第1463号)に規定される機械式継手と溶接継手があり、「標仕」では適用を特記することとしている。

ガス圧接継手については4節、機械式継手及び溶接継手については5節を参照されたい。

鉄筋工事に使用する材料は、一般にJIS G 3112(鉄筋コンクリート用棒鋼)に規定されているSD295AとSD345があるが、このうちSD295Aは、一般の壁筋、スラブ筋、帯筋、あばら筋等の細物に使用されており、一般の建築物の柱・梁の主筋については通常SD345が使用される。官庁営繕部においては従来よりこの考え方で鉄筋の使い分けがされている。また、最近ではSD390を主筋に用いる例も増えている。

鉄筋の継手工法については、工事の規模、施工場所の地理的条件等を勘案して特記によることとしている。

また、鉄筋の継手は、原則として部材応力の小さいところに設けるものとし、その位置は特記による。

(c) 鉄筋の重ね継手は次による。
(1) 柱及び梁の主筋並びに耐力壁の鉄筋の重ね継手の長さは、特記による。特記がない場合、耐力壁の鉄筋の重ね継手長さは、40d(軽量コンクリートの場合は 50d)と「標仕」表5.3.2の数値(軽量コンクリートの場合は 5d 加算した数値)のいずれか大きい方とする。

(2) (1)以外の鉄筋の重ね継手長さは、「標仕」表5.3.2による。同表は平成22年版「標仕」改定時にJASS 5 (2009)に準拠して改定されており、重ね継手の長さをフックの有無によってL1とL1hに区別して表記している。重ね継手の長さは、フックなしのL1が鉄筋の先端間距離、フックありのL1hが鉄筋の折曲げ開始点間の距離としており、いずれも異形鉄筋の呼び名 d の整数倍としている。L1とL1hの長さの規定は、鉄筋の種類とコンクリート設計基準強度の区分によって細分化されている。軽量コンクリート部材の場合は、従来どおりに普通コンクリートの数値に 5d 加算した継手長さとするが、JASS 5 (2009)では上端筋の重ね継手はフックありを原則としていることに注意する必要がある。

(d) 重ね継手や、ガス圧接継手等では、継手をある箇所に集中して設けるとその部分のコンクリートのまわりが悪くなり構造上の弱点となるおそれがある。そのため、「標仕」表5.3.3 では隣り合う継手は、細径の壁筋、スラブ筋を除き継手位置をずらすこととしている。しかし、最近施工例が増えている鉄筋先組み工法等の柱・梁主筋の場合は、特記により継手位置を同一箇所に設ける場合もある。先組み工法では、ガス圧接継手や機械式継手等が用いられるが、いずれの場合も施工上から、同一位置で全数継ぎとならざるを得ない場合がある。この場合は、鉄筋とコンクリートの断面積比の急変による応力集中やコンクリートの充填性等について、十分に検討されていることが重要である。

(e) 鉄筋の定着は次による。
(1) 柱に取り付ける梁の引張り鉄筋の定着の長さは、「標仕」表5.3.4によるが、定着長さL1とL1h又はL2とL2hの適用箇所は特記による。梁の引張り鉄筋は.常時に引張力が作用する上端筋だけでなく、地震時に引張力が作用する下端筋も適用対象となる。

(2) (1)以外の鉄筋の定着の長さは、「標仕」表5.3.4によるが、定着長さL1とL1h又はL2とL2hの適用箇所は特記による。同表では、定着長さをフックの有無によってL1とL1h、L2とL2h、L3とL3hに区別して表記しており、平成22年版の数値を踏襲している。また、軽量コンクリート部材の鉄筋の定着長さを普通コンクリートの数値 + 5dとしているのも平成22年版と同様である。このうち、割裂のおそれのない箇所への定着長さL2とL2h並びに小梁・スラブの下端筋の定着長さ L3とL3h(小梁の下端筋でフックありの定着長さ)は、JASS 5 (2009)の定着長さに基づいている。これら以外の定着長さL1とL1hは、それぞれ L2、L2hよりも長い定着が必要な箇所に用いることとし、適用箇所は特記による。

なお、適用箇所の例は、国土交通省大臣官房官庁営繕部監修「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)」の巻末資料の各部配筋参考図に示されているので、参照されたい。

定着長さの測り方は、「標仕」図5.3.2による。直線定着の長さL1、L2、L3 は、定着起点(通常は仕口面)から鉄筋先端までの距離、フックあり定着の長さL1h、L2h、L3hは、定着起点から鉄筋の折曲げ開始点までの距離とする。フックありの場合の折曲開始点から鉄筋先端までの距離は、フックとして取り扱い、定着長さには含めない。90゜折曲げ定着の場合も同様であり、定着起点から鉄筋の折曲げ開始点までの距離を定着長さとし、それ以降の部分は90°フックとして扱う。

(3) 仕口内に90゜折曲げ定着する場合で、定着起点(仕口面)から折曲げ開始点までの距離Lが、「標仕」表5.3.4のフックあり定着の長さ未満となる場合の鉄筋の定着方法は「標仕」図5.3.3による。すなわち、梁主筋の柱内への折曲げ定着の場合は、仕口面から鉄筋先端までの全長が「標仕」表5.3.4の直線定着長さL2以上、余長が8d以上、仕口面から鉄筋外面までの投影定着長さが「標仕」表5.3.5のLa以上とする。

なお、梁主筋の投影定着長さLaは、原則として柱せいの3/4倍以上とする。

小梁・スラブの上端筋の梁内への折曲げ定着の場合は、仕口面から鉄筋外面までの投影定着長さが「標仕」表5.3.5のLb以上であるほかは、梁主筋の定着の場合と同様に、全長がL2以上、余長が8d以上とする。

なお、小梁・スラブの上端筋を壁内や幅の狭い梁内に定着する際に投影定着長さが「標仕」表5.3.5のLb未満となる場合は、RC規準(2010)に従って算定された投影定着長さの特記によるか、特記がない場合は、配筋指針(2010)に従って鉄筋の余長を直線定着長さL2以上とする。この場合は、鉄筋の投影定着長さを8d以上、かつ、150mm以上とすることが望ましい。

(4) 「標仕」では規定されていないが、機械式定着具を用いる場合の仕様や定着長さは特記による。機械式定着具は、指定性能評価機関による審査を受けて評定等の技術評価を取得した設計施工指針に従って施工する。

(f) その他の鉄筋の継手及び定着は「標仕」5.3.4 (f)による。

5.3.5 鉄筋のかぶり厚さ及び間隔

(a) 鉄筋のかぶり厚さ
(1) 「標仕」表5.3.6に規定される鉄筋の最小かぶり厚さは、建築基準法施行令第 79条に規定されるかぶり厚さを基本とし、仕上げなし(柱・梁・耐力壁では屋外で仕上げなし)の場合は10mm加算した数値としている。かぶり厚さが小さいと、火災時に部材の構造耐力が低下したり、過大なたわみや変形を生じたりするほか、地震時に鉄筋のコンクリートに対する付着性能が低下し、付着割裂破壊等の脆性破壊を生じたりする。また、コンクリートの中性化がかぶり厚さ以上に進行すると、酸素と水分の作用によって鉄筋が腐食されやすくなる。このように鉄筋のかぶり厚さは、部材の耐火性、耐震性、耐久性に重大な影響を与えるので、建物の全体において守られていないと重大な欠陥を生じることになる。

(2) 「標仕」5.3.5(b)では、鉄筋の加工及び組立においては最小かぶり原さを確保するために、施工誤差を考慮し、施工に当たっては柱・梁等の鉄筋かぶり厚さの最小値に 10mmを加えて(主筋を10mm内側に入れて)「加工」することとしている。ここでは、加工に用いるかぶり厚さの「最小の基準寸法」は定めているが、「最大の寸法」は規定していない。これは、梁と梁、梁と柱等の主筋が交差することによって生じる必然的な位置のずれが避けられないためである。

ただし、かぶり厚さが必要以上に大きいと、構造上の重大な欠陥となる場合があるので、施工図等で十分検討された鉄筋の位置について精度を確保することが重要である。特に、スラブ筋(端部上端筋,中央下端筋)、片持スラブの上端筋、地下外壁、断面の小さい部材等でかぶり厚さを規定以上に大きく取ることは、重大な欠陥の原因や鉄筋相互のあきが確保できないなどのおそれがある。鉄筋の納まりにより配筋位置が下がる場合は、設計担当者と打ち合わせて、構造安全性が確保されるようにしなければならない。

なお、JASS 5(2009)では、計画供用期間の級に応じて構造部材・非構造部材の設計かぶり厚さが規定されており、鉄筋工事においては、設計かぶり厚さを目標に鉄筋の加工・組立を行い、鉄筋組立完了時に最小かぶり厚さ以上を確実に確保することとしている。

(3) 柱、梁筋のかぶりは、図5.3.4のように主筋の外周りを包んでいる帯筋、あばら筋の外側から測定する。

なお、図中の最小かぶり厚さに加える10mmは、施工誤差の標準値である。


図 5.3.4 かぶり厚さ

(4) 異形鉄筋で D29以上の太物を使用する場合は、付着割裂破壊を考慮し、「標仕」5.3.5(a)では、主筋のかぶり厚さを径の1.5倍以上としている。

なお、RC規準(2010)では、コンクリートのかぶり厚さが鉄筋の径の1.5倍未満の場合には、許容付着応力度を(かぶり厚さ)/(鉄筋径の1.5倍)の数値を乗じて低減することとしているので、主筋に限らず部材の最外縁の鉄筋径が、「標仕」表5.3.6の最小かぶり厚さの 2/3倍以上の場合には、設計担当者と打ち合わせて、当該箇所のかぶり厚さを指示する必要がある。

(5) 海に近い場合で海塩粒子の浸透を考慮する場合や、コンクリートの劣化を促進させる物質のある場合等は、特記により「標仕」表5.3.6の最小かぶり厚さを割り増しする場合もあるので注意する。

なお、コンクリート中に鉄筋に有害な塩化物が含まれる場合のかぶり厚さの割増しは、6.3.2(2)⑦を参照する。

(6) 鉄筋のかぶり厚さは、仕上げの有無、屋内と屋外、また、土に接しているかどうかにより異なる。このため、同一部材であっても部分的に必要かぶり厚さの異なる場合があるので、あらかじめ、施工図等によりかぶりの取り方を十分検討しておく。

図5.3.5及び6に柱脚及び外周に面する場合を示す。


図5.3.5 土に対する柱筋の鉄筋のかぶり


図5.3.6 外周に面する梁筋のかぶり

(7) 図5.3.7に示す打継ぎ目地部分は、シーリングが長時間たつと劣化することや温度変化や乾燥収縮が起こりやすいことから仕上げなしと見なして、目地底よりかぶりを確保する。


図5.3.7 打継ぎ目地部分のかぶり厚さ

(8) 近年は主筋のみでなく、あばら筋、帯筋にも機械式継手を用いる例が見られる。機械式継手等を用いた場合、継手部にて最小かぶり厚さが決まることがあるので注意が必要である。

(b) 鉄筋相互のあき及び間隔
(1) 鉄筋相互のあきは、粗骨材の最大寸法の1.25倍、25mm及び隣り合う鉄筋の平均径(呼び名の数値)の1.5倍のうち最大のもの以上とする。

(2) 鉄筋の間隔は、(1)によるあきに鉄筋の最大外径を加えたものとする。(「標仕」図5.3.6参照)

なお、異形鉄筋の最大外径(D)は、表5.3.3及び図5.3.8による。


図5.3.8 異形鉄筋の公称直径と最大外径

表5.3.3 異形鉄筋の径(mm)

5.3.6 鉄筋の保護

(a) スラブの上端筋の下がり及び乱れが多く見られるが、これは構造耐力上危険である。

特に、コンクリートポンプによる打込みの際の乱れが多いので注意する。コンクリート打込みに際しては、直しの鉄筋工を配置する。道板等を用いて直接鉄筋の上を歩かないようにするとともに、配筋の下がりを防止するために一般のスラブにおいても、四周の上端に受け筋(D13)を配置することが推奨される。ただし、受け筋の位置にDl3の主筋がある場合には,それを兼用してよい。

一般に、スラブ筋の乱れの原因については、次のような場合が考えられる。

(1) スペーサー等の数が不足している場合
(2) スペーサーが確実に取り付けられていない場合
(3) スラブ配筋後、材料を鉄筋上に直接置く場合
(4) 設備配管等を行うことにより乱される場合
(5) コンクリートの打込み中に乱される場合(コンクリート輸送管の揺れ、ホースの移動、コンクリートの運搬、歩行等)

なお、他の部材に比べてかぶり厚さが少なく厳しい精度が要求されるスラブ配筋では、連続バーサポートを利用する方法もある。また、スラブ筋はコンクリート打込み等の作業時に乱されるおそれがあることからも連続バーサポートは有効と考えられる。

(b) 硬化し始めたばかりのコンクリート中の鉄筋に振動を与えると、付着力が低下するので振動を与えないように注意する。

(c) スペーサーの個数は、表5.3.4を標準とする。また、スラブ下端筋の梁際は、かぶり厚さが足りなくなることが多いので注意する。

表5.3.4 スペーサーの個数の標準

5.3.7 各部配筋

平成19年版「標仕」では、特記がない場合の各部配筋は別図によることとされていたが、平成22年版以降は各部配筋は特記によることされ、別図が削除されている。代わりに、国土交通省大臣官房官庁営繕部監修「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)」の巻末資料に各部配筋の参考図が掲載されているので、必要に応じて参照されたい。

5章 鉄筋工事 4節 ガス圧接

第5章 鉄筋工事 


4節 ガス圧接

5.4.1 適用範囲

ガス圧接工法は、接合しようとする鉄筋の端面を平滑に加工したのち、端面を突き合わせ、その突合せ部をガス炎で加熱し、同時に鉄筋軸方向に圧縮力を加えて接合する方法である。熱源としてのガス炎は、酸素とアセチレンの混合ガスによる酸素・アセチレン炎を使用する。

「標仕」の4節では、圧接方法を手動ガス圧接とすることを前提とした仕様を規定している。酸素・アセチレン炎によるこのほかの圧接方法には、自動ガス圧接や熱間押抜きガス圧接があり、それぞれ、(公社)日本鉄筋継手協会が標準仕様書を定めている。このうち、自動ガス圧接については、(公社)日本鉄筋継手協会の標準仕様書に優先して「標仕」を適用することが可能であるが、熱間押抜きガス圧接は圧接工程のなかでふくらみを除去するために「標仕」で規定する試験を行うことができない。したがって、本節では「標仕」の規定が適用可能な手動ガス圧接と自動ガス圧接の監理について記述するほか、熱間押抜きガス圧接を「標仕」以外の圧接工法として記載している。

なお、「標仕」では、鉄筋材料としてSD490を適用範囲に含まないため、4節でも SD490の仕様については規定していない。したがって、特記によりSD490を採用する工事においては、そのガス圧接の仕様も特記に定められた方法によらなければならない。(公社)日本鉄筋継手協会「鉄筋継手工事標準仕様書 ガス圧接継手工事(2009年)」及びJASS 5(2009)では、SD490のガス圧接を行う場合には施工前試験を行うこととしているので注意する。

また、「標仕」以外のガス圧接工法として、酸素・天然ガス炎による圧接工法が開発されている。一般のガス圧接よりも大きなふくらみとする天然ガス圧接工法と、圧接端面に高分子材料を挟み込んで加熱して一般のガス圧接と同等のふくらみとする高分子天然ガス圧接工法がある。いずれも、(公社)日本鉄筋継手協会が同工法の標準仕様書(案)を定め、検定試験により高分子天然ガス圧接技量資格者の認証を行っている。

5.4.2 技能資格者

(a) 圧接作業に従事する技能資格者は、JIS Z 3881(鉄筋のガス圧接技術検定における試験方法及び判定基準)による技量を有する者で、当該工事に使用する鉄筋に相応した技量資格種別を有することが必要である。圧接作業に先立ち、技量資格証明書等を提出させて、その技量を確認する。

(b) (公社)日本鉄筋継手協会では、JIS Z 3881に基づいて手動ガス圧接技量資格者及び自動ガス圧接技量資格者の試験を行って技量を認証し、それぞれの技量資格証明書を発行している。

技量資格種別による可能範囲は、表5.4.1及び2のとおりである。

表5.4.1 手動ガス圧接技量者の圧接作業可能範囲

表5.4.2 自動ガス圧接技量資格者の圧接作業可能範囲

(c) 「標仕」1.2.2では、工種別施工計画書の提出を義務付けているが、ガス圧接工事に関して受注者等が作成する圧接施工計画書は、(公社)日本鉄筋継手協会が認定する鉄筋継手管理技士又は圧接継手管理技士の助言等を受けて作成することが望ましい。

5.4.3 圧接部の品質

(a) 圧接継手に要求される性能は、鉄筋母材と同等以上の継手強度が得られることであり、これを保証するための代用特性の一つとして圧接部の外観と内部欠陥がないことを規定している。「標仕」に規定する圧接部の品質の各項目は.「鉄筋の継手の構造方法を定める件」(平成12年5月31日建設省告示第1463号)の規定に対応するものである。

(1) ガス圧接では圧接作業の最終工程でふくらみを形成することによって圧接面にできた酸化物を拡散することができる。ふくらみの直径が鉄筋径の1.4倍以上あれば酸化物が拡散し、母材と同等以上の継手強度が安定して得られることが実験的に確かめられている。

(2) 圧接部のふくらみはできるだけなだらかな形状となっていることが力学的に好ましい。ふくらみの長さを大きくしてなだらかな形状にするためには幅焼きの範囲を広くする必要があるが、作業能率の面から幅焼きはある程度の幅にとどめた方がよい。鉄筋径の1.1倍程度以上のふくらみ長さであれば十分な継手強度が確保できることが確認されている。このふくらみ長さが得られるための幅焼きの範囲は鉄筋径と同程度である。

(3) 圧接面のずれは、圧接作業中に接合する鉄筋の突合せ面からずれた位置で加熱することによって生じる。加熱位置がずれると鉄筋同士で温度上昇が異なり適正な圧接温度に達しないままの圧接となり,良好な接合が得られない。圧接面のずれが鉄筋径の1/4以上になると十分な継手強度を確保できなくなる可能性がある。

(4) 圧接部における鉄筋中心軸の偏心量は、施工の良否の指標の一つであり、管理限界値は鉄筋径の1/5以下としている。

(5) 圧接部に折れ曲りがある場合には継手の軸剛性が低下する。平成19年版では、折れ曲りの管理限界値は 3.5° 以上を目安とするとしていたが、鉄筋組立精度を向上する目的で、「鉄筋継手工事標準仕様書 ガス圧接継手工事(2009年)」に折れ曲りを 2°以下とする規定が定められたことを踏まえ、折れ曲りは 2°以下とするのがよい。

(6) 圧接部の片ふくらみは継手の強度に影響を及ぼすおそれがあることから、平成22年版「標仕」で監理項目に追加された。片ふくらみは圧接器の固定が不十分な場合や鉄筋端面の隙間が大きい場合に生じる。ふくらみの小さい側の圧接面には十分な加圧力が作用せず不完全な接合となり、圧接部の引張強さが低下することがある。管理限界値は、ふくらみ量の差が鉄筋径の 1/5以下としている。

(7) 「鉄筋の継手の構造方法を定める件」における圧接継手に関する規定の抜枠を次に示す。

なお、この告示のただし書きでは、繰返し加力等の実験によって耐力、靭性及び付着に関する性能が継手を行う鉄筋と同等以上であることが確認された場合は、告示で定める構造方法によらなくてよいとしている。(公社)日本鉄筋継手協会の自主的認定事業として、これらの性能の確認実験を行い、一定水準以上の施工管理の能力及び体制を有していれば、実験結果と同等以上の施工品質が確保できるとして「A級継手圧接施工会社」を認定しているので、参考にするとよい。

鉄筋の継手の構造方法を定める件
(平成12年5月31日 建設省告示第1463号)建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第73条第2項ただし書き(第79条の4において準用する場合を含む。)の規定に基づき、鉄筋の継手の構造方法を次のように定める。1 建築基準法施行令(以下「令」という。)第73条第2項本文(第79条の4において準用する場合を含む。)の規定を適用しない鉄筋の継手は、構造部材における引張力の最も小さい部分に設ける圧接継手、溶接継手及び機械式継手で、それぞれ次項から第4項までの規定による構造方法を用いるものとする。ただし、一方向及び繰り返し加力実験によって耐力、靭性及び付着に関する性能が継手を行う鉄筋と同等以上であることが確認された場合においては、次項から第4項までの規定による構造方法によらないことができる。

2 圧接継手にあっては、次に定めるところらよらなければならない。

一 圧接部の膨らみの直径は主筋等の径の1.4倍以上とし、かつ、その長さを主筋等の径の1.1倍以上とすること。

二 圧接部の膨らみにおける圧接面のずれは主筋等の径の1/4以下とし、かつ、鉄筋中心軸の偏心量は、主筋等の径の1/5以下とすること。

三 圧接部は、強度に影響を及ぼす折れ曲がり、焼き割れ、へこみ、垂れ下がり及び内部欠陥がないものとすること。

3 (5.5.3 (a)に記載)

4 (5.5.2 (a)に記載)

鉄筋の継手の構造方法を定める件

(b) ガス圧接継手の品質の良否は、圧接業者の品質管理体制によるところが大きい。

(公社)日本鉄筋継手協会では、品質管理要員として、①圧接計画書の作成又はその指導を行い、②その計画書に従って圧接作業が実施されていることの確認等を行う「鉄筋継手管理技士」及び「圧接継手管理技士」を認証している。

また、同協会では、圧接管理技士及び圧接作業の技量資格者の質と量、圧接機器、検査機器等の保有状況及び品質管理システムの運用状況等を審査し、品質管理体制が確立、維持されている圧接会社を「優良圧接会社」として認定しているので、参考にするとよい。

5.4.4 圧接一般

(a) 圧接装置
(1) 圧接装置は、加熱器、加圧器、圧接器からなり、これらの性能が圧接継手の良否や作業能率を左右する。圧接装置には手動ガス圧接装置と自動ガス圧接装置がある。前者は加圧器の動作及び加熱器の揺動を手動で行うものである。後者は加圧器の動作及び加熱器の揺動をプログラム制御するものである。手動ガス圧接装置の中には、加熱器の揺動は手動とし、加圧器の動作をプログラム制御する方式のものもある。

また、引張試験の際に、鉄筋が圧接器の締付け部から脆性的に破断することが ある。これは、圧接器の締付けボルトの先端形状によって鉄筋表面に圧痕が生じ、この圧痕が起点となって破断するものであり、締付けボルトの先端形状と締付けトルクが過剰とならないように注意する必要がある。締付けボルトの種類は、鉄筋表面に切欠き状の圧痕が生じない形状のものがよい。

(2) 圧接作業前には圧接装置・器具類の整備・点検を十分行って、不良圧接の原因となる不具合を排除するとともに、ガス漏れ、引火等による爆発事故を防止する。

(3) 参考として、(公社)日本鉄筋継手協会「鉄筋継手工事標準仕様書ガス圧接継手工事」の圧接装置に関する規定の抜粋を次に示す。

鉄筋継手工事標準仕様書 ガス圧接継手工事(2009年)

4.2 圧接装置
(1) 加熱器
a. 加熱器は吹管本体及び火口本体からなり、吹管本体は、JIS B 6801(手動ガス溶接器)に規定するもののうちB型溶接器のB1、B2号に適合するものとする。

b. 吹管本体の材質・品質・寸法などは、JIS B 6801に準拠するものとする。

c. 火口本体は、作業中の炎の安定性がよく、鉄筋径に適合した十分な加熱能力を有するものとする。

d. 火口先は、鉄筋表面を円周方向に均等に加熱できるものとする。

(2) 圧接器
a. 圧接器は、鉄筋に所定のアプセット量(縮み量)を与えることができる機構を有し、作業中に偏心、曲がりが生じないよう、十分な鉄筋の保持能力を有するものとする。

b. 鉄筋保持するための締付けボルトは、その先端が鉄筋に有害な傷を与えない形状のものとする。

(3) 加圧器
加圧器は、油圧器、高圧ホース及びラムシリンダーからなり、次の性能を有するものとする。

a. 加圧器は、電動式で、加熱と連動しながら加圧操作できるものとする。

b. 加圧器は、鉄筋断面(異形棒鋼の場合は、公称断面)に対し30MPa以上の加圧能力を有するものとする。また、SD490の場合は、鉄筋断面に対して40MPa以上の加圧能力を有し、上限圧及び下限圧を設定できる機能を有するものとする。

5.2 圧接装置
自動ガス圧接装置は、圧接施工記録の作成・出力が可能で、(社)日本鉄筋継手協会の認定を受けたものとする。

鉄筋継手工事標準仕様書 ガス圧接継手工事(2009年)

