8章 コンクリートブロック工事等 1節 共通事項

8章 コンクリートブロック、ALCパネル及び押出成形セメント板工事

01節 共通事項
8.1.1 一般事項

この章で取り扱う主要な材料ごとの適用範囲は次のとおりである。

(ア) コンクリートブロック:
小規模補強コンクリートブロック造、帳壁(内・外壁)及び塀(高さ2.2m以下)

(イ) ALCパネル:屋根(非歩行用)、床、外壁及び間仕切壁

(ウ) 押出成形セメント板(ECP):外壁及び間仕切壁

8.1.2 基本要求品質

(1) この章で対象とするコンクリートブロック、ALCパネル及び押出成形セメント板は、いずれもセメント系の工場生産品であり、材料の寸法や品質等の規格がJISで定められているので、これに適合するものを用い、そのことが分かるようにしておく。

(2) コンクリートブロック、ALCパネル及び押出成形セメント板は、一般的に、仕上材の下地として用いられる。したがって、適切な位置に正しい方法で精度よく取り付けられていないと、次工程の仕上げに悪影響を及ぼすだけでなく、耐震性や構造耐力上の欠陥となる場合もある。このため、施工方法や取付けの詳細、施工精度や管理の方法等を品質計画として 施工計画書や施工図等で明確にし、これによって施工を進め、管理した結果が分かるようにしておく。

(3) コンクリートブロック、ALCパネル及び押出成形セメント板では、構造耐力上必要な強度や耐久性をもつものが特記されることが原則となっている。また、「標仕」で、取付け工法や耐火性能を確保するために必要な事項等が規定されている。「構造耐力、耐久性、耐火性等に対して有害な欠陥がないこと。」とは、例えば、ブロック工事では、設計図書で鉄筋の種類や径、継手や定着の位置、長さ、かぶり)厚さ等が定められているので、これらの仕様をまもり、施工の手順、精度、管理の方法等について、品質計画で具体的に記載し、これによって施工及び管理したことが分かれば、要求された性能を満たしていることになる。

8章 5節 押出成形セメント板 外壁パネル工法

8章 コンクリートブロック、ALCパネル及び押出成形セメント板工事

5節 押出成形セメント板(ECP)

8.5.3 外壁パネル工法

(1) 取付け方法

取付け方法は、パネルの縦張り工法と横張り工法の2方法がある。地震時の層間変位にパネルが追従できるように、縦張り工法の場合は、ロッキングできるように、また、横張り工法の場合は、スライドするように取り付ける。

外壁パネル工法の種別を表8.5.2に、その取付け例を図8.5.3及び図8.5.4に示す。

表8.5.2 外壁パネル工法


           姿図

 


               平面図
  図8.5.3 縦張り工法(ロッキング方式)の取付け例(その1)

 


 図8.5.3 縦張り工法(ロッキング方式)の取付け例(その2)

 


      開口部断面詳細図

 


         開口部平面詳細図

 


 図8.5.3 縦張り工法(ロッキング方式)の取付け例(その3)

 


           姿図

 


          平面図
図8.5.4 横張り工法(スライド方式)の取付け例(その1)

 


            断面部
図8.5.4 横張り工法(スライド方式)の取付け例(その2)

 


     開口部断面詳細図

 


           開口部平面詳細図

 


         コーナー部出隅平面詳細図
  図8.5.4 横張り工法(スライド方式)の取付け例(その3)

 

(2) 風圧力
風圧力により支持間隔が決められる。建物の形状や使用部位等によって風圧力が異なるため、パネルの取付け耐力の検討を行う必要がある。

詳細については、ECP(押出成形セメント板)協会「ECP施工標準仕様書」等を参照するとよい。

(3) 地震カ
躯体の層間変形角に対する追従性能と、躯体から仕上げ材までの耐力の検討を行う必要がある。

詳細については、「ECP施工標準仕様書」等を参照するとよい。

(4) 耐火構造

耐火構造は、建築基準法施行令第107条の規定に基づく技術基準に適合したものである。そのため所定の耐火性能を満足するパネル及び仕様により行う。

(5) パネル下地金物

パネルの下地金物は、構造体にパネルを確実に取り付けるためのものであり、必要な強度が十分確保できるものを用いる。パネル下地金物は、S造の場合は溶接、 RC造の場合は埋込みアンカー等により安全性を確認し取り付ける(14.1.3(1)参照)。

