4節 鋼杭地業
4.4.1 適用範囲
(a) この節は、鋼管又はH形鋼を用いる鋼杭地業に適用する。
(b) 鋼杭の特徴としては次のような事項が挙げられる。
(1) 工場製作品であるため、安定した材料品質が得られる。
(2) 曲げに強く、水平力を受ける杭に適する。
(3) 応力に応じて材質や肉厚を変えた合理的な設計ができる。
(4) 支持地盤の不陸に対応しやすい。
(5) コンクリート杭と比較して質量が軽く、取扱いが簡単である。
(6) 腐食に対する対策が必要である。
(7) 大口径で薄肉の鋼管は、局部座屈を生じることがある。
(8) 先端開放形の打込杭では、支持地盤への根入れが十分でないと支持力が低下する場合がある
(c) 施工計画書の記載事項は.4.3.1(c)を参考にするとよい。
(d) 杭施工法の概要
(1) 施工の一般事項
鋼管杭の施工に当たっては、地盤状況、現場状況、設計支持力等を考慮して、杭を予定深度まで正しく、かつ、安全に設置できる工法及び施工機械とする。
(2) 施工法の分類
杭の施工法の分類を図4.4.1に示す。
図4.4.1 鋼杭の施工法の分類
現在は、騒音・振動の問題により、市街地での打込み工法の採用実績は非常に少なく、埋込み工法が主流である
なお、特定埋込杭工法とは、4.3.5(a)に示す工法である。
① 打撃による打込み工法(図4.3.5及び6参照)
一般に杭径600mm以下の施工に用いられる。地盤を緩めることがなく支持力は期待できるが、ハンマーを使用するため騒音、振動が大きく市街地では問題となる場合が多い。これらの対策としては、油圧パイルハンマーの使用、プレボーリング工法、中掘り工法との併用等が挙げられる。
プレボーリング併用打撃工法は、アースオーガーで一定深度まで掘削し、杭を建て込んだのち、打撃により所定深度まで施工する方法である。中掘り打撃工法は、中掘り工法により一定深度まで杭を埋設したのち、打撃により所定深度まで施工する方法である。
開放形の鋼管杭を使用した場合、硬い中間層でも比較的容易に打ち抜くことができる。また,施工深度としては、80m程度まで可能である。
なお、杭径が600mmを超える開放形の鋼管杭を施工する場合は、先端閉塞効果の問題があるため、別途、載荷試験等で支持力を確認する必要がある。
② 振動による打込み工法
バイブロハンマーにより杭に上下方向の強制振動を加え、杭周面摩擦力及び先端抵抗を動的な摩擦力と抵抗力に減少させて貫入させる工法である。中間層があり、打抜きが困難と予想される場合には、ウォータージェット等を併用する場合がある。
一般に杭径600mm以下の施工に用いられるが、バイブロハンマーを使用するため、市街地では問題となる場合がある。
杭に強制振動を加えるため、杭頭部の補強又は適切な管厚の設定が必要である。施工実績が少ないため、載荷試験等で支持力を確認するなど、工法の適用に当たっては注意を要する。
③ プレボーリングによる埋込み工法(図4.3.7参照)
アースオーガーによってあらかじめ掘削された縦孔に鋼管杭を建て込み、軽打、圧入により支持地盤に定着させる工法で、一般にセメントミルク工法と称される。掘削中は孔壁の崩壊防止を兼ねた杭周固定液(貧配合のセメントミルク)をオーガー先端から噴出し、所定深度に達したのち、根固め液に切り替え所定量を注入する。その後、オーガーを引き上げ、杭を建込み、軽打又は圧入により支持地盤に定着させる。
なお、オーガーを引き上げる際は、必要に応じて杭周固定液を充填するなどの注意が必要である。
この施工法は、国土交通省住宅局建築指導課監修「埋込み杭施工指針・同解説」に準じて施工するものであり、鋼管杭に適用する場合は、先端閉塞杭を使用する。通常用いられる杭径は 300〜600mm、施工深度は30m程度以下である。
④ プレボーリングによる球根拡大埋込み工法(特定埋込杭工法 図4.4.2参照)
