2節 コンクリートの種類及び品質(R4版)

第6章 コンクリート工事


2節 コンクリートの種類及び品質

6.2.1 コンクリートの種類

(1) 平成22年版「標仕」までは、使用骨材によってコンクリートの種類分けを行っていたが、近年、スラグ骨材等を含め密度の異なる各種の骨材が開発・使用され、特に細骨材は混合して使用される場合もあることから、平成25年版「標仕」から、気乾単位容積質量でコンクリートの種類を分類し、概ね気乾単位容積質量が 2.1~2.5t/m3の普通コンクリートと、より気乾単位容積質量の小さい軽量コンクリートの2種類とされた。

(2) 寒中コンクリート、暑中コンクリート、マスコンクリート、無筋コンクリート及び流動化コンクリートは、使用材料、施工時期・施工方法・施工場所等の施工条件、要求性能等によって10節までとは異なる品質管理が必要なため、「特別仕様のコンクリート」として11節から15節に別記されている。

(3) 平成16年6月に工業標準化法が改正され、平成17年10月1日からJISマーク表示制度は、国による認定制度から登録認証機関による製品認証制度となった。これによって、JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)もこれまでの「工場認定」から「製品認証」へと変更された。

「標仕」でも平成22年版の改定以降、 I類コンクリートは、JIS Q 1001(適合性評価-日本産業規格への適合性の認証-一般認証指針)及びJIS Q 1011(適合性評価-日本産業規格への適合性の認証-分野別認証指針(レディーミクストコンクリート))に基づき、JIS A 5308への適合を認証されたコンクリート、II類コンクリートは、 I類以外のJIS A 5308に適合したコンクリートとされている。

「標仕」では、従来建築工事には特別な場合を除き、JIS A 5308に適合するレディーミクストコンクリートで対応できると考えられている。そのうえで、適合を認証されたI類コンクリートを使用することを原則としているが、山間部、離島等で運搬可能時間の距離内にJISマーク表示認証を取得した製品(以下、この章では「JISマーク表示認証製品」という。)を製造する工場(以下、この章では「JISマーク表示認証工場」という。)がない場合でも、II類コンクリートであれば、基礎や主要構造部等の建築基準法第37条に規定される部分に適用できると考えてよい。

なお、建築基準法第37条の指定建築材料が適合すべき規格及び品質に関する技術的基準を定めた平成12年建設省告示第1446号の一部が平成28年6月13日に改正(国土交通省告示第750号)され、建築物の基礎や主要構造部等に使用するコンクリートが適合すべき日本工業規格は、JIS A 5308-2014に改められ、従来、国土交通大臣の認定が必要であった回収骨材を使用したコンクリートについても、平成31年版「標仕」からは、特記をせずに使用できることとなった。

その後、JIS A 5308-2014が、2019年3月に改正されたことにより、平成12年建設省告示第1446号の一部が令和元年5月16日に改正(国土交通省告示第18号)され、建築物の基礎や主要構造部等に使用するコンクリートが適合すべき日本工業規格は、JIS A 5308-2019に改められた。それに伴い、国土交通省住宅局建築指導課長より発出された、国住指第10号令和元年5月16日「建築物の基礎、主要構造部等に使用する建築材料並びにこれらの建築材料が適合すべき日本工業規格又は日本農林規格及び品質に関する技術的基準を定める件の改正について(技術的助言)」の抜粋を下記に示す。

建築物の基礎、主要構造部等に使用する建築材料並びにこれらの建築材料が適合すべき日本工業規格又は日本農林規格及び品質に関する技術的基準を定める件の改正について(技術的助言)

(国住指第10号 令和元年5月16日)

中略

建築基準法第37条において、建築物の基礎や主要構造部等に使用する建築材料として国土交通大臣が定めるもの(以下「指定建築材料」という。)については、その品質が日本工業規格若しくは日本農林規格に適合するもの又は国土交遥大臣の認定を受けたものにしなければならないこととされているところ、今般、告示第1446号において、指定建築材料であるコンクリートが適合すべき日本工業規格として、JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)- 2014に代わり、新たにJIS A 5308-2019を位置付けることとした。

