4章 地業工事 5節 場所打ちコンクリート杭地業

第4章 地業工事


5節 場所打ちコンクリート杭地業

4.5.1 適用範囲

(a) 「標仕」では、アースドリル工法、リバース工法、オールケーシング工法及び場所打ち鋼管コンクリート杭工法並びにこれらと組み合わせた拡底杭工法について規定している。

(b) 作業の流れを図4.5.1に示す。

図4.5.1 アースドリル工法、リバース工法及びオールケーシング工法の作業の流れ

(c) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。

なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。

① 工程表(機械搬入、段取り、鉄筋加工、掘削とコンクリート打込み、機械搬出及び片付けの時期)
② 施工業者名、施工管理技術者名(資格証明書等、工事経歴書等)及び作業の管理組織
③ コンクリートの計画調合表及び計算書
④ 鉄筋の種類と規格

⑤ 地中埋設物・障害物の調査、移設、防護、撤去等の計画
⑥ 施工機械の仕様の概要及び性能
⑦ 施工方法(掘削精度の確認方法を含む)
⑧ 杭の配置図及び施工順序
⑨ 安定液等を用いる場合の調合計画及び管理方法
⑩ 支持地盤の確認方法
⑪ スライム(沈殿物)の処理方法
⑫ 鉄筋加工及び建込み方法(浮上がり防止方法を含む)
⑬ コンクリートの打込み及び養生方法

⑭ 安全対策(酸欠、有毒ガス、施工機械の転倒等)
⑮ 公害対策(土砂の運搬によるこぼれ、ベントナイト廃液等の飛散と処理、騒音及び振動の対策等)
⑯ 施工結果報告書内容(4.5.7参照)
⑰ 作業のフロー,管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者.品質記録文書の書式とその管理方法等

4.5.2 施工管理技術者

(a) 場所打ちコンクリート杭工法は、建設工事の大型化・高層化に伴い、大口径で長尺の杭を、低騒音・低振動で築造できるという大きな特徴をもっている。しかし、その反面、次の問題点が指摘されている。

(1) 杭先端及び周辺地盤の緩み
(2) 杭壁崩壊の懸念(安定液及び水頭圧の管理)
(3) コンクリートの打込み管理ミスによる品質の低下
(4) スライム沈積による支持力の低下

これらの問題点を解決し、信頼のおける場所打ちコンクリート杭を築造するには、豊富な経験と知識を必要とするため、「標仕」4.5.2では施工に際し施工管理技術者を置くように定めている。

(b) 平成9年版「共仕」では、場所打ちコンクリート杭の施工管理技術者は、「場所打ちコンクリートくい工事に関する知識及び技術及び・証明事業認定規程」(昭和60 年7月12日 建設省告示第1016号)に基づく「基礎施工士」を規定していた。しかし、この告示は平成13年3月で廃止され、代わりに建設業法施行規則第17条の2により「基礎施工士検定試験」(実施(-社)日本基礎建設協会)が規定されていたが、それも平成17年12月に廃止された。

(-社)日本基礎建設協会では、技術者の育成を推進するために、引き続き「基礎施工士検定試験」を実施しており、この「検定試験」に合格した者を「標仕」4.5.2に規定する「施工管理技術者」として能力のある者として扱うことができる。

なお、旧告示第1016号に基づき認定された「基礎施工士」及び建設業法施行規則第17条の2により規定された「基礎施工士検定試験」に合格した者も、「標仕」 1.3.2(a)の規定により同等以上の能力のある者と見なすことができる。

4.5.3 材料その他

(a) 鉄 筋
(1) 鉄筋の品質は、特記されたものとし、5章2節による。
(2) 鉄筋の加工及び組立は、4.5.4 (h) 及び5章3節を参照する。

(b) コンクリート
(1) 「標仕」表4.5.1では、コンクリートの種別と水セメント比の最大値、所要スランプ、粗骨材の最大寸法、単位セメント量の最小値を定めているので、これらを満足する調合強度のものを選ぶ。

