15章 左官工事 5節 仕上塗材仕上げ

15章 左官工事

5節 仕上塗材仕上げ

15.5.1 適用範囲

(a) この節は、JIS A 6909(建築用仕上塗材)に規定されている仕上塗材を用いる内外装工事を対象としている。

(b) 仕上塗材仕上げの中で、最も工程数の多い複層仕上塗材仕上げを例として、作業の流れを図15.5.1に示す。


図15.5.1 複層仕上塗材仕上げ工事の作業の流れ

(c) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。

なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。

① 工程表(色見本の決定、施工箇所別の着工及び完了等の時期)
② 製造所名、施工業者名及び管理組織
③ 下地の処理と仕上材の種別
④ 工法(塗り工程と使用する機器・工具類)及びその管理方法等
⑤ 工程ごとの所要量等の確認方法
⑥ 養生方法(施工中(特に飛散防止)及び完了後)
⑦ 足場つなぎ跡の補修方法
⑧ 材料保管の方法(温湿度の管理、消防法)及び作業の安全管理対策

⑨ 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等

15.5.2 材 料

(a) 仕上塗材

(1) 仕上塗材は、JIS A 6909(建築用仕上塗材)の規定に適合するものを用い、その確認・検査は、1.4.4を参照されたい。仕上塗材の有効期間は一般的に 6~12か月のものが多い。

JISマーク表示品は、その包装又は容器に製造年月日若しくはその略号と有効期間の表示が義務づけられており、それによって確認する。

仕上塗材は、指定された銘柄、色及びつや等に基づいて製造所により調合・出荷されるので、現場で顔料又は添加剤等を加えてこれらを調整してはならない。

また、仕上塗材は、下塗材、主材又は上塗材の組合せにより総合塗膜として品質が規定されているので、それぞれの材料は同一製造所のものを使用しなければならない。

(2) ホルムアルデヒド放散量に関して「標仕」では、内装仕上げに用いる塗材が指定建築材料(表19.10.2参照)であるか否かにかかわらず、特記がなければ F☆☆☆☆のものを使用することとしている(表15.5.1参照)。したがって、市場性、部位、使用環境等を考慮してその他の放散量のものを使用する場合は、設計図書に特記されている内容を十分確認する必要がある。

表15.5.1 JIS A 6909:2010におけるホルムアルデヒド関連の規定

なお、特記された内容に適合する製品等が人手困難な場合は、「標仕」1.1.8による協議事項とすればよい。また、ホルムアルデヒド放散量に関する建築基準法上の扱いや現場における確認方法等については、19章10節を参照されたい。

(3) 「標仕」表15.5.1は、仕上塗材ごとに仕上げの形状、工法、所要量、塗り回数の標準を示したものである。

参考として、JIS A 6909における仕上塗材の種類及び呼び名を表15.5.2に、仕上塗材の種類と仕上げの形状の例を表15.5.3に示す。

表15.5.2 仕上塗材の種類及び呼び名(JIS A 6909 : 2010)(その1)
表15.5.2 仕上塗材の種類及び呼び名(JIS A 6909 : 2010)(その2)
表15.5.3 仕上塗材の種類と仕上げの形状

また、塗材や塗料の単位面積当たりの使用量等を示す数値は、JASSに倣い「標仕」表15.5.1では「所要量」で示し、18章では「塗付け量」で示している。これらの用語の定義は次のとおりである。

(i) 所要量:

被仕上塗材仕上面の単位面積に対する仕上塗材(希釈する前)の使用質量(JASS 23 吹付け工事)

被塗装面単位面積当たりの塗装材料(希釈する前)の使用質量(JASS 18 塗装工事)

(ii) 塗付け量:

被塗装面単位面積当たりの塗装材料(希釈する前)の付着質量(JASS 18)

(4) 内装薄塗材及び内装厚塗材には、気密性が高くなった住宅での結露防止や湿度変化の抑制を期待して吸放湿性を付加したものがある。吸放湿性は厚さ9.5mmのせっこうボードに仕上塗材を塗り付けたものを試験板として用いて測定している。JIS A 6909の調湿形の品質を表15.5.4に示す。この品質を満たすものは「調湿形」の表示があるので、吸放湿性を有する塗材を用いる場合はこれを用いる。

表15.5.4 薄付け仕上塗材(内装)及び厚付け仕上塗材(内装)の調湿形の品質(JIS A 6909 : 2010)

(5) 結合材として水溶性樹脂又はこれに合成樹脂エマルションを混合したものを用いている内装薄塗材Wには、耐湿性、耐アルカリ性、かび抵抗性を付加したものがある。「標仕」では、コンクリート、セメントモルタル等のアルカリ性の下地に内装薄塗材Wを適用する場合は、JIS A 6909の「耐アルカリ性試験合格」の表示のあるものを用いることとしている。

(6) 合成樹脂溶液系複層仕上塗材(複層塗材RS)は、セメント系複層塗材に対抗した有機質系の複層塗材として、昭和40年初期に開発され多くの建物に採用されてきた。反応硬化形の溶剤系合成樹脂を結合材として用いており、付着性、耐水性、耐アルカリ性等の塗膜性能が良く、また、仕上りも他の複層仕上塗材に比べてきめ細かい上品な肌触りの模様が得られるなどの特長を有していた。しかし、近年は、環境配慮の観点から各種水系の仕上塗材が開発されたために、複層塗材 RSの使用量が減少し、製造されなくなっている。今後、JISからも削除予定であるために、平成25年版「標仕」では,複層塗材RSが削除された。

(7) JIS A 6909における複層仕上塗材の耐候性の品質は、耐候性A法及び耐候性B法の試験方法によって規定されている。耐候性A法については、すべての複層仕上塗材に適用されるもので、必ずその品質を有するものでなければならない。しかし、耐候性B法は,より耐候性のグレードが高い複層塗材に適用されるもので、この規定に適合すれば耐候形1種、耐候形2種又は耐候形3種の表示がで きるものである。これらの概要を表15.5.5に示す。

なお、そのいずれを適用するかは特記によることとなるが、特記がなければ、耐候形3種の複層塗材を用いることとしている。

表15.5.5 複層仕上塗材の耐候性の品質(JIS A 6909 : 2010)

(8) 複層仕上塗材の上塗材は、その溶媒の違いによって溶剤系、弱溶剤系、水系に区分され、溶剤系はトルエンやキシレン等の比較的溶解力の強い溶剤が、弱溶剤系はミネラルスピリット等の比較的溶解力の弱い溶剤が、また、水系は水が用いられている。それぞれの溶媒の違いによる上塗材の特徴を表15.5.6に示す。

上塗材の適用に当たっては、省資源や環境保全対策の一環として水系の上塗材を用いることが望ましいが、水系の上塗材は溶剤系に比べると低温や高湿度において硬化乾燥が遅いため、施工においてはミストの飛散による周辺への汚染対策や、施工後の降雨・結露等への配慮が必要である。また、気温が低い場合にセメント系の主材に適用すると、エフロレッセンスを生じ色むらの原因となることもあるので注意を要する。

なお、「標仕」表15.5.2 でつやなし及びメタリック仕上げについては、上塗り塗膜の伸長性が小さいことから可とう形及び防水形の複層塗材には適用しないこととしている。

表15.5.6 溶媒の違いによる上塗材の特徴

(9) 防火材料の指定がある場合は、建築基準法に基づき認定を受けた仕上塗材を用いなければならないが、その概要を表15.5.7に示す。

表15.5.7 防火材料認定番号と仕上塗材の呼び名との関連

(b) 下地調整塗材は、仕上塗材の付着性の確保や素地の気泡穴、目違い等の調整を主な目的として用いられる材料で、その品質はJIS A 6916(建築用下地調整塗材)に規定されている。その種類及び呼び名を表15.5.8に示す。

下地調整塗材は、指定された銘柄や品質等に基づいて製造所により調合・出荷されるので、現場で砂や添加剤等を加えてこれらを調整してはならない。

表15.5.8 建築用下地調整塗材の種類及び呼び名(JIS A 6916 : 2006)

(c) 上水道以外の水は、錆、塩分、硫質分、有機物等を含むことがあり、これらの量や種類によってはセメントの凝結時間、合成樹脂エマルションのゲル化、外観の異状等、塗材や塗膜の品質・性能及び外観に影響を及ぼすことがあるので、一般には飲料に適した水を使用するとよい。

(d) 合成樹脂溶液形の塗材を希釈する場合に用いる専用うすめ液(シンナー)は、個別の塗材との組合せによっては、塗材がゲル化したり色別れの原因となったりするので、仕上塗材製造所の指定するものを使用しなければならない。

(e) 下地調整塗材以外の下地調整材には、合成樹脂系シーラー及び合成樹脂パテがある。合成樹脂系シーラーは、耐アルカリ性、造膜性及び耐水性が良い合成樹脂エマルション又は合成樹脂溶液で、仕上塗材の下地に対する吸込みを抑え、付着性を高めるために用いる。また、合成樹脂パテは、気泡穴やパネル接合部の隙間の充填等に用いるもので、合成樹脂エマルションパテ、塩化ビニル樹脂パテ、エポキシ樹脂パテ等がある。

なお、合成樹脂系シーラーは、仕上塗材の下塗材で代用できる場合は省略することができたり、合成樹脂エマルションパテは外部に使用できないなどの適用条件があるほか、仕上塗材との付着性において個別の材料ごとに適性があるので「標仕」では仕上塗材製造所の指定する製品を用いることとしている。

15.5.3 施工一般

(a) 仕上塗材の模様、色、つや等は、製造所により相異があるので工程ごとの所要量又は塗厚が分かる見本塗板をなるべく早めに提出させ、設計担当者と打合せのうえ決定する。

なお、施工に先立ち所定の仕上り状態を確認するために、試し塗りをする場合は、見本塗板より大型の板に行うか又は施工予定の下地に行い、見本塗板と照合し仕上り状態を決定する。また、多数の人が塗る場合は、これを周知させる。

(b) 放置時間は、用いる塗材の乾燥硬化機構によって決まる。したがって、塗材の種類や気象条件を踏まえ、次の工程に移る放置時間及び最終工程後の放置時間を適切に定める必要がある。

なお、ここでの放置時間は、「標仕」18.1.4(h)の工程間隔時間及び最終養生時間と同じ意味である(18.1.6 (c)(3)参照)。

(c) 気温が5℃以下になるような場合は、原則として、施工を中止する。やむを得ず施工を行う場合は、15.1.4(c)を参照し、採暖.換気等の養生を行う。

なお、夏期に直射日光を受ける壁面に施工する場合は、シート等で囲って養生し、急激な乾燥を防ぐようにする。

また、セメント系仕上塗材を著しく乾燥した下地に施工する場合は、塗材の水分が下地に急激に吸収され付着力が低下するので水湿しを行う。

(d) 強風時(一般に風速5m/s以上)又は施工後放置時間以内に降雨・降雪や結露のおそれがある場合は、適切な措置が講じられていない限り、施工を行わないようにする。強風時には周辺に材料が飛散するばかりでなく、塗膜の付着性、造膜性等に不具合が生じることがある。また、塗膜の乾燥が不十分な状態で水分が作用した場合には、塗材の付着性、造膜性、色調、模様等に欠陥が生じやすい。

(e) 仕上塗材には溶液系の下塗材(シーラー)、上塗材及びその薄め液(シンナー)があり、それらの材料は、トルエン、キシレン、ケトン類等の可燃性溶液が用いられているものが多く、その材料の容器に消防法による危険物表示や労働安全衛生法による注意事項が個々に表示されている。

また、これらの溶剤は皮膚のかぶれ、中毒等健康を害するおそれがあるので.作業は関係法令(18.1.4 (a)参照)に従い十分注意する。

(f) 所要量等の確認は、工程ごとに行うが「標仕」15.5.7では仕上り状態の目視判断を基本としている。しかし、防水形の仕上塗材及び軽量骨材仕上塗材については、塗厚によって塗膜の性能が左右されるため、塗厚の代替特性値として単位面積当たりの使用量も併せて確認することとしている。

(g) 目地のシーリング

(1) 目地部及び建具回り等のシーリングは、界面を少なくして防水上の効果を得るため、仕上塗材塗りに先立ち施工するのがよい。

なお、シーリング材の表面は、仕上塗材塗り施工時にある程度乾燥しているよう前もって施工する。

(2) 「標仕」15.5.3 (g)ではシーリング材の施工面に仕上げを行う場合は、塗重ね適合性を確認し、必要な処理を行うこととしている。

シーリング材と仕上塗材の組合せは、一般的な組合せとして「標仕」表9.7.1 の中の「仕上げあり」の欄にポリウレタン系が示されているが、仕上塗材が溶剤系又は水系を問わず、また、JIS表示品のシーリング材とJIS表示品の仕上塗材の同系統の組合せであっても、相互の付着や仕上りの美観に大差が生じやすく、付着改善や油分の移行を防止するため、バリアプライマー等で対応する例が多い。事前にシーリング材又は仕上塗材製造所の技術資料等で確認しておく必要がある。

(h) 足場に対する注意

(1) 足場の横架材の部分は作業姿勢が不自然となり、また、壁面とノズルの角度が変わり、色、模様にむらが生じやすいので注意が必要である。

(2) 足場のつなぎ跡の補修は、仕上塗材の仕上げが終了したのちに行うため、かなり入念に行っても補修跡が目立つ。組み立てるときに、つなぎ跡を考慮してできるだけつなぎ跡の補修ができやすいように位置を決めるようにする。

(i) 施工技術に関して指導を行っている団体としては、 (-社)日本左官業組合連合会、(-社)日本塗装工業会、日本外壁仕上業協同組合連合会、全国マスチック事業協同組合連合会等がある。

15.5.4 下地処理

(a) U形にはつり、モルタルで充填する場合の仕上塗材に支節のないモルタルには、表15.5.8に示すセメント系下地調整厚塗材2種等がある。

(b) 「標仕」でシーリング材は仕上げに支障のないものとしているのは、シーリング材の種類と仕上塗材の組合せで付着力に大差があり、また、シーリング材の可塑剤や低分子の油分が仕上塗材に移行して外観を著しく汚染するものがあることによる。

(c) 「標仕」表15.5.3では、仕上塗材の種類に応じたモルタル下地の仕上げをはけ引き、金ごて及び木ごて仕上げと定めている。ただし、セメント系厚付け仕上塗材の下地はタイル張り下地と同じく均しモルタル塗りの考えであり、モルタルは中塗りまでとし、中塗りの仕上げをはけ引き又は木ごて仕上げとしている。複層塗材 REを金ごて仕上げにしているのは、塗材の硬化状態と付着力の関係を考慮したことによる。また、可とう形と防水形塗材を金ごて仕上げにしているのは、下地を平滑にして塗膜の厚みを確保しやすく、下地の凸凹で塗膜の薄い部分が切れることを考慮したことによる。

(d) ALCパネル、押出成形セメント板の補修材料は、パネル製造所の指定する補修材料を使用することになっている。「標仕」15.5.5に示すALCパネルの下地調整又は押出成形セメント板の下地調整の方法に準じて行うとよい。

(e) 下地に金物類がある場合は、仕上塗材製造所の仕様により十分な錆止め処理をし、また、不要なものは除去する。

15.5.5 下地調整

 

(a) コンクリート

(1) 「標仕」では下地調整塗材を全面に塗り付けて.平滑にするとしているが、これは仕上塗材の良好な仕上り及び耐久性を確保するためである。

表15.5.8に示すように、下地調整塗材C-1は0.5〜1mm程度、下地調整塗材 C-2は1~3mm程度、下地調整塗材CM-2は、3~10mm程度の範囲で下地の不陸に応じて使い分けるとよい。

ただし、表15.5.8の参考に記されているように下地調整塗材C-2及び下地調整塗材CM-2は、その上にすべての仕上塗材の塗付けが適用可能であるが、下地調整塗材C-1及びCM-1に適用する仕上塗材は、すべての仕上塗材ではないことに留意する。

下地調整塗材C-1及び下地調整塗材CM-1は、原則として防水形複層塗材RSのように特に耐溶剤性を必要とする材料や複層塗材REのように凝集力の強い材料による仕上げは対象としておらず、仕上塗材の中でももっとも汎用的に使用されている複層塗材E、薄塗材E等の仕上げを前提として品質が定められている。

一方、下地調整塗材C-2は通称セメントフィラーと呼ばれる JIS A 6916(建築用下地調整塗材)制定時の性能を踏襲したもので、すべての仕上塗材に適応することを前提として品質が定められており、下地調整塗材CM-2も同様である。

