9節 砂利敷き
22.9.1 一般事項
22.9.2 材 料
(2) 特に景観を重視する場合には、表面を覆う石の色や形状を吟味して特記により指定する場合もある。
22.9.3 施 工
(b) 砂利敷きの構成を図22.9.1に示す。
図22.9.1 A種の砂利敷き
(b) 砂利敷きの構成を図22.9.2に示す。
図22.9.2 B種の砂利敷き
建設業の限定解除の国家資格、1級建築施工管理技士にサクッと合格するためのブログ。
22.9.1 一般事項
22.9.2 材 料
(2) 特に景観を重視する場合には、表面を覆う石の色や形状を吟味して特記により指定する場合もある。
22.9.3 施 工
(b) 砂利敷きの構成を図22.9.1に示す。
図22.9.1 A種の砂利敷き
(b) 砂利敷きの構成を図22.9.2に示す。
図22.9.2 B種の砂利敷き
22.10.1 補 修
補修に関しては、「標仕」では特に規定していないが、参考までに留意点等を次に記述する。
(ア) 構内舗装は、一般の車道舗装に比較して薄い舗装構造となっているので、破損が始まると進行が速い。したがって、舗装の状態について定期的に調査を行うとともに、異常が発見されたら迅述な対策をとる必要がある。
(イ) 構内舗装の主な補修工法は次のとおりである。
舗装路面に生じたポットホール、局部的なひび割れ破損部分等にアスファル卜混合物等を充填する工法である。施工に先立ち、舗装の破損が及んでいる範囲を特定し、影響範囲のアスファルト混合物層あるいはセメントコンクリート版を撤去してから、アスファルト混合物を充填する。パッチング用の材料として、常温アスファルト混合物及び加熱アスファルト混合物がある。パッチングはあくまでも応急的な措置であり、将来的には、加熱アスファルト混合物による補修や、打換え等による補修を検討する必要がある。
舗装にひび割れが発生すると、そこから雨水が浸入し、路盤に悪影響を与える。それを防ぐためには、ひび割れが発生したら迅速に、アスファルト系の材料等をひび割れに充填して、ひび割れをふさぐ必要がある。
破損が生じている部分について、表層、基層又は路盤から局部的に打ち換える工法である。
既設舗装の上に、厚さ30~50mm程度のアスファルト混合物層を施工する工法である。路面の高さが上がるので、隣接区間との取付けや、排水に支障を来さないよう注意する必要がある。
破損が広い範囲に広がっている場合で、基層又は路盤以下に問題を生じていないときに、表層のアスファルト混合物層又はセメントコンクリート版のみの打換えを行う工法である。
破損が広い範囲に広がっている場合で、路盤にも問題が生じている場合に、路床から上側を全て又は路盤の一部までを打ち換える工法である。
この節では、国土交通省大臣官房官庁営繕部整備課監修「構内舗装・排水設計基準及び参考資料 平成31年版」表2.2.1で示された舗装の種類で、「標仕」に規定していない、いくつかの舗装について概説する。
22.11.1 半たわみ性舗装
(1) 半たわみ性舗装は、空隙率の大きな開粒度タイプの半たわみ性舗装用アスファル卜混合物に、浸透用セメントミルクを浸透させたもので、アスファルト舗装のたわみ性とコンクリート舗装の剛性をあわせもった、耐流動性や明色性、耐油性等に優れた舗装である。半たわみ性舗装の舗装構成例を、図22.11.1に示す。
図22.11.1 半たわみ性舗装の舗装構成例
(2) 半たわみ性舗装は、一般的には、大型車の駐車場や停車帯、油類などを扱う箇所の舗装等で用いられている。
(3) 半たわみ性舗装用アスファルト混合物の粒度範囲の例を表22.11.1に、マーシャル安定度試験に対する性状の例を、表22.11.2に示す。
(4) 浸透用セメントミルクは、施工時の流動性と硬化後に所定の強度が得られるものとする。浸透用セメントミルクの性状の例を、表22.11.3に示す。
(1) 保水性舗装は、保水機能を有する表層に、保水された水分が蒸発する際の気化熱により路面温度の上昇と蓄熱を抑制するもので、アスファルト舗装系保水性舗装やブロック舗装系保水性舗装などの種類がある。
(2) 保水性舗装は、ヒートアイランド対策や夏期の快適な歩行空間の確保などを目的に、車路や駐車場、歩行者用通路の舗装に用いられている。
(3) アスファルト舗装系保水性舗装は、開粒度タイプのアスファルト混合物の空隙に保水・吸水性能を有する保水材を充填したものである。アスファルト舗装系保水性舗装の舗装構成例を、図22.11.2に示す。
図22.11.2 アスファルト舗装系保水性舗装の舗装構成例(舗装施工便覧より)
(4) ブロック舗装系保水性舗装は、保水・吸水性能を備えたインターロッキングブロックなどの舗装用ブロックを用いたもので、歩行者用通路の舗装に適用されていることが多い。
22.11.3 遮熱性舗装
(1) 遮熱性舗装は、舗装表面に到達する日射エネルギーのうち、近赤外線を再帰性を考慮し、高効率で反射、舗装への蓄熱を防ぐことによって路面温度の上昇を抑制する舗装である。
(2) 遮熱性舗装も保水性舗装同様、ヒートアイランド対策や夏期の快適な歩行空間の確保などを目的に、車路や駐車場、歩行者用通路の舗装に用いられている。
(3) 遮熱性舗装には、舗装表面に遮熱性塗料を吹きつける、あるいは塗布する。遮熱性舗装の舗装構成例を、図22.11.3に示す。
図22.11.3 遮熱性舗装の舗装構成例
(路面温度上昇抑制舗装研究会ホームベージより)
22.11.4 弾性舗装
(1) 弾性舗装は、アスファルト舗装の表面に弾力性のある弾性舗装材料を15~20mmの厚さで舗設するもので、主に衝撃吸収性を期待する歩行者系通路の舗装に用いられる。図22.11.4に弾性舗装の舗装構成例を示す。
図22.11.4 弾性舗装の舗装構成例
(2) 弾性舗装材料には、樹脂バインダーとゴムチップを混合したものが用いられ、ゴムチップにはファイバータイプとチップタイプがある。樹脂バインダーには、一般的にウレタン樹脂が用いられている。
22.12.1 用語の説明
アスファルトの舗装の厚さを決定する場合に用いる路床の支持力をいう。路床土の状態が延長方向にほぼ一様な区間で、いくつかの地点の路床の深さ1mの合成 CBR(地点のCBR)から、それらを代表するように決めたもの。
路盤材料の強さを表すもので、JIS A 1211(CBR試験方法)に示す方法に準じて、 3層に分けて各層92回突き固めたときの最大乾燥密度に対する所要の締固め度(通常は最大乾燥密度の95%)に相当するCBR。
路床が、深さ方向に巽なるいくつかの層をなしている場合に、各層のCBRを用いて算術式から求まる値。
土や路盤材料等の締固め特性を調べる試験。含水比を変化させて締固めを行うと、乾燥密度の最も高い含水比が特定される。この含水比を最適含水比といい、このときの密度を最大乾燥密度という。
凍上を起こしにくい均ーな粗粒材料からなる地盤の、最近10年間に生じた最大の凍結深さをいう。凍上対策工法を検討する場合の基準となる。
0℃以下の気温と日数との積を年間を通じて累計した値。
舗装を構成するある層の厚さ1cmが表層、基層用加熱アスファルト混合物の何cmに相当するかを示す値。
路床、路盤の締固めが適切かどうか、不良箇所がないかどうかを調べるため、施工時に用いた転圧構成と同等以上の締固め効果をもつローラやトラック等で締固め終了面を数回走行し、たわみ量をチェックする試験。
瀝青を主成分とする材料。瀝青とは、二硫化炭素に溶ける炭化水素の混合物で、常温で固体又は半固体のものである。道路用瀝青材料としては、アスファルトやアスファルト乳剤等がある。
原油を蒸留して軽質分を除去して得られる瀝青物質であり、製造の方法によってストレートアスファルトとブローンアスファルトに分けられる。舗装用にはJIS K 2207(石油アスファルト)に規定するストレートアスファルトが用いられる。
石油アスファルトを乳化剤、安定剤を含む水中に微粒子として分散させて液状としたもの。これにはカチオン系乳剤とアニオン系乳剤とがあり、前者のアスファル卜粒子はプラスに、後者のアスファルト粒子はマイナスに帯電している。
ポリマー改質アスファルトは、ゴムや熱可製性エラストマーを添加し、石油アスファルトの性状を改善したもの。
75μmふるいを通過する鉱物質粉末。通常、石灰岩や火成岩を粉末にした石粉等がこれに相当する。
クラッシャラン又は現地材料に、必要に応じて補足材料を加え、数%のセメントを添加混合し、最適含水比付近で締め固めて安定処理する工法。セメント量は一軸圧縮試験によって決めるが、一般的に、アスファルト舗装の上層路盤で一軸圧縮強さ2.9MPaの場合、セメント量は3~5%程度である。
路床土等に消石灰又は生石灰を加えて、スタビライザ等を用いて混合する安定処理工法。軟弱な路床土の安定処理に用いるほか、粘土分を含む砂利、山砂等を骨材に用いて中央プラントで混合したものは路盤にも用いる。
現地産材料又はこれに補足材料を加えたものに、アスファルト等を混合して路盤を築造する工法。常温混合式と加熱混合式、現場混合式とプラント混合式があるが、現在では、表層及び基層用アスファルト混合物と同様の材料、方法による、加熱のプラント混合式がほとんどである。
粒状材料等による路盤等の防水性を高め、その上に舗設するアスファルト混合物層とのなじみを良くするために、路盤上に瀝青材料を散布すること。
粗骨材、細骨材、フィラー及びアスファルトの加熱混合物で、合成粒度における 2.36mmふるい通過分が35~50%のもの。
粗骨材、細骨材、フィラー及びアスファルトの加熱混合物で、合成粒度における 2.36mmふるい通過分が50~80%のもの。
粗骨材、細骨材、フィラー及びアスファルトの加熱混合物で、合成粒度における 2.36mmふるい通過分が45~65%のもので、かつ、600μmふるい通過分を40~60%としてギャップ性をもたせたもの。
粗骨材、細骨材、フィラー及びアスファルトからなる加熱アスファルト混合物で、空隙率の大きな混合物の総称。狭義では、合成粒度における2.36mmふるい通過分 が15~30%の範囲で、マーシャル安定度試験により配合設計を行ったものを指す。この混合物の路面は極めて粗く、すべり止め舗装や歩行者用通路の透水性舗装などに用いられる。
仕様配合に基づき、使用予定の材料を用いて室内試験等によって求めた配合。
室内配合に基づき、使用材料及び機械等を考慮して最終的に決定した実際に用いる配合。実施配合ともいう。
アスファルトプラントで混合するとき、ミキサより排出されたときの混合物の温度。
ある点をローラが通過した回数。
表面仕上げ終了に引き続き、コンクリート版の表面を荒らさないで、養生作業ができる程度にコンクリートが硬化するまでの間に実施する養生。
初期養生に引き続き、コンクリートの硬化を十分行わせるために、水分の蒸発を防ぐ養生若しくは水の補給をする養生。
ほうきやはけ等でコンクリート表面を粗面にする仕上げ。
雨水、小石等が目地に入るのを防ぐために、目地の上部に注入して詰める材料。
表層、路盤等に透水性を有した材料を用いて、雨水を路盤以下へ浸透させる機能をもつ舗装。
23.1.1 一般事項
(1) 本章では、植栽工事の主要材料となる樹木を中心に、芝や地被等の植物材料の植付け及び移植と、それを養生管理していくために十分な植栽基盤の整備を対象としている。
図23.1.1 植栽工事の作業の流れ
なお、赤文字を考慮しながら品質計画を検討する。
⑫ 再生資源の利用の促進と建設副産物の適正処理方法
23.1.2 基本要求品質
(1) 植栽工事に用いる材料には、植込み用土、樹木、地被植物、切芝や種子、肥料等があるが、大部分が植物等の天然素材であり、また、地域的な条件もあり、一律に品質基準を設定することが困難な場合が多い。
「標仕」では、「植込み用土は、客土又は現場発生土の良質土」としているが、良質土の基準は、樹木の活着と正常な生育に適しているか否かを総合的に判断すればよく、特記されている場合を除き、土壌試験等により確認することを求めているものではない。
なお、土壌が植物の生育等に適するか否かの判断に当たっては、(-社)日本造園建設業協会認定「植栽基盤診断士」に相談するとよい。
(2) 樹木、支柱等については、「標仕」23.3.2で品質基準が定められているため、これに適合するものを使用する。
「形姿が良い」とは、客観的な基準を設けることが困難であるが、建物との調和を考慮し、必要に応じて設計担当者と打合せを行い、形状等を定めるとよい。また、「有害な傷がないこと」とは、枯死又は枝損傷の原因となるような病害虫による被害や傷がないことを求めているものである。自然に治癒する程度の傷であれば、要求品質を満たしていると見なすことができる。
なお、樹木の品質寸法規格基準等については、(-財)日本緑化センター「公共用緑化樹木等品質寸法規格基準(案)の解説」を参考にするとよい。
