7章 鉄骨工事 9節 耐火被覆

第7章 鉄骨工事

09節 耐火被覆
7.9.1 適用範囲
本節は、建築基準法で要求される鉄骨に対する耐火構造を満足するために適用する耐火被覆を対象としている。
7.9.2 耐火被覆の種類及び性能
(a) 以前の建築基準法においては、耐火構造をはじめとする防火関係の基準は、構造や材料等を画ー的に指定する仕様規定を主体としていた。しかし、平成10年6月12日公布(平成12年6月1日施行)の同法では近年における技術的な知見の集積等を踏まえたうえで各基準に必要とされる性能を明確化するとともに各々の性能に対応する技術的な基準を定めることにより性能規定化を図っている。この法改正に伴う性能規定化によって、耐火構造の定義は「壁、柱、床その他の建築物の部分の構造のうち、耐火性能(通常の火災が終了するまでの間に当該火災による建築物の倒壊及び延焼を防止するために当該建築物の部分に必要とされる性能)に関して政令で定める技術的基準に適合する鉄筋コンクリート造、れんが造その他の構造で、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたもの」とされた。
(b) 建築基準法施行令第107条では、耐火構造を必要とする建築物の壁、柱、床、はり、屋根及び階段の各部分が通常の火災による火熱を所定の時間加えられた場合に、構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないことを規定している。
(c) 「標仕」では、耐火材の吹付け工法、耐火板の張付け工法、耐火材の巻付け工法、ラスモルタルの左官工法等を採用しており、その種類及び建築基準法第2条第七号による耐火性能を特記することとしている。
(d) 一般的に用いられている耐火被覆工法を施工法に準じて分類すると、表7.9.1のようになる。
表7.9.1 耐火被覆工法の分類

7.9.3 耐火被覆の品質
耐火被覆は、国土交通大臣が指定又は認定した仕様に規定されている材料及び工法を用いて、指定又は認定された仕様に準じた施工をした場合に、所定の耐火性能が確保できるものである。
7.9.4 耐火材吹付け
(a) 吹付け工法に用いられる材料には、吹付けロックウール、吹付けモルタル、水酸化アルミニウム混入湿式吹付けモルタル、耐火塗料等がある。
耐火被覆材にアスベストを含有する材料を使用することは、中皮腫や肺がんを誘発するおそれがあるため、禁止されている。(7.1.6(d)参照)
(b) 施工上の留意点
(1) 鉄骨表面に浮き錆が発生している場合は、耐火被覆材の付着性を阻害するおそれがあるため、耐火被覆施工に先立ちワイヤブラシ等の適切な手工具を使用して、除去しておかなければならない。ただし、耐火塗料の場合の素地調整は(e)(3)を参照する。
(2) 吹付け機械は、資材搬入の動線等を考慮して適切な場所に設置する。
(c) 貫通部や取付け金物等は、主要鉄骨と同様に所定の耐火被覆が施されなければならない。
(d) 吹付けロックウール
(1) 現在の鉄骨造建築物に対する耐火被覆材料として最も普及しているのは、吹付けロックウールである。この吹付け工法には、現場配合のセメントスラリーによる半乾式工法と工場配合による乾式工法がある。これらの工法の特徴を表7.9.2 に示す。
表7.9.2 ロックウール吹付け工法の特徴

