3節 カーペット敷き
19.3.1 適用範囲
(a) この節は、織じゅうたん、タフテッドカーペット、ニードルパンチカーペット及びタイルカーペットの敷込みを対象としている。
(b) 作業の流れを図19.3.1に示す。
図19.3.1 カーペット敷込み工事の作業の流れ
(c) 施工計画書等
(1) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
⑩ 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等
(2) 見本品を提出させ、風合(肌触り、踏み感触)、色合等について、設計担当者と打ち合わせて決定する。
(3) 床仕上げの施工に関しての「床仕上管理士」及び「組合派遣指導員」・「企業内工事指導員」制度等については、19.2.1(c)(4)と同様である。
19.3.2 一般事項
(a) パイル糸
そ(梳)毛糸は、細くて長い繊維が用いられている(通常7 〜12番手)。
紡毛糸は.太く短い繊維が用いられている(通常3 ~7番手)。
化学繊維には木材パルプから造るレーヨン及び石油から造られるアクリル、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル等がある。これらの繊維を用いる場合は、長所、短所をよく把握し、使用目的に応じた最適なものを選ぶのがよい。
フィラメント(Filament) :JIS用語「連続したきわめて長い繊維」。無ねん(撚)又はわずかなより糸として用いられ、紡績糸より滑らかである。
紡糸の際、不規則に凝固させる又は熱可塑性を利用し断面形状を変えることなどにより、かさ高加工したものがある。
パイル糸の染色方法は大別して先染と後染があり、羊毛は先染とするが、更にそ毛糸は糸染、紡毛糸は原毛染(綿染)とする。ナイロンは、原着又は後染とする。
繊維にする前に顔料を入れて着色する。
糸になる前に染色する方法。
糸を紡いだのち、染色する方法で、1色に染める浸染と部分ごと異色染をするものがある。
製織後、裏加工する前に染色する方法で、1色に染める浸染と繊維により着色性が異なることを利用して1液で2〜4色に染める異染があり、それぞれバッチ染色法と連続染色法がある。
パイル面に直接柄を表現する方法。
「標仕」19.3.3(a)(3)で、羊毛については、パイル糸は防虫加工をするように定められている。また、ウールマーク、ファーンマークのあるものは、防虫加工がなされている。化学繊維は、虫害に対しては極めて強い。
ウールズ・オブ・ニュージーランドのシンボルマークであり、美しい自然環境の象徴でもある、植物の「シダ」を形どったニュージーランド羊毛の品質保証マークである。
(1) カーペットの上を人が歩くと、摩擦により人体に静電気がたまる場合がある。静電気(人体帯電圧)が3kV程度以上になったときに,導電体と接触すると、放電され. ショックを感じるといわれている。
静電気の発生は、繊維の種類、カーペットに接するもの(靴底等)、湿度等によって異なるため、帯電しにくい素材の選択又は湿度を上げるなどの対策が必要である。
(2) 帯電防止には色々な加工方法があるが、その帯電防止性能については、「標仕」 19.3.3(a)(4)では、JIS L 1021-16(繊維製床敷物試験方法ー第16部:帯電性一歩行試験方法)による人体帯電圧の値の3kV以下とし、その適用は特記によるとしている。
(1) 消防法令により、高層建築物(高さ31mを超える。)、地下街、劇場、公会堂等は防炎規制の対象となっている(法第8条の3第1項、令第4条の3第1項)。
(2) 防炎規制の対象物品は、法で定める基準以上の防炎性能を有するものとし、防炎性能を有するものである旨の表示(防炎表示)をしなければならない。
(3) 防炎表示は、ピース物(置敷き)の場合は裏面張付け、施工もの(室内等に固定されたもの等)は、各部屋ごとに主要な出入口(1箇所以上)等に防炎ラベル(図19.3.2参照)を張り付ける。
なお、防炎表示を附するものは消防庁長官の登録を受けたものでなければならない。
(4) 「標仕」では、公共建物を対象としているため、高さ31m以下の場合でも3節「カーペット敷き」を適用する工事では防炎性能を有し、防炎表示のあるものと定めている。
防炎性をもたせる方法としては、繊維製造の段階で防炎成分を加えるなどがある。