なお、単位水量の最大値は、「標仕」6章の規定により一般には185kg/m3となる。しかし、骨材の地域性等により、これにより難い地域もある。その場合は、場所打ち杭に使用するコンクリートについては、地中に構築されるため充填性を優先させるべきであり、またコンクリート打込み後の養生条件も良いことなどから、設計担当者に確認のうえで、(-社)日本建築学会「JASS 5 鉄筋コンクリート工事」 24節[水中コンクリート]で規定している200kg/m3までは、品質計画を明確にすることにより認める場合も考えられる。

(2) 「標仕」では、水や泥土等によるコンクリートの品質の劣化等を考慮して単位セメント量の最小値を定めている。したがって、掘削孔中に水がないA種の場合には、品質の劣化も小さいためB種より単位セメント量の最小値が小さくなっている。

(3) コンクリートは地中に打ち込まれるため外気温による影響が少ないので、一般には養生温度による強度の補正は行わないが、北海道や東北地方の寒冷地では、地中温度が 8〜12℃と低くなることがあるため、必要に応じコンクリートの養生温度による調合強度の補正を行う。

(4) コンクリートの構造体強度補正値(S)の値は特記によるが、特記がない場合は、3N/mm2とする。ただし、4.5.5に規定する場所打ち鋼管コンクリート杭工法及び拡底杭工法において、(-財)日本建築センター等の評定取得時に、構造体強度補正値(S) を0 N/mm2(平成22年5月以前は、品質保証強度(ΔF)が 0 N/mm2 にて評定を取得している工法は、その条件の値でよい。平成20年8月以前のコンクリート強度補正についての評定を取得していない工法においては、特記がない場合は、3 N/mm2とする。

4.5.4 アースドリル工法、リバース工法及びオールケーシング工法

(a) 一般事項
(1) 工法の概要
アースドリル工法、リバース工法、オールケーシング工法の特性を表4.5.1に示す。

表4.5.1 工法の特性

①アースドリル工法
この工法は、図4.5.2の機械を用い、図4.5.3のような工程により杭を築造する。

図4.5.2 アースドリル掘削機


図4.5.3 アースドリル工法

② リバース工法
この工法は、図4.5.4の機械を用い、図4.5.5のような工程により杭を築造する。


図4.5 4 リバース掘削機


図4.5.5 リバース工法

③ オールケーシング工法

この工法は、図4.5.6の機械を用い、図4.5.7のような工程により杭を築造する。


図4.5.6 オールケーシング掘削機

図4.5.7 オールケーシング工法

(2) 各工法の施工機械と近接建物等との標禅的な必要距離を図4.5.8に示す。



図4.5.8 施工機械と建物との必要距離の例

(b) 試験杭
(1) 本杭を施工するに当たり、施工機械や各種安定液の適否、土質状態、地下水位及び被圧水等の有無、施工時間、支持地盤の確認等の種々の調査を行い、以後の本杭の参考とするために試験杭の施工を行う。

(2) 試験杭は、4.2.2で述べたように、本杭の最初の1本目の杭を試験杭とする場合には、報告を求めて打ち合わせ、その処置について検討する。

(3) 試験杭の調査項目としては表4.5.2を参照する。

表4.5.2 試験杭の施工時における調査項目

(c) アースドリル工法
(1) 掘削機の据付け
(i) 掘削機の据付けは、その作業地盤の耐力に応じて、道板、鋼板、砂利等を敷き、作業中に機械が傾斜することを防ぐ(機種によっては90tを超えるものがある。)。

