2節 コンクリートの種類及び品質(R4版)

第6章 コンクリート工事


2節 コンクリートの種類及び品質

6.2.1 コンクリートの種類

(1) 平成22年版「標仕」までは、使用骨材によってコンクリートの種類分けを行っていたが、近年、スラグ骨材等を含め密度の異なる各種の骨材が開発・使用され、特に細骨材は混合して使用される場合もあることから、平成25年版「標仕」から、気乾単位容積質量でコンクリートの種類を分類し、概ね気乾単位容積質量が 2.1~2.5t/m3の普通コンクリートと、より気乾単位容積質量の小さい軽量コンクリートの2種類とされた。

(2) 寒中コンクリート、暑中コンクリート、マスコンクリート、無筋コンクリート及び流動化コンクリートは、使用材料、施工時期・施工方法・施工場所等の施工条件、要求性能等によって10節までとは異なる品質管理が必要なため、「特別仕様のコンクリート」として11節から15節に別記されている。

(3) 平成16年6月に工業標準化法が改正され、平成17年10月1日からJISマーク表示制度は、国による認定制度から登録認証機関による製品認証制度となった。これによって、JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)もこれまでの「工場認定」から「製品認証」へと変更された。

「標仕」でも平成22年版の改定以降、 I類コンクリートは、JIS Q 1001(適合性評価-日本産業規格への適合性の認証-一般認証指針)及びJIS Q 1011(適合性評価-日本産業規格への適合性の認証-分野別認証指針(レディーミクストコンクリート))に基づき、JIS A 5308への適合を認証されたコンクリート、II類コンクリートは、 I類以外のJIS A 5308に適合したコンクリートとされている。

「標仕」では、従来建築工事には特別な場合を除き、JIS A 5308に適合するレディーミクストコンクリートで対応できると考えられている。そのうえで、適合を認証されたI類コンクリートを使用することを原則としているが、山間部、離島等で運搬可能時間の距離内にJISマーク表示認証を取得した製品(以下、この章では「JISマーク表示認証製品」という。)を製造する工場(以下、この章では「JISマーク表示認証工場」という。)がない場合でも、II類コンクリートであれば、基礎や主要構造部等の建築基準法第37条に規定される部分に適用できると考えてよい。

なお、建築基準法第37条の指定建築材料が適合すべき規格及び品質に関する技術的基準を定めた平成12年建設省告示第1446号の一部が平成28年6月13日に改正(国土交通省告示第750号)され、建築物の基礎や主要構造部等に使用するコンクリートが適合すべき日本工業規格は、JIS A 5308-2014に改められ、従来、国土交通大臣の認定が必要であった回収骨材を使用したコンクリートについても、平成31年版「標仕」からは、特記をせずに使用できることとなった。

その後、JIS A 5308-2014が、2019年3月に改正されたことにより、平成12年建設省告示第1446号の一部が令和元年5月16日に改正(国土交通省告示第18号)され、建築物の基礎や主要構造部等に使用するコンクリートが適合すべき日本工業規格は、JIS A 5308-2019に改められた。それに伴い、国土交通省住宅局建築指導課長より発出された、国住指第10号令和元年5月16日「建築物の基礎、主要構造部等に使用する建築材料並びにこれらの建築材料が適合すべき日本工業規格又は日本農林規格及び品質に関する技術的基準を定める件の改正について(技術的助言)」の抜粋を下記に示す。

建築物の基礎、主要構造部等に使用する建築材料並びにこれらの建築材料が適合すべき日本工業規格又は日本農林規格及び品質に関する技術的基準を定める件の改正について(技術的助言)

(国住指第10号 令和元年5月16日)

中略

建築基準法第37条において、建築物の基礎や主要構造部等に使用する建築材料として国土交通大臣が定めるもの(以下「指定建築材料」という。)については、その品質が日本工業規格若しくは日本農林規格に適合するもの又は国土交遥大臣の認定を受けたものにしなければならないこととされているところ、今般、告示第1446号において、指定建築材料であるコンクリートが適合すべき日本工業規格として、JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)- 2014に代わり、新たにJIS A 5308-2019を位置付けることとした。

JIS A 5308-2014の内容は、軽量コンクリート及び高強度コンクリートであってはスランプが10cmのもの以外は JIS A 5308-2019に包含されるため、JIS A 5308-2014の仕様に適合するコンクリート(軽量コンクリート及び高強度コンクリートであってスランプが 10cmのものを除く。)については、本改正後においても、引き続き法第37条第1号に適合するものとして取り扱って差し支えない。

2019年版のJIS A 5308のレディーミクストコンクリートの種類を表6.2.1に示す。
なお、2019年版のJIS A 5308においては、普通コンクリートの区分におけるスランプフローで管理するコンクリートの追加及び高強度コンクリートの区分におけるスランプフローの範囲の拡大がなされたが、「標仕」では、スランプで管理する普通コンクリートを標準としている。

表6.2.1 JISA5308:2Ql9(抜粋)によるレディーミクストコンクリートの種類及び区分

(4)「標仕」では、建築基準法第37条第二号による国土交通大臣認定のコンクリートは、設計担当者の特記としているので、特記された場合には、認定条件等を十分に確認して使用することになる。

なお、ここでいう「認定条件等」とは、建設省告示第1446号の第3に規定される法第37条第二号の品質に関する技術的基準のことをいう。

6.2.2 コンクリートの強度

(1)「標仕」では、コンクリートの設計基準強度は、36N/mm2以下(軽量コンクリートでは27N/mm2以下)としている。

なお、従来、軽量コンクリートの設計基準強度は27N/mm2未満であったが、「JASS 5 鉄筋コンクリート工事」の軽量コンクリート2種の規定に合わせ、平成25年版「標仕」から27N/mm2以下に変更された。

