2章 仮設工事 1節 共通事項

2章 仮設工事


1節 共通事項

2.1.1 一般事項

(1) 仮設については、公共工事標準請負契約約款に基づく工事請負契約書第1条第3項において、「仮設、施工方法その他工事目的物を完成するために必要な一切の手段については、この契約書及び設計図書に特別の定めがある場合を除き、受注者がその責任において定める。」と規定しており、受注者がその責任において履行することができる。

したがって、「標仕」2章では、工事の施工に当たり発注者として示すべき最低限の事項について規定している。

(2) 仮設工事計画に当たっては、仮設物によって建物の品質を損なうことなく、安全で効率的な作業を行えるよう検討する必要がある。また、現場近隣の環境保全に配慮するとともに、仮設資材の有効活用も省資源対策上必要である。

(3) (1)で述べたとおり仮設計画は監督職員の承諾事項ではないが、参考までに工事の総合仮設をまとめた施工計画書の記載事項を示すと、概ね次のようになる。

① 工事目的物の位置と敷地との関係(配置と高低)
② 仮囲いの位置、構造及び主要部材の種類
③ 材料運搬経路と主な作業動線
④ 仮設物等の配置(監督職員事務所、受注者事務所、休憩所、危険物貯蔵所、材料置場、下小屋、廃棄物分別置場等)
⑤ 排水経路、工事用電力並びに水道の引込み位置及び供給能力
⑥ 足場並びに仮設通路の位置、構造及び主要部材の種類
⑦ 揚重機(リフト、クレーン、エレベーター、ゴンドラ等)の種類及び配置
⑧ 作業構台の位置、構造及び主要部材の種類
⑨ 墜落防止及び落下物防止並びに感電防止の施設
⑩ 近隣の安全に対する処置(近隣使用道路の配置計画図等)

2.1.2 仮設材料

(1) 一般事項

仮設に使用する材料は、それぞれの用途に応じ、品質、性能等が適正でなければならない。一般に仮設材料は、工事現場において長期間にわたり、かつ、繰り返し使用されることから、品質の確認が容易で性能の低下が生じにくいものでなければならない。

また、仮設材料には、その品質又は使用方法等について労働安全衛生法、消防法、 JIS (日本産業規格)、その他団体等の定める基準による規制等を受けるものがあるので、これらについてあらかじめ検討・確認しておくことが必要である。

特に、足場を構成する仮設機材については、長期間繰り返して使用されるうちにその強度が低下し倒壊事故等重大な災害につながるところから、労働安全衛生法令及び厚生労慟大臣が定める規格に規定される要件を具備するものを使用することが必要である。また、生産、流通段階での安全性の確保を図るために、(-社)仮設工業会では仮設機材に対し、材科、構造及び強度等を規定した認定基準を定めている。

さらに、経年仮設機材(現場で一度でも使用されたことのある仮設機材)が、繰り返し使用されている間の品質、性能等確保のために、原生労働省から経年仮設機材の適正な管理のための通達「経年仮設機材の管理指針」(平成8年4月4日労働省基発第223号の2)(以下、この章では「管理指針」という。)が示されている。

(2) 仮設機材の強度等の確認及び適正な管理
作業現場の安全確保には、仮設機材の製造時における強度等の確認・保証及び経年仮設機材の適正な管理が重要である。仮設機材の強度等の確認・保証について、(-社)仮設工業会では、製造時における足場用機材は、厚生労働大臣が定める規格及び認定基準に適合する旨を、刻印等により機材の全数に表示することを行っている。その表示等は、機材の種類により表2.1.1のとおりである。

なお、足場用機材の規格等に定めるもの以外のものの使用に当たっては、当該機材の製造者あるいは使用者により強度等について確認されたものであることが必要である。

現在製造されている主要な仮設機材は、防錆処理としてめっき、特に、浴融亜鉛めっきが施されているため、錆による肉厚の減少の懸念が少なくなった一方で、より長期にわたって使用される傾向となっており、経年による性能低下がないように適正に管理された仮設機材の使用が必要となる。仮設機材は、変形(曲がり、へこみ、反り等)及び損傷(亀裂、摩耗等)が直接性能低下の要因となるので、経年仮設機材の適正な管理は欠かすことができない。

このことから、厚生労働省の管理指針で規定している経年仮設機材に対して行う管理は、各機材ごとに定められた部位及び項目ごとに変形、損傷、錆等の程度による「選別」、経年仮設機材をいつでも使用できる状態に保持するための「整備」、機材を再使用可能な状態に復元する「修理」(部品交換を含む。)、さらに、性能試験、廃棄及び表示にわたるまで一連の管理基準等が明らかにされている。管理指針に基づき、(-社)仮設工業会では、仮設機材の整備、修理等を行っている機材センター等に対し、「適用工場制度」により、管理が適正である工場を認定し、経年仮設機材が適正な管理のもとに作業現場に提供されるようにしている。

表2.1.1 主な仮設機材とその表示