(2) コンクリートの下地調整のうち、「標仕」15.5.5 (a)(3)ではスラブ下等の見上げ面及び厚付け仕上塗材仕上げ等の場合は、次の理由で下地調整塗材塗付けを省略することとしている。

(i) スラブ下等の見上げ面は一般的に砂壁状仕上げの薄塗材仕上げが多く、目違いはサンダー掛け程度の下地調整で十分である。

(ii) 厚付け仕上塗材仕上げの塗厚は、一般的に 4〜10mmであり、コンクリート壁の目違いはサンダー掛けで取り除く程度の下地調整で十分である。

(3) 下地の不陸調整厚さが3mmを超えて10mm以下の場合は、スラブ下等の見上げ面及び厚付け仕上塗材仕上げであっても、下地調整塗材CM-2を平滑に塗り付ける。

(b) モルタル、プラスター及びPCパネル面の下地調整において、仕上塗材の下塗材が合成樹脂エマルションシーラーと同様な目的で使用される場合は、合成樹脂エマルションシーラーを省略し下塗材を塗り付けることとなる。

(c) ALCパネル

(1) ALCパネルの表面は強度が小さく粗面であるため、目つぶしや表面強度の確保を目的として下地調整塗材を塗り付ける。

(2) 「標仕」で外装薄塗材S及び防水形複層塗材RS仕上げの場合の下地調整塗材を、特に下地調整塗材C-2としているのは、仕上塗材が溶剤系であるため、下地調整材の溶剤による強度低下や付着不良を防ぐためである。また、下地調整塗材を塗り付ける前に合成樹脂エマルションシーラーを塗り付けるのは、ALCパネルの吸水性及び表面に付着している粉状物を考慮し、下地調整塗材の付着性を確保することや塗付けの作業性を良くすることを目的としている。

ただし、昭和50年代後半から特にALCパネル表面の下地調整用として実用化された下地調整塗材Eの中には、合成樹脂エマルションシーラーの機能を兼ね備えた下地調整塗材Eも開発され、シーラーレスフィラー等と称される製品も流通しているが、民間工事における長年の実績も踏まえて、このような下地調整塗材Eを用いる場合は、合成樹脂エマルションシーラーを省略することができる。

(d) 押出成形セメント板の下地処理を 2液形エポキシ樹脂ワニスとしているのは、特に耐アルカリ性や下地と仕上塗材の付着力に留意し、耐久性を確保するためである。

なお、使用する仕上塗材製造所の仕様により指定されている下塗材が、2液形エポキシ樹脂ワニスと同等の効力を有するものであれば、2液形エポキシ樹脂ワニスに代えて、当該下塗材とすることができる。

(e) 塗り面は下地調整後十分乾燥させ、仕上塗材が塗られるまで付着を妨げるごみ、汚れ等のないように留意する必要がある。

15.5.6 工 法

(a) 材料の練滉ぜ

(1) 各仕上塗材の下塗材・主材・上塗材は、セット品として水系・溶剤系、溶液系・エマルション系・粉体、1液形・2液形等様々なものがあり、その材料の練混ぜ方法は、仕上塗材の製造所の使用方法として包装又は容器等に表示されている。

(2) 「標仕」15.5.6(a)から(s)で各仕上塗材の練混ぜについで規定している。

JIS表示品の各仕上塗材は、その包装、容器又は添え付ける印刷物に次の事項に示す表示が義務付けられており、それによって材料の練混ぜ方法を確認する。

(i) 使用方法
① 調合
② 水を必要とする仕上塗材については標準加水量、薄め液を必要とする仕上塗材については簿め液の標準量
③ 標準所要量
④ 可使時間

⑤ 施工方法

(ii) 注意事項
① 粉体及び混和液、又は基剤及び硬化剤がセットされているものは、同一銘柄のものを使用すること。

② 複層塗材で、下塗材、主材及び上塗材がセットされているものは、同一銘柄のものを使用すること。

(b) 材料の塗付け

(1) 下塗材塗り

下塗材は、主として下地に対する主材の吸込み調整及び付着性を高める目的で使用される。したがって、だれ,塗残しがないように均ーに塗り付けることが肝要である。

なお、仕上塗材製造所の仕様では、下地の種類や状態によって下塗材の吸込みが異なるので、所要量は一般に 0.1〜0.3kg/m2 の範囲で記載されていることが多い。したがって、適用に当たっては 15.5.3(a)の試し塗りを行って、当該現場での所要量を確認しておくとよい。

(2) 主材塗り

主材は、主として什上り面に立体的な模様を形成する目的で使用される。施工は「標仕」表15.5.1により吹付け、ローラー塗り又はこて塗りによるが、事前に提出された見本帳又は見本塗板と同様の模様で 、しかも塗残しや足場むらがないように塗り付けることが肝要である。

なお、吹付けの厚付け仕上塗材及び複層仕上塗材並びに防水形の仕上塗材は、主材層の連続性を確保するために、基層塗りと模様塗りを区分しているので特に注意が必要である。基層塗りを省略する工法は、一般に「玉吹き」等と称されているが、部分的に下塗材と上塗材だけの仕上げ部分ができ、塗膜の耐久性が低下するばかりでなく、下地に対する保護効果も低減する。

(3) 上塗材塗り

(i) 厚付け仕上塗材

①JIS A 6909(建築用仕上塗材)では、原則として、単層としているが「標仕」表15.5.1では、セメントスタッコは上塗材を0.3kg/m2以上の所要量で 2回塗りとし、その他の外装厚塗材については、特記により上塗材の適用ができることとしている。

これは外装用にあっては、下塗材、主材、上塗材の総合塗膜で性能を確保するということが重要であり、(ii) の複層仕上塗材を参考に特記するとよい。

② 上塗材を用いる場合は、複塗仕上塗材と同様に水系のアクリル系上塗材が使われることが多い。この場合、セメント系の主材である厚塗材Cは、施工時の気温が低い場合にセメントに起因するエフロレッセンス(主因はセメント中の水酸化カルシウムで、その水への溶解性は約5℃の時最大の溶解度を示す。)等で色むらや白化等が生じやすい。その対策として15.1.4(c)により十分に温度管理を行うか、「標仕」表15.5.2に示す弱溶剤系か溶剤系の上塗材を使用する方法がある。

(ii) 複形仕上塗材

①上塗材は、紫外線、風、雨(酸性雨)、雪等の外力から主材層を保護し、同時に色、光沢等によりデザイン性を高めるためであり、0.25kg/m2以上の所要量で2回塗りを標準としている。

② メタリック仕上げの場合は、0.4kg/m2以上の所要量で3回塗り以上としている。メタリックの主な顔科であるアルミ粉等の金属粉がアルカリ(下地のセメント)や酸(大気中の酸性雨等)での劣化を抑制するためと、金属粉の比重差による色むらを防止するため、上塗り工程を3回以上とし、第1回目はクリヤー又はメタリックと同系色のエナメルを塗り付け、最上層はクリヤーを塗り付けることとしている。

③ 上塗材の種類は、「標仕」15.5.2(a)(9)により、特記がなければ「水系アクリルのつやあり」が使われる。水系の上塗材は、溶剤系の上塗材に比べ低温時や高湿条件では乾燥が遅いため、塗料ミストの風下への飛散防止として、より細やかな養生対策や、塗料ミストの少ない工法としてのローラー塗りの採用等の配慮が必要である。

また、仕上塗材の種類がセメント系の場合は、(i) ②と同様の対策が必要である。

15.5.7 所要量等の確認

(a) 仕上塗材仕上げの所要量等の確認は、一般的には「標仕」表15.5.4により、見本帳や見本塗板と比較して色合、模様、つや等が同じように仕上がっており、かつ、塗り面にむら、はじき等がない状態であればよい。

(b) 防水形の仕上塗材及び軽量骨材仕上塗材の場合は、塗厚の確保が防水等の性能に影響するため、単位面積当たりの使用量によって、「標仕」表15.5.1に規定する「所要量」の確認を、(a) の確認と併せて行うこととしている。

なお、所要量の定義については15.5.2(a)(3)を参照する。

15.5.8 「標仕」以外の材料

「標仕」では規定されていないが、この節の仕上塗材に関連する材料として、JIS A 6021(建築用塗膜防水材)に規定されている外壁用塗膜防水材がある。外壁用塗膜防水材は、ゴム状弾性、防水性、ひび割れ追従性等を特徴とする材料で、特に中性化や塩害を抑制する機能を有しており、従来から9章[防水工事]の「標仕」以外の工法で紹介していたが、この節の防水形複層仕上塗材と同様な材料として扱われることから、平成25年版では15章5節の「標仕」以外の材料に掲載することとした。JIS A 6021の外壁用塗膜防水材には、主要原料の違いによってアクリルゴム系、ウレタンゴム系、クロロプレンゴム系及びシリコーンゴム系の4種類が規定されているが、最も多く用いられているアクリルゴム系外壁用塗膜防水材工法の工程例を表15.5.9に示す。

表15.5.9 アクリルゴム系外壁用塗膜防水工法の工程例(JASS8 L-AW準拠)

15章 左官工事 6節 マスチック塗材塗り

15章 左官工事

6節 マスチック塗材塗り

15.6.1 適用範囲

この節は、建築物の内外壁等のコンクリート,押出成形セメント板、モルタル及び ALCバネルの素地面に,マスチック塗材を多孔買のハンドローラーを用いて塗る工事を対采としている。

15.6.2 マスチック塗材塗り

(a) マスチック塗材を、材料組成や塗り工程により、5節の仕上塗材に対応させると、表15.6.1のようになる。

(b) マスチック塗材は1回塗りで厚膜の連続した特有の模様を形成する仕上げが得られ、その模様は施工方法によって、種々に変化させることができる。

(c) マスチック塗材の種類は、合成樹脂エマルションを結合材としたA 及びポルトランドセメントを結合材としたCの2種類がある。マスチックCの場合は塗材面に光沢がある仕上げとするための仕上材塗りの工程に、「標仕」では、つや有合成樹脂エマルションペイントが用いられているが、ほかにアクリル樹脂エナメルが用いられる場合もある。

(d) 塗り工程は下地調整をした面に下地押えと塗材塗りであり、マスチックC塗りの場合のみに仕上材塗りの工程がある。

マスチック塗材塗りの施工には多孔質のハンドローラーを用い、仕上材塗りは中毛のハンドローラー、はけ等を用いる。

(e) マスチック塗材塗りはローラーを用いて1回塗りで厚付けをするため、施工実績と技能等により仕上りが左右される。品質確保の一例として、全国マスチック事業協同組合連合会が検定試験を実施しているので、参考にするとよい。

(f) 施工についての責任を明確にし、精度の高い入念な施工をする目的で、設計図書で指定された場合は、例えば、図15.6.1に示す施工票を施工面に取り付けるなどの処置を行う。

表15.6.1 マスチック液材と仕上塗材との対応表


図15.6.1 施工票

15章 左官工事 7節 せっこうプラスター塗り

15章 左官工事

7節 せっこうプラスター塗り

15.7.1 適用範囲

(a) せっこうプラスターはヨーロッパにおいて古くから塗り壁材料として利用されてきた。わが国では、しつくい、土塗り、ドロマイトプラスター等が普及していたことから、本格的にせっこうプラスターが普及し始めたのは比較的新しく、昭和20年代の後半といわれている。現在、せっこうプラスターと呼ばれるものには、現場調合プラスター、既調合プラスターの2種類がある。

「標仕」では、材料及び用途からみて、次の2種類のせっこうプラスターによる塗り工事を対象としている。

(i) 現場調合によるせっこうプラスター塗り工事

JIS A 6904(せっこうプラスター)に規定される現場調合プラスターに、骨材と必要があればすさ類等を現場で調合し、水で練って一般的なプラスター塗りとするもの。

(ii) 既調合プラスターによる塗り工事

現場調合プラスター、骨材、すさ類、その他の混和材料をあらかじめ工場で調合し、現場では水のみを加えて練ることにより、直ちに塗り材料としてのせっこうプラスターが得られるようにしたもの。

従来は、現場調合によるせっこうプラスター塗り工事が一般的であったが、調合の均ー化、現場練りの省力化、品質安定性等から既調合プラスターの使用が増えている。例えば、現場では取り扱いにくい骨材をあらかじめ混入した骨材入りプラスターをはじめとして、平滑なコンクリート下地面、あるいは吸水性の大きいALCパネル下地等の薄塗り仕上げのような特定の施工対象・工法に対応するものなど多種のものが製造販売されている。また、接着性や保水性を向上させるために、骨材のほかに合成樹脂系混和剤を混入するものもある。

(b) 作業の流れを図15.7.1に示す。


図15.7.1 せっこうプラスター塗り工事(コンクリート類の下地の場合)の作業の流れ

(c) 施工計画書の記載事項は、おおむね次のとおりである。

なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。

① 工程表(施工箇所別の着工及び完了の時期)
② 施工業者名及び作業の管理組織
③ 使用材料及び保管方法
④ 練混ぜ場所及び練混ぜ方法
⑤ 調合
⑥ 下地処置の工法(屋内、下地材の吸水の著しい箇所等の別に)
⑦ 工法(施工箇所別)及びその管理方法等
⑧ 各工程の工程間隔時間(養生期間)及びその確認方法
⑨ ひび割れ防止の方法
⑩ 浮きの確認方法及び補修方法
⑪ 養生方法(夏期の直射日光、通風、寒冷、施工後)

⑫ 作業のフロー、管理の項目・水準・方法、品質管理体制・管理責任者、品質記録文書の書式とその管理方法等

(d) 一般事項

(1) せっこうプラスターの性質
(i) せっこうプラスターの硬化性
① せっこうプラスターは、自硬性セメントであり、主成分は焼せっこうである。焼せっこうは、半水せっこう(CaSO4・ 1/2H2O)を主成分としたもので水と練り混ぜると、水和反応を起こし、結晶水を得て2水せっこう(CaSO4・2H2O)になる。次に、結晶水以外の余剰水が発散して硬化が完了する。

結晶水として、混練水の20%(質量百分率)程度が必要であるとされている。

② JISによる凝結時間は始発が1時間以上であり、終結が8時間以内(上塗り用)である。「標仕」では、加水後の使用時間の限度として、下塗り及び中塗りでは加水後2時間以上、上塗りでは1.5時間以上経過したものを使用してはならないとしている。

③ プラスター中の半水せっこうが風化すると異常に速い凝結や凝結の際の異常膨張を起こす場合が多い。

④ 硬化したせっこうでも、少量ながら水に溶解する性質があり、長期間水に触れていると著しく強度が低下する。

(ii) せっこうプラスターは、硬化が早く比較的強度もあり、針状結晶によって硬化するため収縮ひび割れが生じにくい。

(2) せっこうプラスターは.次の場所での使用を避ける。

(i) 浴室.厨房等常時、水や水蒸気に触れるおそれのある場所

(ii) 地下室、倉庫等の多湿で、通気不良の場所

(3) せっこうラスボード下地に直接アルカリ性のプラスターを塗ると、ボードの表て紙がアルカリに侵されてはく離するので、アルカリ性以外のプラスターを用いなければならない。

15.7.2 材 料

(a) せっこうプラスターの種類

(1) JIS A 6904(せっこうプラスター)は、その種類及び用途が表15.7.1のように分類されている。

表15.7.1 せっこうプラスターの種類

(2) せっこうプラスターには、(1)に示す種類があるが、その性質は、次のように異なるので、誤りのないようにしなければならない。

(i) 下塗り用既調合プラスターは、せっこうプラスターにあらかじめパーライト、バーミキュライト、川砂、けい砂、寒水石等の骨材、すさ類、合成樹脂系混和剤等を配合し,作業性を良くしたものである。使用に当たっては試験又は信頼できる資料により品質の確認ができるものとする。

モルタル、コンクリート、せっこうボード下地等の表面に塗ることを目的としているが、下地の乾燥によっては接着性があまり期待できないので「標仕」 15.2.5(a)(1)(iii)で規定しているように、下地面をくし引きし、これにくい込ませて塗るとよい。

(ii) 従来の混合プラスターの名称はなくなったが、現場で水だけを加えて薄く塗る上塗り用プラスターは、既調合プラスター(上塗り用)として存続している。

(iii) 現場調合プラスターは、焼せっこうを主原料とし、硬化遅延材を添加し、硬化時間を調整したものである。ほぼ中性で、ボード面に塗ると、硬化の際、針状結晶が生じこれがボードに食い込むのでよく接着する。