高強度化が流れではあるが、4~5階建て、数千m2程度のRC造建築物では高強度コンクリートを使用することはほとんどない。

(2) 構造体に打ち込まれるコンクリートの強度とは、構造体に打ち込まれるコンクリートが本来保有していると考えられるポテンシャルの圧縮強度のことであり、荷卸し地点でコンクリート試料を採取し、標準養生した供試体の材齢28日の圧縮強度で表される。ポテンシャルの圧縮強度は、設計基準強度に構造体コンクリートの強度と標準養生した供試体強度との差を考慮した値(構造体強度補正値(S):6.3.2(ア)(b)参照)を加えた調合管理強度以上でなければならない。

(3) 構造体コンクリートとは、構造体とするために型枠内に打ち込まれて養生され、硬化して構造体あるいは部材を形成しているコンクリートのことである。構造体コンクリートの強度は、初期に十分な湿潤養生が施されれば、材齢28日以降も長期にわたって強度が増進し、材齢91日においても強度増進は続き、停止することはない。しかし、コンクリート工事においては適切な材齢を定め、その材齢において設計基準強度を満足するように定める必要がある。建築基準法施行令第74条第1項第二号に基づき、昭和56年6月15日建設省告示第1102号(最終改正平成28 年3月17日「設計基準強度との関係において安全上必要なコンクリート強度の基準」)(以下、告示「コンクリート強度に関する基準」という)第1第二号ではコンクリートの強度を、コンクリートから切り取ったコア供試体について強度試験を行った場合に、材齢28日において設計基準強度の数値に7/10を乗じた数値以上、かつ、材齢91日において設計基準強度の数値以上であることを定めている。

一方、実際のコンクリート工事において構造体コンクリートの強度をコア供試体で試験することは、構造体に損傷を与え、かつ、修復が必要となるため困難である。このため、一般的には工事現場で構造体に打ち込まれるコンクリートから試料を採取し、構造体コンクリートと同じような強度発現をすると考えられる方法で養生した供試体の圧縮強度から構造体コンクリートの強度を推定し、品質管理を行っている。上記告示第1第一号では、現場水中養生を行った供試体について強度試験を行った場合に、材齢28日において設計基準強度の数値以上であることを定めている。

「標仕」では同告示の規定に基づき、原則として、現場水中養生による材齢28日における管理とし、これを滴足しないと想定される場合に、現場封かん養生による材齢28日を超え91日以内の管理を行うとしている。これは、施工現場における構造体コンクリート強度の判定材齢は一般的に28日とされていることに配駆したものである。

さらに、平成28年3月の同告示改正により第1第三号に標準養生(水中又は飽和水蒸気圧中で行う場合に限る。)が追加されたことから、平成28年版「標仕」においても標準養生による材齢28日における判定が追加された。

なお、構造体コンクリート強度を推定するための適切な材齢及び判定基準は養生方法ごとに異なるため、標準養生を含め「標仕」6.9.5で規定されている。

(4) 使用するコンクリートの強度及び構造体コンクリート強度の判定は、9節の6.9.4及び6.9.5によって行う。(2)でも記したように、構造体に打ち込まれるコンクリートとは、工事に用いるために工事現場に搬入したコンクリートのことであり、その強度は、コンクリートが本来保有していると考えられるボテンシャルの圧縮強度のことである。したがって、構造体に打ち込まれるコンクリートの強度は、荷卸し地点で採取して標準養生した供試体の材齢28日の圧縮強度で表し、その値は調合管理強度以上でなければならず、かつ、JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)の呼び強度の強度値を満足しなければならない。

6.2.3 気乾単位容積質量

(1) コンクリートの気乾単位容積質量は、使用する骨材の密度や調合によって異なり、構造計算で固定荷重を算定するときに、鉄筋コンクリートの質量を求めるために用いる値である。平成25年版「標仕」から、従来の使用骨材の種類による区分から、新たにコンクリートの気乾単位容積質量による区分に変更され、そのための標準的な判断基準として、「JASS 5」の規定値を参考に数値が示された。

(2) 軽量コンクリートの気乾単位容積質祇は、別途「標仕」10節で1種、2種の種類ごとに標準的な値の範囲が示されている。

6.2.4 ワーカビリティー及びスランプ

ワーカビリティーとスランプの関連等について次に示す。

(ア) ワーカビリティーは、打込み場所並びに打込み方法及び締固め方法に応じて、型枠内並びに鉄筋及び鉄骨周囲に密実に打ち込むことができ、かつ、机骨材の分離が少ないものとする。また、スランプの所要値は、特記がなければ、基礎、基礎梁、土間スラブでは15cm又は18cm、柱・梁・スラブ・壁では18cmとする。

(イ) ワーカビリティーは、運搬、打込み、締固め及び仕上げのフレッシュコンクリートの移動・変形を伴う作業の容易さと、それらの作業によってもコンクリートの均一性が失われないような総合的な性質であり、フレッシュコンクリートの流動性の程度を表すスランプとは別の概念である。

(ウ) 作業の容易さからいえば、スランプが大きく流動性が高いほうがワーカビリティーが良いといえるが、スランプが過大になると粗骨材が分離しやすくなるとともにブリーディング量が大きくなり、コンクリートの均一性が失われる。そこで、単位セメント量や細骨材率を大きくするとフレッシュコンクリートの粘性が大きくなり、粗骨材の分離は生じにくくなる。

(エ) スランプを大きくし、かつ、単位セメント量や細骨材率を大きくすれば、見かけ上はワーカビリティーの良いコンクリートが得られる。しかし、単位水量や単位セメント量が過大になると乾燥収縮率が大きくなってひび割れが生じやすくなるとともにセメントペーストやモルタル分の多いコンクリートとなって、打上りコンクリートの表面の品質が悪くなる。

