第6章 コンクリート工事 5節 品質管理(R4版)

建築工事監理指針 第6章 コンクリート工事


5節 コンクリートの品質管理

6.5.1 品質管理一般

(1) 「標仕」6.5.1では、打ち込まれるコンクリートが所定の品質を有していることを確認するために受入れ時に受注者等が実施する品質管理について規定している。したがって、この節においては、受注者等を主体として記述している。

(ア) 間違ったコンクリートの納入や誤配車を排除するために、レディーミクストコンクリートの受入れ時には、荷卸しされるコンクリートの種類、呼び強度、指定スランプ、粗骨材の最大寸法、セメントの種類及び容積が、発注した条件に適合していることを各運搬車の納入書によって確認することが必要である。

(イ) レディーミクストコンクリートでは、荷卸し地点までの品質についてはレディーミクストコンクリート工場が責任をもち、それ以後の品質については購入者(受注者等)が確認し、監督職員に報告する。そのため、購入者(受注者等)は、工事現場に荷卸しされるコンクリートの品質が所定の品質を有していることを常に確認し、購入者(受注者等)は、異状が認められたコンクリートは受取りを拒否し、持ち帰らせる必要がある。

レディーミクストコンクリートの受入れ時に判定できる品質は、スランプ、空気量、単位容積質量、温度及び塩化物イオン量等である。

(ウ) 所要のコンクリート性能を確保するためには、単位水量の管理が極めて重要で ある。打込み中に、粗骨材とモルタルの分離やスランプ、空気量の大幅な変動等、コンクリートの品質に変化が見られた場合は、直ちにコンクリートの打込みを停止し、コンクリート工場の製造管理記録に記載されている単位水量の他が「標仕」6.4.3 (6)に規定される配合計画書の数値に計量誤差の数値を加味した値に対して、所定の範囲内であることを確認する必要がある。

なお、ここでいう配合計画書とは、JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)の表8に規定されるレディーミクストコンクリート配合計画書をいう。

平成22年4月1日からは、JIS A 5308のレディーミクストコンクリート納入書の標準様式が変更され、配合表も併記されている。この配合表には、標準配合、修正標準配合、計量読取記録から算出した単位量、計量印字記録から算出した単位量若しくは計量印字記録から自動算出した単位量のいずれかが記載されている。また、購入者から要求があった場合に、生産者はレディーミクストコンクリートの納入後にバッチごとの計量記録及びこれから算出した単位量を提出しなければならないことになっている。

なお、単位水量について、配合計画書の値とコンクリート工場の製造管理記録の値とがほぼ同じ( ±1%程度)であるにもかかわらずコンクリートの品質に変化が認められる場合は、レディーミクストコンクリート工場と原因を調査し、改善を行うことが必要である。

(エ) コンクリートのワーカビリティーが安定していて状態が良いことを目視等で確認することとし、その確認時期を打込み当初と打込み中随時行うことを定めている。ワーカビリティーについては、スランプ試験後のコンクリートを目視等で観察し、粗骨材が分離していないことを確認するとともに必要に応じてスランプフローを測定するのがよい。また、試験結果は写真等で記録することが重要である。

(オ) I類コンクリートを使用する場合には、受注者等は、自らが実施する品質管理の試験結果及びレディーミクストコンクリート工場が行うJIS A 5308の品質管理の試験がJIS Q 1011(適合性評価 – 日本産業規格への適合性の認証 – 分野別認証指針(レディーミクストコンクリート))に基づいて行われているかを確認し、試験結果を監督職員に報告することとしている。

なお、受注者等はレディーミクストコンクリート工場が行う試験結果の報告があっても、受注者等が実施する検査は、省略することはできない。

(カ) JISマーク表示認証製品のI類コンクリートにおいては、使用する材料から製品の品質に至るまでの品質管理をJIS Q 1001(適合性評価 – 日本産業規格への 適合性の認証 – 一般認証指針)及びJIS Q 1011に基づいて実施している。しかし、 II類コンクリートについては必ずしもI類コンクリートと同様に管理されているとは限らない。そこで、Ⅱ類コンクリートを使用する場合には、次の方法で品質管理を行う必要がある。

(a) Ⅱ類コンクリートに使用する材料が、 I類コンクリートの製造に用いている ものと同ーである場合には、 I類コンクリートのための材料検査結果を用いることができるが、 I類コンクリートに用いているものと異なる材料を使用している場合には、 I類コンクリートに用いる材料と同様の品質管理検査を行い、その結果がJIS Q 1011の評価基準及びJIS A 5308の品質基準若しくは「標仕」 6.4.2のレディーミクストコンクリートの発注時に指定した評価基準及び品質基準等に適合していることを確認することが必要である。また、納入前に必ず試し練りを行い、所要の品質が得られることを確認してから使用するとともに、使用する材料及びコンクリートについての検査は、 I類コンクリートと同様 JIS Q 1011に規定されている方法(試験を行う時期を含む。)に準じて行い、その結果により所定の品質が得られていることを確認して、その検査結果の報告を監督職員に提出することが必要である。さらに、納入されたコンクリートの受入れ検査についてもJIS A 5308に規定されている方法に従って実施し、その品質管理の結果の報告を監督職員に提出することが必要である。