(b) 原則として圧接をしない場合

(1) 平成22年版までの「標仕」では、鉄筋の種類が異なる場合、形状が著しく異なる場合及び径の差が5mmを超える場合は圧接をしないこととしていたが、SD345とSD390の鉄筋間の圧接は特記に基づいて一般的に行われていた。平成 25年版「標仕」では、こうした実情を踏まえて、鉄筋の種類についてSD345と SD390の圧接を許容するただし書きが追加された。したがって、特記により仕様が示される場合を除き、SD345とSD390の組合せ以外の種類が異なる鉄筋の場合、形状が著しく異なる場合及び径の差が5mmを超える場合は、圧接を行ってはならない。

(2) 径の差が大きい場合、鉄筋の熱容量が異なるために相互の鉄筋の温度上昇に差異が生じて圧接不良が生じる場合があることから、「標仕」では径の差を5mmまでに制限している。鉄筋には、D19、D22、D25、D29のように径に応じた呼び名があるが、D22とD29のように呼び名が2段階異なる場合を2段落ちあるいは2サイズ違いという。2段落ちの場合は径の差が5mm以上となるので、特記がない限り圧接してはならない。

(3) これに関連する場合のガス圧接について、(公社)日本鉄筋継手協会の資料では、次の(i)から(iii)までが示されている。

(i) 「鉄筋継手工事標準仕様書ガス圧接継手工事(2009年)」ではJIS G 3112(鉄筋コンクリート用棒鋼)に適合する範囲で強度区分が隣接する種類の鉄筋間の圧接は可能としており、「異種・異径鉄筋の圧接継手性能評価に関する調査研究」でその性能が検証されている。

(ii) ねじ節鉄筋とねじ節鉄筋及び竹節鉄筋とねじ節鉄筋のガス圧接については、「ねじ節鉄筋のガス圧接継手性能に関する研究」で性能確認がなされているが、「鉄筋継手工事標準仕様書ガス圧接継手工事(2009年)」にはねじ節鉄筋の圧接についての記載はない。

(iii) 製造所が異なる鉄筋のガス圧接については、「鉄筋継手工事標準仕様書 ガス圧接継手工事(2009年)」で圧接可能としているが、SD490についてはデータが少ないので十分な事前検討が必要としている。

5.4.5 鉄筋の加工

(a) ガス圧接では、1箇所当たり1d~1.5d (d:鉄筋の径)のアプセット〈縮み代〉が必要である。このため、梁筋や柱筋の定着長さが不足することがあるので、あらかじめ圧接による鉄筋の縮み代を見込んで鉄筋の加工を行う。

(b) 突き合わせた鉄筋の圧接端面間の隙間が大きいと圧接面が酸化しやすく、圧接部の強度が低下するおそれがある。そのため、鉄筋の圧接端面は、軸線にできるだけ直角、かつ、平滑に切断・加工し、圧接端面間の隙間をできるだけ少なくする必要がある。

従来の定置型せん断切断機によって切断された鉄筋の端部は端曲がりが生じているものが多く、再切断が必要となる場合もある。この再切断には、鉄筋冷間直角切断機を用いるのがよい。この切断機で切断し、当日圧接を行う場合にはグラインダーで研削する必要がない程度の端面が得られる。ただし、ばりが生じた場合にはこれを除去する。また、携帯型せん断切断器等を用いる方法もある。これらの方法による場合は、切断した端面をグラインダーで有害な切断跡がなくなるまで研削する必要がある。

5.4.6 圧接端面

圧接部の品質の良否は圧接端面の状態(図5.4.1参照)に大きく左右されるので、圧接端面の処理は圧接作業において極めて重要である。

(1) 圧接端面及び端面から100mm程度の範囲の鉄筋表面に錆、油脂、塗料、セメントペースト等が付着している場合には、これらをあらかじめ除去しておく必要がある。

(2) 圧接端面を平滑に仕上げることが良好な圧接継手とする基本であり、冷間直角切断機等を使用して切断することが望ましい。また、ばり等がきょう雑物として圧接端面に入り込まないように軽く面取りを行う必要がある。

(3) 圧接端面は完全な金属肌の状態でなければ良好な接合が得られないので、冷間直角切断機による端面処理やグラインダー研削は圧接作業当日に行い、錆がないことなど、端面の状態を確認する必要がある。このような状態に仕上げられていることの確認を、施工者の自主管理として全数行い、監督職員も抜取り的に確認するのがよい。また、圧接作業の前日以前に、鉄筋加工場や現場において圧接端面の処理を行うに当たり、処理後の防錯等のために、(公社)日本鉄筋継手協会が認定した端面保護剤が使用されることもある。


図5.4.1 圧接端面の状態

5.4.7 天候による処置

(a) 寒冷期には、溶解アセチレンの気化率が悪いため、温湯、専用電熱器又は照明具等を用いて容器を加温して気化を促進する場合がある。この場合、容器は40℃以上にならないように注意する。

なお、火気による加温は労働安全衛生規則第256条によって厳禁とされている。

(b) 高温期における容器は40℃以下に保つようにする。夏期の野外では直射日光を避けるため容器をシートで覆うなどの処置を講ずる。

(c) 一般作業のできる程度の降雨量であれば健全な圧接ができることが実験的に確認されているが、降雨雪に気をとられて圧接作業に集中できず不良圧接を生じかねないので、降雨雪時の圧接作業は中止とする。ただし、適切な防護を施せば作業を行ってもよい。

圧接時に強風が当たると炎が吹き流され、圧接面が酸化しやすく不良圧接になることがあるので注意する。やむを得ず強風下で圧接を行う場合には、完全な遮へいを施して圧接作業を行う。

5.4.8 圧接作業

(a) 鉄筋に圧接器を取り付けて突き合わせた場合の圧接端面間の隙間は鉄筋径にかかわらず2mm以下とする。この値は現場における管理限界を示したもので、基本はあくまでも隙間をなくすことである。平成19年版「標仕」では、この値を3mm以下としていたが「鉄筋継手工事標準仕様書 ガス圧接継手工事(2009年)」が隙間を2 mm以下とする規定に改訂されたことに合わせ、平成22年版「標仕」で2mm以下とするように改められた。また、偏心、曲がりがあると、圧接面全体に十分な加圧ができず、不良圧接になりかねないので、これらの有無を確認する必要がある。

(b) 圧接する鉄筋の軸方向へ母材断面に対して30MPa以上の加圧を行いつつ、加熱炎が突き合わせた鉄筋の圧接端面からはずれないようにし、圧接端面相互が密着するまで還元炎で加熱する。

鉄筋の圧接には、酸素及びアセチレンの混合ガスによる酸素・アセチレン炎が用いられる。このガス炎は、それぞれのガスの供給量の割合に応じて中性炎(標準炎)、還元炎(アセチレン過剰炎)、酸化炎(酸素過剰炎)に分類される(図15.4.2参照)。圧接の初期加熱時に圧接端面間の隙間が閉じるまでは加熱中における圧接端面の酸化を防ぐために鉄筋の中心まで届くフェザー長さの還元炎で端面を完全に覆うようにして加熱し、端面相互が密着したあとは、火力の強い中性炎で圧接面を中心としてバーナーを左右に揺動しながら加熱する。

接合の良否は、圧接端面相互が密着するまでの初期加熱時に端面が還元炎で十分に覆われていたかどうかによって決まることをよく認識しておく必要がある。


図5.4.2 中性炎(標準炎)と還元炎(アセチレン過剰炎)

(c) 圧接端面相互が密着したのちは還元炎より熱効率の高い中性炎で加熱する。
なお、突合せ部を集中的に加熱すると、圧接面の中心部まで適正な圧接温度(約1,250 ~ 1,300℃)に達しないうちに鉄筋表面部のみが溶融し、正常な圧接が困難となる。したがって、圧接面を中心に鉄筋径の2倍程度の範囲を揺動加熱(幅焼き)する。

(d) 圧接終了直後に圧接器を取り外すと、鉄筋の重みにより赤熱されている圧接部のふくらみ終端部あたりから容易に折れ曲りが生じるため、火色消失後に圧接器の取外しを行う必要がある。

(e) 加熱中にバーナー不調のために逆火等が生じて加熱を中断した場合、そのまま再圧接すると圧接面が酸化して不良圧接となるおそれがあるので,冷間直角切断機等を使用して圧接部を切り取り再圧接する必要がある。ただし、圧接端面相互が密着したあとであれば圧接面の酸化は生じないので再加熱して圧接作業を続行してもよい。

5.4.9 圧接完了後の試験

「標仕」では、圧接完了後に圧接箇所の全数について外観試験を行い、その後、超音波探傷試験又は引張試験による抜取試験を行うこととしている。

なお、ここでいう「抜取試験」は、一般には「抜取検査」と呼ばれている。

(1) 外観試験
(i) 圧接部のふくらみの形状及び寸法、圧接面のずれ、圧接部における鉄筋中心軸の偏心量、圧接部の折れ曲り、片ふくらみ、焼割れ、へこみ、垂下がりについて外観試験を行い、結果を記録する。

① 圧接部のふくらみの形状及び寸法については、図5.4.3に示すように、ふくらみの直径は母材鉄筋径の1.4倍以上、ふくらみの長さは母材鉄筋径の1.1倍以上でなければならない。圧接部のふくらみの外周に軸方向の小さなひび割れが発生することがあるが、これは鉄筋のアプセットに伴うもので、多少のひび割れは特に支障はない。ただし、ひび割れが著しい場合には欠陥となるので、加熱温度、加熱時間、加圧速度等を再検討して,ひび割れの発生を防ぐ。


図5.4.3 圧接部のふくらみの形状及び寸法

② 圧接面のずれは、図5.4.4による。圧接面のずれとは.圧接面がふくらみの中央からずれた位置に存在する場合をいう。これは、加熱位置が鉄筋を突き合わせた位置からずれてしまい、加熱が片方の鉄筋に偏り、適正な圧接作業が行われなかったことを示すものである。ずれが大きくなると強度の低い不良圧接となるので注意する必要がある。


図5.4.4 圧接面のずれ

③圧接部における鉄筋中心軸の偏心量は図5.4.5による。偏心量の大小は、施工の良否を示す指標の一つであるので注意する。


図5.4.5 圧接部における鉄筋中心軸の偏心量

④鉄筋同士の角度が 2°以上となる圧接部の折れ曲りがあってはならない。

⑤圧接部の片ふくらみは図5.4.6による。


図5.4.6 圧接部の片ふくらみ

(ii) ①~⑤の外観試験の方法は目視によって行い、必要に応じて外観試験用測定治具を使用するとよい。圧接部測定用ゲージを用いると、簡単に圧接部の形状や軸心の食違い等を測ることができ迅速な試験が可能となる(図5.4.7参照)。


(イ)デジタルノギス


(ロ)圧接部測定ゲージ
図5.4.7 外観試験用測定治具の例

(iii) 外観試験は比較的簡単に実施できるので全圧接部を対象としている。

(2) 抜取試験
ガス圧接部の抜取試験には超音波探傷試験と引張試験があるが、「標仕」では、特記がない場合には、超音波探傷試験によるとしている。ただし、特定行政庁によっては引張試験を行う基準を運用していることがあるので、事前に確認しておく必要がある。

① 超音波探傷試験は、次のような特徴がある。
1) 非破壊試験であり、検査のための切取りによる再圧接がない。
2) 試験の抜取り箇所数を増減することができ、必要に応じて全数検査も可能である。
3) 試験従事者の技量に信頼性が依存する。
4) 工事現場において試験ができ、すぐ結果が分かる。

② 引張試験は.次のような特徴がある。
1) 切取りによる破壊試験であり、抜き取った継手の品質を直接的に確認できる。
2) 切取りによる全数検査は、不可能である。
3) 切取りによる再圧接箇所数が増える。
4) 試験結果を得るまでに時間がかかることが多い。

(3) 超音波探傷試験による抜取試験
(i) 超音波探傷試験の試験箇所数
「標仕」では、超音波探傷試験における抜取試験のロットの大きさを1組の作業班が1日に施工した継手箇所としている。1ロットの継手数は、鉄筋の径や継手位置等によって異なり、D22の場合100〜200箇所、D32の場合80〜 150箇所、D38の場合50〜100箇所程度と想定される。また、試験の箇所数は1ロットに対して30箇所であり、ロットから無作為に抜き取る。

(ii) 超音波探傷試験の方法と合否判定基準
超音波探傷試験は、鉄筋軸線に対して20度領いた超音波ビームを圧接面に当てて、圧接面に欠陥がある場合に検知される反射波の強さを測定する試験である。

超音波探傷試験の試験方法及び判定基準は、JIS Z 3062(鉄筋コンクリート用異形棒鋼ガス圧接部の超音波探傷試験方法及び判定基準)によるが、この規格の合否判定基準は、図5.4.8に示す欠陥からの反射波の強さと圧接部の引張強さの相関について調べた実験結果に基づいて定められている。図5.4.8において、横軸は鉄筋母材を透過させたときの透過波の強さ(基準レべルという。)に対する反射波の強さの比(エコー高さ)を示し、縦軸には同じ継手を引張試験して得られた圧接部の引張強さを鉄筋母材のJIS規格引張強さの下限値で除した値を示している。この図の関係より、基準レベルに対して-24dB(反射波の強さは基準レベルの約1/250)以上のエコー高さを示す圧接部を不合格とし、-24dB未満を合格としている。


図5.4.8 エコー高さと引張強さの関係

JIS Z 3062(鉄筋コンクリート用異形棒鋼ガス圧接部の超音波探傷試験方法及び判定基準)の抜粋を次に示す。

JIS Z 3062 : 2009

1 適用範囲
この規格は、JIS G 3112に規定する異形棒鋼(以下鉄筋という。)のガス圧接部の超音波探傷試験方法及び試験結果の判定基準について規定する。

3 用語及び定義
この規格で使用する用語の定義は、JIS Z 2300によるほか、次による。

3.1 リブ間距離
鉄筋の表面突起のうち、 軸線方向の突起をリブといい、この相対するリブ外面間の距離(図1参照)。


図1 – 鉄筋リブ間距離

3.2 透過走査
相対するリブの上に探触子を配置し、一方の探触子の超音波送信パルスを他方の探触子で受信する方法。

3.3 基準レベル
透過走査で求められる透過パルスの最大値。

3.4 合否判定レベル
基準レベルに基づいて、試験結果を判定するために定めたレベル。

3.5 はん(汎)用探傷器
基本表示のパルス反射式超音波探傷器。

3.6 専用探傷器
鉄筋ガス圧接部の探傷のために操作を簡易化したパルス反射式超音波探傷器。

4 試験技術者
鉄筋ガス圧接部の探傷試験を行う技術者は、超音波探傷試験の原理及び鉄筋ガス圧接部に関する知識をもち、かつ、その超音波探傷試験方法について十分な技術及び経験をもつ者とする。

5 探傷装置の機能及び性能
5.1 探傷装置の機能及び性能
探傷装置は、次の機能及び性能をもつものとする。
a) はん用探傷器の機能及び性能
はん用探傷器の機能及び性能は、附属書Aによる。(附属書A省略)

b) 専用探傷器の機能及び性能
専用探傷器の機能及び性能は、附属書Bによる。(附属書B省略)

5.2 探触子の性能
探触子の性能は、附属書Cによる。(附属書C省略)

5.3 接触媒質
接触媒質は、濃度75%(質量分率)以上のグリセリン水溶液、グリセリンペースト又は音響結合がこれらと同等以上と確認されたものとする。

5.4 探傷装置の点検
探傷装置は、次の点検を行い異常の有無を確認する。

a) 点検の種類及び時期
1) 始業時点検
始業時の点検は、探傷作業開始前に行う。

2) 作業中点検
作業中の点検は、作業中1時間ごと、又は1時間以内であっても少なくとも試験箇所20か所ごとに行う。

3) 終業時点検
終業時の点検は、探傷作業終了後速やかに行う。

4) 定期点検
定期点検は、1年に1回以上行う。

5) 特別点検
特別点検は、次の場合に行う。

5.1) 探傷装置の修理を行ったとき。
5.2) 探傷装置の一部を交換したとき。
5.3) その他特別に点検する必要があると認められたとき。

b) 点検の方法
1) 始業時、作業中及び終業時の点検方法は、次による。
1.1) 透過走査を行って基準レベルが設定できることを確認する。
1.2) 基準レベルに基づいて合否判定レベルを設定した後、透過走査を行って透過パルスが容易に受信できることを確認する。

2) 定期点検及び特別点検は、次による。
2.1) はん用探傷器の点検方法は、JIS Z 2352による。
2.2)専用探傷器の定期点検方法は、附属書Dによる。(附属書D省略)

c) 異常の場合の処置
a)及びb)の点検で異常が発見された場合の処置は、次による。
1) 点検で異常が認められた探傷装置は、使用しない。
2) 作業中及び終業時点検で異常が認められた場合には、その点検の直前の点検以降に実施した試験は無効とする。

6 探傷試験の準備

6.1 確認事項
探傷試験を開始する前に、鉄筋の種類、呼び名及びリブ間距離(図1参照)を確認する。

6.2 探傷の時期
探傷試験は、圧接部の温度が常温になってから行う。

6.3 探傷面の手入れ
探触子を接触させるリブ上の探傷面に、超音波の伝達を妨げるもの(浮いたスケール、コンクリート、セメントペースト、著しいさび、塗料など)が存在する場合には、これらを除去する。

7 探傷装置の調整
7.1 測定範囲の調整
測定範囲の調整は、次による。
a) はん用探傷器
はん用探傷器の場合には、探傷する鉄筋の透過パルスが時間軸の範囲に表示できるように、JIS Z 2345に規定する標準試験片(STB-A3)を用いて、測定範囲を設定する。

b) 専用探傷器
専用探傷器の場合には、ゲートの設定を探傷する鉄筋の呼び名に合わせる。

7.2 基準レベルの設定
基準レベルは、探傷する鉄筋の製造業者、種類及び呼び名が異なるごとに以下のように設定する。
a) はん用探傷器
はん用探傷器の場合には、透過走査によって透過パルスの最大値を求める(図2参照)。この透過パルスの高さを表示器目盛の50%となるように探傷器のゲイン調整器を講整し、これを基準レベルとする。


図2 – 基準レベルを得るための透過走査

b) 専用探傷器
専用探傷器の場合には、透過走査によって透過パルスの最大値を求める(図2参照)。探傷器の警報ランプ、バー表示又は音で最も高い透過パルスであることを確認し、これを基準レベルとする。

7.3 合否判定レベルの設定
合否判定レベルは、基準レベルの -24dBとする。

8 探傷試験
8.1 探傷方法
探傷は、鉄筋のリブ上での斜角二探触子によって、圧接部のふくらみの両側で行う(図3参照)。


図3 – 斜角二探触子法

8.2 走査方法及び走査範囲

走査方法及び走査範囲は、次による(図4参照)。

a)最初に、一方の探触子を圧接部のふくらみに近接した位置①に置き、他方を圧接部のふくらみに近接した位置④と圧接面から約2Dの位置⑤の範囲で前後走査する。

b) 次に、一方の探触子を圧接面から約1.4Dの位置②に置き、他方を圧接部のふくらみに近接した位置④と圧接面から約2Dの位置⑤の範囲で前後走査する。

c) 最後に、一方の探触子を圧接面から約2Dの位置③に置き、他方を圧接部のふくらみに近接した位置④と圧接面から約2Dの位置⑤の範囲で前後走査する。


図4 – 走査方法

8.3 走査速度
走査速度は、60mm/s以下とする。

9 合否判定
圧接部を挟んで両側における探傷試験で、合否判定基準レベル以上のエコーが検出されなかった場合は合格とする。

10 記録
探傷試験を行った後、次の事項を記録する。

a) 工事名
b) 圧接工事施工者名(会社名)
c) 圧接工法
d) 試験年月日
e) 試験を実施した試験技術者の氏名
f) 試験箇所
g) 合否判定結果
h) 鉄筋の製造業者名、種類及び呼び名
i) 探傷器の形式及び製造番号
j) 探触子の製造業者名及び製造番号
k) その他参考となる事項(指定事項、協議事項、試験材の抜取方法など)

JIS Z 3062 : 2009

(iii) 探傷不能領域の存在

超音波探傷試験では、鉄筋のリブ上の探触子から入射させる超音波で圧接面のできるだけ広い範囲が探傷できるように、探触子をリブ上で前後に移動させて走査を行うが、それでも圧接面には探傷不能領域と呼ばれる超音波が届かない部分が存在する。この探傷不能領域は図5.4.9に示すように圧接面の周辺部となるため、この部分に存在する欠陥は検出できないことになる。しかし、この探傷不能領域の存在を前提としたうえで、図5.4.8の関係が成り立っている。


図5.4.9 探傷不能領域

(iv) 試験従事者
試験従事者は当該工事のガス圧接工事に関連のない立場の者とし、監督職員は、受注者等から提出された知識及び経験等の証明となる資料により確認することになるが、圧接作業、圧接条件等についても必要な知識を有する者であることが要件となる。

一例として、(公社)日本鉄筋継手協会では「鉄筋継手部検査技術者技量資格」(1G種,1W種,1M種,2種,3種)の認証を行っている。1G種,1W種,1M種は、それぞれ、圧接継手部、溶接継手部、機械式継手部の、2種は圧接継手部と溶接継手部の、3種は圧接継手部と溶接継手部、機械式継手部の超音波探傷検査及び外観検査を行うことができる資格である。したがって、ガス圧接継手の検査を行うことができる検査技術者は、1G種,2種,3種のいずれかの技量資格を有する者である。

これらの者は、「標仕」5.4.9(2)(ⅰ)④に規定する試験従事者としての要件のうち、必要な知識等を有するものと見なすことができる。

(v) ロットの合否判定
ロットの合否判定は、抜き取った試験箇所数のすべてが合格と判定された場合に当該ロットを合格とすることとしている。この「標仕」の抜取り方式(ロットの大きさ:200程度、抜取り数:30箇所、不合格品個数:0)では、品質のレベルを表すAOQL( Average Outgoing Quality Limit:平均出検品質限界)は約1%となる。

(4) 引張試験による抜取試験
(i) 引張試験の試験箇所数
引張試験による抜取試験の場合、超音波探傷試験による抜取試験の場合と同じく1検査ロットの大きさは、1作業班が1日に施工した箇所数としている。

また、試験片の採取数は1ロットに対して3本としている。作業班ごとの外観試験に合格したもののうち最とも外観の悪いものについて行い、その採取箇所は監督職員が指定することが望ましい。

試験片を採取した箇所は、同種の鉄筋を再圧接により継ぎ足して修正する。ただし、鉄筋がD25以下の場合にはコンクリート打込み等に問題がなければ鉄筋の納まりを考慮し、設計担当者と協議したうえで重ね継手として修正させてもよい。

(ii) 試験片の形状、寸法及び試験方法は、JIS Z 3120(鉄筋コンクリート用棒鋼ガス圧接継手の試験方法及び判定基準)による。この規格の抜粋を次に示す。

JIS Z 3120 : 2009

1 適用範囲
この規格は、構造物の鉄筋としてJIS G 3112に規定する棒鋼を用いる場合の手動ガス圧接法、自動ガス圧接法及び熱間押抜きガス圧接法によるガス圧接継手の試験方法及び判定基準について規定する。

3 用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は、JIS Z 3001-1及びJIS Z 3001-2によるほか、次による。

3.1 ガス圧接継手
酸素 – アセチレンガス炎を用いて加熱し、機械的圧力を加えて溶接した突合せ継手。

3.2 手動ガス圧接法
加圧工程とバーナー躯動とを自動的に制御しない手動ガス圧接装置を使用してガス圧接を行う方法。

3.3 自動ガス圧接法
加圧工程とパーナー駆動とを自動的に制御する自動ガス圧接装置を使用してガス圧接を行う方法。

3.4 熱間押抜きガス圧接法(略)

3.5 圧接面
圧接によって得られた接合面。

3.6 圧接部
圧接によって得られた熱影響部を含む継手部全体。

3.7 追試験
試験片の不合格の原因を確認するための試験。

4 試験の種類
試験の種類は、外観試験と引張試験とする。ただし、やむを得ない場合は、継手施工の受渡当事者間の合意によって、引張試験を曲げ試験に代えてもよい。

5 試験片
試験片の形状及び寸法は、表1による。試験片はガス圧接のままとし、引張試験片又は曲げ試験片は外観試験に合格したものを用いる。ただし、手動ガス圧接法又は自動ガス圧接法によって作製した曲げ試験片については、試験片を正しく曲げるために、押し金具が当たる側のふくらみを母材外接線まで削るのが望ましい。

表1 – ガス圧接継手試験片の形状及び寸法

6 試験方法

6.1 外観試験
圧接部の外観試験は、ふくらみの形状・寸法、圧接接面のずれ、鉄筋中心軸の偏心量、折れ曲がり、その他有害と認められる欠陥の有無などについて、目視又は必要に応じてノギス、スケールなどの器具を用いて行う。

