第6章 コンクリート工事 7節 養生(R4版)

建築工事監理指針 第6章 コンクリート工事


7節 養 生

6.7.1 養生温度

(1) 十分に湿気を与えて養生した場合のコンクリート強度は、材齢とともに増進するが、乾燥あるいは低温の状態においたものは増進が非常に少ない。特に硬化初期の養生は、その影響が大きい。コンクリート養生の基本は、常に水分を与え適温に保つことである。

建築基準法施行令第75条には、コンクリートの養生についての規定があり、「コンクリート打込み後5日間はコンクリート温度が 2℃を下らないように(中略)養生しなければならない。ただし、コンクリートの凝結及び硬化を促進するための特別の措置を講ずる場合においては、この限りでない。」と規定されている。「標仕」では、打込み後5日間以上、早強ポルトランドセメントの場合は強度発現が速いため3日間以上、コンクリート温度を2℃以上に保つよう規定されている。

(2) 冬期等で著しく気温が低い場合は、打込み後のコンクリートが凍結しないように保温、採暖が必要になる。

(3) 部材断面の中心部の温度が外気温より 25℃以上高くなるおそれのあるときの養生は「標仕」6.13.4による。

6.7.2 湿潤養生

打込み後のコンクリートが、透水性の小さいせき板で保護されている場合は、湿潤養生と考えてもよい。しかし、コンクリートの打込み上面等でコンクリート面が露出している場合、あるいは透水性の大きいせき板を用いる場合には、日光の直射、風等により乾燥しやすいので、初期の湿潤養生が不可欠となる。湿潤養生には、養生マッ卜又は水密シート等で覆う方法、連続又は断続的に散水又は噴霧を行う方法、膜養生剤や浸透性養生剤の塗布による方法等がある。

夏期や風の強い日に施工した床スラブ・ひさし等薄い部材では、コンクリートが急速に乾燥するため、特に初期の湿潤養生が大切である。また、混合セメントを使用するときには特に早期における乾燥を防ぐようにする。

また、「JASS 5 鉄筋コンクリート工事」8.2[湿潤養生]においては、湿潤養生の期間について、コンクリート部分の厚さが18cm以上の部材において、早強・普通・中庸熱ポルトランドセメントを用いる場合、計画供用期間の級が短期及び標準の場合 は、コンクリートの圧縮強度が10N/mm2以上、長期及び超長期の場合は15N/mm2以上に達したことが確認されれば、以降の湿潤養生を打ち切ることができるとしている。

なお、平成28年版「標仕」からは、特記された場合に普通エコセメントが使用でき、その場合の湿潤養生期間は特記によるとしている。「JASS 5」では普通エコセメントを使用する場合の湿潤養生期間を明確には示していないが、国立研究開発法人建築研究所の「建築研究報告 No.144」では、「普通エコセメントの初期の水和反応は、高炉セメントB種、C種と同様に普通ポルトランドセメントに比べていくぶん遅いので、十分に注意して養生を行う必要がある。・・・中略・・・その期間は、養生方法が適切であれば、高炉セメントB種を使用するコンクリートの場合と同様に、 7日間以上とすればよいであろう。」としており、これらを参考にするとよい。

6.7.3 振動及び外力からの保護

(1) 凝結硬化中のコンクリートに振動・外力を与えると、ひび割れが発生するなど、損傷を生じることがあり、また、早期材齢で荷重を加えるとたわみの増大につながることがある。このため、コンクリートが硬化するまでは十分な養生が必要である。

(2) コンクリート打込み後1日以内にやむを得ずスラブの上に乗るような場合には、コンクリートに振動・衝撃を与えないように静かに作業しなければならない。