(ⅱ) ケリーバーの中心を杭心に正確に合わせ、機体を水平に据え付ける。

(2) 掘削
(i) 最初のうち掘削孔が鉛直になるまでは慎重に掘削を行い、表層ケーシングを鉛直に建て込む。

(ⅱ) 土質に応じバケットの回転速度を調節しながら掘削を進める。掘削された土砂を常に観察し、崩壊しやすい地盤になったら安定液を用いる。

なお、バケットにリーマーを用いる拡幅掘削は、表層ケーシンク建込み深度までとし、それ以深の掘削にはリーマーを用いてはならない。

(ⅲ) 掘削深さが所定の深度に達し、排出される土により予定の支持地盤に達したことが確認されたらスライム処理をして検測を行う。

なお、検測とは、検測テープにより掘削深度を測定することであり、孔底の2箇所以上で行う。

(ⅳ) 支持層の確認は、バケット内の土砂を、土質柱状図及び土質資料と対比して行う。また、その際にケリーバーの振れや回転抵抗等も参考にする。

(v) 掘削孔の側墜の確認を、超音波等により行う装置が開発されている。なお、この装置を使用して確認を行う場合は、特記で指定される。

(3) 安定液
(i) アースドリル工法における孔壁保護は、通常安定液によって行う。

(ⅱ) 安定液には、ベントナイト系安定液とCMC系安定液があり、どちらも使用する材料は同じであるが、その違いはベントナイトとCMCの配合率の違いである。

(ⅲ) (ⅱ)の安定液の選択と配合は、土質や地下水条件を考慮して決める。また、適時試験を行って安定液を調整し、安定液の劣化を防ぐことが大切である。表4.5.3は、砂質土の場合の安定液の配合例である。

表4.5.3 砂質土の場合の安定液の配合例(単位:%)

(ⅳ) 安定液の性質
① 主な材料

② 繰り返し使用する場合の安定液の管理基準は、実状に応じたものとするが、その例を表4.5.4に示す。

表4.5.4 安定液の管理基準の例

③ 標準比重は、清水とベントナイトのみの新液の比重とし表4.5.5に示す。

表4.5.5 安定液の標準比重

④ 必要粘性とは、対象地盤に必要とする粘性をいう。

⑤ 作液粘性とは、新しく作った安定液の粘性をいう。アースドリル工法では、安定液を繰返し使用すると粘性が小さくなる例が多いので、一般的には作液 粘性は必要粘性より大きくする。

⑥ 安定液には、適当な量と質の分散剤が添加されていることを原則とする。

(d) リバース工法
(1) 掘削機の据付け
(i) サクションポンプユニットとロータリーテープルを切り離して作業できる(本体と10m程度切り離した位置で施工できる。)ため、杭施工場所に特別な養生を必要としない。

(ⅱ) スタンドパイプの建込みを行う。スタンドパイプは、表層地盤の崩壊防止及び自然地下水に対し2.0m以上の水頭差を保持し、静水圧により孔壁の崩壊を防止するために用いるもので、建込みは油圧ジャッキ又はバイブロハンマーにより行う。

スタンドパイプの径は、孔径より150〜200mm大きいものとする。また、根入れは地下水位、表層の土質の軟弱度により異なり、スタンドパイプ内の水圧で周囲の軟弱土が外側に移動あるいはパイピングを起こさないだけの深さとする。

(2) 掘削
(i) この工法は、静水圧 0.02N/mm2以上に保つことにより孔壁の崩壊を防ぐ工法であるので、掘削に際しては地下水位を確認し水頭差を2.0m以上保つように十分注意する。

(ⅱ) 掘削順序は、掘削ビットを埋設するだけの孔をハンマーグラプで掘削して孔内に水を満たし、所定の水圧を保ちながらロータリーテープルでビットを回転させ掘削をする。掘削土砂は楊水とともに沈殿槽に排出され、ここで掘削土砂を沈殿させ除去する。掘削土砂を除去し比重が小さくなった泥水は、再び掘削孔内に還流する。

(ⅲ) 本工法は掘削土をそのままで地上に排出しないため、支持層の確認はデリバリホースの末端から掘削土砂を採取し、土質柱状図及び土質資料と対比して行う。

(ⅳ) 三翼ビットを使用して掘削した孔底は、中心部は深く、外周ほど浅くなっている。このため検測は外局部に近い位置で2点以上行う。

(v) 側壁測定装置による掘削孔の確認は、(c)(2)(v) による。

(3) 孔内水
(i) リバース工法では、周辺の施工機械や作業による振動等の影響を受けない地盤に至るまでスタンドパイプを建込み、掘削中に地盤の粘性土を含んだ泥水が孔堡にマッドケーキを形成することと、孔内水頭を地下水位より2m以上高く保つことにより、スタンドパイプ先端以深の孔壁を保護し安定させる。