アースオーガーによってあらかじめ掘削された縦孔に鋼管杭を建て込み、回転埋設により支持地盤に定着させる工法である。掘削中は、孔壁の崩壊防止を兼ねた掘削液又は杭周固定液(貧配合のセメントミルク液)をオーガー先端から噴出しながら原地盤と混合かくはん、所定深度に達したのちに根固め液(富配合のセメントミルク液)に切り替え、拡大球根を築造する。所定量の根固め液を注入後、オーガーを引き上げ、杭を建て込む。支持地盤への杭の定着は、施工機械の自重を利用して回転埋設される。杭周固定液を使用する場合としない場合がある。
支持地盤に築造された拡大根固め部と杭先端部の一体化を図るため、杭先端部には特殊な金物が取り付けられている。根固め部を拡大することで大きな支持力を得ようとするものである。
なお、この工法は建築基誰法に基づく特定埋込杭工法となっており、施工に当たっては工法で定められた条件に従って行うものとする。
図4.4.2 プレポーリングによる球根拡大埋込み工法
⑤ 中掘りによる埋込み工法(特定埋込杭工法 図4.3.8参照)
杭中空部にオーガーを挿入、地盤を掘削しながら土砂を排出し、杭を設置する工法である。支持地盤の土砂とセメントミルク液を混合かくはんすることにより、支持力を得ようとするものである。
杭の設置や排土を促進するため、圧縮空気又は水をオーガー先端から噴出させながら掘削する場合が多く、施工機械の自重を利用した圧入装置やドロップハンマーによる軽打等を併用する場合もある。
掘削機には、通常アースオーガーが使用される。また、杭の設置を容易にする目的と補強の目的で,杭先端には補強バンド又はその他付属品が取り付けられる。
支持地盤の土砂とセメントミルク液を混合かくはんする方法には、高圧ジェットによる方法、低圧の機械かくはんによる方法等がある。いずれの工法も建築基準法に基づく特定工法となっており、施工に当たっては、工法で定められた条件に従って行うものとする。
⑥ 中掘りによる球根拡大埋込み工法(特定埋込杭工法 図4.4.3参照)
杭中空部にオーガーを挿入し、地盤を掘削しながら杭を圧入する工法である。支持地盤において先端部を拡大掘削し、支持地盤の土砂とセメントミルク液を混合かくはんすることにより、大きな支持力を得ようとするものである。杭周固定液を使用する場合としない場合がある。
掘削機には、通常アースオーガーが使用されるが、支持地盤に築造された拡大根固め部と杭外周部の付着を増加させる目的で、杭先端部にはスパイラル状の突起、補強バンド又はその他付属品が取り付けられる。
支持地盤の土砂とセメントミルク液の混合かくはんは、低圧による機械かくはんによる方法が用いられる。杭は施工機械の自重を利用した圧入装置やドロップハンマーによる軽打等を併用し埋設される。杭を回転させながら圧入する方法もある。
なお、この工法は建築基準法に基づく特定埋込杭工法となっており、施工に当たっては、工法で定められた条件に従って行うものとする。
図4.4.3 中堀りによる球根拡大埋込み工法
⑦ 地盤改良と併用した埋込み工法(特定埋込杭工法 図4.4.4参照)
杭中空部にオーガーを挿入し、オーガー先端からセメントミルク液を噴出しながら原地盤と混合かくはんすることで、ソイルセメント柱を造成しつつ杭を設置する工法である。支持地盤においては、高濃度のセメントミルク液とその土砂を混合かかくはんし支持力を発現させるもので、ソイルセメント柱との付着を高めるために外面に突起(リブ)の付いた鋼管杭が使用される。地盤改良と併用することにより、大きな支持力を得ようとする工法である。
掘削機にはアースオーガーが使用されるが、オーガーヘッドは地盤の掘削と混合かくはんの機能を兼用した特殊なものが使用される。また、杭の設置を 容易にするために、杭を回転させながら施工機械の自重を利用して圧入する。
なお、この工法は建築基準法に基づく特定埋込杭工法となっており、施工に当たっては、工法で定められた条件に従って行うものとする。
図4.4.4 地盤改良と併用した埋込み工法
