第6章 コンクリート工事 3節 材料及び調合(R4版)

建築工事監理指針 第6章 コンクリート工事


3節 コンクリートの材料及び調合

6.3.0 一般事項

建築物に使用するコンクリートが所要の性能を満足するようにするためには、使用前に、各材料が所定の品質を満足することを試験又は生産者から提出された資料等により確認するとともに、「標仕」2節[コンクリートの種類及び品質]に示される各種規定を満足するよう、試し練り等を行って適切に調合することが重要である。

6.3.1 コンクリートの材料

6.2.1(3)でも述べたように、平成28年6月13日に平成12年建設省告示第1446号の一部が改正され、エコセメントや再生骨材Hを使用したコンクリートについても JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)に適合したものであれば国土交通大臣の認定を受けなくても使用できるようになったため、平成31年版「標仕」からは、これらのコンクリートについても一部の材料の組合せや用途を除いて特記をせずに使用できることとなった。また、平成30年6月14日の同告示の一部改正(国土交通省告示第750号)により、回収骨材を使用したコンクリートが国土交通大臣の認定を受けなくても使用できるようになったため、平成31年版「標仕」からは、これを特記せずに使用できることとなった。

(1) セメント
(ア) セメントの分類
(a) セメントの分類を図6.3.1に示す。


図6.3.1 JISによるセメントの分類

わが国におけるポルトランドセメント(JIS R 5210)の全アルカリは、低アルカリ形を徐くとNa2O換算(Na2O + 0.658K2O)で0.75%以下であるが、使用する骨材によってはアルカリ骨材反応を起こすおそれがある。

なお、かつては「アルカリ骨材反応抑制対策に関する指針について」(平成元年7月建設省住指発第244号)の通達で、低アルカリ形ポルトランドセメントの使用がアルカリ骨材反応抑制対策の一つとして記されていた。しかし、低アルカリ形が1995年に11,000t生産された以降はほとんど製造されておらず、普通ポルトランドセメントのアルカリ量も低くなっていることなどから、平成12年にこの通達は廃止され、平成14年の国土交通省通達では「低アルカリ形の使用による抑制対策」の条文が削除されている。

(b) ポルトランドセメントは普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント及び耐硫酸塩ポルトランドセメントの6種類を基本とし、これに低アルカリ形の6種類を加え全部で12種類あり、その主な品質は表6.3.1に示すとおりである。

表6.3.1 ポルトランドセメントの品質(JIS R 5210:2019)

① 普通ポルトランドセメント(普通セメントと略称される場合もある。)は、建築のコンクリート工事用として現在最も多く使用されているセメントである。「標仕」では、特記のない場合は普通ポルトランドセメント又は高炉セメント、シリカセメント及びフライアッシュセメント(以下、この3種類を混合セメントという。)のA種を使用することになっているが、高炉セメント及びフライアッシュセメントともA種はほとんど生産されていないため、一般的には普通ポルトランドセメントを使用することが多い。

② 早強ポルトランドセメント(早強セメントと略称される場合もある。)の比表面積(ブレーン値)は、JISでは表6.3.1のように定められているが、市販品では4,700cm2/g程度である。比表面積はセメント粒子の細かさを示す値で、この値が大きいほど細かく、セメントと水との化学反応(水和反応)が活発になるため、図6.3.2に示すように他のポルトランドセメントよりも早期に強度が得られる。そのため、工期の短縮に有効であると共に、硬化初期の水和発熱量(凝結・硬化中に起こる発熱を水和熱という。)が大きいことから寒中コンクリートにも適している。ただし、発熱によるひび割れ等の弊害を伴うこともあるので、使用する季節や用途に注意が必要である。


図6.3.2 モルタルの圧縮強さ(JIS R 5201)
(「セメントの常識」より)

(c) 高炉セメント(JIS R 5211)は、普通ポルトランドセメントに適量の高炉スラグ微粉末を均ーに混合したもので、その分量によってA種、B種及びC種の3種類(表6.3.2参照)が規定されているが、A種及びC種の生産量は少なく、市販品としてはB種のものが一般的である。

(d) シリカセメント(JIS R 5212)は、普通ポルトランドセメントに適量のシリ力質の混合材を均ーに混合したもので、その分量によってA種、B種及びC種の3種類がある(表6.3.2参照)。耐薬品性に俵れているが、2010年度以降国内では生産されていない。

(e) フライアッシュセメント(JIS R 5213)は、普通ボルトランドセメントに適量のフライアッシュ(火力発電所等で石炭の燃焼時に発生する微粉状の石炭灰)を均ーに混合したもので、その分量によってA種、B種及びC種の3種類(表 6.3.2参照)が規定されているが、高炉セメントと同様、一般にはB種のものが多く流通している。

(f) 上記高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメントのB種及びC種は、ボルトランドセメントと比較すると、化学的な作用又は海水に対する抵抗力が大きいなどの長所がある。しかし、同一調合の場合、一般的に中性化の進行が早く、早期強度の発現が小さいので、かぶり厚さや型枠の存置期間の検討が必要である。

表6.3.2 混合セメントの種類(JIS R 5211:2019、R 5212:2019及びR 5213:2009)

(g) エコセメントは、都市ごみ焼却灰を主とし、必要に応じて下水汚泥等を加えたものを主原料として製造される資源リサイクル型のセメントであり、2002年に JIS R 5214(エコセメント)としてJIS化された。JIS R 5214では、構成鉱物や塩化物イオン含有量によって普通エコセメントと速硬エコセメントに分類されている。2003年には、これらのうち塩化物イオン量が 0.1%以下の普通エコセメントのみがJIS A 5308に取り入れられた。また、2004年4月からはグリーン購入法特定調達品目にも指定されている。このエコセメントは、東京都の西多摩地域で年間約12万トン(2020年度)生産されている。

(イ) 高炉セメント及びフライアッシュセメントの品質

(a) 高炉セメントは、高炉スラグ微粉末の混合比(分量)によって使用したコンクリートの硬化途中の強度発現性状や硬化後の化学特性等が異なるため、上記 (ア)(c)でも記したように、高炉スラグ微粉末の混合比(分量)によって3種類に分類されている。B種は規格上 30% を超え 60% 以下となっているが、市販されている高炉セメントの高炉スラグの混合比(分量)は43%前後のものが多い。

普通ボルトランドセメントと比較すると次のような特徴がある。

① 初期強度はやや小さいが、4週以降の長期強度は同等又は同等以上になる。
② 耐海水性や化学抵抗性が大きい。
③ 一定量以上使用した場合にアルカリ骨材反応の抑制に効果がある。

(b) フライアッシュセメント
良質なフライアッシュはコンクリート中でボールベアリングのような働きをし、練混ぜ水を減少させることができ、ワーカビリティーの良いコンクリートが得られる。また、水和発熱量が比較的小さく、マスコンクリートに適する。さらに、高炉セメントと同様にアルカリ骨材反応の抑制にも効果がある。

なお、上記(ア)(e)でも記したように、フライアッシュの混合比(分量)によって3種類に分類されており、B種は規格上10%を超え20%以下となっている。市販されているフライアッシュセメントのフライアッシュの混合比(分量)は 17%前後のものが多い。

(c) 混合セメントのA種は、普通ボルトランドセメントと同様に使用できる。

(ウ) 普通エコセメントの適用範囲
6.2.1(3)項等でも記したように、普通エコセメントを使用したコンクリートについては、平成28年までは国土交通大臣の認定が必要であったため建築物への施工実績はまだ少ない。そのため、普通エコセメントの使用にあたっては、次頁の文献等を参考に別途使用する材料の種類や調合、コンクリートの発注、製造、打込み、養生及び品質の管理方法等を作成し、監督職員の承諾を受けておくことが重要である。