(オ) このため、作業の容易さだけでワーカビリティーを評価するのではなく、ブリーディングや骨材の分離ができるだけ少なくなるようにするという条件も考慮しなければならない。

(カ) スランプは、打込み時のフレッシュコンクリートに要求される重要な品質項目の一つであるが、ここでいうスランプとは、荷卸し地点でのスランプである。スランプ18cmというのは、許容差を含めて考えればよく、その値は JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)の規定によれば±2.5cmである。

6.2.5 構造体コンクリートの仕上り

(1) コンクリート部材の位置及び断面寸法の許容差
(ア) コンクリート部材の位置及び断面寸法は、所定の許容差の範囲内になければならないが、これは次の理由による。

(a) 構造体としての耐力及び耐久性の確保
(b) 仕上げ二次部材又は設備等の納まり上の要求
(c) 美観上の要求

(イ) 部材の位置及び断面寸法の測定は、一般的には次のように行う。
特記された部材又はサンプリングした部材について、基準量からスケール等を用いて測定する。測定部分は両端及び中央の3箇所程度行う。

柱・梁等は直接測定できることが多く問題は少ないが、床・壁等の断面寸法は、両側から測定して計算で求めると測定誤差が大きくなることがある。そこで、開口部等を利用して直接測定する。

むやみに測定項目や測定数を増やすことは、測定費用や時間を要し、本来の目的から逸脱することになる。コンクリート部材の位置及び断面寸法は、型枠の変形等がなければ、型枠により決まるものであり、補修も困難であることから、コンクリート打込み前の型枠の設計・掛出し・組立等を確実に行うことが必要である。コンクリート打込み後は型枠の変形が生じたと見られる部分等について、確認のために測定する。

(ウ) (ア)及び(イ)に基づいて各部材の位置及び断面寸法を測定し、その結果、位置及び断面寸法の精度が「標仕」表6.2.3の許容値を満足しない場合は、「標仕」6.9.6に従って必要な措置を定め、監督職員の承諾を受けるとともに、適切な処置等を講じなければならない。

(2) コンクリート表面の仕上り状態
(ア) せき板に接するコンクリートの仕上り状態は特記によるが、コンクリートの打放し仕上げの場合は、「標仕」表6.2.4の種別に応じた「表面の仕上り程度」を目安とする。コンクリートの仕上り状態を良好にするには、不陸を少なくするために変形量の少ない型枠設計を行い、コンクリート打込みの際は、目違い等が生じないようにコンクリートの締固めを行うことが重要である。

(イ) コンクリートの仕上りの平たんさは、せき板に接する面は型枠の変形等により、せき板に接しない床上面等は左官の均し精度により決まる。

平たんさの測定方法には、「JASS 5」で定められたJASS 5 T-604(コンクリートの仕上がりの平たんさの試験方法)があるが、試験用器具が特殊で、取扱い方法も難しいため、一般的には下げ振り、トランシット、レベル、水糸、スケール等を使用して、コンクリート面の最大、最小を測定する方法等で行われている。
「標仕」表6.2.5の平たんさの種別は、仕上げの種類だけでなく、建物の規模や仕上り面に要求される見ばえ等によっても異なるので、適切な値を品質計画で提案させ、検討するとよい。

なお、平成31年版「標仕」では、平成28年版「標仕」の表6.2.5において示されていた「適用部位による仕上げの目安」、すなわち、具体的な「仕上げの種類」を削除し、「コンクリートの内外装仕上げ」と所定の「平たんさ」のみを示し、適用部位は特記することとした。

参考までに、平成28年版「標仕」の「表6.2.5 コンクリートの仕上りの平たんさの標準値」を下記に示す。

なお、セメントモルタルによる陶磁器質タイル張りについては、「標仕」15.3.5 (4)(イ)(a)?において、「外装タイルセメントモルタル張りの場合、コンクリートの表面の仕上がり状態は、表6.2.5[コンクリートの仕上りの平たんさの種別]のb種」と規定されている。

平成28年版「標仕」表6.2.5 コンクリートの平たんさの標準値(一部修正)

第6章 コンクリート工事 1節 共通事項(R4版)

第6章 コンクリート工事


1節 共通事項

6.1.1 一般事項
(1) この章は、工事現場施工のコンクリート工事に適用する。また、1章[各章共通事項]と併せて適用する。ただし、コンクリートを使用するものでも、PCカーテンウォールは17章、手すり、段板、ルーバー等の簡易なプレキャストコンクリート製品は20章による。

また、平成25年版「標仕」から、コンクリート工事の品質管理の向上等を目的に、主に次の変更が行われた。

(ア) 設計基準強度をコンクリートの要求品質の一つに位置付け、これを満足するための管理項目として、構造体に打ち込まれるコンクリートの強度と構造体コンクリートの強度を明示した。

(イ) 材料及び調合の条件を、コンクリートの品質項目や製造から外し、「コンクリートの材料及び調合」として独立させ、調合管理強度を満たすための条件として設計基準強度や構造体強度補正値との関係を含め、セメントや骨材等のコンクリート用材料ごとの事項を一つにまとめた。

(ウ) 普通コンクリートの一部として扱っていた「暑中におけるコンクリートの取扱い」は、新たに「暑中コンクリート」として節立てし、平成25年版から普通コンクリートの一般規定から独立させた。また、設計基準強度27N/mm2以上、かつ、 36N/mm2以下のコンクリートは、普通コンクリートの一般規定とは別に扱っていたが、普通コンクリートと同じ扱いとし、平成25年版から「高い強度のコンクリートの取扱い」を削除した。

(エ) 構造体コンクリートの仕上り状態及びかぶり厚さの確認並びにそれらの事項が所要の品質を満足しない場合の補修及びその後の検査を明記した。

(2) 作業の流れを図6.1.1に示す。

図6.1.1 コンクリート工事の作業の流れ(普通コンクリート)