6.2 引張試験方法
引張試験方法は、JIS Z 2241による。ただし、継手の引張強さを求める場合の断面積は、異形棒鋼については JIS G 3112に規定する公称断面積とし、棒鋼についてはJIS G 3191に示す標準径によって求めた断面積とする。

6.3 曲げ試験方法
曲げ試験方法は、JIS Z 2248に規定する押曲げ法による。ただし、 曲げ角度は45° 以上とし、内側半径は JIS G 3112による。

7 判定基準
7.1 外観試験の判定基準
すべての試験片が次の判定基準を満足しなければならない。

a) 手動ガス圧接法及び自動ガス圧接法によって作製された試験片の場合は、次による。

1) 圧接部のふくらみの直径(D)は、鉄筋の径又は公称直径の1.4倍以上とする。ただし、JISG3112に規定するSD490の場合は1.5倍以上とする(図1参照)。

2) 圧接部のふくらみの長さ(ℓ)は、鉄筋の径又は公称直径の1.1倍以上とする。ただし、JISG3112に規定するSD490の場合は1.2倍以上とする(図1参照)。


図1 – 圧接部のふくらみの直径及びふくらみの長さ

3) 圧接面のずれ( δ) は、鉄筋の径又は公称直径の1/4以下とする(図2参照)。


図2 – 圧接面のずれ

4) 圧接部における相互の鉄筋中心軸の偏心量 ( e ) は、鉄筋の径又は公称直径の1/5以下とする(図3参照)。


図3 – 偏心量

5) 目視によって明らかな圧接部の折れ曲がりがないものとする。

6) 目視によって圧接部に過熱による著しいたれ・割れ・溶けがないものとする。

b)(略)

7.2 引張試験の判定基準
すべての試験片の引張強さがJIS G 3112の規定に合格しなければならない。

7.3 曲げ試験の判定基準
いずれの試験片も圧接面に破断又は割れがあってはならない。

JIS Z 3120 : 2009

(iii) ロットの合否判定
ロットの合否判定は、抜き取った試験片の全数が母材のJIS規格引張強さ以上で、かつ、圧接面での破断がない場合を当該ロットの合格としている。母材のJIS規格引張強さ以上でも、圧接面で破断した場合に不合格としているのは、圧接面破断が生じる際の強度には、ばらつきが大きい場合もあり、3本の抜取試験では強度の推定が困難なためである。

母材のJIS規格引張強さ未満で圧接面破断した場合は、原因が母材鉄筋自身にあることも考えられるので、鉄筋母材の材料試験をしてみることが望ましい。

また、母材破断した場合でも、母材の規格引張強さ未満で破断した場合は不合格となる。その場合で、破断部位が圧接器の締付けボルトによる圧痕に起因していると考えられる場合には、締付けボルトを変更する必要がある。

圧接面で破断し不合格となった場合には、再試験を行うことができることとし、その場合の抜取り数は当該ロットの5%以上とし、すべての試験片について引張強さが母材のJIS規格値以上の場合を合格としている。

5.4.10 不合格となった圧接部の修正

不良圧接部の判定手順及び修正について、図5.4.10に示す。
(1) 外観試験で不合格となった圧接部の修正
(i) 圧接部のふくらみの直径とふくらみの長さがそれぞれ鉄筋径の1.4倍、1.1倍に満たない場合の修正は、鉄筋を切断せずに再加熱・加圧して、所定のふくらみの直径及びふくらみの長さとしてもよい。これは再加熱・加圧によって圧接部の品質を劣化させることなく形状を修正することができるためである。

(ii) 圧接面のずれが鉄筋径の1/4を超えた場合は、十分な接合強度が得られず圧接面破断となりやすい。この場合には、圧接部を切り取って再圧接する。

(iii) 圧接部における鉄筋中心軸の偏心量が鉄筋径の1/5を超えた場合には、圧接面に必要な加圧力が作用しなかった可能性があるので圧接部を切り取って再圧接する。

(iv) 圧接部に折れ曲りが生じている場合は、これによる強度低下は少ないが、鉄筋の軸方向の剛性が低下するので再加熱によって修正する。

(v) 圧接部のふくらみ量の差が鉄筋径の1/5を超える片ふくらみとなった場合は、部分的に十分な加圧力が作用しなかった可能性があるので圧接部を切り取って再圧接する。

(vi) 圧接部のふくらみがつば形となるのは、バーナーの揺動幅が狭く、幅焼き不足によって生じるもので、箸しいつば形の場合には圧接面の中心部まで適正な圧接温度に達していない可能性がある。

また、短時間の加熱で加圧すると圧接部表面にひび割れが生じやすい。著しいひび割れは鉄筋内部が適正温度に達していない可能性がある。

いずれの場合にも、圧接部を切り取って再圧接する。

(2) 抜取試験で不合格となったロットの処置
(i) 超音波探傷試験あるいは引張試験による抜取試験で不合格ロットが生じた場合には、直ちに圧接作業を中止し、欠陥の発生箇所、圧接面に発生している欠陥の種類等を調べて欠陥の発生原因を究明する。原因が明らかになれば、再発防止のための改善措置を検討し、施工計画書の修正等を行ったのち、作業を行う。

(ii) 不合格となったロットは、試験されていない残り全数に対して超音波探傷試験を行い、不良圧接部の選別を行う。

(iii) 超音波探傷試験の結果、不合格となった圧接箇所の処理は、圧接箇所を切り取って再圧接する。平成19年版「標仕」では不合格となった圧接箇所について、監督職員と協議したうえでの添え筋による補強を認めていた。しかし、添え筋 による補強は重ね継手によることと同じことであり、鉄筋径の制限があるとともに、鉄筋のあきを確保することや付着性能の確認が必要となる。こうした事項の確認は設計担当者が行うべきもので、現場で安易に採用すべきではないとの観点から、平成22年版「標仕」で添え筋による補強が削除された。ただし、圧接位置によっては再圧接が困難で、機械式継手等によって処理することが必要な場合もあり得るので、設計担当者により処理方法が特記されていることが望ましい。

(3) 圧接部を再加熱して修正する場合は、適正な形状となったかどうか外観試験を行って確認する必要がある。また、圧接部を切り取って再圧接する場合は、外観試験及び超音波探傷試験を行って再圧接した圧接部の品質を確認する必要がある。


図5.4.10 不良圧接部の判定手順及び修正

5.4.11 「標仕」以外の圧接工法

圧接作業方法として、「標仕」に規定する方法以外に熱間押抜きガス圧接がある。この方法は、圧接直後に圧接部のふくらみを赤熱中にせん断刃で押し抜いて除去し、このせん断面の表面外観により圧接部の品質を判定できるとともに、仕上り形状を母材鉄筋に近づけることができる。

なお、熱間押抜きガス圧接はふくらみを除去する工法であるため、平成12年建設省告示第1463号で規定する構造方法に適合しない部分がある。このため(公社)日本鉄筋継手協会が、同協会の「鉄筋のガス圧接工事標準仕様書(2003年)」に基づき適切に施工された熱間押抜きガス圧接部材について実験により性能の確認を行った結果が「鉄筋のガス圧接継手性能評価に関する調査研究(2004年)」にまとめられているので参考にするとよい。

(1) 熱間押抜きガス圧接の特徴等
(i) 加熱・加圧等の圧接工程は、従来の方法と全く同じであり、せん断除去後のふくらみ部の径は、鉄筋径よりやや大きい寸法(鉄筋径の1.2倍程度)となる。

(ii) 不良圧接の場合、熱間押抜きに伴って圧接部に生じる鉄筋軸方向の引張応力によって接合面が開口し、割れや線状傷として現れることにより品質を判定できる(図5.4.11参照)。


図5.4.11_押抜き法による表面傷の発生過程

(iii) ふくらみの押抜き直後に、圧接部表面に割れ、線状傷、へこみ等の欠陥が認められた場合には、再圧接のうえ再度押し抜くことができる。

(iv) 径の異なる鉄筋間の継手には適用できない。

(v) 押抜き作業には特別な技量を必要とするため、熱間押抜きガス圧接技量資格証明書を有する圧接技量資格者とする必要がある。

(2) 押抜き後の試験
押抜き後の試験は、全数外観試験を行う。

外観試験は、目視によって行い、必要に応じてノギス、スケール、鏡、その他適切な器具を用いる。また、外観試験の対象項目及び判定基準は、次のとおりである。

① ふくらみを押し抜いたのちの圧接面に対応する位置に割れ、線状傷、へこみがあってはならない。

② オーバーヒート等による表面不整があってはならない。

③ 圧接部のふくらみの長さℓは、鉄筋径の1.1倍以上でなければならない(図5.4.12 参照)。


図5.4.12 圧接部のふくらみの長さ

④ 圧接部における鉄筋中心軸の偏心量 e は、鉄筋径の1/10以下でなければならない。(図5.4.13参照)


図5.4.13 偏心量

⑤ 目視により明らかな折れ曲りがあってはならない。

(3) 押抜き後の試験で不合格となった場合の処置
押抜き後の外観試験で不合格となった圧接部は,次に示す方法で処置する。

① 押抜き後の圧接面に対応する位置に割れ,線状傷,へこみ,オーバーヒート等による表面不整が認められた場合及びふくらみの長さが鉄筋径の1.1倍に満たない場合は、そのまま再加熱、再加圧、押抜きを行って修正し、外観検査を行う。

② 圧接部に著しい折れ曲がりを生じた場合は、再加熱して修正し、外観検査を行う。

③ 圧接部における鉄筋中心軸の偏心量が規定値を超えた場合は、圧接部を切り取って再圧接し、外観検査を行う。

5章 鉄筋工事 5節 機械式継手及び溶接継手

第5章 鉄筋工事 


5節 機械式継手及び溶接継手

5.5.1 適用範囲

(a) 現在、わが国で使用されている鉄筋継手を工法別に分類すると図5.5.1に示すとおりとなる。平成22年版「標仕」では、このうちの重ね継手とガス圧接継手を標準的な鉄筋継手工法として取り扱い、機械式継手とD16以下の細径鉄筋に用いる重ねアーク溶接継手(フレア溶接継手)を特殊な鉄筋継手として、その適用範囲を限定してきた。平成25年版「標仕」では、「鉄筋の継手の構造方法を定める件」(平成12年5月31日建設省告示第1463号)に適合する機械式継手及び溶接継手についても標準的な鉄筋継手工法として取り扱うように改定された。

したがって、これまでの特殊な鉄筋継手の適用範囲であった機械式継手とD16以下の細径鉄筋に用いる重ねアーク溶接継手については従来と同様に適用範囲に含まれており、新たに突合せ溶接継手(エンクローズ溶接継手)が適用範囲に含まれたことになる。

なお、図5.5.1の溶接継手のうち、フラッシュバット溶接継手及びアプセットバッ卜溶接継手からなる突合せ電気抵抗溶接継手は、溶接閉鎖型のせん断補強筋や開口部補強筋に用いられる。これらのうち、高強度せん断補強筋の接合に用いる溶接は、5.3.2(d)(2)に記述したように、それぞれの製品の設計施工指針が対象とする製造工場又は加工工場のみで行われる。これは、評定を受けて製造される開口部補強筋製品についても同様である。一方、普通強度のせん断補強筋に用いる溶接については、(公社)日本鉄筋継手協会が審査により高品質な溶接閉鎖型せん断補強筋を製造する会社(工場)を「優良溶接せん断補強筋製造会社」として認定しているので、参考にするとよい。


図5.5.1 鉄筋継手の分類

(b) 機械式継手や溶接継手を用いる場合は設計図書に記載されるが、工事に当たっては適用の条件を確認する必要がある。設計図書に記載される事項は次のようなものである。

(1) 継手の名称
(2) 必要に応じて、接合装置名、接合用部品の材料の材質・形状・寸法等、鉄筋端あるいは表面の処理法
(3) 必要に応じて、継手位置、継手部におけるコンクリートのかぶり厚さ、継手部におけるあばら筋・帯筋の寸法・間隔、継手の位置のずらし方等
(4) 現場における継手の試験・検査の方法とその回数

(c) 継手によっては、接合装置がかさばる場合もあるので、接合する部分の鉄筋間隔についての事前の検討が必要である。

5.5.2 機械式継手

(a) 機械式継手は、「鉄筋の継手の構造方法を定める件」(平成12年5月31日建設省告示1463号)に適合したものでなければならない。同告示では、機械式継手の構造方法として、カップラー等の接合部分における滑りやカップラーの強度、モルタルやグラウト材等の強度、ナットを用いて固定する場合の導入トルク、圧着によって固定する場合の密着状態を規定している。現在までに建築工事に適用実績のある機械式継手を次に例示する。

(1) ねじ節継手は、異形鉄筋の節形状がねじ状になるように圧延された鉄筋を雌ねじ加工されたカップラーを用いて接合する工法である。メーカーによって節形状が異なっており専用のカップラーが必要である。カップラーと鉄筋との間の緩みを解消する方法として、ロックナットを締め付けるトルク方式、カップラーと鉄筋の節との空隙にモルタル又は樹脂を注入するグラウト方式、両者を併用したナットグラウト方式がある(図5.5.2参照)。


(イ)トルク方式


(ロ)グラウト方式
図5.5.2 ねじ節継手の例

(2) 端部ねじ継手は、市販の異形鉄筋の端部をねじ加工した鉄筋、又は加工したねじ部を鉄筋の端部に摩擦圧接した鉄筋を使用し、雌ねじ加工したカップラーを用いて接合する工法である(図5.5.3参照)。


図5.5.3 端部ねじ継手の例

(3) 鋼管圧着継手は突き合わせた鉄筋の端部に鋼管(スリーブ)をかぶせたのちにこの鋼管を油圧ジャッキで圧着し、鋼管を異形鉄筋の節に食い込ませて接合する工法である。鋼管の圧着を連統的に行う方式と断続的に行う方式がある。鉄筋は異形鉄筋であれば市販のどれでも使用できる(図5.5.4参照)。


(イ) 連続圧着方式


(ロ)断続圧着方式
図5.5.4 鋼管圧着継手の例

(4) 充填継手には、充填する材料によってモルタル充填継手と、溶融金属充填継手の2種類がある。モルタル充填継手は鋳鋼製スリーブの両端から鉄筋を突き合わせるように挿入し、スリーブと鉄筋との隙間を無収縮高強度モルタルで充填し一体化して接合する工法である。溶融金属充槙継手は鉄筋を突き合わせたスリーブ内に溶融金属を流し込んで隙間を充填し接合する工法である。いずれも市販の異形鉄筋はどれでも使用できる(図5.5.5参照)。


図5.5.5 充填継手の例

(5) 併用継手は、2種類の機械式継手を組み合わせることでそれぞれの長所を取り入れ、施工性を改良したものである(図5.5.6参照)。


(イ)圧着ねじ併用継手


(ロ)充填圧着併用継手
図5.5.6 併用継手の例

(6) 「鉄筋の継手の構造方法を定める件」における機械式継手に関する規定の抜粋を次に示す。

鉄筋の継手の構造方法を定める件
(平成12年5月31日建設省告示第1463号)

建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第73条第2項ただし書(第79条の4において準用する場合を含む。)の規定に基づき、鉄筋の継手の構造方法を次のように定める。

1.(5.4.3 (a)に記載)

2.(5.4.3 (a)に記載)

3.(5.5.3 (a)に記載)

4.機械式継手にあっては、次に定めるところによらなければならない。

ー カップラー等の接合部分は、構造耐力上支障のある滑りを生じないように固定したものとし、継手を設ける主筋等の降伏点に基づき求めた耐力以上の耐力を有するものとすること。ただし、引張力の最も小さな位置に設けられない場合にあっては、当該耐力の1.35倍以上の耐力又は主筋等の引張強さに基づき求めた耐力以上の耐 力を有するものとしなければならない。

ニ モルタル、グラウト材その他これに類するものを用いて接合部分を固定する場合にあっては、当該材料の強度を1平方ミリメートルにつき50ニュートン以上とすること。

三 ナットを用いたトルクの導入によって接合部分を固定する場合にあっては、次の式によって計算した数値以上のトルクの数値とすること。この場合において、単位面積当たりの導入軸力は、1平方ミリメートルにつき30ニュートンを下回ってはならない。

四 圧着によって接合部分を固定する場合にあっては、カップラー等の接合部分を鉄筋に密着させるものとすること。

(b) 隣り合う鉄筋の継手位置は、「標仕」5.3.4(d)により、カップラーの中心間で400 mm以上かつ、カップラー端部の間のあきが40mm以上となるようにずらして配置する。ただし、先組み工法等で継手を相互にずらさない場合は特記による位置とする。

(c) 現在、市販されている機械式継手は、(一財)日本建築センターの評定を受けて告示の構造方法との適合性が確認されている。したがって、工法や品質の確認方法等は、各工法の評定を受けた施工要領書に準拠しなければならず、特記及び品質計画はこれらの施工要領書に基づいて定める必要がある。

機械式継手の検査においては、カップラーに対する鉄筋の挿入長さの確認が重要である。機械式継手は、鉄筋の挿入長さが十分でなければカップラーを介して応力が伝達されず十分な機能を果たさなくなる。このため、施工作業ではマーキングによる挿入長さの確認を行うこととしており、監督職員も抜取り的に確認を行うのがよい。(公社)日本鉄筋継手協会「鉄筋継手工事標準仕様書機械式継手工事(2009年)」では、表面SH波法による鉄筋挿入長さの超音波測定検査を主要な機械式継手の仕様とともに定めているので、必要に応じて参考にするとよい。

5.5.3 溶接継手

(a) 溶接継手は、「鉄筋の継手の構造方法を定める件」(平成12年5月31日建設省告示第1463号)に適合したものでなければならない。同告示では、突合せ溶接継手の構造方法が規定され、径が25mm以下の主筋等にあっては重ねアーク溶接継手とすることができるただし書きが記されている。

「鉄筋の継手の構造方法を定める件」の溶接継手に関する規定の抜粋を次に示す。

鉄筋の継手の構造方法を定める件
(平成12年5月31日建設省告示第1463号)

建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第73条第2項ただし書(第79条の4において準用する場合を含む。)の規定に基づき、鉄筋の継手の構造方法を次のように定める。

1 (5.4.3(a)に記載)

2 (5.4.3(a)に記載)

3 溶接継手にあっては、次に定めるところによらなければならない。

ー 溶接継手は突合せ溶接とし、裏当て材として鋼材又は鋼管等を用いた溶接とすること。ただし、径が25ミリメートル以下の主筋等の場合にあっては、重ねアーク溶接継手とすることができる。

二 溶接継手の溶接部は、割れ、内部欠陥等の構造耐力上支障のある欠陥がないものとすること。

三 主筋等を溶接する場合にあっては、溶接される棒鋼の降伏点及び引張強さの性能以上の性能を有する溶接材料を使用すること。

4 (5.5.2(a)に記載)

(b) 隣り合う鉄筋の継手位置は、「標仕」5.3.4(d)により、継手の中心間で400以上ずらして配置する。ただし、先組み工法等で継手を相互にずらさない場合は特記による位置とする。

(c) 現在、工事に採用できる突合せアーク溶接継手(エンクローズ溶接継手)は、告示の第1項ただし書きの規定による継手部分の性能を確認し、(一財)日本建築センターの評定又は(公社)日本鉄筋継手協会の認定を受けたものがほとんどである。これらは告示の第3項にも適合しているので、性能が確認されたこれらのエンクローズ溶接継手を用いるのが望ましい。(一財)日本建築センターの評定又は(公社)日本鉄筋継手協会の認定を受けたエンクローズ溶接継手の工法や品質の確認方法等は、前者では評定を受けた施工要領書に、後者では(公社)日本鉄筋継手協会「鉄筋継手工事標準仕様書 溶接継手工事(2009年)」に準拠しなければならず、特記及び品質計画はこれらに基づいて定める必要がある。

(1) エンクローズ溶接継手の概要と種類
エンクローズ溶接継手は突き合わせた鉄筋の開先部を裏当て金で囲み、CO2ガスシールドにより溶接部の酸化を防止しながら、開先底部よりアークをスタートさせて鉄筋両端面に十分な溶込みを与えながら連続的に開先内を溶融金属で充填して接合するもので、溶接後の継手の伸縮は小さいという特徴がある。この溶接はI 形開先であり、ルート間隔の管理が重要である。エンクローズ溶接の例を図 5.5.7に示す。


図5.5.7 エンクローズ溶接の例

(2) エンクローズ溶接継手の検査
(一財)日本建築センターの評定又は(公社)日本鉄筋継手協会の認定を受けたエンクローズ溶接継手の検査は、その工法の施工要領書に定める方法によらなければならない。検査の種類では、「鉄筋の継手の構造方法を定める件」の第3項第二号において、溶接部に割れ、内部欠陥等の構造耐力上支障のある欠陥がないものとすることと規定されていることに対応して、外観検査と超音波探傷検査が行われる。しかし、裏当て金が固着する工法では溶接部全周の外観検査ができないことや裏当て金によって超音波探触子を当てる部分が制限される。また、裏当て材が取り外せる工法でも鉄筋のリブとアークの起点が必ずしも一致しないため、ガス圧接継手の超音波探傷検査に採用される直角K走査法では欠陥が比較的生じ易いとされる溶接初層部の検査ができない場合がある。したがって、エンクローズ溶接継手については、工事の全部あるいは一部について、より広範囲な検査領域が得られる探触子走査法を併用することなどが望ましい。

(公社)日本鉄筋継手協会「鉄筋継手工事標準仕様書 溶接継手工事(2009年)」では、上記の課題に対応する検査方法として、探触子を鉄筋軸に対して20゜傾斜させる斜めK走査法や斜めタンデム走査法を直角K走査法と併用する検査法が規定されているので、参考にするとよい。例として斜めK走査法による鉄筋溶接部の超音波探傷を図5.5.8に示す。


図5.5.8 斜めK走査法による鉄筋溶接部の超音波探傷

(公社)日本鉄筋継手協会「鉄筋継手工事標準仕様書 溶接継手工事(2009年)」における検査の規定の抜粋を次に示す。

鉄筋継手工事標準仕様書 溶接継手工事(2009年)

4章 検 査
4.1 一般事項
(1) 溶接部の検査は、外観検査と超音波探傷検査によって行う。引張試験による検査を併用する場合は、特記による。

(2) 検査は、原則として発注者又は監理・責任技術者の立会のもとに行う。

(3) 検査の時期は、工事工程を考慮して定め、監理・責任技術者の承認を得る。

(4) 検査数量は、次による。
a. 外観検査は、全数検査とする。
b. 超音波探傷検査は、抜取検査とする。
c. 引張試験による検査は、抜取検査とする。

(5) 検査は、発注者又は監理・責任技術者の承認を受けた施工者若しくはその代理者である検査会社の検査技術者が行う。また、検査技術者は、欽筋継手部検査技術者資格の1W種、2種又は3種を保有する者とする。

4.2 外観検査
(1) 外観検査の検査項目は、表2による。

(2) 外観検査は、目視によって行い、目視で判定が困難なものに対して、ノギス、スケール、その他適切な器具を用いて寸法を測定する。

(3) 外観検査の合否判定基準は、各溶接継手工法の認定条件及び表2のいずれをも満足するものとする。

表2 外観検査項目及び合否判定基準

4.3 超音波探傷検査
(1) 超音波探傷検査の検査項目は、内部欠陥の検出とする。

(2) 超音波探傷検査の方法は、(社)日本鉄筋継手協会規格 JRJS 0005(鉄筋コンクリート用異形棒鋼溶接部の超音波探傷試験方法及び判定基準(案))に規定する直角K走査法と斜めK走査法(又は斜めタンデム走査法)を併用して行う。

(3) 継手の合否判定基準は、合否判定レベルを基準レベルの –18dBとし、これ以上のエコーが検出された場合は、不合格とする。

4.4 超音波探傷検査における抜取検査
(1)抜取検査の検査ロットは、同ー作業班が同一日に施工した溶接箇所とし、その大きさは、200箇所程度を標準とする。

(2) サンプルの大きさは検査ロットごとに30箇所とし、サンプルはランダムに抽出する。

(3) ロットの合否判定は、30箇所のサンプルのうち、不合格数が、1箇所以下のときはロットを合格とし、2箇所以上のときはロットを不合格とする。

(4) ロットの処置については、合格ロットはそのまま受け人れ、不合格ロットは超音波探傷検査による全数検査を行って合格した溶接粧手を受け入れる。

4.5 引張試験による検査
(1) 溶接継手の引張試験方法は、JIS Z 2241(金属材料引張試験方法)による。ただし、継手の引張強さを求める場合の断面積は、JIS G 3112(鉄筋コンクリート用棒鋼)に規定する公称断面積とする。なお、この場合の引張試験機による試験片のつかみ間隔は、公称直径の8倍以上とする。

