第6章 コンクリート工事 4節 工場の選定、製造及び運搬(R4版)

建築工事監理指針 第6章 コンクリート工事


4節 レディーミクストコンクリート工場の選定、
コンクリートの製造及び運搬

6.4.1 レディーミクストコンクリート工場の選定

(1) 工事開始前に、「標仕」で規定されている所定の品質が得られるように工事現場周辺のレディーミクストコンクリート工場を調査して、(2)から(6)の事項に適合するものであることを確認する。

(2) レディーミクストコンクリートの製造者の業界では、一般的に地域ごとの協同組合による共同販売方式又は直接販売方式が取られ、協同組合から割り当てられた一工場又は複数の工場から工事現場にコンクリートが供給されるようになっている。このような供給方式の場合、同一打込み工区に同時に複数の工場よりコンクリートが供給されると、それぞれの工場の品質責任の所在を明確化することが困難となるので、同一打込み工区への複数工場からの供給が行われないようにする。複数工場による協同納入を避けることができない場合は、打込み区画を区分し、それぞれの納入工場に振り分けて、責任の所在を明確にすることが重要である。

(3) レディーミクストコンクリートは、運搬時間によって品質が変化することもあるので、運搬時間はなるべく短い方がよい。したがって、JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)の9.4[運搬]及び「標仕」6.6.2で定められた時間の限度内にコンクリートが打ち込めるよう、工事現場内の運搬方法及び運搬時間並びに工場の製造能力、運搬能力等を考慮した工場であることを確認することが重要である。

(4) レディーミクストコンクリートの品質は、工場の技術者の技術水準に左右される。

「標仕」6.4.1(ア) でいう施工管理技術者とは、(公社)日本コンクリート工学会が、コンクリートに関して豊富な知識と優れた技術水準を有する者と認定したコンクリート主任技士、コンクリート技士若しくはコンクリート診断士又は一級建築施工管理技士、一級建築士等が該当する。また、レディーミクストコンクリート工場の選定は監督職員の承諾事項(「標仕」6.4.1)とされているので、承諾に当たっては 品質確保及び資格運用等を適切に行っている工場であることを確認する必要がある。

レディーミクストコンクリート工場の品質管理状況に関しては、産・学・官で構成される「全国生コンクリート品質管理監査会議」がJIS Q 1011(適合性評価 −日本産業規格への適合性の認証 – 分野別認証指針(レディーミクストコンクリー ト))の規定に、ISO 9001(品質マネジメントシステム – 要求事項)の一部規定及び管理技術者の有無等の要求事項を加えた「全国統一品質管理監査基準」を策定し、毎年各工場の立入監査を行い、この基準に適合した工場に(適)マークを交付しているので、工場の選定に必要な品質確保の確認には、これらの結果を参考にするとよい(6.5.1(1)参照)。

(5) JISマーク表示認証工場の中には、表6.2.1よりも狭い範囲の組合せでJISマーク表示の認証を受けている場合もあるので、JISマーク表示認証製品の範囲を確認する必要がある。

(6) JISマーク表示認証工場が工事現場近くにない場合は、JIS A 5308の規定とJIS Q 1011を参考にして、その工場の製品規格、使用材料、製造工程管理・設備、製品の品質管理状態等を調査し、「標仕」2節に規定される品質のコンクリートが製造できると認められる工場であることを確認する必要がある。

6.4.2 レディーミクストコンクリートの発注

(1) I類コンクリートの発注に当たっては、表6.2.1に示す「レディーミクストコン クリートの種類」からコンクリートの種類、粗骨材の最大寸法、スランプ及び呼び強度の組合せを指定させるほか、表6.4.1に示すa)からd)の事項とともに、必要 に応じてe)からq)の事項を生産者と協議のうえ、受注者等に指定させる。ただし、 a)からh)については、JIS A 5308で規定している範囲とする。

表6.4.1 指定及び協議事項(JIS A 5308 : 2019)