図19.3.2 防炎ラベル
(f) ウールマーク、ファーンマーク、ステッキマーク
パイル糸の種類が毛(混紡を含む。)のカーペットを用いる場合は、ザ・ウールマークカンパニー(AWI)で登録し、管理されているウールマーク及びウールマークブレンド(図19.3.3(イ)及び(ロ)参照)、ウールズ・オブ・ニュージーランドで登録し、管理されているファーンマーク(図19.3.3(ハ)参照)、又は英国羊毛公社で登録し、管理されているステッキマーク(図19.3.3(ニ)参照)の張り付けられたものを用いるのがよい。
図19.3.3 ウールマーク・ファーンマーク・ステッキマーク
19.3.3 材 料
(a) カーペットの分類を図19.3.4に示す。
図19.3.4 カーペットの分類
ウィルトンカーペットは、18世紀の中ごろ、イギリスのウィルトン市で初めて機械織りとして作られたカーペットである。
色は1〜5色を使い美しい模様を織り出すことができる。また、パイルの長さも自由に変えられるので、無地物でも表面のテクスチャーに変化をつけた柄が出せる。
織り方は、基礎となる布地部とパイル糸を同時に織り込み、地よこ糸3本ごとにパイル糸をすくい上げてループ状としたもの(三越織り)で、2本のよこ糸でパイル糸を完全に押さえるので抜毛がない。また、よこ糸2本ごとにパイル糸をすくい上げてループ状にしたもの(二越織り)が、ブラッセルカーペットであり、これをカットしたものをベルベット織りという。このようにたて糸、よこ糸とパイル糸を同時に織り込んでいるので、組織がしっかりしており施工後伸びてしわができず、物理的にも、外観的にも品質が安定して優れている。
なお、ウィルトンカーペット及びブラッセルカーペットの製織構成と各部の名称を図19.3.5及び6に示す。
JIS L 4404(織じゅうたん)では、他にアキスミンスターカーペット等があるが、「標仕」ではこれらを織じゅうたんとし、種別、織り方等は特記によることとしている。
図19.3.5 ウィルトンカーペットの製織構成
図19.3.6 ブラッセルカーペットの製織構成
普及用として考案された機械刺しゅう敷物で、生産速度が早く価格が安い。製造方法は一列に並んだ千数百本のミシン針によって基布(ジュート、合成繊維等)にパイルを植え付け、パイルの変形、抜けを防ぐため基布の裏から固着剤(ラテックス等)で加工する。通常は、基布(第一基布)の裏にもう1枚裏布(第二基布)を張り付けて、カーペットの変形を防ぎ、踏み心地を良くしている。ループパイルやカットパイルのものがある。パイルの材質は化学繊維、羊毛等の天然繊維及びこれらの混紡が用いられる。
なお、タフテッドカーペットの製織構成と各部の名称を図19.3.7に示す。
黄麻(こうま)という植物の繊維から作られる素材。通気性・保温性に優れ、丈夫な点が特徴で、織り方によって、ヘッシャンクロス、ガンニークロス、ジュートフェルトなどがある。
図19.3.7 タフテッドカーペットの製織構成
シート状の繊維を基布に積み重ね又は基布を挟み込み、かえりのあるニードル(針)で突き刺してフェルト状にしたものである。ゴム等のバックコーティング剤等で補強したり、目の荒い織物を心材としてその両面にフェルト状とした繊維層を置き、織物を通して繊維相互を刺し絡めて作ることが多い。一種の不織布であるので、裁断面から糸のほつれがなく自由にカッティングでき、施工は容易である。繊維層の材質は、ポリエステルが最も多く用いられている。
タフテッドカーペット等を基材として裏面に強固なバッキング材(図19.3.8参照)を裏打ちしたタイル状カーペットであって、500 × 500(mm)の正方形が大半を占める。官庁、オフィス、学校、病院、銀行、工場、研究所等ではOA機器の普及及び発展に伴い、多く使用されるようになってきた。二重床と組み合わせても使用されている。
タイルカーペットの特性としては、施工が迅速であり、部分補修が容易であるが施工に際しては下地の平たん性が要求される。タイルカーペットの構造は、図 19.3.9のとおりである。
図19.3.8 バッキング材の種類
図19.3.9 タイルカーペットの構造
グリッパー工法で使用する下敷き材は、「標仕」19.3.3(e)ではJIS L 3204(反毛フェルト)の第2種2号、呼び厚さ8mmを用いるように定められている。
なお、一般的な下敷き材の材質.製法等を表19.3.1に示す。