(6) パネル幅の最小限度

パネル幅が小さい場合は、衝撃による破損のおそれが大きくなるため、「標仕」8.5.3(6)ではパネルモジュールの1/2である300mmを最小限度としている。

(7) 欠け、傷等の補修
軽微な損傷があるパネルで、パネルの構造耐力の低下がないと判断されるもの、防水性能が確保できると判断されるもの及び外観が著しく損なわれないものは、補修して用いることができる。

補修手順については、「ECP施工標準仕様書」を参照するとよい。

(8) パネル相互の目地幅

パネル相互の目地帳は、地震時の変形に対応する縦張り工法及び横張り工法の場合も短辺の方が大きな目地幅が必要である。「標仕」8.5.3(9)では、目地幅は、特記によるとしているが、長辺は10mm以上、短辺は15mm以上としている。

長辺の目地は、パネル同士をかみ合わせるため製品ごとに一定の幅となる。短辺の目地幅は、地震時の層間変位を吸収できるように設定する。また、日常の温度変化によるパネルの長さ変化に対してシーリング材の伸縮が許容範囲内に入るように設定する。

(9) 出隅及び入隅のパネルの目地幅

目地の動きは、建物部位によって様々であることから、部位ごとの変形量を考慮して目地幅を設定する必要がある。特に、出隅及び入隅のパネル目地幅は、大きくする必要があり、「標仕」8.5.3 (10)では特記によるとしているが、特記がなければ 15mm程度としている。また、開口部周囲の目地についても同様な考慮が必要である。

(10) パネルの表裏確認
パネルの表裏の確認方法は、パネル短辺、又は長辺の小口面に表裏が記載されているので、それにより確認する。強度上、表裏による違いはないが、表面はパネル製造所で仕上げ面としての表面処理や検査が行われている。

8章 5節 押出成形セメント板 間仕切壁パネル工法

8章 コンクリートブロック、ALCパネル及び押出成形セメント板工事

5節 押出成形セメント板(ECP)

8.5.4 間仕切壁パネル工法

(1) パネルの取付け工法
外壁パネル工法と同様に、横張り工法と縦張り工法がある。横張り工法は外壁パネル工法の横張り工法と同様である。

縦張り工法は、風圧力等の外力が加わらない部位に用いる場合には、パネルの上下端2箇所で固定する。固定方法は、上下端のパネル取付け下地として溝形鋼あるいは山形鋼を用い、専用の取付け金物によりパネルを固定する(図8.5.5参照)。


            姿 図

 


    コーナー部           目地部

 
壁付き部
(注)耐火目地材の幅は30mm以上とし、厚さは隙間寸法の1.2倍程度とする。

図8.5.5 間仕切壁の取付け例

(2) 間仕切壁パネル構法における耐震性能は、躯体の層間変形角に対する追従性能と、下地金物の耐力の検討を行う必要がある。

詳細については、「ECP施工標準仕様書」等を参照するとよい。

(3) 溝形鋼材又は山形鋼の取付け

下地鋼材として用いる溝形鋼材又は山形鋼の取付けは、精度の確保が最も重要である。そのため、施工直前に位置を正確に決めることのできる、あと施エアンカー等による取付けを原則とする。しかし、エレベータシャフトのように下地が鉄骨の場合は溶接等による取付けも可能である。

(4) 工事現場でのパネルの切断

工事現場でのパネルの切断は、パネルの硬度が大きいので専用のダイヤモンドディスクカッターを用いて切断する。また、パネルヘの孔あけは、ドリルにより行う。振動ドリルを用いるとパネルが破損するおそれがあるので用いてはならない。

(5) 防火区画の形成

間仕切壁の耐火性能は、建築基準法施行令第107号の規定に基づく技術基準による。そのため、防火区画を形成する場合は、所定の耐火性能を満足するパネル及び仕様により施工する。縦張り工法の上部取付金物及び横張り工法の全ての取付金物は、建築物の階に応じて所定の耐火性能を有する耐火被覆を行う(図8.5.6参照)。

