071)免震の可動範囲
建物を支える免震支承と制震装置(ダンパー)により地震エネルギーを吸収する免震構造を有する建物が普及してきた。基礎の部分に免震装置を設置する基礎免震、建物中間部に設置する中間免震などがあるが、いずれも地震エネルギーを吸収し、免震層の上部建物にかかる地震力を小さくし、揺れ(加速度)を小さくするものである。その変位の量のクリアランス寸法は、設計図の特記仕様書によるが、一般的には大地震時の免震層でも変位は500mm程度と大きく、免震層の取り合い部はその変位を許容するディテールとなる。
1.躯体の免震クリアランスを確保
免震クリアランスは最大変位量に躯体の施工誤差も見込んで、確実にクリアランスを確保することが重要である。また、中地震によって動いた上部躯体がもとの位置に戻らない。すなわち残留変位が発生することもあるので、それらを想定して決定する。
免震クリアランス:W
W ≧ 最大変位量 + 施工誤差 + 予想残留変位量
とする。
2.設備配管は免震クリアランスから離して設置する
大地震時に、建物に被害がでなくても、設備機能に支障をきたすと、企業活動や生活に影響を及ぼす。設備機器の耐震(機器転倒や配管・配線に損傷のないこと)はもちろんであるが、免震構造の場合は、
①設備配管・配線が躯体の免震クリアランスの間に存在しないこと。すなわち躯体の変位による衝突で配管・配線が破損しないことが重要である。
②地震による変位に対応して配管・配線が追従できるように免震継手を採用しておくことが重要である。建築の雨水排水管はできるだけ地上で外部へ開放する。
3.免震装置のメンテナンス動線の確保
免震装置は建物を支えて風や小地震にも対応しており、24時間働いているといってもよい。定期的な点検・メンテナンスと大地震後損傷があった免震支承やダンパーの取替え、耐用年数が来たときの免震支承の取替えなどが必要である。そのための点検ルートや資材搬入動線をあらかじめ確保することが重要である。
4.仕上げ材の対応と残留変位
免震層の取合い部においては、変位量が大きなEXP.Jとなるので、それに対応する仕組みが必要になる。また、変位の量が大きいだけではない。中地震でも、揺れがおさまっても完全に元の位置におさまるとは限らず、数㎝程度、元の位置からずれてしまう残留変位が生じる。その残留変位を考慮した納まりが必要である。
免震の変位(平時)
免震の変位(地震時)