(g) 取付け用付属品
グリッパーは、米国で製作され普及したものであるが、現在市販されているグリッパーは、厚さ6〜7mm、幅23~25mm、長さ1.2mの米松合板に、とび出し 4~5.6mmの針が60度の角度で15mm程度の間隔に2列に逆さに打ち込んであるもので種類には、木床用、コンクリート床用がある(図19.3.10参照)。
図19.3.10 グリッパー
黄銅製、ステンレス製又は防錆処理を施したコンクリート用釘を用いるのがよい。
「標仕」では、接着剤は JIS A 5536(床仕上げ材用接着剤)により、カーペット製造所の指定するものとしホルムアルデヒド放散量は、特記がなければF☆☆☆☆としている。
なお、タイルカーペット用接着剤はJIS A 5536に規定する粘着はく離形(ピールアップ形)のアクリル樹脂系エマルション形接着剤が一般的に使用されているが、過度なせん断荷重が加わる場所では、ずれやはがれが生ずる場合があるため、粘着はく離形ではなく、接着強度の高い接着剤を選択する必要がある。
19.3.4 工 法
床の周囲に釘又は接着剤で固定したグリッパー(スムースエッジ)にカーペットの端部を引っ掛け、緩みのないよう一定の張力を加えて敷き詰める工法である。耐衝撃性を高めるために下敷き材が使用される。
接着剤を使ってカーペットを床に固定する工法で温・湿度の変化による伸縮を防ぎ、維持・補修も容易である。
カーペット製造所の指定する粘着はく離形接着剤を使用し、市松張りを原則とする。
タイルカーペットの特徴は、部分的に簡単にはがせて、かつ、簡単に張り替えることができる点にある。
下地床高の基準は、一般に下敷き厚さ+毛足長さ=カーペット敷き厚さとして定めてよい。
なお、国土交通省大臣官房官庁営繕部整備課「建築工事標準詳細図」には、下敷き厚さ+カーペット厚さ=総厚さよりグリッパー工法では 3mm、全面接着工法では2mm差し引いた厚さと定められている(図19.3.11参照)。
図19.3.11 「建築工事標準詳細図」による基準床高
(i) 敷詰め:床面いっぱいにカーペットを敷き詰める方法
(ii) センター敷き:廊下や階段等の床の中央部に長手方向に連続して敷く方法
(iii) 置敷き:カーペットを床に置いて敷くだけで、ピース敷き、中敷き等がある。
(iv) 重ね置き:敷き詰めたカーペットの上にアクセントを付けるために部分的に敷く方法
下地の不陸は、カーペットを敷き込んだ場合に表面に現れ、見苦しくなるので注意する。
下敷き材のはぎ合せは、通常突付けとし、下地がモルタル塗りの場合等は、ジョイント及び四方を接着剤で接着する。木造の場合は.釘等で留め付ける。
グリッパー取付けは.カーペットの厚さに応じて、周辺に沿って連続して図19.3.12のように均等な溝(隙間)をつくり、釘又は接着剤で取り付ける。
図19.3.12 カーペットの厚さに応じたグリッパーの取付け位置
仕上げをする前には継目は真直ぐになっているか、模様があっているか、毛並みは同一方向にそろっているか、十分によく伸び切っているかを検査する必要がある。施工直後に表面に多少の凹凸が残る程度でも、その後の歩行によってたるみやしわを生じトラプルの原因となる。
(i) 張りじまいは、ニーキッカー(図19.3.14(イ))で伸展しながらグリッパーに引っ掛け、カーペットの端を図19.3.13のようにステアツール(図19.3.14(ロ))を用いて溝に巻き込むように入れる。30m2( 6 × 5 [ m ] )程度を超える施工にはパワーストレッチャー(図19.3.14(ハ))を使用して施工する。
図19.3.13 カーペット張りじまい
図19.3.14 カーペット敷込み用工具
(ii) センター敷きの張りじまいの各部納まりを図19.3.15に示す。
図19.3.15 センター敷きカーペット張りじまい
(iii) センター敷き、置敷きのカーペットの切り口の端部は、30mmまでパイル糸をはさみで刈り取り、裏面に折り返して千烏縫い(図19.3.16参照)とするか、接着剤で張り付ける。
図19.3.16 千鳥縫い
(5) 階段の納まりを図19.3.17に示す。
図19.3.17 階段敷きの納まり
(6) 硬質の床材及び他のカーペットと取り合う場合の納まりを図19.3.18に示す。
図19.3.18 取り合う場合の納まり
(i) 「標仕」19.3.4 (c)(6)では、はぎ合せ、幅継ぎは次のいずれかによると定めている。