しかし、わずかなアルカリが混入しても硬化時間が著しく遅れ、針状結晶の生成が害され、硬化不良を起こしボード面への接着も非常に悪くなり、はく離の原因となる。

一般に、中性の材料に塗るのに適している。

(b) せっこうプラスターの製造年月日は、略号で表示されているので、その略号を材料搬人報告書に記入させる。また、略号の意味を施工計画書に記載させておき、搬入した材料が4箇月を経過しているものは使用しない。

(c) せっこうプラスターに種類の違うプラスター、セメント等を混合したり、新しい材料に練残しのせっこうプラスターを混合したりすると、硬化時間や強度に影響するので絶対に避けなければならない。

(d) 砂は表15.2.1によるのがよい。砂の不純物によっては、せっこうプラスターの硬化時間の変化、硬化不良、ふくれの現象〈ふけ〉を起こすことがある。

また、細かい砂は配合過多になりやすく、配合過多になると15.7.3(b)のような理由で、ひび割れ、はく離の原因となる。

(e) 水は、清浄なものとする。モルタル塗りを行ったこてやこて板を洗った水を使用することは、アルカリが混入するので絶対に避けなければならない。

15.7.3 調合及び塗厚

(a) せっこうプラスターの標準調合表及び塗厚を表15.7.2に示す。

なお、「標仕」表15.2.3の塗厚の標準値は、これを参考として一般な場合について示したものであり、「標仕」の標準値によりがたい場合は、必要に応じて「標仕」1.1.8による協議により、工種別施工計画書で検討すればよい。

表15.7.2 せっこうプラスター塗りの調合(容積比)及び塗厚(JASS 15(一部修正)より)

(b) せっこうプラスターの調合で砂を入れ過ぎると、次の現象が生じる。特に容積比で 1:2 を超えると影響がでる。

(1) 硬化時間が早くなる。
(2) 強度が低下する。

(3) 気泡が入りやすくなり、下地との接着面積が減少し、接着力が低下する。

(c) 塗装、吹付け、布張り等の下地となる上塗りに、寒水石粉を混入したものを用いるのは、表面硬度を増すためと、こて切れをよくして作業性を向上させるためである。

(d) 「標仕」に定められた塗厚を図示すると、図15.7.2のようになる。


図15.7.2 せっこうプラスター塗りの工法

15. 7.4 下地処理

(a) せっこうプラスター塗り工法の下地には、コンクリート下地、コンクリートブロック下地、れんが下地、防錆処理をしたラス下地、せっこうラスボード下地、せっこうボード下地、ALCパネル下地等がある。

(b) コンクリート下地、コンクリートブロック下地、れんが下地、ALCパネル下地及びセメントモルタル下地にせっこうプラスターを塗る場合、仕上塗材製造所から指定された吸水調整材を全面塗布し乾燥させる。上塗り材として内装薄塗材 E,C,L,W 又は内装厚塗材 E,C,Lを施工する場合は、下塗り又は中塗りが乾燥したのちに仕上塗材製造所から指定された吸水調整材を塗布し、乾燥させてから行う。

(c) コンクリート下地、コンクリートブロック下地、れんが下地、ラス下地には一般に直接せっこうプラスターを塗ることはまれで、主にセメントモルタルで下ごすり、下壁り、むら直しまで行い、くし目を入れ、2週間以上放置し、完全に乾燥させてせっこうプラスターの下塗りを施工する。

(d) せっこうラスボード下地及びせっこうボード下地の場合、直接下壁り及び中塗りをして上塗りをする。上塗りとして内装薄塗材 E,C, L,W又は内装厚塗材 E,C,Lを施工する場合は、下塗り又は中塗りが乾燥したのちに仕上塗材製造所から指定された吸水調整材を塗布し、乾燥させてから行う。

ALCパネル下地には、下地に対応するせっこうプラスターを塗る。下地の吸水止めをして保水性の向上した材料を用いるとよい。

(e) 「標仕」では、下地の処理方法として、水洗い及びポリマーセメントペースト〈のろ〉塗りが定められているが、せっこうプラスターの上に、仕上塗材の内装薄塗材 E,C,L,W,内装厚塗材E. C. Lを施工する場合は、仕上塗材製造所から指定された吸水調整材を塗布し、乾燥させてから行う。

15.7.5工法

(a) 下地モルタル塗りを行うのは、金ぐしによる荒らし目により、せっこうプラスター付着の足掛りをつくるためと、型枠緊張材の頭等鉄部の錆止めのためである。

(b) メタルラスは、たるみ・しわのないように張り付け、ラスが変形しない程度のこて圧で塗り付ける。

(c) 開口部周辺やボードの継手その他ひび割れのおそれのある箇所には、しゅろ毛・パーム・繊維類・防錆処理したメタルラス等を下塗りの中へ塗り込むか、又は下塗り面に散らして伏せ込む。下塗りの水引き具合を見て、くし目を付ける。

(d) 下地モルタル塗りが乾燥不十分のうちにせっこうプラスターを塗ると、硬化の遅いモルタルがまだ収縮途中の不安定な状態であるため、せっこうプラスターの硬化後、更に収縮を続け、接着面にずれを起こしはく離を生じやすい。また、モルタルのアルカリ分がせっこうプラスターに影響して硬化不良を起こしやすい。

(e) 下地の乾燥、あるいは直射日光や強風により、塗り付けたせっこうプラスターが急激に乾燥すると、硬化不良を起こすので注意する。

(f) 下地の処理方法は、仕上塗材製造所から指定された吸水調整材を壁面全面に塗布し、吸水調整材が乾燥したのちに次の塗付け作業を行う。

(g) 一度練り混ぜたものは急速に水和反応が進むので、セメントのように練直しをして使用することはできない。

(h) 中塗りは、下塗りの硬化状態を点検して施工する。下塗りが硬化不十分の場合は、硬化するのを待って中塗りを行う。

(i) 仕上げ塗りは、中塗りの硬化状態を見計らい、通常は翌日に吸水調整材を製造所の仕様により全面に塗布し,吸水調整材乾燥後下付けと上付けの2工程として、塗り重ねるのがよい。

(j) 注意事項

(1) 「標仕」15.7.5(a)に定められている通気の調整は、せっこうプラスターの性質上どうしても必要なことであり、これを完全に行わないとはく離を生じやすい。また、硬化後に余分な水分を述やかに乾燥させないと硬化が遅れ.黄変や白華現象を起こしやすい。

(2) 上塗り完了後、通風等により通気の調整を始めるのは、24時間程度経過してからがよい。

(3) 施工時の気温が2℃以下になると、凍害を起こすので作業を行ってはならない。なお、気温が低下するおそれのある場合は、養生を行い、5℃以上に保つようにする(15.1.4参照)。

(4) 現在薄塗りタイプの下塗り材が市販されており、「標仕」では規定されていないが、せっこうボード下地、コンクリート下地、れんが下地及びセメントモルタル下地にせっこうプラスター 3〜5mm下塗りしてから上塗りする工法が行われている。

15章 左官工事 8節 ロックウール吹付け

15章 左官工事

8節 ロックウール吹付け

15.8.1 適用範囲

この節は.JIS A 9504(人造鉱物繊維保温材)に規定される材料を用いて、吸音・耐火・断熱を目的とした半乾式工法及び乾式工法によるロックウール吹付け工事を対象としている。

なお、耐火被覆は7章節による。

(1) ロックウール吹付け工法には、現場配合のセメントスラリーによる半乾式工法と工場配合による乾式工法がある。現場配合による半乾式工法は、吹付け時にノ ズル先でロックウールとセメントスラリーを混ぜ合わせて吹き付ける工法である。工場配合による乾式工法は、ロックウールとセメントをあらかじめ工場で配合混合し、吹付け時にノズル先で水と合わせて吹きつける工法である。

(2) 工場配合による乾式工法は粉塵等により衛生環境が悪くなるので、粉塵の少ない現場配合による半乾式工法が多く使われるようになってきている。

15.8.2 材料

(a) ロックウールは、JIS A 9504に適合するもので、特記がなければホルムアルデヒド放散による区分がF☆☆☆☆等級であり、かつ、国土交通大臣から不燃材料としての認定を受けたものを使用する。

なお、ロックウール保温材は、認定番号NM-8600として認定されている。また、JIS A 9504に規定された品質基準を表15.8.1に示す。

表15.8.1 ロックウール保温材の品質基準(JIS A 9504 : 2011)

(b) セメントは、ポルトランドセメント、高炉セメント又は白色セメントを使用する。

(c) 接着剤は、合成樹脂系のもので、ホルムアルデヒド放散量は、特記がなければ F☆☆☆☆のものを使用する。一般的には、アクリル樹脂系エマルション形や酢酸ビニル・アクリル共重合樹脂エマルション形のものなどが使用されている。

15.8.3 配合及び密度等

(a) 「標仕」では、防火材料として使用することを想定して、吹付けロックウールの配合及び密度を、「標仕」表15.8.1のように定めている。

なお、この配合は、吹付けロックウール(認定番号NM-8601)として認定された構造方法又は建築材料に適合している。

(b) 材料は、「標仕」で規定された品質が得られるように、所定の品質となるようにロックウールとセメントスラリーを現場で結合させる現場調合のもの(15.8.4 (b)(1)に対応)と、セメントとロックウールをあらかじめ工場で配合したもの(5.8.4 (b) (2)に対応)とがある。「標仕」表15.8.1の配合は、工場配合及び現場配合の両方に適用される。

(c) 「標仕」では、仕上げ吹付け厚さは、特記によることとしている。

15.8.4 施工

(a) 下地調整

下地調整は、下地の種類により必要に応じて行いコンクリート、プレキャストコンクリート部材、セメントモルタル及びコンクリートブロックの場合は、水湿しでドライアウト防止の調整を行い、ALCパネルの場合は、合成樹脂エマルションシーラーで吸込み防止の調整を行う。また、プレキャストコンクリート部材で、型枠はく離剤が塗られている場合は、接着力を高めるため合成樹脂エマルションシーラーで下地調整を行う。

(b) 吹付けは、次による。

(1) 現場配合のセメントスラリーによる半乾式工法の場合

(i) 専用吹付け機を使用し、作業開始に先立って予備運転を行い、吹付け機が安全、かつ、正常に作動するかを確認する。

(ii) 水100kgに対しセメント50kg (2袋)を標準とし、かくはん機でセメントスラリーを調合する。

(iii) ロックウールとセメントスラリーの吐出量を点検し「標仕」表15.8.1の範囲となるよう吐出量を調整する。

(iv) 吹付けは、吹付け機より輸送ホースを経て吹付けノズルより吐き出されるロックウールをノズルから噴霧されるセメントスラリーで混合させながら均一に吹き付ける。

(2) 工場配合の乾式工法の場合

(i) 専用吹付け機を使用し、作業開始に先立って予備運転を行い、吹付け機が安全、かつ、正常に作動するか、また、吹付けノズルにより水が正常に噴霧されるかを確認する。

(ii) 材料の吐出量及び噴霧水量を点検し、材料の吐出量に対し必要、かつ、十分な水量を保持できるように調整する。

(iii) 吹付けは、下塗りが乾かないうちに行い、吹付け機より輸送ホースを経て吹付けノズルより吐き出される材料をノズル周囲より噴霧される水で十分湿潤させながら均ーに吹き付ける。

(c) 表面仕上げ

(1) こて均し

吹付け終了後、均ーな所定厚さを確保するため、木製の平こてにて、こて均しして仕上げる。

(2) 表面硬化

こて均し終了後、吹付け材表面を硬化させる必要がある場合、セメントスラリー0.1〜0.2kg/m2程度の吹付けを行う。

15.8.5 施工後の確認

(a) 防火材料は吹付け完了後、厚さ及び密度の検査を行う。

なお、検査は施工者の管理担当者が行う。

(b) 吹付け厚さの確認は、7.9.8による。

(c) 密度の確認は、建物1層あるいは、1,000m2に付き5箇所とする。測定器及び計算方法は7.9.8による。

参考文献

16章 建具工事 1節 一般事項

16章 建具工事

1節一般事項

16.1.1 適用範囲

(a) 「標仕」では建具を次のように分類し、それぞれの特性等については、節ごとに分けて規定している。建具は、出入口や窓等の機能、アルミニウム製や鋼製等の材料、開きや引違い等の開閉方式、防音や断熱等の性能等に分類できるが、「標仕」では建具を提供する建具製作所の区分に一致する材料により分類している。

平成25年版「標仕」では、JIS A 5558(無可塑ポリ塩化ビニル製建具用形材)で樹脂製建具の形材品質基準が標準化されたこと及び省エネ化促進のため、事務庁令、宿令等の外部建具として、新たに樹脂製建具が規定された。

それぞれの適用範囲は、次の各節による。
  4節 鋼製建具
  7節 木製建具
 14節 ガラス
各節の建具等は、事務庁令等に使用する一般的なもの(建具製作所が、通常製作している建具でカタログ等に仕様が指定されているもの)について規定しており、特別注文の建具は対象としていない。また、木製建具は、木造住宅に使用するものを対象とはせず、事務庁舎等の中で使われるものに限定している。

(b) アルミニウム製建具の場合を例にして、作業の流れを図16.1.1に示す。

なお、基本要求品質を確保するため、品質計画を提案させ、これによってプロセスの管理を行う16.1.2(b)及び(c)を参照されたい。


図16.1.1 アルミニウム製建具工事の作業の流れ

(c) 一般に施工図と施工計画書に記載される事項の例を表16.1.1及び表16.1.2に示す。

表16.1.1 建具の施工図の記載事項
表16.1.2 施工計画書の記載事項

これらは、アルミニウム製建具、鋼製建具等の製作に必要な事項であるが、建具の種別、建物の状況、建設場所の立地条件等によっては、要求される性能が異なる場合がある。

また、一般に行われている施工図作成の過程を図16.1.2に示す。図面の早期理解と事前の意思の疎通が必要である。


図16.1.2 施工図作成の過程

(d) 「標仕」16章で使われる建具の分類や一般的な各部の名称等は、次に示すとおりである。また、建具ごとに異なる詳細な名称は、各節の補足説明を参照されたい。

(1) 建具の寸法、部材名称等を図16.1.3及び図16.1.4に示す。


図16.1.3 出人口戸の寸法

 


図16.1.4 開口部窓に関する名称

(2) 戸の種類と構造の例を表16.1.3に示す。

表16.1.3 戸の構造

(3) 戸、窓の開閉方式を図16.1.5に示す。


図16.1.5 戸、窓の開閉方式

(4) 戸の開き勝手を図16.1.6に示す。


図16.1. 6 戸の開き勝手

16.1. 2 基本要求品質

(a) 「標仕」には、建具の種類に応じた材料が規定されている。主要材料の索材はJISが指定されており、一般にJISに適合する証明を建具製作所から提出させる。

材料のJISについては、2節以降の材料の項を参照されたい。

補助材料の中には、「標仕」で、具体的な品質を規定していないものがある。一般にそれらは、建具製作所が使用しているものとしてよいが、材質等が確認できる資料又は実績を確認する。

(b) 「標仕」には、建具の形状として使用材料の板厚等を規定している。一般にJISがある材料にあっては、JISの呼び名に対応するものを使用するが、これには許容差が含まれている。ただし、実厚の指定のある防火戸に使用する鋼板では、指定された値以下となる許容差は認められないので注意する。

また、製作所で加工し組み立てて、現場に搬入される建具の製品としての寸法精度は、一般の建築部材と比べて高い。しかし、これを現場に取り付けてはじめて建物の一部となるため、いくら製品としての精度が良くても、取り付けた結果の精度が適切でないと、建具としての性能を満足しないことになる。「所定の形状及び寸法を有する」とはまず,使用する材料の原さ等の確認方法をどのようにするか取り付けたのちの建具としてどの程度の精度を確保するかについてあらかじめ「品質計画」において提案させ,これによってプロセスの管理を行うことと考えればよい。

建具の表面状態は、建具の耐久性や意匠上の観点から重要な管理項目である。

一般に表面処理又は塗装が指定されており、現場に搬入された材料が指定どおりであっても、取り付けたのちの仕上り状態が問題である。したがって「所要の仕上り状態」としては、指定された表面処哩等の確認方法のほか、取付け後の傷、汚れ、反り、へこみ、著しい色むら等の許容限度、これらの限度を超えた場合の処置方法も含めて「品質計画」で提案させるようにする。

(c) 建具は、建物の構成材として16.1.7に示すような種類の性能が要求され、必要な性能が設計図書に特記される。外部に面する建具の性能値としては、耐風圧性、気密性及び水密性が特記されるが、耐風圧性は法令に定められた基準がある。その他の性能は、建物のグレード等に応じて設計担当者が特記する。