普通エコセメントは、塩化物イオン量を含め化学成分及び鉱物組成が普通ボルトランドセメント等と異なる部分があり、使用する混和材料や調合、施工時期等によっては得られる効果・性能・品質が異なる場合も考えられる。例えば、図6.3.3に示すように、高性能AE減水剤にナフタレン系のSP1を使用した場合、普通ボルトランドセメントと比較して所要のスランプを得るための添加率は水セメント比にかかわらず2倍程度必要であるが、ポリカルボン酸を主成分とするSP2等を使用した場合は水セメント比にかかわらず普通ボルトランドセメントと同程度である。また、図6.3.4に示すように、スランプの経時変化は、ポリカルポン酸系のSP2を使用した場合にはスランプロスがほとんどないが、ナフタレン系のSP1を使用した場合にはスランプロスが大きい。また同様に、ブリーディング量や凝結時間、空気量の経時変化にも高性能AE減水剤の主成分による効果の差が認められている。これら高性能AE減水剤や流動化剤等の高性能減水剤系の化学混和剤による普通エコセメントを使用したコンクリートのフレッシュ性状の変化及び不具合発生時の適切な対処方法を施工現場で確認することは、参考となる施工実績も少ないことから、現状では困難と考えられる。


図6.3.3 セメント種類と高性能AE減水剤添加率の関係 注(1)


図6.3.4 高性能AE減水剤の種類別のスランプ経時変化 注(1)

普通エコセメントを使用したコンクリートは、普通ボルトランドセメントを使用したコンクリートに比べて凝結時間が遅く、特に気温が低い場合にはこの傾向が大きい。また、図6.3.5に示すように、材齢初期の強度発現速度も普通ボルトランドセメントを使用した場合より遅くなり、その圧縮強度差は気温の低下と共に大きくなるため、初期凍害の防止が極めて重要と考えられる。


図6.3.5 養生温度と圧縮強度の関係(封かん養生)注(1)

以上のように、①普通エコセメントを使用したコンクリートのフレッシュ性状や硬化性状は普通ボルトランドセメントを使用したコンクリートと異なる傾向にあること、②軽量コンクリートや寒中コンクリート、マスコンクリート、流動化コンクリートについて、「JASS 5」注(2)及びエコセメントを使用するコンクリートの調合設計・施工指針注(3)では、普通エコセメントの使用が規定されていない若しくは使用する場合の規定が明確に示されていないこと、③建築物への使用実績がいまだごく僅かであることなどを考慮して、「標仕」では、普通エコセメントを適用する場合は、普通コンクリート(1~ 9節まで)、暑中コンクリート(12節)、無筋コンクリート(14節)によるとされている。s

注(1)建築研究所:
建築研究報告 No.144「エコセメントを使用したコンクリートの物理・カ学特性ならびに調合設計・施工技術に関する研究」、2005.12

注(2) 日本建築学会:
建築工事標準仕様書・同解説 JASS 5 鉄筋コンクリート工事 2018 (27節)

注(3) 日本建築学会:
エコセメントを使用するコンクリートの調合設計・施工指針(案)・同解説、2007

(2) 骨 材
(ア) 骨材は、コンクリート1本和の約7割を占め、その品質がコンクリートの諸性質に大きな影響を及ぼすので、良い品質のコンクリートをつくるためには、原則として、堅硬で物理的・化学的に安定であり、適度な粒度・粒形を有し、有害量の不純物・塩化物等を含まない骨材を使用する。しかし、骨材の品質は、地域差もあり、あらかじめその地域の骨材の種類と品質の実態を把握しておくことが重要である。

なお、再生骨材Hを使用する場合には、6.3.1及び6.3.2の記載を参考に、コンクリートの要求性能と骨材の品質との関係を試し練りを行って十分に把握し、必要に応じて計画調合等を検討することが重要である。

再生骨材には、再生骨材Hのほか、JIS A 5022の附属書A(規定)コンクリート用再生骨材M及びJIS A 5023の附属書A(規定)コンクリート用再生骨材Lがある。再生骨材M及び再生骨材Lは付着するペースト量が多く、これを用いるコンクリートは、乾煤収縮が大きくなる場合もある。

また、再生骨材コンクリートMの通常品及び再生骨材コンクリートLは、通常高い凍結融解抵抗性を確保することが難しいため、乾煤収縮の影響に加えて凍結融解作用を受けない部材又は部位に使用する。
なお、再生骨材コンクリートMについては、標準品に対して凍結融解抵抗性を高めた耐凍害品がある。

(イ) 骨材の種類及び品質
(a) 「標仕」6.3.1(2)(ア)により、骨材の種類はJIS A 5308の附属書A(規定)[ レディーミクストコンクリート用骨材 ]に規定されている砕石及び砕砂、スラグ骨材、人工軽量骨材、再生骨材H並びに砂利及び砂である。

なお、再生骨材Hを使用するコンクリートについては、6.2.1(1)でも記したように、これまで必要であった国土交通大臣の認定が不要となり、建築物の基礎、主要構造部等へも適用できることとなった。ただし、6.3.1(1)注(1)から注 (3)に記した文献では、普通エコセメントを使用するコンクリートに再生骨材Hを使用する場合は特記事項等とされ、かつ、普通エコセメントと再生骨材Hを併用する場合に参考となる技術情報等も示されていないので、「標仕」においても、普通エコセメントを使用するコンクリートに再生骨材Hを使用する場合は特記によるとされている。

(b) フェロニッケルスラグ骨材、銅スラグ細骨材及び電気炉酸化スラグ骨材は、普通骨材に比べて密度が大きく、使用される地域も限定されている。よって、これらの骨材を使用する場合は、設計担当者が特記しなければならない。

(c) 骨材の品質、砕石及び砕砂は、JIS A 5005(コンクリート用砕石及び砕砂)に、高炉スラグ粗骨材及び高炉スラグ細骨材は、JIS A 5011-1(コンクリート用スラグ骨材ー第1部:高炉スラグ骨材)に、フェロニッケルスラグ骨材、銅スラグ骨材、電気炉酸化スラグ骨材及び再生骨材Hは、それぞれ JIS A 5011-2(コンクリート用スラグ骨材ー第2部:フェロニッケルスラグ骨材)、JIS A 5011-3(コンクリート用スラグ骨材ー第3部:銅スラグ骨材)、JIS A 5011-4(コンクリート用スラグ骨材ー第4部:電気炉酸化スラグ骨材)及びJIS A 5021(コンクリート用再生骨材H)に規定されている。

(d) スラグ骨材を他の骨材と併用する場合、表面がガラス質のため、使用するスラグ細骨材の種類によっては保水性が小さくなり、天然の骨材に比ベブリーディング量がやや多くなったりブリーディング速度が速くなったりする場合があるので注意しなければならない。このような場合には、微粉末の使用、実績率の大きい骨材の使用、高性能AE減水剤の使用等材料の選定に加え、水セメント比の低減等の検討が必要である。

(e) 骨材の密度及び吸水率
① 骨材の強さは、密度及び吸水率によりある程度の判定ができる。通常、絶乾密度は2.5g/cm3以上、吸水率は3.0%(細骨材は3.5%)以下ならよいとされている(表6.3.3参照)。

しかし、砂利や砂の場合、一部の地方では、これを満足するものが入手できない場合もある。この場合は、絶乾密度は2.4g/cm3以上、吸水率は4.0%以下なら、コンクリートとして所要の性能が得られることを試し練り又は信頼できる資料等により確かめられれば、使用してよい。

表6.3.3 JIS A 5005 : 2020による砕石・砕砂の物理的性質

② 普通の石材の吸水率は表6.3.4に示すとおりであるが、概ね吸水率の少ないものほど堅硬、密実で良質の骨材になると考えられる。

表6.3.4 石材の吸水率

(f) 骨材の品質が乾燥収縮に及ぼす影響は大きく、JISの品質規格に適合する骨材であっても、それを用いたコンクリートの乾燥収縮ひずみができるだけ小さくなるものを選定することが望ましい。乾燥収縮ひずみが小さくなる骨材としては、良質の川砂利又は石灰石骨材が挙げられる。

