4章 地業工事 2節 試験及び報告書

第4章 地業工事 


2節 試験及び報告書

4.2.1 一般事項

(a) 「標仕」4章2節では、試験杭、杭の載荷試験、地盤の載荷試験及び報告書について規定している。

(b) 試験は.原則として.監督職員の立会いを受けて行うこととしている。
なお、載荷試験には、(c)のような理由で設計担当者の立会いを求めるのがよい。

(c) 「標仕」4.2.1(c)では施工試験の結果によって「その後の施工の指示を受ける。」こととしている。「施工の指示」には、増し杭等設計変更の必要な場合もあるが、この場合は、工程管理上速やかに行う必要がある。

(d) 杭の施工に併せて行う管理試験については、3節から5節に示す。

4.2.2 試験杭

試験杭とは、本杭を施工する場合の各種管理基準値等を定めるための杭を想定している。打込み工法(「標仕」4.3.3(e))の試験杭は、杭の長さの決定や支持層の確認等のため本杭と別に計画する。試験杭の位置、本数及び寸法は、設計図書に特記される。試験後の杭体の強度に十分余裕があると予想される場合には、試験杭を本杭とすることができる。

セメントミルク工法(「標仕」4.3.4(e))、特定埋込杭工法(同4.3.5 (b))、鋼杭工法(同4.4.3及び4.4.4)及び場所打ち杭(同4.5.4(b))については、一般的には最初の1本目の本杭が試験杭とされる。試験杭の位置は、地盤や土質試験の結果から、全基礎杭を代表すると判断される位置に指定される。

試験杭の施工結果を基に、試験杭以外の本杭の施工における各種管理基準値等を定める。このため、試験杭の施工設備は、原則として、本杭に用いるものを使用する。

なお、杭の支持力の確認試験や水平載荷試験を行うための試験杭や反力杭等の特別な仕様が必要な「試験杭」は「標仕」4.2.2(a)の「特記」の想定外である。その場合は、設計担当者により別途仕様が定められ設計図書に特記される。

4.2.3 杭の載荷試験

杭の載荷試験は、「標仕」では、鉛直又は水平載荷試験としている。また、試験の方法は特記によるとしている。

地盤工学会基準「杭の鉛直載荷試験方法・同解説」には、単杭に対して鉛直方向に載荷するすべての載荷試験を対象にし、
「杭の押込み試験方法(JGS 1811)」
「杭の先端載荷試験方法(JGS 1812)」
「杭の引抜き試験方法(JGS 1813)」
「杭の鉛直交番載荷試験方法(JGS 1814)」
「杭の急速載荷試験方法(JGS 1815)」
「杭の衝撃載荷試験方法(JGS 1816)」
の6種類の基準が併記されている。

また、水平載荷試験に関しては地盤工学会基準「杭の水平載荷試験方法(JGS1831)」に基準化されている。

ここでは、地盤工学会基準の概要を紹介する。

(1) 鉛直載荷試験
6種類の基準を、載荷方法から、荷重の性質、加力方法、反力装置、載荷位置及び載荷方向で分類すると表4.2.1のとおりである。

表4.2.1 載荷方法による分類(杭の鉛直載荷試験方法・同解説より)

荷重の性質からは、静的載荷試験と動的載荷試験に大別される。静的載荷と動的載荷は、杭体並びに地盤の速度及び加速度に依存する抵抗が無視できる載荷か否かで区別できる。また、動的載荷において急速載荷と衝撃載荷は、杭体の波動を無視できるか否かで区別される。

この基準では、図4.2.1に示すように、載荷時間の長さ、具体的には載荷時間 t1の、縦波が杭体を一往復するのに要する時間 2L/cに対する比である相対載荷時間 Trの大きさで区分される。


図4.2.1 載荷時間の比較(杭の鉛直載荷試験方法・同解説より)

① 押込み試験方法
押込み試験方法は、杭頭部に軸方向押込み荷重を加える試験である。この試験方法は、実際の杭と同じ荷重条件で行うため鉛直支持力特性の評価の信頼性が高いが、反力装置に載荷梁等を使用した反力抵抗体が必要なため、ある程度の費用と工期を要する。

載荷に用いる試験装置は、加力装置、反力装置及び計測装置で構成される。図 4.2.2に一般的な載荷試験装置例として反力杭方式の試験装置を示す。


図4.2.2 反力杭を使用した場合の押込み試験装置例
(杭の鉛直載荷試験方法・同解説より)