JIS A 5308-2014の内容は、軽量コンクリート及び高強度コンクリートであってはスランプが10cmのもの以外は JIS A 5308-2019に包含されるため、JIS A 5308-2014の仕様に適合するコンクリート(軽量コンクリート及び高強度コンクリートであってスランプが 10cmのものを除く。)については、本改正後においても、引き続き法第37条第1号に適合するものとして取り扱って差し支えない。

2019年版のJIS A 5308のレディーミクストコンクリートの種類を表6.2.1に示す。
なお、2019年版のJIS A 5308においては、普通コンクリートの区分におけるスランプフローで管理するコンクリートの追加及び高強度コンクリートの区分におけるスランプフローの範囲の拡大がなされたが、「標仕」では、スランプで管理する普通コンクリートを標準としている。

表6.2.1 JISA5308:2Ql9(抜粋)によるレディーミクストコンクリートの種類及び区分

(4)「標仕」では、建築基準法第37条第二号による国土交通大臣認定のコンクリートは、設計担当者の特記としているので、特記された場合には、認定条件等を十分に確認して使用することになる。

なお、ここでいう「認定条件等」とは、建設省告示第1446号の第3に規定される法第37条第二号の品質に関する技術的基準のことをいう。

6.2.2 コンクリートの強度

(1)「標仕」では、コンクリートの設計基準強度は、36N/mm2以下(軽量コンクリートでは27N/mm2以下)としている。

なお、従来、軽量コンクリートの設計基準強度は27N/mm2未満であったが、「JASS 5 鉄筋コンクリート工事」の軽量コンクリート2種の規定に合わせ、平成25年版「標仕」から27N/mm2以下に変更された。

高強度化が流れではあるが、4~5階建て、数千m2程度のRC造建築物では高強度コンクリートを使用することはほとんどない。

(2) 構造体に打ち込まれるコンクリートの強度とは、構造体に打ち込まれるコンクリートが本来保有していると考えられるポテンシャルの圧縮強度のことであり、荷卸し地点でコンクリート試料を採取し、標準養生した供試体の材齢28日の圧縮強度で表される。ポテンシャルの圧縮強度は、設計基準強度に構造体コンクリートの強度と標準養生した供試体強度との差を考慮した値(構造体強度補正値(S):6.3.2(ア)(b)参照)を加えた調合管理強度以上でなければならない。

(3) 構造体コンクリートとは、構造体とするために型枠内に打ち込まれて養生され、硬化して構造体あるいは部材を形成しているコンクリートのことである。構造体コンクリートの強度は、初期に十分な湿潤養生が施されれば、材齢28日以降も長期にわたって強度が増進し、材齢91日においても強度増進は続き、停止することはない。しかし、コンクリート工事においては適切な材齢を定め、その材齢において設計基準強度を満足するように定める必要がある。建築基準法施行令第74条第1項第二号に基づき、昭和56年6月15日建設省告示第1102号(最終改正平成28 年3月17日「設計基準強度との関係において安全上必要なコンクリート強度の基準」)(以下、告示「コンクリート強度に関する基準」という)第1第二号ではコンクリートの強度を、コンクリートから切り取ったコア供試体について強度試験を行った場合に、材齢28日において設計基準強度の数値に7/10を乗じた数値以上、かつ、材齢91日において設計基準強度の数値以上であることを定めている。

一方、実際のコンクリート工事において構造体コンクリートの強度をコア供試体で試験することは、構造体に損傷を与え、かつ、修復が必要となるため困難である。このため、一般的には工事現場で構造体に打ち込まれるコンクリートから試料を採取し、構造体コンクリートと同じような強度発現をすると考えられる方法で養生した供試体の圧縮強度から構造体コンクリートの強度を推定し、品質管理を行っている。上記告示第1第一号では、現場水中養生を行った供試体について強度試験を行った場合に、材齢28日において設計基準強度の数値以上であることを定めている。