(ウ) アルカリ骨材反応抑制対策

(a) アルカリ骨材反応に関しては、昭和60年頃から問題が顕在化し、平成元年には建設省の技術審議官通達、建築指導課長通知等が出されたが、平成14年には新たに「アルカリ骨材反応抑制対策について」(平成14年国官技第112号:技術審議官等通達)と運用のための「「アルカリ骨材反応抑制対策について」について」(平成14年国営技第55号:建築課長通達)の(別紙)「アルカリ骨材反応抑制対策(建築物)実施要領」が、平成15年には「アルカリ骨材反応抑制対策(建築物)実施要領に関する運用について」の事務連絡が出され、その後のJIS A 5308の改正、JIS Q1011(適合性評価一日本産業規格への適合性の認証ー分野別認証指針(レディーミクストコンクリート))の制定、「標仕」の改定を経て、その対策が確立されてきた。

(b) 「アルカリ骨材反応抑制対策(建築物)実施要領」における検査・確認の方法を、次に示す。

① アルカリシリカ反応性試験方法(化学法)による骨材試験は、施工着手前、工事中1回/6箇月、かつ、産地が変わった場合に、受注者等が公的試験機関に依頼して行う。また、試験に用いる骨材の採取にも受注者等が立ち会うことが原則となる。

② アルカリシリカ反応性試験方法(モルタルバー法)による骨材試験は、コンクリート生産工程管理用試験に規定される骨材のアルカリシリカ反応性試験方法(迅速法)で骨材が無害であることを受注者等が確認する。この場合も、施工着手前、工事中1回/6箇月、かつ、産地が変わった場合に、公的試験機関で行い、試験に用いる骨材の採取にも受注者等が立ち会うことが原則となる。

(c) 「標仕」では、砕石、砕砂、フェロニッケルスラグ骨材、銅スラグ細骨材、電気炉酸化スラグ骨材、砂利、砂及び再生骨材Hは、原則として、「アルカリシリカ反応性試験の結果が無害と判定されるもの」(アルカリシリカ反応性による区分Aのもの)を使用するとしているので、アルカリシリカ反応性による区分を、受注者等にレディーミクストコンクリート配合計画書及びアルカリシリカ反応性試験成績表で確認させておく必要がある。

なお、銅スラグ細骨材は、JIS A 5011-3において、”無害”のものに限定して使用することが規定されている。

アルカリシリカ反応性試験方法は、JIS A 1145(骨材のアルカリシリカ反応性試験方法(化学法))又は JIS A 1146(骨材のアルカリシリカ反応性試験方法(モルタルバー法))による。ただし、フェロニッケルスラグ骨材のアルカリシリカ反応性試験は、JIS A 1146による。また、再生骨材Hのアルカリシリカ反応性による区分、判定及び試験は、JIS A 5021の4.3(アルカリシリカ反応性による区分)、5.3(アルカリシリカ反応性)、7.7(アルカリシリカ反応性試験)による。

(d) レディーミクストコンクリートを製造する地域等によっては、上記の試験の結果が「無害と判定されないもの」や「試験を行っていないもの」(アルカリシリカ反応性による区分Bのもの)を使用せざるを得ない場合もある。その場合は、事前調査により設計担当者が区分Bのものを使用することを特記しなければならない。特記により区分Bの骨材を使用する場合は、「標仕」6.3.1(2)(イ) に基づいた対策を受注者等に提案させ、その内容を確認する。高炉セメントやフライアッシュセメントを、アルカリ骨材反応の抑制対策として使用する場合、高炉スラグ微粉末の混合比(分量)が40%以上の高炉セメントB種又はフライアッシュの混合比(分量)が15%以上のフライアッシュセメントB種を使用する。また、コンクリート製造業者から使用した混合セメントのセメント試験成紺間を取り寄せて、高炉スラグ微粉末又はフライアッシュの混合比(分量)を確認することが必要である。

なお、フェロニッケルスラグ骨材のアルカリシリカ反応抑制対策は、JIS A 5011-2の附属書Dによる。また、再生骨材Hについては、アルカリシリカ反応性による区分がBの場合、JIS A 5308の8.2項及び同附属書BのB.2項により、アルカリシリカ反応抑制対策の区分はアルカリシリカ反応抑制効果のある混合セメントなどを使用する抑制対策しか規定されていないため、コンクリート中のアルカリ総量を規定する抑制対策を適用することはできない。

(エ) 高炉スラグ粗骨材を使用する場合は、JIS A 5011-1に基づいて、使用する骨材の絶乾密度、吸水率及び単位容積質量が、同JISの区分Nを満足することを受注者等に確認させ、その結果を報告させることが必要である(表6.3.5参照)。

なお、高炉スラグ粗骨材は、普通骨材より吸水率が大きく気乾状態で用いると練混ぜ、運搬及び打込み中にフレッシュコンクリートの品質が変動しやすいので、事前に散水により吸水させて用いることが望ましい。

(オ) 電気炉酸化スラグ骨材は、JISマーク表示認証製品で、生産工場からレディーミクストコンクリート工場に直接納入されていること及び電気炉酸化スラグ粗骨材の絶乾密度による区分がNであること(表6.3.5参照)並びに再生骨材Hは、 JISマーク表示認証製品であることを受注者等に確認させ、その結果を報告させることが必要である。

表6.3.5 JIS A 5011-1 : 2018による高炉スラグ粗骨材(区分N)及び
JIS A 5011-4 : 2018による電気炉酸化スラグ粗骨材(区分N)の材質

(カ) 粗骨材の最大寸法等

(a) 粗骨材の最大寸法
粗骨材は、鉄筋相互間及び鉄筋とせき板との間を容易に通る大きさでなければならない。粗骨材の最大寸法は「標仕」において次のように定めている。

① 砕石、高炉スラグ粗骨材、電気炉酸化スラグ粗骨材及び再生粗骨材Hは 20mmとする。また、砂利は25mmとする。

② 基礎等で断面が大きく鉄筋量の比較的少ない部材の場合は、「標仕」5.3.5[鉄筋のかぶり厚さ及び間隔]の範囲で、砕石、高炉スラグ粗骨材及び再生粗骨材Hは25mm、また、砂利は40mmとすることができる。

③ 鉄筋のあきは、粗骨材の最大寸法の1.25倍以上とする(「標仕」5.3.5 (4)(ア) 参照)。

④ 無筋コンクリートの粗骨材の最大寸法は、コンクリート断面の最小寸法の 1/4以下とする。ただし、捨コンクリート及び防水層の保護コンクリートの場合は25mm以下とする(「標仕」6.14.2(1)参照)。

(b) 骨材の粒度及び粒形
① 骨材は、適切な粒度分布のものでなければならない。粒度の良否によってコンクリートのワーカビリティーや単位セメント最に著しい差が生じ、ひいてはコンクリートの強度や耐久性にも影響を与える。

② 骨材の形は、球形に近いものが理想的で、偏平、細長のもの、かど立っているものなどは、コンクリートのワーカビリティーを悪くし、同一水セメント比で同一スランプを得るための細骨材率が大きくなり、単位水量、単位セメント量も多くなる。また、偏平、細長のものは、コンクリートが外力を受けたときに不均ーな応力分布が生じて、破壊しやすいためにコンクリートの強度も低下する。

③ 粒度分布を表すには次のような方法があり、通常1)及び2)が用いられる。
1) 各ふるいの通過率
2) 粗粒率(FM)
3) 各ふるいの累加残留率
4) 各ふるいの残留率

④ コンクリートの品質を確保して圧送性を良くするには、骨材の粒度分布が適切であるとともに 0.3mm以下の細骨材が15~30%混入していることが望ましい。

(キ) その他留意が必要な骨材の品質

(a) 骨材の単位容積質量・実績率
① 単位容積質量は、単位容積当たりの骨材質量(kg/ℓ)で、骨材の粒度が適切であれば、最大寸法が大きいほど単位容積質量は大きい。

② 実績率は、骨材を容器に詰めた場合、どの程度隙間なく詰まっているかを表す指標で、6.3.1式より求める。空隙率は 6.3.2式による。

③ 同一粒度、同一密度の骨材では、実績率が大になるほど骨材の粒形が良いことになる。また、骨材の密度、最大寸法及び粒度が同様な場合には、粒度分布が良いほど実績率は大となる。

④ 骨材に対応する標準的実績率を表6.3.6に示す。

表6.3.6 骨材の実績率の標準的な値

(b) 骨材中の泥分
泥分が骨材表面に付着していると、骨材とセメントペーストとの付着を妨げ、コンクリートの強度を低下させる。また、コンクリート中に混合している場合は、単位水量が増加し、体積変化も大きく、ひび割れも発生しやすい。