建具に求められる性能は、建具の種類や取り付けられる部位ごとに異なるものであり、例えば、シャッターやオーバーヘッドドアでは、気密及び水密性は要求されず、耐風圧性のみが要求される。また、屋内用で、遮音又は気密性が要求される建具では、これらの性能が特記される。

一方、16.1.7に示す性能は、製品としての建具の性能であり、建物の部位としてのものではない。これは、一般に取り付けられた状態での性能は、確認が困難であり、事実上は不可能なことによる。このため、建具工事では、要求される性能をもつ建具製品を建物に取り付けることで、要求される性能が確保できるようにする必要がある。

以上のことから、「所定の性能を有する」とは、建具製品としての性能の確認方法、製品の性能が確保できる取付け方法等について「品質計画」で明らかにし、定められた方法が手順どおり行われたことを、どのように確認し記録していくかを提案させ、実施させることと考えてよい。

一般に、建物の耐震性は構造部材の安全性だけでなく、建具や内装等の非構造部材の安全性も重要な事項であるが、耐風圧性、気密性、水密性等とは異なり、建具の耐震性が具体的に特記されることは少ない。しかし、非構造部材としての耐震性を付与することは重要である。「所要の耐震性能を有する」こととは、窓ガラスの破損に対する安全性の確認等も含めて16.1.7 (a)(6)を参考にして検討を行うことと考えればよい。

なお、大きな層間変位に対応させるには、意匠、構造を含めた設計上の検討が必要となる場合が多いので関係者を含めて打合せを行い、必要に応じて「標仕」1.1.8による協議を行う。

16.1.3 防火戸

a) 防火戸の取扱い

(1) 網入板ガラスや耐熱板ガラスの使用又は設備との関係等重要な事項は、防火区画や防煙区画が分からなければ適切な建具の配置を計画できない。防火区画や防煙区画は、本来設計図に明示されているものであるが、明示のない場合もあるので、計画通知書(確認申請書)に付属する図面の写し等により確認を行う。

(2) 耐熱板ガラスはJIS規格が制定されておらず、「標仕」にも規定されていないが、耐熱板ガラスを使用して大臣認定を取得したものがある。

(3) 常時解放型の防火戸の機構は、一般に表16.1.4のようなものである。

表16.1.4 防火戸の機構

(b) 法令等に関連して、建具を防火戸とする箇所は、おおむね次のとおりである。

① 防火区画
② 延焼のおそれのある部分
③ 防火区画に接する外壁
④ 避難階段
⑤ 変電室
⑥ 発電機室.
⑦ 蓄電池室
⑧ 機械室・ボイラー室
⑨ 書庫
⑩ 防災センター
(c) 防火戸

(1) 防火戸の運用

 防火戸は二つの形態で運用される。

① 国土交通大臣が定めた構造方法による製品(例示仕様)を使用する。

具体的には、平成12年建設省告示第1360号及び同第1369号に基づいて製作された製品を使用し施工する。この場合は、法律で定められた構造で施工するので認定書や認定番号はない。したがって、施工する仕様が規定に適合するか確認する。

② 国土交通大臣の認定を受けたもの(個別認定)を使用する。

建築基準法で構造方法が規定された ①以外のものは、個別に試験を受けて国土交通大臣の認定を取得する必要がある。個別認定品には認定番号と認定書があるので写しを確認する。認定番号は、特定防火設備がEA – □□□□(4桁の数字)、防火設備がEB – □□□□となっている。

(2) ガラス入り特定防火設備として、耐熱板ガラス及び網入板ガラスを一部使用して個別認定を受けているものがある。この防火設備については、(-社)日本サッシ協会から「ガラス入り特定防火設備運用指針/安全設計指針」が発行されているので参考にするとよい。

同様に樹脂製・木製で防火設備や特定防火設備の認定を受けたものも多く使われている。

(3) 遮煙性能を有する防火設備に関しては、建築基地法施行令第112条第9項及び第14項で、たて穴区画(吹抜き部、階段の部分、昇降機の昇降路の部分、ダクトスペースその他これらに類する部分)はその他の部分と遮煙性能を有する防火設備で区画するように義務付けている。

昇降機(EV)の昇降路に関しては昭和56年建設省告示第1111号が平成14年-5月に失効したことから、新しく遮煙性能をもつ防火設備として国土交通大臣認定CAS – □□□□/複合防火設備(準耐火構造壁・床付き)が誕生し、多くの認定品が使われるようになってきている。

しかし、施行令第112条では昇降路と同様に階段室等のたて穴区画にも義務付けていることから、平成16年3月22日の消防法改正では、同区画の防火設備の遮煙性を高める方法として、昇降路で認定され性能が明確な国土交通大臣認定 CAS – 0257等がこれに適合すると推奨しているので参考にするとよい。

(4) 防火戸にがらりを設ける場合は、防火ダンパー付きのものとする必要がある。

(d) 防火戸の安全性

防火シャッター、自動回転ドア等の事故発生に伴う防止措置として、平成17年 12月1日建築基準法施行令第112条第14項第一号ロが施行され、防火区画に取付けの防火戸(特定防火設備又は防火設備)の閉鎖作動時に、周囲の人の生命又は身体の安全確保のため、危害防止措置の対応が義務付けられた。危害防止措置の要求性能は、昭和48年建設省告示第2563号(最終改正 平成17年12月1日国土交通省告示第1392号)に規定されており、概要は次のとおりである。

(i) 閉鎖作動時の運動エネルギー(MV2/2)が 10J以下であること。
ただし、
 M:防火設備の質量(kg)

 V:防火設備の閉鎖作動時の速度(m/s)

(ii) 防火設備の質量が15kg以下であること。ただし、質量が15kgを超える場合は、水平方向に閉鎖するもので閉じ力が150N以下であること、又は周囲の人と接触した場合に 5cm以内に停止すること。

16. 1. 4 見本の製作等

特別注文の建具が特記される場合等では、その製作に先立ち、性能と機能を確認するため見本品が製作されることがある。特記により建具見本品を製作する場合は、見本品の製作期間と性能(水密性、気密性、強度、遮音性等)、機能(開閉等)の確認試験期間を製作工程に見込む必要がある。

16.1.5 取付け調整等

(a) 建具工事の品質管理としては、製作所による社内検査と取付け後の建具の調整により当初の建具の品質が確保されていることを確認する検査がある。

(b) 社内検査

(1) 社内検査の要領は、施工計画書で示されるので、その要領に基づいて検査を行わせ、結果を報告書として提出させるとよい。

(2) 報告書の主な内容は、次のとおりである。

① 建具符号、形式
② 全体の形状、使用材科の材質・板厚等
③ 表面処理の種別及び皮膜又は複合皮膜の種類(「標仕」表14.2.1[表面処理の種別]による)
④ 主要部分の寸法精度(JIS A 4702 (ドアセット)又はJIS A 4706(サッシ)による)
⑤ 漏水防止処置
⑥ 仕上げの状態

⑦ その他必要に応じて開閉の作動状況等

(3) 最近では、建具材料の加工にNC加工機を使用する例が増えてきており、同一形式の建具の場合、寸法精度については抽出検査としてよい。

(c) 「標仕」16.1.5(a)の「取付け調整」は、具体的には次の事項が調整されていることをいう。

(1) 開閉作動が円滑であること。
(2) 施錠、解錠の操作が円滑であること。
(3) 施錠後に大きながたつきがないこと。

(4) 付属金物(はずれ止め、戸当り、ドアクローザー等)の取付け、調整が完了していること。

(d) モルタル、プラスター等が長時間アルミニウム材に付着すると変色することがある。固化する前は、容易に取り除けるので、早期に水洗い等により清掃し除去する必要がある。

16.1.6 その他

(a) 最近の建具では、開閉操作が複雑なものもある。オーバーヘッドドア等では誤操作が事故につながる可能性もあり、適宜、建具製作所より操作方法の表示情報を得て表示するとともに、工事完成時には、「標仕」1.7.3に基づき取扱い説明書を整備する必要がある。

(b) 個人情報保護法施行に伴い、個人情報を預かる公共建物においては開口部の不正侵入防止対策が必要となってきている。また、近年の侵入犯罪の増加に伴い、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に定められた日本住宅性能表示基準に「防犯に関すること(開口部の侵入防止対策)」が追加され.その中で侵入を防止する性能が確かめられた部品として「防犯建物部品」が該当されるものとされた。このような背景から、「防犯建物部品」が特記されることが予想される。

「防犯建物部品」とは、「防犯性能の高い建物部品の開発・普及に関する官民合同会議」が、一定の防犯性能があると評価した建物部品であり、「官民合同会議」が公表する「防犯性能の高い建物部品目録」に掲載されたものである。

部品ごと、に定められた試験方法により合格したものが、5分間の侵入抵抗性能があると認められ、それらには「CPマーク」表示がなされる(図16.1.7参照)。また、公表された「防犯建物部品」(建具関連)は、公表されたガラス、ウィンドウフィルム及び錠を組み込むことにより防犯性能が確保されるということになっている。


図16.1.7 CPマーク

なお、「防犯建物部品」には業界別に次の① から⑦ のものがある。詳細は(公社)全国防犯協会連合会又は各団体のホームページに掲載されているので参考にされたい。

① 窓関係(サッシ全般、雨戸、面格子、窓シャッター):(-社)日本サッシ協会
② ドア関係(ドアA種、ガラスドア、引戸、ガラス引戸):(-社)日本サッシ協会
③ ドア関係(ドアB種):(-社)日本シャッター・ドア協会
④ シャッター関係(重量・軽量シャッター、オーバーヘッドドア、スイッチボックス、窓シャッター):(-社)日本シャッター・ドア協会
⑤ 錠関係(錠、電気錠、シリンダー、サムターン):日本ロック工業会
⑥ ガラス関係:板硝子協会

⑦ ウインドウフィルム:日本ウインドウフィルム工業会

16.1.7 建具の性能等

(a) 建具に共通する主な性能の概要は、次のとおりである。

なお、特別注文の建具であっても、性能確認のための試験には多大な経費を要する場合があるので、試験の実施が特記されていない場合は、試験を強要してはならない。

(1) 耐風圧性
JIS A 4702 (ドアセット)又はJIS A 4706(サッシ)に規定される等級が特記される。
等級を超える風圧力の場合は、性能を確保するための品質基準を含めて風圧力の数値が特記される。

また、高さ60mを超える建物については、(-社)日本建築学会「建築物荷重指針・同解説」6章[風荷重]を用いる場合もある。

なお、平成12年建設省告示第1458号では、「高さ13m以下の建築物」、「高さ 13mを超える建築物の高さ13m以下の部分で高さ13mを超える部分の構造耐カ上の影響を受けない部分及び1階の部分又はこれに類する屋外からの出入口(専ら避難に供するものを除く。)を有する階の部分」の屋外に面する帳壁は適用除外とされている。高さ13m以下の部位に作用する風圧力については、「建築物荷重指針・同解説」に定める計算式によるほか、2節以降に掲げる建具の種類に応じた計算方法(16.2.2(a)、16.3.2(a)、16.11.2(c)、16.13.2(b). 16.14.2(b)参照)によって算定することができる。また、同告示に規定する計算式を高さ13m以下にそのまま適用することも技術的には可能である。

性能の確認は、部材の構造計算又は建具製作所で実施した試験の報告書等により行う。

特記により試験を行う場合は、JIS A 1515(建具の耐風圧性試験方法)による。

(2) 気密性
JIS A 4702又はJIS A 4706に規定される等級又は圧力差10Paに対する単位面積、単位時間当たりの通気量(m3/m2・ h)が特記される。
性能の確認は、建具製作所で実施した類似建具の試験の報告書等により行う。

特記により試験を行う場合は、JIS A 1516(建具の気密性試験方法)による。

(3) 水密性
JIS A 4702又はJIS A 4706に規定される等級が特記される。
なお、等級を超える条件の場合は、JIS A 1517(建具の水密性試験方法)での室内側に漏水を生じない限界の上限圧力差又は平均圧力差が特記される。
性能の確認は、建具製作所で実施した類似建具の試験の報告内等により行う。

特記により試験を行う場合は.JISA1517による。

(4) 遮音性
JIS A 4702又はJIS A 4706に規定される等級が特記される。
性能の確認は、建具製作所で実施した類似建具の試験の報告書等により行う。

特記により試験を行う場合は、JIS A 1416(実験室における建築部材の空気音遮断性能の測定方法)に準ずる。

(5) 断熱性

(i) JIS A 4702若しくはJIS A 4706に規定される等級又はJIS A 2102-1(窓及びドアの熱性能ー熱貫流率の計算ー第1部:一般)及びJIS A 2102-2(窓及びドアの熱性能ー熱貫流率の計算ー第2部:フレームの数値計算方法)に基づく熱貫流率計算(単位面積1m2の温度差1Kに対する通過熱量)の熱貫流率 (W/m2・K)で特記される。

性能の確認はJIS A 2102-1及びJIS A 2102-2に基づく熱貫流率計算又は建具製作所で実施した類似建具の試験の報告書等により行う。

特記により試験を行う場合は、JIS A 4710(建具の断熱性試験方法)による。

(ii) 住宅の窓等の断熱性能表示

住宅の窓等に関して、エネルギーの使用の合理化に関する法律第86条(一般消費者への情報の提供)に基づき「窓等の断熱性能に係る情報提供に関するガイドライン」(住宅の窓を製造し、又は輸入する事業を行う者が当該窓の断熱性に係る品質の一般消費者への情報提供のための表示に関し講ずべき措置に関する指針)(平成19年12月28日経済産業省告示第321号 最終改正平成22年5月24日)が経済産業省より公表されているので参考に示す。

同ガイドラインに基づき「窓」(住宅用の窓におけるガラス組込み完成品)を完成させた建具製作所の場合、個々の商品に対し、出荷段階において表16.1.5の表示区分で「省エネ建材等級ラベル」(図16.1.8参照)を張り付けている。


図16.1.8 省エネ建材等級ラベル

表16.1.5 省エネ建材等級ラベルの表示区分表示区分
(6) 耐震性
建具の耐震性は、一般に建物の層間変位に対して窓ガラスが破損・脱落して人的被害を及ぼさないようにすることである。

建具にはめ込まれた窓ガラスの建物の層間変位に対する安全性は、図16.1.9に示すブーカムの提案式によって求めてよい。

なお、この式はガラスとその周囲の枠との関係を示すものである。

一般に固定窓(FIX)部では、層間変位が直接枠に作用するのでこのまま適用できる。しかし、可動部では、枠と障子との間に隙間があるため、まず枠が変形し障子にぶつかり、はじめて障子が変形する。また、引戸では、更に障子の回転も考慮できる。したがって、障子にはめ込まれたガラスの層間変位に対する安全性は、多くの震災でも証明されているように、固定窓の場合に比べはるかに高い。

また、ドアセットの層間変位に対する安全性は、16.4.2(e)による。

図16.1.9中の① が平常時の状態であり、ガラス小口とサッシのガラス溝との間には、C1~C4の隙問(エッジクリアランス)が設けられている(16.14.3 (a) (2)参照)。建物の層間変位によって、建具の上下枠間に変位が生じ、② から③の状態へと移って行く。③ の状態(建具の上下隙間の変位がδ2)が、窓ガラスの終局的な状態であり、建物の層間変位で建具がこのような状況にならなければ窓ガラスは安全であるといえる。

建物の層間変位は、建物の剛性によって決まるものであり、特記がない場合には、設計担当者に確認する必要がある。

一般に中層建物では、S造はRC造に比べ剛性が比較的小さいため層間変形角 1/150程度が妥当であるが、一般普及品の固定窓(FIX)部においては、サッシの細長比の関係により、ガラスエッジクリアランスが確保できない場合が起こり得るので配慮が必要である。


図16.1.9 窓ガラスの層間変位に対する安全性(ブーカムの提案式)

(b) 建具に関する関連知識

(1)屋上の外開き戸は、風にあおられるおそれがあり、また、内開き戸は雨仕舞が悪いのでなるべく引戸にするのがよい。

なお、やむを得ず外開き戸にする場合は、図16.1.10のように適切な位置に戸当り等を付け、戸の変形を防止するのがよい。戸当りの位置及び大きさは、取っ手(握り玉等)の大きさを考慮する。