⑧ 回転圧入による埋込み工法(特定埋込杭工法 図4.4.6参照)
杭先端にスパイラル状の鉄筋又はつばさ状、スクリュー状の掘削翼を取り付けた鋼管杭(図4.4.5参照)を回転圧入により所定深度まで設置する工法である。
図4.4.5 回転圧入による埋込み工法の杭先端部の例
施工に当たっては三点支持式の杭打ち機、全回転型の圧入装置等が使用される。支持地盤にねじり込むことにより、支持力を発現させるものであり、大きな支持力と無排土を特徴としている。
地盤に鋼管杭をねじり込むため、管厚の設定には注意を要するほか、中間層がある場合の打抜きの可否等、事前検討が必要である。
なお、この工法は建築基準法に基づく特定埋込杭工法となっており,施工に当たっては,工法で定められた条件に従って行うものとする。
図4.4.6 回転圧入による埋込み工法
(e) 支持力の狩定
杭の許容支持力は、4.3.1(e)による。
4.4.2 材 料
(a) 鋼 杭
鋼杭としては、JIS A 5525(鋼管ぐい)とJIS A 5526 (H形鋼ぐい)が規定されている。これらは一般構造用炭素鋼管や一般構造用圧延鋼材で作られた H形鋼と材質的には同等であるが、形状・寸法許容差等が杭専用のものとなっている。また、鋼管杭においてはその使用目的から大口径・厚肉の製品がラインナップされている。
(b) 許容応力度
鋼材の許容応力度については、建築基準法施行令第90条では基準強度(F値)に応じて定めることとしている。鋼杭に使用されるSKK400・SKK490及び SHK400・SHK490の設計基準強度は、「鋼材等及び溶接部の許容応力度並びに材料強度の基準強度を定める件」(平成12年12月26日 建設省告示第2464号)に定められている。鋼杭の許容応力度を表4.4.1に示す。
表4.4.1 鋼杭の許容応力度
また、鋼杭においては、許容応力度を求めるに際し、腐食や局部座屈等を考慮しなければならない。
(c) JIS A 5525(鋼管ぐい)の抜粋を次に示す。
JIS A 5525 : 2009
1 適用範囲
この規格は、土木・建築などの構造物の基礎に使用する溶接鋼管ぐい(以下、くいという。)の単管について規定する。この規格が適用される寸法範囲は、通常、外径318.5mm〜2000mmとする。
なお、本体に規定する項目のほかに、注文者があらかじめ製造業者との協定によって指定することができる突起付き単管の品質規定を附属書Aに、単管に取り付ける附属品の代表的な形状及び寸法を附属書Bに、単管に施す加上及び塗装・被覆の代表的な例を附属書Cに示す。
注記1
地すべり抑止用の継目無鋼管及び遠心力鋳鋼管には、それぞれ JIS G 3444 及びJIS G 5201がある。
注記2
くいの構成及び各地の呼び名を、図1に示す。
単管とは、素管のまま、又は素管を工場で円周溶接した継ぎ管をいい、くいは、単管又は単管の組合せをいう。現場で連結する単管は、上側を上ぐい、中側を中ぐい、下側を下ぐいという。ただし、中ぐいが2本以上になる場合は、下側から中1ぐい、中2ぐいという。
注記3
工場円周溶接とは、素管と素管とを製造業者が円周溶接によって単管にする場合をいい、現場円周溶接とは、単管と単管とを施工業者が円周溶接によってくいにする場合をいう。
注1) 地すべり抑止用のくいを含む。
図1- くいの構成
3 種類の記号
くいの種類は、2種類としその記号は、表1による。
表1- 種類の記号
4 製造方法
くいの製造方法は、次による。
a) 素管は、アーク溶接によるスパイラルシーム溶接若しくはストレートシーム溶接、又は電気抵抗溶接によって製造する。
なお、工場円周溶接における素管のシーム溶接部は、互いに円周方向の1/8以上ずらさなければならない。
b) 突起付きくいの素管は、圧延方向に平行な連続した突起を設けた鋼帯を、突起が鋼管の内面及び/又は外面になるようにスバイラルシーム溶接によって製造する。