① つづり縫いは、従来から一般に行われている工法で、丈夫な綿糸、亜麻糸又は合成繊維糸で間ぜまに手縫いで行う(図19.3.19参照)。
図19.3.19 つづり縫い
ヒートボンド工法は、図19.3.20のように接着テープ(シーミングテープ)をアイロン(160℃程度)で加熱しながら、接着はぎ合せをする工法である。
図19.3.20 ヒートポンド工法
なお、切口に合成ゴム系の接着剤を塗りほつれ止めを行う。
なお、ループパイルの場合は、ループパイルカッター(図19.3.21(ロ))を使用するのがよい。
図19.3.21 カッター
割付け計画の段階でできるだけ避ける。やむを得ず行なう場合は、図 19.3.22のように重ね合わせ、カーペットを裁断する。両方のカーペットをまくり上げ、接着テープを継目の部分に置き、のりを付け、押さえて接着する(図 19.3.23参照)。
図19.3.22 ダブルカット
図19.3.23 幅継ぎ
接着剤は、カーペット自体の収縮を押さえるため、はく離強度よりもせん断強度を重視したタイプを使用する(図19.3.24参照)。
なお、せん断強度は.0.15N/mm2程度以上のものが望ましい。
図19.3.24 はく離強度とせん断強度
(i) 幅接合〈幅継ぎ、幅ジョイント〉は、ループパイルカッターを使用して目通しカットを行う。
(ii) 丈接合〈丈継ぎ、丈ジョイント〉は、割付け計画の段階でできるだけ避ける。やむを得ず行う場合は、ダブルカット(図19.3.22参照)とし、カット面の基布部に瞬間接着剤を使用して、接合線を押え板(木づくり)で押さえて24時間程度養生を行う。
タイルカーペット接着剤は、カーペット製造所の指定する粘着はく離形(ピールアップ形)を使用する。
割付け寸法は、基本的にビニル床タイルと同様であり、材料のサイズと部屋のサイズ(実測値)とから計算される。この時、パイル目の方向を確認するとともに端部に細幅のタイルカーペットがこないようにする。
コンクリート下地に張り付ける場合、下地の乾燥が十分でないと異臭の原因となることがあるため、下地が十分乾燥していることを確認する。
基準線に沿ってタイルカーペットを押し付けながら部屋の中央部から端部へ敷込んで行く。
特に指定がない限り市松張りを原則とする。
タイルカーペットのバッキングの種類によって、目地詰めの要領が異なることに注意する。
出入口部分には、「3分の2以上の大きさのもの」がくるように割り付ける。これは出入口部分に切断された小さなタイルカーペットがくると、歩行によってはがされるからである。
ビチューメンバッキングの場合は、軟らかで、かつ、弾力性をもたないために、圧縮の力を吸収し変形したままになってしまうが、塩ビバッキングの場合は、ガラス繊維等の心材が入っていることもあって、硬いため圧縮の力に反発し、無理に押し込むと反りやふくれとなってしまうことがある。
基本的には、フラットケーブルの敷設の前にタイルカーペットを施工することを前提とするが、事前に発注者・設計者・建築業者・電気工事業者等の関係者がお互いに確認をしておくことが重要である。
床パネルの段違いや隙間を1mm以下に調整したのち、タイルカーペットを施工する。タイルカーペットの割付けは、床パネルの目地とタイルカーペットの目地を100mm程度ずらして行う。
19.3.5 品質確認
カーペットの品質を確認するための検査を行う場合は、カーペットの種類に応じてJIS L 4404(織じゅうたん)、JIS L 4405(タフテッドカーペット)又は JIS L 4406(タイルカーペット)による。
パイル糸の染色堅ろう度は、(a)のJISによって試験した耐光堅ろう度及び摩擦堅ろう度(乾燥)の等級が、4級以上のものであればよい。ただし、特に濃色のもの又は淡色のものは、いずれか一方の堅ろう度が3級であってもよい。
外観の品質は、JIS L 4404、JIS L 4405及びJIS L 4406に定められている。なお、JISが制定されていないニードルパンチカーペットはこれに準ずる。
検査を行う場合は、敷物の検査を専門に行っている (-財)ケケン試験認証センター又は公認の検査機関がよい。
カーペットは指定建築材料(19.10.3(b)参照)ではなく又 JISでもホルムアルデヒド放散量に関する品質基準が定められていないため、「標仕」においても放散量を規定していない。