「標仕」では同告示の規定に基づき、原則として、現場水中養生による材齢28日における管理とし、これを滴足しないと想定される場合に、現場封かん養生による材齢28日を超え91日以内の管理を行うとしている。これは、施工現場における構造体コンクリート強度の判定材齢は一般的に28日とされていることに配駆したものである。

さらに、平成28年3月の同告示改正により第1第三号に標準養生(水中又は飽和水蒸気圧中で行う場合に限る。)が追加されたことから、平成28年版「標仕」においても標準養生による材齢28日における判定が追加された。

なお、構造体コンクリート強度を推定するための適切な材齢及び判定基準は養生方法ごとに異なるため、標準養生を含め「標仕」6.9.5で規定されている。

(4) 使用するコンクリートの強度及び構造体コンクリート強度の判定は、9節の6.9.4及び6.9.5によって行う。(2)でも記したように、構造体に打ち込まれるコンクリートとは、工事に用いるために工事現場に搬入したコンクリートのことであり、その強度は、コンクリートが本来保有していると考えられるボテンシャルの圧縮強度のことである。したがって、構造体に打ち込まれるコンクリートの強度は、荷卸し地点で採取して標準養生した供試体の材齢28日の圧縮強度で表し、その値は調合管理強度以上でなければならず、かつ、JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)の呼び強度の強度値を満足しなければならない。

6.2.3 気乾単位容積質量

(1) コンクリートの気乾単位容積質量は、使用する骨材の密度や調合によって異なり、構造計算で固定荷重を算定するときに、鉄筋コンクリートの質量を求めるために用いる値である。平成25年版「標仕」から、従来の使用骨材の種類による区分から、新たにコンクリートの気乾単位容積質量による区分に変更され、そのための標準的な判断基準として、「JASS 5」の規定値を参考に数値が示された。

(2) 軽量コンクリートの気乾単位容積質祇は、別途「標仕」10節で1種、2種の種類ごとに標準的な値の範囲が示されている。

6.2.4 ワーカビリティー及びスランプ

ワーカビリティーとスランプの関連等について次に示す。

(ア) ワーカビリティーは、打込み場所並びに打込み方法及び締固め方法に応じて、型枠内並びに鉄筋及び鉄骨周囲に密実に打ち込むことができ、かつ、机骨材の分離が少ないものとする。また、スランプの所要値は、特記がなければ、基礎、基礎梁、土間スラブでは15cm又は18cm、柱・梁・スラブ・壁では18cmとする。

(イ) ワーカビリティーは、運搬、打込み、締固め及び仕上げのフレッシュコンクリートの移動・変形を伴う作業の容易さと、それらの作業によってもコンクリートの均一性が失われないような総合的な性質であり、フレッシュコンクリートの流動性の程度を表すスランプとは別の概念である。

(ウ) 作業の容易さからいえば、スランプが大きく流動性が高いほうがワーカビリティーが良いといえるが、スランプが過大になると粗骨材が分離しやすくなるとともにブリーディング量が大きくなり、コンクリートの均一性が失われる。そこで、単位セメント量や細骨材率を大きくするとフレッシュコンクリートの粘性が大きくなり、粗骨材の分離は生じにくくなる。

(エ) スランプを大きくし、かつ、単位セメント量や細骨材率を大きくすれば、見かけ上はワーカビリティーの良いコンクリートが得られる。しかし、単位水量や単位セメント量が過大になると乾燥収縮率が大きくなってひび割れが生じやすくなるとともにセメントペーストやモルタル分の多いコンクリートとなって、打上りコンクリートの表面の品質が悪くなる。

(オ) このため、作業の容易さだけでワーカビリティーを評価するのではなく、ブリーディングや骨材の分離ができるだけ少なくなるようにするという条件も考慮しなければならない。