(c) 細骨材の有機不純物
有機不純物としては、腐植土、泥炭質等があり、これらに含まれるフミン酸やタンニン酸の量が多いと、セメントペースト中のCa(OH)2と反応して有機酸石灰塩を生じ、コンクリートの硬化を妨げ、強度や耐久性を低下させる場合がある。

(d) 細骨材中の塩化物
① コンクリート中の鋼材は、コンクリートのpHが10以上の場合は、鋼の表面が鉄の水酸化物Fe(OH)2の不働態皮膜で覆われているので錆は発生しないが、多量の塩化物が混合すると、塩化物イオンによって不働態皮膜が破壊されて錆が発生する。

② JIS A 5308附属書A(規定)では、砂に含まれる塩化物枯をNaCl換算で0.04%以下と規定しているが、2003年のJIS R 5210(ボルトランドセメント)の改正により普通ボルトランドセメントの塩化物イオンが 0.02%以下から0.035%以下となった。これにより、コンクリートの各材料の塩化物イオンの規格上限値でコンクリート中の塩化物イオン量を算出すると0.30 kg/m3を超える場合があるので、受注者等にレディーミクストコンクリート配合計画書でコンクリート中の塩化物イオン量が0.30kg/m3を超えないことを確認させ、その結果を報告させるようにするとよい。

なお、プレテンション方式のプレストレストコンクリート部材に用いる場合は0.02%以下とすることになっている。

(e) 骨材を混合して使用する場合

① 最近では1種類の骨材だけでは所要の品質や量を確保することが困難となり、複数の骨材を混合して使うことが多くなった。

② 骨材を混合して使用する場合は、JIS A 5308附属書A (規定)のA.9[骨材を混合して使用する場合]による。

1) 同一種類の骨材(例:川砂利と陸砂利(玉砕も含む。)、海砂と山砂)を混合して使用する場合は、混合したものの品質が所定の規定に適合しなければならない。ただし、混合前の各骨材の絶乾密度、吸水率、安定性及びすりへり減量については、それぞれの骨材の規定に適合しなければならない。

2) 異種類の骨材(例:川砂利と砕石、海砂と砕砂あるいは高炉スラグ細骨材等)を混合して使用する場合は、混合前の骨材の品質がそれぞれの規定に適合しなければならない。ただし、粒度調整や海砂の塩化物量の低減目的に混合する場合には、粒度と塩化物量については、混合したものが所定の規定に適合していればよい。

(3) 水

(ア) 水は、コンクリートの凝結時間、硬化後のコンクリートの強さ等の諸性質、鋼材の発錆等に影響があり、極めて重要な材料といえる。

(イ) 一般的に、セメントの水和に必要な水量は、セメント質量の約40%といわれ、施工時に必要な水量の内、残りの部分はコンクリートのワーカビリティーを良くするものであり、コンクリートの硬化に関与しない余剰水となる。また、単位水量が多いと乾燥収縮が大きくなる場合や透水性が高くなる場合があり、耐久性が低下しやすい。

(ウ) 水中の不純物が鉄筋コンクリートに与える影響
(a) 一般的に、アルカリ性の強い水はセメントの凝結を遅くし、弱酸性の水は凝結を早め、強酸性では硬化しにくくなる。

(b) 苦土や石灰は、セメントの安定性を低下させる。

(c) 塩化物や塩素は、鉄筋の腐食を助長する。

(d) 水の不純物の種類と量の限度は、使用するセメントの組成、使用量等によって異なり、規定しにくいとされているが、濃度が1,000ppm以下ならば、ほとんど影響がないといわれている。

(エ) 水の使用基準等については、JIS A 5308附属書C (規定)があり、この抜粋を次に示す。

JIS A 5308 : 2019

附属書C(規定) レディーミクストコンクリートの練混ぜに用いる水

C.1 適用範囲
この附量書は、レディーミクストコンクリートの練混ぜに用いる水(以下、水という。)について規定する。

C.2 区分
水は、上水道水、上水道水以外の水及び回収水に区分する。

C.3用語及び定義
この附属書で用いる主な用語及び定義は,箇条3によるほか次による。

C.3.1 上水道水以外の水
河用水.湖沼水,井戸水.地下水などとして採水され,特に上水道水としての処理がなされていないもの及び工業用水。ただし,回収水を除く。

C.4 上水道水
上水道水は、特に試験を行わなくても用いることができる。

C.5 上水道水以外の水
上水道水以外の水の品質は、C.8.1の試験方法によって試験を行ったとき、表C.1に示す規定に適合しなければならない。

表C.1-上水道水以外の水の品質

C.6 回収水
C.6.1 品質
回収水の晶質は.C.8.2の試験方法によって試験を行ったとき.表C.2に示す規定に適合しなければならない。ただし,その原水は.C.4又はC.5の規定に適合しなければならない。

なお、スラッジ水を上水道水、上水道水以外の水、又は上澄水と混合して用いる場合の品質の判定は、スラッジ固形分率が3%になるように.スラッジ水の濃度を 5.7%に調整した試料1)を用い、C.8.2.4及びC.8.2.5の試験を行う。

注1) スラッジ水を希釈し濃度調整する場合には.C.4及びC.5に適合する水を用いる。

表C.2 – 回収水の品質

C.6.2 スラッジ固形分率の限度
a) スラッジ水を用いる場合には、スラッジ固形分率が3%を超えてはならない。

なお、レディーミクストコンクリートの配合において、スラッジ水中に含まれるスラッジ固形分は、水の質量には含めない。

b) スラッジ固形分率を 1%未満で使用する場合には.表10の目標スラッジ固形分率の欄には、”1%未滴”と記入することとし、表11のスラッジ固形分率の欄にも”1 %未満”と記入する。この場合.スラッジ水は練混ぜ水の全量に使用し、かつ、濃度の管理期間ごとに1 %未満となるよう管理しなければならない。

なお、このスラッジ固形分率を1 %未満で使用する場合には、スラッジ固形分を水の質量に含めてもよい。

C.6.3 スラッジ水の管理
スラッジ水の管理は、次による。また、安定化スラッジ水の管理は、バッチ濃度調整方法だけとし、C.7の管理も追加する。

a) バッチ濃度調整方法2)、又は連続濃度測定方法2)を用いる。

注2) バッチ濃度調整方法は、スラッジ水の濃度を一定に保つ独立した濃度調整槽をもつ場合に用いることができる管理方法である。スラッジ固形分率を 1%未満で使用する場合は、この方法による。独立した濃度調整槽をもたない場合には、スラッジ水の濃度を連続して測定できる自動濃度計を設置して測定することによる連続濃度測定方法を用いればスラッジ水の管理ができる。

b) C.6.2に適合するように、スラッジ水の管理状況に対応して、コンクリートに使用するスラッジ水の濃度を定めて管理する。

c) バッチ濃度調整方法を用いる場合には、スラッジ水の濃度を測定・記録し、目標スラッジ固形分率となるようにスラッジ水の計量値を決定して、スラッジ水を使用する。

なお、スラッジ水の濃度の測定は、1日1回以上、かつ、濃度調整の都度行う。

d) 連続濃度測定方法を用いる場合には、スラッジ水を使用する度にその濃度を自動濃度計によって測定・記録し、自動演算装置を用いて目標スラッジ固形分率となるようにスラッジ水の計量値を決定して.スラッジ水を使用する。

e) スラッジ水の濃度の測定精度の確認は,少なくとも3か月に1回の頻度で.C.8.2.6によって行う。また、スラッジ水の濃度の測定方法として自動濃度計を用いる場合は、始業時にスラッジ水の密度から自動濃度計の表示値を確認しこれを記憶する。

f) スラッジ水の濃度及び測定器具の精度確認の記録は、購入者からの要求があれば、スラッジ固形分率の算出根拠として提出する。

C.7 水を混合して使用する場合
2種類以上の水を混合して用いる場合には、それぞれがC.4. C.5又はC.6の規定に適合していなければならない。

JIS A 5308: 2019

(4) 混和材料

(ア) 混和材料の使用目的は、概ね次のとおりである。
(a) ワーカビリティーの改良
(b) 長期材齢又は初期材齢における強度の増大
(c) 水密性の増大
(d) 乾燥収縮の低減
(e) 耐久性の向上