c) 単管は、素管を工場で円周溶接して製造する場合及び素管をそのまま使用する場合がある。
5 化学成分
素管は、11.1によって試験を行い、その沿鋼分析値は、表2による。
表2 – 化学成分
6 機械的性質
素管は、11.2によって試験を行い、その引張強さ、降伏点又は耐力、伸び、溶接部引張強さ及びへん平性は、表3による。へん平性の場合は、試験片にきず又は割れを生じてはならない。ただし、溶接部引張強さは、アーク溶接によって製造した素管に適用し、へん平性は、電気抵抗溶接によって製造した素管に適用する。
表3 – 機械的性質
8 附属品、加工及び塗装・被覆
注文者は、くいに付随する附属品、加工及び塗装・被覆を指定してもよい。その場合の外観、検査、表示などは、受渡当事者間の協定による。また、附属品の代表的な形状及び寸法を、附属書Bに、加工及び塗装・被覆の代表的な例を附属書Cに示す。
9 単管の形状,寸法,質屈及び寸法許容差
9.1 管端の形状 単管の管端形状は、図2による。厚さの異なる素管を継ぐ場合は、通常、図3に示すように、あらかじめ工場で加工する。ただし、補強又は加工について特に要求のある場合は、受渡当事者間の協定によってもよい。
注記
図2において、頭部端面とは、くいの上端部をいい、先端部端面とは、くいの下端部をいう。
図2 – 単管の両端及び現楊円周溶接部の形状
図3 – 厚さの異なる管の円周溶接部の形状
附属害B(参考) 附属品の形状及び寸法の代表例
序 文
この附属書は、注文者の指定によって単管に取り付ける附属品の形状、寸法などの代表例を示すもので、規定の一部ではない。
注 記
附属品とは、くいの施工時に一時的に必要となる仮設部材をいう。
B.1 附属品の材料及び溶接材料
附属品の材料は、機械的性質がJIS G 3101のSS400と同等又はそれ以上とし、附属品取付け用の溶接材料は、附属品の規定引張強さ以上のものを得るため、次のいずれか又は組合せによる。
JIS Z 3211、 JIS Z 3312、JIS Z 3313、JIS Z 3351、JIS Z 3352
なお、素管と附属品との強度が異なる場合には、低強度側の規格値と同等若しくはそれ以上の引張強さをもつ溶接材料を用いる。
B.2 附属品の外観検査及び表示
附属品の外観、検査及び表示は、次による。
a) 外観
附属品の外観は、使用上有害な欠点があってはならない。
b) 検査
附属品の材料及び溶接部は、B.1に適合しなければならない。また、外観は、 目視によって検査し、a)に適合しなければならない。
c) 表示
工場において本体に取付けない附属品には、種類及びサイズが識別できる表示をしなければならない。
B.3 附属品の形状及び寸法の例
B.3.1 補強バンド
B.3.1.1 補強バンドの形状
補強バンドの形状は.図B.1による。
図B.1 – 補強バンドの形状の例
B.3.1.2 取付寸法
取付寸法は、次による。
a) 取付位置 (ℓ1) : 18mm
b) 溶接脚長 (a) : 6mm(溶接は、すみ肉溶接による。)
B.3.1.3 寸法許容差
補強バンドの寸法許容差は、表B.1による。
表B.1 – 補強バンドの寸法許容差
B.3.2 つり金具
つり金具の形状及び寸法は.図B.2による。
図B.2 – つり金具の形状及び寸法の例
B.3.3 裏当てリング及びストッパー
単行の現場円周溶接部の裏当てリング、及び中ぐい又は下ぐいにストッパーを取り付ける場合、その形状及び寸法は特に指定のない限り図B.3による。
図B.3 – 裏当てリング及びストッパーの形状並びに寸法の例
JIS A 5525 : 2009
(d) 鋼管杭にはJISの附属書に記載されている付属品のほかに、表4.4.2に示す付属品が一般的に使われている。材質はSS400と同等又はそれ以上とする。
表4.4.2 付属品の名称
(e) 鋼杭の腐食の要因と防食方法
(1) 腐食の要因には、次のようなものがある。
(i) 土又は水の化学的性質