(2) 天井裏を空調チャンバーとして使用する場合には、特記により梁等の耐火被覆材の表面にセメントスラリーを吹き付けて塵あいの発生を防止する必要がある。
(e) 耐火塗料
(1) 耐火塗料は、耐火性とともに一般塗料と同様な意匠性、施工性や耐久性を期待できる耐火被覆材である。通常、1~ 3mm程度の硬化膜厚の厚さで火災(加熱)時に雰囲気温度が250℃程度に上昇すると、数十倍の容積に発泡して断熱層を形成し、火災時における構造用鉄骨の耐力低下を抑制するもので、一般的には1時間耐火であり、一部2時間耐火も市販されている。従来の耐火塗料は、旧建築基準法第38条の特別認定に基づいて限られた用途のみしか適用できなかったが、基準法の改正に伴いほかの耐火被覆材と同様に、一般の耐火構造認定を取得することが可能となっている。
(2) 耐火塗料は、①発泡剤(ポリりん酸アンモニウム、りん酸アンモニウム、りん酸メラミン、メラミン、尿素) ②炭化剤(多価アルコール、デキストリン、糖類)③樹脂(アクリル樹脂.エポキシ樹脂、ウレタン樹脂) ④顔料(白色顔料、酸化チタン、着色顔料) ⑤溶媒(有機溶剤、水)から構成されている。耐火塗料の硬化塗膜が熱を受けると、発泡剤から放出されるりん酸と炭化剤とが結合して炭化層を形成する。更に、樹脂が溶けると同時に二酸化炭素、アンモニア、水蒸気等のガスが発生し、泡状樹脂となって炭化層を膨張させる。
(3) 塗装仕様は、素地調整、下塗り(錆止め旅料)、耐火塗料塗り、上塗りによって構成され、素地調整にはブラスト、下塗りにはジンクリッチプライマーと2液形エポキシ樹脂プライマー又は変性工ポキシ樹脂プライマー、上塗りには耐候性塗料が適用される。
(4) 耐火塗料は、認定取得企業若しくはその指定工事業者が施工しなければならない。また.塗料が乾燥したのちには電磁膜厚計によって乾燥膜厚を測定して、認定条件である塗膜厚さを確保する必要がある。上塗りは屋外で暴露されると、その種類や使用環境等により劣化が生じる。塗膜の劣化が耐火塗料の塗膜層まで進行しないうちに、上塗りの補修又は増塗りを実施することにより、耐火塗料の耐火性を長期間にわたり維持することができる。したがって、日常点検によって維持管理に努めることが重要である。



7.9.5 耐火板張り
(a) 無機繊維混入けい酸カルシウム板等の成形板耐火被覆材を釘、かすがい及び接着剤(水ガラス系)で張り付ける工法であり、塗装による化粧仕上げも可能である。
(b) 施工上の留意点
(1) あらかじめ成形板耐火被覆材の揚重計画を作成し、揚重量の軽減や揚重回数の減少等を図る。
(2) ストック場所、切断加工場、張付け用仮設足場計画等の検討が必要である。
(3) 耐火被覆成形板の切断くず等廃材の処理を検討しておく必要がある。
(4) 施工速度に制約があるため、全体工程の中でクリテイカルパスとなることが多い。
(5) この成形板耐火被覆材を鉄骨に直接張り付けることは、鉄骨面が平滑でない場合や添え板を使用して高カボルト接合をする場合、これらの接合部の突出部が段違いとなって現れるので見苦しい外観となる。したがって、この成形板耐火被覆材を化粧用として使用するためには鉄骨ウェブ部に捨板を取り付けて浮かし張りとするのが有効である。
(6) 接着剤のみに頼ると施工後の時間経過に伴い耐火被覆成形板のはく落を生じるおそれがあるので、釘やかすがい等の金物で機械的に十分緊結することが重要である。
(7) 耐火被覆成形板は一般に吸水性が大きいため、建築物の外周部に当たる鉄骨架構の耐火被覆に使用する場合には、施工時に雨水が掛らないような養生をする必要がある。
(8) 接着剤は、水ガラス系(NaSiO3)成分を主体とする材料が多いので水溶性であり耐水性は劣る。建築物の外周部に当たる柱や梁の耐火被覆材を接着する場合には、施工時に雨水が掛からないような養生をしておく必要がある。
(c) 繊維混入けい酸カルシウム板二種の直張り工法及び箱張り工法の一例を図7.9.1 に示す。

図7.9.1 耐火板張付け工法の例
(d) ALCパネルや軽量コンクリート板等で耐火被覆する場合には.構造体の動きに追従できるような接合部の詳細について検討することが重要である。
(e) 強化せっこうボードは.鋼製下地材に小ねじ留めをする。
7.9.6 耐火材巻付け
(a) 高耐熱ロックウール、セラミックファイバーブランケット又はそれらを複合したものを鉄骨に巻付け、ワッシャー付き鋼製の固定ピンを鉄骨に現場でスポット溶接して留め付ける工法であり化粧仕上げも可能である。
なお、固定ビンを構造体にスポット溶接することから、構造体への影響や施工上の配慮事項等について施工の前に設計担当者と打合せを行う。
(b) 施工上の留意点
(1) 搬入された材料がそれぞれの認定に適合していること及び厚さや数量が指定どおりであることを確認する。物性の確認は検査成績書等で代用する。
(2) 材料は,あらかじめ工場でプレカットしたもの又は標準品を搬入し,現場で鉄骨の周長に合わせて切断する。
(3) 材料は屋内で雨水の掛からないところに保管する。その回りには安全通路を確保し,他の作業に支障のないようにする。
(4) 施工に支障を来すおそれのある浮き錆及び油等は、施工に先立ち十分に除去する。
(5) 取付けに際しては、材料のたるみ、ピンの溶接の不具合、各目地部の突合せの隙間等が生じないように注意する。施工した状態の断面図の例を図7.9.2に示す。
(6) 雨水が掛かる場合の施工は避ける。
(7) 必要に応じて.衝撃が掛からないように養生する。