(カ) スランプは、打込み時のフレッシュコンクリートに要求される重要な品質項目の一つであるが、ここでいうスランプとは、荷卸し地点でのスランプである。スランプ18cmというのは、許容差を含めて考えればよく、その値は JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)の規定によれば±2.5cmである。

6.2.5 構造体コンクリートの仕上り

(1) コンクリート部材の位置及び断面寸法の許容差
(ア) コンクリート部材の位置及び断面寸法は、所定の許容差の範囲内になければならないが、これは次の理由による。

(a) 構造体としての耐力及び耐久性の確保
(b) 仕上げ二次部材又は設備等の納まり上の要求
(c) 美観上の要求

(イ) 部材の位置及び断面寸法の測定は、一般的には次のように行う。
特記された部材又はサンプリングした部材について、基準量からスケール等を用いて測定する。測定部分は両端及び中央の3箇所程度行う。

柱・梁等は直接測定できることが多く問題は少ないが、床・壁等の断面寸法は、両側から測定して計算で求めると測定誤差が大きくなることがある。そこで、開口部等を利用して直接測定する。

むやみに測定項目や測定数を増やすことは、測定費用や時間を要し、本来の目的から逸脱することになる。コンクリート部材の位置及び断面寸法は、型枠の変形等がなければ、型枠により決まるものであり、補修も困難であることから、コンクリート打込み前の型枠の設計・掛出し・組立等を確実に行うことが必要である。コンクリート打込み後は型枠の変形が生じたと見られる部分等について、確認のために測定する。

(ウ) (ア)及び(イ)に基づいて各部材の位置及び断面寸法を測定し、その結果、位置及び断面寸法の精度が「標仕」表6.2.3の許容値を満足しない場合は、「標仕」6.9.6に従って必要な措置を定め、監督職員の承諾を受けるとともに、適切な処置等を講じなければならない。

(2) コンクリート表面の仕上り状態
(ア) せき板に接するコンクリートの仕上り状態は特記によるが、コンクリートの打放し仕上げの場合は、「標仕」表6.2.4の種別に応じた「表面の仕上り程度」を目安とする。コンクリートの仕上り状態を良好にするには、不陸を少なくするために変形量の少ない型枠設計を行い、コンクリート打込みの際は、目違い等が生じないようにコンクリートの締固めを行うことが重要である。

(イ) コンクリートの仕上りの平たんさは、せき板に接する面は型枠の変形等により、せき板に接しない床上面等は左官の均し精度により決まる。

平たんさの測定方法には、「JASS 5」で定められたJASS 5 T-604(コンクリートの仕上がりの平たんさの試験方法)があるが、試験用器具が特殊で、取扱い方法も難しいため、一般的には下げ振り、トランシット、レベル、水糸、スケール等を使用して、コンクリート面の最大、最小を測定する方法等で行われている。
「標仕」表6.2.5の平たんさの種別は、仕上げの種類だけでなく、建物の規模や仕上り面に要求される見ばえ等によっても異なるので、適切な値を品質計画で提案させ、検討するとよい。

なお、平成31年版「標仕」では、平成28年版「標仕」の表6.2.5において示されていた「適用部位による仕上げの目安」、すなわち、具体的な「仕上げの種類」を削除し、「コンクリートの内外装仕上げ」と所定の「平たんさ」のみを示し、適用部位は特記することとした。

参考までに、平成28年版「標仕」の「表6.2.5 コンクリートの仕上りの平たんさの標準値」を下記に示す。

なお、セメントモルタルによる陶磁器質タイル張りについては、「標仕」15.3.5 (4)(イ)(a)?において、「外装タイルセメントモルタル張りの場合、コンクリートの表面の仕上がり状態は、表6.2.5[コンクリートの仕上りの平たんさの種別]のb種」と規定されている。

平成28年版「標仕」表6.2.5 コンクリートの平たんさの標準値(一部修正)