(ii) 鋼材の自然電位及び付近の電気施設の影響
(iii) 水や空気の流動性
(iv) 地中温度
(v) 細菌
(2) 防食方法には、次のような方法がある。
(i) 杭自体に腐食代を見込む方法
(ii) 塗装による方法
(iii) コンクリートを巻き立てる方法
(iv) 電気防食による方法
4.4.3 打込み工法
(a) 鋼杭の打込み工法には、打撃によるもの、振動によるものなどがあるが、打撃によるもの(打撃工法)が一般的に用いられる。施工は4.3.3によるが、大口径で薄肉の鋼管杭の場合は局部座屈を生じる場合があるため、杭頭部の補強又は t/D ( t:管厚、D:管の外径)を検討する必要がある。また、杭を座屈させず、かつ、効率よく施工するためには、ハンマーの質量も適正なものを選定することも必要である。
打撃工法の打止めは、4.3.3 (i)による。杭に過剰な打撃を与えないための目安は、杭の長さ・形状や地盤状況等により一義的には決められないが、通常の施工においては、繰返し打撃による杭体の疲労破壊が生じた事例はほとんどない。しかし、非常に硬質で厚い中間層を打ち抜く場合や岩盤等の支持地盤に打ち込む場合は、疲労破壊が起こる場合もあるので、別途、検討する必要がある。
(b) H形鋼杭
H形の方向が指定された場合は、その方向を規制するキャップを用いるか、その他適切な方法により.杭の断面形状を指定された方向に合わせなければならない。
(c) 杭先端部の処理
杭先端部の形状としては、補強を行う場合、補強を行わない場合及び先端部にシューを付ける場合等がある。「標仕」4.4.2 (b)では、特記がない場合、鋼管杭は開放形で補強バンドはJISの解説に合わせることとしている。
(d) 杭頭部の処理
一般に打込み時の杭頭部の処理は、適切なハンマーを選定し適切な作業を行えば、杭頭部の補強は特に必要としないが、大口径で薄肉の鋼管杭( t/Dで1%未満)を使用する場合や疲労破壊が懸念される場合等は、管厚を厚くするなどの処置をする。
4.4.4 特定埋込杭工法
(a) プレボーリングによる球根拡大埋込み工法(特定埋込杭工法)
(1) 試験杭
(i) 試験杭は本工事の初期あるいは本工事に先立ち、設計・施工計画の妥当性を確認するために実施するもので、使用機械や施工方法の適否、施工能率、支持地盤の確認が主な目的である。
(ii) 試験杭の施工については、工法で定められた条件に従って行う。
(2) 施工
(i) 施工方法
地盤の掘削及び杭の設置には、アースオーガーを装備した三点支持式杭打ち機が使用される。駆動装置は、杭径、長さ及び地盤条件により異なるが、一般に 90kW〜150kWが使用される。
支持地盤の確認は、施工機械から送られてくる駆動用電動機の消費電流値や貫入速度等の施工情報と貫入深度を基に行う。
(ii) 一般部の掘削及びかくはん
所定深度までの掘削は、掘削水又は杭周固定液にて行う。掘削完了後に杭の埋設に支障がないよう、孔内泥土をかくはんする。
杭周固定液を使用する場合は、掘削ヘッド先端より所定の配合条件で混練されたセメントミルク液を所定量吐出しながら、一定の速度にてアースオーガーを上下反復し、孔内泥土と混合かくはんする。
(iii) 先端部の掘削及び根固め
孔内泥土のかくはん作業が完了したのち、掘削水又は根固め液にて先端部を所定の形状に拡大掘削する。
掘削水を使用して拡大掘削する場合は、拡大掘削完了後に根固め液に切り替え、原位置地盤と混合かくはんし、根固め部を築造する。
根固め液を使用して拡大掘削する場合は、一定の速度にてアースオーガーを上下反復しながら原位置地盤と混合かくはんし、根固め部を築造する。
(iv) 杭の運搬及び取扱い
杭の運搬及び取扱いは、4.3.3 (f)によるが、杭先端部に特殊な金物が取り付けられているため、特に注意を要する。
(v) 施工精度
施工精度は、4.3.3( j )による。
(3) 杭先端部の処理
杭先端部の形状は、工法で定められた条件によるものとする。