(2) 溶接継手の引張試験の合否判定基準は、試験片の引張強さが母材の規格値以上の場合、合格とする。

(3) 引張試験による検査における抜取検査は、次による。
a. 抜取検査の検査ロットは、同ー作業班が同一日に施工した溶接箇所とし、その大きさは200箇所程度を標準とする。

b. サンプルの大きさは検査ロットごとに3本とし、サンプルはランダムに抜き取る。

c. すべての試験片の引張強さが母材の規格値以上のときはロットを合格と判定する。また、1本のみが母材の規格値未満のときは、さらに3本を抜き取り、すべての追加試験片の引張強さが母材の規格値以上のときはロットを合格と判定する。

d. 合格ロットはそのまま受け人れ、不合格ロットの処置は、監理・責任技術者 と協議し、承認を得る。

4.6 不合格溶接部等の処置
(1) 検査で不合格が生じた場合は、直ちに監理・責任技術者に報告し、処置について承認を得る。監理・責任技術者が処置方法を指定する場合以外においては、次の(2), (3)により処置を行う。

(2) 外観検査で不合格となった溶接部は、不合格溶接部を補修又は再溶接した後、外観検査及び超音波探傷検査を行う。

(3) 超音波探傷検査で不合格となった溶接部は不合格溶接部を切り取って再溶接し、外観検査及び超音波探傷検査を行う。

(4) 外観検査で10%以上の溶接部に不合格が生じた場合又は超音波探傷検査でロット不合格と判定された場合は、以後の溶接継手工事を中止し、不合格の発生原因を調査する。工事を再開するにあたっては、再発防止のために必要な措置を講じて、監理・責任技術者の承認を得る。

鉄筋継手工事標準仕様書 溶接継手工事(2009年)

(d) D16以下の細径鉄筋に対する溶接は、重ねアーク溶接(フレア溶接)とする。これについて、「鉄筋の継手の構造方法を定める件」(平成12年5月31日 建設省作示第1463号)では、径が25mm以下の主筋等の場合にあっては重ねアーク溶接継手とすることができるとあるので、「標仕」の方が厳しく制限していることに注意する必要がある。フレア溶接継手は鉄筋どうし又は鉄筋と鋼材を重ね合わせて、その重ねた部分にできる開先部分を溶接する方法である(図5.5.9参照)。主としてせん断補強筋の接合に用いられ、高強度の鉄筋での実績はほとんどない。(社)プレハプ建築協会では壁式プレキャスト工法のパネル間接合にフレア溶接を用いることから、「PC工法溶接工事品質管理規準(2004年)」を定めて運用している。同基準における鉄筋の種類の適用範岡は、JIS G 3112(鉄筋コンクリート用棒鋼)の規格品のうち、SR235,SD295A, SD295B,SD345としている。


(イ)当て金なし


(ロ)当て金付き
図5.5.9 フレア溶接継手の例

SD345以下の強度の鉄筋をフレア溶接継手によって全強継手とするための溶接有効長さは、(社)プレハプ建築協会「PC工法溶接工事品質管理規準(2004年)」の規定と同様に、片面溶接で鉄筋径の10倍以上、両面溶接で鉄筋径の5倍以上を確保する。また、同規準では、片面溶接はD13以下の細径鉄筋に制限している。

更に同規準において、フレア溶接継手の開先標準が表5.5.1のとおり定められているので、参考にするとよい。

表5.5.1 フレア溶接継手の開先標準

(e) 溶接技能者は、工事に相応した技量を有する者でなければならず、各鉄筋継手工法に定められた資格者でなければならない。

エンクローズ溶接継手については、評定又は認定を受けた施工要領書で規定する資格を有する者でなければならない。一例として、(公社)日本鉄筋継手協会では、「鉄筋溶接技量検定規定」に基づいて検定試験を行い、鉄筋溶接技量資格者を認証し、適格性証明書を発行している。すべてのエンクローズ溶接工法でこの資格者であることが規定されているものではないが、技量検定試験により一定の技量が確認されている技能者であるとしてよい。

フレア溶接継手については、7.6.3[技能資格者]の中板構造の資格者とするのが一般的であるが、これらの評価試験が板材や管材の突合せ溶接によっていることに鑑み、(社)プレハプ建築協会ではフレア溶接に関する付加技量試験を行って、手溶接に対するアーク溶接技能者(PC-M)及び半自動溶接に対する半自動溶接技能者(PC-S)を認定しているので、参考にするとよい。

参考文献

4章 地業工事 1節 一般事項

第4章 地業工事 


1節一般事項

4.1.1 適用範囲

地業工事では、基礎や基礎スラブを支えるために、それより下の地盤に設けた各種の杭、砂利、砂及び捨コンクリート地業、並びにこれらに関する試験を対象としている。

4.1.2 基本要求品質

(a) 杭地業工事で使用する材料については、工場等で製造される既製コンクリート杭や鋼杭、並びに工事ごとに異なる調合や品質・施工管理等が必要な場所打ちコンクリート杭等に大別される。前者については、材料の品質等が、杭の種類に応じて建築基準法に基づき指定又は認定されており、設計図書の指定に従って、それぞれの規定に適合する材料を使用したことが分かればよい。

また、場所打ちコンクリート杭に使用するコンクリートについては、施工条件に応じて設計図書で要求される品質(水セメント比、スランプ、単位セメント量等)を有するコンクリートを品質計画で明確にし、その材料(コンクリート)を使用したことが、6章のコンクリート工事に準じて分かるようにしておく。

なお、水セメント比及び単位セメント量は、現場で直接確認する適切な方法が確立されていないので、一般的にコンクリートの圧縮強度をその代用特性として用い、品質計画で定めた水セメント比及び単位セメント地を満たすコンクリートの強度で、間接的に確認している。

(b) 地業の平面位置、形状及び寸法は、地業の性能(上部構造物の支持能力)に直接影響を与える。例えば、独立基礎等では寸法の不足が即支持力の不足となる。また、個々の杭は必要な支持力を有する場合でも.平面位置や形状等が許容される誤差の限度を超えると.基礎に加わる上部構造物の荷重と地業の支持力に偏心が生じ、構造物に有害な応力が発生したり、不同沈下が生じたりする。

「標仕」では、地業工事における施工誤差は避けられないものとして、その限度を「有害な影響を与えないもの」と規定している。施工誤差の許容値は、基礎の形式や杭の種類・耐力、地下階の有無や構造形式、平面形状等により異なるため、管理基準や管理の方法を品質計画で明確にし、これに基づいて管理したことが分かるようにしておく。

(c) 一般に、打込杭(支持杭)の場合には、設計図内で杭の支持力が指定され、4.3.1 (e) 及び4.3.3(b)で述べているように直接支持力の確認ができる。しかし、埋込杭や場所打ちコンクリート杭では、支持力を直接確認しながら管理をすることはできない。

このため「標仕」では、適切な施工方法でかつ、適切な品質管理を行ったことが分かれば「所要の支持力を有するもの」と見なすこととし、すべての地業について載荷試験等により支持力の確認を要求しているのではない。

具体的には、適切な施工方法を定め、施工上の管理内容や管理基準及び管理記録の方法並びに管理基準を外れた場合の処置方法等を品質計画に記載させ、これに基づき管理させる。

なお、地盤調査結果と現地の状況等から判断して、設計図書の指定に疑問が生じた場合は、直ちに設計担当者と打ち合わせ、必要な場合には「標仕」1.1.8による協議を行う。

4.1.3 施工一般

(a) 材 料
材料の入手に当たってはその後の工期に影響しないよう、納期の確認が必要である。特に遠心力高強度プレストレストコンクリート杭のB種・C種並びにSC、PRC、ST杭のような特殊な場合は注意が必要である。

(b) 施工業者
打込み工法においては、平成9年版「建築工事共通仕様書」で引用されていた昭和46年建設省告示第111号は廃止されたが、打止め時に貫入量と打撃エネルギーから支持力の推定が行えるため、これを打止め管理に利用している。一方、既製杭の埋込み工法や場所打ちコンクリート杭ではこのような管理手段がなく、施工中に所定の耐力が確保されているかを数値で確認することは困難である。したがって、杭基礎としての信頼性は施工業者の技術力に依存せざるを得ない。施工業者の技術力については、工事実績、保有する施工機械の種類や能力、施工の管理体制等によって、十分検討することが必要である。

技術の進歩に対する施工水準の確保と施工の信頼性向上を図るため、既製コンクリート杭については(-社)コンクリートパイル建設技術協会、場所打ちコンクリート杭については(-社)日本基礎建設協会で、技術講習会を実施している。

(c) 工 法
(1) 地業工事は、一般に振動、騒音等が著しく、また、機械の転倒等の事故を起こす可能性があるので、1.3.7 に記述されているような配慮、参考資料の資料 1 に記述されている騒音規制法、振動規制法に対する処置、2.2.1(a)(iii)に記述されている事前の現状調査等が必要である。特に、作業地盤は施工機械が傾斜、転倒しないよう養生する。

また、酸欠、杭孔への転落等についても、防止対策をとる。

(2) 杭の上部には、地震時に水平せん断力や大きな曲げ応力が発生するので、十分注意して施工管理を行う必要がある。特に、セメントミルク工法では杭周固定液の逸液により、杭の周囲が軟弱な泥土となっている場合があるので注意する。

(3) 排土、廃液等は、産業廃菓物として規制を受ける場合があるので、産業廃棄物処理法等に従い適切に処理する。

(d) 杭の品質管理
杭の品質管理は、要求品質に応じて適切に行う必要がある。「国土交通省総合技術開発プロジェクト「建設事業の品質管理体系に関する技術開発」報告害 建築分野編」(平成13年3月 国土交通省建築研究所)に各工法ごとの「要求品質と品質管理方法」が報告されているので、その例(打込み工法、プレボーリング根固め工法アースドリル工法)を表4.1.1~3に示す。これ以外の既製コンクリート杭(プレボーリング拡大根固め工法、中掘り拡大根固め工法)、鋼管杭(打撃工法、中掘り工法、鋼管ソイルセメント杭工法、回転貫入杭工法)及び場所打ちコンクリート杭(リバース工法、オールケーシング工法)については、この報告古を参照されたい。

なお、工法の特徴や施工方法、具体的な管理値等は、本章3節以降の関連する部分を参照されたい。

(e) その他
(1) 地中障害物、埋設物及び文化財や学術上の資料となる出土品がある場合は、関係者と協議し適切に処置する。

(2) 施工中の領斜、変形、ひび割れ、異常沈下、掘削孔壁の崩壊等予想外の異状が生じるなど、「標仕」4.1.3(f)に定める場合は、直ちに関係者と協議し、適切な処置を受注者等に指示する。

表4.1.1 打込み工法の要求品質と品質管理方法
(「建設事業の品質管理体系に関する技術開発」報告書 建築分野編より)

表4.1.2 プレポーリング根固め工法の要求品質と品質管理方法
(「建設事業の品質管理体系に関する技術開発」報告書 建築分野編より)

表4.1.3 アースドリル工法の要求品質と品質管理方法
(「建設事業の品質管理体系に関する技術開発」報告書 建築分野編より)

4章 地業工事 2節 試験及び報告書

第4章 地業工事 


2節 試験及び報告書

4.2.1 一般事項

(a) 「標仕」4章2節では、試験杭、杭の載荷試験、地盤の載荷試験及び報告書について規定している。

(b) 試験は.原則として.監督職員の立会いを受けて行うこととしている。
なお、載荷試験には、(c)のような理由で設計担当者の立会いを求めるのがよい。

(c) 「標仕」4.2.1(c)では施工試験の結果によって「その後の施工の指示を受ける。」こととしている。「施工の指示」には、増し杭等設計変更の必要な場合もあるが、この場合は、工程管理上速やかに行う必要がある。

(d) 杭の施工に併せて行う管理試験については、3節から5節に示す。

4.2.2 試験杭

試験杭とは、本杭を施工する場合の各種管理基準値等を定めるための杭を想定している。打込み工法(「標仕」4.3.3(e))の試験杭は、杭の長さの決定や支持層の確認等のため本杭と別に計画する。試験杭の位置、本数及び寸法は、設計図書に特記される。試験後の杭体の強度に十分余裕があると予想される場合には、試験杭を本杭とすることができる。

セメントミルク工法(「標仕」4.3.4(e))、特定埋込杭工法(同4.3.5 (b))、鋼杭工法(同4.4.3及び4.4.4)及び場所打ち杭(同4.5.4(b))については、一般的には最初の1本目の本杭が試験杭とされる。試験杭の位置は、地盤や土質試験の結果から、全基礎杭を代表すると判断される位置に指定される。

試験杭の施工結果を基に、試験杭以外の本杭の施工における各種管理基準値等を定める。このため、試験杭の施工設備は、原則として、本杭に用いるものを使用する。

なお、杭の支持力の確認試験や水平載荷試験を行うための試験杭や反力杭等の特別な仕様が必要な「試験杭」は「標仕」4.2.2(a)の「特記」の想定外である。その場合は、設計担当者により別途仕様が定められ設計図書に特記される。

4.2.3 杭の載荷試験

杭の載荷試験は、「標仕」では、鉛直又は水平載荷試験としている。また、試験の方法は特記によるとしている。

地盤工学会基準「杭の鉛直載荷試験方法・同解説」には、単杭に対して鉛直方向に載荷するすべての載荷試験を対象にし、
「杭の押込み試験方法(JGS 1811)」
「杭の先端載荷試験方法(JGS 1812)」
「杭の引抜き試験方法(JGS 1813)」
「杭の鉛直交番載荷試験方法(JGS 1814)」
「杭の急速載荷試験方法(JGS 1815)」
「杭の衝撃載荷試験方法(JGS 1816)」
の6種類の基準が併記されている。

また、水平載荷試験に関しては地盤工学会基準「杭の水平載荷試験方法(JGS1831)」に基準化されている。

ここでは、地盤工学会基準の概要を紹介する。

(1) 鉛直載荷試験
6種類の基準を、載荷方法から、荷重の性質、加力方法、反力装置、載荷位置及び載荷方向で分類すると表4.2.1のとおりである。

表4.2.1 載荷方法による分類(杭の鉛直載荷試験方法・同解説より)

荷重の性質からは、静的載荷試験と動的載荷試験に大別される。静的載荷と動的載荷は、杭体並びに地盤の速度及び加速度に依存する抵抗が無視できる載荷か否かで区別できる。また、動的載荷において急速載荷と衝撃載荷は、杭体の波動を無視できるか否かで区別される。

この基準では、図4.2.1に示すように、載荷時間の長さ、具体的には載荷時間 t1の、縦波が杭体を一往復するのに要する時間 2L/cに対する比である相対載荷時間 Trの大きさで区分される。


図4.2.1 載荷時間の比較(杭の鉛直載荷試験方法・同解説より)

① 押込み試験方法
押込み試験方法は、杭頭部に軸方向押込み荷重を加える試験である。この試験方法は、実際の杭と同じ荷重条件で行うため鉛直支持力特性の評価の信頼性が高いが、反力装置に載荷梁等を使用した反力抵抗体が必要なため、ある程度の費用と工期を要する。

載荷に用いる試験装置は、加力装置、反力装置及び計測装置で構成される。図 4.2.2に一般的な載荷試験装置例として反力杭方式の試験装置を示す。


図4.2.2 反力杭を使用した場合の押込み試験装置例
(杭の鉛直載荷試験方法・同解説より)

② 先端載荷試験方法
先端載荷試験方法は、図4.2.3のように、杭体の先端付近に取り付けたジャッキによって静的な荷重を加える試験である。この試験方法では、押込み試験方法のような杭頭部の反力装置は用いずに. ジャッキの上下に生ずる抵抗力を互いに反力として載荷する。ジャッキの上方に生ずる抵抗力は.杭を押し上げるのに必要な抵抗(押上げ抵抗)であり、杭の周面抵抗力に杭の自重が加わったものとなる。ジャッキの下方に生じる抵抗力は、杭の先端抵抗力が主であり、これにジャッキより下方の部分の周面抵抗力が加わることになる。


図4.2.3 先端載荷試験の装置(杭の鉛直載荷試験方法・同解説より)

③ 引抜き試験方法
引抜き試験方法は、杭頭に静的な引抜き荷重を加える試験である。

試験装置は、押込み試験と同様に、加力装置、反力装置、計測装置で構成される。引抜き試験の反力抵抗体は、反力杭が一般的であるが反力板も用いられている。コンクリート系の試験杭では、試験杭の杭体に引張り応力が作用するため、杭体の引張り強度について注意を要する。

また、各層の周面抵抗力特性を得るために杭体の軸方向力を測定する際には、杭体のひび割れの影響についても留意しなければならない。

④ 鉛直交番載荷試験方法
鉛直交番載荷試験方法は、杭に押込み及び引抜きの軸方向鉛直交番荷重を加える試験である。地震時における構造物のロッキング動等によって杭基礎に作用する変動軸力は、鉛直交番荷重として杭頭に作用するが、従来の設計では押込み荷重及び引抜き荷重に対する抵抗力を押込み試験及び引抜き試験によってそれぞれ別々に評価してきた。しかし、近年行われるようになってきた上部構造と杭基礎との一体解析では、鉛直交番荷重に対する杭の挙動を一連の挙動として評価する必要が生じてきた。鉛直交番載荷試験は、これまで研究的に行われてきた事例はあるものの、多くの試験が実施されてきたとはいえない。しかし、兵庫県南部地震以降、常時から大地震時に至るまでの杭基礎の挙動を正確に設計に反映させる必要性が高まっており、鉛直交番載荷試験によって杭挙動を評価する機会が今後増加するものと考えられる。したがって、鉛直載荷試験方法の一つとして「杭の鉛直交番載荷試験方法(JGS 1814)」が制定され、試験の基準化を図ることとされている(図4.2.4参照)。


図4.2.4 鉛直交番載荷試験の載荷サイクル(杭の鉛直載荷試験方法・同解説より)

⑤ 急速載荷試験方法
急速載荷試験方法は、杭頭に動的な荷重を加える載荷試験の一つである。荷重の性質として油圧ジャッキ等により静的な荷重を加える押込み試験とハンマー等で衝撃荷重を加える衝撃載荷試験の中間的な位置付けにあり、基準の中では急速載荷を「杭体の波動現象は無視できるが、速度および加速度に依存する杭体と地盤の抵抗は無視することができない載荷時間を持つ載荷」と定義している。具体的には、相対載荷時間 Tr が 5 ≦ Tr < 500の範囲の載荷試験である(図4.2.5参照)。


図4.2.5 反力装置を使用しない加力装置(杭の鉛直載荷試験方法・同解説より)

⑥ 衝撃載荷試験方法
杭の衝撃載荷試験方法は、杭頭に動的な荷重を加える載荷試験の一つである。一般に、杭頭部にひずみ計及び加速度計を取り付け、ハンマー等による杭打撃時に発生するひずみ波形及び加速度波形を測定し、波動理論に基づいて解析を行い、杭の鉛直支持力特性を評価する試験方法である(図4.2.6参照)。

載荷試験においては、載荷時間が、波動が杭長分を伝播する時間に対して短くなるほど、波動の影響が大きくなる。衝撃載荷試験は、載荷時間が 0.01〜0.02秒程度であるため、波動現象を伴う試験であり、試験結果の解析は一次元波動理論に基づく必要がある。


図4.2.6 衝撃載荷試験方法の例(杭の鉛直載荷試験方法・同解説より)

(2) 水平載荷試験
杭の水平載荷試験方法は、静的載荷による杭の水平抵抗特性に関する資料を得ること、また、既に定められた杭の水平地盤反力係数等の設計値の妥当性を確認することを目的とする(図4.2.7参照)。

載荷方法は、載荷パターン及び載荷方式により分類され、対象とする構造物の種類及び試験の目的を考慮して決定する。

載荷パターンには、一方向載荷と正負交番載荷があり、いずれかを選択する。また、単サイクルと多サイクルがあり、いずれかを選択する。後者の場合は、試験の目的に応じてサイクル数を決定する。

載荷方式には、段階載荷方式と連続載荷方式があり、いずれかの方式を選択する。前者の場合は荷重(変位)段階数、各荷一重(変位)段階における荷重(変位)保持時間を、後者の場合は載荷速度を試験の目的に応じて決定する。


図4.2.7 水平載荷試験の装置例(杭の水平載荷試験方法・同解説より)

4.2.4 地盤の載荷試験
(a) 一般事項
地盤の載荷試験は、「標仕」では平板載荷試験としている。地盤の平板載荷試験は、地盤工学会基準JGS1521-2003(地盤の平板載荷試験方法)による。

(b) 平板載荷試験
(1) 試験地盤
(i) 試験地盤は、根切りのときスコップ等で荒らしたり踏み付けたり、あるいは水で埋まらないよう試験地盤の少し上で止めておき、載荷板を設置するときに、試験が自然状態で行えるようにする。

(ii) 試験孔は、一般に載荷板の5倍程度あればよいといわれているが、地盤工学会基準JGS 1521-2003によると、試験地盤面は、載荷板の中心から1.0m以上の範囲を水平に整地すると定められている(図4.2.8参照)。


図4.2.8 平板載荷試験における根切り幅と載荷板との関係を示した例

(2) 載荷板
(i) 載荷板は、直径30cm以上の円形とし、厚さ25mm以上の鋼板又は同等以上の剛性のある板を用いる。

(ii) 設置は、試験孔のほぼ中央とし、反力装置の中心の鉛直下を水平器等を用い平らに仕上げ設置する。また、地盤となじみの悪いときは薄く砂をまくか、せっこうをまいて行う。

なお、試験地盤が常水面以下の場合は、試験地盤以下に水位を下げないように注意し排水する。また、水が多く排水により地盤が緩むおそれのある場合は、設計担当者と打ち合わせる。

(3) 養 生
試験装置の上は、テント等で覆い直射日光及び降雨を避ける。また、雨水が試験孔に流入しないようにする。

(4) 最大荷重
最大荷重は設計図書の指定によるが、推定した地盤の極限支持力以上、又は設計荷重に安全率を乗じた値以上とする。

(5) 試験装置
(i) 載荷台の反力梁は、中心を載荷板の中心と一致させ、水平に設置して、変形、傾斜、転倒がないようにする。また、載荷物は偏心しないよう注意する(図4.2.9 参照)。

(ii) 加圧方法は、計画最大荷重以上の加圧能力と、変形に追随できる十分なストロークをもつジャッキによる。


図4.2.9 平板載荷試験の装置の例

(6) 計測装置
(i) 載荷荷重の計測は、荷重計(環状ばね型力計又はロードセル)を用いる。計器は試験荷重に見合ったもので、検定後の経過期間が短いものがよい。

(ii) 変位の計測は、読み精度 1/100mm、ストロークは30mm以上のダイヤルゲージ又はこれに準ずる性能の変位計を用い、セットは図4.2.10のようにする。


図4.2.10 平板載荷試験における沈下量の測定方法

(7) 試験方法
(i) 国土交通省大臣官房官庁営繕部「敷地調査共通仕様瞥」4.7.4(4)では、載荷方法は、荷重制御による段階式載荷又は段階式繰返し載荷とし、適用は特記により、特記がなければ、段階式載荷とするように定められている。

(ii) 地盤工学会基準JGS 1521-2003によると、載荷重は、計画最大荷重を 5〜 8 段階ずつ等分に載荷し、荷重の保持時間は30分程度の一定とするよう定められている。

(iii) 沈下量の測定時間は地盤工学会基準 JGS 1521-2003によると、各荷重段階において所定の荷重に達したのち、原則として表4.2.2のように定められている。

表4.2.2 沈下量測定時間

(8) 試験結果の表示
試験結果の表示の例を,図4.2.11に示す。


図4.2.11 載荷試験結果の例

(9) 報告書
地盤の載荷試験の報告書は、次の事項を記載する必要がある。

① 地盤工学会基準JGS 1521-2003と部分的に異なる方法を用いた場合には、その方法
② 試験方法
③ 試験結果の図及び表
④ 地盤反力係数
⑤ 極限支持力
⑥ 試験地盤の観察結果と地下水の状況
⑦ その他特記すべき事項

4.2.5 報告書等
地業工事の報告書の目的及び記載事項は次のとおりである。

(1) 目 的
(i) 施工記録を報告することにより施工状況を記録に残す。
(ii) 予期しない状況が生じた場合等の対策を立てる場合の参考資料とする。
(iii) 上部構造に不同沈下等の問題点が生じたときの原因究明資料とする。
(iv) 将来の近隣での建設の参考資料とする。

(2) 全般的な報告書の記載事項
(i) 工事概要
(ii) 杭材料(杭の種類、材質、形状、寸法、コンクリート強度等)
(iii) 施工機械の仕様概要
(iv) 工法の概要
(v) 実施工程表
(vi) 工事写真
(ⅶ) 試験杭の施工記録及び地業工事に伴う試験結果の記録
(ⅷ) 本杭の施工記録
(ix) 試験杭等において採取した土質資料