(b) 型枠中に打ち込まれたコンクリートが構造体として所要の品質を確保するためには、適度な温度と水分の確保が必要であり、その具体的養生方法を「標仕」 6章7節で規定している。養生方法が適切でない場合には、コンクリートが本来有している強度の60%程度しか得られなかった、という報告もあるので、「標仕」に基づき適切な養生を行わなければならない。

(c) スランプ及び空気量が「標仕」6.5.2及び「標仕」6.5.3に示される所定の許容差を超えた場合又は調合管理強度が「標仕」6.3.2に示される所定の値を下回った場合には、調合の調整を行うことが必要になる。調合の調整が必要になる場合の条件並びに調整の方法については、「標仕」6.5.2、「標仕」6.5.3及び「標仕」6.5.5に従って実施する。

(d) フレッシュコンクリートの試験を行う場合には、「標仕」6.9.2に示されている方法で行わなければならない。

6.5.2 スランプ

打ち込まれるコンクリートのスランプが「標仕」表6.5.1に示す許容差(18cmを超える場合の許容差が ±2cmとなる条件は、平成22年版「標仕」から、高性能AE減水剤を使用し、かつ、調合管理強度が27N/mm2以上である場合に変更されている。)を超えた場合に、そのままコンクリートを打ち込むと充填不良や不均ーなコンクリートとなる場合がある。このような場合には、調合の調整や運搬(レディーミスクトコンクリート工場から荷卸し地点までの運搬及び荷卸し地点から打込み地点までの場内運搬)方法の改善を行うことが必要である。調合の調整を行う場合には、その原因を明らかにするとともに、所定の強度を確保するため水セメント比を変更しない方法で行わなければならない。

(ア) スランプの変動要固としては、次のような項目が挙げられ、要因によっては調合の調整でなく、(a)から(e)までの項目の変動を小さくすることが必要な場合もある。

(a) 骨材の粒度(特に細骨材の粒度分布)及び粒形
(b) 表面水の変動
(c) 材料の計量誤差
(d) 運搬(レディーミスクトコンクリート工場から荷卸し地点までの運搬)時間
(e) 空気量

(イ) スランプを調整する場合のおおよその目安は、次のとおりである。

(a) 水セメント比を変えないで、スランプを1cm増加させるためには、単位水量を1.2%(質量比)増加させる。

(b) 水セメント比及び単位水量を変えないで、スランプを1cm増加させるためには、細骨材率を0.5%減少させる。

6.5.3 空気量

(1) 荷卸し地点の空気量の許容差は、JIS A 5308(レディーミスクトコンクリート)の品質基準と同様に±1.5%である。

(2) 荷卸し地点の空気量の測定結果が「標仕」6.4.3で発注したときの空気量 ±1.5%の範囲を超えた場合には、補助AE剤の使用量と連行される空気量がほぼ比例関係にあるので、この関係を利用して、水セメント比を変えずに補助AE剤の使用量を増減して所定の空気量の範囲に入るように調整するとよい。空気量が許容範囲を超える原因としては、骨材の品質変動による場合が多いと考えられるが、その原因を明らかにし、以後このような原因が生じないような処置を取ることが大切である。

なお、JIS A 1128(フレッシュコンクリートの空気量の圧力による試験方法 – 空気室圧力方法)による空気室圧力法で測定する場合には、骨材中の空気量(骨材修正係数)をあらかじめ測定しておき、適切に補正しなければならない。従来、普通の骨材を用いた場合の骨材修正係数は 0.1%程度以下となることが多く、この補正を省略することが多かったが、近年では骨材資源の枯渇化とともに、普通の骨材でも骨材修正係数が 0.2%を超えるものもあるため、試し練り時等、事前にこれらの数値を確認しておくことが必要である。

6.5.4 塩化物豆及びアルカリ総量

(1) 塩化物量
(ア) 塩化物量試験は、「標仕」表6.9.1によって実施する。塩化物量(塩化物イオン(Cl-)量換算)の測定結果が0.30kg/m3を超えるとコンクリート中の鉄筋の腐食が促進される可能性があるため、この値以下とすることが定められている。コンクリート中の塩化物イオン量は、使用する材料から供給される塩化物イオン量の合計として表され、レディーミクストコンクリート工場では調合ごとにその値を計算して求めている。測定結果が0.30kg/m3を超える場合には、使用する材料中の塩化物イオン量が変化していることになり、その原因を明らかにすることが必要である。しかし、コンクリートの打込みを中断するとコールドジョイントの発生等別の問題が生じやすくなる。そこで、0.30kg/m3以上の塩化物イオン量が測定された後は、連続して塩化物イオン量の測定を行い、0.30kg/m3以下であることを確認した後は、使用してよいことにしている。