図7.9.2 耐火材巻付け工法の施工例
7.9.7 ラス張りモルタル塗り
鋼材を下地として鉄網を巻き、モルタル又はパーライトモルタルを所定の厚さに塗り付けた工法が、「耐火構造の構造方法を定める件」(平成12年5月30日建設省告示第1399号)で一般指定されている。施工の速度は吹付け工法より劣る。また,下地の形状に左右されずに適用可能であるが、乾燥に伴うひび割れが発生しやすく、屋外ではモルタル内部に水が浸入して、鋼材が腐食していても気付くことが遅れやすいので、注意する。
7.9.8 試 験
(a) 耐火被覆の施工
耐火被覆の施工は、一般指定及び「耐火性能検証法に関する算出方法等を定める件」(平成12年5月31日建設省告示第1433号)に基づく吹付けロックウール及び繊維混入けい酸カルシウム板の材料工法を除き、個別認定取得者又は個別認定取得者が指定した施工業者のみが実施できるものである。監督職員は認定条件に基づいて施工されていることを確認することが重要である。
(b) 吹付け工法
吹付け工法による耐火被覆は、要求される耐火性能に対応した吹付け厚さ及びかさ密度の最低値が指定されているが、現場施工においては、そのばらつきを避けることができない。したがって、適切な方法で試験して性能の確認を行わなければならない。
ロックウール吹付け工法(半乾式 ・乾式工法)について、次に示す。
(ⅰ) 平成12年6月施行の改正建築基準法において、ロックウール工業会が取得していた通則認定が廃止され、各社の連名個別認定とされた。認定条件は各社共通であり、品質管理方法も共通的に作成された施工品質管理指針を遵守することとしている。
施工現場での監理等に当たっては、ロックウール工業会により作成された、施工品質管理指針を参考にするとよい。
(ii) 建設省住指発第208号(昭和62年7月1日)では、ロックウール工業会が指定した図7.9.3に示すような厚さ測定器を用いて吹付け面積5m2ごとに1箇所以上の厚さを確認しながら、吹付け施工をすることが示されている。
なお、この通達は建築基準法の改正に伴いその効力を失っているが品質管理の参考として有効なものである。
実施工では所定の密度を確保するため、計算で求めた施工面積に対する必要な材料使用量の管理だけでなく、未乾燥状態でのかさ密度を測定することにより管理を行う。
建設省住指発第208号では、厚さ確認ピンの差込みは柱1面に各1本、梁は 6mにつき3本としている。「標仕」においてもこの原則に準拠してスラブ及び壁面については2m2程度につき1箇所以上、柱は1面に各1箇所以上、梁は1本当たり、ウェブ両側に各1本、下フランジ下面に1本、下フランジ端部両側に各1本と確認の箇所数を規定している。
(iii) 材料は自然乾燥において一般に5〜7日で必要強度に達し、約3週間で気乾状態になる。また,寒冷時には吹付け直後に凍結防止対策を講ずる必要がある。

図7.9.3 厚さ測定器の例(単位:mm)
(iv) あらかじめ吹付け厚さを測定したのち、図7.9.4に示すようなかさ密度測定用切取り器で直径 8cmの円筒状にロックウールを切り取り、一定質量になるまで乾燥器に入れて乾燥させる。測定された質量を用いて次式に基づき、かさ密度を求める。


図7.9.4 かさ密度測定用切取り器(単位:mm)
(c) 耐火板張り工法
(1) 現場搬入された材料が、所定の厚さと密度を満足していることを確認する。
(2) 成形板が鉄骨あるいは隣接する成形板と接着剤及び金物で確実に留め付けられており、耐火性能を阻害するおそれのないことを検査する。特に成形板のはく落を防止するために、釘やかすがい等の金物が適切に施工されていることを確認する。
7.9.9 耐火表示
国土交通大臣認定の条件では、施工面への表示は義務付けられていない。しかし.「標仕」では「点検可能な部分に適切な表示を行う。」こととしており.施工面に認定取得者等が定めた耐火性能等を示す表示を行う必要がある。