図16.1.10 屋上の外開き戸の納まり

(2) 建具の下辺で防水層と取合う部分は、雨仕舞に十分注意する。

なお、屋上、屋根の仕上げ面から建具下端までの寸法は、200mm以上とするのがよい。

(3) 排煙窓

外倒し窓、内倒し窓等がある。機構は、手動式と電動式(手動併用)等があり、煙感知器と連動して自動開放することができる。手動式の開放操作は、ワンタッチで引手及びレバーを引くものと、オペレーターでプッシュボタンを押すものがある。閉鎖操作は、ハンドルを回す。手動開放装置の操作部分は、建築基準法施行令第126条の3に「壁に設ける場合においては床面から80cm以上1.5m以下の高さの位置に、天井から吊り下げて設ける場合においては床面からおおむね1.8mの高さの位置に設け、かつ、見やすい方法でその使用方法を表示すること。」と定められている。電動式の解放操作は、個別、プッシュボタン又は手動ハンドルによることもでき、集中制御にすることが可能である。引違い窓等を排煙設備とする場合は、クレセントの取付け高さに注意する。

(4) 防煙垂れ壁

固定方式と可動方式がある。可動方式には、回転降下方式、垂直降下方式とがあり、その機構は、煙感知器、熱感知器連動及び手動方式がある。

(5) 耐火クロス製防火/防煙スクリーン

性能規定化に伴い、ガラスクロス等を用いた巻取り式の防火設備は、特定防火設備等の国土交通大臣の認定が必要である。

(6) がらり

(i) 給排気のためのがらりの有効開口部(フリーエリア)は、図16.1.11のS又はS’寸法の小さい方に隙間の長さを掛けたものの和である。

(ii) がらりの羽根の形は、図16.1.11の(イ) が一般的である。風当たりの強いところでは雨、雪の吹込みに対する対策のために、(ロ) とするか又は羽根の重なりLを大きくする。また、強風時の雨、雪の吹込み対策として、羽根をたてに設置したたて形がらりも市販されている。

なお、がらりの面積や間口率については、設計担当者に確認しておく必要がある。

(iii) 廊下と部屋の間に設ける場合は、一般に図16.1.11の(ハ) の形にするか又は(イ) の形にして内部を部屋側にして廊下から足元が見えないようにする。(ハ) の形では、d寸法をあまり小さくすると製作誤差で、部屋の光が外に見えるおそれがあるので注意する。

図16.1.11 がらりの羽根

(c) 特別注文の建具に対する対応

本来、「標仕」の適用範囲外であるが、意匠性から特別注文の建具が設計図書に明示されることも多い。しかし、(a) に示したように、特別注文の建具の性能の確認手段は、その多くが新たな実験を伴うこととなる。更に、建具の詳細設計をする費用と期間を要し、大幅なコスト増は避けられない。

したがって、特別注文の建具を指示する場合には、必ずその旨が特記されてなければならない。

(d) 法令及びJIS

(1) 法令(耐力関連)

(i) 建築基準法施行令の関連部分の抜粋を次に示す。

建築基準法施行令

第39条(屋根ふき材等の緊結)

屋根ふき材、内装材、外装材、帳壁その他これらに類する建築物の部分及び広告塔、装飾塔その他建築物の屋外に取り付けるものは、風圧並びに地震その他の震動及び衝撃によって脱落しないようにしなければならない。
2 屋根ふき材、外装材及び屋外に面する帳壁の構造は、構造耐力上安全なものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとしなければならない。

第82条の4(屋根ふき材等の構造計算)

屋根ふき材、外装材及び屋外に面する帳壁については、国土交通大臣が定める基準に従った構造計算によって風圧に対して構造耐力上安全であることを確かめなければならない。(限界耐力計算)

第82条の5(第1項 第一号~第六号 省略)
七 極根ふき材、外装材及び屋外に面する帳壁が第三号二の規定によって計算した建築物の各階に生ずる水平方向の層間変位及び同号ロの規定によって計算した建築物の損傷限界固有周期に応じて建築物の各階に生ずる加速度を考慮して国土交通大臣が定める基準に従った構造計算によって風圧並びに地震その他の震動及び衝撃に対して構造耐力上安全であることを確かめること。

(ii) 建設省告示「屋根ふき材、外装材及び屋外に面する帳壁の構造方法を定める件」の抜粋を次に示す。

屋根ふき材、外装材及び屋外に面する帳壁の構造方法を定める件
(昭和46年1月29日 建設省告示第109号最終改正平成12年5月23日)建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第39条第2項の規定に基づき、屋根ふき材、外装材及び屋外に面する帳壁の構造方法を次のように定める。第1
屋根ふき材は、次に定めるところによらなければならない。(第一号~第三号 省略)第2
外装材は次の各号に定めるところによらなければならない。(第一り及び第二号省略)第3
地階を除く階数が 3以上である建築物の屋外に面する帳壁は、次に定めるところによらなければならない。

一 帳壁及び支持構造部分は、荷重又は外力により脱落することがないように構造耐力上主要な部分に取り付けること。

ニ プレキャストコンクリート板を使用する板壁は、その上部又は下部の支持構造部分において可動すること。ただし、構造計算又は実験によってプレキャストコンクリート板を使用する帳壁及びその他の支持構造部分に著しい変形が生じないことを確かめた場合にあっては、この限りでない。

三 鉄網モルタル塗の帳壁に使用するラスシート、ワイヤラス又はメタルラスは、日本産業規格(以下「JIS」という。)A5524(ラスシート(角波亜鉛鉄板ラス))-1994、JIS A5504(ワイヤラス)ー1994又はJIS A5505(メタルラス)-1995にそれぞれ適合するか、又はこれらと同等以上の性能を有することとし、かつ、間柱又は胴縁その他の下地材に緊結すること。

四 帳壁としてガラス入りのはめごろし戸(網入ガラス入りのものを除く。)を設ける場合にあっては、硬化性のシーリング材を使用しないこと。ただし、ガラスの落下による危害を防止するための措置が講じられている場合にあっては、この限りでない。

五 高さ31メートルを超える建築物(高さ31メートル以下の部分で高さ31メートルを超える部分の構造耐力上の影響を受けない部分を除く。)の屋外に面する帳壁は、その高さの150分の1の層間変位に対して脱落しないこと。ただし、構造計算によって帳壁が脱落しないことを確かめた場合においては、この限りでない。

(ⅲ) 建設省告示「屋根ふき材及び屋外に面する帳壁の風圧に対する構造耐力上の安全性を確かめるための構造計算の基準を定める件」の抜粋を次に示す。
屋根ふき材及び屋外に面する帳壁の風圧に対する構造耐力上の安全性を確かめるための構造計算の基準を定める件
(平成12年5月31日 建設省告示第1458号最終正平成19年9月27日)建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第82条の4の規定に基づき、屋根ふき材及び屋外に面する帳壁の風圧に対する構造耐力上の安全性を確かめるための構造計算の基準を次のように定める。1 建築基準法施行令(以下「令」という。)第82条の4に規定する屋根ふき材及び屋外に面する帳壁(高さ13メートルを超える建築物(高さ13メートル以下の部分で高さ 13メートルを超える部分の構造耐力上の影響を受けない部分及び1階の部分又はこれに類する屋外からの出入口(専ら避難に供するものを除く。)を有する階の部分を除く。)の帳壁に限る。)の風圧に対する構造耐力上の安全性を確かめるための構造計算の基準は次のとおりとする。一 次の式によって計算した風圧力に対して安全上支障のないこと。

二 帳壁にガラスを使用する場合には、第一号の規定により計算した風圧力が、当該ガラスの種類、構成、板厚及び見付面積に応じて次の表により計算した許容耐力を超えないことを確かめること。

2 屋根ふき材に対するピーク風力係数は、次の各号に掲げる屋根の形式に応じ、それぞれ当該各号の定めるところにより計算した数値とする。(第一号〜第三号 省略)

3 屋外に面する帳壁に対するピーク風力係数は、第一号に規定するピーク外圧係数から第二号に規定するピーク内圧係数を減じた値とする。(第一号及び第二号 省略)

(iv) 建設省告示「Eの数値を算出する方法並びにV0及び風力係数の数値を定める件」の抜粋を次に示す。
Eの数値を算出する方法並びにVo及び風力係数の数値を定める件
(平成12年5月31日 建設省告示第1454号)建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第87条第2項及び第4項の規定に基づき、Eの数値を算出する方法並びにVo及び風力係数の数値を次のように定める。第1
(省略)

2 前項の式のErは、次の表に掲げる式によって算出するものとする。ただし、局地的な地形や地物の影響により平均風速が割り増されるおそれのある場合においては、その影響を考慮しなければならない。

(v) 建設省告示「損傷限界変位、Td、Bdi.、層間変位、安全限界変位、Ts、Bsi、.Fh 及び Gs を計算する方法並びに屋根ふき材等及び外壁等の構造耐力上の安全を確かめるための構造計算の基準を定める件」の抜粋を次に示す。
損傷限界変位、Td、Bdi、層間変位、安全限界変位、Ts、Bsi、Fh及びGsを計算する方法並びに屋根ふき材等及び外壁等の構造耐力上の安全を確かめるための構造計尊の基準を定める件
(平成12年5月31日 建設省告示第1457号 最終改正平成19年9月27日)建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第82条の5第三号イから二まで、第五号、第七号並びに第八りの規定に基づき、損傷限界変位、Td、Bd、層間変位、安全限界変位、Ts、Bsi、Fh及びGsを計算する方法並びに屋根ふき材等の構造耐力上の安全を確かめるための構造計算の基準を次のように定める。(第1~第10省略)第11
令第82条の5第七号に規定する屋根ふき材、外装材及び屋外に面する帳壁の構造i計算の基準は、次のとおりとする。

ー 風圧力に対して、平成12年建設省告示第1458号に規定する構造計算を行うこと。

二 地震力に対して、次に定める方法により構造計算を行うこと。ただし、令第39条の規定に適合し、かつ、令第82条の6第三号の規定により求めた建築物の層間変位の当該各階の高さに対する割合が200分の1以下であることが確かめられた場合においては、この限りでない。

イ 屋根ふき材について、建築物の損傷限界時に屋根ふき材が取り付く階に生ずる加速度によって当該屋根ふき材の面内及び面外に作用する力を求め、当該力により緊結部分に生ずる応力度が短期に生ずる力に対する許容応力度を超えないことを確かめること。

ロ 外装材及び屋外に面する帳壁(以下「外装材等」という。)について、建築物の損傷限界時における外装材等が取り付く部分の上下の部分に生ずる加速度によって当該帳壁等の面内及び面外に作用する力を求め、当該力により緊結部分に生ずる応力度が短期に生ずる力に対する許容応力度を超えないことを確かめること。

ハ 外装材等について、建築物の損傷限界時における外装材等が取り付く階に生ずる層間変位を求め、当該変位により緊結部分に生ずる応力度が短期に生ずる力に対する許容応力度を超えないことを確かめること。 ただし、当該部分の脱落防止その他有効な手法を用いて、地震に対する安全性が同等以上であることが確かめられた場合においては、この限りでない。

(2) 法 令(防火設備関連)

(i) 建築基準法の関述部分の抜粋を次に示す。

建築基準法
(用語の定義)第2条
この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

九の二 耐火建築物
次に掲げる基準に適合する建築物をいう。

ロ その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に、防火戸その他の政令で定める防火設備(その構造が遮炎性能(通常の火災時における火災を有効に遮るために防火設備に必要とされる性能をいう。)に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国上交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものに限る。)を有すること。

第64条(外壁の開口部の防火戸)

防火地域又は準防火地域内にある建築物は、その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に、防火戸その他の政令で定める防火設備(その構造が準遮炎性能(建築物の周囲において発生する通常の火災時における火炎を有効に遮るために防火設備に必要とされる性能をいう。)に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものに限る。)を設けなければならない。

(ⅱ) 建築基準法施行令の関係部分の抜粋

建築基準法施行令

第109条(防火戸その他の防火設備)
法第2条第九号のニロ及び法第64条の政令で定める防火設備は、防火戸、ドレンチャーその他火災を遮る設備とする。

2 隣地桜界線、道路中心線又は同一敷地内の2以上の建築物(延べ面積の合計が500平方メートル以内の建築物は、1の建築物とみなす。)相互の外壁間の中心線のあらゆる部分で、開口部から1階にあっては3メートル以下、2階以上にあっては5メートル以下の距離にあるものと当該開口部とを遮る外壁、そで壁、塀その他これらに類するものは、前項の防火設備とみなす。

第109条の2(遮炎性能に関する技術的基準)
法第2条第九号のニロの政令で定める技術的基準は、防火設備に通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後20分間当該加熱面以外の面に火炎を出さないものであることとする。

第112条(防火区画)
主要構造部を耐火構造とした建築物又は法第2条第九号の三イ若しくは口のいずれかに該当する建築物で、延べ面積(スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもので自動式のものを設けた部分の床面積の2分の1に相当する床面積を除く。以下この条において同じ。)が1500平方メートルを超えるものは、床面積(スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもので自動式のものを設けた部分の床面積の2分の1に相当する床面積を除く。以下この条において同じ。)の合計1500平方メートル以内ごとに第115条の2の2第1項第一号に掲げる基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備(第109条に規定する防火設備であって、これに通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後1時間当該加熱面以外の面に火炎を出さないものとして、国上交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。以下同じ。)で区画しなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物の部分でその用途上やむを得ない場合においては、この限りでない。

一(省略)

二 階段当の部分又は昇降機の昇降路の部分(当該昇降機の乗降のための乗降ロビーの部分を含む。)で第115条の2の2第1項第一号に掲げる基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備で区画されたもの

2〜13(省略)

14 第1項から第5項まで、第8項又は前項の規定による区画に用いる特定防火設備及び第5項、第8項、第9項又は節12項の規定による区画に用いる法第2条第九号の二ロに規定する防火設備は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める構造のものとしなければならない。

ー 第1項本文、第2項若しくは第3項の規定による区画に用いる特定防火設備又は第5項の規定による区画に用いる法第2条第九号のニロに規定する防火設備 次に掲げる要件を満たすものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたもの

イ 常時閉鎖若しくは作動をした状態にあるか、又は随時閉鎖若しくは作動をできるものであること。

ロ 閉鎖又は作動をするに際して当該特定防火設備又は防火設備の周囲の人の安全を確保することができるものであること。

ハ 居室から地上に通ずる主たる廊下、階段その他の通路の通行の用に供する部分に設けるものにあっては、閉鎖又は作動をした状態において避難上支障がないものであること。

ニ 常時閉鎖又は作動をした状態にあるもの以外のものにあつては、火災により煙が発生した場合又は火災により温度が急激に上昇した場合のいずれかの場合に自動的に閉鎖又は作動をするものであること。

二 第1項第二号、第4項、第8項芳しくは前項の規定による区画に用いる特定防火設備又は第8項、第9項若しくは第12項の規定による区画に用いる法第2条第九号のニロに規定する防火設備 次に掲げる要件を満たすものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたもの

イ 前号イからハまでに掲げる要件を満たしているものであること。

ロ 避難上及び防火上支障のない遮煙性能を有し、かつ、常時閉鎖又は作動をした状態にあるもの以外のものにあっては火災により煙が発生した場合に自動的に閉鎖又は作動をするものであること。

第136条の2の3(準遮炎性能に関する技術的基準)
法第64条の政令で定める技術的基準は、防火設備に建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後20分間当該加熱面以外の面(屋内に面するものに限る。)に火炎を出さないものであることとする。
建築基準法施行令

(iii) 建設省告示「防火区画に用いる防火設備等の構造方法を定める件」の抜粋を次に示す。
防火区画に用いる防火設備等の構造方法を定める件
(昭和48年12月28日 建設省告示第2563号最終改正平成17年12月1日)建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第112条第14項第一号、第129条の13の2〔平成12年4月政令第211号により改正〕及び第136条の2第一号の規定に基づき、防火区画に用いる防火設備等の構造方法を次のように定める。

第1
建築基準法施行令(以下「令」という。)第112条第14項第一号イから二までに掲げる要件(二に掲げる要件にあつては、火災により煙が発生した場合に、自動的に閉鎖又は作動をするものであることに限る。)を満たす防火設備の構造方法は、次の各号のいずれかに定めるものとする。

一 次に掲げる基準に適合する常時閉鎖状態を保持する構造の防火設備とすること。

イ 次の(1)又は(2)のいずれかに適合するものであること。

(1) 面積が3m2以内の防火戸で、直接手で開くことができ、かつ、自動的に閉鎖するもの(以下「常時閉鎖式防火戸」という。)であること。

(2) 面積が3m2以内の防火戸で、昇降路の出人口に設けられ、かつ、人の出入りの後20秒以内に閉鎖するものであること。

ロ 当該防火設備が開いた後に再び閉鎖するに際して、次に掲げる基準に適合するものであること。ただし、人の通行の用に供する部分以外の部分に設ける防火設備にあつては、この限りでない。