(ⅱ) 粘性土が多く介在する地盤は、掘削初期の使用水は清水であってもマッドケーキ形成に必要な循環水となる。

(ⅲ) 砂質系の地盤では、マッドケーキの形成に必要なコロイドが不足するので、事前に泥水を作液し掘削を開始しなければならないので注意が必要である。

(ⅳ) 泥水の比重は、掘削能率を高めるためには低く、孔壁保護面からは高いほうがよいという二面性を持つ。この両者を考慮して、その適正比重を 1.02〜1.08とする。

(e) オールケーシング工法
(1) 掘削機の据付け
(i) 掘削機の据付け地盤の補強については、(c)(1) による。

(ⅱ) 揺動式の場合の掘削土砂の排出は、機械の前方に限られるので、隣地より杭までの距離がない場合は作業動線に注意しなければならない。

(ⅲ) ケーシングチューブは、杭心に合わせ直角二方向からトシランシット又は下げ振りでチェックして鉛直に建込む。

(ⅳ) ファーストチューブの建込みは、水平精度と鉛直精度に直接影響を及ぼすので次のような方法で行うとよい。

① 杭心を正しくセットさせるため、図4.5.9に示すような治具を用い、ファーストチューブをセットする。


図4.5.9 ファーストチューブ建込み杭心合わせの定規の例

② 使用するファーストチューブは、鉛直性の監視が容易に行えるよう6m程度の長さにする。

③ ファーストチューブは、杭心に合わせ直角二方向からトランシット又は下げ振りでチェックして鉛直に建て込む。

(2) 掘 削
(i) 掘削は、ケーシングチューブを先に揺動又は回転圧入し、土砂の崩壊を防ぎながらハンマーグラブにより掘削をする。掘削が鉛直にできるかどうかは、最初のケーシングチューブ 1〜2本の建込み状況によって決まる。

(ⅱ) 被圧地下水等によるボイリングを起こしやすい砂又は砂礫層の場合及び軟弱粘性土層でのヒービングを起こしやすい地盤の場合は、孔内に水を張り防止する。

(ⅲ) 常水面以下に細かい砂層が 5m以上ある場合は、ケーシングチューブの外面を伝って下方に流れる水の浸透流や揺動による振動によって、周囲の砂が締固められケーシングチューブが動かなくなること(ケーシングチューブが食われる。)があるので注意する。

(ⅳ) 掘削終了時、ファーストチューブ刃先を杭底面より先行させないように注意する。

(v) 掘削深さが所定の深さに達し、排出される土から予定の支持地盤に達したことが確認されたら、スライムを処理し検測を行う。

(vi) 支持層の確認は、ハンマーグラブでつかみ上げた土砂を土質柱状図及び土質資料と対比して行う。

(3) 孔内水
オールケーシング工法では、掘削孔全長にわたりケーシングチューブを用いて孔壁を保護するため、杭壁崩壊の懸念はほとんどない。しかし、(2)(ⅱ)の場合や孔内水位と地下水位に水頭差がある場合は、掘削底周辺部の緩みの発生が想定されるので、孔内へ注水し水圧のバランスを図る。

(f) スライム処理
(1) スライムとは、孔内の崩落土、泥水中の土砂等が孔底に沈殿、沈積したものである。この上にコンクリートを打ち込むと、荷重がかかったときに杭が沈下するので、スライムの処理は重要である。

このほか、スライムは強度を含めたコンクリートの品質低下、杭の断面欠損及び支持力低下の原因となる。

(2) スライムの処理には、一次処理と二次処理がある。一次処理は掘削完了直後に行うスライム処理で、二次処理はコンクリート打込み直前に行うスライム処理である。各スライム処理方法の例を、図4.5.10に示す。


図4.5.10 スライム処理方法の例

(3) アースドリル工法のスライム処理は、一次処理として底ざらいバケットにより行う。バケットは杭径より10cm小さいものを用い、バケットの昇降によって孔壁が崩壊することのないよう緩やかに行う。