(イ) 混和材料の分類を、図6.3.6に示す。


図6.3.6 混和材料の分類

混和材料について「標仕」6.3.1(4)では、種類及び適用は特記によるとし、特記がなければ、種類は次によるとしている。

(a) 混和剤の種類は、JIS A 6204(コンクリート用化学混和剤)によるAE剤、AE減水剤又は高性能AE減水剤とし、化学混和材の塩化物イオン(Cl-)量による区分は、Ⅰ種とする。また、防錆剤を併用する場合は、JIS A 6205(鉄筋コンクリート用防せい剤)による防錆剤とする。

(b) 混和材の種類は、JIS A 6201(コンクリート用フライアッシュ)によるフライアッシュのI種、II種若しくはⅣ種、JIS A 6206(コンクリート用高炉スラグ微粉末)による高炉スラグ微粉末、JIS A 6207(コンクリート用シリカフューム)によるシリカフューム又はJIS A 6202(コンクリート用膨張材)による膨張材とする。

(ウ) JIS A 6204(コンクリート用化学混和材)の抜粋を次に示す。

なお、JIS A 6204は2011年の改正で、6.2のコンクリート試験における空気量は、基準コンクリートの空気量に3.0%を加えたものに対して、0.5%を超える差があってはならないこととなった。また、練混ぜのバッチ数は1バッチとすること、圧縮強度試験用供試体の養生温度は20±2℃とすること、コンクリートの試験回数は、1バッチについて1回とすること及び管理試験の名称を性能確認試験と改め、6箇月に1回の頻度で実施することとなった。

JIS A 6204:2011

1 適用範囲
この規格は、コンクリート用化学混和剤(以下、化学視和剤という。)として用いるAE剤、高性能減水剤、硬化促進剤、減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤及び流動化剤について規定する。

3 用語及び定義
この規格で用いる主な用語の定義は,JIS A 0203によるほか、次による。

3.1 化学混和剤
主として、その界面活性作用及び/又は水和調整作用によってコンクリートの諸性質を改善するために用いる混和材。

3.2 AE剤
コンクリートなどの中に、多数の微細な独立した空気泡を一様に分布させ、ワーカビリティー及び耐凍害性を向上させる化学混和剤。

3.3 高性能減水剤
所要のスランプを得るのに必要な単位水品を大船に減少させるか又は単位水量を変えることなくスランプを大幅に増加させる化学混和剤。

3.4 硬化促進剤
セメントの水和を早め.初期材齢の強度を大きくする化学混和剤。

3.5 減水剤
所要のスランプを得るのに必要な単位水量を減少させる化学混和材。

3.6 AE減水剤
空気連行性能をもち,所要のスランプを得るのに必要な単位水量を減少させる化学混和剤。

3.7 高性能AE減水剤
空気連行性能をもち,AE減水剤よりも高い減水性能及び良好なスランプ保持性能をもつ化学混和剤。

3.8 流動化剤
あらかじめ練り混ぜられたコンクリートに添加し、これをかくはんすることによってその流動性を増大させることを主たる目的とする化学混和剤。

3.9 標準形
化学混和剤の種類で.コンクリートの凝結時間をほとんど変化させないもの。

3.10 遅延形
化学混和剤の種類で.コンクリートの凝結を遅延させるもの。

3.11 促進形
化学混和剤の種類でコンクリートの凝結及び初期強度の発現を促進させるもの。

3.12 基準コンクリート
化学混和剤の性能を試験する場合に基準とする化学混和剤を用いないコンクリート。ただし.流動化剤の性能を試験する場合にはAE剤を使用する。

3.13 試験コンクリート
化学混和剤の性能を試験する場合に試験の対象とする化学混和剤を用いたコンクリート。

3.14 形式評価試験
製品を開発した当初に性能確認として行う全項目試験。

3.15 性能確認試験
形式評価試験で確認された性能と同等の性能をもつことを定期的に確認するために、その一部項目について行う試験。

4 種類
化学混和剤の種類は.性能によって表1、塩化物イオン(Cl-)量によって表2のとおり、それぞれ区分する。

表1- 化学混和剤の性能による区分

表2- 化学混和剤の塩化物イオン(Cl)量による区分

5 品質
5.1 性能
化学混和剤の性能は、6.2によって試験を行ったとき、表3に適合しなければならない。(6.2省略)

表3-化学混和剤の性能

5.2 塩化物イオン(Cl)量
塩化物イオン量は.6.3によってコンクリート中の量を求め.その値が表2に適合しなければならない。(6.3省略)

5.3 全アルカリ量
全アルカリ量は、6.4によってコンクリート中の量を求め、その値が0.30kg/m3以下でなければならない。(6.4省略)

(エ) AE剤
AE剤は、コンクリート中に無数の独立した微細な気泡を連行させることができる。この気泡は、コンクリートに次のような効果をもたらす。

① ワーカビリティーが良くなる(気泡のボールベアリング作用による。)。
② 単位水量を減少させることができる(一般的にプレーンコンクリートに比べて8%程度減少できる。)。
③ コンクリートの凍結融解に対する抵抗性を増し、耐久性を向上させる。
④ 中性化に対する抵抗性を増大させる。
⑤ 圧縮強度は、空気量にほぼ反比例して低下する。

(オ) AE減水剤

(a) AE減水剤は性能に応じて、標準形、遅延形及び促進形に分けられる。その用途等は次のとおりである。
① 標準形は、主として一般のコンクリートに用いられる。
② 遅延形は、コンクリートの凝結を遅らせ、暑中コンクリートやマスコンクリート等に用いる場合がある。
③ 促進形は、コンクリートの初期強度の発現を促進し、寒中コンクリート等に用いる場合がある。

(b) AE減水剤は、セメント粒子に対する分散作用と空気連行作用を併有する混和剤で、所要のコンシステンシーを得るための単位水量は、プレーンコンクリートに比べて 12~ 16%減少できる。

(カ) 研性能AE減水剤

高性能AE減水剤は、高い減水性とスランプ保持性能を有する混和剤で、凝結時間が通常のコンクリートとあまり変わらない標準形と、暑中コンクリートやマスコンクリート等に適した遅延形とがある。

その主成分の化学的組成からナフタリン系、ポリカルボン酸系、メラミン系、アミノスルフォン酸系に分類される。ただし、この分類は、あくまで便宜的なもので、同系統に属していてもコンクリートに用いたときの性能は、主成分の化学構造が全く同じでないこと、配合されている副次成分の違いなどから必ずしも同ーではない。

高性能AE減水剤は、従来のAE剤やAE減水剤と同様にプラントでミキサーに投入し、他の材料と同時に練り混ぜる方式により、プレーンコンクリートに対し減水率を 16~ 25%程度にすることができる化学混和剤であり、特にスランプロス防止に重点をおいて開発されたものである。

高性能AE減水剤の主な機能は、①高いセメント分散作用、②スランプ保持作用であり、用途としては次のようなものが挙げられる。

なお、最近では、JIS A 6204の規格に適合し、従来の化学混和剤にはない新たな機能を付与したタイプが使用されている。例えば、収縮低減成分や増粘成分を各種減水剤などと一液化したものがあり、これらは一般に「高機能型(タイプ)」と呼ばれている。

① 単位水量上限規制への対応
② コンクリートの高耐久性化(単位水量の大幅低減)
③ 高流動コンクリートの製造
④ 高強度コンクリートの製造
⑤ 単位セメント量低減による水和熱の低減等

(キ) 流動化剤

流動化剤は、あらかじめ練り混ぜられたコンクリートに添加、かくはんし流動性を増して、コンクリートの品質と施工性の改善をする混和剤である。
コンクリートを流動化する場合は、流動化する前のレディーミクストコンクリートからのスランプの増大量と、流動化剤によって混入されるアルカリ量をあらかじめ生産者に通知する必要がある。