(3) 「標仕」の規定にある「新植の樹木等は、活着するよう育成したものであること」とは、工事が完成した状態における樹木等の生育状態についての要求事項であり、生育良好で、病虫害のない樹木等を、適切な工法で植栽した場合には、この要求を満たしているものと判断してよい。
23.1.3 植栽地の確認等
「標仕」では、枯死又は生育不良の第一に挙げられる排水性(透水性)と土壌硬度については、必須確認事項としている。同一敷地内でも土壌条件が異なることがあるため、異なる条件毎に調査が必要である。特に、樹木の有効土層及びその下層地盤が、地山の切土であるか、盛土で重機による転圧をしているか、地耐力向上のための地盤改良を行っている場合には、透水性不良や土壌の高硬度がみられることがあるため、調査が必要である。加えて、コンクリート又は鋼製の植え桝や人工地盤上など、下層に不透水の構造物がある場合は、透水性不良がみられることがあるため、調査が必要である。
下層地盤の排水性が悪い場合は、暗きょ排水を行うものとし、流末処理の方法については、現地の状況を十分把握し、先行の排水工事と調整を行う。暗きょ排水の設置が困難な場合は、植栽地部分を盛り上げた地盤とする場合もある。
土性については、必須確認事項ではないが、指頭法(表23.2.4参照)により容易に判定ができ、透水性や保水性を判定するうえでの参考になることから、確認したほうがよい。
土壌の水素イオン濃度指数(pH)の試験については、「標仕」では、特記によると規定している。強アルカリ土壌の出現が懸念される建染物の解体跡地や強酸性土壌が懸念される土丹や酸性硫酸塩土壌が出現する地域では、確認を行ったほうがよい。
また、電気伝導度(EC)試験についても「標仕」では、特記によると規定している。塩類障害が懸念される海浜埋立地では、電気伝導度(EC)を指標とした塩分濃度の調査.確認を行ったほうがよい。
試験の結果が不良の場合は、監督職員と協議する。
生き物である植物を取り扱う植栽工事は、植栽基盤の確認のほか、植栽の時期や植栽地の気象・日照条件と植物との適合性等について確認する必要がある。植物の生育に支障となるおそれがある場合は、「標仕」1.1.8による協議を行う。
なお、植栽工事は、全体工程の終盤に施工することが多く、協議は設計変更のタイミングを失しないよう、できる限り早い時期に行う。
協議又は検討事項としては、次のようなものがある。
植物は適期に植栽することが望ましいが、工程上、不適期となる場合や他工事の影響で適期に植栽できない場合は、受注者等と工程調整や養生対策の方法等について協議する。
なお、植栽(移植)の適期については、表23.1.1に示す。
植栽地の環境圧としては、植栽基盤条件のほか、立地・気象・日照・生育空問条件等に由来するものがある。
計画樹種が立地条件(潮風害、強いビル風等)や気象条件(気温、降雨量等)に合わない場合は、工法の見直しや樹種の変更について受注者等と協議する。
景観上の設計意図を考慮したうえで、植付け位置の変更等について設計担当者と打合せを行う。
地下埋設物や、地下構造物が支障となる場合は、設計変更の必要性等について協艤を行う。
いずれも植付け位置の若干の変更で済む軽微な場合から、植栽そのものの可否を検討しなければならない場合まで様々である。特に地下埋設物の場合は、樹木の生長への障害だけではなく、樹木の生長に伴う構造物自体への影響も考慮しなければならない。
23.2.1 一般事項
植栽基盤の概念を次に示す。
(ア) 建築物においては、上部構造物の安全性確保のため、基礎工事が必須の条件であると同様に、植栽工事においても植物が正常に生育するための土層の整備が必要不可欠な条件となる。
また、植栽基盤は自然土壌に限定されず、人工土壌によって造成される場合もありうる。
(ウ) 植物が正常に育つために、必要な植栽基盤の条件を次に示す(図23.2.1参照)。
④ 余剰水を排水できること。
③ 適度の養分を含んでいること。
図23.2.1 植物が正常に育つために必要な植栽基盤の条件
23.2.2 植栽基盤一般
樹木植栽においては、特記の有無にかかわらず、「標仕」23.1.3(1)に従って植栽地の確認を行い、(3)に示す物理性及び化学性の判断基準によって植栽基盤としての適合性を判断し、問題がある場合は、「標仕」23.1.3(3)に従って処理するものとする。
すなわち、有効土層の上部は細土で養分や腐植を十分含んだ軟らかい土層で、植物が効率良く水分や養分を吸収するための根(吸収根)の発達が盛んになるように、下部は、透水性が良く根(支持根)の伸長に支障を来さない土層に整備するのがよい (図23.2.2参照)。
図23.2.2 植栽基盤の構成
植栽基盤の面積は、生育目標樹高に生長するだけの広がりを確保するということになるが、植栽地の条件に大きく左右されることから、一概に規定することはできない。独立して植栽する場合の1本当たりの植栽基盤の基準面積の目安を、表23.2.1に示す。
なお、埋設物等の障害物があり作業上整備することが困難な場合は、施工面積から除く。
(3) 「標仕」では、雨水を排水するための暗きょや縦穴排水等を設置する場合は、特記によると規定している。
透水性試験において、透水性の悪いことが確認された場合は、有効土層の底部まで排水できるよう対策を講じる必要がある。
排水工法には、次のような工法がある。
暗きょ排水は、透水管及び透水材等を用い、地表面及び地中の雨水を排水できる場所まで導くことにより排水処理を行うものである。
図23.2.3 暗きょ排水概念図
図23.2.4 暗きょ管敷設平面図
開きょ排水は、プレキャストU型側溝の使用を原則とするが、景観に考慮した側溝として、石張り側溝や芝張り側溝等がある。
図23.2.5 プレキャストU型側溝
排水層は、下部に部分的な不透水層を有する地盤に対して砕石又は黒曜石パーライト等にて排水層を設け、雨水を分散させ透水性のある部分から下層地盤に浸透させることにより排水させるものである。
図23.2.6 排水層概念図
縦穴排水は、不透水層を有する地盤に対して透水材等を用いて透水孔を設け、雨水を浸透させることにより、排水処理を行うものである。下層に浸透の容易な土層があることが望ましい。
※縦穴を掘ってその中に水を落とす方法や、
大きな穴を掘って数本分の水をそこにまとめて導入する方法もある。
図23.2.7 縦穴排水概念図
これら物理性のほか、化学性を含めた植栽基盤調査方法と判断基準は、次のとおりである。
(a) 物理性
① 透水性
透水性が良いということは植物を植える地盤の条件としては、第一に満たされなければならない最も重要な条件である。また、実際の植栽の現場において、透水不良の地盤が極めて多いことからなおさらである。
この測定は、植穴に直接水を張り減水述度を計る方法と、「長谷川式簡易現場透水試験器」を用いる方法がある。「長谷川式簡易現場透水試験器」を用いる場合は、次の要領で行う(図23.2.8参照)。
1) 測定したい箇所に直径15cm内外の穴を掘る。穴を掘る道具は、ダブルスコップを使うと便利である。深さは植穴と同じ深さで、通常は40~60cm程度とする。
2) この中に穴底の土を水の勢いで乱さないよう板きれを入れるなどして、静かに水を入れる。石油ストープ用の注油ポンプを用いる場合は、現場透水試験器のフロートで注水を受けるようにする。
3) 水の深さが約10cmになったら、いったん注入を止める。約1時間(最低30分以上)そのままにしておいて、周辺の土にしみ込むのを待っ。
4) もう一度水を入れて水深10cmにし、この時の時間を計る。そして20分後と40分後に水深を測る。
5) 20分後と40分後の水位の差(20分間に減少した量)を3層にしたのが1時間に減少する量で、mm/hで表す。その判断基準を表23.2.2に示す。
6) 40分後に穴に水が残っていない場合には、再注水時と20分後の水位の差(20分間に減少した量)を3倍にして1時間に減少する量を求める。
7) 20分後に穴に水が残っていない場合には、1時間に減少する量を300 mm/h以上とする。
図23.2.8 長谷川式簡易現場透水試験器
(b) 硬 度
一般的に造成地盤はこの傾向が強く、切土においては心土の固結層である砂岩層や砂礫層等が地表に出てくると、つるはしも役に立たないほど硬い場合もある。また、盛土層や建物回りは、工事の施工に伴い建設機械により締め固められていることが多いため、植栽に先立ち、十分に調査する必要がある。
② 土の硬さの測定は、以前は山中式土壌硬度計(図23.2.9)という器具を用いて行っていたが、この器具を使うためには地盤を掘削し垂直な面をつくる必要があり(図23.2.10)、多大の労力を要することから、現在は長谷川式土壌貫入計(図23.2.11)で、穴を掘らずに硬度を測定する方法が一般的に行われている。
これは鉄の重り(重さ2kg)を50cmの高さから落下させることによって地中に打ち込み、1回にどれくらい打ち込めるかによって土の硬さを測定するものである。その判断基準を表23.2.3に示す。
図23.2.9 山中式土壌硬度計 図23.2.10 山中式土壌硬度計による検測方法
図23.2.11 長谷川式土壌貫入計
(c) 土 性
土性は、土壌を粒径組成に基づき、一定の区分に分類したものである。土性は、検土杖(地中土壌の採取器具)等により採取した試料を、指頭法による簡易な方法で判定することができる(表23.2.4参照)。植栽基盤としては、砂壌土又は壌土が望ましい。砂土は、保水力、保肥力に乏しく、乾燥害、肥料不足が生じやすい。また、埴壌土、埴土(はにつち)は、透水性に問題がある。
埴壌土は粒子が細かく滑らかな感触で、土を手で握ると手にくっつくが、粘土ほどの粘性はない。 水はけと水保持のバランスが良く、栄養素も豊富なため、稲作には適した土壌。 有機物が豊富に蓄積した土壌。
埴土(はにつち)
粘土分を50%以上含む土。排水や通気性が悪く耕作地には適さない。
表23.2.4 指頭法による簡易な土性判定
植物に対する土壌の化学的な阻害要因としては、水素イオン濃度指数(pH)の不良、塩類過剰、養分不足等がある。水素イオン濃度指数(pH)及び塩類過剰障害が懸念される主な土壌としては、臨海地域の土壌並びに土丹及び海成堆積土がある。これらの土壌の場合は、水素イオン濃度指数(pH)、水溶性塩類(電気伝導度(EC))等の調査を行う必要がある。また、必要に応じて腐植含有量の調査を行うものとする。
水素イオン濃度指数(pH)、電気伝導度(EC)及び腐植含有量の基本的な考え方並びに数値の目安は、次のとおりである。
水素イオン濃度指数(pH)は、土壌が示す酸性又はアルカリ性の反応の程度を表すものであり、養分の吸収能を左右し、化学的生育阻害の要因となりうる異状の有無を判断するものである。
なお、海成堆積土による造成地で出現する酸性硫酸塩土壌は、空気に触れることで急速に酸化し強酸性を示すことがある。海成堆積土による造成地では、造成後の時間経過によりpHが変化するため、継統して測定し酸化の進行状況を確認のうえ、対策を検討する必要がある。また、土壌の深さによってpH変化の時間が異なるので注意する。
電気伝導度は、植物生育に支障を来す可能性のある土壌中の塩基分の大まかな程度を判定するためのものであり、市販の電気伝導度計(ECメーター)により容易に測定できる。しかし、塩基の種類・量の測定は不可能であり、塩基の種類(物質)・量の判定には詳細な分析が必要となる。したがって、予想される物質を絞り込み外部機関に依頼して分析する必要がある。
電気伝導度計(ECメーター)による測定値が1.0dS/m以上の場合は、植物生育阻害要因となる多量の塩基を含んでいる可能性が高いため、詳細分析が必要である。
腐植の存在は、植栽土壌としての絶対条件ではないが、腐植は、養分の供給、団粒の形成、陽イオン交換容量や緩衝能を高める効果があり、植栽土壌の適性を判断する指標となる。腐植含有量は火山灰土壌の表土で 5~20%、下層土の赤土や真砂土では通常 0.5%以下である。腐植は多い方が望ましいが、経済性を考慮して決定する必要がある。腐植含有量の指標として、強熱減量のほか炭素含有量を用いることもある。炭索含有量に1.724を乗じることで腐植含有量を求められる。
④ 数値の目安
表23.2.5に各数値の目安を示す。
(4) 「標仕」表23.2.2に示す植栽基盤の整備工法は、地盤が硬い場合の改良方法で あるが、土壌の種類によっては再び固結する場合がある。特に、粘性土壌の場合は、再固結を防止するため、黒曜石パーライト又は粗目の砂質土を混入するとよい。
また、透水性や化学性に問題がある場合は、深耕(粗起し)や普通耕時に、それぞれの阻害要因に対して、適切な土壌改良材を混入する。土壌改良材の適用は、特記による。
23.2.3 材 料
(1) 植込み用土
客土は、地域により土質が異なることから、現場周辺で比較的入手が容易で、経済性に優れ、植物の生育に適した土壌が望ましい。
(a) 客土の種類
3) その他:山砂、赤土(火山灰心土)等