4章 地業工事 3節 既製コンクリート杭

第4章 地業工事 


3節 既製コンクリート杭地業

4.3.1 適用範囲

(a) この節は、打込み工法セメントミルク工法及び特定埋込杭工法による既製コンクリート杭地業に適用する。

なお、杭の施工法の分類については、JIS A 7201(遠心カコンクリートくいの施工標準)に準ずる(図4.3.3参照)。

(b) 打込み工法の作業の流れを図4.3.1に、セメントミルク工法の作業の流れを図4.3.2 に示す。

(c) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。

なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。

① 工程表(施工機械及び杭の搬入時期、各ブロックごとの試験杭と本杭打込みの開始及び完了の時期等)
② 杭の製造業者名
③ 施工業者名及び作業の管理組織
④ 杭の種類、規格、寸法及び使用箇所(鋼杭の場合は、防錆処置を含む)
⑤ 材料の受入れ検査の方法及び記録
⑥ 地中埋設物・障害物の調査、移設、防護、撤去等の計画
⑦ 施工機械の仕様の概要及び性能
⑧ 施工法
⑨ プレボーリングを併用する場合はその深さ
⑩ セメントミルク工法の場合は安定液、根固め液等の調合計画及び管理方法
⑪ 杭配置図(平面図及び断面図:土質柱状図)、試験杭の位置及び杭の施工順序
⑫ 継手の工法(溶接機の種類と溶接技能者の資格を含む)
⑬ 長尺物の搬入経路
⑭ 杭支持力の確認方法(算定式、所要最終貫入量等)
⑮ 支持地盤の確認方法(地盤資料と掘削深さ、電流値との対照等)
⑯ 杭頭の処理方法(切断方法鉄筋の処理方法等)
⑰ 安全対策(施工機械の転倒防止と杭孔への転落防止等)
⑱ 公害対策(騒音、振動、油滴飛散防止策並びに掘削液の廃液処理方法等)
⑲ 施工結果報告書内容
⑳ 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記緑文章の書式とその管理方法等

図4.3.1 打込み工法(打撃工法)の作業の流れ

図4.3.2 セメントミルク工法の作業の流れ

(d) 杭施工法の概要
(1) 施工の一般事項
既製コンクリート杭の施工に当たっては、地盤状況、現場状況、設計支持力等を考慮して、杭を予定深度まで正しく、かつ、安全に設置できる工法及び施工機械とする。

(2) 杭施工法の分類
杭の施工法の分類を図4.3.3に、杭の施工法の実績推移を図4.3.4に示す。
なお、(  )内は「標仕」の名称を示す。


図4.3.3 杭の施工法の分類(JIS A 7201 : 2009)


図4.3.4 杭の施工法の実績推移((-社)コンクリートパイル建設技術協会のデータによる)

① 打込み工法(図4.3.5及び6参照)
一般に杭径 600mm以下の施工に用いられる。地盤を緩めることがなく耐力は期待できるが、ハンマーを使用するため騒音、振動が大きく、市街地では問題が多い。このための対策として、油圧パイルハンマーやドロップハンマーによるプレボーリング併用打撃工法等が用いられている。

この工法は、アースオーガーで一定深度まで掘削したのち、杭を建込み打撃する工法である。中・小径で硬い中間層を抜く場合及び騒音振動を軽減し、杭の貫入を容易にする場合等に使用される。

通常、粘性土の場合のオーガーの掘削径は、杭径-50mm程度である。

なお、杭径が700mm以上の杭の施工に当たっては.施工実績が少ないため.特に注意が必要である。


図4.3.5 パイルハンマー打撃工法


図4.3.6 プレボーリング併用打撃工法

② プレボーリングによる埋込み工法(図4.3.7参照)
プレボーリングによる埋込み工法は、アースオーガーで掘削した孔に杭を設置する工法であり、セメントミルク工法と称する一般工法、最終的に打撃をする方法及び先端を拡大根固めした特定埋込杭工法がある。

杭の設置方法は、自重による設置を基本とし、圧入、軽打、回転等を併用する場合もある。掘削には地盤や工法によって水や安定液が使用されることがある。

セメントミルク工法は、アースオーガーによってあらかじめ掘削された縦孔に既製杭を建込むものである。掘削中は孔壁の崩壊を防止するために安定液をオーガー先端から噴出し、所定の深度に達したのち、根固め液に切り換え、所定量を注入完了後、杭周固定液を注入しながらアースオーガーを引き上げる。その後、杭を掘削孔内に建込む工法である。

この施工法は、国土交通省住宅局建築指導課監修「埋込み杭施工指針・同解説」に準じて施工するものである。

なお、このセメントミルク工法で、通常用いられている杭径は 300~600mm、施工深度は30m程度である。

また、特定埋込杭工法の中のプレボーリング工法については、種類が多いのでそれぞれの適用範囲を確認し、各工法に定められた条件に従って施工する。


図4.3.7 プレボーリングによる埋込み工法(セメントミルク工法の場合)

③中掘りによる埋込み工法(図4.3.8参照)
杭中空部にアースオーガー等を挿入し、杭先端地盤を掘削しながら、杭中空部から排土し、杭を設置する工法であり,比較的杭径の大きなもの(一般的にはφ 500mm以上の杭)の施工に適している。

杭の設置や排土を促進するため、圧縮空気又は水をオーガーヘッド先端から噴出させ、施工機械の自重を利用した圧入又はドロップハンマーによる軽打等を併用している場合が多い。

掘削機には、アースオーガー、オーガーバケット等が使用される。また、杭に作用する周面摩擦抵抗を低減させ、杭の沈設を容易にするために、先端にはフリクションカッターを取り付けるのが一般的である。

支持力発現方法としては、所定の深度に達したのち、杭に打撃を加える方法と杭先端部を根固めする方法がある。

杭に打撃を加える方法には、国土交通省住宅局建築指導課監修「中掘り打撃工法設計・施工指針」に準じて施工するものである。この工法の先端支持カ算定式は打込み工法と同じ取扱いである。

根固めする方法(図4.3.8(イ))には、杭先端部を根固めする方法と拡大根固めする方法とがある。拡大根固めする方法には、オーガーの先端に装備された拡大ヘッドによる方法(図4.3.8(ロ))、オーガーヘッド又はロッドから高圧又は低圧で根固め液を噴射する方法(図4.3.8(ハ))と、これらを併用し築造する方法があり、特定埋込杭工法となっている。これらの施工に当たっては、各工法に定められた条件に従って行うものとする。


図4.3.8 中掘りによる埋込み工法

④回転による埋込み工法(回転根固め工法)(図4.3.9 参照)
回転圧入による埋込み工法は、杭先端金物により掘削を行い、杭体に回転力を与えながら圧入し、杭を所定の位置に設置する工法である。回転圧入時は、水等を先端部から噴出して補助するものもある。

杭の支持力発現方法は、根固めによる方法が一般的である。


図4.3.9 回転による埋込み工法(回転根固め工法)

(e) 支持力の算定
杭の許容支持力は、地盤の許容支持力と杭体の許容耐力のうちいずれか小さいものとする。

基礎杭の許容支持力を定める方法は、その種類に応じて「地盤の許容応力度及び基礎ぐいの許容支持力を求めるための地盤調査の方法並びにその結果に基づき地盤の許容応力度及び基礎ぐいの許容支持力を定める方法等を定める件」(平成13年7月2日 国土交通省告示第1113号)(以下、この節では「告示第1113号」という。)に定められている( 24.1.9参照)。この内、一般的には次のものがある。

(i) 載荷試験による極限支持力(Ru)により、地盤の長期許容支持力(Ra)を定めるもの

(ii) 基礎杭先端付近の地盤の標準貫入試験の平均 N 値から基礎杭の先端の地盤の許容応力度( qp)を定めたもの

① 打込杭

② セメントミルク工法による埋込杭

(iii) 地盤の許容応力度及び基礎杭の許容支持力を求めるための方法として、杭打ち試験が挙げられている。ただし、告示第1113号では、具体的な算定式等については示されていない。

(iv) 特定埋込杭工法の場合は、各工法に定められた算定式とする。

4.3.2 材 料

(a) 杭の種類
一般的に用いられている既製コンクリート杭の種類を図4.3.10に示す。

図4.3.10 主な既製コンクリート杭の種類

PHC杭は、コンクリート設計基準強度が80 N/mm2以上で、形状的には全長にわたり同一断面の杭(ストレート杭という。)であるが、端部が拡大された杭(ST杭という。)や、全長にわたり等間隔で突起部が付いた杭(節杭という。)もある。これらの杭の本体部は本体部径が等しいPHC杭と同じ性能を有するので、分類上はPHC杭に含まれる。

また、最近では、コンクリート設計基準強度が100 N/mm2以上の杭や肉匝の厚い杭のほか、部分的に特殊な形状のものも開発されており、これらも分類上はPHC杭やSC杭となる。

PRC杭(ストレート杭)にも同様にPRC-ST杭やPRC-節杭がある。

これらの杭の大部分は、JIS I 類規格品又は性能評価機関により、告示第1113号に定める品質を満足する内容の(任意)評定を取得しているものである。

(b) 杭の製造工程
各既製コンクリート杭(略称でPHC杭、SC杭、PRC杭、ST杭及び節杭)の製造工程の例を、図4.3.11に示す。

なお、PRC杭、ST杭及び節杭の製造工程はPHC杭の場合と同じである。

図4.3.11 各既製コンクリート杭の製造工程の例

(c) 杭材料の品質
(1) 既製コンクリート杭については、告示第1113号第8で材料の許容応力度が定められているので、その抜粋を次に示す。

地盤の許容応力度及び基礎ぐいの許容支持力を求めるための地盤調査の方法並びにその結果に基づき地盤の許容応力度及び基礎ぐいの許容支持力を定める方法等を定める件

(平成13年7月2日 国土交通省告示第1113号 最終改正平成19年9月27日)建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第93条の規定に基づき、地盤の許容応力度及び基礎ぐいの許容支持力を求めるための地盤調査の方法を第1に、その結果に基づき地盤の許容応力度及び基礎ぐいの許容支持力を定める方法を第2から第6に定め、並びに同令第94条の規定に基づき、地盤アンカーの引抜き方向の許容応力度を第7に、くい体又は地盤アンカ一体に用いる材料の許容応力度を第8に定める。第8 くい体又は地盤アンカ一体に用いる材料の許容応力度は、次に掲げるところによる。

二 遠心力鉄筋コンクリートくい及び振動詰め鉄筋コンクリートくいに用いるコンクリートの許容応力度は、次の表(省略)の数値によらなければならない。この場合において、設計基準強度は40N/mm2以上としなければならない。

三 外殻鋼管付きコンクリートくいに用いるコンクリートの圧縮の許容応力度は、次の表(省略)の数値にらよらなければならない。この場合において、設計基準強度は 80N/m2以上としなければならない。

四 プレストレストコンクリートくいに用いるコンクリートの許容応力度は、次の表(省略)の数値によらなければならない。この場合において、設計基準強度は50N/mm2以上としなければならない。

五 遠心力高強度プレストレストコンクリートくい(JIS A5373(プレキャストプレストレストコンクリート製品)- 2004 附属書5 プレストレストコンクリートくいに適合するものをいう。)に用いるコンクリートの許容応力度は、次の表(省略)の数値によらなければならない。この場合において、設計基準強度は80N/mm2以上としなければならない。

六 前各号の規定にかかわらず、くい体の構造方法及び施工方法並びに当該くい体に用いるコンクリートの許容応力度の種類ごとに応じて行われたくい体を用いた試験により構造耐力上支障がないと認められる場合にあっては、当該くい体のコンクリートの許容応力度の数値を当該試験結果により求めた許容応力度の数値とすることができる。

(2) 代表的な杭材料の品質の例を表4.3.1に示す。これ以外の杭は、告示第1113号第8第六号の規定により認められた許容応力度の数値とすることができる。

表4.3.1 杭材料の品質の例

(3) 代表的な遠心力高強度プレストレストコンクリート杭〈PHC杭〉には、JIS A 5373(プレキャストプレストレストコンクリート製品)附属書 E による製品規格(推奨仕様 E-1 )がある。JIS A 5373による単体長さは、4~15m(ただし、φ300及びφ350のA種は 4~13m)である。

杭体の曲げ強度を表4.3.2に示す。

表4.3.2 遠心力高強度プレストレストコンクリート杭〈PHC杭〉の曲げ強度
(JIS A 5373 : 2010 推奨仕様E-1)

また、ストレート杭のほか、拡径断面を有する杭(ST杭)や節部付きの杭(節杭)等がある。

(i) 拡径断面を有する遠心力高強度プレストレストコンクリート杭〈ST杭〉は、杭の先端部を太径にした拡底PHC杭で、大きな地盤支持力が得られるもので ある。拡径部に溝が付いた杭等もある。また、拡径部を下端ではなく、上方側で用い、その上方に拡径部と同径の杭を接続する使用方法(拡頭タイプ)もある。

(ii) 節部付き遠心力高強度プレストレストコンクリート杭〈節杭〉は、杭本体部を約1m間隔で節部としたPHC杭で、大きな周面摩擦力が得られるものである。一部にのみ節部を有する杭もある。節杭にも拡頭タイプがある。

(4) 外殻鋼管付コンクリート杭〈SC杭〉は、大きな水平力が作用する場合に使用するために開発された杭で、鋼管(材質STK400、STK490、SKK400、SKK490、SS400、SM400ABC、SM490ABC、SN400ABC、SN490ABC、材厚 4.5~25mm)に膨張性コンクリートを遠心力で張り付かせて一体化させた複合構造であり、一般にPHC杭の上杭として使用される。最近では、不等厚鋼管を用いた製品もある。

(5) プレストレスト鉄筋コンクリート杭〈PRC杭〉は同様に水平力に抵抗するために開発されたPHC杭とRC杭の合成されたものであり、軸鉄筋としてPC鋼材のほかに鉄筋コンクリート用異形棒鋼 D10~D35を配置している。また、ストレート杭のほか、拡径断面を有する杭(ST杭)や節部付きの杭(節杭)等がある。(3)(i)及び(ii)参照。

(6) 杭先端部
杭先端部の形状は図4.3.12が標準で、土質及び工法に応じて適切なものを選定する。

一般に、打込み工法やセメントミルク工法では、平たん又は凹形の閉塞形が多く用いられ、中掘り工法や特定埋込杭工法では開放形が用いられている。最近では、大径杭や長尺杭のセメントミルク工法では、開放形が用いられている。特定埋込杭工法では、開放形の先端部に回転押込み補助用の金具を取り付けているものもある。

これらの先端部に、更に、地層や工法に適した先端金具等を取り付けて施工することが多い。

なお、杭先端部と地盤の成層状態との関係を表4.3.3に示す。


図4.3.12 杭先端部の形状

表4.3.3 杭先端部と地盤の成層状態との関係

(7) 既製コンクリート杭関係のJIS(JIS A 5372及びJIS A 5373)

(i) JIS A 5372(プレキャスト鉄筋コンクリート製品)及びJIS A 5373(プレキャ ストプレストレストコンクリート製品)は、性能規定化を目指した2004年の改正で「本体規格」-「附属書」-「推奨仕様」という形で構成され、以前の個別製品ごとの仕様規格は推奨仕様として規定された。また、これらJISでは、製品を I類、 II類に区分しており、その定義は次のとおりである。

I 類:製品の性能を満足することが、実績によって確認された仕様に基づいて製造される製品で、附属書に推奨仕様が示されているもの。

Ⅱ 類:受渡当事者間の協議によって、性能及び仕様を定めて製造される製品。なお、受渡当事者間とは、製造者と工事請負人である購入者ではなく、製造者と工事の発注者又は自ら工事を行うものをいう。

(ii) 従来は、JIS A 5373の I類のPHC杭が主流であったが、近年では、性能設計思想により多種多様の杭が用いられるようになってきている。

(iii) 現在、I 類規格品のあるものは、RC杭、PHC杭、PHC-ST杭及びPHC-節杭のみである。SC杭及びPRC杭はJISに名称はあるものの推奨仕様がないので、 JIS規格品(Ⅱ類)としての扱いとなっているため、告示第1113号による指定性能評価機関の評定品が使用されている。コンクリート設計基準強度が 100N/mm2以上のものも同様である。

4.3.3 打込み工法

(a) 打込み工法は、杭の支持力を得るために、最終工程に打撃を行うものと「標仕」では規定している。この工法は、施工の打込み時において杭の最終貫入量が測定され、推定支持力の管理基準値が定められている工法を示しており、打撃工法、プレボーリング打撃工法、中掘り打撃工法等がある。杭の取扱い及び工法はJIS A 7201(遠心カコンクリートくいの施工標準)による。

(b) 試験杭
(1) 打撃工法における試験杭の目的は、杭の推定支持力、土質状態、杭の長さ、施工時間、施工機械の適否等の確認である。本杭施工の前に行う杭打ち試験により適切な施工方法等の検討を行う。

また、杭の設計支持力は、特記により定められている。試験杭の杭打ち試験において、打込み深さ、最終貫入量等の管理基準値を確認し定めることが必要である。

(2) 試験に使用する杭は、原則として設計図書に示された諸元・材質のものを使用するが試験杭の長さは、支持層の位置が推定より深いこともあるので、本杭より2m程度長いものを用いるのが望ましい。

(3) 試験杭は、4.2.2で述べた理由で本杭の施工機械と同一機種で行うことが原則である。

(4) 調査項目及び調査方法は、打撃工法を例として次に示す。
(i) 打込み途中
杭に図4.3.13のように何m貫入したか分かるように印を付けておき、原則として、0.5~1.0mごとに次の項目について記録する。

1) 打撃回数   [ 回/m ]
2) 全打撃回数  [ 回 ]
3) 全打込み長さ [ m ]
4) 打込み所要時間[ 時分 ]

(ii) 打止まり
最終10回以上の打撃による平均値として
1) ハンマーの落下高さ[ m ]
2) 最終貫入量    [ mm ]
3) リバウンド量   [ mm ]

(iii) 支持層の確認
貫入量の減少と柱状図との比較により支持層の確認を行い、最終貫入量を測定する。

最終貫入量及びリバウンド量の測定は、図4.3.14に示すようにセクションペーパーを杭に張り付けておき、水平においたガイド材に沿って鉛筆を横に移動させていくと、図4.3.15のように杭の動きが記録される。


図4.3.13


図4.3.14 測定方法


図4.3.15 貫入量の記録

(5) 推定支持力の算定方法は特記によるとされているが、一般的には次の方法が用いられている(JIS A 7201より)。

( ⅰ )打込み杭の推定支持力

(ii) やっとこを使用した場合
やっとこを使用した場合には、算定値を0.8倍程度に低減しているが、地盤性状や杭打ち機(やっとこの構造)等によりその低減率は異なるので、やっとこを使用した場合と使用しない場合との値を実測して低減率を決めることが望ましい。

(c) 打込み工法に用いるハンマーの種類
(1) 各ハンマーの長所短所の比較を表4.3.4に示す。特に打撃工法による杭打ち施工は、大きな騒音・振動を発生するので、選定に当たっては、工事現場周辺の環境の保全に注意し、騒音・振動対策を十分に実施しなければならない。図4.3.16及び17に基礎工事用機械の騒音レベル、振動レベルの参考値を示す。

表4.3.4 各ハンマー長所短所


図4.3.16 基礎工事用機械の騒音レベル


図4.3.17 基礎工事用機械の振動レベル

(2) ディーゼルパイルハンマー
ディーゼルエンジンの原理によるハンマーである。ラム(上下動するピストン部分)の落下高さが2mを超えるような能力の小さいハンマーでは杭頭を破壊するおそれがあるので、落下高さが2m以下で杭を打ち込める能力のあるものとする。最近では、施工実績はほとんどない。

ラム質量と杭径の関係は、おおむね表4.3.5のとおりである。

表4.3.5 ラム質量と杭径の関係

(3) 油圧ハンマー
建設省技術評価制度(1983年)によって評価・普及し、油圧によってラムを作動落下させる杭打ち用ハンマーで、ディーゼルパイルハンマーに比べて大幅に騒音を低減する(15~20ホン)とともに油煙の飛散が全くない。ラムの落下高は 0.1 mごとに任意の高さに調節できる。従来のディーゼルパイルハンマーに比べて「重いラムを低い位置から落下させる」という特徴がある。

(4) ドロップハンマー〈モンケン〉
鋼製ハンマーの自然落下により打ち込むもので、自重が杭質量以上、かつ、杭長さ 1m当たり質量の10倍以上のものを使用する。落下高さは原則として、2m以下とし、杭頭の破損を防ぐ。

(d) アースオーガー
打込み工法に併用するアースオーガーは、プレボーリング工法と同様に地層に合わせた十分な性能をもち、適正な掘削速度で行わなければならない。

(e) 杭の心出し
杭の心出しは、堅固に設置した遣方から行い、小さい木杭等で、杭心を表示しておく。また、杭心合わせは円板を定規に、心を合わせて周囲に石灰で線を引くなどの方法により行い、杭ずれを防ぐ。

(f) 運搬及び取扱い
(1) 運搬及び取扱いに当たっては、杭に損傷を与えないように注意し、有害なひび割れや傷が生じた杭を使用してはならない。

(2) 運搬に際しては、適切な位置にまくら材を敷き運搬中に荷崩れしないようロープ、くさび等を使用して強固に留める。

(3) 杭の吊上げ点は、JIS A 7201(遠心カコンクリートくいの施工標準)による。また、吊上げ点の位置は、工場あるいは現場で印をつけておくことが望ましい。

(4) 杭の仮置きは地盤を水平に均し、杭の支持位置にまくら材を置き1段に並べることが望ましい。やむを得ず2段以上に積む場合には有害な応力が生じないよう、また、荷崩れしないよう適切な処置をとる。

(g) 建込み
(1) 地中障害物等が予想される場合は、杭施工に先立ち試掘等を行い必要に応じて撤去する。

(2) 杭の建込みは、杭心に正しく設置し、杭打ち機の鉛直器又は、直角二方向からトランシット、下げ振り等を用いて観測し、杭が正しく鉛直を保つようにする。

なお、先端が閉塞している杭で中に水が入っている場合は、ウォーターハンマー現象により縦割れを生じるおそれがあるので水を抜いてから建込む。

(h) 打込み
(1) 杭、キャップ、ハンマーの各軸がずれると偏打の原因となるので、クッションの交換等、十分な調整を行い、各軸を合わせてから打撃を開始しなければならない。

(2) 1群の杭の打込みは、なるべく群の中心から外側へ向かって打ち進める。逆にすると地盤が締まってしまい、中心部分で打込みが困難になる。片押しも同じような理由で避けるのがよい。

(3) 1本の杭の打込みは、なるべく中断しないで連続して行う。一時中止すると打込みが困難になることがある。

(4) ディーゼルパイルハンマーで最初から連続打撃すると、杭の傾斜や曲がりが生じやすいため、打初めは数回空打ちして、杭の貫入方向を確認するのがよい。

(5) 油圧パイルハンマーはラムの質量が比較的大きいので、杭の鉛直性が不安定な初期段階にラム落下高が大きいと、1打撃当たりの貫入量が大きくなり、杭が傾斜することがあるので、落下高さを10~20cm程度にするのがよい。

なお、ラムの最大落下高さは、杭の種類等に応じて決定する必要がある。

(6) ドロップハンマーで打込む場合には、杭が振れやすいため、杭の傾斜や座屈等が起こるおそれがあるので、初期貫入時に特に慎重な施工をしなければならない。

(7) 打込み中は、随時杭軸の変位、傾斜及び貫入状況を観測し、傾斜、変位については打込み初期に修正する。杭頭が破壊した場合は設計担当者と打ち合わせ、増杭等の処置が必要になる。

(8) 杭に傾斜が生じると貫入量が少なくなる。特に、砂質土の場合は影響が大きく、鉛直を保っていないために打込み困難となる場合がある。また、大きく貫入するはずのない箇所で急激に貫入量が増すなどの異常貫入は、杭の途中破壊、座屈等による場合がある。

(9) 杭頭のクッション材が損耗すると、クッション効果がなくなり杭頭が破壊するので、杭頭キャップのクッション材の損耗には注意する。

(10) 杭を作業地盤面以下に打込む場合には、図4.3.18のようなやっとこが用いられる。やっとこをかける長さは4m程度を限度とし、長いものは避けるようにする。

(11) 杭先端が開放の場合は、中空部に土が入り空気が圧縮されたり、また、水が入りウォーターハンマー現象等で杭が破裂する場合があるので、杭内の土及び水の上昇に対応して十分な空気抜き孔を設けたキャップを使用する。

(12) 打込み中に杭が浮き上がったり、横移動する場合には、杭先端に穴をあけたり、オーガー併用等の対策をする必要がある。

(13) 軟弱地盤に打込む場合、中間の比較的硬い地層を打ち抜く場合や長尺杭を施工する場合には、打撃力を調整(ハンマー落下高さを小さくすることや特殊キャップの使用等)して打撃を行い、杭に生じる引張力によるひび割れを生じさせないようにするか、プレストレスの大きい杭を使うなどの検討をする必要がある。