② 先端載荷試験方法
先端載荷試験方法は、図4.2.3のように、杭体の先端付近に取り付けたジャッキによって静的な荷重を加える試験である。この試験方法では、押込み試験方法のような杭頭部の反力装置は用いずに. ジャッキの上下に生ずる抵抗力を互いに反力として載荷する。ジャッキの上方に生ずる抵抗力は.杭を押し上げるのに必要な抵抗(押上げ抵抗)であり、杭の周面抵抗力に杭の自重が加わったものとなる。ジャッキの下方に生じる抵抗力は、杭の先端抵抗力が主であり、これにジャッキより下方の部分の周面抵抗力が加わることになる。


図4.2.3 先端載荷試験の装置(杭の鉛直載荷試験方法・同解説より)

③ 引抜き試験方法
引抜き試験方法は、杭頭に静的な引抜き荷重を加える試験である。

試験装置は、押込み試験と同様に、加力装置、反力装置、計測装置で構成される。引抜き試験の反力抵抗体は、反力杭が一般的であるが反力板も用いられている。コンクリート系の試験杭では、試験杭の杭体に引張り応力が作用するため、杭体の引張り強度について注意を要する。

また、各層の周面抵抗力特性を得るために杭体の軸方向力を測定する際には、杭体のひび割れの影響についても留意しなければならない。

④ 鉛直交番載荷試験方法
鉛直交番載荷試験方法は、杭に押込み及び引抜きの軸方向鉛直交番荷重を加える試験である。地震時における構造物のロッキング動等によって杭基礎に作用する変動軸力は、鉛直交番荷重として杭頭に作用するが、従来の設計では押込み荷重及び引抜き荷重に対する抵抗力を押込み試験及び引抜き試験によってそれぞれ別々に評価してきた。しかし、近年行われるようになってきた上部構造と杭基礎との一体解析では、鉛直交番荷重に対する杭の挙動を一連の挙動として評価する必要が生じてきた。鉛直交番載荷試験は、これまで研究的に行われてきた事例はあるものの、多くの試験が実施されてきたとはいえない。しかし、兵庫県南部地震以降、常時から大地震時に至るまでの杭基礎の挙動を正確に設計に反映させる必要性が高まっており、鉛直交番載荷試験によって杭挙動を評価する機会が今後増加するものと考えられる。したがって、鉛直載荷試験方法の一つとして「杭の鉛直交番載荷試験方法(JGS 1814)」が制定され、試験の基準化を図ることとされている(図4.2.4参照)。


図4.2.4 鉛直交番載荷試験の載荷サイクル(杭の鉛直載荷試験方法・同解説より)

⑤ 急速載荷試験方法
急速載荷試験方法は、杭頭に動的な荷重を加える載荷試験の一つである。荷重の性質として油圧ジャッキ等により静的な荷重を加える押込み試験とハンマー等で衝撃荷重を加える衝撃載荷試験の中間的な位置付けにあり、基準の中では急速載荷を「杭体の波動現象は無視できるが、速度および加速度に依存する杭体と地盤の抵抗は無視することができない載荷時間を持つ載荷」と定義している。具体的には、相対載荷時間 Tr が 5 ≦ Tr < 500の範囲の載荷試験である(図4.2.5参照)。


図4.2.5 反力装置を使用しない加力装置(杭の鉛直載荷試験方法・同解説より)

⑥ 衝撃載荷試験方法
杭の衝撃載荷試験方法は、杭頭に動的な荷重を加える載荷試験の一つである。一般に、杭頭部にひずみ計及び加速度計を取り付け、ハンマー等による杭打撃時に発生するひずみ波形及び加速度波形を測定し、波動理論に基づいて解析を行い、杭の鉛直支持力特性を評価する試験方法である(図4.2.6参照)。

載荷試験においては、載荷時間が、波動が杭長分を伝播する時間に対して短くなるほど、波動の影響が大きくなる。衝撃載荷試験は、載荷時間が 0.01〜0.02秒程度であるため、波動現象を伴う試験であり、試験結果の解析は一次元波動理論に基づく必要がある。


図4.2.6 衝撃載荷試験方法の例(杭の鉛直載荷試験方法・同解説より)

(2) 水平載荷試験
杭の水平載荷試験方法は、静的載荷による杭の水平抵抗特性に関する資料を得ること、また、既に定められた杭の水平地盤反力係数等の設計値の妥当性を確認することを目的とする(図4.2.7参照)。