火山灰の表土である黒土は、物理性、化学性のいずれの点からも優れており、客土として最も適した土壌といえる。しかし、黒土の産出する地域は限られており、黒土の入手できない地域では、真砂土、山砂、赤土等を使用するのが一般的である。
(2) 土壌改良材
土壌改良材の種類は、特記による。土壌改良材の効果は、硬度、透水性、保水性等の物理性の改良、養分、水素イオン濃度指数(pH)等の化学性の改良及びミミズや微生物による生物性の改良に大きく分けられ、単体で使用する場合と数種の土壌改良材を混合して使用する場合とがある。土壌改良材の主な種類と一般的な改良効果を表23.2.6に示す。
植栽地の土壌条件は、千差万別であり、表23.2.6に示す土壌改良材の効果は、全ての土壌条件に対応したものではなく、使い方によっては支障を来す場合もある。
例えば、代表的な土壌改良材である堆肥は、硬度、透水性及び保肥力の改良に効果があるとされているが、粘性土壌に混入すると逆に還元状態を招くことがある。
土壌改良材の選択に当たっては、土壌条件を十分に考慮し、より効果的で経済的な資材を選ばなければならない。土壌改良材を使用する場合は、土壌との適合性を確認のうえ、品質証明資料を監督職員に提出し、承諾を受ける。
なお、土壌改良材の選択は、高い専門性が要求されることから、「植栽基盤診断士」に相談するとよい。
土壌改良材は、肥料取締法又は地力増進法で定められたものとそれ以外のものとに分けられる。表23.2.6に示す土壌改良材のうち、下水汚泥コンポストは肥料取締法に基づき普通肥料として登録されたものを使用する。
法令の規定を受けない資材は、製造者の品質証明書にて判断するとよい。
「標仕」23.2.3(3)で示す受注者等が行う土壌との適合性の確認とは、改良目標を数値で示すことではなく、土壌改良材の品質を証明する資料及び阻害要因に対する効果の妥当性に関する資料により適合性を確認することである。
なお、植栽基盤の調査・診断及び土壌との適合性の確認については、「植栽基盤診断士」に相談するとよい。
23.2.4 工 法
(1) 植栽基盤の整備工法の種類と「標仕」の種別を、表23.2.7に示す。
表23.2.7 植栽基盤の整備工法の種類
硬過ぎて植栽に適さない地盤の場合に、混層耕(深耕+普通耕)により土層を改良するもので、必要に応じて土壌改良材の使用や施肥を行う。
図23.2.12 混層耕概念図
(a) 作業手順
図23.2.13 作業手顛
一般的にバックホウで行われる。施工品質については土壌が容易に細砕化 するものと、そうでないものとがあるので一概に規定することはできないが、一応の目安としては、土塊径20cm以下とする。
深耕後、小型ブルドーザー等にて不陸を整正しながら、締固め過ぎないように軽く転圧する。
設計量の土壌改良材や肥料を均ーに混入する。
乗用トラクタ又はハンドトラクタにて耕うんする。耕うんの深さは20cm程度とする。
なお、不陸整正と転圧を同時に行う場合もある。
芝・地被類の植栽において物理性の改良が必要な場合に、耕うんによって改善を図る工法であり、必要に応じて土壌改良材の使用や施肥を行う。
図23.2.14 普通耕概念図
(a) 作業手順
図23.2.15 作業手顛
(b) 作業の内容については、(2)(b)のそれぞれの同種工種に準ずる。
植栽地の土壌が不良で改良することが困難な場合に、良好な土壌と置き換える工法である。樹木、芝、地被類に適用され、植物に応じて置き換える深さを変える。
図23.2.16 植込み用土置換概念図
(a) 作業手順
図23.2.17 作業手順
有効土層厚相当分をすき取る。
すき取り後、地盤の不陸整正を行う。
植込み用土の敷均しに当たっては、極力土壌を固めない配慮が必要である。万一締め固まった場合(S値1.5cm未満)は、深耕(粗起し)や普通耕を行う。
不陸を整正し、設計地盤高に仕上げる。
特記に基づき建設発生士の処分を行う。特記による処分が出来ない場合は、「標仕」1.1.8により協議を行う。
植栽地の土壌が不良で、良質土を盛土しても、地盤の仕上り高さが他の施設物に影響しない場合や地盤を盛る必要がある場合に用いられる工法で、有効土層として必要な厚みの植込み用土を盛土する。
図23.2.18 植込み用土盛土概念図
(a) 作業手順
図23.2.19 作業手順
(b) 作業の内容については、(4)(b)のそれぞれの同種工種に準ずる。
(c) 敷均しに当たっては、土壌が固結し過ぎないように、施工規模や施工条件等を勘案のうえ、可能な場合はバックホウにて施工することが望ましい。
(ア) 表層部分に土壌改良材を混入する場合は、特記された指定量を均ーに散布し、トラクタ等にて耕うんを行う。その際の混合の深さは、土質によっても異なるが、概ね20cm程度である。
A種の工法にて、透水性の改良を目的として、黒曜石パーライト等を混入する場合は、水の抜ける層の形成を図るため、やや粗くかくはんする方がよい。
(イ) 化学性の改良について次に示す。
(a) 水素イオン濃度指数(pH)の改良
① 水素イオン濃度指数(pH)4.5未満の強酸性の場合は、炭酸カルシウム等にて矯正を行う。ただし、酸化過程にある酸性硫酸塩土壌の場合は、酸化剤にて強制的に酸化させた後に、矯正する必要がある。
炭酸カルシウムの適正施用量は、pH値のほか、土性、腐植含有量等により異なるため、個々の土壌について緩衝曲線を求め、適正屈を定めることが望ましいが、簡易な方法としては、表23.2.8を参考にするとよい。
表23.2.8 炭酸カルシウム施用量(アーレニウス氏表)
② pH値が7.5~8.0程度の弱アルカリの場合は、ピートモス等(pHを矯正していないもの)の酸性有機物を施用し、矯正するのが一般的である。
③ pH値が8.0を大きく超える場合は、酸性有機物では施用量が多くなることから、中和剤を用いることが多い。硫酸第一鉄等の硫酸系を用いる場合は、 pH値のリバウンド(元の値に近づくこと)や電気伝導度(EC)の上昇に留意しなければならない。電気伝導度(EC)の上昇を抑制する中和剤として アルカリ土壌中和剤がある。
電気伝導度(EC)が1.0dS/mを上回る場合は、有害な濃度の塩類が含まれている場合が多いので詳細な分析を行う。塩類が多い場合は、散水等による除塩若しくは良質土による置換え等の対策が必要である。
(7) 施 肥
植物の特性等を考慮し、必要に応じて施肥を行う。
肥料には、多くの種類があり、形態等も様々である。肥料の生産手段、化学的組成、反応、肥効、成分、形態等、種々な見地から分類されている。
植物の種類、土壌条件、植栽地の育成管理方針等に基づき、適切な肥料を用いる。窒素、りん酸、カリを肥料の3大要素といい、植物にとって大切な成分である。その効用は次のとおりである。
なお、樹木に施す肥料は、低度化成肥料といわれるN・P2O5 ・ K2Oの成分合計量30%未満のものが主に用いられている。
23.3.1 一般事項
この節は、樹木の新植並びに樹木の移植工事を対象としている。
23.3.2 材 料
掘取り後、運搬に先立ち根鉢の崩れを防止するために、こも、わら縄その他有機質根巻き材料等で根鉢を堅固に根巻きをする。根の回りの土をふるい落としても植樹が可能な樹木や苗木では、種類によって根巻きを行わなくてもよい場合もある。(ふるい堀り:休眠期間中の落葉樹を移植する場合、堀り上げてから根巻きせずに、そのまま根付け位置に運んで植付ける方法)
樹木は、原則として搬入時に確認する。ただし、特殊樹、主木等については事前に写真を提出させ又は必要に応じて圃楊(栽培地)において確認する。
株立物で、幹周の指定がない場合は、樹高(樹冠頂までの寸法)及び枝張(葉張)に重点をおくようにする。
なお、寸法には、一部の突出している枝(徒長枝:とちょうし)は含まないものとする。
「公共用緑化樹木等品質寸法規格基準(案)」による各部の寸法等の表示名称は図23.3.1のとおりであり、「標仕」もこれに準拠している。
図23.3.1 樹木の寸法表示名称
((-財)日本緑化センター:公共用緑化樹木等品質寸法規格基準(案)の解説より)
「標仕」では、支柱材の種類は、特記による。特記がなければ、丸太とすると規定している。
「標仕」では、防腐処理方法は特記による。特記がなければ、JIS K 1570(木材保存剤)に定める加圧注入用木材保存剤を用いた加圧式防腐処理丸太材を使用すると規定している。加圧処理方法は、JIS A 9002(木質材料の加圧式保存処理方法)による。以前に用いられていたCCA(クロム・銅・ヒ素系木材防腐剤)は、環境汚染物質が含まれていることから使用してはならない。
なお、焼丸太については、衣服を汚すことが懸念されるため、鑑賞を目的とした日本庭園等の人の立ち入らない場所にて使用する。
真竹は、腐れのない、真っ直ぐな2年生以上の良質なもので、適期に切り出したものとする。
幹巻き用材料、天然繊維(ジュート)製の幹巻き用テープ又はわら及びわらを粗く編んだこもが使われる。「標仕」では特記がなければ、幹巻き用テープを使用する。
23.3.3 新植の工法
植栽に当たっては、必要に応じ施工図(配植図)の提出を求め、照明灯等関連設備 との関係、樹木特性と植栽地条件との適合性、景観上の納まり等について確認を行う。
樹木は搬入時に、一部の樹種で用いられているふるい掘りや根巻きを必要としない低木を除き、こも、わら縄、その他有機質根巻き材料で堅固に根巻きされ、根鉢の崩れがないものとする。
なお、植付けまでに長期間を要する場合は仮植えを行う。
① 植付けは、植栽平面図又は施工図に基づいて行うが、初めに景観の主要な部分となる高木等の位置を現場で決める。引き続き残った樹木の位置を、樹種、樹高、間隔、幹ぐせ、幹ぞりを考慮し、周囲との調和を図りながら決める。
② 高木の群植等の場合は、搬入された樹木の性質や形状等を見極め、将来の生長も考慮し、植付け間隔を調整するのが望ましい。
③ 植穴の径は、通常根鉢に十分余裕のあるように掘り、穴底のきょう雑物を取り除いて底部を柔らかにほぐし、植込み用土を中高に盛り上げる。
(b) 立込みの手順は、次のとおりである。
① 樹木は、植付けに先立ち、適切に枝抜きせん定及び必要に応じ幹巻きを行う。
② 樹木の裏・表を見極め、立込みを行う。根鉢の根巻きが厚い場合や二重巻きになっている場合は、細根と植込み用土が密着するよう根巻き材を取り除く。
③ 立込み後は、必要に応じ仮支柱を取り付ける。
(c) 鉢を植込み用土で埋め戻す方法には、次の方法がある。
① 水ぎめは、鉢を埋めながら水を注ぎ、鉢の周辺に植込み用土が密着するように細い棒で土をよく突きながら埋め戻し、これを数回繰り返して鉢を埋めていく方法で、一般的に多く使われる方法である。
② 土ぎめは、水を使わずに細い棒等で植込み用土を鉢回りに密着するように突き入れる植え方で、松類等を植え込む場合に用いられる。
立込み後、鉢を完全に埋め戻してから、樹木の根元を平らに均す。水鉢は、鉢の外周に土を盛り上げ、この中にかん水を行う(図23.3.2参照)。
図23.3.2 水鉢
(エ) 支柱の取付け
支柱は、風による樹木の倒れや傾きの防止とともに、振動によって新しい根が切られることのないよう保護のために取り付けられる。根部が正常に活着するまで(通常 3~ 4年程度)取り付けておくが、街路や屋上庭園等で風が強く当たる空間や、根が十分に張れない場所は保持を統ける。
① 支柱の取付けは、「標仕」23.3.3(4)並びに図23.3.3から図23.3.5のように行う。支柱の基部は、地中に埋め込み、根杭を設け、釘留め、鉄線掛け等で容易にぐらつかないよう堅固に組み立てる。ただし、島居形は打込みとする。樹幹(主枝)と支柱との取付け部分は杉皮等を当て、しゅろ縄掛け結束とし、丸太相互が接合する箇所は、釘打ちのうえ鉄線掛け又はボルト締めとする。真竹は先端を節止めにして使用する。
なお、表はあくまでも目安であり、必要に応じて風荷重を考慮して支柱の形式・形状を決定するものとする。
表23.3.1 支柱形式と使用区分の目安
② ワイヤ掛けには鋼線、被覆鉄線があるが、三~五方に緩みが出ないように張り、活着後は次第に緩める。ワイヤは目に付きにくいため接触事故を起こしやすいため、危険性がある場合は塩ビ管等をかぶせて事故を防止する。ワイヤの太さ及びアンカーは樹木転倒の風荷重計算を行い、風荷重に耐えうる力が得られる形状・寸法のものとする。
地下埋設型支柱には、大別して支持アンカーを横向きにして打ち込むタイプと鉛直に打ち込むタイプがあり、植栽箇所周辺の構造物、埋設物を調査し、樹木寸法を考慮のうえ、その機能が十分働くものを使用し、樹木の生長に合わせて調整する。
支柱設置後は、幹や根鉢を締め付けることのないよう、樹木の生長に合わせて調整又は撤去する必要がある。
図23.3.3 支柱形式(建築工事標準詳細図より)
図23.3.4 地下埋設型(参考図)
図23.3.5 根鉢固定方式型(参考図)
(オ) 樹幹の保護矯正