(b) 中掘りによる埋込み工法(特定埋込杭工法)
(1)中掘りによる埋込み工法の概要は、4.4.1 (d) に示すとおりである。施工は、4.3.5 による。
(2)杭先端部の処理
杭先端部の形状は、工法で定められた条件により異なるため、特記によるものとする。
(c) 中掘りによる球根拡大埋込み工法(特定埋込杭工法)
(1) 試験杭
(i) 試験杭は本工事の初期あるいは本工事に先立ち、設計・施工計画の妥当性を確認するために実施するもので、使用機械や施工方法の適否、施工能率、支持地盤の確認が主な目的である。
(ii) 試験杭の施工については、工法で定められた条件に従って行う。
(2) 施 工
(i) 施工方法
杭の設置には、地盤の掘削をしながら杭を圧入する装置を装備した三点支持式杭打ち機が使用される。駆動装置は、杭径、長さ及び地盤条件により異なるが、一般に115kW 〜 150kWが使用される。
支持地盤の確認は、施工機械から送られてくる駆動用電動機の消費電流値や貫入速度等の施工情報と貫入深度を基に行う。
(ii) 一般部の掘削
所定深度までの掘削は、一定速度にて行う。杭内の掘削土が圧密され掘進性が低下する場合は、圧縮空気等で掘削土を排出する。また、杭先端より掘削ヘッドを必要以上に先行させる掘削は、杭の領斜や周辺地盤を乱す可能性があるため行ってはならない。
掘削時に杭周固定液を注入する場合は、掘削ヘッド先端より所定の配合条件で混練されたセメントミルク液を所定量吐出する。
(iii) 先端部の掘削及び根固め
所定深度まで掘削したのち、先端部を所定の形状に拡大掘削する。拡大掘削完了後、根固め部用の配合条件にて混練されたセメントミルク液に切り替え、原位置地盤と混合かくはんし、根固め部を築造する。
(iv) 杭の運搬及び取扱い
杭の運搬及び取扱いは、4.3.3(f)によるが、杭先端部にスパイラル状の鋼板や金物が取り付けられているため、特に注意を要する。
(v) 施工精度
施工精度は、4.3.3 ( j )による。
(3) 杭先端部の処理
杭先端部の形状は、工法で定められた条件によるものとする。
(d) 地盤改良と併用した埋込み工法(特定埋込杭工法)
(1) 試験杭
(i) 試験杭は本工事の初期あるいは本工事に先立ち、設計・施工計画の妥当性を確認するために実施するもので、使用機械やセメントミルク液の適否、ソイルセメント柱(固化体)の出来形、施工能率、支持地盤の確認が主な目的である。
(ii) 試験杭の施工については,工法で定められた条件に従って行う。
(2) 施工
(i) 掘削及びかくはん方法
原位置地盤の掘削と混合かくはんは、心ずれ防止装置付き特殊ロッドの先端に掘削翼とかくはん翼を装備した特殊ヘッドにて行う。駆動装置は、掘削径、長さ及び地盤条件により異なるが、一般に115〜150kWが使用される。
固化体の造成と鋼管の設置は、掘削かくはんヘッド先端より所定の配合条件にて混練されたセメントミルク液を所定量吐出しながら、一定の速度にて行う。これにより、均質な固化体を築造する。
支持地盤の確認には、施工機械から自動的に送られてくる掘削深度、駆動用電動機の消費電流値、掘進速度等の施工情報を基に、積分電流値・掘進抵抗値等を表示させる施工モニター装置が使用される。この総合的な情報に基づき、支持地盤の確認を行う.。
(ii) 先端部の掘削及びかくはん方法
先端部の築造に際しては、先端部用の配合条件にて混練されたセメントミルク液に切り替えたのち、所定の掘進速度にて掘削及びかくはんを行う。
(iii) 杭の運搬及び取扱い
杭の運搬及び取扱いは、4.3.3 (f)によるが、外面に突起の付いた鋼管杭を使用するため、特に注意を要する。
(iv) 施工精度
施工精度は、4.3.3 ( j )による。
(v) 廃液及び排土処理
廃液及び排土処理は、場所打ちコンクリート杭に準ずる。
(3) 杭先端部の処理