なお、連続した10台の運搬車の測定結果が0.30kg/m3以下であることが確認された場合には「標仕」表6.9.1に示す通常の方法で管理してよいことにしている(「標仕」6.5.4(1)参照)。また、塩化物量の確認は、あくまでも規定値(0.30kg/m3)を下回ることが確認されればよく、例えば、適用する塩分測定方法の測定限界の下限値を下回るような塩化物量の場合において、その測定値(数値)を示すことを要求しているわけではない。

また、塩化物量の確認は、あくまでも規定値(0.30kg/m3)を下回ることが確認されればよく、例えば、適用する塩分測定方法の測定限界の下限値を下回るような塩化物量の場合において、その測定値(数値)を示すことを要求しているわけではない。

(イ) 細骨材中の塩化物
JIS A 5308附属書A(規定)[レディーミクストコンクリート用骨材]では、砂に含まれる塩化物量をNaCl換算で0.04%以下と規定している。2003年にJIS R 5210(ボルトランドセメント)に規定される普通ボルトランドセメントの塩化物イオン量が0.02 ~ 0.035%に改正されるまで、この程度であればコンクリート1m3中の塩化物量は、通幣、0.30kg/m3以下を満足していたと考えられる。しかし、JIS R 5210の改正によって、普通ボルトランドセメントの塩化物イオン量が順次増加しており、各コンクリート用材料の塩化物イオン量の上限値を守るだけでは、0.30kg/m3を超えることが懸念されるようになった。

具体的な計算例を示すと次のようになる。

①砂の塩化物量をNaCl換算で0.04%(塩化物イオン量は0.024%)、単位細骨材量を800kg/m3と仮定すると、砂から加わる塩化物イオン量は0.194 kg/m3となる。

② (-社)セメント協会によると、JISの規定値が0.02%であった当時の普通ボルトランドセメントの塩化物イオン量は最大でも0.015%で、余裕分は 0.005%であった。この余裕分を現在の規格上限値0.035%から減じ、今後予想される普通ボルトランドセメントの塩化物イオン量の最大値を0.03%と仮定すると、単位セメント量が350kg/m3の調合においてセメントから加わる塩化物イオン量は0.105kg/m3となる。

③ 水については、塩化物イオン濃度を200ppm(JIS A 5308附属書C(規定)[レディーミクストコンクリートの練混ぜに用いる水]に規定される品質基準値)、単位水量を185kg/m3とすれば、水からくる塩化物イオン量は0.037 kg/m3となる。

④ 化学混和剤については、海砂使用の場合は無塩化タイプを用いることとする。

以上、①から④までを加えると0.336kg/m3となる。

このような状況が予想される場合及び発生した場合には、砂・砕砂等塩化物量の少ない骨材との併用等により細骨材の塩化物量を低減させなければならないが、コンクリート中の塩化物イオン量については普段から「標仕」表6.9.1に示す方法で適切に管理し、0.30kg/m3以下であることを確認しておくことが必要である。

(2) アルカリ総量
使用している骨材について、アルカリシリカ反応性試験の結果が無害と判定されない場合で、その抑制対策としてコンクリート中のアルカリ総量を採用している場合には、JIS A 5308附属書B(規定)[アルカリシリカ反応抑制対策の方法]に規定する式(B. 1)によって、アルカリ総量が 3.0kg/m3以下であることを確認することが必要である。レディーミクストコンクリート工場では調合ごとに総アルカリ量を計算し技術資料としてもっているので、その計算の根拠となっている使用材料のアルカリ量に関する資料とともに提出を求めて確認することが必要である。

6.5.5 調合管理強度

(1) レディーミクストコンクリートの調合管理強度の管理試験の確認は、「標仕」6.9.3及び「標仕」6.9.4に従いJIS A 1132(コンクリート強度試験用供試体の作り方)による20±2℃の水中養生を行った供試体を用いて材齢28日で実施する。

(2) 管理試験の結果、不合格の場合には、原因を調査し、必要な措置を定め、監督職員の承諾を受ける。不合格となる原因としては、次のようなものがある。

(ア) 水セメント比の変動(コンクリートの強度は、主として水セメント比によって決定されるので、水セメント比の変動の影響が大きい。この原因としては細骨材の表面水の変動が挙げられる。)

(イ) 骨材の品質変動

(ウ) 空気量の変動
不合格の原因が調合にある場合には、「標仕」6.3.2により新たに調合を定めるなどの処置を定めて、改めて「標仕」6.3.2により計画調合を行うとともに、必要な処置の報告を監督職員に提出して承諾を受けることが必要である。