樹幹の保護や向き、曲がりを矯正する場合は、取付け部分にしゅろ縄などを巻き、こずえ丸太や竹の添え木等を結束する。設置後は、幹を締め付けることのないよう樹木の生長に合わせて調整又は撤去する必要がある。
幹巻きは、移植後の樹木の幹から水分の蒸散と幹焼け(樹皮組織が破壊されて死滅すること)防止と防寒のため、わら、こもや緑化テープを樹幹、主要枝に、巻き付けることである。
厳寒期に常緑広葉樹を植栽せざるを得ない場合は、寒冷紗等による防寒対策を行う。
多彩な花色を有する花木は、設計意図を把握し各樹種のもつ特色と開花期、花色、さらには周囲の景観に十分調和するよう考慮し、より美的効果が発揮できる配植とする。
植付け後、完成引渡しまでの期間は、定期的に樹木の状態を観察し、必要に応じて、かん水、病害虫防除、整姿せん定(枯死枝の除去)を行う。
23.3.4 新植樹木の枯補償
「標仕」23.3.4 (1)では、新植樹木の枯補償の期間は、特記がなければ引渡しの日から1年としている。
(ア) 「標仕」23.3.4 (2)の「枯死、枝損傷、形姿不良等となった場合」とは、図23.3.6に示すように、植栽した時の状態で、枯枝が樹冠部の概ね2/3以上となった場合又は真っ直ぐな主幹をもつ樹木については、樹高の概ね1/3以上の主幹が枯れた場合をいい、今後、同様の状態となることが予想されるものも含む。
図23.3.6 枯補償の判断(造園施工管理(技術編)より)
(イ) 「標仕」において、枯補償の対象から除外されている「天災その他やむを得ないと認められる場合」とは、異常気象による干ばつ、土砂災害、盗難や人為的な損傷による枯死等を想定したものである。
(a) 一般的に、植栽については、施設の管理者により通常の管理が行われることを前提としている。
(b) かん水等、管理者による通常の管理が明らかに困難な場合は、管理官署、受注者等、設計担当者(国土交通省の場合は計画担当者を含む。)、監督職員等の関係者間で協議し、適切な処置を定めておくとよい。
23.3.5 樹木の移植
(1) 樹木の移植は、樹木を掘り取って直接目的地に植え付ける場合と、根回し(細根の発生を促す処理)後一定期間養生した後、目的地に植え付ける方法がある。大径木や貴重な樹木を移植する場合は、事前に根回しを行うことが望ましい。
工期や現場条件等の関係から根回しができない場合は、移植の時期、枝抜きの程度等について、よりきめ細かい検討が必要である。
なお、移植時期が極めて悪い場合は、移植時期や樹種変更等について検討する。移植の適期は、概ね次のとおりである。
常緑広葉樹は、3月末から入梅頃まで及び9月中旬から11月上旬までが適期である。
(イ) 寒地(冷温帯に位層する北海道・東北地方)では、暖地よりも春期は1~2箇月遅くし、秋期は早くするように調整する。
(ウ) 主な樹木の移植の難易度について、表23.3.2に示す。
太枝の切断面は、殺歯剤を塗布するなどの腐朽歯の侵入防止対策が必要である。
(3) 根回しには、次のような方法がある。
太根の処理が終わった後、粗めに根巻きを行い、掘り上げた良土で埋め戻す方法である(図23.3.7参照)。
(イ) 断根式は、溝掘り式と同様に鉢径を定め、鉢回りを掘り同して側根だけを切断し切り離すだけの方法で、モッコク、キンモクセイ、サザンカ、ハナミズキ等の比較的浅根性又は非直根性の樹種と幼木に行う方法である。
図23.3.7 溝掘り式根回し
根鉢の大きさは、根回しを行った樹木は元鉢径よりやや大きめに、直接に移植する樹木は、根元幹径の3~5層程度の鉢径を定め、幹を中心に円形に掘り回す。根鉢の側面に現れた根は、鉢に着って鋭利なガ物で切断する。
根巻きの方法には、鉢に平行に素縄をたたき込みながら巻いていく「樽巻き」と、樽巻きを行った後、さらに、縦横に鉢をかがるように巻き上げていく「揚巻き」がある。大径木や貴重な樹木を掘り取る場合は、鉢土にじかに縄で樽巻き又は揚巻きを行った後、さらに、わら、こも、緑化テープ等で二重に根巻きを行う(図23.3.8参照)。
図23.3.8 根巻き
(6) 植付けについては、23.3.3(3)を参照する。
23.3.6 移植樹木の枯損処置
移植は、発注者が指定する樹木を根回し又は直接目的地に植栽する一連の作業である。
23.4.1 一般事項
この節は、芝、吹付けは種及び地被類の新植を対象としている。
23.4.2 材 料
「標仕」では、種類はコウライシバ又はノシバの類とし、適用は特記による。特記がなければ、コウライシバの類を使用すると規定している。
コウライシバは、わが国で最も多く使用される。環境適応力や踏圧抵抗性に優れ、茎葉も細く小型で刈込みによってさらに緻密な芝生となる。ただし、冬季休眠し、冬枯れ状態となる。ノシバは同属で、ほぼ同様の性状を有するが、茎葉がより長く粗い。また、改良バミューダグラスがコウライシバ、ノシバと同様の性状を有することから、改良バミューダグラスを用いる場合にはコウライシバ、ノシバと同じ扱いとする。
なお、は種施工が一般的である洋芝の多くは常緑であるが、牧草を起源とするものが多く、芝生として使用する場合、頻繁な刈込みを必要とする。当初から完成度の高い芝生とするため切芝を使用する場合には、設計変更の協議を行う。
芝は、土付きの切芝とし、雑草の混入や病虫害の発生がなく、均ーに密生し、一定の高さに刈り込んであるものとする。雑草の混入については、切芝を裏返すと芝と雑草の根を見分けることができるので参考にするとよい。
なお、生育期の切芝は、搬入時に束を重ねて平置きすると、急激に蒸れが生じるおそれがあるため縦置きにする。
コウライシバ、ノシバの標準寸法は、産地により異なるが、概ね、横35 ~ 37cm、縦26 ~ 30cm、1束9~ 10枚である。
芝串とは、特に斜面に芝生を造成するため、張りつけた切芝がずり落ちないように細い割竹をさし、地表面に固定するため使用するもので、真竹、もうそう竹で作り、長さが150mm以上で頭部を節止めにしたものである(図23.4.1参照)。
図23.4.1 芝串(竹串)
(a) 特記により指定された種子の種類であっても、は種の時期や植栽基盤条件との適合性について検討を行い、問題がある場合には、草種又は施工時期の変更等を検討する。
(b) 種子の標準有効率(発芽率 × 純度)は、80%以上のものがよい。標準有効率に達しないものは、その比率に応じて増量するようにする。標準有効率が 60%以下のものは使用しないことが望ましい。
なお、発芽率とは、一定の条件下で発芽試験を行い、試験に用いた供試粒数に対する発芽した総発芽粒数のことをいう。純度とは、種子に含まれるきょう雑物を除いた純粋の種子の重さと全体の重さに対する割合をいう。
ファイバーは、木材を粉砕した木質繊維の養生材で、有害なものを含まず、種子の発芽、生長に支障のないものとする。
粘着材は、種子、ファイバーが吹付け面に十分に密着するものを使用する。また、植物の生育に有害な成分を含まないものとする。
吹付けは種の肥料は、「標仕」23.4.2(3)(エ) では、有機質系肥料又は化成肥料とすると規定している。一般的には、基肥は緩効性肥料又は遅効性肥料が用いられる。
地被類とは、地表面を低く緻密に覆う植物をいい、グラウンドカバープランツ又は地被植物という。「標仕」では、コンテナ栽培品としている。
地被類の品質は次を参考にするとよい。
(a) 植物は、コンテナで一定期間、育成栽培を行ったもので、植物の特性に応じた形態であること。
(b) 葉は、正常な葉形、葉色、密度(着葉)を保ち、しおれ(変色、変形)や軟弱葉がなく、生き生きしていること。
(c) 病虫害の発生がないもの。過去に発生したことのあるものについては、発生が軽微で、そのこん跡がほとんど認められないよう育成されたものであること。
なお、容器の壁に沿ってぐるぐる回り、過根巻現象(ルーピング)となったものや、容器から根が外に出ているものは使用しないこと。
表23.4.1 吹付けは種工に用いる主な植物の性状(のり面保護工より)
23.4.3 芝張りの工法
(1) 芝張りの種別
芝張りの種別は、特記がなければ平地は目地張り、法面はべた張りとする。芝は、図23.4.2に示すように、横目地をとおし、縦目地は芋目地にならないようにする。
図23.4.2 芝張りの種別
(2) 平地の芝張り(目地張り)
張付け場所は、耕うんを行い、きょう雑物を取り除き、水勾配をとり、レーキ等で丁寧に均す。また、客土を行う場合も同様の状態とする。
土壌が乾燥している場合は、事前に散水を行う。芝を敷き並べた後、ハンドローラー等で転圧し、芝の根を土壌に密着させる。
なお、引渡しに際しては、除草を行う。
(3) 法面の芝張り(べた張り)
地ごしらえは、表面の緩んだ転石や岩塊を取り除き、レーキ等で不陸を均す程度とし、法面が緩むような行為は避けなければならない。
土壌が乾燥している場合は、事前に散水を行う。芝を敷き並べた後、土羽板等でたたき、法面と密着させ、目土を均ーにかけ敷き均す。法肩には耳芝を張る。耳芝とは、法肩の崩れを防止するため法肩に着って天端に横一列に芝を張る芝をいう。
芝串は、節を上部に向け、切芝1枚に4本以上打ち付けて芝を固定する(図23.4.3 参照)。
図23.4.3 芝串の固定例
23.4.4 吹付けは種の工法
(1) 機械は種工による植生工の種類と特徴を、表23.4.2に示す。
(2) 機械は種工による種子吹付けの施工は、次の事項に留意する。
(ア) 種子吹付けに着手する前に、法面の土壌硬度(山中式)、水素イオン濃度指数(pH)の測定を行い、発芽に支障のないことの確認
(イ) 施工時期と種子の発芽適温の確認
(ウ) 吹付け面の浮土、きょう雑物の取除き及び不陸の整正
(エ) 吹付け面が乾燥している場合は、吹き付ける前の散水
(オ) 材料の均ーな吹付け
(カ) 発芽に不ぞろいの箇所がある場合は、発芽の悪い場所の追いまき
表23.4.2 機械は種工による植生工の種類と特徴(道路土工 – 切土工・斜面安定工指針より)
23.4.5 地被類の工法
地被類の植付けは、次の事項に留意する。
(ア) 地ごしらえは、23.4.3 (2)(ア) に準じて行う。
(イ) 肥料は、基肥を適宜施す。
(ウ) ササ類、ツル植物類、草本等の植付けは、面積当たりの所定数量を、植付け模様、植付け密度や間隔に留意し、根部は、土とよく密着するよう軽く押さえ込みながら茎葉を損傷させないよう丁寧に植え付ける(図23.4.4参照)。
図23.4.4 ササ類、ツル性植物類等の植付け
23.4.6 養生その他
除草は、吹付けは種地を除き、芝生地、地被類植栽地について行い、原則として手抜きとし、完成引渡し直前に行う。
施工後、完成引渡しまでの期間は、受注者等に適切な養生を行わせる。特に、乾燥期には、植物の葉のしおれに注意し、必要に応じてかん水を行わせる。
23.4.7 芝張り、吹付けは種及び地被類の枯補償
23.5.1 一般事項
(1) この節は、設計許容荷重が比較的大きい建物の構造的な負担を軽減するために構築された屋上緑化システム及び植物種を限定し60kg /m2以下での植栽を可能にした屋上緑化軽量システムを使用して、屋上防水層の上に植栽を行う屋上緑化工事を対象としている。
「標仕」では、荷重の大きな屋上緑化システムは、緑化工事の施工時及び施工後の維持管理作業中に衝撃等により防水層損傷のおそれがあるため、保護コンクリートのある保護防水工法の場合に限って、使用できると規定している。したがって、「標仕」では、屋上緑化システムを採用する場合の屋上の防水は、保護防水工法が認められているアスファルト防水のみとなっている。
しかし、「標仕」では規定されていないが、民間工事では、各種防水層の上にも、屋上緑化システムが施工されている場合がある。
(2) 屋上緑化(植栽基盤 + 植栽)でよく行なわれる分類には、形態によるもの、必要な管理の程度によるものなどがあるが、それらの分類と「標仕」で規定している屋上緑化システム及び屋上緑化軽量システムとの関係を次に示す。
(ア) 形態による分類
屋上緑化は形態により、庭園型、芝生型、菜園型、ビオトープ型、粗放型等に分類される。
屋上緑化システムは、植栽基盤荷重を大きく設定できることから、全ての形態に対応可能であるが、庭園型、菜園型及びビオトープ型を中心に適用される。
各型の概要を次に示す。
庭園型の屋上緑化は、地上に設けられる庭園と同等の心安らぐ美的空間を屋上に実現しようとするものである。長期にわたり美観性、利用性等の機能を維持する必要がある。また、高木を使用することも多く、植物の生長による建物への荷重の増加、病虫害等にも対処しなければならない。
芝生型の屋上緑化は、芝生に覆われた明るくのびのびとした空間を屋上に実現しようとするものである。常に人がその上に乗る(歩く、座る、寝そべる、体操等の軽い運動を行う)ため、植物及び植栽基盤に踏圧が掛かるとともに、人の利用により芝生が荒れやすい。また、雑草が侵入し、繁茂しやすい。これらに対処した種々の維持管理作業が必要になる。