載荷方法は、載荷パターン及び載荷方式により分類され、対象とする構造物の種類及び試験の目的を考慮して決定する。

載荷パターンには、一方向載荷と正負交番載荷があり、いずれかを選択する。また、単サイクルと多サイクルがあり、いずれかを選択する。後者の場合は、試験の目的に応じてサイクル数を決定する。

載荷方式には、段階載荷方式と連続載荷方式があり、いずれかの方式を選択する。前者の場合は荷重(変位)段階数、各荷一重(変位)段階における荷重(変位)保持時間を、後者の場合は載荷速度を試験の目的に応じて決定する。


図4.2.7 水平載荷試験の装置例(杭の水平載荷試験方法・同解説より)

4.2.4 地盤の載荷試験
(a) 一般事項
地盤の載荷試験は、「標仕」では平板載荷試験としている。地盤の平板載荷試験は、地盤工学会基準JGS1521-2003(地盤の平板載荷試験方法)による。

(b) 平板載荷試験
(1) 試験地盤
(i) 試験地盤は、根切りのときスコップ等で荒らしたり踏み付けたり、あるいは水で埋まらないよう試験地盤の少し上で止めておき、載荷板を設置するときに、試験が自然状態で行えるようにする。

(ii) 試験孔は、一般に載荷板の5倍程度あればよいといわれているが、地盤工学会基準JGS 1521-2003によると、試験地盤面は、載荷板の中心から1.0m以上の範囲を水平に整地すると定められている(図4.2.8参照)。


図4.2.8 平板載荷試験における根切り幅と載荷板との関係を示した例

(2) 載荷板
(i) 載荷板は、直径30cm以上の円形とし、厚さ25mm以上の鋼板又は同等以上の剛性のある板を用いる。

(ii) 設置は、試験孔のほぼ中央とし、反力装置の中心の鉛直下を水平器等を用い平らに仕上げ設置する。また、地盤となじみの悪いときは薄く砂をまくか、せっこうをまいて行う。

なお、試験地盤が常水面以下の場合は、試験地盤以下に水位を下げないように注意し排水する。また、水が多く排水により地盤が緩むおそれのある場合は、設計担当者と打ち合わせる。

(3) 養 生
試験装置の上は、テント等で覆い直射日光及び降雨を避ける。また、雨水が試験孔に流入しないようにする。

(4) 最大荷重
最大荷重は設計図書の指定によるが、推定した地盤の極限支持力以上、又は設計荷重に安全率を乗じた値以上とする。

(5) 試験装置
(i) 載荷台の反力梁は、中心を載荷板の中心と一致させ、水平に設置して、変形、傾斜、転倒がないようにする。また、載荷物は偏心しないよう注意する(図4.2.9 参照)。

(ii) 加圧方法は、計画最大荷重以上の加圧能力と、変形に追随できる十分なストロークをもつジャッキによる。


図4.2.9 平板載荷試験の装置の例

(6) 計測装置
(i) 載荷荷重の計測は、荷重計(環状ばね型力計又はロードセル)を用いる。計器は試験荷重に見合ったもので、検定後の経過期間が短いものがよい。

(ii) 変位の計測は、読み精度 1/100mm、ストロークは30mm以上のダイヤルゲージ又はこれに準ずる性能の変位計を用い、セットは図4.2.10のようにする。


図4.2.10 平板載荷試験における沈下量の測定方法

(7) 試験方法
(i) 国土交通省大臣官房官庁営繕部「敷地調査共通仕様瞥」4.7.4(4)では、載荷方法は、荷重制御による段階式載荷又は段階式繰返し載荷とし、適用は特記により、特記がなければ、段階式載荷とするように定められている。

(ii) 地盤工学会基準JGS 1521-2003によると、載荷重は、計画最大荷重を 5〜 8 段階ずつ等分に載荷し、荷重の保持時間は30分程度の一定とするよう定められている。

(iii) 沈下量の測定時間は地盤工学会基準 JGS 1521-2003によると、各荷重段階において所定の荷重に達したのち、原則として表4.2.2のように定められている。

表4.2.2 沈下量測定時間

(8) 試験結果の表示
試験結果の表示の例を,図4.2.11に示す。


図4.2.11 載荷試験結果の例

(9) 報告書
地盤の載荷試験の報告書は、次の事項を記載する必要がある。

① 地盤工学会基準JGS 1521-2003と部分的に異なる方法を用いた場合には、その方法
② 試験方法
③ 試験結果の図及び表
④ 地盤反力係数
⑤ 極限支持力
⑥ 試験地盤の観察結果と地下水の状況
⑦ その他特記すべき事項