(2) II類コンクリートの発注に当たっても、 I類コンクリートと同様に必要項目を生産者と協談のうえ、受注者等に指定させる。
(3) 練混ぜ水としてスラッジ水を使用する場合は、スラッジ固形分率(レディーミクストコンクリートの配合における、単位セメント量に対するスラッジ固形分の質量の割合)が3%を超えないように目標スラッジ固形分率が設定され、バッチ濃度調整方法又は連続濃度測定方法でスラッジ固形分率が適切に管理されていることを受注者等に確認させ、その結果を報告させることが重要である。
なお、スラッジ固形分率を1%未満で使用する場合、生産者が、JIS A 5308の 表10[レディーミクストコンクリート配合計画書]の目標スラッジ固形分率の欄に、「1%未満」と記載する。また、この場合、生産者が練混ぜ水の全量にスラッジ水を使用し、かつ、濃度の管理期間ごとに1%未滴となるよう適切に管理されていることを受注者等に確認させ、その結果を報告させることが重要である。
(4) JIS A 5308の9.5[回収した骨材の取扱い]では、自工場が出荷した戻りコンクリート並びにレディーミクストコンクリート工場において、運搬車、プラントのミキサー、ホッパーなどに付着及び残留したフレッシュコンクリートを、清水又は回収水で洗浄し、粗骨材と細骨材とに分別して取り出した骨材を、5%以下の範囲で JIS規格品のコンクリートに使用できるとされている。

なお、指定建築材料(建築基準法第37条)の規格及び技術的基準を定める平成 12年建設省告示第1446号の第1第七号(コンクリート)に掲げる材料規格(JIS A 5308-2014)から回収骨材は除外されていたが、同告示が平成30年6月14日に一部改正され、JIS A 5308に適合したものであれば、国土交通大臣の認定を受けなくても回収骨材を使用したコンクリートが使用できることとなった。

(5) 呼び強度は、呼び強度の強度値が調合管理強度(設計基準強度(Fc)+構造体強度補正値(S))以上で、かつ、コンクリートの種類に応じた単位セメント量の最小又は最大値、水セメント比の上限値を満足するように、受注者等に指定させる。

(6) 施工に先立ち、レディーミクストコンクリート工場の配合計画書とともに、製造に用いる材料、調合設計の基礎となる資料及び計算書等を受注者等から提出させ、検討、確認する必要がある。

なお、レディーミクストコンクリート工場は、調合設計の基礎となる資料として、水セメント比と圧縮強度の関係式、呼び強度ごとの標準偏差、単位水量・水セメント比・スランプの関係、単位粗骨材かさ容積・水セメント比・スランプの関係、気温・運搬時間・スランプロス・空気量ロスとの関係、使用材料の変動による調合修正の方法、コンクリートの練混ぜ量・練混ぜ時間との関係等コンクリートの調合、製造の基本となるデータ類を保有しているので、必要に応じてこれらの内から当該現場で問題となりそうな項目に関する資料を提出させるとよい。

6.4.3 コンクリートの運搬

(1) JIS A 5308の 9.4[運搬]では、運搬時間は、生産者が練混ぜを開始してから運搬車が荷卸し地点に到約するまでの時間とし、その時間は1.5時間以内としている。ただし、購入者(受注者等)と生産者とが協議のうえ、運搬時間の限度を変更することができることになっている。一方、「標仕」6.6.2では、コンクリートの練混ぜから打込み終了までの時間の限度は、外気温が25℃以下の場合は120分、25℃ 超える場合は90分と規定されており、JIS A 5308より若千厳しくなる場合もある。

コンクリートの運搬に当たっては、これらの二つの規定を満足するように、受注者等に適切な施工計画を立てさせる。

(2) トラックアジテータからコンクリートの荷卸しを行うに際しては、その直前にトラックアジテータを高速回転させ、ミキサー内のコンクリートを均ーにした後にコンクリートを排出する。特に運搬距離が長い場合には、高速回転させる時間を少し長くするとよい。

なお、市街地でのトラックアジテータの高速回転は騒音の問題が発生するため、工事開始前に住民の理解を得ておく必要がある。