菜園型の屋上緑化は、野菜等の作物を栽培し収穫の喜びを味わうことのできる空間を屋上に実現しようとするものである。短期間で栽培する作物が変わるため、その都度土壌を掘り返すことになる。維持管理作業を使用者が自己の楽しみ、喜びとして行うことができる。
ビオトープ型の屋上緑化は、多様な生物が生息する空間を屋上に実現しようとするものである。生物多様性に寄与するために、人為による周到な管理が必要になる。
粗放(そほう)型の屋上緑化は、緑のもつ修景性、熱環境等の環境改善効果を維持しながら、維持管理作業の負担の軽い緑地を屋上に実現しようとするものである。一般的に、乾燥に強いセダム類や芝草等の植物種を用い、植栽基盤もかなり薄くして軽量化したものを採用することが多い。
屋上緑化システムは、土壌厚が厚く、草本類や木本類等様々な植物が植栽されることから、一般的に管理項目が多いシステムといえる。すなわち、所定の維持管理作業を継続して行うことにより、屋上緑化を特定の好ましい状態に維持することを前提としたシステムである。
一方、屋上緑化軽量システムは、屋上緑化システムと比較して、管理項目の少ないシステムといえる。すなわち、土壌厚が薄いことから、植栽できる植物種が限定されるからである。例えば、セダム類を植栽した場合では、かん水の程度を少なくでき、雑草の繁茂を抑制できることから、比較的維持管理の省力化を図ることが可能となる。
23.5.2 植栽基盤
(1) 「標仕」では、屋上緑化用植栽基盤は、目的、用途、緑化形態等を踏まえて、屋上緑化システムと屋上緑化軽量システムの2種類としている。
屋上緑化システムは、草本類だけでなく低木から高木までの木本類も植栽できる基盤で構成されることから、土壌厚も厚く質量も大きくなる。このため、様々な環境改善効果が期待できる反面、屋上床面の点検、補修、改修等にはかなりの手間と労力が必要になる。
なお、防水層や耐根層を衝撃等による損傷から保護するために、保護コンクリート等の耐根層保護層(衝撃緩衝層)が必要である。
屋上緑化軽量システムは、主に特殊成形パネル等のユニット化されたシステムを用いたもので、「標仕」では植栽基盤の質量は60kg/m2以下とすると規定している。植栽される植物は、セダム類、芝等の地被植物が中心になる。屋上緑化システムに比較して環境改善効果は小さいものの、屋上床面のメンテナンスを比較的容易に実施することができる。
なお、屋上緑化システムと同様に、防水層や耐根層を衝撃等による損傷から保護するための耐根層保護層(衝撃緩衝層)の敷設が必要になる。
(2) 「標仕」では、土壌層の厚さについて、屋上緑化システムでは特記による、屋上緑化軽量システムではシステムの製造所の仕様によるとしているのは、屋上緑化での必要な土壌層の厚さは土壌と植物の種類によって決まるためである。植物の種類と土壌厚による生育状況の相違を表23.5.1に示すが、望ましい土壌厚は表の凡例Cに相当するものである。
表23.5.1 植物の種類と土壌厚による生育状況の相違(目安)
また、土壌層の質量は、土壌の湿潤時の比重から求められる。土壌等の比重を参考に表23.5.2に示す。
23.5.3 材 料
(1) 屋上緑化システムは、次の(ア) から(オ) の各層により構成される。
(a) 耐根層には、その材料特性等から、不透水性のものと透水性のもの、根茎侵入を材料強度等によって物理的に防止するものと植物ホルモン系の根茎調節資材の使用によって化学的に防止するものに分類できる。しかしながら現状では、建物屋上やルーフバルコニーに使用できる耐根層は、物理的に根茎侵入を防止する不透水性のものに限定されている。
なお、防水層の中には耐根層を兼ねるものもある。
(b) 耐根層(耐根シート)に求められる性能は、植物根茎が防水層を貫通しないこと、防水層重ね合せ部に根茎が侵入しないことであり、この性能が長期(2年以上)にわたり維持されることである。そのため、クマザサとノシバの2種類の草本類を性能指標植物の1つとしている。これは、これら植物の地下茎先端部が鋭いとともに、その押し付け力が強く、防水層を貫通するおそれがあるためである。また、タブノキとヤシャブシの2種類の木本類をもう一方の性能指標植物としている。これは、木本類の根は根先端部の押し付け力は小さいものの、根系の肥大生長が防水層に与える影響を無視できないためである。すなわち防水層重ね合せ部を肥大生長した根系が押し広げることが懸念されるためである。同試験方法と判定方法の詳細は、「JASS 8 防水工事」のJASS 8 T-401(屋上緑化用メンブレン防水工法の耐根性試験方法(案))に記述されている。したがって適用する耐根層は、この耐根性試験に合格したものを用いるか、公的認定機関でその使用が認可されているものが適当である。
(c) 耐根層は、技術的なデータや施工実績を基にして、重ね合せ部の接合方法等を検討し、場合によっては防水層の材質の硬さや平たん性等も考慮に入れ、総合的に判断して採用されるものである。
(イ) 耐根層保護層(衝撃緩衝層)
(a) 耐根層保護層(衝撃緩衝層)は、緑化工事の施工中及び施工後の維持管理作業中の衝撃や器具による損傷から耐根層や防水層を守る目的で、耐根層の上に設置されるものである。
なお、「標仕」では、「耐根層を保護コンクリートの下に設ける場合は、保護コンクリートを耐根層保護層とすることができる。」と規定している。しかし、屋上緑化システムの施工面積が屋上の一部分又は小面積の場合で、保護コンクリートの上に、耐根層を設置した場合には、耐根層の下となる保護コンクリートは、耐根層保護層とならない。
(b) 耐根層保護層(衝撃緩衝層)の材料として、「標仕」では、合成樹脂等と規定されている。合成繊維の不織布マットは、衝撃の吸収可能な厚手のものとし、厚さ5mm以上、かつ、600g/m2以上のものがよい。このほかの材料には、アス ファルト成形板、ゴムマット、コンクリート平板等がある。
(c) 緑化工事で大型機械工具を使用しない場合は、耐根層保護層(衝撃緩衝層)は合成繊維の不織布マット程度でもよいが、車両や大型の機械工具で高木を植栽する場合は、アスファルト成形板、ゴムマット等にするほうがよい。さらに 安全な保護機能を必要とする場合は、保護コンクリートにすることが望ましい。
(ウ) 排水層
(a) 近年頻発する集中豪雨に対しても、屋上に滞水することがないように、土壌表面及び土壌中の余剰水を速やかに排水するための排水層が必要になる。屋上における排水層の機能不備は、植物には根腐れを、建物には漏水などをもたらす危険性がある。
屋上は、地上のように雨水の地下浸透がないため、排水層の排水機能の不備は直ちに過湿状態を招き、植物にとっては根腐れ、建物にとっては荷重の増大や漏水の原因となる。
(b) 排水層には、保水機能を有しない「排水型」及び一定量の水をためることのできる「貯留排水型」がある。
排水型と貯留排水型の特徴等を表23.5.3に、その説明図を図23.5.1に示す。
図23.5.1 排水型と貯留排水型の説明図
(c) 「標仕」では、排水層の種類は、軽量骨材、透水排水管(合成樹脂系透水管、黒曜石パーライト詰め透水管)又は板状成形品(成型パネル)とし、種類は特記によるとされている。
1) 「標仕」では、軽量骨材の種類は、火山砂利、黒曜石パーライト、膨張性頁岩等の粒径3~25mm程度のものと規定しており、砂利及び砕石は質量(かさ密度)が大きいことから除外している。
また、「標仕」で層の厚さは、特記によるとされているのは、排水層の厚さは、スラプの排水勾配や勾配方向の排水経路の距離等を勘案した水平方向の必要排水能力によって決まるためである。
2) 排水層は、集中豪雨への対応及び目詰まり防止の観点から広い面積を緑化する場合、透水排水管を併用する。透水排水管は、合成樹脂系透水管、黒曜石パーライト詰め透水管等とされているが、円形の合成樹脂系透水管の管径は75mm以上、板状の透水管は200 × 30(mm)以上、黒曜石パーライト詰め透水管の管径は150mm以上とするのがよい。
② 透水排水管は、合成樹脂系透水管、黒曜石パーライト詰め透水管等とする。
1) 板状成形品(成型パネル)には、二重構造のものや卵パックのような形状のものなど様々な形態の製品があり、大きく分けると、水をためないタイプと皿状部分に水をためるタイプがある。
水をためないタイプは、厚さ7 ~ 50mm程度と薄く、軽量で施工性に優れている。
水をためるタイプは、厚さ25 ~ 70mm程度で、貯水能力は 3~20ℓ/m2程度と幅がある。また、このタイプには製造所独自の工夫が施された製品が多いが、土壌との間に空気層ができるものが望ましい。
2)「標仕」では、排水性能は、鉛直方向で 240ℓ/m2・h 以上とし、水平方向は直ちに排水可能なものと規定している。この鉛直方向の排水性能値 0.24m3/m2・ h ( 240ℓ/m2・h )は、換言すると降雨強度240mm/h までの降雨を排水できる能力を示すものである。近年の日本における局地的大雨の記録によれば、40~ 50mm/10min( 240~300mm/h)程度が最大値になっており、この値に相当するものである。すなわち排水層の排水性能を検討する場合は、このような10分程度の短時間における排水性能を満足することが不可欠になっている。
3) 板状成形品(成型パネル)の強度は、積載荷重に対して、破損、有害なひずみ等がなく、材質は合成樹脂等のものとする。
(エ) 透水層(フィルター層)
(a) 透水層(フィルター層)の役割は、排水層への土壌の流れ込みを防止するとともに、土壌層の重力水を滞りなく排水層に移行させることであり、目詰まりがなく土壌粒子を確実に遮断するものでなければならない。
(b) 「標仕」では、材質は合成樹脂等としており、通常、フィルター(ろ過)機能を備えた合成繊維不織布系のものが多く使用されている。
(c) 透水層(フィルター層)は、十分な目詰まり防止性能を備え、透水性能に優れ、耐腐食性や耐久性があるものの中から、技術的なデータと施工実績により、総合的に判断して採用されるものである。
(d) 透水層(フィルター層)の品質・性能については、(-社)公共建築協会の「建築材料・設備機材等品質性能評価事業」の評価項目に透水フィルターの透水性能試験の方法が規定されているので参考にするとよい。
(a) 屋上緑化用土壌は、限られた土壌厚でより健全な植物の生育を確保するため、高い透水性や保水性が要求される。また、使用場所を考慮に入れ、湿潤時のかさ比重、土壌の飛散と目減り、耐久性、コスト及び再使用の可否等について検討し、総合的に判断して採用されるものである。
(b) 屋上緑化に用いられる土壌には、自然土壌、人工軽量土壌及び改良土壌があるが、「標仕」では、人工軽量土壌又は改良土壌を使用すると規定している。
① 各種土壌の特徴等を表23.5.4に示す。
表23.5.4 土壌の種類と特徴等
1) 人工軽量土壌は、無機質系、有機質・無機質混合系及び有機質系に分類されるが、「標仕」では、無機質系、有機質・無機質混合系を使用すると規定している。各種人工軽量土壌の特徴等を、表23.5.5に示す。
なお、人工軽量土壌の場合、その種類に関係なく、一般的に常設のかん水施設が必要となる。
表23.5.5 人工軽量土壌の種類と特徴等
2) 「標仕」では、人工軽量土壌の性能として、飽和透水係数と水素イオン濃度指数(pH)が規定されている。この項目以外には、人工軽量土壌として明確に規定された性能表示項目や性能値はなく、また、性能の測定方法についても統一されていないためである。参考として、性能の目安及び性能の測定方法の例を、表23.5.6及び表23.5.7に示す。
改良土壌とは、黒土等の自然土壌にパーライト、ピートモス、パーク堆肥等の軽量な土壌改良材を混入して軽量化した土壌をいう。土壌及び土壌改良材の種類とその混合割合は、表23.5.8を参考にして品質計画を作成する。
屋上緑化においては、地上部での緑化と異なる資材、改良項目、考え方があるため、表23.2.6とは異なるので注意する。
表23.5.8 土壌改良材と改良項目
(2) 「標仕」では、屋上緑化軽量システムは、次に示す(ア) から(オ) までの層により構成されたものとし、その工法はシステムの製造所の仕様によると規定している。
なお、このシステムでは強風によるシステム全体の飛散に対する対応が不可欠であり、耐風強度及びその対策が明記されたものを選定する。
耐根層については、(1)(ア) を参照する。
(a) 露出防水層は、機械的衝撃に弱く、施工中についたわずかな傷からも漏水する危険性がある。耐根層保護層(衝撃緩衝層)は、緑化工事の施工中及び施工後の維持管理作業中における衝撃から、防水層、耐根層を保護するためのものである。
(b) 耐根層保護層(衝撃緩衝層)は、長期にわたり機能を維持しなければならないため、耐久性のある材料とする。簡易な保護材としては質量 600g/m2以上の不織布があるが、資材の運搬、スコップ等の使用を考慮する場合には、厚さ 4mm以上の合成樹脂、アスファルト成形板、ゴムマット等が望ましい。