なお、 I類コンクリートであっても、レディーミクストコンクリートの受入れ後、荷卸し地点等で流動化剤を添加する場合は、JIS Q 1001(適合性評価-日本産業規格への適合性の認証-一般認証指針)及びJIS Q 1011(適合性評価-日本産業規格への適合性の認証-分野別認証指針(レディーミクストコンクリート))の認証範囲から外れる可能性がある。このような場合には、II類コンクリートとして扱わなくてはならないので、その使用には注意が必要である。

(ク) フライアッシュ

(a) フライアッシュは、燃料として微粉炭を使用している火力発電所のボイラーの煙道に設けられた集じん機で回収される鉱物質の微粉で、人工ポゾランの一種である。良質なフライアッシュは粒子表面が滑らかで球状を呈しているので、 AE剤による気泡と同様な作用をする。

(b) 良質なフライアッシュを混合すると同一スランプのコンクリートを得るのに、混合率(内割り)10%(質量比)当たり単位水量を3~4%程度減らすことができる。

(c) フライアッシュは、JIS A 6201(コンクリート用フライアッシュ)のI種、II種又はⅣ種に適合するものとし、ワーカビリテイーや圧送性の改善、ブリーディングの減少、水和熱の抑制等の目的で、セメントの一部として(内割り)あるいは骨材の一部として(外割り)用いられる(内割り、外割りについては (f)参照)。フライアッシュの品質を表6.3.7に示す。

表6.3.7 フライアッシュの品質(JIS A 6201 : 2015)

(d) フライアッシュを内割りに混合する場合の混合率の限度は、セメント量の10%以内とする。

(e) フライアッシュの混合によりコンクリートの中性化が促進されるといわれているので、鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さを確保するよう特に注意する。

(f) フライアッシュの混合の内割り、外割り

① フライアッシュを「内割りに混合する」とは、図6.3.7のような割合に混合することをいう。「標仕」6.3.2(イ)(f)③の場合に適用する。


図6.3.7 フライアッシュの混合の内割り

② フライアッシュを「外割りに混合する」とは、図6.3.8のような割合に混合することをいう。「標仕」6.3.2(イ)(f)②の場合に適用する。


図6.3.8 フライアッシュの混合の外割り

6.3.2 コンクリートの調合

コンクリートの計画調合は、所要のスランプ、空気量、強度及び耐久性が得られ、かつ、「標仕」2節に示される各規定の要求事項を満足するよう、次の項目に注意して定めなければならない。

(ア) 調合管理強度及び調合強度

(a) 調合管理強度
平成19年版「標仕」では、調合管理強度(Fm)に相当する値は、設計基準強度(Fc)、構造体コンクリートと供試体強度との差(ΔF=3N/mm2)、気温によるコンクリート強度の補正値(T)を考慮して(Fc + ΔF + T)としていたが、平成 22年版「標仕」からは、調合管理強度は、( ΔF+T)に代わって、セメントの種類及びコンクリートの打込みから材齢28日までの予想平均気温に応じて定められた構造体強度補正値(S)を取り入れ、(Fc+S)に改められている。

(b) 構造体強度補正値(S)は、セメントの種類、予想平均気混の範囲に応じて「標仕」表6.3.2に示すように、3N/mm2又は6N/mm2としている。また、平成28年版「標仕」からは、平成12年建設省告示第1446号(平成28年国交省告示第814号)の改正に伴い「標仕」表6.3.1に普通エコセメントが追加され、「標仕」表6.3.2に「JASS 5」の27.5 b項を基に普通エコセメントの構造体強度補正値(S)が追加された。

なお、平成28年3月に改正された告示「コンクリート強度に関する基準」では、コンクリート強度の確認方法として、標準養生(水中又は飽和水蒸気圧 中の養生に限る。)による方法とこれに使用する構造体強度補正値が第1第三 号として追加されたが、規定された平均気温の範囲とその構造体強度補正値は、「JASS 5」に示される構造体強度補正値28S91と若干異なる数値となっている。しかし、同告示と同時に国土交通省住宅局建築指導課長から発出された技術的助言 国住指第4893号「コンクリート強度並びに型わく及び支柱の取り外しに関する基辿の改正について」では、告示第1102号第1第三号に規定する構造体強度補正値以外の値であっても、「JASS 5」に基づく管理方式については、同告示のただし書きの適用があるものとして取り扱ってよい、とされている。

「標仕」では、平成22年版より「JASS 5」の2009年版を基にコンクリートの調合設計に構造体強度補正値(S)の考え方を祁入してコンクリートの品質管理を行っており、平成28年版「標仕」においても、構造体強度補正値(S)は、「JASS 5」に示される構造体強度補正値28S91を基に定めた値(「標仕」表6.3.2)としている。

参考に、昭和56年建設省告示第1102号(最終改正平成28年国土交通省告示第502号)(告示「コンクリート強度に関する基準」)及び技術的助言 国住指第4893号平成28年3月17日「コンクリート強度並びに型わく及び支柱の取り外しに関する基準の改正について」の抜粋を下記に示す。

設計基準強度との関係において安全上必要な
コンクリート強度の基準を定める等の件
(昭和56年建設省告示第1102号
最終改正 平成28年3月17日 国土交通省告示第502号)

建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第七十四条第一項第二りの規定に基づき、設計基準強度との関係において安全上必要なコンクリートの強度の基準を次の第一のように定め、同条第二項の規定に基づき、コンクリートの強度試験を次の第二のように指定する。

第一 コンクリートの強度は、設計基準強度との関係において次の各号のいずれかに適合するものでなければならない。ただし、特別な調査又は研究の結果に基づき構造耐力上支障がないと認められる場合は、この限りでない。

中略

三 コンクリートの圧縮強度試験に用いる供試体で標準養生(水中又は飽和蒸気中で行うものに限る。)を行ったものについて強度試験を行った場合に、材齢が二十八日の供試体の圧縮強度の平均値が、設計基準強度の数値にセメントの種類及び養生期間中の平均気温に応じて次の表に掲げる構造体強度補正値を加えて得た数値以上であること。

コンクリート強度並びに型わく及び支柱の取り外しに関する基準の改正について(技術的助言)

(国住指第4893号平成28年3月17日)

建築基準法施行令第74条第1項第2号及び同令第76条第2項の規定に払づく標記基準については、平成28年3月17日付国土交通省告示第502号及び同日付国土交通省告示第503号として別添のとおり公布されたので通知する。なお、「コンクリート強度に関する基準の制定について(通知)」(昭和56年6月15日付け建設省住指発第160号、建設省住宅局建築指導課長通知)は廃止する。

中略

1 コンクリート強度に関する基準(昭和56年建設省告示第1102号)の改正について

(1) 本告示は、設計基準強度との関係において安全上必要なコンクリート強度の基準及びコンクリートの強度試験方法に1対する基準を定めたものである。
本告示改正は、新たなコンクリート強度の管理方式のひとつとして、標準養生(水中又は飽和水蒸気圧中で行う場合に限る。以下同じ。)供試体による場合について、材齢が28日までの供試体の圧縮強度の平均値が、設計基準強度の数値に構造体強度補正値を加えた数値以上であることとするコンクリートの強度の基準を定めたものである。

これら以外の管理方式であっても、適切な研究的裏付けのあるものについては、ただし書の適用があるものとして取り扱って差し支えない。

(2) 第1第1号に規定する現場水中養生に類する養生は、現場における湿砂中養生等所要の水分を補給しうる状態での養生を、同第2号のコア供試体に類する強度に関する特性を有する供試体は、現場封かん養生供試体等構造体中のコンクリートと類似の温度履歴を有する養生を行った供試体をそれぞれさすものである。

(3) 第1第3号に規定する構造体強度補正値は、既往の研究成果等を踏まえ、コンクリート打設時の外気温並びに部材の種類及び寸法等を考慮した上で、標準養生供試体の材齢が28日における圧縮強度の平均値とコア供試体又はこれに類する強度に関する特性を有する供試体の材齢91日における圧縮強度の平均値の差について、0以上の数値として定めたものである。これ以外の強度補正値であっても「建築工事標準仕様書 JASS 5 鉄筋コンクリート工事」((-社)日本建築学会)に基づく管理方式によるものなど、適切な研究的裏付けのあるものについては、ただし書きの適用があるものとして取り扱って差し支えない。

