99)雷から人・建物・設備を守る
大気中で発生した雷は建物を直撃して破壊し、建物内部に侵入した誘導雷は絶縁破壊を引き起こし、建築設備に障害を引き起こす。
建築基準法では、建物の高さが20mを超える部分を旧JIS或いは新JISで規定する避雷設備の設置を義務付けている。ただし、市区町村によっては火災予防条例等により、新JISによる避雷設備を指導する場合があるので確認が必要である。
1.外壁面への側撃雷からの保護
建物が高さ60mを超えると、外壁への側撃雷を受けやすくなる。特に建物のコーナー部分や集合住宅の最上部バルコニー屋根庇等の突起部は避雷設備の保護角内であっても側撃雷を受けて、建物が損傷する事故がある。避雷設備は雷撃による損傷を最小限に抑えることができても、落雷は防げない。側撃雷からの保護対策が必要となる。
建物高さが60mを超えた場合の側撃雷からの保護
2.避雷設備設置の留意点
①旧JISでは、避雷針の保護角は一般建物では60° 以下、危険物を扱う貯蔵所等では45° 以下と規定している。建物高さが60m以上になると、旧JISの避雷針では側撃雷による落雷は防げない。
②新JISによる保護レベルに応じた受雷部の配置をすることが望ましい。
新JISによる保護レベルと受雷部の配置
③金属笠木や屋上外周部に設けられた金属手すりは、相互に電気的に接続すれば棟上げ導体として使用できる。メンテナンス用のタラップや鉄骨階段が棟上げ導体より突出する場合は、棟上げ導体に電気的に接続し保護する必要がある。
階段は棟上げ導体に接続して保護
ただし、棟上げ導体の保護範囲は導体から水平距離で10m以内である。
④自立型避雷突針が全長6mを超えると、強風時の揺れで躯体に共振して、下階の居住者に不快な音や振動を与える。集合住宅は棟上げ導体方式の採用がよい。
⑤近くに落雷した雷が配電線や通信線を通じて建物内に侵入し、電子機器の誤動作や建築設備の障害を引き起こす。電子機器の保護のためサージ保護デバイス(SPD)の設置が必要となる。
⑥屋上の設備機器と避雷導体との離隔距離は1.5m以上確保する。屋上が狭くて離隔距離を確保するのが困難な場合は設置極(アースボンド)を設ける。
屋上設備機器と避雷導体の離隔