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実践7 鉄骨工事2

1級建築施工管理技士 実践7 鉄骨工事2 積層工法とフロアパネル

鉄骨組み立て作業は、建築工事での最も危険な作業と言える。風や雨や気温の変化など全てに影響されるため、選抜された熟練工でも細心の注意が必要である。
過去の鉄骨工事の事故例では、墜落、転倒、挟まれなどの人身災害が発生している。
積層工法は、それらの危険な芽をあらかじめ摘み取ることができる最も画期的な工法と言える。
積層工法の最大の特徴は下層階から確実に積み上げていく工法ゆえに、作業員が安全の足場をいち早く確保でき、上下作業をなくすことができるので、作業員に大きな安心感を与えることができる。また、そのことは品質確保にも大きく貢献している。
積層工法の要素技術の中で、フロアパネルがその中心的な技術となる。1階分のフロアパネルを4日ないし5日サイクルで組み上げていく。部材はできるだけ工場でアッセリングして、大型ユニットにする方が望ましいが、輸送範囲を超える場合は、現場の空きスペースを利用し、ユニット化する。
高層ビルは繰り返し作業が多いので効果は大変大きい。建設業にはまだまだ無駄が多いが、生産をシステム化することで大幅な無駄の削減が可能となる。

現場でのプロアパネル製作

床のフロアパネル工法は、大梁、小梁、ブレース、床のデッキプレートだけでなく、天井内ダクトやスプリンクラー枝配管までを一体に組み立て、大型のクレーンで吊り上げて取り付けていく「鉄骨組立てプレファブ工法」の1つである。
道路の車幅を超えるような大型のフロアパネルは工場から運べないので、現場の空きスペースを利用し、現場で組み立てチームを編成し、一体化の作業行う。
その場合、必要な枚数だけを製作する計画とし、取り付ける逆の順序で製作すると、ストックヤードが有効に使える。また、生産性を高めるには、多能工を編成し、作業員の平準化を図る。
大型のフロアパネルが、目安として15分以内にスムーズに取りつくような工夫が成功のカギを握る。
そのためには目的にあった「吊り上げ専用治具」の開発落とし込みができるような梁継ぎ手の工夫、スパン調整ができるような「吊りピース兼用スパン調整」などの仕掛けと、取り付けのトレーニングとが大切になる。
また、その他の注意事項としては、ストックヤードでの転倒防止などがある。いずれにしても入念な計画が望まれる。
積層工法の原点は、作業員の安全確保のために、作業床を先行して取り付けることで、安全な先取りをが進み、安心して仕事ができるため、結果として作業効率の向上に目指すものである。

柱ジョイント位置の工夫で、労務の平準化を図る

大型のフロアパネルのスムーズな取り付けのためには、柱の節ジョイントを今までのように同じ街に揃えるのではなく、逆にすべての階に振り分けてずらす方が良い。
コア部と外周部を異なる階にする。外周の柱も隣り合う柱を次の階に移動するなど、スキップさせることで、大きな改善効果が得られる。
通常、柱溶接箇所は3階ごとに集中し、溶接工の平準化ができているとは言えない。すなわち、忙しい日とそうでない日があり無駄が多い。
しかし、ジグザグにずらすことで、現場溶接作業の平準化し、少数精鋭の溶接工で順に作業ができるので、労務の平準化ができて品質が向上することにつながる。
さらに、常に先行する柱が垂直性のガイドになっているため、鉄骨の建て方精度がおのずと高くなっていく。
すなわち、従来の方法とは異なり、「危険で、しかも最も苦労する歪み直し作業」がほとんど発生しない。
結果的に歪み直し作業が「スパン調整」だけで済むなど、大幅な改善効果が期待できる。

究極の鉄骨作業足場計画

床を構成するフロアパネルと建物の外壁を構成する外装プレキャスト板を、より先に取り付けることで、鉄骨接合部の作業性の安全性が格段に向上する。
鉄骨の現場鍛治作業、現場溶接作業などの足場は従来の吊足場に代えて、ほとんどの範囲をデッキプレート上にキャスタ付き移動足場を利用した簡易足場での作業となる。
その結果、現場溶接作業などの集中力と高い技量が必要な作業も安心して最後できるため、品質的にも良い結果に結びついている。
ただし、デッキプレートの上に集中荷重が働くので、その検討が必要となる。
また、大梁上の現場打ちスタッドジベルがキャスタ付き移動足場と干渉するので、決められた移動足場の通路を確保するなどの手立てを図る必要がある。

やまとたける

一級建築士/ 1級建築施工管理技士