(4) 第1第1号及び同第2号に規定する強度試験を行うコンクリートの材齢について、コンクリートの強度発現特性を踏まえ、強度試験により28日(又は91日)より前に必要な強度が発現していることを確認した場合にあっては、28 日(又は91日)時点で強度試験を行わない場合でも、28日(又は91日)時点で必要な強度が発現しているものと扱って差し支えない。

(5) 供試体強度の平均値を求める場合の供試体数及び養生方法といった管理方式等に関する具体的な運用については、「建築工事標準仕様書JASS 5鉄筋コンクリート工事」((-社)日本建築学会)又は「建築研究資料No.169高強度領域を含めたコンクリート強度の管理基準に関する検討」(国立研究開発法人 建築研究所)等を参考とされたい。

(c) 調合強度(F)は、一般的には標準養生した供試体の材齢m日における圧縮強度で表し、6.3.3式を満足するように定めることになる。

F ≧ Fm + α × σ (N/mm2)・・・(6.3.3式)

ここで、αは、コンクリートの許容不良率に応じた正規偏差で、σは、強度のばらつきを表す標準偏差である。「JASS 5」では、αを許容不良率4%に相当する1.73を用いている。また、σは発注するレディーミクストコンクリート工場の実績に基づいた値を用いればよい。もし発注するコンクリートの生産実績が少ないなどの場合には、2.5N/mm2又は0.1Fmの大きい方の値を用いるとよい。

(イ) 調合条件
コンクリートに要求される品質として、所要の強度を確保すること、打込み時 のワーカビリティーを確保することは当然であるが、近年、鉄筋コンクリート造の構造物が劣化している様々な事例が指摘されており、コンクリートの耐久性(コンクリート中の塩化物含有量、中性化、ひび割れ、海塩粒子、アルカリ骨材反応 による影響等に対して)を確保することが、コンクリート構造物の継続的利用に極めて重要となっている。これらの理由から「標仕」では次の規定を設けている。

なお、以下の水セメント比の最大値、単位水量の最大値及び単位セメント量の最小値とは、レディーミクストコンクリート工場において調合設計を計画した時のそれぞれの目標値のことである。

(a) 「標仕」では、荷卸し地点における空気量は、4.5%と規定されている。
AE剤、AE減水剤、高性能AE減水剤を用いて、コンクリート中に微細な空気泡を連行すると、連行空気量にほぼ比例して所定のスランプを得るのに必要な単位水量を低減でき、ワーカビリティーが改善されるとともに、凍結融解作用に対する抵抗性が増大する。しかし、空気量が6%以上になるとそれ以上空気量を増やしてもフレッシュコンクリートの品質は改善されなくなり、空気量が3%未満では凍結融解作用に対する抵抗性の改善に対する効果が少ない。このため空気量の確認時期・地点を荷卸し地点とし、その時のコンクリートの空気量を4.5%としている。

(b) 鉄筋コンクリートの一般的な劣化は、コンクリート表面からの水・炭酸ガス、塩化物その他の浸入性物質によりもたらされるが、これらの劣化要因からコン クリートを健全に守るためには、一般的に水セメント比を小さくすればよい。このため強度上必要な水セメント比とは別にコンクリートのワーカビリティー・均一性・耐久性を確保するために水セメント比(W/C)の最大値を 以下のように定めている。

① 平成22年版「標仕」では、普通ボルトランドセメント及び混合セメントのA種の水セメント比の最大値(上限値)は65%、混合セメントのB種は 60%とされていたが、平成25年版「標仕」から、新たに早強ボルトランドセメント及び中庸熱ボルトランドセメントを使用する場合は65%、低熱ボルトランドセメントを使用する場合は60%とする規定が追加されている。

また、平成28年版「標仕」6.3.1 (a)(1)で追加された普通エコセメントについては、「JASS 5」及び国立研究開発法人 建築研究所の「建築研究質料 No.144」等を参考に、以下の事由から水セメント比の最大値を55%とした。

a) 普通エコセメントを使用するコンクリートの中性化深さは、普通ボルトランドセメントを使用する同一水セメント比のコンクリートよりも大きくなる。

b) 普通ボルトランドセメントを使用するコンクリートと同程度の圧縮強度を得るためには、普通エコセメントを使用するコンクリートの水セメント比を3~5%程度小さくすることが必要である。

② 6.3.1(2)(イ)(a)でも記したように、平成12年建設省告示第1446号の一部改正に伴って平成28年版「標仕」からは、再生骨材Hを使用するコンクリートを建築物の基礎、主要構造部へ適用できることとなった。ただし、再生骨材H以外の他の骨材を使用するコンクリートと同程度の圧縮強度を得るためには、再生骨材Hを使用するコンクリートの水セメント比を若干小さくする必要があることから、水セメント比の最大値が60%とされた。

(c) 「標仕」では、単位水量の最大値を185kg/m3と規定するとともに、コンクリートの強度、気乾単位容積質量、ワーカビリティー、スランプ及び構造体コンクリートの仕上り状態が「標仕」2節に規定される品質を満足する範囲で可能な限り小さくするよう規定されている。

近年、良好な砂利、砂に代わり、砕石、砕砂が多用されるようになると、スランプを一定値以下に抑えても単位水量は大きくなる一方であり、コンクリートの乾燥収縮率の増大が懸念されている。その一方で、最近は高性能AE減水剤によりコンクリートのスランプを比較的容易に変えることができるようになり、単位水量が185kg /m2以下でもスランプ18cmにすることが容易となっている。このような理由から、コンクリートの品質を確保するためにスランプの規制以外に単位水量の制限が設けられている。

(d) 「標仕」では、単位セメント量の最小値を270kg/m3とし、かつ、(b)の水セメント比及び(c)の単位水量から算出した数値とすることが規定されている。
なお、単位セメント量は、6.3.4式によって求められる。

C = W / x × 100 ・・・(6.3.4式)
C:単位セメント量(kg/m3
W:単位水量(kg/m3
x :水セメント比(%)

単位セメント量は、水和熱及び乾燥収縮によるひび割れを防止する観点から可能な限り少なくすることが望ましい。しかし、単位セメント量が過小であるとコンクリートのワーカビリティーが悪くなり、型枠内へのコンクリートの充填性の低下、豆板や巣、打継ぎ部における不具合の発生、水密性、耐久性の低下等を招きやすい。このためコンクリートの強度を確保するための条件とは別に単位セメント量の最小値が規定されている。

(e) 細骨材率
「標仕」では、「コンクリートの品質が得られる範囲内で、適切に定める」と規定されている。一般的に、コンクリートの単位水量を可能な限り小さくし、強度や耐久性を最大にするには、所要のワーカビリティーが得られる範囲内で 細骨材率を最小にすることが重要となる。ただし、細骨材率を小さくし過ぎると一般的に所要のスランプを得るための単位水量は減るが、がさがさのコンクリートとなり、また、スランプの大きいコンクリートでは、粗骨材とモルタルとが分離しやすくなり、ワーカビリティーが低下する。

一方、細骨材率を大きくすると所要のスランプを得るための単位水量を多く必要とし、流動性の悪いコンクリートとなる。

なお、レディーミクストコンクリート工場では、所要のワーカビリティーが得られる範囲内で単位水量が最小になるように試験により最適な細骨材率を定めている。

(f) 混和材料
① 混和剤の使用量
AE剤については、所定の空気量が得られるようにその使用量を定める。
AE減水剤については、セメントに対する定められた質量比等の範囲内で使用量を定め、空気量については、空気量調整剤(AE剤)で所定の空気量が得られるように調整する。

高性能AE減水剤については、セメントに対する定められた質量比等の範囲内で単位水量及びスランプが得られるように使用量を定める。また、空気量については、空気量調整剤(AE剤)で所定の空気量が得られるように調整する。

なお、6.3.1(1)(ア)(g)でも記したように、普通エコセメントは塩化物イオン量を含め化学成分及び鉱物組成が普通ボルトランドセメント等と異なる部分があり、高性能AE減水剤の主成分によって添加量や得られる効果、性能が異なる場合があるので、事前の試し練りが必要がある。