4.2.5 報告書等
地業工事の報告書の目的及び記載事項は次のとおりである。

(1) 目 的
(i) 施工記録を報告することにより施工状況を記録に残す。
(ii) 予期しない状況が生じた場合等の対策を立てる場合の参考資料とする。
(iii) 上部構造に不同沈下等の問題点が生じたときの原因究明資料とする。
(iv) 将来の近隣での建設の参考資料とする。

(2) 全般的な報告書の記載事項
(i) 工事概要
(ii) 杭材料(杭の種類、材質、形状、寸法、コンクリート強度等)
(iii) 施工機械の仕様概要
(iv) 工法の概要
(v) 実施工程表
(vi) 工事写真
(ⅶ) 試験杭の施工記録及び地業工事に伴う試験結果の記録
(ⅷ) 本杭の施工記録
(ix) 試験杭等において採取した土質資料

一次検定 施工管理法 品質管理 3-4 検査及び試験

1級建築施工管理技士
学科対策 過去問題【 重要ポイント 】

5 施工管理法
3° 品質管理

3-4 検査及び試験
下記の正誤を判断せよ。
①検査とは、品物の特性値に対して、測定、試験などを行って規定要求事項と比較して、適合しているかどうかを判定することをいう。

答え

  ◯

②間接検査とは、購入者が供給者以外の第三者に試験を依頼して行う検査をいう。

答え

   ×

[ 解説 ]
間接検査とは、購入検査で供給者が行った検査をを必要に応じて確認することにより、購入者の試験を省略する検査である
関連)
間接検査は、長期にわたって供給側のの検査結果が良く、使用実績も良好な品物の受入検査の場合に適用される。

③無試験検査とは、品質情報、技術情報などに基づいて、サンプルの試験を省略する検査をいう。

答え

  ◯

[ 解説 ]
無試験検査は、工程が安定状態にあり、品質状態が定期的に確認でき、そのまま次工程に流しても損失は問題にならない状態の場合に適用される。

④抜取検査とは、製品又はサービスのサンプルを用いる検査をいう。

答え

  ◯

⑤品物がロットとして処理できない場合は、抜取検査とする。

答え

   ×

[ 解説 ]
ロットからあらかじめ定められた検査方法に従って、サンプルを取ることができる場合には、抜取検査とするが、ロット処理できない場合は、抜取検査できない
関連)
破壊検査となる場合は、抜取検査とする。

⑥全数検査は、不良品を見逃すと人命に危険を与えたり、経済的に大きな損失を受ける場合に適用される。

答え

  ◯

[ 解説 ]
不良率が大きく、あらかじめ決めた品質水準に達していない場合は、全数検査とする。

⑦鉄筋(SD490を除く)のガス圧接部の検査は、外観検査は目視により全数検査とし、超音波探傷検査は抜取り検査とした。

答え

  ◯

⑧圧接部の抜取検査は、試験方法について特記がなかったので、超音波探傷試験で行った。

答え

  ◯

[ 解説 ]
外観検査は、全数検査とし、圧接部のふくらみの直径、ふくらみの長さ、圧接面のずれ、鉄筋中心軸の偏心量、圧接面の折れ曲がりについて行う。

⑨抜取検査の超音波探傷試験は、1検査ロットに対して3箇所無作為に抜き取って行った。

答え

   ×

[ 解説 ]
抜取検査の超音波探傷試験は、非破壊試験で、1検査ロットに対して30箇所行う
不合格1箇所以下の場合、ロット合格。2箇所以上の場合、ロット不合格。
引張試験の場合は1検査ロットあたりに対して3箇所
不合格1箇所以下の場合、再度10箇所抜取り、合格であれば、ロット合格。
不合格2箇所以上の場合はロット不合格。

⑩抜取検査で不合格となったロットについては、試験されていない残り全数に対して超音波探傷試験を行った。

答え

  ◯

【 その他、検査 】

非破壊検査とは、非破壊検査の結果から、規格などによる基準に従って合否を判定する方法をいう。

・中間検査は、不良なロットが次工程に渡らないように事前に取り除くことによって損害を少なくするために行う。

・受入検査は、依頼した原材料、部品又は製品などを受け入れる段階で行う検査で、生産工程に一定の品質水準のものを流すことを目的で行う。