杭先端部の形状は、工法で定められた条件(特記)によるものとする。
(e) 回転圧入による埋込み工法(特定埋込杭工法)
(1) 試験杭
(i) 試験杭は本工事の初期あるいは本工事に先立ち、設計・施工計画の妥当性を確認するために実施するもので、使用機械や施工方法の適否、施工能率、支持地盤の確認が主な目的である。
(ii) 試験杭の施工については、工法で定められた条件に従って行う。
(2) 施 工
(i) 施工方法
杭の設置には、回転圧入装置を装備した三点支持式杭打ち機又は据骰き式の全回転型圧入装置が使用される。駆動装置は、杭径、長さ及び地盤条件により異なるが、一般に三点支持式杭打ち機の場合 75〜90kWが使用される。
支持地盤の確認は、施工機械から送られてくる駆動用電動機の消費電流値や貫入速度又は回転トルク値等の施工情報と貫入深度を基に行う。
(ii) 杭の運搬及び取扱い
杭の運搬及び取扱いは、4.3.3 (f)によるが、杭先端にスパイラル状の鉄筋又はつばさ状、スクリュー状の掘削翼の付いた鋼管杭を使用するため、特に注意を要する。
(iii) 施工精度
施工精度は、4.3.3 ( j )による。
(3) 杭先端部の処理
杭先端部の形状は、工法で定められた条件(特記)によるものとする。
(f) プレボーリングによる埋込み工法(「標仕」以外の埋込み工法)
(1) プレボーリングによる埋込み工法の概要は、4.4.1(d)に示すとおりである。施工は、4.3.4による。
(2) 杭先端部の処理
「埋込み杭施工指針・同解説」によれば、杭はすべて閉端杭を使用することになっているため、杭先端部にはシュー等を取り付け、閉端杭としなければならない。
4.4.5 継手
(a) 鋼管杭の継手は現場溶接、H形鋼杭の継手は高カボルト継手が一般的である。高カボルト継手は、7章4節による。
「標仕」では、鋼管杭の溶接は、原則として、半自動又は自動アーク溶接とすることが定められている。半自動溶接はセルフシールドアーク溶接、自動溶接はセルフシールドアーク溶接又は炭酸ガスアーク溶接が用いられている。
(b) 溶接技能者
溶接技能者は、4.3.6(a)(2)による。
(c) 継手
鋼管杭の溶接継手部の仕様は、JISで規定されている( 4.4.2(c)参照)。
開先及びストッパーは、原則として製造所で加工される。たれ止めは必要に応じて図4.4.7のような銅バンドを使用する。
また、建築基準法に基づく指定機関において性能を評価された無溶接継手があるが、これを使用する際の継手部の仕様は、工法に定められた条件によるものとする(図4.4.8参照)。
図4.4.8 鋼管杭の無溶接継手の例
(d) 溶接施工
鋼管杭の現場溶接施工において必要な注意事項は次のとおりである。
(i) 母材の溶接部は、溶接に先立ち、水分、油、スラグ、塗料等溶接に支障となるものを除去する。ただし、丈夫なワイヤプラシでも取れないミルスケール及び溶接に支障のない塗料は、除去しなくてもよい。
(ii) 溶接機とその附属用具は、溶接条件に適した構造及び機能を有し、安全に良好な溶接が行えるものとする。
(iii) 溶接部は、有害な欠陥のないもので、表面は、できるだけ滑らかなものとする。
(iv) スラグの除去は、各パス及び溶接完了後入念に行う。
4.4.6 杭頭の処理
(a) 杭頭の処理は特記が原則であるが、打込み完了後、設計図書で指定された高さに切りそろえることが望ましい。
(b) 杭頭を切断する場合、定規を用いガス切断により、水平、かつ、できるだけ平滑に仕上げる。
(c) 杭頭の位置が所定の高さに達していない場合は、設計担当者と打ち合わせて、杭の継足しを行うか、基礎の位置を下げるなどの処置を決め、受注者等と「標仕」1.1.8に基づく協議を行う。
(d) 継足しを行う場合の溶接は、「標仕」4.4.5の規定によるが、溶接部の開先形状等を含めて、設計担当者と打ち合わせて検討する必要がある。
4.4.7 施工記録
施工記録は、4.3.8 に準ずる。