② 良質なフライアッシュは、球形をしており、ボールベアリング効果により、ポンプの圧送性を改善する。普通ボルトランドセメントを用いたコンクリートで圧送が困難な場合、フライアッシュIl種又はⅣ種を外割りで混合することができる(6.3.1(4)(ク)(f)②参照)。

③ 普通ボルトランドセメントを用いたコンクリートで水セメント比の制限等により、強度上必要なセメント量を超える場合は、その部分をセメント全量の10%(質量比)の範囲でフライアッシュI種又はⅡ種に置き換えることにより、単位水量の低下、単位セメント量の低下等が図られ、乾燥収縮等を改善することができる(6.3.1(4)(ク)(f)①参照)。

また、「標仕」では記載されていないが、高炉スラグ微粉末を適量混合することにより、水和熱の抑制、アルカリ骨材反応の抑制、硫酸塩や海水に対する化学抵抗性の向上、水密性の向上等が期待できる。

④ 上記①から③以外で混和材料として多く用いられるものには、流動化剤、膨張材、防錆剤等があるが、その使用方法、使用量については、コンクリートの種類や使用目的によって異なるので、使用が特記された場合は、コンクリートの所定の性能が得られるよう試し練り及び信頼できる資料を受注者等に提出させて確認する。

(g) 塩化物量
コンクリートは、通常pH= 12.5~13 程度の強アルカリ性を呈し、その中に埋め込まれた鉄筋の表面は薄い酸化皮膜で覆われ、不働態化して腐食から保護されている。

しかし、大気中の炭酸ガスやその他の酸性物質の浸透によって徐々にアルカリ性が失われ、中性化が鉄筋の位置まで進行すると鉄筋の腐食に対する保護作用を失い、さらに、水分と酸素が供給されると鉄筋は腐食し始める。

コンクリート中に一定量以上の塩化物が存在すると、塩化物イオンの作用によってコンクリートの中性化が進行していなくても、不働態皮膜が破壊され、鉄筋は腐食し始める。

これらの理由から、「標仕」ではコンクリートに含まれる塩化物の値に制限が設けられ、塩化物イオン量で0.30kg/m3以下と規定されている。

なお、塩化物イオン品が 0.30kg/m3を超えることがやむを得ないと判断した場合は、設計担当者と打合せのうえ、受注者等に次の基準に従った処置の方法を提案させ、「標仕」1.1.8による協識に基づいて処置する必要がある。

① コンクリート中に含まれる塩化物含有量の基準
鉄筋コンクリート造等建築物の構造耐力上主要な部分に用いられるコンクリートに含まれる塩化物量(塩化物イオン(Cl)換算)は、原則として0.30 kg/m3以下とし、やむを得ず塩化物量が0.30kg/m3を超え0.60kg/m3以下のコンクリートを使用する場合は、次のa)からd)までの条件を満たすものとする。

a) 水セメント比は、55%以下とする。
b) AE減水剤又は高性能AE減水剤を使用し、スランプは18cm以下(流動化コンクリートではベースコンクリートのスランプは15cm以下、流動化後のコンクリートのスランプは21cm以下)とする。
c) 適切な防錆剤を使用する。
d) スラブの下端の鉄筋のかぶり原さを3cm以上とする。

② 離島等で海砂以外の骨材の入手及び除塩用水の確保が著しく困難であり、塩化物量が0.60kg/m3を超える場合においては、有効な防錆処理が施された鉄筋の使用等による防錆対策を講ずる。ここでいう「有効な防錆処理が施された鉄筋」とは、「2020年版建築物の構造関係技術基準解説書」の付録 1-7に示されるエポキシ樹脂塗装鉄筋などをいう。

なお、防錆処理を施した鉄筋の付着性能は、非処理のものと異なること、また処理方法や処理剤の種類によっても異なるため、設計担当者と防錆対策の内容について協議しておく必要がある。

③ 塩化物量の測定は、「標仕」表6.9.1による。

なお、普通エコセメントを使用するコンクリートに含まれる塩化物イオン量の測定は、従来の方法と相違する部分があるので、6.9.2(2)(オ) 項を良く理解して行う必要がある。

(h) アルカリ骨材反応
① アルカリ骨材反応とは、反応性シリカを含む骨材とセメント等に含まれる Na+、K+のアルカリ金量イオンが、水の存在下で反応してアルカリけい酸塩を生成し、これが膨張してコンクリートにひび割れ、ポップアウト等を生じさせる現象をいう。

② アルカリ骨材反応は、この反応にかかわる鉱物の種類によって、アルカリシリカ反応とアルカリ炭酸塩反応とがあり、わが国で問題となっているのは主としてアルカリシリカ反応である。

③ この反応性をもつ鉱物としてはオパール、クリストバライト、トリジマイト、火山ガラス、玉髄、石英等があり、反応性シリカ鉱物を含む岩石としては輝石安山岩、チャート等がある。

④ アルカリ骨材反応は、一般に反応性骨材、高いアルカリ量、十分な湿度の3条件がそろった場合にコンクリートに被害を生じさせるとされている。

⑤ アルカリ骨材反応の抑制対策として、次のような方法が考えられる。

a) 反応性の骨材を使用しない。
b) コンクリート中のアルカリ総量を低減する。
c) アルカリ骨材反応に対して抑制効果のある混合セメントを使用する。

⑥ 以上のことから、「標仕」ではコンクリートは、アルカリ骨材反応を生じるおそれのないものとしている。

(ウ) 計画調合の決定

(a) 「標仕」では計画調合は、試し練りによってそのコンクリートの性能及び品質を確認して定めるとしているが、 I類コンクリートを使用する場合は、試し練りは省略してもよいとしている。ただし、普通エコセメント及び再生骨材H を使用するコンクリートについては、建築物への使用実績がまだ少なく、かつ、他の普通セメントと比較してフレッシュ時及び硬化後の性能、品質が我なる部分がある。よって、これらのコンクリートについては、 I類のコンクリートであっても原則試し練りを行って計画調合を決定することが必要である。

(b) 試し練りにおいて、計画スランプ、計画空気量、調合強度、その他コンクリートの温度や塩化物量、単位容積質量等を確認する。

試し練りの計画スランプ、計画空気量については、レディーミクストコンクリートの練混ぜから荷卸し地点までのロスを考慮した目標値であることに注意する。
また、運搬によるスランプロスや空気量ロスは、練混ぜから荷卸し地点までの距離、コンクリートのスランプ、外気温、調合条件等によって相違があるので、レディーミクストコンクリート工場の社内規格を参考にするとよい。

調合強度の確認は標準養生した材齢28日の圧縮強度によるが、受注者等から他の方法が提案された場合は、その内容を確認し採否を決める。

調合強度は、「JASS 5」の解説において、コンクリートの調合を定める場合に目標とする平均の圧縮強度のことであり、調合管理強度に強度のばらつきを考慮して割り増した強度と示されている。したがって試し練りによる調合強度の確認は、調合管理強度を基準として行うものであることに注意する。

現在では、コンクリートの製造が主としてレディーミクストコンクリート工場で行われるため、調合強度はレディーミクストコンクリート工場が定めることになる。そのため、レディーミクストコンクリートを使用する場合には、調合強度がレディーミクストコンクリート工場の十分な製造実績に基づき、調合管理強度を満足するように定められたものであることを、配合計画書、配合計算書、使用するコンクリートの品質管理記録などで確認する。

(c) 計画調合の表し方
コンクリートの計画調合は、JIS A 5308の表10[レディーミクストコンクリート配合計画書]により表す。

(d) レディーミクストコンクリート工場ではI類コンクリートについては、使用する材料で調合設計を標準化している。レディーミクストコンクリート工場における計画調合の定め方の一例を図6.3.9に示す。


(注) 水セメント比最大値、単位水量最大値、単位セメント最小値で修正を受けた計画調合は、セメント水比と強度との関係より、再度、調合強度を求め、それを満足する強度値の呼び強度を発注する。
図6.3.9 レディーミクストコンクリート工場における計画調合の求め方の例

やまとたける

一級建築士/ 1級建築施工管理技士