(1) 当該防火設伽の質量(単位 kg)に当該防火設備の閉鎖時の速度(単位 m/秒)の2乗を乗じて得た値が20以下となるものであること。

(2) 当該防火設備の質量が15kg以下であること。ただし、水平方向に閉鎖をするものであってその閉鎖する力が150N以ドであるもの又は周囲の人と接触することにより停止するもの(人との接触を検知してから停止するまでの移動距離が 5cm以下であり、かつ、接触した人が当該防火設備から離れた後に再び閉鎖又は作動をする構造であるものに限る。)にあつては、この限りでない。

二 次に掲げる基準に適合する随時閉鎖することができる構造の防火設備とすること。

イ 当該防火設備が閉鎖するに際して、前号ロ(1)及び(2)に掲げる基準に適合するものであること。ただし、人の通行の用に供する部分以外の部分に設ける防火設備にあつてはこの限りでない。
(以下省略)

(iv) 建設省告示「防火設備の構造方法を定める件」の抜粋を次に示す。
防火設備の構造方法を定める件
(平成12年5月24日 建設省告示第1360号)建築基準法(昭和25年法律第201号)節2条第九号のニロの規定に基づき、防火設備の構造方法を次のように定める。第1
建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第109条の2に定める技術的基準に適合する防火設備の構造方法は、次に定めるものとする。

ー 建築基準法施行令第114条第5項において準用する建築基準法施行令第112条第16項に規定する構造とすること。

二 次のイからホまでのいずれかに該当する構造とすること。

イ 鉄製で鉄板の厚さが0.8ミリメートル以上1.5ミリメートル未満のもの

ロ 鉄骨コンクリート製又は鉄筋コンクリート製で厚さが3.5センチメートル未満のもの

ハ 土蔵造の戸で厚さが15センチメートル未満のもの

二 鉄及び網入ガラスで造られたもの

ホ 骨組を防火塗料を塗布した木材製とし、屋内面に厚さが1.2センチメートル以上の木毛セメント板又は厚さが0.9センチメートル以上のせっこうポードを張り、屋外面に亜鉛鉄板を張ったもの

三 前号イ又は二に該当するものは、周囲の部分(防火戸から内側に15センチメートル以内の間に設けられた建具がある場合においては、その建具を含む。)が不燃材料で造られた開口部に取り付けなければならない。

四 開口面積が0.5平方メートル以内の開口部に設ける戸で、防火塗料を塗布した木材及び網入りガラスで造られたもの

第2
第1に定めるもののほか、防火戸が枠又は他の防火設備と接する部分は、相じゃくりとし、又は定規縁若しくは戸当りを設ける等閉鎖した際にすき間が生じない構造とし、かつ、防火設備の取付金物は、取付部分が閉鎖した際に露出しないように取り付けなければならない。

(v) 建設省告示「防火地域又は準防火地域内にある建築物の外壁の開口部の延焼のおそれのある部分に設ける防火設備の構造方法を定める件」の抜粋を次に示す。
防火地域又は準防火地域内にある建築物の外壁の開口部の延焼のおそれのある部分に設ける防火設備の構造方法を定める件
(平成12年5月25日 建設省告示第1366号)建築基準法(昭和25年法律第201号)第64条の規定に基づき、防火地域又は準防火地域内にある建築物の外壁の開口部の延焼のおそれのある部分に設ける防火設備の構造方法を次のように定める。

第1
建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第136条の2の3に定める技術的基準に適合する防火設備の構造方法は、建築基準法第2条第九号のニロに規定する構造とすることとする。

第2
第1に定めるもののほか、防火戸が枠又は他の防火設備と接する部分は、相じゃくりとし、又は定規縁若しくは戸当たりを設ける等閉鎖した際にすき間が生じない構造とし、かつ、防火設備の取付金物は取付部分が閉鎖した際に露出しないように取り付けなければならない。

(vi) 建設省告示「特定防火設備の構造方法を定める件」の抜粋を次に示す。
特定防火設備の構造方法を定める件
(平成12年5月25日 建設省告示第1369号)建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第112条第1項の規定に基づき、特定防火設備の構造方法を次のように定める。

第1
通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後1時間加熱面以外の面に火炎を出さない防火設備の構造方法は、次に定めるものとする。

一 骨組を鉄製とし、両面にそれぞれ厚さが0.5ミリメートル以上の鉄板を張った防火戸とすること。

二 鉄製で鉄板の厚さが1.5ミリメートル以上の防火戸又は防火ダンパーとすること。

三 前二りに該当する防火設備は、周囲の部分(防火戸から内側に15センチメートル以内の間に設けられた建具がある場合においては、その建具を含む。)が不燃材料で造られた開口部に取り付けなければならない。

四 鉄骨コンクリート製又は鉄筋コンクリート製で厚さが3.5センチメートル以上の戸とすること。

五 土蔵造で厚さが15センチメートル以上の防火戸とすること。

六 建築基準法施行令第109条第2項に規定する防火設備とみなされる外壁、そで壁、塀その他これらに類するものにあっては、防火構造とすること。

七 開口面積が100平方センチメートル以内の換気孔に設ける鉄板、モルタル板その他これらに類する材料で造られた防火覆い又は地面から高さが1メートル以下の換気孔に設ける網目2ミリメートル以下の金網とすること。

第2
第1(第六号及び第七号を除く。)に定めるもののほか、防火戸が枠又は他の防火設備と接する部分は、相じゃくりとし、又は定規縁若しくは戸当りを設ける等閉鎖した際にすき間が生じない構造とし、かつ、防火設備の取付金物は、取付部分が閉鎖した際に露出しないように取り付けなければならない。

(3) JIS

(i) JIS A 1513(建具の性能試験方法通則)の抜粋を次に示す。

JIS A 1513: 1996

2. 性能項目 建具の基本性能項目を、表1に示す。

表1 性能項目

(ii) JIS A 4702 (ドアセット)の抜粋を次に示す。

JIS A 4702: 2012

1. 適用範囲
この規格は、主として建築物の外壁面及び屋内隔壁の出入口として用いる手動開閉操作を行うスイング及びスライデイングのドアセットについて規定する。ただし、回転ドアセットは除く。

4 種類記号及び等級
ドアセットの種類、記号及び等級は、次による。

a) 性能による種類及び記号
性能による種類及び記号は、表1及び表2による。

表1 スイングドアセットの性能による種類及び記号

表2 スライディングドアセットの性能による種類及び記号

b) 性能項目による等級
性能項目による等級は、表3による。表3 性能項目による等級

5. 性 能
性能は、9.によって試験を行い、表4の規定に適合しなければならない。(9.は省略)

表4 性 能

表4 性 能(続き)

b) 全周波数滞被において、次の式によって音響透過損失を換算し、その換算値(6点)が該当する遮音等級線を上回ることとする。

ただし、125Hzは160Hzと、4000Hzは3150Hzと、各々二つの音響透過損失によって換算する。なお、換算値は整数で丸めることとし、換算値の各周波数帯域で該当する遮音等級線を下回る値の合計が3dB以下の場合は、その遮音等級とする。


図1 気密等級線


図2_遮音等級線
JIS A 4702: 2012

(iii) JIS A 4706(サッシ)の抜粋を次に示す。
JIS A 4706: 2012

1. 適用範囲

この規格は、主として建築物の外壁の窓として使用するサッシについて規定する。ただし、天窓は除く。4. 種類、記号及び等級
サッシの種類、記号及び等級は、次による。

a) 性能による種類及び記号
性能による種類及び記号は、表1及び表2による。

表1 スイングサッシの性能による種類及び記号

注1)開き窓に適用
2)PVC製内窓には適用しない
備考:◎は必須性能

表2 スライディングサッシの性能による種類及び記号

注1)引違い窓・片引き窓に適用
2)PVC製内窓には適用しない
3)耐風圧性の等級S-5以上のものだけに適用
備考:◎は必須性能

b) 性能項目による等級性能項目による等級は、表3による。
表3 性能項目による等級
5. 性 能

性能は9.によって試験を行い、表4の規定に適合しなければならない。(9.は省略)表4 性 能
JIS A 4706 : 2012

16章 建具工事 2節 アルミニウム製建具

16章 建具工事

2節 アルミニウム製建具

16.2.1 適用範囲

(a) 「標仕」に定められているアルミニウム製建具は、建具製作所が、既製のアルミニウム押出形材及び金具その他の材料を用いて、通常製作している建具で、幅及び高さはその建具製作所が定めた製作範囲とし、カタログ等で枠の形状、断面寸法、金具仕様が指定されているものを対象としている。

いわゆる特別注文建具(オーダー製品)は、発注の際、断面寸法や金物等、また、仕様及び性能が要求され、新形の形材を使用するものは、「標仕」では対象としていない。

(b) 建具の品質保証、建具製作所の責任の明確化という意味から、なるべく建具に建具製作所名等を表示させるのがよい。

16.2.2 性能及び構造

(a) 建具の性能及び構造は、JIS A 4702 (ドアセット)又はJIS A 4706(サッシ)に規定されており、設計担当者がJISに基づく性能等を特記することが原則である。しかし、一般的には「標仕」表16.2.1の耐風圧性や水密性等の組合せによる種別が特記される。

なお、JISによる等級を超える風圧力の場合は、16.1.7 (a)(1)を参照されたい。

「標仕」表16.2.1は、事務庁舎等に通常使用する外部に面する建具の性能等級を組み合わせて表したもので、強さのグレードで表すと、A種は耐風圧性能 2,000Pa、B種は同2,400Pa. C種は同2,800Paとなる。また、これらの性能等級の組合せは、(-社)公共建築協会が行っている「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」のアルミニウム製建具の性能値と整合している。

なお、平成12年建設省告示第1458号において適用除外となっている部位に対する風圧力に関する資料として、(-社)日本サッシ協会では、実績に基づき旧建築基準法施行令第87条及び旧昭和46年建設省告示第109号に規定されていた計算式を示している。

(b)「標仕」では、複層ガラスを用いる引違い、片引き及び上げ下げ形式の建具は、ガラス質量の中心が障子中心に近く安定性の高い枠見込み100mmの建具とされている。

また、「標仕」では規定されていないが、複層ガラスを用いた枠見込み70mmの引違い及び片引きの建具も市販されている。

16.2.3 材 料

(a) アルミニウム押出形材

「標仕」16.2.3 (a)(1)で定めているJIS H 4100(アルミニウム及びアルミニウム合金の押出形材)の中で最も一般的な形材は、A6063Sである。

(b) アルミニウム板

「標仕」16.2.3(a)(2)で定めているJIS H 4000(アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条)の中で最も一般的な板材は、A1100P-H14・H16・H24、A1200P-H24、A5005P- H14・H34であり建築用として使われている。

(c) 通常使用するアルミニウム合金の種類、強さ等を表16.2.1に示す。

表16.2.1 通常使用するアルミニウム合金の種類
    (JIS H 4000 : 2006及びH 4100: 2006)

(d) 補強材、力骨、アンカー等

鋼材は小さい断面で強度が得られるので、補強材として見え隠れ部分に使用する。接触腐食を起こすおそれがあるので防食処理をする必要がある(「標仕」14.1.3(c) 参照)。

アルミニウム合金に接触しても安全な金属は、亜鉛、クロム、ステンレス(ただし、アルミニウム合金に比べてステンレスの体積が小さい場合)等である。銅、銅合金等は、直接接触していなくても、銅の上を伝った水が接触するだけで強い腐食が起こることもある。

(e) 気密材及び擦れ合う部分、振れ止め、戸当りの類

合成ゴム(クロロプレンゴム等)、合成樹脂(塩化ビニル、ポリアミド等)の有機質のものが使われている。

擦れ合う部分(戸車)、振れ止め(面外方向への振れを防止してスムーズに作動させるために障子に取り付ける小部品)、戸当り(アルミ形材どうしが直接ぶつかるのを防止するため障子又は枠に取り付ける小部品)を、「標仕」では、従来、「原則として、ポリアミド製」としていたが、引張強さ、耐衝撃性、耐摩耗性等の性能をもった合成樹脂が開発され、適材適所で使用されてきているため、平成25年版「標仕」では、「耐久性を有し使用箇所に適したもの」とされた。

また、接触や衝突により損傷を受けやすい部品については、建具製作所では交換部品を用意している。

(f) 網戸等

(1) 防虫網の材料には、合成樹脂、ガラス繊維入り合成樹脂、ステンレス(SUS316)等があるが、一般には合成樹脂である。平成25年版「標仕」では、合成樹脂の線径が0.25mm以上であることが明確にされた。

(2) ガラス繊維入り合成樹脂製は、ガラス繊維に塩化ビニルを被覆して織ってあり、熱による伸縮は少ないが、運搬中にたるみが生じやすい。

(3) ステンレス製は、排気ガス、塩害等により発錆することがある。また、ステンレス網の張付けの際、アルミニウム形材に傷をつけやすく、傷部分がステンレス網と接触すると、環境によってはアルミニウム形材が腐食する場合がある。

(4) 網戸の主な部分に使用する材料及び付属部品は、表16.2.2に示す規格又はこれと同等以上の品質をもつものとし、それぞれの機能を果たすのに十分な強さがあり、かつ、接触腐食を起こさないもの、又は腐食防止処理を施したものとする。

表16.2.2 網戸に使用する材料等の規格

(5) 網戸の加工及び工作は、次による。

(i)  押出形材及び成形板材は、著しいひずみがないこと。
(ii) かまち及び桟の接合は、強固とする。
(iii) 補強材等にアルミニウム合金以外のものを使用する場合には、接触腐食防止処埋を施したものとする。

(iv) かまち及び桟の材料の表面には、JIS H 8602(アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化塗装複合皮膜)に規定する陽極酸化塗装複合皮膜の種類B又は同等以上の性能をもつ表面処理を施したものを使用する。

(6) 防鳥網

外部に面するがらりには、小鳥の巣作り等を防止するために防鳥網を張ることもある。

(g) 小ねじは、ステンレスが多く使われており、高力アルミニウム合金は、現在ほとんど使われていない。

(h) 外部建具の周囲に充填するモルタルに使用する防水剤は、塩化カルシウム系等金属の腐食を促進するものでないこと。市販の防水剤には、この種のものが比較的多いので注烈する。

なお、充填モルタルの砂の塩分含有量を「標仕」でNaCl換算0.04%(質量比)以下と規定しており、海砂等は、除塩する。塩化物による腐食は、保護塗装でも防げない場合が多い。

16.2.4 形状及び仕上げ

(a) アルミニウム板を加工して、枠、かまち、水切、ぜん板及び額縁等に使用する場合の厚さは1.5mm以上とするが、形状、寸法補強板の有無.モルタル充填の施工条件等を考慮して板厚を決める必要がある。

アルミニウム押出形材の水切の既製品としては、働き幅 100、110、120mm程度がある(図16.2.6参照)。

(b) 枠見込み70mmの製品は、鉄筋コンクリート用が主であるが、ALC用、鉄骨用が用意されているものもある。枠見込み100mmの製品は、一般に鉄筋コンクリート用のものが多い。

(c) 構造

「標仕」で、枠見込み70mmのサッシの引違い及び片引きの障子において、グレイジングチャンネルが使用できる構造とされているのは、単板ガラスを想定したものである。複層ガラスには適用しない。

なお、ガスケットは、JIS A 5756(建築用ガスケット)に規定されるガスケットがよい。

(d) 表面処理

(1) 「標仕」表14.2.1に建具に使用するアルミニウム材の表面処理の種別が示されているが、そのなかでJIS H 8602(アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化塗装複合皮膜)が2010年に改正され、仕様規定から性能規定になったことにより、平成25年版「標仕」では、陽極酸化塗装複合皮膜の種類がB(一般的な環境の屋外)とされた。種類BはJISにおける複合耐食性及び耐候性の性能のグレードを示している。

また、「標仕」16.2.4(d)において、種別及び標準色・特注色の別等は特記によるとされている。

(2) 表面処理の工程は、ほとんど素材の段階で行われる。見え掛り加工小口等は必要に応じて塗装で補修することもある。

(3) 沿岸地域で、アルミニウム製建具の腐食を防ぐには、清掃が最も有効である。清掃を怠ると、防食の効果が期待できないので、設計面でも清掃のしやすさの配慮が必要であり、更に、施設管理者への十分な説明も重要である。