図4.3.18 やっとこ

(i) 打止め
打込みは、原則として、指定された深さまで行う。指定された深さに達しても所定の貫入量以下にならない場合又は指定された深さに達する前に所定の貫入量以下になった場合は、設計担当者と打ち合わせて、杭の長さを変更する必要がないか検討する。

また、杭に過剰な打撃を与えないための目安は、杭の長さ・形状や地盤の状況等により一義的には決められないが、JIS A 7201には、杭1本に対する打撃制限回数の目安が示されている(表4.3.6参照)。

表4.3.6 総打撃回数の目安(JIS A 7201 : 2009)

(j) 施工精度
打込み完了後の杭頭の水平方向のずれの精度は特記によるとされている。ずれが所定の値を超えた場合の処理については設計担当者と打ち合わせる。

施工精度の目安値としては、(-社)日本建築学会「JASS4 杭・地業および基礎工事」では、水平方向のずれはD/4 (Dは杭径)、かつ、100mm以下、鉛直精度は 1/100以内とすることが望ましいとされている。

杭頭の水平方向のずれの発生は、施工時における杭位置合わせの不良による場合が主と考えられるが、その他に杭心位置を表示した杭の設置違い、軟弱な施工地盤において機械移動に伴う表示杭の移動、障害物(地上、地中)の存在及び不陸な施工地盤面での工事環境等の要因も含んでいるので、杭工事の事前整備が重要となる。

4.3.4 セメントミルク工法

(a) セメントミルク工法の概要は.4.3.1(d)に示すとおりである。
この工法は国土交通省住宅局建築指導課監修「埋込み杭施工指針・同解説」もあり確立された一般的な施工法であるが、杭の耐力や精度等は施工する者の経験と技術力によるところが大きいため、専門施工業者に保有機械や施工実績等を提出させ、工事に相応した技量を有していることを確認しなければならない。

また、信頼のおける杭を施工するために、施工管理技術者として、技術士、建築士、土木施工管理技士、建築施工管理技士等、又は(-社)コンクリートパイル建設技術協会の「既製杭施工管理技士」の資格を有する者等を置くことが望ましい。

(b) 試験杭
(1) 埋込み工法における試験杭の目的は、施工機械や各種の安定液等の適否、土質状態、地下水位及び被圧水等の有無、施工時間、支持地盤の位置及び種類の確認であるが、更に、掘削試験における掘削深さ、高止まり量やセメントミルク拡等の管理基準を定めることでもある。特に打止めの深さの確認は打込み工法のような動的支持力による確認を行うことができないため、杭先端位置が設計上の支持層地盤に到達しているかを立会い確認する必要がある。

(2) 一般的な試験方法は、原則として、設計図書等で特記された位置に行い、特記がされてない場合は、地盤構成が明らかなボーリング調査実施地点に近接した杭を数本施工し、掘削機の電流計の値や掘削能率等の施工データ及びオーガースクリューに付着している土砂と土質調査資料又は設計図書との照合で、地盤構成との関係を求める。次に、10~30mm間隔で先行杭を施工し、施工データを参考に支持層を確認し、敷地全体の支持層深さを明らかにする。電流計の自動計測の例を図4.3.19に示す。

なお、電流計による値とN値の関係は定量的な関係がない。例えば、電流値の 200 AmpがN =45に相当するとの関係はなく、またその調査方法の違いからも無理があるため、現時点では地層構成の硬さの変化の傾向を調べるだけの定性的な参考値であることに注意されたい。

(3) 調査項目は、次の事項を主とし、表4.3.7の管理項目について行う。

表4.3.7 管理項目 (埋込み杭施工指針より)

(i) 掘削液、根固め液、杭周固定液等

(ii) 杭建込み
① 杭の鉛直性
② 圧入の状況
③ 高止まり量
④ 杭周固定液の溢液の確認

(iii) 掘削
① 作業地盤
② 掘削土の確認
③ 掘削所要時間
④ 孔内液面の高さ

(iv) 注入
吐出量、吐出圧、吐出時間、注人量

(4) 支持層の確認に際しては、電流計指示値や掘進速度で把握するとともに、ときどきオーガーを静かに引き上げ、羽根に付いている土を観察する。

なお、あらかじめ支持地盤の深さを示す 0.5mごとの等深線図を作成しておくとよい。


図4.3.19 自動計測記録の例

(c) セメントミルク工法による施工
(1) 掘削機
(i) アースオーガーは連続スパイラル製の中空軸のものを用いるが、性能や寸法等が各メーカーにより異なるので、十分検討して適切なものを選ぶ。スクリュー長さは所定掘削深さ+3m程度とし、曲がりのあるものは使用しない。

(ii) オーガーヘッド(オーガービット)は施工精度、施工能率等に与える影響が大きいので掘削地盤に応じて適切な形状のもの使い分ける(図4.3.20参照)。ヘッド径(ビット径)は、「標仕」4.3.4 (f)で杭径+100mm程度とされている。


図4.3.20 オーガーヘッド

(iii) 支持地盤の確認には、アースオーガーの駆動用電動機の電流値の変化が目安となる。このため「標仕」4.3.4(f)では電流値を自動記録できるものとしている。
なお、油圧式オーガーを用いた場合の支持地盤の確認については、設計担当者と打ち合わせる必要がある。

(2) 掘削
(i) 掘削は、地盤に適した速度で掘り進めることが重要である(表4.3.8参照)。粘着力の大きな地盤や硬い地盤では無理な負荷をかけるとアースオーガーが曲がったり破損したりするため十分に時間をかけて掘削排土する。

表4.3.8 掘削速度

(ii) オーガーの引上げ速度は、根固め液等の注入量に合わせて行う。
注入量に比べて引上げ速度が速いと孔内に負圧が生じ、孔壁崩壊の原因となる。
また、逆の場合には孔内圧が上がり過ぎて、逸水を生じて孔壁崩壊の原因となる。

(iii) 掘削中、オーガーに逆回転を加えるとオーガーに付着した土砂が落下するので、「標仕」4.3.4(f)では、逆回転を行ってはならないと定めている。

なお、引上げ時にも正回転とする。

(iv) 掘削深度が支持地盤に近づいたら掘削速度を一定に保ち、アースオーガーの駆動用電動機の電流値の変化を読みとって支持地盤への到達を確認する。

(v) 支持層の掘削深さや杭の支持地盤への根入れ深さは、設計支持力とも関連するため特記によるが、一般的には支持層の掘削深さを1.5m程度とし、杭を支持層中に1.0m以上根入れする。また、高止まりは0.5m以下とする(図4.3.21参照)。

(vi) 掘削は、養生期間中の杭に悪影響を与えないよう十分に注意して行う。杭の間隔は杭径の2.0倍程度とすることが多いが、セメントミルク工法の場合には掘削径を杭径+100mmとしており、透水性の高い砂質地盤等で孔壁が崩れやすい場合には、掘削によって隣接杭周囲の地盤を緩めるなどのおそれがあるので十分注意する。


図4.3.21 掘削深さと支持層との関係

(3) 各種液の管理
(i) 掘削液
① 掘削液(安定液)の機能は、孔壁の崩落を防ぐよう安定を保ち、各種の液の逸水を防ぎ、湧水やボイリングを抑えることなどである。管理については、4.5.4 (c)(3)を参照する。

② ベントナイトは粉末度200メッシュ以上、膨潤度 3g/g以上のものを使用するとよい。調合及び粘性については表4.3.9及び4.5.4(c)(3)を参照する。

表4.3 9 掘削液の調合例

(ii) 根固め液
① 根固め液の水セメント比は、施工の実績等から「標仕」では70%(質量百分率)以下としている。また、「標仕」4.3.4(f)では圧縮強度は3個の供試体の平均値で 20N/mm2以上と定めているが、これは試験結果にばらつきが大きいこと、セメントペーストの指定強度の算出が困難であること、杭の設計耐力を確保するために必要な強度として20N/mm2程度で十分であると考えられることなどから決められたものである。

② 根固め液は必ず杭の先端位置から注入しはじめ、安定液を押し上げるようにする。オーガーヘッドは常に根固め液の上面以下に保つ。また、オーガーを上下させてはならない。

なお、ポンプからの圧送時点とオーガーヘッド先端からの注入時点とで時間的ずれがあるので、試験掘削のときに十分検討しておく。

(iii) 杭周固定液
① 杭周固定液は、杭長が長く、かつ、周辺地盤が軟弱で、強度の高い根固め液を杭頭まで充填する必要がない場合に使用するほか、杭の水平抵抗と摩擦力を確保するために使用するものであり、硬化後の圧縮強度のみでなく、既製杭との付着強度が周辺地盤より高いことが必要である。

② 調合は、現場の土質条件に応じた試験練りを行ってから決定するのが望ましい。杭周固定液のブリーディングの発生を抑制するためにベントナイトが使用されるが、その調合例を表4.3.10に示す。

表4.3.10 杭周固定液の調合例

(iv) 管理面から見れば使用液の種類は少ない方がよく、なるべく2種類の液で行うことが望ましい。

なお、崩壊しやすい地盤や逸水のおそれのある地盤では、安定液と杭周固定液とを兼用することは好ましくない。

(v) 根切り後、杭と地盤の間に空隙がある場合は、杭の水平抵抗を確保するために、増粘剤を添加した杭周固定液やモルタルを使用して空隙を埋める。

(vi) 供試体の製作には 、(公社)土木学会「コンクリート標準示方書(規準編)」のプレパックドコンクリートの注入モルタルのブリーデイング率及び膨張率試験方法によるポリエチレン袋を使用することになっているが、地方等で入手が困難な場合には、(-社)コンクリートパイル建設技術協会のポリエチレン袋を使用すればよい。

(4) 杭の建込み
(i) 掘削孔壁が時間経過とともに崩壊することがあるので、速やかに杭を建込む。
(ii) 杭の建込み直前に、必要に応じて下げ振り等により検尺を行い、高止まりしないかどうかを確認しておく。

(iii) 掘削孔に杭を挿入する際、杭の先端で孔壁を削ると高止まりの原因となるので鉛直性に注意して建込む。また、挿入速度が速すぎると水流によって孔壁が崩落するので、静かに挿入する。

(iv) 杭が所定の支持地盤に逹したのち、杭先端を根固め液中に投入させるため 2t 程度のドロップハンマーで軽打する(落下高さは0.5m程度とする。)。

軽打できない場合は、杭打ちゃぐらの重量を反力として圧入する。杭頭を設計高さにそろえるために、杭を中吊りにしたり圧入量を調整してはならない。

(v) 施工後、根固め液や杭周固定液が十分硬化する以前に杭が動くことのないよう適切な保持治具を用いて養生する。

(vi) 継杭を行う場合は、下杭の杭頭を地上約1m程度に保持しておき、上杭を建込み、継手の接続を行う。図4.3.22に保持装置の一例を示す。


図4.3.22 保持装置の一例

(5) 杭の運搬、取扱い、施工精度は4.3.3による。

(6) 廃液処理、排土処理は場所打ちコンクリート杭に準ずる。

4.3.5 特定埋込杭工法

(a) 一般事項
特定埋込杭工法は、平成13年国土交通省告示第1113号第6の規定に基づいて許容支持力が定められた埋込み工法のことをいい、下記の種類がある。

(i) 平成14年1月11日付けの国土交通省住宅局建築指導課の事務連絡に基づく旧38条認定工法

(ii) 建築基準法施行規則第1条の3第1項の規定に基づく認定工法

(iii) 指定性能評価機関による技術評定を取得している杭で、地盤の条件等が評定の適用範囲と見なせる場合

(iv) その他、上記以外で許容支持力が求められた工法

(b) 試験杭
(1) 特定埋込杭工法の試験杭は、本工事の初期あるいは本工事に先立ち、設計・施工計画の妥当性を確認するために実施するもので、使用機械や各種の使用液の適否、施工能率、特記で定められた支持層の位置及び種類の確認が主な目的である。

(2) 特定埋込杭工法の試験杭の施工については、各工法に定められた施工条件に従って行う。

(c) 施 工
特定埋込杭工法の杭は各施工法によって機械機種や施工方法も異なるので各工法に定められた施工条件に従って行うものとする。一般的な事項を次に示す。

(i) 掘削法
プレボーリング工法に用いるアースオーガーは、スパイラルオーガー、特殊ロッド、両者の併用等があり、中掘り工法では、連続スパイラルオーガーが用いられる。

駆動装置は、掘削径、長さ及び地盤条件により、一般に 40~250kWが使用される。

オーガーヘッドについては、地層に合わせた形状や工法仕様によりいろいろな構造が選定される。

支持層の確認には、駆動用電動機の電流値を自動記録し、目安とすることが行われてきたが、これは掘進速度や駆動機容量に左右され、明確にできないことも多い。したがって、消費電流値と時間を掛けた積分電流値で目安とする技術が進められ、従米より正確であるとして試験杭において用いられ普及しつつある。

(ii) プレボーリング工法による施工
① プレボーリング工法による掘削径は、工法により異なるが、杭径よりも +30~100mm程度が多く、できるだけ過大とならないことが望ましい。

② 掘削は周囲の地盤をできるだけ乱さないように行う。

③ 孔壁崩壊のおそれのある場合又はボイリングのおそれがある場合は、掘削液を使用し、適切な処置をして施工する。崩壊のおそれがない場合は、掘削液を使わず施工してもよい。

④ 継手接続作業中は、杭の孔内落下を防止する処置をしなければならない。

⑤ その他については、施工計画書、施工仕様書等に従って適切に施工する。

(iii) 中掘り工法による施工
① 中掘り工法に使用するスパイラルオーガー径は、杭の内径 -(30~60)mmが一般的である。

② 掘削中は過度に先掘り及び拡大掘りをしてはならない。

③ 中空部の排土を促進するため、オーガー先端からエアーを噴出させ、効果的に排土することが多い。一般に常用圧力 0.7 ~ 1.0MPaのものが使われている。

④ 最終打撃によって支持力を得ようとする工法の場合、過度の先掘りをしてはならない。中掘り設置後の打込み長さは地盤状態に影響されるため試験杭において定められるが一般には杭径の 3~5倍程度を目安としている。

(iv) 根固め
① 埋込み工法で先端部を根固めする場合は、施工計画書、施工要領書等による方法で先端部を処理して支持力の確保を図らねばならない。

② 根固め作業に使用するミキシングプラント、グラウトポンプは、十分な性能を有すること。材料の計量及び作液については、自動的に行うとともに、その計量記録をプリントアウトするプラントが製造され、一部使用されつつある。最近では、根固め部の品質確認のために、根固め部から試科を採取して固化強度等を調査する管理手法が、研究・開発されている。

(v) 杭の運搬及び取扱い、施工精度等については.4.3.3 による。

また、杭頭中空部に基礎コンクリートを打ち込む方式で、短い杭の場合、根固め液や杭周固定液が砂や礫で増量し、杭頭まで上昇して固化することがある。

この場合、溶液の使用量について試験打ちで検討する。

(vi) 廃液処理、排土処理は、場所打ちコンクリート杭に準ずる。

(vii) 施工管理者は、当該工法の施工管理講習会を受講した者や (-社)コンクリートパイル建設技術協会が定める既製杭施工管理技士の資格を有する者が望ましい。
また、専門工事業者の技術レベルを確認する場合は、当該工法の施工実績等を提出させる。

4.3.6 継 手

(a) 現場継手方法

(1) 杭の現場継手は、溶接による工法と接続金具による無溶接継手工法とが採用されており、「標仕」では杭の継手の工法の適用は特記とされている。

(2) 技能者
(i) 溶接継手は「標仕4.3.6(c)」に定めた資格を有する者

(ii) 無溶接継手は、接続方法の講習会を修了し、接続方法を理解したと認められる者

(3) 溶接棒は、JIS Z 3211(軟鋼、高張力鋼及び低温用鋼用被覆アーク溶接棒)の規格によるものとし、自動溶接又は半自動溶接を用いるときには、これに適した溶接ワイヤを用いる。

JIS A 7201(遠心力コンクリートくいの施工標準)では、表4.3.11のように定められている。

表4.3.11 溶接棒、ワイヤの種類及び径(JIS A 7201 : 2009)

(4) 継手部の開先の目違い量は2mm以下、許容できるルート間隔の最大値は 4mm以下とする(図4.3.23参照)。


図4.3.23 杭の継手部許容値(JIS A 7201 : 2009)

(b) 溶接施工
(1) 溶接の方式には端板式と円筒式とがあるが、現在はほとんどの杭が端板式(図4.3.24参照)である。なお、端板式の溶接部は部分浴込み溶接である。


図4.3.24 端板式溶接継手

(2) 上下の杭軸が一直線になるように上杭は頭部を支持して仮付け溶接を行う。

必要がある場合は仮締め治具を用いて支持する。仮付けは、点付け程度のものでなく、必ず 40mm以上の長さとし本溶接と同等の完全なものとする。

(3) 溶接部は接合前にワイヤブラシ等を用いて泥土、ごみ、錆、油脂、水分等、溶接に有害なものを除去する(7.6.6参照)。

(4) 降雨時、降雪時、強風時(10m/秒程度以上)には溶接を行ってはならない。
また、原則として気温が 0℃以下の場合は溶接を行ってはならない。ただし、気温が0℃から-15℃の場合は、溶接部から100mm以内の部分を36℃以上に予熱して行う場合はこの限りではない。

(5) 多層溶接を行う時は、下層のスラグ及び有害物の除去を十分に行ったのち、次層を溶接する(7.6.7 (i)参照)。

(6) 盛上げの不足があってはならないが、余盛りは3mm以下とし、不要な余盛りは行わない。

(7) 半自動アーク溶接による溶接条件の参考例を表4.3.12に示す。

(c) 溶接部の確認
溶接部は JIS A 7201(遠心力コンクリートくいの施工標準)の8.2[溶接継手による場合]のg)目視による確認で、全数検査を行う。

(d) 継手部に接続金具を用いた方式(無溶接維手)
継手部に接続金具を用いた方式は、数種類が建築基準法に基づく指定性能評価機関において性能を評価されている。施工は、各工法に定められた施工条件によるものとする。図4.3.25及び26にその代表例を示す。

表4.3.12 杭の半自動アーク溶接条件例(JIS A 7201 : 2009)


図4.3.25 無溶接継手例1


図4.3.26 無溶接継手例2

4.3.7 杭頭の処理

(a) 最近の既製コンクリート杭は、特定埋込杭工法による施工が多く、この工法は掘削深度を管理して杭の打設を行うために、杭頭の高さもそろえて施工されるので、切断することが少ない。したがって、その他の工法等で杭頭を切断する必要がある場合には、設計担当者が特記することとされている。

(b) 所定の高さより低い場合は、設計担当者と打ち合わせる。

(c) 杭頭を切断する方法には、次のように油圧ポンプによる外圧方式と回転モーターによるダイヤモンドカッタ一方式等がある。

(1) 外圧方式
所定の切断面より100mm上がり程度の位置に鋼製バンドを締付け、杭頭切断機用いて切断したのち、バンドを取り外し、所定の高さまで、はつりのみを用い、手はつりを行う。この場合、押圧方向は軸筋位置を避け、手はつりでは軸筋をたたかないようにし、縦ひび割れが生じないように注意して行う。プレストレス量の大きい杭は特に注意が必要である(図4.3.27及び28参照)。

この方法は広く使われており、切断面がはつり面のため基礎との付着が期待でき、軸筋を残す場合も有利な方法である。

(2) ダイヤモンドカッタ一方式
所定の切断面にブレードが位置するように切断機をセットし、杭の周りをガイドリングを介して一周し、切断又は軸筋サークルより内側までの切込みを入れてタガネ割りする方法である(図4.3.27参照)。

この方法は、切断面が平滑で作業の衝撃も小さく軸筋も同時に切断してしまう特徴がある。


図4.3.27 杭切断機の例


図4.3.28 手はつりの例

(d) プレストレストコンクリート杭の頭部を切断した場合は、切断面から350mm程度まではプレストレスが減少しているので、設計図書により補強を行う。

(e) 基礎コンクリート打込み時に、コンクリートが杭の中空部に落下しないように図4.3.29のように杭頭をふさぐ処置をしておく。


図4.3.29 コンクリート落下防止の例

4.3.8 施工記録

(a) 施工記録の目的及び全般的な報告書の記載事項については,4.2.5 (1)及び(2)を参照する。

(b) 打込み工法の施工記録
(1) 記録報告する事項等は、次のとおりであり、分かりやすく整理しておく。
(i) 一般事項
① 杭位置図(位置のずれを含む)
② 杭種類材質、形状寸法製造工場名
③ 打込み機の名称と性能諸元

(ii) 打込みに関する事項
① 打撃回数    [ 回/m ]
② 全打撃回数   [ 回 ]
③ 打込み深さ   [ m ]
④ 打込み所要時間 [ 時分 ]
⑤ ハンマー落下高さ[ m ]
⑥ 最終貫入量   [ mm ]
⑦ リバウンド量  [ mm ]
⑧ 推定支持力

(iii) その他
①溶接施工記録
②杭頭切断記緑

(2) 試験杭の施工記録試及び杭頭切断記録書式は、JIS A 7201(遠心力コンクリートくいの施工標準)に示す。

(c) 特定埋込杭工法の施工記緑
特定埋込杭工法の報告書については、各工法に定められた書式に従って作成する。

(d) セメントミルク工法の施工記録
(1) 報告する事項等は、次による。
(i) 一般事項
① 杭位置図(位置のずれを含む)
② 杭種類、材質、形状、寸j法、製造工場名
③ 打込み機の名称と性能諸元
④ 各掘削・固定液等の諸元

(ii) 掘削に関する事項
① 掘削液の記録(標準調合、比重、使用量)
② 根固め液(強度、使用量)
③ 杭周固定液(強度、使用量)
④ 掘削土の確認事項
⑤ 掘削所要時間
⑥ 等深線図と掘削深さの関係
⑦ アースオーガー駆動用電動機の電流値
⑧ 注入材の吐出量、吐出圧、注入量

(iii) その他
(b)に準ずる

(2) 「埋込み杭施工指針・同解説」に定められている杭の施工記録の例を図4.3.30に示す。

図4.3.30 杭の施工記録の形式及び記入例(埋込み杭施工指針より)

4章 地業工事 4節 鋼杭地業

第4章 地業工事 


4節 鋼杭地業

4.4.1 適用範囲

(a) この節は、鋼管又はH形鋼を用いる鋼杭地業に適用する。

(b) 鋼杭の特徴としては次のような事項が挙げられる。
(1) 工場製作品であるため、安定した材料品質が得られる。
(2) 曲げに強く、水平力を受ける杭に適する。
(3) 応力に応じて材質や肉厚を変えた合理的な設計ができる。
(4) 支持地盤の不陸に対応しやすい。
(5) コンクリート杭と比較して質量が軽く、取扱いが簡単である。
(6) 腐食に対する対策が必要である。
(7) 大口径で薄肉の鋼管は、局部座屈を生じることがある。
(8) 先端開放形の打込杭では、支持地盤への根入れが十分でないと支持力が低下する場合がある

(c) 施工計画書の記載事項は.4.3.1(c)を参考にするとよい。

(d) 杭施工法の概要
(1) 施工の一般事項
鋼管杭の施工に当たっては、地盤状況、現場状況、設計支持力等を考慮して、杭を予定深度まで正しく、かつ、安全に設置できる工法及び施工機械とする。

(2) 施工法の分類
杭の施工法の分類を図4.4.1に示す。


図4.4.1 鋼杭の施工法の分類

現在は、騒音・振動の問題により、市街地での打込み工法の採用実績は非常に少なく、埋込み工法が主流である

なお、特定埋込杭工法とは、4.3.5(a)に示す工法である。

① 打撃による打込み工法(図4.3.5及び6参照)
一般に杭径600mm以下の施工に用いられる。地盤を緩めることがなく支持力は期待できるが、ハンマーを使用するため騒音、振動が大きく市街地では問題となる場合が多い。これらの対策としては、油圧パイルハンマーの使用、プレボーリング工法、中掘り工法との併用等が挙げられる。

プレボーリング併用打撃工法は、アースオーガーで一定深度まで掘削し、杭を建て込んだのち、打撃により所定深度まで施工する方法である。中掘り打撃工法は、中掘り工法により一定深度まで杭を埋設したのち、打撃により所定深度まで施工する方法である。

開放形の鋼管杭を使用した場合、硬い中間層でも比較的容易に打ち抜くことができる。また,施工深度としては、80m程度まで可能である。

なお、杭径が600mmを超える開放形の鋼管杭を施工する場合は、先端閉塞効果の問題があるため、別途、載荷試験等で支持力を確認する必要がある。

② 振動による打込み工法
バイブロハンマーにより杭に上下方向の強制振動を加え、杭周面摩擦力及び先端抵抗を動的な摩擦力と抵抗力に減少させて貫入させる工法である。中間層があり、打抜きが困難と予想される場合には、ウォータージェット等を併用する場合がある。