なお、100mを超える竪穴区画やハロゲン化物消火設備等を設附する防談区画において、煙等の漏えい防止対策が必要な場合には、「乾式工法を用いた防火区画等における煙等の漏えい防止対策に係る指導基準」(平成21年4月10日東京消防庁通達)を参考にするとよい。


    図8.5.6 間仕切壁の取付け例

8章 5節 押出成形セメント板 溝掘り及び開口部の処置、施工における留意点

8章 コンクリートブロック、ALCパネル及び押出成形セメント板工事

5節 押出成形セメント板(ECP)

8.5.5 溝掘り及び開口部の処置

(1) パネルの表裏面に溝掘りを行ってはならない。パネルに溝を設けると、溝部において破損のおそれが大きいため溝掘りは禁止されている。

(2) 出入ロ・窓等の開口を設ける場合は、バネルに孔あけ及び欠き込みを行わない。パネル割付けの際に開口がある場合は、開口位置を図8.5.7に示すように、パネル割付けに合わせる。開口の周囲には補強材を設け、開口部にかかる風荷重は、原則として補強材によって直接躯体に伝えなければならない。


図8.5.7 窓等の開口部の設置とパネル割り

(3) 設備開口を設ける場合は、パネルに孔あけ及び欠き込みを行わない。やむを得ず、孔あけ及び欠き込みを行う場合は、欠損部分を考慮した強度計算を行い、安全が確認された大きさを限度とする。ただし、計算結果にかかわらず、孔あけ及び欠き込みの限度は、表8.5.3の数値以下とする。


表8.5.3 パネルの孔あけ及び欠き込みの限度


8.5.6 施工における留意点

(1) 計画上の留意点

(ア) 面内せん断力を負担するような箇所・取付け工法での使用は避ける。

(イ) 支持間隔や厚さにより許容荷重が異なるため、必ず強度計算を行って確認する。

(ウ) 開口部には、風圧力に見合った開口補強鋼材を用いる。

(エ) 構造体との取合い部分は、クリアランスを設ける。

(オ) 漏水に対する対策が特に必要な場合は、シーリングによる止水のみではなく、二次的な漏水対策も検討する(図8.5.8及び図8.5.9参照)。

図8.5.8 縦張り工法の二次的な漏水対策の例

図8.5.9 横張り工法の二次的な漏水対策の例

(カ) タイルをモルタルにて張り付ける場合は、タイル仕上げ用パネル(タイルベースパネル等)を用い、張付けモルタルはポリマーセメントモルタルとする。

有機系接着剤にてタイルを張り付ける場合は、フラットパネルを用い、JIS A 5557(外装タイル張り用有機系接着剤)に規定する弾性接着剤を用いる。タイル張り乾式工法の場合は、リブを設けた専用パネルを用い、専用タイルを引っ掛ける。タイルの一部は接着剤で固定する。

(キ) タイルの割付けはパネル内割付けとし、タイル及び張付けモルタルがパネル目地をまたがないようにする。

(ク) パネルにより仕切られる空間の湿度差が大きい場合は、パネルに反りが発生するおそれがある。このような場合、パネルの使用される環境条件等を考慮した取付け方法等により、反り防止対策を必ず行うようにする。

(ケ) 寒冷地等厳しい条件下で用いる場合は結露の検討も必要である。

(2) 施工上の留意点

(ア) バネル間の目地にはシーリングを行う。そのためシーリング工事の良否が壁の防水性能を左右する。バックアップ材は四角形のものを選定し、適切なシーリング材深さ(10mm以上)となるように調整し、二面接着となるように施工する(図8.5.10参照)。


         図8.5.10 パネル間目地シーリング

(イ) 取付け金物(Zクリップ)は下地鋼材に30mm以上の掛り代を確保し、取付けボルトがZクリップのルーズホール中心に位置するように取り付ける(図8.5.11参照)。

図8.5.11 Zクリップ掛り代

参考文献