(c) 絶縁処埋

(1) ここでいう絶縁処理とは、アルミニウム材と周囲に充填するモルタルとの絶縁及びアルミニウム材と鋼材等との接触腐食を避けるための絶縁をいう(14.1.3(b) 参照)。

(2) 絶縁用の塗料は、一般の建具では、建具表面に塗装されるものと同一材とする。 JIS H 8602(アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化塗装複合皮膜)に規定される「種類B」の塗膜は、建具表面及び裏面が同時に塗装されるため絶縁処理も兼ねている。

表面処理が「標仕」表14.2.1のA種及びC種では、アルカリ性に接する箇所は絶縁処埋を行う必要がある。

(f) 出入口のくつずりにステンレスを使用する場合は、「標仕」16.4.3(b)及び「標仕」表16.4.2による。

なお、くつずりに折曲げステンレス板を取り付け、レールとする場合の例を図16.2.1 に示す。


図16.2.1 くつずりとレール

(g) 製品の寸法許容差は、JIS A 4702 (ドアセット)又はJIS A 4706(サッシ)により、工場組立完成品に対するものとする。

(h) 結露水の処理は、建具から外へ排水する方法と結露水をためる方法があるが、障子や枠及びガラスの種類等、地域条件によって一律に規定できないため、特記となっている。また、寒冷地等で外部に排水すると結露水が凍結し問題となる場合もあるため、地域条件を踏まえ結露受け等の対応を検討する。結露水の処理の一例を図16.2.2 に示す。


図 6.2.2 結露水の処理の一例

16.2.5 工 法

(a) 加工及び組立

(1) 一般に建具は、製品の形で現場へ搬入する。特殊な寸法等のものは、現楊で組立を行う場合もある。

(2) 建具の隅の納まりは種々あるが、一般に素材を仕口の形に合わせて加工し突き付け、小ねじ留めとしている。そのため、接合は強固であるが、動きやすく、現楊で取り付けるまでは全体の形も不安定なので、取扱いは十分に注意する。
突付け部は、漏水防止のためのシーリング材又はシート状の止水材を使用する。

小ねじの位置は、できるだけ雨掛りを避けるが、やむを得ない場合でも、水がたまりやすい部分は、避けることが重要である。仕口の一例を図16.2.3に示す。


図16.2.3 仕口の組立例

(b) 取付け

(1) 取付けの際には、養生材をできるだけ残して、やむを得ず取り除いた養生材は、取付けが終わったのちに、できるだけ早く復旧する。

周囲の仕上げに支障のある養生材は、仕上げに先立ち取り除く。

(2) 取付け基準

(i) 取付けには、基準墨(心墨、陸墨、逃げ墨)を出し、図16.2.4のように建具にも基準墨に合う位置にマークして位置を調整する。マークのない場合は、一般に枠面で測定する。連窓等陸墨が出せない場合は、 レベルを用いたり、ピアノ線を張り基準とする。

(ii) 取付け精度は、許容差を ±2mm程度とする。


図16.2.4 建具取付け用墨とマーク

(3) 鉄筋コンクリート造への取付け

(i) 一般に市販されている躯体付けアンカーには、長さの短いものがあるので、なるべく長いものを使用する。躯体付けアンカーを型枠に取り付け、コンクリート中に埋め込む(打ち込む)。

(ii) 建具の取付けは、くさび等で仮留めし位置及び形状を正確に決め、躯体付けアンカーに溶接して本取付けを行う。仮留めのままでは動きやすいので、できるだけ早い時期に固定する。

建具アンカー以外の部分(枠材等)に溶接してはならない。また、溶接スパッタ等が枠材に付着すると、アルミニウムの表面仕上げに悪影響を及ぼすため養生を行う。

(iii) 外部回りの建具では、枠回りにモルタルを充填する際、仮留め用のくさびは、必ず取り除かなければならない。

(iv) 出入口、点検口等のくつずり、下枠等で取付け前にあらかじめモルタルを充填しておく必要のある箇所は、図16.2.5のように行う。


図16.2.5 くつずりのモルタル充填

(v) シーリング材の施工は、プライマー及びバックアップ材を使用するが、挙動の少ない鉄筋コンクリート造のサッシ回りでは、バックアップ材を省略し、三面接着としてもよい(「標仕」9.7.4(b)参照)。「標仕」9.7.3の目地の深さの確保は、高い施工精度が必要なので注意する。

また、プライマーは、施工箇所の下地材料(被着体)に適したものとする。

(4) 鉄骨造の場合の取付け

(i) 鉄骨下地と建具枠の四周の間にくさび、平板等をはさみ込んで建具の動きを固定し、溶接又は小ねじ留め等を行う。

溶接箇所は、スパッタ等を収り除き、「標仕」表18.3.2のA種の錆止め塗料を塗り付ける。

建具アンカー以外の部分(枠材等)に溶接してはならない。また、溶接スパッタ等が枠材に付着すると、アルミニウムの表面仕上げに悪影響を及ぼすため養生する。

(ii) シーリング材の施工は、プライマー及びバックアップ材を用い、二面接着とする。プライマーは、施工箇所の下地材料に適したものとする。

(c) 漏水防止

(1) 鉄筋コンクリート造の場合

(i) 漏水防止のためには、抱き納まりがよい。抱き納まりは、壁面を流れ落ちる水膜が途切れ、サッシヘの雨掛りが少ないなど漏水防止に有効である。

面付け納まりは、壁面を流れ落ちる水膜が切れずに直接サッシに掛かるため、不利な形態であり、建具周囲、特に上枠には設計上の配慮が必要である。

(ii) 抱き納まり

抱き納まりのサッシの例を図16.2.6に示す。

抱き寸法は、配筋やコンクリートの施工性とサッシ取付け用欠き込み部のひび割れや欠け防止を考慮した寸法とする。また、開口下面は、1/10程度の外勾配か、12mm程度の立上りを設け、金属製水切を設けるのがよい。勾配や立上りをより大きくすると、躯体コンクリートと充填モルタルとの界面がサッシ下枠の水切よりはみ出すので望ましくない。サッシ回りのモルタルの確実な充填のためには、開口上部と左右には45mm程度、下部は75mm程度の隙間を設け、水切り板とサッシ下枠部を二度に分けてモルタル詰めするとよい。そのため、開口部の型枠を正確に組むことが重要である。モルタル充填後に、外部サッシ枠と躯体コンクリートとの間に直接シーリング材を施すが、シーリング材の接着面にモルタルが付着していないこと、更にはモルタルがはみ出していないことを確認する。

また、建具取付け後、壁面がぬれるような雨の時には、建具周辺から漏水がないか調査し、漏水があれば補修する。不完全なままタイル張り等を仕上げるとその後の補修は難しくなる。


図16.2.6 抱き納まりのサッシの例(建築工事標準詳細図より)

(iii) 面付け納まり

開口下面の形状やモルタル充填のための隙間は、抱き納まりと同様である。

タイル張り仕上げでは、外部のシーリング材(一次シーリング)をサッシ枠 とタイル間に施すこととなり、タイル裏面を伝った雨水には無防備である。そのため、サッシと躯体コンクリートとの間を直接つなぐシーリング材(二次シーリング)が必要となり、二重シーリング工法が特記されていなければならない。枠周囲の躯体コンクリートをはつると、この二次シーリングが不可能になるので、はつりは避けなければならない。

(2) 鉄骨造の場合の取付け
外部のシーリング材をサッシ枠と壁材との間に施すこととなるが、モルタル充填がなく、シーリング材に欠陥が生じると、直接漏水に至る危険がある。そのため、二重シーリング工法が特記されていることが望ましい。

16章 建具工事 3節 樹脂製建具

16章 建具工事

3節 樹脂製建具

16.3.1 適用範囲

(a) 平成25年版「標仕」では、3節に「樹脂製建具」が新しく規定された。樹脂製建具は、寒冷地において断熱性の高い建具として普及してきている。

樹脂製建具の主要構成材料である無可塑ポリ塩化ビニルの主な特徴は、優れた断熱性(熱伝導率がアルミニウムの約1/1,000)と耐塩害性であり、樹脂形材については、2010年に JIS A 5558(無可塑ポリ塩化ビニル製建具用形材)が制定されている。

「標仕」で規定している樹脂製建具は、建具製作所が、既製の無可塑ポリ塩化ビニル製建具用形材及び金具その他の材料を用いて、通常製作している建具で、寸法はその建具製作所が定めた製作範囲とし、カタログ等で枠の形状、断面寸法、金具仕様が指定されている標準建具(既製品)を対象としており発注の際、断面寸法や金物等並びに仕様及び性能が要求され、新形の形材を使用する特別注文建具(オーダー製品)は対象としていない。

(b) 樹脂製建具工事の作業の流れを図16.3.1に示す。


図16.3.1 樹脂製建具工事の作業の流れ

(c) 樹脂製建具は、原則として、建具の加工及び組立からガラスの組込みまで一貫して建具製作所にて行うことで、性能・品質を確保している。

建具の品質保証、建具製作所の責任の明確化及び改修や維持管理という意味から、建具に建具製作所名等を表示させるのがよい。

(d) 「標仕」では外部に面する建具を対象としている。

16.3.2 性能及び構造

(a) 建具の性能及び構造は、JIS A 4702 (ドアセット)又はJIS A 4706(サッシ)に規定されている。「標仕」表16.3.1は、事務庁舎等に通常使用する外部に面する建具の性能等級を組み合わせて表したもので、強さのグレードで表すと、A種は耐風圧性能 2,000Pa、B種は同 2,400Pa、C種は同 2,800Paとなる。

なお、平成12年建設省告示策1458号において適用除外となっている部位に対する風圧力に関する資料として、(-社)日本サッシ協会では実績に基づき旧建築基準法施行令第87条及び旧昭和46年建設省告示第109号に規定されていた計算式を示している。

(b) 枠の見込み寸法は、要求される性能や建具寸法により決まることから、「標仕」では、特記によるとされている。

樹脂製建具は複層ガラスの使用を前提としているため、枠の見込み寸法は、一般的には、アルミニウム製建具より大きいものとなり、国内で流通している製品では、スイング系で 60~80mm程度、スライディング系で100~125mm程度である。

(c) 「標仕」で樹脂製建具に要求される断熱性能は、H-4 等級及び H-5等級であるが、JIS A 4702 又は JIS A 4706に規定されている断熱性能等級の最高グレードである H-5等級(0.430m2・K/W以上)を超える熱貫流抵抗値を保持する製品もある。 H-5 等級を超える性能が要求される場合は、特記にて熱貫流抵抗値が指定される。

(d) 樹脂製建具の防火設備は、国土交通大臣の認定を受けた製品を使用する。

16.3.3 材 料

(a) 樹脂形材

「標仕」16.3.3(a)で規定している JIS A 5558(無可塑ポリ塩化ビニル製建具用形材)の材料の性能に適合したものとされている。樹脂形材の材料の性能を表 16.3.1に示す。

表16.3.1 樹脂形材の材料の性能(JIS A 5558 : 2010)

(b) 補強材、力骨、アンカー等

鋼材は、小さい断面で強度が得られるので、補強材として主に樹脂形材の内部に使用される。排水経路上に補強材として使用する場合には、防錆処置を施す必要がある。また、補強材とそれを固定するねじに接触腐食を起こすおそれがある箇所には、防食処理をする必要がある(「標仕」14.1.3(c)参照)。

(c) 気密材及び擦れ合う部分、振れ止め、戸当りの類

「標仕」では、耐久性を有し使用箇所に適したものとされており、一般的には、合成ゴム(クロロプレンゴム等)、合成樹脂(塩化ビニル、ポリアミド等)の有機質のものが使われている。また、接触や衝突により損傷を受けやすい部品については、建具製作所では交換部品を用意している。

(d) 網戸等

樹脂製建具に用いる網戸のかまち及び桟に用いる材料は、アルミニウム製建具と同様、アルミニウム合金である。

なお、かまち及び桟の色は樹脂製建具の色に合わせることが多い。

(e) ガラス

(1) ガラスのはめ込みは、原則として、建具製作所にて行い、性能・品質を担保する。

(2) ガラスは、複層ガラスを用いることを原則としているが、遮音性能及び断熱性能を要求されない場合で、単板ガラス又はパネルを用いる場合は特記によるとされている。

(3) 複層ガラスのガラス厚は、最小のガラス板厚( 3mm以上)及び中間層( 12mm以上)を想定し、18mm以上としている。また、複層ガラスは、中間層の厚さのほか、中間層の気体の種類、ガラスの種類によっても断熱性能が異なる。

(4) 遮音性を期待する場合(T-2等級)の複層ガラスは、低音域の遮音低下防止のため、2枚のガラス厚を異なる厚さにすることが望ましい。

(f) グレイジングガスケット

ガラスのはめ込みには、一般的に、JIS A 5756(建築用ガスケット)に準ずるグレイジングガスケットやグレイジングビードを用いる。グレイジングチャンネルやシーリング材は、通常用いない。

16.3.4 形状及び仕上げ

(a) ガラス溝は、一般的には押縁構造とする。

(b) 主要構成材料である無可塑ポリ塩化ビニルは、その組成の40%が石油、60%が工業塩であることから、金属とは異なり、腐食の要因となる金属水酸化物が発生しないため、表面処理をする必要はない。

(c) 「標仕」では、枠・かまちの接合部は、溶接接合としている。

(d) 形材は、通常、押出前に樹脂に顔料を練り込んで色を出している。標準色は一般的には白色である。特注色は、無可塑ポリ塩化ビニル材料とそれ以外の材料を共押出成形(2層押出し)することによって積層させる方法で製作する。特注色の中でも、黒・ブラウン・シルバ一色は市場での汎用性が高いことから、建具製作所では在庫をもっている場合が多い。ほかの色も製作は可能であるが、調色(マスターバッチの製作)が必要となるため、樹脂製建具の製作に当たっては、調色にかかる期間及びコストを考慮する必要がある。

16.3.5 工 法

(a) 加工及び組立

一般に、ガラス及び押縁を建具製作所にてはめ込んだのち、建築現場へ搬送する。建具製作所が定めた搬送における製品重量を超えるものについては、現場でガラス及び押縁をはめ込む場合もある。

(b) 取付け

(1) 取付けの際は、養生材をできるだけ残して、やむを得ず取り除いた養生材は、取付けが終わったのちにできるだけ早く復旧する。周囲の仕上げに支障のある養生材は、仕上げに先立ち取り除く。

(2) 枠等のアンカーのピッチは、防火認定の条件及び枠の変形防止を考慮し400mm以下としている。

(3) 取付け基準

(i) 取付けには、基準墨(心墨、陸墨、逃げ墨)を出し、図16.2.4のように建具にも基準墨に合う位置にマークをして位置を調整する。マークのない場合は、一般に枠面で測定する。連窓等陸墨が出せない場合は、レベルを用いたりピアノ線を張ったりして基準とする。取付け精度は、許容差を± 2mm程度とする。

(ii) 建具寸法が大きい場合や、枠と躯体の間隔寸法が大きい場合には、枠の湾曲、垂下がり、はらみ、つづみ等を防止するため、図16.3.2のように枠に切張りを行う。


 図16.3.2 枠の切張り

(4) 鉄筋コンクリート造及び鉄骨造への取付け

鉄筋コンクリート造及び鉄骨造へ取る付ける場合は、建具アンカー溶接時に溶断を行ってはならない。また、溶接スパッタが枠材に付着しないよう、十分な養生を行う。溶接スパッタが枠材に付着すると枠材表面に悪影響(焦げ等)を及ぼし、復旧が困難となる。

(c) 樹脂製建具の清掃方法

(1) 樹脂製建具の清掃方法を表16.3.2に、注意事項を次に示す。

(2) 磨き粉、たわし等の硬いものは、樹脂を傷つけるため使用しない。

(3) 次の有機溶剤等は、枠材に悪影響を及ぼす場合があるため使用しない。

(i) ハロゲン化炭化水素系溶剤(クロロホルム、塩化メチレン等)
(ii) ケトン系溶剤(アセトン、メチルエチルケトン等)
(iii) 芳香族系溶剤(ベンゼン、トルエン、キシレン等)
(iv) アルコール系溶剤(メチルアルコール、エチレンアルコール、その他のアルコール類)
(v) 酸性物質(塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、蟻酸等)

(vi) その他(シンナー等)

(4) 外装材の酸洗い等の清掃時には、清掃液が建具に付着しないよう十分な養生を施す。

表16.3.2 樹脂製建具の清掃方法

16章 建具工事 4節 鋼製建具

16章 建具工事

4節 鋼製建具

16.4.1 適用範囲

「標仕」では、主として事務庁舎の出入口に使用する標準的な建具(幅950mm × 高さ2,400mm程度以内)で、戸は片面又は両面を平らな鋼板張りとしたフラッシュ戸又はかまち戸によるドアセット及び標準型鋼製建具を対象としている。したがって、標準と著しく相違する建具については金物を含めて、適切な補強等の処置が必要である。