一般に杭径600mm以下の施工に用いられるが、バイブロハンマーを使用するため、市街地では問題となる場合がある。

杭に強制振動を加えるため、杭頭部の補強又は適切な管厚の設定が必要である。施工実績が少ないため、載荷試験等で支持力を確認するなど、工法の適用に当たっては注意を要する。

③ プレボーリングによる埋込み工法(図4.3.7参照)
アースオーガーによってあらかじめ掘削された縦孔に鋼管杭を建て込み、軽打、圧入により支持地盤に定着させる工法で、一般にセメントミルク工法と称される。掘削中は孔壁の崩壊防止を兼ねた杭周固定液(貧配合のセメントミルク)をオーガー先端から噴出し、所定深度に達したのち、根固め液に切り替え所定量を注入する。その後、オーガーを引き上げ、杭を建込み、軽打又は圧入により支持地盤に定着させる。

なお、オーガーを引き上げる際は、必要に応じて杭周固定液を充填するなどの注意が必要である。

この施工法は、国土交通省住宅局建築指導課監修「埋込み杭施工指針・同解説」に準じて施工するものであり、鋼管杭に適用する場合は、先端閉塞杭を使用する。通常用いられる杭径は 300〜600mm、施工深度は30m程度以下である。

④ プレボーリングによる球根拡大埋込み工法(特定埋込杭工法 図4.4.2参照)
アースオーガーによってあらかじめ掘削された縦孔に鋼管杭を建て込み、回転埋設により支持地盤に定着させる工法である。掘削中は、孔壁の崩壊防止を兼ねた掘削液又は杭周固定液(貧配合のセメントミルク液)をオーガー先端から噴出しながら原地盤と混合かくはん、所定深度に達したのちに根固め液(富配合のセメントミルク液)に切り替え、拡大球根を築造する。所定量の根固め液を注入後、オーガーを引き上げ、杭を建て込む。支持地盤への杭の定着は、施工機械の自重を利用して回転埋設される。杭周固定液を使用する場合としない場合がある。

支持地盤に築造された拡大根固め部と杭先端部の一体化を図るため、杭先端部には特殊な金物が取り付けられている。根固め部を拡大することで大きな支持力を得ようとするものである。

なお、この工法は建築基誰法に基づく特定埋込杭工法となっており、施工に当たっては工法で定められた条件に従って行うものとする。


図4.4.2 プレポーリングによる球根拡大埋込み工法

⑤ 中掘りによる埋込み工法(特定埋込杭工法 図4.3.8参照)
杭中空部にオーガーを挿入、地盤を掘削しながら土砂を排出し、杭を設置する工法である。支持地盤の土砂とセメントミルク液を混合かくはんすることにより、支持力を得ようとするものである。

杭の設置や排土を促進するため、圧縮空気又は水をオーガー先端から噴出させながら掘削する場合が多く、施工機械の自重を利用した圧入装置やドロップハンマーによる軽打等を併用する場合もある。

掘削機には、通常アースオーガーが使用される。また、杭の設置を容易にする目的と補強の目的で,杭先端には補強バンド又はその他付属品が取り付けられる。
支持地盤の土砂とセメントミルク液を混合かくはんする方法には、高圧ジェットによる方法、低圧の機械かくはんによる方法等がある。いずれの工法も建築基準法に基づく特定工法となっており、施工に当たっては、工法で定められた条件に従って行うものとする。

⑥ 中掘りによる球根拡大埋込み工法(特定埋込杭工法 図4.4.3参照)
杭中空部にオーガーを挿入し、地盤を掘削しながら杭を圧入する工法である。支持地盤において先端部を拡大掘削し、支持地盤の土砂とセメントミルク液を混合かくはんすることにより、大きな支持力を得ようとするものである。杭周固定液を使用する場合としない場合がある。

掘削機には、通常アースオーガーが使用されるが、支持地盤に築造された拡大根固め部と杭外周部の付着を増加させる目的で、杭先端部にはスパイラル状の突起、補強バンド又はその他付属品が取り付けられる。

支持地盤の土砂とセメントミルク液の混合かくはんは、低圧による機械かくはんによる方法が用いられる。杭は施工機械の自重を利用した圧入装置やドロップハンマーによる軽打等を併用し埋設される。杭を回転させながら圧入する方法もある。

なお、この工法は建築基準法に基づく特定埋込杭工法となっており、施工に当たっては、工法で定められた条件に従って行うものとする。


図4.4.3 中堀りによる球根拡大埋込み工法

⑦ 地盤改良と併用した埋込み工法(特定埋込杭工法 図4.4.4参照)
杭中空部にオーガーを挿入し、オーガー先端からセメントミルク液を噴出しながら原地盤と混合かくはんすることで、ソイルセメント柱を造成しつつ杭を設置する工法である。支持地盤においては、高濃度のセメントミルク液とその土砂を混合かかくはんし支持力を発現させるもので、ソイルセメント柱との付着を高めるために外面に突起(リブ)の付いた鋼管杭が使用される。地盤改良と併用することにより、大きな支持力を得ようとする工法である。

掘削機にはアースオーガーが使用されるが、オーガーヘッドは地盤の掘削と混合かくはんの機能を兼用した特殊なものが使用される。また、杭の設置を 容易にするために、杭を回転させながら施工機械の自重を利用して圧入する。

なお、この工法は建築基準法に基づく特定埋込杭工法となっており、施工に当たっては、工法で定められた条件に従って行うものとする。


図4.4.4 地盤改良と併用した埋込み工法

⑧ 回転圧入による埋込み工法(特定埋込杭工法 図4.4.6参照)
杭先端にスパイラル状の鉄筋又はつばさ状、スクリュー状の掘削翼を取り付けた鋼管杭(図4.4.5参照)を回転圧入により所定深度まで設置する工法である。


図4.4.5 回転圧入による埋込み工法の杭先端部の例

施工に当たっては三点支持式の杭打ち機、全回転型の圧入装置等が使用される。支持地盤にねじり込むことにより、支持力を発現させるものであり、大きな支持力と無排土を特徴としている。

地盤に鋼管杭をねじり込むため、管厚の設定には注意を要するほか、中間層がある場合の打抜きの可否等、事前検討が必要である。

なお、この工法は建築基準法に基づく特定埋込杭工法となっており,施工に当たっては,工法で定められた条件に従って行うものとする。


図4.4.6 回転圧入による埋込み工法

(e) 支持力の狩定
杭の許容支持力は、4.3.1(e)による。

4.4.2 材 料

(a) 鋼 杭
鋼杭としては、JIS A 5525(鋼管ぐい)とJIS A 5526 (H形鋼ぐい)が規定されている。これらは一般構造用炭素鋼管や一般構造用圧延鋼材で作られた H形鋼と材質的には同等であるが、形状・寸法許容差等が杭専用のものとなっている。また、鋼管杭においてはその使用目的から大口径・厚肉の製品がラインナップされている。

(b) 許容応力度
鋼材の許容応力度については、建築基準法施行令第90条では基準強度(F値)に応じて定めることとしている。鋼杭に使用されるSKK400・SKK490及び SHK400・SHK490の設計基準強度は、「鋼材等及び溶接部の許容応力度並びに材料強度の基準強度を定める件」(平成12年12月26日 建設省告示第2464号)に定められている。鋼杭の許容応力度を表4.4.1に示す。

表4.4.1 鋼杭の許容応力度

また、鋼杭においては、許容応力度を求めるに際し、腐食や局部座屈等を考慮しなければならない。

(c) JIS A 5525(鋼管ぐい)の抜粋を次に示す。

JIS A 5525 : 2009

1 適用範囲
この規格は、土木・建築などの構造物の基礎に使用する溶接鋼管ぐい(以下、くいという。)の単管について規定する。この規格が適用される寸法範囲は、通常、外径318.5mm〜2000mmとする。

なお、本体に規定する項目のほかに、注文者があらかじめ製造業者との協定によって指定することができる突起付き単管の品質規定を附属書Aに、単管に取り付ける附属品の代表的な形状及び寸法を附属書Bに、単管に施す加上及び塗装・被覆の代表的な例を附属書Cに示す。

注記1
地すべり抑止用の継目無鋼管及び遠心力鋳鋼管には、それぞれ JIS G 3444 及びJIS G 5201がある。

注記2
くいの構成及び各地の呼び名を、図1に示す。
単管とは、素管のまま、又は素管を工場で円周溶接した継ぎ管をいい、くいは、単管又は単管の組合せをいう。現場で連結する単管は、上側を上ぐい、中側を中ぐい、下側を下ぐいという。ただし、中ぐいが2本以上になる場合は、下側から中1ぐい、中2ぐいという。

注記3
工場円周溶接とは、素管と素管とを製造業者が円周溶接によって単管にする場合をいい、現場円周溶接とは、単管と単管とを施工業者が円周溶接によってくいにする場合をいう。

注1) 地すべり抑止用のくいを含む。

図1- くいの構成

3 種類の記号
くいの種類は、2種類としその記号は、表1による。

表1- 種類の記号

4 製造方法
くいの製造方法は、次による。

a) 素管は、アーク溶接によるスパイラルシーム溶接若しくはストレートシーム溶接、又は電気抵抗溶接によって製造する。

なお、工場円周溶接における素管のシーム溶接部は、互いに円周方向の1/8以上ずらさなければならない。

b) 突起付きくいの素管は、圧延方向に平行な連続した突起を設けた鋼帯を、突起が鋼管の内面及び/又は外面になるようにスバイラルシーム溶接によって製造する。

c) 単管は、素管を工場で円周溶接して製造する場合及び素管をそのまま使用する場合がある。

5 化学成分
素管は、11.1によって試験を行い、その沿鋼分析値は、表2による。

表2 – 化学成分

6 機械的性質
素管は、11.2によって試験を行い、その引張強さ、降伏点又は耐力、伸び、溶接部引張強さ及びへん平性は、表3による。へん平性の場合は、試験片にきず又は割れを生じてはならない。ただし、溶接部引張強さは、アーク溶接によって製造した素管に適用し、へん平性は、電気抵抗溶接によって製造した素管に適用する。

表3 – 機械的性質

8 附属品、加工及び塗装・被覆

注文者は、くいに付随する附属品、加工及び塗装・被覆を指定してもよい。その場合の外観、検査、表示などは、受渡当事者間の協定による。また、附属品の代表的な形状及び寸法を、附属書Bに、加工及び塗装・被覆の代表的な例を附属書Cに示す。

9 単管の形状,寸法,質屈及び寸法許容差
9.1 管端の形状 単管の管端形状は、図2による。厚さの異なる素管を継ぐ場合は、通常、図3に示すように、あらかじめ工場で加工する。ただし、補強又は加工について特に要求のある場合は、受渡当事者間の協定によってもよい。

注記
図2において、頭部端面とは、くいの上端部をいい、先端部端面とは、くいの下端部をいう。


図2 – 単管の両端及び現楊円周溶接部の形状


図3 – 厚さの異なる管の円周溶接部の形状

附属害B(参考) 附属品の形状及び寸法の代表例

序 文
この附属書は、注文者の指定によって単管に取り付ける附属品の形状、寸法などの代表例を示すもので、規定の一部ではない。

注 記
附属品とは、くいの施工時に一時的に必要となる仮設部材をいう。

B.1 附属品の材料及び溶接材料
附属品の材料は、機械的性質がJIS G 3101のSS400と同等又はそれ以上とし、附属品取付け用の溶接材料は、附属品の規定引張強さ以上のものを得るため、次のいずれか又は組合せによる。

JIS Z 3211、 JIS Z 3312、JIS Z 3313、JIS Z 3351、JIS Z 3352

なお、素管と附属品との強度が異なる場合には、低強度側の規格値と同等若しくはそれ以上の引張強さをもつ溶接材料を用いる。

B.2 附属品の外観検査及び表示
附属品の外観、検査及び表示は、次による。

a) 外観
附属品の外観は、使用上有害な欠点があってはならない。

b) 検査
附属品の材料及び溶接部は、B.1に適合しなければならない。また、外観は、 目視によって検査し、a)に適合しなければならない。

c) 表示
工場において本体に取付けない附属品には、種類及びサイズが識別できる表示をしなければならない。

B.3 附属品の形状及び寸法の例
B.3.1 補強バンド
B.3.1.1 補強バンドの形状
補強バンドの形状は.図B.1による。


図B.1 – 補強バンドの形状の例

B.3.1.2 取付寸法
取付寸法は、次による。

a) 取付位置 (ℓ1) : 18mm
b) 溶接脚長 (a) : 6mm(溶接は、すみ肉溶接による。)

B.3.1.3 寸法許容差
補強バンドの寸法許容差は、表B.1による。
表B.1 – 補強バンドの寸法許容差

B.3.2 つり金具
つり金具の形状及び寸法は.図B.2による。

図B.2 – つり金具の形状及び寸法の例

B.3.3 裏当てリング及びストッパー
単行の現場円周溶接部の裏当てリング、及び中ぐい又は下ぐいにストッパーを取り付ける場合、その形状及び寸法は特に指定のない限り図B.3による。


図B.3 – 裏当てリング及びストッパーの形状並びに寸法の例
JIS A 5525 : 2009

(d) 鋼管杭にはJISの附属書に記載されている付属品のほかに、表4.4.2に示す付属品が一般的に使われている。材質はSS400と同等又はそれ以上とする。

表4.4.2 付属品の名称

(e) 鋼杭の腐食の要因と防食方法
(1) 腐食の要因には、次のようなものがある。
(i) 土又は水の化学的性質
(ii) 鋼材の自然電位及び付近の電気施設の影響
(iii) 水や空気の流動性
(iv) 地中温度
(v) 細菌

(2) 防食方法には、次のような方法がある。
(i) 杭自体に腐食代を見込む方法
(ii) 塗装による方法
(iii) コンクリートを巻き立てる方法
(iv) 電気防食による方法

4.4.3 打込み工法

(a) 鋼杭の打込み工法には、打撃によるもの、振動によるものなどがあるが、打撃によるもの(打撃工法)が一般的に用いられる。施工は4.3.3によるが、大口径で薄肉の鋼管杭の場合は局部座屈を生じる場合があるため、杭頭部の補強又は t/D ( t:管厚、D:管の外径)を検討する必要がある。また、杭を座屈させず、かつ、効率よく施工するためには、ハンマーの質量も適正なものを選定することも必要である。

打撃工法の打止めは、4.3.3 (i)による。杭に過剰な打撃を与えないための目安は、杭の長さ・形状や地盤状況等により一義的には決められないが、通常の施工においては、繰返し打撃による杭体の疲労破壊が生じた事例はほとんどない。しかし、非常に硬質で厚い中間層を打ち抜く場合や岩盤等の支持地盤に打ち込む場合は、疲労破壊が起こる場合もあるので、別途、検討する必要がある。

(b) H形鋼杭
H形の方向が指定された場合は、その方向を規制するキャップを用いるか、その他適切な方法により.杭の断面形状を指定された方向に合わせなければならない。

(c) 杭先端部の処理
杭先端部の形状としては、補強を行う場合、補強を行わない場合及び先端部にシューを付ける場合等がある。「標仕」4.4.2 (b)では、特記がない場合、鋼管杭は開放形で補強バンドはJISの解説に合わせることとしている。

(d) 杭頭部の処理
一般に打込み時の杭頭部の処理は、適切なハンマーを選定し適切な作業を行えば、杭頭部の補強は特に必要としないが、大口径で薄肉の鋼管杭( t/Dで1%未満)を使用する場合や疲労破壊が懸念される場合等は、管厚を厚くするなどの処置をする。


4.4.4 特定埋込杭工法

(a) プレボーリングによる球根拡大埋込み工法(特定埋込杭工法)

(1) 試験杭
(i) 試験杭は本工事の初期あるいは本工事に先立ち、設計・施工計画の妥当性を確認するために実施するもので、使用機械や施工方法の適否、施工能率、支持地盤の確認が主な目的である。

(ii) 試験杭の施工については、工法で定められた条件に従って行う。

(2) 施工
(i) 施工方法
地盤の掘削及び杭の設置には、アースオーガーを装備した三点支持式杭打ち機が使用される。駆動装置は、杭径、長さ及び地盤条件により異なるが、一般に 90kW〜150kWが使用される。

支持地盤の確認は、施工機械から送られてくる駆動用電動機の消費電流値や貫入速度等の施工情報と貫入深度を基に行う。

(ii) 一般部の掘削及びかくはん
所定深度までの掘削は、掘削水又は杭周固定液にて行う。掘削完了後に杭の埋設に支障がないよう、孔内泥土をかくはんする。

杭周固定液を使用する場合は、掘削ヘッド先端より所定の配合条件で混練されたセメントミルク液を所定量吐出しながら、一定の速度にてアースオーガーを上下反復し、孔内泥土と混合かくはんする。

(iii) 先端部の掘削及び根固め
孔内泥土のかくはん作業が完了したのち、掘削水又は根固め液にて先端部を所定の形状に拡大掘削する。

掘削水を使用して拡大掘削する場合は、拡大掘削完了後に根固め液に切り替え、原位置地盤と混合かくはんし、根固め部を築造する。
根固め液を使用して拡大掘削する場合は、一定の速度にてアースオーガーを上下反復しながら原位置地盤と混合かくはんし、根固め部を築造する。

(iv) 杭の運搬及び取扱い
杭の運搬及び取扱いは、4.3.3 (f)によるが、杭先端部に特殊な金物が取り付けられているため、特に注意を要する。

(v) 施工精度
施工精度は、4.3.3( j )による。

(3) 杭先端部の処理
杭先端部の形状は、工法で定められた条件によるものとする。

(b) 中掘りによる埋込み工法(特定埋込杭工法)

(1)中掘りによる埋込み工法の概要は、4.4.1 (d) に示すとおりである。施工は、4.3.5 による。

(2)杭先端部の処理
杭先端部の形状は、工法で定められた条件により異なるため、特記によるものとする。

(c) 中掘りによる球根拡大埋込み工法(特定埋込杭工法)
(1) 試験杭
(i) 試験杭は本工事の初期あるいは本工事に先立ち、設計・施工計画の妥当性を確認するために実施するもので、使用機械や施工方法の適否、施工能率、支持地盤の確認が主な目的である。

(ii) 試験杭の施工については、工法で定められた条件に従って行う。
(2) 施 工
(i) 施工方法
杭の設置には、地盤の掘削をしながら杭を圧入する装置を装備した三点支持式杭打ち機が使用される。駆動装置は、杭径、長さ及び地盤条件により異なるが、一般に115kW 〜 150kWが使用される。

支持地盤の確認は、施工機械から送られてくる駆動用電動機の消費電流値や貫入速度等の施工情報と貫入深度を基に行う。

(ii) 一般部の掘削
所定深度までの掘削は、一定速度にて行う。杭内の掘削土が圧密され掘進性が低下する場合は、圧縮空気等で掘削土を排出する。また、杭先端より掘削ヘッドを必要以上に先行させる掘削は、杭の領斜や周辺地盤を乱す可能性があるため行ってはならない。

掘削時に杭周固定液を注入する場合は、掘削ヘッド先端より所定の配合条件で混練されたセメントミルク液を所定量吐出する。

(iii) 先端部の掘削及び根固め
所定深度まで掘削したのち、先端部を所定の形状に拡大掘削する。拡大掘削完了後、根固め部用の配合条件にて混練されたセメントミルク液に切り替え、原位置地盤と混合かくはんし、根固め部を築造する。

(iv) 杭の運搬及び取扱い
杭の運搬及び取扱いは、4.3.3(f)によるが、杭先端部にスパイラル状の鋼板や金物が取り付けられているため、特に注意を要する。

(v) 施工精度
施工精度は、4.3.3 ( j )による。

(3) 杭先端部の処理
杭先端部の形状は、工法で定められた条件によるものとする。

(d) 地盤改良と併用した埋込み工法(特定埋込杭工法)
(1) 試験杭
(i) 試験杭は本工事の初期あるいは本工事に先立ち、設計・施工計画の妥当性を確認するために実施するもので、使用機械やセメントミルク液の適否、ソイルセメント柱(固化体)の出来形、施工能率、支持地盤の確認が主な目的である。

(ii) 試験杭の施工については,工法で定められた条件に従って行う。

(2) 施工
(i) 掘削及びかくはん方法
原位置地盤の掘削と混合かくはんは、心ずれ防止装置付き特殊ロッドの先端に掘削翼とかくはん翼を装備した特殊ヘッドにて行う。駆動装置は、掘削径、長さ及び地盤条件により異なるが、一般に115〜150kWが使用される。

固化体の造成と鋼管の設置は、掘削かくはんヘッド先端より所定の配合条件にて混練されたセメントミルク液を所定量吐出しながら、一定の速度にて行う。これにより、均質な固化体を築造する。

支持地盤の確認には、施工機械から自動的に送られてくる掘削深度、駆動用電動機の消費電流値、掘進速度等の施工情報を基に、積分電流値・掘進抵抗値等を表示させる施工モニター装置が使用される。この総合的な情報に基づき、支持地盤の確認を行う.。

(ii) 先端部の掘削及びかくはん方法
先端部の築造に際しては、先端部用の配合条件にて混練されたセメントミルク液に切り替えたのち、所定の掘進速度にて掘削及びかくはんを行う。

(iii) 杭の運搬及び取扱い
杭の運搬及び取扱いは、4.3.3 (f)によるが、外面に突起の付いた鋼管杭を使用するため、特に注意を要する。

(iv) 施工精度
施工精度は、4.3.3 ( j )による。

(v) 廃液及び排土処理
廃液及び排土処理は、場所打ちコンクリート杭に準ずる。

(3) 杭先端部の処理
杭先端部の形状は、工法で定められた条件(特記)によるものとする。

(e) 回転圧入による埋込み工法(特定埋込杭工法)

(1) 試験杭
(i) 試験杭は本工事の初期あるいは本工事に先立ち、設計・施工計画の妥当性を確認するために実施するもので、使用機械や施工方法の適否、施工能率、支持地盤の確認が主な目的である。

(ii) 試験杭の施工については、工法で定められた条件に従って行う。

(2) 施 工
(i) 施工方法
杭の設置には、回転圧入装置を装備した三点支持式杭打ち機又は据骰き式の全回転型圧入装置が使用される。駆動装置は、杭径、長さ及び地盤条件により異なるが、一般に三点支持式杭打ち機の場合 75〜90kWが使用される。

支持地盤の確認は、施工機械から送られてくる駆動用電動機の消費電流値や貫入速度又は回転トルク値等の施工情報と貫入深度を基に行う。

(ii) 杭の運搬及び取扱い
杭の運搬及び取扱いは、4.3.3 (f)によるが、杭先端にスパイラル状の鉄筋又はつばさ状、スクリュー状の掘削翼の付いた鋼管杭を使用するため、特に注意を要する。

(iii) 施工精度
施工精度は、4.3.3 ( j )による。

(3) 杭先端部の処理
杭先端部の形状は、工法で定められた条件(特記)によるものとする。

(f) プレボーリングによる埋込み工法(「標仕」以外の埋込み工法)

(1) プレボーリングによる埋込み工法の概要は、4.4.1(d)に示すとおりである。施工は、4.3.4による。

(2) 杭先端部の処理
「埋込み杭施工指針・同解説」によれば、杭はすべて閉端杭を使用することになっているため、杭先端部にはシュー等を取り付け、閉端杭としなければならない。

4.4.5 継手

(a) 鋼管杭の継手は現場溶接、H形鋼杭の継手は高カボルト継手が一般的である。高カボルト継手は、7章4節による。

「標仕」では、鋼管杭の溶接は、原則として、半自動又は自動アーク溶接とすることが定められている。半自動溶接はセルフシールドアーク溶接、自動溶接はセルフシールドアーク溶接又は炭酸ガスアーク溶接が用いられている。

(b) 溶接技能者
溶接技能者は、4.3.6(a)(2)による。

(c) 継手
鋼管杭の溶接継手部の仕様は、JISで規定されている( 4.4.2(c)参照)。
開先及びストッパーは、原則として製造所で加工される。たれ止めは必要に応じて図4.4.7のような銅バンドを使用する。

図4.4.7 たれ止め用銅バンド

また、建築基準法に基づく指定機関において性能を評価された無溶接継手があるが、これを使用する際の継手部の仕様は、工法に定められた条件によるものとする(図4.4.8参照)。


図4.4.8 鋼管杭の無溶接継手の例

(d) 溶接施工
鋼管杭の現場溶接施工において必要な注意事項は次のとおりである。
(i) 母材の溶接部は、溶接に先立ち、水分、油、スラグ、塗料等溶接に支障となるものを除去する。ただし、丈夫なワイヤプラシでも取れないミルスケール及び溶接に支障のない塗料は、除去しなくてもよい。