(a) 排水機能のほかに保水機能を備えた成形パネルは、それぞれにシステムの製造所独自の工夫が施されたものが多い。
(b) 成型パネルは、供用時の載荷重に対して有害な変形や損傷が生じない適度な強度を有するものとする。
(c) 鉛直方向の排水性能は、毎時 240ℓ/m2が確保されること、水平方向の排水性能は、植栽部の水上から水下までの水平方向の長さ、集水面積、排水空間断面積、水勾配等を勘案し、雨水を速やかに排水できること、見切り材の水抜き管も同様に対応することが望ましい。
透水層については、(1)(エ) を参照する。ただし、ユニットタイプには、ユニット内で土壌流失を防ぐ工夫がされたものもある。
屋上緑化軽量システムでは、セダム類、芝等の植物が多く用いられているが、それぞれに植物特性が異なる。セダム類は乾燥に耐えるため、かん水は比較的少なくてすむが、芝は定期的なかん水と刈込みが必要である。このように、植物によって土壌(培地)に要求される性能に違いがあるため、「標仕」では、植込み用土はシステムの製造所の仕様によると規定している。土壌を使用した場合の性能の目安は、表23.5.6を参考にするとよい。
(カ) 屋上緑化軽品システムについては、「標仕」で要求する品質を満たすものとして、(-社)公共建築協会の「建築材科・設備機材等品質性能評価事業」(1.4.4 (5)参照)で評価した製品があるので参考にするとよい。
(ア) 屋上の植物の生育環境は、制約された植栽基盤、建物の祖熱やふく射熱による熱ストレス、強風の影響やこれらの現象によって引き起こされる水分蒸散量の増大等厳しい条件下にあり、植物の環境適応特性に配慮した植栽計画が求められる。
使用できる植物種は、可能性としては多くの種があるが、経年変化も含めた実績のある植物の使用が望ましい。植物種は、求められるデザインや機能あるいは文献調査や使用実績調査に基づき、植栽地の環境、植栽基盤条件、植物特性、植栽の形態、維持管理の頻度、コスト等について検討し、総合的に判断して採用されるものである。
(イ) 「標仕」では、樹木は「標仕」23.3.2 (1)によるとして地上と同等としているが、屋上緑化は、生育環境が厳しいことや枯死した場合の植替えの困難さ等から、地上より厳しい品質が求められる。屋上緑化に用いる樹木に要求される品質には、次のようなものがある。
(a) 樹木は、根回し又は床替えをしたもので十分に細根が発達し、根鉢の崩れがないものとする。ただし、細根性の低木については、根回し又は床替えの必要はない。
(b) 樹木の根鉢の厚みは、植栽基盤の土層厚より薄いものとする。
(c) 植栽地の土壌と根鉢土壌は、なじみのよいものとし、かさ比重の軽い土壌層に植栽する樹木は、粘土質土壌の根鉢は避ける。
(d) 樹木は必要以上に徒長したり、肥大生長したものでなく、それぞれの樹種の特性に応じて枝葉が適度に密生し、バランスの良い状態に育成栽培されたものとする。
(ウ) 屋上緑化では、地上と違って樹木の質量にも注意を払わなくてはならない。樹木の質量は、生長するにつれて増加していく。また、植栽の維持管理の仕方によっても異なってくる。
中高木等の質量は、地上部の幹、枝及び葉の質量と地下部の根を取り込んだ根鉢の質量に分けられるが、一般的には、地下部の質量の方がはるかに大きく、根鉢の大きさが樹木の質量を大きく左右するといえる。
低木等の質量については、明確な資料はないが、ある実測値によると、1m以下の低木で500g ~12kg/株(地上部+地下部)と幅がある。
「標仕」では、芝及び地被類は、「標仕」23.4.2 (1)及び(4)によるとし、地上と同様としているが、屋上緑化の場合、これらに加えて要求される品質には、次のようなものがある。
(a) 冬期に地上部が休眠して冬枯れ状態になっても土壌の緊縛力があり、丈があまり高くならないで密に表面を覆うものとする。
(b) 薄層の植栽基盤に使用する植物種は、耐乾性に優れているものとする。
(5) 見切り材(土留め材)
(ア) 植栽地の見切り材(土留め材)には、現場打ちコンクリート、コンクリートブロック、れんが等を用いた造成型、組立式のシステムコンテナ型、金属成形型等があり、「標仕」では、特記によると規定している。見切り材は、風による飛散防止策、質量、強度、耐転倒性、固定方法、経年変化、取替えの簡便さ、デザイン性等を考慮して、使用する材料が選定される。
(イ) 屋上緑化軽量システムの場合、見切り材もシステムの部材として組み込まれているものが多い。
(ウ) 見切り材の排水孔は、雨水の集水面積、排水勾配、見切り材置材等を考慮し、費材、形状、間隔、寸法が決められる。排水孔には目詰まり防止、土壌流出防止のための処理を行う。
屋上の舗装材(床材)に要求される品質は、次のようなものがある。
※屋上での転倒事例は、降雨時や表面が湿潤時に多く発生する。特に、ウレタン途膜防水、塩ビシート防水層の表面は湿潤状態になるとかなり滑りやすくなるので、メンテナンス通路とする場合には注意が必要である。
支柱には、植栽基盤上に設置する地上支柱と地下に埋設する地下支柱とがある。土層厚が40cm以上あるような場所では、従来型の八ッ掛け支柱、布掛け支柱又はワイヤ掛け支柱を行う場合もある。
(ア) マルチングとは、地表面の乾燥防止、雑草防止、土壌の飛散・流失防止、保温等の目的で地表面を覆うことをいい、そのための材料をマルチング材という。屋上緑化は、特に土壌が薄く、水分保持量も少ないことから、可能な限りマルチングを実施することが望ましい。
(イ) マルチング材は、素材によってそれぞれ特徴があり、使用に当たっては、目的に応じた適切な材料とする。一般的には、松のバークチップ、ヤシガラ、間伐材や伐採木のチップ等が使用されている。風が強い場所では、火山砂利、人工骨材の比較的重いもの、接着剤入り樹皮繊維等を使用するとよい。また、火気について懸念される場合、難燃性の資材を使用する。
(ア) 屋上緑化における植栽地への水の供給は、自然状態においては雨水によるが、無降雨の日が続くときを考慮して、可能な限りかん水装置を設けることが望ましい。かん水装置は、植物の維持に必要な水分の補給のため、植栽規模に応じた管径の給水管、かん水制御装置及びかん水装置により構成されている。
(イ) かん水に使用できる水には、上水、貯留雨水、井戸水、中水があるが、多くは上水が使用される。上水以外の水を使用する場合、相応の対策が必要となる。
(ウ) かん水の制御方法には、手動と自動があり、自動にはタイマ一方式と土壌水分計の設定値による管理方式等がある。管理方法と密接にかかわるため、制御方法と管理方法の両者を勘案して選定される。
(エ) かん水方式には、地表・地中・底面かん水がある。地表かん水は、スプリンクラーや散水パイプ等があるが、水が風で流されたり、植物の根元に行きわたらないなどの問題がある。かん水装置は、上水の飲料水の配管設備及びこれと給水系統をおなじくする配管設備と直接連結させないこと(建築基準法施行令第5章の四 建築設備等、水道法施行令第五条による)。すなわち給水タンクを設置し、上水(飲料水)の吐出口と水面を離し、給水タンク内の水をポンプで加圧してかん水する方法になる。ただし、給水後の管内残留水をオートドレンで排出し、(公社)日本水道協会が認定するストレーナー、バキュームバルブなどのバルブ類、逆止弁を設層した場合では、上水配管との直結が認められることがある。
23.5.4 工 法
(1) 設計内容について次のようなことを確認するとよい。
(ア) 植栽部及び舗装部の総積載荷重が、設計時に想定した荷重以内になっていること。特に次のことに注意して確認する。
(a) ベンチ、パーゴラ等、付帯施設も含んだ荷重になっていること。
(b) 樹木の荷重は、植栽時ではなく生長して成木になったときの荷重になっていること。
(c) 使用する土壌の種類及び土壌厚の湿潤状態における荷重になっていること。屋上緑化空間では、風が吹くと植裁基盤や樹木に風圧力が作用する。とりわけ屋上緑化軽量システムを採用する場合では、軽量な植栽基盤そのものが風による負の風圧力によって飛ばされることが懸念される。植栽基盤に作用する負圧は、国土交通省告示第1231号「屋根ふき材及び屋外に面する帳壁の風圧に対する構造耐力上の安全性を確かめるための構造計算の基準を定める件」に準拠して求めることができる。同基準によれば、植栽基盤には大きな負圧が作用するため、植栽基盤の確実な固定は必須になる。以上の観点から、屋上緑化軽量システムを採用する場合は、屋上面の風圧力を計算し、耐根層を含む植栽基盤の固定方法を確認することが不可欠といえる。
(イ) 防水層に適した耐根対策、保護対策が取られていること。
(ウ) 防水立上り上端は、最も漏水等の事故が多い箇所である。植栽の土壌面は防水立上り上端より低くなっていること。安全を考慮すると土壌面は防水立上り上端より150mm以上低くすることが望ましい。
(a) 耐根層が平面部、重ね合せ部、立上り入隅部、貫通パイプ周囲等において同等の性能をもつようになっていること。
(b) 耐根層が保護コンクリートの上部又は防水層直上部に設置されるようになっていること。
(c) 植栽が部分的な場合、植栽範囲が耐根層の敷設範囲に納まること。耐根層は、植栽範囲の周囲 1m程度まで、敷設することが望ましい。
(d) 立上り部に直接土壌が接する場合は、耐根層は土壌面より高く立ち上げてあること。
(オ) 耐根層保護層(衝撃緩衝層)が耐根層の上部に設置されていること。予想される衝撃の種類、現場状況等に応じて、適切な耐根層の保護処置が講じられていること。
かん水装置の設置に当たっては、かん水装置と上水(飲料水)の給水系統と同じくする配管設備を直接に連結させないこと(建築基準法施行令第5章の4、水道法施行令第5条による)及びかん水管の引込み箇所、かん水装置、かん水方法及びかん水量が適切であること。
(キ) 屋上緑化工事以外ではあるが、排水関係については、次のようなことを確認するとよい。
(a) ルーフドレンは、排水面に最低2箇所以上設置されていること。ルーフドレンの口径は目詰まりを考慮して余裕のある管径になっていること。
(b) 皿形ストレーナーは、目詰まりを起こしやすいので、山形又はドーム形ストレーナーになっていること。
(c) 植込み内にルーフドレンを設置する場合は、土壌の流入や落葉による目詰まりを防止するため、点検可能な桝を取り付けるようになっていること。
(d) オーバーフロー管が設置されている場合は、オーバーフロー管の排出孔には目詰まり防止用の対策がなされていること。
(e) パラペットや壁面に直接土壌が接する場合は、壁面等の雨水を速やかに排水できる対策がなされていること。流速のついた雨水による土壌の流失、ルーフドレンの排水阻害を防ぐため、壁面等と土壌の間に排水溝の設置又は雨水が浸透しやすい砂利の敷設等の排水対策がなされていること。
壁際の排水溝の例を図23.5.3に示す。
(f) 植栽部が排水勾配と直交又は排水路を分断する場合は、雨水が停滞しないように、排水経路が確保されていること。
(g) 土壌の種類によっては、集中豪雨時に地中に浸み込みきれずに、あふれて表面を流れる場合があるため、排水溝や排水桝等の表面排水設備が設置されていること。
(ク) 屋上緑化のメンテナンス通路の安全性が確保されていること。
(ケ) 屋上緑化利用者の安全対策が図られていること。
図23.5.3 壁際の排水溝の例
(2) 施工上、次のようなことに注意する。
(ア) 屋上緑化システムの場合は、耐根層が損傷を受けると耐根層を貫通した根が防水層へ達して防水層を損傷させる危険性があるため、施工に当たっては不用意に耐根層を損傷することのないよう細心の注意を払うとともに、耐根層を保護する耐根層保護層(衝撃緩衝層)を敷設してから、工事を行うことが必要である。
(a) 保護コンクリートの上に耐根層を配置する場合で、植栽部と舗装部が一体となったものは、メンテナンス時に舗装部への根の侵入を確認できないため、植栽部と舗装部を連続して耐根層を敷設する。植栽部が見切り材で仕切られ、植栽部からの根の侵出が確認できメンテナンス時に根を切り取ることができるものは、見切り材外部下まで耐根層を敷設する。耐根層上部には施工中及び管理時の損層防止のため耐根層保護層(衝撃緩衝層)を敷設する。
(b) 保護コンクリートの下の防水層直上に耐根層を設置する場合は、保護コンクリートが防水層及び耐根層の保護機能を兼ねているため、耐根層保護層(衝撃緩衝層)を設置する必要はない。この場合は、耐根層は立上りを含む防水層全面に施工することになり、庭園型、菜園型、ビオトープ型等全ての緑化形態に対応することができる。
(イ) 屋上緑化軽量システムでは、アスファルト保護防水と露出防水の2種類が適用される。アスファルト保護防水の場合では、防水層の上に耐根層が敷設され、保護コンクリートが耐根層保護層(衝撃緩衝層)を兼ねることになる。一方、露出防水の場合では、耐根性がある防水層又は耐根層の上に耐根層保護層(衝撃緩衝層)が敷設されることになる。