鉄筋かご建込みの際の孔壁の欠損によるスライムや建込み期間中に生じたスライムは、二次処理としてコンクリート打込み直前に水中ポンプ方式又はエアーリフト方式等により除去する。

(4) リバース工法のスライム処理は、一次処理として掘削完了後ビットを孔底より若干引き上げて緩やかに空回しするとともに、孔内水を循環させて比重を下げ、鉄筋かごやトレミー管建込み期間中のスライム沈積量を少なくする。

二次処理は、コンクリート打込み直前にトレミー管とサクションポンプ等により孔底に沈積したスライムを除去する。

(5) オールケーシング工法のスライム処理は、ドライ掘削や孔内水位の低い場合は、掘りくずや沈殿物の量が少ないので、掘削完了後にハンマーグラプで静かに孔底処理(孔底のさらい)を行う。また、孔内水位が高く沈殿物の多い場合には、ハンマーグラプで孔底処理をしたのち、更に、スライムバケットによる処理を行う。

なお、コンクリート打込み直前までに沈殿物が多い場合には、二次処理として、水中ポンプ方式等によりスライムを除去する。

(g) 排液及び排土処理
(1) 掘削時には相当の量の排液がでるが、排液は沈殿槽あるいは直接真空ポンプ車に集め場外へ搬出して指定場所へ投棄するか、排液槽に収集し凝集剤を添加して、上澄と回収泥土とに分け、回収泥土を更に脱水処理等をして含水比を小さくし投棄する。

(2) 掘削された排土は、含水比が大きい( 50〜200%)ので敷地内に集積して、天日乾燥させ、その含水比を小さくする。更に、セメントを添加して固形化する場合と、石灰と混合しその化学反応の熱を利用して水分を除去し固形化する場合がある。

(3) これらの排液及び排土処理に当たっては、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の適用を受ける場合があるので、法律に従った処理が必要になる。

この場合、元請業者は産業廃棄物の排出事業者に該当するので、処分の方法、形態、場所等を確認させたうえで、許可を取得している業者に委託して処理を行わせるようにする。

(h) 鉄筋の加工及び組立
(1) 鉄筋は、かご形に組み立てる(図4.5.11参照)。
主筋と帯筋を溶接している例が見られるが、点付け溶接は注意しても主筋が断面欠損をするおそれがあるので「標仕」4.5.3(a)では、主筋への点付け溶接は行わないこととしている。また、帯筋の重ねは特記が原則であるが、10 d以上の片面溶接(両面の場合は5d)とすることが望ましい。補強リングは、主筋に断面欠損を起こさないように十分注意し堅固に溶接する。また、補強リングは、鉄筋かごの径により主筋の内、外周のいずれに取り付けてもよい。


図4.5.11 鉄筋かご

(2) 溶接技能者は、7.6.3を参照する。

(3) 溶接施工は、7章6節による。

(4) 鉄筋かごの継手は、「標仕」表5.3.2により、鉄線(通常10#以上)で、ずり落ちないように結束する。安易に溶接を用いるとアンダーカットや急冷により材質に悪影評を与えるので注意する。

なお、鉄筋かごの建込みは、かごを変形させないように静かに行い、自由落下させてはならない。

(5) 鉄筋かごには、かぶり厚さを確保するためにスペーサーを深さ方向に 3〜5m間隔を目安として、最低で1断面4箇所以上取り付ける。スペーサーは、ケーシングチューブを用いる場合は、D13以上の鉄筋を用いる。ケーシングチューブを用いない場合に鉄筋を用いると、孔壁を損傷するので、杭径 1.2m以下の場合は鋼板 4.5 x 38(mm)、1.2mを超える場合は鋼板 4.5 x 50(mm)程度のものとする。

(6) オールケーシング工法におけるケーシングチューブの引抜き時には、ケーシングチューブと鉄筋かごの接触により、鉄筋かごが浮き上がる場合(共上がり)があるので、次の事項について注意する。