(ii) 溶接機とその附属用具は、溶接条件に適した構造及び機能を有し、安全に良好な溶接が行えるものとする。

(iii) 溶接部は、有害な欠陥のないもので、表面は、できるだけ滑らかなものとする。

(iv) スラグの除去は、各パス及び溶接完了後入念に行う。

4.4.6 杭頭の処理

(a) 杭頭の処理は特記が原則であるが、打込み完了後、設計図書で指定された高さに切りそろえることが望ましい。

(b) 杭頭を切断する場合、定規を用いガス切断により、水平、かつ、できるだけ平滑に仕上げる。

(c) 杭頭の位置が所定の高さに達していない場合は、設計担当者と打ち合わせて、杭の継足しを行うか、基礎の位置を下げるなどの処置を決め、受注者等と「標仕」1.1.8に基づく協議を行う。

(d) 継足しを行う場合の溶接は、「標仕」4.4.5の規定によるが、溶接部の開先形状等を含めて、設計担当者と打ち合わせて検討する必要がある。

4.4.7 施工記録

施工記録は、4.3.8 に準ずる。

4章 地業工事 5節 場所打ちコンクリート杭地業

第4章 地業工事 


5節 場所打ちコンクリート杭地業

4.5.1 適用範囲

(a) 「標仕」では、アースドリル工法、リバース工法、オールケーシング工法及び場所打ち鋼管コンクリート杭工法並びにこれらと組み合わせた拡底杭工法について規定している。

(b) 作業の流れを図4.5.1に示す。

図4.5.1 アースドリル工法、リバース工法及びオールケーシング工法の作業の流れ

(c) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。

なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。

① 工程表(機械搬入、段取り、鉄筋加工、掘削とコンクリート打込み、機械搬出及び片付けの時期)
② 施工業者名、施工管理技術者名(資格証明書等、工事経歴書等)及び作業の管理組織
③ コンクリートの計画調合表及び計算書
④ 鉄筋の種類と規格

⑤ 地中埋設物・障害物の調査、移設、防護、撤去等の計画
⑥ 施工機械の仕様の概要及び性能
⑦ 施工方法(掘削精度の確認方法を含む)
⑧ 杭の配置図及び施工順序
⑨ 安定液等を用いる場合の調合計画及び管理方法
⑩ 支持地盤の確認方法
⑪ スライム(沈殿物)の処理方法
⑫ 鉄筋加工及び建込み方法(浮上がり防止方法を含む)
⑬ コンクリートの打込み及び養生方法

⑭ 安全対策(酸欠、有毒ガス、施工機械の転倒等)
⑮ 公害対策(土砂の運搬によるこぼれ、ベントナイト廃液等の飛散と処理、騒音及び振動の対策等)
⑯ 施工結果報告書内容(4.5.7参照)
⑰ 作業のフロー,管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者.品質記録文書の書式とその管理方法等

4.5.2 施工管理技術者

(a) 場所打ちコンクリート杭工法は、建設工事の大型化・高層化に伴い、大口径で長尺の杭を、低騒音・低振動で築造できるという大きな特徴をもっている。しかし、その反面、次の問題点が指摘されている。

(1) 杭先端及び周辺地盤の緩み
(2) 杭壁崩壊の懸念(安定液及び水頭圧の管理)
(3) コンクリートの打込み管理ミスによる品質の低下
(4) スライム沈積による支持力の低下

これらの問題点を解決し、信頼のおける場所打ちコンクリート杭を築造するには、豊富な経験と知識を必要とするため、「標仕」4.5.2では施工に際し施工管理技術者を置くように定めている。

(b) 平成9年版「共仕」では、場所打ちコンクリート杭の施工管理技術者は、「場所打ちコンクリートくい工事に関する知識及び技術及び・証明事業認定規程」(昭和60 年7月12日 建設省告示第1016号)に基づく「基礎施工士」を規定していた。しかし、この告示は平成13年3月で廃止され、代わりに建設業法施行規則第17条の2により「基礎施工士検定試験」(実施(-社)日本基礎建設協会)が規定されていたが、それも平成17年12月に廃止された。

(-社)日本基礎建設協会では、技術者の育成を推進するために、引き続き「基礎施工士検定試験」を実施しており、この「検定試験」に合格した者を「標仕」4.5.2に規定する「施工管理技術者」として能力のある者として扱うことができる。

なお、旧告示第1016号に基づき認定された「基礎施工士」及び建設業法施行規則第17条の2により規定された「基礎施工士検定試験」に合格した者も、「標仕」 1.3.2(a)の規定により同等以上の能力のある者と見なすことができる。

4.5.3 材料その他

(a) 鉄 筋
(1) 鉄筋の品質は、特記されたものとし、5章2節による。
(2) 鉄筋の加工及び組立は、4.5.4 (h) 及び5章3節を参照する。

(b) コンクリート
(1) 「標仕」表4.5.1では、コンクリートの種別と水セメント比の最大値、所要スランプ、粗骨材の最大寸法、単位セメント量の最小値を定めているので、これらを満足する調合強度のものを選ぶ。

なお、単位水量の最大値は、「標仕」6章の規定により一般には185kg/m3となる。しかし、骨材の地域性等により、これにより難い地域もある。その場合は、場所打ち杭に使用するコンクリートについては、地中に構築されるため充填性を優先させるべきであり、またコンクリート打込み後の養生条件も良いことなどから、設計担当者に確認のうえで、(-社)日本建築学会「JASS 5 鉄筋コンクリート工事」 24節[水中コンクリート]で規定している200kg/m3までは、品質計画を明確にすることにより認める場合も考えられる。

(2) 「標仕」では、水や泥土等によるコンクリートの品質の劣化等を考慮して単位セメント量の最小値を定めている。したがって、掘削孔中に水がないA種の場合には、品質の劣化も小さいためB種より単位セメント量の最小値が小さくなっている。

(3) コンクリートは地中に打ち込まれるため外気温による影響が少ないので、一般には養生温度による強度の補正は行わないが、北海道や東北地方の寒冷地では、地中温度が 8〜12℃と低くなることがあるため、必要に応じコンクリートの養生温度による調合強度の補正を行う。

(4) コンクリートの構造体強度補正値(S)の値は特記によるが、特記がない場合は、3N/mm2とする。ただし、4.5.5に規定する場所打ち鋼管コンクリート杭工法及び拡底杭工法において、(-財)日本建築センター等の評定取得時に、構造体強度補正値(S) を0 N/mm2(平成22年5月以前は、品質保証強度(ΔF)が 0 N/mm2 にて評定を取得している工法は、その条件の値でよい。平成20年8月以前のコンクリート強度補正についての評定を取得していない工法においては、特記がない場合は、3 N/mm2とする。

4.5.4 アースドリル工法、リバース工法及びオールケーシング工法

(a) 一般事項
(1) 工法の概要
アースドリル工法、リバース工法、オールケーシング工法の特性を表4.5.1に示す。

表4.5.1 工法の特性

①アースドリル工法
この工法は、図4.5.2の機械を用い、図4.5.3のような工程により杭を築造する。

図4.5.2 アースドリル掘削機


図4.5.3 アースドリル工法

② リバース工法
この工法は、図4.5.4の機械を用い、図4.5.5のような工程により杭を築造する。


図4.5 4 リバース掘削機


図4.5.5 リバース工法

③ オールケーシング工法

この工法は、図4.5.6の機械を用い、図4.5.7のような工程により杭を築造する。


図4.5.6 オールケーシング掘削機

図4.5.7 オールケーシング工法

(2) 各工法の施工機械と近接建物等との標禅的な必要距離を図4.5.8に示す。



図4.5.8 施工機械と建物との必要距離の例

(b) 試験杭
(1) 本杭を施工するに当たり、施工機械や各種安定液の適否、土質状態、地下水位及び被圧水等の有無、施工時間、支持地盤の確認等の種々の調査を行い、以後の本杭の参考とするために試験杭の施工を行う。

(2) 試験杭は、4.2.2で述べたように、本杭の最初の1本目の杭を試験杭とする場合には、報告を求めて打ち合わせ、その処置について検討する。

(3) 試験杭の調査項目としては表4.5.2を参照する。

表4.5.2 試験杭の施工時における調査項目

(c) アースドリル工法
(1) 掘削機の据付け
(i) 掘削機の据付けは、その作業地盤の耐力に応じて、道板、鋼板、砂利等を敷き、作業中に機械が傾斜することを防ぐ(機種によっては90tを超えるものがある。)。

(ⅱ) ケリーバーの中心を杭心に正確に合わせ、機体を水平に据え付ける。

(2) 掘削
(i) 最初のうち掘削孔が鉛直になるまでは慎重に掘削を行い、表層ケーシングを鉛直に建て込む。

(ⅱ) 土質に応じバケットの回転速度を調節しながら掘削を進める。掘削された土砂を常に観察し、崩壊しやすい地盤になったら安定液を用いる。

なお、バケットにリーマーを用いる拡幅掘削は、表層ケーシンク建込み深度までとし、それ以深の掘削にはリーマーを用いてはならない。

(ⅲ) 掘削深さが所定の深度に達し、排出される土により予定の支持地盤に達したことが確認されたらスライム処理をして検測を行う。

なお、検測とは、検測テープにより掘削深度を測定することであり、孔底の2箇所以上で行う。

(ⅳ) 支持層の確認は、バケット内の土砂を、土質柱状図及び土質資料と対比して行う。また、その際にケリーバーの振れや回転抵抗等も参考にする。

(v) 掘削孔の側墜の確認を、超音波等により行う装置が開発されている。なお、この装置を使用して確認を行う場合は、特記で指定される。

(3) 安定液
(i) アースドリル工法における孔壁保護は、通常安定液によって行う。

(ⅱ) 安定液には、ベントナイト系安定液とCMC系安定液があり、どちらも使用する材料は同じであるが、その違いはベントナイトとCMCの配合率の違いである。

(ⅲ) (ⅱ)の安定液の選択と配合は、土質や地下水条件を考慮して決める。また、適時試験を行って安定液を調整し、安定液の劣化を防ぐことが大切である。表4.5.3は、砂質土の場合の安定液の配合例である。

表4.5.3 砂質土の場合の安定液の配合例(単位:%)

(ⅳ) 安定液の性質
① 主な材料

② 繰り返し使用する場合の安定液の管理基準は、実状に応じたものとするが、その例を表4.5.4に示す。

表4.5.4 安定液の管理基準の例

③ 標準比重は、清水とベントナイトのみの新液の比重とし表4.5.5に示す。

表4.5.5 安定液の標準比重

④ 必要粘性とは、対象地盤に必要とする粘性をいう。

⑤ 作液粘性とは、新しく作った安定液の粘性をいう。アースドリル工法では、安定液を繰返し使用すると粘性が小さくなる例が多いので、一般的には作液 粘性は必要粘性より大きくする。

⑥ 安定液には、適当な量と質の分散剤が添加されていることを原則とする。

(d) リバース工法
(1) 掘削機の据付け
(i) サクションポンプユニットとロータリーテープルを切り離して作業できる(本体と10m程度切り離した位置で施工できる。)ため、杭施工場所に特別な養生を必要としない。

(ⅱ) スタンドパイプの建込みを行う。スタンドパイプは、表層地盤の崩壊防止及び自然地下水に対し2.0m以上の水頭差を保持し、静水圧により孔壁の崩壊を防止するために用いるもので、建込みは油圧ジャッキ又はバイブロハンマーにより行う。

スタンドパイプの径は、孔径より150〜200mm大きいものとする。また、根入れは地下水位、表層の土質の軟弱度により異なり、スタンドパイプ内の水圧で周囲の軟弱土が外側に移動あるいはパイピングを起こさないだけの深さとする。

(2) 掘削
(i) この工法は、静水圧 0.02N/mm2以上に保つことにより孔壁の崩壊を防ぐ工法であるので、掘削に際しては地下水位を確認し水頭差を2.0m以上保つように十分注意する。

(ⅱ) 掘削順序は、掘削ビットを埋設するだけの孔をハンマーグラプで掘削して孔内に水を満たし、所定の水圧を保ちながらロータリーテープルでビットを回転させ掘削をする。掘削土砂は楊水とともに沈殿槽に排出され、ここで掘削土砂を沈殿させ除去する。掘削土砂を除去し比重が小さくなった泥水は、再び掘削孔内に還流する。

(ⅲ) 本工法は掘削土をそのままで地上に排出しないため、支持層の確認はデリバリホースの末端から掘削土砂を採取し、土質柱状図及び土質資料と対比して行う。

(ⅳ) 三翼ビットを使用して掘削した孔底は、中心部は深く、外周ほど浅くなっている。このため検測は外局部に近い位置で2点以上行う。

(v) 側壁測定装置による掘削孔の確認は、(c)(2)(v) による。

(3) 孔内水
(i) リバース工法では、周辺の施工機械や作業による振動等の影響を受けない地盤に至るまでスタンドパイプを建込み、掘削中に地盤の粘性土を含んだ泥水が孔堡にマッドケーキを形成することと、孔内水頭を地下水位より2m以上高く保つことにより、スタンドパイプ先端以深の孔壁を保護し安定させる。

(ⅱ) 粘性土が多く介在する地盤は、掘削初期の使用水は清水であってもマッドケーキ形成に必要な循環水となる。

(ⅲ) 砂質系の地盤では、マッドケーキの形成に必要なコロイドが不足するので、事前に泥水を作液し掘削を開始しなければならないので注意が必要である。

(ⅳ) 泥水の比重は、掘削能率を高めるためには低く、孔壁保護面からは高いほうがよいという二面性を持つ。この両者を考慮して、その適正比重を 1.02〜1.08とする。

(e) オールケーシング工法
(1) 掘削機の据付け
(i) 掘削機の据付け地盤の補強については、(c)(1) による。

(ⅱ) 揺動式の場合の掘削土砂の排出は、機械の前方に限られるので、隣地より杭までの距離がない場合は作業動線に注意しなければならない。

(ⅲ) ケーシングチューブは、杭心に合わせ直角二方向からトシランシット又は下げ振りでチェックして鉛直に建込む。

(ⅳ) ファーストチューブの建込みは、水平精度と鉛直精度に直接影響を及ぼすので次のような方法で行うとよい。

① 杭心を正しくセットさせるため、図4.5.9に示すような治具を用い、ファーストチューブをセットする。


図4.5.9 ファーストチューブ建込み杭心合わせの定規の例

② 使用するファーストチューブは、鉛直性の監視が容易に行えるよう6m程度の長さにする。

③ ファーストチューブは、杭心に合わせ直角二方向からトランシット又は下げ振りでチェックして鉛直に建て込む。

(2) 掘 削
(i) 掘削は、ケーシングチューブを先に揺動又は回転圧入し、土砂の崩壊を防ぎながらハンマーグラブにより掘削をする。掘削が鉛直にできるかどうかは、最初のケーシングチューブ 1〜2本の建込み状況によって決まる。

(ⅱ) 被圧地下水等によるボイリングを起こしやすい砂又は砂礫層の場合及び軟弱粘性土層でのヒービングを起こしやすい地盤の場合は、孔内に水を張り防止する。

(ⅲ) 常水面以下に細かい砂層が 5m以上ある場合は、ケーシングチューブの外面を伝って下方に流れる水の浸透流や揺動による振動によって、周囲の砂が締固められケーシングチューブが動かなくなること(ケーシングチューブが食われる。)があるので注意する。

(ⅳ) 掘削終了時、ファーストチューブ刃先を杭底面より先行させないように注意する。

(v) 掘削深さが所定の深さに達し、排出される土から予定の支持地盤に達したことが確認されたら、スライムを処理し検測を行う。

(vi) 支持層の確認は、ハンマーグラブでつかみ上げた土砂を土質柱状図及び土質資料と対比して行う。

(3) 孔内水
オールケーシング工法では、掘削孔全長にわたりケーシングチューブを用いて孔壁を保護するため、杭壁崩壊の懸念はほとんどない。しかし、(2)(ⅱ)の場合や孔内水位と地下水位に水頭差がある場合は、掘削底周辺部の緩みの発生が想定されるので、孔内へ注水し水圧のバランスを図る。

(f) スライム処理
(1) スライムとは、孔内の崩落土、泥水中の土砂等が孔底に沈殿、沈積したものである。この上にコンクリートを打ち込むと、荷重がかかったときに杭が沈下するので、スライムの処理は重要である。

このほか、スライムは強度を含めたコンクリートの品質低下、杭の断面欠損及び支持力低下の原因となる。

(2) スライムの処理には、一次処理と二次処理がある。一次処理は掘削完了直後に行うスライム処理で、二次処理はコンクリート打込み直前に行うスライム処理である。各スライム処理方法の例を、図4.5.10に示す。


図4.5.10 スライム処理方法の例

(3) アースドリル工法のスライム処理は、一次処理として底ざらいバケットにより行う。バケットは杭径より10cm小さいものを用い、バケットの昇降によって孔壁が崩壊することのないよう緩やかに行う。

鉄筋かご建込みの際の孔壁の欠損によるスライムや建込み期間中に生じたスライムは、二次処理としてコンクリート打込み直前に水中ポンプ方式又はエアーリフト方式等により除去する。

(4) リバース工法のスライム処理は、一次処理として掘削完了後ビットを孔底より若干引き上げて緩やかに空回しするとともに、孔内水を循環させて比重を下げ、鉄筋かごやトレミー管建込み期間中のスライム沈積量を少なくする。

二次処理は、コンクリート打込み直前にトレミー管とサクションポンプ等により孔底に沈積したスライムを除去する。

(5) オールケーシング工法のスライム処理は、ドライ掘削や孔内水位の低い場合は、掘りくずや沈殿物の量が少ないので、掘削完了後にハンマーグラプで静かに孔底処理(孔底のさらい)を行う。また、孔内水位が高く沈殿物の多い場合には、ハンマーグラプで孔底処理をしたのち、更に、スライムバケットによる処理を行う。

なお、コンクリート打込み直前までに沈殿物が多い場合には、二次処理として、水中ポンプ方式等によりスライムを除去する。

(g) 排液及び排土処理
(1) 掘削時には相当の量の排液がでるが、排液は沈殿槽あるいは直接真空ポンプ車に集め場外へ搬出して指定場所へ投棄するか、排液槽に収集し凝集剤を添加して、上澄と回収泥土とに分け、回収泥土を更に脱水処理等をして含水比を小さくし投棄する。

(2) 掘削された排土は、含水比が大きい( 50〜200%)ので敷地内に集積して、天日乾燥させ、その含水比を小さくする。更に、セメントを添加して固形化する場合と、石灰と混合しその化学反応の熱を利用して水分を除去し固形化する場合がある。

(3) これらの排液及び排土処理に当たっては、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の適用を受ける場合があるので、法律に従った処理が必要になる。

この場合、元請業者は産業廃棄物の排出事業者に該当するので、処分の方法、形態、場所等を確認させたうえで、許可を取得している業者に委託して処理を行わせるようにする。

(h) 鉄筋の加工及び組立
(1) 鉄筋は、かご形に組み立てる(図4.5.11参照)。
主筋と帯筋を溶接している例が見られるが、点付け溶接は注意しても主筋が断面欠損をするおそれがあるので「標仕」4.5.3(a)では、主筋への点付け溶接は行わないこととしている。また、帯筋の重ねは特記が原則であるが、10 d以上の片面溶接(両面の場合は5d)とすることが望ましい。補強リングは、主筋に断面欠損を起こさないように十分注意し堅固に溶接する。また、補強リングは、鉄筋かごの径により主筋の内、外周のいずれに取り付けてもよい。


図4.5.11 鉄筋かご

(2) 溶接技能者は、7.6.3を参照する。

(3) 溶接施工は、7章6節による。

(4) 鉄筋かごの継手は、「標仕」表5.3.2により、鉄線(通常10#以上)で、ずり落ちないように結束する。安易に溶接を用いるとアンダーカットや急冷により材質に悪影評を与えるので注意する。

なお、鉄筋かごの建込みは、かごを変形させないように静かに行い、自由落下させてはならない。

(5) 鉄筋かごには、かぶり厚さを確保するためにスペーサーを深さ方向に 3〜5m間隔を目安として、最低で1断面4箇所以上取り付ける。スペーサーは、ケーシングチューブを用いる場合は、D13以上の鉄筋を用いる。ケーシングチューブを用いない場合に鉄筋を用いると、孔壁を損傷するので、杭径 1.2m以下の場合は鋼板 4.5 x 38(mm)、1.2mを超える場合は鋼板 4.5 x 50(mm)程度のものとする。

(6) オールケーシング工法におけるケーシングチューブの引抜き時には、ケーシングチューブと鉄筋かごの接触により、鉄筋かごが浮き上がる場合(共上がり)があるので、次の事項について注意する。

① ケーシングチューブの内面をよく消掃しておく。
② スペーサーの高さ及び位置に注意する。
③ 鉄筋かごを曲がりや変形のないように建込む。

なお、共上がりが発生した場合は、共上がり量を最小限に止めなければならない。そのためには、早期発見が大切で、鉄筋頂部から共上がりチェック用の鉄線をケーシングチューブ天端まで伸ばしておき、引抜き初期にチェックを行う。

( i ) コンクリート打込みその他

(1) コンクリートの打込みは、トレミー管を用いる。また、コンクリートの打込み開始時にはプランジャーをトレミー管に設置して、コンクリートと泥水等が混り合うのを防ぎ、下部から泥水等を押し上げるように行う。また、トレミー管及びケーシングチューブは、これを引き抜きながらコンクリートの打込みを行う。このときトレミー管及びケーシングチューブの先端は、コンクリートの中に常に 2m以上入っているようにする。また、トレミー管のコンクリート中への挿入長さが長くなると、トレミー管先端からのコンクリート押出し抵抗が大きくなり、コンクリートの流出が悪くなるので、最長でも 9m程度にとどめておいた方がよい。

(2) ケーシングチューブを急速に引き抜くと、コンクリートに泥水を巻き込むことになるので十分に注意をしなければならない。

(3) コンクリート打込み時に、その浮力等で鉄筋かごの浮上がりが生じる場合があるので注意する。

また、コンクリートがある程度打ち上がってから、今まで動かなかった鉄筋かごが共上がりし始めることもあるので十分注意が必要である。

(4) コンクリートの打込みは、泥水等を上に押し上げるように行うので、頂部に低品質のコンクリートができる。このため余分に打ち上げて余盛りをつくる。余盛りの高さは、「標仕」4.5.4 (c)(10) では、泥水が多くコンクリートの劣化が著しいと考えられる「標仕」表4.5.1のB種の場合は800mm以上、掘削孔底にほとんど水がたまっていないような状態を想定したA種の場合(無水掘り)を500mm以上としている。

なお、コンクリート打込み後、ブリーディングに伴ってコンクリート表面にレイタンスと呼ばれるぜい弱な物質の層が形成されるが、このような骨材を含まないモルタル状の固化物は余盛りには含まれない。

(j)埋戻し
コンクリート打込み後、杭孔が残る場合は、孔への落下防止と孔周辺地盤の崩壊防止のため埋戻しを行う。

埋戻しは、硬化し始めた杭に悪影響を与えないように敷地内の良土を静かに投入して行う。この良土は、根切りの際、杭位置の目印にもなる。

4.5.5 場所打ち鋼管コンクリート杭工法及び拡底杭工法

場所打ち鋼管コンクリート杭工法及び拡底杭工法の施工は、建築基準法に基づき認定された施工仕様により行い、それ以外については、4.5.4による。

4.5.6 杭頭の処理

「標仕」4.5.4(c)(10)で規定する余盛り部分は、根切り後、所定の位置まではつり処理をする。

はつり作業に際しては、杭本体へのひび割れや損傷の防止、はつり高さ、形状寸法に注意をする。

処理の時期は、コンクリートの硬化の程度及び後工程への影響を考慮して、「標仕」では、コンクリート打込み後14日程度経過したのちとしている。

4.5.7 施工記録

場所打ちコンクリート杭を築造するに当たり、管理した結果を記録し、杭工事の完了とともに報告書を提出させる。

(1) 施工報告書の記載事項は、おおむね次のとおりである。
(i) 一般事項
① 工事概要
② 杭仕様(杭の工法形状,寸法コンクリート強度等)
③ 施工機械の仕様・概要
④ 実施工程表
⑤ 杭位置
⑥ 鉄筋かご加工仕様
⑦ 工事写真

(ⅱ) 掘削に関する事項
① 掘削所要時間
② 掘削土砂量
③ 安定液等の記録
④ 孔底スライムの沈積状況と処理時間
⑤ 支持地盤の確認記録

(ⅲ) その他
① 鉄筋かごの建込み時間
② コンクリートの打込み時間
③ コンクリートの使用量

(2) 場所打ちコンクリート杭の施工、記録の例を図4.5.12に示す。


図4.5.12 施工記録の例