(3) 施工計画書の記載事項は、概ね次のとおりである。なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。

(ア) コンクリート工事の施工計画書
工程表(配合計画書の提出、試し練り、型枠組立、コンクリート打込み、支柱取外し等の時期)
配合計画書、計画調合の計算書
(軽量コンクリートの気乾単位容積質量(「標仕」6.10.2(1))を含む)

コンクリートの仕上りに関する管理基準値、管理方法等
④ 仮設計画(排水、コンクリートの搬入路等)
打込み量、打込み区画、打込み順序及び打止め方法
⑥ 打込み作業員の配置、作業動線
⑦ コンクリートポンプ車の圧送能力、運搬可能距離の検討
⑧ コンクリートポンプ車の設置場所、輸送管の配置及び支持方法
⑨ コンクリート運搬車の配車
圧送が中断したときの処置
圧送後、著しい異状を生じたコンクリートの処置
打継ぎ面の処置方法
⑬ 上面の仕上げの方法(タンピング)
打込み後の養生(暑中、寒中)
コンクリートの補修方法
供試体の採取(採取場所、養生方法)
⑰ 試験所

(イ) 型枠工事の施工計画書
① 型枠の準備量
型枠の材料
型枠緊張材の種別及び緊張材にコーンを使用する箇所
④ コンクリート寸法図
(スケルトン、コンクリート躯体図、コンクリートプラン)
⑤ 基準部分の型枠組立図
型枠材取外しの条件(材齢又は構造計算により安全を確認する場合)
⑦ はく離剤使用の有無

6.1.2 基本要求品質

(1) コンクリートの「材料」に関しては、JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)に適合した材料が使用されており、JIS Q 1011(適合性評価-日本産業規格への適合性の認証-分野別認証指針(レディーミクストコンクリート))では、製造工場から提出される材料試験の結果によりその品質を確認することにしている。

(2) コンクリート部材の断面形状、寸法及び位置は、設計図書に建築物として必要な性能を有するように設計された値が指定されており、「標仕」6.2.5(1)による許容差の範囲に収まるように施工する必要がある。「標仕」表6.2.3では一般的な許容差の標準値を示しているが、この数値は本来建築物の機能、部位、仕上げの程度等によって変動するものであり、共通的に定まるものではない。例えば、石工事(「標仕」10.1.3(3)参照)や左官工事(「標仕」15.3.3(3)参照)等のようなコンクリート工事のあと工程となる仕上材料に要求される精度により、「標仕」表6.2.3をそのまま使えない場合もある。このため、工事ごとにこの許容差を定めるに当たっては、寸法誤差が生じた場合の影響度等も考慮して、「品質計画」において、適切な値を定める必要がある。

コンクリートは、全断面において均質なものとして設計されており、打ち上がったコンクリートはこれを満足させる必要がある。しかし、打ち上がったコンクリートの内部を確認することは非常に困難であり、表面の状態を確認することによって、内部の状態を推定することになる。一般的にコンクリート部材の内部と比べて表面付近は鉄筋や型枠等の影響で欠陥が生じやすくなる。このため、「標仕」6.1.2(2)では、「密実な表面状態」を要求事項とし、コンクリート内部の品質を含めて表面状態で確認することにしている。コンクリート表面に豆板等の欠陥がある場合には、コンクリートの耐久性や強度に影響を及ぼすため、「標仕」では、せき板取外し後にコンクリート表面を確認することにしている。「品質計画」においては、第一に密実なコンクリートを打ち込むための具体的な方法の提案をさせるとともに、もし、豆板等が発生した場合、その程度に応じた補修方法等を定めるようにする。この場合の補修方法については 6.9.6(2)を参考にするとよい。

(3) 建築物の構成部材としてのコンクリートの強度は、実際に出来上がった構造体コンクリートからコアを採取して試験によってその確認ができる。しかし、この方法は建築物を傷つけることになるため、新築建築物にあっては適切ではない。このため「標仕」6.2.2では、工事現場において構造体に打ち込まれるコンクリートと同ーのコンクリートを採取して、工事現場内で建築物と同様な温度条件となるように養生した供試体又は標準養生した供試体により、構造体コンクリートの強度を推定している。実際のコンクリートの強度は、柱、梁、壁、スラブ等の各部位によって強度の発現にばらつきがあることが分かっており、構造物のどの部位においても設計基準強度を満足させるため、調合設計において所定の補正を行うことにしている。「所定の強度を有する」とは、こういったことを勘案して、実際の構造体コンクリートの強度が設計基準強度を満足するように適切な養生を行い、供試体の強度から構造体コンクリートの強度を確認すればよい。

「構造耐力、耐久性、耐火性」等は、コンクリートに要求される重要な性能である。これらについては、一般に本章で説明する事項を実現することで必要な性能を得ることができるようになっているが、(2)で説明したように寸法の誤差や、部分的な欠陥の発生を完全になくすことは現実的ではない。このため、所要の「構造耐力、耐久性、耐火性」を満足させるための、寸法許容差や、欠陥が生じた場合の程度の判断基準及び補修方法をあらかじめ定めておくようにする。