また、風に対する抵抗性に関しては、23.5.4[工法](1)(ア)を満足する仕様とする。図23.5.4に風圧力を考慮した屋上緑化軽量システムの設置方法の一例を示す。
図23.5.4 シート防水(接着工法)の場合の連結固定の対応例
(ウ) 土壌については、飛散と水分量について注意する。
屋上空間は、風が強く、乾燥しやすい環境のため土壌が飛散しやすい。特に人工軽量土壌は軽く飛散しやすいため注意する。土壌の飛散は建築設備への汚れ、ルーフドレンヘの流入による排水管の詰まり等の原因となる。また、近隣周辺への影響も配慮する必要がある。施工中、土壌の飛散が予想される場合には、あらかじめ水を吸わせてから施工したり、頻繁に散水するなどして飛散防止に努める。
また、粒径の大きな土壌に一時に大量の水を掛けると微粒子分が洗い流されて底に堆積し、フィルターやルーフドレンの目詰まりを起こすため注意する。
気乾状態の人工土壌の場合、必ず十分に水分を含ませてから植物を植え付ける。これをしないと、気乾状態の土壌が、植物、根鉢から水分を奪うため、急激に枯死に至ることがあるため注意する。
(エ) 屋上は、一般的に風が強いため、樹木の転倒防止及びパーゴラやトレリス等の構築物の飛散防止のため固定する必要がある。
(a) 樹木の固定方法としては、幹を押さえる方法、根鉢を押さえる方法等がある。
(b) 土壌厚があり従来型支柱により固定する場合は、屋上には耐根層があるためそれらを傷つけることがないよう、根杭やアンカーの留め方に十分注意して施工する。
(c) 地際で幹をベルトで固定する地下支柱の場合は、樹木の生長に伴いベルトが幹に食い込むおそれがあるため、数年経過後、ベルトを緩めるなどの対策が必要となる。
(d) 必要に応じて、施工者から、樹木等の固定方法、樹木等の風圧力計算書等を施工計画書とともに提出させるとよい。
23.5.5 新植樹木、芝及び地被類の枯補償
(1) 屋上緑化工事における新植樹木、芝及び地被類の枯補償は、23.3.4を参照する。
(2) 「標仕」では、屋上緑化工事の枯補償についても地上と同じ扱いとしているが、屋上は、植物の生育環境として極めて厳しい条件下にある。したがって、完成引渡し後の管理不備による植物の枯損等が起こらないように、維持管理体制及び管理方法について、発注者、施設管理者及び受注者等間で協議しておくとよい。
23.5.6 屋上緑化の維持管理
なお、維持管理計画書とは、機器類等の取扱い説明書に当たるものである。
維持管理計画書に記載する主な内容は、次のとおりである。
台風や強風のおそれがある場合は、事前に飛散物の有無や、ルーフドレン回りの堆量物を点検して必要な処置を行い、風が収まった後に再点検し、必要に応じて復旧作業を行う。
(b) 施設管理
外観診断により、防水層等の破損及び固定状態を確認する。
ごみ詰まりの有無を点検し、必要に応じて清掃を行う。
かん水の制御方法には、ソーラー、AC100V及び電池式がある。主な管理作業は次のとおりである。
1) 春夏秋冬の季節の変わり目にタイマーの設定を変更し、1回/年フィルターの清掃を行う。
2) 寒冷地においては、冬期はかん水装置の破損を防ぐため、水抜きやヒーティング処理を行い、春先に給水を開始する。
3) 電池式制御の場合は、電池交換の時期を取扱い説明書等で確認し、電池切れが生じないよう早めに交換する。
4) ソーラー式制御の場合は、ソーラーセル(太陽光が当たる部分)の清掃、日当たりの確認、充電器の寿命等を確認し、必要な処置を行う。
5) かん水パイプ等が破損した場合は、発見次第直ちに復旧作業を行う。
6) 給水元栓に「常時開」の札を付け、点検時に開となっていることを確認する。
腐食、塗装、固定状態等の確認を行い、問題があれば早急に補修する。
本項では、一般的、かつ、基本的な管理(東京標準)について概要を述べる。
なお、花木については、花芽の分化期を考慮してせん定時期を決定する。
ノシバ及びコウライシバの場合、5月~9月の生長期に毎月1回を目安に刈り込む。
手動かん水の場合は、無降雨日の連続状況、土壌厚、土壌の保水性等を勘案し、適切にかん水する。1回のかん水量は、植栽基盤底部まで十分に届く量とする。
樹木の植栽地については、2回/年、芝生地については3回/年を標準とする。
頻繁に利用する芝生地については2回/年を標準とし、1回当たり低度化成肥料を適宜施す。
病害虫の早期発見に努め、発見したら直ちに適切な方法にて防除する。
必要に応じ、高中木の支柱結束直しを行う。芝生地のエアレーション及び目土かけは、積載可能荷重、かん水装層の状況等を勘案し判断する。
①4)に準ずる。
芝生については、3回/年を標準に行う。また、セダムの場合、施工後、繁茂するまでの1 ~2箇月は、特に雑草が侵入しやすいので注意する。その後は1~2回/年の手抜き除草を行う。
なお、セダムの場合、過剰な施肥は、徒長を助長し、蒸れの原因となるので避ける。
なお、セダムの代表的な病気としては白絹病がある。害虫で特に問題となるのは、ヨトウガの幼虫(ヨトウムシ)の大量発生である。
利用者の踏圧により芝が損耗した場合には、日土かけ、エアレーション、補植・張替え作業等が必要となるが、積載可能荷重、かん水装置の状況等を勘案し対応する。枯死した箇所には補植を行う。また、セダム類が繁伐し蒸れが懸念される場合、シュートの大半が花茎に発達した場合には、刈込みを行う。
土壌の飛散によって厚みにムラが生じた場合、薄い場所には土壌を補充する。
※ 問題番号[ No.1 ]~[ No.15 ]までの 15 問題のうちから、12 問題を選択し、解答してください。
[ No.1 ]
伝熱に関する記述として、最も不適当なものはどれか。
1.壁体の熱貫流抵抗は、熱伝達抵抗と熱伝導抵抗の和によって得られる。
2.壁体の含湿率が増加すると、壁体の熱伝導率は小さくなる。
3.外断熱の施された熱容量の大きな壁は、室温の著しい変動の抑制に有効である。
4.熱損失係数は、建物の断熱性能、保温性能を表す数値として用いられる。
2
壁体の含湿率が増加すると水成分は熱抵抗は小さいので、全体的に熱抵抗が小さくなり熱伝導率は大きくなる。結露なども発生しやすくなる。
1.◯
熱貫流抵抗は熱貫流率の逆数で、壁体の熱の通しにくさを表す数値である。
熱貫流抵抗 = 熱伝達抵抗 + 熱伝導抵抗
3.◯
内断熱に比べて外断熱の方が、壁体内で低温となる部分ができにくく、室温の著しい変動の抑制に有効である。
4.◯
熱損失係数は、建物の断熱性能(保温性)、気密性を総合した熱的性能の評価指標として用いられるもので、各壁及びサッシの貫流熱損失及び換気、ヒートブリッジ等による熱損失の合計を求め、これを延面積で割った値で表す。この値が小さいほど、床面積あたりの熱損失が少なく、エネルギー消費も少ない。
[ No.2 ]
照明又は採光に関する記述として、最も不適当なものはどれか。
1.昼光率とは、全天空照度に対する室内のある点の天空光による照度の比をいう。
2.照度とは、受照面の単位面積当たりの入射光束をいう。
3.グレアとは、高輝度な部分、極端な輝度対比や輝度分布などによって感じられるまぶしさをいう。
4.光度とは、反射面を有する受照面の光の面積密度をいう。
4
光度は、光源から発散される光のエネルギーの強さを表す尺度であり、物理的には光源の中のある点からあらゆる方向に向けて発散される単位立体角あたりの光束をいう。単位は cd(カンデラ)である。反射面を有する受照面の光の面積密度は輝度という。
1.◯
昼光率とは、室内のある点の照度とその時の全天空照度の比を%で表したものである。
昼光率 =(室内の水平面照度)/(全天空照度)×100(%)
例えば、屋外の照度が 5,000 lxで室内のある点の照度が 100 lxのとき、昼光率は2%となる。
2.◯
照度とは、受照面の単位面積当たりの入射する光のエネルギー量、すなわち受照面の単位面積あたりの入射光束をいう。単位はルクス(lx)である。
3.◯
グレアとは、視野内の高輝度な点・面あるいは極端な輝度対比や輝度分布などによって感じられるまぶしさをいう。視力低下や、眼の疲労・不快感などを生じさせる原因となる。
[ No.3 ]
音に関する記述として、最も不適当なものはどれか。
1.剛壁と多孔質材料との間に空気層を設けると、低音域の吸音率は上昇する。
2.残響時間は、室容積に比例し、室内の総吸音力に反比例する。
3.床衝撃音レベルの遮音等級を表す L 値は、値が大きいほど遮音性能が高い。
4.単層壁の透過損失は、一般に壁の面密度が大きいほど大きくなる。
3
床衝撃音の遮音等級は、音源室で床衝撃音発生装置によって発生させた衝撃音を、下階で測定した音圧レベル、Lr-50、Lr-55等で示す。等級が小さいほど床の遮音性能が高い。
1.◯
剛壁と吸音材料である多孔質材料との間に空気層を設けた場合、空気層の厚さが増すほど低温域の吸音率が増加する。
2.◯
音源から発生した音は、天井や壁等で反射を繰り返し、そのたびにそれらの材料に吸収されて減衰するので、音源がなくなっても、室内にはわずかの間、響が残る。音源を停止した後、音のエネルギー密度が 60dB減少するのに要する時間を残響時間という。
残響時間 T(秒)
T = 0.161 V/A
V:室容積(m3)
A:室の総吸音力(m2)
室容積 V に比例し、室の総吸音力 Aに反比例する。
4.◯
透過損失とは、壁体等の遮音の程度を示すもので、値が大きいほど、壁体等の遮音性能が高いことを表す。単層壁の透過損失は、単位面積当たりの質量(面密度)と、周波数が大きいほど大きくなる。これを単層壁の質量則という。
[ No.4 ]
鉄筋コンクリート構造に関する記述として、最も不適当なものはどれか。
1.梁のせん断耐力は、一般にあばら筋量を増やすことにより増加する。
2.梁に貫通孔を設けた場合の構造耐力の低下は、せん断耐力より曲げ耐力の方が著しい。
3.柱梁接合部内の帯筋間隔は、原則として 150 mm 以下とし、かつ、隣接する柱の帯筋間隔の 1.5 倍以下とする。
4.普通コンクリートを使用する場合、柱の小径は、原則としてその構造耐力上主要な支点間の距離の 1/15 以上とする。
2
梁の曲げ耐力は、一般に主筋の位置と断面積により決まるが、せん断耐力はコンクリートの断面積及びせん断補強筋量によって決まる。したがって、貫通孔が設けられると、コンクリートの断面積が減少し、せん断耐力が著しく低下する。
1.◯
梁のせん断耐力は、一般にあばら筋の量をふやすことにより、柱のせん断耐力は、一般に帯筋量を増やすことにより、増加する。(建築基準法施行令第78条)
3.◯
柱梁接合部内(仕口部)の帯筋間隔は、15cm以下、かつ、最も細い主筋の径の15倍以下とする。(建築基準法施行令第77条第三号)
4.◯
柱の小径は、構造耐力上主要な支点間の距離(通常上下の梁の間の長さ)の1/15以上とする。(建築基準法施行令第77条第五号)
[ No.5 ]
鉄骨構造に関する記述として、最も不適当なものはどれか。
1.片面溶接による部分溶込み溶接は、継目のルート部に、曲げ又は荷重の偏心による付加曲げによって生じる引張応力が作用する箇所に使用してはならない。
2.部材の引張力によってボルト穴周辺に生じる応力集中の度合は、普通ボルト接合の場合より高力ボルト摩擦接合の方が少ない。
3.完全溶込み溶接による T 継手の余盛は、溶接部近傍の応力集中を緩和する上で重要である。
4.高力ボルト摩擦接合における許容せん断力は、二面摩擦の場合は、一面摩擦の 1/2 である。
4
高力ボルト摩擦接合は、ボルトの軸に導入された張力により生じる接合部材間の摩擦力によって力を伝達する方法である。高力ボルト1本当たりの許容せん断力 Rs は次式が与えられ、二面摩擦の耐力は一面摩擦の2倍となる。
Rs = nμN/γ
n:摩擦面の数
μ:すべり係数(μ = 0.45)
N:設計ボルト張力
γ:安全率(γ = 1.5)
1.◯
部分溶け込み溶接は、溶接線と直角方向に引張応力が作用する場合や溶接線を軸とする曲げが作用する場合及び繰り返し荷重を受ける箇所には使用できない。
2.◯
高力ボルト摩擦接合は、高力ボルトで継手部材を締め付け、部材間に生じる摩擦力によって応力を伝達する接合法である。特徴は、応力の流れが円滑で、継手の剛性が高いことにある。
せん断力を受けるリベット、あるいは中ボルト接合の場合、外力が作用すると接合部にずれが生じ、ボルト鋼板が支圧状態になったあとで応力の伝達が行われ、その場合、穴周辺に高い応力集中が生じる。
それに対し、摩擦接合では接触面で応力が伝達され、応力伝達面積が大きいため、高い応力集中は起こらない。
3.◯
T継手は、板が直角に交わるため、直交する隅角部には応力集中が生じる。そのため、なだらかな余盛を設けて応力集中を緩和することが重要である。
[ No.6 ]