建具の幅950mm程度と想定しているのは、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(以下「バリアフリー新法」という。)の誘導基準(有効幅で 900mm以上)を採用しているためである。また、高さ2,400mm程度と想定しているのは、最近の建物では解放的な空間づくりから、建具を2.400mm程度まで高くすることが多くなっているためである。

16.4.2 性能及び構造

(a) 外部に面する建具の耐風圧性は16.1.7(a)(1)及び16.2.2を参照する。

(b) 気密性、水密性が定められている簡易気密型ドアセットとは、気密材が装着してあり、「標仕」表16.4.1 による性能を満足するものをいう。

(c) がらり付きドアセットは、換気を主目的としたもので、一般に気密性、水密性との両立は構造上不可能である。

(d) 遮音性は、気密材を装着した枠にグラスウール等を充填した戸の場合、T-1(旧25等級)~T-2(旧30等級)等級程度である。

なお、T-2等級を超える遮音性を必要とする場合は、簡易気密型ドアセットでは対応できないので、グレモンハンドル等を使用したエアタイトドアセット(PAT)又は、最近、よく使われているマグネット気密ゴムを使ったドアセットを使用するとよい。

(e) 耐震性は、JIS A 1521(片開きドアセットの面内変形追随性試験方法)の規定があり、JIS A 4702 (ドアセット)に耐震ドアセットとしてD-1(1/300rad)、D-2 (1/150rad)、 D-3(1//120rad)の等級がある。また、耐震設計基準として国土交通省大臣官房官庁営繕部監修「官庁施設の総合耐震計画基準及び同解説」に、耐震性を配慮したドアセットについて記載されているので参照するとよい。

(f) 鋼製建具には.「標仕」で要求する品質を満たすものとして (-社)公共建築協会の「建築材科・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4 (e)参照)で評価した製品があるので参考にするとよい。

16.4.3 材 料

(a) 鋼板類

(1) 鋼板は、特記がなければ JIS G 3302(溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯)により、めっきの付着量は標準でZ12又はF12とされていた。

最近、臨海地区の副都心化が急速に進んだことにより、内陸部の事務庁舎等を想定して「標仕」で規定していた溶融亜鉛めっき鋼板(JIS G 3302)では、耐食性が劣るために、錆が発生して問題になることが多くなっている。

平成25年版「標仕」では、これまでの溶融亜鉛めっき鋼板に比べて耐食性に優れた溶融亜鉛ー5%アルミニウム合金めっき鋼板及び鋼帯(JIS G 3317)が規定された。めっき付着量は標準でY08とされ、溶融亜鉛めっき鋼板より少ないが、約2倍の耐食性がある。また、市販されているものは、環境に配慮したクロムフリー化成処理が施されている。このほか、「標仕」では規定されていないが、耐食性に優れた溶融亜鉛ーアルミニウムーマグネシウム合金めっき鋼板及び鋼帯(JIS G 3323)のJISが新たに制定されている。

なお、JIS G 3321(溶融55%アルミニウムー亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯)については、耐候性は良いが、曲げ加工や溶接性等が悪く、鋼製建具には不向きなため規定されていない。

(2) 出入口のくつずりはステンレス製(16.6.3参照)とし、くつずりにレールを取り付ける場合は、16.2.4(f)を参照する。

(3) 形鋼の類は、アングルドアを想定しているので、主として形鋼、平鋼及び厚い鋼板が含まれる。

(b) その他

(1) 上吊り引戸の下枠(ガイドレール等)は、頻繁に擦れ合うことにより傷みやすいため「標仕」16.4.3 (c)ではステンレスとしている。

(2) 気密材には種々なものがあり、クロロプレンゴム発泡体(表皮付き)もよく使用されるが、皮膜が弱く破れやすいものもあるので注意する。また、はがれやすいので取付け方法にも注意する。

(3) 戸に使用する構造用接合テープは、表16.4.1に示すJIS Z 1541(超強力両面粘着テープ)に適合したものを使用する。

なお、焼付け塗装の場合は断熱仕様の1号、常温塗装の場合は2号を使用する。

表16.4.1 超強力両面粘着テープの規格(JIS Z 1541 : 2009)

16.4.4 形状及び仕上げ

(a) 出入口の枠類で、戸1枚の有効開口幅が950mm、かつ、高さが2,400mm以下のものは、内部側・外部側ともに板厚1.6mmが必要である。また、同様にくつずりの板厚は1.5mm、戸の中骨の板厚は1.6mmが必要である。

なお、「標仕」では、一般的な建物を想定しているため、有効開口幅950mm、かつ、有効高さを2,400mm以下で板厚を規定している。これを超えるような建具は、本来設計図書に特記されることが前提であるが、特記がない場合には、建具製作所の仕様によることとなる。

(b) 製品の寸法許容差は、工場組立完了後の寸法に対するものとする。

(c) 外部に面する建具のガラス溝の寸法及び形状は「標仕」表16.14.1によるものとするが、一方、押縁等でガラスをやり返ししてはめ込まなければならない場合は、施工性を考慮して溝の深さを決める。ただし、防火戸の個別認定を受けた建具の場合は,この寸法も規定されているので注意する。

(d) 塗 装

(1) 下地量整

(i) 形鋼の場合は「標仕」表18.2.2により素地ごしらえを行う。

(ii) 亜鉛めっき鋼板の場合は、鋼板製造所で、「標仕」表18.2.3工程3のりん酸塩処理後水洗い乾燥又はクロム酸処理後乾燥の二つの処理のみが行われていた。

しかし、最近では、鋼板製造所でも環境に配慮して、有害化学物質の六価クロムを含有しないクロメートフリー処理が製品化されつつあるが、平成25年版「標仕」では、表18.2.3工程3にクロム酸処理とクロメートフリー処理が併記されている。地球環境を守る見地から六価クロムの排除が世界規模で進められており、クロム酸処理は廃止していく時期にきている。したがって、平成 28年版「標仕」では、更に一歩進んでクロメートフリー処理への一本化が必要とされている。

(iii) 「標仕」表18.2.2及び表18.2.3の工程2油類除去では、B種、C種に溶剤ぶきを規定しているが、溶剤から発生する化学物質がもたらす健康や環境への悪影響や近くで溶接作業を行う場合の爆発事故の報告もあり、最近ではシンナー等の溶剤に代わる代替洗浄剤としてアルカリ系脱脂洗浄剤が開発され利用されている。

(2)錆止め塗料塗り

形鋼の場合は「標仕」表18.3.1の鉄鋼面錆止め塗料A種を塗る。ただし、つや有合成樹脂エマルションペイント塗りの場合は、B種を塗る。

16.4.5 工 法

(a) 枠等の組み方

(1) 枠等の組み方の例を図16.4.1から図16.4.4に示す。

上部の組み方は、図16.4.1の留め(イ) 又は胴付き(ロ) による溶接のほか、溶接研磨による損傷が少なく、塗装後の仕上りの美しい面落ち(ハ)でもよい。

(ロ) の組み方で吊り金具にピボットヒンジを使用する場合は、縦枠の上に上枠が伸びるいわゆる上枠伸ばし(ニ)となる。

(2) 「標仕」表16.4.3には、屋内での枠の加工及び組立が必要な場合は、溶接に代えて小ねじ留め(裏板厚さ2.3mm以上)によることができるとしている。この理由は、工場で加工し、現楊で組立しなければならない建具を想定しており、工場で加工及び組立できる建具は、溶接とするのがよい。

(3) 「標仕」表16.4.3の金物取合い補強板とは、ねじで固定する部分の強度を担保するために設ける補強材を指し、錠本体ケースカバー等は製作所の仕様による。

(4) 亜鉛めっき鋼板の場合は、特記がなければ、「標仕」表18.3.2のA種、JIS K 5629(鉛酸カルシウムさび止めペイント)を塗る。

なお、溶接部や損傷部等は、塗装に先立ち、錆止め塗料と同一の塗料で補修する。


図16.4.1 枠類の組み方

 


図16.4.2 くつずりの組み方

 


図16.4.3 方立の組み方

 


図16.4.4 無目の組み方

(b) 戸の組み方
フラッシュ戸では、中骨は間隔 300mm以下に配置する。外部に面する戸は、下部を除き三方の見込み部を表面板で包む(三方曲げ)。内部に面する戸は、上下部を除き二方の見込み部を表面板で包む(二方曲げ)。表面板と中骨の固定は、溶接又は構造用接合テープにより確実に接合する。

溶接痕は、表面を平滑に研磨仕上げし、塗装に先立ち、錆止め塗料と同一の塗料で補修する。

(c) 鋼板の曲げ寸法の限度は、表16.4.2のとおりである。

表16.4.2 端部曲げ寸法の限度

(d) 取付けは、16.2.5(b)に準ずる。

16.4.6 標準型鋼製建具

(a) 標準型鋼製建具と標準型鋼製軽量建具とは、公共工事のコスト縮減を図るために、官庁施設設計研究会(平成12年)が設定したものである。

寸法や金物の標準化により、打合せによる決定まで間接コストと建具の作図、加工等の直接コストを軽減し、更にバリアフリ一新法を考慮して幅が6種類、高さが 2,000mmと2,100mmの2種類が設定されている。戸の形状・寸法は表16.4.3のとおりであり、通常の事務庁舎等の大部分に適用が可能である。

(b) 錠、ドアクローザーは、主要製作所で「公共工事標準型」として、一般品と区別して取り扱っている。

表16.4.3 標準型鋼製建具と標準型鋼製軽量建具一覧表

16章 建具工事 5節 鋼製軽量建具

16章 建具工事

5節 鋼製軽量建具

16.5.1 適用範囲

「標仕」では、屋内の出入口に使用する標準的な建具(幅 950mm × 高さ2,400mm程度)を対象としている。なお、戸見込み寸法は 35mm以上である。

建具の幅 950mm程度及び高さ2,400mm程度と想定しているのは、16.4.1と同様である。

16.5.2 性能及び構造

(a) 「標仕」16.5.2 (b)で水密性が規定されていないのは、取付け場所を屋内に限定しているため、雨水等の影響を受けないからである。

(b) 遮音性は、気密材が装着されている枠を使用する場合で、透過損失15〜20dB(500Hz)程度である。

(c) 鋼製軽量建具には、「標仕」で要求する品質を満たすものとして、(-社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4(e)参照)で評価した製品があるので参考にするとよい。

16.5.3 材 料

(a) 鋼板類

(1) 鋼板は、亜鉛めっき鋼板でめっき付着量は、「標仕」16.5.3(a)(1)を満足すればよい。

(2) 出入口のくつずりはステンレス製(16.6.3参照)とし、くつずりにレールを取り付ける場合は、16.2.4 (f)を参照する。

(3) ビニル被覆鋼板及びカラー鋼板は、表面仕上げした材料であり、現場での塗装を必要とせず工期の短縮に寄与する。平成25年版「標仕」では、ビニル被覆鋼板及びカラー鋼板の下地鋼板のめっき付着量について、(1)の亜鉛めっき鋼板と整合させ、F04をF06に、E16をE24とされた。

(4) カラー鋼板は、PCM(プレコートメタル)とも呼ばれ、鋼板製作所で仕上げ塗装された材料である。品質が安定しており、ビニル被覆鋼板同様に工期の短縮と塗替え等のメンテナンスが不要であるなどの利点があるが、ロール発注のため、色調は建具製作所の標準色となる。

現在、内装材に適した電気亜鉛めっき鋼板を下地としたカラー鋼板のJISは制定されていない。そのため、「標仕」では下地の電気亜鉛めっき鋼板のめっき付着量を規定している。

また、平成25年版「標仕」では、耐食性に優れた JIS G 3317(溶融亜鉛ー5%アルミニウム合金めっき鋼板及び鋼帯)及びJIS G 3321(溶融55%アルミニウムー亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯)は、鋼製軽量建具が屋内の使用に限定されているため、高い耐食性は必要ないことから削除された。

(b) その他

水酸化アルミ無機シートコアとは、紙状無機質材料で作られたコアを水酸化アルミニウム溶解液に浸したのち、乾燥させ燃えにくくした製品である。

16.5.4 形状及び仕上げ

(a) 表面板の厚さは、標準では 0.6mmに統一されている。また、召合せ、縦小口包み板等も 0.6mm以上であるため、表面板との意匠合わせが可能である。

(b) 出入口の枠類で、丁番、ピボットヒンジ及びドアクローザー等が取り付く部分には、2.3mmの補強板が必要である。

(c) 接着剤を使用する表面板の裏面は、接着性が悪くなるので、錆止め塗料塗りは行わない。

(d) 内装建具であるため、ガラス溝の寸法及び形状は建具製作所の仕様でよい。

(e) くつずりの板厚は、鋼製建具と同様に1.5mmである。

16.5.5 工 法

{a) 枠等の組み方は、16.4.5 (a)による。

(b) 内装建具であるため、戸の組み方は、建具製作所の仕様でよい。

また、戸の順位調整器のローラー等が接する部分及び錠のハンドル部等へこみ防止の補強板は、厚さ1.6mm以上の鋼板を使用する。

(c) 取付けは.16.2.5(b)に準ずる。

16.5.6 標準型鋼製軽量建具

16.4.6 標準型鋼製建具により、以下の表16.4.3による。

表16.4.3 標準型鋼製建具と標準型鋼製軽量建具一覧表

16章 建具工事 6節 ステンレス製建具

16章 建具工事

6節 ステンレス製建具

16.6.1 適用範囲

この節では、事務庁舎等の主な出入口等に使用する建具を対象としている。

16.6.2 性能及び構造

性能については、16章 1節及び 16.4.2を参照する。

なお、ステンレス製建具には、「標仕」で要求する品質を満たすものとして、(-社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4 (e)参照)で評価した製品があるので参考にするとよい。

16.6.3 材 料

「標仕」では、ステンレス鋼板はニッケルを含むオーステナイト系のSUS304を標準としていたが、これは、SUS304が加工性、耐食性及び経済性の均衡の取れた材料であったからである。しかし、最近では、世界的にニッケルを始め希少金属(レアメタル)が激減し入手に支障も出てきたため、平成22年版「標仕」に、JIS G 4305(冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯)に規定されているフェライト系(ニッケルを含まない。)のSUS430J1L及びSUS430の2種類が標準として追加された。

更に、平成22年5月には、SUS304と同等の耐食性を有するフェライト系のSUS443J1がJIS G 4035に追加されたことにより、平成25年版「標仕」にSUS443J1が規定された。

SUS430J1L及びSUS443J1は、SUS304に近い耐食性を有するため、外部や水回りに使用し、SUS430は高い耐食性を必要としない屋内の建具等に使用するというように使い分けをするとよい。

なお、更に耐食性を要求される塩害地向けには、SUS316が使われる場合がある。

16.6.4 形状及び仕上げ

(a) 裏板の板原は1.6mm以上、補強板の類の板厚は2.3mm以上である。

ステンレスに接触する鋼材は、ステンレスの腐食の原因となることがあるので、裏板、補強板等の重要な補強材は、錆止め塗装を行う必要がある。

なお、両面フラッシュ戸の中骨、力骨の類は、「標仕」18.3.3(f)(4)より塗装されない。また、超強力両面粘着テープが張り付けられる部分も、接着強度が低下するため塗装されない。

(b) 表面仕上げをHL以外とする場合は、表14.2.1[ステンレス板の表面仕上げ]を参照されたい。

(c) ガラス溝の寸法及び形状は.16.4.4(c)による。

16.6.5 工 法

(a) 普通曲げとは、特に処置しない普通の曲げ方である。角出し曲げとは、図16.6.1に示す方法で曲げるので、角が鋭くなり意匠的にはよいが、強度を著しく弱めるので、裏板を用いて補強するため高価である。その他、一部にはロール成形により曲げる方法も行われている。

なお、角出し曲げ加工ができる板厚は、1.5mm以上であり、一般に表16.6.1による3種類の加工方法が行われている。

ただし、a角については割れが生じやすいので注意を要する。一般的にはb角・c角を用いる方がよい。

また、板厚の異なる組合せの場合は、出来ばえをそろえるため、切込み後の残り寸法を1.5mmの板に合わせる場合が多い。


図16.6.1 角出し曲げの方法

表16.6.1 角出し曲げ加工の種類

(b) 取付けは、16.2.5 (b)に準じる。