一次検定 施工(躯体工事)コンクリート工事 7-1 調合計画

1級建築施工管理技士
学科対策 過去問題【 重要ポイント 】

3.施工(躯体工事)
7° コンクリート工事

7-1 コンクリート工事(コンクリートの調合)
下記の正誤を判断せよ。

①計画供用期間の級が標準供用級において、普通ポルトランドセメントを用いる場合の水セメント比の最大値は、65%とする。

答え

 ◯

[ 解説 ]
計画供用期間標準の場合、コンクリートのワーカビリティ等を確保するため、ポルトランドセメントでは、水セメント比最大値65%とする。



普通コンクリートの調合において、水セメント比を低減すると、塩化物イオンの浸透に対する抵抗性を高めることができる。

②普通コンクリートの単位水量は、一般に185kg/m3以下とする。

答え

 ◯

③骨材に砕石や砕砂を使用し、スランプ18㎝のコンクリートを調合する場合、単位水量を185kg/m3以下にするためには、高性能AE減水剤を使用するとよい。

答え

 ◯

[ 解説 ]
AEコンクリートにすると、凍結融解作用に対する抵抗性の改善が可能となる。

④普通コンクリートの単位セメント量の最小値は、一般に250kg/m3とする。

答え

 ×

[ 解説 ]
普通コンクリートの単位セメント量は、ひび割れ等の観点からは少ない方がよい。最小値は270kg/m3と定められている。
単位セメント量が過少なコンクリートは、ガサついたコンクリートで、ワーカビリティ悪くなり、水密性耐久性の低下の原因となる

⑤単位セメント量が過少の場合、水密性、耐久性は低下するが、ワーカビリティがよくなる。

答え

 ×

 

⑥普通コンクリートの調合において、球形に近い骨材を用いる方が、偏平なものを用いるよりもワーカビリティがよい。

答え

 ◯

⑦細骨材率を大きくすると、所要のスランプを得るのに必要な単位セメント量及び単位水量を減らすことができる。

答え

 ×

[ 解説 ]
細骨材率大きく(高く)する(砂利に比べて砂が多い)と、流動性が悪くなるので、セメントペースト(セメント+水)を多く必要とする。(所要スランプを得るには、単位セメント量及び単位水量多く必要とする。)

⑧粗骨材の最大寸法が大きくなると、所定のスランプを得るのに必要な単位水量は減少する。

答え

 ×

[ 解説 ]
砕石を用いるコンクリートでは、砂利を用いる場合に比べ、所要のスランプに対する単位水量大きくなる。

⑨流動化コンクリートのベースコンクリートを発注する場合は、呼び強度、スランプなどの他、スランプの増大量を指定する。

答え

 ◯

一次検定 施工(躯体工事)コンクリート工事 7-2 打込み・締固め

1級建築施工管理技士
学科対策 過去問題【 重要ポイント 】

3.施工(躯体工事)
7° コンクリート工事

7-2 コンクリート工事(打込み・締固め)
下記の正誤を判断せよ。

①スランプ18㎝程度のコンクリートの打込み速度の目安は、一般にコンクリートポンプ工法で打ち込む場合、20〜30m3/h程度である。

答え

 ◯

②外気温が25℃以上であったので、練混ぜから打込み終了までの時間を120分以内となるようにした。

答え

 ×

[ 解説 ]
練混ぜから打込み終了までの時間の限度は、外気温が25℃未満120分25℃以上90分とする

 

高性能AE減水剤を用いた高強度コンクリートの練り混ぜから打ち込み終了までの時間は、外気温にかかわらず、原則として、120分を限度とする。

③組骨材の最大寸法が25mmの普通コンクリートを圧送する場合、輸送管の呼び寸法は100A以上とする。

答え

 ◯

④コンクリートポンプを用いて圧送する場合、軽量コンクリートは、普通コンクリートに比べてスランプの低下や輸送管の閉そくが起こりにくい。

答え

 ×

[ 解説 ]
軽量コンクリートは、圧送すると軽量骨材が圧力吸水し、スランプの低下や輸送管内の閉そく起こりやすい
また、人口軽量骨材は、吸水性が大きいので、十分吸水(プレソーキング)させたものを使用する。

⑤コンクリートの圧送負荷の算定において、ベント管1箇所当たりの水平換算長さを3mとして計算した。

答え

 ◯

⑥水平打継ぎ部分は、十分に散水して湿潤状態とするが、水が残っている場合は取り除く必要がある。

答え

 ◯

⑦梁及びスラブの鉛直打継ぎ部は、梁及びスラブの端部に設けた。

答え

 ×

[ 解説 ]
壁・梁及びスラブなどの鉛直打継ぎ部は、欠陥が生じやすいので、できるだけ設けないほうがよい。やむを得ず設ける場合は、構造部材の耐力への影響の最も少ない位置とし、梁、床スラブ・屋根スラブの鉛直打継ぎ部は、スパンの中央または端から1/4付近に設ける

⑧コンクリート内部振動機(棒形振動機)の挿入間隔は、有効範囲を考慮して60㎝以下とする。

答え

 ◯

⑨コンクリート内部振動機(棒形振動機)で締め固める場合、一般に加振時間を1か所60秒程度とする。

答え

 ×

[ 解説 ]
コンクリート内部振動機(棒形振動機)で締め固める場合、過剰加振による材料分離防止上、加振時間は、1か所 5〜15秒の範囲とするのが一般的である。

⑩コンクリート1層の打ち込み厚さは、コンクリート内部振動機(棒形振動機)の長さを考慮して60㎝以下とする。

答え

 ◯

一次検定 施工(躯体工事)コンクリート工事 7-3 養生

1級建築施工管理技士
学科対策 過去問題【 重要ポイント 】

3.施工(躯体工事)
7° コンクリート工事

7-3 コンクリート工事(養生)
下記の正誤を判断せよ。

①打込み後のコンクリート面が露出している部分に散水や水密シートによる被覆を行うことは、初期養生として有効である。

答え

 ◯

②コンクリートが硬化後に所要の性能を発揮するためには、硬化初期の期間中に十分な湿潤養生を行う。

答え

 ◯

[ 解説 ]
連続的に散水を行って水分を供給する方法による湿潤養生は、コンクリートの凝結終了した後に行う。

③打込み後のコンクリートが透水性の小さいせき板で保護されている場合は、湿潤養生と考えてもよい。

答え

 ◯

④湿潤養生の期間は、早強ポルトランドセメントを用いたコンクリートの場合は、普通ポルトランドセメントを用いた場合より短くすることができる。

答え

 ◯

[ 解説 ]
コンクリートは早強ポルトランドセメントを用いた場合は、普通ポルトランドセメントを用いた場合より湿潤養生の期間を短くすることができる。



湿潤養生打ち切ることができる圧縮強度は、早強普通ポルトランドセメントは同じで、例えば、計画供用期間の級が短期及び標準の場合で10N/m2以上である。(ただし、部材厚さが18㎝以上の場合。)

