6節 工事検査及び技術検査
1.6.0 「標仕」における検査の定義
「標仕」において検査と称されているものは、次のように分類される。
(ア) 公共工事の発注者(検査職員)が、会計法や地方自治法に基づく請負契約についての給付の完了の確認をするため必要な検査(会計法第29条の11)
(イ) 公共工事の発注者(技術検査官)が、公共工事品確法及び入契適正化法に基づいて行う技術的検査
(ウ) 監督職員が工事を監督していく過程で行う検査・確認
(エ) 建築主事又は消防等の行政機関が行う検査
(オ) 受注者が施工管理や品質管理のために工事材料や下請負の専門工事業者に対して行う受入検査
(カ) 下請負の専門工事業者が行う自主検査
(ア) は、受注者への支払いの適否を確認する検査で、会計法(地方自治法)上、規定された検査職員が行う。この検杢は「工事検査」と称され、工事が完成したときの「完成検査」、設計図書において工事の完成に先立って引渡しを受けるべきことを指定した部分(指定部分)「完済部分検査」及び受注者が請求した部分払の対象を確認するときの「既済部分検査」の三つがある。
(イ) は、工事の施工において、技術的観点から工事中及び完成時の施工状況の確認及び評価を行う技術検査をいう。技術検査は、原則として「工事検査」時に実施するが、必要に応じて、工事の施工途中でも実施する場合がある。その例としては、出来形及び品質を確認するうえで重要となる時期や発注者が特に必要と認めた時期(事故発生時等)がある(中間技術検査)。
(ウ) は、監督職員が工事監督の一環として行う確認を中心とした行為であり、「標仕」では「監督職員の検査」という用語として定義し、(ア) と(イ) とは異なるものとしている。「標仕」の2章以降の各章において、この「監督職員の検査」という用語は頻繁に出てくるが、配筋検査等がこれに該当する。
建築においては、実際の施工を行うのはほとんどの場合が、専門工事業者である。監督職員は、直接の契約相手先ではない専問工事業者に対して検査(確認)を行うのではなく、受注者等が元請けとして確認したものを検査する。また、(ウ) の前に行う元請けとして専門工事業者の施工内容をチェックし合否の判断を下す行為が、(オ) の受入検査である。一方、これに先立ち専門工事業者が自ら施工段階に行う検査が(カ) の自主検査であり、鉄骨製作工場において工場の品質管理担当者が行う製品検査がこれに該当する。
1.6.1 工事検査
工事検査は、発注者が自ら又はその補助者(検査命令を受けた検査職員)が会計法又は地方自治法に基づき請負契約についての給付の完了の確認を行うために受注者に対して行う検査である。民間工事では、一般的に、工事監理者が工事の検査を施主に代わって行うが、予算決算及び会計令(昭和22年4月)では検査を行う者(検査職員)と監督職員との兼職を禁止しているので、原則として監督職員が工事検査を行うことはできない。
工事検査は、「標仕」1.1.2(ナ) に記述してあるように、
(ア) 工事が全て完成した場合(「標仕」1.6.1(1))
(イ) 指定部分の工事が完成した場合(「標仕」1.6.1(1))
(ウ) 契約書の規定により受注者から部分払の請求があった場合(「標仕」1.6.1(2))
この三つの場合に実施される。工事がそれぞれ該当する要件に達したときに受注者は監督職員を通して工事の完成等を通知することになっている。検査に先立ち監督職員は、検査に必要な設計図書類、工事関係図苫等がきちんと整備されていることを確認しておく必要がある。
なお、契約書第32条第3項のとおり、受注者は、工事検査に必要な資機材、労務等を提供する。また、契約書第32条第2項では、発注者又は検査職員は、必要があると認められるときは、その理由を受注者に通知して、工事目的物を最小限度破壊して検査することができ、この場合においての、検査又は復旧に直接要する費用は、受注者の負担としている。
1.6.2 技術検査
技術検査は、公共工事品確法及び入契適正化法に基づき、技術的観点から行う検査である。「標仕」1.1.2(ニ) では、技術検査は「公共工事品確法に基づき、工事中及び完成時の施工状況の確認及び評価をするために発注者又は検査職員が行う検査をいう。」と定義している。地方整備局工事技術検査要領においては、1.6.1の「検査職員」としてではなく、技術検査適任者である「技術検査官」が行うとしているが、通常、「検査職員」と同一の職員が行っている。その実施については、「標仕」1.6.2 (1)で規定されているように工事検査と併せて行われるもの、中間技術検査として行われるものがある。
このうち、中間技術検査はその性格上、工事の適切な時期に行う必要があるため、他の技術検査と異なり受注者等の意見を聞いて検査日を決めることになる。
技術検査は、国土交通省では、地方整価局工事技術検査要領において、工事の適正、かつ、能率的な施工を確保するとともに工事に関する技術水準の向上に資することを目的として実施される検査と定めている。
1.6.3 工事成績
技術検査を終了した場合、技術検査官は、地方整備局工事技術検査要領(第6工事成績の評定)及び請負工事成績評定要領に基づき工事成績を評定する。また、工事完成時には、工事中の施工状況を把握する者(技術評価官)も工事成績評定を実施し、工事成績及び工事の技術的難易度の評定結果を工事完成後に受注者に通知することを地方整備局の所掌する直轄事業については、請負工事成績評定要領に定めている。