① ケーシングチューブの内面をよく消掃しておく。
② スペーサーの高さ及び位置に注意する。
③ 鉄筋かごを曲がりや変形のないように建込む。

なお、共上がりが発生した場合は、共上がり量を最小限に止めなければならない。そのためには、早期発見が大切で、鉄筋頂部から共上がりチェック用の鉄線をケーシングチューブ天端まで伸ばしておき、引抜き初期にチェックを行う。

( i ) コンクリート打込みその他

(1) コンクリートの打込みは、トレミー管を用いる。また、コンクリートの打込み開始時にはプランジャーをトレミー管に設置して、コンクリートと泥水等が混り合うのを防ぎ、下部から泥水等を押し上げるように行う。また、トレミー管及びケーシングチューブは、これを引き抜きながらコンクリートの打込みを行う。このときトレミー管及びケーシングチューブの先端は、コンクリートの中に常に 2m以上入っているようにする。また、トレミー管のコンクリート中への挿入長さが長くなると、トレミー管先端からのコンクリート押出し抵抗が大きくなり、コンクリートの流出が悪くなるので、最長でも 9m程度にとどめておいた方がよい。

(2) ケーシングチューブを急速に引き抜くと、コンクリートに泥水を巻き込むことになるので十分に注意をしなければならない。

(3) コンクリート打込み時に、その浮力等で鉄筋かごの浮上がりが生じる場合があるので注意する。

また、コンクリートがある程度打ち上がってから、今まで動かなかった鉄筋かごが共上がりし始めることもあるので十分注意が必要である。

(4) コンクリートの打込みは、泥水等を上に押し上げるように行うので、頂部に低品質のコンクリートができる。このため余分に打ち上げて余盛りをつくる。余盛りの高さは、「標仕」4.5.4 (c)(10) では、泥水が多くコンクリートの劣化が著しいと考えられる「標仕」表4.5.1のB種の場合は800mm以上、掘削孔底にほとんど水がたまっていないような状態を想定したA種の場合(無水掘り)を500mm以上としている。

なお、コンクリート打込み後、ブリーディングに伴ってコンクリート表面にレイタンスと呼ばれるぜい弱な物質の層が形成されるが、このような骨材を含まないモルタル状の固化物は余盛りには含まれない。

(j)埋戻し
コンクリート打込み後、杭孔が残る場合は、孔への落下防止と孔周辺地盤の崩壊防止のため埋戻しを行う。

埋戻しは、硬化し始めた杭に悪影響を与えないように敷地内の良土を静かに投入して行う。この良土は、根切りの際、杭位置の目印にもなる。

4.5.5 場所打ち鋼管コンクリート杭工法及び拡底杭工法

場所打ち鋼管コンクリート杭工法及び拡底杭工法の施工は、建築基準法に基づき認定された施工仕様により行い、それ以外については、4.5.4による。

4.5.6 杭頭の処理

「標仕」4.5.4(c)(10)で規定する余盛り部分は、根切り後、所定の位置まではつり処理をする。

はつり作業に際しては、杭本体へのひび割れや損傷の防止、はつり高さ、形状寸法に注意をする。

処理の時期は、コンクリートの硬化の程度及び後工程への影響を考慮して、「標仕」では、コンクリート打込み後14日程度経過したのちとしている。

4.5.7 施工記録

場所打ちコンクリート杭を築造するに当たり、管理した結果を記録し、杭工事の完了とともに報告書を提出させる。

(1) 施工報告書の記載事項は、おおむね次のとおりである。
(i) 一般事項
① 工事概要
② 杭仕様(杭の工法形状,寸法コンクリート強度等)
③ 施工機械の仕様・概要
④ 実施工程表
⑤ 杭位置
⑥ 鉄筋かご加工仕様
⑦ 工事写真

(ⅱ) 掘削に関する事項
① 掘削所要時間
② 掘削土砂量
③ 安定液等の記録
④ 孔底スライムの沈積状況と処理時間
⑤ 支持地盤の確認記録

(ⅲ) その他
① 鉄筋かごの建込み時間
② コンクリートの打込み時間
③ コンクリートの使用量

(2) 場所打ちコンクリート杭の施工、記録の例を図4.5.12に示す。


図4.5.12 施工記録の例

やまとたける

一級建築士/ 1級建築施工管理技士