⑤膜養生剤を散布して水分の逸散を防ぐ湿潤養生は、ブリーディングが終了した後に行う。

答え

 ◯

⑥普通ポルトランドセメントを用いたコンクリートの場合、振動等によってコンクリートの凝結及び硬化が妨げられないように養生しなければならない期間は、コンクリートの打込み後3日間である。

答え

 ×

[ 解説 ]
普通ポルトランドセメントを用いたコンクリートの打込み後5日間は、乾燥、振動等によってコンクリートの凝結及び硬化が妨げられないように養生しなければならない。

⑦大断面の部材で、中心部の温度が外気温より25℃以上高くなるおそれがある場合は、保温養生により、温度ひび割れの発生を防止する。

答え

 ◯

⑧コンクリート打込み後2日間は、コンクリートの温度が2℃を下がらないように養生しなければならないと定められている。

答え

 ×

[ 解説 ]
寒冷期のコンクリートの温度は、打込み後5日間以上は、2℃以上に保たなければならない

⑨寒中コンクリートで加熱養生を行う場合は、コンクリートに散水をしてはならない。

答え

 ×

[ 解説 ]
寒中コンクリートで加熱養生を行う場合、コンクリートの水分の蒸発が促進されるので、乾燥しないように散水等によって保温する

実践1 コンクリート工事1

1級建築施工管理技士 実戦 コンクリート工事1

どうしたらコンクリートの調合ミス・発注ミスを防げるか?

コンクリートの調合ミスや発注ミスは、建物の構造強度や品質に大きく関係する。
昨今、経済性を過度に追求するあまり、同じ建物で細かく強度を変えた設計が見受けられる。
これは事前にチェックを受けることによってミスを防止できる。そのためには、図面を確認できる力が必要である。
施工時期によっては温度補正値の調整が加わるため施工部位によってはスランプを変える必要が生じ、最終的な調合パターン数はかけ算的に増えていく。
同じ現場で十数種類の調合計画を行うケースが発生することもある。
こうなると、人手不足の現場では手が回らなくなり自然に難題から遠ざかりがちになり、ひいては、調合ミス・発注ミスにつながる。
この場合、手がまわらないので、現場担当者は、資格をもったコンクリート主任技士によって、調合計画、施工計画、発注管理、受け入れ管理、施工管理を支援してもらう必要がある。
とはいえ、施工管理者自身もコンクリートに対して日頃の勉強を怠ってよいことではない。
コンクリートの誤発注は日常的に起こりうるミスであるが、施工管理技術者が適切な管理ポイントを押さえ、十分な管理体制で臨む必要がある。


いかに丈夫なコンクリートを作るか

コンクリートのクレームの中で最も多いのは、ひび割れに関するものである。

これは、ほとんどの建設会社の補償工事の中で同様に見受けられる。
コンクリートがセメント水和反応の過程で硬化し収縮することはさけられない
収縮と同時にコンクリートにひび割れが発生する。
近年は建築施工技術の進歩により、コンクリートの収縮によるひび割れ防止には種々の対策がとられるようになった。

(例)
①鉄筋による補強
②水セメント比を下げた硬練りコンクリートの採用
③収縮の少ない中庸熱ポルトランドセメントを使用したコンクリートの使用
④フライアッシュを混入する方法
⑤膨張材を入れて収縮を防ぐ方法
⑥ひび割れを目地によりコントロールする方法
⑦急激な初期乾燥を防ぐための養生により収縮を分散させる方法
⑧硬化に必要な水以外の不要な水を真空装置で吸い取る方法など


いかに適正な材料を選ぶか

2008年関東地区で、すでに完成後の某マンション工事の際、コンクリートのアルカリ骨材反応による自然爆裂が発生し、大きな問題になった。
その原因は、コンクリートの骨材の中に膨張性のある骨材が混じったことによるものであった。

建物が完成後もしくは完成間近にこのような自然由来の問題が発生すると、建設会社にとって大きな損失となる。

骨材に関して塩分も大きな被害になることがあるが、コンクリートの品質的な部分を分業化して、アウトソーシングしたとしても、建設会社はその最終責任を免がれることはできない。

それらの事故を分析すると、現場担当者にとって骨材の品質管理がいかに重要な事項か認識できる。

製造プラントと連携して骨材を選定し、その品質を十分確認することは建設施工管理者の重要な役割である。

1級建築施工管理技士 RC造工事 構造スリット

建築品質 鉄筋コンクリート造


028)構造スリットは漏水に注意する

阪神淡路大震災において、RCラーメン構造の建物が多く損傷した。腰壁によって柱が短柱となり崩壊したものが多い。このため、RCラーメン構造として耐震設計するとき、柱が腰壁等により拘束されないように、柱や梁の際に隙間を設けることが多い。これを構造スリット(または耐震スリット)という。柱際の構造スリットは鉛直スリット、梁際の構造スリットは水平スリットという。この構造スリットが外壁にある場合は漏水の原因にもなるケースがある。

1.構造スリットの幅を確保する

構造スリットの幅は躯体の大地震時の変位量と同じだけ必要である。通常大地震時の変位角は1/100であるから、階高3.5mの時、鉛直スリット幅は3,500mm/100 = 35mmとなる。水平スリットは躯体の面内変形と面外変形に対して、梁と壁の縁が切れていれば良いので、実際には施工できる幅として25mm程度としている。この構造スリットの幅は構造設計図に明記されてるので、必ず確認する。