杭基礎に関する記述として、最も不適当なものはどれか。
1.支持杭を用いた杭基礎の許容支持力には、基礎スラブ底面における地盤の支持力は加算しない。
2.埋込み杭は、打込み杭に比べて極限支持力に達するまでの沈下量が大きい。
3.支持杭を用いた杭基礎の場合、杭周囲の地盤沈下によって杭周面に働く正の摩擦力を考慮する。
4.地盤から求める単杭の引抜き抵抗力には、杭の自重から地下水位以下の部分の浮力を減じた値を加えることができる。
3
支持杭を用いた杭基礎で上部に圧密を起こす地盤がある場合、地盤の沈下により、杭を引き込もうと杭周面に下向きの働く負の摩擦力が生じる。
1.◯
支持杭の許容支持力は、杭の支持力のみによるものとし、基礎スラブ底面における地盤の支持力は加算しない。
2.◯
打込み杭は、打撃ハンマー等で杭周辺の土と摩擦力に抵抗して打設するため、荷重に対する沈下は少ないが、埋込み杭はあらかじめオーガーが掘削した孔に埋設するので杭周辺の摩擦力が小さく、沈下が大きい。
4.◯
杭の引抜き力は、杭自体の引張り強度と、地盤の引抜き抵抗の小さい方で決まる。地盤の引抜き抵抗による値は、極限の引抜き抵抗の1/3を長期許容引抜き力とするが、杭自体も引き抜きに抵抗すると考える。
tRs = 1/3×tRu + Wp
tRs:杭の長期許容引抜き抵抗力
tRu:地盤による杭の極限引抜き抵抗力
Wp:杭の自重(地下水位以下の部分については浮力を考慮する)
[ No.7 ]
建築物に加わる荷重、外力に関する記述として、最も不適当なものはどれか。
1.雪止めが無い屋根の積雪荷重は、屋根勾配が 60 度を超える場合には 0 とすることができる。
2.風圧力を求めるために用いる風力係数は、建築物の外圧係数と内圧係数の積により算出する。
3.地震層せん断力は、2階に生じる地震層せん断力より1階に生じる地震層せん断力の方が大きい。
4.保有水平耐力計算において、多雪区域の積雪時における長期応力度計算に用いる荷重は、固定荷重と積載荷重の和に、積雪荷重に 0.7 を乗じた値を加えたものである。
2
風力係数Cfは、次式により求める。
Cf = Cpe ー Cpi
Cpe:建物の外圧係数
Cpi:建物の内圧係数
風力係数は、建築物の外圧係数と内圧係数の積ではなく、差によって算出する。(建築基準法施行令第87条及び平成12年建設省告示1454号第3)
1.◯
屋根の積雪荷重は、雪止めがある場合を除き、屋根の勾配が60度以下の場合、屋根勾配が緩やかほど大きい。屋根の勾配が 60 度を超える場合は、 0 とすることができる。 (建築基準法施行令第86条第4項)
3.◯
地震時に各階に生じる地震層せん断力は次式で求められる。
Qi = Ci ×Wi
Qi:地震層せん断力
Ci:地震層せん断力係数
Wi:その層が支える荷重
したがって、2階よりも1階の方が支える荷重が大きいので、地震層せん断力も大きくなる。
4.◯
保有水平耐力計算より、多雪区域の積雪時の計算に用いる荷重は、
Q(固定荷重) + P(積載荷重) + 0.7×S(積雪荷重)
である。(建築基準法施行令第82条第二号)
[ No.8 ]
図に示す単純梁に等変分布荷重 w 及びモーメント荷重 M が同時に作用するとき、支点 B の反力の大きさとして、正しいものはどれか。
1.0 kN
2.1 kN
3.3 kN
4.4 kN
1
解説図1の支点反力を求めるには、分布荷重を集中荷重におきかえる。
1kN/m × 6m × 1/2 = 3kN
で、その位置は、A点から 4mの位置である。
B支点の反力は、A点のΣM =0より、
1RB × 6m ー 3kN × 4m = 0となり、
1RB = 12kN・m/6m = 2kN
解説図2より
B支点の反力は上記と同様にA点のΣM = 0として求める。
-12kN・m + 2RB×6m = 0として、
2RB = 2kN
RB = 1RB ↑ + 2RB↓ = 2kN + 2kN
RB= 0 kN
したがって、正解は1
[ No.9 ]
図に示す梁の AB 間に等分布荷重 w が、C 点に集中荷重 P が同時に作用するとき、曲げ モーメント図として、正しいものはどれか。 ただし、曲げモーメントは材の引張り側に描くものとする。
2
A~B点間の中央に指標としてD点を設け、解説図1と2からD点の値を求める。解説図1のD点の値が大であれば「2」、小であれば「1」が正解となる。また、BーC間の曲げモーメントは、曲がりの外側(解説図 BーC間の上部)になる。
(1)解説図1におけるD点の曲げモーメントを求める。
B点の曲げモーメントは、以下により、9kN・mとなる。
3kN × 3m = 9kN・m
D点は、9kN・mの1/2なので、
4.5 kN・m
(2)解説図2におけるD点の曲げモーメントは以下により、2.25kN・mである。
2MD = ωl 2 × 1/8 = 2 × 32/8 = l8/8
2MD = 2.25
全体の曲げモーメントは、解説図3の通りとなる。
したがって、選択肢2が正解となる。
[ No.10 ]
コンクリートに関する記述として、最も不適当なものはどれか。
1.単位水量の小さいコンクリートほど、乾燥収縮が小さくなる。
2.コンクリートに AE 剤を混入すると、凍結融解作用に対する抵抗性が改善される。
3.空気量が 1 % 増加すると、コンクリートの圧縮強度は 4 ~ 6 % 低下する。
4.コンクリートのヤング係数は、圧縮強度が大きくなるほど、小さくなる。
4
コンクリートのヤング係数は、コンクリートの強度が大きいほど、大きくなる。ヤング係数とコンクリートの強度の関係は次式で表される。
EC = 3.35 × 104 × (γ/24)2× ( Fc/601/3
γ:コンクリートの単位容積重量(kN/m3 )
Fc:コンクリートの設計基準強度(N/mm2)
1.◯
単位水量が小さいコンクリートほど、水分が少ないので乾燥したときの収縮は小さくなる。単位水量は大きくなると、乾燥収縮、ブリージング、打込み後の沈降などが大きくなり、コンクリートの品質、耐久性上好ましくない。(JASS5)
2.◯
AE剤はコンクリート中に無数の独立した微細気泡を連行させることができる。この気泡はコンクリートに次のような効果をもたらす。
①ワーカビリティが良好になる。
②単位水量が低減する。
③コンクリートの凍結融解に対する抵抗性が増し、耐久性を向上させる。
④中性化に対する抵抗性を増大させる。
3.◯
一般的なコンクリートの場合、空気量は4~5%であるが、AE剤の使用によって、空気量が1%増加すると、4~6%の割合で圧縮強度が低下する。
[ No.11 ]
左官材料に関する記述として、最も不適当なものはどれか。
1.せっこうプラスターは気硬性であり、しっくいは水硬性である。
2.ポルトランドセメントは練り混ぜ後にアルカリ性を示し、せっこうプラスターは弱酸性を示す。
3.せっこうプラスターは、ドロマイトプラスターに比べ、硬化に伴う乾燥収縮が小さい。
4.ドロマイトプラスターは、しっくいに比べ、粘度が高く粘性がある。
1
せっこうプラスターは水硬性であり、しっくいは二酸化炭素と反応して硬化する気硬性である。
2.◯
ポルトランドセメントは練混ぜ後にアルカリ性を示し、せっこうプラスターは弱酸性を示す。
3.◯
せっこうプラスターは硬化が早く比較的強度もあり針状結晶によって硬化するため収縮ひび割れが生じにくい。(建築工事監理指針)
4.◯
ドロマイトプラスターは、一般的に粘度が高く、のりを用いずに水と練り合わせて施工することができる。
[ No.12 ]
建築用ガラスに関する記述として、最も不適当なものはどれか。
1.複層ガラスは、2枚のガラスの間に乾燥空気層を設けて密封したもので、結露防止に効果がある。
2.合わせガラスは、2枚以上のガラスをプラスチックフィルムを挟み接着したもので、防犯 に効果がある。
3.熱線吸収板ガラスは、板ガラスの表面に金属皮膜を形成したもので、冷房負荷の軽減に効果がある。
4.強化ガラスは、板ガラスを熱処理してガラス表面に強い圧縮応力層を形成したもので、衝撃強度が高い。
3
熱線吸収板ガラスは、太陽放射熱を吸収させるためガラスの原料の中にニッケル、コバルト、鉄などを入れてあり、熱割れを起こしやすい。なお、板ガラスの表面に金属皮膜を形成したもので、冷房負荷の軽減の効果が高いのは、熱線反射ガラスである。
1.◯
複層ガラスは、2枚のガラスの間に外気圧に近い圧力の乾燥気体を封入し、その周辺を密封したもので、断熱性が高く、結露防止に効果がある。
2.◯
合わせガラスは、2枚以上の板ガラスの間に透明プラスチックフィルムを密着させてあり、耐貫通性能が高く、防犯性能も高い。
4.◯
強化ガラスは、板ガラスを軟化温度近くまで加熱した後、常温の空気を均一に吹き付け急冷して作られたもので、ガラス表面層に圧縮応力、内部にそれとつりあう引張応力が存在し、耐衝撃性・耐風圧性・耐熱衝撃性が大きい。
[ No.13 ]
防水材料に関する記述として、最も不適当なものはどれか。
1.ストレッチルーフィング 1000 の数値 1000 は、製品の抗張積(引張強さと最大荷重時の伸び率との積)を表している。
2.改質アスファルトルーフィングシートには、I 類とII 類があり、I類の方が低温時の耐折り曲げ性がよい。
3.塗膜防水に用いる補強布は、必要な塗膜厚さの確保と立上り部や傾斜面における防水材の垂れ下がりの防止に有効である。
4.通気緩衝シートは、塗膜防水層の破断やふくれの発生を低減するために用いる。
2
改質アスファルトルーフィングシートにはⅠ類とⅡ類があり、Ⅱ類の方が低温時の耐折れ曲げ性が良い。(JIS A6013)
1.◯
ストレッチルーフィングは製品の抗張積の値を使用することと定められている。(建築工事監理指針)
3.◯
補強布は、塗膜防水材を均等に塗り込むため、塗膜厚さの確保に有効であり、立上がり部や傾斜面においては未硬化の塗膜防水材を保持するために有効である。(建築工事監理指針)
4.◯
通気緩衝シートは、シートの下面に下地から水蒸気を通気させるための特殊加工したシート状の材料で、下地と防水層の間を挿入し、塗膜防水層の破断や膨れの発生を低減させる。(建築工事監理指針)
[ No.14 ]
日本工業規格(JIS)による建築用シーリング材に関する記述として、最も不適当なものはどれか。
1.2成分形シーリング材は、基剤と着色剤の2成分を施工直前に練り混ぜて使用するシーリング材である。
2.シーリング材のクラスは、目地に対する拡大率、縮小率などで区分されている。
3.シーリング材の引張応力による区分で、LM は低モジュラスを表す。
4.シーリング材のタイプは、用途による区分を表し、タイプ G はグレイジングに使用する シーリング材を指す。
1
2成分形シーリング材は、施工直前に基剤と硬化剤を調合し、練り混ぜて使用するシーリング材をいう。基剤と着色剤ではない。
2.◯
シーリング材のクラスは、目地に対する拡大率、縮小率などで区分されている。(JIS A 5758)
3.◯
シーリング材に引張応力による区分は、クラスに応じてさらに区分され、LMは低モジュラス、HMは高いモジュラスを表す。(JIS A5758)
4.◯
建築用シーリング材にJISによる分類には、タイプFとタイプGがあり、タイプGはグレイジング用(ガラス取付け用)で、タイプFはグレイジング以外に使用するものである。(JIS A 5758)
[ No.15 ]
ボード類に関する記述として、最も不適当なものはどれか。
1.フレキシブル板は、火山性ガラス質たい積物などの無機質原料及びセメントを原料として製造した板である。
2.けい酸カルシウム板は、石灰質原料、けい酸質原料、石綿以外の繊維、混和材料を原料として製造した板である。
3.シージングせっこうボードは、両面のボード用原紙及び芯のせっこうに防水処理を施したものである。
4.ロックウール化粧吸音板は、ロックウールのウールを主材料とし、結合材、混和材を用いて成形し、表面化粧をしたものである。
1
フレキシブル板は、セメント、無機繊維を主原料とし、製造成形後に高圧プレスをかけたもので、強度が高く、可とう性がある。設問の記述は火山性ガラス質複層板(VSボード)のことである。(JASS26)
2.◯
記述の通りである。けい酸カルシウム板は、軽量で耐火・断熱に富み、加工性がよく、温湿度変化による伸縮・反りは小さいが吸水性は高い。(JASS26)
3.◯
シージングせっこうボードは、防水加工したせっこうボード用原紙で被覆され、かつ、せっこう中に適量の防水剤を混入して耐湿性を向上させたボードである。普通せっこうボードが使用できない多湿な場所や水回りの下地に使用する。
4.◯
ロックウール化粧吸音板は、ロックウールのウールを主材料とし、結合材、混和材を用いて成形し、灰華石模様、非貫通孔状、凹凸状、印刷、ラミネート及びそれらの組み合わせ等の表面化粧をしたものである。(建築工事監理指針)