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実践9 仕上工事2 外装2

1級建築施工管理技士 実践9 仕上工事 外装2 金属・ガラスカーテンウォール

高層ビルの外装はガラスカーテンウォールで設計されることが多くなってきている。
1970年代の超高層ビルの初期の時代から見ると外装材も変化してきている。
アルミニウム、ステンレスなどの金属パネルや、本石やタイルを仕込んだプレキャストパネルの多用された時代から、近年ではガラスが多用されてきている。
外装カーテンウォールはそれ自体多くの部材から成り立っており、その素材、取り付け方法における要求性能は、水密・気密・耐風圧・遮音・紫外線と日射対策が様々であり、その品質確保はきわめて専門性の高い仕事である。
また日本は地震国であり、耐震性には十分注意しなければならない。
そのような専門分野化する工事に対して、どのように管理をしていくかが、建築施工管理者に問われる。

詳細設計を実大性能試験で確認する

外装の金属カーテンウォールは、多種の材料の組み合わせて成立している。
例えば、複層ガラス・金属パネル・アルミ型材・ガスケットやシール材・ガラリパネル部分、耐風圧マリオン、そしてファスナなどである。
したがって、一般的には部材の取り合いが多く、複雑に部材が絡むので、入念な設計をすることは当然であるが、それでも雨水を完全に止めることや設計性能を確保することは容易ではない。
詳細設計が終わり、部材と部品の選択ののち、実大のモックアップで耐風水圧実験し性能を確認する必要がある。
どんなに注意深く設計しても、実大モックアップでは、不適合や問題が見つかることが多い。
実大性能試験は設計の問題に施工の問題が加わり、実際に近い状況となることから、建築施工管理者も関係者も含めて組立てから実験が終了するまで、小さな不適合も見逃さないように立ち会うことが大切である。
そこに発生した品質的な不適合は必ず原因を分析し、対策をとる。
設計の理解と施工性能確保のための最大のチャンスと捉えるべきである。

外装カーテンウォール工事の施工管理と漏水予防

一般的には、外装カーテンウォール工事で工事中に完全に漏水をなくすことは至難の技と言える。
最近でこそ工場でのアセンブリング率が高まりユニット化したものを使用するようになった。
それまでは現場でのノックダウン組み立てが多かったために、熟練した作業員が欠かせなかった。
現場では、数多くの部材を、順序よく正しく組み立てることが求められる。
その上で、各段階の性能がきちんと確認されることにより、はじめて、要求性能が確保される。
昨今の熟練作業員不足と価格競争の激化などの国際的な市場競争の中で、この業界も”ノックダウン”から”ユニタイズシステム”に大きく流れを変えた。
品質管理上も、要求性能を確保するために工場での組立て率を増やし、現場作業を減らす方向が望ましい。
現場ではユニタイズシステムのパネル間の処理に留める方向へと進化した。
一方、周知のごとく、現場作業は天候や作業員の技量によっては施行にばらつきがあり、ヒューマンエラーも発生する。
特に、外部のシール工事はゴンドラ作業になり、その足場の不安定さや作業環境の悪さから均一な施工が難しい。
また、きめ細かい管理や検査も手薄になる。
したがって、工事中の目視検査だけでは完全な漏水を見つけにくいので、作業員の教育や、QCサークル活動などでのプロセス管理を重視すべきである。
一方、工事中偶然に遭遇した暴風雨や台風は”実大実験”になる。
全数の目視検査によって重大なミスが見つかることがある。
もし漏水箇所が見つかれば、後日、外から更にその部分の調査を実行したい。
場合によっては簡単な気密テストを行い、その原因を調べることができる。
プラスティックの箱を作り、室内側を減圧しながら、外から色のついた水を散水することで、水の流れが確認できる。

シール工法の施工管理

高層ビルは、地震による挙動や台風などの強風、そして気温変化など厳しい自然にさらされる。
もちろん、それらに対応する設計法も進化してきている。
外装の面材が注目を浴びることが多く、金属・ガラス・石・タイルなどの組み合わせは多岐にわたるが、その接合部の詳細設計が軽視されることが多く、設計仕様書には一言”変成シリコン”としか書かれていない場合がある。
そして現状、それらの接合部の要求性能を達成するための手段として、まだほとんどの建物がシール材に頼っている。
新たな高層ビル時代をで迎えるにあたり、シール材も研究開発され進化してきており、ガスケット方式が増えているものの、その主流は現場施工のシール工法に頼っている。
どんな場合でも、シール材がその性能を十分発揮し、長期間性能を持続するためには、プライマの存在が欠かせない。
下地とプライマ、プライマとシール材の相性(接着性、化学的な相性)を実験や文献で確認することが極めて大切になる。
また、シール材は永久的になものではなく、時間の経過とともに、初期の性能が薄れてくる。
したがって、10年の保証期間に合わせた建物維持管理計画と定期的なメンテナンスが欠かせない。

高層ビルのガラス工事管理

高層ビルは大きな風荷重を受けるため、ガラスカーテンウォールで設計するとどうしてもガラスが厚くなり、並行してマリオンのサイズも大きくなるため、コストが割高になってしまう。
ガラスの厚みを薄く抑えるには、窓のサイズを小さくするかもしくは強度を上げるしかない。
設計者の後者を選ぶことが多い。
しかし、ガラスの強度を高めるには製造過程でガラスに熱を加えて強度を高める必要があるが、この簡単ではない。
焼入れした強化ガラスには、その製造過程での温度のばらつきや不純物の混入などで、微妙な内部応力の変化や異変分子の作用で自然破壊の発生リスクが伴う。
海外では、強化ガラスが高層ビルの外部使用に認められている国が多いが、日本においては、強化ガラスは割れた時に外に飛散する危険性から、外部使用が禁止されている。
そのため、近年高層ビルの外部仕様に”倍強度ガラス”が急激に広がった経緯がある。
しかし、倍強度ガラスもこの自然爆裂事故が報告されている。
原因が特性特定されて問題が解決し、指針が整備されるまでは、外部の窓には使用すべきではない。
したがって、高層ビルの外装には、しばらくはフロートガラスを主体にした複層ガラスで対応することになる。
日本での自然破壊の発生しない倍強度ガラスの開発には、それほど時間がかからないものと思われる。
そのほか、ガラスの施工管理上大切なことに、ガラスの切断誤差管理がある。
ガラスは現場の寸法調整ができない。
セッティングブロックとガスケットもしくは構造用のシールを通して、一体化される。
しかし、ガラスの切断精度が許容値を超えると、バックアップ材が傾斜したりすることで、シール材の必要な接着幅が確保できず、水密性・気密性・耐風圧性が確保できなくなる。
したがって、ガラスの寸法精度の抜取り検査をするなど十分に目を配る必要がある。

やまとたける

一級建築士/ 1級建築施工管理技士