2.外壁の構造スリットから漏水させない

外壁の構造スリットには止水性と耐火性が求められる。止水は外部側を二重シールとし、内部側も必ずシールをする。特に水平スリットは水返しの段差を設ける納まりにする。耐火性に関してはロックウール(岩綿)を密実に充填する。中地震でも変位が発生するため、シールは切れやすく、定期的なシールのメンテナンスも必要である。

3.水平スリットは防水立上りの上に設ける

屋上防水と取り合う外壁の場合、防水が変位によって切れないように立上りまでを一体としたい。できればあごの上部に水平スリットを設ける。この場合あらかじめ構造設計との調整が必要である。内部の厨房や浴室の壁に水平スリットが設けられている場合も同じで、防水の立上りの上に水平スリットを設ける。

4.構造スリットの施工精度確保が重要

鉛直スリットは柱・壁のコンクリート打設時の側圧が均等にかからないと片寄りやすい。補修や手直しができない箇所なので施工管理が重要である。

1級建築施工管理技士 く体工事 暑中コンクリート

第5章 コンクリート工事 暑中コンクリート


暑中コンクリート

暑中コンクリートとは、気温が高く、日射の影響を受ける期間に製造・施工するコンクリートをいう。暑中コンクリートでは、運搬中のスランプロス、打込み時の凝結の促進、コンクリート表面からの水分の急激な蒸発などによって、コールドジョイントやひび割れの発生、長期強度の不足、耐久性の低下などの問題が発生しやすい。
暑中コンクリートの適用期間は、日平均気温の平年値が25℃を超える期間にコンクリートを打込む期間である。JASS5によると、特記に記載がない場合、日平均気温の平年値が25℃を超える期間を基準として定め、工事監理者の承認を受けるとなっている。

暑中コンクリートの材料・調合・施工については、JASS5または日本建築学会「寒中コンクリート施工指針・同解説」、荷卸し時のコンクリート温度が35℃を超える場合の対策については、日本建築学会近畿支部材料・施工部会「暑中コンクリート工事における対策マニュアル」(以下 “対策マニュアル”という)などを参考にする。
「暑中コンクリート工事における対策マニュアル」の購入は
日本建築学会より

◆材料・調合
セメント・骨材・練混ぜ水は高温のものを使用しない。しかし、セメント温度の受入れ基準はなく、入荷後セメントの温度を下げるのは困難が場合が多いため、粗・細骨材は適度に湿潤したものを受入れ、粗骨材については適度に散水したものを使用し、練混ぜ水は低温のものを使用するといった対策をとるのが効果的・現実的である。
混和材は、JIS A6204(コンクリート用化学混和剤)に適合したAE減水剤遅延形Ⅰ種または高性能AE減水剤遅延形Ⅰ種を使用することが望ましい。
構造体高度補正値(S)は特記による。特記に記載がない場合は、6 N/mm2 とする。

◆製造・運搬・施工
打ち込まれたコンクリートから水分が乾燥したせき板および打継ぎ面へ吸収されないよう、打込み前の散水を入念に行い、たまった水は高圧空気などによって取り除く。打ち込まれたコンクリートが接する箇所の温度が高いと、一体性や、付着強度に悪影響を及ぼすことになるので、表面温度が上昇しないよう散水あるいは直射日光を防ぐなどの対策を講じる必要がある。
コンクリートポンプ車などの運搬機器はできるだけ直射日光を受けない場所に設置し、輸送管などをぬれたシート等で覆うなどして直射日光を避け、コンクリート温度の上昇を防ぐようにする。

コンクリートの練混ぜから打込み終了までの時間は90分以内とする。トラックアジテーター(生コン)車の待機時間を短くする配車手配を行い、待機場所は直射日光を受けない場所とすることや、アジテータードラムへの散水、ドラムへの遮熱塗装、ドラムカバーの設置などにより、コンクリートの温度上昇をできるだけ抑えるように配慮する。

打重ね時間間隔(120分以下を目安)の限度内にコンクリートが打ち込めるように、1回の打込み量、打込み区画および打込み順序を考慮した計画を立て、これに基づいて施工し、コールドジョイントの発生を防止する。
夜間の打込みについては、工事現場の近隣環境、生コン工場の納入体制、施工者のリスク、コストなど、多くの問題点に対応する必要があるものの、作業員の労働環境(熱中症対策)、コンクリートの高温履歴による不具合などを改善するためには有効な対策と考えられる。
なお、養生についても、「暑中コンクリート」としての特別な配慮が必要である。

◆ 品質管理および留意事項
暑中コンクリートの品質管理は、基本的には通常のコンクリートと同様に行えばよいが、以下の事項に留意する。

①コンクリート温度を低減するために粗骨材への散水をする場合は、温度管理だけでなく、粗骨材の表面水の管理も通常の場合よりもきめ細かく行って、コンクリートのスランプおよび圧縮強度のばらつきをできるだけ小さくするように生コン工場と打合せをしておく。

②コンクリート温度は、運搬時間が長くなるにしたがって次第に上昇するので、運搬に時間を要した場合には、温度測定の頻度を上げるなどしてとくに注意する必要がある。なお、対策マニュアルでは、荷卸し時の温度が 35℃を超えることが想定される場合の対策として、一定の適用条件を満たせば、荷卸し時の温度を38℃以下にすることが可能であることが示されているので、参考にする。

③荷卸し地点で採取した供試体を屋外に放置すると、強度はその放置期間中に温度と乾燥の影響を受けるため、成形後の供試体の扱いに注意を払う。標準養生を行う供試体は、現場事務所内など、できるだけ20℃に近い日陰の環境下に、現場水中養生もしくは現場封かん養生を行う供試体は、実際の構造体に近い温度履歴となる日陰の環境下に静置する。

④日本の夏は、温度が高いだけでなく湿度が高いのが特徴である。建設現場ではそのうえに直射日光をも受ける環境下にあるため、作業員の健康管理には常に注意を払い、快適な作業環境を整える。

1級建築施工管理技士 く体工事 寒中コンクリートの初期凍害防止対策

寒中コンクリートの初期凍害防止対策

コンクリートの温度は、
打ち込み後の凍結を避けるためには、
10℃程度を確保する必要があり、
一方、打込み温度を上げると
所要の単位水量の増加や凝結が早くなること。
温度ひび割れが発生する可能性が生じること。
などに注意する必要がある。

【 土木学会示方書 】では
打ち込み時のコンクリート温度は 5~20℃としている。
【 JASS 5 】では
初期凍害を防ぐための養生終了時に必要とされる
コンクリートの強度として、
5.0 N/mm2
とされている。

【 土木学会示方書 】
初期凍害を防ぐための養生終了時に必要な
コンクリート強度の標準は下記
型枠の取り外し直後に構造物が曝される
環境(養生)を基準として、
(1)コンクリート表面が水で飽和される頻度が高い場合
断面の大きさ
(薄い場合)(普通の場合)(厚い場合)
15     12     10 N/mm2
(2)コンクリート表面が水で飽和される頻度が低い場合
断面の大きさ
(薄い場合)(普通の場合)(厚い場合)
5      5      5 N/mm2

※ 初期凍害を防ぐため、所定の強度が得られるまで、
保温や加熱などの養生を行う必要がある。
【 土木学会示方書 】(施工編)では
打込み後の凍結を避けるためには、
打込み温度は 10℃程度確保する必要があり、
【 土木学会示方書 】打込み時の温度 5~20℃
【 JASS 5 】荷卸し時温度 10~20℃

・コンクリートの練上がりの温度
【 土木学会示方書 】では練り混ぜ時および
打込み終了時のコンクリート温度について次式を示し、
時間あたりの温度低下を
コンクリート温度と外気温との差の 15 %としている。
T2 = T1 – 0.15 ( T1 – T0 )× t
T0:周囲の温度
T1:練混ぜた時の温度 [ ℃ ]
T2:打込み終了時の温度 [ ℃ ]
t :練り混ぜてから打込み終了までの時間 [ h ]

< 積算温度方式 >
積算温度 M は一般に
M = Σ(θ + A )・Δ t
M:積算温度 [ ℃・日 または ℃・時 ]
θ:Δt 時間中のコンクリートの温度 [ ℃ ]
A:定数 (一般に 10℃)
Δt :時間(日または時)
(例)
5℃で 28日養生したコンクリートの圧縮強度と
10℃で14日養生したコンクリートの圧縮強度は同じ?
M = ( 5 + 10 ) × 28 = 420 ℃・日
M = ( 10 + 10 ) × 14 = 280 ℃・日
積算温度が異なるので、圧縮強度の発現も異なる

1級建築施工管理技士 く体工事 セメントの性状

セメントの性状

ASFS
これを覚えておくだけでいい
A → S → F → S
C3A C3S C4AF C2S

これは水和熱の発熱量の順
C3A > C3S > C4AF > C2S
であり、強度発現の順
C3A > C3S > C4AF > C2S
1日 28日 ー 長期
ちなみに収縮性の順でもある。

水硬性のカルシウムシリケートを主成分とするクリンカーに適量のせっこうを加えて微粉砕した粉末、及びこれに無機質粉末を混合したもので、
・JIS R 5210 ポルトランドセメント
・JIS R 5211 高炉セメント
・JIS R 5212 シリカセメント
・JIS R 5213 フライアッシュセメント
・JIS R 5214 エコセメント
等の規定がある。

セメントクリンカーの組成化合物の特性
C3S(3CaO•SiO2)
けい酸三カルシウムは、水和熱は中程度で28日以内の早期強度の発現性に寄与する。
C2S(2CaO•SiO2)
けい酸二カルシウムは、水和熱は小さく、28日以降の長期強度の発現性に寄与する。
C3A(3CaO•Al2O3)
アルミン酸三カルシウムは、水和熱は大きく、1日以内の早期強度の発現性に寄与する。
C4AF(4CaO•Al2O3•Fe2O3)
鉄アルミン酸四カルシウムは、水和熱は小さく、強度にはほとんど寄与しない。

超早強ポルトランドセメント
早期に強度を発現(早強ポルトランドセメントの強度を1日で発現)するために早強ポルトランドセメントよりもけい酸三カルシウム(C3S)の含有量を多くし、粉末度を細かくしている。
JIS R 5210-2009(ポルトランドセメント)では、材齢1日、3日、7日および28日の圧縮強さの下限値を規定している。
けい酸二カルシウム(C2S)の上限値は規定していない。

中庸熱ポルトランドセメント
普通ポルトランドセメントに比べて水和熱を下げるためにC3Sおよびアルミン酸三カルシウム(C3A)の含有量を多くしている。JIS R 5210では C3Sを50%以下、C3A を8%以下と上限値を規定している。

フライアッシュセメント
ポルトランドをJIS A 6201-2008 に適合するフライアッシュで置換したもの。フライアッシュはポゾラン反応性を有し、良質なものは球形であるため単位水量を減じ、長期的に強度を発現する動きがある。乾燥収縮は小さく、水和熱も小さいので、マスコンクリートに使用されるが、JIS R 5213-2009(フライアッシュセメント)では、水和熱の上限値は規定されていない。
水和熱の上限値を規定しているのは、中庸熱ポルトランドセメントと低熱ポルトランドセメントのみである。